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ハラスメント

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ハラスメント
Ⅴ 職場環境・雇用均等
ポイント
1
1 ハラスメント
ハラスメント
❶ハラスメント(Harassment)とは
「嫌がらせ」
「いじめ」
のことをいいます。
❷行為者が意図する・しないに関わらず、
相手が不快に思ったり、
尊厳が傷つけ
られたと感じたり、
心身に苦痛を受けた場合は、
ハラスメントにあたります。
モラル・ハラスメント
●モラル・ハラスメントとは、言葉や態度、身振りや文書などによって、働く人間の
人格や尊厳を傷つけたり、
肉体的、
精神的に傷を負わせて、
その人間が職場を辞め
ざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪くさせる行為をいいます。
●具体例:無視したり目の前にいるのにメールで指示するなどコミュニケーショ
ンを拒否する、
席を隔離するなど孤立させる、
ため息や肩をすくめるなど馬鹿に
した態度を取る、私生活や出自・思想・信仰を批判する、怒鳴りつけたり机を叩き
つけたりする、見せしめ・懲罰的に叱責する、能力に見合わない仕事をやらせる、
ことごとく意見に反対する、必要な情報を与えないなど。
42
知っておきたい!働く人の基礎知識
セクシャル・ハラスメント
●「男性から女性」
への性的言動だけでなく、
「女性から男性」
「男性から男性」
「女性
から女性」への行為も含まれます。
●具体例:性行為や猥談の強要のほか、容姿・服装・髪型・化粧・年齢等についてとや
かく言う、恋愛経験や結婚・出産について執拗に尋ねる、風俗店へ誘うなど。
●相手を陥れたり嫌がらせをしたりする目的で、セクハラ被害者を装い相手をセ
クハラ加害者扱いするケースもあります。
ジェンダー・ハラスメント
●ジェンダー・ハラスメントとは、
個人の能力や特性を無視して、
男女の固定的役
割差別に基づく言動のことをいいます。
●具体例:お茶汲みなどの雑用を女性にだけやらせる、
重要なポストや仕事を男性
にだけ任せる、
女性を「○○ちゃん」
「女の子」
「おばさん」と呼ぶ、
「女らしくない」
「男のくせに」といった発言、バレンタインチョコレートの要求など。
アルコール・ハラスメント
パワー・ハラスメント
●飲酒の強要、飲めない人への配慮を欠くこと、酔った上での迷惑行為など。
●パワー・ハラスメントとは、地位や人間関係などの優位性(パワー)を背景に、
業務
の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり、
職場環境を悪化させる
行為をいいます。
●近年、自己都合退職を目的とした「リストラ型パワハラ」が増加しています。
●業務上必要な指示や指導、注意、叱責は、たんに語調が強いだけではパワハラに
当たりません。
●具体例:部下からの相談を拒絶する、
不要なやり直しを命じる、必要以上にミス
を追及する、教育・指導時に欠点を強調したり人格を攻撃したりする、
自分のや
り方や考え方を押し付ける、
常に監視する、
私物や個人ロッカーを検査する、
仕
事を与えないまたは無理なノルマを課す、
権限を与えず責任だけを増やす、
貢献
や業績を無視したり過小評価する、
他人のミスを負わせる、
解雇すると脅したり
執拗に退職を要求する、
長期間の自宅待機を命じる、
合理性のない配置転換をす
る、健康を無視した残業を命じる、
病欠や有給を取らないよう圧力をかける、
草
むしりなど業務と関係のない作業をさせる、など。
●パワー・ハラスメントは、しばしばモラル・ハラスメントやセクシャル・ハラスメ
ントと一体となって発生します。
労働者人格権
●労働者の権利には、
賃金、労働時間、
雇用保障といった労働条件に係る権利のほ
か、労働者の人格や尊厳に関する権利もあり、
生命・身体の安全、
名誉、
プライバ
シー、
職場において自由な人間関係を形成する自由、
知識・経験・能力・適性にふ
さわしい処遇を受ける権利など広範にわたります。
使用者の責任
●使用者は労働者の尊厳が保たれるよう、働きやすい環境を整える義務がありま
す。ハラスメントが使用者によって行われたものでなくても、安全配慮義務違反・
職場環境配慮義務違反として責任が問われます。
●ハラスメントが原因で精神疾患を発症し、
業務災害と認定されたときは、
労災保
険の給付が受けられます。
ハラスメントを受けたら
●個人からの攻撃が集団からの攻撃に発展することがあります。職場内に相談で
きる人を見つけ、孤立しないようにしましょう。
●社内の相談窓口や労働組合、
労働行政機関に相談しましょう。
横浜しごと支援セ
ンター (P77)、男女共同参画センター (P76)、総合労働相談コーナー (P65)では、
無料で相談を受け付けています。
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Ⅴ 職場環境・雇用均等
ポイント
2
知っておきたい!働く人の基礎知識
母性保護
❶妊産婦については母性保護の見地から、
危険有害業務の就業禁止、
産前産後の
休業、
時間外・休日・深夜の労働制限の規定があります。
❷産前産後の休業期間が無給の場合は、
産前6週間、
産後8週間を限度に標準報
酬日額の2/3が出産手当金として健康保険から支給されます。
❸出産育児一時金として健康保険から39∼42万円が支給されます。
(参照39ページ)
●女性労働者には、
母性保護や国家的見地から、
出産の前後に保護規定を設けてい
ます。
産前休業
期
間
賃
金
取得要件
育児時間
●満1年に達しない子供を育てる女性は、
1日2回、1回あたり最低30分、
育児時間
を請求することができます。
生理休暇
●生理日の就労が、
著しく困難な場合、
請求すれば、
生理休暇を取得できます。なお、
休暇日が有給か無給かは、労働協約、就業規則などにより決まります。
母性健康管理の措置
産前産後休業
産後休業
産前 6 週間 産後 8 週間
(多胎妊娠の場合は 14週間 ) (産後 6 週間で医師が認めれば働くことができます)
有給か無給かは、労働協約、就業規則などによります。
(無給の場合、健康保険から標準報酬日額の 2/3 が出産手当金として支給されます)
請求すれば、取得できます 使用者は、必ず休業させなければなりません
*出産日は産前休業に含まれます。
㋐平均賃金を計算する際の算定期間には、この休業期間は入りません。
㋑年次有給休暇の出勤率の計算には、休業期間は出勤したものとみなします。
㋒休業期間中及びその後の30日間は、解雇は禁止されます。
妊産婦の就業制限
●使用者は、
妊産婦(妊娠中及び出産後1年を経過しない女性をいいます)から請求
があれば、時間外労働、休日労働、深夜労働をさせてはいけません。
●変形労働時間制
(フレックスタイム制を除く)
職場の場合でも、
妊産婦から請求
があれば1日、1週間の法定労働時間を超えて労働させることはできません。
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2 母性保護
●使用者は、妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導または健康診査を受ける
ための時間を確保できるようにしなければなりません。
また、その結果に基づい
て、通勤緩和、勤務時間の短縮、勤務の軽減、休業などの措置も講じなければなり
ません。
●健康診査は次の回数受けることができます。
㋐妊娠中 妊娠23週まで…………………………… 4週間に1回
妊娠24週から35週まで…………………2週間に1回
妊娠36週以後出産まで………………… 1週間に1回
(ただし、主治医等からこれと異なる指示を受けた時は、その指示に従って
受けることができます。)
㋑産 後 1年以内……………………………………主治医等の指示通り
Q&A
「残業はできません」といいましたが、上司
Q 妊娠したので、
に「皆に迷惑がかかるから残業をしてほしい」といわれま
した。本当に、残業はしなければならないのでしょうか?
A
妊婦でも、本人が希望すれば、会社は残業させることができます。し
かし、流産や出産異常につながる不安が少しでもあるのなら、
「残業
はできません」とはっきり言いましょう。
妊産婦から「残業はできない」との申し出があったにかかわらず、無
理に残業をさせれば、労働基準法違反となります。
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Ⅴ 職場環境・雇用均等
ポイント
3
知っておきたい!働く人の基礎知識
3 仕事と家庭の両立支援制度
仕事と家庭の両立支援制度
❶育児・介護休業は、
男女を問わず取得でき、
要件を満たせば期間雇用者
(パート
タイム労働者や派遣労働者)
でも取得できます。
❷育児・介護休業中の賃金は、
法律に定めがありませんので、
就業規則や労使間
の話し合いなどで決めることになります。
❸使用者は休業の申し出を拒むことはできません。
休業の申し出や実際に取得
したことを理由に、
解雇、
退職の強要、
降格、
減給など、
不利益な取り扱いは禁止
されています。
転勤については、
育児・介護の状況に配慮しなければなりません。
❹このページの制度に関する問い合わせは、神奈川労働局雇用均等室(電話
045-211-7380)、
給付に関する問い合わせは、
公共職業安定所(69ページ)です。
育児休業
●1歳未満の子を養育する労働者が、子の1歳の誕生日の前日まで、原則1回に限り
取得できます。保育所に入れない場合は、1歳6か月まで延長できます。
●両親がともに育児休業を取得する場合は、
1歳2か月までに延長できる特例(パパ・
ママ育休プラス)があります。
●期間雇用者の場合、
同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上で、
子の
1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれれば利用できます。
●育児休業を取得するには、育児休業開始予定日の1か月前(特別な事情がある場
合は1週間前)までに、書面等により事業主に申し出る必要があります。
育児時間
●1歳未満の子を養育する女性労働者が、1日2回、各30分(就業時間が4時間以内
の場合は1日1回30分)、休憩時間とは別に取得できます。
子の看護休暇
●小学校就学前までの子を養育する労働者は、子が1人であれば一年度に5日ま
で、2人以上であれば一年度に10日まで、1日単位で休暇を取得することができ
ます。
介護休業
●対象家族1人につき、要介護状態に至るごとに1回、通算して93日まで、介護休業
を取得できます。
対象家族とは、
配偶者(事実婚含む)、
父母、子、配偶者の父母、同
居かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫を指します。
●要介護状態とは、
2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいい、
必ずしも介護保険の要介護認定を受けている必要はありません。
●期間雇用者の場合、
同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上で、
休業
開始日から93日を経過する日以降も引き続き雇用されることが見込まれれば
利用できます。
●介護休業を取得するには、
介護休業開始予定日の2週間前までに、
書面等により
事業主に申し出る必要があります。
介護休暇
●要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者は、対象家族が1人
であれば一年度に5日まで、2人以上であれば一年度に10日まで、1日単位で休
暇を取得することができます。
所定労働時間の短縮措置
●3歳未満の子を養育する労働者が希望したとき、
1日の所定労働時間が原則とし
て6時間に短縮されます。
所定外労働の免除
●3歳未満の子を養育する労働者が申し出たとき、事業主は所定労働時間を超えて
労働させてはなりません。
介護のための短時間勤務制度等
●事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が利用できる短時間勤
務制度等の措置として、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、始業・終業時刻
の繰り上げ・繰り下げ(時差出勤)、介護サービス料を助成する制度のいずれかの
措置を講じなければいけません。
法定時間外労働の制限
●小学校就学前までの子を養育する労働者が申し出たとき、
事業主は1か月24時
間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはなりません。
●要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者が申し出たとき、事業主は1か月
24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはなりません。
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Ⅴ 職場環境・雇用均等
●小学校就学前までの子を養育する労働者が申し出たとき、事業主は午後10時か
ら午前5時まで労働させてはなりません。
●要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者が申し出たとき、事業主は午後
10時から午前5時まで労働させてはなりません。
転勤に対する配慮
●事業主は、
従業員に就業場所の変更を伴う配置の変更を行おうとする場合に、
そ
の就業場所の変更によって育児・介護が困難になる労働者がいるときは、
その労
働者の育児・介護の状況に配慮しなければなりません。
雇用保険の休業給付
●育児休業給付は、
最大で1年間、
休業開始時賃金日額×支給日数×50%が支給さ
れます。
●介護休業給付は、
同一対象家族に対して通算93日まで、休業開始時賃金日額×
支給日数×40%が支給されます。
●育児休業給付も介護休業給付も、
事業主から賃金が支払われた場合は、
支給額が
調整されます。
育児休業期間中の社会保険料の免除
●育児休業中の健康保険と厚生年金保険の保険料が、被保険者負担分および事業
主負担分ともに免除されます。
●免除期間中も、
健康保険の給付は通常どおり受けられます。
また、免除された期
間分も将来の年金額に反映されます。
育児休業等終了後の社会保険料の特例
●育児休業等終了後、
育児等を理由に報酬が低下した場合、
事業主を経由して保険
者に申し出ることで、標準報酬月額の改定をすることができます。(保険料を安
くする効果があります。)
3歳未満の子を養育する期間についての年金額計算の特例
●3歳未満の子を養育する期間について報酬が低下した場合、事業主を経由して保
険者に申し出ることで、従前の標準報酬月額で将来受け取る年金額を計算しま
す。
(年金受給額を減らさない効果があります。)
4
ポイント
深夜業の制限
知っておきたい!働く人の基礎知識
4 男女雇用機会均等法
男女雇用機会均等法
❶性別による差別禁止の範囲が拡大され、
男性に対する差別も禁止されてい
ます。
❷禁止される差別が追加、明確化され、また、間接差別も禁止されています。
性別による差別の禁止
●男性に対する差別も禁止され、男性も均等法に基づく調停など個別紛争の解決
援助が利用できるようになりました。
●募集・採用、配置・昇進・教育訓練、
福利厚生、
定年・解雇に加えて降格、
職種変更、
パートへの変更などの雇用形態の変更、
退職勧奨、雇止めについても、性別を理
由とした差別は禁止されています。
●外見上は性中立的な要件でも、募集・採用に当たり、労働者の身長、
体重又は体力
を要件とするなど業務遂行上必要であると認められる合理的な理由がない場合
は間接差別として禁止されています。
★間接差別とは…
1.性別以外の事由を要件とする措置であって、
2.他の性の構成員と比較して、
一方の性の構成員に相当程度の不利益を与える
ものを、
3.合理的な理由がないときに講ずることをいいます。
妊娠・出産・産前産後休業等を理由とする不利益取扱いの禁止
●妊娠・出産・産前産後休業等を理由とする解雇に加え、
妊娠又は出産に起因する
能率低下又は労働不能が生じたこと等を理由とする解雇や雇止め、退職の強要、
降格等の不利益取扱いも禁止されています。
●妊娠中や産後1年以内の解雇は、
「妊娠・出産・産前産後休業等による解雇でない
こと」を事業主が証明しない限り無効となります。
ポジティブ・アクションの推進
●ポジティブ・アクション
(男女間の格差解消のための積極的取組)
に取り組む事
業主が実施状況を公開するに当たり、国の援助を受けることができます。
育児休業期間中の住民税の徴収猶予
●育児休業期間中1年以内の期間に限り、
市区町村に申し出ることで、
住民税の徴
48 収が猶予される場合があります。
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