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Title 脂質平面膜に組み込んだ筋小胞体及び酵母液

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Title 脂質平面膜に組み込んだ筋小胞体及び酵母液
Title
Author(s)
脂質平面膜に組み込んだ筋小胞体及び酵母液胞膜のイオ
ンチャネルに関する研究
谷藤, 学
Citation
Issue Date
Text Version none
URL
http://hdl.handle.net/11094/35934
DOI
Rights
Osaka University
<5 >
氏名・(本籍)
谷藤
学
学位の種類
工学博士
学位記番号
第
学位授与の日付
昭和 62 年 11 月 30 日
学位授与の要件
基礎工学研究科物理系専攻
790 9
号
学位規則第 5 条第 1 項該当
学位論文題目
脂質平面膜に組み込んだ筋小胞体及び酵母液胞膜のイオンチャネル
に関する研究
論文審査委員
(主査)
教授葛西道生
(副査)
教授鈴木良次
教授有働正夫
論文内容の要旨
イオンチャネルは,生体膜を介する情報伝達を担う分子の 1 つであり,その実体を明らかにすること
は興味深い。これまでパッチクランプ法等で,単一チャネルの挙動が観測されるようになって,イオン
チャネルがイオンを通す通孔 (pore) とその開聞を制御するゲート (gate) の 2 つーの機能的な部位に
分けて考えられることが明らかとなった。しかし,それぞれの実体を明らかにするには至っていない。
他方,近年,チャネルあるいは,それに付随したレセプターの一次構造が明らかにされつつあるが,イ
オンチャネルの立体構造に関しては推測の域を出ない。いずれの場合においても通孔とゲート,それぞ
れの機能と,それらに関連した構造についての情報が不足しているように思われる。本研究では,人工
膜にイオンチャネルを組み込むことにより,機能の側面から,ゲートと通孔の解析を試みた。この方法
は,パッチクランプ法と単一チャネルの挙動を観測できる点では,同じであるが,チャネルを取りまく
環境を任意にコントロールできる点ですぐれている。我々は材料としてウサギ骨格筋の筋小胞体膜と酵
母の液胞膜を用いて,以下の結果を得た。
(
1
)
筋小胞体膜はアニオンに対して高い透過性を示すため,従来の分光学的方法では,その大きさを
はっきりと決定できなかったが,本研究では,アニオンチャネルを通る電流を観測でき,単一チャネル
コンダクタンスの大きさは 200pS
(100mMCC)
であることが明らかとなった。
(
2
) このアニオンチャネルはいくつかのサブステートを持ち,サブステートの占有確率に電位依存性
があることが明らかとなった。
(3) 酵母液胞膜を人工膜に組み込むことにより, Ca 十濃度に依存したカチオンチャネルを見いだし
2
fこ O
a
4
A
(
4
) この Ca +依存性カチオンチャネルは,チャネル開閉の電位依存性から 2 つの独立なゲート機構
2
を持ち,その一方は,
D 1D S (4 , 4d
i
i
s
o
t
h
i
o
c
y
a
n
o
s
t
i
l
b
e
n
e
-2 , 2 'd
i
s
u
l
f
o
n
i
c acid) により,
開状態にロックされることがわかった。
(
5
) これら二種類のチャネルについて,それぞれアニオン間,カチオン間にイオン選択性はあまり見
られなかった。
以上の結果は,チャネルのゲート機構に関連する性質として,中間的なレベルであるサブステートが
存在すること,独立な 2 つのゲートにより,
1 つのイオンチャネルの開閉を制御している例のあること
を示している。
論文の審査結果の要旨
神経をはじめとする生体膜の興奮現象は,分子レベルでは生体膜中に埋め込まれたイオンチャネルの
開聞によって,イオン電流が制御されることによって行われている O 近年の測定技術の進歩によって,
1 個のイオンチャネルを流れる電流が観測できるようになり,さまざまなイオンチャネルが存在するこ
とが分かつてきた。その結果,イオンチャネルはイオンを通すポアーと,イオンの通過を制御するゲー
トとの 2 つの機能的な部分に分けて考えられることが明らかになってきた。しかし,それぞれの実体は
明らかになってはいない。本論文は制御方法の異なる 2 種類のイオンチャネルを人工膜に組み込み,単
一チャネル電流を観測することによって,ゲートとポアーの性質を解析したものである。
本論文は 3 章からなっている。第 1 章は実験方法の章で,脂質平面膜を形成し,それに生体膜から単
離したベシクル(膜小胞)を融合させ生体膜中に存在するイオンチャネルを人工膜に組み込む技術と,
そこを流れる微小電流を観測する方法について述べている。
第 2 章は,筋小胞体のアニオンチャネルについての解析結果を述べたものである。筋小胞体はアニオ
ンに対して高い透過性を示すことが分光学的方法によって分かっていたが,それに対応したアニオンチャ
ネルの存在が確認された。このチャネノレは 100mM Cl 中で、 200pS のコンダクタンスをもち,いくつかの
サブステートが存在することを示した。このチャネルの開閉は弱い膜電位依存'性を示すが,それがこの
サブステートの占有確率の膜電位依存性によって説明できることを示した。また,このサブステートは
ゲートの性質であることを示した。
第 3 章は,酵母液胞膜のカチオンチャネルについての解析である。このチャネルは応答速度が異なり,
電位依存性が逆の 2 つの独立なゲートを持つことを示した。応答の速いゲートは DIDS (4 , 4'
d
i
i
s
o
t
h
i
o
c
y
a
n
o
s
t
i
l
b
e
n
e
-2 , 2 'd
i
s
u
l
f
o
n
i
cacid) によって開状態にロックされること,遅いゲート
の開閉には mM程度のカルシウムイオンを必要とすることを示した。
以上の結果は全く異なるゲート機構をもっ 2 種類のイオンチャネルが存在することを示し,生体膜の
イオンチャネルの制御機構の解明に新事実を加えたものであって,工学博士の学位論文として価値ある
ものと言忍める。
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