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4.研究のまとめ

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4.研究のまとめ
23年度生活科研究のまとめ
1研究主題
子ども自ら活動し、考え、自信を深める生活科授業の創造
~見取りと価値付けの工夫や伝え合い交流する活動の充実を中心に~
2研究の仮説
生活科の学習において、子どもが自ら活動し、繰り返し対象とかかわることが出来る学習過程
の中で、気付きを他者と伝え合うための活動の工夫を行う。その上で、子どもの気付きを適切に
見取り価値付ける支援を行えば、子どもは自ら活動し、考え、自信を深めていくことができるで
あろう。
3仮設実証のための具体的方策
(1)伝え合い交流する活動(以下「交流」)の工夫
①学習内容に応じた「交流」タイプの選択
②活動場面や交流対象に応じた伝え方の工夫
③場の設定
(2)子どもの気付きの見取りと価値付けの工夫
①気付きを価値付ける教師の働きかけ
②見取り支援予想表の活用
③振り返りカードの工夫
4具体的な実践と考察
第2学年「わたしのモルモット」Ⅱ(モルモットをしょうかいしよう)
具体的方策(1)伝え合い交流する活動の工夫
モルモットとの出会いは、第 1 学年の学校探検や3学期の見習い週間で2年生からお世話の仕方
を聞いたり、体験させてもらったりしたことである。2年生になって、担当のモルモットを決め、
年間を通じて計画的にモルモットとかかわっていった。
1学期の間モルモットのお世話を続けることで、モルモットに対する愛着は深まってきた。しか
し、この時点で、モルモットをケージから出し入れすることができる児童は5割しかいなかった。
また、モルモットの世話を忘れていたり、友達任せにしたりしてしまう児童も多かった。
そこで、自分のモルモットの紹介をする活動を通して、よりモルモットへの愛着を深め、友達と
「交流」したり、表現したりする力を育てたいと考えた。
年間活動計画
月
単元及び活動内容・時数(内容項目)
4
9
11
2
わたしのモルモットⅠ
○飼育の仕方を確かめよう。
○ふれあい教室
わたしのモルモットⅡ
○いとうづの森へ行こう
○モルモットの飼育について話そう。
わたしのモルモットⅢ
○わたしのモルモットを紹介しよう。
わたしのモルモットⅣ
○モルモット引継ぎの準備をしよう。
モルモット引継ぎ式をしよう。
2時間(7)
6時間(7)
4時間(7)(8)
2時間(7)(8)
1時間(8)
①学習内容に応じた「交流」タイプの選択
<第二次第2時 少人数の交流>
「もっちゃんのクイズグループ」の発表に対しての交流では、以下のようであった。
上記のように、自分たちは、答えが分かっている、または、モルモットのことを知っているため、
気付かなかったり、アイデアが出なかったりすることでも、少人数で考えを出し合うことで、自分
たちの伝えたいことを分かりやすく相手に伝える視点や方法に気付くことができた。また、アイデ
アを出した児童は、自分の意見や意見を出したことに自身をもつことができた。
②活動場面や交流対象に応じた伝え方の工夫
伝え方については、お世話しているモルモットのグループ毎に話し合いで決めていった。そのグ
ループの中でも、伝えたいことや得意な伝え方によって、更に小グループに分かれたところもあっ
た。
子どもたちは、「モルモットについて伝えたい」という気持ちが強く、モルモット飼育についての
自分の頑張りに目をむけた伝え方を考えているグループは少なかった。子ども達が選択した伝え方
は、次のようであった。
○紙芝居で伝えるグループ
○テレビのアナウンサーになって伝えるグループ
○新聞にまとめて伝えるグループ
○絵本にまとめて伝えるグループ
○クイズにして伝えるグループ
○劇にして伝えるグループ
○ペープサートにして伝えるグループ
絵本にまとめて伝えるグループの交流は、以下のようであった。
「○○ちゃんの頑張ったことは分かったけど、男の子のは、分からなかった。」
T「H君とI君は何を頑張ったの。」
「僕は、水やりは頑張ったと思う。」
「僕は、掃除。」
「じゃあ、それを言えばいい。
」
「絵か写真があったらいいよ。
」
「パネルで最後に発表したらいいよ。」
「先生に、写真とってくださいって言ったらいいんだよ。」
活動に積極的なH子を中心に、消極的なH君と、自分から考えることが苦手なI君のグループで
あった。意見の交流が滞ったところで、教師からの言葉かけを行なうと、相手グループからの意見
が出て、絵本にこだわらない活発な「交流」ができた。
③場の設定
○ 単元を通して学習中は、モルモットをケージに入れ
て教室に入れた。学習中は、何度もモルモットを抱い
たり様子を観察したりして、よりモルモットの学習を
しているという雰囲気作りに役立った。
○ 「わたしのモルモットⅡ」から、引き続き、発見カ
ードをモルモット別・児童別に掲示した。自分の発見
カードが増えていくことが目に見えてわかり、意欲的
にモルモットを観察していった。
具体的方策2気付きの見取りと価値付けの工夫
①気付きを価値付ける教師の働きかけ
教師自身が子どもの気付きを予想し、どこでどのような働きかけをするのか、その際の言葉かけ
を以下のように分類し想定しておくようにする。
授業の中での言葉かけは、以下のようになった。
疑問
劇を見ているグループに対して
T:どうだった。
C:おもしろかった。
T:どこが、おもしろかったか言って。
C:M君のチョコちゃんが鳴くときの声がおもしろかった。
C:O君の「にんじんがやっぱりおいしいな。
」って言うところが上手だった。
示唆
劇を見ているグループに対して
T:伝えたいことは何だったか分かった?
C:・・・
T:ミルクちゃんグループが頑張ったことを言って。
C:説明を頑張ったと思う。分かりやすかった。
C:何のえさが好きか分かったよ。
T:それ、ここが分かったよ、分かりやすかったよ、というところを言ってあげよう。
C:F君前をむいて言ってるのがいいよ。
C:Mちゃんは、えさのやり方を頑張ったんだね。
揺さぶり
劇を見ているグループに対して
T:お母さんたち分かるかな。体重測定したこと無いもんね。
C1:お母さんたち知らんのやけ、難しいかね。
C2:もんだいかえる?
C3:ヒント出したら?
C1:いいね。
C2:ヒントを考えよう。
子どもの単発的な意見に対して、「どこが」「なぜ」「どうして」などの疑問を交えた働きかけを
することで、見ている児童も自分の考えを再確認し、気付きの深まりとともに、詳しい発表ができ
たことへの自身につながっていった。
交流に躓いている様子があれば、自分で決めさせる余地を残した示唆が効果的であった。
自分たちの考えから抜け出せない様子を見たら、
「これでいいかね?」
「今上手なところがあった
けど気付かなかったかな。」「相手に伝わるかな。」など、揺さぶりをかけ、もう一度自分のしてい
ることを振り返ることができるようにすると、気付きを引き出すきっかけとなった。
②見取り支援予想表の活用
本時では、
「本時における児童の思い」を把握し、一人ひとりに対する支援を分類して表記した。
その際、見守る児童に対しても、他の児童に広げられるような価値のある思いがあれば、伝えるよ
うに表記した。
良い発見と賞賛し、発表に入れるように声かけする
③振り返りカードの工夫
出会う段階の「全体の交流」では、その時間の学習を参考に、自分の考えや活動を決定し、決定
したことを書き留めておけるような項目を挙げた。
友達の意見を聞いたり、発言内容の板書を見たりしながら、自分の考えとして表記している。
かかわる段階の「少人数の交流」では、めあてを意識した活動になっているかを確認しやすいよ
うに、めあてに対する振り返りは、色を塗るだけにした。
記述のための時間は、国語〔内容B書くこと⑵イ経験したことを報告する文章や観察したことを
記録する文章などを書くこと。〕として指導した。
ひろげ深める段階の「1 対 1 の交流」では、単元全体を通しての自分や友達の良さや成長を見
取れるようにした。
5研究の成果と課題
(1)研究の成果
伝え合い交流する活動の工夫
○出会う段階において選択した「全体の交流」においては、子ども一人ひとりの気付きや経験を交
流させることにより、「自分の気付かないことにも友達は気付いているんだ。」「自分が言いたかっ
たことは(友達の発言を聞いて)それだ。」
「自分の頑張りと同じだ。」など、活動の見通しを持ち、
意欲を持たせる上で効果があった。その後の活動によって得られた気付きを交流させるため、各時
間の終末において「全体の交流」を取り入れたことも、効果的であった。
かかわる段階において選択した「少人数の交流」においては、学習後の振り返りで、友達の気付
きの良さや表現の面白さに気付いており自分たちの発表もよりよくしたいという意欲の高まりに
効果的であった。
表現の面白さに
気付く
発表をよりよ
くしたい
○様々な伝え方の工夫を行うことで、活動の意欲を継続させ、伝えたいという思いを高めたり、友
達との交流を活発なものにしたりと様々な効果が得られた。
また、交流対象を家の人としたことにより、より活動に意欲が見られるとともに、モルモット飼
育において、協力を欠くことのできない家庭との交流も深まった。家庭から寄せられた感想にも、
子どもたちの伝え方の工夫に対する意見が多く寄せられた。
○各々のグループが発表の仕方を変えていた事にも感心しましたが、どのグループ
も絵や写真などを使い、モルモットの特徴を伝える工夫がされており、その内容も
日ごろから、一生懸命飼育をし、注意深くモルモットを観察していないと伝えられ
ないもので、全て子ども達自身で考えたということにも驚きました。
○いろいろと発想の豊かな発表が見れました。子ども達中心でまとめたとの話には
驚きと感心でした。
○飼育していく中で、モルモットの特徴をよく勉強しているなあと思いました。そ
れをまとめとして、新聞やニュース、クイズ、劇、テレビまであって、いろいろな
発表があってよかったです。
○活動中は常にモルモットを身近に置くことで、何度もモルモットの様子を見ながら活動している
様子が見られた。活動を通してより、モルモットへの愛着が見られた。そのことは、発見カードの
枚数や内容にも表れていた。活動を追う毎にカードの枚数が増え、発見することを喜ぶなど、飼育
活動の意欲付けに効果があった。
5月
たくさんたまった発見
カード
モルモットに対す
る気付きの深まり
12月
このように様々な伝え合い交流する活動を仕組むことで、子どもたちは、自ら活動し、考え、自
らの活動に、自信を深めるとともに、生き物への愛着も深めていった。以下のアンケートや保護者
の感想にも、その効果が現れている。
よくできる
できる
あまりできない
できない
モルモットに
さわることができますか?
わたしのモルモットⅠ
学習前
わたしのモルモットⅢ
学習後
0
20
40
60
80
100 (人)
○我が家のメダカやエビでは得る事の出来ない経験をたくさんしている様で、嬉しく思いました。
子ども達にとっては、小さなクラスメイトなんでしょうね。
○子ども達は、みんなモルモットが大好きで、とてもかわいがっていることが良く分かりました。た
だかわいいときだけ相手をするのではなく、掃除なども自分たちできちんと出来ていて、生き物を飼
うことの責任を勉強できているんだなあと感心しました。
○あまり触れ合う事の無いモルモットのお世話で、始めは触ることも出来なかったけど、触れるよう
になった!始めは抱っこすると泣いていたけど、今は泣かないようになった!とお世話を続けること
によって、モルモットに対する子ども達の愛情を感じました。始めは出来なかったけどできるように
なったという子ども達が多く、子ども達の自信にもつながっているようで、とてもいい経験だなと思
いました。
子どもの気付きの見取りと価値付けの工夫
○気付きを価値付ける(または深める)ためには、
「いいね。」
「上手。」などの略した言葉かけよ
りも、
「○○がいいね。」
「○○しているところが上手。」など、具体的な言葉かけのほうがより効果
的であった。気付きを生む(または深める)ためには、具体的方策第 2 学年の実践(1)でも述べ
たように、「疑問」「示唆」「ゆさぶり」を主とした言葉かけが効果的であった。
○子ども一人ひとりの思いを把握し、思いに寄り添った支援をするために、支援を分類した「見取
り支援予想表」は、大変効果的であった。
○振り返りカードに、めあてに沿った(教師の見取りの補足になる)項目を入れることで、見取り
がよりきめ細かくなり、次時の効果的な支援に役立った。また、見取り支援表を具体的なものにす
ることにも効果的であった。
(2)研究の課題
○様々な伝え方を工夫することで、意欲付けや「交流」における成果は得られたが、自分の「伝
えたいこと」や「頑張り」を更に明確にし、伝え方を選択するようにしていく必要がある。
○子どもの気付きを深め、次の活動や生活への自信を付けさせるために、振り返りカードの更な
る工夫と国語科や図画工作科、特別活動などとの横断的な学習計画の開発が必要である。
○教師の言葉かけが、子どもに、どのように作用していくのかを更に追及していく研究が求めら
れている。
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