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グローバル・インテリジェンス
2016年4月号
ManulifeAM.com
本資料は、Manulife Asset Management Limited (US) が作成した ”
Global Intelligence”(2016年3月発行) より、
マニュライフ・
アセット・マネジメント株式会社が抜粋・翻訳したものです。
グローバル・インテリジェンス
2016年4月号
目 次
グローバル経済見通し.................................................................................... 4
市場見通し....................................................................................................... 7
株 式............................................................................................................. 7
グローバル株式....................................................................................................................... 7
アジア株式............................................................................................................................... 9
日本株式................................................................................................................................ 11
債 券...........................................................................................................13
グローバル債券.................................................................................................................... 13
米国債券................................................................................................................................ 14
カナダ債券............................................................................................................................ 15
アジア債券............................................................................................................................ 16
日本債券................................................................................................................................ 18
3
グローバル・インテリジェンス 2016年 4月号
グローバル経済見通し
ミーガン・グリーン
チーフ・エコノミスト
市場概況
2016 年に入ってから続く市場のボラティリティ上昇の様々な要因には、一見すると相互の関連性はな
いように見えます。しかし突き詰めると、それらはすべて世界的な需要低迷に各国中央銀行が有効な対
策を打ち出せていないことに関わっています。この問題の解決は当面見込めないことから、ボラティリ
ティの高い状況がこの先何年か続くと弊社では予想しています。
世界金融危機の引き金となった主要先進国の過剰債務は悪化するのみで、各国政府には需要拡大のために財政出動を
実施するだけの余力はほとんどありません。そのため、各国中央銀行は引き続きピンチヒッターとして、様々な金融
刺激策を打ち出すことになると思われます。中央銀行は 2008 年以来この役割を担い続けており、政策実施の余地
は乏しくなりつつあります。貸出を促し、インフレ率を引き上げるために、マイナス金利政策を導入する中央銀行も
次第に増えています。しかしながら、そうした政策の効果は未だ実証されておらず、とりわけ長期的観点から見た効
果は明らかではありません。さらに日本の例に見られるように、この政策は思わぬ市場の反応を誘発する可能性があ
ります。世界の銀行セクターに予想外の影響を与えることは言うまでもありません。
景気に明るさも
今年に入って市場のボラティリティは高まっていますが、マクロ経済全般が悪いわけではありません。
この点は、先進国中心の世界的な景気回復の主な牽引役である米国に特に顕著に当てはまります。製
造業購買担当者景気指数(PMI)の数値は製造業の減速を示唆していますが、景気回復を下支えして
きた米国の消費支出は、比較的堅調さを維持しています。米国の小売売上高の伸び率は低水準ながら
も上昇傾向にあり、エネルギー価格の低迷を背景にさらに上昇するものと思われます。一方、雇用統
計は引き続き堅調を維持していますが、賃金上昇率は伸び悩んでいます。
今年最初の数週間に見られた市場の急落をきっかけに、リセッション(景気後退)に陥るとの憶測が一部で再び浮
上していますが、弊社では、最終的に経済ファンダメンタルズが優勢となり、2016 年の米国経済は 2% 程度の緩
やかな成長を予想しています。
先進諸国の中では、英国も引き続き景気拡大が見込まれ、見通しは良好です。英国経済は今後 5 年間で 2 〜 3% 程
度の成長率を維持すると予想しています。近々実施が予定されている、
EU 離脱(Brexit)の是非を問う国民投票は、
企業が EU 離脱の潜在的な影響を考慮することもあり、短期的には経済にマイナスの影響を及ぼす恐れがあります。
英国は、EU に残留することを選択すると思われますが、投票結果は僅差になるのではないかと思われます。
4
グローバル・インテリジェンス 2016年 4月号
リスク・シナリオ
弊社は一部のアナリストに比べると、中国に対して比較的強気の見方をしているものの、同国の GDP
成長率減速は依然として世界経済にとって最大のリスクです。中国金融当局が政策金利を引き下げ、人
民元の下落を容認する中で、中国からの資金流出に当局が対処できるかどうか懸念が高まっています。
経済のリバランスと資本勘定の自由化には、中長期的に中国政府による強いコミットメントがあると
考えます。しかし短期的には、こうした目標を追求する積極的理由が中国政府にはなく、投資の拡大と
資本規制の強化という従来の手法に頼ると思われます。これは、今年の全国人民代表大会(全人代)で発表された
GDP 成長率目標が、構造改革よりも経済成長を優先することを示唆している点からも明らかです 1。
夏にかけておそらく、欧州に再び世界の注目が集まると思われます。気候が良くなるにつれて欧州に流入する難民が
増加し、欧州の連帯という概念が失われていきます。欧州への亡命申請者の流入に歯止めをかけるトルコと EU のい
かなる協約も国際規範に抵触しかねず、実行は容易ではありません。欧州が EU 境界線の防衛に苦慮する中、シェン
ゲン協定加盟国の間に国境閉鎖に踏み切る国が増えることが予想されます。難民の負担を引き受けているギリシャも、
債権者との厳しい交渉に直面するものと思われます。ギリシャの財政再建、年金改革、民営化といった問題について
両者が合意に達することができなければ、7 月後半に償還を迎える債券のロールオーバーを行うことはできません。
債務危機と難民危機という 2 つの危機が重なったことに加え、その頃には EU 内の国境が“復活”していると思わ
れることから、ギリシャのユーロ離脱(Grexit)問題が再び表面化する可能性があります。
米国については、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策を誤るリスクは依然として存在しますが、弊社はそうなる可
能性は低いと考えています。とはいえ、この点は米国経済回復の唯一最大のリスクです。弊社は FRB が 6 月に 25
bps の利上げを実施し、年末にもう一度利上げを行うと予想しています。ただし、この利上げ回数の予想は下振れ
する可能性があり、2016 年中の利上げは予想を上回る(年 3 回)よりも、予想を下回る(年 1 回)可能性の方が
高いと見られます。
注目ポイント
各国中央銀行総裁はここ数年、口先介入により自国通貨安へ誘導しようと力を尽くしています。残念
ながら、声明を発表するたびにその効果は薄れてきています。主要先進国では金利がすでにゼロ近辺、
またはマイナスになっているため、金融当局が金利を引き下げられる幅は限定的です。欧州と日本では、
資産買い入れプログラムの追加的な実施が見込まれますが、量的金融緩和も回を重ねるごとに効果が
薄れています。中央銀行には、需要を喚起し、インフレ率を押し上げる政策手段を講じる余力が残っ
ているのか、疑問視する声もあります。
採用可能と思われる政策の 1 つとして、一種の恒久的な量的金融緩和策である「ヘリコプター・マネー(ばらまき
政策)
」があります。ヘリコプター・マネーには、税金の還付や現金を配る(例えば、
地域振興券等の配布)など、
様々
な形態が考えられます。現金の配布が恒久的に実施されると、必然的にインフレが発生し、その結果、消費者は物
価が上昇する前に早めに支出購入しようとします。この概念はわずか 6 カ月前には蔑みと不信感を持って受け止め
られていました。1 つには財務省と中央銀行との間で調整が必要となるため、中央銀行の独立性の重大な侵害とな
るためです。しかし弊社は、欧州中央銀行(ECB)がすでに貸出条件付き長期資金供給オペ II(TLTRO II)2 を通じて、
ヘリコプター・マネーの導入を決定したことに触れたいと思います。この制度において、優遇金利適用の場合、銀
行は中銀預金金利と同じ低い利率(現在はマイナス金利)で ECB から資金を調達し、その資金を貸し付けてプラス
の利回りを得ることが可能となります。つまり、銀行は ECB から利息を受け取って資金を調達し、
融資にまわすため、
これは実質的に銀行への多額の資金振替となることを意味します。需要減少及びデフレに対する有効な政策手段が
引き続き見当たらない場合、ヘリコプター・マネーの導入は世界的に広がることが予想されます。
1
2
全国人民代表大会:”
China sets 5-Year average annual growth above 6.5%”
、2016 年 3 月 6 日
欧州中央銀行(ECB)
:”
ECB announces new series of targeted longer-term refinancing operations”、2016 年 3 月 10 日
5
グローバル・インテリジェンス 2016年 4月号
マニュライフ・アセット・マネジメント
グローバル経済予測
弊社予想
2016
2017
2018
2019
2020
2016-2020
5年間平均3
GDP成長率
(%、前年比伸び率)
全世界
2.6
2.9
3.0
3.0
3.0
2.9
米国
2.1
2.4
2.2
2.2
2.1
2.2
カナダ
1.6
2.0
2.1
2.3
2.2
2.1
ユーロ圏
1.5
1.8
1.7
1.5
1.4
1.6
ドイツ
1.5
1.7
1.4
1.2
1.2
1.4
フランス
1.4
1.6
1.7
1.5
1.5
1.5
2.1
2.3
2.3
2.2
2.3
2.2
4.2
4.3
4.4
4.4
4.5
4.4
日本
0.6
0.5
0.7
1.2
1.1
0.8
中国
6.5
6.3
6.2
6.0
6.0
6.2
インド
7.8
7.4
8.3
7.8
7.7
7.8
英国
アジア・太平洋地域
4
インフレ率
(%、前年比伸び率)
米国
0.8
1.4
1.8
1.9
2.0
1.6
カナダ
1.5
1.9
1.5
1.7
1.8
1.7
ユーロ圏
0.3
1.3
1.5
1.6
1.6
1.2
ドイツ
0.4
1.5
1.4
1.6
1.5
1.3
フランス
0.1
1.0
1.4
1.5
1.5
1.1
英国
0.5
1.3
1.4
1.5
1.6
1.3
アジア・太平洋地域2
1.6
2.3
2.2
2.5
2.7
2.2
日本
0.0
0.9
1.3
1.2
1.3
0.9
中国
1.3
1.7
1.7
2.4
2.8
2.0
インド
5.2
5.0
5.0
5.0
4.6
5.0
出所:マニュライフ・アセット・マネジメント、2016年3月8日時点
5年間平均:2016〜2020年の各予測期間の平均
アジア・太平洋地域には中国と日本を含む
※ 本ページに記載の予測数値は、あくまでも上記時点でのものであり、市況の変動等に伴い、変更する場合があります。
3
4
6
グローバル・インテリジェンス 2016年 4月号
グローバル株式見通し
ポール・ボイン
グローバル株式運用部門 シニア・ポートフォリオ・マネージャー
市場概況
2016年に入り、世界的にリ
スクが再び脚光を浴びる中、
「質」に焦点を当てること
が必要
グローバル株式市場の見通しは芳しくありません。世界経済の成長は減速、インフレ率も依
然として低い水準で推移しています。また、企業は高水準の債務を抱え、収益悪化の兆しが
見られます。
世界各国での一連の量的緩和の動きは、多くの場合、資産価格の押し上げに成功しましたが、
投資家にとっては新しい懸念が生まれています。大まかに見ると、世界各地の株式市場(ア
ジアを除く)は、予想株価収益率(PER)の過去 10 年間平均を上回る水準となっています 1。
また、売上高の伸び、例えば米国の例に注目すると、過去 6 年間の増益の大半は、売上高
の伸びではなく、利益率改善や自社株買いでもたらされていることが分かります 2。さらに、
米国企業は低金利を背景に、配当原資や自社株買いの資金を借入により調達する傾向が強まっ
ています。米国ではそうした自社株買いが寄与して、S&P500 株価指数は 2010 年以降で
70% 上昇しました 3。企業の売上高の伸びが勢いに欠け、
世界的に株価の割高感が強まる中で、
投資家はどこに注目すべきでしょうか?
2016 年に入り、世界的にリスクが再び脚光を浴びる中、「質」に焦点を当てることが必要だ
と弊社では考えています。言い換えると、バランスシートが強固で、資本調達コストを上回
る投下資本利益率を維持しており、かつ自社の強みを把握してそれにフォーカスすることの
出来る有能な経営陣を擁している、という企業に注目すべきだと考えています。
投資機会
典型的な
「コンパウンダー
(利益を増大させ続ける
企業)」であるクオリティ
企業や、長期的な企業価
値の向上につながる変革
に取り組んでいる企業に
注目
こうした芳しくない環境の中、弊社は成長の減速とデフレリスクを長い間懸念してきました。
しかしながら、「質」の高い企業に着目すれば、株式の投資リターン向上につながる可能性が
あるという見方は変えておらず、最近の株価下落で生じた投資機会について前向きに捉えて
います。弊社は、典型的な「コンパウンダー(利益を増大させ続ける企業)
」であるクオリティ
企業や、長期的な企業価値の向上につながる変革に取り組んでいる企業に注目しています。
典型的な「コンパウンダー」は特徴として、
広い「経済的な堀(競争優位性)
」を持っています。
競争力を保ちながら長期的に市場シェアを維持することができ、多くの場合、市場の低迷期
を乗り切るには最高のポジションにいます。さらに、レバレッジが適正水準にある強固なバ
ランスシート、安定したキャッシュフロー、高い投下資本収益率という傾向があり、経済環
境に左右されない根強い需要があるビジネスを手掛けている、というケースも多く見られま
す。非中核事業のリストラや撤退など付加価値のある変革を進めながらも、市場ではポジティ
ブな収益拡大へ繋がるとは評価されていない企業が、投資機会をもたらす可能性があると考
えています。
Factset、
ブルームバーグ、2016年2月
SG Cross Asset Research/Equity Quant、
トムソン・ロイター・データストリーム
3
Barclays US Equity Strategy Report“The End of Financial Engineering?”
、2016年2月29日
1
2
7
グローバル・インテリジェンス 2016年 4月号
もう一つ投資機会となりうるのが、「退屈ディスカウント(クオリティ企業ではあるが、
『退
屈な』事業を行っているとみなされ、市場から低い株価倍率を与えられている)
」銘柄の発掘
です。市場の評価との間に乖離が生じている点に、
まさに弊社が考える投資機会が生じており、
それは、クオリティ株式投資とバリュー株式投資の要素が重なり合う点と言えます。このよ
うな観点から、ヘルスケアや生活必需品セクター内で、安定した質の高い企業に大きな投資
機会があると見ています。また、継続的なキャッシュフローを生み出すコア・ビジネスを有し、
低成長もしくはゼロ成長下でも収益率の改善が可能なポジションにいる企業にも、引き続き
注目したいと考えています。
リスク・シナリオ
レバレッジ水準が過度に
高い企業に対しては、慎重
なスタンスを維持
堅実なビジネス・プランを持ち、自社の市場でのポジションを正しく理解している質の高い
企業には、現在の環境が有利に働く可能性があります。逆に、質の面で劣る企業は、今後数ヶ
月でさらに状況が厳しくなる可能性があります。
弊社は質の高い企業に注目しているため、投下資本収益率をプラスで維持できない企業につ
いては懐疑的な見方をしています。同様に、レバレッジ水準が過度に高い企業や、株価を押
し上げるために自社株買いに依存している企業に対しても、慎重なスタンスを維持します。
セクター・地域別では、市場の低迷が長引いているコモディティ・セクターに加え、厳しい
環境が続く新興国株式や欧州の金融セクターについて、引き続き慎重な見方をしています。
注目ポイント
中国が景気減速をいかにコ
ントロールできるかどうか
が、引き続きグローバル市
場のリスク要因
8
▪︎ 中国が景気減速をいかにコントロールできるかどうかが、引き続きグローバル市場のリス
ク要因となっています。
▪︎ 中央銀行が政策を誤ると、適切でない資産配分やリスクのミス・プライシングが生じる可
能性があります。
▪︎ デフレの兆候がないかどうか、引き続き注視します。
グローバル・インテリジェンス 2016年 4月号
アジア株式見通し
ロナルド・CC・チャン
アジア株式運用部門 チーフ・インベストメント・オフィサー
市場概況
各国政府は、景気減速懸
念に対し、金融緩和策や
景気刺激策に加えて、供
給サイドの構造改革など
一連の措置を継続して実
施
アジア・太平洋地域(日本を除く)の株式市場は不安定な値動きを見せていますが、弊社で
は 2016 年の同地域の見通しについては楽観的に見ています。各国政府は、金融緩和策や景
気刺激策に加えて、供給サイドの構造改革など一連の措置を実施し、景気減速と向き合って
来ました。このため、過去数四半期に渡り囁かれて来た過度な悲観論は、徐々に収束に向か
うのではないかと弊社では考えています。世界の投資家は、アジア・太平洋地域(日本を除く)
における直近の不確実性の高まりから、同地域への投資を極力控えて来たという背景があり
ます。同地域が何らかの回復の兆しを見せる過程において、外国人投資家の資金の再流入が
見込まれるのではないかと考えています。
投資機会
中国政府は、サービス業
主体の消費主導型経済
へ の 転 換 を 進 め ると同
時に、過剰生産を抑制す
る政策に取り組んでいる
が、景気の減速は当面続
くと想定
現在の市場環境を鑑みると、個々の企業のファンダメンタルズ分析を実施し、経済成長が困
難な環境の中で成長を遂げる魅力ある企業を発掘するには良い機会であると考えています。
同時に、利益成長が相対的に低く、財務体質が脆弱な同業他社を見極める良い機会であると
も考えています。
中国政府は、サービス業主体の消費主導型経済という産業構造への転換を進めると同時に、
過剰生産を抑制する政策に取り組んでいますが、景気の減速は当面続くと考えています。そ
の中で弊社では、マクロ経済環境に左右される事なく、高い利益成長が見込まれる魅力的な
企業を発掘する事に照準を絞って行く考えです。
地域的には、北アジアとインドについては引き続き強気な見方をしており、東南アジアにつ
いては、同地域の経済状況を注意深く見守っている状況です。但し、インドネシアについて
は楽観的に見ており、同国における追加利下げとインフラ投資拡大に向けた取り組みが期待
されます。
9
グローバル・インテリジェンス 2016年 4月号
$
OIL
US
メイン・シナリオではない
が、
リスク・シナリオとして
米国金利の急激な上昇リ
スクを注視。金利上昇が
米ドルや原油価格にも影
響を及ぼし、新興国から
先進国市場への資金移動
をもたらす可能性
リスク・シナリオ
当社では、米国の金利上昇リスクを注視しています。金利の急激な上昇は、結果として米ド
ルや原油価格にも影響を及ぼし、新興国から先進国市場への資金移動をもたらす可能性があ
ると考えています。しかしながら、このような金利上昇はメイン・シナリオとしては想定し
ていません。潜在的リスクは他にも存在すると想定していることから、複数のリスク・シナ
リオを念頭に置いています。また、地政学的リスクやグローバルでのレバレッジ解消の動向
を注視する必要があると考えています。
注目ポイント
アジア地域のインフラ・
プロジェクトを中心とした
予算の執行状況に着目
10
▪︎ アジア・太平洋地域(日本を除く)の各国政府が予算案を執行に移し、その中でも特にイ
ンフラ・プロジェクトの計画が予定通り遂行されるかについて着目しています。
▪︎ 商品価格の下落と不安定な為替相場を背景に、同地域の中央銀行による今後の金融緩和政
策の姿勢、中国政府による今後の財政政策を注視しています。
▪︎ 南アジア諸国において国内需要の回復が期待されることに加え、インドネシアやインドに
おける中央政府主導の景気刺激策の内容に着目しています。
グローバル・インテリジェンス 2016年 4月号
日本株式見通し
エドワード・リッチー
日本株式シニア・インベストメント・アナリスト
BoJ
日本の経済指標は引き続
き弱く、中央銀行の政策
の方向性は新たな懸念材
料に
市場概況
2016 年に入っても、日本や世界各国の経済指標が弱く、市場も不安定なことは、2015 年
と変わりません。これに加えて中央銀行の政策の方向性も新たな懸念材料となっており、持
続している主要国通貨の不安定さを、円高も含めて注視する必要があります。こうした不安
定な時期に、日本株式には売り圧力がかかっています 1。
日本経済は、2015 年 10 − 12 月期の GDP が、民間消費の弱さを主因に年率 1.1% のマイ
ナス成長となりました 2。インフレ率もプラスを維持したとはいえ、1% を下回る水準で推移
しており、多くの分野で需要が減少しています。例えば、直近の住宅着工は低迷基調です 3。
日本銀行(日銀)は、景気拡大の促進とインフレ率 2% という目標の達成を目指して、マイ
ナス金利導入を 1 月末に発表しました 4。
そのほか、景況感を知る指標として興味深いのは機械受注ですが、内容は強弱混在しています。
工作機械の国内受注は 2015 年に前年比 18% 増と、日本企業が引き続き堅調であることを
示していますが、海外企業からの受注は前年比 11.7% 減と落ち込んでおり 5、不安材料となっ
ています。
投資機会
4月の電力小売自由化が
電 気 料 金 低 下 につ な が
り、他分野の消費を間接
的に押し上げる可能性
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設需要が引き続き追い風となって
います。特筆すべきは、観光客増加に対応するためのセキュリティ関連分野ですが、鉄道や
道路への設備投資も恩恵を受けると思われます。また、中国からの訪日観光客が引き続き強
いトレンドを示していることは心強く、中国経済が従来よりも減速しているにもかかわら
ず、2015年は前年比100%を超える伸び率となっています6。
4月の電力小売自由化が電気料金低下につながり、他分野の消費を間接的に押し上げる可能
性もあります。そのほか、先日合意に至ったTPP(環太平洋経済連携協定)による農産品等
の関税引き下げが見込まれ、その結果として食料品価格が低下することで、家計所得の中で
裁量的支出に回せる割合が今後徐々に増加する可能性がある、と弊社では引き続き考えてい
ます。
市場データ出所は全てブルームバーグ、2016年3月4日現在
(別途記載がある場合を除く)
内閣府
「2015年10-12月期GDP2次速報値」
、2016年3月8日
3
国土交通省
「新設住宅着工
(2016年1月度)
」
4
日本銀行
「『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』の導入」
、2016年1月29日
5
日本工作機械工業会
「工作機械受注統計
(2015年)
」
6
日本政府観光局
「2015年訪日外客数と出国日本人数」
1
2
11
グローバル・インテリジェンス 2016年 4月号
リスク・シナリオ
一段の金融緩和により、
円高という意図しない結
果が生じ、輸出セクター
の業況は悪化
日銀がマイナス金利を導入したものの、期待通りの効果(景気に対する信頼感の上昇)は現
れていないと弊社では見ています。一方で、一段の金融緩和によって、円高という意図しな
い結果が生じ、輸出セクターの業況は厳しくなっています。また、マイナス金利環境が長引
けば、金融セクターの業況が更に厳しくなる、簡単に言えば銀行の利益確保が難しくなると
も弊社では考えています。
すでに述べたように、インフレは比較的抑制されており賃金も期待ほど伸びない状況が続く
一方で、失業率の低さ 7 や求人倍率の高さ 8 は、労働市場の堅調さが続いていることを示し
ています。後者は理論的には賃金を押し上げるはずですが、こうした不一致が続いている点
は気掛かりです。日本では、2020 年開催の東京オリンピック・パラリンピックなどのイベ
ントを支えるため、また、より長期的かつ重要な目的としては高齢化社会を支えるため、よ
り多くの労働力が必要とされています。日本の厳格な移民政策により、労働力に関するリス
ク要因があると弊社では考えています。
注目ポイント
労働力の高齢化:2050年
には、日本は高齢者もし
くは子供1人を、わずか1
人の現役世代が支える人
口構成に
7
▪︎ 内需を下支えしている要因、例えば上述の労働市場の堅調さなどは、それほど長期的・
継続的なものではありません。インフレ関連指標に注目し、需要の上向く兆候がないか
どうかを注視する必要があります。
▪︎ 日銀の追加金融緩和:足元の市場は、今後数ヶ月内のさらなる量的緩和を織り込んでい
ます。また、日銀は、市場の活性化やマネーサプライの拡大を目的として、ETF(上場
投資信託)の買入れを継続しています 9。
▪︎ 労働力の高齢化:2050 年には、日本は高齢者もしくは子供 1 人を、わずか 1 人の現役
世代が支える人口構成となります 10。こうした人口動態トレンドは、日本の経済や資本
市場、政策に大きく関わってきます。
総務省統計局「労働力調査(2016 年 1 月度)
」
厚生労働省「職業安定業務統計(2016 年 1 月度)
」
9
日本銀行「『設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するための指数連動型上場投資信託受益権買入等にかかる適格とする指数に関する基準
等の細目』の制定について」
、2016 年 3 月 15 日
10
ウォール・ストリート・ジャーナル“Graying Japan Tries to Embrace the Golden Years”
、2015 年 11 月 29 日
8
12
グローバル・インテリジェンス 2016年 4月号
グローバル債券見通し
ダニエル・ジャニス、
グローバル債券運用部門ヘッド
トーマス・ゴギンズ、グローバル債券運用部門シニア・ポートフォリオ・マネージャー
市場概況
世界経済の成長について
楽観的に見ているが、中
国経済及び市場のボラテ
ィリティ上昇への懸念が
広がりつつあることから、
やや慎重な見方に
MEXICO
メキシコに投 資 機 会:良
好なファンダメンタルズ
を反映
弊社は引き続き、今後の世界経済の成長について楽観的に見ていますが、中国経済及び市場
のボラティリティ上昇への懸念が広がりつつあることから、ここ数週間でやや慎重な見方に
傾いています。米国経済は、比較的強い雇用や住宅関連指標が示すとおり、一人勝ちの様相
を見せているため、FRB(米連邦準備制度理事会)が追加利上げを非常に穏やかなペースな
がら進めると考えています。また金融政策は、中国、日本、欧州の 3 地域と米国とでは異な
るステージにあり、弊社では、各国金融当局の政策の乖離によりボラティリティの高い環境
が継続するとの見方を維持しています。
投資機会
弊社は、エマージング債券及びクレジットには慎重なスタンスをとり、ディフェンシブ・セ
クターを中心に魅力的な銘柄を選別して投資を行います。メキシコおよびフィリピンについ
ては、良好なファンダメンタルズが、投資機会をもたらすと思われます。地方債や ABS(資
産担保証券)セクターにおいては、質が高く流動性も潤沢な新規発行銘柄への投資を通じて、
ポートフォリオの分散を進めることが可能になると見ています。また弊社では、ハイイール
ド債券に対する楽観論は行き過ぎであると見ており、全般的には、質の高い銘柄を重視した
ポジションが有効だと考えています。
リスク・シナリオ
各国中央銀行による金融
政策の方向感の違いか
ら、
ボラティリティが上昇
各国中央銀行による金融政策の方向感の違いから、ボラティリティが上昇、リスク要因になっ
ていると弊社では考えています。また、政治的なリスクも高まっており、英国での EU 離脱
(Brexit)を問う国民投票や 2016 年後半の米国大統領選を考慮する必要があるほか、欧州で
は、春から夏にかけて移民問題がエスカレートする可能性もあります。原油価格に関しては、
減産が実施されるか減産の合意に至れば、上振れリスクが生じるかも知れません。
注目ポイント
▪︎ 低金利環境では、引き続き分散投資が課題となります。
マイナス金利動向を注視
▪︎ 選挙運動で「熱い夏」となる可能性があります。
▪︎ マイナス金利の動向を注視します。
13
グローバル・インテリジェンス 2016年 4月号
米国債券見通し
ハワード・グリーン
米国債券運用部門ヘッド
市場概況
成長率や雇用面で引き続
きポジティブな材料があ
り、FRBによる緩やかな追
加利上げを想定
グローバル経済の軟化とボラティリティ上昇を受けた、“セーフ・ヘブン”(資産の安全な逃
避先)としての米国長期国債に対する需要は継続しています。米国経済は、GDP 成長率 1
や雇用面 2 など引き続きポジティブな材料があり、FRB(米国連邦準備制度理事会)は緩や
かなペースながらも追加利上げを実施することが見込まれます。米国短期国債は、利回りが
FRB の利上げ動向に強く左右されるため、魅力が低下しています。市場の不安定さは、総じ
て脆弱な状態にある欧州・中国経済や、エネルギー価格の低迷によるものです。米国債券市
場は供給過剰となっており、不安定さは今後も変わらないと見ています。なお、インフレ率
は依然として低水準で推移しています。
投資機会
バリュエーションが割安
で、比較的流動性のある
米国の投資適格社債セク
ター内での選別投資を継
続
米国国債は、相対的に利回りが低く、それほど魅力的とはいえません。弊社は引き続き、バリュ
エーションが割安で、比較的流動性のある米国の投資適格社債セクターに投資機会があると
見ており、魅力的な銘柄を選別して投資する方針です。また、好調な個人消費や住宅市場の
恩恵を受けるセクター内にも、個別に魅力的な投資機会があると見ています。
リスク・シナリオ
FRBが金融政策の正常化
を進める中、デュレーショ
ン・リスクを懸念
FRB が金融政策の正常化を進める中、デュレーション・リスク(金利変動に伴う債券価格変
動リスク)が懸念されます。過去数四半期と同じく、ボルカー・ルールなどの規制でマーケッ
トメイクが難しくなっており、発行金額の小さい社債の流動性リスクは懸念材料です。また、
消費動向は比較的堅調で、所得を貯蓄やバランスシートの強化にまわすよりも、積極的な消
費への姿勢が見て取れます。この点が 2016 − 17 年の世界景気回復にどう影響するかも注
目されます。
注目ポイント
米国大統領選の動向を
注視
▪︎ 政局−米国大統領選の動向: 候補者のスタンスが左右両極にあるため(右派:ドナルド・トラ
ンプ氏、左派:バーニー・サンダース氏)
、興味深い展開に。
▪︎ 低迷する物価と賃金上昇率の動向
▪︎ FRB による追加利上げ動向
1
2
米国商務省:
“Fourth Quarter and Annual 2015 (Second Estimate)”
、2016 年 2 月 29 日
米国労働省労働統計局:
“Employment Situation Summary”
、2016 年 3 月 4 日
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グローバル・インテリジェンス 2016年 4月号
カナダ債券見通し
テリー・カー
カナダ債券運用部門ヘッド
BoC
カナダ中銀は、”二速経済”
がともに失速するならば、
今 後 数ヶ月 で 政 策 金 利 を
0.25%に引き下げる可能性
市場概況
カナダ債券市場では、不透明感が引き続き重石となっています。世界の経済成長の足並みが揃
わず、コモディティ価格の低迷が、コモディティ生産者側、つまり資源国に影響を及ぼしています。
カナダ経済は、コモディティ価格、特に原油価格の変動に左右されやすくなっています。カナダ
中央銀行は政策金利である翌日物金利の誘導目標を 0.5% で据え置きましたが 1、いわゆる“二
速経済”
(低迷するエネルギー・資源セクターと、比較的好調なその他セクターとに二極化して
いる経済状況)がともに失速するようならば、今後数ヶ月で政策金利を 0.25% に引き下げる可
能性があると弊社では見ています。コモディティ生産者が集中するアルバータ州やサスカチュワ
ン州で厳しい状況が続く一方、オンタリオ州やケベック州はコモディティ価格下落でもたらされる
カナダドル安によって、比較的良い状況にあります。全体としては、世界的に経済成長が不安視
されているため、各国の中央銀行による政策の余地、特に FRB(米連邦準備制度理事会)によ
る利上げ余地については、今年は限定的なものとなりそうです。
投資機会
カナダ国債が、相対的に
「質
の 高い」セクターであると
の見方を継続
カナダ国債が、世界の“セーフ・ヘブン”
(資産の安全な逃避先)の中でも、相対的に「質の
高い」セクターであるという弊社の見方は変わりません。カナダの債券市場は、比較的高い流
動性と非常に強固な銀行システムに支えられていると考えています。今後の経済成長への懸念
から、ボラティリティは高い状態が続くと見ていますが、金融、公益、石油パイプライン関連セ
クターの社債は、利回りの観点から、魅力的なリターンをもたらす可能性があります。
リスク・シナリオ
住宅市場バブルと消費者債
務の増加で、カナダ中銀の
金融政策に左右されやすい
状況
中国経済減速に伴う一連のリスク、原油価格の低迷、欧州の移民問題が、火種となる可能性が
あります。国内消費は、住宅市場でバブルが発生し、消費者債務が増加しているため、カナダ
中銀の金融政策の動向に左右されやすい状況です。また、今後数年間は、公共投資の為の資
金調達や歳入減を埋めることを目的とした、地方債の発行が増える可能性が高いと弊社では見
ています。この場合、仮に調達コストが増加すれば、地方政府の財政赤字が拡大して、新たな
リスク要因となるかもしれません。社債市場の流動性が全般的に不足していることも、引き続き
懸念材料です。
注目ポイント
CANADA
原油価格の上昇が、カナダ
経済の地域的な不均衡の改
善に寄与
1
▪︎ 2016 年米国大統領選挙:選挙戦が熱を帯びており、ポピュリズム的な主張が増えています。
▪︎カナダ経済の地域的な不均衡は、原油価格上昇が小幅なものでも、僅かながら改善される可
能性があります
カナダ中央銀行:
“Bank of Canada maintains overnight rate target at 1/2 percent”
、2016年1月20日
15
グローバル・インテリジェンス 2016年 4月号
アジア債券見通し
アンドレ・ペダーセン
アジア債券運用部門チーフ・インベストメント・オフィサー
RM
アジア債券市場参加者の
関心は、米ドル高から人民
元のボラティリティへ
市場概況
2016 年におけるアジア債券市場参加者の関心は、米ドル高から人民元のボラティリティに
移っています。中国経済に対する不透明感の高まりがアジア債券市場にボラティリティの高
まりをもたらしている状況は、まさに中国がくしゃみをすればアジアを含む世界全体が風邪
を引くという状況にあります。このような環境下ながら、アジア債券の年初来パフォーマン
ス 1 は、世界の金融市場のボラティリティが高まる中、新興国市場の中でも比較的堅調に推
移しています。これは、アジア債券市場が新興国市場の中でも、(1)経済のファンダメンタ
ルズが強固であることを背景に、アジア諸国の殆どのソブリン債の格付が投資適格級で維持
されていること、
(2)一部の地域で進められた経済改革の進展により、経済の持続的発展が
期待されていること、などが挙げられます。
投資機会
良好な経済ファンダメン
タルズを背景に、インドネ
シアに対する投資家セン
チメントは改善
1
2
ブルームバーグ、
2016年3月10日
インドネシア中央銀行、
2016年3月17日
16
インドネシアでは、インフレ懸念の後退、経常収支赤字額の安定化、財政規律の改善など良
好な経済ファンダメンタルズを背景に、投資家センチメントは改善しています。インドネシ
ア中央銀行は、今年に入り 2 会合連続 2 で利下げを決定、また、経済成長を下支えするため、
金融緩和政策を継続する方針を示しています。また、インドネシア政府による規律ある効果
的な財政政策や、インフレに対する迅速な対応が評価され、年後半には S & P 社によるイン
ドネシア国債の格上げが期待されます。世界の金融市場のボラティリティが高まる中、アジ
ア現地通貨建債券は適切な選別の下で投資機会があると考えています。特に、インドネシア
の社債には投資機会があると考えています。
グローバル・インテリジェンス 2016年 4月号
リスク・シナリオ
更 なる中 国 経 済 の 減 速
は、中国企業への格下げ
圧力となり、デフォルト率
の上昇に繋がる可能性も
アジア債券市場における中国経済の重要性の高まりは、否定できません。また、適格外国機
関投資家(QFII)制度を通じた投資資金の移動制限を緩和する計画を発表したことは、中国
経済の重要性をより一層高めることになりました。中国経済に対する不透明感や人民元のボ
ラティリティ上昇の可能性は、アジア債券市場にはリスク要因となります。アジアにおける
域内貿易の縮小や不安定な為替相場による影響は、地域経済および金融市場を通じてアジア
地域全体に波及すると考えています。中国経済の減速が長引けば、中国企業への格下げ圧力
となり、デフォルト率の上昇に繋がる可能性もあります。
注目ポイント
フィリピン大統領選挙に
おける各候補者の支持率
拮抗により、今後の政策
の方向性に不透明感
▪︎ 適格外国機関投資家(QFII)制度の緩和: 中国は適格外国機関投資家の投資額や資金の
国外持ち出しに関する制限を緩和し、外国人投資家に対して中国本土債券市場の門戸を拡
大しました。これにより、今後、中国債券市場により多くの資金が流入することが予想さ
れます。
▪︎ 人民元: 中国が現行の管理フロート制(管理変動相場制)から実質的な変動相場制へと移
行し、国際通貨としての地位を確立する過程で、人民元相場のボラティリティや近隣諸国
通貨への影響を注視します。
▪︎ アジア地域の地政学的リスク: 朝鮮半島情勢が緊迫化する中、今後の見通しや投資家セン
チメントの動向を注視します。
▪︎ 2016 年フィリピン大統領選: フィリピン大統領選の選挙活動が始まりましたが、各候補
の支持率は概ね拮抗しており、接戦が予想されます。今後の選挙動向とそれに伴う政策変
更の兆候がないかどうかを引き続き注視します。
17
グローバル・インテリジェンス 2016年 4月号
日本債券見通し
津本啓介
マニュライフ・アセット・マネジメント株式会社 取締役 債券運用部長 兼 クレジット調査部長
市場概況
ネガティブ・キャリーとロー
ルダウン効果の不確実性
から、金利リスクの対価は
低下かつ不安定化
BoJ
マイナス金利の債券を全
面的に回避すべきと考え
るのは早計
1 月末に開催された金融政策決定会合において、日本銀行(日銀)は新たに「マイナス金利付き
量的・質的金融緩和」を導入しました 1。政策変更の発表後、債券市場では全ての年限で急激な
金利低下が起こりました 2。イールドカーブ上の多くの年限で国債利回りがマイナスに沈み、債券
投資を通じて金利リスクやクレジット・リスクを取ることの対価が不透明になりました。ネガティブ・
キャリーとロールダウン効果の不確実性から、金利リスクを取ることの対価は低下かつ不安定化し
ました。また、クレジット・スプレッドが信用リスクや流動性リスクのモノサシとして機能せず、国
債利回りのマイナス水準によって変化してしまうため、クレジット・リスクを取ることの対価も不透
明になりました。
投資機会
ただしマイナス金利の債券を全面的に回避すべきと考えるのは早計です。マイナス金利の債券
でも、その後の金利の動き次第でプラスのリターンになる可能性もあるためです。例えば、マ
イナス金利の債券を購入後、さらに市場金利のマイナス幅が大きくなれば、ネガティブ・キャリー
を上回るキャピタル・ゲインが期待できます。
リスク・シナリオ
マイ ナ ス 金 利 環 境 で は、
現物債券投資の対価が不
安定に~デリバティブの活
用が不可欠に
マイナス金利環境では、現物債券投資を通じて金利リスクやクレジット・リスクを取ることの対
価が不安定になります。しかしデリバティブの活用等を通じて投資対象・投資手法の多様化を
図ることで、効率的なポートフォリオ構築や取引コストの抑制が可能となり、ポートフォリオの
リターンを補完・向上させることができます。マイナス金利環境においては、債券投資におい
てデリバティブを活用することがもはや不可欠と考えられます。
注目ポイント
消費税増税再延期となれ
ば日本のソブリン格付へ
の影響も
▪︎ 金融政策 : 債券市場は日銀が政策金利を更に引き下げることを織り込んでおり、焦点は時期
と下げ幅となるでしょう。
▪︎ 機関投資家の投資行動 : マイナス金利下で銀行や生命保険など機関投資家の投資行動は変
化を余儀なくされると思われます。より長い年限の国債、社債、株、REIT、外債等への資
金シフトがどの程度の規模で見られるかに注目が集まります。
▪︎ 参院選 : 7 月の参院選にあわせた衆院解散・総選挙や消費税増税再延期の思惑が出ており、
日本のソブリン格付への影響等が懸念されます。
1
2
日本銀行:
「『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』の導入」
、2016 年 1 月 29 日
市場データ出所はすべてブルームバーグ、2016 年 3 月 4 日時点(別途記載がある場合を除く)
18
マニュライフ・アセット・マネジメントについて
Manulife Asset Management は、カナダのグローバル金融サービス企業である Manulife Financial Corporation の資産運用ビジネ
ス部門です。運用拠点はカナダ、米国、英国、日本、香港を含む世界 16 ヵ国・地域に構え、伝統的資産からオルタナティブに至るまで多
岐にわたるグローバル投資戦略をご提供しています。
グローバル・オフィス一覧
トロント
ボストン
Manulife Asset Management Limited
200 Bloor Street East
Toronto, Ontario, M4W 1E5
Canada
TEL:+1-416-852-2204
Manulife Asset management (US) LLC
197 Clarendon Street
Boston, MA 02117
United States
TEL:+1-617-375-1500
ロンドン
ボストン(実物資産運用/森林・農地投資)
Manulife Asset Management (Europe) Limited
18 St Swithin’
s Lane
London, EC4N 8AD
United Kingdom
TEL:+44-20-7256-3500
Hancock Natural Resource Group
99 High Street, 26th Floor
Boston, MA 02110-2320
United States
TEL:+1-617-747-1600
東京
香港
マニュライフ・アセット・マネジメント株式会社
〒100-0005
東京都千代田区丸の内1-8-1
丸の内トラストタワーN 館15 階
TEL:03-6267-1940 (セールス・顧客サービス部) Manulife Asset Management (Asia)
16/F, The Lee Gardens
33 Hysan Avenue
Causeway Bay, Hong Kong
TEL:+852-2910-2600
上記以外のアジアにおける資産運用拠点一覧
• 中国(北京市) Manulife TEDA Fund Management Company Ltd.
• 台湾
Manulife Asset Management (Taiwan) Co., Ltd.
• シンガポール Manulife Asset Management (Singapore) Pte. Ltd.
• インドネシア PT Manulife Aset Manajemen Indonesia
• マレーシア
Manulife Asset Management Services Bhd
• タイ
Manulife Asset Management (Thailand) Co., Ltd.
• ベトナム
Manulife Asset Management (Vietnam) Co., Ltd.
• フィリピン
The Manufacturers Life Insurance Co. (Phils.), Inc.
日本における資産運用業務の展開
日本における資産運用業務は、 1999 年にマニュライフ・ファイナンシャル・コーポレーションが旧第百生命保険との生命保険事業における合弁
を開始したことにさかのぼります。 弊社の前身はマニュライフ生命保険会社の資産運用部として保険資産を中心とした業務を行なってきましたが、
2004 年に投資顧問会社 MFC グローバル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社(※)として設立、 国内の資産運用ビジネスに参入
し、 年金基金を含む機関投資家向けの投資一任業務を開始いたしました。今日弊社では、マニュライフ・グループの保険資産のほか、 年金基金を
はじめとする機関投資家のお客様向けに国内債券および日本株式を 5 年超に亘り運用しているほか、 近年実物資産としての注目の高いグローバル
森林投資やグローバル農地投資、また成長期待の著しいアジアにおける債券および株式運用、さらにモーゲージ証券等を活用した債券ソリューショ
ン戦略商品をご提供しています。
(※ 2011 年 1 月 11 日に社名を変更、マニュライフ・アセット・マネジメント株式会社となる)
日本国内向け主要運用戦略一覧
<株 式>
日本株式クオンツ・アクティブ(バリュー型)
グローバル株式
アジア太平洋小型株式
<債 券>
<オルタナティブ>
日本債券アクティブ・コア
日本債券ストラテジック・アクティブ
グローバル債券
エマージング債券
アジア債券アクティブ
証券化資産
バンクローン
グローバル森林投資
グローバル農地投資
ディスクレーマー
本資料は情報の提供のみを目的として作成されており、特定の商品について勧誘・販売を行うものではありません。また、作成時における信
頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、適時性 , 信頼性、完全性を保証するものではありません。また、
資料に掲載された過去の実績等は将来の結果を約束するものではありません。
投資一任契約に関する留意事項及び投資対象となる有価証券等に係るリスク
投資一任契約はお客様から金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部の一任を受け、その投資判断に基づきお客様のために投
資を行うのに必要な権限を委任されお客様の財産を運用する契約です。当該契約に基づき投資を行う場合、資産種目ごとのリスクは以下のと
おりです。投資対象資産の種類や投資制限、投資対象国等によりリスクの内容や性質が異なります。なお、以下はすべてのリスクを網羅した
ものではありません。
① 株式
株式市場および投資先となっている企業の株価が下落するリスクがあります。株式市場全般における株価が下落する場合や株式の発行体の業績
が悪化した場合には、 投資先の株価が下落し、 損失が生じることがあります。
② 債券
金利の上昇により債券価格が下落した場合や発行者の信用状況の悪化等の場合に損失を被ることがあります。従って投資一任契約のもとで投資
した元本は保証されているものではなく、 欠損が生ずるおそれがあります。
③ 証券投資信託受益証券
組入れた有価証券等の値動き(外貨建証券の場合には為替市場の変動の影響も受けます)や当該有価証券発行者の信用状況の悪化等によ
り基準価額が下落し、 損失を被ることがあります。従って投資元本は保証されているものではなく、 欠損が生ずるおそれがあります。クローズド
期間がある証券投資信託受益証券については、クローズド期間中は換金することができません。
④ 外国籍ファンド(外貨建)
組入れた有価証券等の値動きや当該有価証券発行者の信用状況の悪化、 為替相場の変動(組入れた有価証券がファンドの表示価格と異なる場
合)等により、基準価額(表示通貨建)が下落し、損失を被ることがあります。また、表示通貨での基準価額が元本を割り込んでいない場合でも、ファ
ンドの基準価額の表示通貨と円との為替相場の変動により、 円換算時に損失を被ることがあります。従って資本元本は保証されているものでは
なく、 欠損が生ずるおそれがあります。クローズド期間があるファンドについては、クローズド期間中は換金することができません。
⑤ 為替リスク
為替変動により外貨建資産の円換算価値が下落することがあります。外貨建資産を保有する場合、円高局面では円換算により資産価値が減少し、
損失を生じる場合があります。
⑥ 金利変動リスク
金利変動により公社債等の価格が下落するリスクがあります。一般に金利が上昇した場合には、 既に発行されて流通している公社債等の価格は
下落し、 損失が生じる場合があります。
⑦ 信用リスク
有価証券等の発行体が財政難、 経営不振、その他の理由により利息又は償還金をあらかじめ決められた条件で支払うことができなくなる(債務
不履行)リスクをいいます。この場合、 有価証券の価格が大きく下落することが予想され、 損失が生じることがあります。また、 発行体の信用
力に対する市場参加者や格付機関の見方が悪化することにより、 有価証券の価格が下落することがあり、 損失が生じることがあります。
⑧ 流動性リスク
有価証券等を売却(または購入)しようとする際に、 需要(または供給)がないため、 有価証券等を希望する時期に希望する価格で売却(ま
たは購入)することができなくなるリスクをいいます。一般的に、規模が小さい市場での売買や、取引量の少ない有価証券等の売買にあたっては、
このリスクが大きくなります。また、 一般的に市場を取り巻く市場環境の急変があった場合には、 市場実勢価格での売買ができなくなる可能性が
高まります。市場での流動性が低下する場合、 有価証券等の価格が下落し、 損失を生じる場合があります。
⑨ カントリーリスク
投資先となっている国の政治・経済・社会・国際関係等が不安定な状態、 又は混乱した状態に陥った場合に、 当該国における資産の価値や当
該国通貨の価値が下落するリスクをいいます。このような国に投資している場合、 有価証券の価格低下、 通貨下落等により、 損失を生じる場合
があります。
⑩ カウンターパーティリスク
取引の相手方の倒産等により、 意図した取引ができなくなるリスクをいいます。債務不履行が生じたり、 契約を履行するコスト等により損失が生
じる可能性があります。
⑪ 投資手法・対象に伴うリスク
空売り、 貸し株、 各種スワップ、コール・プットオプション、 株価指数オプション、 差金決済取引、 先渡し取引、その他のデリバティブ取引など
の投資手法を用いるリスク、 確定利付証券、 未公開・譲渡制限付・非流動性証券、 償還制限証券、 財務状況の困難な企業に投資するディスト
レス投資など投資対象に伴うリスクなどにより損失が発生する可能性があります。
⑫ レバレッジリスク
少額の投資により、 高い投資効果を得るためにレバレッジを利用することがあります。高い効果が得られる反面、 想定が外れた場合多額の損失
を被る可能性があります。さらに、 先物証拠金等においては、レバレッジによって元本を超えた投資を行う結果として、 元本超過損失が生じる
可能性があります。またこのレバレッジの比率は投資方針や国内外の市場環境の変化等により、 随時変えていきますので事前に表示することが
できません。証拠金はデリバティブ取引を行なう期間、 発注先証券会社の計算に基づき当社が妥当であると判断した金額を契約資産から預託し
ます。
⑬ 実物投資のリスク
森林あるいは農地投資は火災、 天災、 灌漑設備、 水源、 天候等、 実物投資特有のリスクが顕在化する場合があります。
⑭ 複合的なリスク
上述のリスクが複合的に重なり、 多岐にわたる未曾有のリスクが発生し、 想定外の元本超過損失が生じる場合があります。
マニュライフ・アセット・マネジメント株式会社との投資一任契約に際しお客様にご負担いただく報酬等は各種商品、サービス等により異なるため、
事前にその合計額または上限額等を表示することができません。投資一任契約の締結にあたっては、 必ず 「契約締結前交付書面」 や 「金融商品
販売法に基づく重要事項説明書」 等をご確認の上、お客様ご自身でご判断下さい。
本資料の著作権・知的財産権の一切の権利はマニュライフ・アセット・マネジメント株式会社に帰属しており、 弊社の書面での許可なく本資料を使
用またはその他の行為(複製、 改変、 譲渡、 貸与、 販売、 出版、 及び営業活動または営利を目的とする使用等すべて)を行うことを禁止させて
頂きます。
商 号: マニュライフ・アセット・マネジメント株式会社(金融商品取引業者)
登 録 番 号: 関東財務局長(金商)第 433 号
加 入 協 会: 一般社団法人 日本投資顧問業協会
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