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「第67回Liga国際ホメオパシー医学会大会」 開催報告

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「第67回Liga国際ホメオパシー医学会大会」 開催報告
一般社団法人日本統合医療学会(IMJ)#
12/12/19発行
発行:一般社団法人 日本統合医療学会 本部 〒113-0023 東京都文京区向丘1-6-2 Email : [email protected] FAX : 03-3812-5167
「 第 6 7 回 L i g a 国 際 ホメ オパ シ ー 医 学 会 大 会 」
開催報告
日本ホメオパシー医学会は「第67回Liga国際
ホメオパシー医学会大会」を世界32カ国から
318名(海外122、国内196:うちJPSH会員
164)の参加者を集め、2012年9月14∼17日の
4日間(於/奈良新公会堂)に亘って開催し、盛
会裡に終えることができました。
大会案内と抄録集
「Liga国際ホメオパシー医学会(LMHI:The Liga Medicorum Homeopathica Internationalis )」 はホメオパシーの安全性の確保と発展を目的として1925年に設立された
国際医療団体です。加盟国は世界70ヶ国に及び、近代西洋医学の教育を受けた医師、歯科
医師、薬剤師、獣医師からなる10,000名以上の会員を擁しています。毎年、国際大会を加
盟国がそれぞれ担当して開催しており、本大会で67回目となります。
私ども「日本ホメオパシー医学会」は日本における 正しいホメオパシー の普及を目的
として、医師、歯科医師、薬剤師、獣医師によって2000年に設立されました。現在、会員
は400名を越え、ホメオパシー認定医・専門医の育成、更には国際的なホメオパシーの学術
拠点(日本で唯一の「Liga国際ホメオパシー医学会」加盟団体)として、また、Faculty
of Homeopathy(英国)の日本で唯一の認定機関として活動しています。
学会設立2年目となる2002年には「Liga国際ホメオパシー医学会(LMHI)」に加盟
し、2004年には東アジア初の国際学会ホスト国に立候補しました。そして2012年、遂に
日本国内に止まらず、世界のホメオパシーが新しい歴史を刻み始める上で極めて重要なメ
ルクマールと成り得る本大会の開催が実現しました。
私どもは、東アジア地域で初の開催となる本大会のテーマを 和(Harmony) と定
め、西洋文化と東洋文化の 和 、ホメオパシーと現代医療における 和 、海外参加者と国
内参加者の人と人の 和 、そしてなにより『生老病死』『こころ』『からだ』『いのち』
の 和 :調和を目指しました。
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併せて、東アジア初となる医療従事者(医師、歯科医師、薬剤師、獣医師)を対象とし
たホメオパシーの国際医学会を日本で開催することによって、ホメオパシーを日本の医療
体系(近代西洋医学に基づいた現代医療)に取り入れる有用性・有効性を広く医療従事者
が理解し、延いてはホメオパシーの治療水準の向上に大きく貢献することを目的と致しま
した。
これらによって、これまで欧米を中心に普及してきたホメオパシーが日本を発信地とし
て広くアジアに普及し、東洋の医学との能動的連携や近い将来、統合医療の分野において
ホメオパシーが重要な役割を担える存在となることを当学会の活動目標の一つに掲げまし
た。
本大会の参加国は32カ国(Argentina / Armenia / Australia / Austria / Bangladesh /
Belgium / Brazil / CzechRepublic / Ecuador / Estonia / France / Gambia / Germany /
Greece / Hungary / India / Italy / Japan / Mexico / Nigeria / P.R.China / Pakistan /
Serbia / Slovenia / SouthAfrica / Spain / Switzerland / Thailand / The Netherlands /
U.K. / U.S.A. / Ukraine )に及び、発表数の合計は 93題でした(内訳:招待講演14、シ
ンポジウム13、口頭発表43、ポスター発表は21)。 プログラムは午前中が主に基調講演と招待講演、午後からはシンポジウム、口頭発表が
あり、獣医師部門と歯科医師部門はグループでの発表がありました。
基調講演は帯津良一大会長とLMHI会長の José Matuk 先生でした。帯津大会長は30年
に亘ってホリスティック医学を目指した医療に取り組んできており、その中でホメオパシ
ーがどのような役割を担ってき
たのか、またこれからどのよう
な可能性があるのかについて講
演を行い、José Matuk 先生は
LMHI加盟する70カ国のホメオ
パシーの現況について講演され
ました。
連日、午前中を中心に、海外
から9名、日本国内から3名の招
待講演がありました。
第67回Liga国際ホメオパシー医学会大会
委員長 帯津良一先生
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【海外からの招待講演】
1、ホメオパシーにおけるエビデンスに基
づいた医学(EMB)という観点から、王立
ロンドン統合医療病院の院長であり、英国
女王のホメオパシー主治医でもあるPeter
Fisher 先生が「Current Scientific Research in Homeopathy: An Overview」
と題した講演で最新のホメオパシーの科学
LMHI理事長
José Matuk 先生 (メキシコ)
的研究を詳細にお話しされました。
2、ベルギー連邦政府のホメオパシー委員
会会長Michel Van Wassenhovenは「Clinical Verification of Homeopathic Symptoms Using Evidence Based
Homeopathy」と題する講演を行われまし
た。ベルギーでは国民の6割以上がホメオパ
シーを認知し、全医師の5%にあたる3万人
の医師がホメオパシーを統合的に用いてい
王立ロンドン統合医療病院の院長
Peter Fisher 先生 (英国)
ます。今回はエビデンスに基づいたホメオ
パシーの教育についての講演でした。
3、プルービングに関する世界的な第1人
者で南アフリカのダーバン大学教授の
Ashley Ross先生による「Scientific Accountability in Homoeopathic Provings ‒
Methodological Insights into the
Experiment」では、新しいレメディに関す
るプルービングの実践や研究についての講
演がありました。
ベルギー連邦政府のホメオパシー委員会会長
Michel Van Waaaenhoven 先生
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4、ホメオパシーの実践という立場から、ドイツのホメオパシー専門医の第一人者でドイ
ツ政府からの勲章を受けておられるWolfgang Springer 先生の「Oligosymptomatic
Cases and Rare Remedies」では、いかに難しい症例であっても、その症例に対して有効
なレメディを選択し得る可能性があり、その為の戦略があるという教育的な講演がありま
した。
5、今大会のテーマである「和(Harmony)」に関連した発表として、JPSHの海外講師
でもあるグラスゴーホメオパシー病院(英国)のBob Leckridge先生による「Harmony
Through Integration」がありました。
6、日本独自の精神療法である森田療法の第一人者で国際森田療法研究会議代表の北西憲
二先生による「Morita Therapy and Homeopathy」の講演がありました。
7、心身の調和から自然、特に日本の自然を題材に、日本の心身医学におけるリーダーで
ある関西医科大学心療内科教授の福永幹彦先生による「The Nature of Japanese Islands
and the Japanese Psychosomatic Medicine」も大変興味深い内容でした。
8、これからの医療におけるホメオパシーの重
要性を踏まえ、日本における統合医療の最高指
導者である日本統合医療学会名誉理事長の渥美
和彦先生(東京大学名誉教授)による
「Integrative Medicine-Emergent in the 21st
Century Field of Medicine」という素晴ら
しい講演がありました。
日本統合医療学会名誉理事長 渥美和彦先生
9、獣医師からの講演では、国際獣医師ホメオパシー団体の会長である英国のPeter
Gregory先生による 「Harmony and Chaos: The Cancer Miasm and Carcinosin in
Animals」
10、米国のShelley R. Epstein 先生による「Case Reports, Case Series, and Clinical
Trials in Veterinary Homeopathy」の講演がありました。
11、薬剤師としてSteven Kayne先生による 「Patientium Homeopathicus - A Case
Study」という興味深い演題でした。
これら、7カ国の世界的なホメオパシー、統合医療、心身医学分野のそれぞれ第一人者
による招待講演は非常に実り多いものとなりました。
一方、シンポジウムでも世界中のホメオパシー専門医による多彩なトピックスに関し
て、熱心な発表が繰り広げられました。
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1)Politics in Homeopathy 「European Standard for the Provision of Homeopathic Medical Services」
Thomas Peinbauer (Austria)
「Increasing Positive Media Coverage for Homeopathy」
Sara Eames (U.K.)
2)Homeopathy in Integrative Medicine
「Finding Effective Remedies in Clinical Practice by Auriculohomoeopathy」
Charles Lee (Australia)
「The Effect of Rhus tox. on Restless Leg Syndrome in Dialysis Patients」
Akira Kawashima, Takahiko Sato (Japan)
3)Approaches to the Patients with Allergy
「Homeopathy, Evidence Based Medicine and Allergy. The example of
Arsenicum Album」
Michel Van Wassenhoven (Belgium)
「Homeopathy for Japanese Cedar Pollinosis: A Randomized, Double Blinded,
Placebo Control Trial」
Koji Hozawa, Tsuyoshi Kitanishi, Saori Tamba, Ryouichi Obitsu, Ronko Itamura,
Tatsutaka Yamamoto, Hisako Takeda, Hideki Ishijima, Akihiro Ishibashi, Keiko Kobayashi, Misaki Fukushima, Kaoru Kobayashi, Hiroto Koike, Yuuko Kawashima,
Nahoko Mita, Mari Doi, Katsuhiko Fukuda, Keiko Shirotani, Toshiyuki Watanabe,
Ayumi Horie (Japan)
4)Approaches to the Patients with Psychiatric Disorder
「Olibanum Sacrum: From the Autistic Withdrawal to the Pathological Fusion」
Hélène Renoux (France)
「Homeopathy for Thirty-one Depression Cases Using a Three-Step Indication
of Recovery」
Ronko Itamura (Japan)
5)Homeopathic Education
「Use of LM/Q Potencies in Atopic Dermatitis」
Renzo Galassi (Italy)
「A Case of Idiopathic Thrombocytopenic Purpura」
Ulrich D. Fischer (Germany)
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6)Homeopathic Practice by Pharmacists
「Homeopathy Around the World ‒ A Legal Perspective」
Lee Kayne (U.K.)
また、これらの発表と並行して、15日午後のグループ発表では招待講演者の2人の獣医
師を中心に獣医におけるホメオパシーの取り組みとして「 がん や てんかん など難治性
疾患に対するホメオパシー」に関する発表がありました。
また16日午後はブラジルのGeraldo Ribeiro 先生と Gloria André ighelstein 先生、日
本からは福岡先生と神先生によって、歯科医師によるホメオパシーの取り組みに関する発
表と活発な議論が行われました。
4日間の大会中、それぞれの発表に対する質疑応答も多くなされ、その意味に於いても
本大会は各国のホメオパシー研究者の交流の場として、大変有意義なものとなりました。
また、会期中の早朝、大会会場近くに広がる芝生の庭で帯津大会長による気功の実演と
指導も行われました。
ご存知の方も多いと思いますが、ここ数
年、日本に於けるホメオパシーを取り巻く
状況には非常に厳しいものがあります。と
りわけ、2年前に 医師ではないホメオパシ
ー治療者(自称ホメオパス) が引き起こ
した死亡を伴う医療事故は、単に医療関係
者のみならず、マスメディアを通じて多く
の日本人にホメオパシーに対する否定的な
印象を強く抱かせる結果となりました。
能楽会場 (招待講演、シンポジウム)
私たちは、このような状況下で敢えて
東アジア初となる、医師、歯科医師、薬
剤師、獣医師によるホメオパシーの国際大
会を開催したことには、以下の2つの重要
な意義があると考えています。
1つ目は、加盟70カ国から成るLMHIの
科学的、臨床的な発表を日本ホメオパシー
医学会のメンバーだけでなく、広く日本で
医療に関わる皆さんにも知って貰うこと。
第1会議場(一般演題:口頭発表)
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2つ目は、日本文化に根差した私たち日
本人がどのようにホメオパシーを理解
し、近代西洋医学に基づいた現代医療
と 調和・Harmonize させることによっ
て如何にして統合的に実践しているのか
を諸外国のホメオパシーの治療者に知っ
て貰うということです。
私たちは本大会を通じて、ホメオパシ
ーを俯瞰的視点から理解することが現代
医療との有機的な 調和・Harmonize 、
統合をもたらし、まさにそれこそが未来
の医療へと繋がるパラダイムシフトと成
り得ることを確認し合い、そして、この
パラダイムシフトこそが既存の医療の枠
組みを越え、文化・社会、延いては人類
の幸福に貢献できるものであると確信す
るに至りました。
そこで、私たちは本大会のホスト国と
して「第67回Liga国際ホメオパシー医学
会大会」の閉会式に於いて 2012奈良宣
言 の提案を行いました。
第67回Liga国際ホメオパシー医学会大会
2012奈良宣言
そして、その宣言は満場一致で採択さ
れ、LMHI国際会議に参加した各国代表
の署名を得ることができました。
この事からも、本大会が日本における
ホメオパシーの歴史の新たなる扉を開い
たと感じております。
しかし、世界的な課題として解決すべ
きものも決して少なくないというのが実
情で、その代表的な課題として挙げられ
るのがホメオパシー治療者の資格問題で
す。
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2012奈良宣言 に対する各国代表の署名
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12/12/19発行
現在、世界の80カ国以上でホメオパシーは通常の医療の一つとして用いられていますが、
治療者の資格に関しては国ごとに規制やシステムが異なっています。
具体的には、フランス、イタリア、スペイン、オーストリア、ロシアなど17カ国ではホメ
オパシーによる施術は医師のみに許されていますが、一方でイギリスやドイツ、スイスなど
は医師資格を持っていない治療者(ホメオパス)も認められています。その為、後者の国々
では、ホメオパシー治療者が必要以上に現代医療を遠ざけるというケースも発生しており、
弊害としてホメオパシーへの逆風が強くなっているのも事実です。特にイギリスではホメオ
パシーへのバッシングが強く、国民健康保険の適用を制限しようとする動きもあります。
しかし、それでも日本の現況とは大きな隔たりがあるのです。そもそも、日本にはホメオ
パシーに関する法的規制が存在していないのです。従って、行政による治療者の峻別が全く
なされていないのです。
その為、当然のようにホメオパシーの治療に使われるホメオパシー薬(通常レメディと呼
ばれる)も諸外国と異なって医薬品として認められておらず、副作用がなく安全なサプリメ
ントや健康食品として認識されているのです。
その結果、日本ではホメオパシーがどのような治療であるとか、その安全性や危険性、有
効性、経済性といった根源的で非常に重要な問題を一切論じないままでホメオパス養成の民
間団体やスクールが乱立しているというのが現実なのです。その為、日本で正しいホメオパ
シーが普及する為に越えなければならない課題は山積しており、その第一歩となるのが『先
ずは、ホメオパシーを正しく理解する』というものなのです。
今回のホメオパシーの国際大会が一人でも多くの医療関係者が「ホメオパシーがどのような
医療であり、どの様な可能性があり、そして、これからの医療にどの様な貢献ができるのか」
という問題を考える切っ掛けになることを期待しつつ、日本ホメオパシー医学会は日本に於け
る「正しいホメオパシーの普及と発展」に更なる努力をして参りたいと考えております。
【文責:大会副会長・日本ホメオパシー医学会専務理事 板村論子】
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