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自己評価報告書(全編)

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自己評価報告書(全編)
東海学園大学
目
次
Ⅰ. 建学の精神・大学の基本理念、使命・目的、大学の個性・特色・・・・・ 1
Ⅱ. 東海学園大学の沿革と現況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
Ⅲ.「基準」ごとの自己評価
基準1
建学の精神・大学の基本理念及び使命・目的・・・・・・・・ 5
基準2
教育研究組織・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
基準3
教育課程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
基準4
学生・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
基準5
教員・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55
基準6
職員・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65
基準7
管理運営・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70
基準8
財務・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76
基準9
教育研究環境・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・81
基準10
社会連携・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・87
基準11
社会的責務・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95
東海学園大学
Ⅰ. 建学の精神・大学の基本理念、使命・目的、大学の個性・特色
Ⅰ. 建学の精神・理念・目的・特色
1. 建学の精神・基本理念
東海学園を構成する本東海学園大学をはじめとして、東海中学校、東海高等学校及び東
海学園高等学校の各校は、法然上人の開いた浄土宗の教理に拠って立ち、仏教精神を根柢
においた人間教育を行うことを目的としている。明治22(1889)年に開校して以来8万人余
の学園全体の卒業生は、「勤倹誠実」を校訓とした教育を受け巣立っている。
本学は上述の学園の建学の精神に基づき、各校共通の「勤倹誠実」の信念をバックボー
ンとして、なにごとにもまじめな姿勢で物事に対応することを学生に求め、かつ学生も精
一杯の力をもってこれに応えることで、人間教育・「人間力」を育てる教育を実践してい
る。また、本学の教育理念として同じく浄土宗の教理に発する「共生」がある。近年、人
間と環境との共生が重視されているところであるが、
本学がいう共生はただ単なる
「共存」
ではない。仏典の「共生往生」に由来し、生まれ変わりながらリフレッシュしていく人間
の生長をいう。各々が不完全なものであっても、相互関係を持つことによりお互いに啓発
しあい、補い合って前進する、明日に向かって進んでいくということである。
2. 使命・目的
本学の使命は、建学の理念から発し、「幅広い職業人養成」機関として、社会的ニーズ
に応えつつ「総合的教養教育」を重視する大学を目指すことである。手短かに言えば、「社
会から求められている総合的教養を持つ社会人・職業人」の育成である。その「総合的教
養教育」の根幹は、本学の教育理念である「共生」であって、「共生の観点に立つ人間力
の向上」をめざした教育を行うということである。
各学部ともこの使命を自覚して教育に当たっているが、経営学部(経営学科)は、「人
間生活と社会に貢献する企業・組織経営の基本を教育する。併せて、高邁な人格と高いコ
ミュニケーション能力を培う総合的教育を行い、確かな知識・技能を身に付けた人材の養
成を目指す。」としている。
人文学部は、「人文学及び教育・保育学の研究成果に基づき、人間の心理・行動・発達
の解明、コミュニケーション能力の向上及び社会と文化の理解を通じて人間教育を行う。
特に、人文学科においては地域社会の諸方面で職業人として活動する実践力を備えた人材
を、また発達教育学科においては小学校・幼稚園教員及び保育士等として子どもの発達を
支援する人材を養成する。」
人間健康学部は「健康社会の実現に貢献できる人材の育成を目指す。人文、社会、自然
科学等を多角的、総合的に学び健康社会の構築に不可欠な人間らしさを追求する。人間健
康学科は人間生活の基盤である『からだ・健康づくり』の担い手の育成を目標とする。管
理栄養学科は国民の健康保持増進に貢献できる栄養士、
管理栄養士の養成を目標とする。
」
(以上、【資料F-3】「東海学園大学学則」第2条の2)
大学院では、「広い視野に立って精深な学識を授け、専攻分野における研究能力又は高
度の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を養うこと」(【資料F-3】「東海学園大
学大学院学則」第2条)を目的とし、この目的を達成するための教育目標として、「経営
1
東海学園大学
学諸分野の理論及び実践の教育研究を行い、豊かな学識と高度な研究能力を有する研究者
及び現代社会の要請する諸課題に高度な知識を持って対処しうる高度専門職業人の養成」
を掲げている(同上第3条の2)。
3. 個性・特色
これまで世界経済を動かしてきた市場原理のみによっては、現在の世界が抱えている問
題、例えば人口、環境、資源・エネルギー、食糧、高齢者福祉などの問題を解決すること
はできない。現在の我々の生活には一定の物質的な満足感はあるが、一方で、本来あるべ
き人間としての心の豊かさを失いつつある。本来、人間は物質的に満たされるにしたがっ
て、精神面でのゆとりが生まれるべきである。
このように考えて東海学園は「人間教育」を主張して、平成7(1995)年度に東海学園大学
を開学し、経営学部経営学科を設置した。経営学部での理念の柱を、「人間経営学」と表
現している。経営学を通して「人間が本当に人間らしく生きていくこと」という「共生」
の理念に立った「人間教育」を実践し、人間尊重が何よりも大切と考える教育を展開して
いる。
また、「人間教育」という本学園の使命を考えたとき、①人間の存在そのもの、②人間
の創りあげてきた文化、及び③人間と人間の関係を取り結ぶべきコミュニケーションにつ
いて探求するための新たな学部の設置が必要であると考えるに至り、東海学園女子短期大
学を改組転換し、平成12(2000)年度に人文学部を設置した。次いで、平成16(2004)年度に
は人間の健康を科学的・総合的に究明し、すべての人が健康に生きることの実現に寄与す
ることを目的として人間健康学部人間健康学科、同管理栄養学科を設置した。これらの学
部・学科も経営学部同様、「共生」の思想に立った「人間教育」を実践してきている。さ
らに平成20(2008)年度には人文学部に発達教育学科を設置し、「人間教育」が子どもの教
育・保育の段階から必要であると考え、保育、幼児教育及び初等教育における教員・保育
士養成を目指すことにした。
このように、本学の取り上げる学術分野は広い範囲にわたっているが、個人・集団・企
業・地域社会・国際社会の各レベルでの人間性の深い認識に立った職業人を養成し、人間
の活動を支える身体機能・栄養・環境等の各面での専門的知見・技術を習得させるなど、
いずれも「人間教育」を共通のキーワードとして授業や指導が展開されている点に特色が
ある。
2
東海学園大学
Ⅱ
東海学園大学の沿革と現況
1.本学の沿革
明治 21(1888)年 11 月
明治 22(1889)年 4 月
明治 25(1892)年 3 月
明治 42(1909)年 9 月
昭和 22(1947)年 4 月
昭和 23(1948)年 4 月
昭和 37(1962)年 4 月
昭和 39(1964)年 4 月
昭和 43(1968)年 4 月
昭和 46(1971)年 4 月
昭和 63(1988)年 11 月
平成 7 (1995)年 4 月
平成 12(2000)年 4 月
平成 13(2001)年 4 月
平成 16(2004)年 4 月
平成 17(2005)年 4 月
平成 20(2008)年 4 月
平成 20(2008)年 11 月
浄土宗学愛知支校として認可
浄土宗学愛知支校開校
愛知支校(同区の建中寺へと移転し、建中寺境内
に校舎が完成)
旧制東海中学校と改称し、一般の青少年にもその
門戸を開く。
新制東海中学校開校
新制東海高等学校がスタートし、新学制による現
代教育体制が整う。
東海女子高等学校を開校
東海学園女子短期大学(入学定員:家政科 50 人、
英語科 50 人)を開学
国文科を開設(入学定員:50 人)
家政学科・英文学科・国文学科に名称変更
学園創立 100 周年
東海学園大学を開設、経営学部経営学科の一学部
で開設
東海学園女子短期大学を改組し、人文学部人文学
科を開設
経営学部経営学科収容定員増(200 人→230 人)
東海学園大学大学院経営学研究科修士課程の開
設
東海女子高等学校が男女共学化により東海学園
高等学校に校名変更
東海学園女子短期大学を東海学園大学短期大学
部に名称変更
人間健康学部を開設し人間健康学科と管理栄養
学科を設置
東海学園大学短期大学部学生募集停止
人間健康学部人間健康学科収容定員増(190 人→
250 人)
人文学部発達教育学科を設置
人文学部人文学科収容定員減(250 人→200 人)
学園創立 120 周年
3
東海学園大学
(平成 21 年 5 月 1 日現在)
2.本学の現況
大学名:東海学園大学
所在地:愛知県西加茂郡三好町福谷西ノ洞 21-233(三好キャンパス)
愛知県名古屋市天白区中平二丁目 901(名古屋キャンパス)
愛知県名古屋市中区大須 4-1-21 久屋南 KT ビル 9F (栄サテライトキャンパス)
構 成:
大学院
研
究
科
名
専
経営学研究科
大
攻
名
学生数(人)
14
経営学専攻(修士課程)
学
学
部
名
学
科
名
学生数(人)
経営学部
経営学科
1,046
人文学部
人文学科
1,024
人間健康学部
発達教育学科
142
人間健康学科
1,056
管理栄養学科
346
3,614
計
教員数
学
部
教
授
専
任
教
員
准教授
講
師
助
教
計
助手
兼任
教員
経営学部
12
12
2
1
27
0
64
人文学部
27
12
7
1
47
0
121
人間健康学部
15
9
5
2
31
9
141
計
54
33
14
4
105
9
326
託
パート
派
職員数
正職員
56
嘱
30
4
遣
18
4
計
108
東海学園大学
Ⅲ.「基準」ごとの自己評価
基準1. 建学の精神・大学の基本理念及び使命・目的
1-1 建学の精神・大学の基本理念が学内外に示されていること。
《1-1の視点》
1-1-① 建学の精神・大学の基本理念が学内外に示されているか。
(1)1-1の事実の説明(現状)
本学は「学校法人東海学園寄附行為」(→【資料F-1】)第4条によって設置されてお
り、同法人の設置に係る東海高等学校、東海学園高等学校及び東海中学校を含めて、おの
おの「教育基本法及び学校教育法並びに私立学校法に従い、浄土宗の教理に基づく仏教精
神によって学校教育を行うことを目的とする。」(第3条)と定められている。旧寄附行
為では単に「仏教精神によって」とされていたが、平成18(2006)年私立学校法の改正に伴
い寄附行為を改訂した際、「浄土宗の教理に基づく」の一句を加え、本学園が法然上人の
開いた浄土宗を根柢とするものであることを明示した。
三好キャンパスには、東海学園を象徴とする殿堂として「明照殿」があり、その名は浄
土宗の宗祖法然上人の遺徳をたたえる諡号のひとつに因むものである。本学をはじめ、東
海学園の各校には、「学校法人東海学園学監綱要」に基づき、浄土宗の教理の普及とその
実践に係る事項について各校の長を補佐し、
さらに学校法人全体の協力推進に当たるため、
理事長の任命による「学監」をおき、就任者は浄土宗の認証を受けている。
大学学則においては、「東海学園創立の精神を基本として、勤倹誠実の信念と共生の理
念とをもって学問の修得とその応用・活用の基礎的能力の把握に努め、国際社会において
わが国の果たす役割の重要性を認識し、もって社会の発展と文化の向上に寄与する人物の
育成を目的とする。」(第1条)と、大学の基本理念を表現している(→【資料1-2】)。
全学生が参照する『学生便覧』には、東海学園の沿革と理念が、①「共生の思想を支え
る8万人の同窓」②「地域社会へ貢献する建学の精神」及び③「人と文化をリンクさせる
人間力教育」の3つの見出しの下に、簡潔に説明されている(→【資料1-4】)。学則に
ついては、同じく学生が日常参照する『履修の手引き』に掲載している(→【資料F-5】)。
用語について一言すると、学園の掲げる「共生」は、「ともいき」と訓ずるのが伝統的
であるが、近年は「きょうせい」と音読することも多く行われている。その意味について
は本報告書Ⅰ-1で述べた。「人間力教育」は、一般に言われている「人間教育」「人格
形成」と本質的には異ならないが、「真面目にこつこつ努力する姿勢」と、「社会的体験
を通じて身についていく自律性」を育てることに力点をおいている。
学園の理念の社会への発信としては、学園紹介冊子“Profile of Tokai Gakuen”(学内通
称「四校パンフレット」)、高校生を主な対象とする大学案内パンフレット、高校の進路
指導担当教諭を対象とする学生募集説明会、またホームページ・ポスター・新聞広告等を
通じて、「学園の120年の伝統」「共生」「人間力」等をキーワードに選んで、建学の精
神と大学の基本理念が理解されるよう努めている(→【資料1-1、1-3】等)。また、学
校法人としては『東海学園学報』を刊行し、法人ホームページにも掲載し、沿革・理念を
含め学園全般について広報活動を行っている。
5
東海学園大学
なお、大学の校歌は本学園を構成する東海高等学校及び同中学校と共通であり、校章も
いずれも浄土宗の宗門校であることを象徴するデザインとなっており、学園としての精神
的・人的な結びつきを大切にしていることを社会にアピールしている。
本報告書の表紙に掲げる大学のロゴマークは、双葉の上に3色の球が弾む姿で、学部ご
との個性をそなえた学生たちが、社会に根を下ろし、共通の大きな生命力に支えられて発
展していく姿を表そうとしたものである。
(2)1-1の自己評価
建学の精神及び大学の基本理念は、統一的かつ簡明に表現されており、印刷物により捉
え方が異なるなどの問題点は見られない。
今日学外から大学について知ろうとする人びとは、まずホームページにアクセスするの
が普通であろう。ただ、学外への公表という点から見ると、本学公式ホームページに学則
が掲載されていないのは不備である。その点で大学の理念・構成・教育課程等について客
観的な資料を得るには不足の感がある。
(3)1-1の改善・向上方策(将来計画)
学則のホームページ掲載もしくはリンク設定をはじめ、高校生や在学生向きの情報に偏
することなく、大学全般に係るより広い視野からの叙述を補いたい。
また、本学は建学の理念の根柢に宗教をおいているが、今日、宗教に特別の関心をもた
ない青年、あるいは漠然とした反発を感じている青年が多いところから、説明にも工夫が
必要であり、仏教精神に立つ大学で学ぶことの意義をアピールする手だてをさらに研究し
ていきたい。
1-2 大学の使命・目的が明確に定められ、かつ学内外に周知されていること。
《1-2の視点》
1-2-① 建学の精神・大学の基本理念を踏まえた、大学の使命・目的が明確に定め
られているか。
1-2-② 大学の使命・目的が学生及び教職員に周知されているか。
1-2-③ 大学の使命・目的が学外に公表されているか。
(1)1-2の事実の説明(現状)
本学の建学の精神及び大学の基本理念が学校法人寄附行為及び学則第1条において明示
されていることは前節1-1-(1)で述べたところであるが、大学固有の使命・目的は、同じ
く学則第1条第2項において、「前項の目的のため、本学は共生教育を基礎とする総合的な
教養教育により人間性の涵養に努め、社会的要請に応えて幅広い職業人の養成を行い、ま
た必要な免許・資格を取得させる。」と定めている(→【資料1-2】)。
これは、さきに「学問の修得とその応用・活用の基礎的能力」「社会の発展と文化の向
上に寄与する人物の育成」とされていたところを、教育課程を念頭においてさらに具体的
に展開したものとなっている。学則に挙げられている総合的な「教養教育」「職業人養成
教育」「免許・資格関連教育」の進め方と内容については、基準3の項を参照されたい。
6
東海学園大学
特に本学の特色とする「共生教育」は教養教育の柱であり、理念にとどまらず具体的な授
業展開がなされているので、同じく後述する。
前節1-1を承けて本学における「キーワード」とその位置づけをあえて図式的に整理す
れば下記のようになる。
表1-2-1 本学の諸キーワードとその位置づけ
キーワード
位置づけ
備考
仏教精神
建学の精神
共生
大学の理念
「校是」とも呼ぶ
勤倹誠実
校訓
「信念」とも呼ぶ
人間教育・人間力教育
教育方針
「体験して、強くなる」などと
も表現
幅広い職業人の養成
人材養成目標
つぎに視点②から見ると、まず教職員が本学の使命・目的について自覚を深めることが
先決であるから、新任教員の研修会(→基準5-4)、職員研修(→基準6-2)の機会など
を利用して周知に努めている。
学生に対しては、抽象論ではなくて、各種の学内行事やガイダンスを通じて、建学の精
神はもとより、本学の使命について体験的に理解が形成されるよう工夫をしている。
学内行事としては、入学当初に新入生全員及び全教員参加(事務職員も一部参加)によ
る「祖山参拝」を実施している。祖山とは本学の拠って立つ浄土宗の総本山知恩院を指す。
宗門を同じくする京都市の仏教大学の協力を得て営まれる音楽法要に参加し、学生が宗祖
法然上人に入学報告と今後の学習の努力を誓うと共に、講話などを通じて浄土宗の教えと
建学の精神を理解させることを趣旨としている。この祖山参拝は人間健康学部は4月の新
入生ガイダンス期間中に、経営学部と人文学部は例年おおむね5月中旬に実施している。
また、三好キャンパス中心であるが、毎年4月第2土曜日には大学の行事の一環である「花
まつり」
に学生を参加させており、
各種イベントによる地域住民との交流をまじえながら、
仏教の現代的意義の理解の機会を設けている。
卒業式直前には、「帰敬式」に参加させている。仏式に則り、学生に仏法僧に帰依する
ことの意義を知らしめ、自信をもって実社会に巣立つよう促す儀式である。
これらの行事に際しては、ガイダンスやゼミを通じてそのつど学生にその意義を知らせ
ているが、『学生便覧』にも解説されている(→【資料1-4】)。
本学の目的を学生に自覚させる機会は、入学時・卒業時には限らない。最近例としては、
平成21(2009)年5月、名古屋キャンパスで学長による講演「悪因悪果」と映画「GATE」上
映の会を開催した。全学生を対象とするほか、市民の参加も得た。「GATE」は原爆投下
後の広島で採火された「原爆の火」を、米国にある世界初の核実験場に運んで消し、平和
を祈る日本人僧侶らを追った作品である。
7
東海学園大学
(2)1-2の自己評価
大学の使命・目的が文言やイメージとしてだけではなく、各種の行事を通じて学生や地
域住民に実感をもって理解が得られるよう努力していることは、
評価できると考えている。
また、各種の社会連携活動を通じて(→基準10で詳述)、地域社会から本学の個性・特色
についての評価を得ていることが、広報活動の役割を果たしている。
(3)1-2の改善・向上方策(将来計画)
前節 1-1-(3)に準ずる。
[基準1の自己評価]
建学の精神、大学の使命・人材養成目的については、ときどきの社会情勢に流されるこ
となく、一貫した姿勢で公表・周知に努力してきている。入学者に対しても、「体験して、
強くなる」「共生は、あいさつから」など、くだいた表現とその実践を通じて建学の精神
を理解させる努力を重ね、一定の成功をおさめている。本学の個性・特色についても、学
生の入学状況、卒業生の就職状況などを考え合わせ、広く地域社会から理解が得られてい
ると自己評価している。
[基準1の改善・向上方策(将来計画)
]
大学の理念・目的の周知は、長期的に見れば卒業生が地域社会でどのように働き、どう
評価されていくかによって検証されていくことになるので、今後も、学園の伝統の尊重、
同窓ネットワークの強化、大学と地域社会との連携の3点に特に留意していく。
8
東海学園大学
基準2. 教育研究組織
2-1 教育研究の基本的な組織(学部、学科、研究科、附属機関等)が、大学の使命・
目的を達成するための組織として適切に構成され、かつ、各組織相互の適切な
関連性が保たれていること。
《2-1の視点》
2-1-① 教育研究上の目的を達成するために必要な学部、学科、研究科、附属機関
等の教育研究組織が、適切な規模、構成を有しているか。
2-1-② 教育研究の基本的な組織(学部、学科、研究科、附属機関等)が教育研究
上の目的に照らして、それぞれ相互に適切な関連性を保っているか。
(1)2-1の事実の説明(現状)
本学の学部・学科・研究科及び附属機関の一覧は下図の通りである。附属機関について
は管理上独立性のあるものを掲げ、事務局の下にある単なる施設は掲載しなかった。
図 2-1-1 教育研究組織図(学部・学科・研究科・附属機関)
(三好キャンパス)
大学院経営学研究科
(三好キャンパス)
経営学部
〈経営学科〉
(名古屋キャンパス)
人文学部
〈人文学科・発達教育学科〉
大 学
(三好キャンパス)
(名古屋キャンパス)
人間健康学部
※1
〈人間健康学科・管理栄養学科〉
※人間健康学科は 1・2 年次生
三好キャンパス、
3・4 年次生名古屋キャンパス
図書館
学生生活支援センター
エクステンションセンター
情報教育センター
教職センター
共生文化研究所
本学は学部・学科制をとっており、現在 3 学部・5 学科を置いている。小規模ながら総
合大学を目指しており、現在、文科系に属する人文学部及び経営学部から、化学や生命科
9
東海学園大学
学の知識を基礎として健康づくりを学ぶ人間健康学部のような理科系色彩の強い学部にま
でわたっている。大学院は経営学研究科経営学専攻のみで、「学部上積み」型となってい
るが、学部の附属物視することなく、大学院の自律性を尊重している。
学部・学科・研究科の学生数・専任教員数等の現状は本編Ⅱ-2(4 ページ)に略述し、
データ編表 F-5、 F-6 に詳細を示している。各学部・学科ともそれぞれの専攻分野を教
育研究するに必要な教員数、施設設備を有していることは、本編基準 5-1、 9-1 の項に
記すとおりである。
経営学部は本学が最初に設置した学部で、三好キャンパスに立地する。経営学科を置き、
1 学部 1 学科の教育組織となっている。その後大学院経営学研究科(修士課程)が設置さ
れ、大学院の講義・研究指導は三好キャンパスの他、社会人学生の便宜をはかり栄サテラ
イトキャンパスでも一部の授業を行っている。(注 「栄サテライトキャンパス」とは名
古屋市中区のビルの一角にあり、いわゆる「駅前大学院」施設であるが、大学院の授業に
さしつかえない限り社会教育施設としても利用している。)
人文学部は旧東海学園女子短期大学の改組転換により男女共学制として設置され、短期
大学校舎のあった名古屋キャンパスに置かれている。当初「人文学科」のみであったが、
人文学の成果の教育・保育面への発展として同地に「発達教育学科」を増設し、現在は 2
学科構成となっている。
人間健康学部は本学で 3 番目の学部であり、設置当初より「人間健康学科」「管理栄養
学科」の 2 学科制をとっている。名古屋キャンパスで発足したが、人間健康学科は、スポ
ーツ科目のための施設がより充実している三好キャンパスに移転することを決定し、現在
進行中である。平成 21(2009)年度現在、学年によって二か所で授業が行われている。
経営的には各学部独立採算の考え方をとっており、各学部とも、適切な学生数の確保と、
教育の充実にそれぞれ努力している。上述のような設置の経緯もあって各学部の独立性の
意識はかなり高いが、改組転換やカリキュラム改革に伴って必要が生じた場合は、教員の
学部・学科間移動が円滑に実施されている。また、教員の他学部授業担当も過大負担とな
らない範囲で一部において実施している。
学生募集はすべて学部・学科単位となっているが、「学内併願」も可能である。第二志
望学部(学科)制は、採用していない。転学部・転学科についても 1 年次生、2 年次生に
かぎり選考のうえ認められることがあり(学則第 21 条)、規程も整備されているが(【資
料編 2-3】のうち「転学部・転学科に関する規程」)、実例は少ない。
学生の他学部授業履修は学則(第 29 条)により可能となっている。
各学部・学科の教育課程については基準 3 の節で詳述するが、学部がカリキュラム運営
の責任を負うのは当然としても、いずれの学部も学部固有の「専門科目群」以外の、例え
ば「教養・基礎科目群」等は、全学の担当教員グループと学部との連携がなければ実際に
は開講できない。したがって協議・調整のうえ授業担当者を定めており、自ずから組織間
の連携が保たれている。(注 「教養・基礎科目群」については本編 3-2 で説明。)
学生の日常の生活指導面については、各学部教授会の下に置かれる「学生生活委員会」
が担当しているが、
キャンパスごとに学部合同で会議を開き、
統一的な指導を図っている。
また、大学評議会では学部長から「各学部教授会の審議状況」を報告する慣例があり、
情報の共有に努め、必要な場合は全学または学部間協議に入るようにしている。これによ
10
東海学園大学
って、「他学部で実行している良いことは進んで取り入れる」ことが実現した例も多い。
例えば、必要授業時間数の厳格な確保、キャップ制の導入、GPA(Grade Point Average)
制の導入、定期試験における遅刻厳禁などは、全学の連携の下に各学部が改善を進めたも
のである。
附属施設として、以下のような学内共同教育研究機関もしくは共通サービス機関、及び
研究所が設置されている。
(ア)附属図書館
附属図書館は、管理規程上は一本であるが、キャンパスが二か所にまたがる関係上、本
館-分館制で運用されている。名古屋キャンパス図書館が本館であり、三好キャンパス図
書館を分館としている。利用者はいずれの館の資料も利用できることはもちろんである。
運用の便宜から、それぞれの館ごとに教員と図書館職員の構成する図書館運営委員会があ
り、図書館業務全般を審議している。図書館長は規程により選出され、大学評議会のメン
バーとなって大学の管理運営に参画している。分館には、分館長をおいている。詳細は【資
料 2-3】『東海学園大学図書館概要(平成 20(2008)年度版)』を参照されたい。
(イ)情報教育センター
各学部が正課として実施する情報教育関連科目(「教養・基礎科目群」の一部を成す)
の運用に当たり、担当者の人選、必要な施設設備について責任を負っている他、学内ネッ
トワークの管理にも当たっている。センター長は教員から選ばれ、「情報教育センター運
営委員会」で、情報教育関連科目のカリキュラムと担当者、情報関連施設・設備の運用上
の方針などを審議している。三好キャンパスには分室を置いている。
(ウ)学生生活支援センター
三好・名古屋キャンパス共に、主にメンタル・ヘルスに係る学生相談室を置いて心理相
談を行っているが、「学生生活支援センター」は学生相談室の運営に関わる全学組織であ
り、教員をセンター長とし、主に教員から成る「学生生活支援センター運営委員会」で基
本的事項を審議している。
(エ)教職センター(教職指導室)
本学ではどの学部も課程認定を受けており、将来初等・中等教育の教員を志望する学生
が多く、近年増加傾向にある。「教職センター」は、教育実習の計画や教員採用試験対策
の指導に当たる部署として設置された「教職指導室」の発展したものである。センターと
しての規程は整備中である。
(オ)エクステンションセンター
本学の提供する社会教育活動(→基準 10-1 で詳述)のうち、主に栄サテライトキャン
パスで実施される社会人対象講座の立案と推進に関わっており、教員から成る「エクステ
ンションセンター運営委員会」を置いている。実務については、事務組織としての「生涯
学習推進室」が担当している。
(カ)共生文化研究所
本学の校是とする「共生」の理念を深めるための研究組織であるが、現在のところ、独
立の施設がなく、全学共通科目である「共生人間論講義」及び同「実習」の進め方につい
て検討している。
11
東海学園大学
(2)2-1の自己評価
本学の十数年の歴史の間にも、社会情勢、志願者の動向、他大学との競合関係などの変
動はいちじるしいものがあるが、本学としては、社会的ニーズに応えつつ建学の理念を展
開し得てきたと自己評価している。学部・学科レベルでも、高校生の志向の変化に対して
は、カリキュラムの改革や新任教員の重点的充足によって対応し得ており、教育研究組織
の構成及び規模の面から言えば、現システムによって教育目的をおおむね達成できている
と考えている。
大学設置基準を充たしているとはいえ、各学部・学科の規模自体は大きくはないので、
一般教育もしくは教養教育については、各学部の協力体制や、各種全学会議体の調整機能
に待つところが大であるが、この点でも学部間連携が保たれている。
学内共同利用施設については、キャンパスが二か所に分かれているという問題点はある
が、上述のように分館や分室を設け、格差が生じたり、学生や教職員に不便を感じさせた
りしないよう工夫が施されている。
各種学内センター及び類似組織は、活動内容から見ればそれぞれ所期の目的をほぼ達成
しているが、教育組織であるのか、それとも事務組織の運営に教員が関わっているのかあ
いまいなケースもあり、責任の不明確につながる恐れもあるので、検証と見直しが必要で
ある。
(3)2-1の改善・向上方策(将来計画)
各種学内センター及び類似組織を「全学共同利用機関」として明確に位置づけるべく、
平成21(2009)年度中に必要な規程整備を終える予定である。教員・事務職員とも兼務者が
多くなっており、人事面での裏づけも検討課題となっている。
2-2 人間形成のための教養教育が十分できるような組織上の措置がとられている
こと。
《2-2の視点》
2-2-① 教養教育が十分できるような組織上の措置がとられているか。
2-2-② 教養教育の運営上の責任体制が確立されているか。
(1)2-2の事実の説明(現状)
本学の教養教育の内容については基準3-2の節で述べるので、ここでは組織上の位置づ
けと運営体制について概要を示す。
本学ではすべての学部・学科が開講科目を①「教養・基礎科目群」②「専門科目群」③
「演習科目群」及び④「免許・資格関連科目群」に四分している。少人数教育により、か
つ学生の個人指導を重視している③も人間形成に深く関わっているが、ここでは狭義の教
養教育として①を想定して述べる。
本学はもともと教養部もしくは一般教育部などと呼ばれる組織を立てておらず、数年お
きに学部が順次整備された経緯もあって、教養教育の責任主体は各学部となっている。カ
リキュラムに関わる事項は教授会において実質審議され、規則改正を伴うものは大学評議
会において決定される。時間割、担当者等教養科目の具体的運用は各学部の「教務委員会」
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東海学園大学
において、教務課との協議により準備し、「教学委員会」での事前検討を経て、教授会の
了承を得て実施している。(教学委員会規程・各種委員会規程→【資料2-3】)
但し、本学の教養教育に含まれる外国語教育や、情報処理教育については学部に専門の
教員が配置されていないケースが多いので、全学の関連分野教職員と学部教務委員会の協
議調整のうえ教育プログラムを組んでいる。
教養教育の重要性については全学の共通認識になっているが、大多数の学生が資格・免
許取得を目指す学科においては、法令による必置科目・必修科目がきわめて多いため、専
門科目群との兼ね合いにおいて、教養科目が「押し出され」やすい傾向がある。この点、
教養教育が十分にできる条件設定として、一定の全学合意事項が必要であると考え、平成
18(2006)年度より、全学委員会として教員及び事務職員から成る「全学教育委員会」(規
程→【資料2-3】)を設置し、全学のカリキュラムに関わる改革の方向を審議し、大学評
議会に随時報告・提言している。全学委員会の提言に基づき整備された、あるいは進行中
の事項で教養教育に関わるもののみを選んで挙げると、つぎのようになる。
(ア)各学部で従来まちまちであった「授業科目群」分類の統一を平成21(2009)年度入
学生カリキュラムから実施。これによって教養教育の範囲と内容が明確になった。
(イ)上記(ア) を承けて、履修機会の保障と時間割作成の簡素化のために「時間割の
ブロック化」を図る。目下調整期間にあり、平成22(2010)年度末までに完了する。ここで
いうブロック化とは、一定の科目群のための時間帯を設定し、例えば同一時限に教養科目
と専門科目が重なって学生が履修に迷うような事態を避ける時間割編成を指す。
(ウ)教養科目に属する科目の単位計算方法は、全学統一とした。
まとめると、教養教育は各学部の責任のもと、全学の語学関連教員、情報教育関連教員、
スポーツ実技関連教員等の協力を得て実施されている。全学教育委員会は、どの学部・学
科においても教養教育の実質が保たれるように、カリキュラムの基本点について調整機能
を発揮している。
(2)2-2の自己評価
教養教育の専管的組織を設けず、各学部のカリキュラムに組み込んで基本的に教授会の
責任において実施していることは、大学の今日の規模・構成・キャンパスの立地条件等に
はマッチしているものと評価している。
また各学部とも 1 年次生からゼミナールを開講し、
内容的には「教養ゼミ」「基礎ゼミ」の役割を果たし得ており、学部一体で教養教育を進
めていると言える。
反面、いずれの学部・学科とも専任教員の専門科目負担が大きいため、教養科目につい
ては非常勤講師への依存率が高くなっており、教養教育の推進・向上に向けて主導的な役
割を果たすべき専任教員が不足している点に問題を残している。
(3)2-2の改善・向上方策(将来計画)
学部ごとに教養教育が行われているが、上述のように現状には見合った方式であるが、
将来の大学の規模拡大を想定すると、
担当教員や設備活用の面で限界が来ると考えられる。
上掲全学教育委員会では、教養教育は全学共通教育として展開するのが良いとの提案もな
されている。この場合、「教養部」のようなものは考えていないが、例えば語学教育につ
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東海学園大学
いては学部から独立の責任主体(組織呼称案として「外国語教育センター」「言語教育セ
ンター」など)を立てるなど、教育研究組織の改革が必要になり、キャンパスの立地条件
の問題点もあるため、慎重に検討を進めている段階である。
2-3 教育方針等を形成する組織と意思決定過程が、大学の使命・目的及び学習者の
要求に対応できるよう整備され、十分に機能していること。
《2-3の視点》
2-3-① 教育研究に関わる学内意思決定機関の組織が適切に整備されているか。
2-3-② 教育研究に関わる学内意思決定機関の組織が大学の使命・目的及び学習者
の要求に対応できるよう十分に機能しているか。
(1)2-3の事実の説明(現状)
教育研究に関わる学内意思決定機関としては、大学評議会と各学部教授会が柱となって
いる。カリキュラム改正、教員人事、学年暦等の重要事項は、教授会で審議されるが、最
終決定は本学の設置目的と、大学教育に寄せられる社会の期待動向に照らして、大学評議
会で協議している。学則改正を伴うものはさらに理事会に諮られる。
卒業判定、授業担当者の決定(非常勤講師の任用を含む。)及び入試合格者の決定等は
教授会に委任され、
大学評議会では報告事項となっている。
その予備的検討や資料整理は、
学部長が主宰する各学部の「教学委員会」がその任に当たっている。教授会の開催が定例
は月1回となっているため、緊急やむを得ない場合は教授会権限事項の一部が教学委員会
に委ねられる場合もまれにあるが、必ず教授会で事後承認の手続きをふんでいる。
複数の学科をもつ学部にあっては学科会議が随時開催される。教授会審議のための予備
的検討の場であるが、教授会の委任を受け決定実施するケースもある。
授業時間割などの教務事項の細部については、教授会の下に置かれる教務委員会が担当
して教授会に提案・報告を行っている。複数学部にまたがる事項については「三学部教務
委員長連絡会」で協議している。
意思決定機関ではなく検討機関であるが、全学組織として「全学教育委員会」が置かれ
ており、大学教育改革全般を推進する役割を担っている。専門部会として「共通教育部会」
「キャリア教育部会」及び「FD部会」を置き、結論を得たものは総合企画会議の議を経て
大学評議会に提言を行っている。活動事例としては、教養教育に関連してさきに2-2-(1),
13ページで述べるところがあった。
(2)2-3の自己評価
教育研究上の観点から見ても、大学評議会、教授会その他各レベルの意思決定機関の組
織は整備されており、役割分担も適切に行われている。最高機関である大学評議会の審議
が形式に流れることなく、教育研究の実態に即して議されていることも評価に値する。こ
のため、教育研究に関わる事項が「いつどこで決まったのかわからない」というような事
態は見受けられない。
教育方針は建学の精神と大学の理念から展開されるばかりでなく、学生・保護者のニー
ズに応えることも必要である。基準 3-3、7-3 で取り上げているが、「授業評価アンケ
14
東海学園大学
ート」の他、近年は「保護者アンケート」「カリキュラム・アンケート」を加え、要求の
把握に努め、
それが大学・学部の意思決定に徐々に反映してきていることも評価されよう。
全学教育委員会は本学では教育改革検討に当たる唯一の組織であるが、サポート事務組
織があいまいであるため、提言の具体化が遅れがちである点、改善の必要がある。
(3)2-3の改善・向上方策(将来計画)
学部教育の責任を学部教授会が負うのは当然であるが、大学の発展に伴い、大学全体の
教育方針を策定し、全学共通事項と学部固有の事項の「仕分け」を進める必要が生じてき
ている。教育改革の全学共通事項については、上掲全学教育委員会が検討主体とされてい
るが、2-3-(2)で触れた問題点があり、全学の学生を視野に入れ、改革の速やかな実行に
責任を負う役職(仮称「教務部長」)の必要性について平成 21(2009)年度中に結論を得る
こととなっている。
[基準2の自己評価]
本学の学部・学科及び研究科は、いずれも法令の定めるところに従い、教育研究目的を
明示し、規模・教員組織及び教員数も適切である。教育に関わる意思決定の責任主体も、
決定事項のレベルに応じて、それぞれ明確になっている。図書館をはじめとする附属施設
も組織として整備されている。
教養教育については、各学部の責任において実施されているが、運用方式・内容のいず
れから見ても共通性は高く、「総合的教養教育」を目標の一つに掲げる大学として、統一
のとれたものになっている。
[基準2の改善・向上方策(将来計画)
]
学部・学科が教育の主体であることは今後とも変わらないが、一切を学部で「抱え込む」
のでなく、全学的に共通性の高い事項については、学生サービス面だけでなく教育に関わ
る事項についても、いわゆるセンター等、学内共同利用機関を整備して人材の活用とレベ
ルアップを目指す方策の検討を進めている。
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東海学園大学
基準3. 教育課程
3-1 教育目的が教育課程や教育方法等に十分反映されていること。
《3-1の視点》
3-1-① 建学の精神・大学の基本理念及び学生のニーズや社会的需要に基づき、
学部、学科又は課程、研究科又は専攻ごとの教育目的が設定され、学
則等に定められ、かつ公表されているか。
3-1-② 教育目的の達成のために、課程別の教育課程の編成方針が適切に設定
されているか。
3-1-③ 教育目的が教育方法等に十分反映されているか。
(1) 3-1の事実の説明(現状)
【全学共通事項】
学部・学科及び研究科ごとの教育目的・教育課程及び教育方法について述べるに先立
ち、全学共通事項に関して説明する。
学部及び学科の教育目的については学則第 2 条の 2、研究科については大学院学則第
3 条の 2 において明示されている(→【資料 F-3】)。学生・教職員には冊子体で配
付されている。ウェブページ上での公開については目下準備中である。高校生や大学院
志望者に対しては大学案内や大学院案内パンフレットでわかりやすく記述している。
大学院経営学研究科には平成 21(2009)年度から「中小企業診断士登録養成課程」が
置かれ、研究科修士課程に準拠する部分に加えて、養成課程独自の教育を展開するので、
この課程については別途詳細な説明冊子を用意している(→【資料 F-5】)。
学部は学士課程、大学院は修士課程としてそれぞれ設置目的に応じたカリキュラムを
編成しており、「積み上げ」型の大学院である。
なお、本学は通信制教育は実施していない。
【大学院経営学研究科の教育目的と教育課程・教育方法】
経営学研究科は、母体である経営学部の「人間が本当に人間らしく生きていくため」
という「人間経営学」の理念を基に、修士課程レベルでの教育・研究を行っている。「人
間経営学」という概念は、アメリカ流市場万能主義を基礎とした経営手法の無批判な導
入・紹介が行われていた過去の風潮に対するアンチテーゼとして提唱されたものである。
「人間経営学」の具体的内容としては、学部段階においては人間形成教育と我が国の企
業経営の実情に即した新しい理論を追求し、教育しているが、大学院では特に後者に基
づく高度職業人教育を目指している。
このため、本研究科の特色の第一は、「実践的かつ実証的」ということである。所属
の教員はいずれも企業や産業をリサーチフィールドとしている研究者、若しくは実業界
出身であり、現実を踏まえた実践的な学問が広く展開されている。実証的という点では、
我が国の経営学が、ともすると欧米の経営管理技法の紹介・適応に流されがちであった
ことへの反省を踏まえて、具体的な日本の企業経営・経済動向の科学的・客観的分析を
目指している。教育課程においてもケーススタディ(企業の実例を分析する講義)やケ
ースメソッド、企業などの状況を分析した修士論文(リサーチペーパー)を課している。
第二の特色は「グローカル(グローバルかつローカル)」な視点に立っていることで
ある。経営科学の諸理論は、世界各国におけるさまざまな経営・経済現象を詳細に観察
した上で抽出された一般原理・法則であるから、もとよりグローバルな視点で構築され
16
東海学園大学
ているものといえるが、本研究科では、それら理論を単に学生に吸収させるだけでなく、
常に我が国並びに地域における経営・経済現象に適用させ、その含意を問うような指導
を施しており(ケーススタディの必修)、現在の企業経営を見る上で重要な二つの視点
を教育や研究に反映させている。
上記の理念を具体的な教育成果として結実させるために本研究科ではさまざまな工
夫を施している。具体的には、小規模大学院の特長を十分に活かすべく、意識的に少人
数の講義・演習の開講、及びインフォーマルなコミュニケーションを通してきめ細かい
指導を行っている。また、高度職業人教育を行うという点では、積極的に社会人の受け
入れを行っており、社会人大学院生が仕事と研究を両立できるよう、夜間講義や土曜日
開講を実施している。なかでも、夜間講義は学生の勤務先を考慮して三好キャンパスと
栄サテライトキャンパスの二か所で開講している。
会計科目を専攻する学生は修士号取得後、審査で認められると税理士国家試験科目の
うち会計学科目の一部が免除されるという特典がある。また、平成 21(2009)年度には
研究科に中小企業診断士登録養成課程を設置し、高度職業人教育の体制をさらに充実さ
せた。これらの措置を通じ、高度職業人として活躍すべく国家資格取得を目指す学生の
期待に応えうる教育体制を確立している。
【経営学部(経営学科)の教育目的と教育課程・教育方法】
経営学部は、学則第2条の2において、「経営学部経営学科は、人間生活と社会に貢献
する企業・組織経営の基本を教育する。あわせて、高邁な人格と高いコミュニケーショ
ン能力を培う総合的教育を行い、確かな知識・技能を身に付けた人材の養成を目指す。」
と定めている。
大学院経営学研究科の節でも言及しているが、経営学部は創設以来、競争原理に基づ
いた市場原理主義の経営手法に問題意識を持ち、共生の理念に基づく「人間経営学」を
核とする教育を推進してきた。経営学の専門知識及び技術が役立つさまざまなビジネス
現場を想定し、企業の即戦力となりうる総合実践力を重視している。「人間経営学」と
は、経営の場において人間に学び、人間を学ぶことであり、「人間(共に生きる)にと
って経営とは何か」という課題に応えるための教育姿勢に徹することにある。いま、経
営主体(企業など)には人間生活に貢献する経営が求められており、経営の専門知識と
技術を修得するばかりでなく、経営学を学ぶ過程で働くために必要な自己管理能力や経
営活動の意味を把握する力、高邁な人格とコミュニケーション能力を身につけなければ
ならない。そのため本学部では、学問を学ぶ過程で教員と学生、並びに学生同志が相互
に啓発し合い、好ましい人間性を形成することを重視している。
経営学部の教育課程は、人間経営学を通して総合実践力を身に付けた学生を育てるた
めに、教養・基礎科目群、専門科目群及び演習科目群を柱として編成されている。以下
特徴的な科目(群)に焦点を当てて述べると、教養・基礎科目群のうち「共生の理解」
では、「共生人間論」を必修科目として通年開講するだけでなく、「共生人間論実習」
を学部必修科目とし、学部生全員が老人保健施設・障害者福祉施設等を中心にした社会
福祉施設において、4日間の実習を行っている。各人が大きな自然の中で生かされてい
ること、自分の力だけでは生きることすらできないことを学生に自覚させると共に、高
齢者の介助を通し、また一分一秒も無駄にできない施設の中で自分がいかに役に立たな
いかを思い知ることから、自分と向き合って学習することの大切さを心で知ることを主
な目的に授業展開している。
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東海学園大学
経営学部の教養教育については全学との共通性が高いので、「共生の理解」以外の科
目内容については 3-2 節で全学事項としてまとめて述べるが、1 年次春学期から 3 年
次秋学期までの 3 年間、教養・基礎教育を一貫して行う体制を整えている。
経営学部の「専門科目群」としては、以下の 8 の部門を立てて開講している。
経営学、商学、産業・経済学、法学、会計学、キャリアデザイン、
ビジネスマネジメント、スポーツマネジメント
「演習科目群」は経営学部に特徴的な「総合演習」を中心に編成している。「総合」
とは「専門」に対する表現ではなく、それぞれの専門分野における学問的成果が人生・
社会・民族・人類等に対して、いかなる意味をもつかを総合的に展開することである。
総合演習は 2 年次春学期から 4 年次春学期まで一貫して実施され、4 年次秋学期の「卒
業研究」はその総まとめである。「スチューデントスキル」は 1 年次春・秋学期の開講
で、総合演習への導入教育の役割を果たす。「演習科目群」に含まれる科目としては他
に、専門演習、オフィスアワー、インターンシップ、海外演習などがある。
【人文学部の教育目的と教育課程・教育方法】
「人文学部は、人文学及び教育・保育学の研究成果に基づき、人間の心理・行動・発
達の解明、コミュニケーション能力の向上及び社会と文化の理解を通じて人間教育を行
う。特に人文学科においては地域社会の諸方面で職業人として活動する実践力をそなえ
た人材を、また発達教育学科においては小学校・幼稚園教諭及び保育士等として子ども
の発達を支援する人材を養成する」旨、学則第 2 条の 2 において定められている。
以下、平成 12(2000)年に設置された人文学部人文学科と、平成 20(2008)年同じく人
文学部に設置され現在学年進行中の発達教育学科のそれぞれについて述べる。
【人文学部人文学科の教育目的と教育課程・教育方法】
人文学部は平成 7(1995)年創設の経営学部に続き、本学第 2 の学部として平成 12
(2000)年に設置された。人文学部人文学科では、「共生」の理念を基に、人文科学を学
術的基礎としつつ、人間に対して、言い換えればわれわれ自身に対して、「こころ」「言
語」「文化」の三つの側面からアプローチする教育研究を行っている。具体的には、人
間の心と行動をあつかう心理学的側面、人と人のコミュニケーション、そして中でも重
要な要素となる言語を中心とした側面、及び人間を取り巻きその行動に影響を及ぼす文
化的側面の三つである。「心、創造、世界へ」の句をもって教育の柱を表現し、新たな
文化を創出し世界へ発信できる人間の育成を目指している。
「発信・創造」型の人材を育成するための支えとして、まず教養教育を重視している。
人文学科の卒業要件では、「教養・基礎科目群」から30単位以上を取得することになっ
ており、総単位数に占めるウエートが比較的高くなっている。これは、情報化の進展に
よりいっそう複雑化する社会において、自己と他者、個人と社会の関係などを、自主的
かつ多角的に捉え判断できる力を身につけることが、現代的な「教養」の名にふさわし
いものであり、専門教育の基盤となるという考え方から編成されたものである。
専門教育については、講義のほか、専門演習(専門ゼミ)を重視している。3年次生
に専門演習Ⅰ、4年次生に専門演習Ⅱが開講される。いずれも15人前後の少人数の学生
が担当教員の指導を受ける通年授業であり、学生は原則として同じ教員の専門演習Ⅰと
Ⅱをひきつづき履修する。これによって、学生は行きとどいた指導のもとに高い専門性
を身につけられるよう配慮されている。卒業研究は必須としてはいないが、専門演習Ⅱ
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を終えるに当たって、卒業論文・報告、あるいは卒業制作(文芸作品)など、学習した
分野にふさわしい形態で4年間の学習成果に形を与える課題が与えられ、
「専門演習Ⅱ」
(4年次生通年)の成果として評価を受ける。研究発表会や優秀者の表彰も行われてい
る。
「教養・基礎科目群」と、3~4年次生の上記専門演習をつなぐ役割をしているのが、
1~2年次生の「基礎演習」である。基礎演習Ⅰでは、主として大学での学習スタイルを
身につけるための基本的なトレーニングを行う。集団課題、個別課題を含め、いくつか
の文書作成、図書館を利用しての情報検索、初歩的なプレゼンテーションの経験を通し
て、相互のコミュニケーション能力と学習の基礎を身につける。基礎演習Ⅱでは、基礎
演習Ⅰを発展させ、よりレベルの高い文書作成、情報検索、プレゼンテーションを行わ
せている。これらを踏まえ、2年次春学期履修の基礎演習Ⅲでは、各担当教員によって
より発展的なテーマが与えられている。基礎演習Ⅳは専門演習への入り口の役割を担っ
ており、専門演習への導入的な内容を視野に入れ、各担当教員の専門を生かした内容と
なっている。したがって人文学科における「基礎演習」は、大学で学ぶに必要なスキル
から始まるが、専門導入教育の意味をも担っている。
このように、人文学科では「演習科目群」が1年次生から4年次生まで段階的に設定さ
れ、講義・実験・実習等とあいまって、最終的に学士レベルにふさわしい専門能力を得
させるように工夫されている。
【人文学部発達教育学科の教育目的と教育課程・教育方法】
本学科は、平成 19(2007)年 12 月に設置認可を受け、平成 20(2008)年 4 月に第 1 回
の学生を迎え入れ、現在学年進行 2 年目の途上にある。
産業構造の変化や価値観の多様化に伴う地域社会の変貌や機能的に不全化している
家庭の増加など、子どもたちを取り巻く環境は急変し、劣化している。発達教育学科は、
子どもの育つ環境の様相について十分な知識を備え、子どもの発達の段階を考慮して適
切に保育・教育し、さらには子どもの養育者を対象とした援助活動や相談活動を的確に
実践できる保育士及び教諭(小学校・幼稚園教諭)の養成を行うものである。
いずれの学年においても各学期の開始直前に、「履修の手引き」に基づいて履修に関
する指導を全体的に、そして必要に応じて個別に徹底して行い、学生の履修計画が円滑
に進み、学習内容の理解が進むように配慮している。さらには、少人数によるゼミ学習
において、仲間作りを行い、大学への所属意識を高め、自律的に学習できる志向性を促
す働きかけを実施している。
実践力のある保育士や教諭の養成を目指して、教科の系統性に留意し、子どもの発達
を心理的側面、身体的側面、社会的側面から理解させる。かつ単に知識の断片的な習得
に終わるのではなく、1 年次生より幼少の子どもと関わる体験を保障し、保育所実習、
施設実習及び教育実習などの実習に際しては、教育実践研究の豊富な指導陣を配置して、
十分な事前事後の指導を行い、応用力のある実践的な知識・技能を習得させる教育課程
を編成している。
現時点では、計画の段階であるが、保育士や教諭の資格取得に向けては、実習先での
基本的事項の理解、心得の徹底指導を行って事前の指導を充実させる。実習時には実習
先を教員が訪問し、巡回指導を行い適宜指導する。事後においては、全体では実習報告
会、そして個別には各自の報告書に基づいて実習の成果についてフィードバックを行う。
さらに、NPO 日本教育カウンセリング協会の認定資格「ピアヘルパー」の取得を通じ
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て、相談者への対応の仕方や自己理解の方法など、教育や保育場面で活かせるカウンセ
リングの基礎を学ばせる。
【人間健康学部の教育目的と教育課程・教育方法】
人間健康学部は本学の第 3 の学部として、平成 16(2004)年に「人間健康学科」「管
理栄養学科」の 2 学科を持つ学部として設置された。その教育目的と教育方針は、学則
第 2 条の 2 において「人間健康学部は健康社会の実現に貢献できる人材の育成を目指す。
人文、社会、自然科学等を多角的、総合的に学び健康社会の構築に不可欠な人間らしさ
を追求する。人間健康学科は人間生活の基盤である『からだ・健康づくり』の担い手の
育成を目標とする。管理栄養学科は国民の健康保持増進に貢献できる栄養士、管理栄養
士の養成を目標とする。」と定められている。
2 学科は「健康」をキーワードとして共有し、授業面でも「教養・基礎科目群」に属
する科目の一部は学部共通であるが、学生は学科別の募集となっており、専門科目につ
いてはそれぞれ固有のカリキュラムを展開しているので、以下学科別に記述する。
【人間健康学部人間健康学科の教育目的と教育課程・教育方法】
人間の健康を科学的に究明するためには、人間の心とからだの理解を基礎に、運動・
スポーツ、食生活と栄養など、幅広い分野からのアプローチが必要である。人間健康学
科では、健康に関わるこれらの分野の専門的知識・技能の習得を基礎として、社会的環
境の変化を視野に入れながら、個々人の生活歴や年齢、健康状態、体力、食・住などの
生活環境や生活習慣などを総合的に判断する能力や、生涯学習や地域学習の指導法を身
につけ、幼児から高齢者に至るまでの人びとの健康づくりを支援し、人びとが活き活き
とした質の高い生活を送ることができる社会づくりに貢献する人材を育てることを目
的とする。
このためには、豊かな人間性を養うための幅広い教養教育を目指すとともに、身体的、
精神的、及び社会的側面から人間の健康を科学的・総合的に究明し、専門の知識・技能
を習得させる必要があることから、人間健康学科の教育課程は「教養・基礎科目群」、
「専門科目群」、「演習科目群」の 3 科目群で編成している。
「教養・基礎科目群」に含まれる授業については全学共通事項として 3-2 で整理す
るので、人間健康学科の「専門科目群」について述べると、健康についての基礎的知識
を習得させ、専門教育の動機づけを図る導入科目として、管理栄養学科と共通の「基礎
科目」を置き、さらに、学科の目指す教育目標・内容に応じた「基幹科目」、「展開科
目」を置いている。「基幹科目」は「基礎科目」の理解をベースに、健康に関わる「か
らだ、運動・スポーツ、栄養、生活、環境」の各分野に関する基本的かつ具体的知識を
習得させるために設定された科目群である。「展開科目」は「基幹科目」を受けて展開
する応用・関連科目である。
「演習科目群」は自己の興味関心に沿って専門知識を深くかつ自主的に研究・体得で
きるようにゼミナール形式とし、1 年次生から 4 年次生まで必修としている。
【人間健康学部管理栄養学科の教育目的と教育課程・教育方法】
人々の健康づくり支援、質の高い生活を送れる社会の実現への寄与を目的とすること
は人間健康学科と同一であるが、管理栄養学科では主に食生活や栄養の面から、「健康
づくり」のスペシャリストの育成を目指す。専門的かつ実践的な教育を展開し、卒業後
20
東海学園大学
は、医療・福祉・学校・事業所・食品企業などの幅広い分野で栄養のプロとして活躍で
きる管理栄養士や、子どもたちの食育を担う栄養教諭などの人材の育成を図っている。
管理栄養学科も、身体的、精神的、及び社会的側面から人間の健康を科学的、総合的
に究明し、人々の健康づくりに責献できる人材を育成するという教育目標は人間健康学
科と共通であるから、「教養・基礎科目群」「専門科目群」「演習科目群」の 3 科目群
で編成されていることは変わらない。
ただし、人間健康学科が学生の将来の進路を非常に幅広く想定しているのに対して、
管理栄養学科は卒業生のほとんどが栄養士、管理栄養士として専門分野で活動すること
が予定されており、また法令上の必修科目も多数に上るため、専門教育のウエートが相
対的に高いカリキュラムとなっている。
(2)3-1の自己評価
【大学院経営学研究科】
本研究科が標榜する「人間教育」を基礎とした「高度職業人教育」は、少人数制指導
を通じて、おおむね達成されている。本研究科出身の税理士資格取得者数は 7 人(平成
20(2008)年度現在)であり、新たに設置した中小企業診断士登録養成課程には 2 人が在
籍しており、高度職業人育成としての国家資格取得サポートの面でも社会的役割を果た
していると評価できる。また、教育研究スタッフも、少人数制指導を行うに適正なレベ
ルと教員数を維持している。
平成 21(2009)年度に開講した中小企業診断士登録養成課程については、経済産業省
への登録時期が予定よりも遅れ、学生募集に影響が出た。次年度以後は募集活動をタイ
ムリーに行えるので、改善されるものと予想される。登録養成機関としての教育体制そ
のものについては、現行で全く問題はないと考えている。
分野別指導(コース)については、経営学分野コースと産業・企業分野コースの垣根
が曖昧になってきているという問題点がある。当該両コースの学修領域が学問的に近隣
であることに原因があろうが、現状を観察すると、経営・産業・企業分野コースの学生
と会計学分野コースの学生とで、明らかに履修科目が二分化されており、修士論文研究
発表会では「経営学分野、産業・企業分野」と「会計学分野」の二つに会場を分けて行
っているのが現状である。教育内容そのものに問題があるわけではないが、コース分け
の再検討が必要な時期に来ていると考えている。
【経営学部経営学科】
企業・自治体などにおいていわゆる「即戦力」として働ける人材を育成するという教
育目的から、将来に直結する専門知識・スキルを効率よく身に付けられる教育課程とし
ての一貫性を実現している。
特に、人間教育を重視する設置以来の方針に基づき、1 年次生から 4 年次生まで通し
てゼミを開講し、特に初年次ゼミでは「スチューデントスキル」として本学の理念を理
解させつつ学習のガイドを行っていること、学生の希望する教員と研究室で 10 回以上
の面談と小レポートを課する授業としての「オフィスアワー」を設けていること、また
「総合演習」での研究をさらに深めたい学生のために「専門演習」を開講していること
など、一人ひとりの学生の個性と志向を重視した科目を展開している点は、いずれも少
人数教育の実践として評価に値する。
21
東海学園大学
【人文学部人文学科】
学部としての教育課程は一本であるが、教育研究領域として「こころ」「言語」「文
化」の三つを立て、さらにそれぞれの領域から重点的に学びたい分野(コース)を学生
自らが選んで履修することが望ましいと考え、必修科目もできるだけ減らし、これを「オ
ープン履修制」と名づけているが、1 年次生から 4 年次生まで一貫して演習を開いてい
ること、専門科目の一部は 1 年次生から履修できるようにしていることなどの効果によ
り、まとまった学習ができる体制が整っていることは評価できる。
反面、新入生対象に毎年行っているアンケート調査では、どの分野を中心に学習する
か入学時に「まだ決めていない」との回答が 3 分の 1 近くあり、体系的な学習のスター
トを切るのが遅れる学生が出ている点に問題を残している。分野ごとの学生数の偏りも
あり、カリキュラム自体になお改善の余地があると考えている。平成 22(2010)年度入
学生から適用する改善策はほぼ決定しており、3-1-(3)の項で述べる。
【人文学部発達教育学科】
平成 20(2008)年度開設以来、1 年余りが経過したに過ぎず、検証できる事項にも限り
があるものの、教育課程自体の問題点はないと判断している。
【人間健康学部人間健康学科】
平成 16(2004)年度の開設以来、多様な視点から人びとの健康づくりを支援できる人
材の養成を目指す教育課程を展開してきたが、健康を特にスポーツの分野から究明しよ
うとする学生のニーズがきわめて高いことから、学部完成年次後、スポーツ関連の教員
スタッフと科目の充実に重点をシフトしてきた。しかし専門コースとしてきた「住環境」、
「社会福祉」分野の科目も健康を総合的に考えるために必要な基礎知識であるので、見
直しのうえ再配置する必要があると考えている。
これによって学生のニーズに応え、同じくスポーツ関連でも、保健体育教諭を目指す
学生と、スポーツトレーナーを目指す学生にそれぞれふさわしい教育内容を提供できる
ようになったこと、低学年から「人間健康総合演習」を開講することが可能となったこ
となどは改善として評価できる。教育環境面では、三好キャンパスへの遂次移転により
施設設備も改善され高度のスキル教育の条件が整備された。
また、養護教諭の養成と採用については平成 20(2008)年度にいちじるしい成果を収
め、今後も期待できると自己評価している。
以上の経緯をふまえ、平成 22(2010)年度入学者からの適用となるが、人材養成目標
の重点化と指導の充実をさらに進めるため教育課程の改訂を予定している。その内容は
3-1-(3)の項で述べる。
【人間健康学部管理栄養学科】
本学科の特性から当然ながら、カリキュラムは体系的に編成されており、基礎科目か
ら段階を追って専門的な学習を深め、広げていくよう編成されていることは評価される。
必修科目の未履修問題があまり生じていないのは、きめ細かなガイダンスを行ってきた
成果と考えている。
本学科の入学者は資格・免許に対する志向性は高いが、管理栄養士国家試験に関わる
科目が多いので、栄養教諭免許に関わる教職科目など、免許・資格関連科目を取得しよ
うとすると時間割に余裕がなく負担が大きいという問題点がある。カリキュラムの一部
22
東海学園大学
改訂を重ねた結果、時間割にも多少ゆとりができ、資格・免許が取得しやすくなったこ
とは改善の一歩と考えている。
なお管理栄養士国家試験の平成 20(2008)年度合格率は 85.7%であり、学科としての
教育課程と資格取得指導のマッチングの面で成功していると自己評価している。
(3)3-1の改善・向上方策(将来計画)
【大学院経営学研究科】
今後の改善・向上方策として最も重視しているのが、学部-大学院一貫教育体制の確
立である。その中心となるのが、税理士・中小企業診断士等の難関国家資格の取得サポ
ートである。現在、中小企業診断士については学部-大学院一貫教育のカリキュラムが
確立されているが、税理士資格取得の一貫カリキュラム構築が道半ばであり、当面の向
上課題としている。
また、上記 3-1-(2)の該当個所で述べたとおり、履修コース分けを再検討する必要
があると考えている。具体的には、履修コースを経営学コースと会計学コース、及び中
小企業診断士登録養成課程コースの 3 つに整理し直し、一研究科において二つの学位、
即ち、「修士(経営学)」と「修士(会計学)」を授与できる教育体制を整えることを
将来計画としている。これによって、上述の税理士コースの教育体制の充実も可能にな
ると展望している。
【経営学部経営学科】
毎年のように履修コースの改訂を重ねていた時期もあったが、平成 19(2007)年度に
現行の教育課程を定め、4 年間は変更しない方針となっている。但し、キャリア志向の
強い学生のためには、上記経営学研究科との一貫教育実現の課題もあり、見直しの時期
を平成 23(2011)年度と設定している。(注 本学における「履修コース」の定義は 3
-2-(1), 25 ページ以下で詳細を説明する。)
【人文学部人文学科】
教育方針や学問領域の変更ではないが、平成 22(2010)年度入学予定者を対象に、学
生のニーズに応える意味で、履修コースの再編成と科目の加除を行う。視覚文化を対象
とする「マンガ・映像コース」、地域福祉や国際ボランティア活動を含む「多文化共生
コース」及び実践英語と異文化理解を学ぶ「英語・国際文化コース」の新設などを高校
生対象に予告済みである(→【資料 F-2】「東海学園大学ガイドブック 2010」21 ペ
ージ以下)。
【人文学部発達教育学科】
保育士及び幼稚園教諭、小学校教諭養成という学科の教育目標に即して、教育課程は
教養・基礎的な科目から応用展開的な科目へと体系的に編成されている。しかし、平成
23(2011)年度から小学校での英語必修化が開始される。そこでこの決定を受けて既存の
教育課程に、英語関連科目を加え、教育内容の検討や担当者の決定を早急に行わなけれ
ばならない。さらに、初等教育と中等教育の組み合わせで教員資格を取得したいという
社会的要請に応えるために、新たに中学校の英語教員資格の導入を計画中である。
23
東海学園大学
【人間健康学部人間健康学科】
学生のニーズの高い部門、人材育成実績の上がっている部門を中心に据える意味で、
平成 22(2010)年度入学予定者を対象に、履修コースを整理し、「養護教諭・保健コー
ス」、「健康トレーナーコース」、「スポーツ教育コース」及び「スポーツコーチコー
ス」の 4 つを柱とすることを高校生対象に予告済みである(→【資料 F-2】「東海学
園大学ガイドブック 2010」38 ページ以下)。「スポーツ教育」「スポーツコーチ」の
両コースは、中高の保健体育教諭への進路も想定し、指導にもさらに力を注ぐ計画であ
る。
【人間健康学部管理栄養学科】
近年管理栄養士の職務の現場において、高いコミュニケーション能力が必要となって
きているので、「栄養カウンセリング」の関連・周辺科目をさらに充実させ、また公務
員を目指す学生のための授業面でのサポート体制を強化することを検討中である。
3-2
教育課程の編成方針に即して、体系的かつ適切に教育課程が設定されてい
ること。
《3-2の視点》
3-2-① 教育課程が体系的に編成され、その内容が適切であるか。
3-2-② 教育課程の編成方針に即した授業科目、授業の内容となっているか。
3-2-③ 年間学事予定、授業期間が明示されており、適切に運営されているか。
3-2-④ 単位の認定、進級及び卒業・修了要件が適切に定められ、厳正に適用
されているか。
3-2-⑤ 履修登録単位数の上限の適切な設定など、単位制度の実質を保つため
の工夫が行われているか。
3-2-⑥ 教育内容・方法に、特色ある工夫がなされているか。
3-2-⑦ 学士課程、大学院課程、専門職大学院課程等において通信教育を行っ
ている場合には、それぞれの添削等による指導を含む印刷教材等によ
る授業、添削等による指導を含む放送授業、面接授業もしくはメディ
アを利用して行う授業の実施方法が適切に整備されているか。
(1)3-2の事実の説明(現状)
【視点①及び②から】(教育課程と授業科目の体系性、適切性)
【全学共通事項】
本学の開講する授業科目は
1.教養・基礎科目群
2.専門科目群
3.演習科目群
4.免許・資格関連科目群
に区分し、これを各学年に配当している(学則第 23 条)。学部ごとの開講科目名、学
年配当、単位数の一覧表はデータ編表 3-1 に示すところであるが、まず学部ごとの開
講科目数総計のみを掲げると次のようになる。
24
東海学園大学
表 3-2-1
学部・学科
学部学科・科目群対照表
教養‧基礎科目
専門科目
演習科目
免許‧資格関連科目
計
経営学部経営学科
82
125
18
24
249
人文学部人文学科
64
134
6
43
247
人文学部発達教育学科
24
122
6
0
152
人間健康学部人間健康学科
46
133
6
12
197
人間健康学部管理栄養学科
28
63
8
25
124
「教養・基礎科目群」については、学部・学科により具体的な科目名称に多少のちがい
はあるが、その教育上の目的と範囲は共通であり、表 3-2-2 のとおりである。
表 3-2-2
「教養・基礎科目群」の内容と特徴
下位分類
内容と特徴
共生の理解
本学の教養教育の核となるもので、「共生人間論」講義は原則として
浄土宗教師の資格をもつ教員が担当し、全学必修科目。また、福祉施
設におけるボランティア活動の体験を通じて共生の理念を学ぶ「共生
人間論実習」をも開講している。
人文・社会・自然
狭義の一般教養科目で、講義主体である。
スポーツ・日本文化
いずれも実習・体験型の少人数授業である。日本文化は伝統文化の理
解に重点を置き、書道・茶道・華道・能・舞踊・歌舞伎・陶芸及び武
道を含んでいる。スポーツ科目は競技種目別としている。
基礎教養
情報リテラシー、「YES プログラム(Youth Employability Support
Program)」等、将来職業人として社会に出るに当たり必要になる基
礎教育を実施している。
外国語
すべての学部で既習外国語として英語、未習外国語として中国語を開
講しており、通常いずれか一方を学習する。いずれも少人数クラス制
で、ネイティブ・スピーカーによるコミュニケーション実践訓練を重
視している。既習語学については入学時にテストを実施し、習熟度別
のクラス編成を行っている。
つぎに「履修コース制」について述べる。本学では履修指導の一環として、個々の学
生の学習の体系性を維持させるため、人間健康学部管理栄養学科を除き、すべて「履修
コース」(単に「コース」ともいう。)を定めている。
どの学部も表 3-2-1 に見られるように多種多様な授業科目を開講しているので、
学生に対しては、自己の将来の進路としてどの方面を目指すかを考えさせ、専門科目の
学習が中心になる時期にどのような分野を主にして学ぶかを入学後なるべく早い時期
に決定させるのが目的で、いわゆる「タテ割り」教育ではない。学部・学科のカリキュ
ラム自体は一本で、卒業要件も共通である。
各コースの学習内容や担当教員スタッフの紹介は、学生募集パンフレットなどにも非
常にくわしく記述し、各学部学科の学習の領域はどんなものか、個々の授業が相互にど
25
東海学園大学
んな連関を保っているか、また将来の進路とどうつながるのかのイメージを、新入学者
はもとより、本学を目指す高校生にもつかんでもらうことを狙いとしている(→【資料
F-2】「東海学園大学ガイドブック 2009」及び同「2010」)。
以下、平成 21(2009)年度入学者に適用されている履修コース・教育目標・主な授業
科目を関連させて表示すると次の通りである。なお、人間健康学部管理栄養学科は学生
の将来の志向や必要とする科目に等質性が高いので、履修コースは設けていない。
表 3-2-3
大学院経営学研究科のコース・教育目標・主な授業科目
コース
教育目標
教育内容
起業、事業継承、管理能力向
上、マーケティング分析力向
経営史特論
経営管理特論
上等の目標に適した教育内
経営学分野
理論と実務を有機的に関連
容を展開。実践力を養うため
させたカリキュラム。カリ
のケーススタディは必須。
キュラムに基づいて、実証
産業・企業分野
主な授業科目
的かつ実践的に企業経営を
生産システム、中部をはじめ
学び、研究に取り組む。ま
とする地域の産業・経済、産
た、アメリカ発の理論の紹
業金融等の知識獲得や分析
介・吸収にとどまらない、
能力向上を達成するに適し
グローバル&ローカルの複
た教育内容を展開。実践力を
眼的視点で、日本の現実的
養うためのケーススタディ
な企業経営を分析できるよ
は必須。
うになることを教育目標と
している。
会計実務、財務分析等を行い
マーケティング特論
生産システム特論
地域産業特論
流通システム特論
企業金融特論
財務会計特論
うる高度な会計学の知識と
運用能力を養いうる教育内
会計学分野
人的資源管理特論
容を展開。税理士国家試験に
管理会計特論
原価計算特論
も対応。実践力を養うための
ケーススタディは必須。
会計監査特論
中小企業経営・経営労
務演習(中小企業診断
学術的基盤に裏打ちされた
幅広い知識と高い倫理観を
中小企業診断士
登録養成課程
備え、その上で中小企業の
経営活動に対して適切な診
断・助言を提供することの
できる中小企業診断士を養
成する。
士登録養成課程特設ゼ
修士課程開講科目の中から
ミ)
診断実務の基盤として最適
な科目を抽出し、それに登録
養成課程用特設科目及び実
習を付加した形態でカリキ
ュラム・指導内容を構成。
流通業経営診断実習
製造業経営診断実習
経営戦略策定実習
経営総合ソリューショ
ン実習
26
東海学園大学
表 3-2-4
コース
経営学部経営学科のコース・教育目標・主な授業科目
教育目的
教育内容
企業経営に必要な基礎知識が身につくカリ
経営者育成
コース
起業家育成と事業承継者への
キュラムであり、株式会社や合資合弁会社
経営ノウハウの伝授を目的と
等の企業の仕組みや運営が学べる。
している。
事例研究等を通してヒト・モノ・カネ・情報
の管理や重要性を学ぶ。
公務員(行政・
国税専門官)
ビジネスマネジメント系
コース
国家公務員や地方公務員のう
ち、特に行政・税務に携わる
公務員をめざすことを目的と
している。
公務員になる専門的な勉強をしながら幅広
い教養を身につけるための内容を含む公務
員試験対策講座が中心となる。
簿記や会計の知識、貸付債権の管理担保設
金融スペシャリ
ストコース
ビジネス・プロフ
ェッショナル
(中小企業診断
士)コース
キャリアデザイ
ンコース
金融機関で働く人の求められ
定に必要な民法、会社法、法人税法等を学
る能力を養うことを目的にし
び、預金、年金、保険、投信等個人に必要
ている。
なファイナンシャルプランに関する内容で
企業の財務・管理・販売等を
診断できる能力を身につける
ことを目的にしている。
スポーツマネジメント系
公務員(警察
官・消防官)
コース
警察官・消防官を志望する人
のために、その専門知識に加
え身体能力も養成することを
目的としている。
健康維持や趣味・ボランティ
アなどを目的にしたスポーツ
スポーツライフ
に関わりながら、職業として
コース
は一般企業をめざす学生の能
力を養成することを目的とし
ている。
財政学
会計学原理
経営分析論
証券論
経営戦略論
会社経営に欠かせない会計や財務や経営専
マーケティング論
門科目を深く学ぶ。
経営情報論
数の資格セミナー等を準備している。
することを目的にしている。
行政法
る内容の科目群が準備されている。
目的にしている。
ネスに展開できる能力を養成
民法Ⅰ~Ⅱ
中小企業経営論
及び業界研究やビジネスマナーを学び、多
スコース
経営戦略論
中小企業診断士 1 次試験に合格を支援でき
ら自分の適職を見けることを
トし、スポーツの知識をビジ
ベンチャー企業論
金融機関論
働くことの意味や仕事へのモチベーション
スポーツビジネ
中小企業経営論
ある。
多種多様な業種・職種の中か
スポーツと経営をコラボレー
主な授業科目
マーケティング論
簿記原理
英語コミュニケー
ション演習Ⅰ~Ⅲ
スポーツ経営学
保健体育の教員免許や公務員試験に必要な
スポーツ心理学
内容であり、コーチング等の内容を含んで
スポーツ指導論
いる。
スポーツマネジメ
ント実習Ⅰ~Ⅵ
経営組織論
公的機関の組織の構造や法律のことと、自
身の体力づくり・維持の方法論等の内容を
消費者問題
含んでいる。
トレーニング科学
生涯にわたってスポーツを楽しめるための
スポーツと健康
知識やスキルを養う内容である。
スポーツ経営やスポーツ社会学などの内容
マーケティング論
でスポーツと企業のつながりなどが探求で
きる。
27
経営戦略論
東海学園大学
表 3-2-5
コース名
人文学部人文学科のコース・教育目標・主な授業科目
教育目標
人間の心理と行動の関わ
心理学・行動
コース
り、社会事象と個人の心
理の関係などを、実証的
な立場から検討し考察で
きる人材を育成する。
教育内容
人間の心と行動、社会との関わりを探求する諸領域
心理学や行動の基礎を学び、具体的な行動を観察す
る実験・実習を多く開講している。これに呼応して、
実証的な心理学に必要なデータ分析の方法や統計処
理などの技術に関する科目を設定している。
カウンセリングや心理診断など、実際に臨床の現場
心理学・臨床
心の病や教育問題を科学
で実践されている心理学の手法に関する諸授業を重
コース
的に検討し考察できる人
点的に配置。臨床心理や教育心理を理解するための
材を育成する。
専門的な知識と具体的な技術の習得を目指す。
アナウンス・
情報メディア
コース
およびジャーナリズムに
関する学術的な理解を背
景として、日本語の音声
表現を中心とする情報発
信の知識と技術を学ぶ。
創作文芸
創作のスキルを身につ
コース
け、作品を創造する。
新聞や放送、出版、広告などマスコミ・ジャーナリ
ズムの理論と現場に関する諸授業を配置。映像およ
日本語・日本
関する深い理解と教養を
文化コース
身につけた人材を育成す
る。
英語の読解と作文、およ
英語コミュニ
ケーション
コース
びオーラルコミュニケー
ションの高い技術を習得
するとともに、異文化を
理解する国際感覚を身に
つけた人材を育成する。
様々な「文化」現象を、
カルチュラ
分野の枠組みを超えた視
ル・スタディ
点から考察することによ
ーズコース
って、幅広い教養を身に
つけた人材を育成する。
発達心理学
行動観察法
調査法Ⅰ~Ⅱ
臨床心理学
人格心理学
カウンセリング基
礎・同応用
教育心理学
音声表現研究
映像文化論
びネットワーク技術などが習得可能な内容となって
いる。その上で、日本語の音声表現関連の授業を開
ジャーナリズム論
講している。
ネットワーク研究
授業で取り上げられる作品は、小説や詩歌、歌詞、
詩歌創作 A・同 B
シナリオ、児童文学、絵本などである。
絵本研究
自分自身で[創作」にチャレンジするチャンスが数
多く設けられており、文章を読み解く力や書く力、
個性的な発想を表現する想像力を磨いていく。
日本語および日本文化に
社会心理学
に関する授業を配置。生物学的な視点を踏まえつつ、 感情心理学
心理学を基礎としつつ、
マスコミュニケーション
主な授業科目
現代国語から古典まで日本語・日本文学に関する科
目を配置。同時に、芸能や美術、生活習慣などの日
本文化についての多様な講義を開講している。
多言語、多文化社会にふさわしい英語力を育てるた
め、歌や映画、メディアなどの英語を利用した実践
的な授業を配置。
英語の地域差や社会方言、コミュニケーションスタ
イルの違い、文化・歴史背景などを学ぶ授業を通じ、
シナリオ脚本創作
マンガ文化論
日本語学
日本文化論
日本古典文学史
日本美術史
英語の構造
英語圏文化研究
ワールド・イング
リッシュ
文化が異なる人々とのコミュニケーションと他文化
英語で読むファン
社会における問題解決能力の向上を図る。
タジー
多様な地域と時代、ジャンルを通じた文化現象を学
表象文化論
ぶための諸授業を配置。伝統的な文学・芸術・思想
比較文化論
のみならず、映画・テレビ・漫画・アニメなどさま
イメージと社会
ざまな文化領域を対象とする講義が開講される。
28
キャリア研究
東海学園大学
表 3-2-6
コース名
人文学部発達教育学科のコース・教育目標・主な授業科目
教育目標
幼児の発達を的確にサポー
トするために、幼児の発達
や幼児を取り巻く社会的環
幼保コース
境、諸問題を正しく理解し、
地域社会の総合的な子育て
支援ができる幼稚園教諭や
保育士の養成行う。
幼児・児童の発達や学びの
過程を正しく理解し、家庭
や地域社会と連携しなが
ら、子どもの発達をサポー
幼小コース
トできる幼稚園教諭、また、
教科、道徳及び特別活動な
ど小学校教育の指導を的確
に行うことができる教員の
養成を行う。
教育内容
幼児期の子ども理解にとって
主な授業科目
発達教育概論
必要な基礎・基本的な事項を学
ばせるだけでなく幼稚園教
諭・保育士の資格取得を目指す
ため、保育の現場と連携しなが
らより実践的な知識や技能を
発達心理学Ⅰ
保育原理Ⅰ
保育内容の研究・環境Ⅰ
修得させる学習内容となって
いる。
保育実習
発達教育概論
幼児・児童期そして青年前期の
子ども理解に必要な基礎・基本 発達心理学Ⅰ
的事項を学ばせるだけでなく、
幼稚園・小学校教諭の資格取得
を目指すため、保育や教育現場
教育原理
教育相談
と連携しながらより実践的な
知識や技能を修得させる教育
教育課程論
内容となっている。
教育実習
29
東海学園大学
表 3-2-7
人間健康学部(人間健康学科・管理栄養学科)のコース・教育目標・主な授業科目
学科名
養護教諭・
保健コース
健康トレーナ
ーコース
人
間
健
康
学
科
スポーツ教育
コース
スポーツ
コーチコース
管理栄養学科
教育目標
少子化が進む中で次世代を
担う子どもたちがより健康
で安全に生活できるような
教育や、昨今の子どもを取
り巻く様々な問題に対応で
きるような専門家を育成す
る。
競技スポーツをサポートす
るトレーナーや、トレーニ
ングの指導をするための知
識と実践力の育成。特にス
ポーツを通じて人間の健康
づくりをサポートする「健
康運動指導士」の育成を目
指す。
教育の実践能力、コミュニ
ケーション能力や表現力豊
かな人間味あふれる優れた
保健体育教諭の育成及び社
会に貢献する教育者の養成
を目指す。
教育内容
養護概説
学校保健の専門家である養
護教諭や地域社会の保健を 養護実務演習Ⅰ~Ⅱ
サポートする専門家を目指
救急処置法
す人が学びやすい内容とな
ヘルスカウンセリン
っている。
グ
アスリートのコンディショ
ニング管理やトレーニング
論、指導方法の習得。健康づ
くりをテーマにした運動指
導やプログラムの企画・運営
といったマネジメント力も
伸ばす。医学や生理学、栄養
学などの総合的知識を学ん
だ上で、実践力向上を目的と
したスポーツ現場でのイン
ターンシップを実践する。
教育に関連する基礎理論の
学習だけではなく、陸上競
技、球技、水泳、器械運動、
スキー、剣道など学校体育で
行われる種目の技能や向上
や指導力の育成にも力を注
いでいる。
コーチングの実践的なスキ
ルを基礎から応用まで幅広
く学ぶ。各資格を取得するた
次世代のアスリートを育む
めに必要な講義や実習が多
スポーツコーチの養成を目
く、日本体育協会から「スポ
指す。
ーツ指導者養成講習会免除
適応コース」の認定を受けて
いる。
医療、福祉、学校、事業所
食品企業などの幅広い分野
で活躍できるように、専門
的かつ実践的な教育を展開
し、栄養のプロとしての管
理栄養士の育成を目指す。
主な授業科目
臨床栄養に強い管理栄養士
の育成を目指し、専門医を指
導陣に揃えて臨床分野の学
習を充実させている。また、
スキル教育の 1 つとしてパソ
コンによる IT リテラシー教
育に力を入れている。国家試
験受験対策も早期から行い、
学生のサポート体制を取っ
ている。
30
スポーツ障害
アスレチックトレー
ニング
トレーニング実習Ⅰ
~Ⅱ
コンディショニング
実習
運動処方の理論と実
習Ⅰ~Ⅱ
保健体育科教育法
教育方法・技術論
運動生理学
機能的解剖学とバイ
オメカニクス
体育社会学
コーチング科学
スポーツ心理学
競技別コーチング
科学実習
競技別運動生理学
実験
競技別バイオメカニ
クス実験
臨床栄養学Ⅰ~Ⅲ
栄養教育原論
応用栄養学総論
食育指導論Ⅰ~Ⅱ
東海学園大学
個々の授業科目の内容にふれることはできないが、学部別に各年度「授業概要」(シラ
バス) を学部別に作成している(→【資料 3-3】)。1 科目に 1 ページを当て、書式も
統一しているが、大冊となるため平成 21(2009)年度版から主力をウェブページでの閲覧に
切り替えている。
【視点③から】(学年暦等)
春学期と秋学期の 2 学期制(セメスター制)を導入しており、春学期は 4 月 1 日から 9
月 20 日まで、秋学期は 9 月 21 日から翌年 3 月 31 日までとなっている(学則第 11 条)。
年間を通じての授業期間は、定期試験、補講、ガイダンスなどの期間を含め、35 週にわた
ることを原則としている(同第 26 条)。授業期間、年間行事予定などは「学年暦」とし
て「履修の手引き」(学部ごとに作成。→【資料 3-1, 3-2】)に掲載し学生に周知して
いる。
各授業科目の単位の計算方法は、「1 単位の授業科目を 45 時間の学修を必要とする内容
をもって構成することを標準」とし、講義及び演習は「原則として 15 時間から 30 時間ま
での授業をもって 1 単位」、実験、実習及び実技は「原則として 30 時間から 45 時間の授
業をもって 1 単位」としている(学則第 25 条)。
授業科目の多くは 1 セメスターで完結し、単位が認定されるが、一部、授業内容の一貫
性及び教育効果の点でより長期間が望ましい科目については通年科目としている。二三の
例を挙げれば、人文学部の 3~4 年次生対象の「専門演習」は、学生の継続的指導が必要
なため通年科目となっており、人間健康学部人間健康学科の資格関連科目の一部は、関係
法令に従い通年科目となっている。なお、大学院経営学研究科も、中小企業診断士登録養
成課程以外のコースは、完全に春・秋学期のセメスター制によって運営されている。
1 セメスターの授業期間は、定期試験期間を含めて 15 週を必須として運用している。教
員の都合による休講が生じた場合は、公務出張等であっても、必ず補講を行っている。こ
の他、教員の判断で必要な教育内容を補うため補講を加える場合もある。このため、毎週
土曜日の午後等に補講が行えるようにしている。また、15 週の授業回数を確保するため、
必要な場合は国民の祝日についても開講日とする措置をとっている。この点非常勤講師諸
氏にも理解を得ている。
【視点④から】(厳正な単位認定・卒業要件)
単位認定
単位認定は、基本的に定期試験によって行っている。試験等による評価は、「秀」「優」
「良」「可」「不可」の段階をもって表示する。受験資格喪失者、定期試験欠席者等は「失
格」と判定される。成績と評価の関連は学則第 27 条により、100~90 点を「秀」、89~
80 を「優」、79~70 を「良」、69~60 を「可」、59 点以下を「不可」と定めている。
なお「秀」の導入は、経営学部がいち早く採用し、人文学部・人間健康学部も平成 20(2008)
年度入学生から適用することになったので、全学的に統一された。
以上は原則であり、個々の授業については担当教員が定期試験のほかさまざまな視点を
加えて総合的に成績判定を行っているが、授業概要(シラバス)(→【資料 3-3】)には、
すべての授業科目について「評価方法」の項を立てて学生に周知している。
31
東海学園大学
なお、3 年次編入生が本学入学前に短期大学等で履修した単位、また本学学生が単位互
換協定に基づき国内・国外で学修した単位の取扱いについては、各学部「履修の手引き」
(→【資料 F-5】)に詳細を明示している。
つぎに、厳正な成績評価に資する意味で、学習の「量」ばかりでなく「質」を評価する
一助として、全学部で GPA(Grade Point Average)制を導入した。これによって修得単
位ばかりでなく、不認定科目、履修放棄等の実態もある程度反映されることになる。現在、
奨学生の選考、成績優秀者の表彰などに活用されている。
本学が採用している算出方式は下記のとおりである。
表 3-2-8
GPA の算出方式
評価
秀
優
良
可
不可
失格
GP(Grade Point)
4
3
2
1
0
0
Grade Point Average=
(科目単位×GP+科目単位×GP+・・・・・)
履修登録総単位数
卒業・修了要件
まず大学院について述べると、経営学研究科(修士課程)の修了要件は、2 年間で 30
単位以上の単位を取得し、修士論文(もしくは課題研究報告書)を作成・提出し、その審
査に合格することである。修士論文(もしくは課題研究報告者)審査は、2 回の研究報告
会で研究内容を公開し、その後、主査・副査の評価を経た上で、さらに研究科委員会にお
いて総合的に審査が行われる。この評価システムによって、研究論文の質および修了要件
の厳格性が担保されている。
なお、中小企業診断士登録養成課程の場合は、通常の修士課程修了要件よりさらに厳し
く、本研究科が指定する 47 単位の単位取得と経営診断Ⅰ・同Ⅱにおける外部有識者によ
る審査にも合格しなければならない。また、審査結果は、監督官庁である経済産業省・中
小企業庁の査察を受けることになっている。
税理士試験会計科目免除については、国税庁によって修士論文の質・内容が審査され、
その審査に合格すれば科目免除が認定されるというシステムになっており、中小企業診断
士登録養成課程の場合と同様、外部評価を経ることが必須となっている。
学部学生の卒業要件は、4 年以上在学し、各学部の規定する単位数を含んだ 124 単位以
上の修得としている。総単位数の 124 は、全学部共通となっている(学則第 43 条第 1 項)。
修業年限短縮の規定(同第 2 項)もあるが、今日までその実例はない。
卒業に必要な科目、科目群等を加えて学士課程の卒業要件の詳細を表示すると表 3-2
-9 のようになる。各学部ともカリキュラム改正を重ねてきており、それに応じて卒業要
件にも細部の変化があったが、ここでは平成 21(2009)年度入学者適用分のみを示した。
32
東海学園大学
表 3-2-9
各学部卒業要件一覧
経営学部経営学科卒業要件
科目群
各科目区分において卒業
授業科目区分
に必要な必修単位数
各科目区分において
卒業に必要な選択必
修単位数
卒業に必要な修
得単位数
教養・基礎科目群
必修 5 単位
共生の理解
人文・社会・自然
選択必修 3 科目 3 単
スポ-ツ・日本文化
位以上
外国語
必修 6 科目 6 単位
基礎教養
必修 4 科目 6 単位
経営学部門
必修 2 科目 4 単位
124 単位以上
商学部門
専門科目群
必修 1 科目 2 単位
産業・経済学部門
選択必修 2 科目
法学部門
会計学部門
必修 1 科目 2 単位
キャリアデザイン部門
必修 1 科目 2 単位
4 単位以上
ビジネスマネジメント部門
スポ-ツマネジメント部門
必修 16 単位
演習科目群
人文学部人文学科卒業要件
科目群
授業科目区分
共生の理解
A.各科目区分において卒業に
B.各群において卒業
C.卒業に必要な
必要な修得単位数
に必要な修得単位数
修得単位数
必修 4 単位
教養・基礎科目群
人文・社会・自然
スポーツ・日本文化
基礎教養
日本文化注1から 1 科目 1 単位
以上
情報リテラシー注2から 2 科目
2 単位以上
外国語
6 科目 6 単位以上
日本語表現法
1 科目 2 単位以上
30 単位以上
124 単位以上
専門科目群
演習科目群
必修 16 単位
注 1:日本文化(華道)・(茶道)・(書道)・(舞踊)・(歌舞伎)・(陶芸)・(能)
注 2:情報リテラシーⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ
33
東海学園大学
人文学部発達教育学科卒業要件
科目群
授業科目区分
教養・基礎科目群
共生の理解
A.各科目区分において卒業に
B.各群において卒業
C.卒業に必要な
必要な修得単位数
に必要な修得単位数
修得単位数
必修 4 単位
人文・社会・自然
12 単位以上
スポーツ・日本文化
基礎教養
専門科目群
外国語
4 科目 4 単位以上
基礎科目
必修 8 単位を含め 8 単位以上
基幹科目
必修 7 単位を含め 15 単位以上
展開応用科目
61 単位以上
演習科目群
124 単位以上
96 単位以上
必修 16 単位
人間健康学部人間健康学科卒業要件
科目群
授業科目区分
教養・基礎科目群
共生の理解
A.各科目区分において卒業に
B.各群において卒業に
C.卒業に必要
必要な修得単位数
必要な修得単位数
な修得単位数
必修 4 単位
人文・社会・自然
スポーツ・日本文化
基礎教養
20 単位
情報リテラシー注1 から 2 科目 2
以上
合計で
専門科目群
単位以上
108 単位
124 単位
外国語
6 科目 6 単位以上
以上
以上
基礎科目
必修 2 単位
基幹科目
必修 6 単位を含め 12 単位以上
展開科目
46 単位以上
演習科目群
60 単位
必修 16 単位
注 1:情報リテラシーⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ
34
以上
東海学園大学
人間健康学部管理栄養学科卒業要件
科目群
授業科目区分
教養・基礎科目群
共生の理解
A.各科目区分において卒業に
B.各群において卒業に
C.卒業に必要
必要な修得単位数
必要な修得単位数
な修得単位数
必修 4 単位
人文・社会・自然
スポーツ・日本文化
5 単位以上
13 単位以上
基礎教養
専門科目群
外国語
4 科目 4 単位以上
124 単位
基礎科目
必修 2 単位
以上
専門基礎分野科目
必修 38 単位
専門分野科目
必修 45 単位
周辺領域科目
8 単位以上
演習科目群
93 単位以上
必修 18 単位
【視点⑤から】(キャップ制など)
キャップ制については、人文学部が先鞭をつけ、現在すべての学部で採用されており、
1 年間に履修登録しうる単位数合計は 49 単位となっている(各学部「履修の手引き」)。
なお、大学院経営学研究科においては、修士論文作成がメインとなることから、学生は
必要最小限の講義科目を履修するのが精一杯の状況である。また、中小企業診断士登録養
成課程においては、履修すべき科目は経済産業省・中小企業庁の基準省令に基づいて予め
定められており、履修科目選択の機会すらないのが現状であり、大学院においてはキャッ
プ制は考えていない。
【視点⑥から】(教育内容・方法の特色ある工夫)
(ア)初年次教育(導入教育)の工夫
人間健康学部では、入学後最初の導入教育として、入学式終了後のオリエンテーション
期間に、祖山参拝を終えた後(注 祖山参拝については 1-2-(1), 7 ページ参照)、1 泊 2
日の「フレッシュマンセミナー」を実施している。参加者は新入学者全員、教員のほか助
手・事務職員・先輩学生で、学部・学科・コースに関する全体ガイダンスをはじめ、各自
の目標に沿った科目の履修方法、各種資格・免許取得に必要な要件、大学における授業運
営などについて個別指導を行い、学生からの相談に応じている。個別指導は、全体ガイダ
ンスが終わった後、夕食・入浴を済ませてから消灯までの時間を活用して、学生一人ひと
りが教員とコミュニケーションできるよう設定している。
人文学部の初年次教育の核をなす「基礎演習」は、人文学科の場合を見ると、近年は 12
人程度のゼミで、20 人前後の教員が分担しているが、授業の課題と到達目標を統一し、特
に春学期の「基礎演習 I」は教材も共通とし、ノート取り方、手紙・案内文・自己PR文・
要約・説明文などの作成練習、図書館を利用しての文献検索、簡単なスピーチの練習を行
35
東海学園大学
わせ、大学生として必要なコミュニケーションと、まとめ・調査の基礎力をつけることを
ねらいとしている。同時に、基礎演習担当教員は、新入生に大学生活に早く慣れさせるた
めのアドバイザーの役割を果たしている。経営学部においては「スチューデントスキル」
という科目を用意し、学習への動機づけや人間関係の構築等を目的としている。人間健康
学部の「基礎演習」も 1 年次に開講し、初年次指導の充実を期しているが、ほぼ同趣旨の
内容である。
(イ)体験・参加型授業の工夫
本学の建学の精神に直結する科目である「共生人間論」講義は全学部で必修としている
が(1 年次開講、人文学部発達教育学科のみ時間割の都合上 2 年次)、大学指定の施設に
おいて 4 日間の実習を課する「共生人間論実習」(2 年次)とセットとなるのが本来の姿
である。事前指導を受け、老人保健施設・障害者福祉施設等でボランティア活動に参加し、
共生の精神と他者の理解を体得することを目的とする。事後報告会とレポートの提出も課
される。ただ、適切な実習施設と、巡回して現場指導に当たれる教員数に限りがあり、現
在は経営学部のみ必修、他学部では選択科目となっている。なお、人文学部発達教育学科
と人間健康学部管理栄養学科は専門科目としての実習負担が大きいため、「共生人間論」
は講義のみとしている。
人文学部発達教育学科では、正課の実習科目は 2 年次から始まるが、1 年次に、近隣の
保育所の理解・協力を得て、「基礎演習」の時間や放課後の時間を利用して「かかわり体
験」と名づけて週に一度、6 週にわたり学生が保育園を訪問して園児と交流する体験をさ
せ、子どもへの関心をさらに深める場を工夫している。
人間健康学部では大学が名古屋市と連携して展開している市民対象の健康づくり支援
活動に、スポーツトレーナーを目指す学生を中心に多数が実地指導に参加している。ボラ
ンティア活動であって正課ではないが、教員の指導の下に行っており、一種のインターン
シップの役目を果たす有意義な活動となっている。詳細は基準 10-3, 91 ページ以下であ
らためて述べる。
人文学部人文学科では「専門演習」の展開として、夏休み・春休みの期間を利用してゼ
ミ担当教員の指導の下に数日程度の日程で調査旅行・見学旅行等を行っており、研究対象
に直接ふれる体験を促している。経費についてはフィールド・ワークの計画申請により実
験実習費から支援が得られる。
(ウ)自主テキストの開発と活用
個々の授業の補助教材は別として、書物形態の自主テキストの作成も行われており、授
業と個人指導に利用している。代表的なものとして、人文学部の心理・行動系スタッフの
執筆に係る『ようこそ!心と行動の学問へ』
(中部日本教育文化会刊,2005,102 ページ)
を挙げることができる。経営学部の情報教育関連スタッフの間でも、FD 活動の一つとし
て教材の標準化・共通化の研究を行っている。
(エ)ていねいな履修指導
本学は各セメスターの始期に充分な日程をとり、1 年次生から 4 年次生まで、すべてガ
イダンスを行っている。ゼミ別ガイダンスが基本で、担当教員から前学期までの成績表を
渡し、
履修計画上必要な注意を与えている。
個々の教員の主観的判断は望ましくないので、
学年・学期ごとに、修得済みが望ましい単位数のガイドラインを教授会共通理解として運
36
東海学園大学
用している。卒業延期者(いわゆる留年生)のためのガイダンスにいたるまで開催されて
いる。
なお、視点⑦ については本学は通信教育を行っていないので省略する。
(2)3-2の自己評価
【視点①及び②から】
(教育課程の体系性、適切性、授業科目内容と教育課程の適合性)
どの学部も取り扱う学術知識の範囲が広く、教員の専門分野もさまざまであるため、授
業科目の数と種類が非常に多くなっているが、教育課程の構造そのものは簡明であり、社
会的ニーズの変動や教員の人事異動にも対応できる柔軟性をそなえていることは評価でき
る。
「履修コース制」は旧来の「専攻」ではないが、学生各自の志望の尊重と、知識・技能
の体系性とのバランスを保つ工夫として効果を上げている。
シラバスは統一性を保っているが、個々の授業内容の説明に終始し、当該授業の関連科
目や発展科目についての記述の項を設けていないのは、欠点である。
【視点③から】(学年暦等)
現行学年暦は、設置基準に定める学修時間が確保されていること、学生参加の各種年間
行事がバランスよく配置されていること、授業日程・入試日程及び諸会議日程の「すりあ
わせ」が丁寧に行われていることなどから、妥当なものといえる。
【視点④から】(厳正な単位認定・卒業要件)
成績評価と単位認定は厳格に行われており、成績不良者に対して安易に再試験を行うな
どの措置はとられていない。「質の保証」の観点から評価されよう。
【視点⑤から】(キャップ制など)
過去には、3年次秋以後就職活動に専念したいとの思惑から、低学年のうちにできるだ
け単位を多く取得しようとする傾向が見られ、散漫な学習につながる場合があった。キャ
ップ制は、各学年バランスのとれた履修計画を立てさせる意味で有効に機能している。
【視点⑥から】(教育内容・方法の特色ある工夫)
学外に出ての社会的体験を取り入れることは非常に望ましいことと考えているが、マナ
ーや言葉づかいの指導から始めねばならず、負担は大きい。適切な指導者をそろえること
が課題になっている。
初年次からゼミを開講していることで、学生の把握に成功しており、特に 1 年次春学期
のゼミは学生にも教員にも互いに印象が強く、卒業まで学生-教員間のコミュニケーショ
ンが維持されるなどのメリットは大きい。
初年次における学習スキル教育の効果については、補充教育としての意味は充分認めら
れるものの、内容の標準化は画一化につながりやすく、個々の教員の裁量に委ねれば学生
の知識に偏りが生じやすいというジレンマがあり、今後の方向についてはなお検討が必要
である。
37
東海学園大学
ガイダンスがセメスターごとに教員「全員出動」の形でていねいに行われていることは、
標準年限による卒業を促す意味でも、その効果は評価できる。
(3)3-2の改善・向上方策(将来計画)
【視点①及び②から】
(教育課程の体系性、適切性、授業科目内容と教育課程の適合性)
カリキュラムの構造そのものは現行を維持しつつ、個々の授業科目の内容、受講状況等
を精査し、内容的に重複する科目や極端に履修者の少ない科目を整理する作業は、これま
でも行ってきているが、平成 22(2010)年度入学者カリキュラムにおいても実施する計画で、
現在作業過程にある。
シラバスについては、次年度以後、例えば「この授業を履修した人は、その発展として
次の学年で授業○○を履修するのが望ましい‥‥」というように、関連科目・発展科目に
ついての項を設ける。
【視点③から】(学年暦等)
学年暦については特に問題は生じていないが、学生のニーズの多様化から、特に学部単
独では調整が難しい教養・基礎科目群並びに資格・免許関連科目群の開講時間帯をどうや
って確保するかが課題である。このため平成22(2010)年度末までに完了を目指して、時間
割の「ブロック化」(2-2-(1), 13ページ参照)と、開講科目の一部の整理を、全学教育
委員会・学部・教務課が協議し計画中である。現在部分的にのみ行っている一日6限制の
拡大も、教職員の勤務条件や学生の課外活動との兼ね合いから問題はあるが、検討課題に
含まれている。
【視点④から】(厳正な単位認定・卒業要件)
特記事項なし。
【視点⑤から】(キャップ制など)
各学期の履修単位の登録上限設定については、夏休み等を利用した短期留学で取得して
きた単位を加えると制限を超えてしまうなどの事態もあり得るので、今後細部の見直しを
行う。
【視点⑥から】(教育内容・方法の特色ある工夫)
「体験して、強くなる」が本学のモットーである。インターンシップまで行くのが理想
ではあるが、前段階として、正課の教育の中にも実地見学・ボランティア参加等を現在以
上に取り入れ、広げていく方策を検討したいと考えている。
38
東海学園大学
3-3 教育目的の達成状況を点検・評価するための努力が行われていること。
《3-3の視点》
3-3-① 学生の学習状況・資格取得・就職状況の調査、学生の意識調査、就職先の
企業アンケートなどにより、教育目的の達成状況を点検・評価するための
努力が行われているか。
(1)3-3の事実の説明(現状)
就職状況に関しては、民間企業・公務員関係などは就職課が就職活動スケジュール及び
内定状況を、教員志望者については教職課程委員会及び教職指導室が採用試験合否状況を
速やかに調査し、学部教授会等と認識の共有を図っている。また、4 年次ゼミ指導教員が
聴き取り調査に協力している。過去の卒業生の活動状況とその評価の組織的調査はまだ行
っていないが、学内企業展等の機会に、各企業からの来学者にアンケートへの協力を依頼
し、本学学生の長所短所等、率直な評価を回答願っている。なお企業展参加学生の側にも、
アンケートを実施している。
学生対象の調査では、「授業評価アンケート」(→【資料 5-8】)の他に、平成 18(2006)
年度末には「カリキュラム・アンケート」と名づけて 1~3 年次生全員を対象に、カリキ
ュラムそのものに関わる調査を実施した。選択履修科目について希望する科目が履修でき
たか、選べなかった場合その事情は何か、どのような知的啓発を受けたか、希望するゼミ
ナールが選択できたか、現行以外にも希望する開講授業があるかなどを問うた。分析結果
は『2006 年度実施カリキュラムアンケートの結果』(A4 判 8 ページ, →【資料 7-6】) と
して取りまとめられている。回答結果から、カリキュラムには満足度が高いことが確認さ
れた。
この他、学生の意識調査に類するものが、各学部学科でそれぞれ工夫のうえ実施されて
いる。人文学部では「新入生アンケート」と呼んで、毎年、初年次ガイダンスの機会に将
来履修したいコース、高校時代の勉学習慣などについて調査しており、年次的変化も追跡
し、学部の将来計画の参考ともなっている。同発達教育学科では、「基礎演習」の時間を
利用して、入学の動機、希望する資格、将来の就職先の希望、アルバイト状況などの調査
を実施している。春学期終了時には学生生活に関するアンケート調査を行い、授業や学習
に対する自己評価、教育内容や方法についての改善要望点などを回答させた。また、秋学
期終了時には、ゼミ担当の教員が個人面接を行い、簡便なソシオメトリックテストを実施
したり、学生の生活状況や学習状況について聴取したり、必要に応じて指導助言をしてい
る。学科会議において、学生の学習態度・生活態度について全教員が情報を共有するよう
に努めて改善策を話し合っている。
個人情報保護の観点との関連で慎重な扱いが必要ではあるが、人文学部人文学科では平
成 20(2008)年度入学者から 1 年次ゼミ担当教員に、学習や資格取得の計画などを文章化し
て提出させ、教員がコメントを付して指導助言する「修学ポートフォリオ」を導入した。
現在その書式改訂を検討中である。
(2)3-3の自己評価
本学は全学部全学年でゼミ制をしいており、指導教員により個々の学生の学習状況の把
39
東海学園大学
握はほぼできているのであるが、
担当者交代の際の申し継ぎが不充分なケースが見られる。
(3)3-3の改善・向上方策(将来計画)
学習状況そのものは厳格な成績評価を通じて推定されるともいえるが、学生の学習環境
についても事実の把握が必要であるので、生活時間、通学時間、アルバイト時間の実態等
を含めた「学生生活実態調査」の計画を進めている。
また、個々の学生の一貫した指導とその検証のため、個人情報保護に配慮しつつ指導記
録的なものを工夫することが必要であると考えている。
[基準3の自己評価]
本学の教育課程は大学の基本理念に立ちつつ、学部・学科別にそれぞれ現今の社会的ニ
ーズに対応しうる内容を展開しており、授業内容の体系性、学生指導体制の一貫性も保持
されており、学部独自の慣行などによらず全学統一の規程・組織で運用されていることは
評価される。大学設置基準等関連法令の要求するところも、当然のことながら、忠実に履
行されていると認識している。
教育目的の達成状況も、できるだけ多様な視点から検証するよう努めている点は評価さ
れよう。
ただ、
検証の定期的実施について確定したスケジュールがない点は不充分である。
[基準3の改善・向上方策(将来計画)]
学生の就職状況、資格取得状況のように毎年調査することになっているものは問題はな
いが、近年実施した「カリキュラム・アンケート」、「保護者アンケート」などを、今後
どのように継続していくか、年次計画を立てる予定である。あわせて、点検調査機関と、
改革実施機関との関連性を明確化することが必要と考えている。
40
東海学園大学
基準4. 学 生
4-1 アドミッションポリシー(受入れ方針・入学者選抜方針)が明確にされ、適切
に運用されていること。
《4-1 の視点》
4-1-① アドミッションポリシーが明確にされているか。
4-1-② アドミッションポリシーに沿って、入学者選抜等が適切に運用されている
か。
4-1-③ 教育にふさわしい環境の確保のため、収容定員と入学定員及び在籍学生数
並びに授業を行う学生数が適切に管理されているか。
(1)4-1の事実の説明(現状)
本学のアドミッション・ポリシーは、
「勤倹誠実」を校訓とするところから、
「真面目に
こつこつ努力する」学習態度・生活習慣を身につけた人物、また「共生」の理念から、本
学での学修を通じて「社会に役立つ人間」を目指す人物を積極的に受け入れていくことを
開学以来一貫した方針としている。大学での学修に堪える基礎学力は当然求められるが、
むしろ、本学で学ぶことに積極的な意義を見いだして志願する意欲的な学生を受け入れて
きた。
この受入れ方針が充分理解されるよう、学生募集関連のパンフレット、オープンキャン
パス、入試説明会、大学見学、公式ホームページ及びポスター・広告等、あらゆる機会を
とらえてアピールを行っている。特に高校の進路指導担当の先生方に対しては、名古屋市
をはじめ近県の 4 都市において順次入試説明会を開催し、学長・学部長等の大学責任者が
出向き、質疑応答の時間も設け、本学の教育理念について説明している(→【資料 4-1】
)
。
上記のポリシーから、入学者選抜に当たっては、高校生等の進学意欲が確認できるよう、
できるだけ多様な観点からの選抜を行い、志願者の個性が活かせる方式を採用している。
大きく見れば、高校の教科にそった学力試験が中心となる「一般入試」と、教科別の試験
を課さない、広い意味での「推薦入試」に二分されるが、その比率は募集定員ベースでほ
ぼ 1 対 1、実入学者ベースでほぼ 4 対 6 となっている。学部ごとの入学者数と選抜方法と
の関係の詳細はデータ編表 4-1~4-2 に示されている。
選抜方式の種類と概略は平成 21(2009)年度入試の場合、表 4-1-1 のとおりであった
(詳細は→【資料 4-3】
)
。
41
東海学園大学
表 4-1-1
平成 21(2009)年度入学者選抜方法の要点
種 別
一般入試
内容の概略
高校の教科・科目別に対応する試験科目の成績と、高校での学習成果を
総合して判定するもので、本学入試のメインとなっている。3 期に分け
て実施しているが、いずれも得意科目を活かせる科目設定及び配点とし
ている。
センター試験利用入試
大学入試センター試験において本学が指定する教科・科目を受験した者
が出願できる。この方式による入学者は少ない。
AO 入試
本学での学修を強く希望し明確な目的意識をもった専願者を対象とす
る。作文のほか二次にわたって面接を行い選抜する。
スポーツ推薦
高校時代クラブに所属しスポーツで活躍した生徒が学校長の推薦を得
て出願する。一般の選抜と本学指定競技種目(強化種目)対象の選抜と
がある。
資格取得者推薦
大学での学修のために、また将来実社会において有用な、本学指定の資
格をもつ生徒を対象とする専願制入試。
自己推薦
文化・芸術・ボランティア・生徒会活動などで活躍の実績があり、作文
を通じて自己アピールのできる学生から選抜する専願制入試。
公募推薦
学校長の推薦を要するが、他大学との併願も認めている。推薦入試では
あるが、現代文を中心とした総合的内容による「基礎教養問題」を課し
ている。
指定校推薦
地元・近県を中心に、学校長の推薦を得た生徒を対象とし、面接や高校
での学修成果を総合して判定する専願制入試。
東海学園高校特別入試
併設校の「一貫コース」からの進学希望者を対象とし、面接と高校での
学修成果を総合して判定する。
また、この表に含まれないものとして、社会人・海外帰国生徒及び外国人留学生のため
にそれぞれ特別入学者選抜を実施しているほか、3 年次編入学試験をも行っている。外国
人留学生選抜及び編入学試験に関してはそれぞれ独立の募集要項を作成している(→【資
料 4-3】
)
。
3 年次編入については、学部開設当時の指導もあり、比較的大きな募集定員をとってい
るが、その後全国的に短大の四大化が進んだことの影響を受け、志願者が少なく、定員を
活用し得ていない。
つぎに、視点③から入学者数の適切性について考察すると、過去 4 年間については、各
学科とも入学定員超過率は 1.3 倍を超えずに推移している。特に人間健康学部は実習科目
が多いため、
入学者数が入学定員を大きく超えないようリジッドに判定している。
中でも、
管理栄養学科は厚生労働省の指導もあり、特に配慮しているが、定員数が小さいため変動
の影響を受けやすく、若干超過率が高い傾向にある。
本学は少人数教育のメリットを活かす教育方針を取ってきているので、入学者超過の場
42
東海学園大学
合は、必要に応じてクラス数や設備数、実習先を増やす等の措置をとり、教育効果を低下
させないよう充分に配慮している。
なお、人文学部発達教育学科は、平成 20(2008)年度の新設で学年進行中であるが、初年
度は設置認可日程の関係で充分な学生募集活動が行えず、実施できた入試機会にも制約が
あったため、学科としての募集定員を充足できなかったが、この事態は平成 21(2009)年度
入試においては大きく改善されている。
(2)4-1の自己評価
志願者の総数の減少傾向という問題はあるものの、現行の入試制度と、
「入試広報室」を
中心とする広報活動展開により、本学が受け入れたい学生の数的確保と、質的水準の維持
には現時点ではおおむね成功していると考えている。
選抜自体は、公正に実施されており、また、入試方式と入学後の成績、定着率等との関
係は抽出的に調査しているが、大きな格差が生じているというデータは出ていないので、
選抜方式の多様性そのものには問題はないと考えている。
しかし、中・長期的に考えると、
「大学全入時代」に入り、本学の学生募集も順風とは
いえない状況にある。平成 7(1995)年開学と歴史も浅く、大学の規模も中規模であり、学
生募集に当たっては大学の「二極化」を実感させられる場面も少なくない。過去 5 年間の
学部別志願者数の推移は、データ編表 4-2 から読み取れるように、年度ごとの増減や学
部・学科の差はあるが、
全学を通して見ると受験者の絶対数が減少の方向に向かっており、
本学のアドミッションポリシーにふさわしい学生を選抜することが困難になることが危惧
される。入学者確保は私学にとって最大の課題であるが、その前提として、まず志願者の
拡大・確保が先決であると認識している。
(3)4-1の改善・向上方策(将来計画)
高校生、保護者、高校教員への広報手段として、近年大学ホームページの充実が必要と
されている。膨大な費用を要する新聞広告等のマス媒体から、ホームページやオープンキ
ャンパス、入試相談会等きめの細かい広報へと徐々にシフトし、予算を学生の教育に還元
する方向で改善を行うべく検討している。オープンキャンパスは年 2 度の開催となってい
るが、来学者の約 6 割がなんらかの形で本学への志願とつながる行動をとっており、その
効果は大きいので、今後もその内容の充実に努めていく。
入学者選抜方法については、これまで入試方式と入学後の学生の成績・学習態度等の関
わりがイメージだけで議論される傾きがあるので、学生募集方式を再検討する必要が出て
くる場合にそなえ、入学学生の成績等データ(入試種目別の取得単位数・GPA 動向等)の
蓄積・分析を組織的に行う。
上にも触れた「スポーツ推薦」は、地元にとどまらず遠隔地を含め全国からの応募者が
増加しているが、競合他大学と差異化した本学の特色・取り組みを打ち出すことで、学生
募集の全国展開も可能であることを示唆している。大学の将来計画とも関わることである
が、既設学部においても、ユニークな分野への重点化を図っていきたい。
43
東海学園大学
4-2 学生への学習支援の体制が整備され、適切に運営されていること。
《4-2の視点》
4-2-① 学生への学習支援体制が整備され、適切に運営されているか。
4-2-② 学士課程、大学院課程、専門職大学院課程等において通信教育を実施して
いる場合には、学習支援・教育相談を行うための適切な組織を設けている
か。
4-2-③ 学生への学習支援に対する学生の意見等を汲み上げる仕組みが適切に整
備されているか。
(1) 4-2の事実の説明(現状)
(ア)ガイダンスによる支援
入学後の 1 週間が最も大切な時期であると考え、新入生ガイダンスに充分な時間をかけ
ている。本年度入学始期の場合、4 月 1 日~9 日にわたって開催した(この期間中に実施
される健康診断も含む)
。
各学部の教務委員会が立案し、
教授会の承認を得て実施している。
人間健康学部で新入生対象に行っている「フレッシュマンセミナー」もガイダンスの拡張
である(→基準 3-2-(1), 35 ページ)
。
各学部の高学年でのゼミ選択の機会には、
「ゼミ説明会」
(ゼミ担当教員全員が出席する)
、
「一斉オフィスアワー」
(学部共通の時間帯で各ゼミ担当教員が同一内容を繰り返して学生
にゼミ内容を説明し、学生の巡回を可能にする)
、ゼミ紹介冊子の作成などを行って支援し
ている。但し、近年は冊子形態からウェブページに移行している。
基準 3-2-(1)ですでに記したが、本学では在学生に対しても、教員全員出動により、
全学年にわたってセメスター始期ごとに学年別ガイダンスを実施している。在学生に対し
ては単位取得状況、成績等を確認させ、学習に関わる一般的注意のほか、就職、資格・免
許取得に関わる指導をも加えている。
(イ)ゼミ担当教員による支援
本学はすべての学部が演習を 1 年次から 4 年次まで一貫して開講し、かつ必修科目とし
ている。原則として全教員がゼミを分担するが、実質上、
「クラス担任」の役割を果たし、
学生の相談相手となり、科目履修から志望進路にまでわたって指導の責に任じている。
特に 1 年次生対象のゼミでは、高校までとは違う、大学での学習スタイルを身につけさ
せることを達成目標としているが、必要に応じて学習支援からさらに範囲を広げて、学生
生活の在り方の指導にも及ぶ。例えば健康管理や生活習慣、悪徳商法に対する対処方法等
が指導実例として挙げられる。人文学部人文学科で導入した「修学ポートフォリオ」の作
成も、ゼミ担当教員による学習支援をねらいとしている(→基準 3-3-(1), 39 ページ)
。
(ウ)オフィスアワーの開設
全専任教員にオフィスアワーの明示を義務づけている。学習指導はもちろんのこと、学
生と常にコミュニケーションを密にし、学生生活での諸問題、卒業後の進路、学籍の異動
等について、学生一人ひとりに個別に対応している。なお、プライバシー保護には充分配
慮している。
(エ)図書館による学習支援
附属図書館には「指定図書」制度があり、非常勤講師も含め各教員に授業ごとに推薦参
44
東海学園大学
考書を指定ねがい、
複本 5 冊までの範囲で指定図書コーナーに配架し、
年々更新している。
また、一般の参考業務のほか、学生の読書意欲を高めるよう、例えば絵本の展示、原作へ
の誘いとして映画パンフレットの蒐集展示などを行い、読書指導に努めている。
(オ)海外留学支援
本学は現在海外の 6 大学を提携校としており、単位互換も可能となっている。内訳は、
オーストラリア 2 校、イギリス 1 校、カナダ 1 校及びベトナム 2 校である(大学名等詳細
は、データ編表 3-6 に記載)。過去の実施例も含め、海外留学協力校としての英国ウルバ
ーハンプトン大学の「健康・スポーツ系プログラム」以外は、実質的には語学研修が多い。
企画面は全学組織である「国際交流委員会」が担当している。留学派遣生には本学から奨
学金が支援される(→基準 4-3-(1), 47 ページ)
。
(カ)保護者との連携
一人ひとりの学生に自律的な勉学習慣を早期に確立させることに努めているのである
が、保護者、学資支弁者、家庭との連携もまた必要であるので、年に 1 回、教育後援会総
会の機会に保護者との懇談会を開催している。大学の近況や就職状況の報告を行うととも
に、質問・相談等の時間を設け、保護者と教職員との意見交換を行い、学習支援や就職活
動支援に役立てている。
また、毎学期終了時に全学生の保護者に対して、単位取得状況を連絡している。特に高
学年で単位取得状況が思わしくない学生については、保護者に宛てた説明文を同封し、必
要があれば保護者に来学ねがい、学生本人もまじえて、ゼミ担当教員と話し合い、学習・
生活習慣面の指導を行っている。
(キ)学生の意見等を汲み上げるシステム
ゼミ制、オフィスアワー、各種相談窓口等も学生の意見の汲み上げの役目を果たしてい
るが、全学的システムとしては、春学期~秋学期を 1 サイクルとして、学生による授業評
価をほぼすべての授業で行っている。授業の満足度を調査し、改善に結びつけるように、
その結果を教員に知らせている。
(注 学生による授業評価は本学では自己点検・評価の一
環として実施しているので、基準 7-3, 74 ページでも言及している。
)
(ク)入学前指導の試み
人文学部では平成 17(2005)年度入試から数年間にわたって、AO 入試などにより進学が
早期に決まった学生が、高校 3 年の後半を漫然と過ごし勉学の習慣を失ってしまう事態を
おそれて、入学予定者対象に入学前講義を行ったところ、入学許可条件でないにもかかわ
らず、ほぼ 100%が参加した。レポートを提出させ添削して返送した。その他、良書推薦
(入学前に読んでおいてほしい書物)や読書感想文課題などの指導を試みた実例がある。
なお、視点 4-2-②については、本学は通信教育を行っていないので割愛する。
(2)4-2の自己評価
本学は「少人数教育」を特色の一つに掲げ、4 年間を通じてのゼミ制度を各学部が展開
し、ゼミ担当教員は事実上学生生活全般にわたる「担任」業務に当たっている。進路変更
を考えている学生に対しても、まずゼミ担当教員と時間をかけて話し合うことを前提とし
ており、数量的な把握は困難であるが、中退者対策として役立っている。教員は学期によ
っては 1 年次生から 4 年次生まで全学年のゼミを開講するケースも多く、負担が重いこと
45
東海学園大学
は否めないが、社会からも認知されつつある「面倒見のいい大学」を実現するため今後も
ゼミを通じての指導体制の充実に努める。
初年次の学習支援の具体的なケースの評価として、経営学部の 1 年次ゼミ「スチューデ
ントスキル」について、学生アンケートを実施した結果、
「履修について理解できた」
「友
人ができた」
「働くこと・頑張ることの尊さがわかった」等の感想が多くあった。大学で学
ぶことの意義を自覚させ、具体的な目標設定を学生に植え付けることや、入学当初から友
人や仲間づくりをするに当たって非常に有効に作用していると評価できる。経営学部では
この授業を導入する以前と以後では、中途退学者の数が減少しているという事実も存在す
る(データ編表 4-6)
。
人間健康学部による宿泊研修形式の「フレッシュマンセミナー」は学生の評価も高く、
入学当初から、友人やグループができていることをキャンパス内において感じとることが
できる。同学部では、全学を通して比較して中退者の比率が小さいことも、この取り組み
の効果の一つとも推定される(データ編同上)
。
保護者への成績送付、教育後援会総会時の話し合い等は、大学での履修方法について保
護者から理解を得るきっかけにもなっている。
「大学はあまり出席しなくても卒業できる」
などという旧世代の感覚を払拭し、
単位制を根幹としている卒業規定を理解ねがうことで、
保護者からの電話相談や、面談をスムースなものとするのに役立っている。
(3)4-2の改善・向上方策(将来計画)
4 年間を通じてのゼミ開講、オフィスアワー、各種ガイダンスの定期的開催は今後も継
続するが、特に初年次生の学習支援の内容向上に向けて検討を進める計画である。検討主
体としては、平成 21(2009)年内に教務部長・学生部長職等を設ける方向で検討中であるの
で、これを承けて「全学教育委員会」の組織を強化し、各学部の良い面を今後お互いの学
部が取り入れ、全学を見通した学習支援体制を築きたいと考えている。
また、4-2-(1)-(ク)の入学前指導については、実施例の総括・評価を行い、制度化に
向けて検討する。
4-3 学生サービスの体制が整備され、適切に運営されていること。
《4-3の視点》
4-3-① 学生サービス、厚生補導のための組織が設置され、適切に機能しているか。
4-3-② 学生に対する経済的な支援が適切になされているか。
4-3-③ 学生の課外活動への支援が適切になされているか。
4-3-④ 学生に対する健康相談、心的支援、生活相談等が適切に行われているか。
4-3-⑤ 学生サービスに対する学生の意見等を汲み上げる仕組みが適切に整備さ
れているか。
(1) 4-3の事実の説明(現状)
以下上掲視点①~ ⑤の順を追って述べる。
(ア)学生サービス・厚生補導組織と運営方法
学生サービス・厚生補導のため、三好・名古屋両キャンパスにそれぞれ「学生生活支援
46
東海学園大学
センター室」及び「学務課」を設置し対応してきたが、平成 21(2009)年度からの事務局組
織改革により学務課から「教務課」を分離した。このため、三好キャンパス学生生活支援
センター室に加えて、名古屋キャンパスにも学生生活支援センター室を置き、主にクラブ
活動・学寮・下宿・奨学金・留学生等の学生サービス全般を扱うことにした。
また、三好キャンパスには「スポーツ教育推進室」を設置し、運動施設・用具の管理・
貸し出しを行っている。プール、トレーニングルームをもつ 4 号館にインフォメーション
を置き、施設管理とともに利用学生に対して安全指導を行っている。
両キャンパス共に、学生生活支援センターの下に学生相談室を置いている。センターの
運営は、「学生生活支援センター運営委員会」で基本的事項を審議している。具体的な活
動については下記(エ) の項で詳しく述べる。
また、両キャンパスには、それぞれスポーツ寮が設置され、その管理運営のため「寮運
営委員会」が組織されている。
本学への留学生支援に関しては、学生生活支援センター室が窓口となっており、国際交
流委員会との連携の下に、生活相談等留学全般の相談に応ずることとしている。ただし現
在本学に在籍する留学生は少なく、三好キャンパスに大学院生 2 人となっている。
(イ)経済的支援
まず、公的な奨学金制度の活用であるが、毎年 4 月のガイダンス日程に「奨学金ガイダ
ンス」を組み入れ、「日本学生支援機構奨学金」を中心に新入生に説明している。「日本
学生支援機構奨学金」は、近年の不況の影響で、希望者が年々増加している。平成 20(2008)
年度は予約採用者 1 種 30 人、2 種 134 人、合計 154 人(併用 10 人を含む)、新規採用者 1
種 43 人、2 種 148 人(7 月 88 人、9 月 60 人) 、合計 189 人(併用 2 人含む)、総計 343 人
の採用があった。それゆえ既に貸与を受けている学生を含めると、本学では人数で約 1,000
人ほど、
比率的には 3 人に 1 人が日本学生支援機構の奨学金貸与を受けていることになり、
きわめて大きなウエートを占めている。
その他の外部からの奨学金も、募集があったものはすべて掲示し、応募者があれば原則
として申し込みをさせている。但し募集定員が指定されている場合には学生生活委員会に
よる選考を経ての申し込みとなる。
大学独自の奨学金制度としては以下のものがある。
表 4-3-1
名 称
学業優秀者奨学生
本学独自の奨学金制度(注 採用数は平成 20(2008)年度実績)
採用人数
内 容
12
入学後の成績を基に、前年度までの成績上位者に支給され
る。各学科、2 年生以上、在籍数×1.5%の人数を採用。
支給額は年額 12 万円。複数年の支給も認められている。
留学プログラム奨学生
2
本学提携校との協定による長期留学に参加する学生に対し
て、当該期の教育運営費相当額を支援する。
スポーツ奨学生
0
体育系クラブに所属し、国際大会参加または、全国水準1級
と認められたものに支給される。残念ながらここ数年採用者
は出ていない。
47
東海学園大学
なお、やや特殊なものに「教育後援会緊急奨学金」がある。これは卒業間近の4年次生秋
学期において、家計急変のため授業料納付困難におちいった学生に対して、教育後援会が
授業料相当額の3分の1(20万円程度) を支給するもので、平成20(2008)年度1人が採用され
た。
この他、授業料納付困難者に対しては、延納制度・分割納入制度があり、さらに、三菱
東京UFJ銀行及び(株) オリエントコーポレーションとの提携で、総務課および学生生活支
援センター室を窓口として教育ローンの相談にも応じている。また、私費外国人留学生に
対して「授業料減免制度」を設けている。
(ウ)課外活動への支援
現在、三好・名古屋両キャンパスに、体育会クラブ20団体(うち、強化指定クラブ5・平
成21(2009)年度より7)、文化系クラブ19団体、同好会30団体、合計69団体が活動しており、
平成20(2008)年度には両キャンパス総額1千7百万円のクラブ援助金が支給された。援助金
の主な使途は、運動部においては、連盟登録費、大会参加費(公式戦に限る)、備品・消耗
品等を使途とし、文化部は、備品・消耗品、コンクール等の参加費が主な項目となってい
る。例年秋に両キャンパスで催される大学祭の企画・運営のために学生が組織する各キャ
ンパスの「大学祭実行委員会」は、クラブ活動の一つと位置づけられているので、上記の
活動援助金総額には大学祭の経費も含まれている。
大学祭の実施に当たっては、企画・準備の主体は学生たちであるが、学生生活センター
室職員の他、学生生活委員会から教員による「大学祭顧問団」をおき、学生側の実行委員
会に必要な注意を与えている。
本学は学生の課外活動として特にスポーツ活動を奨励・援助しているが、名古屋キャン
パスではグラウンド等運動施設が不足しているため、
学外施設等の借用料も援助している。
いずれのキャンパスで学ぶ学生も、他キャンパスのクラブに加入することも可能で、名古
屋キャンパスの学生には施設の充実した三好キャンパスの運動部に参加する者が多い。両
キャンパスにまたがる活動の支援として、
各キャンパス間でスクールバスを運行しており、
授業時間終了後もクラブ終了時間に合わせて21時までバスの運行を行っている。
三好キャンパスではスポーツ活動中の怪我など、万一の事故にそなえ、保健室に常駐す
る看護師の勤務時間をフレックスにして時間延長をしている。なおキャンパス内にはAED
を三好キャンパス7台、名古屋キャンパス5台設置し、職員・学生対象の講習会も実施して
いる。
(エ)学生相談体制
三好・名古屋両キャンパスとも、「学生生活支援センター」の下に「学生相談室」があ
り、特に心理的側面からの相談体制を整備している。センター長は精神医学の専門家であ
り、学生のメンタル・ヘルスに関わる相談体制の充実に力を入れている。修学支援ばかり
でなく、悩みを「上手に相談できる」ことが社会人になってからも重要になるという見地
から、教育活動の一環の意味も有している。
心理相談員は、名古屋キャンパスでは、専任教員1人、非常勤相談員(心理カウンセラー)2
人が月~金曜の午後毎日、火・木曜日は午前より、相談室で相談に応じている。三好キャ
ンパスでは来談者が比較的少なく、専任1人が金曜日午前に常駐している。センターでは
新入生ガイダンス時にリーフレットを配付し、またニュースレター『さぽーと』(学生生活
48
東海学園大学
支援センターだより) を発行し、心理相談を身近なものにするのに努めており、平成20
(2008)年度には613人の来談者があった。
「保健室」はセンターでの相談の受け付け窓口の役目も果たし、その場で簡単な相談を
受けるとともに、専門の相談員による相談時間等を予約設定している。三好キャンパスで
は毎月、名古屋キャンパスでは年に数回、校医による健康相談日を設定している。
なお、セクシュアルハラスメントに係る相談については、基準11-1-(1), 96ページで
詳述しているので、その項にゆずる。
(オ)学生の意見等の汲み上げ
学習支援に関わる意見の汲み上げについてはさきに触れたが(基準4-2, 45ページ)、学
生生活、教職員・学生のマナー、大学の施設設備に関わることや、部活動に関することま
で、学生が気軽に意見、要望が出せるように、「提案箱」を各キャンパスに設置している。
ふだんは施錠してあり、
月に一度、
学生生活委員会の前に開錠し委員会で内容を検討する。
教学に関することは教務委員会に送付するが、学生生活に関わることは学生生活委員会で
取り上げ、各意見や質問に対し一つ一つ回答している。改善可能なものについては即座に
対応しているが、大きな費用を要する要望事項等については状況説明を行っている。
具体例として、スクールバス運行増便の希望に対して、実現して最終バスの時間が延長
されたことなどをはじめ、設備面でも可能なものについては迅速に対応している。
(2)4-3の自己評価
学生サービス・厚生補導のための事務組織は、三好・名古屋両キャンパスにそれぞれ置
かれているが、平成 20(2008)年度より学生生活支援センター室長が両キャンパスを兼務し、
キャンパス間に格差が生じないよう統一的な対応になったことは評価できる。
本学の奨学金制度は、平成 19(2007)年度より学業優秀者奨学生を、それまでの各学部・
各学年 1 人から、「各学科・各学年、1.5 パーセント以下」に改正し、実質採用者数を増
加し、学生の学習意欲向上にもつながっている。ただし、学費支弁困難者に対する緊急奨
学金制度等はいまだ確立されているとはいえず、高学年になってからの不本意な退学も発
生しているので、早急な対応が迫られている。
クラブ活動については、両キャンパスそれぞれ活性化に努め、三好キャンパスでは硬式
野球部が愛知大学野球リーグで活躍、サッカー部は東海リーグで第 33 回総理大臣杯全日
本大学サッカートーナメントに出場し、硬式テニス部は東海一位で全日本インカレ出場
等々運動部が活躍し、名古屋キャンパスでも女子ソフトボール部が平成 19(2007)年度西日
本インカレ優勝、スキー部は平成 19(2007)~20(2008)年度連続で東海地区技術選手権大会
で個人・団体優勝するなど、輝かしい成績を収めた。学生、コーチの努力は言うまでもな
いが、支援体制が効果を挙げているものと自己評価している。またその他のクラブ・同好
会なども地域社会との連携活動に積極的に関わっており(→基準 10-3-(1), 91 ページ以
下)、活発に活動している。
メンタル・ヘルス面での支援については、本学からは大きな社会的問題を起こしたよう
な学生は出ておらず、
専門家によるカウンセリングが効果を上げているものと考えている。
保健室もスタッフを増員しており、
学生の健康管理面でプラスになっていると評価できる。
49
東海学園大学
(3)4-3の改善・向上方策(将来計画)
昨今の経済・雇用情勢の悪化に伴い、経済的理由により中退する学生が増えることは最
も懸念されるところなので、経営環境のゆるすかぎり、困窮者に対する学費支援の方策を
立てていく計画である。
また、他キャンパスでの受講はもとより、クラブ活動の活発化を促す意味でも、スクー
ルバスの現在以上の増便、ダイヤ改正などを検討中である。
4-4 就職・進学支援等の体制が整備され、適切に運営されていること。
《4-4 の視点》
4-4-① 就職・進学に対する相談・助言体制が整備され、適切に運営されているか。
4-4-② キャリア教育のための支援体制が整備されているか。
(1)4-4の事実の説明(現状)
本学は学生の就職支援に関して審議・検討・調整・企画・実施する組織として、各学部
に「就職委員会」をおき、さらに必要に応じて「全学就職委員会」
(3 学部就職委員会合同
の委員会)を開き、学生の就職活動支援体制を構築している。各学部の就職委員会は、教
授会選出の教員によって構成されている。
事務組織としては、三好・名古屋両キャンパスに就職課があり、平成 21(2009)年度より、
各々に課長を配置し、
職員数は三好キャンパス 6 人、
名古屋キャンパス 4 人となっている。
就職課は、本学の就職業務全般を取り扱い、学生に対する就職指導、求人企業の開拓、職
業紹介、就職相談などを通じて学生の就職活動の支援を行っている。両キャンパスの就職
課には「就職相談コーナー(就職相談室)
」を常設しており、最近 3 年間の年間相談数は
平均して約 3,200 件(なお 4 年次生の在学者総数は平均して約 860 人)であった。平均す
ると 1 日につきほぼ 13 件の相談を受けていることになる。
就職課が就職委員会と協動して実施している主な就職支援事業は以下のとおりである。
(ア)就職ガイダンス
春・秋学期始期の 1~4 年次生に対するガイダンス(学年全体のガイダンスあるいはゼ
ミ別のガイダンス)をはじめとして、3 年次生に対しては、4 月から 7 月までの春学期に 7
回、就職活動に向けての心構えと実践対策の指導を実施し、就職意識を育て高めるための
指導を行っている。内容項目は次のとおりである。
1.
2.
3.
4.
就職準備講座
ゼミ別ガイダンス
適性検査
模擬試験(一般常識)
5. 公務員ガイダンス
6. インターンシップ講座
7. 夏休み前対策ガイダンス
続いて秋学期には、9 月から 2 月の週ごとに 20 回、具体的で実践的な就職活動への指導
を行っている。その項目は次のとおりである。
50
東海学園大学
1. 就職活動準備ガイダンス
2. 自己分析講座
3. 企業等の採用担当者による講演
4. 模擬試験(SPI)
5. 自己 PR 講座
6. インターネット活用講座
7. 志望動機の書き方講座
8. OB・OG の体験談
9. 履歴書・エントリーシートの書き方講座
10. 業界・企業・職種徹底研究
11. 就職活動のマナー講座
12. 面接対策講座(集団面接)
13. 業界・企業研究会(詳細→(エ)
)
14. 公務員ガイダンス
15. 学内求人情報ナビの使い方
16. 学部別研修
17. 履歴書の書き方注意事項講座
18. 面接対策講座(個人面接)
19. 学部別ガイダンス
20. 学内企業展(詳細→(イ)
)
(イ)学内企業展
毎年 2 月、3 年次生(次年度卒業予定者)を対象に学内で 3 学部合同の企業展を開催
し、就職活動の実際に向けて、学生一人ひとりに対する個別的で具体的な就職指導を開始
している。学内企業展には、地元企業を中心に多数の企業の参加を得ている。平成 20(2008)
年度の学内企業展には 172 社の参加があった。参加学生は、当該学年在籍者数 860 人に対
し 537 人(62.4%)であった。
これは前年度の参加学生数より約 10%減であったが、企業独自の採用活動の早期化の影
響を大きく受けたためと考えられる。なお年々、企業展への参加企業の業種に多様化と拡
大化の傾向がみられ、参加企業からの協力がさらに重要になっている。
(ウ)保護者対象の講演会・懇談会
平成 17(2005)年度より、
「ニート・フリーター対策」をテーマとした文部科学省補助事
業を行ってきたが、平成 19(2007)年度からそれを継続するものとして、秋に行われる両キ
ャンパスの大学祭において、保護者向けに就職活動に関する講演会および懇談会を開催し
ている。近年のニート・フリーター問題を中心テーマとし、就職支援活動の専門家を招い
て講演会を開き、学生の就職活動に対する保護者の協力や連携などの理解を深め、ニート・
フリーターの予防に重点を置いた対策に努めている。
平成 20(2008)年度の保護者参加数は、名古屋キャンパスは 69 人、三好キャンパスは 52
人であった。なお、同年度の特徴として、保護者からの相談件数が増加傾向にある。
(エ)業界・企業研究会
「業界・企業研究会」は毎年 11 月、3 年次生(次年度卒業予定者)を対象として実施し
ているもので、東海地方を中心に各業界を代表する企業の方々を招いて、学生が各企業の
業務内容を直接具体的に学ぶ機会を設けようという趣旨のものである。平成 20(2008)年度
は 20 社の参加を得た。また参加学生は、延べ数で 1,358 人であった。
さらに、事前的に 8 月・9 月に、全学部の全学年を対象として「企業見学会」を開催し、
平成 20 (2008)年度は、見学企業が 5 社、総参加学生 105 人であった。
(オ)求人企業検索システム
就職課に常備されている端末から、東海学園大学学生専用の求人システム(J-NET と利
用契約を結んでいる)へのアクセスが可能であり、ID とパスワードを取得した学生は学外
からも容易に求人企業を検索することができる。このシステムには、本学就職課が受け付
51
東海学園大学
けた求人票をはじめ、東海地方を中心とした多数の企業の求人情報がデータベース化され
ている。本学学生は同システムを利用して求人情報の入手、資料請求、説明会の予約など
を行うことができる。
なおこの他に、全国的な就職情報専門のサイト、例えば、
「リクルート・ナビ」、
「日経
就職ナビ」
、
「毎日就職ナビ」などへのエントリーについても指導を行っている。
(カ)
『就職ガイドブック』の配布
3 年次生全員に就職課編集・発行の冊子『就職ガイドブック』を配布している。紙面は
120~130 ページで、本学学生の就職活動に合わせて必要な知識・情報が過不足なく掲載
されている。
(→【資料 4-6】
)加えて『履歴書・自己紹介書の書き方』というパンフレッ
トも配布している。
(キ)
『就職 News Letter』の発行
就職委員会および就職課が編集・発行している学内ミニ就職情報誌である。掲載内容は、
就職ガイダンス・学内企業展などの実施案内、就職内定者の報告、卒業生からのメッセー
ジ、各企業の担当者からのアドバイス、保護者からの要望などである。
(ク)内定取消しに対する学内対応と現状
この「内定取消し」問題は平成 20(2008)年度の特記事項である。年度後半の深刻な経済
不況のもたらした企業経営の悪化による内定取消しに対して、
就職課および就職委員会は、
愛知労働局との相談・指示と連携を持ちながら学内連絡網を作り、内定取消しの対応にあ
たってきた(→【資料 4-6】
)
。
しかしながら、6 人の学生に内定取消し、1 人の学生に入社延期の通知を受ける事態と
なった(内定取消し企業は 5 社、入社延期企業は 1 社)
。さいわいその後、上記の内定取
消しを受けた学生 6 人のうち 4 人は、別の企業から内定を受けることができた。
(ケ)キャリア教育に対する連携体制
視点 4-4-②から、キャリア教育のための支援体制に関して述べると、本学のキャリア
教育は上記の就職委員会及び就職課によるもの以外にも、各学部の講義・演習・実習等を
通じて幅広い支援体制が整備され、実施されている。
授業科目として代表的なものを挙げると、まず各学部共通の科目として、
「基礎教養Ⅰ」
「基礎教養Ⅱ」
「基礎教養Ⅲ」が開講され、
「キャリア・マインド」
、
「コミュニケーション
力」などの育成、SPI 対策を目的とする授業が行われている。この他に経営学部では、
「キ
ャリアサポートⅠ」
「キャリアサポートⅡ」
「キャリアサポートⅢ」
、人文学部では「キャリ
ア研究」の授業が行われている。また人間健康学部においては、カリキュラム編成そのも
のが、養護教諭、スポーツリーダー、管理栄養士など学生が将来取得をめざす資格・職種
にマッチした内容になっている。各学部とも演習、補習、さらに個々の教員が主催する勉
強会など、さまざまな形で個別指導を中心とした支援が意欲的に行われ、実績を上げてい
る。
(コ)学部教員との連携
就職委員会・就職課の主催する各種の行事の案内、印刷物の配布等については、確実・
迅速な周知のため、学生を直接把握しているゼミ担当教員が協力している。進路調査や、
就職課員によるアナウンス等についても、授業に支障のない範囲内で時間をとっている。
また、学部によっては年 1 回程度、企業の人事担当者等に来学ねがって講演を依頼し、現
52
東海学園大学
下の就職情勢について認識を深め、本学の学生の長所と弱点について忌憚ない評価を聞く
など、就職委員会・就職課任せにするのでなく、専任教員全体が就職支援に取り組むよう
に努めている。
(サ)教員志望者への支援
本学はすべての学部が教職課程認定を受けており、教員への道が開かれている。教員免
許取得のためのカリキュラム運用は、全学組織としての「教職センター」と各学部の「教
職課程委員会」の連携によって進められているが、各自治体の採用試験対策の指導は、就
職課の就職指導とはやや性質を異にするので、上記教職センターが夏休み等も利用して、
積極的に行っている。その効果もあって、近年中学校教諭(国語)
、養護教諭、栄養教諭な
どの採用試験において良好な結果をおさめた。
(シ)進学支援
ここでは大学院進学に限って述べると、本学から学内・他大学大学院への進学志望者は、
きわめて少なく、個々の学生の大学院進学相談は、おおむね 3 年次生~4 年次生の専門ゼ
ミ担当教員の指導によっている。正課外のいわゆる「自主ゼミ」の形で進学指導のための
補充教育が行われているケースもある。
(2)4-4の自己評価
就職実績から考察すると、平成 20(2008)年度は、本学全体で卒業生が 857 人、うち就職
希望者が 728 人、うち就職決定者が 694 人、進学者が 24 人で、就職率(就職決定者数/就
職希望者数) は 95.3%であった。学内企業展の参加率(企業展参加学生数/在籍者数) は、
全体で 74.2%であり、その学内企業展参加企業 172 社のうち本学の学生が就職した企業は
90 社(52.3%)で、参加企業に就職した学生は約 200 人で全就職者の約 28.8%に相当する。
このような数字的状況は、本学開学以来ほぼ同水準を維持、ないし上昇傾向にあるところ
から見て、就職支援に関しては相当程度の成果をあげていると評価できる。
民間企業以外では、公務員・教員等の進路に関しては実績が上がりつつあり、指導の成
果と自己評価している。
なお、大学院進学支援に関しては希望者・進学者とも実数が未だ少ないため、評価を下
すことは困難である。
(3)4-4の改善・向上方策(将来計画)
今後の就職支援体制強化のあり方としては、
すでに部分的に実行しているところであるが、
(ア)学内企業展参加企業との関係を維持・強化・拡大すること
(イ)東海地域の地元企業や商工会議所との交流を促進し、
「産学協同」の方向を追求
すること
(ウ)卒業生、同窓生と在校生の交流を促進すること
(エ)いわゆるミスマッチなどによる早期離職の卒業生に対して再支援を行うこと
(オ)キャリア教育の視点から学内の他部署や他委員会との有機的連携を図り、学生
の社会人としての基礎力養成に努めること
などが特に必要であると考えている。加えて、東海高校の卒業生のネットワークを活用す
53
東海学園大学
ることも有効である。
進学支援としては、大学院進学希望者や各種専門学校入学希望者に対して、専任教員が、
演習、個人指導等を通じてさまざまな形で支援を継続することとしている。特に大学院進
学については大学の将来計画とも関連することであるので、ニーズの組織的調査を計画し
たい。
[基準4の自己評価]
学生募集についてはポリシーは明確であり、多様な入試方法もそれぞれの特色を活かす
意味で効果を上げており、公正に運用されている。平成 21(2009)年入試までで見るかぎり、
基礎学力と勉学態度の両面から、本学での教育にふさわしい学生の確保に成功している。
学生数も、教員スタッフや施設設備と見合った形で管理されており、いわゆるマスプロ教
育の弊害等を生じず、本学の掲げる「少人数教育重視」が実現している。
平素の学習・学生生活・メンタルヘルス・クラブ活動・海外留学・就職活動の支援体制
も、組織ごとの責任分担が明快であり、教員組織と事務組織の連携も保たれており、適切
な運営が行われていると自己評価している。
キャンパスが二か所に分かれているため、「学生サービス」の質に格差が生じるならば
学生の不満につながるので、この点には特に注意を払っているが、近年全学統一的な視点
から支援体制の組織整備が進んできていることも評価できる。但し、部課長・室長クラス
のキャンパス間兼務が多くなっている点に問題があるが、事務組織改革の過程途上の措置
としてやむを得ないものと考えている。
施設面でのサービスについては基準 9 で記述する。
[基準4の改善・向上方策(将来計画)
]
入学者の数と質の確保については現在のところ深刻な事態には立ち至っていないが、将
来とも適切な定員管理が持続できるか否か、楽観を許さないものがある。本学では学長の
下に「総合企画室」を置き、進学動向の調査データに基づき、本学の将来の重点分野をい
ずれに指向すべきか、平成 20(2008)年以来集中的な研究に着手しているが、その検討を促
進することにしている。
54
東海学園大学
基準5. 教 員
5-1 教育課程を遂行するために必要な教員が適切に配置されていること。
《5-1の視点》
5-1-① 教育課程を適切に運営するために必要な教員が確保され、かつ適切に配置
されているか。
5-1-② 教員構成(専任・兼任、年齢、専門分野等)のバランスがとれているか。
(1)5-1の事実の説明(現状)
本学の教員組織はデータ編表 F-6「全学の教員組織」に示した。大学設置基準上の必要
教員数は、本学の場合 91 人であるが、現員(設置基準方式で算出)は 104 人となってい
る。また、各学部・学科及び研究科において、大学設置基準並びに大学院設置基準の定め
るところにより教育課程を適切に運営するに必要な専任教員数を配置している。
学部における専任・兼担・兼任(非常勤)の教員構成は、同じくデータ編表 F-6 記載
のとおり、専任教員は経営学部 27 人、人文学部 46 人、人間健康学部 31 人で、非常勤教
員数は経営学部 64 人、人文学部 121 人、人間健康学部 141 人となっている。大学院につ
いては、学部教育との連続性・整合性に配慮して、学部の教員が兼担しており、大学院専
任教員は置かれていない。
学部別に見ると、人文学部の専任教員数がその収容定員及び他学部の教員数に比してや
や多くなっているが、設置時、旧東海学園女子短期大学の改組転換として認可された事情
が背景にあるためである。但しいずれの学部の専任教員も、主たる担当科目は所属学部に
おいているが、各学部教務委員会の連携により、相互に他学部・他学科の科目も担当して
いる。
専任教員の男女別の構成は、データ編表 5-1 に示すとおり、全教員数(実数)105 人
のうち男性教員数 73 人(69.5%)
、女性は 32 人(30.5%)となっている。また、教員の年
齢別構成は、データ編表 5-2 のように、40 歳代が 3 割、50 歳代が 3 割 5 分で全教員の 6
割以上を占めている。現状では 65 歳以上の教員が 2 割 5 分と、やや高齢化している感が
あるが、これは、本学の学部・学科はすべて設置時の予定教員審査を経ており、教歴・研
究歴の豊富な教員の配置が優先されたことが影響を残しているためと見られる。
開講授業科目における専任・兼任比率はデータ編表 5-4 に示した。教育課程を適切に
運営するため、専門分野の主要科目には専任教員を配置する原則は貫かれているが、非常
勤講師担当科目がやや多くなっている。これは、学生が幅広い教養を身につけられるよう
多様な科目を用意していること、人間健康学部は諸資格・免許を取得させるため開講科目
数が多いこと、また全学で外国語科目において少人数クラス編成をとりネイティブ・スピ
ーカーの非常勤講師を多数委嘱していることなどにより、兼担・兼任への依存度が高くな
っているものである。
(2)5-1の自己評価
3 学部 5 学科のすべてにおいて、大学設置基準に定める必要専任教員数が充足されてい
る。しかし、上述の設置時の事情等により、学部・学科間に実員数の差異がかなりあるの
で、大学としての将来計画を念頭に置き、中・長期的な調整を進める必要があると考えて
55
東海学園大学
いる。
非常勤講師への依存率の問題は、大学の規模に比して教育領域が広いので、必要な科目
を提供し、かつ多様な授業を実施していくために、大学経営上人件費の問題はあるが、非
常勤講師依存率のある程度の高さは必要であると考えている。運用面では、外国語科目担
当のネイティブ・スピーカー、心理実験指導担当の若手研究者等に授業を依頼するに当た
っては、専任教員から「まとめ役」の責任者を選び、本学の教育上の要請を充分説明のう
え委嘱しているので、授業内容とレベルの一貫性の維持には問題はないと見ている。
教員の年齢別の構成については、実習・実技関係の科目を中心に、若手教員の助教や任
期制講師としての任用が順次進められており、
「若返り」が進んでいることは評価できる。
大学院においては、学部の教員が大学院の授業を兼担しているため、学部教育と大学院
の有機的な連関が可能となっている。
(3)5-1の改善・向上方策(将来計画)
基準 3「教育課程」の節でも述べているように、すべての学部・研究科が、社会の変化
や、学生のニーズの多様化に対応した教育課程・授業科目の見直しを進めているところで
あり、専任教員の学部・学科間異動も順次行ってきているが、引き続き、設置基準の遵守
はもとより、教育課程との整合性を考慮した慎重な教員配置に努め、担当分野、年齢、男
女比、大学院担当等の各面でバランスのとれた教員組織を実現していきたい。このための
検討組織として、学長の主宰する「総合企画会議」において、毎年各学部の教員数、配置、
専攻分野、年齢構成等を一覧表により検証し、細部にわたり審議し、成案を得たものは大
学評議会に諮ってきたが、今後も引き続き作業を進める。
5-2 教員の採用・昇任の方針が明確に示され、かつ適切に運用されていること。
《5-2の視点》
5-2-① 教員の採用・昇任の方針が明確にされているか。
5-2-② 教員の採用・昇任の方針に基づく規程が定められ、かつ適切に運用されてい
るか。
(1)5-2事実の説明(現状)
本学における教員人事は、大学設置基準・大学院設置基準等に準拠して行われることは
当然であるが、大学の規程としては「東海学園大学専任教員採用規程」
(以下「採用規程」
という。
)及び「東海学園大学教員昇任規程」
(以下「昇任規程」という。
)を定めている。
これを補うものとして採用・昇任等のための審査にあたっての必要事項や手続きを「東
海学園大学教員採用・昇任内規」
(以下「採用・昇任内規」という。
)において定めている
(→【資料 5-1, 5-3】
)
。これらは全学一本の規程及び内規であり、学部ごとの人事規程
や、特殊な慣行は存在しない。
本学の人事はすべて大学全体の教育方針と将来計画に基づいて進められている点に特
色がある。学部・学科等の教育組織の教育研究上の必要性や実情などをふまえることは当
然であるが、教員の適切な配置はまず学長主宰の「総合企画会議」において審議される。
特に、新規採用人事については、総合企画会議のメンバーである関係学部長から人事の必
56
東海学園大学
要性を説明し、了解が得られたものについて、はじめて大学評議会に諮られることとなっ
ている(採用規程第 2 条)
。
総合企画会議と大学評議会における審議においては、教員の転退職に伴う人事の場合も、
もちろん教育の継続性は尊重されるが、自動的な「後任補充」という考えをとらず、設置
基準上の必要教員数、現学生及び志願者のニーズ、大学の将来計画など各種の視点から人
事の方向性を討議している。このため学部長の申し出から大学評議会として当該人事の着
手を承認するに至るまでに、かなり検討を重ねるケースも生じる。
教授会では、大学評議会の審議結果をふまえ選考委員会を設置する(同第 3~4 条)
。選
考委員(原則 3 人、増員も可)は教授会構成員の互選で選出される。
採用人事の進め方は選考委員会の責任に属することがらであるが、本学では公募による
場合がほとんどである。応募者の提出書類、業績等は「採用・昇任内規」で詳細を規定し
ているが、本学が「教育重視」を掲げるところから、応募者に教育上の抱負等を文章化し
て提出ねがうケースが一般化しつつある。また、最終段階の候補者については選考委員の
他、学部長が面接を行い、本学の建学の精神と教育理念について理解をねがうことも、慣
行として定着してきた。
人事候補者の業績評価については、
「採用・昇任内規」で詳細な基準を定め、数値化(点
数制)を行っている。点数化されるものは研究業績と、教育業績の両面にわたっている。
研究業績についてはほぼ学界の通念に従っている。教育業績については、高等教育機関以
外の職場からの応募者については従前の職場との違いから点数算出が困難な場合もあり、
できるだけ柔軟に運用している。なお、助教に応募する若手研究者など、初めて大学の教
員を志す候補者については教育業績点は算出せず、必要な基準点から外している。
昇任(内部昇格)人事については、本学は「自己申告制」をとっている(昇任規程第 2
条)
。昇任を希望する現職教員は、
「昇任規程」を参照し毎年一定の時期までに業績資料を
添えて学部長に昇任審査を申し出る。学部長は、学部「教学委員会」の意見を聞き、教授
会に「昇任審査委員会」の設置を提案する。審査委員会は「採用・昇任内規」別表に基づ
き本人申し出の研究・教育・社会的貢献等のデータの検証を行い、結果を教授会に報告す
る。自己申告が原則であるが、通常学部長が、全体を見渡しアドバイスを行うなど、人事
の円滑のために調整機能を発揮している。
教授会は、新規採用人事については選考委員会から選考結果について報告を受け、審議
する。教授会構成員の過半数の賛成を得た場合には大学評議会に上程され、大学評議会と
しての審議決定を行う。大学評議会の承認を得た採用人事は、理事会に諮られることにな
っているが、個別人事については大学の自主性にゆだねられている。但し、管理職任命の
場合は別である。昇任人事についてもほぼ同様であるが、昇任の場合は理事会との関係に
ついての定めはない。
以上の諸規程の根本は開学以来大きな変更はなかったが、平成 19(2007)年に学校教育法、
大学設置基準及び大学院設置基準等、高等教育の根幹に関わる法令の大改正が行われ、こ
れに対応するためつぎの措置をとった。
改正前に助教授であった教員は全員
「准教授」
に移行した
(平成 19(2007)年 4 月 1 日付)
。
専任講師は、本学では時限的に撤廃していくこととした。このため、現に専任講師である
教員は平成 19~23(2007~11) 年度までの 5 年間に、准教授としての資格条件を充たすよ
57
東海学園大学
う努力ねがうことにした。専任講師から准教授への昇格はその後順調に進んでいるが、万
一この間に昇格が実現しなかった場合には、平成 24(2012)年度からは助教として遇する。
なお平成 21(2009)年 5 月現在専任講師職にある教員数は、全学で 14 人である。
法令改正前は、若手研究者などで(旧)助教授として採用するには教育経験、研究業績等
が不足する候補者を、専任講師として任用してきたが、新たに「助教」の職が設けられた
ので、今後はこれを活用していく。資格要件はほぼ専任講師相当としており、教授会構成
員となる。平成 21(2009)年 5 月現在助教職にある教員は、全学で 4 人である。
今後は「教授-准教授-助教」が学部教育の中核をになうことになるが、教育研究の円
滑な実施を助ける業務に当たる者として、助手をおいており、実験・実習系の分野におい
ては不可欠の存在となっている。助手人事は「東海学園大学助手に関する規程」
(→【資料
5-1】
)によって進められている。なお、助手は教授会には参加しない。
また、教養・基礎教育の充実を期するため、特に学生の実地体験と個別指導が重要であ
る 4 分野(外国語・情報教育・スポーツ関連・キャリア教育)の科目群について、任期制
講師(任期 1 年、更新 4 回まで)制度を導入した。職務・待遇等の詳細は「東海学園大学
任期制教員の雇用に関する規程」
(→【資料 5-3】
)に定めている。契約による雇用である
が、総合企画会議の議を経た大学評議会人事として行われ、平成 21(2009)年 5 月現在任期
制講師職にある教員は全学計で 3 人である。関連教授会にはオブザーバー参加が可能であ
る。
なお、以上はすべて通常の人事に関して記述したものである。学部・学科等の新設に伴
う予定教員人事は学長の下に置かれる「設置準備委員会」が担当する。学校法人・大学設
置審議会の教員適格判定をまって、最終段階において大学評議会において一括承認の手続
きをふんでいる。このことは「採用規程」に了解事項として付記している。
(2)5-2の自己評価
すべての人事が明文の規程に基づいてオープンに進められ、結果においても適切な人材
の着任や昇格が実現していることは高く評価できる。公募の場合応募者は多数あり、選考
もおおむね迅速に進められ、転出者があってもカリキュラムの定める授業が実施できない
ような事態は避けられている。
教員新規採用人事は、本学が教育機能の重視を掲げるところから、新規採用者には建学
の精神と人材養成目標に関し充分に理解ねがうことを第一義とし、採用に当たっては「本
学教員としての資質も充分勘案」することを規程にも盛り込んでいる(採用規程第 9 条)
。
このため選考委員や学部長による面接を実施し、さらには可能な限り学長との面談の機会
を設けてきたことなど、選考の実質化に努めていることは評価できる。また、選考・審査
にあたっては研究業績のみに偏することなく、教育実績に高いポイントを与えていること
も特色として評価されよう。
さらに、大学設置基準第 14 条において、教授となることのできる者の資格の一として
「専攻分野について、特に優れた知識及び経験を有すると認められる者」
(准教授について
もほぼ同趣旨)と定められているように、大学教員採用の門戸は社会人・職業人に開かれ
ているので、本学もこれを活用してきた。
「採用・昇任内規」では「研究教育界以外から実
務上の優れた業績を有する者を教授として採用する場合、個別のケースごとに、実務経験
58
東海学園大学
(職務経験)の担当科目との適合性、その専門性の高さ等を評価して判断する。
」
(第 3 条
の 4)としており、
「数値化(点数化)
」との関連で運用上の困難はあるものの、職業人養
成を目指す本学の方向性として評価できる。
(3)5-2の改善・向上方策(将来計画)
採用・昇任に関する現行規程の細部の見直しは今後も継続するが、当面、上に述べた専任講
師職の時限的整理を円滑に進めること、並びに、助教や任期制講師の職にある若手教育研究者
の前途が開けるよう、きめ細かい配慮の上で規程を運用していくことが必要である。総合企画
会議を中心に点検を欠かさないようにしたい。
5-3 教員の教育担当時間が適切であること。同時に、教員の教育研究活動を支援す
る体制が整備されていること。
《5-3の視点》
5-3-① 教育研究目的を達成するために、教員の教育担当時間が適切に配分されて
いるか。
5-3-② 教員の教育研究活動を支援するために、TA(Teaching Assistant)・
RA(Research Assistant)等が適切に活用されているか。
5-3-③ 教育研究目的を達成するための資源(研究費等)が、適切に配分されてい
るか。
(1)5-3の事実の説明(現状)
平成 20(2008)年度における専任教員の週当たりの担当授業時間数は、データ編表 5-3
に示すとおりとなっている。90 分の授業をもって 1 回とし、1 回を 2 時間として基準時間
を設定している。
専任教員の学期ごとの担当授業コマ数は、経営学部で平均 7 コマ前後、人文学部で 5 コ
マ前後、人間健康学部で 8 コマ前後となっている。経営学部では大学院の授業も担当して
いる。人文学部では、発達教育学科が年次進行中で全授業の開講に至っていないため、数
字的に小さくなっている。人間健康学部では専任教員数に比して開講科目が多く、その結
果担当コマ数が平均より多くなっている。また授業時間割表にある担当授業時間のほか、
臨地実習等、教室外での教育指導もあり負担が大きい。
授業運営については、設置基準に基づき 1 単位あたり 15 時間の講義を基本とした学習
内容が授業計画(シラバス)に明記されている。必要な補講を欠かさないなど、その実質
化に努力を払っており、この点はさきに基準 3-2, 31 ページで述べた。
視点 5-3-②から見ると、本学は「ティーチングアシスタントに関する規程」
【資料 5
-6】に基づき、教育の質的向上、並びに大学院生の学習研究能力の向上に資するため、
教育補助業務に大学院生を登用する TA 制度を設けている。
TA の目下の具体的運用としては、
「情報リテラシー」
「コンピュータ簿記」等の実習科
目中心に、TA が補助者として学生指導を行っている。指導教員の具体的な指導の下に行
われており、担当する大学院生自身の将来に向けた教育訓練の機会ともなるよう配慮され
ている。
59
東海学園大学
つぎに、視点 5-3-③から研究費の配分について述べる。本学では、教員の裁量によっ
て使用できる広義の研究費として、狭義の「個人研究費」と、
「実験実習費」を別費目とし
て立てており、いずれも教授会の審議を経て配分している。
個人研究費は教員 1 人あたり 50 万円として積算されているが、学内にも「競争的環境」
を実現するねらいから、総額の 50%を一律配分とし、残る 50%は「申請研究費」と呼んで
年度当初にプロジェクトの形で申請を受け付け、審査の結果により配分している。また年
度末には研究成果の報告書の提出を義務づけ、次年度の配分の際の参考としている。実験
実習費に対しても同じ考え方をとり、学部・学科全体として必要な設備備品費等を控除し
た残額について、個々の教員に必要最低額を保障した後、申請計画により配当している。
それぞれの性質・使途等についてまとめれば次の表 5-3-1 とおりである。
表 5-3-1
費 目
研究費
研究費及び実験実習費の配分
区 分
個人研究費
内 容
専任教員(特任教員含む)一人当たり 25 万円。原則として、図書、
学術雑誌、パソコン、什器、一般的文具、写真、消耗品等の購入、
発表をしない学会、研究会への出席、講習会参加、博物館等見学、
学会等諸会費等。
(なお、図書の大型コレクションは附属図書館が
計画・実施)
申請研究費
テーマを定めた研究で、基本的に科学研究費の基準に準じて申請・
審査する。助教、特任教員、任期制教員は申請研究費を申請できな
い。
実験実習費
演習・実習・講義等で学生のために使用する教材、AV 資料、消耗
品関係費用。
調査旅行等の学生指導経費、
主に学生が使用する機器、
実験設備等の更新・充実、ゼミの教育成果発表のための諸経費等を
含む。
(2)5-3の自己評価
専任教員の教育研究環境については、
本学は 6 コマを責任最低授業時間としてきており、
この数字そのものはおおむね妥当であると判断しているが、5-3-(1)で述べた事情に加え
て、特定分野への学生の集中傾向、カリキュラム改革に伴う新旧カリキュラムの並行によ
る負担増などがあり、一部専任教員の授業担当時間数が増加しており、教員間に不公平感
を生んでいることは否定できないので、改善策が必要である。
TA 制度は、学部教育の補助者制度として有効に活用されている。教育の充実に資する
のみならず、TA 自身にとっても自己研鑽の好い機会となっており、評価できるが、全学
への拡大のテンポがおそい。
個人研究費は、専任教員の恒常的な学術研究レベルの維持の観点から、妥当な基礎額が
配分されているといえる。申請研究費の採択は、厳正かつ公平に行われているが、本学の
研究者の分野は文献研究系、フィールドワーク系、実験系、実技系など多岐にわたってお
60
東海学園大学
り、それぞれの必要とする基礎額に差があることを含みとして審査配分されているとはい
え、文系研究者に比し理系研究者にとっては予算的にややきびしい環境だといえる。科学
研究費補助金等、外部資金を導入するいっそうの努力が必要である。
(3)5-3の改善・向上方策(将来計画)
専任教員の授業担当時間数の負担過大のケースについては、責任授業時間数を大幅に超
える担当授業時間に対しては、
超過授業手当の支給を検討しているところである。
同時に、
カリキュラムの構造化により開設科目の整理を進め、教育担当時間ができるだけ全学で平
準化されるよう努力していきたい。
TA については、現状は大学院をもつ経営学部のみで運用されているが、学部段階でも、
易から難へ順を追って進む教育内容であれば、上級生が下級生の学習補助に当たることも
可能であると考えられるので、人間健康学部でも導入を検討したい。
科学研究費補助金をはじめとする外部資金導入については、基準 8-3 で述べる。
5-4 教員の教育研究活動を活性化するための取組みがなされていること。
《5-4の視点》
5-4-① 教育研究活動の向上のために、FD等組織的な取組みが適切になされてい
るか。
5-4-② 教員の教育研究活動を活性化するための評価体制が整備され、適切に運用
されているか。
(1)5-4の事実の説明(現状)
FD(Faculty Development)とは、本来、研究・教育・社会的サービス・管理運営等を
含めて、
大学の理念を実現するための教員組織の資質向上・開発を意味するものであるが、
今日、大学の教育機能の充実が最重要視されているところから、ここでは中教審答申「我
が国の高等教育の将来像」
(平成 17(2005)年 1 月)の言う「教員が授業内容・方法を改善
し向上させるための組織的な取組の総称」との定義に従って述べる。
本学は教職員の職能開発を学則に掲げ、
「本学は、教員が授業内容及び方法を改善し向
上させるための組織を設け、研修及び研究を実施する」
(第 63 条)と定めている。
基本的な教育組織は学部であるので、従来から学部ごとに FD 活動が進められてきた。
教授会としての取り組みもあり、また FD 活動は自己点検・自己評価と関連が深いので、
各学部の自己点検・評価委員会が推進の役割をになうことにもなった。だが FD 活動も全
学統一的に進められることが望ましいので、平成 18(2006)年度から「全学教育委員会」(注
全学教育委員会については 2-2-(1), 13 ページ参照)が発足した際、
「教育開発、教育支援
及び教育評価に関すること」を担当事項の一つと定め、全学的な観点を加えて FD 活動の
点検と推進に当たることとした。このため全学教育委員会の専門部会として「FD 部会」
を置き、これまでの各学部での成果を全学の共有財産として活用することにした。
以下現在実行中の主な FD 活動を挙げる。
(ア)新任教員の研修会
全学教育委員会 FD 部会の主催による FD 活動として、平成 19(2007)年度より、上記中
61
東海学園大学
教審答申も例示している「新任教員のための研修会の開催」を組織的に実施している。職
階を問わず、全新任教員を対象とし、年度初めに行っている。内容は主に、本学の建学理
念と教育目標に理解を深めること、教育関係諸法令を理解し、また本学の学則や各種倫理
規程を遵守ねがうこと、管理運営体制・自己点検評価等の説明、施設巡検などとなってい
る。全体会に引き続き学部・学科単位でさらに細部の説明の時間を設けている。研修会で
は学長、副学長、学監、各学部長・研究科長、事務局長及び部課長が説明要員となり、新
任者はほぼ 100%の出席がある。
(イ)非常勤講師との懇談会
つぎに、研修と銘打ってはいないが、非常勤講師諸氏と専任教員の懇談会を年 1 度すべ
ての学部が開催している。キャンパス別に春・秋開催しているので、2 キャンパスにわた
って教えている講師は 2 度出席の機会がある。懇談会では日常話し合う機会が比較的少な
い非常勤講師と専任教員とのコミュニケーションを改善し、大学・学部の重要課題につい
て説明し講師諸氏の認識を深めてもらうと同時に、カリキュラム・学年暦・履修上の諸ル
ール・設備等についてアンケートも含めて意見をきき、専任・非常勤を一丸とした教育改
善を図っている。参加状況等は平成 20(2008)年度については表 5-4-1 のとおりである。
表 5-4-1
時期
三好キャンパス
2008.7.1(火)
非常勤講師との懇談会
非常勤講師 専任教員
27 人
24 人
事務局
当日の主要テーマ
22 人
経営学部の「教育」への取り組
みと「学生生活」について
名古屋キャンパス
2008.12.10(水)
81 人
43 人
26 人
人文学部・人間健康学部の「学
科・コース・カリキュラム」に
ついて
(ウ)授業相互参観・研究授業
これまでも各学部で授業相互参観、研究授業等が行われてきたが、平成 20(2008)年度実
施分について見ると、人文学部では同年 6 月末~7 月上旬に人文学科の授業 6 科目、発達
教育学科の授業 4 科目を対象とした。
参観の詳細や寄せられた意見は教授会に報告された。
人間健康学部でも同じく 7 月上旬に学部共通の教養・基礎科目から 1 科目、人間健康学科
の専門科目から 1 科目、及び管理栄養学科の専門科目から 3 科目を選んで相互参観を行っ
た。同学部では平成 21(2009)年度実施計画も確定済みである。
(エ)実習懇談会
学外で諸機関の協力を得て実施される各種実習については、実習先担当者との懇談会等
を開催し率直な意見や評価をきき、本学教員の指導力向上を図っている。一例として、人
間健康学部では、平成 21(2009)年 3 月、給食経営管理実習・臨床栄養学実習の実習先であ
る病院・事業所・老人福祉施設の管理栄養士諸氏、人間健康学科は社会福祉援助技術現場
実習先である福祉施設の実習担当者諸氏との懇談を行った。
視点 5-4-②から考察すると、個々の教員の研究教育活動は、基準 5-2, 57 ページで
62
東海学園大学
詳述したように、教員の昇任審査において教育上の貢献を高く評価していることからも見
られるとおり、教員の個人評価にあたって活用されている。また、本学は平成 18(2006)
年に「東海学園大学在外研究員規程」及び同「国内研究員規程」を整備し、一定期間教員
が研究・研修に専念し力量を高める支援制度を整えている。在外研究員については平成
19(2007)年度に教員 1 人の申請があり、研究プログラムの適切性と申請者のこれまでの研
究教育実績を総合して審査を行った結果、海外研究が承認されている。
全学教育委員会 FD 部会では、かねて、本学の教育目標への貢献度の観点からする優秀
教員の顕彰の方策なども検討してきたが、なお成案を得ていない。
なお、学生による授業評価については、本学では自己点検活動の一環として実施してお
り、全学自己点検評価委員会がそれに当たっている関係上、基準 7-3 にゆずる。
(2)5-4の自己評価
FD 自体はこれまでも学部ごとに行われてきたが、学則に FD の実施が掲げられ、また
全学教育委員会の検討事項となったことで、全学的な取り組みが可能となったことは評価
できる。また、5-4-(1)-(ア)~(エ)として示したような事業が定着を見たことも評価さ
れよう。(ウ)の授業相互参観は、それがそのまま教員の相互評価とは考えていないが、小
さなことであっても授業運営・教室管理の参考になっている。非常勤講師との懇談は、と
きに手きびしい意見もあるが、今後のレベルアップの参考となるもので、いずれも有効な
FD 活動となっていると自己評価している。
実施組織面では、全学教育委員会の FD 部会は専門部会のひとつであり、委員数も少な
く直属の事務組織もないため、各学部の自己点検・評価委員会との連携のもとに事業を行
っているケースが多いのが現状である。自己点検評価の結果をふまえ FD で向上に取り組
み、FD の成果を自己点検評価によって検証するというサイクルが確立されることを目指
すため、今後 FD 推進メンバーを強化する必要がある。
また、視点 5-4-②から見れば、教員の教育研究活動は昇任人事等、個別のケースにお
いては正当に評価されているといえるが、日常的な評価体制が明確になっているとはいえ
ない。教員評価のためのデータは、毎年年度当初に前年度の研究活動・教育活動及び社会
的活動について、書式を定めて全教員から報告を得ており、評価データ自体は集積されて
いるのであるが、その活用については今後の課題となっている。
(3)5-4の改善・向上方策(将来計画)
FD の推進のためには、現行の「全学教育委員会」の機能強化が最も現実的であると考
えられるので、平成 22(2010)年度に向けてメンバー強化を図る。教員の個人評価の方式に
ついては、昇任人事等の場合は明確になっているが、日常的な活動の評価は今後の課題で
ある。当面は教員組織としての教育力アップの観点から FD 活動を進めていきたい。
[基準5の自己評価]
本学の専任教員数は、大学全体、学部・学科別、また研究科と、いずれにおいても設置
基準の定める必要人数を充たし、あるいは上回っている。教員の採用・昇任人事は、発議
から募集・選考又は審査・決定手続きのどの段階についても明文の規程・内規により公正
63
東海学園大学
適切に進められており、その結果教員数ばかりでなく、教員の質の担保の面でも成功して
いる。
教員の教育研究環境の整備については、本学所定の責任授業担当時間は適切に定められ
ているが、運用上、学部・学科、また個々の教員によって担当コマ数に「ばらつき」があ
り、一部の教員に授業負担の集中が見られる。この状況が固定してしまわないよう改善が
必要であると認識している。
TA 制度は、大学院生が少ないため活用できる場面が限られているとはいえ、学生自身
にとっても貴重な経験となり、効果を上げている。
教員に対する研究費の配分は、一定額の保障と、意欲的な研究・教育改善に対する上積
みとを併用することによって、各人の研究目標、教育目標に応じた配分がなされている。
ただし、すべて単年度予算であること、個人研究中心で複数教員による共同研究や教育改
革プロジェクトへの対応が未整備であることなどの制約があり、検討の余地がある。
FD 活動については、各学部を主体としてかなり活発に行われている他、全学事業とし
て新任教員研修なども定着してきており、個々の事業並びに今後の方向として評価できる
が、きびしく見るならば、自己評価と FD との有機的連関に対する認識が浸透しておらず、
自己点検・評価活動と FD 活動の相互作用がなお不十分である。
[基準5の改善・向上方策(将来計画)
]
教員スタッフについては、法令の遵守は当然であるが、重点分野のシフトや教員の異動
等には適切・迅速な人事により対応し、学生と社会に対して教育責任の果たせる教育組織
を引き続き充実したい。
教員の教育研究環境については、一部に見られる教育負担の過重とそこから来る研究面
の制約の問題への対策として、5-3-(3)で述べた方策を進める。
学内研究費については適切な資源の配分がなされているが、原資の制約上大型プロジェ
クトには対応が難しい。過去に教育改革プロジェクト申請の例があるが、今後も外部資金
の導入拡大に向けて努力を重ねていく。
FD については、これまでさまざまな場で議されてきたが、充実した教育開発活動計画
を立て、自己点検を通じて効果の検証ができるようにするため、現行組織では「全学教育
委員会」を、メンバーの強化を含めて、FD 活動の推進主体として発展させていく計画で
ある。
64
東海学園大学
基準6. 職 員
6-1 職員の組織編制の基本視点及び採用・昇任・異動の方針が明確に示され、かつ
適切に運営されていること。
《6-1の視点》
6-1-① 大学の目的を達成するために必要な職員が確保され、適切に配置されてい
るか。
6-1-② 職員の採用・昇任・異動の方針が明確にされているか。
6-1-③ 職員の採用・昇任・異動の方針に基づく規程が定められ、かつ適切に運用
されているか。
(1)6-1の事実の説明(現状)
現行の事務局組織図・事務分掌等については【資料 6-1】として添付しているが、叙述
の必要上組織図を簡略化して掲げると図 6-1-1 のとおりである。
図 6-1-1
東海学園大学事務局組織図
三好キャンパス
総務課
教務課
教職センター
学生生活支援センター室(スポーツ教育推進)
就職課
総合企画室
事務局
東海学園大学
図書課
総務課
名古屋キャンパス
教務課
教職センター
学生生活支援センター室
情報教育センター
就職課
実習センター
図書課
入試広報室
生涯学習推進室
現在の事務職員総数は、データ編表 6-1 に掲げた。本学は三好キャンパス及び名古屋
キャンパスの二か所に立地しているため、事務職員の勤務場所も二か所に分かれるが、事
務局としては一本である。なお、栄サテライトキャンパスには嘱託職員を置いている。
平成 7(1995)年に三好キャンパスに経営学部が設置された際には、新設であるため学園
として大幅な事務職員の増員が行われたが、その後、平成 12(2000)年に名古屋キャンパス
に人文学部、次いで平成 16(2004)年に同地に人間健康学部が設置されたときには、東海学
園女子短期大学及びその後身としての短期大学部の改組転換であったこともあり、必要最
小限の職員増員と、派遣社員等の採用によって事務を担当することとなった。この間、事
65
東海学園大学
務部門においては両キャンパスとも、電算化を中心に業務の省力化に努めてきた成果があ
らわれ、日常業務については滞りなく処理する体制が整っている。
また、教員組織との連携の下に、学生の資格・免許の取得、あるいは学外での実習のた
めの指導にも事務職員が積極的に関わっている。特に、栄養士、幼小中高教諭、保育士に
関わる分野のためには、
「実習センター」
「教職センター」等の名称で一室を設け、必要な
職員を配置し、予備的指導、実習先との連絡等に当たっている。
本学の事務組織は大学の拡大発展に応じて整備されてきた面が強く、当初から一貫した
組織編成原則、人事上の原則によって進められてきたとは言いがたいが、拡充改組の「節
目」の時期に合わせ、事務組織も見直しを進めてきた。今のところ、昇任や異動に関わる
具体的な規程が整備されるに至っていないが、事務局長が各部課長の意見を聴取すること
によって現状を把握し、実態に適応する形に改めるため、随時新規採用や異動を行ってき
た。
本学では自己点検作業の一環として、事務職員の構成する「SD(Staff Development)
委員会」を立ち上げ、現在の組織上の問題点の洗い出しや、事務分掌のあり方を中心に検
討を進めた(詳しくは 6-2)
。この検討結果を承け、また平成 20(2008)年度より人間健康
学部人間健康学科の名古屋キャンパスから三好キャンパスへの順次移転が開始されたこと
とタイミングを合わせ、第一段階として本学としては開学以来と言ってよいほどの大規模
な人事異動が実施され、同時に「学長事務室」
(その後「総合企画室」と改称)等の新部署
が開設された。続いて平成 21(2009)年度初めには、前年度を承けて事務部門の組織替え・
名称変更を行い、同時に配置換や新職員の採用を実施した。新体制の内容については、ス
タート早々ではあるが、4-3、6-3 において記述している。
また、平成 20(2008)年度には、学内公募により、嘱託職員・派遣社員等のうち希望者に、
正規職員への「事務職員登用試験」を実施した。本学に 1 年以上の勤務歴があればよく、
嘱託職員及び事務助手(注:事務助手は年限つきの採用)については専任事務職員、臨時
職員及び派遣社員については嘱託職員への登用を図ったものである。
(2)6-1の自己評価
本学は比較的短期間に相次いで学部の新設、改組転換を重ねてきたため、事務部門の組
織編成の原則を確認する充分な余裕がないまま、必要に迫られて事務組織の整備・拡大を
行ってきた。このため、原則が不明確であったとの批判はあろうが、現実の個別人事につ
いては事務部責任者が職務内容、職員の適性などの把握に努め、採用・昇進・異動につい
ては公正かつ適切に実施されてきたと評価できる。
しかしながら、組織の拡大発展、大学事務部門に要求される「サービス」の多様化・高
度化の流れをふまえると、今後、年齢構成の改善や、事務分掌組織の統廃合をも含めた長
期的な人事計画の確立が必要な時期に来ている。平成 20~21(2008~09)年度の大規模な人
事異動は、キャンパスが二か所に立地しているため兼務が多いことなどで、特に管理職員
に負担増をもたらしているが、方向としては学部連合体としての大学運営から、全学一体
としての大学運営への進展として積極的に評価できる。
事務職員登用試験については、本学としては初めての試みであったが、適材の登用と、
職員の向上意識を喚起した点で評価に値する。
66
東海学園大学
(3)6-1の改善・向上方策(将来計画)
学生の学習支援・就職支援・生活指導等の各場面で、事務職員に期待される課題がます
ます大きくなってきている。特に、社会的に有用な資格・免許の裏づけをもった職業人と
して学生を社会に送り出すことが本学の人材養成目標のひとつであることから、6-1-(1)
で述べたように事務職員も積極的に支援に加わっているが、
学生のキャリア形成のために、
単に事務担当者にとどまるのでなく、教育スタッフの一員といえるほどの適性と自覚をも
った職員を採用していきたい。
このため、平成 21(2009)年度より具体的に、準備可能な範囲で職員の採用・異動を実行
している。人員的になお充分とはいえないので、平成 22(2010)年度以降に向けてさらに採
用人事を進めることとしている。
6-2 職員の資質・能力向上のための取組み(SD等)がなされていること。
《6-2の視点》
6-2-① 職員の資質・能力向上のための研修、SD等の取組みが適切になされてい
るか。
(1)6-2の事実の説明(現状)
本学は学則において、
「教員と協働する専門性の高い職員の育成に向け、職員の職能開
発の場と機会を充実する。
」と定め(第 63 条第 3 項)
、SD 活動の推進を明らかにしている。
本学における SD 活動は、事務局におかれた「SD 委員会」が主に遂行している。同委
員会は、平成 18(2006)年、大学事務局長が、職階を問わず SD に意欲的な職員を招集して
構成したところに始まる。委員会はその後年 2 回の全体研修会を主催し、今日に至ってい
る。研修会及び関連行事の最近の実施状況をまとめれば表 6-2-1 のとおりである。
(→
【資料 6-4】
)
表 6-2-1
年度
平成 18(2006)
SD 活動としての職員研修会、セミナー等の実施状況(最近 3 年間)
実施回数
2
参加者延べ数
86
主な研修テーマ
事務局・職員の役割、経営戦略、就業規則、
ビジネスマナー等
平成 19(2007)
2
123
各学部・学科の教育内容認識、学園の沿革、モチベ
ーション、ビジネスマナー、事務体制改革について
等
平成 20(2008)
6
187
入試広報活動、履修登録新システム体験、
データベース利用、共生教育等
6-1 で触れたように組織問題・人員の配置についても SD 委員会が検討を行い、具体的
な人事異動について提言するなどの活動も行ってきた。
平成 20(2008)年度当初からは、若手職員の意見の反映が可能となるように、SD 委員会
から管理職をはずす形で、再編成がなされ、これまでの「SD 委員会」に加えて、表 6-2
-2 に示す 3 つの委員会が編成され、いっそうきめの細かい研修会の開催、学生サービス
向上策の策定、省力化のための電算化推進などを中心に、職員全員が日々業務を検討し、
67
東海学園大学
意見を提出できる場面を意識的に作り出すことに努力している。各委員会の課題はつぎの
とおりである。
表 6-2-2
SD のテーマ別委員会
名称
担当課題
宗教行事委員会
本学の建学の精神に則り、
浄土宗の教えに職員が触れる機会を作る
べく、行事を企画運営すること。
サービス向上委員会
広く、学内インフラの充実、カウンターカウンセリング、保健室の
活用、部活動・大学祭等学生主体の行事などに関し、学生に対する
サービス向上に資する提案を現場の目線で上部へ提案し、
可能なも
のから整備・実行していくこと。
事務システム構築委員会
事務部門の主にルーティンワークの電算化、
学生への掲示板システ
ムの充実、
「電子会議」の導入等について検討し、事務省力化を図
るべく調査と提案を行うこと。
「SD 委員会」は上記 3 委員会を統括し、職員のレベルアップに資する行事・会議を企
画運営する。予算を伴う企画や、上司、教授会等への提案も事務各セクションを代表して
説明している。
なお、全国・地域レベルの、諸私大の横の連合組織や事務局長会議等が開催している大
学改革セミナー、事務職員研修セミナー等には、積極的に職員を派遣し、他大学に学ぶと
共に、本学職員の資質向上を図っている。
(2)6-2の自己評価
上記の研修制度と、事務組織改善検討体制は、学外にモデルを求めたものでなく「手づ
くり」ではあるが、大学事務局の規模と、時々の重点課題に見合った取り組みとして評価
できる。一例として、近年学生の履修登録、教員からの事務提出書類等の電子化が進んで
いるが、新システムにスムースに移行できているのは事前の職員研修の効果も反映してい
る。
反面、SD 委員会の統括機能がまだ不充分なため、セクションごとの企画や提言の実現
に時間がかかるケースもあり、改善が必要である。
(3)6-2の改善・向上方策(将来計画)
職員研修活動は、意欲的な職員にとって能力向上の良い機会となっているが、組織全体
のいわゆる「ボトムアップ」のためには、人事考課とのつながりを強める必要があると考
えられるので、その実質化を課題としている。また、SD 委員会の強化もしくはその上に
さらに発言力のある委員会を置くことも改善方策として提案されている。
6-3 大学の教育研究支援のための事務体制が構築されていること。
《6-3の視点》
6-3-① 教育研究支援のための事務体制が構築され、適切に機能しているか。
68
東海学園大学
(1)6-3の事実の説明(現状)
学生生活全般に係る支援体制については、すでに基準 4-3 に関連して「学生サービス」
体制として述べているので、教育研究活動に直接に関わる事柄に焦点を絞って記す。
教育支援の事務面では、これまで「学務課」が中心となってきたが、履修相談の増加や
課外活動の活発化などに対応するため、教務と厚生補導の両面を担当してきた学務課の組
織を改め、平成 21(2009)年度から「教務課」と「学生生活支援センター室」の 2 部署とし
(→図 6-1-1)
、同時に人的な強化を図った。
教務課は、教務事項のすべてを扱い、各学部の教員の構成する教務委員会と密接な連携
体制をとり、同委員会には必ず参加している。
研究支援については、科学研究費補助金をはじめ、各種団体から提供される研究奨学金
プロジェクトについては、教務課が窓口となり、細大もらさず教員に電子メールで案内を
送っている。また、
「ReaD」
(独立行政法人科学技術振興機構)
、
「e-Rad」
(府省共通研究
開発管理システム)
、大学進学情報に係る「ハートシステム」
(独立行政法人大学入試セン
ター)など、本学に属する研究者・教育者の情報公開についても、教務課の担当となって
いる。
(2)6-3の自己評価
教務事項については特に問題はない。研究支援について見ると、基準 8-3 でも言及す
ることになるが、本学は科学研究費等外部資金の導入が活発とはいえないが、研究支援の
専門職員を欠くことは大きな弱点となっている。研究紀要の発送に当たっても、附属図書
館の助力を得ている現状であり、国際交流についても教員への依存度が高い。
(3)6-3の改善・向上方策(将来計画)
今後、外部資金の導入、国際交流、学外実習を中心とするキャリア教育などの分野で、
教員と事務職員の言わば「中間部分」を担いうる、教育研究支援の能力の高い職員の配置
を将来計画に組み込んでいく必要がある。
[基準6の自己評価]
本学の事務体制は、学部設置の経緯と、二か所にキャンパスを持つことから来る制約下
にありながら、
「事務一体」の原則に少しずつ近づけるべく、業務を今日まで進めてきたこ
とは、評価されよう。教員組織と事務局がいたずらに対立することもなく、また、正規職
員と嘱託職員・派遣社員等の非正規職員との関係が円滑であることも、良い点といえる。
[基準6の改善・向上方策(将来計画)
]
全職員がまず本学の特徴をよく認識し、職員全体が大学の運営・教育・研究に関わって
いるという意識を高めることが大切である。
組織的な研修活動をさらに充実すると同時に、
向上へのインセンティブとして、昇任等もその原則を成文化して示すことが必要である。
69
東海学園大学
基準7. 管理運営
7-1 大学の目的を達成するために、大学及びその設置者の管理運営体制が整備され
ており、適切に機能していること。
《7-1の視点》
7-1-① 大学の目的を達成するために、大学及び設置者の管理運営体制が整備され、
適切に機能しているか。
7-1-② 管理運営に関わる役員等の選考や採用に関する規程が明確に示されてい
るか。
(1)7-1の事実の説明(現状)
学校法人全体の管理運営については、
「学校法人東海学園寄附行為」
(以下「寄附行為」
という。
)及び「学校法人東海学園寄附行為実施規則」
(以下「寄附行為実施規則」という。
)
の規程と、それを基に作られた関連の諸規程に従い行われている。
大学及び大学院に係る教学の管理運営は、「東海学園大学学則」及び「東海学園大学大
学院学則」に規定するものと、それを基に作られた関連の規程に従い行われている。
学校法人及び大学の管理運営体制を具体的に述べれば次のとおりである。
【学校法人】
(ア)理事会
「寄附行為」に基づいて置かれ、学校法人の業務を決し、理事の職務の執行を監督する。
年間 4~5 回の定例理事会及び必要に応じて臨時の理事会が開催されている。理事会は現
在 14 人(定員 12~14 人)の理事で構成されているが、そのうち 5 人は外部理事である。
また、理事会には、2 人の監事が出席している。なお、
「寄附行為」の規定に基づき、予算
及び事業計画等については予め評議員会の意見を聞き理事会で議決し、また決算及び事業
の実績については理事会において議決し評議員会に報告し意見を聞いている。
(イ)評議員会
「寄附行為」に基づいて置かれ、予算、事業計画、寄附行為の変更、その他法人の業務
に関する重要事項について諮問される。年間 3~4 回の定例評議員会及び必要に応じて臨
時の評議員会が開催されることになっている。評議員会は現在 29 人(定員 29 人)の評議
員で構成され、理事会同様 2 人の監事が出席している。
(ウ)常任理事会
「寄附行為」
「寄附行為実施規則」及び「常任理事会会議規則」に基づいて置かれ、重
要または異例にわたる事項を除く学校法人の日常の業務を決定し、執行する。原則毎月 1
回開催され、現在 4 人の常任理事に加え、理事長及び 2 人の監事も出席し、率直な意見交
換がなされている。
【大学】
(ア)大学評議会
「東海学園大学学則」及び「東海学園大学評議会規程」に基づいて置かれ、大学の運営
に関する重要事項を審議することを目的として、原則毎月 1 回開催されている。
(イ)総合企画会議
「東海学園大学総合企画会議に関する規程」に基づき学長の諮問機関として置かれ、大
70
東海学園大学
学の将来構想及び当面の重要課題に関する総合的戦略会議として位置づけられている。大
学評議会同様原則毎月 1 回開催されている。
(ウ)学部教授会・大学院委員会
「東海学園大学学則」
「同大学院学則」及び「東海学園大学学部教授会規程」に基づき
学部長・研究科長の諮問機関として置かれ、学部・大学院の重要な事項を審議する。
次に学校法人役員の構成について詳細を記す。
役員及び理事会については「寄附行為」第 3 章、評議員会及び評議員については「寄附
行為」第 4 章に規定されている。
理事・監事
・役員のうち理事は 12 人以上 14 人以内、監事は 2 人、任期については後述する 1 号理
事を除く理事と監事はいずれも 3 年と定められている。
・
「寄附行為」に規定される役員の選任方法は次のとおり。
<1 号理事>学園長、学長及び校長
<2 号理事>評議員のうちから理事会において選任した者 7 人
<3 号理事>宗教法人浄土宗責任役員会が推薦した者 2 人
<4 号理事>1 号の職が兼職されている場合において、理事数が 12 人に満たないと
き、理事の過半数の議決により学識経験者の中から選任された者
<監事>この法人の理事、職員または評議員以外のものであって、理事会において
選出した候補者のうちから、評議員会の同意を得て理事長が選任する。
評議員
・評議員会は 29 人の評議員をもって組織する旨規定され、理事長が予め評議員会の意
見を聞かなければならないとされる諮問事項については、寄附行為第 22 条に定めら
れている。
・評議員の任期は 3 年と規定されている。
・
「寄附行為」に規定される評議員の選任方法は次のとおり。
<1 号評議員>学園長
<2 号評議員>この法人の職員で理事会において推薦された者のうちから評議員
会において選任した者 11 人
<3 号評議員>この法人の設置する学校を卒業した者で年齢 25 歳以上の者のう
ちから、理事会において選任した者 4 人
<4 号評議員>宗教法人浄土宗責任役員会が推薦した者 2 人
<5 号評議員>この法人の設置する学校に在籍する学生及び生徒の保護者のうち
から理事会において選任した者 4 人
<6 号評議員>学識経験者のうちから理事会において選任した者 7 人
大学においては、理事である学長の選任について「東海学園大学学長選任規則」及び「同
施行細則」で定められており、教授会で選出された教員及び総合企画会議で協議指名され
た教職員で構成される選考委員会が学長候補者を選考し、大学評議会・理事会の議を経て
理事長が任命することとなっている。学長の任期は 4 年、再任は 2 回まででその任期はそ
71
東海学園大学
れぞれ 2 年と規定されている。
また、大学における管理運営に関わる副学長・学部長・学科長の選任については、それ
ぞれ「東海学園大学副学長規程」
「東海学園大学学部長規程」
「東海学園大学学科長規程」
が整備され規定されている。
(2)7-1の自己評価
大学の基本理念・使命・目的を達成するため、大学及びその設置者の管理運営体制は各
種規程により整備されており、それに基づく各種機関によりそれぞれの役割に応じて補完
し合い、おおむね機能している。
理事会においては、理事総数 14 人のうち大学所属の理事が 4 人、さらに大学学長を長
年務めた理事が 1 人加わり、大学と理事会の関係は良好に機能している。また、常任理事
会においても、4 人の常任理事のうち半数の 2 人が大学の所属であり、日常の業務が遅滞
無く機動的に執行されている。
役員等の選考や採用に関する規程も整備され、適切に運用されている。
(3)7-1の改善・向上方策(将来計画)
大学を取り巻く環境の急激な変化に対応するためにも、今後とも確固とした管理運営体
制を構築し、時期を逸せずに適切な意思決定を行っていく。そのためにも、大学に所属す
る常任理事の担当職務・責任体制の明確化を図る。
監査法人との連携も含めた監事による監査機能の強化が求められる中、そのサポート体
制を充実するためにも監査室設置の必要性が議論されている。内部監査機能の強化を図る
ため監査室の設置を早急に進める。
任期満了に伴う学長の選任については、平成 20(2008)年 10 月に大幅に改定された「東
海学園大学学長選任規則」及び「同施行細則」に基づき、平成 21(2009)年 4 月 1 日に新学
長が選任された。浄土宗要職を歴任し国公立大学教育職の経験もある適任者であるが、県
外在住者であることから、学長のサポート体制の再構築を進めている。平成 21(2009)年 6
月 1 日付けで副学長を選任し、また年内には教務部長・学生部長職等を新設し、大学にお
ける実質的な管理運営体制の充実を確立する。今後も引き続き学長のリーダーシップが発
揮されるよう指導体制の充実に努める。
7-2 管理部門と教学部門の連携が適切になされていること。
《7-2の視点》
7-2-① 管理部門と教学部門の連携が適切になされているか。
(1)7-2の事実の説明(現状)
学長は大学の教学部門の責任者であると同時に、理事として法人役員の構成員となって
いる。また、副学長・学監・事務局長の職についている教職員が理事となっており、法人
と大学教学部門との間の重要な橋渡し役を担っている。この学長を含む 4 人の理事(うち
常任理事は 2 人)が、大学の意思決定機関である「大学評議会」の構成員であり、大学評
議会における議論が常任理事会・理事会に反映できる体制が整えられている。
72
東海学園大学
また、大学評議会には学部長以外に各学部 2 人の教員が構成員として参加していること
から、教授会から大学評議会、さらに常任理事会・理事会に、議論が遮断されることなく
反映される組織体制が整備されている。
さらに、意思決定機関ではないが、大学の将来構想及び当面の重要課題に関する総合的
戦略会議として位置づけられた学長の諮問機関「総合企画会議」が定期的に開催され、学
長を始めとする学内の教学・管理部門の主要メンバー(副学長・学部長・研究科長・自己
点検評価委員会副委員長・学監・事務局長・事務局次長・教学担当部長・総合企画室長・
法人事務局部長)により、学部間やキャンパス間の諸課題の調整も含め、管理部門と教学
部門の機動的な連携が図られるよう活発な議論がなされている。
上記の連携を効果的に機能させるためにも、現場に直接かかわる一般事務職員への正確
な情報伝達が必要であると考え、月 1 回「事務局会議」を開催し、情報の周知徹底に努め
ている。
(2)7-2の自己評価
管理部門の幹部と教学部門の幹部が、理事会を始めとして常任理事会・大学評議会等意
思決定機関の構成員となっていることから、
管理部門の方針が充分に教学部門に伝達され、
また、教学部門の意思が管理部門において尊重されている。また、学長の諮問機関である
総合企画会議が、管理部門と教学部門の内部調整的な役割をも果たし、相互の信頼関係・
補完体制の充実強化に有効に機能していると評価できる。
(3)7-2の改善・向上方策(将来計画)
上に述べてきたように管理部門と教学部門の連携は、現状において特に問題なく行われ
ているが、学長を頂点とする教学に係る運営組織体制と、理事長・理事会に代表される法
人の管理部門との連携・協調、さらに教員組織と事務職員組織との連携・協調体制につい
て、いっそうの強化に向けて改善努力を進める。
7-3 自己点検・評価等のための恒常的な体制が確立され、かつその成果を教育研究
をはじめ大学運営の改善・向上につなげるシステムが構築されていること。
《7-3の視点》
7-3-① 教育研究活動をはじめ大学運営の改善・向上を図るために、自己点検・評
価の恒常的な実施体制が整えられているか。
7-3-② 自己点検・評価の結果を教育研究活動をはじめ大学運営の改善・向上につ
なげるシステムが構築され、かつ適切に機能しているか。
7-3-③ 自己点検・評価の結果が学内外に適切に公表されているか。
(1)7-3の事実の説明(現状)
本学の自己点検・自己評価はすべて「東海学園大学自己点検・評価規則」
(平成 7(1995)
年 4 月制定、平成 17(2005)年 9 月改正。→【資料 7-5】
)によって行われている。自己点
検・評価の対象は組織・個人の両面にわたるとされており、点検評価項目は、下記のよう
に大学の教育研究上の責任、社会的責任に係ることのほとんどを含む広範囲なものとなっ
73
東海学園大学
ている。
建学の精神・大学の基本理念及び使命・目的―教育研究組織―
教育課程(カリキュラム)―学生―教員―職員―管理運営―
財務―教育研究環境―社会との連携―大学の社会的責務―その他
上記諸項目の自己点検・評価の基本方針・実施・結果に関すること、自己点検・評価に
関する報告書の作成及び公表、その他本学の自己点検・評価に関することを担当する全学
委員会として、
「東海学園大学自己点検評価委員会」を設置している。この委員会は学長を
委員長とし、委員として学監・副学長・研究科長・学部長・事務局長のほか、各教授会か
ら選出された者 2 人が参加し、さらに学長指名により委員を加えることができる。かなり
大規模な委員会となっているため頻繁に開催することが困難であるが、専門委員会をおく
ことができ、
「認証評価」の義務づけを機会に、平成 17(2005)年 7 月に「大学評価ワーキ
ンググループ」を委員会内部に組織した(現在は「認証評価ワーキンググループ」と改称)
。
構成は、委員長の他教職員から選出された委員から成る。事務担当は、現在、学長直属の
「総合企画室」となっている。
以上は全学としての自己点検・自己評価体制であるが、すべての学部にそれぞれ「自己
点検評価委員会」が置かれ、全学委員会が定めた基本計画に基づき、学部・学科単位で自
己点検・評価を日常的に継続している。
自己点検・評価の項目は大学の組織・活動の全般にわたるが、近年、大学に対する社会
的要請が教育機能の充実・
「質」の保証に向かっているところから、自己点検評価委員会で
は、建学理念から出発して現実にどのように学生を教育するか、という課題を最も重視し
てきた。
上述の体制及び活動に基づき、本学は平成 18(2006)年度、
『東海学園大学自己点検・評
価報告書―教育活動を中心に―』
(A4 判 153 ページ)を印刷公表した。規定により法人理
事会にも報告している(→【資料 7-6】
)
。
自己評価に当たっては、学生や保護者の意見や要望をデータとして参照することが不可
欠であるが、このために「学生による授業評価」を継続的かつ重点的に行っている。教育
実践の自己点検であると共に、FD 活動の手がかりの意味ももつ。本学では学生による授
業評価を「授業アンケート」と呼び、 時期を定めて授業時間を利用し、出席者全員を対象
とする無記名の質問紙調査としている。5 段階評価のほか自由記述欄も設けている(サン
プル→【資料 7-5】
)
。専任・非常勤を含め、一部の教員からは批判的な意見もあるが、ほ
ぼ円滑に行われている。
集計・分析の結果は、自己点検評価委員会の責任において、授業ごとに、回答分布と学
部平均値、さらに自由記述の生データを添えて教員に知らせている。これによって学生の
率直な意見を知り、各教員本人がこれを参考にして授業の改善に努めることを趣旨として
いるので、平均値以外は非公開となっている。人文学部では、平成20(2008)年度末の調査
結果について、学部自己点検評価委員会が各専任教員に、「リフレクション・ペーパー」
の提出を求め、部内相互で閲覧に供した。
個々の授業評価とは別に、平成18(2006)年度末には1~3年次生全員を対象に、「カリキ
74
東海学園大学
ュラムアンケート」を実施した(結果とその分析→【資料7-6】)。「取りたい授業が取
れない」というケースを懸念して、学生の授業選択履修行動を調査したものであるが、カ
リキュラムや選択履修制に対する満足度がかなり高いことが知られた。
同じく平成18(2006)年度には、保護者の方々が本学の教育に対して抱く期待や要望等を
調査し今後の改善の参考とするため、教育後援会の協賛を得て、「自己点検評価のための
保護者アンケート調査」を実施した。予想を超える反響があり、保護者の大学教育に対す
る関心の深さをあらためて確認できるものとなった。結果は、教育後援会機関紙『COM』
に掲載して報告した(→【資料7-5】)。
(2)7-3の自己評価
自己点検評価活動については、制度・規程面では整備されており、学生にとって最も身
近な学習の場である個々の教員の授業評価を入り口として展開してきたことは、現実的な
進め方として評価できる。これを承けて、点検活動を学生の選択履修の実態やゼミ制の評
価にまで広げた結果、キャップ制の全学導入や、低学年ゼミの充実の必要性が裏づけを得
て、改善に資するところがあった。授業アンケートの定量的評価は難しいが、学生からの
指摘は、たとえ小さいことであっても、授業の改善に役立っていることは間違いない。
(3)7-3の改善・向上方策(将来計画)
本学の自己点検評価は、継続中の個々の評価項目については真摯に進められているが、
今後は、組織としての教育力の点検評価にまで成熟させていく必要がある。自己点検評価
活動を支える事務組織を充実し、調査能力を高め、集積された資料の活用を通じて、大学
の組織・運営のあり方の検証にまで踏み込んでいく姿勢を確立したい。
[基準7の自己評価]
本学は経営学部のみの単科大学からスタートし、開学から10年を経ずして3学部5学科1
研究科を擁する大学に大きく成長した。本学及び本学園の管理運営体制はこの急速な発展
にあわせて整備し機能させてきたとも言え、その整備過程において管理部門と教学部門の
緊密な連携が培われてきたと自己評価している。
しかしながら、その急速な発展の反面、きめ細かな体制整備が後手にまわっていたこと
は否定できない事実であり、ここ数年の間に諸規程を中心に整備してきたが、今後更なる
検証が必要である。
[基準7の改善・向上方策(将来計画)
]
高等教育機関を取りまく厳しい環境の中、本学を含め多くの私立大学が極めて激しい競
争を強いられている。学生の要望や社会的ニーズに耳を傾け、学生・保護者・企業・社会
をはじめとするステークホルダーから信頼される体制を確立することが急務である。大学
の社会的責任を果たすためにも、自己点検・評価活動を継続して実施するとともに、急激
な社会の変化に即応できる管理運営体制の再構築や諸規程の見直しを図っていく。
75
東海学園大学
基準8. 財 務
8-1 大学の教育研究目的を達成するために必要な財政基盤を有し、収入と支出のバ
ランスを考慮した運営がなされ、かつ適切に会計処理がなされていること。
《8-1の視点》
8-1-① 大学の教育研究目的を達成するために、必要な経費が確保され、かつ収入
と支出のバランスを考慮した運営がなされているか。
8-1-② 適切に会計処理がなされているか。
8-1-③ 会計監査等が適正に行われているか。
(1)8-1の事実の説明(現状)
本編Ⅱ「沿革と現況」で記したように、学校法人東海学園は 1 中学校・2 高等学校・1
短期大学を運営していたが、平成 7(1995)年度に新校地に 4 年制大学を創設し経営学部を
置いた。以後、短期大学の改組転換を含め、平成 12(2000)年度には人文学部及び大学院経
営学研究科を設置、平成 16(2004)年度には人間健康学部(2 学科)を置き、さらに平成 20
(2008)年度には人文学部に発達教育学科を増設するなど、順調な発展を遂げ、現在 1 研究
科・3 学部 5 学科をもつ大学となった。
収容定員は 3,620 人で、これにより収入の大部分を占める学生生徒納付金収入を確保し
ている。必要経費を確保し、収支バランスに配慮しつつ教育の質を向上させるべく、大学
評議会、教授会等の各組織を中心に大学改革を進めているところである。
本学の人件費比率は平成 20(2008)年度で 42.8%と、他大学と比してほぼ平均的であるも
のの、帰属収入からみて約半分を占めている。
施設面では、収容定員数の増大に伴い現有施設の活用にも限界があり、名古屋キャンパ
スにおいて平成 21(2009)年度は 1 号館の耐震補強とともに教室環境整備を行う。三好キャ
ンパスでは同じく平成 21(2009)年度に新校舎建築計画を策定する。いずれの校地において
も学生を中心に据えた教育研究環境整備を進めることとしている。
視点 8-1-②から述べると、会計処理については、学校法人会計基準の計算体系に基づ
いて行っている。
予算編成については、当該予算年度の前年度 1 月において各部門から事業計画案を提出
させ、必要に応じて法人事務局長がヒアリングを行う。財政見通しの概要を策定し、これ
を参照しつつ次年度予算編成の基本方針を決定する。この基本方針を踏まえて常任理事会
において審議のうえ理事長が次年度予算案を編成し、あらかじめ評議員会の意見を聴き、
理事会の議決を経て決定し(寄附行為第 33 条、第 22 条)
、執行している。
なお、教育研究設備の緊急的整備の必要性、想定を超えた退学者・職員の転退職などに
より、2 月ごろ補正予算を組む必要が生じる年度が多いが、これについても本予算と同様
の手続きにより理事会の承認により成立となる。
決算については、
会計年度終了後 2 か月以内に決算案を作成し、
監事 2 人による監査と、
監査法人による監査を受け、常任理事会で事業報告を行い、決算案を審議することになっ
監事による意見並びに監査報告があった後、
理事会で事業報告と決算とを承認し、
ている。
続いて評議員会に報告し、意見を求め、次年度の運営に生かしている。
視点 8-1-③から述べると、本学園は監査法人及び監事による会計監査と業務監査を受
76
東海学園大学
けている。
監査法人は新日本有限責任監査法人に依頼しており、年間監査日程表によって進行する。
平成 20(2008)年度においては年間 357 時間(うち指定有限責任社員 21 時間、公認会計士
91 時間、会計士補 245 時間)の監査計画に従い実施された。
監事は、理事会・評議員会・常任理事会に常時出席し、法人の動向と学校運営の把握に
努め、必要に応じて聴き取り調査を行い、私立学校法第 37 条に定める学校法人の財産及
び法人の業務執行状況を不断にチェックしている。
監査法人と監事の連携については、両者の間の意見交換を年 2 回程度実施しており、学
校法人会計基準に照らして適正に会計処理がなされているか等を点検している。
(2)8-1の自己評価
帰属収入からみた「教育研究経費比率」は平成 20(2008)年度の数字では 31.3%と、全国
平均を上回っているものの(日本私立学校振興・共済事業団発行『今日の私学財政』参照)
、
教育研究目的を達成するために更なる予算措置が必要であることも認識している。
会計処理については、ほとんどの金額が学生生徒納付金収入であり、当然ながら支出に
ついて厳格かつ適正な処理が求められているが、監査の結果から見て、適正な運営がなさ
れていると考えている。
しかしながら 8-1-(1)で触れたように、開学以来、短期大学の改組と 4 年制大学の収
容定員拡充を急ピッチで進めてきており、新学部・新学科設置に資金を重点配分してきた
傾向が見受けられる。このため計画的な基本金組入がなされていない。今後はこれまで以
上に収支のバランスを考慮した学校運営が必要と考えている。
(3)8-1の改善・向上方策(将来計画)
今後とも教育研究内容充実のため、教育研究経費に重点を置いた予算配分を心掛けながら、
同時に必要な財政基盤を確立していく必要がある。そのためには、
「大学全入時代」と言われ、
受験生の減少傾向が見られる現状では、財務面からも学生確保が重要課題である。このため、
募集活動の継続的な強化とともに、平成21 (2009)年度入試において県内からの志願者が67.5%
を占める状態であるため、県外からの受験生確保に努めている。
8-2 財務情報の公開が適切な方法でなされていること。
《8-2の視点》
8-2-① 財務情報の公開が適切な方法でなされているか。
(1)8-2の事実の説明(現状)
財務情報の根幹を成すものは、いずれも学校法人会計基準によって作成される
1 資金収支計算書及び附属内訳表
4 決算書に関連する財産目録
2 消費収支計算書及び附属内訳表
5 監査報告書
3 貸借対照表及び附属明細表
6 事業報告書
であるが、これらは理事会で承認を受けた後、法人事務局内に備えおき、
「学校法人東海学
77
東海学園大学
園書類閲覧規程」の定めるところにより、閲覧希望者に情報公開を行っている。
また、学園の広報誌『東海学園学報』
(年 1 回発行、A4 判 8 ページ。→【資料 8-3】
)
を発行し保護者全員に郵送しているが、本誌には学園に関わる各種情報・社会的メッセー
ジのほか、
「監査報告書」及び「決算書」等を掲載し、読み方のガイドを添えている。従来
紙媒体のみであったが、平成 20(2008)年から『学報』は PDF ファイルとして大学の公式
ホームページとリンクさせているので、だれでも読めるようになった。
財務公開状況の概要は以上のとおりであるが、開示手続き・方法の現状一覧はデータ編
表 8-4 に示した。
(2)8-2の自己評価
広報誌及び公式ホームページで公開される財務情報は、資金収支計算書・消費収支計算
書・貸借対照表及び財産目録であるが、いずれも大科目に集計された情報であり(一部中
科目まで)
、各々読み方の解説を付してはいるが、ある程度の会計知識が求められ、会計知
識のない方々にも理解できるつくりになっていない点に改善の余地がある。
(3)8-2の改善・向上方策(将来計画)
今後、社会が大学に求めている情報の正確性・透明性の確保と、分かりやすい財務情報
開示に取り組むため、大学事務局と法人事務局が連携し各情報を精査し、継続的な開示は
もちろんのこと、
「解説」の工夫など、情報公開の改善を実施していく。
8-3 教育研究を充実させるために、外部資金の導入等の努力がなされていること。
《8-3の視点》
8-3-① 教育研究を充実させるために、寄附金、委託事業、科学研究費補助金、各
種GP(Good Practice)などの外部資金の導入や収益事業、資産運用等の
努力がなされているか。
(1)8-3の事実の説明(現状)
最近 5 年間で、外部資金(補助金、資産運用、事業収入)の調達額合計 16 億 9 千万円
余りを受け入れている。詳細は表 8-3-1 のとおりである。
表 8-3-1
外部資金の受け入れ状況
(単位:千円)
項目
平成 16 年度
平成 17 年度
平成 18 年度
平成 19 年度
平成 20 年度
計
176,268
235,656
264,422
298,302
282,531
1,257,179
資産運用収入
60,147
70,400
54,045
33,142
19,999
237,733
事業収入
44,908
38,352
35,302
40,820
43,008
202,390
計
281,323
344,408
353,769
372,264
345,538
1,697,302
補助金収入
78
東海学園大学
また、
「科学研究費補助金」の申請・採択状況及び金額については、基本的データはデ
ータ編表 5-8、5-9 に記載されているが、ここで最近 3 年間について文部科学省・日本
学術振興会への申請件数、採択件数及び受入れ金額を示すと表 8-3-2 のとおりである。
表 8-3-2
文部科学省・日本学術振興会への補助金申請・採択状況
平成 18 年度
学部・研究科等
平成 19 年度
平成 20 年度
申請
採択
金額
申請
採択
金額
申請
採択
金額
件数
件数
(千円)
件数
件数
(千円)
件数
件数
(千円)
経営学部
7
0
9,490
1
0
9,490
4
1
8,139
人文学部
3
0
1,300
3
0
1,040
1
0
260
人間健康学部
2
1
2,100
3
1
5,080
6
2
6,685
合 計
12
1
12,890
7
1
15,610
11
3
15,084
(2)8-3の自己評価
補助金の受け入れについては、人間健康学部の年次進行による学生数の拡大により、増
加している。これは平成 16(2004)年度設置時は入学定員 270 人で発足したが、平成 18
(2006)年度から 330 人に変更したものである。
反面、
資産運用収入については平成 18(2006)
年度以降減少傾向にあるが、
昨今の経済金融情勢から見てやむを得ない面がある。
しかし、
寄附金の受け入れ努力があまりなされていない現状は問題である。
科学研究費補助金については、総額については大型プロジェクトの採否によって大きく
変動するので、ここでは申請件数に着目すると、最近 5 年間の申請件数は例年ほぼ 10 件
前後であまり変化がないが、教育職員数(平成 20(2008)年度教員数計 98 人、内訳教授 50
人・准教授 33 人・講師 15 人)から考えると申請件数が少ないと言わざるを得ず、研究機
関としての努力不足の感がある。
(3)8-3の改善・向上方策(将来計画)
寄附金については、特定公益増進法人の証明を受けており、広く募集を行うパンフレッ
トの作成を検討し平成 21(2009)年度中にキャンペーンを開始する予定である。保護者の構
成する本学教育後援会には、これまで、卒業を間近に控え学資支弁困難におちいった学生
への緊急支援について一定の枠内で賛同協力を願っているところであるが(基準 4-3, 48
ページ)
、教育支援として奨学金基金を目的として指定寄附金申請を本年中に行う。
科学研究費補助金については、人間健康学部では学内プロジェクト研究費配分に係る申
請に際しても、科研費の申請実績を前提とするなどの措置をとり、研究者自身の意識改革
に取り組んでいる。
研究支援の事務体制については、事務局として専任部署を持たず、教育支援を本務とす
る教務課(旧学務課)が外部資金に関する情報提供も兼務している(基準 6-3, 69 ページ)
などの問題点があるので、外部資金導入に積極的に関わる体制づくりを検討し、平成
22(2010)年度より発足したい。
79
東海学園大学
[基準8の自己評価]
「学校法人全体」と「大学」の二つのレベルで考える必要があるが、本学園に属する 4
校は考え方としては独立採算となっている。大学については、必要な財政基盤を有し、収
支バランスも良好であると自己評価している。
会計処理、
財務情報の公開等も法令に則り、
適切に行われていると考えている。
外部資金の導入については、やや低調であり、いっそうの努力が必要である。
[基準8の改善・向上方策(将来計画)]
財政基盤の安定という観点から、継続的な収入確保はなくてはならない条件である。そ
のためには 8-1-(3)でも述べたように「学生確保」が最重要事項であり、
「魅力ある大学」
「学生を中心に置いた大学運営」を現実のものとするため、
「教育内容の充実」と「教育環
境整備」の両面での大学改革の速やかな進展を目指す。現在、学長の下におかれる総合企
画室(旧・学長事務室)を中心に、社会情勢を見定めながら中期的な大学拡充計画を策定
中で、社会的ニーズの調査等も行っているところである。
会計においては理事会に向けて大学から積極的に提案を出し、第 2 号基本金への組入れ
を長期計画のもとに行い、大型施設等の設備投資実施年度において多額な支出超過を回避
する。
また、積極的な外部資金調達策の策定、寄附金の募集活動の活発化に努める。
80
東海学園大学
基準9. 教育研究環境
9-1 教育研究目的を達成するために必要なキャンパス(校地、運動場、校舎等の施
設設備)が整備され、適切に維持、運営されていること。
《9-1の視点》
9-1-① 校地、運動場、校舎、図書館、体育施設、情報サービス施設、附属施設等、
教育研究活動の目的を達成するための施設設備が適切に整備され、かつ有
効に活用されているか。
9-1-② 教育研究活動の目的を達成するための施設設備等が、適切に維持、運営さ
れているか。
(1)9-1の事実の説明(現状)
キャンパスの立地と通学・通勤条件についてまず述べると、本学「三好キャンパス」は
愛知県西加茂郡三好町の丘陵地に位置し、最寄り駅は名鉄豊田線(名古屋市営地下鉄鶴舞
線が乗り入れ)
「三好ヶ丘」駅で、下車徒歩約 10 分であるが、
「三好ヶ丘」駅よりスクー
ルバスを運行し通学の便を図っている。自動車通学希望の学生には 2 年次生より許可を受
けて通学させており、キャンパス内に学生駐車場 300 台分を確保している。
「名古屋キャンパス」は、名古屋市天白区の住宅街に位置し、通学の学生は名古屋市営
地下鉄鶴舞線「原」駅を利用し、キャンパスまで徒歩約 15 分、
「地下鉄原駅」より市バス
乗車「平針南住宅」下車徒歩 3 分、又は「原駅」より運行しているスクールバスのいずれ
かを選んでいる。自動車通学は、学生用駐車場を用意するには手狭であること、公共交通
機関が便利であることから、名古屋キャンパスでは禁止している。なお、東海学園の一校
である「東海学園高等学校」が大学名古屋キャンパスに隣接している。
三好・名古屋両キャンパス間は、路程約 10km、公共交通機関利用で所要時間約 30 分で
ある。キャンパス相互間にスクールバスを運行して学生・教職員の便宜を図っている。
図 9-1-1
至名古屋
三好キャンパス・名古屋キャンパス位置関係図
地下鉄・原
徒歩 15 分、バス利用 8 分
名古屋駅から三好キャンパスまで
人文学部人文学科・発達教育学科
約 20km 公共交通機関利用 約 50 分
名古屋キャンパス
大学院経営学研究科
名古屋市天白区
経営学部経営学科
徒歩 10 分
人間健康学部人間健康学科
名鉄・三好ヶ丘
人間健康学部管理栄養学科
三好キャンパス
約 10km
愛知県西加茂郡三好町
公共交通機関利用 約 30 分
至豊田
本学の校地面積は、名古屋キャンパス校地面積 35,618.00m2 、三好キャンパスが
82,933.00m2 で、合計 118,551.00m2 である。収容定員は 3,620 人であり、学部学生一人当
たりの面積は 32.74m2 となり、
大学設置基準第三十七条に定める校地面積を満たしている。
次ページ以下に両キャンパスの主要施設の名称、建物面積等を配置図を添えて示す。
81
東海学園大学
図 9-1-2
図 9-1-3
三好キャンパス施設配置図
名古屋キャンパス施設配置図
82
東海学園大学
表 9-1-1 主要施設一覧表
[三好キャンパス]
名
称
建物面積(㎡)
地上
地下
主な用途・設備等
1号館
1,004.76
2階
-
大会議室・事務局
2号館
3,880.96
7階
-
研究室・ゼミ室
3号館
5,823.55
3階
-
図書館・教室
4号館
6,714.05
3階
-
教室・プール・実習室
体育館
2,050.75
2階
-
柔剣道場・アリーナ
厚生棟
1,965.08
2階
-
学生食堂
スポーツ寮
1,488.51
3階
-
学生寮
相撲場
100.00
平屋
-
相撲稽古場
第1クラブハウス
395.02
2階
-
各クラブ部室
第2クラブハウス
355.60
2階
-
各クラブ部室
第3クラブハウス
452.22
2階
-
各クラブ部室
[名古屋キャンパス]
名
称
建物面積(㎡)
地上
地下
主な用途・設備等
1号館
6,044.36
4階
1階
教室・研究室・事務局
2号館
6,255.01
6階
1階
教室・研究室・実習室
3号館
3,328.70
4階
-
教室・学生ホール
4号館
5,649.27
4階
-
教室・実習室・研究室
5号館
2,136.71
3階
-
学生食堂・寮
円型棟
3,116.27
5階
-
図書館・体育施設
608.90
2階
-
ラウンジ・売店
1,222.97
2階
-
各クラブ部室
学生会館
クラブハウス
以下、特に学生生活に直接関連する施設の一部について、その特色や、最近の整備事項
等を記す。
(ア)図書館
図書館は、名古屋キャンパスと三好キャンパスに置かれており、前者を本館、後者を分
館としている。両館合わせての蔵書数は約 25 万 8 千冊で、大学の規模に比して蔵書数が
多い。また、関山文庫(哲誠文庫)や林霊法文庫などの特色あるコレクションを有してお
り、貴重な研究資料として注目されている。視聴覚資料は約 9,000 点を所蔵し、定期刊行
物は国内 1,455 種、外国 225 種を取り扱っており、データベースの契約数は 19 件である。
平成 20(2008)年度の年間利用者数は、
学内利用者延べ 117,543 人、
学外利用者延べ 1,396
人であった。同年 4 月から開館時間を延長し、名古屋キャンパスは午後 8 時閉館、三好キ
ャンパスは午後 6 時閉館として、利用者の便宜を図っている。学外への開放については基
準 10-1-(1), 88 ページを参照されたい。
(イ)体育施設(運動場を含む。
)
83
東海学園大学
三好キャンパスではスポーツ関係の正課科目が多く、また体育系のクラブ活動も盛んで
あるため、近年重点的に施設の充実を進めている。柔剣道場・バレーボール等のできるア
リーナのある体育館、全天候型グラウンド、ゴルフ練習場、温水プール、トレーニングル
ームなどの施設を備えている。名古屋キャンパスにも円型棟 5 階に体育施設があり、その
他トレーニングルーム、テニスコート、グラウンドなどの施設が整備されている。両キャ
ンパスともに夜間照明設備を導入している。これら体育施設は所定の手続きをとれば利用
できるようになっている。
(ウ)情報教育施設
名古屋キャンパスの情報教育演習室 5 室・読書室 2 室・LL(Language Laboratory) 教
室 1 室には総数 346 台のパソコンが設置されており、三好キャンパスではパソコン教室 7
室に総数 328 台のパソコンが設置されている。両キャンパス共に授業で使用中以外は、学
生がいつでも利用できる環境が提供されている。特に、学生の卒業研究のまとめの時期に
は、一部の演習室について利用時間延長の措置をとっている。
(エ)厚生施設
三好キャンパスでは平成 20(2008)年度から人間健康学部人間健康学科生の段階的移転
が始まり、厚生施設の利用者増に対応するため増築を行った。これにより厚生棟 1 階はウ
ッドデッキのオープンテラスも備えた約 800 席の学生食堂となっている。同 2 階はコンビ
ニエンスストアとして日用品販売を行っている。名古屋キャンパスは、5 号館 1・2 階が学
生食堂となっており、学生会館 1 階にコンビニエンスストアが置かれている。
視点 9-1-②より、教室・研究室をはじめこれらの共同利用施設の管理について見ると、
施設設備の維持・管理は、各キャンパス総務課の責任において、関係法令に従って行われ
ている。学内の日常的清掃をはじめ、空調・電話・エレベータ・火災報知器・消火設備な
どについては、
委託業者との連絡を密にして定期的な点検とメンテナンスがなされている。
(2)9-1の自己評価
本学の校地・校舎の面積は大学設置基準を上回っており、施設設備も設置基準に準拠し
て適切に整備されていると評価できる。特に新設の教室や設備は、学生にも教員にも使い
やすいものとなっており、有効に活用されている。従来からの校舎・設備についても、改
修等を逐次進めてきている点も評価できる。但し、学科新設や学科移転に伴い在来施設の
転用や改造が重なり、例えば実験実習室と教員研究室との位置関係が不自然になっている
などの問題があるが、過渡的措置としてやむをえないものと考えている。
(3)9-1の改善・向上方策(将来計画)
保守点検・維持管理は継続的に行い、教育研究活動に支障のないように配慮していく。
ネットワークシステムについては、情報教育委員会において平成 21(2009)年度にリプレー
スを検討中である。
9-2 施設設備の安全性が確保されていること。
《9-2の視点》
9-2-① 施設設備の安全性(耐震性、バリアフリー等)が確保されているか。
84
東海学園大学
(1)9-2の事実の説明(現状)
校舎の耐震性については、三好キャンパスはすべて新築であるため問題はないが、名古
屋キャンパスは旧東海学園女子短期大学の建物を引きついでいる関係上、旧建築基準によ
る校舎がかなり多い。耐震診断を受けた結果、1 号館・5 号館・円型棟が耐震基準を下回
っていた。5 号館については耐震補強を既に行っている。1 号館については平成 21(2009)
年度に授業に支障のないように夏休み期間中完工予定で耐震工事を施工する。円型棟につ
いては後述する。
バリアフリー化については、建物入口に自動扉・スロープを設置し、障害者用トイレも
設けるなどの措置を完了している。
アスベストの問題については、三好キャンパスでは使用されていない。名古屋キャンパ
スにおいては 5 号館に使用されているが、封じ込め措置をしており、施設使用上問題にな
るものではない。
(2)9-2の自己評価
建物の耐震性の確保はかねて苦慮してきたところであるが、1 号館の耐震補強工事が実
施されることは評価できる。
バリアフリー化については、一応の整備を終え、障害をもつ学生の就学に支障はないと
考えている。
(3)9-2の改善・向上方策(将来計画)
名古屋キャンパス円型棟は表 9-1-1 に示したように 1 階から 4 階は図書館、5 階が屋
内体育施設となっているが、耐震補強の措置をとるか、図書館としての利便性も含め、改
築を計画するか検討を続けている。大学として早急に方針を定める必要があり、図書館委
員会を中心に検討を進める予定である。
9-3 アメニティに配慮した教育環境が整備されていること。
《9-3の視点》
9-3-① 教育研究目的を達成するための、アメニティに配慮した教育研究環境が整
備され、有効に活用されているか。
(1)9-3の事実の説明(現状)
学生の憩いの場として利用できる施設として、三好キャンパスでは 3 号館・4 号館の学
生ラウンジ、名古屋キャンパスでは 2 号館・3 号館学生ホールなどを設けている。新築建
物については吹き抜け、光窓などを取り入れ、明るく開放的なスペースを提供するよう努
めている。
健康増進法の施行を機会に、平成 15(2003)年秋より、受動喫煙防止対策と環境の美化の
ために、三好キャンパス・名古屋キャンパス共に指定場所以外は禁煙とし、分煙を進めて
いる。その後さらに、名古屋キャンパスでは学生生活委員会において、禁煙教育推進の趣
旨で、
「世界禁煙デー」をはじめ、月 1 日「健康を考える日」を設定し、当日はキャンパ
ス内全面禁煙として教職員が巡回指導を行っている。
85
東海学園大学
廃棄物については両キャンパスとも自治体の基準に従って分別収集を行っており、ゴミ
の減量・リサイクルに取り組み、学生にも環境保全意識の向上を促している。その他一般
的な学内環境美化については、清掃業務委託を行っている。
学内の防犯体制については、警備員を配置し定時に学内巡回を行い、また防犯カメラを
設置し、警備室で監視管理し、盗難の発生や不審者の侵入を防止するに努めている。
(2)9-3の自己評価
学生が自由に利用できる快適なスペースが、収容定員数に比してやや少なく、「授業が
終るとすぐ帰宅してしまう」ような姿が見られる。自学自習の推進や、課外活動の活発化
のためにも、さらに充実が必要である。
分煙推進は校内美化の面でも成果を上げており、吸いがらの「ポイ捨て」や「歩きタバ
コ」は、分煙導入前に比して、いちじるしく減少している。
(3)9-3の改善・向上方策(将来計画)
学生納付金の大きな部分を占める教育研究経費を活用し、
「目に見える」形で学生に直
接還元していくために、教育研究環境の整備充実を、総合企画会議・大学評議会等の大学
の主要会議において検討し、具体化を進める計画である。また、学生の安全や学習環境の
アメニティを確保するために、教授会の下では学生生活委員会、事務組織内では学生サー
ビス向上委員会において引き続き検討していく。
[基準9の自己評価]
校地・運動場・校舎等については教育研究目的を達成するにふさわしい面積と環境が確
保されており、当然ながら大学設置基準を充たしている。図書館、情報処理環境も整備さ
れ、利用時間についてもできるだけ学生の便宜を図っていることも評価できる。
建物の耐震性確保については、順次補強工事が施工されており、人間健康学部人間健康
学科の三好キャンパスへの移転への対応も、研究室の確保や食堂の増築など、迅速な対応
が行われている。
特に新設建物については、アメニティにも配慮されており、設備備品も使い勝手のよい
ものに改善されてきているなど、良い方向に向かっている。
[基準9の改善・向上方策(将来計画)
]
「魅力ある大学づくり」の一端として、教育研究環境の抜本的向上のためには校舎の増
改築も考えなければならない。これは学園全体の財務に関わることゆえ理事会審議事項で
あるが、大学としては、大学の責任において自発的に計画立案をし、理事会において主張
すべきことは主張していく。
86
東海学園大学
基準10. 社会連携
10-1 大学が持っている物的・人的資源を社会に提供する努力がなされていること。
《10-1の視点》
10-1-① 大学施設の開放、公開講座、リフレッシュ教育など、大学が持っている
物的・人的資源を社会に提供する努力がなされているか。
(1)10-1の事実の説明(現状)
本学は学則において「公開講座等」の 1 節を立て、
「地域社会の文化の向上に資するた
め、公開講座その他の教育を行う」
(第 61 条)と定めている。
本学で「公開講座」と呼んでいるものには、会場提供・受講者募集・担当講師等すべて
にわたって大学独自で用意しているものと、地域社会との連携協力関係に基づいて開講し
ているものとがある。いずれも、大学のもつ知的資源の公開活用によって地域社会に貢献
しようとする趣旨は共通であるが、ここでは大学独自のものを先に述べ、地域連携講座等
については 10-2 及び 10-3 に記載する。
本学では、公開講座自体は平成 14(2002)年度から開講してきたが、平成 17(2005)年度
から全学委員会として各学部から選出された教員を主とする「エクステンションセンター
運営委員会」を置き、翌平成 18(2006)年度にはその支援事務組織として「生涯教育推進室」
(現「生涯学習推進室」
)を設置した。
「エクステンションセンター」は、名古屋市中区のビルの一画にある「栄サテライトキ
ャンパス」を利用している。もともと大学院経営学研究科が社会人・職業人学生の便宜を
図って、いわゆる「駅前大学院」として利用してきた施設であるが、大学院の授業に使用
しない日時を選んで公開講座のために有効活用している。
(ア)プチ講座
社会人向けの公開講座の受講者は中高年に偏りがちであるが、より若い世代の、しかも
OL をターゲットにした講座である。新人を指導する立場になる 20 代後半から 30 代前半
の OL が、自己啓発のために選びたくなるテーマと、本学教員の専門性がマッチするとこ
ろに内容を絞り込んでいる。講座タイトルも「大学教授たちがそっと教える明日から役に
立つプチ○○学」とし、○○のところに入るのはこれまで、
「心理学」
「マネー学」
「キレイ
学」
「トーク学」
「仕事学」
「LOHAS 学」となっている。経営・人文・人間健康の本学の全
学部の教員が協力担当している。
教室の規模が小さいため定員は 20 人(内容によっては 10 人)で、しかも常時開講では
なかったにもかかわらず、7 年間で延べ 2,857 人の受講があった。一度受講した人を「会
員」として登録しており、その数は 783 人を越え、再受講も高率に上っている。
最近 3 年度間の開講・受講状況をまとめると表 10-1-1 のようになる。
87
東海学園大学
表 10-1-1
テーマ
栄サテライトキャンパス「プチ講座」の開講・受講状況
開講年月
開講回数
講師数
受講者数
プチ心理学 5
2006.6~7
8
4
147
プチトーク学 4
2006.10~11
8
3
83
プチ LOHAS 学 2
2007.2~3
12
6
136
プチマネー学 4
2007.2~3
8
3
90
プチトーク学 5
2007.6
8
4
73
プチトーク学連続講座
2007.7~8
4
1
28
おしゃれに文章を楽しもう
2007.8~9
6
1
39
プチ仕事学 2
2007.11~12
6
3
68
プチ心理学 6
2008.2
8
4
142
プチ心理学 7
2009.2~3
8
4
123
(イ)MBA ビジネスセミナー
(ア)と同じく「栄サテライトキャンパス」における公開講座で、経営学部教員を講師
とし、ビジネスマンを対象として平成 15(2003)年度以降開講しており、今日までの総受講
者数は 136 人である。最近の開講は平成 18(2007)年 2 月に実施した「MBA ビジネスセミ
ナー5」で、5 人の講師が担当し、受講者は 20 人であった。
(ウ)発達教育講座
平成 20(2008)年に発足した人文学部発達教育学科の開催している研修事業に「東海学園
大学 発達教育講座」がある。保育所に勤務する保育士を対象とするもので、
「国際子ども
研究所」所長を兼務する同学科教授を中心に、発達教育学科の教員や学生の協力体制の下
に本学施設で開催している。
講座の趣旨は、子どもの発達段階や現代の家庭環境や地域社会の実情に基づいて、ある
べき保育課程の具体的作成方法を提起することにある。第 1 回(平成 20(2008)年 11 月)
の講座テーマは「保育所における保育課程の作成と指導計画の立案についてパート 1」と
し、保育課程の作成手順における理念、目標、保育方針などの考え方を説明した。愛知県
を含め全国から 288 人に上る参加者があった。第 2 回講座は平成 21(2009)年 4 月開催の
講演「保育課程を基にした指導企画の立案と保育所保育の教育について」である。本講座
は発達教育学科が社会との連携を図りながら有用な識見を発信していく試みと位置づけて
おり、今後も継続して実施する予定である。
(エ)附属図書館の開放
大学の知的資産の公開・活用の一環として実施している。名古屋キャンパス図書館では、
平成 17(2005)年度から地元天白区民を対象に館外貸出を行っている。このため、学生・教
職員以外の学外者への貸出が、開放以前は年間 500 冊を超えることがなかったのに対し、
同年度から急増し平成 19(2007)年度には 1,528 冊に達した。区民から好評を得ている。
(2)10-1の自己評価
栄サテライトキャンパスで開催の上記「プチ○○講座」は、対象者を絞り込んで開講趣
旨を明快にしたこと、受講料にもさまざまな割引制度を取り入れたこと、交通の便にめぐ
88
東海学園大学
まれ開講時間帯も適切であったことなどから、希望者が多く、かつ講座終了後に毎回行っ
ている受講者アンケートでも満足度がきわめて高いことなど、成功をおさめていると評価
している。テーマのユニークさから、新聞記事にも再三取り上げられるなど、本学の PR
活動としても貢献している。
発達教育学科の開催する現場の保育士、保育園運営者を対象とする講座は、まだ発足
早々であるが、地域の保育施設と学科との結びつきを定着させるための第一歩として、順
調なスタートを切ったと評価できる。
(3)10-1の改善・向上方策(将来計画)
栄サテライトキャンパスでの公開講座の受講者層の世代的特徴についてはさきに述べ
たが、多くの受講者が現に、また近い将来、母親として育児に関わっていくことになろう。
本学に保育士・幼稚園及び小学校教諭を養成する発達教育学科が設置されたことにより、
子育て支援の観点からテーマ・講師陣・受講者をさらに広げていく好機を迎えているので、
エクステンションセンター運営員会で新企画の検討に入っているところである。
10-2 教育研究上において、企業や他大学との適切な関係が構築されていること。
《10-2の視点》
10-2-① 教育研究上において、企業や他大学との適切な関係が構築されているか。
(1)10-2の事実の説明(現状)
企業との共同研究、企業・自治体等からの委託研究については、遺憾ながら活発とはい
えない。
学生の教育面における他大学との連携については、地域社会に属するものとしては本学
も参加している「愛知学長懇話会」での協定に基づく単位互換制度がある。本学が公開し
ている授業の受講状況(受入)
、及び本学学生の他大学での単位取得状況(派遣)をまとめ
ると表 10-2-1 のようになる。
表 10-2-1
単位互換制度の活用状況
平成 19 年度
派遣
平成 20 年度
受入
計
派遣
平成 21 年度
受入
計
派遣
受入
計
人数
科目数
人数
科目数
人数
科目数
人数
科目数
人数
科目数
人数
科目数
人数
科目数
人数
科目数
人数
科目数
経営学部
1
2
26
44
27
46
1
2
11
20
12
22
1
1
26
47
27
48
人文学部
4
4
3
4
7
8
3
3
7
11
10
14
1
1
0
0
1
1
0
0
1
1
1
1
1
2
0
0
1
2
1
1
0
0
1
1
5
6
30
49
35
55
5
7
18
31
23
38
3
3
26
47
29
50
人間健康
学部
合計
海外の大学との連携では、留学生交換については基準 4-2, 45 ページで述べた。研究の
国際交流については、基準 5-4, 62~63 ページで述べたように「在外研究員」制度が活用
されているが、未だ個人単位であり、組織レベルの交流とまではなっていない。
89
東海学園大学
(2)10-2の自己評価
学園全体としては歴史も長く、企業等のトップや中堅として活躍している人物を輩出し
ている背景があり、民間企業とは良好な関係を保ってきたが、昨今の経済金融情勢のもと
では、企業と提携しての研究協力についてはきびしい条件下におかれていると言わざるを
えないが、地元有力企業の役職者を教授として招聘したケース、逆に本学教員から企業に
転出したケースなどがあり、大学と民間との間の「パイプ」は通じていると考えている。
学外との教育協力、具体的には単位互換制度は、規模としては小さいながら制度的にほ
ぼ定着していることは、評価できる。
(3)10-2の改善・向上方策(将来計画)
インターンシップについては、大学院経営学研究科では教育内容的には実施されている
といえる。経営学部でも科目として立てられているが、その実質化を図っていく計画であ
る。
10-3 大学と地域社会との協力関係が構築されていること。
《10-3の視点》
10-3-① 大学と地域社会との協力関係が構築されているか。
(1)10-3の事実の説明(現状)
社会教育を通じての地域社会との連携について、大学独自事業に関しては10-1で詳述した
ので、ここでは地域社会、特に自治体との共催・協力事業について記す。
(ア)区民講座(東海学園大学公開講座)
地域住民を対象とする社会教育講座で、名古屋市天白生涯学習センターとの共催で開講して
いるが、「東海学園大学公開講座」の呼び名で親しまれている。時代の社会的関心、地域から
の要望に加え本学教員の専門性も考慮しながら、毎年度大きなテーマを選び、プログラムに従
って1回完結型の講座を数回のシリーズとして開く。参加は、教材費等を申し受ける場合もあ
るが、原則として無料である。年度ごとに受講者を一括募集しているが、申込みは定員を超え
ることが多く、その場合は抽選によっている。
前年度の実施状況はデータ編表10-2に示しているが、最近3年間をとって開講状況をたどる
と表10-3-1のとおりである。
表 10-3-1
テーマ
区民講座(東海学園大学公開講座)の開講・受講状況
開講時期
実施回数
講師数
のべ受講者数
親子で遊ぼう
2006.10~11
4
1(1)
133
応急手当を学ぼう
2008.2
4
1(1)
132
観音信仰と巡礼の美術
2008.11
3
2(1)
151
講師数括弧書きは本学からの講師で内数
(イ)大学連携講座・大学連携シリーズ講座
大学連携講座は、名古屋市生涯学習推進センターとの連携により、大学が持つ情報・知
90
東海学園大学
識を提供、幅広い課題に対応している講座である。講座内容の企画は大学担当、受講生募
集・広報は同センター担当となっている。
平成 16(2004)年度より参加し、16 年度は「これからの健康をつくる、守る、育てる」
をテーマに 6 テーマを用意した。17 年度は「まるごと健康」として 5 テーマを実施した。
本学人間健康学部は平成 16 年 4 月に設置されたので、そのスタートにふさわしい事業で
あったが、健康への関心の高まりともあいまって、定員を超える申込みがあり、好評であ
った。
大学連携シリーズ講座は、ひとつのテーマにそって、複数の大学の公開講座を連続した
形で行う講座である。開始された平成 17(2005)年度から参加している。17 年度のテーマ
は「名古屋を知る」であったが、本学の専門研究者(美術史専攻)が名古屋にある徳川美
術館の所蔵品を中心に、
時代背景と共に紹介・解説した講座を担当したのがその例である。
以後ひきつづき実施しているが、前年度の実施状況はデータ編表 10-2 に示した。
(ウ)なごや健康カレッジ
「なごや健康カレッジ」は、名古屋市が推進しているプロジェクトのひとつ「クオリテ
ィライフ 21 城北」うち、健康学習機能を担うものである。本学教員が企画・試行の段階
から積極的に関わっており、また発足時本学人間健康学部が名古屋市内に立地する唯一の
健康系学部であったためもあって、平成 17(2005)年度から正式に名古屋市の委託を受けた。
17 年度は「健康學ノススメ」と題し、健康系の座学ではなく、健康を多方面から捉え・
考えるという観点から、人文学部・経営学部の教員も講師とした文科系講座も加え、人間
健康学部スポーツトレーナーコースの学生参加によるコンディショニング・ストレッチ指
導を企画、保健所・スポーツセンター担当の講座も組み入れ、15 回にわたり実施した。定
員を超える申込者があり、出席率もきわめて高かった。学生と中高年の受講生という異世
代間のコミュニケーションの場ともなり、孫のような世代の学生と接することを楽しみに
出席する受講生が多く、学生にはインターンシップの場ともなった。なお、学生が指導員・
協力者として事業に加わるに際しては、必ず事前に教員が指導を行い、趣旨の徹底と不測
の事故防止等に万全を期している。
前年度の実施状況はデータ編表 10-2 に示しているが、スタート以来の流れを簡単に表
示すると表 10-3-2 のとおりである。当初人間健康学部人間健康学科が主体となって推
進したが、現在では音楽、栄養学など他学部他学科の教員も加え、全学的事業となってい
る。
91
東海学園大学
表 10-3-2
開講時期
2005.11
テーマ
健康學のススメ
「なごや健康カレッジ」の開講・受講状況
実施
講師数
受講者数
回数
(のべ)
(のべ)
15
18
364
~2006.3
学外担当機関等
天白スポーツセンター、天
白保健所、天白太極拳同好
会、荒池ふるさとクラブ
2006.10
健康學のススメⅡ
13
13
295
天白スポーツセンター
健康學のススメⅢ
21
21
529
天白スポーツセンター、天
~2007.1
2007.10
~2008.3
2008.10
白保健所
健康學のススメⅣ
23
~2009.3
23
568
天白スポーツセンター、天
白保健所、あまの創健
(エ)トワイライト・スクール
名古屋市が(財)名古屋市教育スポーツ振興事業団に委託して開いているもので、放課後
に学校施設を開放して学年のちがう子どもたちが一緒に遊んだり、体験活動に参加したり
しながら地域住民との交流を通じて子どもの自主性や社会性を育て、あわせて子どもにと
って安全な活動場所を確保することを目的としている。本学では人間健康学部を中心に、
教員の指導のもと、主にスポーツ・トレーニングを学ぶ学生たちが組織したグループ「T3」
(ティースリー、Tokaigakuen Trainer Team)がボランティアとして参加し、名古屋キ
ャンパス近隣の名古屋市立原小学校において平成 20(2008)年 9 月から実施している。
21(2009)年度からは同学部管理栄養学科の教職履修者(栄養教諭をめざす学生)も参加し、
さらに、人文学部発達教育学科の学生も上記 T3 の活動を賛助する予定である。
発達教育学科では豊田市教育センター主幹の小・中・特別支援学校への学生ボランティ
ア登録を積極的に働きかけている。またこれら以外にも名古屋市の「ふれあいフレンド」
、
春日井市、東郷町、三好町等の放課後学級、授業補助の教育ボランティア参加に対する斡
旋や支援を実施している。
(オ)
「男性料理塾」
人間健康学部管理栄養学科では、大学の近隣在住の中高年男性を対象とした料理教室を、
NPO「食の未来を考える市民会議」と協同で、平成 21(2009)年 4 月より月 1 回本学で開
催している。目標と内容は、受講者の食の自立、食文化の継承、地産地消、栄養バランス
食の理解などである。調理指導には本学学生が参加し、インターンシップも兼ねている。
1 クールは 4 か月で、定員 30 人でスタートしたが、3 クール行いできるだけ多くの受講者
を対象とする。
(ア)~(オ)の他にも本学教職員・学生が関わっている社会連携事業は多々あり、その一部
を最近のものに限って表 10-3-3 にまとめた。
92
東海学園大学
表 10-3-3
名 称
健康都市なごやフェ
開催時期
20 年 11 月
ア
フィットネスカーニ
21 年 2 月
バル・イン・東海学園
その他の本学参加の社会連携事業
開催場所
参加人数
内容の概略
名古屋市 栄
のべ
バランスボール指導、骨密度測定と
もちの木広場
575
骨粗鬆症防止の栄養・生活改善指導
三好キャンパス体育
100
運動指導者を対象とするフォーラ
館
ム開催の機会を活かし一般向けに
大学
造形実習作品展
「カーニバル」を開催
21 年 2 月
名古屋市営地下鉄原
約 50
駅展示ギャラリー
なごや環境大学共育
21 年 2~3 月
名古屋キャンパス
形実習成果の発表
のべ
46
講座「だから、エコト
人文学部発達教育学科の学生の造
人間健康学部生による、市民の健康
増進のための運動指導
レ」
花まつり
21 年 4 月
三好キャンパス
約 1,000
本学の仏教的教育行事の一つであ
るが、地域住民にキャンパスを開
放、催し物も用意
(2)10-3の自己評価
本学が地域社会と協力・連携して実施している社会教育は、長い伝統をもつもの、最近
着手したもの等さまざまであるが、いずれも参加状況・アンケート調査等の結果等から見
ても、地域住民及び自治体から高い評価をうけているといえる。特に、教員の専門的知識
の提供にとどまらず、
「なごや健康カレッジ」
「トワイライト・スクール」
「男性料理塾」に
見られるように、学生グループが積極的に参加していることが特色で、本学の教育方針で
ある「体験して、強くなる」の趣旨にもマッチしており評価できる。
また、10-2-(1) に述べた区民講座における「短歌創作」講座では、終了後も熱心な受
講者 10 人ほどから引き続き指導を要請され、大学の教室を借用して「自主ゼミナール」
の形で講義と実作指導を組み合わせた学習活動を行い、今日まで継続している。
「講座を聴
いただけ」に終らない社会教育の形として高く評価できる。
(3)10-3の改善・向上方策(将来計画)
地域社会で文化活動を進めている市民サークルから、会場難の声をよく聞く。本学教職
員が関わっているものなどについては、地域連携のいとぐちの趣旨で、大学としてもでき
るだけ便宜を図っていきたいと考えている。
[基準10の自己評価]
本学が主催もしくは自治体と協力して行ってきた社会教育活動は、健康・スポーツ・栄
養・保育・短歌創作・朗読など、一般人に身近なテーマでしかも広い意味で行動・活動に
結びつく領域に関われる教員が充実していること、学生がボランティアとして多数積極的
に参加したことで成功したものと考えている。大学自体の PR 活動としても大いに有効で
あると評価できる。
93
東海学園大学
[基準10の改善・向上方策(将来計画)]
社会教育から、社会人再教育(リカレント教育、リフレッシュ教育)を目指す人びとの
進学意欲へと結びつける方策を考えていきたい。
94
東海学園大学
基準11. 社会的責務
11-1 社会的機関として必要な組織倫理が確立され、かつ適切な運営がなされてい
ること。
《11-1の視点》
11-1-① 社会的機関として必要な組織倫理に関する規定がされているか。
11-1-② 組織倫理に関する規定に基づき、適切な運営がなされているか。
(1)11-1の事実の説明(現状)
ここでは、組織としての大学に要請される倫理として、
(ア)公的研究費の適正な管理
に関する規程、
(イ)研究の遂行・研究成果の発表に関わる諸規程、
(ウ)セクシュアル・
ハラスメント防止のための規程、及び(エ)個人情報の保護に関する規程の 4 点を取り上
げて説明する。
(ア)公的研究費の管理・監査については、
「公的研究費補助金取扱いに関する規程」
(→
【資料 11-1】) を整備し、施行している。本学専任教員の公募型の研究費の適正な運営・
管理を保つために制定されたもので、研究(代表)者と、本学の各部署の責任者及び本学
の経理関係規程との関係を明確化することに主眼点を置いている。本規程は大学の公式ホ
ームページにも掲載している。
(イ)研究の倫理については、研究上の不正行為の防止のため、「研究上の不正行為に
関する取扱い規程」
(→【資料 11-1】) を定め、施行している。ここで「研究上の不正行
為」とは、捏造・改ざん・盗用を指す。事態発生の場合を想定し、不正行為に関する申し
立ての受け付け手続きを定め、以下調査・審理・判定の手順を規定するとともに、調査対
象者側の異議・不服の申し立て手続きを含め、申し立て者・情報提供者及び調査対象者い
ずれの側の人権にも充分な配慮を加えている点に特色がある。この規程も公式ホームペー
ジに掲載している。
本学は人間健康学部、また人文学部の心理・行動研究分野をもち、個々の人間を被験者
もしくはインフォーマントとする研究が行われているため、研究実施上の配慮を必要とす
るテーマも多い。このため、
「研究倫理委員会規程」
(→【資料 11-4】
)に基づき、全学委
員会として「研究倫理委員会」を設けている。委員会は、現在 4 人の教授で構成し、医学・
生命科学・生命倫理・仏教倫理等に識見をもつ教員を中心に選出している。
学内で行われている、健康や人間心理を対象とする研究では、学生を被験者とする研究
計画がほとんどであるが、事前に詳細な研究計画書の提出を求め、それが社会的・倫理的
に問題がなく、かつ社会に貢献するものであるか否かについて「研究倫理委員会」の審査
を受けたうえで許可される。審査請求件数は平均して年間 1~2 件程度である。
研究倫理委員会では、研究計画の審査に当たって、文部科学省・厚生労働省の定めた「疫
学研究に関する倫理指針」の他、
「ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則」
(通称ヘルシ
ンキ宣言)を参照している。これは、後者が医学にかぎらず、広く人間の心身の健康に関
わる研究において指針とされるべきものだからである。これらの指針に照らして、場合に
よっては、研究計画やその方法の一部又は全部に条件を付して研究を許可し、社会的責任
に関して万全を期している。今日まで、被験者(インフォーマント)をつとめた学生から
の苦情が発生した例はない。
95
東海学園大学
動物実験については、文部科学省の定めた「研究機関等における動物実験等の実施に関
する基本指針」及びこれを承けて日本学術会議が作成した「動物実験の適正な実施に向け
たガイドライン」を参考にして、
「東海学園大学動物実験委員会規程」
(→【資料 11-4】
)
を制定し、3 人以上の委員から成る委員会を設置した。総務課を事務担当とし、動物愛護・
環境保全・安全確保の徹底をはかっている。
「東海学園大学におけるセクシュ
(ウ)セクシュアル・ハラスメント防止については、
アル・ハラスメントの防止に関する規程」
(→【資料 11-3】
)が制定されており、これに
基づいて徹底をはかっている。学生から苦情もしくは相談があった場合に対応するため、
「相談員」をおき、学生生活委員、学生生活支援センター運営委員及び同センター室長、
ならびに学務課長を当てている。上記相談員メンバーがすべて男性であった場合は、女性
の専任教員に相談員を委嘱して加える。
相談窓口は、
学生生活支援センターとなっている。
相談窓口は学生の希望を聞いたうえで上記相談員(1 人もしくは複数)との相談の機会を
設定する。相談の手順は「セクシュアル・ハラスメントの相談員に関する規程」
(→【資料
11-3】
)で詳細を定めている。
相談の結果によっては、
「調査委員会」が設置され、調査が行われることになるが、調
査の趣旨、調査委員の構成、手続き等の詳細を「セクシュアル・ハラスメント調査委員会
に関する規程」で細部にわたって定めており、調査結果を学長に報告することとなってい
る。全体にわたり、人権の保護、迅速性、秘密漏洩の防止に力点をおいている。
「個人情報の保護に関する法」の施行をふまえ、ま
(エ)個人情報の保護については、
ず学生に係る個人情報を念頭において「東海学園大学 個人情報保護に関する取り扱いに
ついて」
(→【資料 11-2】
)を配付し、学期始めのガイダンス、ゼミナール等において教
員から学生に説明し、趣旨の周知徹底をはかった後、学生の同意確認を得ている。内容は
入学手続き案内、学生便覧、大学ホームページなどにも正文を掲載している。大学全体に
わたる規程化については、細部にわたる整備を経て、
「東海学園大学 個人情報保護に関す
る規程」
(→【資料 11-2】
)が制定されている。
個人情報保護の徹底のため、例えば、教員が学生の身上書のコピーを所持することはし
ない、また、教授会審議に際しても、学生の身分に関わる資料や教員採用人事に関わる資
料は回収するなど、細心の注意をはらっている。また思わざる情報流出を防止するため、
年 2 回程度専門業者に依頼して機密書類の一斉廃棄を実施している。
以上(ア)~(エ) の組織倫理に関わる諸規程は、すべて教授会において説明されてきたほ
か、電子媒体を通じても全教員に送付し、一部は公式ホームページにも掲載している。ま
た、新任教職員については初任者研修の機会に配付説明しているなど、学内への周知につ
いては遺漏なきを期している。
(2)11-1の自己評価
研究者としての研究遂行と研究成果発表に係る倫理、科学研究費等外部資金の管理責任、
セクシュアル・ハラスメントの防止等については、審査体制、また事案が発生した場合の
対応策の流れについては、整備が行きとどいていると評価できる。
「セク・ハラ」の疑いを受けた事例は、本学では今日まできわめてまれである。これは、
学生生活支援センター等の相談窓口が充実していること、学生の所属ゼミの指導教員が学
96
東海学園大学
生生活全般について相談に乗っていること、また防止規程が「原則論」に終らずマニュア
ル化されており迅速な措置が可能となっていることなどが寄与してきたと考えられる。
但し、
「セク・ハラ」防止については、現行規程は学生と教員との関係を想定して制定
されたものであるため、
「アカ・ハラ」
「パワ・ハラ」なども含め、ひろく教職員組織全体
を見通した防止規程や対応窓口の具体化が不充分である。
(3)11-1の改善・向上方策(将来計画)
教職員相互間に係るハラスメント行為の問題については、学生の教育指導の問題とは性
質を異にする点があるので、労務管理の問題の一環と位置づけ、就業規則などにおいて整
備していく必要がある。現在事務局を中心に検討を進めているところである。
11-2 学内外に対する危機管理の体制が整備され、かつ適切に機能していること。
《11-2の視点》
11-2-① 学内外に対する危機管理の体制が整備され、かつ適切に機能しているか。
(1)11-2の事実の説明(現状)
多数の学生をあずかる大学として、防災、ことに火災・地震に対する安全策は最大の課
題である。従来包括的なマニュアルがなかったが、平成 20(2008)年 12 月、
「東海学園大学
防災マニュアル」
(→【資料 11-6】
)を定めた。策定の基本方針は、①人命の保護を最優
先する、②資産を保護し、業務の早期復旧を図る、③ 余力がある場合には近隣事業所への
協力に当たる、の 3 点とした。マニュアル化し、同時に便覧としても参照できるものとし
ている。
消火設備・安全点検等に関しては、定期的に法令で定められた検査を受けていることは
当然であるが、防災訓練・避難訓練については、学年暦との関係もあり、これまで定期的
に実施することが困難であった。名古屋キャンパスで平成 17(2005)年度に名古屋市天白消
防署の指導により、火災発生の第一報からはしご車を使っての救助まで、大々的な防災訓
練を行ったのが最近の実例である。このため、上記マニュアルでは、
「防災の日」(9 月 1
日)を中心に、総合防災訓練を毎年 1 回以上実施することに定めた。
学生の安全に関わることがらで、急な発病、スポーツ活動中の事故等への対応について
は基準 4-3, 48 ページで述べたので参照されたい。大学の責任を問われるようなケースは
開学以来発生していない。
情報管理の面について述べると、本学ネットワークへの不正侵入や、データの流出・破
壊の防止のため、
「情報教育センター」がセキュリティの充実をはかっており、学内端末に
はコンピュータウィルス対策を措置済みである。これまで、迷惑メール等の被害は皆無で
はなかったが、業務に支障をきたすような深刻なトラブルが発生した事例はない。
(2)11-2の自己評価
防災面では、予防と緊急時対策マニュアルが整備されたことは評価できる。自力救済措
置については限界があるが、緊急通報体制と「連絡網」については事態に即応できるもの
になっていると考えている。
97
東海学園大学
ネットワーク、データの保全については上述の対策の他、
「情報教育センター」に専門
職員が常駐し、教職員・学生の個別相談にも応じる体制をとっており、被害防止に役立っ
ていると評価できる。
(3)11-2の改善・向上方策(将来計画)
危機管理マニュアルはひとまず整備されたが、組織の改編や教職員の人事異動に応じて、
遅滞なく改訂していく予定であり、
その素案は事務局総務課が担当することとなっている。
また、上述の防災訓練を通じて体制と運用の適切性の検証を重ねていく。
11-3 大学の教育研究成果を公正かつ適切に学内外に広報活動する体制が整備さ
れていること。
《11-3の視点》
11-3-① 大学の教育研究成果を公正かつ適切に学内外に広報活動する体制が整
備されているか。
(1)11-3の事実の説明(現状)
本学の自己点検・自己評価の結果については、法令ならびに学則の定めるところにより、
公開している。直近の例は平成 19(2007)年 3 月であるが、これについてはすでに基準 7-
3 で述べているので重複を避け、ここでは(ア)教員の研究成果の公表、
(イ)保護者に向
けての広報活動、及び(ウ)広く、高校生から一般社会人までを視野に入れた広報活動の
3 項目に分けて述べる。
(ア)研究成果の公表
教員の研究成果の発表手段として大学が用意しているものとして『東海学園大学研究紀
要』
(英文名 Bulletin of Tokai Gakuen University)がある。大学創立と年度を同じくし
て、
平成 8(1996)年 3 月に創刊号を発刊し、
以後第 14 号まで刊行を続け今日に至っている。
現在、
「経営・経済学研究編」
(シリーズ A)と「人文学・健康科学編」
(シリーズ B)の 2
系列で発行しているが、大学全体の総合的紀要であるとの理念から、教員の所属学部に対
応させて編を分かつことはしていない。したがって、一例を挙げれば、経営学部の教員が
シリーズ B に寄稿することもある。
紀要に関する基本的事項は「東海学園大学研究紀要に関する規程」及び「同投稿規程」
(→【資料 11-7】
)で定めている。全学委員会として各学部から選出された委員 6 名から
成る「紀要委員会」が、編集と審査に責任を持つ。編集作業上特筆すべきは、論文の質の
水準を確保するため、すべての投稿を査読に付すと定めたことである。紀要委員会委員の
他、学外に査読者を委嘱するケースも想定されている。
紀要執筆者は原則として本学専任教員であるが、非常勤講師、卒業生、元教員で専任教
員の推薦がある場合には、紀要委員会の判断により審査に付すことがあるとしており、ま
た共著論文については本学専任教員が筆頭者(ファースト・オーサー)であれば共著者に
は特に資格の制限を設けないなど、学術的に開かれた場とする考え方をとっている。最近
号(第 14 号、平成 21(2009)年 3 月刊)について見ると、2 シリーズ計 18 編の論考のうち、
非常勤講師によるものが 2 編、専任教員と非常勤講師もしくは学外者との共著によるもの
98
東海学園大学
が 4 篇含まれている。
(イ)保護者に向けての広報
学生の保護者を対象とする広報活動は、学生の父母等保護者から構成される教育後援会
の機関紙『COM(コム)』を活用している。教育後援会の活動を広報することが主旨である
が、本学の教育方針、学生の活動状況、施設改善、教職員からのメッセージなど、大学か
ら提供する記事も多数掲載している。7-3 で言及した「学生による授業評価」の概要もこ
こに掲載している。
現況では年 3 回発行、平均 20 ページ、発行部数約 4,000 部で、教育後援会会員すなわ
ち保護者全員に送付している。最近、判型を大きくしカラーページを増やし、横書きを縦
書きにするなど紙面を刷新した。
(ウ)高校生から一般社会人までを視野に入れた広報活動
近年大学に関する情報を求める人びとはまずインターネットを利用するのが普通であ
るので、公式ホームページの充実に力を入れ、迅速なリニューアルに努めている。大学・
学部・クラブ(サークル)に関わるコンテンツが主であるが、個々の教員の研究主題・ゼ
ミ内容・社会的活動についても、
教員名簿からのリンクをたどり詳細を知ることができる。
公式ホームページの管理責任者は、学生募集・入試に関わる情報が大きなウエートを占
めることもあって、現在入試広報室長となっている。制作については専門業者に委嘱し、
技術面については本学情報教育センター職員がアドバイスを行っている。
他に学校法人全体に係る広報誌として、
『東海学園学報』があるが、すでに基準 8-2, 78
ページで記述しているので参照されたい。これも学園ホームページ掲載としている。
(2)11-3の自己評価
大学紀要は、学術出版自体が困難な今日、研究発表の場所として大きな比重を占めてい
ると考えている。本学が無審査掲載によらず、査読制度をとって水準維持に努めているこ
と、ならびに寄稿者の条件を比較的自由にし、研究者に開かれた場としていることは評価
できる。
保護者、高校生、一般社会人を対象とする広報活動については、広報誌、パンフレット、
公式ホームページとも、最新かつ正確な情報をわかりやすく伝えるという観点から見るな
ら、ほぼ目的を達していると自己評価している。但し、オープンキャンパス、大学説明会
などでは対面コミュニケーションに努めているが、印刷媒体・電子媒体による広報に限っ
て見れば、大学からの発信に傾きがちで、意見交換や質疑応答の場がとぼしい点、改善の
余地がある。
(3)11-3の改善・向上方策(将来計画)
広報誌やホームページにおいては、保護者からの意見・要望の掲載、高校生からの質疑
と回答などの場を設け、広報活動を双方向的にする工夫を検討し、また研究紀要を「論文
集」にとどめるのでなく各種研究助成金による研究成果の要点を公開するなど、いずれも
よりオープンな方向で充実を図っていく方針で、それぞれ、学生生活支援センター室、入
試広報委員会、及び紀要委員会で検討に入っている。
99
東海学園大学
[基準11の自己評価]
組織倫理に関わる諸規程の整備と教職員への周知徹底は進んでおり、社会的要請に応え
うるものとなっている。
教育研究に係る広報活動、社会への情報提供については、決して華やかなものではない
が、いずれも公正・適切なものであると自己評価している。
危機管理については、少くとも初動に関するかぎり、マニュアル化によって細部にわた
って体制が整えられてきている。
[基準11の改善・向上方策(将来計画)]
ハラスメントの防止については、これまでもっぱら学生-教育者間の関係を想定してい
たが、
教員組織・事務組織全体の倫理と労務管理の問題として捉え直すことも必要であり、
事務局を中心に服務規程の整備に着手することとしている。
研究紀要の「電子化」
(既刊分を含む。
)については、紀要委員会で検討を行う予定であ
る。
100
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