Comments
Description
Transcript
脳の機能障害と気分障害:原疾患による比較
専修人間科学論集 心理学篇 Vol. 3, No. 1, pp. 1~9, 2013 1 脳の機能障害と気分障害:原疾患による比較 内山愛子 1 ・岡村陽子 2 Mood disorders following brain dysfunction: Comparison between traumatic brain injury, post stroke, and dementia Aiko Uchiyama 1 and Yoko Okamura 2 Abstract:脳損傷により身体機能や認知機能が障害された場合,障害された機能に加え,問題行動や心理的 な症状がしばしば問題となる。とりわけ気分障害との関連は多く報告されている。本稿では脳の機能障害を引 き起こす原疾患を TBI,脳血管障害,進行性認知症に大別した上で,気分障害について概観し,さらに脳の 機能障害による気分障害の評価法を軸にまとめ,問題点と今後の課題について整理した。原疾患別での気分障 害の発症率は TBI で11%~42%,脳血管障害が12.3%~63%,進行性認知症では20.5%~51%の間で報告さ れており,いずれの原疾患でも高い発症率であった。脳機能障害者に対する気分障害の評価は評価者別に患者 自身・介護者・専門職による評価に分けられる。先行研究から専門職でも気分障害の症状を見落とす可能性が あること,そして介護者からの情報は症状を把握する上で有用だが過大評価になる可能性など,評価に際し注 意すべき事柄が明らかとなっている。これらの先行研究から脳機能障害者への気分障害の評価の重要性が示さ れる一方で,評価法の選定には患者の症状や置かれた環境から慎重に行う必要があると考えられた。 Keywords:気分障害,外傷性脳損傷,脳卒中後うつ病,認知症,mood disorder, traumatic brain injury, post-stroke depression, behavioral and psychological symptoms of dementia 1 .はじめに 脳損傷により身体機能や認知機能が障害された場合, て70%にあたる介護者が精神的ストレスを感じていると 回答し,TBI 患者の問題行動によって家族が困ってい る実態を明らかにした。こうした実態から,脳機能障害 その障害された機能そのもののみでなく,問題行動や心 者・ひいては患者の家族・介護者を適切に支援する上 理的な症状がしばしば問題となる。とりわけ気分障害と で,脳機能障害者の気分障害が患者にどのような影響を の関連は多く報告されている(Aalten, Vugt, Jaspers, 与えるのかを明らかにすることが急務と言える。そし Jolles, & Verhey,2005;Eriksson, Asplund, Glader, て,脳機能障害者のストレス状態や,感情障害を,周囲 Norrving, Stegmayr, Terént, Asberg, & Wester, が理解できるようにするためには,だれが見ても理解で 2004;Silver, Kramer, Greenwalds, & Weissman, きるような客観的な評価方法も必要であると思われる。 2001) 。Gainotti(1993;2003)は,脳機能障害者が気分 本稿では脳の機能障害を引き起こす原疾患を TBI, 障害を負うことの原因として,神経学的理由,心理学的 脳血管障害,進行性認知症に大別した上で,気分障害に 理由,心理社会学的理由があると指摘している。神経学 ついて概観し,さらに脳の機能障害による気分障害の評 的理由とは,脳が損傷されたことによる直接的影響であ 価法を軸にまとめ,課題について整理した。 る。心理学的理由は脳損傷に対する病識がもたらす感情 的反応であり,個人の性格や価値観に関わるものであ る。また心理社会学的理由は,障害によって社会的に孤 2 .脳の機能障害と気分障害に関する研究 2-1.脳の機能障害で生じる気分障害の概念 立しやすいというものである。脳機能障害者の感情障害 脳機能に障害を負った場合に生じる気分障害を表す概 は患者本人のみならず家族や介護者への影響も大きいと 念は複数存在するため,原疾患ごとに整理したい(表 考えられる。小田・佐伯・岩永・岡崎・和田・蜂須賀 1 )。脳血管障害後に起こるうつ症状を表す概念として, (2004) は外傷性脳損傷 (Traumatic Brain Injury:TBI) 脳卒中後うつ病(Post Stroke Depression:PSD)があ 患者の社会生活に関する実態調査を行い,TBI 後,高 る。PSD 特有の診断基準,評価尺度として確立された 次脳機能障害によって社会参加が困難となること,そし ものはなく,一般的に脳血管障害後にいわゆる内因性う つ病にみられるのと同様の症状を呈したものを PSD と 受稿日2012年11月19日 受理日2012年12月 5 日 1 JR 東京総合病院(JR Tokyo General Hospital) 2 専修大学人間科学部心理学科(Department of Psychology, Senshu University) 診断している(長田・村岡・里宇,2007)。TBI の気分 障害に対しては,気分障害のみを単独で示すような概念 は報告されていない。しかし社会的行動障害という気分 内山愛子・岡村陽子 2 表 1 .気分障害と関連する概念 社会的行動障害 Post Stroke Depression(PSD) Behavioural and Psychological Symptoms of Dementia(BPSD) 原因疾患 含まれる症状 TBI 依存,退行,欲求コントロール低下,感情コン トロール低下,対人技能拙劣,固執性,意欲・ 発動性の低下,抑うつ 脳血管障害 認知症 脳血管障害後にみられるうつ症状 妄想,幻覚,抑うつ,不眠,不安,身体的攻撃 性,徘,不穏,焦燥,無気力などの周辺症状 表 2 .IPA による BPSD の対処困難別分類 グループⅠ (厄介で対処の難しい症状) グループⅡ (やや処置に悩まされる症状) 心理症状 妄想 幻覚 抑うつ 不眠 不安 誤認 行動症状 身体的攻撃性 徘徊 不穏 焦燥 社会通念上の不適切な行動と 性的脱抑制 部屋の中を行ったり来たりする 喚声 グループⅢ (比較的処置しやすい症状) 泣き叫ぶ ののしる 無気力 繰り返し尋ねる シャドーイング 障害の症状を含む概念が存在する。社会的行動障害が示 管障害・進行性認知症患者の気分障害の発症率を検討し す症状は依存,退行,欲求コントロール低下,感情コン た 研 究 に よ る と,TBI で11 %~42 %, 脳 血 管 障 害 が トロール低下,対人技能拙劣,固執性,意欲・発動性の 12.3%~63%である。認知症の研究では進行性認知症患 低下,抑うつなどである(中島,2006) 。 者と血管性認知症患者を合わせた研究が多く,進行性認 進行性認知症においても周辺症状を表す概念として 知症に限定すると20. 5%~51%となる(表 3 ) 。いずれ BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of De- の原疾患も世界精神保健の気分障害の12カ月有病率が mentia)という用語が存在する。この用語には妄想・ 2. 5%であるのと比べて高率である。発症率は研究によ 幻覚・抑うつ・不眠・不安・不穏・焦燥・泣き叫ぶなど ってばらつきがみられるが,どの原疾患においても高い の症状が含まれている。国際老年精神医学会(Interna- 割合で気分障害を引き起こしており,脳の機能障害が存 tional Psychogeriatric Association:IPA) は そ れ ぞ れ 在する場合は,健常な対象者に対するよりも気分障害に の症状を対処の困難さによって「厄介で対処の難しい症 対してより多く注意が必要である。 状(グループⅠ) 」 「やや処置に悩まされる症状(グルー 発症率の違いに関しては,発症(受傷)からの経過期 プⅡ)」「比較的処置しやすい症状(グループⅢ)」に分 間による違いも影響することが指摘されている(Shi- 類している(国際老年精神医学会,2005) (表 2 )。以上 moda & Robinson,1999)。発症(受傷)からの経過期 により脳血管障害,TBI,進行性認知症ともに,概念や 間による気分障害の変動を検討した研究も多く(Berg, 用語に違いはみられるが,うつ症状という共通する気分 Paomäki, Lehtihalmes, Lönnqvist, & Kaste,2003; 障害の症状が存在する。 Jorge, Robinson, Moser, Tateno, Crespo-Facorro, & Arndt,2004),TBI 患者を対象にしたものでは,受傷 2-2.発症率について から 6 カ月後と 1 年後のうつ症状の状態を比較・検討し TBI,脳血管障害,進行性認知症のいずれの原疾患に た Bowen, Chamberlain, Tennant, Neumann, and Con- おいても気分障害が存在することは明らかであるが,疾 ner(1999)の報告がある。この研究では受傷後 6 カ月 患による発症率の違いはあるのであろうか。TBI・脳血 経過時点で39%の, 1 年経過時点では35%がうつ症状あ 脳の機能障害と気分障害:原疾患による比較 3 表 3 .気分障害の発症率 著者,年 原因疾患 対象者数 脳機能障害者 対照群 経過期間 診断基準・評価方法 発症率・ 有病率(%) Bowen et al.(1998) TBI 99 - 1 カ月 Wimbledon Self-Report Scale 38 Bowen et al.(1999) TBI 77 - 1年 Wimbledon Self-Report Scale 35 Horner et al.(2008) TBI 1.560 - 1年 Telephone Survey 40 Jorge et al.(1993) TBI 66 - 1 カ月 DSM-Ⅲ-R 36 Jorge et al.(2004) TBI 91 27 ~1年 DSM-Ⅳ/Hamilton Rating Scale for Depression 33 Kreutzer et al.(2001) TBI 722 - 2.5±2.3年 DSM-Ⅳ/Neurobehavioural Functioning Inventory 42 Silver et al.(2001) TBI 361 4.673 - Diagnostic Interview Schedule (DIS) 11 青山他(1998) 脳血管障害 57 - 50.9±59.5カ月 Zung Self-Rating Depression Scale 28.1 Aström et al.(1993) 脳血管障害 50-76 - ~3年 DSM-Ⅲ-R 16-31 Berg et al.(2003) 脳血管障害 85-92 - 2 週間~18カ月 DSM-Ⅲ/Beck Depression Inventory/Hamilton Rating Scale for Depression 23~29 Eriksson et al.(2004) 脳血管障害 15.747 - 3 カ月 一項目の質問のみ 14.3 Gottlieb et al.(2002) 脳血管障害 65 - 3 カ月 / 9 カ月 Geriatric Depression Scale 63( 3 カ月) 58( 9 カ月) Herrmann et al.(1998) 脳血管障害 150 - 3 カ月 Zung Self-Rating Depression Scale/Montgomery Asberg Depression Rating Scale 22(ZDS) 27(MADRS) 脳血管障害 133 - 1年 Zung Self-Rating Depression Scale/Montgomery Asberg Depression Rating Scale 21(ZDS) 22(MADRS) 脳血管障害 126 75 8.3±4.3日 Montgomery Asberg Depression Rating Scale 52 Paradiso and Robinson (1998) 脳血管障害 301 - 2 週間 DSM-Ⅳ/Hamilton Rating Scale for Depression 12.3(Male) 23.6(Female) Williams et al.(1999) 脳血管障害 71 - 1 カ月± 1 週間 Beck Depression Inventory 39 Aalten et al.(2005) 進行性・ 血管性認知症 199 - - Neuropsychiatric Inventory 53.2 Ikeda et al.(2004) 進行性・ 血管性認知症 60 1.102 - Neuropsychiatric Inventory 21.7 Lyketsos et al.(2000) 進行性・ 血管性認知症 329 673 - Neuropsychiatric Inventory 24 Skoog(1993) 進行性・ 血管性認知症 147 347 - DSM-Ⅲ-R 25.2 Karttunen et al.(2011) 進行性認知症 240 - - Beck Depression Inventory 32.5 Savva et al.(2009) 進行性認知症 587 347 - CAMDEX 20.5 Nys et al.(2005) Starkstein et al.(2005) 進行性認知症 670 - - 51 SCID/Hamilton Rating Scale for (Major depression: Depression 26 Minor depression:26) りという結果であった。しかし, 6 カ月経過時点でうつ 年経過してから発症した人がおり,TBI 受傷からの経 症状がみられなかった対象者のうち17%が 1 年経過時点 過期間によって発症する気分障害に違いがあることが考 でうつ症状ありに移行しており,逆に 6 カ月経過時点で えられる。他にも脳血管障害を原疾患とする PSD 患者 うつ症状ありであった対象者のうち37%が 1 年経過時点 の経過を検討した研究(Aström, Adolfsson & Asplund, でうつ症状ありではなくなっていた。つまり同じ対象者 1993)では,急性期で25%,12カ月後で16%, 2 年後に がうつ状態を継続したのではなく,早期に発症して軽快 19%,そして 3 年後で29%の有病率であったと報告して した人,早期にはうつ症状は発症していなかったのに 1 おり, 1 年後に減少をみせた有病率が増加に転じている 内山愛子・岡村陽子 4 ことから,脳血管障害発症からの経過期間によって気分 分障害の予防や軽減につながる可能性を示している。患 障害に違いがあることが示唆されている。認知症患者 者 の 属 性 に 関 す る も の と し て は,Gottlieb, Salagnik, ( 進 行 性・ 血 管 性 共 に 含 む ) を 対 象 に し た 研 究 で は Kipnis, and Brill(2002)は低い教育歴が PSD の危険性 Aalten et al.(2005)が 2 年間の追跡調査を行っており, を高めると指摘している。また TBI で特徴的なのは受 うつ症状はベースライン時が35. 2%, 6 カ月後が32. 3 傷後ではなく受傷前の就労状況が,受傷後の気分障害に %, 1 年後が29. 9%,18カ月後が31. 7%, 2 年後が24.1 影響を与えているという報告(Bowen et al,1998)で %と期間の経過と共にうつ症状は減少する傾向がみら ある。同様に Jorge et al.(2004)の調査においても, れ, 脳 血 管 障 害 の 患 者 の み を 対 象 に し た Aström et TBI 時点で無職であった者が有意に高くうつ症状を有 al.(1993)の報告とは異なる結果を示していた。つま していた。また原疾患の重症度と気分障害の関連では, り,脳の機能障害発症からの期間によって,気分障害の TBI では重症度とうつ症状との間には関連性がないと 要因が異なることが考えられ,気分障害の要因について 複 数 の 研 究 で 報 告 さ れ て い る(Bowen et al,1998; も検討することが必要と考えられる。また評価方法の違 Horner et al,2008)一方で,認知症では重症度が上が いが発症率へ影響を与えているという指摘もある ると幻覚や焦燥の傾向が増加してもうつ症状のリスクは 低減することも明らかとなっている(Steinberg, Corco- (Wragg, & Jeste,1989) 。 ran, Tschanz, Huber, Welsh-Bohmer, Norton, Zandi, 2-3.気分障害の要因と気分障害が患者に与える影響 Breitner, Steffens, & Lyketsos,2006)。 ま た Shimoda 先行研究によって明らかにされている気分障害の要因 and Robinson(1999)は PSD と発症からの経過時点に について表 4 にまとめる。脳機能障害者の気分障害に関 着目し,急性期と亜急性期ではうつ症状の機序は異な 連する要因は,原疾患によって異なる。TBI は Bowen, り,うつ症状をもたらす要因も異なるとしている。この Neumann, Conner, Tennant, and Chamberlain,(1998) 説によると急性期に発症するうつ症状は生物学的要因が や Horner, Selassie, Lineberry, Ferguson, and Labbate, 強く,亜急性期では生物学的要因に加え,心理社会学的 (2008) ,脳血管障害は,Berg et al.(2003)などが,進 要因が強くなるとされる。よって,ソーシャルサポート 行性認知症は Ropacki and Jeste, (2005)などの研究に の状態や原疾患の重症度,発症からの経過年数など様々 よって関連要因が指摘されている。どの原疾患において な要因により,気分障害はそれぞれ異なった臨床像を示 も複数の要因が指摘され,複合的な要因が気分障害の発 す可能性がある。 症につながっているが,TBI ではソーシャルサポート それでは脳機能障害者が気分障害を発症した場合,ど の不足がリスク要因として指摘されており(Horner, のような影響があるのだろうか。これまで脳機能障害者 2008),家族や医療従事者などによる適切な関わりが気 が 気 分 障 害 を 発 症 し た 場 合,Quality of Life( 以 下 表 4 .精神症状と関連のある要因 原因疾患 TBI 脳血管障害 進行性認知症 精神症状と関連が指摘されている要因 文献(著者,年) 受傷前の就労状況(無職) Bowen et al.(1998) 低年齢・身体機能不全・ソーシャルサポートの不足・ 白人女性・無職・多発性震盪・気分障害または他の精 神疾患の既往 Honor et al.(2008) 脳梗塞の重症度・機能障害・男性 Berg et al.(2003) 教育歴・ソーシャルサポートの知覚水準 Gottlieb et al.(2002) 独居・失語 Aström et al.(1993) 男性:日常生活・社会機能の制限 女性:精神疾患の既往・認知機能の障害 Paradiso and Robinson(1998) アフリカ系アメリカ人または黒人人種・重度の認知機 能損傷・急激な認知機能低下・年齢・発症年齢 Ropacki and Jeste(2005) 社会的機能不全,日常生活の制限,重度の精神病理学 的症状(不安・妄想・パーキンソニズムなど) Starkstein et al.(2005) 脳の機能障害と気分障害:原疾患による比較 5 QOL) ,死亡率,認知機能,リハビリテーションの効果 した気分障害の評価方法,気分障害を含む包括的な精神 に影響を与えることが示されている(Gainotti, Anto- 症状を評価する方法に分けられる。また評価者で分けた nucci, Marra, & Paolucci,2001;Silver et al,2001)。 場合,患者自身,介護者,専門職の 3 種類に分けられ 例えば TBI 患者の精神症状全般についての調査(Silver る。そして評価する方式としては質問紙法・面接法・観 et al,2001)では,TBI 患者は健常者に比べてうつ症 察法がある。表 5 に主に用いられている評価法を示す。 状などいわゆる気分障害の精神症状を有する割合が多い こと,また自殺企図の発生率が有意に高く QOL も低い と指摘している。また死亡率に関する調査(Jorge, Robinson, Arndt, & Starkstein,2003)では,脳血管障害の 3 .脳機能障害者に対する気分障害の評価・ 研究する上での問題点 3-1.評価者による問題 発症後 6 カ月以内に12週間にわたって抗うつ剤が処方さ 脳機能障害者に対する気分障害の評価をする上で,先 れた群はプラセボ群に比して有意に生存率が高く,うつ 行研究からいくつかの注意点が浮き彫りとなっている。 症状への対応を行うことが後の転帰にも影響を与えるこ そのひとつが評価者の問題である。例えば PSD と死亡 とを示した。Gainotti et al.(2001)は脳血管障害後の患 率 に 関 す る 研 究(House, Knapp, Bamford, & Vail, 者をうつ症状あり(抗うつ剤処方)群・うつ症状あり 2001)では,発症後 1 カ月時点で自己評定式の General (処方なし)群・うつ症状のない群の 3 群に分けて,リ Health Questionnaire(GHQ) を 実 施 し,GHQ ス コ ア ハビリテーション前・リハビリテーション実施期・リハ は12カ月後と24カ月後の死亡率と関連していたが,同時 ビリテーション終了後の 3 時点での各種検査を行い,比 に行われた専門家との半構造化面接による精神症状の判 較・検討した。結果,うつ症状あり(処方なし)群は他 定は死亡率との関連が見いだされず,評価者によって異 の二群に比べて機能の回復が見られなかった。このこと なる結果となった。また江藤・坂田(2000)による脳血 からうつ症状は脳血管障害発症後の機能回復の妨げとな 管障害患者の健康関連 QOL(HRQOL)に関する研究に る可能性があることが示唆された。また気分障害の存在 おいても,評価者による結果の相違が出ている。この研 が認知機能に影響を与えることも指摘されている(加 究では患者記入による老人期うつ尺度(Geriatric De- 瀬・久松・横山,2012) 。認知症の周辺症状は,認知機 pression Scale:GDS)のスコアが HRQOL に特に大き 能低下の結果生じる精神症状や行動障害であるが,逆に な影響を及ぼしていた一方で,主治医によるうつ症状の 周辺症状が存在することによって,認知機能低下に影響 判定は HRQOL に影響を与えていなかった。GDS にお を及ぼすともいわれている(加瀬ら,2012) 。周辺症状 いてうつ症状が強く疑われる 7 点以上の患者を抽出し, のひとつであるうつ症状に関して,Chen, Ganguil, Mul- 主治医の判定と比較したところ,これらの患者のうち主 sant, and DeKosky, (1999)による縦断研究において, 治医がうつ症状ありと判定した者は20. 2 %にとどまっ うつ症状はアルツハイマー型認知症の初期症状として現 た。そのため江藤・坂田(2000)は GDS スコアと主治 れることが指摘され,さらに認知症患者のうつ症状は機 医の判定の乖離は,主治医が患者のうつ症状を見逃した 能低下を促進していることも判明している(Ritchie, 可能性があると指摘している。つまりこの結果は専門家 Touchon, & Ledésert,1998) 。これらの先行研究から, であっても気分障害をとりこぼす可能性を示している。 うつ症状の早期発見と対応が認知機能を含む機能低下を また自己評価式の場合,その前提として質問項目を理解 遅らせ,患者の予後の増悪を防ぐことにつながると考え するだけの言語理解が保たれている必要があり,認知機 られる。認知機能や転帰への悪影響を防ぎ,適切な社会 能の障害が重度であった場合,適用には限界があると考 的支援を行うためにも,患者の精神的・心理的状態を正 えられる。 しく見極める必要がある。そのためには気分障害の要因 患者の症状を取りこぼさないという点においては,患 や症状,与える影響を適切な評価方法を使用して明らか 者をよく知る家族や介護者による評価や情報提供が有用 にすることが求められる。 である。ただし Wragg and Jeste(1989)は介護者から の情報は症状が過大評価される可能性があると指摘して 2-4.気分障害の評価方法 おり,特に外来患者の家族に対する面接においてうつ症 脳機能障害者に対する気分障害の評価方法はいくつか 状が高頻度で報告されていると指摘している。この気分 に分類することができる。測定する内容から分けると, 障害の自己評価と介護者による評価に関して,Chemer- 内因性うつ病を評価・測定する方法,疾患の特徴を考慮 inski, Petracca, Sabe, Kremer, and Starkstein.(2001) 内山愛子・岡村陽子 6 表 5 .脳機能障害者に対する気分障害の評価方法 文献(著者,年) 対象者 評価者 評価法 評価の対象となる症状 Beck Depression Inventory (BDI) Beck et al.(1961) うつ病患者 患者自身 質問紙 うつ症状 Hamilton Rating Scale for Depression(HDS) Hamilton(1960) うつ病患者 専門職 面接法 (患者本人への面接) うつ症状 Montgomery Asberg Depression Rating Scale(MADRS) Montgomery and Asberg(1979) うつ病患者 専門職 面接法 うつ症状 Zung(1965) うつ病患者 患者自身 質問紙 うつ症状 Yamasato et al.(2007) TBI 患者 介護者 質問紙 TBI 後の神経・精神 症状を包括的に評価 社会適応障害調査票 駒澤他(2008) 高次脳機能障害者 患者自身 質問紙 社会的行動障害 脳卒中感情スケール (JSS-DE) 加藤(2004) 脳卒中患者 介護者 質問紙 うつ症状を測定する JSS-D と情動障害を 測定する JSS-E から なる Stroke Aphasic Depression Questionnaire Sutcliffe and Lincoln (1998) 脳血管障害により 失語症を負った患者 介護者 質問紙 失語症者のうつ症状 Neuropsychiatric Inventory (NPI) Cummings et al. (1994;1997) 認知症患者 専門職 面接法 (介護者への面接) 包括的評価 NPI-Nursing Home Version (NPI-NH) Wood et al.(2000) 認知症患者 (施設入所者) 専門職 面接法 (介護者への面接) 包括的評価 NPI-Brief Questionnaire Form(NPI-Q) Kaufer et al.(2000) 認知症患者 介護者 質問紙 包括的評価 BPSD-Assessment Scale (BPSD-AS) 北村他(2010) 認知症患者 専門職 観察法 BPSD Brink et al.(1982) 高齢者 高齢者自身 質問紙 うつ症状 杉下・朝田(2009) 認知症患者を含む 高齢者 高齢者自身 面接法 うつ症状 Cornell Scale for Depression in Dementia(CSDD) Alexopoulos et al. (1988) 認知症患者 専門職 観察法と面接法 うつ症状 Dementia Mood Assessment Scale(DMAS) Sunderland et al. (1988) 認知症患者 専門職 面接法 (介護者への面接) うつ症状と認知症の重 症度 認知機能障害に伴う行動・ 心理症状評価票(BPS-Cog) 今井・長田(2012) 認知症患者 専門職 面接法(介護者への面 接),または観察法 行動・心理症状 Zung Self-Rating Depression Scale(SDS) Questionnaire for Neurobe havioural Disability Geriatric Depression Scale 高齢者用うつ尺度日本版 (GDS-S-J) がアルツハイマー型認知症患者と介護者を対象に患者本 (2012)は,認知症高齢者をはじめとする要介護高齢者 人のうつ症状の評価と比較を行っている。その結果,介 の要介護判定手続きでの問題として,認定に関わる医師 護者は患者本人よりも患者の本人のうつ症状を有意に重 と他の調査員との間で起こる不一致を指摘している。そ く評価していた。ただし Chemerinski et al. (2001)は して判定調査員と医師の「認知症高齢者の日常生活自立 介護者の評価が過大評価であるという見方ではなく,う 度」判定での一致率は約40%で,両者の不一致の要因は つ症状を持つアルツハイマー型認知症患者は自己のうつ BPSD の評価であった。その上で,独居の認知症高齢者 症状の認識が十分にできていないために,うつ症状を低 では正確な情報がとらえにくいこと,そして従来の認知 く評価したのではないかとの見解を示している。 症高齢者・要介護高齢者への評価法は評価基準が曖昧 介護者が過大に評価しても,また患者本人が過小に評 価しても,本人評定と介護者評定との間で評価が異なる で,要介護認定に携る者の専門領域の知識や視点によっ て左右されやすいことを指摘している。 ことにつながるため,誰が評価を行うかは患者と患者の 置かれた状況を見極めて慎重に決める必要があるだろ う。 3-2.他の症状による影響 TBI,脳血管障害,進行性認知症のいずれにおいても 評価者間での測定結果の不一致は,自己評価―他者評 共通して言えることは,気分障害以外の症状の多さであ 価 間 の み で な く, 専 門 職 間 で も 起 こ る。 今 井・ 長 田 る。例えば脳損傷後に起こる麻痺,また TBI と脳血管 脳の機能障害と気分障害:原疾患による比較 障害後では高次脳機能障害,認知症では中核症状である 引用文献 記憶障害や BPSD の抑うつ以外の項目と,脳機能障害 者が抱える症状は幅広い。 脳機能障害者の気分障害のリスクが高いこと,そして 多くの要因が影響していることは既に述べた。また気分 障害の存在が機能回復の妨げとなる(Gainotti et al, 2001)ことから,気分障害への早期介入と適切な対応が 良好な予後につながることが示唆されている一方で,認 知症患者のうつ症状が軽減するとアパシーや異常運動行 動が増大する(Aalten et al,2005)という報告もある。 適切な介入を行うためには気分障害と他の症状との関係 性を明らかにすることが必要である。また多様な症状の 存在が気分障害の評価に影響を与えている可能性があ る。したがって正しい評価を行うためにも,他の症状の 影響を検討する必要があるだろう。 7 Aalten, P., Vugt, M. E., Jaspers, N., Jolles, J., & Verhey, F. R. J.(2005) . The Course of neuropsychiatric symptoms in dementia. Part I: findings from the two-year longitudinal Maasbed study. International Journal of Geriatric Psychiatry, 20, 523-530. 青 山 晃 治・ 小 林 祥 泰・ 岡 田 和 悟・ 卜 蔵 浩 和・ 山 口 修 平 (1998).脳血管障害における Apathy とうつ状態が認知機 能に与える影響 脳卒中,20,239-243. Alexopoulos, G. S., Abrams, R. C., Young, R. C., & Shamoian, C. A.(1988) . Cornell scale for depression in dementia. Biological Psychiatry, 23, 271-284. Aström, M., Adolfsson, R., & Asplund, K.(1993) . Major depression in stroke patients. A 3 -year longitudinal study. Stroke, 24, 976-982. Beck, A. T., Ward, C. H., Mendelson, M., Mock, J., & Erbaugh, J.(1961) . An inventory for measuring depression. Archives of General Psychiatry, 4, 561-571. 3-3.評価時の注意点 適切な評価を行う上で評価法の選定と共に重要なのが 評価者の態度であろう。脳機能障害者の症状や置かれて Berg, A., Palomäki, H., Lehtihalmes, M., Lönnqvist, J., & Kaste, M.(2003). Poststroke depression. An 18-month follow up. Stroke, 34, 138-143. いる環境,そして評価の目的を総合的に考えて最適な評 Bowen, A., Chamberlain, M. A., Tennant, A., Neumann, V., 価法を選定したとしても,評価者が配慮を欠いた態度で & Conner, M.(1999) . The persistence of mood disorders 評価に臨めば,適切な評価につながらない。今井・長田 following traumatic brain injury: a 1 year follow-up. (2012)は認知症やうつ症状の評価時の留意点として, ①評価測度は病気を診断するものではない②事前に十分 な情報を収集する③評価の前に被験者の身体状態を確認 する④被験者に評価の目的を説明し同意を得る⑤評価中 Brain Injury, 13, 547-553. Bowen, A., Neumann, V., Conner, M., Tennant, A., & Chamberlain, M. A.(1998) . Mood disorders following traumatic brain injury: identifying the extent of the problem and the people at risk. Brain Injury, 12, 177-190. に拒否がみられたら即座に中止する⑥評価時の環境に注 Brink T. L., Yesavage, J. A., Lum, O., Heersema, P. H., Adey, 意する,の 6 点を提示している。これらは基本的な態度 M., & Rose, T. L.(1982) . Screening tests for geriatric de- であり TBI や脳血管障害においても同様に留意すべき ことと考えられる。 pression. Clinical Gerontologist, 1, 37-43. Chemerinski, E., Petracca, G., Sabe, L., Kremer, J., & Starkstein, S. E.(2001) . The specificity of depressive symp- 結 語 toms in patients with Alzheimer’s disease. The American Journal of Psychiatry, 158, 68-72. これまでに多くの研究において脳機能障害者の気分障 Chen, P., Ganguil, M., Mulsant, B. H., & DeKosky, S. T. 害・周辺症状の評価が試みられており,それに伴って多 (1999). The temporal relationship between depressive くの評価法が開発された。早期に気分障害の症状をとら symptoms and dementia. A community-based prospec- えることにより,気分障害の症状による苦しみを低減さ せることができる。そしてさらなる認知機能の低下やリ ハビリテーションへの悪影響を防ぎ,家族や介護に携る 人々への支援にもつなげることができる。 tive study. Archives of General Psychiatry, 56, 261-266. Cummings, J. L.(1997) . The neuropsychiatric inventory: assessing psychopathology in dementia patients. Neurology, 48(Suppl 6 ) , 10S-16S. Cummings, J. L., Mega, M., Gray, K., Rosenberg-Thompson, そのためにはそれぞれの評価法の特徴をとらえるこ S., Carusi, D. A., & Gornbein, J.(1994) . The neuropsychi- と,そして評価にあたっては患者への配慮を欠かさず適 atric inventory: comprehensive assessment of psychopa- 切な判断をするように努めることが,どのような支援を 必要としているかを把握するために,また的確な介入を 行うために必要である。 thology in dementia. Neurology, 44, 2308-2314. Eriksson, M., Asplund, K., Glader, E., Norrving, B., Stegmayr, B., Terént, A., Asberg, K. H., & Wester, P.(2004).Self-re- 8 内山愛子・岡村陽子 ported depression and use of antidepressants after stroke: A national survey. Stroke, 35, 936-941. 江藤文夫・坂田卓志(2000).脳血管障害後遺症患者の健康 関連 Quality of Life に影響を及ぼす要因の研究 日本老年 医学会雑誌,37,554-560. Jorge, R. E., Robinson, R. G., Moser, D., Tateno, A., CrespoFacorro, B., & Arndt, S.(2004) . Major depression following traumatic brain injury. Archives of General Psychiatry, 61, 42-50. Karttunen, K., Karppi, P., Hiltunen, A., Vanhanen, M., Gainotti, G.(1993). Emotional and psychosocial problems af- Välimäki, T., Martikainen, J., Valtonen, H., Sivenius, J., ter brain injury. Neuropsychological Rehabilitation, 3, 259- Soininen, H., Hartikainen, S., Suhonen, J., & Pirttilä, T. 277. Gainotti, G.(2003). Assessment and treatment of emotional (2011) . Neuropsychiatric symptoms and quality of life in patients with very mild and mild Alzheimer’s disease. In- disorders. In P. W. Halligan, U. Kischka, & J. C. Marshall ternational Journal of Geriatric Psychiatry, 26, 473-482. (Eds.), Handbook of clinical neuropsychology. Oxford: Ox- 加瀬裕子・久松信夫・横山順一(2012).認知症ケアにおけ ford University Press. Gainotti, G., Antonucci, G., Marra, C., & Paolucci, S.(2001) . Relation between depression after stroke, antidepressant therapy, and functional recovery. Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry, 71, 258-261. Gottlieb, D., Salagnik, I., Kipnis, M., & Brill, S.(2002) . Post る効果的アプローチの構造―認知症の行動・心理症状 (BPSD)への介入・対応モデルの分析から 社会福祉学, 53, 3 -15. 加藤元一郎(2004).脳卒中感情障害(うつ・情動障害)ス ケール Annual Review 神経2004,35-43. Kaufer, D. I., Cummings, J. L., Ketchel, P., Smith, V., MacMil- stroke depression, first year post stroke, in middle band lan, A., Shelly, T., Lopez, O. L., & DeKosky, S. T.(2000). patients. International Journal of Geriatric Psychiatry, 17, Validation of the NPI-Q, a brief clinical form of the neu- 486-487. ropsychiatric inventory. The Journal of Neuropsychiatry Hamilton, M.(1960). A rating scale for depression. Journal of Neurology,Neurosurgery & Psychiatry, 23, 56-62. and Clinical Neurosciences, 12, 233-239. 北村葉子・今村徹・笠井明美・岩橋麻希(2010).認知症に Herrmann, N., Black, S. E., Lawrence, J., Szekely, C., & Sza- おける行動心理学的症状(Behavioral and psychological lai, J. P.(1998). The sunnybrook stroke study. A prospec- symptoms of dementia:BPSD)の直接行動観察式評価用 tive study of depressive symptoms and functional out- 紙の開発:信頼性と妥当性の検討 高次脳機能研究,30, come. Stoke, 29, 618-624. Horner, M. D., Selassie, A. W., Lineberry, L., Ferguson, P. L., & Labbate, L. A. (2008). Predictors of psychological symptoms 1 year after traumatic brain injury: A popula- 510-522. 国際老年精神医学会(2005).BPSD 痴呆の行動と心理症状 アルタ出版 p. 29. 駒澤敦子・鈴木伸一・久保義郎・丸石正治(2008) .高次脳 tion-based, epidemiological study. The Journal of Head 機能障害者における社会的行動障害についての検討⑴― Trauma Rehabilitation, 23, 74-83. 社会適応障害調査票作成と信頼性・妥当性の検討 高次脳 House, A., Knapp, P., Bamford, J., & Vail, A.(2001). Mortali- 機能研究,28,20-29. ty at 12 and 24 months after stroke may be associated Kreutzer, J. S., Seel, R. T., & Gourley, E.(2001) . The preva- with depressive symptoms at 1 month. Stroke, 32, 696- lence and symptom rates of depression after traumatic 701. brain injury: a comprehensive examination. Brain Injury, Ikeda, M., Fukuhara, R., Shigenobu, K., Hokoishi, K., Maki, 15, 563-576. N., Nebu, A., Komori, K., & Tanabe, H.(2004). Dementia Montgomery, S. A., & Asberg, M.(1979) . A new depression associated mental and behavioural disturbances in elderly scale designed to be sensitive to change. The British people in the community: findings from the first Nakayama study. Journal of Neurology,Neurosurgery & Psychiatry. 75, 146-148. 今井幸充・長田久雄(2012).認知症の ADL と BPSD 評価 測度 ワールドプランニング Jorge, R. E., Robinson, R. G., Arndt, S., & Starkstein, S. Journal of Psychiatry, 134, 382-389. Lyketsos, C. G., Steinberg, M., Tschanz, J. T., Norton, M. C., Steffens, D. C., & Breitner, J. C. S.(2000) . Mental and behavioral disturbances in dementia: Findings from the cache country study on memory in aging. The American Journal of Psychiatry, 157, 708-714. (2003) . Mortality and poststroke depression: A placebo- Nys, G. M. S., Zandvoort, M. J. E., Worp, H. B., Haan, E. H. controlled trial of antidepressants. The American Journal F., Kort, P. L. M., & Kappelle, L. J.(2005) . Early depres- of Psychiatry, 160, 1823-1829. sive symptoms after stroke: neuropsychological correlates Jorge, R. E., Robinson, R. G., Arndt, S., Starkstein, S. E., Forrester, A. W., & Geisler, F.(1993). Depression following traumatic brain injury: a 1 year longitudinal study. Journal of Affective Disorders, 27, 233-243. and lesion characteristics. Journal of Neurological Sciences, 228, 27-33. 中島八十一(2006) .高次脳機能障害の現状と診断基準 中 島八十一・寺島彰(編著)高次脳機能障害ハンドブック 脳の機能障害と気分障害:原疾患による比較 医学書院 pp. 1 -20. 9 162, 2086-2093. 小田太士・佐伯覚・岩永勝・岡崎哲也・和田太・蜂須賀研二 Steinberg, M., Corcoran, C., Tschanz, J. T., Huber, C., (2004).外傷性脳損傷者の社会生活に関する調査 日本職 Welsh-Bohmer, K., Norton, M. C., Zandi, P., Breitner, J. C. 業・災害医学会会誌,52,335-340. S., Steffens, D. C., & Lyketsos, C. G.(2006) . Risk factors 長田麻衣子・村岡香織・里宇明元(2007).脳卒中後うつ病 for neuropsychiatric symptoms in dementia: The Cache (Poststroke depression)―その診断と治療 The Japa- County study. International Journal of Geriatric Psychia- nese Journal of Rehabilitation Medicine, 44, 177-188. try, 21, 824-830. Paradiso, S., & Robinson, R. G.(1998). Gender differences in 杉下守弘・朝田隆(2009) .高齢者用うつ尺度短縮版―日本 poststroke depression. Journal of Neuropsychiatry, 10, 41- 語 版(Geriatric Depression Scale-Short Version-Japa- 47. nese, GDS-S-J)の作成について 認知神経科学,11,87- Ritchie, K., Touchon, J. & Ledésert, B.(1998). Progressive 90. disability in senile dementia is accelerated in the presence Sunderland, T., Alterman, I. S., Yount, D., Hill, J. L., Tariot, of depression. International Journal of Psychiatry, 13, 459- P. N., Newhouse, P. A., Mueller, E. A., Mellow, A. M., & 461. Cohen, R. M.(1988) . A new scale for the assessment of Ropacki, S. A., & Jeste, D. V.(2005). Epidemiology of and risk factors for psychosis of Alzheimer’s disease: A review of 55 studies published from 1990 to 2003. The American Journal of Psychiatry, 162, 2022-2030. Savva, G. M., Zaccai, J., Matthews, F. E., Davidson, J. E., McKeith, I., & Brayne, C.(2009). Prevalence, correlates depressed mood in demented patients. The American Journal of Psychiatry. 145, 955-959. Sutcliffe, L. M., & Lincoln, N. B.(1998) . The assessment of depression in aphasic stroke patients: the development of the stroke aphasic depression questionnaire. Clinical Rehabilitation, 12, 506-513. and course of behavioural and psychological symptoms of Williams, L. S., Weinberger, M., Harris, L. E., & Biller, J. dementia in the population. The British Journal of Psychi- (1999). Measuring quality of life in a way that is mean- atry, 194, 212-219. ingful to stroke patients. Neurology, 53, 1839-1843. Shimoda, K., & Robinson, R. G.(1999). The relationship be- Wood, S., Cummings, J. L., Hsu, M., Barclay, T., Wheatley, tween poststroke depression and lesion location in long- M. V., Yarema, K. T., & Schnelle, J. F.(2000) . The use of term follow-up. Biological Psychiatry, 45, 187-192. the neuropsychiatric inventory in nursing home residents: Silver, J. M., Kramer, R., Greenwald, S., & Weissman, M. (2001).The association between head injuries and psychi- Characterization and measurement. The American Journal of Geriatric Psychiatry, 8, 75-83. atric disorders: findings from the New Haven NIMH epi- Wragg, R. E., & Jeste, D. V.(1989) . Overview of depression demiologic catchment area study. Brain Injury, 15, 935- and psychosis in Alzheimer’s disease. American Journal 945. of Psychiatry, 146, 577-587. Skoog, I.(1993). The prevalence of psychotic, depressive Yamasato, M., Satoh, S., Ikejima, C., Kotani, I., Senzaki, A., & and anxiety syndromes in demented and non-demented Asada, T.(2007) . Reliability and validity of questionnaire 85-year-olds. International Journal of Geriatric Psychia- for neurobehavioral disability following traumatic brain try, 8, 247-253. injury. Psychiatry and Clinical Neurosciences, 61, 658- Starkstein, S. E., Jorge, R., Mizrahi, R., & Robinson, R. G. (2005) . The construct of minor and major depression in Alzheimer’s disease. The American Journal of Psychiatry, 664. Zung, W. W. K.(1965) . A self-rating depression scale. Archives of General Psychiatry, 12, 63-70.