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日本の星名
先日の学祭で上映されたプラネタリウムではプレアデス星団を「昴」、オリオン座の1等星を
それぞれの色から「源氏星」「平氏星」と和名で紹介しました。では他の星々にはどんな和名が
ついているのでしょうか。またどのようにして名づけられたのでしょうか。
今回は日本各地に伝わる星の和名を紹介したいと思います。
1.春の星
◇うしかい座
アルクトゥルス:<五月雨星> 梅雨明け頃に天頂で光ることからついた。
<雨夜の星>(あまいのほし)とも言う。
◇おとめ座
スピカ:<真珠星> ぽつりと大きく青白く光ることによる。
◇しし座
<糸掛け星>獅子の頭を糸車に見立てた。丹後の農夫が常に気にする星で
この星の輝きが続くとその年は豊作になるという。
◇からす座
<四つ星> 形そのまんまです。
2.夏の星
◇かんむり座
<車星>まるく繋げると車輪のように見える。
<太鼓星>星を太鼓の皮をとめているビョウに見立てたことによる名前。
(その他)踊り子星・井戸端星・指輪星
◇さそり座
<魚釣り星>漁夫が大きなS字カーブの尾がくるりと反転して、釣り糸の
かぎ針がはね上がった形から呼んだ名前。
<柳星>南の空に昇りはじめたさそり座の直立した形から、しだれ柳を連想し
たことによる名前。
(その他)釣り星・漁星・鯛釣り星
アンタレス:<赤星>あかぼしは本来、宵の明星を指すのだがここでは文字通り
の赤い星という意味で呼ばれる。
(その他)豊年星・酒酔い星・鯖売り星・籠担ぎ星
◇こと座
◇わし座
ベガ:<おりひめ・織り子星 >いわずと知れた七夕伝説に由来する
アルタイル:<ひこぼし>
<犬飼星>一等星のアルタイルが左右の小さな星を連れている。小さい星を犬
に見たことによる名前。
ベガとアルタイルを<西七夕>・<東七夕>または<下七夕>・<上七夕>
というふうに方角、昇る順序で区別する地域もあった。
◇はくちょう座
<十文字様>白鳥のくちばしの星が前に立って残りの4人の家来を守って
いる形として呼ばれた。
(その他)天の川星・十文字星
デネブ:<古七夕><下手の七夕><あと七夕>どの名も七夕より遅れて
目に入るので古い、下手などと名づけられたようである。
3.秋の星
◇こぐま座
北極星:<子の星>十二支で真北の方角にあたることによる名前。ちなみ
に北極星とは羅針盤による航海術が開けてから登場し始めた名
前。北極星の名が定着したのは主として近代に入ってからのこと
である。
(その他)北星・北の一つ星
◇南のうお座
フォーマルハウト:<南の一つ星>北極星を指す北の一つ星に対して
ついた名前
◇ぺガスス座
<枡形星>字が表しているように枡のように方形に並んでいることによる
(その他)四隅星よつまぼし・四星しぼし
◇カシオペヤ座
<いかり星>Wを錨にみたててついた名前である。
漁師たちは夏の夜沖に出て、高く上ったカシオペアを見て
夜のふけたのを知ったという。(その他)山形星・弓星
◇いるか座
<菱星>からす座と同様に形からついた名前
4.冬の星
◇ぎょしゃ座
<五角星>これも同様に五角形の形からついた名前
カペラ:<すまるの相手星><相方星>両方ともすばるの位置と関連
した名前。すばるは光が暗いので低い位置に上がっている
時はわかりづらいが、明るいカペラが上るとすばるが見え
なくても一緒に上ったことがわかることからついた。
◇おうし座
プレアデス星団:<すばる>元は関西で言われていた名前。「枕草子」
でも“星はすばる、ひこぼし、明星、夕つつ・・”と
その名が記されている。原意は「すくばる」
「ちぢむ」
と解した方言からついたのではないかというのが有
力である。すばるは農民が時間を測るのに使っていた
星なので全国的に親しまれるようになった。
(その他)六連星むつらぼし・群がり星・羽子板星
アルデバラン:<釣鐘星>おうしの角にあたる2つの星と結ぶとVの字
をつくり、釣鐘のように見えることからついた名前。
(その他)すばるの後星
◇オリオン座
<酒枡星>酒枡とは正方形に短い柄のついたもので、オリオン座の三つ
星を右下の星と左下の小三つ星と結んだ星のことを指す。
(その他)親孝行星・鼓星
◇おおいぬ座
シリウス:<青星><大星>ずばり青く大きく輝くからついた名前。
◇こいぬ座
<二つ星>
プロキオン:<色白><小さい大星>色白とはアルデバランの赤に対
してついた名前。
5.おまけ・妙な和名
山口県に伝わる星の和名
○ 山田星:シリウスのこと。江戸時代、領主に納めない隠し米を作っていた山田の
方角から昇るためついた。
○ 茶がゆ星:アルクトゥルスのこと。明治まで捕鯨していた漁村に伝えられ、漁に
出る前の茶がゆを食べる頃に昇ることによる
○ フヨタロー:カノープスのこと。フヨタローとは怠け者という意味で、漁師が朝
早くから、夜明けまで漁をするが、カノープスは夜明け前にちょっ
と姿を見せて沈むことからついた名前である。
6.終わりに
以上のように日本の星の名には農村、山村、漁村で暮らす人々の生活と密接な関係が
ありました。生活していく上で星に名づけ、位置を知ることは大変重要だったのです。
また星の名が各地の方言や文化を表しているというのも面白いところかと思います。
今日では、誰も使わないような和名がほとんどですが、たまにはこんな風に星をよん
でみるのもいいかもしれません。
参考文献
『日本星名辞典』
野尻抱影
『日本アマチュア天文史』
東京堂出版
日本アマチュア天文史編纂会
『続・日本アマチュア天文史』
恒星社厚生閣
続・日本アマチュア天文史編纂会
恒星社厚生閣
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