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食育フォーラム 2013

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食育フォーラム 2013
食育フォーラム 2013
~お百姓さんが教えてくれたこと~
「農を感じて、食を豊かに」
日時:平成 25 年 11 月 2 日(土) 13:00~15:00
会場:丸ビルホール(東京都千代田区)
主催:農林水産省
後援:内閣府、文部科学省
農林水産省は、平成 25 年 11 月 2 日(土)、「食育フォーラム 2013 お百姓さん
が教えてくれたこと」を丸ビルホール(東京都千代田区)にて開催しました。
フォーラムでは、第1回「食と農林漁業の食育優良活動表彰」の表彰式が行わ
れたほか、パネルディスカッションでは「農を感じて、食を豊かに」をテーマ
に、食育や関連分野の有識者により、活発な議論が交わされました。
【食育を国民運動として展開】
農林水産大臣政務官 小里 泰弘
「農は国の基」という言葉がありますように、農林
水産業は食料生産はもとより、国土の保全などを通じて、
毎日の暮らしにおいて重要な役割を担っております。
一方、「食」は国民生活の基本です。
現在、農林水産業が担い手の高齢化や耕作放棄地の拡
大といった厳しい状況に直面している中で、皆様が農林
水産業への理解を深めていただくことが大変重要である
と考えております。
農林水産省では健全な食生活の実践を促すとともに、
(小里農林水産大臣政務官)
食や農林水産業への理解を醸成する食育活動を推進し
ております。本フォーラムを通じて、食育が国民運動として展開されますこと
を願っております。
【パネルディスカッション】
・コーディネーター
村松 真貴子 氏(フリーアナウンサー、食生活ジャーナリスト)
・パネリスト
佐藤 弘 氏(西日本新聞社 前原支局 支局長)
白石 好孝 氏(白石農園代表)
永島 敏行 氏(俳優)
林 芙美 氏(米国登録栄養士、博士(医学)、
千葉県立保健医療大学健康科学部
栄養学科講師)
「農を感じて、食を豊かに」と題したパネルディス
カッションでは、食生活ジャーナリストの村松真貴子
氏をコーディネーターに、西日本新聞社の連載企画「食
卓の向こう側」を担当する佐藤弘氏、東京都練馬区の
白石農園代表の白石好孝氏、俳優で生産者と消費者の
交流に取り組む永島敏行氏、千葉県立保健医療大学健
康科学部講師の林芙美氏が現代の食をめぐる課題の実
践的な解決へのヒントを探りました。
(村松 真貴子 氏)
現代の食をめぐる課題提起として、農林水産省が今夏、18 歳以下の子供がい
る母親1730人を対象として行った「食と農に関する意識・実態調査」の結
果が報告されました。食に対する意識と食生活指針等の実践度から、意識と実
践度がともに高い「模範層」、意識は高くないものの実践度が高い「結果オーラ
イ層」、意識が高いが実践度が低い「乖離層」、意識と実践度がともに低い「問
題層」に分類して、なぜこのような違いがあるのか、分析しました。
「模範層」は当然のことながら料理を作ることが好き、得意と答えた人が「乖
離層」よりも圧倒的に多かったほか、新しいメニューを作る、目新しい食品や
調味料を使うことが好き、得意であり、さまざまな食材や料理を取り入れるほ
うだと答えています。また、
「模範層」は「問題層」よりも、地場の産物、旬の
食材を味わう、食材の自然な味を教わった、食材を家族のコミュニケーション
の題材にしている人が多いという特徴に加え、農作業の体験、農産加工の体験、
直売所での購入体験などが多い傾向にありました。
このようなデータをもとに、パネリストからは、欠食や偏食、意識は高いが
食卓にどう反映したら良いか分からないという現在の食をめぐる問題提起に対
し、その解決に向けて何を実践していくべきか議論が行われました。
〇現代日本人の食生活の問題とは
佐藤「農林水産省の調査結果にも、極端に偏った食生活の
事例報告がありましたが、10 年前、長崎の大学生の食生活
実態調査では、7~8 割の大学生がまともな食生活を送って
いませんでした。現在の調査でも同じ結果であり、こうし
た世代が積み上がってきているのです。あと 10 年、これが
続いたらこの国はもつのでしょうか。体は食べ物から作ら
れること。自分の体は自分のものであるが、自分だけのも
のではなく、次世代につながっていることを自覚させる取
り組みが必要です」
(佐藤 弘 氏)
林「人は365日、生きていくために食べなければなりません。管理栄養士を
養成する学校で講師を務めていますので、私も食べる行為はその人の知識、態
度を形成していくことだと日々痛感しています。食を大切にすることは日々の
積み重ねです。私は食卓に毎日野菜を並べるようにしています。今朝、8歳と
3歳の子供から『今日は野菜がないね』といわれました。スープにしたので底
に沈んだ野菜に気づかなかったのです。子供は野菜の必要性を知識として得て
はいませんが、何かが欠けていることを日々の食事で学んでいたようです。将
来子供を持つ若い世代の食生活は心配です。ただ、一律に問題層だとくくるの
ではなく、個々の原因や状況を探りながら改善させていくことが大切です。例
えば、若い人に対しては、便秘や肌荒れなどの変調と食を関連付けて働きかけ
ていけば、自分事としてとらえやすいのかもしれません」
白石「都会には、食に関する関心が高いものの、どこで何を学
んだら良いか分からないという方が多くいらっしゃいます。練
馬区で野菜作りの体験農園を始めたところ、普段、農業とは縁
のない都会暮らしの社会人の方が多く参加されています。小さ
い子供のいる若いご夫婦や 40~50 代の男性が目立ちますね。
都会では、食の安全に関する意識の高まりや、食や自然を大切
にする気持ちが芽生えてきており、それをどのように受け止め
るかが課題だと考えています」
(白石 好孝 氏)
永島「僕は 20 年前から秋田で体験型農業をしています。
現在では青果店も営み、
そこで驚くことがあります。60、70 代の方でも野菜の食べ方をよく知らない人
が多いのです。例えば、カブ。薄く切ってビニール袋に入れて塩をふり昆布を
入れて軽くもんで食べるとおいしい、と僕らが教えています。昔は八百屋さん・
魚屋さんが、農家・漁師の代弁者として教えてくれたことです。僕が実感して
いるのは、食はコミュニケーションにあるということです。世の中には情報が
あふれていますが、フェース・トゥ・フェースで食の知識を届ける〝伝える力
〟こそが重要なのです。コミュニケーションを通じて消費者と生産者が支え合
う仕組みを都会に作ることが、今後の鍵になると思います。そのためにも、多
くの人に農業を知っていただきたいですね。一方で、体験農園をやろうとして
も商売にならないことがネックになります。ボランティアではなく、仕事とし
て成り立つプログラムや企業との関わりを強化する必要があると考えています」
〇豊かな食のため実践していきたいこと
村松「食事する時、五感を使って味を表現しあってみると楽しいですよ。じっ
くり味わうようになるので早く食べることを防ぐことにもつながります。パネ
リストの皆さんにとって豊かな食とはどういうことでしょうか」
白石「子供たちには、農業体験によって着実にうれしい変化が表れていますね。
まず、給食の残食がゼロになったという報告があります。種から育て、収穫し、
それを食べるまでの農業体験は感動の連続です。最初は興味のなさそうな顔を
していた子供たちの顔つきが変わってきます。先生方の意識も前向きになりま
した。収穫した大根は1本を学校で漬物にして、もう1本は家庭で調理して食
べてもらうので、保護者の方にも好評です。こうした地道な小さな体験の積み
重ねが、遠回りのようで豊かな食への近道だと思います」
林「行動科学の理論では重要性を理解しても自信がないと
行動できません。食べ方を教えてもらい、実際に自宅でそ
の方法でやってみるとできた、といった小さな体験と感動
の積み重ねが自信を高めます。そのためには伝える側の伝
え方も大切です。どういう方法だと食事を取りやすいか、
食べやすいかなど、その人が自信をもって適切な食生活に
取り組むことができるよう導くことを学生たちにも指導
しています」
(林 芙美 氏)
佐藤「香川県の滝宮小学校で始まった『子供が作る〝弁当の日〟』はその答え
のひとつ。親は一切手出しをせず、子供だけで弁当を作るのですが、子供が当
事者となって食事を作ることで『自給力』が身に付くとともに、食卓の向こう
側が見えてくる試みです。親は親で、くらしの部分を何も教えてこなかったこ
とに気づく。実践を通じ、今の世の中に欠けているまっとうな価値観が醸成さ
れることが、豊かな心と食を育みます」
永島「僕はぜひ、地方が持つ力に目を向けてほしいです。
先日も和歌山県で炭焼きや独自の火振り漁をされている
元気な 70 代の方たちにお会いし、刺激を受けました。彼
らのような豊かな知恵をもった〝スーパーマン〟に出会
うとわくわくします。元来、〝百姓〟とは百の仕事がで
きる人なのです。山を開き、食べ物や燃料を作り、神主
や医者ができる知恵もある。こうした日本各地の匠に若
い人が目を向ければ、新たな仕事も生まれてくるのでは
ないでしょうか。この十年で教えを請わないと何千年と
(永島 敏行 氏)
蓄えてきた知識が失われます。地方をわくわく楽しむと
いう発想が、未来につながるはずです」
林「食の強みは、互いを支えあう農を通じた地域の活動にこそ発揮されると思
います。経済的に不利な状況に置かれている方も含め、周囲のあらゆる方たち
の食を豊かにするために自分は何ができるのか、という広い視点で考えること
が今後重要になってくると思っています」
白石「農業による食育は、命の生死にふれることで、人間の及ばない力がある
ことを知り、それを克服して仲間とともに生きることを学びます。地方では故
郷を愛し、誇りに思う気持ちを、都会ではどんなところでも生きていくことの
できる力を養うことに通じると思っています」
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