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3.8MB - 高知工科大学

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3.8MB - 高知工科大学
平成 26 年度
学士学位論文
肘に負担がかからないシャドーピッチング
フォームの学習支援システムの構築
Development of A Learning Support System of
Safety Shadow Pitching Form to Guard Elbow
1150328
津田 諒
指導教員
妻鳥 貴彦
2015 年 2 月 27 日
高知工科大学 情報学群
要 旨
肘に負担がかからないシャドーピッチングフォームの学習支援
システムの構築
津田 諒
近年、コンピュータ技術の向上や向上により運動学習において, 動作の解析に関するさま
ざまなスポーツの研究が多くある. 野球についても, バッティングフォームや投球フォーム
において技術の向上を目的としたフォームを改善するシステムの研究が多くある. 野球はプ
ロからアマチュアまで広い年齢層で人気がある. しかし, 野球は故障の多いスポーツである.
投手は他のポジションより怪我をする可能性が高い. s それは, 投手は他のポジションより
多く投球を行うため, 肘や肩に負担がかかるためである. 投球動作は肘関節などをねじる運
動を行うため肘や肩にストレスが蓄積する. アマチュア野球界はプロ野球界より指導者やト
レーナーが少ない. そのため, 選手は身体のケアやコンディションの管理を個人で行ってい
る. 野球の練習方法のシャドーピッチングは投球フォームを固めるために個人で行うもので
ある. しかし, 肘に負担がかかる投球フォームで練習を行うと投球障害なる可能性がある. 本
研究は, 野球肘の発生リスクを抑えるために, 肘に負担のかからない投球フォームの学習支
援システムを構築する.
キーワード
野球 野球肘 投球フォーム Kinect 初心者
–i–
Abstract
Development of A Learning Support System of Safety
Shadow Pitching Form to Guard Elbow
Ryo Tsuda
In recent years, there are many researches of various sports to analyze movement in
exercise learning by spread and improvement of computer technology. About baseball,
there are many researches of the system to improve a form for technical improvement
in batting form and pitching form. The baseball is popular from professional to amateur(local league, member of society, student, little league) at any age. However,
baseball is sports with much trouble. The pitcher is more likely to be hurt than other
positions. Because, the pitcher burden on elbow and shoulder for throwing a lot than
other position. The throw movement accumulates stress on elbow and shoulder for doing movement to twist elbow joints. There are fewer coaches or trainer in the amateur
baseball team than professional’s. Therefore, the player have to care and manage condition herself/himself. Shadow pitching is one of exercise method of the baseball perform
to burden pitching form herself/himself. However, practicing the pitching form with
burden on elbow might become the pitching disorder. This research develop a learning
support system of safety shadow pitching form to guard elbow to control outbreak risk
of the baseball elbow.
key words
baseball, baseball elbow, pitching form, Kinect, beginners
– ii –
目次
第1章
はじめに
1
第2章
研究の背景
2
野球肘について . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2
2.1.1
野球肘とは . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2
2.1.2
主な野球肘の原因 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2
2.1
2.2
野球肘と投球フォームの関係
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
2.3
運動フォームの先行研究 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
2.3.1
体幹に着目した野球のバッティングフォームの改善を支援するシス
テムの開発 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2.3.2
2.4
第3章
3.1
3.2
第4章
4.1
3
バスケットボールのフリースローにおけるシュートフォームの学習
支援システムの構築 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4
本研究の目的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4
投球フォームの支援方法の検討
5
投球フォームのモデル構築 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
3.1.1
ワインドアップ期 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
3.1.2
コッキング期 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
3.1.3
アクセラレーション期 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
学習支援の方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
3.2.1
アドバイスの提示方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
3.2.2
アドバイスの内容 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
8
肘に負担のかからない投球フォームの学習支援システムの設計
9
システムの構成 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
9
– iii –
目次
4.2
Kinect . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
9
4.3
システム動作の流れ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
10
システムの実行
11
5.1
システムの実行 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
11
5.2
各指摘箇所での実行画面 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
11
5.2.1
ワインドアップ期での実行画面 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
11
5.2.2
コッキング期での実行画面 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
11
5.2.3
アクセラレーション期の指摘画面 . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
13
第5章
第6章
おわりに
14
謝辞
15
参考文献
16
– iv –
図目次
3.1
身体が地面と垂直である . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
3.2
身体が地面と垂直でない . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
3.3
ボールを持つ手が背中側に回っていない . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
3.4
ボールを持つ手が背中側に回っている
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
3.5
肘が両肩の直線上より上にある . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
3.6
肘が両肩の直線上より下がっている . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
4.1
Kinect の3次元情報 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
10
4.2
取得可能な骨格 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
10
5.1
ワインドアップ期の実行画面 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
12
5.2
コッキング期の実行画面 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
12
5.3
アクセラレーション期の実行画面 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
13
–v–
第1章
はじめに
野球は, プロからアマチュア(地方リーグ, 社会人, 学生, リトルリーグなど)まで幅広い
年齢層で親しまれているスポーツである. しかし, 野球では選手の故障などが問題になって
いる. その中でも投手の投球障害が他のポジションよりも故障するリスクが高い. それは,
投手が他のどのポジションよりも投球を多く行なうため, 肘や肩に負担がかかってしまうた
めである. 投球動作は日常生活では行なわれない肘関節などをねじる動作を行なうため肘
などにストレスが蓄積する. また, アマチュア野球界はプロ野球界と違って指導者やトレー
ナーが多くおらず, 身体のケアやコンディションの管理が個人に任されている. 野球の練習
方法の一つであるシャドーピッチングは投球フォームを固めるために行なわれるが, 個人で
行なうため, 肘に負担がかかる投球フォームのまま練習を行なってしまうと投球障害の原因
になってしまう. 本研究では, 野球経験の少ない初心者を対象に肘に負担のかからないシャ
ドーピッチングフォームの学習を支援するシステムの構築を行う.
–1–
第2章
研究の背景
2.1
2.1.1
野球肘について
野球肘とは
野球肘とは、野球用語で肘の障害を総称して野球肘と言われている。野球肘の発生ピーク
は日本臨床スポーツ医学会の「青少年の野球障害に対する提言」によると 11, 12 歳ごろで
小, 中学生に多くいる. また、野球肘は発生すると将来重度の後遺症を引き起こす恐れがあ
る [1].
2.1.2
主な野球肘の原因
主な野球肘の原因としては、
• オーバーユース (過剰な投球回数による疲労蓄積)
• 身体の筋肉が十分に発達していない
• 肘に負担のかかった投球フォーム
などがある. 1 つ目のオーバーユースは, 投球を行なうと少なからず肘に負担がかかってし
まう. 投手は, 先発投手の場合, 1 試合で 100 球以上もの投球を行なう事が多くある. これに
より, 1 度の投球では小さな負担であっても負担が蓄積していき, 肘の故障に繋がってしま
う. 2 つ目の身体の筋肉が十分に発達していないと少しのストレスで投球障害を起こしてし
まうため, 筋肉の発達レベルも野球肘の原因になる. 3 つ目の肘に負担のかかった投球フォー
–2–
2.2 野球肘と投球フォームの関係
ムについては, 次節で述べる.
2.2
野球肘と投球フォームの関係
野球肘の発生しやすい投球フォームは、ボールを持つ手がトップポジションに到達したと
きに肘が両肩の直線上より低い状態の肘下がりが原因とされている. これは, 投球の過程で
一番負担のかかる動作は、ボールを持つ手をトップポジションに持ってくる時である. この
時、肘に外側の力が働くのに対しそれを抑えようとする力(内反トルク)が働き、この力が
大きくなることにより肘が故障してしまう. 肘への負担を抑えるためには、ボールを持つ手
がトップポジションに来た時に肘が両肩の直線上より上にあることが望ましいとされている
[2][3].
2.3
運動フォームの先行研究
さまざまなスポーツにおいて個人で運動を行うことを対象に, 運動フォームを支援するシ
ステムの開発が先行研究としてある.
2.3.1
体幹に着目した野球のバッティングフォームの改善を支援するシス
テムの開発
この研究 [4] では, 野球のバッティングフォームの改善において, 初心者のようにバッティ
ングフォームの基礎を知らない人が向上のポイントに気づくことは容易ではないことに着目
し, Kinect を用いて動作の支援を行っている. バッティングの動作をテイクバック・スイン
グ開始・インパクト・フォローの 4 段階に分けて各フェーズでそれぞれ動作の指摘を行って
いる.
–3–
2.4 本研究の目的
2.3.2
バスケットボールのフリースローにおけるシュートフォームの学習
支援システムの構築
この研究 [5] は, バスケットボールのフリースローの動作におけるシュートフォームを撮
影し, 撮影した動作に不適切なフォームが見つかった場合, それをどのように改善すべきか
アドバイスを行うシステムを構築したものである. 初心者は経験者のシュートフォームを真
似することが難しく, かつ指導者から十分な指導を得られるとは限らないという問題点に着
目し, 初心者の動作をモデルとして設定したシュートフォームに近づけるような学習支援を
行っている.
2.4
本研究の目的
本研究の目的は, 小中学生にピークになる野球肘の原因のうち3つ目の肘に負担のかかる
投球フォームが原因による野球肘の発生をを少しでも下げるために投球フォームを肘に負担
の少ない投球フォームに近づける事である. そのために、肘に負担の少ない投球フォームの
モデルを設定し, 投球フォームの学習支援を行うシステムを構築する.
–4–
第3章
投球フォームの支援方法の検討
3.1
投球フォームのモデル構築
本研究で使用した投球フォームのモデルは参考文献 [2] を参考に作成している. 本研究で
は投球フォームのプロセスを以下の 3 段階に分けて構築している.
1. ワインドアップ期(投球動作開始から踏み出す足を最大限上げるまで)
2. コッキング期(ワインドアップ期からボールを持つ手を後ろに引いた引くまで)
3. アクセラレーション期(コッキング期からボールを持つ手をトッポポジションまで上げ
るまで)
3.1.1
ワインドアップ期
投球フォームの第 1 段階のワインドアップ期では踏み出す足を最大限上げた時に身体が地
面に対して垂直に立っているかどうかを確認する. 図 3.1 のように身体の軸と地面が垂直で
ない場合は指摘を行う. この動作では、図 3.1 のように体が地面と垂直でなく身体が傾いて
しまうとバランスを崩してしまいこの後の動作全体に影響が出てしまうためである.
3.1.2
コッキング期
投球フォームの第 2 段階のコッキング期ではボールを持つ手を引いたときに背中側まで回
りすぎていないかを確認する. 図 3.3 のようにボールを持つ手を後ろに引いたとき、丸で示
しているように背中側まで引きすぎて打者側からボールを持つ手が見えており, 腕を引きす
–5–
3.1 投球フォームのモデル構築
図 3.1 身体が地面と垂直である
図 3.2 身体が地面と垂直でない
ぎている場合は指摘を行う. この動作では、次のアクセラレーション期でボールを持つ手を
トップポジションまで上げるときに肘に負担がかかってしまい腕を上げにくくなってしまう
ためである.
図 3.3 ボールを持つ手が背中側に回っていない
図 3.4
–6–
ボールを持つ手が背中側に回っている
3.2 学習支援の方法
アクセラレーション期
3.1.3
投球フォームの第 3 段階のアクセラレーション期ではボールを持つ手がトッポポジション
まで上げた時に肘の高さが両肩の直線上よりも上にあるかを確認する. 図 3.5 のように肘の
高さが両肩の直線上より上にあるか確認する. この動作では、肘が両肩の直線上より下がっ
た状態で投球を行うと肘への負担が大きくなるため野球肘の発生リスクが高まってしまうた
めである.
図 3.5
3.2
3.2.1
図 3.6 肘が両肩の直線上より下がっている
肘が両肩の直線上より上にある
学習支援の方法
アドバイスの提示方法
学習者の投球フォームをモデルの投球フォームに近づけるための支援方法としてアドバイ
スの提示を行う. 3つのプロセスに分けた投球フォームを各フェーズで動作の確認と指摘を
行う. アドバイスの方法は, 指摘箇所の写真とその指摘箇所に対するアドバイスをコメント
として学習者に表示する. また投球動作は複雑なものであるため, 投球動作の時間軸の早い
フェーズから指摘を行う. このとき表示するのは1か所のみとしている. これは1度に複数
–7–
3.2 学習支援の方法
のアドバイスを表示すると学習者にとって意識することが増えてしまい、さらに投球フォー
ムを崩してしまう恐れがあるためである.
3.2.2
アドバイスの内容
本システムで提示するアドバイスは以下の2点である.
• 肘に負担のかかる投球フォームの場合, その動作を指摘
• 指摘した箇所において肘に負担の少ない投球フォームにするために意識すべきことを
表示
これら2つを投球動作を行うことでアドバイスとして提示していく.
–8–
第4章
肘に負担のかからない投球フォーム
の学習支援システムの設計
4.1
システムの構成
本システムはデバイスとして Microsoft 社の Kinect を利用し, WindowsPC 上で Kinect
for windows SDK を用いて構成した. Kinect は, 1 秒間に 30 フレームの3次元骨格情報を
取得する. その情報から学習者の投球動作を判定し, 視覚情報とテキストによって指摘を行
う. 学習者は Kinect の正面に立ち, 動作の指摘確認にため, Kinect の隣にディスプレイを配
置する. 本研究では, 3.1 節で構築した投球フォームのモデルに近づけるための支援を行う.
また, シャドーピッチングという練習方法を用いるため大きなスペースを使用しない.
4.2
Kinect
Kinect は、人間の骨格情報を三次元座標に変換する機能を持ち、20 箇所の骨格の位置
を 1 秒間に 30 フレーム取得できるデバイスである. 近赤外線カメラが受信した映像から奥
行き情報を計算する距離センサーやカラー映像を入力するカメラの映像センサーを搭載し
ている. 取得できる骨格情報は, 図 4.2 のように頭, 首, 両肩, 両肘, 両手首, 両手, 背, 尻, 両
股, 両膝, 両足首, 両足の計 20 箇所である. 骨格情報は図 4.1 のように, 横軸を x 軸, 縦軸
を y 軸, 奥行きを z 軸の3次元骨格情報として認識される. また, 通常のカメラとは異なり,
Kinect のカメラから入力した画像は直感的に身体を動かせるように鏡のように反転してい
–9–
4.3 システム動作の流れ
る. Kinect を使うことにより身体に何もつけないで骨格情報を得ることができる [6][7].
図 4.1 Kinect の3次元情報
図 4.2 取得可能な骨格
4.3
システム動作の流れ
本システムは, 野球の投球フォームにおける動作開始から肘への負担が最大限にかかる
トップポジションにボールを持つ手をあげるまでの動作の指摘する. システムの流れは, 動
作開始の合図として右手を挙げる行為をしてもらう. この後, 投球動作をワインドアップ期
から行う. 一連の投球動作を終えると投球フォームのモデルと比較を行い, 肘に負担のかか
る投球フォームの場合は, 投球フォームの時間軸の早い順に1カ所のみ動作の指摘を行う.
まず, ワインドアップ期で身体が地面と垂直でない場合は指摘とアドバイスを提示する. ワ
インドアップ期で身体が地面と垂直の場合は, 次のコッキング期の動作確認を行う. コッキ
ング期では, ボールを持つ手が腕を引くときに背中側までに回り込んでいる場合は指摘しア
ドバイスを提示する. コッキング期で腕が背中側まで引きすぎていない場合は, 次のアクセ
ラレーション期の動作確認を行う. アクセラレーション期はボールを持つ手をトップポジ
ションまで挙げたとき肘が両肩の直線上より下にある場合は指摘を行い, アドバイスを提示
する. 以上の3つのポイントで動作の指摘を行う.
– 10 –
第5章
システムの実行
5.1
システムの実行
本節では, アクセラレーション期で肘が両肩の直線上より下にある場合の実行画面を表示
する. 実行画面とは, コメントでのアドバイス, 写真の表示, 動作の指摘ポイントの3種類の
ことである. これらの支援について述べる.
5.2
5.2.1
各指摘箇所での実行画面
ワインドアップ期での実行画面
ワインドアップ期におけるコメントでのアドバイス表示は, 左側には実行時の画像を表示
し, 右側には指摘ポイントとその動作で肘に負担が少なくなる投球フォームにするために意
識すべきことを表示する. 図 5.1 では, ワインドアップ期で身体の地面に対して垂直でない
場合の実行画面である. この時, 画面の左側では実行時の画像を表示している. 右側には指
摘ポイントとしてコメントで「身体が地面に対して垂直になっていません」と表示し, アド
バイスとして「背筋を伸ばして軸足でしっかりと身体全体を支えてみてください」と表示を
行い, 学習者に意識することを表示している.
5.2.2
コッキング期での実行画面
コッキング期におけるコメントでのアドバイス表示は, 左側には実行時の画像を表示し,
右側には指摘ポイントとその動作で肘に負担が少なくなる投球フォームにするために意識す
– 11 –
5.2 各指摘箇所での実行画面
図 5.1
ワインドアップ期の実行画面
べきことを表示する. 図 5.1 では, コッキング期でボールを持つ手を背中側まで引きすぎた
場合の実行画面である. この時, 画面の左側では実行時の画像を表示している. 右側には指
摘ポイントとしてコメントで「ボールを持つ手を背中側まで引きすぎています」と表示し,
アドバイスとして「ボールを持つ手を引くときに2塁ベースに向かって腕を引くイメージで
やってみてください」と表示を行い, 学習者に意識することを表示している.
図 5.2
コッキング期の実行画面
– 12 –
5.2 各指摘箇所での実行画面
5.2.3
アクセラレーション期の指摘画面
アクセラレーション期ではコメントでのアドバイス表示は, 左側には実行時の画像を表示
し, 右側には指摘ポイントとその動作で肘に負担が少なくなる投球フォームにするために意
識すべきことを表示する. 図 5.3 では, アクセラレーション期で肘が両肩の直線上より下がっ
ている場合の実行画面である. 左側での画像では, 両肩と肘の位置関係が分かるように赤の
直線で両肩の直線と右肩から右肘の直線を示している. 今回の場合では, 肘が両肩の直線上
より下がっているため指摘を行っている. 右側の上面では, 指摘ポイントとして「ボールを
持つ腕が一番高いとき肘が両肩の直線上より下がっています」と表示している. また, 右側
の下面では, そのアドバイスとして「グラブを持つ手を下げる勢いで肘をあげるようにやっ
てみよう」とアドバイスを行い, 学習者に意識すべきことを表示している.
図 5.3
アクセラレーション期の実行画面
– 13 –
第6章
おわりに
本研究では, アマチュア野球では, プロ野球と比べて1チームに指導者やトレーナーが多
くいないため投球フォームの指導が容易ではないという事に着目し, 初心者の投球フォーム
が肘に負担のかからない投球フォームに近づけるためのシステムを構築した. 具体的な内容
としては, まず, 学習者に対しての支援方法としてはどのようなものが効果的なのか支援方
法を検討し, 支援方法を決定した. また, 学習者の投球フォームを肘に負担のかからないよ
うにするためには, 肘に負担の少ない投球フォームのモデルを構築し, 学習者の投球フォー
ムが肘に負担のかかる投球フォームの場合はこれを指摘しアドバイスを提示して肘への負
担が少ない投球フォームに改善していく. システムの実装では, 骨格を三次元座標にマッピ
ングできる Kinect for Windows を使用した. また, 動作の確認のために画像の撮影のため
Kinect に搭載しているカメラを用いて撮影を行った. 今後の課題としては, システムの評価
を行い, より肘に負担が少なくなるように指摘箇所を増やしシステムを充実させて行く事が
望まれる.
– 14 –
謝辞
本研究において本論文に関して, 多大なるご指導, ご助言をいただきました高知工科大学
情報学群, 妻鳥貴彦准教授に心より御礼申し上げます. 本研究において, ご多忙の中, 副査を
お引き受けいただき, 適切なご助言, ご指導をいただきました同学群, 任向実教授に心から感
謝いたします. 同様に, ご多忙の中, 副査をお引き受けいただき, 適切なご助言, ご指導をい
ただきました同学群, 門田宏教授に心から感謝いたします. 研究室活動において, 助言など支
えてくださった, 修士 2 年の山中佑亮氏, 安楽優樹氏, 田中亜璃紗氏, 修士 1 年の巽翔太郎氏
に心から感謝いたします. 3年次より研究室でともに活動してきた学部 4 年の大江雄也師,
金田悠香氏, 島崎大志氏, 長山聖奈氏, 右高隼登氏に心から感謝いたします. また、同研究室
の学部3年の皆さんにも研究や研究室活動ではお世話になり心から感謝いたします. 最後に,
私の大学生活を生活面から精神面までいろいろなサポートをしてくださった家族に心より深
く感謝いたします.
– 15 –
参考文献
[1] 日本臨床スポーツ医学会: ”青少年の野球障害に対する提言”, 1994.
[2] 山本智章: ”「野球ひじ」を治す・防ぐ・鍛える”, 2013.
[3] 馬見塚尚孝: ”「野球医学」の教科書”, 2012.
[4] 篠原寛幸: ”体幹に着目した野球のバッティングフォームの改善を支援するシステムの
開発”, 高知工科大学情報学群平成 24 年度プロジェクト研究論文, 2013.
[5] 山中佑亮: ”バスケットボールのフリースローにおけるシュートフォームの学習支援シ
ステムの構築”, 高知工科大学情報学群平成 24 年度学士学位論文, 2013.
[6] 初音玲, 佐々木幹夫”Kinect ソフトウェア開発講座”, 株式会社翔泳社, 2012.
[7] 蓼原奈緒, ”弓道初心者のための骨格情報を用いた射型習得支援システム”, 高知工科大
学情報学群平成 25 年度学士学位論文, 2014.
– 16 –
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