...

印刷用スライド - 電気通信大学

by user

on
Category: Documents
19

views

Report

Comments

Transcript

印刷用スライド - 電気通信大学
.
生物の進化と系統樹
目次
.
離散数学 第 14 回
系統樹復元の離散数学
.
岡本 吉央
[email protected]
1.
生物の進化と系統樹
2.
形質に基づく系統樹復元
3.
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
4.
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
電気通信大学
2013 年 7 月 30 日
最終更新:2013 年 7 月 29 日
.
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
17:54
2013 年 7 月 30 日
1 / 44
.
岡本 吉央 (電通大)
生物の進化と系統樹
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
2 / 44
生物の進化と系統樹
生物の多様性
形態と形質
http://tolweb.org/treehouses/?treehouse id=2482
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Fungi of Saskatchewan.JPG
http://mappery.com/Singapore-Zoo-Map-2
.
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
3 / 44
.
岡本 吉央 (電通大)
生物の進化と系統樹
2013 年 7 月 30 日
4 / 44
生物の進化と系統樹
遺伝子型と表現型
系統樹
http://evolution.berkeley.edu/evolibrary/news/061001 trapjaw
http://www.biotechlearn.org.nz/focus stories/evolved enzymes/images/fly genotype and phenotype
.
離散数学 (14)
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
5 / 44
.
岡本 吉央 (電通大)
生物の進化と系統樹
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
6 / 44
生物の進化と系統樹
系統樹:ダーウィンの著書から
系統樹:他分野での利用法
『カンタベリー物語』(Geoffrey Chaucer,14 世紀) の写本の系統樹
C. Darwin (1859) On the Origin of Species by Means of Natural Selection
http://www.canterburytalesproject.org/pubs/desc2.html
.
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
7 / 44
.
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
8 / 44
.
形質に基づく系統樹復元
形質に基づく系統樹復元
系統樹復元のお話
目次
系統樹を復元するために使う手法の分類
1.
生物の進化と系統樹
2.
形質に基づく系統樹復元
3.
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
4.
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
1
距離に基づく手法
distance-based approach
2
形質に基づく手法
character-based approach
C. Darwin (1859) On the Origin of Species by Means of Natural Selection
.
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
9 / 44
.
岡本 吉央 (電通大)
形質に基づく系統樹復元
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
11 / 44
http://phylodiversity.net/bb09/images/f/f5/KristinaPhylo.PNG
.
岡本 吉央 (電通大)
形質に基づく系統樹復元
▶
▶
▶
Ostrich
Emu
Pelican
Duck
Owl
.
Webbed feet
Pelican
N
(4, Y)
N
Y
Y
Duck
N
(4, Y)
↑
岡本 吉央 (電通大)
.
▶
多値:形質のとりうる値に制限なし
.
出力に対する仮定:系統樹は「根付き」か「根無し」か?
.
▶ 根付き:時間経過を考慮する
Owl
(4, N) Emu
(3, N)
.
▶
根無し:時間経過を考慮しない
⇝ Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
Ostrich
(2, N)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
13 / 44
.
岡本 吉央 (電通大)
形質に基づく系統樹復元
c7
c5
s :種,c :形質
c2
0
1
0
0
0
c4
1
1
0
1
0
c5
1
0
0
0
0
c6
0
0
1
0
0
c7
1
0
0
1
0
c2
s 2 s5
c6 , c8
s3
1
2
c8
0
0
1
0
0
X の最大元が存在する
任意の x, y , z ∈ X に対して,
y , z が x の上界であるならば,y , z は比較可能である
この半順序集合のハッセ図を根つき木と呼ぶこともある
.
a
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
c
b
e
.
14 / 44
.
根つき木とは?
.
根つき木とは,ある有限集合 X 上の半順序集合 T = (X , ⪯) で,以下を
満たすもの
c1
s 1 s4
c3
1
1
0
1
0
2013 年 7 月 30 日
根つき木とは?
:正確な定義
c3 , c4
c1
0
0
1
0
1
離散数学 (14)
形質に基づく系統樹復元
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
s1
s2
s3
s4
s5
12 / 44
.
入力に対する仮定:形質は「二値」か「多値」か?
.
▶ 二値:形質が 0 と 1 の値をとる (ように符号化される)
各葉が 1 つの種でラベル付けされている
各種はラベルとして一度だけ出現する
各形質に対して,同じ状態の種が誘導する最小の部分木が互いに素
# toes
2
3
4
4
4
↑
2013 年 7 月 30 日
問題のバリエーション
入力:種形質行列 M
出力:二分木で次を満たすもの
▶
離散数学 (14)
形質に基づく系統樹復元
Perfect phylogeny 問題
▶
10 / 44
形質に基づく手法 (2):復元された系統樹
http://phylodiversity.net/bb09/images/9/9a/Kristinachar.png
.
2013 年 7 月 30 日
形質に基づく系統樹復元
形質に基づく手法 (1):種形質行列
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
15 / 44
.
岡本 吉央 (電通大)
f
離散数学 (14)
d
g
2013 年 7 月 30 日
16 / 44
.
形質に基づく系統樹復元
形質に基づく系統樹復元
根つき木の根と葉
根つき木の性質
根つき木 T = (X , ⪯)
.
根つき木の根と葉とは?
.
▶ T の根とは X の最大元のこと
根つき木 T = (X , ⪯)
.
根つき木の性質
.
.任意の Y ⊆ X に対して Y の最小上界が存在する
.
▶
T の葉とは X の極小元のこと
a
a
c
b
c
b
e
e
.
g
f
g
f
岡本 吉央 (電通大)
d
d
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
17 / 44
.
岡本 吉央 (電通大)
形質に基づく系統樹復元
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
形質に基づく系統樹復元
根つき木における子
根つき二分木とは?
根つき木 T = (X , ⪯),x ∈ X
.
根つき木における子とは?
.
x の子とは,X の要素 y ∈ X で以下を満たすもの
根つき木 T = (X , ⪯)
.
根つき木二分木とは?
.
T が根つき二分木であるとは,
葉ではない任意の
x ∈ X の子の数がちょうど 2 であること
.
.
18 / 44
▶
y ≺x
▶
y ≺ z ≺ x となる z ∈ X が存在しない
a
a
c
b
c
b
d
e
d
e
.
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
19 / 44
.
岡本 吉央 (電通大)
形質に基づく系統樹復元
c7
s :種,c :形質
.
c6 , c8
s 2 s5
1.
生物の進化と系統樹
2.
形質に基づく系統樹復元
3.
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
4.
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
c4
1
1
0
1
0
c5
1
0
0
0
0
c6
0
0
1
0
0
岡本 吉央 (電通大)
c7
1
0
0
1
0
c8
0
0
1
0
0
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
21 / 44
.
岡本 吉央 (電通大)
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
c7
Aj = 形質 cj を持つ種全体の集合
(Aj = {si | Mi,j = 1})
s1
s2
s3
s4
s5
c3
1
1
0
1
0
c4
1
1
0
1
0
c5
1
0
0
0
0
c6
0
0
1
0
0
c5
c7
1
0
0
1
0
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
種 s1 , . . . , sn ,形質 c1 , . . . , cm ,種形質行列 M ∈ {0, 1}n×m
.
系統樹が作れるための必要十分条件 (整合性条件)
.
M から系統樹を作ることができる ⇔
集合 A1 , . . . , Am の中の任意の 2 つ Ai と Aj が次のいずれかを満たす
c1
c6 , c8
c2
s 2 s5
s3
Ai ⊆ Aj ,
.
s 1 s4
c8
0
A3 =A4
0
1
0
s 1 s4
0
A5
.
22 / 44
系統樹が作れるための必要十分条件
c3 , c4
c2
0
1
0
0
0
離散数学 (14)
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
例 1:どのように系統樹を作るのか?
c1
0
0
1
0
1
2013 年 7 月 30 日
s3
s 1 s4
c3
1
1
0
1
0
20 / 44
c1
c2
c5
c2
0
1
0
0
0
2013 年 7 月 30 日
目次
c3 , c4
c1
0
0
1
0
1
離散数学 (14)
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題 (再掲)
s1
s2
s3
s4
s5
f
g
f
A3 =A4
A1
s2
A7
A2
A1
s5 s3
A6 =A8
2013 年 7 月 30 日
23 / 44
.
s 1 s4
s2
A5
A2
A7
岡本 吉央 (電通大)
s5 s3
A6 =A8
Ai ⊇ Aj ,
Ai ∩ Aj = ∅
▶
A1 ∩ A2 = ∅
▶
A2 ⊆ A3
▶
A1 ∩ A3 = ∅
▶
A2 ⊆ A4
▶
A1 ∩ A4 = ∅
▶
A2 ∩ A5 = ∅
▶
A1 ∩ A5 = ∅
▶
A2 ∩ A6 = ∅
▶
A1 ⊇ A6
▶
A2 ∩ A7 = ∅
▶
A1 ∩ A7 = ∅
▶
A2 ∩ A8 = ∅
▶
A1 ⊇ A8
▶
···
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
24 / 44
.
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
系統樹が作れるための必要十分条件:証明 (1)
系統樹が作れるための必要十分条件:証明 (2)
種 s1 , . . . , sn ,形質 c1 , . . . , cm ,種形質行列 M ∈ {0, 1}n×m
.
系統樹が作れるための必要十分条件 (整合性条件)
.
M から系統樹を作ることができる ⇔
集合 A1 , . . . , Am の中の任意の 2 つ Ai と Aj が次のいずれかを満たす
種 s1 , . . . , sn ,形質 c1 , . . . , cm ,種形質行列 M ∈ {0, 1}n×m
.
系統樹が作れるための必要十分条件 (整合性条件)
.
M から系統樹を作ることができる ⇔
集合 A1 , . . . , Am の中の任意の 2 つ Ai と Aj が次のいずれかを満たす
Ai ⊆ Aj ,
.
Ai ⊇ Aj ,
Ai ∩ Aj = ∅
▶
任意の異なる形質 ci と cj を選ぶ
系統樹 T において以下のいずれかが成り立っている
1
2
3
4
ci
ci
ci
ci
を割り当てている枝が cj
を割り当てている枝が cj
を割り当てている枝と cj
を割り当てている枝と cj
ci を割り当てている枝が cj を割り当てている枝より下にある
2
ci を割り当てている枝が cj を割り当てている枝より上にある
を割り当てている枝より下にある
を割り当てている枝より上にある
を割り当てている枝が同じである
を割り当てている枝が比較不能
3
ci を割り当てている枝と cj を割り当てている枝が同じである
4
ci を割り当てている枝と cj を割り当てている枝が比較不能
▶
▶
▶
岡本 吉央 (電通大)
Ai ∩ Aj = ∅
1
▶
図を板書
.
Ai ⊇ Aj ,
証明 (⇒) 続き:系統樹 T が作れると仮定する
証明 (⇒):系統樹 T が作れると仮定する
▶
Ai ⊆ Aj ,
.
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
25 / 44
.
このとき,Ai ⊆ Aj となる
このとき,Ai ⊇ Aj となる
このとき,Ai = Aj となる (すなわち,Ai ⊆ Aj となる)
このとき,Ai ∩ Aj = ∅ となる
岡本 吉央 (電通大)
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
系統樹が作れるための必要十分条件:証明 (3)
系統樹が作れるための必要十分条件:証明 (3)
種 s1 , . . . , sn ,形質 c1 , . . . , cm ,種形質行列 M ∈ {0, 1}n×m
.
系統樹が作れるための必要十分条件 (整合性条件)
.
M から系統樹を作ることができる ⇔
集合 A1 , . . . , Am の中の任意の 2 つ Ai と Aj が次のいずれかを満たす
種 s1 , . . . , sn ,形質 c1 , . . . , cm ,種形質行列 M ∈ {0, 1}n×m
.
系統樹が作れるための必要十分条件 (整合性条件)
.
M から系統樹を作ることができる ⇔
集合 A1 , . . . , Am の中の任意の 2 つ Ai と Aj が次のいずれかを満たす
Ai ⊆ Aj ,
.
Ai ⊇ Aj ,
Ai ∩ Aj = ∅
Ai ⊆ Aj ,
.
証明 (⇐):A1 , . . . , Am がこの条件を満たすと仮定
Ai ⊇ Aj ,
Ai ∩ Aj = ∅
証明 (⇐) 帰納段階:k < m である場合に成り立つと仮定する
▶
証明は m に関する帰納法で行う
▶
A1 , . . . , Am の中で,⊆ に関して極大である集合を Ai とする
▶
基底段階: m = 1 のとき,
A1 とそれ以外を分けることで,系統樹は必ず作れる
▶
形質 ci を持つ種と持たない種で分割し,系統樹の頭の部分を作る
▶
残りの部分は帰納法の仮定を用いて作ることができる
(詳細は演習問題)
.
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
27 / 44
.
岡本 吉央 (電通大)
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
c3 , c4
c7
c1
c2
s1
s2
s3
s4
s5
c3
1
1
0
1
0
c4
1
1
0
1
0
c5
1
0
0
0
0
c6
0
0
1
0
0
c7
1
0
0
1
0
岡本 吉央 (電通大)
s 2 s5
c8
s 1 s4
0
0 A3 =A4
1
0
s 1 s4
0
A5
.
c6 , c8
Aj = 形質 cj を持つ種全体の集合
s3
c1
1
1
0
0
s1
s2
s3
s4
A1
s2
A2
A7
離散数学 (14)
m は形質の数,n は種の数
s2
s3
c3
0
1
1
1
s4
A3
A1 , A2 に対して
A1 ⊆ A2 , A1 ⊇ A2 , A1 ∩ A2 = ∅
A6 =A8
2013 年 7 月 30 日
29 / 44
.
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
30 / 44
2013 年 7 月 30 日
32 / 44
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
目次
.
定理 (Estabrook, Johnson, McMorris ’76)
.
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題は多項式時間で解ける
▶
s1
のどれも成り立ってないので,
系統樹が作れない
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
より詳細には O(m2 n) 時間
c2
0
1
1
0
s5 s3
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題の難しさ (易しさ)
▶
28 / 44
A1
A2
c5
c2
0
1
0
0
0
2013 年 7 月 30 日
例 2:系統樹が作れない例
Aj = 形質 cj を持つ種全体の集合
c1
0
0
1
0
1
離散数学 (14)
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
証明における帰納段階と構成法 (あるいは,構成法の復習)
.
26 / 44
1.
生物の進化と系統樹
2.
形質に基づく系統樹復元
3.
Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
4.
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
後に,O(mn) 時間アルゴリズム (Gusfield ’91)
.
展望
.
アルゴリズム,多項式時間,O 記法については
.『アルゴリズム・データ構造および演習』にて学習を
.
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
31 / 44
.
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
.
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
現実のデータには欠損がある
▶
▶
入力:不完全な二値種形質行列 (M ∈ {0, 1, ?}n×m )
出力:根つき二分木で次を満たすもの
入力の不完全な部分を補う
各葉が 1 つの種でラベル付けされている
各種はラベルとして一度だけ出現する
各形質に対して,同じ状態の種が誘導する最小の部分木が互いに素
▶
▶
▶
▶
s1
s2
s3
s4
s5
c1
0
0
1
0
1
c2
0
1
0
?
0
c3
1
1
0
1
0
c4
1
?
0
1
0
c5
1
0
0
0
0
c6
0
0
1
0
0
c7
?
0
0
1
0
c8
0
0
1
0
0
c3 , c4
c7
c1
c5
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
33 / 44
.
岡本 吉央 (電通大)
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
▶
▶
▶
▶
.
Mi,j = 0 ならば
s1
s2
s3
s4
=0
{s2 , s3 } ⊆ A2 ⊆ {s2 , s3 , s4 }
=1
▶
A3 = {s3 , s4 }
M ′ から得られる集合 A1 , . . . , Am が先ほどの整合性条件を満たすこと
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
35 / 44
.
s1
s2
s3
c4
0
1
?
▶
{s1 } ⊆ A1 ⊆ {s1 , s2 , s3 }
▶
∅ ⊆ A2 ⊆ {s1 , s2 }
▶
A3 = {s3 }
▶
{s2 } ⊆ A4 ⊆ {s2 , s3 }
▶
{s1 } ⊆ A5 ⊆ {s1 , s3 }
岡本 吉央 (電通大)
▶
A2 と A3 を見ると,
A2 = {s2 , s3 , s4 } である
▶
しかし,このとき,A1 , A2 に対
して
A1 ⊆ A2 , A1 ⊇ A2 , A1 ∩ A2 = ∅
離散数学 (14)
▶
A1 = {s1 , s2 , s3 } とすれば
A1 ⊇ A2 , A3 , A4 , A5 となるので
うれしそう
▶
A2 = ∅ とすれば
A2 ⊆ A3 , A4 , A5 となるので
うれしそう
▶
他の「?」を 0 にすれば,
A3 , A4 , A5 は互いに素
M に対して系統樹が作れる ⇒ Ak = ∅ として系統樹が作れる
.
証明:M に対して系統樹が作れると仮定
▶
集合 A1 , . . . , Am が存在して,任意の i, j に次のどれかが成り立つ
Ai ⊆ Aj , Ai ⊇ Aj , Ai ∩ Aj = ∅
条件を満たせた!
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
37 / 44
.
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
このとき,Ak を ∅ に変えても,この性質は成り立つ
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
38 / 44
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
例 3:どのように補えばよいか?
種 s1 , . . . , sn ,形質 c1 , . . . , cm ,不完全種形質行列 M ∈ {0, 1, ?}n×m
.
性質
.
ある形質 ck が存在して,Ak = {s1 , . . . , sn } となるように補完できる
このとき,
s1
. M に対して系統樹が作れる ⇒ Ak = {s1 , . . . , sn } として系統樹が作れる
s1
s2
s3
s4
s5
s6
証明:M に対して系統樹が作れると仮定
集合 A1 , . . . , Am が存在して,任意の i, j に次のどれかが成り立つ
Ai ⊆ Aj , Ai ⊇ Aj , Ai ∩ Aj = ∅
▶
36 / 44
種 s1 , . . . , sn ,形質 c1 , . . . , cm ,不完全種形質行列 M ∈ {0, 1, ?}n×m
.
性質
.
ある形質 ck が存在して,Ak = ∅ となるように補完できる
このとき,
「うれしそう」であることをしてもよいという保証 (2)
▶
2013 年 7 月 30 日
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
▶
.
A1 と A3 を見ると,
A1 = {s1 , s2 } である
「うれしそう」であることをしてもよいという保証 (1)
系統樹を作ろうとする
c5
1
0
?
▶
のどれも成り立ってないので,
系統樹が作れない
岡本 吉央 (電通大)
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
例 2:どのように補えばよいか?
c3
0
0
1
c3
0
0
1
1
{s1 , s2 } ⊆ A1 ⊆ {s1 , s2 , s3 }
Mi,j = 1 ならば
c2
?
?
0
c2
0
1
1
?
▶
▶
c1
1
?
?
c1
1
1
?
0
▶
▶
.
34 / 44
系統樹が作れるとすると
入力の不完全な部分を補う
各葉が 1 つの種でラベル付けされている
各種はラベルとして一度だけ出現する
各形質に対して,同じ状態の種が誘導する最小の部分木が互いに素
′
Mi,j
′
Mi,j
2013 年 7 月 30 日
例 1:どのように補えばよいか?
.
やりたいこと
.
行列 M ∈ {0, 1, ?}n×m から行列 M ′ ∈ {0, 1}n×m を次のように得ること
▶
離散数学 (14)
入力:不完全な二値種形質行列 (M ∈ {0, 1, ?}n×m )
出力:根つき二分木で次を満たすもの
▶
s3
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題:より詳細な定義
▶
s 2 s5
s 1 s4
http://phylodiversity.net/bb09/images/9/9a/Kristinachar.png
.
c6 , c8
c2
c1
1
1
?
0
?
?
このとき,Ak を {s1 , . . . , sn } に変えても,この性質は成り立つ
c2
0
1
1
?
0
0
c3
?
?
0
1
1
?
c4
0
?
?
?
1
1
A1
s2
s3
A2
s4
A3
s5
s6
A4
系統樹を作ろうとする
▶ 分けられるところで分けても
問題なさそう
▶
左側では,A1 = {s1 , s2 , s3 } と
すれば問題ない
▶
右側では,A3 = {s4 , s5 , s6 } と
すれば問題ない
条件を満たせた!
.
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
39 / 44
.
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
40 / 44
.
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題を解く手順
「分けられるときに分ける」としてもよいという保証
種 s1 , . . . , sn ,形質 c1 , . . . , cm ,不完全種形質行列 M ∈ {0, 1, ?}n×m
.
性質
.
M における ? をすべて 0 にしたとき,
種の集合の分割 {S1 , S2 } と形質の集合の分割 {C1 , C2 } が存在して,
S1 の種は C2 の形質を持たない,そして,
S2 の種は C1 の形質を持たない,となるとする
このとき,
1
ある列の成分をすべて 1 に補完できるならば,
そのように補完して,その列を削除
2
ある列の成分をすべて 0 に補完できるならば,
そのように補完して,その列を削除
3
残ったすべての ? を仮に 0 として,A1 , . . . , Am を作る
うまく分割できるところで分割しようとする
4
▶
▶
M に対して系統樹が作れる ⇒ 上の分割から得られる補完を使って系統
樹が作れる
.
.
「上の分割から得られる補完」とは?
.
その補完を M ′ とすると
.
▶
′ =0
si ∈ S1 かつ cj ∈ C2 のとき,Mi,j
▶
′ =0
si ∈ S2 かつ cj ∈ C1 のとき,Mi,j
岡本 吉央 (電通大)
. 証明は省略
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
41 / 44
.
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題の難しさ (易しさ)
.
定理 (Benham, Kannan, Paterson, Warnow ’95)
.
不完全 Binary Directed Perfect Phylogeny 問題は多項式時間で解ける
.
▶
より詳細には O(mn2 ) 時間
▶
m は形質の数,n は種の数
後に,O(mn + k log2 (m + n)) 時間アルゴリズム
(Pe’er, Pupko, Shamir, Sharan, ’04)
▶
.
k は「?」の総数
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
43 / 44
.
.
.
.
.
分割できた ⇒ 小さくなった問題を同じ手順で解く
分割できない ⇒ 系統樹を作れない
岡本 吉央 (電通大)
離散数学 (14)
2013 年 7 月 30 日
42 / 44
Fly UP