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オグリワン通信 第29号

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オグリワン通信 第29号
オグリワン通信
第29号
平成 22 年 8 月
7月3日午後オグリキャップが死亡しました。ワン君の偉大なお父さんです。オグリの長男を見守りた
いというファンの願いからこの会が発足しました。すべての始まりはオグリでした。久しぶりのオグリワン通信の
記事がこんな悲しいニュースになるのは本当に残念ですが、この号は不世出の名馬オグリキャップに捧げます。
オグリキャップ・・・あなたを忘れない
オグリには5月に会ったばかり。25歳とはいえ、若々
しく美しい姿に「これからもずっと会える」と信じて「ま
た来るからね~」とお別れしてきたのです。優駿SSが現
在の場所に移転してからは、スタッフの目が行き届かない
地形を考慮して見学禁止になっていましたが、やはりオグ
リに会いたいファンの多さを考え、5月から一般公開され
たばかりでした。もし一般公開されなければ…そのために
新しい放牧地に移ることもなかっただろうし、そうしたら
放牧地で骨折などという事故は起こらなかったかもしれな
い…などいろいろ考えてしまいます。
しかし、私たちに「タラレバ」の虚しさを教えてくれた
のがオグリでした。オグリの現役時代、私たちは「タラレ
バ」を盛大に言っていました。クラシックに出られていれ
ば、3冠は間違いなかった。天皇賞秋でヤエノムテキにカ
ットされなければ勝てていた。天皇賞に勝っていれば、マ
イルチャンピオンシップに出ていなかっただろうし、そう
したらジャパンカップ・有馬記念に連勝したかもしれない
等々。でもオグリは私たちの「タラレバ」がいかに小さな
ものかを身をもって見せてくれました。クラシック登録の
なかったオグリは追加登録や地方在籍のままでクラシック
に参戦できる道を開きました。天皇賞秋のくやしい敗戦が
あったから、マイルチャンピオンシップ、ジャパンカップ
でのドラマがありました。ずっと勝ち続けていたら、こん
なにもオグリを愛おしく思うこともなかったかもしれませ
ん。私たちの「タラレバ」を大きく超えた結果をオグリは
示してくれました。あの放牧地での事故…もっともっと長
生きしてほしかったけれど、元気で美しいまま去っていこ
うというオグリの意思でもあったのかもしれません。
「小さ
なことにクヨクヨしない。すべてをあるがままに受け入れ
て最善を尽くそうよ。そしてその結果も最良のものと受け
入れよう。」とオグリが言ってくれているように思います。
7月29日のお別れ会。花いっぱいの美しい会場にオグ
リの大きな写真がありました。この20年オグリのおかげ
で友達に
なったフ
ァンが大
勢来てい
ました。
オグリと
の別れを
悲しみつ
つ、オグ
リのくれ
た思い出
と出会いに心から感謝する皆の気持ちが会場中に溢れてい
るような、とても良いお別れ会でした。生産者の稲葉さん
はじめ牧場の方たちが「こんな馬をいつかまた是非出して
みたい」としみじみおっしゃっていました。勝利数や賞金
額からいえば、オグリより大きな利益を牧場にもたらした
馬はいるでしょう。でも競馬を愛するファンがいる限り、
牧場の方々にとってもオグリは生産馬の理想形であり夢な
のではないかと感じました。
かつてライバルとしてターフをわかせたヤエノムテキ、
スーパークリーク、イナリワンからの弔電・献花もありま
した。個性的で強いライバルたちと勝ったり負けたりした
からこそ、オグリは輝き、競馬は最高に面白かったのです。
あの頃の競馬は馬が主役でした。パドックの横断幕は大半
が馬の名前でした。有馬記念で観客が自然にコールしたの
は、騎手ではなくオグリの名前でした。あの頃共に闘い、
今はそれぞれ静かに暮らす友達の健康と長寿を祈ります。
寄せられた弔電はそれぞれ心のこもった感動的なものでし
たが、ここにヤエノムテキ君からの弔電をご紹介します。
全文転載を許可してくださったヤエノムテキ会の皆様に感
謝します。
突然の君の訃報を聞き、ただただ驚き、悲嘆に暮れております。
君とライバルとして競い合ったたくさんの思い出~僕が初めて君
の力を目の当たりにした昭和63年の毎日杯、平成2年、君をマー
クしていたにもかかわらず瞬時に突き放され2着に敗れた安田記
念、僕にとって2つ目のG1勝ちで、6度目の対戦にして初めて君
に先着できた秋の天皇賞、そして君が最後に見せてくれた奇跡、あ
の有馬記念と、今でも全てハッキリと覚えています。
同期の君とは、種牡馬としても同期となり、繋養地も同じ新冠と、
運命的なものを感じずにはいられませんでした。残念ながら、期待
されていたほどの産駒成績が出なかったところまで一緒になって
しまいましたが、それでも僕らの現役時代の走りに共感してくれた
ファンのみんなに長く愛され、ずっと幸せに暮らせていたことも一
緒でしたね。
日本の競馬が最も輝いていた時代に、君と共にターフを駆け、数々
の名勝負を演じられたことを誇りに思い、同じ日高スタリオンにい
る同期のスーパークリークと共に、これからも日本の競馬の今を見
守りつつ余生を過ごしていきたいと思っています。
君のことは決して忘れません。どうか安らかにお眠り下さい。
(同期・友人代表)ヤエノムテキ
オグリキャップの住んでいた馬房には、祭
壇が作られ、日頃使っていた馬具やファン
からのお守りなどが飾られています。オグ
リを本当に大切にしてくださっていた優駿
SSのスタッフの方たちは、まだオグリが
いないことに慣れなくて、朝になるとその
姿を探して馬房を覗き込んでしまうそうで
す。オグリワンの会よりワンの名前でお花
を供えてきました。
「あなたの長男に生まれ
たことを誇りに思います」とカードを添えました。
オグリキャップの死を報じる記事に「アイドルホース」
「怪物」という言葉が見られました。個人的にはこれらの
言葉は好きではありません。オグリはその走りの魅力でい
つの間にかファンの心をつかんだ実力馬。単なるアイドル
ではなかったし、怪物というほど勝ちまくったわけではあ
りません。真摯なものに本当の価値があることを教えてく
れたサラブレッドでした。バブルに浮かれていた日本に神
様が寄こしてくださった贈り物だと思っています。
「長い時の流れの中で、私たちの生きる時間はほんの一
瞬です。その一瞬のときをあなたと共有できた、奇跡とも
いうべき幸運に感謝します。」オグリキャップ、あなたのい
ない日々にいつか慣れるのでしょうか…
N.Y
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