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AutoCADのカスタマイズ機能を活用し、 駅・車両基地構内

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AutoCADのカスタマイズ機能を活用し、 駅・車両基地構内
財団法人 鉄道総合技術研究所
財団法人 鉄道総合技術研究所
AutoCAD API
AutoCAD API
によるカスタマイズ事例
によるカスタマイズ事例
JR九州の全域にSuparcを導入後、
他の鉄道事業者への普及を目指す
株式会社 ニューメディア総研
ソリューション事業本部
開発第3部 部長
蔵元 勝浩 氏
熟練者のノウハウを活かして
構内作業計画のチェックを自動化
S u p a r cは、現 在 、モデル 駅においてテスト運 用が続けられてい
る 。テ スト 段 階 に 限 定 さ れ た 見 解 で は あ るが 、鉄 道 総 研 で は 、
Suparcの導入効果について下記のポイントを指摘している。
まず、列車ダイヤ(運転時刻や番線データなど)と車両運用データ
から手作業で転記していた作業が大幅に軽減され、瞬時にデータ
取得ができるようになった。
次に、作業計画の段階で、従来は用紙に書いたり消したりを繰り返
してい た が 、P C 画 面 上 で 容 易に作 業を 行 えるようになった 。ま
た、熟練者のノウハウをシステムに反映することにより、計画内容
のチェックを行うと、物理的なエラーなどをウインドウに表示する
など、誰が作 業しても基 本 的なミスを 避けることができるように
なった 。さらに、従 来は手 描きで作 成していた 構 内 作 業ダイヤ 図
をAutoCADを用いてすぐに出力できるようになったため、作成
時間を大幅に短縮することができ、また非常に見やすいダイヤ図
が作成できるようになった。
「 Suparcでは、Javaアプリケーションにより構内作業計画を立
て、最終的な調整と印刷出力をカスタマイズされたAutoCAD上
で行っています。Javaアプリケーションでは、簡略化された表現
を 採 用し、詳 細な 情 報はクリックすると表 示される、というように
なっています。AutoCADによる描画には、文 字 の 重なりや 移動
といった調整後の完全な情報が盛り込まれます。車両形式などの
細かいデータは、最終の印刷出力で初めて表示されるように工夫
されています。
つまり、Suparcでは、簡略化された作業計画画面のレベルと、最
終 のプロッタ出 力 で 表 現される情 報 のレベ ルを 区 別 することに
よって、作業効率の向上を実現しているのです」と、ニューメディア
総 研 ソリューション事 業 本 部 開 発 第 3 部 部 長 蔵 元 勝 浩 氏は述
べている。
オートデスク株式会社
www.autodesk.co.jp
〒104 - 6024 東京都中央区晴海1-8-10 晴海アイランド トリトンスクエア オフィスタワーX 24F
〒532 -0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪MTビル2号館3F
TEL : 03- 5992- 7878(オートデスク インフォメーション センター)
ニューメディア総 研では、A u t o C A D のカスタマイズによるシス
テム開発の経緯について、以下のように振り返っている。
「 A u t o C A D そ の も のに関して 熟 達 する必 要 があったことに加
え、カスタマイズに関しては、Webで徹底的に検索を掛けるなど、
情報収集に努めました。
また 、各 駅 毎にダイヤ 図 の 作 成 方 法に違いがあり、さまざまな 描
画 ル ー ルに対 応する必 要がありましたが、外 部 パラメータによっ
て、カスタムオブジェクトの振る舞いを変更することで実現しまし
た。オブジェクト指向 のC++を使用していたために、柔軟な対応
が 可 能になったと思 います 。カスタム オブジェクト定 義 以 外に、
VBAを使って描画を行っている部分もあるために、調整に苦労し
た点もありました」
(ソリューション事業本部 森田潤氏)
組織概要
財団法人 鉄道総合技術研究所は、日本国有鉄
道の分割・民営化に先立って、1986年に設立。
1987年より、旧国鉄の研究・開発部門を継承
する法人として本格的な事業活動を開始した。
車両、土木、電気、情報、材料、環境、人間科学な
ど、鉄道技術に関する基礎から応用までのあら
ゆる分野を対象に技術革新に取り組んでいる。
http://www.rtri.or.jp/index_J.html
システム概要
● AutoCADおよびAPIを利用したカスタマイ
ズにより、駅・車両基地構内作業計画作成支援
システムを構築
導入製品
AutoCAD 2006
株式会社 ニューメディア総研
ソリューション事業本部
森田 潤 氏
鉄道総研では、Suparc の今後 の 課題、計画について次 のように
考えている。現在は、モデル駅でテストを行っているが、駅によっ
て構 内 作 業 計 画に関わる事 情が異なる。他 の 駅 へ の 導 入に際し
ては、番線数や 構内設備をはじめ、駅ごとに異なるル ー ルを円滑
にシステムに反映させる必要がある。
ダイヤ改正は基本的に年に1回だが、印刷出力によるダイヤ図用
紙は、各駅で毎日必要になる。なぜなら、日ごとに微妙な修正、ダ
イヤ の 変 更などが生じるからである。この た めにも、日々 の 作 業
のベースとなる印刷出力の品質が重要になる。
「モデル駅でのテスト運用を経て、JR九州の管内全駅にSuparc
を 導 入してもらうことが第 二 段 階です。さらに、他 の 鉄 道 事 業 者
に対しても、S u p a r cを 採 用してい ただけるように提 案していき
たいと考えています。JR九州 の場合と同様に、鉄道事業者ごと、
駅・車 両 基 地ごとに特 殊 性があると思いますが、柔 軟に取り組 ん
でいけるものと期待しています」
(福村氏)
※Autodesk、AutoCADは、米国Autodesk, Inc.の米国およびその他の国における商標または登録商標です。
その他記載の会社名、ブランド名および商品名は各社の商標または登録商標です。
※記載事項は、予告なく変更することがございます。予めご了承ください。
© 2007 Autodesk, Inc. All rights reserved.
PTD031-0701(B)
AutoCADのカスタマイズ機能を活用し、
駅・車両基地構内作業計画作成支援システムを構築
駅構内ダイヤ図の調整・帳票印刷を強力にサポート
財団法人 鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)は、鉄道技術に関する基礎から応用
までのあらゆる分野を対象に技術革新を進めている。最近では、山梨リニア実験線の
走行試験、燃料電池による電車の試験走行など、先端的な研究・開発に積極的に取り組
んでいる。鉄道の駅・車両基地では、車両清掃・検査・給水・貨物の積み卸しなどを行っ
●
ており、車両の入換時刻、番線での滞留時間などを精密に管理するために、駅構内ダイ
利用したオートデスクAPI
● ObjectARX
● ActiveX オートメーション
(COM)
ヤ図を作成する必要がある。この業務は、従来、列車ダイヤからの運転時刻・番線デー
パートナー
● 株式会社ニューメディア総研
http://www.nms-jg.co.jp/
システム導入のメリット
● 運転時刻・番線データおよび車両運用データ
を、以前は手描きで構内作業ダイヤ図の用紙
に転記していたが、導入後は、データとして駅
構内システムに瞬時に取り込むことが可能
● AutoCADのカスタマイズにより、
構内ダイヤ
図のデータ入力後に、文字や記号類の調整・ダ
イヤ図の帳票印刷をすることができ、手描きで
の清書作業を廃止
● AutoCADの利用により、
誰が作業しても構内
ダイヤ図の品質が一定になり、見やすさも向上
タと、車両運用データを手作業で構内ダイヤ図に転記し、さらに調整と清書を手描きで
行っていた。鉄道総研は、Suparc(駅・車両基地構内作業計画作成支援システム)を
構築し、構内ダイヤ図の出力までの業務をほぼ100%システム化することに成功した。
AutoCADのカスタマイズにより、複雑な構内ダイヤ図の調整・出力を実現
鉄道総研は、1998年より駅・車両基地の構内作業計画のシステム化に着手していた。これは、
鉄道の駅・車両基地の構内作業計画作成業務および鉄道事業者の本社・支社における構内作
業ダイヤ検討業務の負荷を軽減し、作業効率の向上を図ることを目的としたものである。
鉄道総研のパートナー、株式会社ニューメディア総研(以下、ニューメディア総研)では、システ
ム化に関してプラットフォームの選定調査を行っていた。調査の中では、当初からカスタマイズ
APIを持つCADソフトウェアとして、AutoCADの存在が浮上していた。2000年、プロトタイ
プを完成させたが、この段階では、PC上でJavaアプリケーションにより構内作業計画を作成
し、長尺サイズとなるダイヤ図を印刷出力する目的で、DXFファイルを作成し、AutoCAD LT
上で開いて、描画を行うというものであった。
2 0 0 0 年 のプロトタイプ発 表 後、実 際に使 用する際 の 問 題 点を 抽 出するた め、鉄道事業者か
らの意見、評価を収集し、その後、実用化システムの開発に着手した。システム開発は、2005
年から2006年3月にかけて進められたが、文字量も多く、複雑なダイヤ図を作成できるプラッ
トフォー ム とし て 、描 画 や 印 刷 な ど の 基 本 機 能 に 加 え 、優 れ た カ ス タ マ イズ 機 能 を 持 つ
AutoCADが選択された。特に、独自の図形を定義して振る舞いに拘束を与えることができる、
ObjectARXのカスタム オブジェクト作成機能を中心に、効果的にシステム要件を満たすこと
ができた。また、AutoCADの持つ、数種のAPIを組み合わせて使用することで、構内ダイヤに
さまざまな付加情報を追加するなど、論理ロジックと描画ロジックを分離することもできた。
財団法人 鉄道総合技術研究所
輸送情報技術研究部 運転システム
研究室長
福村 直登 氏
JR九州においてテスト運用を開始、
2007年度より順次拡大予定
列車ダイヤはほぼ毎年改正されているが、それに伴って各駅・車両
基地では、構内作業ダイヤを従来は手作業で作成していた。これは
各駅の熟練者が、構内の各番線を縦軸に、時刻を横軸に取り、まず
列車ダイヤと車両運用データを用紙に転記していくが、この作業
だけで2∼3日を要していた。
ダイヤ改正は年1回だが、改正前の約半年前から構内作業ダイヤ
案の作成を始める。本社では各駅からの要望をもとに列車ダイヤ
を修正し、列車ダイヤが確定した後、再度、数日かけて構内作業ダ
イヤ図を手描きで清書していた。
ダイヤ図の作成は、さまざまな情報を統合して評価しながら行なう作
業で、もともとシステム化が難しいと言われていた。鉄道総研では、
ダイヤ図を効率的に作成するためのアルゴリズムを研究していた経
緯があり、今回の構内作業ダイヤ図作成システムにも導入している。
システム導入後は、以下のような流れにより、構内作業ダイヤを作
成・出力することができるようになった。まず、列車ダイヤは、列車
ダイヤ作成システムから、列車運転日、列車番号、着発時刻、番線
などのデータを 取 得 。また 、車 両 運 用 作 成システムからは、仕 業
施 行日、仕 業 番 号 、列 車 番 号 、運 用 開 始・終 了 駅 などの 車 両 運 用
データを 取 得する。これらのデータは、システム上で瞬 時に取 得
することができるようになった。
次に、各駅では、駅構内システム(Javaアプリケーション)を利用
して、構内作業計画をPC画面上で作成する。熟練者 の退職が予
想されるいわゆる“ 2 0 0 7 年 問 題 ”にも対 応し、非 熟 練 者でも作
業計画を自動的にチェックできることが大きな特長だ。そして作
成した作業計画データはAutoCADに送られ、AutoCAD上で構
内 作 業ダイヤ 図 の 図 面データに変 換される。これにより、ダイヤ
図を随時印刷出力することが可能になった。
輸送情報技術研究部 運転システム 研究室長 福村直登氏は「 本
システム はJ R 九 州に採 用され 、2 0 0 6 年に納 品し、現 在テスト
運用を行っていますが、2007年度より準備が整った駅から順次
使用を開始する予定です」と語っている。
ア総 研では、各 A P I のサンプルを 入 手し、試 行 錯 誤を 重ね た 。そ
の結果、AutoLISPのスキルを高めるには、時間も人材も不足で
あると判 断 。C + +を 使 用した 開 発 業 務 が 一 般 的 で あった た め 、
A P I には C + + 言 語 を 使 用 するO b j e c t A R X を 選 択 することが
決定された。
また、AutoLISPやVBAよりも、ObjectARXによるカスタマイ
ズ の 方 が 処 理 ス ピ ード が 高 速 で あ ろ う と 思 わ れ た こ と 、
●駅構内作業計画作成画面
ObjectARXにしかないカスタムオブジェクトの作成機能により、
編集範囲を拘束したり、構内ダイヤに付加情報を追加したりする
ことが可能であることも選択の理由になった。
「 S u p a r c の 構 内 作 業ダイヤ 図は、文 字 情 報が多く、文 字 の 重 複
を 調 整 するなどの 細かい 調 整が必 要です。A u t o C A Dを 選 択し
た理由として、印刷が手描きのダイヤ図よりも視認性が高く、理解
しや すいことが挙げられますが、これを 実 現することができた の
はAPIを使ったAutoCADの細かい制御が可能だったからです」と、
輸送情報技術研究部 運転システム 副主任研究員 平早水智之氏は
述べている。
財団法人 鉄道総合技術研究所
輸送情報技術研究部 運転システム
副主任研究員
平早水 智之 氏
ObjectARXのカスタムオブジェクトにより、
フレキシブルに構内ダイヤに情報を追加することが可能
ニューメディア総研では、ダイヤ図作図用のプラットフォーム選定
に当たって、当初からAutoCADを念頭に置いていた。1998年
当時、描画機能の高いCADとしてAutoCADを知り、AutoLISP
などのAPIの存在も認識していた。駅構内ダイヤ図以外の関連帳
票 の 作 成 に 対 応 す る た め に は 、カ ス タ マ イズ 機 能 の 優 れ た
AutoCAD以外には考えられなかったということだ。
2005年からのSuparcの開発に際しては、AutoCADのカスタ
マイズを行うためのAPIの選択がポイントになった。ニューメディ
●構内ダイヤ図のAutoCADによる自動描画と調整
(参考)Sparc導入前の手書きによるダイヤ図
【拡大図】調整前
AutoCAD画面
AutoCADで出力したダイヤ図
列車番号の
位置を調整
●列車運転日、列車番号、着発時刻、
番線などのデータを取得
●構内作業計画および
計画内容のチェック
●仕業施行日、仕業番号、列車番号、
運用開始・終了駅などの車両運用
データを取得
●作業計画データから構内ダイヤ
の図面を作成、ユーザが文字の
重複を調整
【拡大図】調整後
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