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第2章 流域及び河川の自然環境

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第2章 流域及び河川の自然環境
第2章
2-1
流域及び河川の自然環境
流域の自然環境
(1)
自然環境の概要
大 井 川 は そ の 水 源 を 赤 石 山 脈( 南 ア ル プ ス )の 間 ノ 岳( 標 高 3,189m)、赤 石 岳( 標
高 3,120m)等 の 日 本 の 屋 根 と も い わ れ る 3,000m 級 の 山 々 に 発 し て い る 。流 域 の 地 形
は大部分が山地で、山地から開けた扇状地がそのまま駿河湾に達している。
大井川流域の植生は、南アルプスの高山植物から、低地にかけてのツガ、ブナ、シ
イ、カシと標高の変化につれて多様な植生を形成している。
土地利用は、上流の山地部では、山林がほとんどを占め、河岸段丘や日当たりのよ
い斜面に集落がみられ、茶畑等に利用されている程度であるが、下流部には牧之原台
地の茶畑が広がるとともに、市街地や製紙工場をはじめ多くの工場が立地している。
大井川流域は、起伏の著しい山地と流水による激しい侵食から渓谷が形成され、接
阻峡や寸又峡といった峡谷景観を作り出している上流域、隆起作用と下刻作用により
「 鵜 山 の 七 曲 り 」に 代 表 さ れ る 穿 入 蛇 行 が 発 達 し 、河 岸 段 丘 が 形 成 さ れ て い る 中 流 域 、
扇状地地形の平野部の下流域に区分される。
[上 流 域 ]
周 辺 は 標 高 1,000m∼ 3,000m 以 上 の 急 峻 な 山 地 で 、ア カ シ デ・イ ヌ シ デ 群 落 、イ ヌ
ブ ナ 群 集 、ス ギ・ヒ ノ キ 植 林 等 が 分 布 す る 。河 川 は 深 い V 字 谷 を 蛇 行 し な が ら 流 下 す
る。大井川ダムより上流の渓流景観が形成される区間を上流域とする。
[中 流 域 ]
周 辺 は 標 高 500m∼ 1 ,000m の 山 地 で 、 ス ギ ・ ヒ ノ キ 植 林 等 や コ ナ ラ 群 落 が 分 布 す
る 。 河 川 は 穿 入 蛇 行 を 繰 り 返 し 、「 鵜 山 の 七 曲 り 」 と 呼 ば れ る 独 特 の 景 観 を 形 成 し て
おり、河岸段丘も形成されている。扇状地の扇頂付近から上流の大井川ダムまでの区
間を中流域とする。
[下 流 域 ]
周 辺 は 標 高 500m 以 下 で 、 周 辺 に は 市 街 地 や 農 地 が 広 が る 扇 状 地 の 区 域 。 河 道 は 複
列砂州の河道で、網状の流路となり、広い砂礫の河原が形成されている。扇状地の扇
頂付近から河口部までを下流域とする。
8
上流域
ニホンカモシカ
(特 別 天 然 記 念 物( 国 指 定 ))
【大井川上流域】
大井川源流部
自然環境保全地域
中流域
ツマグロキチョウ
〈 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類( 環 境 省 )〉
大井川ダム
【鵜山の七曲り】
下流域
日 本 の 重 要 湿 地 500
「大井川中流域」
鵜山の七曲り
コアジサシ
〈 絶 滅 危 惧 IB 類 ( 静 岡 県 )〉
〈 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類 ( 環 境 省 )〉
【谷口橋下流の砂礫河原】
25km 付 近
図
大井川流域の特徴ある自然環境
大井川河口野鳥園
図 2-1
大井川流域の特徴ある自然環境
9
【大井川河口部】
シラビソ−オオシラビソ群 集
等 の自 然 植 生
スギ・ヒノキ植 林
市 街 地 ・農 地
図 2-2
大井川流域の植生分布
10
2-2
河川およびその周辺の自然環境
(1)
上流域の自然環境
大 井 川 の 上 流 域 は 、1,000m∼ 3,000m の 南 ア ル プ ス の 急 峻 な 山 地 を 、深 い V 字 谷 を
刻みながら、流下する山付きの渓谷美に富む渓流環境が形成されている。
周辺の山地には、落葉広葉樹林等の広大な
山林が広がり、国指定の特別天然記念物であ
るニホンカモシカをはじめとし、ツキノワグ
マ、ホンドキツネ、ニホンザルなどの哺乳類
が生息している。
ニホンカモシカ
ツキノワグマ
急峻な山地に V 字谷を刻み、蛇行
しながら流下する大井川
源 流 域 か ら 上 流 域 の 河 川 に は 、魚 類 で は 、夏 で も 水 温 が 15℃ 以 下 の 清 流 の 淵 に 生 息
するヤマトイワナや渓流に生息するアマゴの他ウグイがみられる。
鳥類では、ヤマセミ、カワガラス等の渓流性の鳥類が生息する。また、ダムの湛水
区域では、オシドリ等がみられる。
原 生 自 然 環 境 保 全 地 域 と し て 、「 大 井 川 源 流 部 自 然 環 境 保 全 地 域 」 が 本 州 で 唯 一 指
定され、分布の南限であるライチョウが生息する。
支川の源流部にはヒダサンショウウオやアカイシサンショウウオ等の両生類が生
息する。
カワガラス
ライチョウ
支 川 を 合 わ せ 、蛇 行 し な が ら 流
下する大井川
ヒダサンショウウオ
瀬 や 淵 を 形 成 し な が ら 、深 い 谷 を 流
下する
アカイシサンショウウオ
11
(2)
中流域の自然環境
中 流 域 は 、山 間 地 の 渓 谷 を 、穿 入 蛇 行 を 繰 り 返 し 、瀬 や 淵 、
礫 の 河 原 を 形 成 し な が ら 、流 下 す る 河 川 環 境 を 形 成 し て い る 。
河川周辺には山地が広がり、ニホンザル、ホンドタヌキ、
ホンドキツネ等の哺乳類が生息する。
鵜山の七曲り
ホンドキツネ
ニホンザル
河川は山間を蛇行しながら流下し、瀬や淵が形成されており、アマゴやウグイ、ア
ユ等が生息している。
アユ
ウグイ
礫の河原が形成されており、セグロセキレイ、キセキレイ等がみられる。また、カワ
ラケツメイ、カワラハハコ等の植物やツマグロキチョウ、コムラサキ、カワラバッタ等
河 原 を 代 表 す る 昆 虫 が 生 息 す る 大 井 川 中 流 域 の 河 原 は 環 境 省 の 「 日 本 の 重 要 湿 地 500」
に選定されている。
セグロセキレイ
礫の河原(塩郷堰堤下流)
キセキレイ
ツマグロキチョウ
12
(3)
下流域の自然環境
下流域は、扇状地区間で、複列砂州の
網状の流路となり、広い砂礫の河原を形
成する河川環境を形成している。
河川周辺は市街化が進み、住宅地や工
場等が広がっている。
河川は、広い砂礫の河原が広がり、コ
ゴメヤナギやアキグミ等からなる河畔
林がみられ、カワラケツメイ、カワラハ
ハコ、カワラヨモギ等の砂礫河原に生育
する植物が広く生育している。
砂 礫 河 原 が 広 が る ( 6∼ 8km 付 近 )
コゴメヤナギ
砂礫の河原に繁茂する河畔林
砂礫河原に続く水辺にはコサギやアオサギ等のサギ類、イカルチドリやコチドリ等
の チ ド リ 類 、セ グ ロ セ キ レ イ 等 が み ら れ 、コ ア ジ サ シ が 中 州 で 集 団 繁 殖 を 行 っ て い る 。
コアジサシ
イカルチドリ
カワラバッタやカワラスズ等の砂礫地に特有の昆虫類が生息する。また、カワラケ
ツメイを食草とするツマグロキチョウも生息する。
カワラバッタ
カワラケツメイ
13
ワンドやたまりにはトノサマガエルやカジカガエルが生息している。
トノサマガエル
河原のたまり
大井川河口部は、鳥類や魚類等の重要
な 生 息 場 と な っ て お り 、「 ま も り た い 静
岡県の野生生物
県版レッドデータブ
ッ ク 2004」( 平 成 16 年 3 月
企画・静
岡県環境森林部自然保護室)では、 今
守りたい大切な自然
に選定されてい
る。
河口部には砂州が形成されており、春
にはコアジサシやアジサシ、シロチドリ
やコチドリ、ハマシギ、キアシシギ等の
シ ギ 類 、ア オ ア サ ギ 、コ サ ギ 等 の サ ギ 類 、
冬にはカルガモ、コガモ、オナガガモ等
大井川河口部
のカモ類等の他、ミサゴ、オオタカ等も
みられる。
コチドリ
河口部の中州
コガモ
河口部はアユ等回遊魚やボラ等周辺性魚類の移動路となっている。河口付近から
5km ま で の 瀬 が ア ユ や ア ユ カ ケ の 産 卵 場 と な っ て い る 。
アユカケ
14
(4)
大井川における重要種
河川水辺の国勢調査の生物調査結果をもとに、直轄区間における学術上または希少
性 の 観 点 か ら 選 定 し た 重 要 種 を 以 下 に 示 す 。 選 定 に あ た っ て は 、「 文 化 財 保 護 法 」「 文
化 財 保 護 条 例 」、「 絶 滅 の お そ れ の あ る 野 生 動 植 物 の 種 の 保 全 に 関 す る 法 律 」 等 の 法 律
や条令で定められた種および環境省のレッドデータブック、静岡県版のレッドデータ
ブック等の掲載種とした。
重要種選定基準
・ 「 文 化 財 保 護 法 」「 文 化 財 保 護 条 例 」 に お け る 国 、都 道 府 県 、市 町 村 指 定 天 然 記 念
物
・「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」国内希少野生動植物
・「日本の絶滅のおそれのある野生生物
レッドデータブック」掲載種
・ ( 汽 水 ・ 淡 水 魚 類 H15、 植 物 Ⅰ ( 維 管 束 植 物 ) H13、 鳥 類 H14、 両 生 類 ・ 爬 虫 類
H12、 哺 乳 類 H14)
・「環境庁報道発表資料
レッドリスト」無脊椎動物
・「まもりたい静岡県の野生生物
掲載種
県 版 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク 2004」
( 植 物 編・動 物 編 )
H16
掲載種
【大井川で確認された魚類の重要種一覧表】
科
名
種
名
指定区分
確認場所
ウナギ科
オオウナギ
静 岡 県 版 RDB 要 注 目 種 N-Ⅲ
大井川下流部
コイ科
タモロコ
静 岡 県 版 RDB 要 注 目 種 N-Ⅲ
大井川下流部
アカザ科
アカザ
全 国 版 RDB 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類
静 岡 県 版 RDB 絶 滅 危 惧 Ⅰ B 類
大井川下流部
ヨウジウオ科
テングヨウジ
静 岡 県 版 RDB 要 注 目 種 N-Ⅲ
大井川下流部
カジカ科
アユカケ
静 岡 県 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
大井川下流部
ハゼ科
オカメハゼ
静 岡 県 版 RDB 要 注 目 種 N-Ⅲ
大井川下流部
ハゼ科
ヒナハゼ
静 岡 県 版 RDB 要 注 目 種 N-Ⅲ
大井川下流部
ハゼ科
カワヨシノボリ
静 岡 県 版 RDB 要 注 目 種 N-Ⅱ
大井川下流部
指定区分
全 国 版 RDB
:「 日 本 の 絶 滅 の お そ れ の あ る 野 生 生 物 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク 」
汽 水 ・ 淡 水 魚 類 H15
静 岡 県 版 RDB :「 ま も り た い 静 岡 県 の 野 生 生 物 県 版 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク 2004」
動 物 編 H16
【大井川で確認された底生動物の重要種一覧表】
科
名
種
名
指定区分
確認場所
モノアラガイ科
モノアラガイ
全 国 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
静 岡 県 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
大井川下流部
サナエトンボ科
ホンサナエ
静 岡 県 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
大井川下流部
指定区分
全 国 版 RL
:「 環 境 庁 報 道 発 表 資 料 レ ッ ド リ ス ト 」
静 岡 県 版 RDB :「 ま も り た い 静 岡 県 の 野 生 生 物 県 版 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク 2004」
動 物 編 H16
15
【大井川で確認された植物の重要種一覧表】
科
名
種
名
指定区分
確認場所
ユキノシタ科
タコノアシ
全 国 版 RDB 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類
静 岡 県 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
大井川下流部
アカバナ科
ウスゲチョウジタデ
全 国 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
静 岡 県 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
大井川下流部
ゴマノハグサ科 カワヂシャ
全 国 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
大井川下流部
シソ科
ミゾコウジュ
全 国 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
静 岡 県 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
大井川下流部
キク科
カワラニガナ
全 国 版 RDB 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類
静 岡 県 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
大井川下流部
ヒルムシロ科
センニンモ
静 岡 県 版 RDB 要 注 目 種 N-Ⅰ 大 井 川 下 流 部
バラ科
ビロードイチゴ
静 岡 県 版 RDB 要 注 目 種 N-Ⅱ 大 井 川 下 流 部
指定区分
全 国 版 RDB
:日本の絶滅のおそれのある野生生物 レッドデータブック」植物Ⅰ
( 維 管 束 植 物 ) H13
静 岡 県 版 RDB :「 ま も り た い 静 岡 県 の 野 生 生 物 県 版 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク 2004」
植 物 編 H16
【大井川で確認された鳥類の重要種一覧表】
科
名
種
名
指定区分
確認場所
サギ科
チュウサギ
全 国 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
大井川下流部
タカ科
ミサゴ
全 国 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
静 岡 県 版 RDB 要 注 目 種 N-Ⅲ
大井川下流部
タカ科
オオタカ
種の保存法希少野生動物
全 国 版 RDB 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類
静 岡 県 版 RDB 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類
大井川下流部
タカ科
チュウヒ
全 国 版 RDB 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類
大井川下流部
ハヤブサ科
ハヤブサ
静 岡 県 版 RDB 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類
大井川下流部
ハヤブサ科
コチョウゲンボウ
静 岡 県 版 RDB 要 注 目 種 N-Ⅲ
大井川下流部
チドリ科
イカルチドリ
静 岡 県 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
大井川下流部
チドリ科
シロチドリ
静 岡 県 版 RDB 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類
大井川下流部
カモメ科
コアジサシ
全 国 版 RDB 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類
大井川下流部
静 岡 県 版 RDB 絶 滅 危 惧 Ⅰ B 類
ツバメ科
コシアカツバメ
静 岡 県 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
大井川下流部
サンショウクイ サンショウクイ
科
全 国 版 RDB 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類
大井川下流部
静 岡 県 版 RDB 絶 滅 危 惧 Ⅰ B 類
ホオジロ科
静 岡 県 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
ミヤマホジロ
大井川下流部
指定区分
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」国内希少野生動植物
全 国 版 RDB : 日 本 の 絶 滅 の お そ れ の あ る 野 生 生 物 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク 」
鳥 類 H14
静 岡 県 版 RDB :「 ま も り た い 静 岡 県 の 野 生 生 物 県 版 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク 2004」
動 物 編 H16
16
【大井川で確認された両生類の重要種一覧表】
科
名
種
名
指定区分
確認場所
ヒキガエル科
アズマヒキガエル
静 岡 県 版 RDB 要 注 目 種 N-Ⅲ
大井川下流部
アカガエル科
ニホンアカガエル
静 岡 県 版 RDB 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類
大井川下流部
アカガエル科
トノサマガエル
静 岡 県 版 RDB 要 注 目 種 N-Ⅲ
大井川下流部
アオガエル科
カジカガエル
静 岡 県 版 RDB 準 絶 滅 危 惧
大井川下流部
指定区分
静 岡 県 版 RDB :「 ま も り た い 静 岡 県 の 野 生 生 物
動 物 編 H16
県 版 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク 2004」
【大井川で確認された陸上昆虫類の重要種一覧表】
科
名
種
名
指定区分
確認場所
ツチカメムシ目
シロヘリツチカメムシ
全 国 版 RL 準 絶 滅
大井川下流部
シロチョウ科
ツマグロキチョウ
全 国 版 RL 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類
大井川下流部
コガネムシ科
ヒゲコガネ
岡 県 版 RDB 情 報 不 足 ( DD) 大 井 川 下 流 部
タテハチョウ科
コムラサキ
静 岡 県 版 RDB 要 注 目 種 N-Ⅱ 大 井 川 下 流 部
指定区分
全 国 版 RL
:「 環 境 庁 報 道 発 表 資 料 レ ッ ド リ ス ト 」
静 岡 県 版 RDB :「 ま も り た い 静 岡 県 の 野 生 生 物 県 版 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク 2004」
動 物 編 H16
なお、は虫類及び哺乳類では重要種は確認されていない。
17
2-3
特徴的な河川景観や文化財等
大井川上流域は接岨峡や寸又峡に代表されるような深い峡谷や井川湖や畑薙湖に
代表されるようなダム湖が連続している。周辺の山々にはスギやヒノキ等の人工林と
自然林が混在し、南アルプス国立公園や奥大井県立自然公園の一部となっている。
中流部は鵜山の七曲りに代表される穿入蛇行となっていて両岸の河岸段丘は茶畑
がならび、川とお茶の景観が特徴的である。曲流部の高水敷には下流部と同じヤナギ
林があり、ここには森林性の鳥(サンコウチョウ、カラ類)が見られる。
大井川の下流部は広い河川敷いっぱいに発達した砂州と網状に流れる水が特徴あ
る景観となっている。砂州は常に移動するなど不安定であるため植物は生育せず、砂
礫 と 水 の 空 間 と な っ て い る 。し か し 、左 岸 13km、18km、右 岸 14km、20km、24km
付近の高水敷上にはヤナギ林が発達し、水辺の鳥(サギ類)や森林性の鳥(カラ類)
を見ることができ、又、河口付近では多数の鳥類を観察することができる。
また、大井川は、かつての駿河、遠江の国境であり、また江戸時代には東海道の難
所であったため川越制度がしかれ、独自の文化を形成してきた。そのため流域には貴
重な史跡や独自の文化が現在まで伝承されてきた。このようなことから、大井川流域
に は 多 く の 文 化 財 が 存 在 し 、こ の う ち 国 、県 指 定 の 史 跡・名 勝・天 然 記 念 物 は 14 件 、
文 化 財 は 34 件 が 存 在 す る 。
(史跡・名勝・天然記念物)
番号
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
指定別
国指定
国指定
国指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
種別
史跡
天然記念物
史跡
史跡
天然記念物
天然記念物
天然記念物
天然記念物
天然記念物
天然記念物
天然記念物
天然記念物
天然記念物
天然記念物
名称
所在地
諏訪原城跡
智満寺の十本杉
島田宿大井川川越遺跡
旧東海道菊川坂石畳
安田の大シイ
慶寿寺シダレザクラ
香橘寺の大ナンテン
上相賀の大カヤ
杉沢の大カヤ
大井川鵜山の七曲りと朝日段
浅間神社の鳥居スギ
津島神社の五本スギ
二軒家の大カヤ
竜門の滝(横臥褶曲)
島田市菊川
島田市千葉 (智満寺)
島田市河原
島田氏菊川
島田市大城安田
島田市大草
島田市阿知ヶ谷
島田市上相賀
島田市本杉沢
川根町葛篭
川根本町徳山
川根本町田野口
島田市二軒家
島田市神尾
指定年月日
S50.11.25
S37.6.29
S41.8.1
H13.11.26
S.33.10.30
S.31.1.7
S33.4.15
S.32.12.25
S.32.12.25
H.9.11.28
S.46.8.3
S.46.8.3
S32.5.13
S.54.3.15
(文化財)
番号
1
2
3
4
5
6
7
8
9
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11
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24
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26
27
28
29
30
31
32
33
34
指定別
国指定
国指定
国指定
国指定
国指定
国指定
国指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
県指定
種別
名称
所在地
無形文化財
絵画
彫刻
重要文化財
建造物
彫刻
重要無形民俗文化財
建造物
絵画
彫刻
工芸
工芸
無形民俗文化財
書籍
建造物
建造物
建造物
建造物
建造物
無形文化財
建造物
建造物
建造物
無形民俗文化財
無形民俗文化財
文化財
有形文化財(工芸)
有形文化財(工芸)
有形文化財(工芸)
有形文化財(工芸)
文化財
無形民俗文化財
無形民俗文化財
無形文化財
藤守の田遊び
絹本著色釈迦十六善神像
阿弥陀如来及諸尊像刻出龕
千葉山智満寺
智満寺本堂附本尊千手観音厨子
本尊木造千手観音立像
徳山の盆踊
医王寺薬師堂
医王寺薬師堂天井画
鵜田寺木造薬師如来坐像
鵜田寺鰐口
白山神社鰐口
猿舞
紙本墨書称讃浄土経
智満寺元三大師厨子
智満寺仁王門
智満寺中門
智満寺薬師堂
智満寺薬師如来厨子
手揉製茶技術
静居寺伽藍含6棟
静居寺惣門
天徳寺山門
島田鹿島踊(帯祭り)
島田帯祭の大名行列
大般若経六百巻
わに口
わに口
わに口
わに口
鳥居スギ(徳山浅間神社)
田代神楽
徳山神楽
梅津神楽
大井川町藤守
島田市大草 (慶寿寺)
島田市千葉 (智満寺)
島田市千葉 (智満寺)
島田市千葉 (智満寺)
島田市千葉 (智満寺)
川根本町徳山
島田市古横町
島田市古横町
島田市野田
島田市野田
島田市大城
島田市東光寺
島田市千葉
島田市千葉
島田市千葉
島田市千葉
島田市千葉
島田市千葉
島田市伊太
島田市旗指
島田市旗指
島田市大草
島田市大井町
島田市大井町
川根町家山
川根本町千頭
川根本町千頭
川根本町青部
川根本町東藤川
川根本町徳山
川根本町田代
川根本町徳山
川根本町梅地
18
指定年月日
S.52.5.17
S.25.8.29
S.25.8.29
S.25.8.29
S.41.6.11
S.25.8.29
S.62.12.28
S.60.10.5
S.58.2.25
S.33.4.15
S.31.10.17
S.31.10.17
S.52.12.20
S.37.2.17
S.31.1.17
S.31.1.17
S.31.1.17
S.31.1.17
S.31.1.17
H.2.10.26
H.11.11.16
H.8.3.12
S.31.5.24
S.32.5.13
H.8.3.12
S.33.9.2
S.31.10.17
S.31.10.17
S.50.3.25
S.50.3.25
S.46.8.3
S.60.3
H.8.3.12
S.47.3.24
静岡市
静岡市
川根本町
27
28
川根本町
7
34
長島ダム
長島ダム
32 30
31
29 33
11
12
川根町
10
川根町
岡部町
岡部町
26
9
14
掛川市
8
藤枝市
2
6
島田市
7
14 3
5 13
菊川市
牧之原市
焼津市
大井川町
0
5 km
吉田町
掛川市
3∼ 6 14∼ 19
藤枝市
23
2
2122
20
島田市
10 11
13
24 25
89
12
菊川市
史跡・名勝・天然記念物位置図
牧之原市
大井川町
吉田町
文化財位置図
19
焼津市
1
0
5 km
z 南アルプス国立公園
本州中部を南北に走る赤石山脈を中心としたわが
国 屈 指 の 山 岳 国 立 公 園 で 、総 面 積 は 35,752ha で あ る 。
南 ア ル プ ス と 呼 ば れ て い る 地 域 は 、一 般 的 に は 長 野 県
諏 訪 湖 付 近 を 頂 点 と し て 、東 は 富 士 川 、西 は 天 竜 川 に
挟 ま れ た 三 角 形 状 の 東 西 最 大 40km、南 北 120km に 及
ぶ 広 大 な 山 岳 地 帯 の う ち 、身 延 山 地・伊 那 山 地 を 除 い
た主要部を指定している。
南アルプス
z 奥大井県立自然公園
総 面 積 8,531ha で 、 大 井 川 と 安 倍 川 の 上 流 に あ り 、
雄 大 な 展 望 の き く 山 々 と 美 し い 渓 谷 、原 始 林 、豊 富 な
高山植物、野生生物、温泉に恵まれた公園である。
奥大井県立自然公園
はたなぎ
z 井川湖・畑薙湖など
大 井 川 上 流 域 に は 、ダ ム 湖 が 連 続 し て お り 、井 川 ダ
ム の 井 川 湖 、畑 薙 第 一 ダ ム の 畑 薙 湖 が 広 い 水 面 を 湛 え
て い る 。 な お 、 水 力 発 電 所 は 、 大 井 川 水 系 に 15 ヶ 所
( 681,270kW)あ り 、世 界 で 最 も 高 い 中 空 重 力 式 ダ ム
の畑薙第一ダムがある。
井川ダム
z 接岨峡
井 川 ダ ム か ら 下 流 10km に わ た っ て 続 く 大 井 川 本 流
の渓谷で、両側から谷が迫り、うっそうとした原生林
が深山の趣を感じさせる。
接岨峡
z 寸又峡
大 井 川 支 流 寸 又 川 の 渓 谷 で 、谷 は 深 く 、両 岸 の 岩 壁
か ら 大 小 の 滝 が 落 ち 込 み 、山 肌 は モ ミ や ツ ガ 、ス ギ な
どの森に包まれている。
寸又峡
20
z 鵜山の七曲り
大 井 川 は 川 根 町 家 山 付 近 で 約 4 km に わ た り 大 き く
蛇 行 す る 。こ の 蛇 行 は し わ の よ う に 隆 起 し た 地 層 に 川
が 流 れ 込 ん で で き た も の で 、全 国 的 に も 大 変 珍 し く 県
の天然記念物に指定されている。
鵜山の七曲り
z 朝日段公園
川 根 町 倉 平 地 内 の 標 高 670m に あ り 、屈 曲 鵜 山 の 七 曲 り を 見 下 ろ す こ と が で き る 。
ま た 、天 気 の 良 い 日 に は 、遠 く に 南 ア ル プ ス の 山 々 、富 士 山 も 望 む こ と が で き 、望
遠鏡、展望台も整備されている。
の もり
z 野守の池
大井川の蛇行部分が堰き止められてできた周囲約
1.5km の 小 さ な 池 で 、鎌 倉・室 町 期 の 名 僧 夢 窓 国 師 に
ちなんだ伝説が残り、池の名もこれに由来している。
コ イ や ヘ ラ ブ ナ の 釣 り 場 と し て 親 し ま れ 、春 は サ ク ラ
の名所として訪れる人が多い。
野守の池
z 家山の桜トンネル
県下有数の桜の名所として名高い川根町の中でも
最 大 の 見 所 で 、 大 井 川 鐵 道 沿 い に 続 く 約 1km の 道 が
桜 で う め つ く さ れ 、 そ の 脇 を SL が 走 る 風 景 が 楽 し め
る。
家山の桜トンネル
z 吊り橋
大 井 川 中 上 流 部 に は 、数 多 く の 吊 り 橋 が 大 井 川 や 支
川 を 跨 ぐ 。中 で も 塩 郷 の 吊 り 橋 は 長 さ が 220m も あ り 、
大井川にかかる吊り橋では最長である。
塩郷の吊り橋
z 不動の滝
落 差 は 約 45m、1 年 中 水 飛 沫 を 飛 ば し 、周 囲 に 涼 感
を 届 け る 。夏 は 涼 し く 、秋 に は 紅 葉 が 見 事 。古 く か ら
修 験 者 の 修 行 の 場 と し て も 知 ら れ 、最 近 ま で 滝 で 、身
を清める人の姿も見られた。
不動の滝
21
z 茶畑と大井川
大井川周辺の河岸段丘や台地上には列状の茶木が
栽 培 さ れ て お り 、大 井 川 特 有 の 景 観 を 醸 し 出 し て い る 。
茶畑と大井川
z 大井川鐵道
大井川と併走するように島田市新金谷駅から川根
本 町 千 頭 駅 を 結 ぶ 路 線 で SL も 運 行 さ れ て い る 。ま た 、
千 頭 駅 か ら 井 川 駅 ま で の 区 間 に は 、日 本 で 唯 一 ア プ ト
式区間がある。
大井川鐵道
z 釣り
大 井 川 で は 、上 流 部 の 渓 流 か ら 下 流 部 の 河 口 ま で 多
種 の 魚 が 生 息 し 、ア マ ゴ 、 イ ワ ナ 、ア ユ 、 ウ グ イ 、コ
イ、フナ、ウナギなどを釣ることができる。
釣り
ま き の は ら
z 牧之原大茶園
大井川西岸の牧之原台地は茶どころ静岡を代表す
る 大 産 地 で 、5 市 1 町 に ま た が る 6,500ha の 大 茶 園 が
形成されている。
牧之原大茶園
z 牧之原公園
牧 之 原 大 茶 園 の 一 角 に あ り 、眼 下 に 大 井 川 、遠 く 富
士山、駿河湾までを一望におさめる好展望地である。
えいさい
園 内 に は 中 国 か ら 日 本 に 茶 を も た ら し た 禅 僧 栄西 禅
師 の 立 像 、茶 業 記 念 碑 な ど が あ る 。ま た 、カ タ ク リ の
群生地があり 3 月下旬∼4 月下旬頃が見ごろである。
牧之原公園からの眺望
z 蓬莱橋
明 治 12( 1879)年 、大 井 川 に か け ら れ た 木 造 橋 で 、
全 長 897.4m、幅 約 2.5m で あ る 。橋 脚 は コ ン ク リ ー ト
に な っ た が 、上 部 構 造 は 昔 の ま ま で あ る 。蓬 莱 橋 は 農
道 と し て の 重 要 な 役 割 を 担 う ほ か 、貴 重 な 歴 史 的 施 設
として大切にされている。
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蓬莱橋
z 大井川の礫河原
大 井 川 下 流 部 で は 、川 幅 い っ ぱ い に ま で 礫 河 原 が 広
がる雄大な景観が随所から望める。
礫河原
z 静岡県営吉田公園
大井川河口右岸の吉田町川尻地先に開設される、
14.3ha の 県 営 公 園 で 、園 内 は 、数 多 く の 花 が 植 え ら れ
ており、ビオトープ池や遊具も整備されている。
静岡県営吉田公園
z 大井川河口野鳥園
大井川河口一帯は渡り鳥の休養地として多くの野
鳥 が 飛 来 す る 。そ れ ら の 鳥 た ち が 安 心 し て 休 息 で き る
よ う に 、 大 井 川 河 口 左 岸 の 大 井 川 町 飯 渕 地 先 に 1.8ha
に人工的な池や樹木などを植えた周辺の自然環境に
近く、人が近寄れない野鳥園が造られた。園内には 2
階 建 て の 観 察 小 屋 が 建 て ら れ て お り 、ア オ サ ギ 、カ ル
ガ モ 、 ヒ バ リ な ど 80 種 以 上 が 確 認 さ れ て い る 。
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大井川河口野鳥園
2-4
河川にまつわる歴史・文化
(1)
歴史・史跡
z 島田宿大井川川越遺跡(島田市)
東海道の難所として知られた大井川には川越制度
が し か れ 、幕 府 管 理 の 施 設 や 川 越 人 夫 た ち の 番 宿 や 商
いの店が並び賑わっていた。
その一部として川越しの料金を決めて川札を売る
川 会 所 や 、川 札 を 換 金 す る 札 場 、川 越 人 足 の 集 会 所 で
ある番宿などが復元保存されている。
大井川川越遺跡川会所
z 大井神社(島田市)
大 井 神 社 で は 3 年 に 一 度 日 本 三 奇 祭 の ひ と つ「 島 田
の 帯 祭 り 」が 行 わ れ て い る 。大 井 川 の 上 流 ・ 川 根 本 町
大 沢 か ら 流 着 し た と い う 伝 承 を 持 つ 大 井 神 社 は 、大 井
川 沿 い を 中 心 に 74 社 あ っ た と い わ れ ( 現 在 46 社 )、
し ば し ば 氾 濫 す る 大 井 川 か ら 土 地 を 守 り 、子 孫 繁 栄 を
祈 っ た の が 最 初 と 考 え ら れ て い る 。島 田 大 井 神 社 は 江
戸 時 代 に は「 大 井 大 明 神 」と 仰 が れ 、島 田 宿 の 氏 神 と
大井神社
してまた旅人の守り神として信仰されてきた。
z 舟形屋敷(藤枝市、大井川町ほか)
か つ て 氾 濫 を 繰 り 返 し て い た 大 井 川 下 流 域 で は 、氾
濫 に 対 し て の 自 衛 策 と し て 水 屋 が 作 ら れ た 。洪 水 流 が
来 る 上 流 側 の 石 積 み や 土 手 を 高 く 築 き 、そ の 様 子 を 上
空 か ら 見 る と 舟 の 舳 先 や 三 角 に 見 え る た め 、舟 形 屋 敷
(三角屋敷)と呼ばれている。
舟形屋敷
z 大井川八幡宮(大井川町)
大 井 八 幡 宮 は 、社 伝 に よ れ ば 平 安 時 代 の 初 期 延 暦 年
間( 781− 805)に 、大 井 川 の 水 霊 を 鎮 め る た め「 大 井
神 」と し て 祀 っ た の が 始 ま り と さ れ 、鎌 倉 時 代 建 久 年
中( 1189− 1198)遠 州 豊 田 郡 の 八 幡 宮( 現 磐 田 市 府 八
幡 宮 )か ら 八 幡 神 を 勧 請 し 、や が て「 大 井 神 」と 合 祀
さ れ「 大 井 八 幡 宮 」と 呼 ば れ 藤 守 郷 の 中 心 的 な 鎮 守 と
なった。
大井川八幡宮
24
じ
な
z 旧東海パルプ地名発電所(静岡県近代化遺産)
明 治 43 年 、 東 海 紙 料 ( 現 東 海 パ ル プ ) の 自 家 発 電
用 と し て 建 設 さ れ た 。現 存 し て い る レ ン ガ 造 り の 発 電
所 は 貴 重 な 建 造 物 で 、「 日 本 の 近 代 土 木 遺 産 ( 改 訂
版 )・現 存 す る 重 要 な 土 木 構 造 物 2,800 選 」( 土 木 学 会
出 版 ) に 選 定 さ れ て い る 。( 川 根 本 町 )
旧東海パルプ地名発電所
(2)
文化
z 駿河神楽
大井川流域や隣接する安倍川流域の上流部では神
楽 が 盛 ん で あ る 。こ れ ら の 神 楽 を 総 称 し て 、駿 河 神 楽
と 呼 び 、 現 在 は 約 30 箇 所 で 伝 承 さ れ て い る 。 儀 式 の
基本である五方の取り方などの違いから
型
と
藁科・川根型
安 倍・井 川
の 二 つ に 分 け ら れ る 。大 井 川
流域では、梅津、徳山、青部、田代、みさき、平栗、
崎 平 、横 岡 八 幡 、笹 間 、井 川 、寸 又 神 楽 な ど が 伝 承 さ
駿河神楽(梅津神楽)
れている。
z 平田のたるながし
「 平 田( ひ ら ん だ )の た る な が し 」は 、川 根 本 町 の 接 岨 地 区 に 伝 わ る 夏 の 恒 例 行
事 と し て 、 同 町 の 大 井 川 長 島 ダ ム で 行 わ れ る 。「 た る な が し 」 は 麦 わ ら を 巻 い た た
る に 紙 幣 や 供 物 を の せ 、松 明 を つ け て 大 井 川 に 流 す も の で 、疫 病 退 散 と 大 井 川 の 安
全、恵みを祈願して数百年前から行われている。
z ヤマメ祭り(静岡市指定無形文化財)
ヤ マ メ 祭 り は 、正 式 に は 十 六 夜 祭 と い わ れ 、諏 訪 神
社 例 大 祭 に 伴 っ て 伝 承 さ れ る 特 殊 神 饌 儀 礼 で あ る 。妙
神 谷 と 呼 ば れ る 禁 漁 地 で 釣 ら れ た ヤ マ メ が 粟 漬 け( 鮨
の 一 種 ) さ れ 、 神 前 に 饗 さ れ る と こ ろ か ら 、「 ヤ マ メ
祭り」と呼ばれるようになった。
ヤマメ祭
z 小河内のヒヨンドリ
ヒ ヨ ン ド リ の 起 源 は 定 か で は な い が 、イ セ ソ ー ホ ー
なる人物が曲物の製作技術とともにヒヨンドリ行事
を伝授したと伝えられている。
元 旦 の 早 朝 、頭 屋 ( 公 民 館 ) に 集 合 し た 人 々 が 提 灯
を 片 手 に 村 内 を 1 周 し 、か つ て は 村 で 唯 一 の 共 同 の 水
場 で あ っ た 井 戸 に 向 か う 。頭 屋 と 井 戸 の 前 で は 独 特 の
節回しに特徴のあるヒヨンドリの役歌を音頭取りが
納 め ら れ る 。歌 の 内 容 は 、 日 伏 せ を 中 心 に 村 の 安 泰 、
家 内 安 全 を 祈 る も の で あ る 。ヒ ヨ ン ド リ と 称 す る 行 事
は 、大 井 川 、天 竜 川 流 域 を 中 心 に 様 々 な 形 で 伝 承 さ れ
てきた正月行事である。
25
ヒヨンドリ
z 徳山の盆踊り(国指定重要無形民俗文化財)
しか ん まい
徳山の盆踊りは、鹿ン舞、ヒーヤイ踊り、狂言の 3
部 作 で 構 成 さ れ て い る 。「鹿 ン 舞 」は 、農 作 物 を 荒 ら す
獣 を 追 い 払 い 五 穀 豊 穣 を 願 う 古 舞 で 、少 年 が オ ス 1 頭
メ ス 2 頭 の 鹿 に ふ ん し て 踊 る 。「ヒ ー ヤ イ 踊 り 」は 、京
の 舞 妓 姿 で 歌 舞 伎 に 通 ず る 踊 り で 、こ れ に 狂 言 が 加 わ
る 。こ の 形 態 は 古 歌 舞 伎 踊 り の 初 期 形 態 を 伝 承 し 、動
物 仮 装 が 添 え ら れ 、地 域 性 に も 富 ん で い る も の で あ る 。
徳山の盆踊り
z 帯祭り(島田市)
300 年 前 の 元 禄 八 年 に 始 ま っ た 大 井 神 社 の 祭 式 神 事
で 、寅 、巳 、申 、亥 年 の 3 年 に 一 度 、御 神 輿 の 渡 御 と
それに先立つ大名行列(県指定無形民俗文化財)が、
10 月 中 旬 の 3 日 間 開 催 さ れ る 。
帯まつり
z 大井川川越祭り(島田市)
江 戸 時 代 、大 井 川 で は 架 橋 も 渡 船 も 許 さ れ ず 、大 井
川 両 岸 の 島 田 宿 と 金 谷 宿 に は 川 庄 屋 が 置 か れ 、十 組 の
川 越 人 足 延 べ 550 人 ほ ど が 川 越 し の 任 に あ た っ て い た 。
その往時の賑やかだった川越しを再現したお祭りで
ある。
大井川川越祭り
z 大井川花火大会(島田市)
大井川をはさんだ旧島田市と旧金谷町の両岸から
同 時 に 打 ち 上 げ ら れ る 花 火 大 会 で 、川 の 両 岸 か ら 同 時
に 打 ち 上 げ ら れ る 花 火 の 炸 裂 音 は 、あ た り に 響 き 渡 り 、
また両方の花火を同時に鑑賞できる。
大井川花火大会
z 藤守の田遊び(大井川町)
藤 守 の 田 遊 び の 伝 承 由 来 は 古 く 、遠 く 平 安 時 代 に 大
井川の水霊を鎮守するところから始まったとされて
い る 。 田 遊 び は 「 お 能 」「 わ ざ お ぎ 」 と も 呼 ば れ 、 ま
た 神 社 の 記 帳 に は「 猿 田 楽 」と さ れ て い る 。こ の 古 風
な 呼 び 方 こ そ 、古 代・ 中 世 の 農 耕 儀 礼 で あ っ た 田 楽 芸
能の伝播と定着を示すものといえる。
藤守の田遊び
26
2-5
河川環境に関わる地域の活動
大井川では、自然と共生する豊かな地域社会の構築を理念として大井川流域及びその
周 辺 地 域 に お い て 、地 域 住 民・民 間 非 営 利 組 織・企 業 及 び 行 政 組 織 と の パ ー ト ナ ー シ ッ プ
を 図 り な が ら 、自 然 環 境 の 保 全 や 社 会 教 育 活 動 の 推 進 、高 度 情 報 社 会 へ の 移 行 促 進 活 動 を
行 う こ と 及 び パ ー ト ナ ー に 対 し て 、活 動 支 援 に 関 す る 事 業 を 行 い 、地 域 社 会 の 活 性 化 に 寄
与 す る こ と を 目 的 に「 大 井 川 流 域 ネ ッ ト ワ ー ク 」の 活 動 が 平 成 12 年 9 月 よ り 展 開 さ れ て
いる。
大井川流域ネットワーク活動内容
●ビオトープづくり支援活動
学校、企業、公園等への自然環境構築支援
●非営林団体の活動・情報発信支援
地域のNPOの活動補助、事務代行、情報発信(インターネット構築)
●環境教育プログラムの構築やアドバイス
自然体験活動、総合学習、生涯学習プログラムの作成やアドバイス
●環境調査・環境に配慮した設計・アドバイス
循環型社会の構築に向けたこれからの社会資本整備
●大井川流域の歴史・文化・自然環境調査
流域内の社会/自然環境のデータベース
●企業のエコアップ活動支援
企業の環境人材教育、環境プログラム構築支援
大井川流域ネットワーク主な活動実績
●学校ビオトープ見学交流会
● 21 世 紀 の 森 づ く り
●フェスタ六合
●里の楽校
開校
植樹祭
2000 年 11 月
実行委員参加
ネイチャークラフトづくり
地域の宝物探し事業
●大井川みずがきネットワーク
●大井川子どもキャンプ
2001 年 3 月
イベント
2002 年 5 月 ∼ 2003 年 2 月
2003 年 3 月 ∼
2005 年 8 月
●大井川もりみず守り隊結成
2006 年 5 月
2006 年 7 月
●奥大井接岨湖フェスティバル参加
27
2002 年 1 月
2-6
自然公園等の指定状況
大井川流域では、自然公園法に基づく区域として、流域最上流部の南アルプス国立公
園 の ほ か 、大 無 間・小 無 間 及 び 光 岳・赤 石 岳・茶 臼 岳・塩 見 岳 に 代 表 さ れ る 奥 大 井 県 立 自
然 公 園 が 指 定 さ れ て い る 。ま た 、自 然 環 境 保 全 法 に よ り 、指 定 を 受 け て い る 区 域 は 、大 井
川 源 流 部 原 生 自 然 環 境 保 全 地 域 (川 根 本 町 )が あ り 、 ま た 、 寸 又 川 源 流 部 の 国 有 林 内 に 約
4600ha に 及 ぶ 原 生 林 を 保 護 す る「 森 林 生 態 系 保 護 地 域 」が 設 定 さ れ て い る 。そ の 他 、大
井 川 流 域 に は 特 別 保 護 地 区 1 ヶ 所 、鳥 獣 保 護 区 11 ヶ 所 、銃 猟 禁 止 区 域 5 ヶ 所 が 設 定 さ れ
ている。
図 2-3
大井川流域自然公園等位置図
28
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