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腎血管筋脂肪腫 renal angiomyolipoma (AML)(131025)

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腎血管筋脂肪腫 renal angiomyolipoma (AML)(131025)
ROCKY NOTE
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腎血管筋脂肪腫 renal angiomyolipoma (AML)(131025)
70 代女性。健康診断で疑いを指摘された。どのような点に注意してフォローアップするべきか。
基本的なところを含めて勉強しておくことにした。

腎実質腫瘍で腎細胞癌と鑑別を要する良性腫瘍の代表的なものが腎血管筋脂肪腫である。
20−40 歳代の若い女性に多く、組織学的には、血管、平滑筋、脂肪組織が混在する腫瘍で
ある。結節性硬化症にはしばしば合併し両側の腎に多発する。一方、片側性、単発の孤発性
例も多い。1)

腎血管筋脂肪腫(angiomyolipoma)は腎の良性間葉系腫瘍で、0.3∼3%の発生頻度である。
病名が示すように厚い血管壁を有する血管、平滑筋、脂肪から構成される。組織学的に、腫
瘍は被膜を持たず、88%の症例で腎被膜の外に発育する特徴がある。腫瘍の血管壁は正
常の平滑筋を持たないため脆弱で、動脈瘤を形成し、それが破裂して出血することがある。
3)

AML の 20%は結節性硬化症に合併し、結節性硬化症の 50%に AML の合併があり、この場
合は両側性、多発性の傾向が強い。結節性硬化症に合併しない例は中年の女性に好発し、
単発性、片側性が多い。2)

散発性の症例では、通常単発、片側性(右側が 80%)で平均 41∼43 歳で発見される。男女
比は 4 対 1 で女性に多い。結節性硬化症の患者の約 80%に本疾患を認め、通常多発性、
両側性で大きな腫瘍が多い。平均 17 歳で発見され、男女比は 1 対 1、時に腎血管筋脂肪腫
が結節性硬化症の唯一の確証となる。結節性硬化症の患者では。ほかに多発性腎嚢胞を
伴うこともある。3)

通常は無症状であるが、大きな腫瘍は触知し、4cm 以上になると 82∼94%の症例で有症状
で、時に腎内外への出血により急性の側腹部痛、血尿を生じる。出血量が多い場合はショッ
クになることもある。3)

腎の充実性良性腫瘍では最も頻度が高く、悪性の充実性腫瘍のうち最も頻度が高い腎細胞
癌との鑑別は臨床上重要である。2)

腎実質の腫瘍で CT や MRI で脂肪成分があり、また、超音波では高信号を呈することが多い
のが特徴で、腎細胞癌との鑑別の判断材料となる。脂肪成分がほとんどない症例ではしば
しば鑑別困難なこともあり、この場合は、診断も兼ねた腎部分切除や腎摘出による腫瘍の組
織学的診断の結果を待つことも考慮に入れる。1)
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超音波では高エコーを示し、被膜はみられない。CT では脂肪による低吸収域を容易に確認
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できる。MRI では T1 強調像で脂肪による高信号を示す部分が明瞭にみられ、脂肪抑制像で
信号が抑制される。2)
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超音波検査では、腎内の高エコーの腫瘍として描出される。被膜外に突出するものは比較
的特徴的である、脂肪の量により腫瘍のエコーレベルが変化する。腎血管筋脂肪腫の 5%
は脂肪の量が少ないためエコーレベルが低下し、特徴的な像を呈さない。小さな高エコーの
腫瘍の鑑別は腎細胞癌で、高エコーを呈する腎細胞癌では、周囲に低エコーの偽被膜を伴
う点が本疾患との鑑別となる。出血、壊死、拡張した腎杯は無エコーの領域として認める。3)

非造影(単純)CT で、脂肪の吸収値(20HU 以下)を有する境界明瞭な皮質腫瘍は腎血管筋
脂肪腫と診断が可能である。前述したように 5%の症例で脂肪含有量が少ないため、均一で
腎実質よりやや高濃度の腫瘍として認める。造影 CT で腫瘍内の平滑筋や血管が不均一な
造影効果を呈する。脂肪含有量の少ない腫瘍は均一に造影される。脂肪を含む腎腫瘍の鑑
別として Wilms 腫瘍、oncocytoma、転移、腎癌などがあるが、これらの腫瘍が脂肪を含むこ
とは稀である。また、腎の脂肪腫や脂肪肉腫との鑑別は困難であるが、これらの腫瘍の発生
頻度も非常に少ない。CT で多発性の腎血管脂肪腫を認めた場合や、嚢胞を合併している場
合は結節性硬化症が示唆される。3)

脂肪がほとんどない例:超音波では腎実質とほぼ等エコーとなる。CT では、単純 CT で筋肉
と同程度の腎実質よりもやや高濃度を示す腫瘤としてみられる。MRI では、T2 強調像で筋肉
と同程度の低信号、T1 強調像でも筋肉と同程度の低信号を示す。2)
(参考文献 6 より引用)
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(参考文献 6 より引用)
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本腫瘍は経過中に主として脂肪成分が緩徐に増大し、ダブリングタイムは、4cm 以下の腫瘍
で 47 ヵ月、4cm 以上の腫瘍で 75 ヵ月という報告がある。3)

経年変化を追跡できた 47 例では、2mm 以上の増減を増大群、縮小群とし、それ以外を変化
なし群としたところ、増大群 20 例(43%)・変化なし群 22 例・(46%)・縮小群 5 例(11%)であ
った。その中で 1 例は 11rnm 増大し 20mm に描出されたが、エコーパターンに変化は無かっ
た。また、腫瘍の数の増加は、6 例に認められた。AML の男女比は 1:4 で、存在部位に左右
差は認めなかった。5)

基本的に定期的な画像検査による無治療経過観察が行われる。腫瘍径が 4cm を超える場
合は、腫瘍出血の危険があり、腎機能を温存しつつ腫瘍摘出目的での腎部分切除などの外
科的治療や経皮的動脈塞栓術を考慮する。1)

4cm 以上の大きさのもの、5mm 以上の動脈瘤のあるものは破裂し、出血する頻度が高い。2)

Oesterling らは径 4cm 以上の AML は 51%が自然破裂をきたしたと述べており、4cm 以上の
腫瘍では無症状でも注意深い観察を、症状出現時には動脈塞栓術や腎温存手術療法を施
行すべきであると述べている。4)

良性の腎腫瘍であるが、定期的経過観察が必要である。1)

AML は、CT 検査で脂肪成分が確認されれば確定診断できるので、確認後は年 1 回の経過
観察で良いと考える。5)

CT 検査を行っていない場合でも、女性で 10 ㎜以下の腫瘍であれば、大きさやエコーパター
ンの変化が見られないなら、当日面接で医師の指導のもとに年 1 回の経過観察でも良いと考
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える。5)
参考文献
1.
窪田吉信.腎細胞癌,腎血管筋脂肪腫.今日の治療指針 2012 年版 20120101
2.
後閑武彦.Case 3 腎血管筋脂肪腫.臨床画像 24(10): 1240-1241, 2008.
3.
桑鶴良平, 伊藤省吾.腎・尿路の異常 II ―腎血管筋脂肪腫―.Nephrology Frontier 2(2):
136-138, 2003.
4.
蓮見壽史, 多田真浩, 松崎純一, 北見一夫自然破裂した腎血管筋脂肪腫の 1 例.泌尿器外
科 15(10): 1141-1144, 2002.151-3 健診で発見された腎血管筋脂肪腫の追跡
5.
加治裕子, 石川晃代, 横川文江, 小林京子, 今井裕子, 岸田浅美, 藤間光行, 萎沢利行,
木全亮二, 坪井成美.37(1): 171-171, 2010.
6.
日本超音波医学会用語・診断基準委員会 . 腎細胞癌と他の腎腫瘤性病変の鑑別
(案).https://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/39-4_1.pdf
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