Comments
Description
Transcript
幼児期における body image の構造に関する研究 -運動
Nara Women's University Digital Information Repository Title 幼児期における body image の構造に関する研究 -運動能力を中心と して- : 内容の要旨および審査の結果の要旨 Author(s) 田中, 千恵; 佐久間, 春夫; 麻生, 武; 藤原, 素子; 杉峰, 英憲 Citation 博士学位論文 内容の要旨および審査の結果の要旨, vol.22, pp.127132 Issue Date 2005-08 Description 博士(学術),博課第271号,平成17年3月24日授与 URL http://hdl.handle.net/10935/1264 Textversion publisher This document is downloaded at: 2017-03-29T08:51:38Z http://nwudir.lib.nara-w.ac.jp/dspace 氏 名 ( 本 籍) 田 中 千 恵 学 位 の 種 類 博士 ( 学術) 学 位 記 番 号 博課第 2 7 1 号 学位授与年 月 日 平成 1 7 年 3月2 4日 学位授与 の要件 学位規則第 4条第 1項該 当 ( 兵庫県) 人 間文化研究科 論 文 題 目 幼児期 にお ける b o d yi ma geの構造 に関す る研究 武 憲 英 助教授 佐久 間 春 夫 生 峰 ( 委員長) 教授 麻 杉 論文審査委員 授 授 教 教 一運動能力を中心 として藤 原 素 子 論文 内容 の要 旨 適切 な身体像 bo dyi mageを持っ ことは心身の健全 な発達 に不可欠であ り、幼児期 にはすでに運 動能力を基 に身体的存在 としての自己を受容 していることが示唆 されて きた。 しか し、幼児を対象 に dyi mageの研究 に関 しては、研究分野 の特異性 による概念 の多様性 と研究手法 の妥 当性 な した bo どの問題があ り、発達指標の基本 となる基礎的なデータが極めて少 ない。 yi mage 本研究 は、発達的視点か ら自己概念 や外界 を認識す る際の重要 な基礎 となる身体像 bod について、人物描画法を基 に、運動能力を構成す る体格 と基礎的な運動技能 との関連を明 らかに し、 その構造 について検討を行 った ものである。 第 1章では、研究 目的を示す とともに、身体知覚 b odype r c e pt i on、身体概念 body c onc e pt 、身 dyawar e ne s s 、身体図式 bo dys c he maなどの精神医学、心理学、哲学等 における多様 な 体意識 bo yi mageとの関連 を明 らかに し、研究手法 と して人物描画法 を用 いる 記述 と本研究で使用す る bod ことの有効性 について文献的検討 を行 った。 第 2章 で は、人物描画法である Go ode noughHar r i sDr awi ng Te s t( Dr awAMan Te s t:DA M 法)か らみた幼児の bodyi mageについて横断的、縦断的な発達的特徴を調べ、人物描画の多面 5 部位 ( 頭、首、胴、腕、 的かっ力動的な側面 について検討を行 った。DAM 法で措かれた人物画の1 手掌、脚、足、指、髪、眉毛、 目、鼻、口、耳、衣服)か らの分析 に基づ き、被験児の年齢 (4歳児 ・ 5歳児) と性別 による特徴を検討 した。その結果、 4歳児では頑、脚、 目、 口の描画率 は高 いものの 他の部位 については低 く、頭足人的特徴を示 した。 5歳児では眉毛、鼻、耳の描画率 は低 いが、他の 二; "_ 部位 については 4歳児 よりも有意 に描画率が高 く、身体部位の認知が高 いことが明 らかにな った。 さ らに、縦断的にみた場合、 5歳児 においては半年間で描画率の顕著な向上が兄いだされた。一方、性 差 については、 4歳児、 5歳児 とも女児の描画率が高 く、特 に 4歳児では髪、衣服 において、 5歳児 では胴、手掌、髪、衣服 において高 いことを兄いだ した。 次 に、DAM 法の多面的な側面 について検討を行 った。措かれた人物画か ら示 された身体的な動 き の評定結果 と運動能力 とに密接 な関連のあることが明 らかにされた。 第 3章では、幼児が 自分 自身の形態 について知覚 しているものがその幼児の人物描画 に反映され る ことを検証す るために、描かれた自己像の大 きさ ( 縦 ・横 ・腰部 の長 さ、頭部 ・自己像の面積) と幼 児 の体格 ( 身長、体重、 カウプ指数) との関連性、 さ らに自己像 と DAM 法 による人物画 との関連 性を調べた。 自己像の大 きさと幼児の体格 との関連 について重回帰分析を行 った結果、 自己像の全面 積 と頭部 の面積 については、性別の要因が関与 し、女児よりも体格的にも大 きい男児の方が、 自己像 を大 きく描 く傾向が兄いだされた。 また、縦の長 さについては、年齢、性別、身長、体型の要因が強 yi mageに対す る年 く関与 していることが兄 いだ された。 これ らの結果 は、 自己像描画 による bod 齢 と性別要因の関与 は DAM 法で兄 いだ された結果を裏付 けるものであ り、特 に縦 の長 さについて は、体格 との関連性が示 され、 自己像描画法を用いて研究を進める上での指標 となると考え られる。 次 に、 自己像描画 と DAM 法 による人物画 との関連性 について調べた結果、 それぞれの得点間 に 有意で高 い正の相関が認 め られ、DAM 法 によって描かれた人物画 には自己像が投影 されていること が示 された。 dy i mageと運動能力 との 関連性 について検討 を行 った。運動技能 の獲得 第 4章では、幼児の bo や向上の基礎 となる運動能力の発達が、幼児や児童の自己概念 にとって重要であるとされているが、 実証的なデータは得 られていない。第 1節 において は、運動能力 と人物描画法 による幼児 の bo dy 5m走 i mageとの関連性 につ いて調べた。運動能力 について は、立 ち幅跳 び、 ソフ トボール投 げ、2 の基礎的運動技能 と、性格特性 と関連のある体支持持続時間の 4種 目を取 り上 げた。その結果、 5歳 dy i mage得点 と 4種 目の合計得点 児が 4歳児 よ りもすべての種 目で有意 に優れてお り、 さ らに bo ( T得点) の間に有意 な正 の相関が認 め られ、運動能力の高 い幼児 ほど bodyi mage得点が高 く、身 体部位の認知が高いことが明 らかになった。第 2節では、立 ち幅跳 び、 ソフ トボール投 げ、2 5m走、 dy 体支持持続時間の 4種 目を取 り上 げ、運動技能 に関与す る身体部位の認知 と人物描画法 による bo i mageとの関連性 について 2年間にわた り縦断的に調べた。 その結果、 4歳児、 5歳児 ともに基礎 的な運動技能 に関与す る身体部位 の描画得点 と各運動技能の成績 とに正の相関が見 られ、比較的早期 に動作 に関与す る身体部位を認知で きることが明 らかになった。 さらに、 このことはイ ンタビューに よる内省報告を求めた結果 とも一致 した。たとえば、 ソフ トボール投 げにおいて、 4歳児 は四肢の部 位 に意識を持 ち、 これに対 し 5歳児 になると安定 したフォ-ムで走 るということが、速 く走 るために i 野 望 は必要であるという経験を通 した結果、上半身の関与をあげていた。 第 5章では、幼児が抱 く身体 に対す る評価的態度 として 「 身体満足度」、「 理想体型」、「 身体感覚」 とい った 3つの側面か ら幼児の bo dy i mageの特徴 につ いて検討 した。身体 1 9 部位 を取 り上 げ身体 満足度 についての評定結果を もとに因子分析を行 い、その構造か らみた結果、顔、 口、頭、体格を示 す因子 において男児の方が女児よ りも満足度が高 い ことが示 された。痩身、普通、肥満を示す体型絵 カー ドを もとに、現在の自己の体型 と将来の理想体型 について調べた結果、現在の自己の体型 と将来 の理想体型 ともに,女児 よりも男児の方が普通体型を選択 した割合が高か った。将来の理想体型 につ いては、特 に女児が男児よりも有意 に痩せ体型を理想 としてお り、青年期の女性 と同 じ傾向を示 した。 9 部位 を取 り上 げ SD法 によ り 「 長 さ」、「 大 きさ」、「 太 さ」 の 3っ 次 に、身体感覚 については、身体 1 r ge項 の観点か ら現在 と将来 についての評定 を求 めた。長 い、大 きい、太 いと評定 された部位 を La t t l e項 目と して分析 した結果、 Lar ge項 目と 目と し、短 い、小 さい、細 い と評定 された部位 を Li t t l e項 目としては 「腕」であった。一方、女児では して男児では現在、将来 ともに 「 脚」であ り、Li Lar ge項 目として とらえている身体部位 は、男児同様現在、将来 ともに 「 脚」 の部位であ り、Li t t l e 項 目としては現在 は 「 耳」であるのに対 し、将来 は 「 指」であ った。現在 について評価の特徴 につい て は描画 と一致 してお り、身体部位 の大 きさに関 して は自己の bo dyi mageの特徴 を比較的客観的 にとらえていることを示す ものであった。 dyi mageの構造 につ い 第 6章で は、第 1章か ら第 5章 までで得 られた知見を もとに、幼児の bo て総合的に考察 を行 った。第 1節 では幼児の bo dyi mageの定量的評価法 として人物措画法である Go ode noughHa r r i sDr awi ngTe s t( Dr awAManTe s t:DAM 法) の妥 当性 について、 4歳児、 5歳児を対象 に発達的特徴か ら明 らかに し、bodyi mageの構造 について、運動能力を構成す る形態 的側面 として体格、機能的な側面 として基礎的運動技能、身体 に対す る評価的側面か らとらえ られる ことを示 した。 さらに、本結果か ら保育現場への適用 について留意すべ き具体的な観点 を示 した。第 2節では本研究結果について 6点にまとめ、第 3節では残 された検討課題 について述べた。 」斗 論文審 査 の結 果 の要 旨 本論文 は、 自己概念 や外界 を認識す る際の重要 な基礎 とな る身体像 b odyi mageにつ いて、人物 描画法 を基 に、発達的視点か ら幼児 を対象 としてその構造 と形成過程 を明 らか に した ものである。 本論文 の特色 として、一つには、人物描画法で描かれた 、 、 人 〝 が 自己像 を反映す るものであること を定量的 に証明 した ことがあげ られ る。 これまでの研究では、人物描画法 は主 に心理検査や心理療法 の中で、 その人の内的世界 にアプ ローチす る手段 として用 い られ、描画 に表 され る象徴的表現の定性 的解釈 に止 ま っていた。二つ 目と して、用 い られた人物描画法が、幼児の場合、運動能力を構成す る 身体 の形態的 ・機能的特徴 を反映す るものであることを縦断的 に検証 し、限 られた年齢範囲ではある が、身体的存在 としての自己を可動的 ・可変的に受容 していることを示す発達指標 の基礎的なデータ を得 た ことが あげ られ る。 三 つ 目と して、b odyi mageには身体 に対す る態度 といった、情意的評価 が反映 され ることを示 した ことである。 本論文 は次 の 6章か ら構成 されている。 第 1章で は、研究 目的を示す とともに、研究分野 の特異性 による概念 の多様性 と研究手法 の妥 当性 などの問題 を指摘 し、研究手法 と して人物描画法 を用 いることの有効性 につ いて文献的検討を行 い、 bodyi mageの操作的定義 を行 った。 第 2章 で は、人物描画法 であ る Go ode noughHar r i sDr a wi ngTe s t( Dr awAManTe s t:DA mageにつ いて横断的、縦断的な発達的特徴 を調べ、人物描画の多面 M 法) か らみた幼児 の bodyi 的かつ力動的な側面 について検討 を行 い、人物画 における年齢や性別特徴を明 らかに した。 この中で、 特 に人物画の全体像 について、 4歳児後半 において男女児 ともに描画 に大 きな変化がみ られ ることを 兄 いだ してお り、表象的表現の転換点の存在 を示唆す る上で重要 な根拠 を示 した もの といえ る。 さ らに、描かれた人物画か ら示 された身体的な動 きの評定結果 と運動能力 とに密接 な関連 のあるこ とを明 らかに した。運動能力 とい った身体 を コン トロールす る技能 の向上が、幼児の人物画 に反映 さ れ ることを実証的 に示 した貴重 な結果であ り、 この結果が本論文のテーマともな り、以下 の研究 を進 める根拠 ともな った。 第 3章で は、幼児が 自分 自身 の形態 について知覚 しているものが、 その幼児 の人物描画 に反映 され ることを検証す るために、描かれた自己像 の大 きさと幼児の体格 に関す る実測値 との関連性、 さ らに 自己像 と DAM 法 による人物画 との関連性 につ いて検討 した。 自己像 の大 きさと幼児 の体格 との関 連 について重回帰分析 を行 った結果、 自己像の全面積 と頭部 の面積 については、性別の要因が関与 し、 女児 よ りも体格的に も大 きい男児の方が、 自己像 を大 きく描 く傾向が兄 いだされた。 また、縦の長 さ 三 については、年齢、性別、身長、体型 の要因が強 く関与 していることが兄 いだされた。 これ らの結果 は、 自己像描画 によ る b odyi mageに対す る年齢 と性別要 因の関与 は DAM 法で兄 いだ された結果 を裏付 けるものであ り、特 に縦 の長 さについては、体格 との関連性が示 され、 自己像描画法 を用 いて 研究 を進める上での指標 とな ることを示唆す るものであ った。 次 に、 自己像描画 と DAM 法 による人物画 との関連性 につ いて調 べた結果、 それぞれの得点問 に 有意で高 い正 の相関を認 め、DAM 法 によ って描かれた人物画 には自己像が投影 されていることを局 いだ した 。 第 4章 で は、幼児 の b odyi mageと運動能力 との関連性 につ いて検討 を行 った。運動技能 の獲得 や向上 の基礎 となる運動能力の発達が幼児や児童 の自己概念 にとって重要であるとされているが充分 な実証的なデータは得 られていない。第 1節 においては、基礎的運動技能 を主 と した運動能力 と人物 dyi mageとの関連性 につ いて調 べ、運動能力 の高 い幼児 ほど body i mage 描画法 によ る幼児 の bo 得点が高 く、身体部位 の認知が高 い ことを明 らかに した。第 2節では、運動過程で幼児が 自分 の身体 dyi mageに反映 され るのか の動 きを どのよ うにと らえて いるか、 またそれが人物描画法 による bo について、 2年間 にわた り縦断的に調べた。 その結果、 4歳児、 5歳児 ともに基礎的な運動技能 に関 与す る身体部位 の描画得点 と各運動技能 の成績 とに高 い正 の相関を兄 いだ し、比較的早期 に動作 に関 与す る身体部位 を認知で きることを明 らかに した。 さらに、 この ことをイ ンタビューによる内省報告 か らも裏付 けている。 身体満足度」、「 理想体型」、「 身体感覚」 第 5章では、幼児が抱 く身体 に対す る評価的態度 と して 「 ody i mageの特徴 につ いて検討 した。身体 1 9 部位 を取 り上 げ身体 とい った 3つの側面 か ら幼児 の b 満足度 についての評定結果 を もとに因子分析 を行 い、 その構造か らみた結果、顔、 口、頭、体格 を示 す因子 において男児の方が女児 よ りも満足度が高 い ことが示 された。痩身、普通、肥満 を示す体型絵 カー ドを もとに、現在 の自己の体型 と将来の理想体型 について調べた結果、将来 の理想体型 おいて、 女児が男児よ りも有意 に痩せ体型を理想 としてお り、社会文化的背景の影響 を示唆す るものであ った。 次 に、身体部位 をどのよ うに感 じているか といった身体感覚 につ いて力動的に把握す るため現在 と将 来 について SD法 によ り評定 を求 めた。 その結果、身体感覚 については性差がみ られず、男女児 とも 自己の bo d yi mageの特徴 を比較的客観的 にとらえていることを示す ものであ った。 第 6章で は、総括論議 と して第 1章か ら第 5章 までで得 られた知見 を要約 し、幼児 の b odyi mage の構造 につ いて述べている。 幼児 の b odyi mageの定量的評価法 と して人物描画法 の有効性 とそ こ に示 され る 4歳児、 5歳児を対象 に発達的特徴か ら、b odyi mageの構造 については、運動能力 を構 成す る形態的側面 と して体格、機能的な側面 として基礎的運動技能、身体 に対す る評価的側面か らと らえ られ ることの重要性 を指摘 している。 以上、学位 申請者 は幼児教育者 と しての経験か ら、 目的動作 を引 き出す際に身体部位 を強調 したイ 相 i メ- ジの重要性 に気づ き、精力的 に bod yi mageの研究 を進 めて きた。本研究 の意義 は冒頭 に述べ た点 にある。 本研究 は、理論的な考究 について不十分 な点があるが、幼児期 においてすでに運動能力 を基 に身体 的存在 と しての 自己を受容 してい ることを示 し、比較的早期 の bo dyi mageの特徴 を明 らか に した もの と して評価 で きる。 適切 な bo dy i mageを持っ ことは心身 の健全 な発達 に不可欠 で あることか ら、 ここでの研究結果 は幼児教育 における新 たな提言 を もた らす ものであるといえ る。 また、 これ らの知見 は、本学 の人間文化研究科年報、 スポーツ科学研究年報 の他、保健 の科学、乳 r c e pt ualandMo t o rSki l l sなどに原著論文 と して公 幼児教育学研究 などの国内学会誌、 国際語 Pe 表 されている。 さ らに、 日本発達心理学会大会、 日本乳幼児教育学会大会、 日本体育学会大会 などに おいて も発表 されてお り、 この分野の研究者 の注 目を集 めている。 よって、本論文 は奈良女子大学博士 ( 学術) の学位論文 として十分 な内容 を備 えていると評価で き る。 "_ I ;