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ハイドレート対策

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ハイドレート対策
Well Planning
Hydrate, 1.4.1~1.4.5
1-100 ~ 1-114
Well Planning – Hydrates(坑井計画‐ハイドレート)ページ 1-100~1-114
1.4 Hydrates(ハイドレート)
Well Planning 1.36.1 – Hydrate Prevention
Well Control Procedures, 2.7, Hydrate Prevention and Removal を参照
1.4.1 Summary(概要)
ハイドレートは大水深掘削においてよく知られた作業上の障害である。ハイドレートは
クラスレート(格子状構造を持つ物質または、ひとつの物質の分子が他の結晶構造中に完
全に閉じ込められている様子)として知られている物質のグループに属し、ホスト分子(水)
が鳥かご状の格子構造を形成し、ゲスト分子(ガス)を包有している。
ハイドレートは十分な圧力下では華氏 32 度(0℃)以上の温度で形成し、不純物を含む
氷様で、自然状態で固結している。そして金属表面に固着する傾向を有する。
メタンからイソブタンまでの範囲の天然ガス分子、硫化水素分子、二酸化炭素分子がハ
イドレートを生成することが知られている。ハイドレートは一般的にとても安定しており、
人体やリグ、環境に対して普通は直接的な悪影響を及ぼさない。ハイドレートが形成する
環境があることを認識し受け入れることによって、リスクとそれに掛かる費用を最小限に
することが可能である。
1.4.2 Requirements for Hydrate Formation(ハイドレート形成のための必要条件)
ハイドレート形成は圧力、温度、ガス組成、水相組成の相互作用である。したがって水
深がより大きい環境に挑むときは、より高圧且つ低温な条件の相互作用によってハイドレ
ート形成の可能性は増加する。
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1.4.2.1 Effects of temperature(温度の効果)
図 1-16 はメキシコ湾における平均海水温度と水深の関数図である。水深 700ft(213m)
におけるメキシコ湾の平均海底温度はおよそ華氏 60 度(15℃)である。海底温度は水深
1500ft(457m)までおよそ華氏 48 度(9℃)まで急激に低下した後、緩やかに減少し、水
深 3000ft(914m)で華氏 40 度(4℃)である。
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1.4.2.2 Effects of specific gravity(比重の効果)
図 1-17 はハイドレート形成上のガス組成効果を示す。関連するガス比重が増加するとハ
イドレート形成の可能性はそれに応じて高まる。相図は圧力と温度の相関関係として異な
るガス組成の物理的状態を表す。曲線状の任意点はハイドレートがその圧力条件で最終的
に解ける温度または分解する温度を実際に表している。
1.4.2.3 Effects of supercooling(過冷却の効果)
図 1-18 は相平衡曲線によって示される圧力・温度条件下で、ハイドレートが直ちに形成
しないことを示し、むしろ、ある程度の過冷却(または過剰圧力)が核形成や結晶成長に
必要なことを示す。一般的に華氏 10-12 度(5-6℃)の過冷却が必要である。
与えられたシステムが仮に分解曲線上で計画されたとしたならば、この分解相平衡曲線
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の下側、過冷却曲線の上側の範囲(ハイドレート形成領域)は、セーフティーファクター
として考えることができる。
一般的なハイドレート熱力学試験は、図 1-18 にあるように、圧力-温度(P-T)線を示
し、図上の A 点はハイドレート平衡圧力・温度を表す。実際には A 点は最終的に全てのハ
イドレート結晶が溶けたときの圧力・温度を表す。幾つか圧力の異なる条件下で繰り返し
試験を実施することで、全体のハイドレート相境界線(CD)が示される。この線に沿って、
ガス・水・ハイドレートの各相の境界線が、平衡に移り変わる。この境界線の右側の圧力・
温度条件下ではハイドレートは形成されない。そして左側の条件下では形成しうる。
図 1-18 の更なる調査は、熱力学試験時に実際にはハイドレートが B 点で形成することを
示すが、これは急激な圧力低下によって検知される。つまり、ハイドレートは実際には B
点で形成するにも関われず分解する A 点を通常ハイドレート相境界線として使用される。
これは、ハイドレート形成過程に関連した準安定性によるものであり、再現性のある明確
なハイドレート形成 EF 線を再出現しえない。
点線 EF は準安定範囲の限界を示し、ここではハイドレート形成は可能である。準安定領
域はハイドレートの形成を開始するのに必要な過冷却(一般的に華氏 10-12 度(5-6℃))
の度合を表す。この過冷却は我々がハイドレート形成の可能性を推定する上で、塩係数と
してみることができる。ハイドレート形成の確率は CD 線から EF 線に近づくに従って増加
する。EF 線の左側の領域では、ハイドレート形成は確実に起こる。
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図 1-19 は、図 1-18 の相平衡曲線上の一点 E 点を拡大したものであり、ハイドレート形
成開始、成長、分解の過程を示したものである。
水深が増加するに従い、分解曲線の下側の条件での作業が必要になる。もしハイドレー
ト形成に適した条件にある場合にはハイドレート形成の確率は時間の相関関係になる。
分解温度以下の過冷却の程度の違いによるハイドレート形成開始に必要な時間(誘導時
間)は明確ではないが、ハイドレート形成の確率は過冷却された温度の度合いを高めるこ
とによって確実に増加する。
分解曲線と過冷却曲線との間の領域で作業をしている時のハイドレート形成に要する時
間は温度が過冷却状態に近づくに従い減少する。
1.4.3 Pre-planning(事前計画)
Well Control Procedures, 2.3, Circulating to Kill 参照
ガスハイドレートの抑制と緩和計画は大水深掘削作業を実施するにあたって事前検討さ
れるべきである。
ハイドレート形成のリスクを最小限にするために、十分な抑制効果のある泥水システム
と適切なウェルコントロール手順の組合せを具体化すべきであり、同様にハイドレート形
成が生じた時のハイドレート対策に要する反応時間を最小限とする計画が欠かせない。ハ
イドレート形成可能性とそれに関連したリスクの分析をすべきである。
一般的には、「ワーストケース」状態を指摘し、計画に反映させる。例えば、循環泥水の
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逸泥、ドリルストリングスの閉塞、坑内パックオフまたは悪天候状態などによって生じた
ガスキックの泥水循環による排出時など、長期的なシャットインの可能性が大きい時は、
静的温度勾配を基に泥水システムに必要な抑制剤の量を見積るべきである。
もし実際の値が分からない場合には、現実的な圧力(泥水比重)と基本的なガス組成を、
要求される温度抑制の量を見積もる上で使用すべきである。
緊急時対策はウェルコントロール手順、長期シャットイン期間、ハイドレート除去に要
点をおき、次に示すように作成すべきである。
・
ウェルコントロール手順
ドリラーズ法、Wait & Weight 法のどちらでも良い。
(Well Control Procedures, 2.3,
Circulating to Kill 参照)
・
長期シャットイン期間
明らかにこれらの期間は計画外であり、最小限に止めるべきである。静的温度勾配
を泥水システムに必要な抑制剤の量の見積に使用するべきである。もし抑制のレベ
ルが相図上で過冷却または準安定領域内のハイドレート形成温度を抑制するだけで
あるのなら、その計画はシャットイン時にグリコール抑制剤によるチョークライ
ン・キルライン、そして BOP の凹部へ段階的に注入するために最適化されるべき
であり、これらは予想されるシャットイン時間や、計画された泥水システムがどれ
だけ分解点から離れているかによって異なる。少なくとも 50%のエクセスを含んで
計算された量を注入できるだけの十分なグリコールをベースとした抑制剤の作成が
必要である。
・
ハイドレートの除去
ハイドレートプラグが形成されたときにそれを除去する方法は多数存在する。要点
は、ハイドレートプラグ形成に要する反応時間を最小限にすることである。相曲線
以上の加温(減圧)がハイドレートの時間的分解を開始するために通常要求される。
ハイドレートの分解は内部に閉じ込められたガスの「蓄積エネルギー」によって、
かなり高圧な状態を発生し得る。1 立方フィートのハイドレートは常圧で 170 立方
フィートのガスと同等である。従って、分解したハイドレートガスの逃げ道を常に
確保しなければならない。通常のコアバレルのような密閉容器は常にこのことを念
頭に置くべきである。上流側の圧力を加えるのはまた問題を複雑にするだけである。
1.4.4 Methanol Injection(メタノール注入)
メタノール注入は海底機器や坑内生産システムに対し非常に効果的であるが、メタノー
ル自体の毒性と揮発性の問題から、掘削作業時の坑内での使用は現在まで行なわれていな
い。
BOP の隙間や坑井シャットイン時のチョークラインやキルライン中のハイドレート形成
に対して、BOP 内に最大可能流速による温水や温泥水の循環を実施、二次ドリルストリン
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グを下げるかまたはドリルパイプに沿ってコイルドチュービングを下げ、温水や温泥水を
排出することによってハイドレートプラグを分解する。二次ドリルストリングの内径は、
暖める必要のある箇所へ温流体を注入するのに必要な時間と圧力を最低限にすべきである。
しかしながら水深 4000ft(1219m)以深では、この方法は熱損失と周囲の温度による冷却
効果によってあまり重要ではない。
ドリルパイプ内のハイドレート形成が著しいと考えられる場合、循環を確保する目的で
ハイドレートプラグの上側のドリルストリングに穿孔してはならない。これは更なる除去
作業が必要な場合など、プラグ箇所下側への坑内への挿入を妨げる原因と成る可能性があ
るからである。
1.4.5 Inhibition(抑制剤)
Well Planning, 1.3.5.1, Hydrate Prevention 参照
ハイドレート抑制として掘削泥水システムに組合せる 2 つの一般的な方法がある。
1.4.5.1 Thermodynamic inhibitors(熱力学的抑制剤)
熱力学的抑制は液相での活性レベルを下げることであり、ある圧力下でのハイドレート
安定性に必要な温度を抑制することである。主に、表 1-10 に示した電解液とポリマー溶液
がある。
1.4.5.2 Kinetic inhibitors(力学的抑制剤)
力学的抑制剤(結晶緩和剤)は通常、ハイドレート熱平衡に影響しないポリマーや界面
活性剤を基にした化合物の少量添加によって、ハイドレートの結晶化と成長を変化させる。
これらのタイプの抑制剤はハイドレートの結晶化の出現を遅らせ、ハイドレート形成速度
を遅らせ、結晶の凝集の進行を妨げる。この方法については未だに大いに研究されている。
条件が更に厳しくなる場合は、これら 2 つの方法の組合せが必要であろう。
塩/ポリマー抑制剤システムが、メキシコ湾、北海及びブラジル沖の大水深掘削に最も
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一般的に使用されている。必要量のポリマーを添加した重量比 20-26%の塩化ナトリウムを
含むシステムが、ガスキックの危険性のある水深 7500ft(2286m)以深において安全に使
用されている。
電解質や無機塩の中で、塩化ナトリウムが最も優れた熱力学的抑制剤である。図 1-20 塩
化ナトリウム濃度(重量%)の関数としてのハイドレート温度抑制の度合いを示す。
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グリコールもまた図 1-21 に示すように効果的な抑制剤である。しかし塩化ナトリウムと
比較して同重量比における効果は小さく、低温時にはかなりの粘性増加が認められる。グ
リコールは低濃度添加した塩システムとの組合わせにすばらしい効果がある。華氏 90 度
(32℃)の条件では、通常のウェルコントロール圧力範囲において安定なハイドレートを
形成することは実質的に不可能である。
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オイルベース泥水とシンセティックオイルベース泥水は図 1-22 に示すように水相が存在
するため、ハイドレートの形成が起こる。ウォーターベース泥水システムのように、この
水相の塩分濃度は必要な抑制レベルに調整する必要がある。
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表 1-11 は塩化ナトリウムの重量%をおよそ 26%で飽和するまで増加させた時の比重、泥
水重量、濃度(ppm)の関係を示したものである。観察された地層破壊圧増加率が必ずし
も抑制剤として要求される必要泥水比重に耐えられない場合があることを考慮する必要が
ある。
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図 1-23 はおよそ水深 3000ft(914m)以深おいては、塩のみの抑制剤の使用はハイドレ
ートの無い環境を保障するものではないことを示している。
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