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化粧品購買における関心と知覚リスクの関連性

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化粧品購買における関心と知覚リスクの関連性
化粧品購買における関心と知覚リスクの関連性
2.終わりに
① 序論
1.研究テーマ
3.謝辞
(1)研究動機
参考文献
(2)関心と関与の定義
補録
(3)知覚リスクの定義
(4)研究対象財の設定
澤村美香子
高田望
(5)研究対象者の設定
永野優菜
服部優
2.現状分析
(1)研究対象財の妥当性
(2)研究対象者の妥当性
① ―――序論
(3)市場動向
1.研究テーマ
(4)市場低迷の原因
(5)現状分析まとめ
3.問題提起
(1)研究動機
② 本論
なぜ消費者は商品を購買しない時があるのだろ
1.既存文献レビュー
うか。店舗にて物を手に取るが、最終的に戻した
(1)「知覚されたファッション・リス
経験は少なくないだろう。キャズムなどの様々な
ク」の測定
要因が挙げられる中、我々は「知覚リスク」に着
(2)「知覚されたファッション・リス
目した。神山[1997]は、購入時に経験される諸
ク」の構造
懸念を減少させうることは、消費者にとって自己
(3)衣料品/お洒落用品別にみた「知覚
の購買行動や消費行動を正当化するための根拠に
されたファッション・リスク」度
なると述べている。購買に対する知覚リスクの影
(4)消費者の個人特性別にみた「知覚
響に関しては、既に研究がなされているため、我々
されたファッション・リスク」度
は知覚リスクに影響を与えるものはあるのだろう
2.仮説設定
かと疑問に感じた。そこで、知覚リスクに影響を
3.仮説検証
与えるものとして、我々は商品に対する「関心」
(1)調査概要と調査内容
に着目した。
(2)分析の手順と方法
(3)分析結果
(2)関心と関与の定義
4.新規提案
「ある物事に特に心を引かれること」や「注意
③ 結論
を向けること」など、様々な意味をもつ関心であ
1.本研究の限界
るが、我々は当研究において「自分にとって重要
1
である、あるいは影響があるために興味を持たせ
ること」と定義する。
・機能的リスク
そして、類語として意味を勘違いされる「関与」
商品の品質や性能に関した懸念や不安
について述べたい。この「関与」を知覚リスクに
・経済的リスク
影響を与えるものとして選定しない理由として、2
金銭や資産の損失を被ることへの懸念
点挙げる。
・身体的リスク
1 点目は、
「関与概念が研究ごとに異なる語意で
使用による病気や怪我の発生あるいは身体
使用されていることや、関与の語意の定義が不明
への悪作用に関する懸念
確である(小野晃典[1999])
」という点である。
・社会的リスク
2 点目は、関与とは「ある対象が個人の意識空間
他社や所属集団から不承認を受ける見込み
に占める重要度,個人と対象との結びつきの程度
・心理的リスク
(Krugman[1965])
」を表し、つまり、物事との関
美しさへの不満や屈辱を経験することへの不安
係を表しており、我々が着目した「興味」を第一
としていない点である。
以上の研究より、我々は「購買行動における関
心と知覚リスクの関連性」に関する研究を行う。
(3)知覚リスクの定義
(4)研究対象財の設定
当研究において知覚リスクとは「一連の購買行
動に伴う不確実性及び購買の結果に関する購買者
さて、我々は関心度が知覚リスクに与える影響
の主観的評価によるリスクである(Bauer[1967])」
を研究していく上で、研究対象財に絞り研究を進
と定義する。また、これまでの研究により、知覚
めることにした。この化粧品の中でも、
「基礎化粧
リスクには様々な種類があることが明らかとなっ
品」と「メイクアップ化粧品」という 2 種類に区
ているが、当研究においては Jacoby and
別する。これは、使用場面や性質が違うため感じ
Kaplan[1972]の知覚リスクのモデル「金銭的リス
る知覚リスクが異なると考えたためである。 この
ク、パフォーマンスリスク、身体的リスク、心理
2種類の定義は以下のようにする。
的リスク、社会的リスク」を基本とする。ただし、
・基礎化粧品
研究対象財の特徴を踏まえる必要があるため、
化粧水や乳液、美容液など皮膚を健康に保ち、
Fuchs and Reichel[2006]のモデル「金銭的リスク、
肌質自体を整えることを目的として使用する化粧
機能的リスク、心理的リスク、社会的リスク、心
品
理的リスク、時間的リスク、全体的リスク」より、
・メイクアップ化粧品
パフォーマンスリスクを「機能的リスク」とする。
肌を立体的に見せたり色を加えたりすることで
以上の研究より、我々は「機能的リスク、経済的
美しく見せることを目的として使われる化粧品
リスク、身体的リスク、社会的リスク、心理的リ
スク」の 5 つの知覚リスクを選定した。ここで、
(5)研究対象者の設定
Jacoby and Kaplan[1972]のモデルより、それぞれ
次に、研究対象者を女子大学生と限定した。こ
の知覚リスクの定義づけを行う。
こでいう女子大学生とは大学に通う女性のことを
指し、4年制の大学か短期大学かは問わない。
2
2.現状分析
も関心が高いことがわかる(表 1 参照)。
(1)研究対象財の妥当性
■表―――1
化粧品を選定した理由として、以下の2点を挙
メークを行うことへの好意度
げる。
1 点目は、化粧品は消費者に様々な種類の知覚リ
スクを感じさせる商品である点である。化粧品は
色やデザイン、ブランドなど様々な要素により購
買が左右される他に、自分の肌に直接使用すると
いう点で機能も重視されると考え、その分潜在的
な知覚リスクが多く存在すると考えた。
2 点目は、化粧品に対する関心の程度により、ど
の種類の知覚リスクを消費者が重視するのかとい
う差異が現れやすい点である。品設定について班
員で議論していた際に、化粧品に対する関心の高
(出典:
『:ポーラ文化研究所女性の化粧行動・意
低により班員の中でも何を重視するかが異なって
識に関する実態調査[2012]』
)
いた。そこから、関心の高い消費者と低い消費者
また、レポセンによる化粧品に関する調査によ
の感じる知覚リスクに差異が出やすい身近な商品
ると、20 代女性はほとんどが大学からかそれ以前
として化粧品が適していると考えた。
以上のことから、化粧品が関心に影響を受けや
にメイクを始めていることがわかる。そして他の
すい商品で尚且つ我々の研究に適していると考察
年代の女性がいつメイクを始めたかということを
し、研究対象財に設定した。
見ると、年々メイクを始める年齢が若年化してい
る傾向にあるのである(表 2 参照)。
このことから女子大学生は化粧品に対して関心
(2)研究対象者の妥当性
が高く研究対象者として適していると考えた
まず、女性に限定した理由としては、我々は化
粧品を一般的に女性向けのものと想定し、化粧品
■表―――2
に対する関心を女性に限定したほうが測りやすい
化粧品に関する調査
と考えたからである。さらに、大学生に絞り込ん
(出典:
『レポセン 化粧品に関する調査[2008]』)
だ理由として、考慮の必要がある以下の 3 点を挙
げる。
1 点目は、女子大生は化粧品への関心が高いとい
う点である(表 1、2 参照)。
ポーラ文化研究所が 2012 年に行った 15 歳~64 歳
の女性にメイクへの好意度についてアンケート行
ったところ、20~24 歳がメイクすることに対して
6 割以上が好意を持っており、他の年代と比べて最
2 点目は、衣料品やお洒落用品において、女性は
3
男性より、また若者は中高年に比べてリスクによ
利益計、売上高純利益率、総資産額、労働者数、
る影響が大きいという点である(神山[1997]よ
平均年齢、平均勤続年数、平均年収は対象企業一
り)
。
覧それぞれの合計もしくは平均を表したものであ
これについては既存研究のところで詳しく記述す
る。
る。
3 点目は、我々が大学生ということもあり、有効な
■表―――3
サンプル数が得られやすいという点である。
化粧品業界市場規模
(3)市場動向
前節において、研究テーマである「化粧品購買
における関心と知覚リスクの関連性」を明らかに
するために、化粧品が研究対象財に適しているこ
とが確かめられた。そこで本節では、化粧品がお
かれている市場を説明する。
化粧品業界の基本情報は次のようになっており、
また表 3 は各指標を 7 段階に分け視覚化したもの
(出典:『業界動向 SEARCH.COM』
である。
(表 3 参照)
http://gyokai-search.com/3-kesyo.htm)
業界規模:1 兆 7,608 億円
経常利益計:1,943 億円
また、表 4 のグラフは化粧品業界の業界規模の
売上高純利益率:+3.1%
推移をあらわしたものである。
過去 5 年の伸び率:+0.3%
化粧品市場の大まかな現状や動向を見てみると、
総資産額:2 兆 4,881 億円
平成 17 年から平成 20 年までは増加傾向にあった
労働者数:18,022 人
ものの、平成 21 年には減少に転じ、その後は伸び
平均年齢:37.8 歳
悩みを見せている。
平均勤続年数:9.4 年
■表―――4
平均年収:557 万円
化粧品業界の業界規模推移
業界規模は化粧品企業(化粧品資生堂、花王、
ポーラ・オルビスホールディングス、コーセー、
マンダム、ノエビアホールディングス、ファンケ
ル、ドクターシーラボ、ミルボン、ナリス化粧品、
ハウス
オブ
ローゼ、ハーバー研究所、日本色
材工業研究所、コタ、アイビー化粧品、アジュバ
ンコスメジャパン、フェヴリナホールディングス、
総医研ホールディングス)計 18 社の売上高の合計
(出典:『業界動向 SEARCH.COM』
を表している。過去 5 年の伸び率は過去 5 年間の
http://gyokai-search.com/3-kesyo.htm)
業界規模の対前年比の平均値を表したもの、経常
さらに近年では、長らく続いた景気不況の影響
4
もあり、低価格化・高機能を求める消費者の声が
(4)市場低迷の原因
多く、企業の収益力も低下しつつある。
前節では、化粧品市場が下降傾向にあることが
表 5 はポーラ研究所が行った女性の化粧行動・
明らかになった。そこで本節ではその原因を述べ
意識に関する実態調査[2013]にある、女性のメ
たい。
イクアップ化粧品にかける一ヶ月の平均金額を表
化粧品市場の低迷の原因は、景気不振による諸
したものである。2007 年からの時系列で、メーク
費者の低価格・高品質志向が挙げられるが、その
アップ化粧品全体の投資金額を見ると、3000 円以
他の原因として以下の 2 点を挙げる。
上の高金額層は減少しており、1500 円未満の低金
1 点目は、化粧品業界への異業種からの参入とい
額層が増加している。つまり、女性がメイクアッ
う点である。平成 20 年 1 月から富士フイルムが化
プ化粧品にかける一ヶ月の平均金額は減少傾向に
粧品『アスタリフト』を販売開始。現在では売上
ある。これは、表 6 より、20~24 歳の学生層にも
高が 10 億円を超え、取扱店舗も 7,000 店を突破す
同様のことが言える。
るなど好調な伸びを見せている。富士フイルムの
■表―――5
化粧品業界の参入により、味の素、サントリー、
女性全体のメークアップ化粧品 1 ケ月平均投資額
第一三共、江崎グリコなど、異業種からの参入は
相次ぎ、化粧品業界の競争は激化している。
2 点目は、
『アットコスメ』などインターネット
を通じた口コミサイトが普及し、さらに SNS の普
及も加わり、消費者の商品を見る目はますます厳
しくなっているという点である。
(5)現状分析まとめ
以上の現状分析により得られた知見は 2 点ある。
1 点目は、化粧品が「知覚リスクと関心度の関連性
(出典:
『ポーラ文化研究所女性の化粧行動・意
識に関する実態調査[2013)』
)
を確かめる」対象財として適していること、また、
■表―――6
対象者として女子大学生が適している点である。2
20~24 歳のメークアップ化粧品 1 ケ月平均投資額
点目は、我々の研究テーマである商品購買時にお
ける知覚リスクと商品に対する関心度の関連性を
見出すことは、激化した化粧品業界かつ飽和した
化粧品市場にとって、新しいマーケティングを生
み出す糸口となるという点である。
3.問題提起
上の現状分析を踏まえると、購買行動の妨げと
(出典:
『ポーラ文化研究所女性の化粧行動・意識
なる知覚リスクに影響を与え得る、新しい何かを
に関する実態調査[2013]』
)
発見することは、重要であると我々は考えている。
5
しかし、そもそも今回我々が注目した関心が、
名)
、50 歳代 97 名(男性 52 名、女性 45 名)
、で
知覚リスクに影響を与えているかどうか、また、
あった。調査は 1980 年 11 月から 12 月にかけて実
もし影響を与えていたとしても、どのような関連
施され、これを調査 A と呼ぶ。なお回収された 492
性があるかどうかは明らかではない。
票のうち、有効な調査票の数は 478 であった。
よって我々は、関心度が知覚リスクに影響を与
ファッション・リスク項目の尺度は、6 分類(機
えていることを証明し、またいったいどんな関連
能的、心理的、社会的、経済的、身体的、時間的
性が導けるのかを探っていき、新たなマーケティ
な各リスク)を基準に行った。ただし、これらの 6
ング戦略を提案することを本研究の目的とする。
つのリスクは、概念的な分類であって、必ずしも
経験的に基づけられていない。そこで、この 6 分
類にもとづくリスク項目に加えて、いくつかの研
究(Jenkins & Dickey、1976;高木、1983)で報告
②―――本論
された衣料品の購入評価基準も参考にして、合計
1.既存文献レビュー
60 個のファッション・リスク項目を選定した。そ
して、それらに質問内容の重複や類似性の観点か
らの検討を加えて、最終的に 38 項目からなるファ
我々の研究目的は、前述したように、消費者に
とって購買行動の妨げとなっている知覚リスクに
ッション・リスク評定尺度を作成した。
対して製品への関心度がどのような影響を与えて
被調査者に、購入しようと思っている衣服にそ
いるかを解明し、そこから知覚リスクの低減策、
れぞれのリスクがともなうものとして、そのこと
新たなマーケティング戦略を提案することである。
によって購入しようという自分の気持ちがどの程
本章では、我々が研究を進めていく上で参考に
度影響されるかを、一般的な観点から答えるよう
した既存研究について述べていく。今回我々は、
に求めた。具体的には、「非常に影響される」「少
神山[1997]の研究に着目した。神山[1997]は、
し影響される」「どちらともいえない」「あまり影
衣料品/お洒落用品購入時の知覚されたファッショ
響されない」
「全く影響されない」の 5 段階尺度に
ン・リスクについて研究しており、ここでは衣料
よって、リスク知覚の評定を求めた。そして、評
品/お洒落用品別にみた「知覚されたファッショ
定結果に対しては、
「非常に影響される」から「全
ン・リスク」度と消費者の個人特性別にみた「知
く影響されない」までの評定に対して、順番に 5
覚されたファッション・リスク」度を測定してい
点から 1 点の評点を与えた。
る。ここから、影響を与える要因によって知覚す
るリスクが異なることを確かめる。
(2)知覚されたファッション・リスクの構造
次に「知覚されたファッション・リスク」の構造
(1)
「知覚されたファッション・リスク」の測定
を経験的に明らかにするため、38 個のリスク項目
神山と高木(1987)は成人男女 492 名を被験者
(調
に対する 478 名の評定結果をデータとして、反復
査対象者)にして、ファッション・リスク度の調
推定を含む主因子法によって因子分析を行い、直
査を行った。被験者の内訳は、大学生 177 名(男
行回転(バリマックス回転)を行った。そして最
性 89 名、女性 88 名)
、30 歳台 116 名(男性 61 名、
終的に次のように 5 つの因子を解釈した。
女性 55 名)
、40 歳代 102 名(男性 47 名、女性 55
ⅰ服装規範からの逸脱懸念
6
“愚かに、思われるのではないか”、“人から、変
やセンスが悪いと、思われるのではないか”、“すぐ
な目で見られるのではないか”、“慎みがないと、思
流行遅れになってしまうのではないか”など、6 つ
われるのではないか”など、8 つのリスク項目から
のリスク項目から構成される因子であった。すな
構成される因子であった。すなわち、購入しよう
わち、流行性に対する不安や、流行変化に対する
とする衣服に対して他者がどのような評価を下す
対応の不安などを考慮したものである。
か、よくない評価を受けるのではないか、また仮
によい評価を受けたとしても気恥ずかしさを覚え
(3)衣料品/お洒落用品別にみた「知覚されたファ
るのではないか、などを考慮したものである。
ッション・リスク」度
また、神山ら(1993)は女子大学生 360 名(年齢
ⅱ品質・性能懸念
“体を動かしにくいのではないか”、“色あせが、
19 歳から 22 歳)を被調査者にして、ファッショ
しやすいのではないか”、“汚れが、目立ちやすいの
ン・リスク度の品目別調査を行った。そして評定
ではないか”、“型くずれが、しやすいのではないか”
労力を軽減するために、彼女たちを 1 グループ約
など、11 のリスク項目から構成される因子であっ
120 名によって構成し、等質性が確認ずみの 3 つ
た。すなわち、衣服を購入した後の維持や管理、
のグループに分けて評定にあたった。調査の対象
また着用時の着心地などを考慮したものである。
になった女子用衣料品/お洒落用品は、予備調査に
ⅲ着こなし懸念
よって選定された 100 品目であり、3 つのグルー
“着こなしが、難しいのではないか”、“自分には、
プがそれぞれ三十数品目ずつ担当した。ファッシ
似合わないのではないか”、“手持ちの服と、組合せ
ョン・リスク評定項目は合計 15 項目であり、それ
にくいのではないか”、“買ったあとで、後悔するの
らは、規範からの逸脱懸念から流行性懸念までの
ではないか”など、8 つのリスク項目から構成され
各因子に高い(因子)負荷量をもつ各 3 項目によ
る因子であった。すなわち、似合い、着こなし、
って構成された。これらの 15 項目によって構成さ
組み合わせなどへの不安から無用な金銭の浪費を
れるファッション・リスク評定尺度が 100 品目の
心配したものである。
個々に付けられ、各品目のリスク知覚度が調査 A
ⅳ自己顕示懸念
と同様の方法で測定された。調査は、1991 年 1 月
“自分を引き立てることが、出来ないのではない
から 5 月にかけて実施され、
これを調査 B と呼ぶ。
か”、“個性を発揮することが、出来ないのではない
3 つの評定者集団別に、リスク評定値をすべての品
か”、“自分の品位が、損なわれるのではないか”な
目について合わせ、それらをデータとして因子分
ど、5 つのリスク項目から構成される因子であった。
析を行った結果、いずれの集団とも上記の 5 種類
すなわち、衣服が自分を十分に表示してくれるか
の懸念(因子)が共通して抽出され、
「知覚された
どうか考慮したものであって、自分はこういう人
ファッション・リスク」をこの 5 つの懸念から分
間とか、こういう人間を目指しているといった自
析することが妥当であると判断された。女子用衣
己像の表示が、購入する特定の衣服によってどの
料品/お洒落用品 100 品目個々の「知覚されたファ
程度可能かという懸念や不安を表明したものであ
ッション・リスク」度(評定平均値と標準偏差)
った。
が、懸念の合計と 5 つの懸念別に示されている。5
ⅴ流行性懸念
つの懸念と懸念の合計を算出した結果、それぞれ
“流行に鈍感だと、思われるのではないか”、“趣味
に高い値を示す女子用衣料品/お洒落用品は、次の
7
ようであった。品質・性能懸念が高く出たのは下
ⅱ)衣服に対する自我関与の度合いが高い(Sontag
着類、基礎化粧品、素材がゆえに気遣いが要求さ
& Schlator,1982)
、などの米国における報告とも符
れる外衣である。服装からの逸脱懸念が高く出た
合している。
のは身体や脚を露出/誇張する衣服、メーキャップ
同様に 5 つの因子に関して、
因子スコアを用いて、
化粧品類、特定の見回り品、その他スキーウェア
リスク知覚度を年代間で比較したものである。着
や訪問着などである。着こなし・使いこなし懸念
こなし懸念や自己顕示懸念などに、20 代と 40 代
が大きかったのはコート・上着類、スカート、股
および 20 代と 50 代の間にそれぞれに有意な差が
のあるズボン類、特定の見回り品である。流行性
認められ、20 代の若年齢層はこれらの懸念が強か
懸念は特定のスポーツウェア、コート・上着類、
った。また同年代の中で性別に着目して見てみる
その他ブーツなどで高く出て、自己顕示懸念は礼
と、20 代の若者の男女間に、すべてのリスクに及
服・外出用和装品、特定の見回り品、特定のスポ
ぶ知覚度の差が顕著にあらわれ、特に 20 代の女性
ーツウェア、コート・上着類、その他メーキャッ
がファッション・リスクに影響されやすかった。
プ化粧品やロングスカートなどが高かった。そし
さらに、着こなし懸念と品質・性能懸念にはすべ
て懸念の合計値が特に大きいのはコート・上着類、
ての年代の男女間で顕著な差がみられ、女性にお
いくつかの見回り品、礼装・外出用和装長着、股
いて、特にこれらの懸念が強かった。つまり年齢
のある下衣であった。このように品目によって懸
は若いほど、そして性別も男性より女性の方がリ
念の大小や性質が異なることがわかる。
スク認知の程度が異なることがわかった。
●ファッション・リスクの知覚と社会心理的特性
また、調査 A では、消費者の社会心理的特性が
(4)消費者の個人特性別にみた「知覚されたファ
ッション・リスク」度
ファッション・リスクの知覚度やリスク諸成分の
●ファッション・リスクの知覚とデモグラフィッ
相対的な重みに及ぼす影響も検討した。社会心理
ク属性
的特性を測定するために用いられた尺度は、37 評
調査 A では、消費者のデモグラフィック属性、
定項目からなる 9 尺度であった。
「自己実現欲求」
特に性と年齢(年代)の相違が、ファッション・
「劣等感」「心理的センシティビティ」「自己顕示
リスクの知覚度やリスク諸成分の相対的な重みに
欲求」
「好奇心」
「情報欲求」
「同調性」各項目に対
及ぼす影響も検討された(神山と高木、1987b)。
する回答は、
「はい」
「いいえ」の 2 つのカテゴリ
そこでこれからデモグラフィック変数と知覚リス
ー、あるいは「全くそう思う」から「全然そう思
クとの関連性を見ていく。「知覚されたファッショ
わない」にいたる 4 段階のカテゴリーになってお
ン・リスク」を構成する 5 つの因子に関して、因
り(ただし「好奇心」尺度は、
(甲)
、
(乙)のいず
子スコアを用いて、リスク知覚度を男女で比較し
れかを選択)
、回答に対する評点の与え方は、既存
たところ、結果はリスク知覚度の性差はすべての
尺度の方法に準じた。
因子に関して明瞭に(男女において逆に)あらわ
5 つのリスク因子と 9 つの社会心理的特性の間の
れ、男子がファッション・リスクに影響されにく
相関係数を算出し、また個々の社会心理的特性の
いのに対して、女性は影響されやすかった。この
評定値を中央値にもとづいて高低に二分し、それ
結果は、女性は男性くらべて、ⅰ)衣服から自己
と性および年代の三要因で分散分析を行った。
像を規定する度合いが高い(Creekmore,1974)、
これらの分析により、少なくとも当調査でとり
8
あげた社会心理的特性と「知覚されたファッショ
人的な差異化の欲求」の拮抗によって誘発される
ン・リスク」との間の関連性は、次のようであっ
と考えられる。
た。服装規範からの逸脱懸念と同調性、劣等感、
以上のことにより、消費者の個人特性は知覚リ
情報欲求などとの間に、それぞれ関連性が認めら
スクに影響を与えるといえるだろう。
れた。すなわち、それらの社会心理的特性の度合
2.仮説設定
いが高い人ほど、購入衣服に対して、服装規範か
らの逸脱を強く懸念する傾向があった。次に、着
こなし懸念と情緒安定性、劣等感、自己実現欲求
以上の既存研究より、我々は化粧品購買行動に
との間に、それぞれ関連性が認められた。すなわ
おける関心と知覚リスクの関連性を調査するため、
ち、情緒が不安定なほど、劣等感が高いほど、自
仮説をたてる。
己実現欲求が強いほど、購入衣服に対して着こな
仮説 1:メイクアップ化粧品に対する関心と基礎化
しを強く懸念する傾向があった。また、自己顕示
粧品に対する関心は相関が見られない
懸念と自己実現欲求、自己顕示欲求との間に、そ
仮説 2-1:関心は経済的知覚リスクに影響を与える
れぞれの関連性が認められた。つまり、これらの
仮説 2-2:関心は機能的知覚リスクに影響を与える
欲求が強いほど、購入衣服に対して自己顕示の可
仮説 2―3:関心は身体的知覚リスクに影響を与える
能性を強く懸念する傾向があった。さらに流行性
仮説 2―4:関心は心理的知覚リスクに影響を与える
懸念と自己実現欲求、自己顕示欲求、情緒安定性、
仮説 2―5:関心は社会的知覚リスクに影響を与える
情報欲求、劣等感、同調性、好奇心との間いそれ
仮説 3-1:メイクアップ化粧品に対する関心が高い
ぞれ関連性が認められた。すなわち、社会心理的
と、物理的リスク(金銭的リスク・機能的リスク・身
特性の度合いが高いほど(情緒安定性については、
体的リスク)に比べ、心理的リスク(心理的リスク・社
情緒が不安定なほど)
、購入衣服に対して流行性を
会的リスク)を懸念する
強く懸念する傾向があった。なお、流行性懸念と
仮説 3-2:メイクアップ化粧品に対する関心が低い
社会心理的特性の間の関連性は、他のリスク成分
と、心理的リスク(心理的リスク・社会的リスク)に比
と社会心理的特性の間の関連性以上に、顕著にあ
べ、物理的リスク(金銭的リスク・機能的リスク・身
らわれた。それに対して、品質・性能懸念と社会
体的リスク)を懸念する
心理的特性の間には、特にきわだった関連性は認
仮説 4:基礎化粧品の購買において、懸念する知覚
められなかった。
リスクは、関心度によりあまり異ならない
以上の結果より、
「知覚されたファション・リスク」
仮説 5-1:メイクアップ化粧品の購買において、関
を構成する諸懸念と比較的明白な関連性を示した
心は社会心理的特性に比べ、知覚リスクに影響を与
社会心理的特性は、劣等感、情報欲求、同調性、
える
情緒安定性、自己実現欲求、自己顕示欲求などで
仮説 5-2:基礎化粧品の購買において、関心は社会
ある。このうち、劣等感、情報欲求、同調性など
心理的特性に比べ、知覚リスクに影響を与える
は「社会的な同調の欲求」として、自己実現欲求、
自己顕示欲求などは「個人的な差異化(差別化)
の欲求」として分類できる。したがってファッシ
ョン・リスクの知覚は、
「社会的な同調の欲求」
「個
9
3.仮説検証
Q2
今後、メイクアップ化粧品にお金をかけた
いと思いますか
本章では、上述した仮説モデルの有効性を調査、
分析を通して実証していく。
Q3
メイクアップを始めた年齢はいつですか
Q4
メイクアップ化粧品を購買する理由で最も
多い理由は何ですか
(1)調査概要と調査内容
第二部(Q5~16)は、メイクアップ化粧品の購
●調査概要
買における知覚リスクに関する設問である。
本研究では、Google のフォーム機能を利用しア
尺度は、
「まったく影響されない」を「1」とし、
ンケートを作成し、インターネットおよび紙媒体
「とても影響される」を「5」とする 5 段階のリッ
で回答を収集した。調査対象は、研究対象財の購
カート尺度を採用した。
入経験を考慮し 18 歳~22 歳までの女子大学生とし
■表―――9
た。
Q5
調査期間は 10 月 13 日~10 月 23 日の 11 日間で、
ているかどうか
サンプル数は 366 人であった。そのうち、著しく
Q6
回答に隔たりのある回答数が 49 人であったため有
効回答数は 317 人であった。
(表
同じようなメイクアップ化粧品を持っ
手持ちのメイクアップ化粧品と組み合
わせがしづらいかどうか
)
■表―――7
●アンケート調査の概要
Q7
使いやすいかどうか
Q8
化粧品自体の質が良いかどうか
Q9
化粧品の質が悪影響を及ぼすかどうか
Q10
ブランド名が知られているかどうか
調査方法
紙媒体、インターネット
調査対象
女子大学生(18 歳~22 歳)
調査期間
10 月 13 日~10 月 23 日
Q11
自分の顔に似合うかどうか
サンプル数
366 人
Q12
使いこなせるかどうか
有効回答数
317 人
Q13
品位が損なわれるかどうか
対象財
化粧品
Q14
人から変な目でみられるかどうか
Q15
派手すぎるかどうか
Q16
趣味やセンスが悪いと思われるかどう
(安全性において)
(メイクアップ化粧品、基礎化粧
品)
か
●調査内容
本研究におけるアンケートは五部構成である。
第三部(Q17~Q20)は、基礎化粧品に対する関
心に関する設問であり、選択回答である。
第一部(Q1~4)は、メイクアップ化粧品に対
■表―――10
する関心に関する設問であり、選択回答となって
Q17
いる。
思いますか
■表―――8
Q1
いろいろな基礎化粧品を試したいと
いろいろなメイクアップを試したいと思い
Q18
今後、基礎化粧品にお金をかけたいと
思いますか
ますか
10
Q19
基礎化粧品を始めた年齢はいつです
Q34
か
Q20
何人かで話をする時は、いつも中心に
なりたいと思う
基礎化粧品をどれくらい持っていま
Q35
心配性である
すか
Q36
気が変わりやすい
Q37
自分は役に立たない人間だと思うこ
第四部(Q21~30)は、基礎化粧品の購買にお
とがある
ける知覚リスクに関する設問である。
尺度は、第二部と同様である。
Q38
自分は、悪い人間だと思うことがある
Q39
一般に、何か他人が知っていて自分が
■表―――11
知らないことがあると非常に恥ずか
Q21
しい
同じような基礎化粧品を持っているかど
うか
Q22
Q40
手持ちの基礎化粧品と組み合わせがしづ
どんなことでもできるだけ詳しく、徹
底的に知ろうとするべきだ
らいかどうか
Q41
何をするにしても、周囲の人とあまり
Q23
使い心地が良いかどうか
違ったことをしないように心掛ける
Q24
化粧品自体の質が良いかどうか
ことは良いことだ
Q25
化粧品の質が悪影響を及ぼすかどうか
Q26
ブランド名が知られているかどうか
Q42
世の中で一番大切なことは、皆が仲良
く力を合わせてやっていくことだ
(安全性において)
Q27
効果があらわれるかどうか(美白・保湿
(2)分析手順と方法
など)
Q28
使いこなせるかどうか
Q29
人から変な目でみられるかどうか
Q30
趣味やセンスが悪いと思われるかどうか
本節では、分析の大まかな手順と分析方法を述
べる。
Ⅰ.メイクアップ化粧品および基礎化粧品に対
する関心度
方法:回帰分析
第五部(Q31~42)は、社会心理的特性に関す
メイクアップ化粧品および基礎化粧品に対す
る設問である。
る関心度に相関がみられるかどうかを明らかにす
尺度は、
「まったくそう思わない」を「1」とし、
る。
「とてもそう思う」を「5」とする 5 段階のリッカ
ート尺度を採用した。
Ⅱ.メイクアップ化粧品および基礎化粧品に対
■表―――12
Q31
する関心に関する設問の信頼性
一つのことにはなかなか決心がつか
方法:因子分析
ず、機会を失うことが多い
Q32
Q33
我々は、設問項目を作成するに当たり知覚リ
あの人のように、優れていればなぁと
思うことが頻繁にある
スクおよび社会心理的特においては、既存研究や
有名人と知り合いになりたいと思う
文献ですでに関連性の妥当性が認められている設
問を抜粋したが、メイクアップ化粧品および基礎
11
化粧品の関心に対する設問は、我々独自に作成し
また、共分散構造分析を行う過程で関心度の
た。
差異による知覚リスクへの影響を明らかにするた
そのため、上述した関心に対する設問が本当
めに多母集団分析を行う。
に関心度をはかる指標として適切な設問であるか
ⅳ.化粧品購買における社会心理的特性が与える
は分からない。
知覚リスクへの影響モデル
したがって、我々は各設問が適切であるかどう
方法:共分散構造分析
かを確認するために因子分析を行う。
化粧品を購入する際に、社会心理的特性が与
える知覚リスクへの影響を明らかにする。
Ⅲ.化粧品購買における関心が与える知覚リスク
手順Ⅱ同様に、対象財である化粧品はメイクアッ
への影響モデル
プ化粧品と基礎化粧品に分けて調査を行っている
方法:共分散構造分析、多母集団分析
ため影響モデルは 2 つある。
化粧品を購入する際に、関心が与える知覚リス
ⅰ.メイクアップ化粧品購買における社会心理的
クへの影響を明らかにする。
特性が与える知覚リスクへの影響モデル
およびに、関心度の差異が与える知覚リスクへの
ⅱ.基礎化粧品購買における社会心理的特性が与
影響を明らかにする。
える知覚リスクへの影響モデル
本研究では、対象財である化粧品をメイクアップ
化粧品と基礎化粧品に分けて調査を行っているた
また、手順Ⅰ、手順Ⅱは統計分析ソフト R を、そ
め影響モデルは 6 つある。
して手順Ⅲ、手順Ⅲⅳは、株式会社 IBM の統計パ
ⅰ.メイクアップ化粧品購買における関心が
ッケージ「IBM SPSS Amos21」を使用する。
与える知覚リスクへの影響モデル
ⅱ.メイクアップ化粧品購買における高関心
(3)分析結果
が与える知覚リスクへの影響モデル
本節では、上述した分析の検証結果を述べる。
ⅲ.メイクアップ化粧品購買における低関心
順番は、先の手順通りに掲示していく。
が与える知覚リスクへの影響モデル
Ⅰ.メイクアップ化粧品および基礎化粧品に対す
ⅳ.基礎化粧品購買における関心が与える知
る関心度
覚リスクへの影響モデル
表の赤丸は信頼度を表しており、有意であるこ
ⅴ.基礎化粧品購買における高関心が与える
とが明らかである。
知覚リスクへの影響モデル
しかし、表より、分析結果が右上がりのグラフ
ⅵ.基礎化粧品購買における低関心が与える
がわかる。しかし、表の赤四角で表されている調
知覚リスクへの影響モデル
整済み決定係数の値が低いため、グラフの正確性
共分散構造分析とは、調査により観測された
が低い。そのため、メイクアップ化粧品に対する
変数をもとに観測できない潜在変数を導き、デー
関心と基礎化粧品に対する関心の度合いに相関が
タとモデルの適合度を調べる分析手法である。本
あるかどうかは明らかではない。
研究では、関心が知覚リスクに与える影響を明ら
かにしたい。そのうえで、共分散構造分析は適切
これにより、仮説 1 は立証された。
な分析手法であるといえるだろう。
12
■表―――13
Ⅱ.メイクアップ化粧品および基礎化粧品に対す
る関心に関する設問の信頼性
■表―――15
メイクアップ化粧品
Q1
設問項目
いろいろなメイクアップを試したいと思
いますか
Q2
今後、メイクアップ化粧品にお金をかけ
たいと思いますか
Q3
メイクアップを始めた年齢はいつですか
Q4
メイクアップ化粧品を購買する理由で最
も多い理由は何ですか
■表―――14
■表―――16
Unique nesses
Q1
Q2
Q3
Q4
0.571
0.534
0.867
0.840
Loadings
Factor1
Factor2
Q1
0.616
0.225
Q2
0.649
0.213
Q3
0.246
0.268
Q4
0.303
0.261
■表―――17
因子のスクリープロット
13
これより、Unique nesses において Q1,Q2 は数値
これより、Unique nesses において Q17,Q18 は数
が低く抽出され、因子への説明力が高いとされる。
値が低く抽出され、因子への説明力が高いとされ
そのため、本研究ではメイクアップ化粧品の関心
る。
に対する設問項目において Q1、Q2 を採用する。
そのため、本研究では基礎化粧品の関心に対する
設問項目において Q17、Q18 を採用する。
■表―――18
基礎化粧品 設問項目
Q17
Ⅲ.化粧品購買における関心が与える知覚リスク
への影響モデル
いろいろな基礎化粧品を試したいと思い
ⅰ.メイクアップ化粧品購買における関心が与
ますか
Q18
える知覚リスクへの影響モデル
今後、基礎化粧品にお金をかけたいと思
ⅱ.メイクアップ化粧品購買における高関心が
いますか
Q19
基礎化粧品を始めた年齢はいつですか
Q20
基礎化粧品をどれくらい持っていますか
与える知覚リスクへの影響モデル
ⅲ.メイクアップ化粧品購買における低関心が
与える知覚リスクへの影響モデル
ⅳ.基礎化粧品購買における関心が与える知覚
■表―――19
リスクへの影響モデル
Unique nesses
Q17
Q18
Q19
Q20
0.502
0.496
0.839
0.716
ⅴ.基礎化粧品購買における高関心が与える知
覚リスクへの影響モデル
ⅵ.基礎化粧品購買における低関心が与える知
覚リスクへの影響モデル
Loadings
Factor1
Factor2
Q17
0.522
0.069
Q18
0.646
0.294
Q19
0.307
0.258
Q20
0.474
0.243
最初に、今回共分散構造分析で使用するモデル
を掲示する。また、使用した潜在変数と観測変数
を以下に示しておく。
(表 20)
14
■表―――20
Ⅲ.化粧品購買における関心が与える知覚リスクへの影響モデル(メイクアップ化粧品)
■表―――21
検証モデルの潜在変数と観測変数
潜在変数
観測変数
設問項目
関心
Q1
いろいろなメイクアップ化粧品を試したいと思いますか
Q2
今後、メイクアップ化粧品にお金をかけたいと思いますか
Q5
同じようなメイクアップ化粧品を持っているかどうか
Q6
手持ちのメイクアップ化粧品と組みあわせがしづらいかどうか
Q7
使いやすいかどうか
Q8
化粧品自体の質が良いかどうか
Q9
化粧品の質が悪影響を及ぼすかどうか
Q10
ブランド名が知られているかどうか(安全性において)
Q11
自分の顔に似合うかどうか
Q12
使いこなせるかどうか
Q13
品位が損なわれるかどうか
Q14
人から変な目でみられるかどうか
Q15
派手すぎるかどうか
Q16
趣味やセンスが悪いと思われるかどうか
経済的リスク
機能的リスク
身体的リスク
心理的リスク
社会的リスク
15
表 20 において、潜在変数となるのは「関心」およ
をもとに設問を設定した。
びに知覚リスクである「経済的リスク」、「機能的
知覚リスクである「経済的リスク」、「機能的リ
リスク」、「身体的リスク」、「心理的リスク」、「社
スク」
、
「身体的リスク」に関する観測変数は 2 つ
会的リスク」である。
の設問を設定し、
「心理的リスク」
、
「社会的リスク」
「関心」に関する観測変数は上述した因子分析
に関する観測変数は 3 つの設問を設定した。
■表―――22
Ⅲ.化粧品購買における関心が与える知覚リスクへの影響モデル(基礎化粧品)
■表―――23
検証モデルの観測変数と潜在変数
潜在変数
観測変数
設問項目
関心
Q17
いろいろな基礎化粧品を試したいと思いますか
Q18
今後、基礎化粧品にお金をかけたいと思いますか
Q21
同じような基礎化粧品を持っているかどうか
Q22
手持ちの基礎化粧品と組み合わせがしづらいかどうか
Q23
使い心地が良いかどうか
Q24
化粧品自体の質が良いかどうか
Q25
化粧品の質が悪影響を及ぼすかどうか
Q26
ブランド名が知られているかどうか(安全性において)
Q27
効果があらわれるかどうか(美白・保湿など)
Q28
使いこなせるかどうか
Q29
人から変な目でみられるかどうか
Q30
趣味やセンスが悪いと思われるかどうか
経済的リスク
機能的リスク
身体的リスク
心理的リスク
社会的リスク
16
表 22 において、潜在変数となるのは「関心」およ
をもとに設問を設定した。
びに知覚リスクである「経済的リスク」、「機能的
知覚リスクである「経済的リスク」、「機能的リ
リスク」、「身体的リスク」、「心理的リスク」、「社
スク」、「身体的リスク」、「心理的リスク」、「社会
会的リスク」である。
的リスク」に関する観測変数は 2 つの設問を設定
「関心」に関する観測変数は上述した因子分析
した
■表―――24
Ⅲ-ⅰ.メイクアップ化粧品購買における関心が与える知覚リスクへの影響モデル
有意確率
.000
自由度(DF)
74
CMIN/DF
3.800
GFI
0.891
AGFI
0.846
RMSEA
0.094
パス図
標準化推定
有意確率
値
経済的リスク <--- 関心
.656
.001
仮説 2-1
有意水準 1%で支持
機能的リスク <--- 関心
.903
***
仮説 2-2
有意水準 0.1%で支持
身体的リスク <--- 関心
.855
***
仮説 2-3
有意水準 0.1%で支持
17
心理的リスク <--- 関心
1.000
***
仮説 2-4
有意水準 0.1%で支持
社会的リスク <--- 関心
.638
***
仮説 2-5
有意水準 0.1%で支持
Q1 <--- 関心
.252
***
Q2 <--- 関心
.322
***
Q5 <--- 経済的リスク
.541
***
Q6 <--- 経済的リスク
.723
***
Q7 <--- 機能的リスク
.445
***
Q8 <--- 機能的リスク
.592
***
Q9 <--- 身体的リスク
.492
***
Q10 <--- 身体的リスク
.440
***
Q11 <--- 心理的リスク
.594
***
Q12 <--- 心理的リスク
.570
***
Q13 <--- 心理的リスク
.517
***
Q14 <--- 社会的リスク
.730
***
Q15 <--- 社会的リスク
.641
***
Q16 <--- 社会的リスク
.691
***
一般的に GFI、AGFI はそれぞれ 1 に近いほどモ
を見ると、GFI、AGFI は比較的高い値をとっている。
デルとして妥当であることを証明する。また、GFI
また、RMSEA は 0.1 以下である。よって、本モデル
と AGFI の値の差が小さいほどモデルの適合は高い
は十分に採用できるといえるだろう。
とされている。そして、RMSEA は 0.1 以下で 0 に
パス図に関しては、
「関心」から「経済的リスク」
近いほど良いとされ、CMIN/DF は Bollen[1989]
へのパスは 1%水準で、それ以外はすべてのパスが
によると、5.00 を下回っていればモデルの適合性
有意水準 0.1%で支持された。
は高いといえる。
パス係数の度合いから、メイクアップ化粧品の
購買において、消費者は最も「心理的リスク」を
分析は、最尤法、反復回数 13 回で最適化計算が
懸念し、次いで「機能的リスク」、
「身体的リスク」
、
正常に終了した。以上のことを踏まえて分析結果
「経済的リスク」、「社会的リスク」を懸念すると
いえる。
18
■表―――25
Ⅲ-ⅱ.メイクアップ化粧品購買における高関心が与える知覚リスクへの影響モデル
有意確率
.000
自由度(DF)
100
CMIN/DF
1.831
GFI
0.912
AGFI
0.862
RMSEA
0.051
パス図
標準化推定値
有意確率
経済的リスク <--- 関心
.658
***
仮説 2-1
有意水準 0.1%で支持
機能的リスク <--- 関心
.802
***
仮説 2-2
有意水準 0.1%で支持
身体的リスク <--- 関心
.740
***
仮説 2-3
有意水準 0.1%で支持
心理的リスク <--- 関心
1.000
***
仮説 2-4
有意水準 0.1%で支持
社会的リスク <--- 関心
.746
***
仮説 2-5
有意水準 0.1%で支持
19
Q5 <--- 経済的リスク
.496
***
Q6 <--- 経済的リスク
.710
***
Q7 <--- 機能的リスク
.424
***
Q8 <--- 機能的リスク
.569
***
Q9 <--- 身体的リスク
.543
***
Q10 <--- 身体的リスク
.398
.004
Q11 <--- 心理的リスク
.514
***
Q12 <--- 心理的リスク
.485
***
Q13 <--- 心理的リスク
.590
***
Q14 <--- 社会的リスク
.770
***
Q15 <--- 社会的リスク
.711
***
Q16 <--- 社会的リスク
.653
***
分析は、最尤法、反復回数 12 回で最適化計算が
へのパスは 1%水準で、それ以外はすべてのパスが
正常に終了した。モデルの適合度は GFI、AGFI は、
有意水準 0.1%で支持された。
比較的高い値をとっており、RMSEA は 0.051 と高い
パス係数の度合いから、メイクアップ化粧品の
値である。よって、本モデルは十分に妥当である
購買において関心度が高い消費者は「心理的リス
といえるだろう。
ク」を最も懸念し、次いで「機能的リスク」、「社
パス図に関しては、
「心理的リスク」から「Q10」
会的リスク」、「身体的リスク」、「経済的リスク」
を懸念するといえる。
20
■表―――26
Ⅲ-ⅲメイクアップ化粧品購買における低関心が与える知覚リスクへの影響モデル
有意確率
.000
自由度(DF)
100
CMIN/DF
1.831
GFI
0.912
AGFI
0.862
RMSEA
0.051
パス図
標準化推定値
有意確率
経済的リスク <--- 関心
.592
.002
仮説 2-1
有意水準 1%で支持
機能的リスク <--- 関心
.942
***
仮説 2-2
有意水準 0.1%で支持
身体的リスク <--- 関心
.954
***
仮説 2-3
有意水準 0.1%で支持
心理的リスク <--- 関心
.1.000
***
仮説 2-4
有意水準 0.1%で支持
21
社会的リスク <--- 関心
.578
***
Q5 <--- 経済的リスク
.500
***
Q6 <--- 経済的リスク
.853
***
Q7 <--- 機能的リスク
.532
***
Q8 <--- 機能的リスク
.581
***
Q9 <--- 身体的リスク
.537
***
Q10 <--- 身体的リスク
.376
***
Q11 <--- 心理的リスク
.605
***
Q12 <--- 心理的リスク
.641
***
Q13 <--- 心理的リスク
.491
***
Q14 <--- 社会的リスク
.703
***
Q15 <--- 社会的リスク
.583
***
Q16 <--- 社会的リスク
.708
***
分析は、最尤法、反復回数 12 回で最適化計算が
仮説 2-5
有意水準 0.1%で支持
パス係数の度合いから、メイクアップ化粧品の
正常に終了した。
購買において関心度が低い消費者は「心理的リス
多母集団分析を行っているため、モデルの適合度
ク」を最も懸念し、次いで「身体的リスク」、「機
はⅡ-ⅱと同様である。よって、本モデルは十分
能的リスク」、「経済的リスク」、「社会的リスク」
に妥当であるといえるだろう。
を懸念するといえる。
パス図に関しては、
「関心」から「経済的リスク」
へのパスは 1%水準で、それ以外はすべてのパスが
Ⅲ―ⅱ、Ⅲ-ⅲにより、仮説 3-1 と仮説 3-2
有意水準 0.1%で支持された。
が立証された。
22
■表―――27
Ⅲ-ⅳ基礎化粧品購買における関心が与える知覚リスクへの影響モデル
有意確率
.000
自由度(DF)
51
CMIN/DF
2.477
GFI
0.935
AGFI
0.900
RMSEA
0.068
パス図
標準化推定値
有意確率
経済的リスク <--- 関心
.580
***
仮説 2-1
有意水準 0.1%で支持
機能的リスク <--- 関心
1.000
***
仮説 2-2
有意水準 0.1%で支持
身体的リスク <--- 関心
1.000
***
仮説 2-3
有意水準 0.1%で支持
心理的リスク <--- 関心
.956
***
仮説 2-4
有意水準 0.1%で支持
社会的リスク <--- 関心
.298
***
仮説 2-5
有意水準 0.1%で支持
Q18 <--- 関心
.539
***
Q17 <--- 関心
.391
***
Q21 <--- 経済的リスク
.490
***
Q22 <--- 経済的リスク
.829
***
Q23 <--- 機能的リスク
.597
***
23
Q24 <--- 機能的リスク
.549
***
Q25 <--- 身体的リスク
.396
***
Q26 <--- 身体的リスク
.249
***
Q27 <--- 心理的リスク
.687
***
Q28 <--- 心理的リスク
.462
***
Q29 <--- 社会的リスク
.829
***
Q30 <--- 社会的リスク
.615
.002
分析は、最尤法、反復回数 10 回で最適化計算が
パス図に関しては、
「社会的リスク」から「Q30」
正常に終了した。
へのパスは 1%水準で、それ以外はすべてのパスが
モデルの適合度は GFI、AGFI は 0.935、0.900 と高
有意水準 0.1%で支持された。
い値をとっており、RMSEA も比較的高い値である。
パス係数の度合いから、基礎化粧品の購買にお
よって、本モデルは十分に妥当であるといえるだ
いて消費者は「機能的リスク」を最も懸念し、
ろう。
次いで「身体的リスク」、「心理的リスク」、「経済
的リスク」
、
「社会的リスク」を懸念するといえる。
24
■表―――28
Ⅲ-ⅴ.基礎化粧品購買における高関心が与える知覚リスクへの影響モデル
有意確率
.000
自由度(DF)
68
CMIN/DF
1.965
GFI
0.924
AGFI
0.877
RMSEA
0.055
パス図
標準化推定値
有意確率
経済的リスク <--- 関心
.500
.002
仮説 2-1
有意水準 1%で支持
機能的リスク <--- 関心
1.000
***
仮説 2-2
有意水準 0.1%で支持
身体的リスク <--- 関心
1.000
***
仮説 2-3
有意水準 0.1%で支持
25
心理的リスク <--- 関心
1.000
***
仮説 2-4
有意水準 0.1%で支持
社会的リスク <--- 関心
.242
.048
仮説 2-5
有意水準 5%で支持
Q21 <--- 経済的リスク
.599
***
Q22 <--- 経済的リスク
.781
***
Q23 <--- 機能的リスク
.630
.***
Q24 <--- 機能的リスク
.547
***
Q25 <--- 身体的リスク
.331
***
Q26 <--- 身体的リスク
.273
.016
Q27 <--- 心理的リスク
.574
***
Q28 <--- 心理的リスク
.376
***
Q29 <--- 社会的リスク
.799
***
Q30 <--- 社会的リスク
.726
.036
分析は、最尤法、反復回数 10 回で最適化計算が
から「Q26」へのパスが 5%水準、
「関心」から「経
正常に終了した。
済的リスク」が 1%水準、
モデルの適合度は GFI、AGFI は 0.924,0.877 と
それ以外はすべてのパスが有意水準 0.1%で支持さ
高い値をとっており、RMSEA も 0.055 と高い値であ
れた。
る。
パス係数の度合いから、基礎化粧品の購買にお
よって、本モデルは十分に妥当であるといえるだ
いて関心度が高い消費者は「機能的リスク」を最
ろう。
も懸念し、次いで「身体的リスク」、「心理的リス
パス図に関しては、
「関心」から「社会的リスク」」
ク」、「経済的リスク」、「社会的リスク」を懸念す
と「社会的リスク」から「Q30」、「身体的リスク」
るといえる。
26
■表―――29
Ⅲ-ⅵ.基礎化粧品購買における低関心が与える知覚リスクへの影響モデル
有意確率
.000
自由度(DF)
68
CMIN/DF
1.965
GFI
0.924
AGFI
0.877
RMSEA
0.055
パス図
標準化推定
有意確率
値
経済的リスク <--- 関心
.728
.001
仮説 2-1
有意水準 1%で支持
機能的リスク <--- 関心
1.000
***
仮説 2-2
有意水準 0.1%で支持
27
身体的リスク <--- 関心
1.000
.013
仮説 2-3
有意水準 5%で支持
心理的リスク <--- 関心
1.000
***
仮説 2-4
有意水準 0.1%で支持
社会的リスク <--- 関心
.511
***
仮説 2-5
有意水準 0.1%で支持
Q21 <--- 経済的リスク
.407
***
Q22 <--- 経済的リスク
.864
***
Q23 <--- 機能的リスク
.452
***
Q24 <--- 機能的リスク
.666
***
Q25 <--- 身体的リスク
.217
***
Q26 <--- 身体的リスク
.248
.063
Q27 <--- 心理的リスク
.638
***
Q28 <--- 心理的リスク
.660
***
Q29 <--- 社会的リスク
.798
***
Q30 <--- 社会的リスク
.547
.001
分析は、最尤法、反復回数 10 回で最適化計算が
水準 0.1%で支持された。
正常に終了した。
パス係数の度合いから、基礎化粧品の購買にお
多母集団分析を行っているため、モデルの適合度
いて関心度が低い消費者は「身体的リスク」を最
はⅡ-ⅴと同様である。よって、本モデルは十分
も懸念し、次いで「機能的リスク」、「心理的リス
に妥当であるといえるだろう。
ク」、「経済的リスク」、「社会的リスク」を懸念す
パス図に関しては、
「身体的リスク」から「Q26」
るといえる。
へのパスは 10%水準で、
「関心」から「身体的リス
Ⅲ―ⅴ、Ⅲ―ⅵにより、仮説 4 が立証された。
ク」へのパスは 5%水準、また「関心」から「経済
Ⅲ-ⅰ~ⅵにより、仮説 2-1、仮説 2-2、仮説
的リスク」
、
「社会的リスク」から「Q30」へのパス
2-3、仮説 2-4、仮説 2-5 が立証された。
は 1%水準であり、それ以外はすべてのパスが有意
28
■表―――30
Ⅳ-ⅰ.メイクアップ化粧品購買における社会心理的特性が与える知覚リスクへの影響モデル
■表―――31
検証モデルの潜在変数と観測変数
潜在変数
観測変数
社会心理的特性
Q31~Q42
劣等感
Q31
一つのことにはなかなか決心がつかず、機会を失うことが多い
Q32
あの人のように優れていればなぁと思うことが頻繁にある
Q33
有名人と知り合いになりたいと思う
Q34
何人かで話をする時は、いつも中心になりたいと思う
Q35
心配性である
Q36
気が変わりやすい
Q37
自分は、役に立たない人間だと思うことがある
Q38
自分は、悪い人間だと思うことがある
Q39
一般に、何か他人が知っていて自分が知らないことがあると非常に恥ず
自己顕示欲求
情緒安定性
自尊心
情報欲求
設問項目
かしい
同調性
Q40
どんなことでもできるだけ詳しく、徹底的に知ろうとするべきだ
Q41
何をするにしても、周囲の人とあまり違ったことをしないよう心掛ける
ことは良いことだ
Q42
世の中で一番大切なことは、皆が仲良く力を合わせてやっていくことだ
29
表 30 において、潜在変数となるのは「社会心理
社会心理的特性である「劣等感」
、
「自己顕示欲求」
、
的特性」およびに社会心理的特性である「劣等感」
、
「情緒安定性」
、
「自尊心」
、
「情報欲求」
、
「同調性」
「自己顕示欲求」、「情緒安定性」、「自尊心」、「情
に関する観測変数は 2 つの設問を設定した。
報欲求」、「同調性」や上述した知覚リスクである
また、知覚リスクに関する観測変数はメイクア
「経済的リスク」、「機能的リスク」、「身体的リス
ップ化粧品および基礎化粧品それぞれ上述した通
ク」
、
「心理的リスク」
、
「社会的リスク」である。
りの設問設定である。
パス図
標準化
有意確率
推定値
自己顕示欲求 <--- 社会的心理特性
.340
***
情緒安定性 <--- 社会的心理特性
.720
***
劣等感 <--- 社会的心理特性
.970
***
自尊心 <--- 社会的心理特性
-.857
***
情報欲求 <--- 社会的心理特性
.387
***
同調性 <--- 社会的心理特性
.590
***
経済的リスク <--- 社会的心理特性
.238
.007
機能的リスク <--- 社会的心理特性
.265
.021
身体的リスク <--- 社会的心理特性
.168
.119
心理的リスク <--- 社会的心理特性
.157
.038
社会的リスク <--- 社会的心理特性
.345
***
Q5 <--- 経済的リスク
.725
***
Q6 <--- 経済的リスク
.539
.043
Q7 <--- 機能的リスク
.564
***
Q8 <--- 機能的リスク
.467
.086
Q9 <--- 身体的リスク
.616
***
Q10 <--- 身体的リスク
.333
.404
Q11 <--- 心理的リスク
.711
***
Q12 <--- 心理的リスク
.672
***
Q13 <--- 心理的リスク
.545
***
Q14 <--- 社会的リスク
.733
***
Q15 <--- 社会的リスク
.638
***
Q16 <--- 社会的リスク
.691
***
Q31 <--- 劣等感
.587
***
Q32 <--- 劣等感
.713
***
30
Q33 <--- 自己顕示欲求
.769
***
有意確率
.000
Q34 <--- 自己顕示欲求
.420
.023
自由度(DF)
243
Q35 <--- 情緒安定性
.636
***
CMIC/DF
3.172
Q36 <--- 情緒安定性
.382
***
GFI
0.836
Q37 <--- 自尊心
.857
***
AGFI
0.797
Q38 <--- 自尊心
.617
***
RMSEA
0.083
Q39 <--- 情報欲求
.848
***
Q40 <--- 情報欲求
.348
.030
Q41 <--- 同調性
.588
***
Q42 <--- 同調性
.324
.005
分析は、最尤法、反復回数 10 回で最適化計算が
ク」
、
「経済的リスク」から「Q6」、
「自己顕示欲求」
正常に終了した。
から「Q34」、「情報欲求」から「Q40」へのパスは
モデルの適合度は GFI、AGFI は比較的低いもの
5%水準で、
「社会心理的特性」から「経済的リスク」、
の 1 には近く、RMSEA は 0.1 より低い値である。ま
「同調性」から「Q42」へのパスは 1%水準で、そ
た、CMIN/DF は 5.00 より低い。
れ以外はすべてのパスが有意水準 0.1%で支持さ
よって、本モデルは妥当であるといえるだろう。
れた。
パス図に関しては、
「社会心理的特性」から「身
これより、メイクアップ化粧品購買において「社
体的リスク」と「身体的リスク」から「Q10」への
会心理的特性」は各知覚リスクすべてに影響を与
パスは棄却され、
「機能的リスク」から「Q8」への
えていないことがいえる。
パスは 10%水準で、
「社会心理的特性」から「機能
Ⅳ-ⅰにより、仮説 5-1 が立証された。
的リスク」、「社会心理的特性」から「心理的リス
31
■表―――32
Ⅳ-ⅱ.基礎化粧品購買における社会心理的特性が与える知覚リスクへの影響モデル
有意確率
.000
自由度(DF)
203
CMIC/DF
3.513
GFI
0.854
AGFI
0.818
RMSEA
0.089
パス図
標準化推定値
有意確率
自己顕示欲求 <--- 社会的心理特性
.384
***
情緒安定性 <--- 社会的心理特性
.716
***
劣等感 <--- 社会的心理特性
1.000
***
自尊心 <--- 社会的心理特性
-.871
***
情報欲求 <--- 社会的心理特性
.403
***
同調性 <--- 社会的心理特性
.578
***
経済的リスク <--- 社会的心理特性
-0.12
.852
機能的リスク <--- 社会的心理特性
.162
.364
身体的リスク <--- 社会的心理特性
.126
.121
心理的リスク <--- 社会的心理特性
.073
.308
32
社会的リスク <--- 社会的心理特性
.225
.010
Q21 <--- 経済的リスク
1.000
***
Q22<--- 経済的リスク
.406
.***
Q23<--- 機能的リスク
.359
***
Q24<--- 機能的リスク
.858
.342
Q25<--- 身体的リスク
.142
***
Q26 <--- 身体的リスク
1.000
.011
Q27 <--- 心理的リスク
.708
***
Q28 <--- 心理的リスク
.767
***
Q29<--- 社会的リスク
.737
***
Q30 <--- 社会的リスク
.692
.012
Q31 <--- 劣等感
.608
***
Q32 <--- 劣等感
.690
***
Q33 <--- 自己顕示欲求
.751
***
Q34 <--- 自己顕示欲求
.430
.009
Q35 <--- 情緒安定性
.626
***
Q36 <--- 情緒安定性
.388
***
Q37 <--- 自尊心
.835
***
Q38 <--- 自尊心
.633
***
Q39 <--- 情報欲求
.795
***
Q40 <--- 情報欲求
.371
.017
Q41 <--- 同調性
.601
***
Q42 <--- 同調性
.317
.006
分析は、最尤法、反復回数 29 回で最適化計算が
「情報欲求」から「Q40」へのパスは 5%水準で、
「
「社
正常に終了した。
会心理的特性」から「社会的リスク」自己顕示欲
モデルの適合度は GFI、AGFI は 1 に近く、RMSEA は
求」から「Q34」、「同調性」から「Q42」へのパス
0.1 より低い値である。また、CMIN/DF は 5.00 よ
は 1%水準で、それ以外はすべてのパスが有意水準
り低い。
0.1%で支持された。
よって、本モデルは妥当であるといえるだろう。
これより、基礎化粧品購買において「社会心理
パス図に関しては、
「社会心理的特性」から「経
的特性」は各知覚リスクすべてに影響を与えてい
済的リスク」と「社会心理的特性」から「機能的
ないことがいえる。
リスク」
、
「社会心理的特性」から「身体的リスク」
、
Ⅳ-ⅱにより、仮説 5-2 が立証された。
「社会心理的特性」から「心理的リスク」、「機能
的リスク」から「Q24」へのパスは棄却され、「身
体的リスク」から「Q26」、
「社会的リスク」から「Q30」、
33
4.新規提案
紅」の使用率が高いことがわかる。30 代前半まで
の人の「口紅」使用率は、40 代後半以上の人に比
本章では、以上の分析結果を踏まえて知覚リス
べて低かった。したがって、
「口紅」は研究対象者
クの緩和策を考え、そこから化粧品マーケティン
である 18~22 歳の女子大学生にとって今後購買
グ戦略の新規提案を述べる。ところで、今回は化
の余地がある商品であるといえる。
粧品という商品を対象商品として更に基礎化粧品
この戦略の具体的な例として「バレンタインデ
とメイクアップ化粧品に分類して、消費者の関心
ー」を想像していただきたい。ある特定の日を「リ
と知覚リスクの影響について分析を通して研究し
ップの日」と称しイベント性をもたせ、世間でこ
た。しかし、共分散構造分析を行った際に基礎化
の日はリップをつける日だと意識させることで、
粧品は分析結果から関心が高い人と低い人では知
いつもと違うリップや派手な色のリップをつける
覚するリスクにあまり差異が見られなかった。そ
ことに対する抵抗を低減させることができると考
こで我々は基礎化粧品ではなくメイクアップ化粧
えた。つまり、興味はあるが自分に似合うかわか
品に絞ってマーケティング戦略を考えることにし
らない、や、品位が損なわれるかもしれないとい
た。
った心理的リスクを感じている消費者にそれらを
そしてメイクアップ化粧品を対象市場としたと
カバーするような購買動機付けを与えることがで
き、低減する知覚リスクの違いを考慮して大きく
きる。
3つ提案を考えた。
(1)リップの日
メイクアップ化粧品を購買する際に、関心の高
低に関わらず消費者は心理的リスクを最も感じて
いるという分析結果を踏まえて、まず 1 つ目の提
案として女子大学生全体を対象に設定してこの心
理的リスクを低減しうるマーケティング戦略を考
えた。それが「リップの日」である。これは何か
というと、ある特定の日を「リップの日」と称し
てリップの使用を積極的に消費者に呼びかけるの
である。
ここでなぜ対象商品をリップにしたのかを次に
述べる。表 33 は、メイクアイテムの使用率を年代
別でみたものである。ここから、30 代前半までは
「マスカラ」
「アイライナー」などのアイメイクア
イテムや「チークカラー」
、40 代後半以上では「口
34
■表―――33
(出典『ポーラ研究所女性の化粧品行動・美意識に関する実態調査[2013]』
)
また日本では、バレンタインデーに大切な人へ
ップ化粧品に関して関心の低い人は、心理的リス
チョコレートを贈る風潮がある。これを参考に、
クの次に身体的リスクや機能的リスクといった知
リップにプレゼント商品としてのイメージをもた
覚リスクを大きく重視していた。そこでそれらの
せることで、消費増加も期待でき、さらには日頃
知覚リスクを低減するために、化粧品売り場に適
自分では買わないようなものをプレゼントされる
合度診断パネルというものを置く。このパネルは
ことで、消費者の購買商品の種類の範囲が広がる
年齢や肌質など自分の肌の情報や希望する商品の
可能性があり、リピート購買も期待できるだろう。
属性(例えば価格や安全性重視しているなど)を打
しかしここで「リップの日」が本当に世間に浸
ち込むと最終的にその人個人に合うと考えられる
透するのだろうかという、実現性の低さを懸念す
化粧品が具体的に紹介されるというものである。
る声があるかもしれない。そういうときは、上智
これにより消費者は自分の肌質にあった商品を簡
大学で行われている「浴衣デ―」のように、学生
単に探すことができ、間違えたものを選択するリ
発信の身近なところから始めることもできるだろ
スクが軽減されると考えた。
う。
(3)女子力 UP!!化粧品フォーラム
3 つ目の提案は、メイクアップ化粧品に対して関
(2)適合度診断パネル
2 つ目の提案は、メイクアップ化粧品に対して関
心が高い人の知覚リスクを低減し、化粧品購買を
心が低い人の知覚リスクを緩和し、化粧品購買を
促進することを目的としたものである。メイクア
促進することを目的としたものである。メイクア
ップ化粧品に関して関心の高い人は、商品の使い
35
やすさや品質への懸念などの機能的リスクといっ
目したが、関心以外のものでより知覚リスクに与
た知覚リスクを大きく重視していた。そこでそれ
える有意な変数が存在している可能性を考慮しな
らの知覚リスクを低減するために、定期的な化粧
ければいけない点である。
品フォーラムを開催する。このフォーラムは複数
2.終わりに
のメーカーが最新の商品やこだわりの商品を展
示・販売する場である。百貨店で見られるような実
際に化粧をしてもらえるサービスや専門販売員に
我々は、本研究で消費者の持つ関心が購買に深い
よるカウンセリングも行える形をとる。これによ
関連性があることに着目し、関心が知覚リスクに
って、商品の使いやすさや品質への懸念といった
与える影響について研究をした。当初思い描いて
機能的リスクをカバーしつつ周りからどう見られ
いた研究とは少し異なる部分もあったが、本研究
るかなどの社会的リスクも軽減できるのではない
により得られた結果は非常に興味深いものである
かと考える。そして、これらのことに加えてフォ
といえるだろう。本研究で扱った化粧品やターゲ
ーラム限定品を販売することで関心の高い消費者
ットとした女子大学生は、我々の班らしさ、およ
の需要を喚起する。
びに本年度のテーマである「学生視点のマーケテ
ィング」の理にかなっているのではないかと思わ
れる。
③―――結論
本研究が今後のマーケティング分野に少しでも
役立てられれば幸いである。
1.本研究の限界
3.謝辞
これまで関心の程度が与える知覚リスクへの影
響を研究してきたが、その中で感じた我々の研究
本研究は、6 月から始まり本年度の関東学生マー
の限界を3点指摘する。まず1点目に、研究対象
ケティング大会テーマである「学生視点のマーケ
者を女子大生に限定したことにより、他の年齢と
ティング」を念頭に研究に励んできた。この半年
の比較が出来なかった点である。もしもう少し広
間は、研究に取り組むおもしろさを実感するだけ
い年齢層に対象を当てていたら、年齢層が低くな
でなく、幾度とない方向性の変更や行き詰まりが
るほど知覚リスクに影響されやすいという既存文
あり、決して笑顔ばかりの日々ではなかった。し
献に記載されていたデータを実際に収集すること
かし、数々の壁を乗り越え最後まで研究に取り組
ができたかもしれない。2 点目は研究対象材として
むことができたのは、この班員だったからこそで
今回化粧品を設定したが、他の商品において関心
あろう。
の程度が知覚リスクに影響を与えているといえる
最後に、本研究を行うにあたり、数多くのご指
かは不明であるという点である。これらのことか
導を頂いた里村卓也教授、また、数々のアドバイ
ら、もし次に研究を行うときは対象者と対象材に
スをくださった先輩方やお互いに励ましあってき
もう少し幅を出し、それぞれを比較できればよい
た同期、そして本研究に関わったすべての方々に
と感じた。最後に3点目として、我々は知覚リス
感謝の意を表したい。
クに影響を与える要因として関心というものに着
36
参考文献
田中祥司[2011]『知覚リスクの構造と緩和策~旅行商品購買を中心に~』経営戦略研究
西村幸子[2009]『「消費者関与」概念による旅行者行動の理解に向けて』同志社商学
小野晃典[1999]『消費者関与―多属性アプローチによる再吟味―』三田商学研究
板垣美穂・諸井克英[2012]『女子大学生における化粧リスク懸念と個人的形成との関係―対異性不安、セルフモニタリ
ング傾向、および独自性欲求との関連を中心として―』
神山進・高木修[1992]『リスク敢行としての消費行動』
神山進[1997]『消費者の心理と行動―リスク知覚よマーケティング対応―』中央経済社
杉本徹雄[2012]
『新・消費者理解のための心理学』
ポーラ研究所[2013]http://www.po-holdings.co.jp/csr/culture/bunken/report/
業界動向 SEARCH.COM[2013]http://gyokai-search.com/3-kesyo.htm
37
補録
調査票
38
39
40
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