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普通作 [PDFファイル/1.46MB]
水 稲 凹凸の少ない均平な耕起の方法 【提案の内容】 水田を耕起する際に凹凸が発生すると、水深が深い部分ではスクミリンゴ ガイの食害を受けたり、水面から田面が露出した部分では雑草が発生しやす くなったりする。 均平な仕上がりになるよう、下の図中の3行程のとおりトラクタで耕起す ることでこれらの問題を解決できる。 【効 果】 水深を均一に保つことが可能となり、スクミリンゴガイの食害や雑草発生 を抑制できる。また、生育が均一となり収量、品質が安定する。 【農家の声】 四隅の土の盛り上がりが非常に少なくなり、入水前のスコップによる土の 移動作業がほとんど不要になりました。作業が非常に楽になりました。 【導入にあたって】 ・トラクタの長さや耕起幅を考慮して目印を設置しておくと良い。 ・不正形のほ場では事前に十分なシミュレーションが必要である。 ① 最初に、時計回りに四 5m 5 m ② 隅の際から の5mだ けを耕起する。途中の区間 は未耕起。 ② 畔から3うね分空けた ところから耕起を始め、 耕起の終わりと始めは一 直線になるように。 ③ ②の端をまたいで凹凸 をならすように、内側か ら半時計回りに3回耕起 して、場外へ出る。 ③ 5 m 5m 出入 ① り口 長方形の水田の耕起方法の例 提案:飯塚普及指導センター 1 水 稲 種子の温湯消毒による農薬費の低減 【提案の内容】 水稲の種子消毒は通常、農薬で行うが、農薬の廃液処理を適切に実施する 必要があり、手間と経費を要する。種子消毒に農薬を使用しない温湯消毒を 行うことにより農薬費が低減でき、廃液処理が不要となる。 【効 果】 種子消毒に用いる農薬費用が低減でき、廃液処理が不要となり、環境負荷 の軽減を図ることができる。 【農家の声】 基本技術を守って育苗すれば、温湯消毒でも問題はありません。温湯消毒 技術等により県の減農薬・減化学肥料栽培を行っており、米の有利販売が可能 となりました。 【導入にあたって】 ・60℃、10分間の消毒方法を厳守する。温度の伝わり方が悪くなるので、一度 に大量の種子を処理しない。処理後は流水等で速やかに冷却する。 ・いもち病には効果がやや劣るため、いもち病多発地帯では農薬を併用する。 ・温湯消毒済の種子は清潔な場所に置くなど、取り扱いに注意が必要。 経営規模 種子 農薬費 廃液処理機材等経 費 消毒 作業労賃 経費 計 (時給700円で換算) (/年) 7,000円(10h) 40,500円 10,500円(15h) 36,800円 方法 水稲作 慣行 15ha 14,900 廃液処理キットと 円 個別農家 活性炭15,600円+ 産廃処分料3,000円 温湯 なし 機材代26,300円/年 (3,700円の 消毒 減) 提案:北筑前・南筑後普及指導センター 2 水 稲 脱水機を活用した水稲播種時の水切り 【提案の内容】 浸種、催芽が終了した水稲種子を播種する際に水切りを行う必要があるが、 洗濯機の脱水機を利用すると短時間で簡単に作業ができる。 【効 果】 播種する際に水から揚げて水切りを行うが、種子量が多いと十分に水切り するまで時間がかかる。脱水機を利用することで水切り時間が大幅に短縮され 作業効率が向上する。 【農家の声】 水切りが短時間で簡単にできるので、播種作業にかかる時間短縮ができま した。 【導入にあたって】 ・芽が出すぎていると種子を傷めるので、催芽の程度(鳩胸状態)を守る。 ・水切りに要する時間は、種子量と脱水機の回転数にもよるが、数十秒∼1分 程度である。 提案:北九州普及指導センター 3 水 稲 液肥混入方式による水稲育苗時追肥の省力化 【提案の内容】 田植え直前の苗に施用する液肥は、タンク等で希釈してからかん水ホース を用いて箱ごとに散布しなければならない。 ポンプとスプリンクラーの間に液肥が入ったタンクをつなぎ、スプリンク ラーで散布することで施肥労力を削減できる。 その際、流水量とサイフォン方式による液肥吐出量との関係から規定濃度 となるよう液肥の濃度を調整する。 【効 果】 施肥作業にかかる作業時間が、タンクでの濃縮液肥の作成時間のみに削減 できる。 【農家の声】 労力の大幅な軽減につながりました。 【導入にあたって】 ・金属を使用したスプリンクラーの場合は錆びやすくなるため、使用後に入念 に洗い流し、メンテナンスが必要。 ポンプと液肥タンクを接続 スプリンクラーを使って液肥散布 提案:朝倉普及指導センター 4 水 稲 かん水作業が不要なプール育苗 【提案の内容】 水稲育苗時のかん水作業は晴天日では1日数回必要で、かん水が不十分で あったりムラがあったりすると不斉一な苗となる。かん水作業時は他の作業 が継続できず作業負担が大きい。 湛水したプールで育苗を行うプール育苗は、かん水作業を省力化でき充実 した苗を育成できる。 【効 果】 毎朝、水深を確認するだけでかん水作業が不要となり、他の仕事ができる。 かん水ムラがなくなるため均一な苗ができ、 ムレ苗やもみ枯細菌病の発生も軽 減される。 【農家の声】 晴天日には1日3∼4回かん水していたが、朝1回水深を確認しておけば 晴天日でも安心して他の作業ができます。ただし、プールの水深を一定にし、 水漏れがないよう注意が必要です。 【導入にあたって】 ・畑などの土の上に設置するため、床土面を均平に整地する。 ・高さ7cm 程度の角材でプールの枠を設置する。 ・プールの大きさに合わせたビニルシートを敷き、水深が一定になるよう水を 溜める。 水面(水深を箱苗の育 苗土よりも上にする。 緑化後の苗 ビニールシート 角材 畑などの床土(均平に整地しておく) 提案:飯塚普及指導センター、専門技術指導員 5 水 稲 乳苗の利用による育苗コスト低減 【提案の内容】 慣行の稚苗(苗齢 2.5 葉程度)より育苗期間が短い乳苗(苗齢 1.5∼1.8 葉) を移植することで、育苗期間の短縮と育苗箱数の低減が可能となる。 【効 果】 育苗期間を 20 日から8∼10 日に短縮、10a当たり育苗箱数を 18∼20 箱か ら7∼11 箱に低減。資材費や育苗スペースも低減。 【農家の声】 水稲作付面積が多いと育苗箱数が多くなり管理の負担も大きいが、この育 苗方法で負担が軽減できました。さらに疎植栽培と組み合わせることで、箱数 をかなり減らすことができました。 【導入にあたって】 ・1箱当たりの播種量は乾籾で220∼250g、育苗日数は8∼10日とする。 ・育苗日数が短く苗のマット形成が不十分になりやすいので、苗を田植機に セットする際には苗取り板を使ってていねいに扱う。 ・マット強度を確保するためには、人工成形培地を用いて、通常よりも床土 の厚さを薄くする方が良い。 ・苗の老化が早いため、田植え期間が長くなる場合には、播種時期を分ける など、計画的に育苗を行う。 ・田植えはかき取り本数を減らして行い、植え付け深さは2cm程度とする。 ・スクミリンゴガイの被害を軽減するため、田植え後、6葉期頃までは浅水 管理を行う。 提案:北筑前・南筑後普及指導センター、農総試豊前分場 6 水 稲 疎植栽培で育苗箱数を削減し田植え労力を軽減 【提案の内容】 水稲作付面積が多い土地利用型大規模農家や農業生産法人等では、育苗箱 数が多くなるため、育苗管理の労力負担が大きい。また、田植え時の苗運搬 作業についても多くの労力と時間を要する。疎植栽培を行うことで、育苗期 や田植期の労力軽減やコスト削減が可能となる。 【効 果】 疎植にすることで育苗箱数を最大4割削減でき、育苗管理に要する時間が 短縮される。また、育苗箱の設置面積が削減でき、苗の運搬にかかる労力や資 材費も最大4割減になる。 【農家の声】 ・育苗箱数が大幅に少なくて済むので、育苗にかかる時間や資材費を抑える ことができました。欠株があった場合には収量減となるので、補植が必要 です。 ・坪当たり37株植(疎植)から60株植(標準植)まで調整可能な田植機が必 要です。 【導入にあたって】 ・生育期間が短い「夢つくし」などの極早生品種では初期生育が確保できず、 低収になる恐れがあるので、「ヒノヒカリ」や「ヒヨクモチ」など、生育期 間が長い中晩生品種を用いる。 「ヒノヒカリ」の栽植密度と生育、収量、品質(農総試 筑後分場) (栽植密度30×15cm:坪73株、30×20cm:坪55株、30×25cm:坪44株) 提案:南筑後普及指導センター、農総試農産部 7 水 稲 大豆後水稲では基肥量を減量して肥料費を低減 【提案の内容】 前年に大豆を作付けしたほ場で、翌年、水稲を作付けした場合、乾土効果 や大豆残渣の影響で水稲の生育が旺盛となる。そのため、大豆−麦後作水稲 では、基肥量を基準より窒素成分で半量程度減肥できる。 【効 果】 水稲の基肥量を半量程度削減でき、肥料費を低減できる。 【農家の声】 大豆−麦後作で基肥を減量したイネは、初期の生育量が少なく心細いが、 結果として十分な収量を確保でき、粒の充実が良く、品質も向上しました。 【導入にあたって】 ・大豆−麦後作水稲では、土壌由来の窒素吸収量が穂肥前までは多いため基肥 を減じるが、穂肥時以降は逆に少ないため、穂肥量は減らさない。 ・緩効性肥料の一回全量施肥で施肥量を減ずると穂肥窒素量も減量されるため、 一回全量施肥では適用できない。 大豆-麦後作における施肥法と生育、収量、品質(農総試 筑後分場) 施肥法 (基肥量) 稈長 有効 ㎡当 穂数 籾数 登熟 歩合 玄米重 千粒 重 検査 等級 玄米タン パク Nkg/10a cm 本/㎡ ×100 % Kg/a g 3.0(基準) 87 419 355 70 55. 3 22 .4 2.0 6.5 1.5 86 410 346 72 55. 5 22 .3 2.0 6.5 % ※肥沃地では基準量の 3.0kg を 1.5kg に、一般地では基準量の 5.0∼6.0kg を 2.5 ∼3.0kg に減肥できる。 提案:農業総合試験場 農産部、筑後分場 8 水 稲 側条施肥田植機による施肥量の削減 【提案の内容】 側条施肥田植機を用いて水稲の基肥を施用する場合、全層施肥に比べて肥 料の利用効率が高く肥料成分の溶失も少ないことから、基肥窒素量を削減で きる。 【効 果】 側条施肥を行うと窒素施肥量を2∼3割削減することが可能となり、肥料 費が削減できる。田植えの作業時間は一般の田植え機と同等である。 【導入にあたって】 ・生育期間が長い中晩生の品種の場合には、生育中期以降の葉色の低下が大 きいことがあるが、収量への影響は軽微である。 ・基肥に緩効性肥料を用いる場合、肥料の種類・タイプにより溶出パターン が異なるので品種に適合した肥料を用いる。 側条施肥田植による田植え、施肥同時作業 提案:農業総合試験場 農産部 9 水 稲 穂肥に流し肥を使用し施肥コストを低減 【提案の内容】 従来の夏期の水稲穂肥の施用は、時間がかかり大変であったが、水口に肥 料を設置し、水流に乗せて施肥する「流し肥」を行うことで、肥料費の軽減 と施肥作業時間の短縮ができる。 【効 果】 流し肥対応肥料を施用することで労働時間が約1/3に抑えられると同時 に、施肥コストを約6割に軽減することができる。 流し肥対応肥料と慣行肥料のコスト比較 (10a当たり) 肥料費(円) 労働費(円) 肥料費と労働費の合計(円) 流し肥対応肥料 1,879 245 2,124 慣行の肥料(粒状) 2,828 735 3,555 ※肥料費は、施用量を窒素成分(4kg/10a)で換算 ※労働費は1時間当たり1,470円で計算 【農家の声】 夏の暑い時期に重い肥料を抱えての穂肥は、どうしても億劫でしたが、水 口に設置するだけの流し肥は、簡単かつ楽に施用でき、適期に処理できるよ うになりました。 【導入にあたって】 ・一枚のほ場面積が大きくなりすぎると均一に施肥できない可能性が高いの で、流し肥は、比較的狭い 30a 以下のほ場に適する。 流し肥設置作業 肥料の溶出の様子 提案:南筑後普及指導センター 10 水 稲 クズ野菜を利用してスクミリンゴガイの食害を軽減 【提案の内容】 田植後2週間程度は、降雨量が多い日等に、スクミリンゴガイの食害を受け やすく、欠株が発生し、収量が低下することがある。 スクミリンゴガイが稲より好む、ナス農家の出荷できないクズ果等を切っ て水田内に投入することで、水稲への食害を減らすことができる。 【効 果】 スクミリンゴガイは野菜を先に食べ、稲をあまり食害しなくなることで、 欠株の発生が少なくなる。苗の補植の労力が削減され、スクミリンゴガイ対策 の農薬散布の必要もなくなる。 【農家の声】 スクミリンゴガイはやわらかい野菜を好んで食べるようで、野菜を入れて いる間は稲への被害が減ります。また、野菜に群がるので、スクミリンゴガイ の量が多い場合は、採集してほ場外へ持出す作業も楽にできます。 【導入にあたって】 ・気象条件(降雨量)によっては、田植後、早い時期に被害が出るので、野 菜の投入は早い段階から行う。 ・野菜はリーフレタス等の葉物でもよく、水深は浅めで管理し、スクミリン ゴガイが多い場所に野菜を投入する。 投げ込まれた野菜に集まるスクミリンゴガイ 提案:久留米・南筑後普及指導センター 11 水 稲 ポットトレイを利用しスクミリンゴガイの発生密度を低減 【提案の内容】 パイプと園芸用ポットトレイを組み合わせた簡単な装置を水田に設置し、 スクミリンゴガイの産卵を装置に集中させ、その後、この装置を除去するこ とで、スクミリンゴガイの発生密度を低減できる。 【効 果】 スクミリンゴガイの発生密度が低下し、農薬費が節減される。 【農家の声】 スクミリンゴガイに水稲が食べられ収量が減っていたので、農薬の散布を 行っていましたが、この方法で卵を減らし、農薬に頼らずにスクミリンゴガイ の被害を防ぐことができました。 【導入にあたって】 ・水口周辺で被害が多いため、水口周辺に装置を設置する。 ・卵がふ化する前に装置を除去する。 卵塊 水田の水口に設置した産卵装置 産卵装置に産み付けられた (園芸用ポットトレイをパイプで固定) スクミリンゴガイの卵塊 提案:北筑前普及指導センター 12 水 稲 使いやすいスクミリンゴガイ捕獲網の自作 【提案の内容】 水稲苗の植え付け直後は、田面の凹凸が大きく、水深が深い場所ではスクリ リンゴガイの食害が著しい。 2∼3m先の水中にいるスクミリンゴガイを捕獲したいが、市販の網では足 跡などのくぼみにいるものは捕れないため、小型の捕獲網を自作することで、 楽にスクミリンゴガイを捕獲できる。 【効 果】 足跡などの水中にいる水稲を食害する大きなスクミリンゴガイを捕獲でき、 欠株が減る。くわえて、スクミリンゴガイの産卵を減らすことで次年度の生息 密度軽減にもつながる。 【農家の声】 2∼3m先の足跡などのくぼみにいるスクミリンゴガイも楽に捕れるよう になりました。 【導入にあたって】 ・針金はハンガーの針金を用いるとよい。 ・直径は足跡のスクミリンゴガイも捕獲できるように8∼10cm 程度とする。 ・網は、ホッチキス等で止めると簡単に作成できる。 ・柄は長さに応じて、竹を加工して作成する。 直径 8~ 10cm 2~3mの竹 太めの針金 捕獲網の模式図 高い場所からのスクミリンゴガイの捕獲 提案:飯塚普及指導センター 13 水 稲 スズメ除けの糸を張るときの一工夫 【提案の内容】 水稲は収穫前にスズメによる食害を受けることがあり、その対策の一つと して糸を張る方法がある。 スズメ除けの糸を張るには通常2人を要すが、塩ビのロールと塩ビ棒を活 用することで、1人で効率よく糸を張ることができる。また、糸の回収も効率 的にできる。 【効 果】 ほ場に1人で効率よく糸を張れ、スズメの被害を防止できる。また、回収時 も糸が絡むことなく効率よく行える。 【農家の声】 一人で糸が張れるので楽に、しかも効率的にスズメ対策ができるようにな りました。 【導入にあたって】 ・塩ビのロールはハウスバンドのロールなどを活用する。 ・ロールと持ち棒はすべりを良くするために、ともに塩ビの素材を選ぶ。 糸を巻いたハウスバンドのロールと塩ビ棒 提案:北筑前普及指導センター 14 水 稲 効果抜群のスズメ脅し 【提案の内容】 収穫直前の稲穂のスズメによる食害を回避する手段は多種あるが、高価なも のが多い。「カズラ」や「肥料袋」を活用した手作りのスズメ脅しにより、低 コストで効果の高いスズメ対策が可能である。 【効 果】 水稲ほ場にスズメを寄せず、スズメの食害が軽減されるため、安定的な収 穫量が確保できる。 【農家の声】 材料は自然のものもしくは、肥料袋やビニルひもを活用するため、コスト はほとんどかからず、スズメ対策ができます。ただし、スズメが来てからでは 遅いので、スズメの害がある前に設置することが重要です。 【導入にあたって】 ①ヘビに似たカズラを山林で採取し、60∼80cmの長さに切断して竹の棒にくく る。風で揺れるように設置する。 ②肥料袋を凧のように竹で広げ、それを ゴム紐で両側の2本の竹ざおに固定 する。風が吹くと、肥料袋は上下に勢いよく揺れたり、回転したり、いろい ろな動きをする。 ※ スズメの食害が始まる前に、設置すると効果が高い。 ①ヘビに似せたスズメ脅し ②肥料袋を利用したスズメ脅し 提案:飯塚普及指導センター 15 水 稲 緑肥作物の栽培で冬期の耕起を省略し基肥を削減 【提案の内容】 冬期に麦類等の作付けを行わない場合、雑草の抑制のため耕起などの管理 作業が必要である。土づくりを兼ねてレンゲやヘアリーベッチなどの緑肥作 物を栽培することで耕起作業が省略でき、土壌物理性の改善と水稲の基肥削 減が可能となる。 【効 果】 レンゲやヘアリーベッチ等のマメ科作物を栽培し、 水稲移植前 20∼30 日(開 花盛期)に鋤き込むことで、窒素やカリ肥料を 30∼100%削減でき、冬期の耕 起作業が省略できる。 【農家の声】 レンゲを均一に、かつほ場全面に生育させることに苦労していますが、基 肥を大幅に節減できるメリットがあります。 【導入にあたって】 ・緑肥作物の出来が、そのまま水稲の基肥量に関係するため、作物の生育量 から施肥量を見極める必要がある。 ・緑肥作物の鋤き込み時期が早い(田植え前30日以上)と、分解が進み残存 窒素量が少なくなるため、肥料としての効果が低くなる。一方、緑肥作物 の鋤き込み時期が遅れる(田植え前10日以内)と、ガスによる生育障害が 問題となる。 ・田植え後、ガスが大量に発生する場合は落水し、ガス抜きを行うことが必要 である。 ・レンゲの分解によって生成される有機酸は、作土の鉄、マンガン、塩基類の 溶脱を促進するので、ケイカルやミネラルG等の土壌改良資材を併用するこ とが望ましい。 提案:南筑後普及指導センター 16 水 稲 レンゲを 50cm すき残して翌年の種子代を低減 【提案の内容】 レンゲを緑肥として開花期から田植え 20 日前までに全面にすき込むと、レ ンゲの種子がまだ充実していないため、翌年、レンゲ種子を播種する必要が ある。 レンゲを鋤き込む際、30∼50cm 幅で6月上旬まで鋤き残しておくと、翌年、 種子を播種しなくてもレンゲが出芽するため、種子を購入して播種する必要 がなくなる。 【効 果】 レンゲ種子代の 10a当たり 3,600 円程度が節約でき、播種作業も不要とな る。さらにレンゲを栽培することで、施肥量削減や地力向上を図ることができ る。 【農家の声】 レンゲの種子代が以前は1キロ 400 円でしたが、今では 1,200 円に高騰し ているので、経費節減になります。 【導入にあたって】 ・レンゲ種子が発芽能力を備えるには6月上旬まで待つ必要があるため、田 植え時期が6月中下旬の地域で適用する。 提案:八女普及指導センター 17 水稲、麦類 収穫は水分が高い時間帯を避けて行い燃費を向上 【提案の内容】 水稲、麦類をコンバインで収穫する場合、収穫物の含有水分が高いほど、 動力負荷がかかるため、朝露が落ちて収穫物の水分が低下して収穫作業を行 うことで、コンバインの燃費が向上できる。 【効 果】 30馬力程度の3条刈自脱型コンバインで水稲を収穫する場合、日中(籾水分 22%)に収穫すると、早朝(籾水分25%)に比べ約5∼9%燃料消費量が減少 する。 【農家の声】 収穫時の水分が高いと、コンバインの動力負荷の増大により燃費が悪いよう でした。適期収穫に留意するとともに、朝露がある早朝や降雨後の作業を避け るようにしたところ、作業時間が短くなりコンバインの燃費が向上しました。 【導入にあたって】 ・収穫時の穀物水分が下がりすぎると、品質低下を招くので、刈り遅れには 十分注意する。 3条刈コンバインによる収穫風景 提案:南筑後普及指導センター 18 水稲、麦類 テンパリング乾燥機では張込み量を満量にして燃料費を低減 【提案の内容】 水稲、麦類をテンパリング乾燥機により乾燥する場合は、1回の乾燥につき、 張込み量をできるだけ満量にすることで、乾燥穀物量当たりの燃料費が低減で きる。 【効 果】 最大張込み量860kgのテンパリング乾燥機で、籾を満量張込んだ時に比べ、 半量張込んだ時には35%(4.7リットル/10石)、最低量張込んだ時には48% (6.9リットル/10石)燃料消費量が増大する測定例があり、満量にすること で燃料費が低減可能となる。 【農家の声】 乾燥機が満量になるようにほ場ごとの収 穫量を見極めて、計画的に収穫するように 心がけています。 加えて、籾水分をできるだけ均一にし、ま た、過乾燥などで品質低下しないよう細心の 注意を払っています。 【導入にあたって】 ・乾燥機の能力に合わせて収穫するとともに、 刈り過ぎに注意する。 テンパリング乾燥機 張込み量と燃料消費量の関係 (出典:社団法人 日本農業機械協会) 提案:南筑後普及指導センター 19 麦類、大豆 プラウ耕で低コスト耕起、排水性向上 【提案の内容】 麦類や大豆の作付け前にプラウを用いて耕起を行うと、ロータリ耕に比べ て作業時間が短縮され燃料費が節減できる。地表面下 10∼15cm は土塊が粗く なるため排水性が向上する。 【効 果】 スタブルカルチなどのプラウを用いて耕起を行うと、燃料費がロータリ耕 の約半分に節減でき、作業時間は3∼5割短縮される。また、排水性が向上す るため雑草の発生が少なくなり、麦、大豆の生育が良好になる。 【農家の声】 トラクタでけん引して反転させるだけの作業なので、耕起時間が短縮され、 燃料費も半分以下となり、大規模経営にとって非常に効率的です。 排水性が向上して雑草の発生が少なくなり、麦、大豆の生育が良く、収量 が向上してきました。 【導入にあたって】 ・麦類または大豆の播種前に使用する。 ・耕起前のほ場をスタブルカルチなどで耕起し、直後にロータリ付き播種機 で播種するか、さらにバーチカルハローで地表面下5∼10cmを細かく砕土 した後、ロータリ付き播種機で播種を行う。 「スタブルカルチ」による耕起作業 提案:飯塚・八女普及指導センター 20 麦類、大豆 ロータリ爪の向きを変えて簡易うね立て栽培 【提案の内容】 通常のロータリの中心から半分ずつ爪を内向け(内盛り)に取り付け、低 いうねを立てながら麦類・大豆を播種することで、低コストで排水が促進さ れ、収量の安定化が図られる。 【効 果】 簡易なうね立て播種により、降雨による出芽抑制を回避でき、麦類・大豆の 出芽の確保、初期生育の促進、ひいては麦類・大豆の増収につながる。コスト は安価である。 【農家の声】 特別な機械の購入をせずにすみ、コストは安価です。たいした手間もいら ず、麦類・大豆の収量向上に役立っています。 【導入にあたって】 ・ロータリの爪の曲りに注意して、取り付ける。農機メーカー等に問い合わせ ると確実である。 ・あぜ溝の作掘、弾丸暗渠の施工等と併せて実施することで、排水対策の徹底 を図る。 播種位置を中心に、爪を内向きにする 播種位置 播種位置 播種部を中心に小うねができる 提案:北九州・飯塚普及指導センター 21 麦類、大豆 トラクタの爪を取り換えて麦、大豆の播種を省力・低コストに 【提案の内容】 麦や大豆は、荒起こしを行った後、ロータリで耕起しながら播種する二工 程播種法が一般的である。播種部分にあたるロータリ爪1枚を市販の培土用 カルチ爪2枚に交換(背中あわせで装着)することで、播種部分のみが浅く 耕起され一工程で播種できる(部分浅耕一工程播種)。 【効 果】 播種工程を二工程から一工程にすることにより、燃料費の低減及び作業時 間の短縮ができる。また、播種前後の降雨の影響を受けにくいため、適期播種 を行うことができる。 (燃料費:慣行の 39%減、作業時間:慣行の 43%減) 【農家の声】 燃料費の削減に加え、作業時間の短縮にもなり、適期播種が可能となりま した。 【導入にあたって】 ・播種前には非選択性茎葉処理剤を散布し、雑草防除を行う必要がある。 ・麦と大豆のうね幅を合わせる。 通常の爪 付け替えた爪 カルチ爪 播種位置 播種位置 浅耕部分 浅耕部分 標準耕部分 標準耕部分 ( 耕 深 5 ∼6 ㎝) 標準耕部分 ( 耕 深 10 ∼ 11 ㎝ ) 排水が良い 発芽が良い ほ場での作業イメージ カルチ爪を2枚合わせて装着 提案:北筑前・久留米普及指導センター、農総試 筑後分場、専門技術指導員 22 麦 類 コンバイン収穫の四すみ刈りの手間を省く 【提案の内容】 通常、麦はほ場の全面に播種しているが、コンバインで収穫する場合、ほ場 の四すみは事前に時間をかけて手刈りするか、それをせずに刈り残しとするか である。 最初からコンバインの施回場所となる四すみの部分に麦を播かなければ、四 すみ刈りの手間を省くことができる。 【効 果】 麦収穫前の四すみ刈りにかける労働時間が削減できる。特に、大面積(多く の筆数)栽培した際の労力の軽減は大きい。四すみは生育が悪いため、播かな くてもほとんど減収しない。 【農家の声】 麦の面積拡大に伴い、四すみ刈りの作業は大変でした。四すみの麦の収穫 量は大した量ではなく、四すみに麦を播かなくなって効率的になりました。 【導入にあたって】 ・麦を播かない部分に雑草が生えた場合には刈り払いする。 コンバインの全長(4mくらい) 播かない 播か ない 2mくらい 播か 入 ない 口 播かない 道 提案:朝倉普及指導センター 23 麦類、大豆 播種同時除草剤散布による労力軽減 【提案の内容】 麦や大豆播種後の雑草を防除するために、播種作業終了後に改めて動力散 布機や乗用管理機で除草剤を散布しているが、播種機の後部に粒状除草剤散 布装置を装備することで、播種と除草剤散布作業を一工程で済ませることが でき、労力が削減できる。 【効 果】 慣行の二工程作業と比較して、作業時間を 19%(対乗用管理機)∼46%(対 動力散布機)削減でき、適期播種や除草剤適期処理が可能となる。 【導入にあたって】 ・除草剤散布機の価格は約16万円である。 播種同時除草剤散布機(円内) 提案:農業総合試験場 農産部 24 麦 類 麦踏み機を自作してコスト低減 【提案の内容】 麦踏み機は数十万円で市販されているが、テーラや鉄材、ボンベを利用する ことで、安価な麦踏み機が自作できる。 【効 果】 市販のものより、重量があり、効果的に麦の踏圧作業ができる。また、廃材 利用であり、原材料費は掛からない。 【農家の声】 走行等、麦の踏圧作業に支障はなく、快適・効果的に作業が出来ています。 【導入にあたって】 ・麦の踏圧部のボンベは、50㎏ボンベを使用(中空のまま)。鉄材を用いて、 枠組(フレーム)等は、すべて自作する。 ・けん引のテーラのタイヤは、けん引力を高めるため、ワムラスタイヤを使用 (1本2万円程度)。 ・可燃性ガスが入っていたボンベを利用する場合は、必ず中のガスを抜いてか ら使用する。 麦踏み時はタ イヤを上には ねあげ固定 ボンベ 麦の踏圧部のボンベと鉄材の枠組み けん引用のワムラスタイヤ 提案:田川普及指導センター 25 麦 類 施肥機のパイプ増設による追肥作業の効率化 【提案の内容】 乗用管理機による麦類の追肥は、通常一つの施肥ホッパーから一本のパイ プで管理機のタイヤ幅に施肥している。それを一つの施肥ホッパーから二本の パイプに分けることで、散布幅を約2倍に拡大し、追肥作業の効率化を図るこ とができる。 【効 果】 乗用管理機の施肥幅が一うね分広くなり、追肥作業の省力化が図れる。 【農家の声】 麦の施肥労働時間が短くなるだけでなく、施肥と土入れが同時に出来ること が非常に良いです。 【導入にあたって】 ・乗用管理機後部の施肥ホッパー2台に、パイプを各々2つ設置する。 増設した パイプ 中耕培土用ロータリ 中耕培土用ロータリ 折りたたみが可能 隣のうねに も施用可能 提案:朝倉普及指導センター 26 大 豆 トラクタによる効率的な排水溝設置 【提案の内容】 大豆の播種の際に、排水溝の近くの枕地でトラクタをとめてロータリを回 すことで、枕地に溝を効率的に設置でき、表面排水を促進することができる。 【効 果】 周囲溝とうね溝をつなぐことで表面排水がスムーズになり、大豆の生育が 良くなる。クワや管理機などで枕地を切って排水溝とつなぐ労力が低減でき る。 【農家の声】 トラクタで作業できるので楽になりました。播種直後から表面排水が可能 となるため、雨が降っても大豆の生育が良くなりました。 【導入にあたって】 ・排水溝と溝の位置がずれないようにつくる必要がある。 ・溝をつくる時に種子が出ない様に留意する。 トラクタを止め、ロ ータリを回転させ ることで溝ができ る。クワで掘ってい ないので、半円状に なる 排水溝 提案:北九州普及指導センター 27 大 豆 播種時の簡易なうね立て法 【提案の内容】 大豆の栽培において、①耕起用のロータリの両端に内培土板をつけて、②ロ ータリの両端部分にある外向きの爪をそれぞれ2本ずつ内向きに付け直し、播 種することで、出芽苗立ちの安定により多収が期待できる。 【効 果】 大豆の播種時に15cm程度のうねができるため、初期生育が良くなる。 また、播種後の大雨による湿害を回避できる。 【農家の声】 大豆の播種と同時にうねができるので排水もよくなり、生育もよくなりま した。麦にも応用できます。 【導入にあたって】 ・播種の際、うねの高さと播種深度をきちんと調整する。 ロータリの両端に内培土板を 大豆の播種時に15cm程度の 装着し、両端の外向きの爪を うねが立ったほ場 2本ずつ内側に付け替える 提案:朝倉普及指導センター 28 大 豆 ディスク式中耕除草機による作業能率の向上 【提案の内容】 大豆の中耕・培土作業において、ディスク式中耕除草機(高精度畑用中耕 除草機)を用いると、作業能率が向上し燃料消費量が減少する。 【効 果】 燃料消費量が半減され、燃料費が節約できる。また、作業速度が速いため、 作業可能面積が拡大し、機械台数の削減も期待できる。 機械の種類 能力(1時間当たり) ディスク式 中耕ロータリ(慣行) 3.9km/h 2.2km/h 【導入にあたって】 ・価格は通常の中耕ロータリと同程度であるが、大豆の中耕・培土作業以外に は利用できない。 ディスク式中耕・除草機による中耕・培土作業 提案:農業総合試験場 農産部、専門技術指導員 29