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Page 1 Page 2 87 景観分析のための郵便資料とその可能性 一日本
\n
Title
Author(s)
Citation
景観分析のための郵便資料とその可能性 : 日本・韓国に
おける非文字資料としての景観切手を中心に
八久保, 厚志; HACHIKUBO, Koshi
人文研究 : 神奈川大学人文学会誌, 159: A87-A101
Date
2006-09-24
Type
Departmental Bulletin Paper
Rights
publisher
KANAGAWA University Repository
$7
景観分析 のための郵便 資料 とその可 能性
一 日本 ・韓 国 に お け る非 文 字 資 料 と して の
景 観 切 手 を 中心 に一
八久保
1は
厚
志
じめ に
景 観 分 析 に対 して 、 絵 画 、 絵 地 図 、 写 真 、 映 像 な ど の 非 文 字 資 料 か ら
そ の構 造 、 形 成 ・変 化 の メ カ ニ ズ ム、 含 意 な ど を 分 析 しよ う とす る プ ロ
ジ ェ ク トが 本 学 に お い て 、21世
奈 川 大 学21世
体 系 化)の
紀COEプ
紀 拠 点 形 成 事 業(COEプ
ロ グ ラ ム人 類 文 化 研 究 の た め の 非 文 字 資 料 の
一 課 題 と して 選 定 を 受 け推 進 さ れ て い る。 そ の 中 で 筆 者 らの
グ ル ー プ は、 渋 澤 敬 三 らの残 した 映 像 資 料 群(渋
か か ら写 真 資 料(渋
保2003)1)。
澤 フ ィル ム)を
澤 コ レ ク シ ョ ン)の
な
も と に景 観 分 析 を進 め て い る(八
久
そ の 過 程 で 各 国 が 発 行 して き た郵 便 資 料 群(郵
紙 、 絵 入 り葉 書 、 風 景 ス タ ンプ等 の 消 印 類 な ど)が
ル ム)を
ロ グ ラ ム;神
便 切手 、 印
基 準 資 料(渋
時 間 的 に補 完 す る景 観 資 料 と して の可 能 性 を 感 じた(八
須 山20042)浜
田20053))。
そ こで 本 稿 で は 日本(旧
澤 フイ
久保 ・
琉 球 民 政 府 含 む)、
韓 国 の 郵 政 が 発 行 して き た郵 便 資 料 群 、 と りわ け郵 便 切 手 を 直 接 的 な 対
象 と し、 そ の 定 義 、 概 要 、 含 意 な ど に つ いて 検 討 を加 え る。 そ の 目 的 は 、
渋 沢 フ ル ム分 析 に 関 す る手 法 開 発 と、 景 観 分 析 と して の郵 便 資 料 の 資 料
と して の 有 用 性 と可 能 性 を 示 す こ とで あ る。
88
H地
理 学 にお ける郵便資 料 の利 用
これ まで 地 理 学 に お い て 、 早 くよ り郵 便 資 料 の 利 用 が 図 られ て き た の
は文 化 地 理 学 、 政 治 地 理 学 、 地 理 教 育 の 分 野 で あ る。 以 下 簡 単 に整 理 し
て お く。 文 化 地 理 学 で 郵 便 切 手 の 活 用 に 積 極 的 な の は江 波 戸 昭(1987
他)4)で
あ る。 江 波 戸 に よ れ ば 、 「こ こ で 切 手 を 素 材 と して と りあ げ た
の は 、 最 近 、 各 国 一 特 に第 三 世 界 を 中 心 に、 自国 の文 化 の0つ
の象徴 と
して 民 俗 楽 器 の 美 しい 切 手 が 多 く発 行 さ れ る よ うに な っ た こ と。 しか も、
近 頃 に な って よ うや く 日本 で も音 楽 教 育 や 鑑 賞 の 対 象 と して 民 俗 音 楽 な
い し民 俗 楽 器 に関 心 が 向 け られ る よ う に な って き た の だ が 、 そ れ ら につ
い て の 文 献 や レ コ ー ドの多 くは 欧 米 諸 国 で 出版 され た もの で あ って 、 非
欧 米 地 域 で の 独 自 の 出版 物 は数 が 少 な く、 か っ 入 手 が 難 しい。 そ の 上 、
欧 米 ものの記 述 に はあ いか わ らず の独 断 と偏見 が 含 まれて いた り、 曖 昧
さや 誤 りが 散 見 さ れ た りす る。 と こ ろが 、 各 国 の 公 的 機 関 か ら発 行(印
刷 は しば しば 他 国 に 発 注 す る もの の)さ
れ て い る切 手 に と りあ げ られ 、
描 か れ て い る楽 器 な ら、 まず そ の 国 の 代 表 的 な 楽 器 だ ろ う し、 形 態 や奏
法 も正 確 だ ろ う。 さ ら に、 名 称 が 記 入 さ れ て い れ ば 、 部 族 に よ る ち が い
や 表 記 法 の ず れ は あ る にせ よ、 と もか く、 そ れ な り に信 愚 性 が 高 い だ ろ
う と考 え らた か らで あ る。(ア ン ダ ー ラ イ ン筆 者)」(江
『切 手 に み る世 界 の 民 俗 楽 器 』p3)と
波 戸 昭1984年;
の 指 摘 が あ る。 す な わ ち 、 地 理 的
情 報 の乏 しい地 域 で の 民 族 の情 報 は、 旧宗 主 国 や 、 欧 米 諸 国 の 偏 見 や 独
断 と い った バ イ ア ス が か か って お り、 そ の 量 も少 な い。 一一方 、 公 的 な切
手 は モ チ ー フの 内 容 や 表 記 法 な ど に そ の地 域 の 情 報 が 反 映 され て お り、
そ の信i[:
.a¥性は極 め て 高 い と考 え られ る の で あ る。 ま さ に これ らの点 が 世
界 の民 族 の 空 間 的 存 在 形 態 を 明 らか に す る民 族 地 理 学 の基 礎 資 料 と して 、
景 観 分 析 の た め の郵 便 資料 とそ の可 能 性89
切 手 が有 効 的で あ る理 由 で あ る。-方 、政 治 地理 学 上 の切 手 の有 効性 は、
多方 面 にわ た る。 斉 藤毅 は、近 ・現代 にお け る諸 国家 の盛 衰 を領 域 認 識
か ら解説 して い る。 と くにデ ッ ドカ ン トリー といわ れ るかつ て歴 史 的 に
存在 した諸 国家 や地 域 の政 治地 理 学 的 な役割 や民族 、 文化 、 経済 等 の地
理 的情報 を 当該諸 国家 や地 域 が発 行 した切 手 で理解 し、説 明 を加 え る手
法 を提 起 して き た(斉 藤1997)5)。
す で に歴 史 上 消 滅 した 国家 ・地 域
の詳 細 は、 一 部研 究 者 の み に保 存 され、研 究 され る運 命 だ が、現 下 の世
界地 理 を考 え る場 合 、 また、現 下 の紛 争 地域 の地政 学 的位 置 づ けを説 明
す る場合 にお いて、 簡便 にその情報 を供 して くれ る切手 は極 めて貴重 な
資料 とな り得 るの で あ る。 しか もほ とん どが 図案化 され た ものや写 真 で
ビジュアル性 の強 い もの で あ る。 斉藤 は一 歩 進 ん で、地 理 教 育 の現場 で
の切 手 の利 用 を行 って い る。 国家 、 国民 な ど、 ナ シ ョナル ス テ ー トの形
成 に と って、 自国発 行 の切手 が大 きな役割 を果 たす こ とは以 下 に述 べ る
が、 反証 と して また例証 と して デ ッ ドカ ン トリー発 行 の切 手 に よ る世 界
地 理 の教 示 は地 理 教 育 で の切手 の有 効 性 を示 して い る と考 え られ る。
以 上 の よ うに、 地 理学 にお いて、 そ の研 究 ・教 育 上 に はた して い る非
文 字 資料 と して の切手 の有 効性 は明 らか で あ る。 しか し、 私 見 で あ るが、
景 観 地理 学 上 の利 用 は これ まで少 なか った といえ る。 それ は、近 代以 降、
図案 化 され た景 観 や景観 写 真 が早 くか ら資料 と して一般 化 して お り、 と
りたてて切 手 に注 目 しな くて も一 定 の情報 が得 られ て きたか らで あ ろ う。
また、写 真 はそ れ だ けで真実 を表 す もの との誤 解 が蔓 延 して きた か らと
もいえ よ う。 それが 絵画 資料 と同様 に写真 には構 成 や思 想 、社 会 的環 境 、
個 人 的 嗜好 性 な ど、 多様 な側 面 を含 意 して い る こ とが 当然 の よ うに語 ら
れ るよ うに な って は じめて、 景 観切 手 に もそ の含 意 や有 効 性 を検討 す る
必 要 性 が生 じて きた とい え る。 この点 で、 景観 地 理 学者 は資料 と して の
郵 便 資料 と りわ け景観 切手 の利 用 に無 頓着 で あ った。 したが って、次 に
90
日本 を中心 に琉球 郵 便、 韓 国郵 政 の景 観 切手 を事 例 にその含 意 と非 文字
資料 と して の有 効 性 を検 討 す る。
皿
郵便史 料 と景 観切 手
最 初 に検 討 対 象 とす る郵 便 資 料 、 と りわ け 「郵 便 切 手 」 に つ い て整 理
して お く。 周 知 の よ うに 郵 便 切 手(以
下 切 手 と呼 ぶ)は
、 産 業革 命 期 の
英 国 に お い て 、 栓 桔 とな りつ っ あ った情 報 伝 達 手 段 と して の 郵 便 制 度 の
問 題 点 の 克 復 か ら企 画 さ れ た(オ
ッ トー ホ ル ヌ ン ク1970)6)。
料金 の
前 納 制 、 全 国 均 一 料 金 、 通 信 の 国 家 管 理 ・保 証 な どが そ の 主 要 な 内容 で
あ った。 経 済 改 革 の 側 面 が 多 々 あ った 。 当 初 、 ロ ー ラ ン ドヒル を 中 心 と
した 担 当 者 は、 専 用 封 筒(マ
片(stamp)は
ル レデ ィ封 筒)を
主 と し、 証 紙 と して の紙
従 の もの と さ れ た 。 しか し、 そ の 簡 便 性 の た め に紙 片 貼
付 方 式 で あ るstamp-mailが
主 流 と な って い った 。 証 紙 の モ チ ー フ に は
ビク ト リア女 王 の 横 顔 の シル エ ッ トが 採 用 さ れ 、 現 代 に至 る ま で 、 英 国
切 手 は 時 々 の君 主 を そ の 印 面 の い ず れ か に配 置 して い る。 ま た、 そ の後
創 設 さ れ たUPU(万
国 郵 便 連 合)の
申 し合 わ せ 事 項 で あ る 国 名 の 英 文
表 記 を拒 否 し、 近 代 郵 便 制 度 の 発 祥 の 地 と して の伝 統 性 を 誇 示 して い る。
と もあ れ 、 この 便 利 な情 報 伝 達 の 制 度 は世 界 全 体 に 及 び、 日本 も明 治 維
新 後 早 い段 階 で 紙 片 貼 付 方 式 の 近 代 郵 便 制 度 を創 設 して い る。 そ の後 、
近 代 郵 便 制 度 は、 欧 米 諸 国 の 植 民 地 に限 らず 、 中 国 や朝 鮮 な ど の 未 整 備
地 域 で も、 そ の地 の 主 権iを犯 して 列 強 諸 国 の 在 外 局 と して 長 ら く存 在 し、
不 平 等 条 約 の象 徴 で もあ っ た。 日本 に お い て も完 全 に外 国 局(英
ラ ンス 、 米 国 な ど)が
に お か れ た の は1877(明
国、 フ
撤 収 し、 完 全 に 国 内郵 便 と外 国 郵 便 が そ の主 権 下
治10)年
で あ っ た。 一 方 、 朝 鮮 半 島 や 中 国 へ
の進 出 に は、 在 中 国 郵 便 局 、 在 朝 鮮 郵 便 局 を 設 置 し、 欧 州 の 例 に な ら っ
景 観 分 析 の ため の郵 便 資 料 とそ の可 能 性91
た(H.A.Ramsden,1910)7)。
この 流 れ の な か で 、 切 手 は料 金 前 納 制 の 証 紙 と して の 機 能 の 他 に主 権i
の誇 示 、 国 威 発 揚 、 国 家 ・国 民 支 配 の 為 政 者 の統 治 ・専 伝 手 段 と して と
して の機 能 が 付 加 さ れ て い った 。 そ の こ と は新 規 発 行 さ れ る切 手 を通 常
料 金 前 納 切 手 と、 記 念 特 殊 切 手 に分 け る こ と に な っ た。 例 え ば 、 英 国 は
長 ら く記 念 切 手 の 発 行 と い う ア イ デ ア に は頓 着 せ ず 、 南 米 ペ ル ー に そ の
最 初 の 切 手 発 行 国 の座 を 奪 わ れ る こ と に な る。 活 発 に植 民 地 や 本 国 の 記
念 事 業 や 特 殊 な シ リー ズ を 発 行 す る よ う に な った の は20世
紀 に 入 って
か らで あ る。 この 時 期 、 大 英 帝 国 の 植 民 地 は 「日 の 沈 む こ との な い」 領
域 を 持 って い た。 ジ ョー ジ5世
は これ ら地 域 の 地 誌 を わ か りや す い形 、
っ ま り風 景 や 自然 ・人 文 景 観 を 中 心 と した シ リー ズ 切 手 で示 す こ とを 企
画 した。 こ の シ リー ズ は、 ほ ぼ 全 世 界 の 地 誌 を 網 羅 し、 景 観 を 国 家 意 志
で 国 民 や 全 世 界 の 人 々 へ 紹 介 す る こ と に な っ た。 現 在 で も、19世
葉 か ら20世
紀末
紀 初 頭 に 掛 け て の 世 界 地 誌 を 知 る上 で の 資 料 性 は高 い 。 そ
の 後 、 郵 便 切 手 は国 民 国 家 形 成 上 の1ア
イ テ ム と して 機 能 さ せ られ る こ
とに な る。 列 強 各 国 は 自 らの 領 土 的 な野 心 を、 そ の版 図 の 国 際 的 な 認 知
を 得 る前 に 地 図 切 手 や 進 出 地 の風 景 切 手 を 発 行 す る こ とで そ の 既 成 事 実
化 を 図 り、 か っ 自国 民 へ は新 領 土 の 地 理 的 な知 識 を提 供 す る の で あ る。
日本 も同 様 に、 中 国 東 北 部 の 蒙 彊 ・満 州 、 後 に南 洋 、 フ ィ リ ピ ン、 イ ン
ドネ シア(蘭
領)、 ビル マ地 域 な ど の 風 景 や 産 業 、 民 族 文 化 を モ チ ー フ
と した郵 便 切 手 を現 地 で発 行 して い った 。 そ れ らの郵 便 切 手 は、 親 書 や
小 包 に貼 付 さ れ 、 日本 本 土 に 送 られ 、 国 民 へ 当 該 地 域 の地 誌 的 知aを
拡
げ る こ と に貢 献 して い った の で あ る。 一 方 で 抵 抗 す る民 族 勢 力 もそ の影
響…
域 に独 自の 郵 便 制 度 を構 築 し、 同 様 に 風 景 や 産 業 、 民 族 文 化 的 な モ チ
ー フの 他 、 政 治 的 な ス ロ ー ガ ンを ほ ど こ した 郵 便 切 手(い
ガ ンダ切 手)を
わ ゆ る プ ロパ
活 発 に発 行 して い っ た の で あ る。 した が って 、 当 時 敵 対
92
して い た勢 力 や 国 家 間 の 簡 便 な 情 報 獲 得 手 段 と して(そ
の真贋 の確認 な
ど一 定 の注 意 を 払 って)郵
便 切 手 は利 用 で き た の で あ る。 現 在 、 フ ィ ラ
テ リス ト(郵 便 研 究 者)の
旺 盛 か っ 絶 大 な 情 熱 に よ って 当 時 の 実 情 が 明
らか に な りつ っ あ り、 フ ィ ラテ リス トの 社 会 的 な 地 位 が 認 知 され る こ と
と伴 って 、 郵 便 資 料 の 各 方 面 で の 有 効 性 が 認 識 さ れ て い る。 と くに、 英
国 の王 立 郵 趣 協 会 や 各 国 の郵 政 博 物 館 の 活 動 は活 発 に な って お り、 非 文
字 資 料 と して 郵 便 切 手 や そ の 他 郵 便 資 料 が 価 値 の あ る資 料 と認 識 さ れ っ
っ あ る。 た だ 、 日本 で は重 層 的 で 価 値 の 高 い マ テ リア ル が 蓄 積 さ れ て い
る に もか か わ らず 、 そ の 価 値 へ の 注 目 は低 い。 そ れ は、 昨 今 の 郵 政 シス
テ ム の 在 り方 に つ い て、 そ の効 率 性 や 利 便 性 議 論 の み が 注 目 され 、 そ の
社 会 的 存 在 の 意 味 す る こ とに 注 意 が 全 く払 わ れ て い な い こ と に よ る と思
わ れ る。 こ の点 で 、 近 年 、 韓 国 や 中 国 の と らえ 方 は 注 目 に値 す る。 筆 者
は、2004年8月
に新 装 な っ た 韓 国 郵 政 博 物 館 を 訪 れ る機i会 を 得 た が 、
郵 政 職 員 の研 修 所 を か ね る壮 大 な 敷 地 内 に 現 代 的 な展 示 シ ス テ ム を 持 っ
た 博 物 館 が 建 設 さ れ て お り、 そ の 熱 意 が 伝 わ る も の と な って い る。 と も
あ れ 、 この よ う な事 情 を勘 案 して も、 郵 便 資 料 群 は筆 者 らの 研 究 テ ー マ
で あ る景 観 分 析 や 、 空 間 編 成 上 の 時 間 軸 と して の 資 料 不 足 を 埋 め る上 で 、
国 家 と い う フ ィ ル タ ー を通 した と して も十 分 活 用 に値 す る非 文 字 資 料 と
考 え られ る理 由 で あ る。 現 在 、 世 界 中 の 郵 便 切 手 類 を 記 録 して い る もの
と して 、Scotte(ア
メ リカ)8)、MIHEL(ド
イ ツ)9)の 世 界 切 手 カ タ ロ グ
が あ り、 最 新 版 で は、 ほ と ん どの ア イ テ ム が カ ラ ー化 され て い る。 そ の
他 に もギ ボ ンス(イ
ギ リス)、 イ ベ ー ル(フ
ラ ンス)の
カ タ ロ グ が あ る。
以 下 、 郵 便 資 料 につ い て 、 風 景 や 景 観 を 直 接 的 に モ チ ー フ と した 郵 便
切 手(主
に 国 立 公 園 、 国 定 公 園 な ど、 以 下 景 観 切 手 と呼 ぶ)の
うち 、 日
本 の 国 立 ・国 定 公 園 切 手 、 観 光 地 百 選 切 手 、 復 帰 前 の 琉 球 郵 便 時 代 に発
行 さ れ た政 府 公 園 切 手 、 文 化 財 週 間 切 手 、 海 洋 シ リー ズ切 手 お よ び 韓 国
景 観 分 析 の た め の郵 便 資 料 と そ の可 能 性93
の公 園 ・観光 地 切 手 を事 例 に、郵 便 資料 と りわ け景観 切 手 の特徴 と非 文
字 資 料 と して の可 能性 につ いて検討 す る。
IV日
1.日
本 ・韓 国 の 景 観 切 手 の概 要
本 の景観 切 手
日本 の 国 立 ・国 定 公 園 切 手 の 概 略 は以 下 の とお りで あ る(表1)。
立 公 園 切 手 は、1936(昭
和11)年
国
以 降 、 第 一 次 シ リー ズ と して 富 士 箱
根 、 日光 、 大 山 ・瀬 戸 内 、 阿 蘇 、 大 雪 山 、 霧 島 、 大 屯 ・新 高 阿 里 山(台
湾)、 次 高 タ ロ コ(台
湾)の
吉 野 熊 野 、 富 士 箱 根(第
公 園 が 戦 前 期 に 発 行 さ れ た。 続 い て 戦 後 、
二 次)、 阿 寒 、 十 和 田 、 中 部 山 岳 、 磐 梯 朝 日、
知 床 洞爺 、伊 勢 志 摩、 雲仙 、 上信 越 高原 、秩 父 多 摩、 陸 中海 岸 、西 海 国
立 公 園 の 順 に1956(昭
和31)年
に 完 結 し た。 そ の 後 、1962(昭
和37)
年 よ り第 二 次 シ リー ズ と して 、 富 士 箱 根 伊 豆 、 日光 、 雲 仙 天 草 、 白 山 、
磐 梯 朝 日、 瀬 戸 内 海 、 大 雪 山 、 伊 勢 志 摩 、 大 山 隠 岐 、 上 信 越 高 原 、 阿 蘇 、
知 床 、 南 ア ル プ ス 、 秩 父 多 摩 、 十 和 田八 幡 平 、 霧 島 屋 久 、 阿 寒 、 陸 中海
岸 、 吉 野 熊 野 、 西 海 、 支 笏 洞 爺 、 中部 山 岳 、 小 笠 原 、 西 表 公 園 が 発 行 さ
れ た。1974(昭
和49)年
一 応 の 完 結 を み る。 こ の 時 点 で 、 国 定 公 園 か
ら国 立 公 園 へ 格 上 げ され た い くっ か の公 園 にっ い て は発 行 され な か っ た。
国 立 公 園 の新 規 指 定 や 分 離 独 立 等 指 定 地 域 の 変 更 な ど で新 た な公 園 切 手
の 発 行 が 地 元 か ら要 請 され た こ とに よ る。 全 体 と して 一 部 例 外 を 除 け ば 、
公 園 内 の 景 観 の 写 真 を 原 資 料 と して 、 グ ラ ビア印 刷 さ れ た もの で あ り、
一 部 編 集 上 多 少 の修 正 な どが 加 え られ た こ とを 除 け ば
表 して い る。 一 方 、 国 定 公 園 切 手 は、1958(昭
、原 景観 を忠 実 に
和33)年
、 時 の郵 政 大
臣 田 中 角 栄 の 選 挙 地 盤 を 中 心 と した佐 渡 弥 彦 国 立 公 園 が 最 初 で あ る。 以
下1973(昭
和48)年
ま で に 、 秋 吉 台 、 耶 馬 日 田英 彦 山 、 三 河 湾 、 網 走 、
94
表1公
公
園
名
富 士 山 、 芦 ノ湖 、 三 っ 峠 、 三 島
日光
中禅寺湖
大 山瀬戸内
大山
阿蘇
久住山
中岳
阿蘇中央火口丘群
大雪山
北鎮山
旭岳
層雲峡
霧島
新焼岳火口 韓国岳 高千穂峰 霧島神宮参道 六観音池と甑岳
大屯新阿里 山
大屯山 新高山(玉 山)観 音山凌雲禅寺
清水断崖 タロコ峡 次高山 立霧渓
第 吉野熊野
国
立
公
園
第
二
次
国
立
公
園
採 りあ げ られ た景観 ・観 光地 な ど
富士箱根
次 高 タ ロコ
茨
園切手 にお ける景観
富士箱根
阿寒
十和 田
男体山
屋島
獅子岩
三っ峠
ひうち
華厳 の滝
阿伏兎観音
大峰山
河 口湖
神橋
菖蒲平
靹 の浦
十勝連山
瀞八丁
七面 山
新高山山頂
橋杭岩
山中湖
阿寒湖 雄阿寒岳 屈斜路湖 阿寒富士 摩周湖
奥入瀬渓谷 十和 田湖 観湖台 八甲田連峰
中部山岳
磐梯朝 日
槍 ヶ岳
支笏洞爺
伊勢志摩
支笏湖
二見浦
雲仙
上信越高原
雲仙主峰 千々石海岸
浅間山 谷川岳
秩父多摩
奥多摩渓谷
陸中海岸
西海
北山崎
浄土 ヶ浜
大瀬崎
九十九島
富士箱根伊豆
芦 ノ湖
石廊崎
日光
尾瀬ヶ原 至仏山 那須茶臼岳
雲仙天草
普賢岳
天草
白山
翠 ガ池
以東岳
白山連峰
檜原湖 磐梯山
鷲羽山
鳴門の渦潮
大雪山
然別湖
黒岳
伊勢志摩
宇治橋
鳥羽海岸
大山隠岐
上信越高原
赤松の池
阿蘇
知床
中岳 阿蘇五岳
斜里海岸 硫黄山
羅臼湖
羅臼岳
南 ア ルプ ス
北岳
赤石岳
聖岳
秩父多摩
雲取山
秩父湖
十和 田八幡平
岩手山
十和田湖
磐梯朝 日
瀬戸内海
燧岳
黒部渓谷
吾妻小富士
清津狭
白馬岳
大朝 日岳
乗鞍岳
磐梯山
月山
羊蹄山
波切海岸
秩父連峰
三つ峠
雲仙
大山
大瀬崎
中禅寺湖 八町出島 男体山 潜竜渓
松島
野尻湖
隠岐浄土 ヶ浦
甲斐駒 ヶ岳
妙高山
東岳
景 観 分 析 の た め の郵 便 資 料 とそ の可 能 性95
国
定
公
園
霧島屋久
高千穂峰
屋久島本富岳
阿寒
雄阿寒岳
硫黄 山
陸中海岸
吉野熊野
北山崎海岸 碁石海岸
西海
吉野山 那智の滝
五 島若松瀬戸 九十九島
支笏洞爺
中部山岳
洞爺湖
穂高岳
小笠原
父島海岸
西表
マ リュ ウ ドの滝
佐渡弥彦
外海府海岸 と佐渡おけさ 弥彦山 と越後平野
秋吉台
耶馬 日田英彦 山
三河湾
カル ス ト高 原
竹島
網走
濤沸湖岸の原生花園
足摺
足摺岬灯台 と巡礼
南房総
野崎灯台 と海女
琵琶湖
琵琶湖 と比叡の山並
山陰海岸
鳥取砂丘 と因幡の傘踊 り
大沼
北長門
大沼 駒 ヶ岳
青海島
錦江湾
金剛生駒
桜島
金剛山
水郷
水郷
石鎚
石鎚山
玄海
伊豆七 島
芥屋の大門
若狭湾
高浜海岸
羊蹄山
立山
昭和新山
南島サ ンゴ礁
海 中 の景観
秋芳 洞
「青 の洞 門」 三 隅川 と鵜 飼
船 と水仙
八 丈 島 とフェニ ックス
日南海岸
堀切峠
ニセコ積丹小樽海岸
ニ セ コ ア ンヌ プ リ
蔵王
室戸阿南海岸
蔵王の火口湖
室戸岬 阿南海岸千羽海崖
祖母傾
祖母山
八 ヶ岳 中信
赤岳 蓼科山
利尻礼文
飛騨木 曾川
利尻山
越前加賀海岸
呼鳥門
鳥海
高野龍神
飛島 と鳥海山
リュ ウ ゼ ツ ラ ン
高千穂峡
木 曾川 と ライ ン下 り
高野 山
犬 山城 と木 曾川
護摩 壇 山 と シャクナゲ
96
下北半島
仏 ケ浦
氷 ノ山後 山那岐山
壱岐対馬
原不動滝
能登半島
木の浦海岸 と御神事太鼓
妙義荒船佐久高原
比婆道後帝釈
妙義山
荒船山
同道山
比婆連峰
栗駒
栗駒山
コブシの花
剣山
剣山
明治 の森
高尾山
鈴鹿
西中国山地
鎌が岳 羽黒山
三段の滝 深入山
天竜奥三河
天竜峡
資 料)日
浅茅湾
那岐山
対州馬 と豆酸娘
氷見海岸
立山連峰
帝釈峡
木地山 こけ し 鳴子 峡 と鳴子 こけ し
大歩危
箕面の滝
鳳来寺 山
本 切 手 専 門 カ タ ロ グ2006。
足 摺 、奥 房総 、 琵 琶湖 、 山 陰海 岸、 大 沼、 北長 門海岸 、錦 江湾 、 金 剛生
駒 、水 郷 、石 鎚 、 玄海 、 伊豆 七 島、 若狭 湾 、 日南 海岸 、 ニ セ コ積 丹小 樽
海 岸 、蔵 王 、室 戸 阿南 海 岸 、祖母 傾 山、八 ヶ岳 中信高 原、利 尻 礼 文 、飛
1木 曾川 、越 前 加 賀海 岸 、鳥 海 、高 野龍 神 、 下北 半 島、氷 ノ山 ・後 山 ・
那 岐 山、 壱 岐対馬 、能 登半 島、 妙義 山荒 船 佐 久高 原 、比 婆 道後 帝 釈、 栗
駒 、 剣 山、 明治 の森、 鈴 鹿 、西 中 国 山地、 天 竜奥 三河 の順 に発行 され た。
シ リー ズ と して の特 徴 は、景 観 写真 や現地 で の スケ ッチな どを原 資料 と
しなが ら、 図案 家 に よ る絵 画 風 に仕 上 が って い る。使 わ れ るモチ ー フ も、
景 観 のみ な らず公 園 内 の民俗 芸 能 や特 産 品 な どが景 観 内 に配 置 され、 国
立 公 園切 手 とは趣 を異 に して い る。 これ ら国 立 ・国定 公園 切手 は発行 か
らす で に40年
を経 過 して い る もの もあ り、 簡便 に当 時 の景 観 を確 認 す
る上 で貴 重 な もの とな って い る。
一 方 、1951(昭
和26)年
、 毎 日新 聞 社 と郵 政 省 は国 内 の観 光 事 業 の
活 性化 の た め に優良 な観光 地 選 定 を 目途 に した 「観光 地 百 選」 コ ンテス
トを郵便 はが きに よ る0般 投 票 で実 施 した。 各地 の観 光協 会 や地 元 自治
体 が 活発 な投 票 呼 びか けを行 った結 果 、膨 大 な郵 便 はが きの利 用 を得 た。
景 観 分 析 の ため の郵 便 資 料 とそ の可 能 性97
表2観
区 分
光 地百 選 シ リー ズ切 手
観光地名
採 りあげ られ た景 観
山
岳
蔵王
ザ ンゲ下の樹氷
平
温
原
泉
日本平
茶摘み
富士山の遠望
箱根
大涌谷
芦 ノ湖
湖
沼
赤 目四八滝
荷担の滝
海
岸
歌和浦友が島
観海閣
宇治川
河川
字治川上流
治宇橋
都
邑
長崎
大浦天主堂
宋福寺竜宮門
湖
沼
菅沼 ・丸 沼
渓
谷
昇仙峡
丸沼 菅沼
覚 円峰 長 とろ橋
建造物
錦帯橋
広重の版画
資 料)表1と
地蔵岳中腹 の樹氷
千手 の滝
沖 の島野奈浦
錦帯橋
同 じ。
これ に 答 え る形 で 郵 政 省 は、 グ ラ ビア 印 刷 に よ る観 光 地 百 選 切 手 の 発 行
を 企 画 し た。 観 光 地 を 山 岳(蔵
布(赤
目 四 十 八 滝)、 海 岸(和
崎)、 湖 沼(菅
王)、 平 原(日
本 平)、 温 泉(箱
歌 浦 友 が 島)、 河 川(宇
沼 ・丸 沼)、 渓 谷(昇
仙 峡)、 建 造 物(錦
根)、 漫
治 川)、 都 邑(長
帯 橋)に
分 け、
そ の各 部 門 の 最 多 得 票 観 光 地 を 国 内 封 書 料 金 と、 海 外 郵 便 用 料 金 の2種
類 セ ッ トで 発 行 した(表2)。
投 票 結 果 優 先 で あ った た め、一 般 の 印象
か ら は必 ず し も知 られ て い な か っ た観 光 地 が 選 定 さ れ る と い う こ と もあ
っ た が 、 そ れ ま で あ ま り知 られ て い な か った 観 光 地 の海 外 へ の 紹 介 とい
う点 で は 画 期 的 で あ っ た。 そ の た め、 従 来 の 景 観 写 真 に あ りが ち な 遠 景
中心 か ら、 よ り具 体 的 な観 光 資 源 の景 観 が 選 ば れ 、 景 観 資 料 と して の価
値 を高 め て い る。 近 年 、 郵 政 業 務 の分 権 化 で 、 各 地 の郵 政 局 単 位 で 発 行
が 継 続 され て い る 「ふ る さ と切 手 」 に も現 在 の景 観 が 記 録 され て い るが 、
簡 便 で あ るが 時 代 的 に は新 し く、 デ ジ タル カ メ ラやVTRで
の記 録 が 可
能 で あ り、 そ の有 用 性 は ま だ 小 さ い。 従 って 、 今 回 の検 討 の対 象 と は し
な い 。 琉 球 郵 便 で は、1952(昭
和27)年
護 育 成 週 間 に ち な む 切 手 の う ち1963(昭
の 文 化 財 シ リー ズ、 文 化 財 保
和38)年
の 中城 城 跡、 翌 年 の
98
宮 良 殿 内 な ど、1971(昭
和46)年
か らの 政 府 公 園 、 海 洋 シ リ ー ズ 切 手
な ど が あ る が 、 文 化 財 シ リー ズ を 除 け ば 、 図 案 家 の 絵 画 作 品 で あ る。 し
か し、 限 界 は あ る に しろ復 帰 前 の 景 観 を 検 討 す る に は貴 重 な もの で あ る。
2.韓
国 の景 観 切手
韓 国 で は、1964年
ズ、1973年
に 第 一 次 観 光 シ リー ズ、1972年
第 二 次 観 光 シ リー ズ、1975年
か ら1981年
に 国 立 公 園 シ リー
ま で の世 界 観 光 の
日 シ リー ズ と して 景 観 を 主 題 と し た切 手 を 発 行 した(表3-6)10)11)。
の 後 、2000年
そ
以 降 、 世 界 遺 産 シ リー一ズ、 わ が 故 郷 切 手 な ど 多 くの 景 観
を主 題 と した 切 手 の 発 行 を み て い るが 、 日本 の ふ る さ と切 手 と同 じ理 由
で 今 回 の検 討 対 象 と は しな い。 第 一 次 観 光 切 手 は 印 刷 形 式 が平 版2色
で
あ る が 、 細 密 な線 で景 観 を 描 い て お り写 実 性 が 高 い 。 景 観 切 手 と して は
秀 逸 の 部 類 に 入 る。 国 立 公 園 シ リー ズ は 写 真 を 原 資 料 に構 成 さ れ て お り、
版 式 も グ ラ ビア多 色 印 刷 で 写 真 の持 つ 写 実 性 を損 な って い な い。 第 二 次
観 光 シ リー ズ は、 景 観 の 構 図 は斬 新 で 様 々 な ア ン グ ル で 景 観 を と らえ て
い る。 惜 しむ ら く は、 図 案 家 に よ る絵 画 作 品 の た め 日本 の 国 定 公 園 切 手
と同 じ欠 点 を 持 って い る と い わ ざ る を 得 な い 。 世 界 観 光 の 日 シ リー ズ は、
景 観 写 真 を 原 資 料 に観 光 地 だ け で な く孤 島 な ど多 様 な 地 域 の景 観 が 描 か
れ て お り、 資 料 の 乏 し い地 域 の 地 理 的 情 報 を 与 え て くれ る。 小 品 な が ら
資 料 性 の高 い 一 品 もの が 多 い。
全 体 と して 、 日本 と韓 国 に お け る景 観 切 手 の もつ 情 報 は、 近 似 す る部
分 が 多 く感 じ られ る。 景 観 へ の ま な ざ しが 、 あ る種 共 通 す る価 値 観 や 感
性 の も とで 形 成 さ れ て い る もの と理 解 す る こ と も可 能 で あ ろ う。 この 意
味 で 、0般
化 に は ヨー ロ ッパ や ア フ リカ等 の 景 観 切 手 との 異 同 性 の検 討
が 必 要 とな って こよ う。 ま た、 時 間 的 な変 化 に よ る景 観 比 較 の必 要 性 も
重 要 な 課 題 で あ る と い え る。
景 観 分 析 の た め の郵 便 資 料 と そ の可 能1生99
表3韓
国第 一 次 観
表4国
光 シ リー ズ
額 面
(1964}
額 面
立 公 園 シ リ ー ズ(1972)
観光地名
公 園 名 ・観 光地
lOw
漢摯山国立公園 ・白鹿潭
10w
閑麗海上国立公園 ・海金
剛
lw
秘苑
2w
華虹門
pow
慶州国立公園 ・仏国寺
3w
義湘台
10w
俗離山国立公園 ・法住寺
4w
俗離山
10w
内蔵山国立公園 ・内蔵寺
5w
白馬江
lOw
雪嶽山国立公園 ・雪嶽山
6W
雁鴨池
轟石楼
広寒楼
華厳寺
7w
8w
9w
馬登嶺
資 料)表3と
同 じ。
天帝淵爆布
10w
注)Wは
ウ ォ ン。
資 料)2006KPC-KOREANPOSTAGESTAMPCATALOGUE,
JPS外
国 切 手 力 タ ロ グ 韓 国 切 手2005-06。
一
ズ
リ
シ
光
観
次 紛
一一 9
7
第 q
表
表6世
界 観 光 の 日 シ リー ズ
(1975-81)
額 面
観光地名
額
面
観光地名
10w
慶福宮博物館
20w
寧 越高 氏窟
10w
雪嶽 山 ・継祖 庵
20w
雪嶽山
pow
八尾島
20w
摩 尼 山堕星 壇
10w
丹陽舎人岩
20w
通 度寺 一柱 門
10w
顕忠祠
蔚珍聖留窟
20w
ウルル ン島
20w
海雲台
20w
慶 会楼
10w
南海大橋
紅島
20w
白島
10w
鎮安馬耳山
20w
馬耳山
10w
済州 島 ・果樹 園
20w
竜 頭岩
30w
白馬 江
30w
島潭三 峰
40w
ウルル ン島
40w
南 山 ・ソ ウル タ ワー
lOw
10w
資 料)表3と
同 じ。
資 料)表4と
同 じ。
100
V結
語
本 稿 で は景観 分 析 のた め の非 文 字資 料 と しての郵 便切 手 、 と りわ け景
観 を描 いた公 園、 観光 地 切手 の概 要 とそ の有 効 性 にっ いて検討 した。 そ
の結 果 、以 下 の点 が指摘 で きる。 ①郵 便 切手 は発行 主体 の時 代 的戦 略 に
よ って その モ チ ー フが選 択 され、 種 々 デ フォル メ され る場 合 が あ る。 こ
の ことは景 観 を描 くア イ テム も同様 で あ るが、 その情報 性 に信愚 性 が よ
り期待 され る地理 的情報 が主 題 とな って い る こ とで景観 分 析 の基 礎 資料
と して有効 で あ る。 ② 日本 と韓 国の事 例 で示 され て い るよ うに、景 観 へ
の まな ざ しにっ いて、地 域 的 な感 性 が共有 されて い る場 合 が感 じ られ る。
したが って、 人文 主 義 的 な地 理 学 にお け る景 観 分析 の手 法 は一 定 の限界
を越 え て有 用 で あ る。③ 以上 の こ とで、 渋沢 フイル ム と現 在 の景 観 の間
隙 を埋 め る上 で郵 便 資料 は有 効 的で あ る といえ る。 この点 、 官製 とは い
え郵便 資料 の景観 分 析 に供 す る可 能性 は大 きい と考 え られ る。 ただ、 い
わず もが な で あ るが 、郵 便切 手 と して発行 されて いな い景 観 の場 合 は当
然 の こ となが ら利 用 で きな い。 ただ、 世 界 の切手 発 行 国 ・地域 は現在 で
も200を 越 えて お り、近 代郵 便 制 度 が継 続 す る限 りは今後 と も旺盛 な切
手 発行 活動 が行 わ れ るで あ ろ うか ら、 切 手現 物 の収 集 ・保 存 だ けで な く
電 子媒 体 で の記録 と して も完 備 して お く必要 が あ る と考 え られ る。 前述
の とお り、各 国郵 政 は郵 政 資料 の収集 ・保存 に積極 的 で あ り、 わが 国 で
も郵 政 官庁 の他、 郵 政 省 管轄 の テ ーパ ー ク(旧 逓 信 総 合 博 物 館)、 民 間
の 「切 手 の博 物館 」 な どが ナ シ ョナル セ ンター と して の役 割 を果 た しっ
っ あ る。 また、各 地 の郷 土 資料 館 で も郵 便 史料 の活 用 が 図 られ っ っ あ る。
ただ、 現 在 の と ころ史料 と して文 字 史料 中心 の収集 ・保存 ・展示 が 中心
で あ る。 近代 郵便 の歴 史 が ま だ百 数十 年 で郵 便 切手 や逓送 経 路 図 な ど非
101
景 観 分 析 の た め の郵 便 資 料 と そ の可 能 睦
文 字 資料 が比較 的 多 く残 って い る現 在 、散 逸 す る前 に この分 野 の現況 調
査 、 保存 ・展示 計 画 な どの企 画 が必 要 な時機 が 到来 して い る とい え よ う。
)
1
文 献 ・注 記
八 久 保 厚 志(2003)景
色(景
観)が
変 わ るとい うこと
神 奈 川 大 学21世
ム 「人 類 文 化 研 究 の た め の 非 文 字 資 料 の 体 系 化 」 研 究 推 進 会 議
紀COEプ
ロ グラ
『非 文 字 資 料 研 究 』No.2
20-212003.12f-
)
2
八 久 保 厚 志 ・須 山 聡(2004)「
澁 澤 フ ィ ル ム の 国 像 解 析 と そ の 応 用 」 『年 報 人 類 文 化 研 究 の た
め の 非 文 字 資 料 研 究 の 体 系 化 』1109。
発 行 機 関 は1)と
同 じ。
)
3
浜 田 弘 明(2005)「
澁 澤 フ ィ ル ム の 景 観 分 析 と そ の 課 題 」 『年 報 人 類 文 化 研 究 の た め の 非 文 字
資 料 研 究 の 体 系 化 』2。 発 行 機 関 は1)と
同 じ。
)
4
江 波 戸 昭(1987)llustlatedHandobookMusicalInstrumentstampoftheWorld(「
器 切 手 総 図 鑑 」(財)日
〃(1996)世
世 界楽
本 郵 趣 趣 協 会1987)。
界切手地 図
日 本 郵 趣 出 版 。 そ の 他 多 くの 著 作 が あ る 。
)
5
斉藤
毅(1997)世
界 ・切 手 国 め ぐ り
)
農り
オ ッ トー ・ホ ル ヌ ン ク(1970)IJ伽s勉
Czechoslovakia.(魚
日 本 郵 趣 出 版 。 そ の 他 多 くの 著 作 が あ る 。
∫24Eη のノoo4ρ26毎ofStamp)CollectingArtiaPrague
木 五 夫 訳 「図 解 切 手 収 集 百 科 事 典 」 日 本 郵 趣 協 会 出 版 局1973)。
近
代 郵 便 制 度 の 創 業 か ら現 代 の 郵 趣 事 情 に つ い て 参 照 した 。
)
7
H.A.Ramsden(1910)NumismatistsandPhilatelistjournalofjapan.JunKobayakawaCo,(小
早 川商 店発行
「大 日 本 古 銭 古 郵 券 雑 誌 」)大 正2年1月
。 明 治 ∼ 大 正 の 日本
の 郵 趣 事 情 に っ い て 参 照 した 。
8)
ScottPublishingCo.StandardPostageStampCatalogue.各
9)
SCHWANBERGERVERLAGGMBH班C肥L-一
10}
漁 翻o騒 各 年 版 。
KOREANPH工LATELICCOMPANYLTDκPC-KOREANPOSTAGESTAMPCATALOGUE.KPC.各
11)
年版。
年版。
(財)日 本 郵 趣 協 会(2005)「JpS外
国 切 手 カ タ ロ グ 韓 国 切 手2005-06」
郵 趣 サ ー ビス社 。
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