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お面を用いた小学 1・2 年生の 『表現リズム遊び』

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お面を用いた小学 1・2 年生の 『表現リズム遊び』
Nara Women's University Digital Information Repository
Title
お面を用いた小学1・2年生の『表現リズム遊び』
Author(s)
青木, 惠子
Citation
青木惠子:奈良女子大学スポーツ科学研究, 第17巻(2015), pp.3945
Issue Date
2015-03-31
Description
URL
http://hdl.handle.net/10935/4030
Textversion
publisher
This document is downloaded at: 2017-03-29T08:43:53Z
http://nwudir.lib.nara-w.ac.jp/dspace
お面を用いた小学 1・
2年生の『表現リズム遊び』
青木恵子 1)
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要約
小学校 1
, 2年生を対象とした「表現リズム遊び」の学習においては,「身近な題材の特徴をとらえて全
身で踊」り,「楽しく J
,「是酎才になりきったりリズムに乗ったりして踊ることができるように」し,「運動
に進んで取り組み,誰とでも仲良く踊る」ことが目指される.
本稿では,小道具を使った実践例の lっとして,小学校 1・
2年生を対象に,図工の授業でつくったお
面をつけて踊る授業例を紹介する.子どもたちの動きや,発言,日記をもとに,お面をつけたダンスで得
られる身体表現内容を述べる.また,お面をつけて踊ろうとすることによって起こる子どもたちの不具合
と,それを具体的にどう対応し動きの改善がみられたかを中心に現在の授業構成に至るまでの変遷を述べ
授業者の留意すべき点についても言及する.
侃朗e
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キーワード:「表現リズム遊び」,お面,自分
);
奈良女子大判付属似て判想ド常鍛講師
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4 奈良市百楽園 1丁目 7
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24
- 39 -
使ったダンスでは,子どもたちがどのように踊る
はじめに
楽しさを体験しているのか,普段のダンス注I) とは
小学校低学年の体育で、取り扱う「表現リズム遊
品訴オの特徴をとら
び」は,「表現遊びでは,身近f
どのような違いがみられるのか. また指導者は何
に留意していくべきかを探るー
えて全身で踊Jり,「リズム遊びでは,軽快なリズ
ムに乗って踊ること Jを「楽しく行い,樹おこな
お置のダンスをするきっかけ
りきったりリズ、ムに乗ったりして踊ることができ
学 l年生の子どもたちに「象になってみよう」
るように」し,「運動に進んで取り組み,誰とでも
仲良く踊Jることが学習内容となっている
1)
と声をかけると,大半の子どもたちが片腕をだら
I
)
.
しかしながら,小学校の現場においては,日常
りとからだの前に垂らして立つ.同様に「烏Jの
の授業で即興表現をどのように教えてよし、かわか
時には,両腕を広げてばたつかせる.動きをつく
軍慰捨でしか
らないとし、う声も多く,行事であるi
ることについて,恥ずかしそうな素振りは誰もみ
実践せず,そのことがダンス嫌いを起こしている
としづ報告もある 5).
せない.自らの身体の動きを記号として使し、他者
へ知らしめようとすることは,簡単にやってのけ
文部科学省より学校体育実樹旨導資料 2)
として,
る l年生の子どもたちではあるが,「こんなんに
低学年を対象とした「どうぶつランド、でへんし
んなことは),簡単や(簡単だ).まね(を)した
ん! J
,「ゅ うえんちへいこう!」と題した観的や
VJ)問
らええねん(したらし' v
乗り物を題材とした具体的な実践指導例が,詳し
,
l重体オになりきってJい
が必ずでてくることから, f
く紹介されている.現場にとってはこのような実
る訳ではなL、こと洲擦される.
j
と屈託がなし、発言
践指導伊怜実践例が一つで、も多く紹介されること
「まねj をしていると意識しながら身体表現を
によって,現場で活用する選択肢ができ,表現リ
している子どもたちが,「そのものになりきって」
ズ、ム遊びの授業に取り組む機会が増えるので、はな
踊るようになる指導方法や耕寸はないものかと考
いかと考えられる.
中島ら 3)は,もの
つくった(全 4時謝受業で{科却ことを知った.
ω、道具)針吏ったダ、ンスの
えていたところ,1年生の造形制の授業でお面を
文献による事例調査を分析した結果,具体的なも
'
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−
:
.
厚紙に,授業者が鉛
目と鼻の位置をくりぬv
のを使うことで,「心理的・身榊句なやり易さ」が
筆で輪郭となる楕円を描いたものを用意する.そ
あり,「ものの質惑を身体と一体{じすることによる
こに子どもが思し、思いにマジックで色を塗り,鉛
多様な動きの開発jや,「他渚と触発しあしヲ開が
筆。嫌に沿って鋲で楕円に切る.その上から,各
ひろがるj 特!句協ることを指摘してしも.
自が自由に折ったり切ったりした色紙を貼って飾
またこれまで報告されている小道具を使ったダ
ンスの実践指導例や実樹列は,中島らによると,
り付け,お面を完成させていく.鉛宣伝の輪郭どお
りにその厚紙を切ることが,課題のひとつとなる.
.教になる
新聞紙を使ったものが圧倒的に多く, j
造形担当の授業者によると,「厚紙を指定どおり
が布や風合なとeを使った授業報告があるとし、う.
に鉄て切るJ他に,色直聞紙をテーデ状にしてあ
用意がしやすく軽くて形が自在になることが重宝
る長b色紙を使って,ねじる・折る・編む・繋ぐ
される要因だと考えられる.
などの銭法を用いお面に張り付け,「平面のものを
そこで本稿では,ものを使ったダンスのーっと
半立体化していく」ことも課題となる.技能以外
して,お面を用いた授業を取り上伐その授業展
にも,出来上がったお面で身体をもので飾り劇こ
開例を紹介する.
着ける,身体を感じる体験のーっとしてお面をつ
授業内での子どもたちの発言や,その日の日記
くる意義があるとし、う
と併せて授業での子どもたちの動きから,お面を
- 40 -
お菌をつくる際に造形担当授業者は,できるだ
け倉臨単告にという願し、から「実際にはし、ないものJ
「心の中にあるもの」をお面につくって欲しいと
注文をだしている. l年生には「優しい,強い,
弱い,怖い」とし、う感情を表す言葉や「不思議な」
という言葉を使って想像を膨らまし,「とにかく,
おもしろいお面をつくろう」と締めくくり,製作
に取り掛からせるとし、う.
図1
. 1年生のダンス風景
で、きあがったお面に,「それは,何?」と尋ねる
と子どもたちは「お姫様!」「悪もの!」など,即
っからないようにお面をつけたまま,あらゆる方
座に答える場合が多い.長々と空想、を説明し始め
向をぐるぐると見まわし何度も何度も友達との
る子もいる.パンダキサ亡など一目でわかる動物を
昼間住をしっかりとることを促す.そののち,ウォ
描いている子も必ずいる.クラスの誰かが物語を
ーミングアップとして様々な劇育を持った人働
つくり,その登場人物のお面をつくったのだ、と答
物)のポーズキ動きを実際にやってみる.その都
える子もいた.中には,尋ねても首をかしげて考
度,協丘しすぎてし沿いか確認をさせ,お面によ
え込んでしまう子もおり,作品に込める思いは
り限られた視野の中で桶る時にf
也者と保?くき距
様々だ.
離を感覚的に学んでもらう.
具体的なイメージなどを想定せずなんとなくお
曲を聴き,どんな場面かイメージし,自分のお
面をつくっていた子どもも,自分でつくったお面
面の人働物)がそこでどう動してしもか想像し
を眺めるうち,それまで明確ではなかったお面の
てもらう.「こんなんじゃない,ほんとはもっと恰
こなったり,友達とつくったお
人物設定が明らかl
好良いのにしたかったんだ」と思う人はつくろう
面について話をするうちに,新たに生まれたイメ
としていたものに,自分がつくったお面とは違う
ージをお商に込めたりすることもあるようだ.
ものに変身したければそれでも良いことを告げた
N
l
l
4
1によると,アフリカ人にとってのマスク
ノ
は,農耕民族のみが使用する儀礼の道具であり,
(神に)変身する一つの手段なのだとし、う.自分
でつくったお面をつけることによって,そのキャ
のちに,ダンスがスタートする.踊った後に集合
し,授業者が「どんな人が,何をしていたのか」
を子どもたちに尋ねる形式で話のやりとりをした
,話のやりとり 2回目),もう一度踊る.
のち(表 l
この日は見学者が 2名いたので,見学者がもう一
ラクターになりきって踊ることがたやすくなるの
ではなし、かと考え,ダンスで活用することにした.
度見たい面白い動きをしていた人を選んで、,その
人たちに踊ってもらい,その他の人も観賞し,よ
揖集の風聞倒
い動きを見つける.通常見学者がいない場合は,
クラス全体を大雑把に半数に分け見せ合いをして,
対象学年:小学校 1年生 1クラス(3
5名
)
日時
おもしろい動きを見つけ合う.時聞が許制1
艮りも
6年 1
0月 2
9日 2限目
:平成 2
う一度全員で踊るのだが,この日は自分が何をど
ω分)
う踊ったのかを数名が披露したところで終了する.
1時間完結授業(
使用曲.ポニーキャニオンサウンドトラック
踊り始めると,一人で優雅に手足を伸ばして動
「鹿男あをによし」 0
6 「不可解な行動」
2分 1
1秒
:造形の授業でつくったお面
).お面を
かけっこをしているようにみえる個 1
道具
く子もいるが,大半の子どもたちは走り回り追い
つけているため誰が誰なのか,授業者にはさっぱ
りわからない.じっと座り込んでいる子もいる
表 lに授業関酬を示した.体育館に広がり,ぶ
- 41 -
もう 一度もう一度と,せがむ声が多く,「楽しし、」
と誰もが口にする.子どもたちの動きと感想、を追
着
陸1
.授業の展開例(1年
生
)
慢業内容
時間
.
フ
やや上体を前屈みにし,膝を折り姿勢を低くし,
お面のルール説明
:
。0
0
1友達に近づきすぎないこと
先生の前に立って実際に箆雌を測る
駒献するような動きで向かし合う 2∼3人組が,あ
ちらこちらでみられる.そのようなグ.ループに近
づいてはポーズをとってみせ次のグツLープへ近づ、
自分のお面を受け取って、体育館の好きな場
:0
。4
1所へ
く子や,その聞を縫うように移動しながら踊る子
が残りの 3審腐護とし、うのが全体の様子である.
その中で,典型的な 2人組の A男と B男.腕を
他者との距般の確琵
0
:・0
7
1
授業者による細かな開襲
『悲しい人」『怒っている人』「喜んでいる人」『急
前に出し手首をぶらぶらさせ,弾むように前進す
る A男.お面は全体に暗し、色が混ざるように隙聞
0
:
0
8
1いでいる人 J
f
i
!たい人J
などそれぞれのポー
ズと動きをやってみる
:
。1
2
1集合して、曲を聴く
なく塗られているが,ところどころ赤い.口周り
は特にJ
所 Lてし、るような印象だ.両腕を振り回し,
~のやりとり 1 回目
からだ全体をぐにやぐにやさせながら,出くわし
た B男に向かっていく.その日に書いた彼の日記
綬象者, f
どんな感じの曲?何してるところ? J
子どもたち:口々に答える
媛象者:「じゃあ一度踊ってみようJ
0
:
1
5
1
によるとお面は「ゾンヒ1で,ぐにやぐにやした
動きは「ゾンピ」の動きで,人に向かっていくこ
とで怖がらせようとしていたのだ.「くふうはし、つ
0
:
1
7
1それぞれが広がって、再度お面をつける
0
:
1
8
1踊
る
な2
0
1集合する
I
!のやりとり2回
目
慢業者, f
追いかけていた人,いたね?その
人、どんな人。 J
子どもたち・手を挙げる「強い人! J
「悪者おい
かけてた! J
「いい人なのに追いかけられてるJ
仕2
1I
慢象者「そう例追いかけられたらどうした?」子
どもたち・「渇れた! J
rドキドキした J
授業者:『ドキドキしてるの?もうー度、自分の
お面がどんなひとやものなのか考えてみて」
(中略)『他の人の動きもよくみてね、さあもう
1
回踊ろうJ
l
品、で,ことばではあらわせません」と書いてい
た一方, B男のお面は,下方に長し色紙を 2本曇
らし,上には三角の角が 7本も出て豪華な飾り付
である.腰を低くして構え,手の指先を熊手のよ
うに開き力を入れて,ゆっくりと大股で A男に向
かつて前進する.円布いお面,もっともっと怖く J
と思いながら角をいくつも付けたから,「だから思
いっきり怖く動いたJのだとし、う.
C子は,締麗な女の人を描きたかったのだが.つ
0
:
2
4
1もう一度踊る
くっている途中でうまくし、かなくなったお面なの
だと笑う.「こわいうごきをしようとおもいました.
0
:
2
7
1見学者2
名が面白い動きの人をピックアップ
0
:
2
9
1ピックアップした7
名が踊ってみる
わたしは,どうしても,いっしょにやってくれる,
おともだちがいないから,じよゅうになったつも
0
:
3
1I
何を踊ったのか手を挙げて発表( 3名
)
りで,あたまのなかでそうぞうして,(中略)ほん
とうにやっているみたいにとっても,こわくなっ
0
:
3
7
1授業者から話
仕4
0
1終了
ておどっていました jつくろうとしたものの達成
でーきなかったお面のイメージを,ダンスに込めて
概ね楽しんでいることは授業者にも伝わるのだが,
何をどう踊っているのか一見しただけではわから
ない.ところが子どもたちの評判ぽすこぶる良い.
表現したのであろう.
D子のお面比大きなピンクのリボンを里賠似こつ
け口元が真っ赤に大きく描かれていた.D子は日記
に「「おめんを,かぶったら,おどりたくなる(中
- 42 -
略)バレリーナにな
いてしまった.「踊るのが自分じゃない誰かみたい
ったみたいなダン
で恥ずかしし、」というのだ.普段踊ることを恥ず
スでした」と書いて
かしがらない子どもたちが,お面をつけて踊るこ
いた別段バレエを
とは何故恥ずかしし、と感じてしまうのかが,わか
習っているわけで
らずじまし、て督業を終えた.
もない D子だが,両
図Z バレリーナ
お面の授業を始めて 2年が過ぎた年から, 2年生
腕を胸の前で交差
もお面をつくることになった出}と知り, 2年生で
させか首を傾げ全
もお面を 1度だ、け踊ってもらうことにした 2年生
身を伸ばして立った
になると普段のダンス授業では生き生きと踊るの
り,腕を優雅に広げる動きを多用し,時折大きく
だが,やはり 2年生でも普段に比べて踊らない.
)
.
捌極言する(図 2
しかし,との時はこのタイミングで授業者が「ど
これらの事例は,子どもたちがお面で表現した,
うして踊りたくなかったか先生に説明で、きる人い
または表現したかったイメージを,今度は自分の
る? Jと子どもたちに問し、かけた. 1年生よりダン
身体を使って表現しており,そのことを楽しんで
増え語実力も増した 2年生の方が,
ス授業の経蜘2
いる様子が窺える.
踊らない理由を明確に答えてくれるのではなし、か
通常の授業では,テーマに沿って各自が持つイ
とし、う期待が,授業者に芽生えたからだ.
メージを,音楽宍制措の動きなどを手掛かりに広
げたり高めたりして動きに変えていくのだが,こ
子どもたちのお面をつけて踊りたくない理由は
概ね次の 4つに集約された.
の授業では自分でつくったお面に込めたイメージ
を思い出し,それを手がかりに動きをつくってい
①自分がつくったお面に対する利爾
くことが軸となっているとし、える.
まず,売っているお面みたいに恰好良いお面を
お面をつけているために,視野が限られてしま
つくるつもりだったのに,出来栄えがそのよう
にはなってし、如、ことハの芥摘がある.
い,一緒に踊るクラスメートもお面をつけており,
誰が誰なのかわからない.「た支Lとおどって(し、)
②お面をつけることで視野が狭まること
るかわかりませんで、した」と日記に書いた子も複
目の見える範囲が狭くなって,前がよく見えな
数おり,誰だかわからなし、クラスメートと踊るこ
い.お面をつけることによって,身体を窮屈に
とも「お面のダンス」の大きな特徴である.その
感じて動きの制限をしてしまっていることを,
ことによって,普段からの仲良しグ、ループで集ま
授業者は常に認識するべきであろう.
り,動き始めるとし、う樹目同首えている.「誰とで
③お面のイメージと音楽イメージの不諏日
も仲良く踊る j とし、う学習内容が,お面をつける
ことによって得られていることに気づく.
授業者がダンスで使用するために用意した曲か
ら生じるイメージと,各自がお面にこめたイメ
ージが合わずに,子どもたちがその気になれな
お面をつけたダンスの費量と留意点
し\
④お面のイメージを受け入れること
お面の授業を始めたのは 6年前に遡る.入学し
子どもたちは,自分だと踊れるのに,他の人に
0回ほどダンス学習を経験し,どの子ども
てから 1
なって踊ることができないという.お面をつけ
も自分のからだを使って何かを表現するようにな
て誰かになろうとすることによって,それまで
った時期の 1年生に,「お面」をつけて踊ってもら
のダンスの学習ではあまり意識していなかった
う授業を試みた.すると,屈託なく踊る子は少な
自己の存在を認識し,恥すで品、しいと感じたので
く,大半の子どもがしり込みし,圏繋にへばりつ
はなし、かと推察する.
- 43 -
子どもたちの理由は,考えさせられることが多
か考えさせてから踊るように指示する.そして,
い.授業者が全く気付かヂにいたことばかりだ.
いきなり踊るのではなく,ウォーミングアップと
そこで,以下のことを改善した.
していくつかのポーズを子どもたちにとってもら
q出 面l
こ対する司硝につしては,その不
い,お面のキャラクターと少し付き合ってもらっ
満に対して,出来栄えに満足していないのはあな
てから踊ることにした他若になろうとすること
ただけではないことを強調し,「最初あなたが作ろ
によって自分の存在を実感する,これまでのダン
、お面をつけていると思
うとしていた一番格好し w
スで経験したことのない感覚が起こっているのな
まず,
ってほししリことを伝える.
ら,何度カ輔る間にその感覚に慣れてくるのでは
次l
こ霊視野の狭さについては,そこで,造形の
なし、かと思い至り,子どもたちの変化を見守るこ
担当者にお願いして,厚紙の自の部分にあたる部
とにした.
分をもう少し大きく剰り抜いてもらう.そして子
これらのことを留意したうえで,ダンスが始ま
どもたちには,「見えにくいけれど,それは少し我
っても他の人になって踊れないことで混乱を起こ
慢してそこからしか見えない世界を楽しんで、ほし
してしまう子どもが現れた時には,「お面をつけた
い」ことを伝える.
自分のままで踊ってもいいよ」と声をかけ落ち着
カ¥せることにした.
さらに,③ぞ也のお面のイメージとダンスのイ
メージの不調和については,「合わなし、」とし、う子
改善した翌年度の授業から,それまであまり踊
が多かったために,選曲をやり直した.曲調の違
2年生とも,
らなかったことが嘘のように 1・
う曲を何曲も踊った後に,一番子どもたちが気に
屈託なく踊りだした.「他の人になって踊ることが
入って踊った曲に変えた.現在もその曲を使って
できなしリといった声も起きなくなった.
いる.その上で,曲を聴いたのちに,自分のつく
0
1
2年 1
0月 3
1日)の 2年生の授業例
その時(2
ったお面がどうし、った場面で、「何をしている」の
∼7である.それまでの
が子どもたちの動きが函 3
図3
. やられた!
図6
. 僕の方古輔いぞ
図4 落ちてしまった
図 1 ー 繍ζ踊ろう
- 44 -
図I
I
. 乗り通れd
!
ヒ
お面の授業と比べて, 一人一人の動きが大きく,
どの子どもも生き生きと踊る.動きのぎこちなさ
や迷いが消えており,なりきって踊っていること
がわかる(図 3
∼7).他者とやり取りする動きが,
どの子のどの場面を切り取っても躍動的で、ある
たなかった子どもの動きに授業者が気づかされた.
他の小道具ほど用意が手軽ではないが,お面の
ダンスによって自己を認識し,恥ずかしし立感じ
たり他者になりきったりする体験は,自己中,L
的
(
図 6∼7
)
.
に物事を捉えていた幼児期を抜け出したばかりの
小学校低学年にとって,自我に気づくきっかけに
通常のダンスでは,友達の動きに追随すること
なる可能性もあるのではないだろうか.
.
が多く,授業者の白からはグノトフ漬現に埋もれ
てしまっていると捉えていた子たちが,お面を用
酔
いたダンスでは近くにいる誰かに,伸び伸びと大
きな動きで表現し伝えようとしていることに気づ
かされることもある. E男 個 5左)は,通常の
ダンス授業では,授業者である筆者の自に留まり
にくい子どもであった.しかし,この日の表現に
対して「動きが大きく,みている者に何をしてい
るかよく伝わるJと褒めたことによって, E男はそ
の日の振り返りで,自分のダンスが「電車に乗り
遅れたうちのお父さんJだ、ったと初めて挙手し発
表した普段目立たない子が,お面をつけること
によって大胆に身体表現ができて,それがきっか
けで自ら発言できたことは,お面の授業による成
造形担当の今西慶子先生は附烏l
母校の学習におして赴
任されて(6年前)から現在に至るまで,お面I})帝肝乍に取り
組んでおられます.本文を書くにあたって,先生に改めてお
話をイ号、ご協力をいただきました心より感謝、、たします.
文献
2
)
文概ヰ学省 (
忽
潤
) 小学校学習指導要領儒児体育編
文部科学省 (2013)表現運動系及びダンス指導の手引
3
)
学校体育実伎指導資料.東滑宮出版社
中島由梨・村田芳子(2012)ダンス学習における も
「
1
)
果だと考える.
また,自分でつくったお面であったためにその
のを使った表現叫耕主と意義に関する研究(初日
本衣子休講連盟学ヰ柄薪究 28(
0
)
:1
ー1
6
.
イメージを身体でも表現しようとしてそれぞれが
独立した表現をし,誰が誰だかわからない状況が
4
) 小
川了(2
側
) 黒人は先苅句にダンスがうまし、とし、う
生まれることで誰とでも仲良く踊ることができた
ことも,お面という小道具のもつ特性であろう .
5
)
ことをめぐって.舞踊浮(2000):125 1
3
0
.
寺山由美包007) I
表現塞動J を指導する際の困難さ
について,千葉県小学校教員の調査から一 千葉大学
教育学昔剛究紀要 55: 17H85.
制コりに
注
お面のダンスは,他の小道具と同様に動きの広
がりをイ思量するものではあるが,思いを込めて自
注1
)この小学校個立大学法人奈良女子大判付属仲料郊で
分でつくったものを,からだ(駒に直接つける
としづ特性があるために当初不具合が起こり,す
て毎週 l回「表現lの授業カ洋間を通して開講されてい
んなりと誰もが楽しく踊ることにはならなかった.
その出来栄え糾硝であったり,視野が狭まり
動きを制限されたり,ダンスとイメージが合わな
かったりして,変身して踊ることができなかった
のだ.お面とし、う小道具の糊1
主に留意した上で,
.
る
也)この岬校!丈 f
図工jの教科を f
由主」と呼んでおり,
専手取η授業担当者柑子う.ま酒の授業は今西慶子先生
のオリジナルである.
注3
)2年生のお面は マジックではなく絵具を使ってお面
は l年生から 3年生までの間,体育伝授業11)-弓棄とし
取り組む必要があろう.その一方,それまで目立
- 45 -
をつくる
Fly UP