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エジプト国紅海西岸風力開発事業
平成 16 年度地球環境・プラント活性化事業等調査 「エジプト国紅海西岸風力開発事業」 報告書要約 平成 17 年 3 月 社団法人日本プラント協会 要 約 1. プロジェクトの背景 1.1 事業背景 エジプト・アラブ共和国(以下 エジプト国)は、現在ムバラク大統領(1981 年より現職)の指導の下、内政は全般的に安定し、オベイド内閣(1999 年 10 月 発足)は、市場経済化に向けた経済改革を推進中であり、特に国内の社会格差の 是正や輸出産業振興を重視している。経済面では、湾岸戦争後の 1991 年に経済 改革および構造調整プログラムに着手、為替レートの統一、物価当世の一部緩和、 民営化、金融自由化・規制緩和などを実施し、高い成長率を実現し、為替レート の安定・インフレ抑制・経常収支の改善・財政赤字の好転などマクロ経済指標は 著しい改善をみたが、90 年代末より、石油輸出余力の低下や輸入の拡大によって 外貨不足が深刻化し、これに銀行の不良債権、政府の財政赤字の拡大等により内 貨流通性の逼迫も加わり不況に突入した。さらに 2000 年 9 月以降のパレスチナ 国情勢の悪化、2001 年 9 月の米国同時多発テロ事件、イラク国攻撃といった中東 情勢の緊張の高まりによる観光収入の減尐、主要貿易相手国である米国経済の不 振、欧州経済の減衰などの影響で 2001 年頃から成長の鈍化が顕著となり、国内 総生産の成長率は 3%台に低下した。2002 年後半以降は観光収入の増加により若 干回復の兆しを見せ始めている。 1.2 電力事業 エジプト国においての電力需要は年々急激な増加傾向にあり、今後もこの傾向 は継続すると予想される。これらに対応するためには積極的な電源開発が極めて 重要であるが、このような状況においてエジプト国政府は、主要外貨獲得源であ る石油・天然ガスの国内消費量の抑制、環境保全の推進の観点から、新規電源開 発に対して化石燃料を使った火力発電所に全面的に依存することは避けたい、と いう意向を示している。 エジプト国政府は政策課題として、エネルギー価格政策問題、エネルギー効率、 省エネルギー、環境問題、エネルギー代替政策問題、エネルギー需要予測問題を 挙げている。 1.3 本プロジェクトの必要性 エジプト国では最大電力需要の伸びが顕著であり、現在、電源開発計画に基づ き幾つかの火力発電所の建設計画が進められているが、今後も急ピッチで電力供 給量の増加を図る必要がある。 こうした電力需給の逼迫に対応した必要電力供給量を確保する一方で、同国で は環境保全も同時に推進し、新・再生可能エネルギーの活用を進めるために、エ ジプト国政府は 2010 年までに総発電設備容量のうち 3%を新・再生可能エネルギ ーで供給する計画がある。 現時点では、風力発電は紅海沿岸のザファラーナ地区においてプロジェクトが 進行中であるが、本件もこのザファラーナプロジェクトと同様に、今後の新・再 生可能エネルギーによる電力供給計画を達成するための1プロジェクトとして具 体的な発電計画に寄与するものである。本事業は、電力供給量の増加、化石燃料 使用の抑制による大気汚染の緩和、同規模の火力発電所を稼動させた場合に比し て温室効果ガスの排出を削減し地球温暖化の抑制に寄与することを目的とし、エ ジプト国の電力供給量の確保と環境保全を両立させるものである。 2. 本プロジェクトの基本計画 2.1 建設サイト エジプト国においては、紅海沿岸における風力エネルギーポテンシャルスタデ ィを実施しており、これによると年平均風速は大部分の地域において 8m/s 以上 であり、その中には 10m/s 以上の地点も多く存在する。この地域一体は風況に関 しては風力発電に適している可能性が極めて高いと判断できる。 本プロジェクトのサイトとして、エジプト国側実施機関である新・再生可能エ ネルギー庁(New and Renewable Energy Agency:NREA)は、紅海沿岸の Gabal El Zayt(以下 ガバルゼ)を考えているが、この地点は国有地で且つ住宅地から 離れた場所にあり、付近には住居者(民家)および農業用の田畑はないため住民 移転および景観の問題も発生しないと考えられる。軍事上の制約も無いことを確 認している。高さ制限に対しては、発電機単機容量が決定しないと詳細には限定 できないが、110m 程度であれば問題は無いことを確認している。 2.2 風力発電設備の概念設計 (1) 風車の選定 1990 年代には 200kW~300kW が主流であった風力発電機の単機容量は 年々大型化しており、現在の市場では 850kW~1.5W 機種が主流となって いる。多くの風力発電機メーカーが様々な機種を製造し、多くの運転実績を 持っている。適用する風力発電機について NREA と協議を行った結果、豊 富な市場実績を有する 1MW 機をベースケースとして使用した。また NREA の要望により、今後更に大型化が予想される出力 1.5MW 以上の風力発電機 の採用可能性についても検討した。 (2) 風車の配置 本サイトの卓越風向は北西(300°~330°)である。ハブ高さにおける風 力分布を求め、比較的風況の良い場所に卓越風向に垂直な配列にて風力発電 機を配置するのが好ましい。風力発電機のウェイクロスを極小化させるため、 風車間の離隔は、卓越風向と垂直方向にロータ径の 4 倍、卓越風向と並行 方向にロータ径の 15 倍とした。卓越風向と並行方向の離隔は通常ロータ径 の 10 倍程度とされているが、本サイトは卓越風向が非常に卓越しているこ と、ならびに同卓越風向の平均風速が非常に高いこと(13 m/s 以上)より 通常よりも大きな離隔を取ることとした。同時に、NREA との協議に基づ き、卓越風向と垂直方向にロータ径の 4 倍、卓越風向と並行方向にロータ 径の 10 倍の離隔についても検討した。 (3) 基本性能 今回のプロジェクトで選定した 1MW の風力発電機の基本性能を表 2.2-1 に記す。 表 2.2-1 風力発電機基本性能 (1MW) 項目 主要目 1000kW 定格出力 19.8rpm ローター回転数 61.4m ローター直径 翼の枚数 3枚 翼の材質 ガラス繊維強化プラスチック(GFRP) 出力調整 可変翼式(ピッチ) タワー 円柱型鋼鉄モノポール タワー高さ 60 /69m 発電機形式 三相誘導発電機 電源 690V x 50Hz x 3 相 12.5 m/s 定格風速 ※ 3.5 m/s カットイン風速 ※ カットアウト風速 ※ 25.0 m/s (瞬間風速 30.0 m/s 2 秒) 20.0 m/s リセット風速 ※ 設計最大風速 ※ 60.0 m/s (瞬間風速、フェザリング状態) ※ ハブ高さ、10 分平均、空気密度 1.225kg/m3 での風速 また、NREA から要望のあった大型風力発電機については、比較検討後 選定した 2.4MW 風力発電機の基本性能を表 2.2-2 に記す。 表 2.2-2 風力発電機基本性能 (2.4MW) 項目 主要目 風車型式 水平軸プロペラ式可変翼式風車 2400kW 定格出力 プロペラ回転数 9rpm ~ 16.9rpm 92m プロペラ直径 翼の枚数 3枚 翼の材質 ガラス繊維強化プラスチック 出力調整方法 可変回転数制御 3 翼独立可変ピッチ方式 出力調整装置 ブレーキ 3 翼独立可変ピッチ 機械式パーキングブレーキ(保守点検) タワー 鋼製モノポール タワー高さ 地上 70m 発電機型式 全閉強制通風型巻線型誘導発電機 (Double-Fed 方式) 電源 AC690V x 50Hz x 3 相 12.5 m/s 定格風速(平均風速) カットイン風速(平均風速) 3.5 m/s 以上 カットアウト風速(平均風速) 25 m/s 以上 (4) 平均風速および発電量の推定 ガバルゼサイトの平均風速は、表 2.2-3 に示す通りである。また、解析し た結果、ハブ高さでの平均風速は約 11.5m/s となる。 表 2.2-3 ガバルゼサイトの平均風速 平均風速 El-Zayt (計測全期間) 10.0 m/s El-Zayt (2000-2001 年) 10.3 m/s El-Zayt NW (2000-2001 年) 10.5 m/s 単機出力 1MW の風力発電機をベースに、風車稼動率、各種ロス(ウェイ クロスなど)を考慮し算出された年間発電量は以下の通りである。 表 2.2-4 年間予想発電量 1MW 風力発電機単機容量 風車台数 220 台 4D x 15D 配置案(離隔)* 220MW プロジェクト総容量 年間発電量 1,177.2 GWh/年 61.1% 設備利用率(Capacity Factor) 1MW 220 台 4D x 10D 220MW 1,168.8 GWh/年 60.6% *D(Diameter):ロータ径 2.3 送電系統の連系 サイト直近には、2007/2008 年までに 220kV 送電線が建設される計画がある。 この送電線はハルガダ変電所とザファラーナ変電所の供給信頼度を向上させるた め、この 2 つの変電所間約 270km を連系する。今回のプロジェクトで発電した 電力は昇圧用変圧器で 22kV に昇圧後、220/22kV 新設変電所を介し、この 220kV 送電線に送電される。 3. 実施計画 発電所の運営体制は、現在稼働しているザファラーナ風力発電所と同様な体制 の NREA 傘下の組織での体制になると考えられる。 詳細設計、入札図書の作成及び建設期間中における施行管理を実施するため、 コンサルタントを起用することを推奨する。 今回プロジェクト(220MW 規模の風力発電所)の実施期間は、準備期間 7 ヶ 月、建設契約締結から 21 ヶ月と設定し、合計 28 ヶ月と想定する。なお、準備期 間には、コンサルタントによる風況調査、地質調査、送電線配置などを含めたサ イト・レイアウトの策定などを実施する。 4. プラントの運営 風力発電機を順調に運転していく為には、定期的な点検が必修である。本件で は、基本的に 3 ヶ月を単位とした定期点検を推奨するが、エジプト国は既にハル ガダおよびザファラーナ風力発電所があり保守の実績がある。そのため、これら の発電所の保守実績を参考にして、より効果的な保守点検を行い、発電機を適切 な状態に保つことが重要である。 プラントの運転・保守には風力発電機の製造・据付および初期試運転などの教 育を受けた電気・機械のエンジニアが必要である。現在 NREA の人員構成は全 761 名に対して、エンジニア 130 名、専門技術者 136 名となっているが、基本的 な運転・保守技術に加え、近年目覚しい発展を遂げている風力発電機の最新の技 術を習得し、独自で運営できる体制にしていくことが必要である。 5. 環境 5.1 環境関連政府機関 エジプト国では、環境省(The Ministry of State for Environmental Affairs, 以下 MSEA)および実施機関である環境庁(EEAA)が環境管理の責務を負って いる。EEAA は環境法 4/1994 に従い、環境を保護し様々な環境活動を推進して いくことであり、活動内容は、環境保護関連法・規制(案)の作成、環境現況の 調査、環境保護の国家計画の策定、事業実施者が事業実施前及び実施中に従うべ き基準の作成、他の関連情報機関との連携による国・世界レベルでの環境情報の 収集と出版、環境トレーニング計画の策定及びその実施の監理、天然資源の保全 及び環境汚染防止のためのパイロットプロジェクトの実施などである。 5.2 国家環境政策 2000 年以降エジプト国政府は、環境マネジメントによる公害の削減、エジプト 国の天然資源の保存を目的とした政策を打ち立てている。EEAA が環境に関して 国家対策および発展計画に組み込むために実行している項目は、空気・水質の向 上、地球(大気)上の環境汚染(産業汚染の減尐)、観光地域・沿岸地域の保護、 環境インフォメーションシステムの確立、危険物質・廃棄物(ごみ)に関するマ ネジメントの確立、自然保護、緑化対策、環境影響評価、環境にやさしい産業都 市プログラムの確立、環境に関する教育・訓練・配慮などである。 5.3 風力発電における環境への影響 今回プロジェクトにおける風力発電機を建設するに当たり、予想される環境へ の影響について、建設現場へのアクセス、騒音、電波障害、鳥類への影響、景観、 保護区域などの調査および影響評価を行ったが、特に問題はないと考えられる。 5.4 二酸化炭素削減効果 本プロジェクトにおける二酸化炭素削減量は、火力発電(天然ガス、重油)と 比較して年間約 650 千~780 千トンと予想される。 6. 経済・財務評価 6.1 総事業費 (1) 計画範囲 ガバルゼ風力発電所計画の範囲に含まれる項目は以下の通り。 ・ 1000kW 風力発電機 220 台 ・ タワー 220 基 ・ コントロールパネル 220 台 ・ ナセル~コントロールパネル間の電気ケーブル 220 セット (2) 基本条件 プロジェクトサイト : ガバルゼ(Gabal El Zayt) 定格出力 : 220MW 単機出力 1000kW 風力発電機 220 台 グリッドまでの距離 : 1km(送・変電設備は EETC の所掌範囲) 土地取得・賃借代金 : 含まず(NREA 負担) 関税、付加価値税等 : 輸入税:8% 売上税:10%(輸入品) 売上税:10%(現地品) サービス税:1.7% 社会保険:2.2% 建設開始時期 : 2007 年 建設契約価格上昇率 : 年率 3% 為替レート : US$1 = 5.8979 Egyptian Pound(LE) (2005 年 1 月 21 日) US$1 = 103.34 円 (3) 建設費用 上記の基本条件に基づき、風力発電機製造企業及び関連機器製造企業より見積を 取得、以下の通りガバルゼ風力発電所の建設費用を積算した。また、現地工事につい ては NREA の既存風力発電所における価格及び入札価格を参考とした。 風力発電機(ナセル) タワー 輸送費 土木工事一式 (所内アクセスロード等) 据付工事一式 電気機器調達一式 計測制御機器調達 建物 風力発電所施設 小計 税金関係(輸入税、売上税など) 建設工事予備費用 小計の 5% スペアパーツ 小計の 3% 送電線(22kV。発電所―変電所間 1km) 変電所(250MVA) 風力発電所建設費用 小計(物価計算前) 風力発電所建設費用 小計(物価計算後) 保険料 0.5% 土地関連費用 固定資産税 コンサルタント費用 試運転費用 建設(資本)費用合計 (単位:千ドル) 176,000 風力発電機に含む 風力発電機に含む 17,600 11,660 28,160 風力発電機に含む 土木工事に含む 233,420 27,456 11,671 7,003 EETC のスコープ EETC のスコープ 279,550 298,260 1,491 NREA のスコープ 免除 2,500 256 302,507 (4) 総事業費 総事業費の算出においては、上述資本費用に加えて所要資金を調達するための金 融費用も算定し、総事業費に織り込むのが通常である。この金融費用は当然利用可能 な融資条件によって変わるが、ここでは上述資本費用の 75%に対しては日本からの融 資、残り 25%に対してはエジプト国内での資金調達がそれぞれ成されるものとし、建設 中金利を以下の通り算出した。 建設費用合計 建設中金利 総事業費 (単位:千ドル) 302,507 8,373 310,880 (5) 大型機種の総事業費 NREA の要望により、単機出力 1MW 機種をベースとした調査、解析に加え、今後更 に大型化が予想される単機出力 1.5MW 以上の風力発電機の採用可能性についても 検討する。現在実績を有する、或いは今後有望とされる単機出力 1.5MW~3MW 機種 の中から性能解析比較の結果、単機出力 2.4MW 機種が本サイトにおいて最も高い発 電量が得られる結果となった。 従い、ここでは大型機種として単機出力 2.4MW 機種と、比較検討した機種の中で最 大規模である 3.0MW 機種を適用する。以下の総事業費は基本条件のうち、定格出力 が 218,400kW(単機出力 2400kW 風力発電機 91 台)となる以外は同じ前提としたが、 今後大型機種の更なる技術進歩、価格低減も期待され、将来入札等の結果により見直 されるものである。 風力発電機(ナセル) タワー 輸送費 土木工事一式 (所内アクセスロード等) 据付工事一式 電気機器調達一式 計測制御機器調達 建物 風力発電所施設 小計 税金関係(輸入税、売上税など) 建設工事予備費用 小計の 5% スペアパーツ 小計の 3% 送電線(22kV。発電所―変電所間 1km) 変電所(250MVA) 風力発電所建設費用 小計(物価計算前) 風力発電所建設費用 小計(物価計算後) 保険料 0.5% 土地関連費用 固定資産税 コンサルタント費用 試運転費用 建設(資本)費用合計 (単位:千ドル) 214,032 風力発電機に含む 風力発電機に含む 16,598 10,920 26,645 風力発電機に含む 土木工事に含む 268,195 32,819 13,410 8,046 EETC のスコープ EETC のスコープ 322,470 344,053 1,720 NREA のスコープ 免除 2,500 256 348,529 また、建設中金利は以下の通りとなる。 建設費用合計 建設中金利 総事業費 6.2 (単位:千ドル) 348,529 9,607 358,136 財務分析 (1) 一般条件 ガバルゼ風力発電案件の財務分析においては、以下の一般条件を設定した。 プロジェクトサイト : ガバルゼ(Gabal El Zayt) 定格発電出力 : 220,000kW 1,000kW 風力発電機 220 台 グリッドまでの距離 : 約 1km 土地取得、賃貸代金 : NREA により手配 税金等 : 関税、売上税等を考慮 建設開始時期 : 2007 年 4 月 年間予想発電量 : 1,102,900 MWh 設備利用率 : 57.2% 建設期間 : 21 ヵ月 操業開始時期 : 2009 年 1 月 発電所耐用年数 : 20 年 為替レート : 1 ドル = 103.34 円 (2005 年 1 月 21 日) 1 ドル = 5.8979 エジプトポンド 1 ドル = 0.7710 ユーロ (2) 財務条件 資本費用(302,507 千ドル)は以下条件をベースケースとして調達されるものとした。 【ベースケース】 金額(千ドル) 【債務】 外貨融資 226,881 現地借入 45,376 債務合計 272,257 【自己資本】 30,251 合計 通貨 金利 備考 日本円 L.E. 0.75% 13.00% 総事業費の 75% 総事業費の 15% 総事業費の 90% L.E. N/A 総事業費の 10% 302,507 100% 外貨債務条件については、日本の円借款優先条件の中から、以下表中オプション 1 をベースケースとして設定した。 オプション 金利 1(ベースケース) 2 3 4 5 0.75% 0.65% 0.60% 0.50% 0.40% 据置 期間 10 年 10 年 6年 5年 10 年 償還 調達条件 融資上限 (注 1) (注 2) 期間 ICB 75% 40 年 ICB 75% 30 年 ICB 75% 20 年 ICB 75% 15 年 85% 40 年 タイド 注 1:ICB(International Competitive Bidding:国際競争入札) 注 2:資本費用のうち借入額上限となる比率 また、現地借入については、エジプト投資銀行から以下条件で融資を受けるものとし、 一部(資本費用の 10%)については NREA の自己資本にて賄うものと設定した。 現地借入 エジプト投資銀行 金利 13.00% 据置期間 2年 償還期間 8年 (3) 財務分析 ベースケースにおける財務分析結果(資本内部収益率)の結果は以下の通りとなる。 操業 20 年目 (耐用年数経過時) 13.18% 1.94% ベースケース 資本内部収益率 プロジェクト内部収益率 また、外貨債務条件それぞれの場合における財務分析結果(資本内部収益率)は以 下の通り。 操業 20 年目 (耐用年数経過時) 13.18% 9.38% N/A* N/A* 31.98% オプション 1(ベースケース) 2 3 4 5 *N/A(Not Available):マイナス値もしくは計算不能 次に、大型機種として検討することとした単機出力 2.4MW 機種を用いて財務分析を 実施する。 尚、資本費用(348,529 千ドル)は以下条件にて調達されるものとする。 金額(千ドル) 【債務】 外貨融資 261,397 現地借入 52,279 債務合計 313,676 【自己資本】 34,853 合計 348,529 通貨 金利 備考 日本円 L.E. 0.75% 13.00% 総事業費の 75% 総事業費の 15% 総事業費の 90% L.E. N/A 総事業費の 10% 100% 上述条件に基づき、大型機種(2.4MW)を適用した場合の財務分析結果(資本内部 収益率)は以下の通りとなる。 2,400kW 機種 資本内部収益率 プロジェクト内部収益率 7. 結論 7.1 ガバルゼ風力発電所建設計画の必要性 操業 20 年目 (耐用年数経過時) 2.30% -0.28% エジプト国は、環境保護および資源の有効利用の観点から再生可能エネルギー を重要視しており、中でも十分なポテンシャルを有する場所が多数存在する風力 発電には今後の開発に大きな期待を寄せている。 エジプト国の最大電力需要は、2003 年~2006 年で 7.5%、2007 年~2012 年で 6.6%と想定されている。このように高い伸び率への対応、化石燃料資源の国内消 費の節約、環境保全を目的として、本プロジェクトは紅海沿岸のガバルゼにおい て 2007/2008 年からの運転開始を目標とした 220MW 風力発電所の建設を行うも のである。 紅海沿いの砂漠地帯は、風況が安定した世界でも屈指の風力発電に適した地域 であるが、その中でも特に風力発電に適したサイトと考えられる。 7.2 財務評価 本プロジェクトについての財務分析の結果、主に良好な風況から、ベースケー スにおける資本内部収益率は、操業開始後 20 年目で 13.18%となり、経済援助プ ロジェクトとしては良好な経済性と言える。 外貨融資において、より有利な融資条件である円借款オプションを選択するこ とで、更に良い結果(資本内部収益率)が期待できる。本プロジェクトにとって、 これらオプションの適用が望ましいと考えられるが、それらのオプションはタイ ド調達条件となる為、報告書内ベースケースと同等の総事業費レベル、条件が実 際の調達時に享受できることが前提となる。 一方、大型機種(2.4MW)を適用した場合の資本内部収益率は、操業開始後 20 年目で 2.30%となり、将来大型機種の更なるコスト低減或いは技術革新が期待 される。 7.3 技術移転効果 本計画の調査実施に伴い、候補地の選定、風車容量の設定等に必要な解析及び 基本設計の考え方を NREA 等関係箇所の技術者間と意見交換、技術交流により、 相互間の理解を深めることができた。 7.4 環境保全効果 環境保全の観点から、再生可能エネルギーである風力を活用した風力発電により、 年間約 650~780 千トンの二酸化炭素排出量を削減できることになる(火力発電との比 較による)。エジプト国は、電力需要の大半を化石燃料に依存しているため、風力発電 の開発が今後のエジプト国内の環境保全に大きく寄与すると考えられる。 8. 勧告 (1) エジプト国政府は地球環境保全およびエネルギー政策において、現状における自国 の高い石油依存度からの脱却への対応として、再生エネルギーの開発を重点項目 に位置付けている。中でも風力に関しては、有望なサイトが多く存在することもあり最 重点項目とされている。 (2) 本計画を実現するためには、本邦の技術協力と共に優先条件による円借款の供 与が不可欠となる。尚、本報告書で積算した総事業費レベル程度の調達が可能 であれば、本プロジェクトとしてはタイド調達条件の円借款を適用することで、 より良好な経済性が期待できる。 (3) 実施にあたっては、エジプト国の風力技術者の技術力保持および質の向上を図る ため、併せて同国の技術者研修を提案する。 (4) サイト周辺には豊富な風力エネルギーが賦存する事が確認できたが、より高効率の ウィンドファームを建設するために、詳細設計に向けてサイトの風況データは継続し て計測・蓄積していく事が望ましい。 (5) サイトにおける風況解析の結果、発電量のみならず、操業面の観点から、現状では 単機容量 1.0MW 規模の風力発電機の使用が望ましい。また、単機出力 1.5MW 規模 以上の大型機種の採用可能性についても比較検討した結果、発電量の面から、単 機容量 1.0MW 規模の風力発電機に次いで、2.4MW 規模の風力発電機が現状では 最も適していると判断された。 (6) 風力発電所の系統連系にあたっては、系統電圧の大幅な低下を避けるため、風 力発電機は力率 1.0 もしくは遅れ力率で運転できることが望ましい。