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真菌症について

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真菌症について
2012/12/20
真菌症について
ケカビ
1
2012/12/20
人の役に立つ真菌は少なくない
ペニシリン
(ペニシリウム)
フレミング博士
真菌は非常に身近なとことろにいる
酵母様真菌-カンジダは常在真菌
人の役に立つ真菌も多い
時に病原性を発揮 毒素、皮膚、内臓
2
2012/12/20
ヒト真菌症の主な原因真菌
1.カンジダ
2.アスペルギルス
3.クリプトコックス
4.ニューモシスチス(肺炎)
ヒトにおけるカンジダ症
1. カンジダ属は、ヒトの皮膚や粘膜の常在菌であり、消化
管や外陰部に分布している
2. 感染経路として、血管カテーテル刺入部の皮膚や手術・
化学療法等で損傷した粘膜が主な侵入門戸となる
3. 全身的および局所的な感染防御能、つまり患者の基礎
疾患と治療に関連した医原的要因がカンジダ症発症の
主なリスクファクターである
4. カンジダ症は、殆どが内因性の感染であるが、外因性の
感染もある。病院内で交差感染による集団感染事例も
みられる
5. 予防と感染制御では、基本的な感染対策の遵守が重要
6. 領域によっては抗真菌薬による予防投与が有効
3
2012/12/20
代表的なカンジダ種
Candida albicans
C. tropicalis
C. parapsilosis
C. glabrata
C. krusei
C. Guilliermondii
その他
Non-albicans Candida
4
2012/12/20
カンジダの特徴
•カンジダ属は、ヒトだけでなく環境やイヌ、猫などの動物からも
分離される
•ヒトでは常在菌として、皮膚や女性の膣・外陰部、特に口腔内
を含む消化管に分布する
•通常、Candida albicansの分離頻度が高い
•広域抗菌薬投与や抗真菌薬予防投与によって影響を受ける
•臨床検体からは、喀痰や尿、便、創部、血液、留置カテーテル
先端などから分離される
•喀痰のような無菌検体以外から検出されても原因菌とはかぎ
らない
感染経路
感染経路として、血管カテーテル刺入部の皮膚や化学療
法で 損傷した消化管粘膜が主な侵入門戸となる
•消化管はカンジダの主な定着部位であるため、カンジダ敗血症や
各臓器への播種性病変を引き起こす際の血流への主な侵入経路
は、手術や化学療法で粘膜の統合性が失われた腸管である。
•血管カテーテルや尿道カテーテルが留置されている場合には、バ
リヤ機能の損なわれたカテーテル刺入部の皮膚や粘膜が侵入門戸
となる
•ペースメーカーなど心内デバイスや、人工弁その他人工物がある
場合にはカンジダ血症からそれら人工物が感染巣となることもある
5
2012/12/20
患者の感染リスク
患者の基礎疾患とカテーテル留置など局所的
要因が主なリスクファクターである
基礎疾患:固形がん、血液疾患、臓器移植、腹部手術、
広範囲熱傷、DM、低栄養状態など
医原的要因:抗菌薬がん化学療法、放射線(粘膜障害、
好中球減少)、ステロイド投与、抗菌薬長期
中心静脈カテーテル留置、尿道カテーテル留置など
カテーテル関連血流感染
CV抜去、カテーテル先端培養
血液培養
6
2012/12/20
カンジダ
CV抜去
抗真菌薬
眼内炎チェック
血液分離カンジダの内わけ-抗真菌薬曝露
(n=2448)
100%
FLCZ(+)
Caspo(+)
90%
80%
C. krusei
70%
C. tropicalis
60%
50%
40%
30%
C. parapsilosis
C. glabrata
C. albicans
20%
10%
0%
Lortholary O. 2011
7
2012/12/20
ヒト真菌症の主な原因真菌
1.カンジダ
2.アスペルギルス
3.クリプトコックス
4.ニューモシスチス(肺炎)
5.その他
カンジダ感染症
● 深在性カンジダ症
カンジダ血症
播種性カンジダ症(肝脾カンジダ症)
● 表在性カンジダ症 ← 細胞性免疫不全
皮膚粘膜カンジダ症(口腔カンジダ症、
食道カンジダ症、膣カンジダ症)
8
2012/12/20
カンジダ血症-CVカテーテル関連血流感染
•発熱、悪寒、戦慄
•診断は血液培養
•β-グルカン測定も有用
•治療は抗真菌薬投与
•CVカテーテル抜去
•カンジダ眼内炎のチェックを忘れない
(眼科紹介)
血液培養(グラム染色)
酵母様真菌
9
2012/12/20
慢性播種性カンジダ症(肝脾膿瘍)
22歳 男性
急性骨髄性白血病で化学療法中、好中球<500個/mm3となり39℃の
発熱がみられるようになった。
消化管に常在するカンジダが
血行性に播種して肝臓・脾臓
に膿瘍を形成する
診断:腹部CT画像、エコー
β-D-グルカン
血液培養
膿瘍穿刺培養
治療:抗真菌薬
皮膚粘膜カンジダ症
口腔カンジダ症
37歳男性 同性愛者 咽頭痛で来院
HIV抗体陽性 CD4数180個/ml
常在しているカンジダが粘膜で増殖する
診断:組織検査, 培養
治療:抗真菌薬の経口および内服
食道カンジダ症
10
2012/12/20
アスペルギルス症
1. アスペルギルスは世界中に広く存在、室内・室外を問わず検
出される
2. ホストの免疫状態により、複数の病態を呈する
3. 侵襲性アスペルギルス症(Invasive aspergillosis :IA)は致命的
な疾患である
4. 侵襲性アスペルギルス症では好中球減少が最も影響するリ
スク因子である
5. 建築・改築などの塵埃の増加に関連する集団発生が報告さ
れている
6. ハイリスク患者を防護環境に置くことによりIAの発生を減少さ
せることができる
感染経路
1. 主として経気道感染である
2. 損傷した皮膚や粘膜から侵入することもある
3. 医療デバイスや薬剤汚染が原因となることもある
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2012/12/20
患者の状態と感染リスク
(侵襲性肺アスペルギルス症)
•発症リスクが高い
• 500/μl以下で10日以上続く好中球減少
• 同種造血幹細胞移植よびGVHD期
• 急性白血病の好中球減少期
• 臓器移植(拒絶反応)
• CD4細胞数50/μl以下のAIDS
• 施設工事などの環境要因
•リスク因子が複数重なるほど、発症リスクは高まる
•アスペルギルスの気道への定着もリスク因子
糸状菌感染症の基礎疾患
(Austrian Registryより)
(%)
35
30
25
20
15
10
5
0
AML
SOT
ICUなど
NHL
ALL
MDS
CLL
ST
その他
Perkhofer S et al. Intern J Antimicrob Agents 2010
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2012/12/20
アスペルギルス症
1. アスペルギローマ
肺の既存空洞内に菌球(fungus ball)を形成する
通常非侵襲性である
血痰、喀血、無症状 沈降抗体が陽性
可能なら手術
2. 侵襲性肺アスペルギルス症
白血病の化学療法中や、幹細胞移植後等高度の免疫不全患者
空気中のアスペルギルス胞子を吸入して発症
症状は、発熱や咳嗽、胸痛、血痰など
Aspergillus fumigatusが多くを占める
死亡率は高い
アスペルギローマ
慢性壊死性肺アスペルギルス症
13
2012/12/20
侵襲性肺アスペルギルス症
55歳女性 急性白血病
左中肺野に浸潤影あり。
環境中に浮遊する
アスペルギルスの
胞子を吸入することで
肺に病変が形成される
診断:胸部CT画像
アスペルギルス抗原
(血清, 肺胞洗浄液中)
β-D-グルカン
病変部よりの培養
7/15
治療:抗真菌薬
アスペルギルス症
air crescent sign
halo sign
14
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症例:悪性リンパ腫
白血病患者 侵襲性アスペルギルス症の脳病変
15
2012/12/20
多発性の病変と血管浸潤
侵襲性アスペルギルス症のアウトブレイク事例
多量の真菌に曝露されたと推定される状況で発生
建設工事などに伴う分生子の量の増加と関連した事例の報告
アウトブレイクの多くは、血液疾患患者における事例
空気感染が関連ー建築・改築、空調設備の管理不十分
対策
建築等について通知し、周知する
リスク因子を考慮して適切な空調管理を行う
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2012/12/20
環境面での管理における留意点
 標準予防策の順守(手洗い、適切な防護具の使用)
 湿式清掃を行う。
 埃を飛散させる清掃を行わない。
 カーペット46を部屋および廊下に敷かない。
 布張りの家具や調度品47を置かない
 植物(ドライフラワー含む)や鉢植え植物を持ち込まない
 掃除機にはHEPAフィルターをつける
 埃をできるだけ少なくする。
 定期的に隙間やスプリンクラーヘッドの洗浄を行う
クリプトコックス症
Cryptococcus neoformans
血清型 A、D、AD(var. neoformans)
世界のほとんどの地域
日本のほぼ100%
ハトなど鳥類の糞
Cryptococcus gatti
血清型 B、C
C. gattiはある種の木の表面・周辺で菌の増殖・維持が行
われている。ユーカリの木に棲息
分布地域に偏りがあり、オーストラリア、南アメリカ、東南ア
ジア、アフリカに加え、近年北米北西部に流行地域が存在
する
17
2012/12/20
C. neoformansはハトを中心とした鳥の糞で増殖し、その粉塵
の吸入によって感染する。
Cryptococcus gatti は特定の種類の木の表面・周辺で増殖す
る。日本国内での環境分離報告はなく、輸入感染症と位置づけ
られる
細胞性免疫不全患者は、鳥類の飼育や、鳥糞粉塵の吸引リス
クのある作業、浸淫地区への滞在などは避けることが望ましい。
病院では鳥類の飛来を避ける
感染患者からの感染伝播は例外を除き通常起こらない
感染経路
菌の豊富な有機物の粉塵を吸入することによる気道感染が
主たる感染
経路である
伝播経路は空気感染(粉塵感染)が推定される
感染リスク
細胞性免疫不全が感染リスクである
主な基礎疾患としてはHIV/AIDS、腎移植後、免疫抑制
剤使用中などがある
多量の菌体を吸入した場合は、免疫健常者でも肺病変
を形成しうる
C.gatti(高病原性)では免疫健常者でも発症する。浸淫地
域の1年以内の旅行・滞在歴が重要である
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2012/12/20
クリプトコックス感染症
環境中
(鳩の糞など)
Cryptococcus neoformans
経気道的感染, 健常者でも感染
するが免疫不全の存在で肺より
全身に播種
髄膜炎・脳炎
菌体の吸入
肺炎, 肉芽腫
診断:肺組織, 髄液中の
菌体の証明
血清中および髄液中の
クリプトコックス抗原
治療:抗真菌薬
全身播種
肺クリプトコッカス症と基礎疾患(non-HIV)
症例数
60
50
その他
40
糖尿病
肝硬変
肺結核
30
固形癌
20
10
膠原病
0
血液疾患
腎疾患
無し
有り
基礎疾患
19
2012/12/20
肺クリプトコックス症の画像
基礎疾患あり
基礎疾患なし
糖尿病
糖尿病
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫
エイズ
髄液の
墨汁染色
厚い莢膜がみえる
20
2012/12/20
46歳 アメリカ人 男性
基礎疾患なし
46歳 アメリカ人 男性
基礎疾患なし
21
2012/12/20
39歳男性
77歳女性
エイズの日和見感染症
トキソプラ
ズマ症
その他
ニューモシスチス肺炎
クリプト
コッカス症
HIV脳症
2.9%
カポジ肉腫
非結核性抗
酸菌症
活動性結核
カンジダ症
サイトメガロウイルス
感染症
22
2012/12/20
Pneumocystis Pneumonia (PCP)
P. jirovecii は世界中に分布している。
日常生活の中で、病原体( P. jirovecii )に曝露するリスクは高いと考えられる
。
環境中における病原体( P. jirovecii )の局在については不明であり、具体的
なリスク因子は未だ同定されていない
感染リスク
HIV感染者ではPCP発症リスクが高く、CD4<200/μlの場合はST合剤の
予防投与が推奨されている。
HIV以外では、血液悪性疾患、骨髄移植、臓器移植、膠原病患者で
PCP発症リスクが高い。ST合剤による予防効果が示されている
ニューモシスチス肺炎
55歳女性 膠原病
原疾患に対して
対して
ステロイド投与中
発熱と呼吸困難が出現。
胸部X線上すりガラス状の
陰影がみられた。
23
2012/12/20
ニューモシスチス肺炎
Pneumocystis jirovecii
(以前はcarinii)の経気道的感
染, および以前に感染して潜伏し
ていた菌体の再活性化で発症
診断:胸部CT画像
β-D-グルカン
喀痰および気管支
肺胞洗浄液中の
菌体の証明
治療:ST合剤 ペンタミジン
グロコット染色
(肺胞洗浄液)
接合菌感染症
 いわゆるケカビのひとつであり、土壌など
自然環境中に広く分布する寄生性の真菌
ムーコル症ともいわれる
病系
鼻脳型(鼻、眼窩、副鼻腔、脳)
皮膚病変
肺病変
急速に進行し予後不良
播種型
24
2012/12/20
アウトブレイク事例
接合菌による皮膚潰瘍
血液疾患患者における点滴固定用の
テープが原因
タクトフェノールコットンブルーに
よる直接染色
国内:血液内科病棟でのアウトブレイク事例
5か月間で3例の接合菌症がみられた
異なる時期に同じ病室に入院
空調周囲から接合菌の発育あり
フィルター交換や排気口などの清掃を行い
収束をみた
25
2012/12/20
輸入真菌(症)
我が国には本来棲息していないと考えられている真菌
各菌種で特徴的な地理的局在があり、流行地域の土壌、
特定の動植物に存在している
環境から空気中に浮遊した菌体の吸入により経気道感
染する
原則としてヒトーヒト感染はない。
感染力はきわめて強く、培養された検体からの検査室内
感染の事例が報告されている。
真菌症
主な流行地
原因菌
ヒトへの感染力
コクシジオイデス症
米国(アリゾナ、カリフォルニア、ニュー
メキシコ、テキサス)、メキシコ、ベネズ
エラ、ブラジルなど中南米
Coccidioides immitis
および
C. posadasii
極めて強い
ヒストプラズマ症
米国(セントローレンス・ミシシッピー川
流域)、中南米、東南アジア、アフリカ
Histoplasma
capsulatum
および
H. duboidii
強い
パラコクシジオイデス症
ブラジル、ベネズエラ、コロンビアなど中
南米
Paracoccidioides
brasiliensis
弱い?(*)
Penicillium marneffei
比較的弱い
マルネッフェイ型
ペニシリウム症
東南アジア(タイなど)、中国南部
ブラストミセス症
米国(ウィスコンシン、イリノイ、ミシシッ
ピー川流域)、アフリカ
Blastomyces
dermatitidis
強い
ガッティ型
クリプトコックス症
オセアニア(オーストラリア、ニューギニ
ア、グアムなど)、北米西海岸、ブラジ
ル、メキシコなど中南米
Cryptococcus gattii
強い(**)
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2012/12/20
米国における注射用ステロイドの汚染が原因の
糸状菌髄膜炎アウトブレイク
New England Compounding Centerによる保存剤無添加の酢酸
メチルプレドニゾロンの硬膜外注射を受けた多数の患者で、
糸状菌によるまれな髄膜炎が多発。
10月までに10の州で137例がみつかり、12名が死亡した
汚染したステロイドは、23 の州の
75のクリニックに送付されていた
50代男性
腰痛のため4週間前に硬膜外注射を受けていた
第4脳室の出血
くも膜下出血
27
2012/12/20
血管造影ではmycotic aneurysmを疑う所見
髄液から分離培養された
アスペルギルス
組織(軟膜)中に菌糸を伸ばす
アスペルギルス
Pettit et al NEJM 2012
28
2012/12/20
Exserohilumによる致死的脳髄膜炎
29
2012/12/20
分生子は紡錘形,くちばし状,平滑,褐色~
黒褐色,偽隔壁,両端の濃色バンドおよび
基端の明らかなヘソが特徴的.
Multistate Fungal Meningitis Outbreak
Map of Healthcare Facilities that Received Three Recalled
Lots* of Methylprednisolone Acetate from New England
Compounding Center on September 26, 2012
30
2012/12/20
Kainer MA. et al. NEJM 2012
31
Fly UP