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1. 気候変動観測研究プログラム
Institute of Observational Research for Global Change 1. 気候変動観測研究プログラム (水野恵介プログラムディレクター) 太平洋・インド洋において広域・継続的な観測システムを展開し、海洋上層の季節内から10年規模の変動をとら え、その変動機構を明らかにすることを目的とする。熱帯海洋気候グループでは、西太平洋・東インド洋の暖水プー ルで起こる現象を主な研究対象とし、Argoグループでは主に北太平洋の経年および10年変動を対象とする。これら の研究のため、各国機関と協力して、太平洋・インド洋の熱帯域にトライトンブイを係留して熱帯のブイ観測網を 展開するとともに、両大洋の中緯度海域を中心にArgoフロートを展開する。 1.1 熱帯海洋気候グループ 1.1.1 平成17年度観測研究計画 年2回の「みらい」共同利用観測航海により、 中層ADCP係留ブイの回収・再設置を行い継続してデータを取得する。 これらの観測データやトライトンブイから、以下のような解析を行い結果をまとめる: ① インド洋の季節内変動から季節変動、西部熱帯太平洋の水塊の経年変動について解析する。 ② 大気と海洋の季節場を考慮し、大気の季節内変動と海洋表層の混合層の応答を解析し、エルニーニョ発生と の関係を調べる。 ③ 流速時系列データから北半球西岸境界流であるミンダナオ海流の経年変動について解析する。 なお、これらの研究活動の基盤となる観測データの品質管理を引き続き実施し、より高精度なデータセット構築 を目指す。 また、海洋大循環モデルによる経年変動実験を2004~2005年分について継続実施し、これまでの実験結果や 1997-1998エルニーニョとともに2002-2003エルニーニョの解析を、太平洋のVOS観測結果を参照しながら行い、赤 道外での暖水集積過程について解析を進める。 1.1.2 観測実施状況 a. 船舶観測研究概要 海洋地球研究船「みらい」により西部熱帯太平洋域で2レグ、東部インド洋域で1レグの計3レグ航海を実施した。 詳細は表1-1に示す。 表1-1 平成17年度 熱帯海洋気候グループにて実施した観測航海 期 間 船舶/航海番号 寄港地/実施海域 係留系設置数 CTD/XCTD観測 2005.07.04 ~ 2005.07.26 「みらい」 MR05-03 レグ1 グアム→ダーウィン 西部熱帯太平洋域 トライトンブイ設置6基、 回収6基 ADCPブイ回収1基 50/57点 2005.07.26 ~ 2005.08.25 「みらい」 MR05-03 レグ2 ダーウィン→パラオ 東部インド洋域 トライトンブイ設置2基、 回収2基 ADCPブ イ 設 置1基、 回 収1基 16/35点 2006.02.05 ~ 2006.03.18 「みらい」 MR06-01 関根浜→関根浜 西部熱帯太平洋域 トライトンブイ設置9基、 回収9基 ADCPブ イ 設 置2基、 回 収3基 19/30点 1 Climate Variations Observational Research Program b. 係留観測 前述の2回の「みらい」航海において西部熱帯太平洋で4系、東部熱帯インド洋で1系のADCP中層係留系の設置・ 回収を行った。また、工学センター研究支援部と協力し、西部熱帯太平洋の15基と東部熱帯インド洋の2基のトラ イトンブイの設置・回収を行った。ADCP中層係留ブイとトライトンブイの配置は図1-1に示すとおりである。 図1-1 ブイ展開図 c. 篤志船によるXCTD/XBT観測 1)北部インド洋・西部太平洋XCTD/XBT観測 気象庁との共同研究の一環として、ボランティア船の原油タンカー「KATORI」、及び「KATORI」の運航変更に 伴う代替船「KAMINESAN」によるインド洋北部、コンテナ船「MOL WELLINGTON」による西太平洋の高密度 XCTD/XBT観測を引き続き行っている。平成17年度の観測実績を表1-2に示す。 表1-2 KATORIおよびKAMINESAN、MOL WELLINGTONによる平成17年度観測実績 船舶 観測海域 日本~ニュージーランド~香港を結ぶ航路上の西太平洋海域 観測内容 帰路の航路上にて6時間毎にXBT/XCTD観測を実施 観 測 数 計234点(XBT:98点 XCTD:136点) 船舶 2 MOL WELLINGTON KATORI、KAMINESAN 観測海域 日本~マラッカ海峡~ペルシア湾を結ぶ航路上のインド洋海域 観測内容 往路、帰路ともに6時間毎にXBT/XCTD観測を実施 観 測 数 計293点(XBT:200点 XCTD:93点) Institute of Observational Research for Global Change 1.1.3 観測体制 a. 構成員 グループリーダー(黒田芳史)兼務:研究計画全体の総括。 ①西太平洋観測研究 サブリーダー(安藤健太郎) :熱帯海洋混合層の研究総括、トライトンデータ評価、トライトンブイの高精度化に関 する技術開発。 研究員(石田明生) :熱帯海洋変動メカニズムの解析、海洋大循環モデルの実行・解析、熱帯-亜熱帯海洋相互作用、 南極中層水変動、インド洋海洋変動等について観測とモデルを組み合わせ解析、地球シミュレータ結果の利用。 研究員(柏野祐二) :熱帯亜表層海洋変動メカニズムの解析、ミンダナオ海流等の低緯度西岸境界流の解析。 研究員(植木巌) :熱帯海洋混合層・亜表層海洋変動メカニズムの解析、トライトンデータの評価。 ポスドク研究員(名倉元樹) :熱帯海洋混合層の研究、海面フラックスの評価、トライトンブイの高精度化に関す る技術開発。 ②インド洋観測研究 サブリーダー(升本順夫)兼業:インド洋海洋変動に関する観測・解析、VOS観測・解析の総括。 研究員(長谷英昭) :インド洋海洋変動メカニズムの解析、インド洋観測実施。 研究推進スタッフ(酒井真理) :観測機材の管理、インド洋観測実施、VOS観測実施、観測データ管理。 b. 共同研究体制の概要 ①気象庁 北部インド洋および西太平洋におけるボランティア船を用いたXCTD/XBT高密度観測に関する共同研究契約を締結 している。ボランティア船側との調整と、水温塩分データ処理および太平洋域のデータ解析を気象庁側が、観測セン ターはXCTD/XBTの提供とインド洋域のデータ解析および流速場の解析を行う。また、総合的な解析を共同で行う。 ②東北大学 熱帯域で顕著に発達する極表層の海面水温(SSST)とその表層下の水温構造を計測し、トライトンブイで得られ ている1.5m深の水温との比較解析を実施し、より高精度な熱フラックスの評価を行うこと、また、衛星による水温 データと比較解析を実施し、広域の大気海洋相互作用の研究に資することを目的としている。今年度は1号機を製 作し、東経156度赤道のトライトンブイに設置し、観測を開始している。 ③国際的な枠組(インドネシア技術応用評価庁BPPT、インド国立海洋研究所NIO、米国海洋大気庁太平洋海洋環 境研究所NOAA /PMEL) 国際的な枠組では、3機関との共同研究を実施している。インドネシアの技術応用評価庁(BPPT)との機関間 協定およびそれに基づくH17 年度実施取り決めのもと、「みらい」共同観測航海ではBPPTから5名乗船(Aflakhur Ridlo、Andreas Albertino Hutahaean、Lukijanto、Noersomadi、Ibnu Anas)し、またインド洋の惑星波の研究およびトラ イトンブイデータの共同解析のためFadli Syamsudin、Arief Darmawan両氏を横須賀本部に招聘した。インドの国立 海洋研究所(NIO)とは、機関間協定のもと、インド洋の赤道流速計ブイ網データの共同解析のためV.S.N. Murty氏 を1ヶ月間横須賀本部に招聘した。米国の太平洋海洋環境研究所(NOAA / PMEL)とは、機関間協定のもと、TAO/ TRITONブイ網として共同でデータ公開を実施している(トライトンの運用は海洋工学センター研究支援部が担当 し、当グループはデータ品質評価を担当している)。今年度は、これらの3機関とインド洋ブイ網計画の立案につい て情報の交換を行った。 3 Climate Variations Observational Research Program 1.1.4 主な取得データの概要とその公開 a. 船舶観測データ 1) 「みらい」MR 05-03航海 CTDデータ(水温・塩分) 66点 みらいデータWebで公開予定 XCTDデータ(水温・塩分) 92点 みらいデータWebで公開済 船舶搭載型ADCPデータ(流速) 連続 みらいデータWebで公開予定 CTDデータ(水温・塩分) 19点 みらいデータWebで公開済 XCTDデータ(水温・塩分) 32点 みらいデータWebで公開済 船舶搭載型ADCPデータ(流速) 連続 みらいデータWebで公開予定 2) 「みらい」MR 06-01航海 b. 係留観測データ 1)中層ADCPデータ 各測点における東西流速と南北流速のQC済み鉛直10mグリッドデータ(通常30m-300m程度の深度範囲)を作成。 (TAO/TRITONアレイに対応するEQ147EとEQ156Eデータは米国NOAA/PMELより公開中であるが、それらを含む 全てのADCPデータをIORGCのWebより公開する作業を実施した。) 2)トライトンデータ 基本的に各測点における風向風速・気温・湿度・短波放射・雨量といった気象要素と1.5、25、50、75、100、 125、150、200、250、500、750mの水温と電気伝導度、500、750mの圧力、10mの流向流速といった海洋中の物理 要素を計測しているが、それらのデータは衛星経由で陸上に転送され、準リアルタイムのGTS経由にて気象機関で 利用されている。毎日品質管理が行われた後のリアルタイムデータはWeb上で公開されている。 平成17年度には、品質管理を簡便に行えるようにトライトンデータマネージメントシステムを、そして一般利用 者がリアルタイム毎時データを簡便に取得できるようにトライトン Webページの換装を海洋工学センター研究支援 部観測ブイ運用グループと共同で実施した。ブイ回収後に得られる観測時間密度の高いセンサ内蔵データは検定情 報を用いて補正され、より高品質データとなるが、それらのデータは平成18年度下半期までに公開される予定である。 c. 篤志船によるXBT/XCTD観測 XBTでは、表層700m深までの水温の鉛直プロファイルを、またXCTDでは表層1000m深までの水温および塩分の 鉛直プロファイルを得ている。KATORIおよびMOL WELLINGTON の観測データは、準リアルタイムのGTS経由に て気象機関で利用されている。KATORIのデータについては、データレポートを作成した。なお、インド洋域での 観測を行っている篤志船は、2005年12月より、KATORIからKAMINESANへ変更されている。 d. その他 過去に取得した「かいよう」等によるCTDデータもIORGCのWebより公開するための作業を実施した。 4 Institute of Observational Research for Global Change 1.1.5 成果の概要 平成17年度における主たる研究成果として、西部熱帯太平洋では、「ミンダナオ海流の変動に関する研究」にお いて北半球低緯度西岸境界流の季節内・季節変動を明らかにするとともにエルニーニョ発達期にミンダナオ海流が 強化されることを観測により示すことができた(Kashino et al., 2005)。また、「2002-2003エルニーニョと西部熱帯 太平洋における暖水輸送変動に関する研究」では、船舶観測データと数値モデルから北緯8度沿いの西岸から東経 156度までの間ではエルニーニョの発達期に南向き流量が大きくなることを示した(Ishida et al., 2006,口頭)。これ らの結果は赤道帯と赤道外の暖水の輸送過程について理解を進めるものである。「ニューギニア北方海域の表層・ 亜表層水の変動に関する研究」ではトライトンの水温・塩分データから、表層ではラニーニャ時の南赤道海流の強 化により東太平洋起源の高塩分水が卓越する様子、躍層内では北半球起源の水塊が30-60日周期の渦により南半球 起源の海水と混合する様子を初めて時系列で示すことができた(柏野ほか, 2006, 口頭)。また、「太平洋暖水プール における大気海洋変動の季節性と2002/03ENSOの関係に関する研究」では、トライトンの長期時系列データと衛星 データ等から西風の季節的な南北移動と、海面水温、赤道東向ジェットの関連を明らかにし、2002/03の様な弱い ENSOの場合には、 その発生時期が赤道上の東向き海流の季節変動に依存することを示した (Ando et al., 2006, 口頭) 。 インド洋においては、 「東部インド洋の海面熱フラックスに関する研究」において、東経90度、南緯1.5度のトラ イトンのデータから、季節変動を月平均値で示すとともに、2年間の平均では海洋が大気から熱を吸収しているこ とを示した(Hase et al., 2006,口頭) 。これは種々のモデルや衛星データから得られている海面フラックスプロダク トに対して貴重なレファレンスとなると考えられる。 以下では、 「ミンダナオ海流の変動に関する研究」および「東部インド洋の海面熱フラックスに関する研究」につ いてトピックスとして紹介する。 (1)ミンダナオ海流の変動に関する研究成果 低緯度西岸境界流の1つであるミンダナオ海流の時間変動を調べるため、1999年10月から2002年7月にフィリピ ン、ミンダナオ島の東岸付近(6o50'N, 126o43'E)に係留されたADCPデータを解析した。図1-2はADCP係留の構成と、 船舶ADCP観測で得られた表層海流分布と海流系の模式図、そして係留観測点を赤丸で示している。係留は、水深 260mにADCP、400mと700mにアンデラ流速系を設置し、1999年10月24日から2002年7月13日において1年毎に係留 の設置回収によりメンテナンスした。400mの流速は1999年10月24日から2000年5月16日までしか得られなかったが、 それ以外は全期間においてデータが得られ、48時間tide killer filterにより潮汐変動を除去して解析に用いた。 図1-3に係留ADCPで得られたミンダナオ海流の鉛直分布の時系列(a)、及び(b)100m、 (c)200m、 (d)400m、 (e) 700mの深度の流速ベクトルを示す。平均流速は亜表層で最も流速が大きく、水深約100mで1.3m/secに達し、流れ は700m以浅にあり、それより深いところで定常な流れは認められないこと、平均流に比べ変動は小さく(標準偏差 は0.2m/sec未満) 、経年、季節、季節内の各変動成分は同程度の振幅を持っていることが捉えられた。季節的には ミンダナオ海流は北半球の夏に強く、経年変動としては2002/03年のエルニーニョのオンセット期に強かった。水 深がほぼ100mの流軸流速は、フィリピンのセブ島とパラオのマラカル島の潮位差と相関があり、地衡流が卓越す ることが分かった。 5 Climate Variations Observational Research Program ���������� ����������������� ��������������� ������������������� ●� ����� ����� ���������������������������� 図1-2 ADCP係留の構成 (左) と、 船舶ADCP観測で得られた表層海流分布(KY9909観測より)と海流系の模式図(右) 。 係留観測点を赤丸で示す。 図1-3 (a)係留ADCPによる岸沿い南南西方向流速の深度時間図。(b)~(e)各々100m、200m、400m、700mにお ける流速スティックダイアグラム (上が北向き)。右図に、 平均流速と変動振幅を各々ベクトルと楕円で示す。 6 Institute of Observational Research for Global Change (2)東部インド洋の海面熱フラックスに関する研究 東経90度、南緯1.5度のトライトンブイデータを用いて海面熱フラックスについて解析した。トライトンブイに は海面熱フラックスの計算に必要な気象・海洋データのうち、長波放射計を除く気象・海洋センサーが取り付けら れている。しかしながら、バンダリズム等によるセンサー盗難や破壊に伴ってデータの連続的な取得が困難となっ ている。このデータ欠損によって、解析期間(約48ヶ月)のうち海面熱収支が計算できたのは20ヶ月程度であった。 本解析ではできる限り長期間の海面熱フラックスデータを取得する為、風速・風向について再解析データを用いて データ欠損を補間することを試みた。 再解析データにはNCEP/NCAR(1日4回;00Z、06Z、12Z、18Z)とECMWF(1日2回;00Z、12Z)データを使用した。 補間に先立ってトライトンブイと同時に観測された期間についてデータ比較を実施した。海面熱フラックス(潜熱 及び顕熱フラックス)の計算に重要な要素となる風速のデータ比較の結果(図1-4)、NCEP/NCARデータではトライ トンブイデータとの相関係数が0.3、差のRMS(Root Mean Square)が2.9m/secであった。一方、ECMWFデータでは 相関係数が0.8、差のRMSが1.7m/secとトライトンブイデータと非常によく一致していた。ECMWFデータとの単回 帰分析の結果では傾きが1.1であった為この補正を行い、ECMWFデータを用いてトライトンブイ風速・風向データ の欠損期間を補間した。 風速・風向データの欠損を補間することで、海面熱収支データは約31ヶ月間計算することが出来た。月平均の短 波放射フラックスでは年周期変動が卓越し、最大は2~3月頃あった。また、潜熱フラックスは半年周期変動が卓越 し、これは赤道帯において半年周期で卓越する強い西風に関係していた(図1-5)。2002年1月~2003年12月までの2 年平均の結果、顕熱フラックスは-8.9W/m2、潜熱フラックスは-119.8W/m2、短波放射フラックスは181.0W/m2、長波 放射フラックスは-38.4W/m2であった。海面熱収支は13.9W/m2となり、海洋が大気から熱を吸収していることが示 唆された。 図1-4 トライトンブイ風速データと再解析データ;NCEP/NCAR(右)、ECMWF(左)データとの比較 7 Climate Variations Observational Research Program 図1-5 海面熱フラックスの時系列。上から、顕熱フラックス、 潜熱フラックス、 短波放射フラックス、 長波放射フラッ クス、熱収支フラックス。正値は海洋が大気から熱を吸収していることを示す。緑線と黒線はそれぞれ日 平均値及び月平均値を示す。 1.1.6 研究成果発表 a. 論文発表 (査読あり) Firing, E., Y. Kashino and P. Hacker, 2005: Energetic deep currents observed east of Mindanao, Deep Sea Research II, 52, 605-613. Ishida, A., H. Mitsudera, Y. Kashino and T. Kadokura, 2005: Equatorial Pacific Subsurface Countercurrents in a high-resolution OGCM, Journal of Geophysical Research, 110, C07014, doi: 10.1029/2003JC002210. Kashino, Y., A. Ishida and Y. Kuroda, 2005: Variability of the Mindanao Current: Mooring Observation Results, Geophysical Research Letters, 32, L18611, doi:10.1029/2005GL023880. Kumar, M.R.R., S.M. Pednekar, M. Katsumata, M.K. Antony, Y. Kuroda and A.S. Unnikrishnan, 2005: Seasonal variation of the diurnal cycle of rainfall in the eastern equatorial Indian Ocean, Theoretical and Applied Climatology, doi:10.1007/s00 704-005-0179-3. Kumar, S.P., A. Ishida, K. Yoneyama, R. Kumar, Y. Kashino and F. Mitsudera, 2005: Dynamics and thermodynamics of the Indian Ocean Warm Pool in a high-resolution global general circulation model, Deep Sea Research Part II, 52, 2031-2047. Maes, C., K. Ando, T. Delcroix, W.S. Kessler, M. J. McPhaden, D. Roemmich, 2005: Observed correlation of surface salinity, temperature and barrier layer at the eastern edge of the western Pacific warm pool, Geophysical Research Letters,(in press). Masumoto, Y., H. Hase, Y. Kuroda, H. Matsuura and K. Takeuchi, 2005: Intraseasonal variability in the upper layer currents observed in the eastern equatorial Indian Ocean, Geophysical Research Letters, 32, L02607, doi:10.1029/2004GL021896. Nagura, M., and M. Konda, 2006: Seasonal Development of the SST anomaly in the Indian Ocean and its relationship with ENSO, Journal of Climate,(submitted). 8 Institute of Observational Research for Global Change Qu, T., Y. Du, G. Meyers, A. Ishida and D. Wang, 2005: Connecting the tropical Pacific with Indian Ocean through South China Sea, Geophysical Research Letters, 32, L24609, doi: 10.1029/2005GL024698. Ryan, J.P., I. Ueki, P.S. Polito and F.P. Chavez, 2006: Western Pacific modulation of large phytoplankton blooms in the central and eastern equatorial Pacific, Journal of Geophysical Research,(in press). Zenk, W., G. Siedler, A. Ishida, J. Holfort, Y. Kashino, Y. Kuroda, T. Miyama and T.J. Muller, 2005: Pathways and variability of the Antarctic intermediate water in the western equatorial Pacific, Progress in Oceanography, 67, 245-281. (査読なし) Ueki, I. and T. Nagahama, 2005: Evaluation of property change of pressure sensor installed on TRITON buoy, JAMSTEC Report of Research and Development, 1, 51-55. 安藤健太郎, 2005: トライトンブイとアルゴフロートの現状, 海洋音響学会誌. b. 学会等発表 Ando, K., M. Nagura, Y. Kuroda and K. Kutsuwada, 2005: Seasonality of atmospheric forcing and oceanic response over the warm pool prior to the 2002/2003 ENSO, The 2005 IAG/IAPSO/IABO Joint Assembly, Dynamic Planet 2005, Cairns, Australia. Ando, K., M. Nagura, Y. Kuroda and K. Kutsuwada, 2006: Seasonality of Atmospheric Forcing and Oceanic Response Over the Pacific Warm Pool, and its Implication to the Onset of El Nino, 2006 Ocean Sciences Meeting, Honolulu, USA. Hase, H., Y. Masumoto, Y. Kuroda and K. Mizuno, 2006: Variability of sea surface heat flux derived from TRITON buoys in the eastern tropical Indian Ocean, 2006 Ocean Sciences Meeting, Honolulu, USA. Ishida, A., Y. Kashino, S. Hosoda, K. Ando, and Y. Kuroda, 2006: Warm water transport in the western equatorial Pacific, 2006 Ocean Sciences Meeting, Honolulu, USA. Kuroda, Y., Y. Masumoto, H. Hase, K. Mizuno, 2005: Review of TRITON project and future plan of Indian Ocean Mooring Array, Workshop on Indonesia Ocean Forum 2005 and the 13th PAMS/JECSS Meeting, Bali, Indonesia. Maes, C., K. Ando, T. Delcroix, W.S. Kessler, M.J. McPhaden and D. Roemmich, 2006: Observed characteristics at the eastern edge of the warm pool in the western Pacific Ocean, 2nd Argo Science Workshop, Venice, Italy. Masumoto, Y., 2005: Intraseasonal variability in the eastern equatorial Indian Ocean: ADCP observation and a high resolution OGCM, International Workshop on the Indian Ocean Variability and the Asian Monsoon Climate, Nanjing, China. Masumoto, Y., H. Hase, Y. Kuroda and H. Sasaki, 2005: Intraseasonal variability in the eastern equatorial Indian Ocean: ADCP observation and a high resolution OGCM, Second Forum on Marine Science-New development and challenges, Qingdao, China. Masumoto, Y., 2005: Indian Ocean Observing System, Asian Water Cycle Symposium, Tokyo. Nagura, M., and M. Konda, 2005: The Seasonal Development of the SST anomaly in the Indian Ocean and its relationship with ENSO, The 2005 IAG/IAPSO/IABO Joint Assembly, Dynamic Planet 2005, Cairns, Australia. Nagura, M., M. Konda, 2006: The Seasonal development of the SST anomaly in the Indian Ocean and its relationship with ENSO, 2006 Ocean Sciences Meeting, Honolulu, USA. Siedler, G., A. Ishida, J. Holfort, Y. Kashino, Y. Kuroda, T. Miyama and T. Muller, 2005: Spreading of Antarctic Intermediate Water in the western tropical Pacific Ocean, The 2005 IAG/IAPSO/IABO Joint Assembly, Dynamic Planet 2005, Cairns, Australia. Ueki, I., K. Ando, Y. Kuroda, 2005: Evaluation of the geostrophic current derived from TRITON data, Dynamic Planet 2005 IAG/IAPSO/IABO Joint Assembly, Cairns, Australia. 9 Climate Variations Observational Research Program Ueki, I., J.P. Ryan, P.S. Polito and F.P. Chavez, 2006: Western Pacific Modulation of Large Phytoplankton Blooms in the Central and Eastern Equatorial Pacific, 2006 Ocean Sciences Meeting, Honolulu, USA. 安藤健太郎・名倉元樹・黒田芳史・轡田邦夫, 2005: 太平洋暖水プールにおける大気海洋変動の季節性と02/03 ENSO, 2005年日本海洋学会秋季大会, 仙台. 安藤健太郎・黒田芳史, 2006: トライトンブイで見られたバリアレイヤーの変動, 2006年ブルーアースシンポジウム, 横浜. 石田明生・安藤健太郎・細田滋毅・柏野祐二・黒田芳史, 2006: 2002/03エルニーニョと西部熱帯太平洋における暖 水輸送変動, 2006年ブルーアースシンポジウム, 横浜. 植木巌・安藤健太郎・黒田芳史, 2005: Warm Pool域における力学高度変動, 2005年日本海洋学会秋季大会, 仙台. 柏野祐二・黒田芳史, 2005: トライトンブイによる熱帯赤道域における海洋構造の観測, The 27th Remote Sensing Symposium for Environmental Sciences, 横須賀. 柏野祐二・植木巌・黒田芳史, A. Purwandani, 2006: ニューギニア北方海域の表層・亜表層水の変動, 2006年ブルーアー スシンポジウム, 横浜. 黒田芳史・山口誠之・石原靖久・松本健寛, 2005: 小型トライトンブイの開発, 2005年日本海洋学会秋季大会, 仙台. 黒田芳史・山口誠之・石原靖久・松本健寛, 2006: m-TRITONブイの開発, 2006年ブルーアースシンポジウム, 横浜. 黒田芳史・山口誠之・石原靖久・松本健寛・升本順夫・水野恵介, 2006: 小型トライトンブイの開発(その2), 2006 年日本海洋学会春季大会, 横浜. 名倉元樹・根田昌典, 2005: インド洋における年々変動に伴う海面水温偏差の季節発展とエルニーニョ・南方振動の 関係, 2005年度日本気象学会秋季大会, 神戸. 名倉元樹・根田昌典, 2005: インド洋における年々変動に伴う海面水温偏差の季節発展とエルニーニョ・南方振動の 関係, 2005年度日本海洋学会秋季大会, 仙台. 長谷英昭・升本順夫・黒田芳史・水野恵介, 2006: 東部インド洋のトライトンブイによって観測された海面熱フラッ クス変動, 2006年度日本海洋学会春季大会, 横浜. 水野恵介・升本順夫・長谷英昭・酒井真理・安藤健太郎・植木巌・黒田芳史, 2006: インド洋海洋変動についての観 測研究の成果と今後の展望,2006年ブルーアースシンポジウム,横浜. 10 Institute of Observational Research for Global Change 1.2 Argoグループ 1.2.1 平成17年度観測研究計画 海洋研究開発機構および関係9協力機関(気象庁、海上保安庁、水産庁、極地研、東大海洋研、北大、東京海洋大、 三崎水産高、日本鯨類研)の21航海によって、北太平洋、南太平洋、インド洋、南大洋に約100台のArgoフロート を展開する。Argoフロートデータの品質管理手法の高度化とそのための海洋データベースの構築を進める。太平洋 リージョナルセンターの運用を開始する。Argoフロートデータを中心に、北太平洋中央モード水、北太平洋亜熱帯 モード水、北太平洋回帰線水、北太平洋亜寒帯域の海洋構造等の解析研究を進める。次世代Argoフロートの開発を 進める。 1.2.2 観測実施状況 関係機関の協力を得て、予定通り94台のArgoフロートを北・南太平洋、インド洋、南大洋に投入した。Argoフロー トの投入を実施した海洋研究開発機構および関係協力機関の詳細を表1-3に、また、全投入点を図1-6から図1-7に示 す。昨年度より三崎水産高が投入に参加し、高校生によりArgoフロートの投入が継続的に行われていることは教育 効果上も大きな意味があると考えている。 表1-3 17年度のフロート投入船舶、投入数、投入海域 船 名・航海名 出 航 日 投 入 数 海 域 湘南丸 05/08 5 北太平洋 中央部 みらいMR05-02 05/25 2 北太平洋 亜熱帯 凌風丸05-06 06/15 4 北太平洋 亜寒帯 おしょろ丸 06/27 9 北太平洋 亜寒帯 みらいMR05-03(1) 05/25 1 北太平洋 熱帯 みらいMR05-03(2) 05/25 1 インド洋東部 赤道域 白鳳丸KH-05-2 08/08 7 北太平洋 亜寒帯 みらいMR05-04 09/13 16 北太平洋 亜寒帯 みらいMR05-05 09/13 1 北太平洋 亜熱帯 湘南丸 09/25 4 北太平洋 中央部 海幸丸JARPA 11/08 7 南大洋 白鳳丸KH-05-4 11/14 1 北太平洋 亜熱帯 しらせ 11/15 3 南大洋 海鷹丸 11/21 16 南大洋 照洋丸 11/25 1 北太平洋 亜熱帯 第二昭南丸SOWER 12/01 3 南大洋 白鳳丸KH-06-1 01/11 1 北太平洋 亜熱帯 凌風丸06-01 01/13 4 北太平洋 熱帯 啓風丸06-01 01/18 4 北太平洋 熱帯 みらいMR06-01 02/17 3 北太平洋 熱帯 海洋WESTPAC 02/24 1 北太平洋 亜熱帯 *みらい・白鳳丸;海洋研究開発機構、凌風丸・啓風丸;気象庁、海洋;海上保安庁、照洋丸;水産庁、しらせ: 極地研、海鷹丸;東京海洋大、おしょろ丸;北大、湘南丸;三崎水産高、海幸丸・第二昭南丸;日本鯨類研 11 Climate Variations Observational Research Program 図1-6 17年度のフロート投入点(北太平洋~赤道域) 図1-7 17年度のフロート投入点(インド洋~南大洋) 1.2.3 観測体制 a. 構成員 グループリーダー(四竃信行) :研究全体を統括し、国際的な対応、国内各協力機関への対応等を行う。 サブリーダー(湊信也) :研究員の研究指導及びArgoフロートデータ管理の統括。遅延モードデータの提供、各種プ ロダクト作成等の指導にあたる。太平洋リージョナルセンターの運用を開始する。 サブリーダー (岩坂直人)兼業:研究員の研究指導およびArgoフロートデータを用いた海洋混合層の変動等の解析 を行う。 サブリーダー (須賀利雄)兼業:研究員の研究指導およびArgoフロートデータを用いた北太平洋亜熱帯モード水、 北太平洋中央モード水の形成・輸送過程の解析を行う。 研究員(小林大洋) :Argoフロートデータの遅延モード品質管理手法の高度化とそのための海洋データベースの改 良を進める。 12 Institute of Observational Research for Global Change 研究員(岡英太郎) :平成17年4月から1年間の予定で、スクリップス海洋研究所に出張。Talley教授の元でArgoフロー トデータを中心に、北太平洋亜熱帯モード水、北太平洋中央モード水等の形成、輸送過程の解析を進める。 研究員(細田滋毅) :Argoフロートデータを中心とし、亜熱帯・熱帯域での気候変動のシグナルを検出する上で有 効なプロダクト(インデックス・熱・塩分輸送等)を開発し、研究的な観点からモニタリングを行う。併せて、 Argo観測網への評価・提言を行う。これらのプロダクトを中心に、人工衛星データ等をも用いて北太平洋回 帰線水の形成・変動過程について解析する。 ポスドク研究員(上野洋路) :Argoフロートデータを中心に、特に北太平洋亜寒帯域の海洋構造とその変動の解析 を行う。 ポスドク研究員(佐藤佳奈子) :Argoフロートデータを元に、全海洋の亜熱帯域に広く分布するバリアレイヤーの 特徴、形成のメカニズムについての研究を進める。 研究推進スタッフ(荻田尚子) :Argoフロートデータベース・ホームページの運用・監視を行う。データシステム の自動化を進める。 研究推進スタッフ(平野瑞恵) :ArgoフロートのEEZ申請手続き、フロート展開の協力官署への説明、フロート積 み込みと積み下ろしの立会い等、フロート展開に関わる庶務全般の遂行およびフロートセンサー検定技術の 高度化、フロート用新型センサーの海域実験等を行う。 研究部員(吉田昌弘) :小型軽量の次世代Argoフロートの開発を進める。平成16年度に国内特許出願を行ったギヤポ ンプを利用した浮力調整装置を組み込んだフロートのプロトタイプを製作し、フィールドテストを実施する。 支援要員(中島宏幸・大平剛・松尾典幸) :海洋研究開発機構が投入した数百台のArgoフロートから送信されてく るデータを毎日監視し、フロートの動作状況を確認、データの目視品質管理・各種統計情報の作成を横須賀 本部において行う。 支援要員(浅井聡子・横田牧人) :年間約100台のArgoフロートについて投入前に、設定深度で中立となるようなバ ラスティングとセンサーの検定をむつ研究所において行う。 b. 共同研究体制の概要 気象庁気象研究所 気象研究所がArgo計画以外のプロジェクトで投入したフロートの情報や解析結果を提供。 1.2.4 主な取得データの概要とその公開 投入したArgoフロートは10日毎に、2,000m深から海面までの110層における水温、塩分のプロファイルを測定し て海面に浮上する。海面でデータをアルゴス衛星に送信し、衛星からフランスのアルゴス経由で海洋研究開発機構 さらに気象庁に送られる。受信後24時間以内に、簡単な品質管理を施されたデータが気象庁から全世界の気象機関 にGTS(国際気象通信システム)経由で配信されている。さらに、海洋研究開発機構では半年かけて科学的な品質 管理を行い米国とフランスにあるGDAC(国際Argoデータセンター)にそのデータを送っている。Argoフロートに よるデータはインターネットにより全世界の誰でも無料でGDACから取り出すことができる。 1.2.5 成果の概要 Argoフロートの展開を計画どおり進めることができた。昨年度立ち上げた太平洋Argoリージョナルセンターに ついては、関係機関(IPRC、CSIRO)と調整しながらその運用を軌道に乗せた。また、Argoデータを中心に、水塊 形成の元になる海洋混合層の時間的変動、空間的特徴などを解析した。さらにプロダクト開発に関連して、中深層 の水温を解析したところ従来の常識を越える変動を見出した。次世代Argoフロートについては、ギヤポンプを土台 にした浮力調整機構の開発を終え、コントロールソフトと電子基板の開発を急いでいる。 13 Climate Variations Observational Research Program (1)Argoフロートの展開 関係機関の協力を得て、予定通り94台のArgoフロートを北・南太平洋、インド洋、南大洋に投入した。その詳 細は表1-3に、また、全投入点を図1-6から図1-7に示す。全世界で稼動しているArgoフロートは2006年3月7日現在 2415台であり、この内海洋研究開発機構のフロートが321台で米国に次いで世界2位の貢献をしている。また、投 入したフロートの寿命について医療統計の考え方を応用して検討したところ、最も多用されているAPEXフロート については平均99サイクルとなった(Kobayashi, 2006)。 (2)太平洋Argoリージョナルセンター(PARC) Argoグループでは、Argoデータの品質管理手法の高度化を進めてきたが、その技術レベルの高さが国際的に評 価されたことにより、太平洋Argoリージョナルセンター(Pacific Argo Regional Center:PARC)の設立を要請され、 16年度に立ち上げ、17年度より運用を開始した(図1-8)。海洋研究開発機構が投入したフロートだけではなく、各 国が北太平洋および南太平洋の30°以北に投入したフロートについてもデータの遅延モード品質管理のレベルを監 視し、不適切と考えられるデータについてはフロートを投入した主任研究者に対して注意を喚起することとなって いる。またインド洋におけるArgoフロートデータの品質管理に不可欠となるインド洋高品質データセットを作成、 論文として公表し、かつ一般へのデータセットの公開も始めた(Kobayashi and Suga, 2006)。また、2005年11月に東 京で開催されたArgoデータ管理会議に合わせてPARCの会合を持ち、中国、韓国の代表から今後PARCに積極的に 関わりたいとの意向が示された。 図1-8 運用を開始した太平洋Argoリージョナルセンターのホームページ (3)Argoデータの解析例 ①冬季混合層の時間的変動と空間的特徴 北太平洋の中・高緯度における冬季混合層の時間的変動と空間的な特徴について、2001~2005年のArgoのデータ を元に解析した(Oka et al., 2006) 。図1-9aに示すように150mを越えるような深い混合層は、亜熱帯モード水(STMW) と2種類の中央モード水(L-CMW、D-CMW)の形成域およびベーリング海に見られる。また、混合層が最も深くな る月は北太平洋にわたって12月から4月まで大きく変わる(図1-9b)。モード水形成域とベーリング海ではこれまで 考えられていた通り、混合層は晩冬の2、3月に最も深くなる。しかし、北太平洋北東部では混合層が最も深くなる 月は1月から4月の広い範囲にわたり分布する。これは浅い塩分躍層の存在により、混合層の発達が冬季の早い段階 14 Institute of Observational Research for Global Change で止まるためと考えられる。さらに20-30Nの亜熱帯域南部では、混合層はさらに早い12、1月に最も深くなる。冬 季後半におけるこの海域での混合層の浅化には、水平移流が大きく影響していると考えられる。 図1-9a 冬季(12月~4月)の最深混合層深度の分布。赤い曲線で囲まれた範囲はモード水の形成域(STMW:亜熱 帯モード水、L-CMW:軽い中央モード水、D-CMW:重い中央モード水)。 図1-9b 冬季の混合層が最深となる月の分布 ②中深層における水温変動 亜熱帯・熱帯域での気候変動のシグナルを検出する上で有効なプロダクトの開発を進めてきたが、その過程で中 深層における大きな水温季節変動を見出した。 Argoフロートから得られた太平洋における水温変動を解析した結果、1,000mより深い海域でも強い季節周期を 持つ変動が見出された(Hosoda et al., 2006) 。その振幅の大きさは、1,000mで0.1℃から0.3℃以上、2,000mでも0.05℃ から0.2℃以上で、これは、一般的に用いられている歴史的データから得られた変動の大きさ(標準偏差)と同等か それ以上の大きな値であり、かつその鉛直構造は、数100mの深さに存在する水温躍層より下ではほぼ鉛直に同位 相であった(図1-10) 。また、この水温変動が西方に伝播している様子も明確に捉えることができた(図1-11) 。こ の西方伝播の位相速度には緯度依存性があり、高緯度側ではっきりしなくなった。また衛星データから得られた海 面高度偏差ともよく一致した。 このような中深層における、大きな水温変動の存在は、海洋の経年変動を検出する際に無視できないと思われる。 観測が行われた季節を考慮することも当然必要となろう。 15 Climate Variations Observational Research Program 図1-10 WMOID:5900292(14N165W)のフロートのポテンシャル水温(等値線)と平均からの偏差(色)。偏差は、 各層での全ての期間のデータを平均した値からの差。縦軸が深度(圧力)、横軸がプロファイル番号(上軸) と年月(下軸)を表す。等値線間隔は10℃までが1℃毎、それ以上が5℃毎。色の間隔は0.05℃毎。 図1-11 10Nに沿った1000dbにおける水温偏差の時間変化の東西分布。横軸が経度(東経)、縦軸が時間(月/年) を表す。色の間隔は0.025℃毎、期間は2002年1月から2005年10月。偏差は2002年1月から2004年12月の 3年間の平均水温との差である。水温値は最適内挿法を用いてマッピングした値を用いた。 (4)次世代フロートの開発 フロートの小型、軽量化を目指して次世代フロートの開発を進めている。現在フロートの心臓部に相当する浮力 調整機構に使用するギヤポンプの開発をほぼ終えた(図1-12)。フロート全体の動きをコントロールするためのソ フトウエアと電子基板の開発を急いでいる。18年度にフロートのプロトタイプを作成し、フィールドテストを行う 予定である。この浮力調整機構について、昨年度国内特許の出願を行ったが、引き続き17年度に国際特許の出願を 行った。 16 Institute of Observational Research for Global Change 図1-12 次世代フロートの浮力調整機構 恒温室内で低温動作試験を行っている様子 1.2.6 研究成果発表 a. 論文発表 (査読あり) Hosoda, S., S. Minato and N. Shikama, 2006:Seasonal Variation below Thermocline detected by Argo Floats, Geophysical Research Letters,(submitted). Iwasaka, N., F. Kobashi, Y. Kinoshita and Y. Ohno, 2006:Seasonal variations of the upper ocean in the western North Pacific observed by an Argo float, Journal of Oceanography,(in press). Kobayashi, T., and S. Minato, 2005:What observation scheme should we use for profiling floats to achieve the Argo goal for salinity measurement accuracy? - Suggestions from the software calibration, Journal of Atmospheric and Oceanic Technology, 22, 1588-1601. Kobayashi, T., and S. Minato, 2005:Importance of reference dataset improvements for Argo delayed-mode quality control, Journal of Oceanography, 61, 995-1099. Kobayashi, T., 2006:Estimation of average lifetime of Argo floats, Journal of Atmospheric and Oceanic Technology, (submitted). Kobayashi, T., 2006:Climatological features of North Pacific Intermediate Water- Does it originate from Okhotsk Sea Mode Water? -, Journal of Physical Oceanography,(submitted). Kobayashi, T., and T. Suga, 2006:The Indian Ocean HydroBase:A high-quality climatological dataset for the Indian Ocean, Progress in Oceanography, 68. 75-114. Oka, E., and T. Suga, 2005:Differential Formation and Circulation of North Pacific Central Mode Water, Journal of Physical Oceanography, 35(11), 1997-2011. Oka, E., 2005:Long-term sensor drift found in recovered Argo profiling floats, Journal of Oceanography, 61, 775-781. Oka, E., L.D. Talley, and T. Suga, 2006:Temporal variability of winter mixed layer in the mid- to high-latitude North Pacific, Journal of Oceanography,(submitted). 17 Climate Variations Observational Research Program Sato, K., T. Suga and K. Hanawa, 2006:Barrier layers in the subtropical gyres of the world's oceans, Geophysical Research Letters,(in press). Suga, T., Y. Aoki, H. Saito and K. Hanawa, 2005:Ventilation of the North Pacific subtropical pycnocline and mode water formation, Progress in Oceanography,(submitted). Ueno, H, and I, Yasuda, 2005:Temperature inversions in the subarctic North Pacific, Journal of Physical Oceanography, 35, 2444-2456. Ueno, H., E. Oka, T. Suga and H. Onishi, 2005:Seasonal and interannual variability of temperature inversions in the subarctic North Pacific, Geophysical Research Letters, 32, L20603, doi:10.1029/2005GL023948. 中島宏幸・小林大洋・四竃信行・竹内謙介, 2005:プロファイリングフロートの適切な海面漂流時間―欠損のない 観測プロファイルを得るために―, 海の研究, 14, 631-644. (査読なし) Okumura, T., N. Iwasaka and E. 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Hosoda, S., T. Ohira and S. Minato, 2006:Direct estimation of geostrophic current velocity from Argo floats and its verification, 2nd Argo Science Workshop, Venice, Italy. Iwasaka, N., F. Kobashi, Y. Kinoshita and Y. Ohno, 2006:Seasonal variations of the upper ocean in the western North Pacific observed by an Argo float, Second Argo Science Workshop, Venice, Italy. Kobayashi, T., and T. Suga 2005:The Indian Ocean HydroBase :A high-quality climatological dataset for the Indian Ocean, Indian Ocean, EGU General Assembly, Vienna, Austria. Kobayashi, T., 2005:Introduction of SeHyD by JAMSTEC and a concern of updated reference datasets by adding Argo data, 6th Argo Data Management Meeting, Tokyo. Kobayashi, T., 2006:Estimation of the average life span of Argo floats, 2nd Argo Science Workshop, Venice, Italy. Minato, S., S. Hosoda and N. Matsuo, 2006:Observational error in Argo profiles and one-time shipboard CTD profiles, 2nd Argo Science Meeting, Venice, Italy. Minobe, S., K. Tanaka and T. 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