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学生生活への配慮

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学生生活への配慮
学生生活への配慮
本学は学生生活への配慮を目的に、「学生が個性を育み、自己実現できる環境を整備し、
提供すること」を理念として各種活動を行っている。
第一に、本学は、学生生活への経済的支援を目的として、独自の充実した奨学金制度を
設けており、大別して給付と貸与(無利子)がある。また、アルバイトの紹介・斡旋、下宿・
アパートの紹介・斡旋、学生食堂・店舗、大学院学生への重点施策などを展開している。
第二に、生活相談等をサービスするために、本学には、学生の相談に対応する組織を「学
生相談室」と「保健センター」の二つ設けている。その役割としては、「学生相談室」は学
生部に所属し、学生の勉学上の相談から経済的な問題、交友関係等、常時専門の精神科医・
カウンセラーを配置し、学生のあらゆる問題に対応できる体制がとられている。
「保健セン
ター」では学生の健康に関する相談および病気・けがの医療に関する対応である。いずれ
も多摩キャンパス、後楽園キャンパスそれぞれに開設されている。
第三に、充実した就職指導を行っている。本学の学生が大学で学んだことを活かして、
自分の適性にあった分野で社会に貢献できるように、情報の収集・整理・提供、就職指
導行事の開催、学生との個別面談、インターンシップの実施等により学生の進路・就職
支援を行っている。学部3年次以上および大学院学生を中心に支援しているが、近年、
既卒者の相談も増加している。就職部は、就職課(多摩キャンパスおよび駿河台記念館)
で文系学部の学生を、理工学部就職課(後楽園キャンパス)で理工学部の学生の進路・就
職支援を担当している。
第四に、学生が多様な課外生活・活動を展開できるように、支援している。大学の課外生
活・課外活動を担当する部署として「学生部」と「学友会」がある。学生部は課外生活・
教養を担当し、学生個人あるいは大学へ未登録の学生有志団体を対象としている。学友会
は課外活動を担当し、大学へ登録した学生団体およびそれら団体を取りまとめる連盟を対
象としている。なお、学生の課外活動の中でニーズの高い体育施設の利用については、上
述の学生部、学友会のほか、正課授業、地域住民への施設開放などさまざまな利用形態が
ある。体育施設を効率的に利用できるように「体育施設運営センター」で調整するととも
に利用時の安全面についても支援している。
第五に、父母連絡会を設け、父母への対応を行っている。父母連絡会は大学と子弟の父母
との関係を親密にし、相互理解と協力を深め、大学の使命達成に資することを目的とし発
足したが、さらに今日では本学が我が子の大学としてだけではなく、父母自身の大学でも
あることを実感してもらうことを究極の目的としている。全国の主要都市で父母懇談会を
開催し、機関誌「草のみどり」を毎月発行している。1988 年全員加入となり、現在の全国
54 支部体制が確立。この年から父母懇談会とは別に就職懇談会を開催している。
なお、セクシャルハラスメントについては「第 6 章
1.学生への経済的支援
【現状の説明】
①
奨学金制度
846 第5章 教育研究支援
人権への配慮」で扱う。
ア.学内奨学金(給付・貸与)
本学は、学生生活への経済支援を目的として、独自の充実した奨学金制度を設けており、
大別して給付と貸与(無利子)がある。主な奨学金は次のとおりである。
○学部生給付奨学金
学力・人物ともに優れている学部生を支援することを目的としている。法学部・経済学
部・商学部・理工学部・文学部・総合政策学部の6学部が独自に特色を持った制度を実施
している。給付額は、おおむね授業料相当額を限度としている学部が多いが、学部ごとに
弾力的に運用されている。
○大学院給付奨学金
特に学力または研究能力が優れている大学院学生を支援することを目的としている。給
付額は、在学料相当額(1/2の場合あり)となっている。
○経済援助給付奨学金
学力・人物ともに優れており、修学の意思があるにもかかわらず、経済上の理由により
修学がきわめて困難な学部生・大学院学生を支援することを目的としている。学部生給付
奨学金が成績を重視する制度に対し、この制度は成績の他に家計状況を相当程度加味する
点で学部生給付奨学金と異なる。
○文化・スポーツ活動等奨励給付奨学金
学内または学外における課外活動等において優れた成績を収めた学部生や、高い目標を
目指しその努力が認められ、今後の成果が期待できる学部生を支援することを目的として
いる。給付額は、学費相当額または授業料相当額を限度とし、奨励内容により決定される。
○指定試験奨学金(給付)
本学で指定した国家試験(司法試験、公認会計士試験、国家公務員Ⅰ種試験)に合格する
ことを期して学部の修業年限を超えて在学する者に対し、経済支援をすることを目的とし
ている。給付額は、学則に定める学費減免措置を受けて納入する授業料および実験実習料
の4/5相当額となっている。
○貸与奨学金
能力があり修学の意思があるにもかかわらず経済的事由により修学が困難な学部生・大
学院学生を支援することを目的としている。貸与額は、月額6万円(年額 72 万円)である。
○応急奨学金(貸与)
主たる家計支持者の死亡、失職、疾病または災害等により家計急変のため学業の継続が
著しく困難になった学部生・大学院学生に対して貸与することを目的としている。貸与額
は、学費相当額以内となっている。
○応急貸付金(貸与)
仕送りの遅延・急病・緊急帰省等の不時の出費のため、生活費に不足を生じた学部生・
大学院学生(外国人留学生を含む)を支援することを目的としている。
貸付額は、申請内容により3万円以内、10 万円以内、学費相当額以内の3種類がある。
○冠奨学金
飯塚毅奨学基金、谷本利千代百年基金、内山力奨学基金、永井善次郎奨学基金、飯塚久
子奨学基金等の寄附者の名前を冠した冠奨学金制度があり、各々の規程を制定し、学生へ
の経済的支援を行っている。
847
そのほかに、教育研究活動に対する冠奨励基金として、渋谷健一奨励基金、船木勝馬学
術奨励基金、三重野康・髙木友之助記念学術奨励基金、水野富久司スポーツ奨励基金、瀧
野秀雄学術奨励基金、茨木龍雄学術奨励基金、久保田昭夫女子スポーツ奨励基金等がある。
イ.日本育英会奨学金(貸与)
優れた学部生・大学院学生であって経済的理由により修学が困難な者に対し、学資の貸
与等を行うことにより、国家および社会に有為な人材の育成に資するとともに教育の機会
均等に寄与することを目的としている。無利子の「第一種」と有利子の「きぼう21プラ
ン」があり、本学の学内奨学金と相互補完的な役割を担っている。
ウ.民間・地方公共団体等の奨学金(給付・貸与)
団体により、募集対象・金額が異なる。学部生・大学院学生合計で毎年 100 名程度が採
用されている。
エ.学費の分納・延納制度
学費を一括納入できない者や期限までに納入できない者に対し、分納および延納の制度
を設けている。学費未納の場合は、経済除籍となる。
②
アルバイトの紹介・斡旋
内外学生センターや民間・地方公共団体等からのアルバイトの求人依頼を受けて、精選
したうえで厚生課の掲示板に掲示している。学生が求人先に電話を入れて面接のアポイン
トが取れた段階で厚生課が紹介状を発行している。
③
下宿・アパートの紹介・斡旋
中央大学生活協同組合が年間を通して学生の下宿・アパートの紹介・斡旋を行っている。
新入生に対しては2月中旬から特設コーナーを設けて紹介している。多くは仲介手数料を
必要としない物件である。
④
学生食堂・店舗
多摩キャンパスの中央部に位置する4階建ての建物が「ヒルトップ’78」と称する食堂
棟になっている。この中には、生活協同組合を含めた食堂業者が3社、理容業者が1社お
よび生活協同組合の店舗(購買、書籍、プレイガイド等)が入っている。食堂の席数は、合
計で約 3,500 席であるが、多摩・後楽園キャンパスともに席数の不足傾向にある。なお、
この他に大学施設内のバスターミナルにおいて、食堂業者1社(31 席)が営業を行っている。
食堂棟の営業時間は、おおむね朝 10 時から夜8時までである。食堂業者に対しては、業務
委託契約書および覚書に基づき学生の健康を守るために、メニュー・価格・衛生・味等に
十分な注意を払い、栄養のバランスのとれた食事を提供するよう常日頃から指導を行って
いる。また、店舗業者に対しては、生活協同組合の設立の趣旨・目的に則り、学生の利益
に供する営業活動を行うよう指導をしている。経費負担については、大きく分けると建物・
厨房機器・修繕は大学負担、光熱水費その他は業者負担となっている。
⑤
大学院学生への重点施策
大学院学生に対しては、①で該当する奨学金に加えて、特に前述の中央大学貸与奨学金
について希望者全員が受けられるように配慮している。また、大学院学生の在学料は、文
科系・理科系を問わず国立大学の大学院学費に準じたものになっており、他私立大学の大
学院に比べて低額な学費設定を行っていることにより、学生への経済的支援を図っている。
さらに、大学院学生を対象としたTA・RA制度により教育的補助業務や共同研究プロジ
848 第5章 教育研究支援
ェクトに関する補助業務を担当する場合手当を支給しており、教育研究能力を促進させる
とともに経済的支援の一助にもなっている。
【点検・評価】
①
奨学金制度
学内奨学金については、2000 年度に全学的に抜本的な改革を行った結果、育英を目的と
した給付制度、奨学を目的とした貸与制度、緊急および応急時に対応できる奨学制度(給
付・貸与)等、質・量ともに充実が図られている。日本育英会奨学金については、前述のと
おり、学内奨学金と相互補完的な関係に位置づけられており、本学にとっては不可欠の奨
学金である。民間・地方公共団体等の奨学金については、育英を目的とした奨学金が多く、
本学にとっても重要かつ貴重な団体となっている。学費の分納・延納制度については、近
時の経済情勢を反映し、この制度の利用者は増加の傾向にある。
②
アルバイトの紹介・斡旋
近年、アルバイトを希望する学生が増えているのに対して、求人数は横ばいの傾向にあ
る。大学は紹介・斡旋業務にとどまっているので、学生の就労状況が十分把握できていな
いきらいがある。また、学生とアルバイト先との間で主に待遇面において、年間数件のト
ラブルが発生している。
③
下宿・アパートの紹介・斡旋
質・量とも充実が図られている。また、入居後の相談にも応じているので、最も身近な
住まいの窓口と言える。
④
学生食堂・店舗
学生食堂については、安全で、安くて、ボリュームがあり、美味しく、メニューが豊富
であり、充実が図られている。昼食時の混雑緩和対策として、食堂棟の外で弁当販売を行
っており、これが混雑緩和に効果を発揮している。また、喫煙対策として、食堂棟におけ
る禁煙・分煙措置を徹底している。店舗についても、学生生活に必要な低廉で良質な製品
が揃っており、学生の福利厚生施設という点で学生から高い評価を得ていると思われる。
⑤
大学院学生への重点施策
国立大学並みの学費水準を維持するとともに、希望者全員に学内外の奨学金を貸与する
ことができていることは評価できる。また、学内の給付奨学金については予算に限りがあ
るため、支給基準・支給方法を再検討し、より多くの学生が受けられるように努力してい
る。
【長所と問題点】
①
奨学金制度
学内奨学金については、全学的な審議機関である奨学委員会の決定・方針に基づき、厚
生課においておおむね事務の執行を行っており、情報の一元化と事務の一元化という長所
がある。奨学金に対する学生の需要と大学の予算との関係の面から言えば、社会の経済情
勢の悪化により学生の奨学金に対する需要が大幅に増えることによって予算が不足する年
度があり、学生が安心して学業に専念できる大学生活の担保という奨学金本来の趣旨に照
らして、この点は苦慮するところである。日本育英会奨学金については、毎年一定程度の
採用者数を確保できるという長所があるが、その年の国庫予算の獲得状況によっては、採
用者数の大幅削減も危惧されること、また、日本育英会の運営方針の変更により大学事務
849
局に過重な負担を強いる傾向がある点等が問題点としてあげられる。民間・地方公共団体
等の奨学金については、団体の趣旨に沿った優秀な学生を推薦することによって、大学と
社会との緊密な連携を保つことができるという長所があるが、近年の経済不況により募集
件数の若干の減少が見られる。学費の分納・延納制度については、この制度を利用して経
済除籍を免れている学生が多い。しかし、分納にしろ延納にしろ、この制度は期限が定め
られているので、完全に学生を救済できる制度ではないところが欠点である。
②
アルバイトの紹介・斡旋
大学がアルバイト先を紹介・斡旋するので、学生にとっては信頼のおける働き場所とい
う長所がある。問題点としては、大学として安全で質の良いアルバイトの確保を最優先す
るので、量的には必ずしも十分とは言えないことが指摘される。
③
下宿・アパートの紹介・斡旋
生活協同組合が大学の指導・監督のもとに一括して紹介・斡旋しているので、学生にと
っては健全な住まい探しができるという長所がある。問題点としては、学内においては、
唯一の住まいの窓口となっており、他との競争がないことによりサービスの一定以上の向
上が望めない状況が懸念されることがあげられる。
④
学生食堂・店舗
学内における立地条件が良く、一極に集中しているので、大部分の学生にとっては便利
で利用しやすくなっている。また、大学の監督・指導のもとに低廉で良質の食事や製品を
提供しているので学生に安心感を与えていること等が長所である。問題点としては、大学
特有の夏休み、冬休み、春休みの期間には営業実績が落ち込むことが指摘されている。ま
た、本学特有の問題として、夜間部の募集停止にともない、夜間部学生の漸減傾向が続い
ており、夜間の利用者が減ってきている。さらに、食堂棟は、築 24 年を経ており老朽化し
てきている等の点があげられる。
⑤
大学院学生への重点施策
近年、大学院学生数は社会人大学院の開設などにより大幅に増加しており、今後の専門
大学院の開設を考え合わせると、量的質的にも新たな、大学院学生への経済的支援策の展
開が必要である。
【将来の改善・改革に向けた方策】
①
奨学金制度
学内奨学金については、財政基盤を確立し、予算面と制度面におけるより一層の充実を
図ることが肝要である。また、奨学金に関する相談コーナーの設置と大学生活における経
済支援を4年間トータルでプランニングできる専門スタッフの養成が求められる。日本育
英会奨学金については、安定した採用者数の確保と給付制度の新設、無利子貸与の増枠を
要請していきたい。民間・地方公共団体等の奨学金については、今後とも継続して優秀な
学生を推薦する努力をするとともに、新たな団体の開拓も検討する必要がある。学費の分
納・延納制度については、法人の政策にも大いにかかわる問題であり、今後予算面を含め
て法人と検討する必要がある。
②
アルバイトの紹介・斡旋
継続して良質で安全なアルバイト先の開拓に努める。また、雇用者および学生双方に対
してトラブルの未然防止に関する啓発・指導の徹底を行う必要がある。
850 第5章 教育研究支援
③
下宿・アパートの紹介・斡旋
下宿・アパートの紹介・斡旋業務は、大学の福利厚生の観点からも重要な柱になってい
るので、今後とも生活協同組合に対して健全で良質・低廉な物件の紹介を心掛けるように
指導・監督を行い、学生サービスの一層の向上に努める。
④
学生食堂・店舗
快適な食生活を送るためには、老朽化した食堂棟の改修が必要である。また、衛生管理・
メニュー等について、各業者になお一層の営業努力をするよう継続して指導していくこと
が必要である。さらに、夜間部学生の減少にともない、全学的な夜間部学生に対するサー
ビスの在り方の観点から夜間の食堂棟の営業についても、今後営業時間の短縮や営業面積
の縮小等具体的な対策が必要と思われる。なお、現在、学生生活関連棟の建設計画(2003
年竣工予定)があり、この建物に入る食堂業者の選定が当面の課題となっている。竣工され
た暁には、多摩・後楽園キャンパスともに席数の増加につながることになる。
⑤
大学院学生への重点施策
後期課程に進学する学生は、学部入学時からの在学期間が 10 年を超える者も少なくなく、
奨学金制度やTA・RA制度などの充実により、研究活動に専念できる環境を整えていく
必要がある。また、近年では仕事に就きながら研究する学生が増加していることから、そ
のような社会人学生にも配慮した制度を検討する必要があろう。
2.生活相談等
本学には、学生の相談に対応する組織が「学生相談室」と「保健センター」の二つある。
その役割としては、
「学生相談室」は学生部に所属し、学生の勉学上の相談から経済的な問
題、交友関係等、常時専門の精神科医・カウンセラーを配置し、学生のあらゆる問題に対
応できる体制がとられている。
「保健センター」では学生の健康に関する相談および病気・
けがの医療に関する対応である。いずれも多摩キャンパス、後楽園キャンパスそれぞれに
開設されている。
<学生相談室>
【現状の説明】
①
学生相談室の組織と運営
学生の個人的な問題や悩みに関する相談に応じるために、学生部に学生相談室が開設さ
れており、学生部長が学生相談室長を兼務することになっている。
また、学生相談室の事務は、多摩キャンパスは学生部事務室学生相談課、後楽園キャン
パスは学生部事務室理工学部学生生活課が所管する。
学生相談室の運営および業務の重要事項については、学生相談室運営委員会が審議決定
する。同運営委員は、学生相談室長、保健センター所長、各学部教授会からの教員、学生
部事務長、学生課長、厚生課長、学生相談課長、理工学部学生生活課長、保健センター事
務室長で構成し、学生相談室長(学生部長)が議長になる。
②
学生相談室の体制
学生相談室は 1954 年に私立大学の先駆けとして開設し、幾度かの所管課の統廃合を経て、
851
1996 年7月に新設された学生相談課(多摩キャンパス)、理工学部学生生活課(後楽園キャ
ンパス)が事務を所管し現在に至っている。学生相談課の専任職員は4名であり、他に専門
相談員として嘱託相談員が9名(精神科医4名、カウンセラー4名、弁護士1名)、また、
該当相談事発生時に随時対応する法・経済・商・文・総合政策学部教授会選出の教員相談
員 14 名、法学部教授会で選出された教員1名(精神科医)と職務上職員相談員 13 名(法・経
済・商・文・総合政策学部事務長、学友会事務長、就職課長、保健センター事務室長、学
生部事務長、学生課長、厚生課長、大学院事務長、通信教育部事務長)がいる。また、理工
学部学生生活課も同様に専任職員2名、嘱託相談員が3名(精神科医2名、カウンセラー1
名)、理工学部教授会選出の教員相談員3名と職務上職員相談員2名(理工学部事務長、理
工学部就職課長)で相談に対応している。
【点検・評価】
学生相談室は、学園生活をはじめとする諸々の学生の個人的な問題や悩みに関する相談
に応じる「よろず相談」を前面に掲げて相談に対応している。学生の個人的な問題や悩み
は意外と根深いものがあるため、精神的にすぐ不安になり易く、近年の傾向として、日常
的なサポートを必要とするケースが増加している。来談者には、まず学生相談課職員が十
分に時間をかけてインテーク(予備面接)して相談の内容を聞き、各相談員につなぐことに
している。最近のケースとして対人関係に端を発したトラブルが多発しており、関係課室
とのより一層の連携強化が必要と考えられる。特に対人関係で問題があったり、大学生活
に馴染めない学生に対しては、サロン(談話コーナー)を利用して、学生同士の横のつなが
りをもたせたりするように学生相談室スタッフが介入しながらケアをしている。しかし、
学生同士の人間関係だけでなく、教職員と学生との距離や関係の希薄さも指摘される中、
サロンを利用する学生に対してのサポートが以前より困難になってきており、学生相談室
スタッフが種々工夫をしながら検討を重ねている。
なお、学生相談室では学生相談業務以外に年間を通じて、学生の人間的な成長・発達を
支援するために春季および夏季セミナー、集中講座や教養講座等の各種行事やエンカウン
ターグループ、キャリアグループなどのグループワークを実施している。
【長所と問題点】
相談内容の多様化にともなって、さまざまな問題を抱えた学生をサポート、支援するた
めには、学内外の多様な資源を活用し、連携をしなければ解決できないケースが増えてき
た。
大学が学生を教育するという重要な責務を全うするためには、どんな学生が入学してき
ているのか、学生は大学に何を求めているのか、学生の所謂“大人”としての成熟度はど
うなのか等の理解が、教育に携わるすべての教職員に従前以上に必要とされる時代になっ
てきている。
学生相談室に寄せられる相談からも学生一般のもつ困難さや一定の問題が抽出されるこ
とは確かであるが、学生相談室から発信することは、
「特別な学生のこと」という認識が学
内にまだまだ根強くあることも事実である。学生相談室に寄せられる様々な問題と向き合
っているわれわれは、常にそのジレンマの中で仕事をしているといっても過言ではない。
そのようなジレンマを少しでも解消し、現在の学生実態への理解を教職員へ発信すべく、
新入生アンケート、教職員向け研修会、学生相談ハンドブックの発行という新しい試みに
852 第5章 教育研究支援
力を入れてきた。
学生相談室は、学生の相談を通じて彼らの成長を促す支援と同時に、学生の抱える問題
を通して、現在の学生に必要な施策をさまざまな場面で提言していく役割などが一層重要
になってくるものと考えている。
【将来の改善・改革に向けた方策】
大学が学生相談室というセクションを設けて学生の「メンタル」な問題に対応しなけれ
ばならない理由は次のとおりである。
第1に大学教育の一環として必要であるということ、すなわち大学教育では「専門教育」
と「社会的な能力を育てること」が主要な教育目標とされているが、その目標を達成する
のに学生を「メンタル」な面でサポートすることが欠かせないことは当然である。
第2は学生へのサービスの一環として取り組むということがある。学園生活を円滑にお
くれるように大学として「メンタル」な面でのサポートを学生に提供しようということ。
第3として、大学組織の円滑な管理運営のために必要だという考えである。相談室に寄
せられる「メンタル」な問題が起因のひとつになって大きなトラブルに至ることは少なか
らずあり、学内でのさまざまなトラブルの発生を防止する為に「メンタル」な問題に対応
するセクションを設けようということである。
以上3点については、いずれも学生相談室単独では達成できるものではなく、学内の関
係諸機関と問題を共有しつつ共通理解を得ながら「協働」していくことが必要である。す
なわち、日頃から「密接な連携」を保つことが学生をサポートするうえで最も不可欠であ
る。
また、これまでの学生相談室は「よろず相談」という看板を掲げ、相談室にやってくる
学生を主に対象として対応しており、受け身的なスタンスであったことは否めない。しか
し、昨今、大きく変わりつつある学生と向き合っていくうえで、こちらから積極的に学生
に働きかけ、支え、成長させていくことが重要で、決して受け身的ではなく、能動的な役
割が求められるであろう。
なお、学生関連施設棟の建設が進められており、竣工後近隣事務室が移転する。その跡
地に学生相談室関連の設備等を充実させ、多様化する要望に応えうる体制を整える。
<保健センター>
【現状の説明】
教育施設における健康管理業務および保健施設等の設置にあたっては、学校教育法、大
学設置基準、学校保健法等の関係法令が関連している。本学は、1978 年4月に多摩校地移
転と同時に新たな健康管理機能として「健康管理と医業」を行う保健センターを設立させ
た。
現在の健康管理業務と医業は設立当初とはかなり異なっており、近年では大学の危機管
理が問われるなか「健康管理と医業」に対する期待も年々増大している。また、社会的に
は「医療業務」に対する責任が厳しく問われるようになってきている。
医療関係業務に対する社会環境が厳しくなってきたことは、大学として現在の健康管理
体制を見直す時期に来ているといえる。学生の「健康管理」は大学にとって重要な業務で
あり、保健センターに関わる業務は学外的にも学内的にも信頼性と専門性をともなうもの
853
である。
今後、ますます複雑化するであろう社会環境の中で、本学を支えていく人材は「健康」
であることにより、勉学に、研究に、スポーツに邁進することができる。
魅力ある大学を目指す中で、保健センターの担う「健康」は、すべての「教育研究活動
の基盤」になるものである。
①
健康管理と医業
保健センターの医業は、医療法に基づく正規の「診療所」として医療業務を行っている。
設立以来 20 数年を経過した現在、2000 年度における保健センターの年間利用状況は、健
康管理件数(二次検診・臨時健康診断・予防接種・体脂肪測定を含む)で約 27,000 件と年々
増加傾向にある。また、診療件数(医科・歯科)は約 5,900 件で、これも受診者が年々増加
している。
生活環境の変化は、健康において年々低年齢化している生活習慣にともなう疾病(糖尿病、
肥満症、高脂血症、高血圧症等)に移行しているのが現状である。
②
定期健康診断
定期健康診断の実施(受診)は、学校保健法によって義務づけられており、本学では毎年
4月初旬に学生に対する定期健康診断を実施している。この学生への健康診断は大学生活
における健康管理の中心ともいえるものであるが、本学における学生の受診状況は 2000 年
度で約 23,600 名(受診率約 78%)である。このうち、二次健診(再検査)対象者は約 1,200
名(約 5.1%)である。
③
医療技術員
現在、学生数約 30,000 名
(大学院学生を含む)の健康を預かる保健センターからすると、
現状の医療技術員の人数では増加する学内各方面からの要請には対応しきれない現状であ
る。また、日常における学生の健康管理の継続性にも万全を期することができない状況に
きているといえる。
④
診療医師
健康管理と診療に関する業務は、開設当初とはかなり異なり、現在では5つの医療機関
から医師などの派遣を得て昼夜の診療業務などを行っている。
多摩キャンパスの医科では、嘱託非常勤医師6名による月曜日から土曜日の昼間診療業
務を夜間診療については日本医大医局の協力により医師のローティションにより夜間診療
業務を行っている。また、後楽園キャンパスの医科においては、嘱託非常勤医師6名によ
る月曜日から金曜日の昼夜診療業務(土曜日は昼のみ)を行っている。
⑤
救急体制
学内で突発する負傷者、急病人の救護にあたってはその重症度に応じて自ずから対応が
異なるが、センターでは、応急手当を施してできるだけ速やかに地域救急病院に転送する
ようにしている。
【点検・評価
①
長所と問題点】
健康管理と医業
2000 年度の「保健センター診療疾病分類」で見ると呼吸器系、消化器系、循環器系等が
毎年増加傾向にある。特に、精神神経科系では2年前の2倍となっている。また、女子学
生の増加にともない健康相談等で保健センターを訪れる女子学生も年々増える傾向にあり、
854 第5章 教育研究支援
前年の2倍となっている。今後、女性の健康相談業務に関する配慮も重要になっている。
近年、感染症に代表される「結核」が再興し始めており、1999 年の秋、当時の厚生省は
「結核緊急事態宣言」を発表した。以後、報道でも集団感染の厳しさを報じ、大学での対
応・対策が要求されている。大勢の人が集まる大学では、このような事態に重大な関心を
払う必要がある。現実に本学における結核発病者は、毎年、学生で2∼3名程が発病して
おり、今年も学生で新たに5名の発症例が確認されている。
大学として健康管理業務の重要性を十分認識する必要がある。
②
定期健康診断
大学は、学生の集団生活の場であり、また、教育研究活動を行う組織体であることから
すれば、学生の健康状態は直接的に教育研究活動に影響を与えるものである。さらに、学
生の健康増進を図ることは、教育の目的の一つでもある。しかし、現在の学生定期健康診
断の項目は事後の健康管理を行う契機と為すには十分なものではない。健診の検査項目に
改善を図ることも必要である。また、学生には健診に対する受診意識の向上を図っていか
なければならない。生活環境の変化は、個人の健康にも大きな変化をあたえている。今後
は社会人および留学生の増加にともない感染症等との関係も含め大学として健康管理(健
診)を一層充実させなければならない。
③
医療技術員
近年、医療現場においてはチーム医療の要請から医師以外の医療専門職の役割が重くな
っている。また、大学の保健管理業務の領域においても、看護婦は「診療の補助と療養上
の世話」という臨床看護の概念を超えた保健指導をも含めた看護が期待され、事実、保健
婦とともに保健指導の任にあたっている。
健康サービスを担うべき保健センターにとって医療技術員は医師と並んで中核スタッフ
となるべき存在であり、健康管理サービス業務の水準を維持していくためにも、その業務
に従事する要員の専門的知識(技術)とチームワークが求められる。
保健センターの設置目的である「健康管理と医業(診療)」業務を低下させないためにも
医療技術員の確保と充実は欠かせない。
④
診療医師
近年各医療機関における医療体制整備等の関係から医師(嘱託非常勤医師)の派遣が困難
になってきている。特に、夜間診療業務においては医療機関の夜間医療との関係から派遣
する医師のローテーションが難しくなってきている。
⑤
救急体制
多摩キャンパスにおける救護の実状を見ると医師、看護婦の事故発生現場へ急行する足
の確保および現場との連絡方法に問題を生じている。この点例えば、大学の公用車により
現場に急行できるような改善を図るとともに、現場と連絡が取り易いよう学内携帯電話の
整備も考える必要があろう。また、今後は、大学と医療機関(病院)との提携関係を整備し、
救急外来および夜間外来の受け入れを確実なものにしていく必要がある。
特に、多摩キャンパスにおいては都心とは異なる医療環境にあることを理解すべきであ
る。
【将来の改善・改革に向けた方策】
大学も社会の変化を受けてそれに沿った改革が求められる。大学の医療業務に関わる保
855
健センターにおいても、医療面での変化や大学の改革に沿った変容が求められて当然とい
える。
そのためには、他大学に先駆けて本学の変革と呼応した形で、保健センターの改革・改
善を推進し、保健センターの健康管理と診療体制を整える必要がある。そのためには、保
健センターの基本的性格を健康サービス機関として位置づけ、これからの保健センターは、
初期診療から疾病管理、疾病予防、健康増進のための健康相談、保健指導、健康教育活動
へと発展する方向を目指すべきである
それには、現在の保健センター機能を充実させることが重要であり、人的構成の検討お
よび責任体制の充実等事務組織の改善を含めた健康管理体制の整備が望まれる。
①
健康管理について
保健センターの業務内容は、疾病構造の変化にともなって変わって行かなければならな
い。今後、疾病管理、感染症対策、生活習慣病対策、健康相談等広い視野から健康管理サ
ービス業務への対応が必要となる。
第一は、学生に対して健康面のサービスを一定の計画のもとに行うことである。健康面
のサービスとは、学校保健法の趣旨に照らすまでもなく治療行為を行うことではなく、健
康づくりをすすめ、生活習慣病予防を目指して、定期、臨時の健康診断を行い、かつ、セ
ルフケア能力の向上を目指して必要な情報・知識を提供するものである(健康管理)。教育
的には、自立心の向上を図るきわめて具体的な活動の一つと位置づけられる(学生に対する
健康サービス)。
第二は、他の医療機関で治療を受けているか否かにかかわらず、何らかの疾患・障害を
有する学生に対し必要な治療面の指導を行うことである(療養指導)。
第三は、訓練をともなう教育プログラム(正課および課外のスポーツ等)の実施にあたっ
て健康状態を把握し必要な助言を行うことである(訓練についての助言)。
第四は、保健センターが健康管理活動を一層充実させていくためには、健康教育、健康
科学に関する研究の成果を積極的に取り入れる必要があるが、そのためには、センターの
要員の確保だけでなく、新たな組織体制の構想として保健体育研究所との業務提携、共同
調査・研究が必要である。例えば、健康診断と体力測定行事の合同実施、スポーツ・食生
活等の指導を含む健康教育プログラム、疾病、障害学生のためのリハビリプログラムの共
同開発、健康に関する講座や講演会の開催等が考えられる(健康教育の推進)。
②
医業(診療)について
大学は学生を預かっている立場から彼らのけが、疾病等の診療については十分配慮して
初期診療から疾病管理、疾病予防、そして医療機関への搬送と充実した診療体制を整えて
おかなければならない。
A
救急体制(一次救急医療の充実)
a.患者輸送の明確化と対応すべき学内スタッフのネットワーク化
保健センター医師等スタッフが接触するまでの時間、ないし救急車の到着までの時間は
現場対応者が、身元確認、連絡、指示受け、輸送手伝い等を行わなければない。これらは
発生状況が特定し難いことから、またセンターで救護に専従する要員を確保することが困
難であることから学内関係部署と学内スタッフのネットワーク化で対応するほかはなく、
教職員の理解と協力を願わざるを得ない。
856 第5章 教育研究支援
b.地域救急医療機関との提携
24 時間体制(第三次救命救急センターを備えた病院)を保持している地域内の医療機関
(病院)と提携し、受け入れに対するシステムを確立する必要がある。
B
その他の救護
保健センターでは、学内の行事に際して救護班を用意するが、行事によっては医師・看
護婦等の派遣を医療機関に依頼しなければない。学内では、平日、休日を問わず、多くの
行事が行われているが、それらが授業の範囲であるか否か、主催者(責任者)がどこである
か等に分け、予算を含むルールづくりを行う必要がある。
C
その他の診療
近年の医学と医療技術の目覚ましい進歩発達にともなって、医療は益々高度化、専門化
の趨勢にあり、また高度の医療サービスへの経済負担も増大してきている。
このような社会趨勢を考慮すれば、医学部および付属病院を持たぬ私立大学が、学内に
おいて高度医療サービスを保障するのは、財政的に非現実的であることは明らかである。
幸いにして保健センターは、これまでも近隣の病院、診療所と提携して、医療について協
力関係を作り上げてきたが、今後はより明確に保健センターの診療機能を「第一次診療」
として位置づけ、専門的かつ高度の医療については、信頼できる地域医療機関との提携関
係を作り、学生を積極的に受け入れてもらうべきであろう。
このことは、先述したように、学内における第一次救護活動の受け皿を地域の救急シス
テムに期待し、迅速かつ的確に受け入れる体制を確立することと軌を一にするものである。
要するに、大学の限りある財政的、人的資源で対応しきれぬ問題については、地域社会や
行政と連携して、効果的な医療サービスシステムを作って行くべきである。
D
学生への診療費負担軽減と診療内容の充実
本学では、保健センターで診療(医科・歯科)を受ける教職員個人の診療費負担は中央大
学健康保険組合と学校法人中央大学との診療契約により、無料(健康保険組合8割、大学2
割の負担)扱いとなっている。
しかし、学生については、保健センターが「保険医療機関」でないため「健康保険」を
利用することができず診察以外は「一部負担又は実費」となっており、学内診療での医療
費負担においてアンバランスが生じている。
一般には、ほとんどの医療機関が健康保険取り扱いの認可を受けている。保健センター
の医業は、正規の「診療所」として認可を受けているのであるから、大学として「保険医
療機関」としての認可申請を行い、学生の費用負担の軽減を図るとともに、他大学に先ん
じた質の高い健康サービス(診療内容の充実)とバックアップ体制を整える必要があろう。
そのためには、センターにおける医療事務の充実を図らなければならない。
E
保健管理活動を推進する要員の充実
保健管理活動を統括する所長(医師:校医・産業医)は、保健センター所属の専任医師と
し、保健管理業務や診療業務に専念できる体制を講ずるべきであり、業務全体が統括しや
すいように業務組織を改善すべきである。また、けが等での利用者が多いことから外科(整
形外科)医等の確保が望まれる。
保健管理活動において、主要な要員となる保健婦については、医療専門職として意欲的
かつ継続的に保健管理活動に従事できる勤務条件を確保するとともに適切な人員配置を図
857
る必要がある。また、現在看護婦に適用されている常勤嘱託制度は、現場における職務内
容と責任に照らして改廃し、専任化していくべきである。また、生活環境の変化(生活習慣
病の低年齢化)から新たに、栄養管理、栄養相談のための要員として、栄養士を配置するこ
とも必要である。
今後、保健活動を充実させるには保健センターの業務を改善し、
「恒常的かつ主要な業務
領域」と「臨時的・補助的業務領域」の区分を明確にして、前者の領域を担当する医療専
門職の定員を専任として確保しなければならない。同時に医療専門職の処遇制度と研修制
度を体系的に整備して、職務への意欲を自ら高めていけるように処遇しなければならない。
F
保健管理施設の整備
保健管理活動を一層充実させていくためには、活動を保障する施設の整備が不可欠の条
件である。
a.常設施設としては、問診や個人面談およびグループ指導等が可能な健康相談室、グル
ープ指導室などを設ける必要がある。特に後楽園キャンパスにおいては男女を分けて収容
する休養室(救護室)が必要である。
b.臨時施設としては、現在「学生健康診断」時に学部の大教室並びに一般教室を臨時借
用して実施している。このために、新年度の授業開始に支障を生じることのないよう4月
初旬のガイダンス期間中に短期集中的に実施しているが、学部行事等の関係から借用にあ
たっては問題が生じている。今後、教室を臨時に健康診断会場に転用するような対処方法
では限界がある。
この際、学生生活における「健康サービス」の観点から多摩キャンパスにおいては、新
設される「学生生活関連新棟」の一部を一定期間借用して、また、後楽園キャンパスにお
いては「新棟」の一部を一定期間借用して「学生定期健康診断会場」として使用する方法
が考えられる。
G
市ヶ谷キャンパスへの対応
市ヶ谷キャンパスにおける専門大学院開設にあたっては、健康管理機能(保健センター分
室)を設置することが決定されている。
このことから、今後は三キャンパス(多摩・後楽園・市ヶ谷)で業務を行うことになり、
大学として学生に対する健康管理責任は増大してくる。今後、現在の保健センター体制に
ついて見直しを図っていかなければならない。
H
今後の健康管理体制について
学生の健康管理は大学にとって重要な課題である。社会情勢の変化に対応するためにも、
本学の将来計画を支援していくためにも、これからの保健センターは、従来からの業務体
制を改善し、初期診療から疾病予防へ、さらに健康増進へと発展する保健活動こそ組織の
主目標とし、文字通りその名にふさわしい役割と機能を備えた新たな「健康管理体制」を
整えていくべきである。
3.就職指導
【現状の説明】
本学の学生が大学で学んだことを活かして、自分の適性にあった分野で社会に貢献でき
858 第5章 教育研究支援
るよう情報の収集・整理・提供、就職指導行事の開催、学生との個別面談等により学生の
進路・就職支援を行っている。学部3年次以上および大学院学生を中心に支援しているが、
近年、既卒者の相談も増加している。
就職部は、就職課(多摩キャンパスおよび駿河台記念館)で文系学部の学生を、理工学部
就職課(後楽園キャンパス)で理工学部の学生の進路・就職支援を担当している。
求人や就職活動について文系と理工系では相違点が多いため、各課でそれぞれ適宜指導
しているが、一部の就職関連行事の協働や情報交換を行っている。
全学組織としての就職委員会は設置していないが、就職担当学部長を中心に各学部との
連携を図っている。
(1)就職相談および就職指導
<就職課>
採用形態の多様化にともない、現在の就職相談業務は学生本人の特性や潜在能力を引き
出し、その能力を生かした職業選択を行えるように導いていくカウンセリングが中心とな
っている。
就職相談は学生と就職部専任職員との1対1での対面による個人面談形式を基本として
いる。専任職員は部長以下全員が個人面談を担当する。学生が相談者を指定することも可
能である。なるべく多くの学生と面談を行えるよう、相談は一人1回 30 分を基本とし、す
べて面談希望当日に時間を指定して予約を受け付けている。
文系学部の就職については学内選考をともなう学校推薦は行っていないため、指導は就
職活動上の様々な場面でのアドバイスが中心となる。従って各種行事を通じて行っている
全体向けの内容を踏まえた上で、個人の就職観を考慮しながら各々が最適な進路選択が可
能となる指導を心がけている。
なお、就職に対する基礎知識や活動中に起こる疑問・質問に対してアドバイスできる内
容を網羅した「就職の手引き」やレジュメを作成し、就職活動を行う学生全員に配布を行
っている。
文科系大学院学生に限定された求人は少なく、ほとんどが学部学生と同様の就職活動を
行うこととなる。そのため、大学院学生に対する相談および指導も、基本的には学部学生
と同じ対応をとっているが、例年具体的な就職活動に入る時期となる 11∼12 月に大学院事
務室と協力し、大学院学生向けの就職ガイダンスを実施している。
<理工学部就職課>
近年、学校推薦制度が志望企業の内定を保証するものでなくなり、理工系の就職活動も
文系同様「自由応募」が中心となっている。企業の採用試験は学問の専門性のみならず人
物評価を重視する傾向が見られる。さらに加え、事業所マッチング、OB選考等、理工系
は特有の採用方法を取る企業が増えてきている。
大学院学生への指導対応については、学部生以上に専門性を重んじ、製造業を中心に専
門知識を生かした選択を行うように適切な情報提供ならびに指導を行っている。
また、理工学部には各学科教員からなる「就職委員会」が設置され、理工学部就職課と
の連携によりきめ細かな学生指導が行われている。
(2)就職指導行事
<就 職 課>
859
就職ガイダンス:年4回実施(7・10・11・1月)。就職適性検査:年2回実施(9・10
月)。SPI模試・経済常識試験:各1回実施。就職活動体験報告会:秋季に実施。学内企
業セミナー:2∼3月に実施。女子学生就職準備講座(女子学生ガイダンス)
:秋季に実施。
公務員ガイダンス:秋季に実施。公務員受験希望者対象。教員による講演。公務員試験制
度説明会:春・秋季に実施。国家公務員Ⅰ種受験者・OB 懇談会:5月に実施。業界研究
会:秋季に実施。合宿就職セミナー:年1回冬季実施。日帰り就職セミナー:年1回冬季
実施。マスコミガイダンス:年1回春期実施。U ターンガイダンス:年1回冬季実施。マ
スコミセミナー:年2回秋季実施。
〈就職部主催ではないが、協力している行事〉
ウイング(女性白門会):年1回実施。アナウンサーセミナー(民放現役アナウンサー):
年数回実施。就職業界研究会(学生):年1回実施。外国人留学生ガイダンス(国際交流セン
ター):年1回実施。派遣留学生(交換・認定)ガイダンス(国際交流センター):年1回実施。
大学院就職ガイダンス(大学院事務室):年1回実施。
<理工学部就職課>
理工学部では、10 月から翌年4月にかけてさまざまな指導行事を実施している。具体的
には、① 就職活動のポイントとなる時期に実施する就職ガイダンス(3回)、② 志望業界
選択の一助としての業界研究会(9業界)、③ 就職内定者による体験報告会(19 回)、④ 職
種選択の一助となる適性検査・筆記試験対策としてのSPI模試(各1回)、⑤ 現場を知る
ための工場見学会(3回)、⑥ 採用試験の第一歩といえる企業研究会(112 社)、⑦ 履歴書
の書き方、面接マナーなど実践指導をする講演会(4回)、⑧ 面接対策としての模擬面接セ
ミナー(2回)などである。
(3)各種講座
ⅰ
公務員講座
公務員試験に出題される科目のうち、法律、経済の専門科目を中心とした講義中心の講
座(有料)を前期、後期に分け開講。講師はすべて本学の専任教員。各学部から選出された
教員で構成される公務員講座運営委員会により運営されている。(委員会の事務所管は就職
部)2000 年は前期6科目、後期3科目を開設した。
理工学部では学生からの要望が多い公務員講座を開講している。土木工学科教員の指導
のもと、国家公務員Ⅰ種試験合格者の大学院学生を中心に、集中講義と過去問題による模
擬試験とを実施して実践的に実力が付くように進められている。全学科対象に行われてい
るが、特に土木工学科は専門について、徹底した指導がなされている。
ⅱ
マスコミ講座
現役のマスコミ関係者およびマスコミ出身の講師による講座。作文対策、時事英語など。
講師ごとに講座を設け、通年または前後期で実施。
ⅲ
教職講座
以前は自由参加の「教職ガイダンス」という名称で行っていたが(無料)、1999 年度
(1998.10∼1999.5)から有料の講座形式をとっている。講師は本学OB2名に依頼し、教員
採用試験合格を目指し、年 12 回の講座を低廉な講習料で行っている。
(4)企業情報の収集
通常の求人依頼については、2月に採用または求人実績のある企業を中心に約 15,000
860 第5章 教育研究支援
社に対し所定求人票を送付している。それ以外でも請求があれば随時求人票を送付してい
る。また所定以外の様式であっても文書で受領した求人については同様に受け付けている。
それらすべてを含め、求人数は約 7,500 社である。(2000 年度)
求人開拓としては例年 12 月上旬に学長招待による首都圏を中心とする企業(約 1,000 社
の採用担当者と大学関係者との情報交換会を開催している。理工学部就職課ではこれとは
別に3月に採用担当者と就職担当教職員との懇談会を行っている。
また、例年 10 月から 11 月にかけて全国で開催している就職懇談会の際に、それぞれの
地域の企業を訪問し、情報交換並びに求人開拓を行っている。それに加え理工学部就職課
では翌年2月までの間に、首都圏の企業を訪問し情報交換を行っている。
大学職業指導研究会をはじめ、企業や媒体誌などが主催する情報交換会等にも極力参加
し、情報交換・求人依頼を行っている。
(5)インターンシップ
<就 職 課>
1999 年度よりアカデミック・プログラム(単位認定あり)以外のものを、キャリアデザイ
ン・プログラムと称し、就職部が窓口となって行政、NPO、企業等の連携をはかりなが
ら実施・推進している。毎年、夏期の実施に向けて、インターンシップガイダンス・パネ
ルディスカッション(5月中旬)、インターンシップセミナー(6月上旬)、個別相談(随時)、
インターンシップ体験報告会 10 下旬)などを実施している。
<理工学部就職課>
2000 年度より理工学部就職課を窓口とする「理工学部・大学院インターンシップ制度」
を開始し、夏休み期間中、8企業に 11 名の学生がインターシップに参加し、その成果報告
会として座談会を開催した。また、初年度であるので、状況把握のためにインターンシッ
プを実施している企業の担当者を招集しヒアリングを行った。
(6)資料収集および統計・調査
就職課、理工学部就職課とも事務室と資料室を設け、それぞれで各種の資料を自由に閲
覧できるようにしている。
〔備付け資料の種類と内容〕
ⅰ
事務室
a
求人申込書ファイル
企業名 50 音順、業種別・都道府県別の各索引を利用。
b
公務員ファイル
国家公務員・地方公務員・警察官・消防官など案内を詳細にファイル。
c
特殊ファイル
教員・特殊法人・財団法人・非営利団体・法律・税理士事務所などをファイル。
d
セミナーファイル
業種ごとに最新の企業のセミナー案内をファイル。
e
OB名簿ファイル
企業からいただいたOB名簿を企業の 50 音順にファイル。事務室内だけの管理。
f
就職活動体験記
毎年、就職活動を終えた学生から後輩へのメッセージとして、内定先の選考状況や、就
861
職活動で感じたことなどを業界ごとの冊子に収めたもの。
g
Uターン関係ファイル
全国で開催する就職懇談会の出張にあわせて収集した情報の県別ファイル。
h
その他図書資料
会社四季報、日経会社情報、会社年鑑、会社職員録、各種就職情報誌(業界本など)をタ
イムリーに並べている。
ⅱ
就職資料室
就職部事務室閉室後、学生が自由に閲覧できるよう設置。
個別企業ファイル(1社1冊のファイル)を上場・未上場企業に分け 50 音順に設置。(約
5,000 社)また、その他の企業は受付順にファイルしている。
(7)広報
広報活動として、教職員・学生と父母・業界企業団体・受験生・学員・一般などの対象
ごとに必要な就職情報を提供している。具体的には、就職部ホームページ作成、
「就職の手
引き」「CCR(就職部だより)」、「就職状況概要」など印刷物の発行、大学誌「草のみど
り」や「Hakumonちゅうおう」、「大学案内」、「学員時報」への就職情報掲載の他、
学内外からの資料提供依頼への回答や、マスコミ対応等である。
本学のホームページは、担当者が仕事の合間に作っている現状である。就職部宛のメー
ルでの問い合わせが増えてきたが、担当者2名のほか、他の課員の協力のもとで処理して
いる。
【点検・評価
長所と問題点】
情報収集・整理・提供では、企業との情報交換を中心に、卒業生の協力を得ながら幅広
い活動を行っている。就職指導行事についても企画・実施・評価の体制を組み、常に改善
を心掛け、学生の要望に即した行事の実施をしている。年々希望者の増加している個別面
談は特に重要視し、研修を通して職員のスキルの向上に努め、また職場連絡会により情報
の共有を図っている。
採用活動の早期化、採用形態の多様化、インターネットの普及等により就職活動が変化
しているなか、これに対応する支援の取り組みを考える必要がある。
文系と理工系の就職指導に合わせた2課体制は、それぞれの雇用環境に応じた指導がで
きる。事務部門のみの就職指導となっていることは、就職に関しては迅速な対応を可能と
するが、学部教育と連携をとった低学年からの就業意識の醸成には難しい面もある。
(1)就職相談および就職指導
<就 職 課>
相談件数は年々増加しており、また一度相談を受けた学生が継続して相談にくるケース
も多く、学生の期待や信頼の大きさを示しているといえる。専任職員全員が学生と面談を
するのも、学生の志向や就職活動の状況を理解するのに有益である。
極力多数の学生と対応するよう心がけているが、時期的に面談の希望に対応しきれない
場合が発生している。特に近年提出書類の記述内容に関する相談が多く、一人の学生との
対応時間が長くなる傾向があり、学生を長時間待たせてしまうこともある。
当日予約とういう方式はできるだけ多くの学生と対応するために採っている手段である
が、通学に時間のかかる学生からは、なかなか面談を受けられないと言う声も出ている。
862 第5章 教育研究支援
<理工学部就職課>
個別相談を中心に理工学部就職課を訪れた学生に対しては、カウンセリングを通してそ
の学生に自己を見つめ直させ、特に本人が自覚していない潜在的な能力を認識させること
で、自己に対する自信と将来の職業に対する目標意識の向上に役に立っている。
近年、学生の就業意識の希薄さ、将来に対する目標の欠如等のため真剣に就職活動に取
り組む学生が少なくなってきている。また、インターネットの発達から容易に企業情報が
得られるため、自らの足で情報収集を行い、経験豊な就職担当者からのアドバイスが必要
ないと考える学生が多くなり、このことが理工学部就職課の利用率低下の一因と考えられ
る。
(2)就職指導行事
<就 職 課>
就職課全体の利用率は年々増加の傾向にあり、就職課に対する認知、信頼や期待は大き
いものがある。また、就職に対する学生の意識は高く、開催の周知の難しい第1回の就職
ガイダンスにも2千数百名の参加者がある。全学生に対する就職者数を考えるとかなりの
参加者数と思えるが、それでもガイダンスがあることを知らない者も少なからずいる。ま
た、行事によって参加数が大きく異なり、実施当初は参加者数が多かったが、時代の変化
とともに関心の少なくなっているものもある。
講演は講師のスキルが学生の満足度を左右するが、幸い講演の内容等はおおむね好評を
得ているようである。職員が講演する場合、将来にわたってプレゼンテーション能力のあ
る人材が配属される保証はなく、また、体系的なスキルアップのプログラムが確立してい
るわけではない。さらに会場の確保など学内の協力に苦慮している面もある。
<理工学部就職課>
年々増加する自由応募の就職活動に対応できるよう、毎年、行事内容を検討し改善して
いるので、この行事スケジュールに従って就職活動を進めた学生の就職活動満足度は高い
ようである。その一方、行事の数が多いので危機感のない学生や時期を逸した学生にとっ
ては消化不良となっている。
(3)各種講座
ⅰ
公務員講座
他大学に比較し公務員志望者が多く、それらのニーズに応えるべく公務員講座を開設し
運営してきた。
文系では一時は述べ年間 900 名以上の受講者があり、多くの合格者を輩出するなど、そ
の役割を十分に果たしてきた。しかし効率的な受験指導を行う専門の予備校が増加したこ
ともあり、1997 年頃より受講者が大きく減少しはじめ、2000 年は開設科目を絞り込み、問
題演習を中心とした内容に変更するなどの対応をとったものの、年間受講者数は延べ 27
名にとどまっている。
本講座を開設した当時は公務員試験のための予備校などの数が少なく、そのほとんどが
都心部に集中するなど本学の学生にとっては利用しにくい環境であったため、学内で受講
できる公務員講座は有益であった。また大学の施設で専任教員が講義を担当することで予
備校に比べ低コストで受講ができる点もメリットであった。
その一方で専任教員による講義は概説的なものとならざるを得ず、また開設クラスが少
863
ないため、受講生間のレベル差が講義の進行を一層難しくしている面もある。そのような
点から現行の講座はより具体的な受験指導を望む学生からは支持を得られなくなっている。
理工学部公務員講座は、公務員試験合格者が直接指導し、熱心に講座を運営しているた
めに、参加者から国家公務員Ⅰ種に毎年多く合格者を輩出している。学内メンバー、特に
大学院学生中心に行っている関係で、必要に応じて講義回数を増やすなど柔軟な対応が取
れている。
しかし、合格者が土木工学科に偏っているため、土木系以外の専門科目に対する指導が
弱くなってしまう傾向がある。また、地道に試験対策を行ってゆかなければならないため、
公務員を志望する学生が減少していることも事実である。
ⅱ
マスコミ講座
本学でのマスコミ志望者は同規模他大学と比べて特段多いわけではない。本講座はマス
コミ志望者の学生に十分対応できる定員を用意できている。講座の内容、講師の人選等は、
毎年検討し改善を重ねてきている。本学の地理的状況を考えると、本講座の設置は、都心
に集中している「マスコミ受験予備校」には通いにくい学生たちのニーズに的確に対応し
ているといえる。また、マスコミ志望者は、一般の就職希望者より活動が早期から始まる
ので、講座を就職部で把握していることは、当年の学生の活動、気質を知る上で参考にな
る。また、受講生から口コミで就職部の支援内容を広めてくれるという点で、就職部の学
生に対する認知に役立っている。講座の内容、講師の人選に関しては、鋭意改善を続ける
必要があるが、他の業務も兼務し、ジョブ・ローテーションで異動する職員が企画・運営
するには、難しい面もある。
ⅲ
教職講座
2000 年度(1999.10∼2000.5)については 37 名の受講生がおり、うち5名が卒業と同時
に教員として就職した。
本学には教職事務室があるが、そちらは教員免許状の取得、就職部では就職というよう
に担当が分かれてしまっている。講師を依頼している先生の熱意でなんとか成果をあげて
いるものの、科目ごとに専門の講師をつけることもできない。また、本学にも教職関係の
教授、講師がいるにもかかわらず採用試験の指導にまったく関わっていない。
(4)企業情報の収集
経済情況により変動はあるものの、例年文系で 6,000 社以上、理工系で約 4,500 社から
求人が寄せられており、本学学生に対する企業の期待は大きい。
大学主催の情報交換会は一度に多数の企業と情報交換が可能であるが、時間をかけて話
をすることができず、挨拶程度になってしまうことが多い。また、理工学部企業招待会は、
恒常的に採用している企業 100 社ほどに限定し、採用担当者と就職担当教職員の一同に介
した情報交換会として企業に好評である。
地方の企業については就職懇談会の際に訪問しているが、秋期から年度末にかけては各
種の行事を数多く行っている関係で、首都圏の企業を個別訪問する機会が非常に少なくな
っている。
(5)インターンシップ
<就 職 課>
学生のインターンシップに対するニーズは増加し、就職部の情報提供への期待は大きく、
864 第5章 教育研究支援
インターンシップガイダンスへの参加者も年々増加している。さらに、窓口での相談も急
増し、毎日数名の学生の相談がある。受け入れ数も 1999 年 20 名、2000 年 40 名と確実に
増加している。また、インターンシップを全学的に推進するための学内組織「インターン
シップ連絡会議」(座長
インターンシップ担当学部長)において、学部・大学院のアカデ
ミック・プログラムとキャリアデザイン・プログラムとの連絡調整を行い、担当者間の意
思疎通を図っている。
企業との接点が密な就職部が窓口となることで、企業の依頼に対しダイレクトで受けら
れるほか、独自プログラムにおいて本学の学生の教育にマッチングした受け入れ先(法律事
務所・経理事務所など)を設けることができている。
しかしながら、掲示板の場所・スペースに限界があるため、告知が充分にできていない
点や、一般公募で大学を通さず参加した学生のフォローが十分できていない部分がある。
また今後増大するであろう業務量に対し担当スタッフのマンパワーが絶対的に不足してい
る。
<理工学部就職課>
初年度にもかかわらず大手企業からの受け入れ枠を確保することができ、参加学生の満
足度も高く、受け入れ企業に内定した学生もいた。(2企業2名)
ただし、インターンシップを実施する企業は増えているが公募をする企業が多いため、
今後の受け入れ枠の確保は困難が予想される。また、募集期間が短く広報が行き渡りにく
い場合がある。
(6)資料収集および統計・調査
<就 職 課>
インターネット普及により、容易に企業の情報を見られる環境下にある中、就職部の資
料の価値が問われてきた。そのため、学生のニーズに合った情報提供ツールを豊富に揃え
対応している。しかし、就職部の事務室と資料室が離れた場所にあるため、学生の情報収
集が分断されると同時に資料室の利用指導ができにくい状況にある。
OB情報を初め、企業の情報は豊富に揃っている。しかし、企業からの情報はインター
ネットの利用にともなう紙媒体の提供廃止や、個人情報保護の観点から、OB名簿の未提
供が増加している。さらに、自宅にパソコンを所有している学生が増加したことから、就
職部の利用頻度が低下しているように感じる。また、就職活動の早期化にともない資料を
より早く提供する必要がある。
<理工学部就職課>
企業より送られてきた資料はすみやかに処理するように心がけているが、繁忙期におい
ては人的不足により資料整理が遅れがちである。また、近年のインターネットの普及によ
り、企業からの最新資料の送付も少なくなってきているため、情報が最新ではない企業も
ある。
(7)広報
就職部主催の行事日程や、時期に合わせた就職活動の方法をホームページやCCR、大
学誌等を利用して学生に告知している。また、本学の就職状況を企業や受験生等に知って
もらうため、情報誌へのデータ提供や、マスコミのインタビューに答える等のPR活動も
行っている。限られた場所・媒体によるため、周知の情況が把握できていない。
865
インターネットと紙面を利用することで、多くの学生に平等に情報を提供できるのが長
所だが、急遽決定した行事を告知するには紙面は不適当に思われる。ホームページに関し
ては、内部で作成しているためリアルタイムで更新できるというメリットがある反面、学
生相談等を優先させるので逆に更新が遅れることもある。メールに関しては回答に時間が
かかることが多く、今後サブ業務としてこなしていくには限界があると思われる。
【将来の改善・改革に向けた方策】
学生が望む道に進むためには、適切な情報が不可欠である。企業とは従来以上に情報交
換を密接にし、本学の情報を提供することで理解を深めてもらうと同時に、企業情報の収
集に力を注いで学生への情報提供の強化を図る必要がある。学生には、大学生活の目的意
識の確認、将来への生活設計の確立、就職意識の醸成等に重点を置き、低学年も対象にし
た進路・就職支援の拡充を検討している。このために、就職の斡旋に限らずインターンシ
ップ、教育環境も視野に入れた新たな支援体制の構築が求められている。
従来卒業後の進路は就職が大多数を占めていたが、近年多様な選択肢の中から進路を決
めるようになり、就職に限らず進路全般を含めた指導が必要となってきている。今後は、
低学年からの進路・就職指導や個別相談を今まで以上に充実させる指導体制の確立、組織
の見直しが検討課題である。
(1)就職相談および就職指導
個別相談は就職部の最も重要な業務である。そこに最大のエネルギーが注げるよう常に
就職部全体の業務を見直すことが必要である。また、部員間で情報を共有し均質な指導が
できるよう、積極的な情報収集や情報システムの整備・活用が必要である。特に最近進路
について安直に決めてしまう学生が多く、組織的に低学年から進路についての意識を養う
指導(インターンシップ含む)をするための体制作りが急務となる。文科系大学院学生につ
いては、高度専門職業に対する指導等の強化が望まれる。
また、相談業務が複雑かつ多様化してくると、カウンセリング技術を習得したセラピス
トの育成が求められ、かつ、
「企業情報」、
「業種・職種」、
「進路」に特化した相談員の配置
が必要となると思われる。
さらに、学部教育との連携を図り、進路・就職の支援が教職員で行われる組織が必要で
ある。中でも理工学部は、理工系特有な技術をともなう多種多様な採用形態に対応するた
めに、「理工学部就職委員会」を規定化し、充実を図ることを検討する時期にきている。
(2)就職指導行事
全学的な就職に対する関心を醸成し、就職指導行事に対する理解、認識を高めることが
必要である。また、低学年からのキャリアガイダンスを行い、早い時期から職業観の醸成
をはかる必要がある。
学生の相談が爆発的に増加していることからくるマンパワーの不足を考え、参加者の少
ない行事は大胆に割愛し、ニーズのある行事や相談に注力するなど行事の改廃を積極的に
行う。また、講演などは職員個人のスキルに左右される部分が大きいので、プレゼンテー
ション能力や業界知識などの向上のための体系的な研修制度とCDPの確立が求められる。
(3)各種講座
ⅰ
公務員講座
<就 職 課>
866 第5章 教育研究支援
公務員試験が難度を高める中で、筆記試験対策の学習は大学の講義とは別に必要である
が、その部分は受験指導を専門とする機関を活用することが効率的である。
その一方で近年公務員試験も面接や論文などを重視する傾向になっており、職務内容の
充分な理解がないと高い評価を得られなくなっている。そのため今後は現職公務員などO
Bの協力を得ながら、各種公務員の職務内容やその魅力などを学生に伝えるガイダンスや、
OBとの交流会の開催など公務員志望者のモチベーションを高めることに注力することが
必要である。
<理工学部就職課>
国家公務員Ⅰ種の合格者を増やすためには、公務員講座の受講者の裾野を広げる必要が
ある。その方策としては、全学科対象に、公務員に対する意識を高め、土木工学科中心の
講座であるかのような色彩を払拭するために、基礎科目の充実を図る必要がある。また、
公務員試験の受験対策として、公務員受験専門校からの講師派遣も検討する必要がある。
ⅱ
マスコミ講座
受験指導講座の運営管理は、就職指導とは切り離し、それらを専門とする機関がとりま
とめて管轄することが検討課題である。なぜならば、各講座は1∼2年生から参加するな
どの早い時期からの準備なくしては成果をあげることが難しいこと。第二に、マスコミ受
験者等は他大生とともに学ぶ環境が理想的であること。第三に純粋に受験対策という意味
では、専門機関の指導方法を導入した方が体系的な講座が行える場合があることなどがあ
げられる。
ⅲ
教職講座
教員免許状の制度も変わっていく中で、教職に就くことを望む者の要望に応えるために
は教職課程を提供する側と、就職指導をする側の連携が不可欠である。そのためには現状
では予算・人員とも不足していると思われる。今後の方針を明確にし、大学ならではの講
座にしていく必要がある。
(4)企業情報の収集
大手企業を中心に個別の大学に対しての求人票送付は行わず、インターネット上での採
用情報開示のみとするところが増えている。インターネット上での情報を収集する方策が
必要である。
企業訪問が地方企業に偏っているが、実際は首都圏の企業へ就職する学生が多いので、
首都圏企業への訪問に力を入れる必要がある。
(5)インターンシップ
企業独自で行われているインターンシップ情報を広く収集するとともに、就職部が個別
に契約するプログラムを拡大していきたい。それにともない広報活動の徹底、学内機関の
さらなる協力体制の強化をはかる必要がある。
また通年で実施し、業務の連続性を拡大するために、就職斡旋業務と低学年指導を含め
たインターンシップ業務を総合的に行うことが望ましい。
(6)資料収集および統計・調査
スペースと場所の問題を解決し、学生の利用しやすい環境を早期に整えたい。また、情
報の収集・提供をより有効に行えるよう 2001 年度より稼働する就職システムの改良をはか
っていきたい。
867
近年はほとんどの企業が、インターネット上にて、会社情報および採用情報を提供して
いる。当面は資料室とインターネット上の情報との併用になるが、今後はインターネット
による情報提供が主になってくると思われる。大学が独自に収集した情報をいかに迅速に
学生に提供できるかが課題になる。
(7)広報
今後インターネットへの比重が高まるにつれて学生相談、日常業務の合間に行うことが
質的にも量的にも難しくなってくると思われる。日常業務を行っていないと広報的な相談
に答えられなくなるが、担当者についてはその比重を減らし、インターネット上での広報
にも力を入れていかないと大学としての評価にも影響が出ると思われる。
また、他の部課室の協力を得ながら、学生への周知方法の充実を図りたい。
4.課外活動
大学の課外生活・課外活動を担当する部署として「学生部」と「学友会」がある。
学生部は課外生活・教養を担当し、学生個人あるいは大学へ未登録の学生有志団体を対
象としている。学友会は課外活動を担当し、大学へ登録した学生団体およびそれら団体を
取りまとめる連盟を対象としている。
「学生部」は、学生自治会が組織されていた時代はその対応に殆どのエネルギーを注い
でいたが、現在は学生自治会が存在しないため、学生が実施する「白門祭(大学祭)」のサ
ポート、学生食堂・セミナーハウスの管理および課外教育プログラム(各種スポーツイベ
ント、セミナー、講演会等の文化行事)の企画・実施を担当している。学生部の事務は、
多摩キャンパスでは学生課、厚生課、学生相談課が、後楽園キャンパスでは理工学部学生
生活課が担当している。
一方、
「学友会」は全学部学生を正会員、教職員を特別会員とし、学生が部会活動(広く
はサークル活動)の自主的運営を行うのを促進・援助するための組織である。学友会費の
予算・決算、学友会企画の実施、各部会の設立・併合・停止および廃止等の他、サークル
棟の管理を主に担当している。学友会の事務は、多摩キャンパスの学友会事務室が担当し
ており、後楽園キャンパスには学友会理工学部分室を設置している。
なお、学生の課外活動の中でニーズの高い体育施設の利用については、上述の学生部、
学友会のほか、正課授業、地域住民への施設開放などさまざまな利用形態がある。体育施
設を効率的に利用できるように「体育施設運営センター」で調整するとともに利用時の安
全面についても支援している。
<学生部>
【現状の説明】
学生部は、学生部規程に基づき学生の助育の任にあたっている。学生部には、学生部長、
各学部教授会から選出された学生部委員 12 名と学生部事務室職員5名で構成される学生
部委員会が置かれている。学生部委員の任期は2年である。学生部は、委員会業務を円滑
に行うために部長の職務を代行する学生部長代行を委員から互選し、多摩キャンパスに1
名、後楽園(理工学部)キャンパスに1名置いている。学生部委員会は学生部長が招集し、
学部教授会の定める基本方針に従い具体的な助育方針を審議決定する。
868 第5章 教育研究支援
学生部は、学生のさまざまな課外活動を支援し、各種の要望に対応するため学生部委員
会に小委員会を設けている。また、学生課にこれに即応する担当を設け、任務を分担して
いる。
1.学生部委員会は、隔週で開催し各小委員会で検討、審議した課外教育プログラム、ま
た、学園生活全般にわたる諸問題について、教授会の定める基本方針に従い、具体的な助
育方針を審議決定する。
2.小委員会の構成は次のとおりである。
① 大学祭関係小委員会・委員6名、事務3名
委員6名、事務3名
② 学生生活関連施設建設関係小委員会・
③ セミナー・文化行事小委員会・委員5名、事務3名
ティア関係小委員会・委員5名、事務2名
係小委員会兼務)委員6名、事務2名
④ ボラン
⑤ キャンパス環境整備小委員会(交通安全関
⑥ 危機管理問題小委員会・委員5名、事務2名
学生部改革検討小委員会・委員6名、事務5名
⑦
⑧ オピニオン・カード担当・委員2名、
事務2名
3.事務部門の構成は次のとおりである。
① 学生部事務室・職員数1名
生相談課・職員数4名
② 学生課・職員数7名 ③ 厚生課・職員数6名 ④ 学
⑤理工学部学生生活課・職員数4名。
4.課外教育プログラムは次のとおりである。
① スポーツ施設貸出 ② スポーツ大会 ③ ウォーキングラリー ④ 冬季セミナー ⑤
夏季セミナー
ンサート
⑥ 古典芸能鑑賞会
⑩ オートバイ無料点検等
⑦ 茶道・生け花講習会
⑧ 中大講演会
⑨ 中大コ
⑪ 白門祭実行委員会への支援
上記、課外教育プログラムに対する学生対応と、すべての事務は学生課で行っている(資
料収集、企画立案、実施交渉等)。
5.セミナーハウスについて
① 野尻湖セミナーハウス
② 春日山荘(本棟・別棟)
③ 富浦臨海寮の3カ所4棟が学
生専用のセミナーハウスとして、このほか5ヵ所の民間施設と夏・春に契約し課外活動・
ゼミ等の利用に供している。
【点検・評価】
1.スポーツ施設の貸出、多摩キャンパスは、ソフトボールコート2面、テニス兼バスケ
ットボールコート3面、屋外バレーボールコート3面、ミニサッカーコート2面、屋内バ
レーボールーコート1面、バドミントンコート1面、卓球台6面。後楽園キャンパスは、
屋外テニスコート3面、屋内バスケットボールコート、バレーボールコート、バドミント
ンコート、ミニサッカーコート、卓球等を授業実施期間中および祝祭日、春・夏季休業中
の指定期間日に一般学生に対し貸出を行っている。この施設は、学生の利用頻度が高く、
より多くの学生に利用の機会を与えるため1グループ、1日、1種目、1時限の申し込み
とし、抽選で利用者を決めている。このような一般学生に対するスポーツ施設の貸出は他
大学にあまり例がないため、学生から高い評価を受けている。
2.スポーツ大会、ウォーキングラリーの実施にあたっては、学生スタッフによる実行委
員会に実施要領、募集要項、実行計画等を検討させ、事務スタッフと調整をはかり、セミ
ナー・文化行事小委員会で審議、検討し、学生部委員会の承認を経て実施している。多く
の学生部行事の中で学生が直接企画、立案、実施にかかわっているのは、この2行事であ
869
る。
3.オートバイ無料点検は、交通事故防止キャンペーンの一環として、全国交通安全週間
に合わせ、多摩、後楽園キャンパスとも春・秋季の2回各3日間実施している。これは、
オートバイで通学している学生が多く、交通事故防止の観点から積極的に実施している。
4.白門祭(大学祭)実行委員会は、春に新入生歓迎白門祭(スポーツ大会)、秋に白門祭を
実施するために学生が組織する委員会であり一年を通し活動している。
大学(学生部)は、白門祭実行委員会の実績を評価し、1999 年秋、大学祭主催団体として
白門祭実行委員会を正式に公認した。白門祭実行委員会は、多摩キャンパスと後楽園キャ
ンパスに委員会組織があり、公認したのは多摩キャンパスの白門祭実行委員会である。後
楽園キャンパスの「理工白門祭実行委員会」は公認化の意志を示していない。学生部は、
公認、未公認の区別無く白門祭を実施できるよう大学祭関係小委員会が、学生部委員会の
承認を経て対応にあたっている。
5.その他の課外教育プログラムは、関係小委員会メンバーと事務スタッフが学園生活に
おける学生の成長の一助となるよう企画、立案し、学生部委員会の承認を経て実施してい
る。
6.オピニオン・カードは、1982 年度より実施している制度である。学生自治会が存在し
ない現状のもとで、オピニオンボックスを設置し広く学生の声を集めるための制度である。
オピニオン・カードは、月に2度回収しオピニオン担当者会議を開き投書内容を整理検討
し、学内関係機関に回答依頼をするとともに学生部委員会に提起する。
学内関係機関からの回答は、学生部委員会で報告し回答希望のある学生に担当委員が口
頭で回答する。また、投書と回答はすべて学長、理事長に報告される。
7.学生部委員会は、オピニオン・カードのほかに直接対応を望む学生のために、あらか
じめ決められた曜日と時間に教員の担当委員を配置し対応にあたっている。
8.野尻湖セミナーハウスは、2000 年6月に竣工し7月から利用を開始した。
春日山荘本棟は築 40 年を経過し老朽化が著しい。春日山荘別棟および富浦臨海寮も築約
30 年を経過し傷みが目立ってきている。
【長所と問題点】
1.一般学生専用貸出スポーツ施設を備えているのは本学の特徴であり、他大学ではあま
り例をみない課外活動支援である。現実に利用希望者は増加傾向にある。しかし、施設の
増設は望めない。そのような状況の中、多摩キャンパスではスポーツ施設利用内規を作成
しさまざまな要望に対応しているが、利用内規を超える使用要望も多く出されている。
2.スポーツ大会、ウォーキングラリーは、学生スタッフが主体となって実施している。
セミナー・文化行事小委員会メンバーおよび事務スタッフは、相談、支援にあたっている。
しかし、近年、実行委員会を組織する学生スタッフの後継者不足が懸念される。
3.オートバイの無料点検は、交通事故防止の観点から整備の専門家を待機させ実施して
いる。しかし、オートバイ通学者数に比し点検を受ける数が少ない。また、その中の多く
が何らかの整備不良を指摘されている。従って積極的に点検を受ける環境作りが急務であ
る。
4.白門祭(大学祭)は、祭期間中の泥酔者問題の解決が最重要課題であったが、泥酔事故
防止の観点から 2001 年度開催の白門祭(大学祭)は大学構内において祭り準備日および開
870 第5章 教育研究支援
催期間中を含め全学禁酒措置を決定した。
5.各セミナーハウスは春・夏季休業中に利用者が集中するため、利用できない学生が少
なからず生じている。春日山荘本棟の改築が可能なのか、また、春日山荘別棟は、学生の
ニーズに合わせた小人数用の部屋に大広間を改修することができるのかどうかの検討が急
務である。さらに富浦臨海寮は設備関係が老朽化しており、改修あるいは新設が必要であ
る。
【将来の改善・改革に向けた方策】
1.多摩キャンパスの一般学生専用貸出スポーツ施設利用内規では対応しえない利用要望
に対しては、一般学生用フィールド・第二体育館アリーナ特別使用基準を設け利用を認め
ている。この基準を超える申請についてはキャンパス環境整備小委員会で検討し、学生部
委員会の承認を経て利用を認めている。
2.一般学生専用貸出スポーツ施設の貸出状況は飽和状態にある。緩和するためには、正
課体育授業および体育連盟が使用する体育施設の未使用時間帯利用について、体育施設運
営委員会に開放の検討を依頼しなければならない。
3.スポーツ大会、ウォーキングラリー以外にも学生がかかわることのできる行事につい
ては、学生スタッフを積極的に参加させていきたい。現行行事の見直し、行事企画等に参
画したい学生スタッフの募集方法、情報提供等について、学生部改革検討小委員会メンバ
ーおよび事務スタッフとモニター学生が懇談し改善に向け意見交換をしている。これらの
課外教育プログラムを学生の自主的な運営と参画に結びつけ、学生の学園生活での活性化
へつなげたい。
4.春・夏季休業中に利用者がセミナーハウスに集中するため、民間のホテル等、5カ所
と契約し利用者の要望に対応しているが、需要過多の状況である。一層のサービス向上と
供給確保のため現在契約しているホテル等の見直しと、新たな開拓が必要である。
セミナーハウスについては、築 40 年を経た春日山荘(本棟・別棟)、富浦臨海寮の建て替
えが必要である。このことは、学生部の数年来の要望である。新たな場所での建築も視野
に入れて検討していく必要がある。
<学友会>
【現状の説明】
中央大学学友会は、各学部の学生を正会員とする部会活動(広くはサークル活動)を促
進・援助するための組織である。1911 年の創設以来、学生の自主的運営を本旨とするその
理念は今日まで継承されている。学友会は独自の規約「中央大学学友会規約(1989 年 12 月
に全部改正・施行)」を持ち、その前文には「本会は、中央大学学生が自主的な活動によっ
て学術、文化、体育の向上発展を図り、会員の人間性を深めより高い文化を築き社会の発
展に資することを目的としてこの規約を定める。」と記されている。
①
組織・運営
1)
会
員
学友会会員は、正会員(本学学部学生)と特別会員(本学の役員、教授、助教授、専任講師
および主事以上の職員ならびに各部会の監督)により構成されている。
2)
役
員
871
学友会会長は学長があたる。他の役員については次の通りである。
役 員 名
会
任
長
務
資
格
会務の総理
中央大学学長
副会長
会長事故ある時の代行
中央委員会委員である特別会員中の教授
参
会長を補佐し会務に参与
常任理事、学部長、学生部長、事務局長
総務部長
各会議の議決に従い会務を司る
中央委員会委員である特別会員中の教授
総務部副部長
部長を補佐し事故あるとき代行
監査部長
毎年5月定例監査、随時検査
与
監査部副部長
〃
特別会員
〃
〃
連盟会長
連盟の会務の掌理
教授
部会長
部会の会務の掌理
教授、助教授、専任講師、参与、参事、副参事
顧
問
部会の会務に助言し協力
教授、助教授、専任講師、参与、参事、副参事主事
幹
事
総務部長の指示に従い事務処理
学友会事務長
幹事補佐
幹事を補佐
学友会事務室職員
監
技術の指導、人格形成への助言
(特に定めはない)
連盟委員長
(各連盟規約による)
正会員
連盟委員
(各連盟規約による)
〃
3)
督
機
関
学友会には、中央委員会を最高決議機関として、次の会議がおかれている。
会
議
中央委員会
名
構
成
事
項
正副会長、参与、総務部正副 最高議決機関で、本会の予算・決算および
回
数
年4回
部長、7連盟会長、監査部長 企画ならびに各部会の設立・併合・停止お
、選任中央委員会委員(特別 よび廃止等本会の重要事項を審議決定。
会員)
、幹事、幹事補佐、選任
年度内第1
中央委員会委員(正会員)
回目の中央
部会長会
各部会長
特別会員の中から選任中央委員会委員(特 委員会前に
別会員)を選出。
連絡協議会
総務部正副部長、幹事、7連 各連盟および未公認団体に関する中央委員
盟会長、各連盟正副委員長
開催
毎月1回
会の議題提出、予算案・予備費支出に関す
る決定、その他重要事項を協議。
連盟会議
各連盟正副委員長
連絡協議会の議題提出、各連盟および未公
毎月1回
認団体間の調整その他重要事項を協議。
公認申請等に関す 各連盟代表2名、連盟会議正 部会の設立、連盟への加入・公認、部会の
る審議会
副議長
毎月1回
併合・停止および廃止等に関する重要事項
を審議。
インターネット運 各連盟代表2名
本会においてネットワークにかかわる事業
営委員会
。
適
時
正会員による自主的運営の基本的な流れは、連盟会議を起点としており、具体的には次
872 第5章 教育研究支援
の通りである。
連盟会議で提起・調整・協議・承認された事項が、連絡協議会を経て中央委員会で審議・
決定される。
公認申請等に関する審議会およびインターネット運営委員会の審議結果は連盟会議に報
告され、その部会の属すべき連盟の承認を得て、連絡協議会を経て中央委員会で審議・決
定される。
4)
部
会
公認部会は学術連盟(11 部会)、文化連盟(40 部会)、学芸連盟(37 部会)体育連盟(47 部会)、
体育同好会連盟(36 部会)学友連盟(7 部会)、理工連盟(25 部会)の 203 部会が7連盟に所
属して活動している。
公認部会とは別に、部会の設立申請を受理され、その4年後に連盟に加入することが期
待されている未公認部会(26 部会)がある。(部会数は 2001 年 10 月 23 日現在)
部会の設立は、10 人以上の発起人により部会設立申請書を作成し、学友会総務部を経由
して公認申請等に関する審議会に提出する。そして、学友会に加入が認められれば未公認
部会として活動ができる。加入後4年を経過した後にも継続的に活動し、かつ一定の条件
を満たしている未公認部会は、公認部会としていずれかの連盟に加入を申請することがで
きる。
公認部会には部会長を、未公認部会には顧問を、本学教職員の中から選びおかなければ
ならない。また、各部会は、毎年度始めに「部会活動報告書」を学友会総務部に提出する
ことになっている。学友会は、その報告書により各部会の存続を確認する。
学友会は正会員から納入される年額 10,000 円(一部学生)、3,000 円(二部学生)を財源と
し、各部会へ活動費として予算配分している。
5)
学友会事務室
学友会の事務は、多摩校舎に設置されている学友会事務室が行っている。後楽園校舎で
は、理工学部学生生活課事務室内に理工学部分室を設置し、授業実施期間中は週3日窓口
を開設している。
学友会事務室は、学内の各部課室と連携を取り、部会活動に支障がないよう施設使用、
車輌入構、物品貸与、施設・設備の修繕・修理などの支援のほか、部会活動について相談・
助言というかたちで物心両面に渡って部会活動の支援を行っている。
学友会事務室は通常の助育業務のほか、新入生勧誘時期には、オリエンテーション祭実
行委員会(構成は各連盟)が主催する「オリエンテーション祭」の実施にかかわる支援を行
っている。
また、
「新入生歓迎文化祭」ならびに「白門祭(大学祭)」は学生部主管であるが、その主
催団体である白門祭実行委員会は各連盟を主たる構成団体としていることから、その実施
にも協力している。
②
施設・設備
1)
サークル棟
多摩校舎
学術・文化系部会の活動施設は、本学4号館(サークル棟)が中心で、各連盟委員会室、
各部会室があり、約 250 の部会がここを拠点に活動している。さらに同施設内には、日本
873
の伝統文化を研究する部会が使用する和室・板張室、演劇・舞踏などの練習にも使用でき
る多目的ホール、音楽などの練習に使用する音楽練習室、音楽鑑賞室、放送関係の録音ス
タジオ等がある。この他、サークル別棟Ⅰには音楽研究会各パートが練習をする練習室が、
サークル別棟Ⅲには作陶場、埋蔵文化財の収蔵庫がある。
後楽園校舎
文化系・体育系を含めて約 50 部会が、7号館内のサークル室を活動の中心としている。
2)
体育関係部会の施設
多摩校舎
体育関係部会の活動施設の多くは多摩校地内にあり、教室と練習場が隣接しているので
環境条件に恵まれている。
まず、第1体育館内には相撲、ボクシング、レスリング、剣道とフェンシング、空手、
柔道、重量挙、拳法と合気道の各道場と板張格技場、バスケットボール・ハンドボール・
バレーボール、卓球、バドミントンの各練習コートがある。
また、第1体育館周辺には、50m屋外プール、屋外飛込用プール、弓道場、自動車分解
整備認証工場、航空部格納庫、馬場、ラグビー場がある。
第2体育館内にはエアーライフル射撃場、25m屋内温水プールがある。また、第2体育
館周辺には、陸上競技場、サッカー場、硬式テニスコート、ソフトテニスコート、軟式野
球場、硬式野球場(雨天練習場を含む)、屋外ハンドボールコートの諸施設がある。
後楽園校舎
校地が狭いため施設は十分ではないが、7号館内の格技室、5号館4階アリーナ、屋外
コートを使用して活動している。
③
寮・合宿所
日野市南平(京王線南平駅前)に体育連盟所属の 29 部会の部会員(約 600 名)が入居して
いる南平寮(トレーニングセンターを含む)、八王子市堀之内に硬式野球部合宿所、埼玉県
戸田市に漕艇部合宿所と艇庫、神奈川県葉山町にヨット部合宿所と艇庫、長野県白馬村に
黒菱山小屋がある。
約 600 名の体育連盟学生を収容する南平寮へは、寮監3名(嘱託)、管理人3名(委託)が
常駐し、寮生の日常生活面の面倒を見ている。
南平寮、硬式野球部合宿所、漕艇部合宿所、ヨット部合宿所のそれぞれの生活環境改善
のため各部課室と連携し、施設・設備の修繕・修理等で支援をするとともに、寮・合宿所
の学生に対しての助育を行っている。
【点検・評価
①
長所と問題点】
組織・運営
学生の自主的運営という大原則を堅持しながら、部会活動の支援に特化した学友会は、
本学独自の組織である。学生の自治意識が希薄化する傾向が著しく、1966 年頃以降、昼間
部自治会は存在せず、2000 年 6月に夜間部自治会が解散した状況の中では、課外におけ
る学生自治を担う組織として学友会の存在意義はますます大きくなっている。
1)
会員・役員
学友会は全学部学生を正会員とし、正会員の納める学友会費によってその活動が賄われ
ている。運営面においても、成果の発表・披露の面においても、学生全体に向かって開か
874 第5章 教育研究支援
れたものでなければならないという公開的還元の責務を負っている。これを組織的に保障
するのが上記の各機関であるが、常に問われているのは正会員の自主性と特別会員の理
解・協力である。
2)
機
関
連盟会議、公認申請等に関する審議会、連絡協議会は定例開催され、適切に機能してい
る。しかし、連絡協議会は特別会員(連盟会長)の出席状況が芳しくないこと、また中央委
員会については規約改正の議決要件を満たしていないことがあったなどの問題がある。
これらの議決機関の意義と、その委員の責務について再認識を促す必要がある。
3)
部
会
学内外で活発に部会活動を展開している部会は少なからずあり、盛況といえる。
基本的に学生が予算・決算の実質審議をしているが、毎年5月に行われる監査部の厳正
な会計検査では、全体として健全・公正な運営がなされていると認められている。
なお、連盟への大枠予算配分、連盟内での各部会への個別予算配分において、その配分
率が一定化する傾向が見られる。
4)
学友会事務室
学友会事務室は、学内の各部課室と連携を取り、臨機応変に対応して部会活動を支援し
ている。
②
施設・設備
1)
サークル棟
4号館(サークル棟)が狭隘化し、施設は不足している。1996 年より学友会の内部に設置
された「施設拡充小委員会」で新施設(仮称:総合文化会館)について審議され、具体案が
策定・提出された。その後も学生部と共同歩調をとりながら法人との間で継続審議され、
学生案が基本的に尊重されるかたちで新施設建設が実現する運びとなった。
なお、2001 年6月に施設拡充小委員会は「施設運営委員会準備会」と改称し、新施設の
具体的な運営等について検討することとなった。新施設は 2002 年 4 月着工、2003 年 5 月
完成予定である。
2)
体育関係部会の施設
体育施設の多くは体育センターが管轄しているので、学友会は体育センターと連携を取
り、部会活動の保障を図っている。また、一部施設は、部会間で調整し使用している。
施設・設備は、随時、部分的に修繕等をして維持しているが、一部に老朽化が目立ってき
ている。
3)
寮・合宿所
南平寮は 1976 年完成で築 25 年を経過しており、学生のライフスタイルの変化に十分に
対応しているとは言えず、狭隘化もしている。また、寮生自身の環境改善に対する意識が
やや低いようである。
硬式野球部合宿所は 1993 年完成で築8年のため、特に問題はない。
漕艇部合宿所は、1976 年完成で築 25 年を経過しており、修繕と学生の日常管理の良さ
から、比較的状態は良い。艇庫は修繕の必要がある。
ヨット部合宿所・艇庫は 1971 年完成で築 30 年を経過しており、老朽化している。改築・
修繕等を必要とするが、学生の日常管理の強化も必要である。
875
学友会は、今後の寮、合宿所のあり方について検討し、修繕、改築、移転等について具
体的に提案し、法人と折衝する必要がある。
また、寮、合宿所で生活する学生に対しては、具体的に助言、助育してゆく必要がある。
【将来の改善・改革に向けた方策】
これまでの記述から明らかなように、学友会は正会員たる学生の自主的活動・自主的運
営という本体を特別会員(教職員)が組織的に支えるという構造になっている。このユニー
クなサークル・部会活動の体制を形骸化・マンネリ化させないよう(その危険は常にある)、
そして一層充実させるよう絶えず努力することが望まれる。
<体育施設運営センター>
【現状の説明】
多摩移転後、大学体育施設のほとんどが多摩校地に集中したため、体育施設運営センタ
ーを中心とする管理・運営形態がとられた。
「正課体育」
「学友会」
「学生部」
「教職員のサークル活動」等の各々の優先施設を年度ご
とに調整し、体育施設運営委員会に諮って施設利用を決定している。
「正課体育」では、ここ数年体育施設をできる限り多目的に使用できるように改善し、
授業テーマの多様化に対応している(屋外バスケットコートでのテニス・ミニサッカー・ニ
ュースポーツ、屋外バレーコートでのニュースポーツ・ミニサッカー等)。
「課外活動」では、屋外プールの一般開放の期間を2週間から1ヶ月に延長(1998 年度
∼)したり、2001 年度から後期のナイター照明の使用時間を 18 時 05 分まで延長したりす
るなど、利用しやすい環境を整えている。
【点検・評価
長所と問題点】
多摩校地における体育施設は充実していると捉えられているが、ソフト面ではかなり問
題が多い。たとえば、第1体育館の空調の問題は切実な問題である。熱中症等の健康面の
配慮からは、「正課体育」「学友会」を問わず体育館にこそ冷暖房の設備が必須の条件であ
る。
さらに、入学式、卒業式、ホームカミングデーなど大学の重要な式典にも使用する場所
であり、大学を代表する施設のひとつとしての体育館の存在を再考する時期にきている。
また、第1・第2体育館ともに、更衣室、シャワー施設の改善は急務である。
多摩移転後、豊富な体育施設を利用して「正課体育」
「学友会」
「学生部」
「教職員のサー
クル活動」など活発な活動が行われてきた。しかし有効利用という点では、現行の貸与方
法を改善して、フルに利用できるような柔軟な対応を考える必要がある。
こうした近年のニーズに対応した改善が図られている一方で、屋外プール(50m)のよう
に1年間の3/4は休眠している施設も存在している。屋外プールのインドア化を前向き
に検討し、年間を通した利用可能施設に改善することは、あらゆる対象者に有効に還元す
ることにつながるといえる。
さらに、多摩移転後 23 年を経過し老朽化にともなうさまざまな問題がでてきているのが
現状である。
【将来の改善・改革に向けた方策】
貸与方法については、体育施設に隣接した場所に数ヶ所の申請場所を設け、空いている
876 第5章 教育研究支援
時は、いつでも対応できるようにすることなども今後の検討課題である。
体育施設には、できる限りスタンドを設置して、学内で公式試合ができ学生(大学関係者)
が応援できる環境づくりが急務である。
屋外の 50mプールについては、今後インドア化を図り年間を通した利用を可能にするこ
となど、従来とは異なる視点での発想が求められている。
さらに、トレーニングセンターを建設することも急務である。同規模私大のみならず、
多くの大学が大学施設のひとつとしてトレーニングセンターを捉えているのが実情である。
以上の改善に向けた方策を実現するために、
「施設利用・施設改善の見直し」を検討する
ワーキング・グループを体育施設運営委員会の中に常設する必要がある。こうした取り組
みこそ「自己点検・自己評価」の趣旨を生かすものであり、恒常的な成果をあげることに
つながるものといえる。
5.父母への対応(父母連絡会)
【現状の説明】
父母連絡会は、
「大学と子弟の父母との関係を親密にし、相互理解と協力を深め、大学の
使命達成に資すること」を目的に発足した。そして今日ではさらに加えて「我が子の大学
としてだけではなく、父母自身の大学でもあることを会の姿勢としています。」
(
「父母懇談
会の手引き」)
父母連絡会の歴史を見ると、1975 年に大学主催の学術講演会9会場のうち、3会場で初
の父母懇談会を開催する。その後開催会場を増やし続け、また単独開催会場も増え続けた。
1982 年大学と父母間の相互理解と意見交流を行う恒常的な組織をつくるため「父母連絡
会」の設置を検討、試験的に任意加入制の父母連絡会を組織化することで準備を進めた。
1983 年4月に父母連絡会(任意加入制)が発足し、加入者 12,637 名(43%)、年会費 5,000
円であった。この年から地域父母連絡会の結成を呼びかけ賛同した父母に連絡者として協
力を依頼。この年以降全国の主要都市で2年に1回父母懇談会を開催するようになった。
また、6月には機関誌「草のみどり」が創刊され、年4回の発行を続けた。1986 年父母連
絡会発足から4年経ち、全員加入とする方向で見直し案を検討し始めた。
1988 年全員加入となり、現在の全国 54 支部体制が確立し、この年から父母懇談会とは
別に就職懇談会を開催するようになった。また父母連絡会の受託業務と運営のための指導
業務を執行するため学長室に「父母連絡会事務室」が設置された。機関誌「草のみどり」
はこの年より4回から5回となり、1989 年 12 月より毎月発行開始となった。
以上父母連絡会の歴史を簡単に見てみると、その原点は父母懇談会にある。今でも事業
活動としての核は父母懇談会に他ならないが、そのほかにさまざまな事業活動を実施する
ことにより父母へ大学の近況や学生生活の実情をお知らせするとともに、大学との交流や
父母相互の親睦を深められるよう取り組んでいる。
父母連連絡会の主な事業活動は、
(1)父母懇談会の開催
毎年6月から9月にかけて、地域支部と大学との共催により 50 会場で父母懇談会を開催
している。父母懇談会では、大学の近況と学業・学生生活の報告、さらに希望者には個人
877
相談を実施している。毎年、6,000∼7,000 名の在学生父母の参加がある。
(2)進路・就職懇談会の開催
毎年 10 月から 11 月にかけて、39 会場で1∼3年次生の父母を対象に開催している。進
路・就職懇談会は、進路についての考え方、民間企業と公務員等の最新の就職情報を提供
し、さらに希望者には個人相談も実施している。毎年 3,000 名以上の在学生父母の参加が
ある。
(3)機関誌「草のみどり」の発行
大学や学生のさまざまな情報を全国の父母へ伝達する目的で毎月機関誌「草のみどり」
を発行している。具体的な記事の内容は、
①
大学情報(本学の特色、教育方針、大学院・学部の動向、中大フェアー)
②
学生生活情報(日常生活、スポーツ・文化活動、海外留学、メンタルヘルス)
③
就職情報(最新の就職状況、インターンシップ)
④
父母情報(全国各地の支部活動、父母からの寄稿)
⑤
その他の情報(大学からのお知らせ、父母連絡会事務局だより、教養講座)
年に数回編集委員会・編集幹事会を開催し、内容やトピックスについて検討している。
(4)「父母懇談会のてびき」の配布
この小冊子には大学にかかわるあらゆる事項が掲載されており、父母懇談会の会場で配
布するとともに新入生の父母に配布している。
内容は、父母連絡会の紹介から始まり、大学の行事日程、学費、学部紹介、成績原簿の
見方、大学院紹介、図書館紹介、国外留学制度、アルバイト紹介、奨学金制度、日常生活
上の注意点、災害傷害保険、クラブ・サークル紹介、就職活動、課外講座(法職講座、経理
研究所、クレセント・アカデミー)、最後に学員会紹介(卒業生組織)である。
内容が盛りだくさんで、大学のことで知りたいことがあればこれ一冊で大体のことが分
かるような内容になっている。2002 年度からは在学生全員の父母へ配布する予定である。
(5)支部交付金と支部活動
全国 54 支部に、父母懇談会や進路・就職懇談会開催にかかわる支部の費用、および支部
が独自の支部活動を展開するための費用を原則支部交付金として父母連絡会本部から支部
会員数により毎年支給している。また、そのほかにも特別事業活動費として支部独自の事
業活動費の一部または全額を支給している。具体的な各支部の活動内容をあげると、以下
のとおりである。
①学術・文化講演会の開催、②キャンパス見学会、③大学祭見学会、④スポーツ競技への
応援、⑤留学生との交流会、⑥父母と子弟との交流会、⑦地元行事への参加、⑧演奏会へ
の参加、⑩歴史的縁の地への訪問、
卒業生との提携による就職相談会
このような独自の活動が活発になることが今後の父母連絡会にとって重要な意味を持つ
と思われる。
(6)ブロック会議の開催
父母連絡会の 54 支部は全国9ブロックに分かれており、2000 年度からブロックごとに
支部長が集まり、主に支部活動の活性化と支部交付金の有効利用を中心議題として話し合
いを行っている。2ブロックで実施したが、大学事務局と地域支部および支部間の情報交
換という意味でも有意義であった。
878 第5章 教育研究支援
(7)支部長会議・本部役員会の開催
毎年、全国 54 支部の支部長による支部長会議を1回、会長・副会長・監事による本部役
員会を3回開催し、前年度事業活動報告、前年度収支決算、次年度事業活動計画、次年度
予算について審議し、情報の公開を実施している。また、決算については学内監事2名に
よる内部監査を実施し、その結果を外部監事も含めた監事会に諮り審議している。
(8)その他
①
女子学生の就職を支援する「ウイングの会」への経済援助
②
スポーツ競技を応援する父母への中大マーク入り小旗・のぼりの作成・提供
③
体育連盟「中大スポーツ」新聞部発行の新聞を父母懇談会会場で父母へ配布
④
入試合格者へ父母連絡会紹介のための「父母連絡会のしおり」の作成・配布
【点検・評価
長所と問題点】
数年前の河合塾による調査によれば、本学が他大学に比べてあげられる特徴の1つとし
て、父母からの評価が高いとの調査結果がある。また在学生父母からは本学は面倒見のよ
い大学ともいわれる。本学に複数子弟を在学させている父母は 200 名を越える。
父母連絡会事務室は発足当時から2名の専任スタッフで出発し、現在も2名で事業活動
のほとんどを運営している(「草のみどり」編集・校正スタッフとして嘱託1名)。少人数
のスタッフでありながら父母懇談会では学部事務室と学長室のスタッフの、就職懇談会で
は就職部のスタッフの協力を得ることにより、全国的な規模で父母へのサービス提供を可
能にさせてきた。そうした協力体制のおかげで全国の地域支部の支部長および支部役員は
父母連絡会の活動を高く評価している。それが河合塾の調査結果につながっているのでは
ないだろうか。
ここで留意してほしいのは大学側が父母へ一方的にサービス提供しているのではなく、
父母も大学側に重要な貢献をしていることである。その一例をあげてみる。
①
国際交流への貢献
近年外国人の交換留学生が増えているが、ホームステイを希望する外国人の受け入れ先
として、それが緊急を要する場合など特に、支部役員の家庭が引き受けて下さっている。
②
学生の部会活動への貢献
箱根駅伝、出雲駅伝、熱田神宮駅伝、大阪女子駅伝、ツール・ド・北海道等、各支部に
よる応援はよく知られているが、吹奏楽部による地方公演で受付等裏方として手伝って下
さるのは支部の役員方である。
③
受験生増加への貢献
支部の役員にはご子弟を2名3名と続けて本学に入学させる方も多い。このことは支部
活動を通じて本学に深い愛着を持っているからと思われる。
以上のほかにも父母から大学へのさまざまな貢献の例があり、どれを見てもわれわれ教
職員にとって重要な貢献である。
父母連絡会の諸活動の多くは父母および支部役員から受け入れられ高い評価をいただい
ている。しかし、支部役員以外の一般の父母(特に役員でない地方の父母)にとって父母連
絡会の活動はどこまで浸透しているだろうか、と問われると不安を感じざるをえない。さ
らに二部(夜間部)の改廃に伴う学生数減の影響が会費収入の減少を招き、従来の事業活
動をそのまま踏襲していけない現実がある。
879
【将来の改善・改革に向けた方策】
父母連絡会の課題として「地域支部の活性化」と「会費収入減少の問題」があげられる。
(1)地域支部活動の活性化
父母連絡会の大学事務局が地域支部と協力して毎年全国で父母懇談会と進路・就職懇談
会を開催するだけでは父母連絡会の真の発展とはいえない。全国にある地域支部が各々主
体となってその地域の父母と協力し、各支部活動を充実させることが真の発展につながる。
そのことが、一般の父母にまで父母連絡会の活動を浸透させる有効な方策であり、さらに
本学が父母のための大学でもあることを実感できることにつながるのではないだろうか。
また、ブロック会議は大学事務局と支部長のコミュニケーションを豊かにし、各々の支
部の活動を活性化させ、父母連絡会全体としての発展を促す。ブロック会議に参加した支
部長は異口同音にこの様な会を毎年開催してほしいと言う。一昨年から始めたブロック会
議の未開催ブロックを1年間以内に終了し、2年目から年4回ほど開催することにより、
1ブロック2年に1回の割合で開催することを考えている。全国9ブロックを毎年開催す
ることが望ましいが、専任のスタッフが2名しかいないという限界もある。しかし、全国
の父母に父母連絡会の活動を深く理解して貰うために支部活動の活性化を図りたい。
(2)会費収入減少の問題
二部(夜間部)の改廃に伴い在学生数が減少し、2003 年には 26,000 名になる見通しで
ある。このことは、父母連絡会の大きな収入の柱である会費収入が減少することになる。
従って、長年続いてきた新入生への入会記念品と父母懇談会での出席者記念品とを見直す
などの事業の見通しを含めた徹底したコスト削減をご父母の協力とともに行い、父母連絡
会の目的である「本学を我が子の大学としてだけではなく、父母自身の大学でもある」と
なるべく、一層の努力を重ねたい。
880 第5章 教育研究支援
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