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二国間交流事業 共同研究報告書

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二国間交流事業 共同研究報告書
(様式4-1)
二国間交流事業 共同研究報告書
平成
独立行政法人日本学術振興会理事長
26 年
3月
31 日
殿
共同研究代表者所属・部局 理化学研究所・光量子工学研究領域
テラヘルツ光研究グループ・テラヘルツ光源研究
(ふりがな)
職・氏 名
1. 事
業
名 相手国(
2. 研 究 課 題 名
フランス
)との共同研究
みなみで
ひろあき
チームリーダー・南出泰亜
MAEE
振興会対応機関(
)
差周波発生法による THz 波創出を目的とした 1.3 ㎛帯二波長 CW 光源の開発
3. 全 採 用 期 間
平成 24 年 4 月 1
日 ~ 平成 26 年 3 月 31 日 (
2
年
0
ヶ月)
4. 経 費 総 額
(1)本事業により執行した研究経費総額 2,000,000 円
初年度経費 1,000,000 円、 2年度経費
1,000,000 円、 3年度経費
(2)本事業経費以外の国内における研究経費総額
円
8,046 円
5.研究組織
(1)日本側参加者(代表者は除く)
氏 名
所
属・職 名
川俣 大志
理化学研究所
研究員
野竹 孝志
理化学研究所
特別研究員
縄田 耕二
理化学研究所
特別研究員
祁 峰
理化学研究所
国際特別研究員
理化学研究所
特別研究員
松川
健
(2)相手国側研究代表者
所属・職名・氏名
University of Paris Diderot (Paris 7) Professor Giuseppe Leo
(3)相手国参加者(代表者は除く)
氏
名
所
属・職 名
Sara Ducci
University of Paris Diderot (Paris 7), professor
Alessio Andronico
University of Paris Diderot (Paris 7), post-doc
Ghiglieno Filippo
University of Paris Diderot (Paris 7), research assistant
Silvia Mariani
University of Paris Diderot (Paris 7), Ph.D student
Cécile Ozanam
University of Paris Diderot (Paris 7), Ph.D student
-1-
6.研究実績概要(全期間を通じた研究の目的・研究計画の実施状況・成果等の概要を簡潔に記載してくださ
い。)
テラヘルツ波電磁波領域は、電波と光波の間にある領域であり、テラヘルツ波領域の技術開発には、超高
速エレクトロニクスや光通信技術など隣接する領域の進んだ技術を利用できる。しかし、専門的には、それ
ぞれの分野に独自の知識や経験、理論があり、テラヘルツ波領域のものとも異なることが多い。
本共同研究では、次世代の実用的なテラヘルツ波光源として、光ファイバ技術をベースとし、安定性・高
効率を追求した実用的テラヘルツ波光源の開発に向けた研究交流を行うことを目的としている。フランス側
は光ファイバ技術に熟知しており、日本側はテラヘルツ波技術に精通し、共にそれぞれ世界トップの研究を
行っている。本プロジェクト研究交流を通じて、若手研究者の知の幅を広げ、世界的に複雑化する科学技術
への要求に対応する独創的提案や発展的技術の創生を担う国際的研究者の養成につなげることを目標として
いる。
研究期間を通じて研究交流を次のような項目で各目標を設定した。
1) 要素技術開発(フランス): 非線形光学効果を用いた 2 波長励起光源の開発
主としてフランス側が開発するが、日本側で試作された 1.06m 帯二波長発振ファイバーレーザーを参考にす
る為に、フランス側研究者の来日及打合せを行う。高効率な励起光発生を行うため、周期分極反転ニオブ酸
リチウム(PPLN)などの非線形光学結晶を用いて連続波長可変光源を開発する。また、日本側で試作された
テラヘルツ波発生用の有機非線形結晶 DAST (4-dimethylamino-N-methyl-4-stilbazolium tosylate)を用い
て、実際にテラヘルツ波発生の実験を行う。この打合せや技術的議論のために、フランス側研究者が来日す
る。
2) 要素技術開発(日本): 有機非線形光学結晶(DAST)の品質改良および評価
主として日本側で既存の DAST (4-dimethylamino-N-methyl-4-stilbazolium tosylate) 結晶の単結晶化と品
質改良を担う。1.3m 帯二波長発振ファイバーレーザーと組み合わせてテラヘルツ波を創出できるように、
必要な諸性能を両国研究者で検討する。
また、DAST 結晶の品質評価を行う。特に、光損傷特性がフランス側で使用する際に重要なパラメータとな
るため、光パラメトリック発振器からの高強度励起光を用いて評価を行う。DAST 結晶の非線形光学特性を SHG
発生法にて評価し、優れたものをフランス側が開発する装置に配置して実験を行う。この実験には、日本側
から研究者が参加して、共同して実施する。
3) 若手研究者の交流
上記要素技術開発において、実際の実験を担う博士課程学生や博士研究員ら若手研究者を相手国に派遣し、
相互の基盤となる技術開発状況や理論を理解し、本共同研究で提案する光ファイバ技術を用いたテラヘルツ
波光源の実現に向けた議論を行い、問題点の洗い出し、その解決策、新たなアイデアの提案について対話を
もって詳細な論議を交わす。
また、日本側が開発する DAST 結晶をフランス側が開発する装置に配置してテラヘルツ波の発生実験を行う
ため、その実験打合せに対話をもって詳細な論議を交わし、また実験に参加して交流を行う。
表1に本共同研究の全体計画の予定表を示す。期間全体(2 年)を 4 段階(S1~S4)に分け、S1 では理論検
討や設計、S2 ではプロトタイプの製作、S3 では性能評価と改良、S4 では性能の最適化をそれぞれ行う。日
本とフランスの協力分担は、概略として日本側がテラヘルツ波発生に必要な DAST 結晶の開発および品質評価
を担当し、フランス側はテラヘルツ波発生に必要な励起光源の開発を担当する。
-2-
表 1.日仏共同研究の予定表
次に、本研究交流によって得られた成果に関して下記に示す。
1) 要素技術開発(フランス): 非線形光学効果を用いた 2 波長励起光源の開発
主としてフランス側がテラヘルツ波発生のための 2 波長励起光源の開発を担当し、励起光源として 1.3m 帯
二波長発振 CW ファイバーレーザーの実現可能性を検討した。この議論の基になる技術として既に日本側で実
現されている 1.06m 帯二波長発振ファイバーレーザーを参考にする為に、フランス側研究者が来日し、綿密
な議論を行った。結果として、ファイバーレーザーベースの光源開発は、光源の出力強度や発振波長の問題
から開発のステップが大きいため、まず非線形光学結晶 PPLN を用いて、実験系を構築する方針を固めた。具
体的な実験系としては、2つの PPLN を一つの共振器内におさめる方式の 2 波長光パラメトリック光源を提案
した。図1に実際に構築した PPLN を一つ用いた実験系を示す。
/2
PPLN 2, T2
i2
f = 150 mm
@ 1030 nm
PBS
s2
d3 = 36,8 mm
@ 1030 nm
i1
s1
s1
d2
2m
12,
=2
s2
/2
m
@ 1030 nm
PBS
PPLN 1, T1
2d1 = 208,9 mm
@ 1030 nm
f = 150 mm
/2
/2
@ 1030 nm
@ 1030 nm
Pump @
1030 nm
P > 20 W
図 1.テラヘルツ波発生のための 2 波長励起光源
テラヘルツ波は、波長の異なる 2 波長の励起光源をテラヘルツ波発生用の非線形光学結晶に入射すること
で得られる。この時、テラヘルツ波の波長は、2 波長励起光の波長の差によって決定される。テラヘルツ波
の波長を変化させる場合には、2 波長励起光の波長差を変化させる必要があるが、PPLN の周期と温度を変化
させることによって、図 2 に示すような広帯域波長可変範囲を得ることが可能である。
-3-
図 2.2 波長励起光の波長可変特性 また、波長に対して得られるパワーは、図 3 のようになりテラヘルツ波を十分発生できるパワーが得られ
る。実際には、実験で発振を確認したが光源のパワーが十分ではなかったため、高出力発生は確認できなか
ったが、一方で高出力な光源がなくてもテラヘルツ波を発生できることが今後の研究では重要であるとの判
断に至った。結果として、高効率化を目指した研究を行うべきであるとの知見を得た。特に、実用的には可
能な限り光源のパワーを抑えて使用できることが望ましい。これより、テラヘルツ波発生用に用いる非線形
光学結晶での変換効率を向上させるべく、光導波路型非線形光学結晶の導入に関して検討に至った。本研究
は、日本側のグループが取り組み、結果に関しては後述する。
図 3.光パラメトリック発振器からの出力パワー 2) 要素技術開発(日本): 有機非線形光学結晶(DAST)の品質改良
主として日本側は、フランス側が開発する 2 波長励起光源から、非線形光学効果を用いた波長変換によるテ
ラヘルツ波を発生させるための単結晶 DAST (4-dimethylamino-N-methyl-4-stilbazolium tosylate) 結晶を
開発し、その品質改良を担う。
研究開始にあたって必要な諸性能を両国研究者で検討するため、日本側からフランスへと渡航し、フラン
-4-
ス側の設備等を確認しながら具体的な共同研究の内容に関して討論を行った。結果として、発振波長の問題
や1W 以上の出力が必要なことなどから、実験系も含め検討を行うこととし、次に日本側で議論を行うこと
を決定し、上記フランス側の研究状況のように進められた。
DAST 結晶の品質改良においては、幾つか単結晶 DAST を作成し、耐光損傷の計測を行いどの程度の高強度
に対応できるか確認を行った。結果を図 4 に示す。光源には、高強度パルス光を発生できる Nd:YAG Q スイッ
チパルスレーザーを用いた。パルス幅約 10 ナノ秒、繰り返し周波数 100Hz の条件のもと、出力強度を変化さ
せ、9 万パルス後までの DAST 結晶の状態を、透過光強度をモニターして行った。結果として、有機結晶とし
て 800MW/cm2 もの高強度に耐えうる結晶が作成できることを実証した。
図 4.DAST 結晶の光損傷実験の実験結果
研究計画においては、バルクの DAST 結晶を使用する予定であったが、研究を進めた結果、より効率良いテ
ラヘルツ波発生の仕組みを検討する必要となった。有力な方法として、光導波路型の構造を導入することで、
高効率化が得られることが予想されるが、テラヘルツ波と励起光(近赤外光)との間には、波長が 2 ケタも
異なるため、得られる現象を理論解析で予め検討する必要がある。導波路構造は、将来の幅広い研究におい
いて有用な知見を与えることから重要であると考えられ、本検討を行うこととした。
図 5 および図 6 に DAST 結晶で作ったスラブ型構造にクラッド層(DAST とは異なる屈折率の小さい素材)
が添加された場合と、スラブ型構造のみの場合のテラヘルツ波電界強度分布をそれぞれ示す。
スラブ型の DAST
結晶のサイズは、20×20×100m であり、クラッド層の厚みは 2.5m とした。シミュレーションの結果から
テラヘルツ波の電界強度分布は、スラブ型導波路の場合、中心付近に集まりモードフィールド径が小さい。
一方、クラッド層がある場合は、モードフィールド径が広くなる結果が得られた。図 6 のスラブ型の場合、
テラヘルツ波はシングルモードであるが、近赤外光のモードを考えると、導波路サイズから近赤外光はマル
チモードとなることが容易に推察できる。このため、モードマッチングが悪く変換効率も良くないと考えら
れる。一方、クラッド層を導入することで、モードフィールドを大きくでき、近赤外光においても同様の影
響が得られることからマルチモード数をある程度抑制することが可能である。したがって、クラッド層を適
切に導入することでより効果的に波長変換できることが予想できた。
将来、よりパフォーマンスの高い計算機によって、近赤外光の伝搬も同時に含めたより綿密なシミュレー
ションを行うことで最適な構造が得られると期待される。
-5-
図 5.クラッド層を持つスラブ導波路型 DAST のテラヘルツ波電界強度分布
図 6.スラブ導波路型 DAST のテラヘルツ波電界強度分布
3) 若手研究者の交流
上記要素技術開発において、双方から若手研究者を相手国に研究進捗のタイミングに合わせ派遣し、相互
の基盤となる技術開発状況や理論を理解し、本共同研究で提案する双方の技術を用いたテラヘルツ波光源の
実現に向けた議論を行った。また、実現するための詳細な検討のもと問題点の洗い出しや、その解決策、新
たなアイデアの提案について対話をもって詳細な論議を交わした。
-6-
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