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プロジェクト・サマリー

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プロジェクト・サマリー
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プロジェクト・サマリー Project Summary
プロジェクト・サマリー
放課後子ども教室を活用した環境教育プロジェクトの推進
ASEEP21(アシープ 21)
~ After School Environmental Education Project 21 ~
柴 英隆 西村 留美 伊藤 綾子 新井 理恵
背景
放課後における子どもの安全で健やかな活動の場所と学習機会を確保するため、国と地域が連携し
て放課後子ども教育推進事業「放課後子どもプラン」が展開されている。同プランの下、小学校の余裕
教室等を活用して、学習やスポーツ・文化活動、地域住民との交流活動等の取り組みが行われている。
本プロジェクトは、環境省が「放課後子どもプラン」と連携しながら、ユニークな環境教育教材を
用いて多くの子ども達に環境問題を学ぶ機会を提供するモデル教室の展開を、支援したものである。
環境教育における「人材の不足」と「教材の不足」への対応
本プロジェクトでは、実際に「放課後子ども教室」で活用する専用の環境教育プログラムを製作
し、全国の教育委員会から応募を受けて選定した地域(校区)にてプログラムを活用したモデル教室
を試行した(年間 200 教室)
。また、モデル教室終了後も、本プロジェクトで製作したプログラムが
継続的・自立的に活用されることをめざして、放課後子ども教室関係者(教室コーディネーター等)
を対象にプログラムの活用方法についての研修を開催している。現在、環境教育の現場では、「人材
の不足」と「教材の不足」が課題となっている。本プロジェクトは、小学生を対象としてこれらの課
題に対応するものと位置付けられる。
(1)
「人材の不足」への対応
環境保全に関する専門的知識や豊富な経験を有し、環境保全活動に対し助言などを行う人材の登
録制度として、環境省の「環境カウンセラー」制度がある。モデル教室の実施にあたっては、各地
の環境カウンセラーを放課後子ども教室に派遣する体制をとり、放課後子ども教室と連携してモデ
ル教室を実施していただくことにより「人材不足」に対応した。今回のモデル教室実施により、地
元教育関係者と環境カウンセラーのネットワーク形成にも資すると考えられる。
(2)
「教材の不足」への対応
製作した環境教育プログラムは、「地球温暖化」「水資源」「3R(リデュース・リユース・リサ
イクル)」「生物多様性」等、多様な環境問題をテーマとした 6 つのゲームから構成されている。対
象となる児童の年齢や人数に配慮しつつ、遊びながら日常生活における環境配慮行動や環境に関連
する知識について学ぶことができるプログラム内容として、「教材不足」に対応した。
放課後子ども教室を活用した環境教育プロジェクトの推進 ASEEP21(アシープ 21)~ After School Environmental Education Project 21 ~
今後の展望
今回の環境教育プログラムの製作にあたっては、プログラムに活用可能なコンテンツ等を保有する
社外協力者とさまざまな形でネットワークを構築することができた。引き続き、放課後子ども教室に
おける環境教育の推進に関与するとともに、前述の環境教育の現場における「人材の不足」と「教材
の不足」への対応として、さまざまなソリューションを提供できるスキームづくりに尽力したい。
図.製作した環境教育プログラムの例
プログラム例 ①:節水大作戦
節水をテーマとした、カード並び替えゲームと節水体験
水が家に来るまでの流れや、
家庭での水の使用量をゲーム形式で学びます。 「節水大作戦」キット
自ら節水術を体験し、
“節水を知る”
から
“節水に取り組む”
に結びつけましょう。
① 水について知るための ゲーム
・水がどこから家 庭までやってくるのか、
「 水はどこから来るのかな?」
カードを用いて並び替えをします。
・水の使用量に関して、
「 水の使用量」カードを少ない順に並び替えます。
② 水の節 水 術についての 体 験 学 習
・専用のペンで手や顔に、絵や文字を描きます。
・チームに分かれ、その絵や文字をできるだけ少ない水で落とし、水の使
用量の少なさを競います。
・その際、節水用道具(カップ、タオル、霧吹き)を用いて、節水の工夫を行
います。
プログラム例 ②:えこちょいす
環境にやさしい商品を考えながら、
料理の材料をお買物するチーム対抗ゲーム
「えこちょいす」キット
・環境にやさしい商品を考えながら、料理の材料をお買物するチーム
対抗ゲームです。
・1チームにつき、
5枚の『 おかいものカード』があります。
『 おかいもの
カード』にもとづき、
『 商品カード』の中から
“より環境にやさしい商品”
を
選択します。
・チームで揃えた5枚の『 商品カード』から、どのような料理が作れるか
をあてます。その際には、
『 ヒントカード』や『メニューカード』を参考に
します。
・最後に商品カードを裏返し、
記載されている点数の合計点数を競います。
合計点数が高いチームが勝ちとなります。
プログラム例 ③:ゼッタイ! ! エコガインダー
地球を守るヒーローのDVD教材
・子ども達に、環境に対してできることを、日常生活の
中で考えてもらいましょう。
「ゼッタイ!!エコガインダー」登場人物
環境超人エコガインダー
エコクラッシャー
ムダーナ&ハカイス
環境良識回路を
搭載した地球を
守るヒーロー
地球の環境破壊を企んでいる。
地球の人々に環境破壊の習慣
を植えつけることが任務。
・DVDは、
ドラマパート(約20分)と、
クイズパート(約
10分)に分かれています。
・親しみやすい内容で、子ども達は楽しく参加すること
ができます。
・クイズパートは、
7問 の 問 題とそ の 答えがセットに
なっています。クイズパート用のチェックシートが同
封されています。
ムダーナ
ハカイス
鈴木家の人々
家族みんなで環境の
ことを考えているが、
ついつい環境破壊に
つながることをやっ
てしまう。
2009 © Kids Station, Inc. All Rights Reserved.
作成:「ASEEP 21 プログラム BOX」パンフレットをもとに三菱総合研究所
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プロジェクト・サマリー Project Summary
プロジェクト・サマリー
学校関係者評価の充実に関する調査研究
中村 肇 藤井 友里子 横山 宗明 横田 匡俊 沼田 雅美 尾花 尚弥
濱田 美来 篠崎 剛史
調査研究の背景
学校の裁量の拡大や学校運営の質に対する保護者等の関心の高まりにともない、学校が教育活動な
ど学校運営の状況を評価し、自ら必要な改善を図るとともに、保護者等に対して適切に説明責任を果
たすことが重要になってきている。また、自治体や学校法人などの設置者等が評価の結果に応じて学
校に対して必要な支援・援助を行うことで、教育水準を向上させ、保証することも求められている。
これらの状況を背景に、平成 19(2007)年 6 月に学校教育法、同年 10 月に学校教育法施行規則が一部
改正され、
「学校評価」が法律上で明確に位置付けられることとなった。これを受けて改訂された「学
校評価ガイドライン〔改訂〕」(平成 20[2008]年 1 月 31 日文部科学大臣決定)では、①各学校の教職
員が行う「自己評価」
、②保護者、地域住民等の学校関係者などにより構成された評価委員会等が、
自己評価の結果について評価することを基本として行う「学校関係者評価」、③学校と直接に関係を
有しない専門家等によって客観的に行われる「第三者評価」、の 3 形態に整理している。この中で②
の「学校関係者評価」は、前述法令改正においてその実施が努力義務化されている。しかし現時点に
おいては、学校関係者評価の目的や評価者に期待される役割が学校や教育委員会で十分に理解されて
いない、方法が十分に確立されていないなどのさまざまな要因によって、学校関係者評価が効果的に
実施され、評価結果にもとづく学校運営の改善等に十分に役立っているとは必ずしもいえない状況に
ある。
以上を踏まえ、本プロジェクトでは、まず、「学校評価ガイドライン〔改訂〕(平成 20[2008]年 1
月 31 日文部科学大臣決定)」に沿って、全国の学校や教育委員会が効果的な学校評価を実践する際の
具体的な課題を明らかにする。その上で、そうした課題に対して学校や設置者がとるべき方策や準備
すべき事項を整理し、
「参照書」として取りまとめることを目的とした。なお、本プロジェクトは、
文部科学省初等中等教育局から 2008 年度に受託、実施したものである。
調査研究の方法
学校関係者評価のノウハウや課題を把握するために、先行的に取り組んでいる教育委員会を対象に
文献調査及び訪問調査を実施した。また、学校関係者評価に取り組んでいる教育委員会及び学校に対
して継続的に訪問調査を実施し、現場で実際に発生している課題を把握した。学校関係者評価のプロ
セスにおいて必要となる合意形成やファシリテーションなどの手法に関しては、他分野で先進的に取
り組まれている事例や参照書などの国内外の文献調査を実施した。これらの調査結果を踏まえ、学校
学校関係者評価の充実に関する調査研究
関係者評価の参照書の素案を作成し、訪問調査にご協力いただいた教育委員会や学校及び有識者等か
ら内容の妥当性の確認や追加すべき知見、意見の収集を行って、充実を図った。
調査研究の成果と今後
本プロジェクトの成果は、
「学校関係者評価を活かしたよりよい学校づくりに向けて(学校関係者
評価参照書)」というタイトルで、カラー、50 ページからなる小冊子として取りまとめた。5 章から
構成されており、特に中心となる「学校関係者評価の流れとポイント」では各項目を「ポイント」
「そのためには何をすればよいでしょうか」「どうすればうまくいくでしょうか」の 3 点で構成し、学
校関係者評価を実際に行う際に留意すべき事項等を具体的に示している。さらに学校関係者評価を各
学校で進める際のノウハウについても、13 の「トピック」として掲載した。読者は主に学校を想定
し、学校関係者評価委員、教育委員会を想定読者とする箇所については、その旨を明記した。作成し
た参照書については、全国すべての教育委員会及び公立の小中学校・高等学校・特別支援学校に配布
するとともに、三菱総合研究所ホームページにも PDF 版を掲載した。
三菱総合研究所では、学校評価に関する調査研究を 2006 年度以降継続的に実施しており、2009 年
度も文部科学省からの受託で 2 件の調査研究を実施中である。これらの調査研究を通じて、学校教育
の充実・向上に今後とも微力ながら貢献していきたい。
謝辞
参照書の作成にあたっては、以下の教育委員会にご協力いただきました。また、これらの教育委員会管内
の小学校、中学校、中等教育学校、高等学校などの協力も得て作成しています。ここに記して、謝意を表します。
福島県教育委員会、宇都宮市教育委員会、品川区教育委員会、武蔵野市教育委員会、新潟県教育委員会、岐阜県教
育委員会、静岡市教育委員会、名古屋市教育委員会、高浜市教育委員会、島根県教育委員会、多久市教育委員会
図.作成した「参照書」の表紙と目次ページ
出所:文部科学省『学校関係者評価を活かしたよりよい学校づくりに向けて(学校関係者評価参照書)』
2009 年 3 月
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プロジェクト・サマリー Project Summary
プロジェクト・サマリー
注目を浴びる「農業」の最先端をいく
「植物工場」の振興
酒井 淳子 伊藤 保
農商工連携のシンボルたる「植物工場」
「植物工場」とは、野菜や花卉等の植物の生長に必要な、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、水
分、栄養素などを人工的に高度制御し、季節や場所に関係なく、1 年間を通じて安定的に育成、販売
する農業生産システムをいう。その形態は環境制御の度合いにより大きく異なり、最も影響が大きい
のは太陽光を利用するか否かという点にある。
2008 年、農林水産省と経済産業省がいわゆる農商工連携促進法を制定、地域産業として重要な地
位を占める農林水産業と商工業が連携して新しい地域産業を構築する取り組みを本格化させた。その
中で、農業と製造業、商業の有機的連携が求められる植物工場は、農商工連携の「シンボル」として
位置付けられ、
「勘と経験の農業」から「サイエンス農業」へ発展させ、農業を成長産業へ変貌させ
たい農林水産省と、工場の新たな立地と関連産業の展開で地域産業の活性化とともに雇用の創出を実
現したい経済産業省がタッグを組み、植物工場振興策の検討が始まった。
本プロジェクトの概要
農商工連携促進法を契機に、消費者の安全・安心な食に対するニーズにもとづく、植物工場の「3
度目のブーム」* 1 が起きたといわれる。本プロジェクトは、経済産業省からの委託を受け、植物工
場の実態を把握するとともに、
「ブーム」で終わらないための普及に向けた振興のあり方について検
討したものである。
植物工場は、その定義が難しく、特に太陽光を利用するタイプの場合、施設園芸との区別が難し
い。そこで、本プロジェクトでは、まず植物工場を冒頭の説明のように定義付けるところから始め
た。その上で、現時点で展開されている全国の植物工場を 50 カ所と確定し、すべての植物工場の経
営等の実態把握を行った。その結果、膨大な初期費用が生産物価格を跳ね上げ、経営の持続性に大き
な影響を与えていること、また、水道光熱費が運営費用の大きな部分を占め、生産コストの高止まり
* 1
1989年には日本植物工場学会が設立され、1992年にはキューピーが独自に開発した TS ファームを農業試験施設
に導入、その後全国の事業者に販売して第 1 次ブームを形成した。次いで 2000年前後には、鉄鋼メーカーの JFE
グループである JFE ライフが三田市に設置(1999年)
、
食品メーカーのカゴメが大規模な生鮮トマト菜園を設置(1999
年)するなど、大手企業の参入が相次いだ。2004年・2005年には植物工場事業に特化した会社が設立され、人材
派遣会社のパソナが実証用植物工場を設置するなど、第 2 次ブームというべき多様な企業参入がみられた。
注目を浴びる「農業」の最先端をいく「植物工場」の振興
を招いていることが明らかになった。また、建築基準法上の扱いや消防法で求められる設備の設置な
どについては、事例ごとに違いがみられるなど、建築・整備面の統一化・標準化の必要性が認められ
た。このような、植物工場を取り巻く技術的・環境的課題を網羅的・体系的に整理し、報告書として
取りまとめた。
さらに、普及に向けては、市場の開拓が必須であり、その最初のステップである認知度向上につい
ては、デモンストレーション施設を設置し、実際に葉物野菜やイチゴの栽培を公開した。経済産業省
別館内に設置された施設には、当時の二階経済産業大臣、石破農林水産大臣をはじめ多数の国会議員
の方々が参加され、メディアにも数多く取り上げられた。また、民間事業者の見学も受け付け、多く
の事業者からも高い関心が寄せられた。
植物工場普及に向けた支援策の推進
本プロジェクトを受けて、国は 3 年間で植物工場の設置数を現状の 3 倍である 150 カ所とすること
を目標として掲げ、その実現に必要な施策が省庁横断的に展開されることとなった。具体的には、本
プロジェクトで明らかになった課題を踏まえ、基盤技術開発、実用化開発、導入支援、販路開拓の各
段階における支援策が、各省庁の得意分野を踏まえて行われる。このような国の動きは、農業分野参
入への関心が高まる民間企業から注目されている。民間企業にとって、農地を取得せずに農業に参入
できることは大きな魅力である。特に景気後退等の影響で遊休施設や利用されない土地が拡大する中
で、自社資源(土地や施設と人員)の有効活用と新たな事業展開を両立できる植物工場は、経営者に
とっても検討に値するビジネスである。
植物工場は、消費者からの安全・安心な国産野菜を求める声に応えながら、農業の生産性向上と高
度化を先導的に実現し、地域社会の中で新たな産業創出を実現する。それは、単に農商工連携のシン
ボルであるだけでなく、ロボットや省エネルギー機器等の我が国製造業の最先端技術の成果を取り入
れながら展開されることを意味しており、内需対応型産業として位置付けられる。さらに、砂漠や紛
争地帯など、農地としての開発が困難な地域をターゲットとした新たな輸出産業として、ますます発
展していくことが期待される。
図.「植物工場」の意義
植物工場
=雇用創出と地域活性化
農業
農業
分野
分野
分
分野
製 造製
業
分野
製造
業
造
サイエンス農業へ転換
マーケットインの導入
関連産業の成長
新たな立地で農産業創出
地域全体の活性化へ
作成:三菱総合研究所
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プロジェクト・サマリー Project Summary
プロジェクト・サマリー
未来共創
「
“35 歳”を救え あすの日本 未来からの提言」
プロジェクト
吉池 基泰
プロジェクトの背景・目的
団塊ジュニア世代は、現在 35 歳前後であり、彼らが企業・経済・産業・社会の中核世代となりつ
つある。また、団塊ジュニアの子ども世代は、少子化のただ中にある。これからの日本の活力は、中
核世代である団塊ジュニアに負うところが大きく、彼らが安心して働き、家庭を形成し、子どもを持
てるようにできるかどうか、すなわち、引退するまでのこれからの 25 年間をどう生きていくかが、
人口・家庭の再生産や経済の立て直しのために重要な課題といえる。産業・雇用・教育・医療・介
護・年金等多くの分野で、適切な政策が打たれないと、彼らを主体とした活力の維持は難しくなる。
本プロジェクトは、「あすの日本」を大きく左右する団塊ジュニア(特に 35 歳に焦点)の実態と問
題点をアンケート及びシミュレーション分析により科学的に解明し、社会の次世代の再生産のための
プログラム(処方箋)を提言することを目的に、NHK と共同で実施したものである。なお、2009 年
5 月 6 日に放送された NHK スペシャル「“35 歳”を救え あすの日本 未来からの提言」* 1 は、本プロ
ジェクトの成果にもとづき、制作されたものである。
アンケート結果からみた 35 歳世代の実態と課題
2009 年 3 月、1 万人の 35 歳を対象にアンケート調査を実施した。総務省人口推計によると、2009
年 3 月 1 日現在の日本の総人口は 1 億 2,759 万人である。そのうち 1973 年生まれの 35 歳人口は約
200 万人と推定される。35 歳世代は、1971 〜 1974 年生まれの団塊ジュニアの中でも最多の人口集団
であり、団塊ジュニアを代表する層としてアンケートを実施した。
アンケートの分析結果からは、多くの 35 歳が解雇や所得の伸び悩みに不安を抱き、将来への失望
と下流意識が拡大している実態が浮き彫りになった。また、経済的な理由から結婚や子どもをあきら
めざるをえない現実があり、少子化が加速する可能性があることもわかった。この結果を踏まえ、日
本の経済を再生するためには、若者の経済的負担の軽減や雇用の継続による「生活の安心(セーフ
ティネット)」「仕事と所得」を創出する政策の実践が不可欠であり、その実現を通じて、若者の将来
の夢や希望を創出することが必要と考えた。
* 1
NHK スペシャル「
“35 歳”を救え あすの日本 未来からの提言」
(http://www.nhk.or.jp/special/onair/090506.html).
未来共創「“35 歳”を救え あすの日本 未来からの提言」プロジェクト
未来シミュレーションからみえてきた厳しい現実
一方、シミュレーション分析によると、このまま雇用の非正規化や所得の低迷が続いた最悪のシナ
リオの場合、消費や税収が落ち込み、それをカバーするために、20 年後には超コスト負担社会とな
り、GDP 成長はゼロ成長となる可能性が出てきた。適切な政策実施が遅れれば、より多くの対策費
が発生し、結果として消費税の大幅アップ(税率 18%と想定)など個人への負担増を招くことにつ
ながりかねない。そうなると、個人の実質的な所得水準はますます減少する、というスパイラルダウ
ンを招くことになる。
どうやって問題を解決するのか
日本経済を立て直すために、また、若者世代がかかえる不安を解消し、希望が持てる社会にするた
めには、どうすべきか。すでに述べたように、生活の安心、そして仕事と所得を創出するために、若
者への投資を推し進める必要がある。ただし、若者への投資を推し進めるためには、35 歳世代の問
題を全世代の問題と捉え、高齢者への投資や箱モノ投資を削ってでも、若者へ投資をすべきであると
いう社会的なコンセンサスが醸成されなくてはならない。こうしたコンセンサスの下に、教育や介
護・医療、育児分野などにおける生活支援の拡充や職業訓練の充実による雇用創出のための政策、す
なわち“ヒトへの投資”に政策の大転換を図ることが不可欠ということである。
前述の番組では、イギリスやフランスの例を取り上げながら、雇用の流動化を前提にしたセーフ
ティネットやスキルアップ支援などの積極的雇用対策に加え、子育てや教育、住宅支援などをあわせ
た総合的な新しい社会システムの構築が提言された。例えば、日本で、積極的雇用政策(雇用者の自
立支援)に焦点を当て施策が推進された場合の経済成長へのインパクトをシミュレーションすると、
年平均 1.6%の GDP 成長が期待される(図)。ただし、これらの対策がすべてではない。中長期的な
視野に立ち仕事と所得を創出するためには、新たな産業の育成も不可欠である。また、少子化対策と
しては、働きながら子育てしやすい職場環境が実現されるために男女共同参画社会のさらなる進展な
ど、真正面から取り組まなければならない課題も多い。
図.実質 GDP のシナリオ別シミュレーション推移(2009 - 2029 年)
(兆円)
800.0
実績
700.0
推計
オ
ナリ
援シ
支
自立
600.0
超コスト負担社会シナリオ
500.0
400.0
300.0
200.0
1970
1980
注:実質、2000年価格
作成:三菱総合研究所
1990
2000
2009
2029
(年)
117
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プロジェクト・サマリー Project Summary
プロジェクト・サマリー
TRM(Technology Resource Management)の展開
魚住 剛一郎
経営資源としての「技術」の管理の遅れ
「人」「物」「金」「情報」は、昔から言われている経営資源である。これに加え、「技術力」がその
企業の競争力の源泉になっている場合も少なくない。しかしながら、「技術」はきわめて属人的な性
質が強く、目に見えるようになりにくいことから、経営資源としての管理は遅れている。
TRM(Technology Resource Management)はこの重要な経営資源である「技術」を多面的に捉
え、その現状を正確かつ客観的に把握し、その有効活用を図るために三菱総合研究所が多くの企業で
実施・展開している手法である。社内の人材を中心とした技術資源について、その内容(どのような
技術を保有しているか)、水準(どの程度の技術レベルにあるか)、ボリューム(何人存在するか)を
定量的に測定する。
TRM により「人と技術」という相互関連の中で、「自社の技術体系の作成」「技術リソースの見え
る化(可視化)
」を行うことを意味する。企業にとっての重要技術の発見と認知、さらにはその(市
場)価値の評価が可能となり、結果として的確な技術戦略の策定や人材育成・モチベーション向上へ
の打ち手が実現できる。
TRM 導入の標準的な手順
TRM を企業に導入する際、標準的には以下の手順を踏む。
1)自社の技術の棚卸し→技術体系の作成
2)技術体系にもとづく社内の調査・アンケート・インタビュー
3)分析→技術リソースの見える化(可視化)
4)経営資源としての「技術」の課題の整理
5)技術戦略の策定、人材育成・モチベーション向上策の策定
各社で実施する場合、この中で特に「1)自社の技術の棚卸し」が困難となる場合が多い。冒頭で
触れた通り「技術」はその性質から経営資源として見えるようにするのが難しく、作成しても社内で
のコンセンサス・納得感を得にくい。
TRM では、技術の棚卸しを 3 つの視点から実施している(図①)。1 つ目は「工学的視点」と呼ん
でおり、
「どのような知識を持っているか?」ということに焦点を当てた切り口である。技術の領域
(例えば大学の学科など)により分解する。2 つ目は「業務的視点」であり、「仕事ができるか?」と
いうことに焦点を当てている。この切り口は、業務とビジネスプロセスのマトリクスで整理を行って
TRM(Technology Resource Management)の展開
いく(図②)。3 つ目は「機能的視点」であり、「顧客に対してどのような価値を提供できるか?」と
いう視点で分解する。これらの切り口を利用し作成した体系にもとづいて社内調査を行い、自社の技
術の「見える化」を行う。
TRM の社会的価値
この手法を実施することの 1 つの価値は、「技術に対して定量的、科学的なアプローチを導入する」
ことである。感覚で漠然と捉えがちな全社の“技術力”を定量的に表現することで、「事実」にもと
づくマネジメントを可能にする。このことは意思決定の質を高めるだけでなく、その後の進捗管理
(PDCA サイクル)の確実な実行につながる。
もう1つの価値は「技術者に光をあてる」ことである。我が国の企業には優秀な技術者が多数存在
する。しかし、彼らの実力が十分に評価され、処遇を受けていないケースも散見される。この一因と
して彼らの技術が企業内で充分に浮かび上がらず、経営者まで見えていないということがあげられ
る。TRM により、技術者に注目し技術力を浮かび上がらせることで日のあたりにくかった技術者に
光をあてる、結果として技術者の動機付けにつなげることがもう 1 つの価値である。
これらが各企業の技術力向上・底上げにつながり、技術で社会を豊かにすること、及び技術立国日
本への貢献ができれば幸いである。
図.技術の棚卸しを行う視点と整理例
② 「業務的視点」による整理例
① 技術の棚卸しを行う視点
1.
工学的視点
研究開発
研究開発
大分類
大分類
中分類
中分類
知識がある
分野2
技
商
商
商技 生
生
術
術
品
品術 産
産
研
研
開
企
品
評支 企
設
究
究
発
画
価援 画
計
設
計
○ × △○ ×△ ○ ×○ × プ変 情
コ仕試 原 品強 安
○ × △○ ×△ ○ ×○ × ロ換 報
ン様作料質度定
分抽分合濃工技製加管セ技化
セ作
評評評性
析出離成縮学術造工理ス術技
プ成
価価価評
小分類
小分類
工業化・生産
工業化
・
生産
技
礎
技
術
分野3
術
ト
価
プ成 価 様置 価評 価 価
ト
作
作
企
成
成
画
価
製品A−2
製品A−2
A 事業
製品A−3
製品A−3
ビジネスプロセス
製品A−4
製品A−4
製品A−5
製品A−5
3.
機能的視点
製品
2.
業務的視点
アイテムB-1-1
製品B-1
B
アイテムB-1-2
ー
顧客
1
アイテムB-1-3
アイテムB-1-4
製品
アイテムB-2-1
製品B-2
業務2
業務3
製品・サービス
B
ー
業務1
製品
B事業
対象1
2
アイテムB-2-3
アイテムB-2-4
アイテムB-3-1
アイテムB-3-2
製品B-3
B
ー
対象2
アイテムB-2-2
仕事ができる
価値を生む
3
製品
対象3
アイテムB-3-3
アイテムB-3-4
アイテムB-4-1
アイテムB-4-2
ー
製品B-4
B アイテムB-4-3
顧客が得る
機能・価値
作成:三菱総合研究所
4
アイテムB-4-4
アイテムB-4-5
事業領域
企業
プ
ロ
セ
ス
設
計
コ仕 原 機設 原安 強 品 検制 安
ン様 料 器備 料定 度 質 査御 定
・
稼
セ作評仕配評性評評
フ
製品A−1
製品A−1
必要な技術
検 査 ・フ ィ ー ド バ ッ ク
工学
分野1
商品開発
商品開発
基
動
設
生
品
備
産
質
評
価
管
理
調安故予
整定障防
稼修保
動理全
管
理
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プロジェクト・サマリー Project Summary
プロジェクト・サマリー
住宅セーフティネット対策に関する
システムコンサルティング
伊藤 芳彦
背景とプロジェクトの概要
2005 年に発生した住宅の耐震強度偽装事件は、住宅の売主が倒産してしまうと、補修が履行され
ず、購入者が多大な損失を蒙ることを世に知らしめる結果となった。大きな社会問題に発展したこの
事件を受け、国において、住宅のセキュリティネット強化に向けた検討が進められ、2007 年に「特
定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(住宅瑕疵担保履行法)が公布されている。これ
により、2009 年 10 月以降に引き渡される新築住宅では、保険加入(住宅瑕疵保険)または保証金供
託のいずれかの方法により、売主等に対して資力の確保が義務付けられることとなった。資力確保の
方法は 2 種類用意されたが、保険加入の比率が高いであろうと推測されている。また、同法では、住
宅瑕疵保険の引き受け手については、国土交通大臣が認可した住宅専門の保険法人(住宅瑕疵担保責
任保険法人)が担うこととし、2008 年 4 月より数社が指定されている。これらの住宅瑕疵担保責任
保険法人では、取り扱う保険の制度変更への対応等が急務となったことから、保険等を管理する基幹
システムの大規模改修を実施する必要に迫られていた。
本 プ ロ ジ ェ ク ト は、 こ う し た シ ス テ ム 改 修 に 三 菱 総 合 研 究 所 の PMO(Project Management
Office)ソリューションを展開するとともに、老朽化が進み問題点が指摘されていた当該システムの
みならず、システム管理運用体制改善の方向性に関してコンサルティングを実施したものである。
PMO ソリューション
対象システムは、開発に複数のベンダーが関わる“マルチベンダー型”であり、老朽化がかなり進
んだものであった。このため、技術面の陳腐化が進むとともに、管理上も、関係部門の連携が悪く改
修等の状況が把握しづらいこと、ベンダー間の統制がとれず、スケジュールや決定事項が不明確なま
ま作業が進んでしまうこと等、さまざまな問題をかかえていることが想定された。
三菱総合研究所の PMO ソリューションは、顧客と密に連携し効果的な支援を実施できるよう、顧
客内部にシステム開発全般を担う PMO チームを設置してもらい、三菱総合研究所もその一員として
参加するケースが多い。本プロジェクトでも、システム部門中心に組成された顧客 PMO に参加し、
ベンダーから報告される状況の管理や各種指示、ベンダーとのシステム仕様検討、顧客内部の各種調
整等の支援を通して、開発作業を統制した。
また、システム開発では、問題を的確に把握し、適時、柔軟に対応することが重要である。三菱総
合研究所は豊富な開発管理・PMO の実績を有しており、そのノウハウを提供することにより、柔軟・
住宅セーフティネット対策に関するシステムコンサルティング
的確な対応を図った。今回のケースでは、分散しがちな開発情報の一元化に力点を置き、① WBS /
開発スケジュールの明確化と変更管理の徹底、②定期的な作業進捗の確認と状況の一元的な把握、③
確定事項の明確化と課題の一元的な管理、④実施順位や作業方法に関する調整、といった支援を行っ
た。こうした取り組みにより、開発に関わる関係者の作業を円滑化し、目標とした期日までに改修し
たシステムを稼動することができた。
システムコンサルティング
今回扱ったシステムは、前述の通り老朽化が進み、改修・拡張を繰り返した結果、典型的な「スパ
ゲッティシステム」
(改修を重ねて複雑化したシステム)となっており、システム運用や改修面でさ
まざまな困難に直面していた。システム管理面では、システムの規模に対して担当要員が少なく、シス
テムの導入から保守運用に至るプロセスや、セキュリティに関する規約、システムドキュメントの整備
が遅れている等の問題が多くみられた。また、顧客は、住宅瑕疵担保責任保険法人に指定されたこと
により、将来的に、保険の取扱量の増大が見込まれており、現状のままでは、近い将来、システムの
破綻や事業継続に支障を来すリスクが懸念された。以上の点を総合的に判断し、システムの刷新を前
提に、システム管理体制や関連する業務やルール等の整備と一体で、早期にシステムの再構築に向け
た検討に着手することが得策との提言を行った(図)。
プロジェクトの成果
本プロジェクトは、三菱総合研究所が確立した PMO ソリューションを住宅分野の保険法人に展開
することにより、下記の成果を得ることができた。
・ タイトなスケジュールであったにも関わらず、予定期日で改修したシステムをサービスインできたこと
・ これにより、新制度にもとづく顧客基幹業務の立ち上げと、国の住宅セーフティネット整備及
び消費者の権利保護に貢献したこと
・ 顧客におけるシステム再構築及びシステム管理体制の方向性を明確化したこと
また、顧客においては、プロジェクト後、本業務のコンサルティング結果にもとづき、内部体制や
業務ルール整備を含めた次期システム構築プロジェクトに着手している。
図.システム再構築プラン
システム
運用
現 行システムを利 用
調 達 準 備・R F P
事業計画の策定
制度運用関連
システムの高度化に向けた取り組み
新システム関連
現行
新
作成:三菱総合研究所
新システム
新システム
要件整理
要件整理
調達
調達
シ ス テ ム 開 発・試 験
並 行 稼 動・切 替
シ
ステムの 最 適 化
システムの最適化
新規ニーズへの対応
新
規ニーズへの対応
本稼動
新システム 稼 動
住 宅 ストック
に関 する
住宅ス
トックに関する蓄
積情報の利活用
蓄積情報の利活用
内 部 統 制 / I Tガバナンス等
の要領整備
セキュリティ、信 頼 性 等
に係る基 準 整 備
整 備 し た 業 務・ル ー ル の 展 開
システム管 理 体 制・
業務等の整備
短 期目標
中期目標
長期目標
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122
プロジェクト・サマリー Project Summary
プロジェクト・サマリー
「市場起点・顧客起点での組織機能統合」
実現に向けたソリューション提供
小林 修
背景
今回のソリューション提供先(以下、「A 社」)は、精密機械の製造・販売・保守サービスまでを
一手に提供する。業界においては国内トップクラス、国際的にも有力企業として認知されている。
また、今回対象とする事業は国内顧客向けの事業で、その特性は以下のように整理される。
①顧客:BtoB。規模の差が大きく、大中規模は私的・公的事業主が混在。小規模は個人事業主が
中心。
②製品:顧客の事業内容に直結する装置。A 社製品だけでなく、制御ソフトウェアや外部オプショ
ンなど、他社からの付帯機器を組み合わせたソリューションとするケースが多い。
③販売:多くの案件で、設置のための建屋工事・搬入設置作業・各種ネットワーク接続など、付帯
工事もセットの商談となる。案件規模として数百万から数億規模まで幅広い。基本的に顧客
ごとにカスタマイズされた販売であるが、競合も多いため値引き競争が厳しい。
④サプライチェーン:各商談で建屋工事、設置などプロセスが多く、営業・製造・サービスな
ど社内部門だけでなく、工事業者、輸送業者など多くの関係者が関わる。
⑤利益創出のポイント:案件単位での損益視点ではサプライチェーンプロセスの合理化・コス
ト圧縮が課題であるが、一方で多額の R&D コストの償却を行いながら利益を出していく
ために、商品企画段階での売価設定の精度向上、実際の営業現場での売価コントロールが、長期
の収益力向上にとって重要である。
解決すべき問題点
A 社では、会社の成り立ちから製造・販売・保守サービス部門の位置付けが「別会社」に近く、
業務プロセス、社内情報システムに至るまで部門ごとに異なっているため、サプライチェーン全体で
の効率アップ・コスト圧縮が進めにくい状況にあった。
また、売価が複数の機器や作業経費の組み合わせで決まるためにコストプラス(原価積み上げ)型
で行われる一方で、営業部門は案件単位の損益確保を重視するために、自社製品の社内仕切り価格
(製造部門からの受け渡し価格)の値下げを交渉したり、据付などの保守作業費を値引きの原資にす
るなど、
「メーカーとしての長期の収益力向上」という視点からは各部門の行動のベクトルが合って
いなかった。
「市場起点・顧客起点での組織機能統合」実現に向けたソリューション提供
3 つのソリューション
このような問題点に対して、今回、求められたのは「市場起点・顧客起点で全社が一体的に活動
し、利益創出できる仕組みづくり」であり、下記の 3 つのソリューションの提供を行った。
(1)市場売価評価と販売価格管理への活用
他社機器や設置などの作業活動が混在した現実の売上情報から、個別商品の市場売価を切り出す
ルール・ロジックを形成し、その実績トレンドから値引き幅を柔軟に見直す仕組み(計算方法、営
業各ヒエラルキーでの値引き基準設定ルールなど)を構築した。これによって把握した売価トレン
ドを販売予算や営業の提案価格設定に応用するとともに、販売予算から製造・調達予算の目標値を
作成するプロセスを構築して、「市場起点での適切な売価設定と原価企画が連動」する全社一丸の
PDCA サイクルを実現した。
(2)サプライチェーン一貫管理による業務スピード向上・コスト削減力強化
受注以降、製造、供給等サプライチェーン全体を一貫管理する業務プロセスとサプライチェーン
を管理し業務標準化とコストダウンを推進する組織体制の設計、及びサプライチェーンプロセスの
管理ツールの提供、新組織稼働・業務定着までの教育等支援を 2 年にわたり行った。
(3)商品ライフサイクル損益の可視化と事業マネジメントへの活用
上記の市場売価トレンドとサプライチェーン一貫管理で収集される商品直課費用の把握により、
事業特性にあった商品のライフサイクル損益把握をするとともに、後継商品の投入時期を判断する
経営情報として活用するための、計算ルールと収集方法の設計を行った。
図.3 つのソリューションの概要
(1)市場売価評価と販売価格管理への活用
(2)サプライチェーン一貫管理による業務スピード向上・コスト削減力強化
価格水準
LP ※
α
β
生産
輸送
設置
談を可能な限り
平均
売価
γ
調達
この 範 囲 の 商
取り込みつつ、
調達・
製造部門
平均売価を達
値引
限界
成する。
物流
部門
サービス
部門
顧客
サプライチェーン一貫管理組織
※List Price(希望販売価格)
数量
(3)商品ライフサイクル損益の可視化と事業マネジメントへの活用
売価
実績
製品A
製品ライフサイクル
製品開発
開発研究費
(製品開発分)
開発研究費
(要素技術 開発分)
調達
製造
製造原価
サービス・
サポート
販売
機器売上
サービス売上
サービス原価
品質保証・サービス費
販売対策手数料
・
・
・
配賦経費(部門費)
作成:三菱総合研究所
製品別ライフサイクルコスト評価
製品B
原価
実績
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124
プロジェクト・サマリー Project Summary
プロジェクト・サマリー
仮想化によるサーバ統合プロジェクト
木佐木 篤
プロジェクトの背景
三菱総研 DCS がシステムのフルアウトソーシングサービスを提供している医薬品メーカー(以下、
「A 社」)は、ほぼすべての社内システムを DCS 千葉情報センターで稼動させていた。A 社では、積
極的な IT 化への取り組みを重ねることで、社内システムの拡充を続けてきた。この結果、システム
の運用に必要なサーバの台数は増加の一途をたどり、それらサーバの運用費用の増大が A 社にとっ
て大きな課題となっていた。
本プロジェクトは、この課題に対するソリューションとして 2008 年 4 月〜 2009 年 2 月までのおよ
そ 11 カ月間を要して実施したものである。
プロジェクトの概要
本プロジェクトは、最新の仮想化技術を利用してサーバを集約・統合することで、サーバ台数の削
減を実現したものである。仮想化技術とは、1 台の物理サーバで複数台の仮想化されたサーバを同時
に稼動させ、サーバを統合する技術である。また、サーバの仮想化は、ハードウェアとの依存性を排
除するというその特性から、さまざまな副次的な効果をもたらすものである。
三菱総研 DCS では、フルアウトソーシングベンダーとして、A 社の IT に関する諸課題を理解し
ていた。本プロジェクトを計画するにあたっては、その主目的となる「サーバ運用費の削減」以外に
も、仮想化技術がもたらす効果を最大限に活用し、A 社がかかえる諸課題を解決する手段として利
用することをあわせて検討した。
この結果、本プロジェクトの主な目的として「サーバ運用費の削減」「10 年インフラの実現」「さ
らなる IT 投資案件の推進」の 3 つを掲げ、実行に移した。
プロジェクトの効果
本プロジェクトによりもたらされた具体的な効果を、下記にまとめる。
(1)サーバ運用費の大幅削減
物理的なサーバの台数を 137 台から 12 台にまで圧縮することに成功した。これにより、サー
バファームのスペースを大幅に削減し、サーバのハードウェア費及び運用費について、あわせて
68% ものコスト削減を実現した。
仮想化によるサーバ統合プロジェクト
(2)10 年インフラの実現
仮想化技術を導入することで、ハードウェアに依存しないサーバ環境を実現した。これにより、
サーバハードウェアの更新に伴うアプリケーションシステムの入れ替えや改修の作業が一切不要と
なり、同じアプリケーションシステムを 10 年後もそのままの形で使い続けられる環境を実現した。
このことは、古く安定したシステムを延命させ、進化が必要なコアなシステムへ投資を集中させる
ことを可能にした。
(3)さらなる IT 投資案件の推進
仮想化技術を基盤とするインフラ環境を確立したことで、A 社として検討段階であったディザ
スタリカバリサイト(DR サイト)の構築やシンクライアント環境の展開について、仮想化技術の
応用案件として具体的に推進させるに至った。
今後の展望
世の中は、ますますサーバ環境の仮想化へとシフトしている。昨今、話題の「クラウドコンピュー
ティング」を支える基盤としても、仮想化という技術が注目を集めており、今後、ますますの技術的
進化が期待されている。本プロジェクトは、このような潮流の中で実施されたプロジェクトであり、
仮想化によるサーバ統合の実施を検討している多くの企業に対して、一定の指標を与え、その促進に
大きく貢献したものと感じている。
三菱総研 DCS では、SIer(システムインテグレーション[SI]を行う業者)として、本プロジェ
クトで得たスキルと経験を生かし、仮想化技術のさらなる進化と推進に向けた活動を展開し、IT の
進化に寄与していく考えである。
図.仮想化技術を利用したサーバ統合環境のイメージ
作成:三菱総研 DCS
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プロジェクト・サマリー Project Summary
プロジェクト・サマリー
データベース緊急入替プロジェクトに学ぶ
マネジメント
佐々原 将昭
緊急プロジェクトの発足
システム運用における安定したランニングコストは、お客様業務継続の生命線であり、運用を受託
する企業の収益源としても非常に重要な要素である。ところが、これまで取り引きしていた某海外ベ
ンダ製データベースのライセンス料が、契約更改を目前にして、約 32 倍(定価では 64 倍)に値上げ
されるという緊急事態が発生した。この背景には、同社製品の国内販売を委託してきた代理店との契
約を打ち切り、日本法人を設立し自ら参入してきたことがあった。提示された価格は、同レベルの他
社製品とは比較にならないほどの高額であるにも関わらず、値下げ交渉は難航した。
この影響を受けるシステムは、アプリケーション STEP 数:75 万/管理データ保有数:2,000 万件
と大規模であり、お客様にとって重要な業務に使われているシステムである。料金提示から契約更改
まで残すところ 3 カ月という厳しい状況の中、三菱総研 DCS は緊急プロジェクトを発足し、検討の
結果、
「当該データベース利用を中止し、契約終了までの短期間で他社製データベースに入れ替える」
ことを提案、お客様の了承を得、これをわずか 2 カ月間で完了させた。
お客様の業務を継続しつつ、2 カ月で大規模システムを改修
通常、これほどの膨大なシステムが使用するデータベースを 2 カ月で入れ替えることは不可能であ
り、発案すらされない。しかしながら、お客様業務とシステムを熟知していたことにより、次のプラ
ンでなら業務を継続しながら入れ替えが可能と判断した。
①第一弾開発(2007 年 12 月〜 2008 年 1 月):まず、SQL 等既存データベースと類似の命令が多く
を占め、改修が比較的容易なバッチシステムを改修し、他社製データベースに入れ替える。オン
ラインシステムについては簡易機能を新規構築、お客様のご協力を得て暫定運用にて業務を継
続。→ 2008 年 2 月既存データベース撤去
②第 二弾開発(2008 年 2 月〜 9 月):オンラインシステムを他社製データベース仕様に本格改修
→ 2008 年 10 月恒久運用開始
上記プランを成功させるため、急遽、全社あげて技術者を招集、また、本件に類似した作業実績を
保有するパートナー会社を参画させる等、リソース面においてできる限りの手を打った。しかしなが
ら、高度の技術力や大量のリソース投入をしただけでは、緊急プロジェクトは成功できない。緊急プ
ロジェクトの成功の鍵はマネジメント力にあり、急激な状況変化に先手が打てる体制と迅速な意思決
定力が必要となる。
データベース緊急入替プロジェクトに学ぶマネジメント
成功へと導いたマネジメントのポイント
(1)強固かつスピード重視のプロジェクト体制
緊急プロジェクトにおける情報共有と意思決定の迅速化は、プロジェクト成否の鍵となる。ま
た、緊急かつ重大な問題は既存の組織内で解決を図るより、組織横断的なプロジェクトチームを結
成することで早期解決が実現するといわれている。今回、三菱総研 DCS は「組織横断型プロジェ
クト体制/経営層直轄プロジェクト体制」(図)をもって対応した。組織横断型プロジェクト体制
は、組織の壁を超えて速やかな情報共有が図れ、各部門が得意とする分野で 120%の力を発揮し、
あらゆる角度から問題解決策を講じることが可能となる。また、経営層直轄プロジェクト体制は、
重要な意思決定、特に「人・物・金」の決定が迅速に行われる。
(2)お客様との一体化
いかなるプロジェクトにおいても、お客様と一体感をもって推進することは重要だが、緊急プロ
ジェクトでは、短期間で齟齬なくお客様に業務影響をご理解いただき、業務面/システム面での割
り切り事項を合意しなくてはならない。お客様の業務を支障なく継続させるためには、利用不可と
なる機能を補完するための暫定運用準備の早期立ち上げが非常に重要となる。
(3)プロジェクトメンバーのモチベーション向上
プロジェクトの成功は、メンバー個々の原動力なくしてあり得ない。緊急プロジェクトにおける
メンバーの当初モチベーションは、障害対応に近く、爆発的な力を発揮する。その反面、それを維
持させるのが難しい。モチベーション維持に重要なのは、円滑な情報展開と全員参加型の環境づく
りによりメンバー全員が目標を共有することで、メンバー個々が感じた緊張感、使命感を保つこ
とに他ならない。今回、若手を進行役とし毎日進捗報告会を開催、問題発生時には主要メンバー全員
参加による PD(Problem Determination)形式の打ち合わせを徹底したこと、また、組織横断型プロ
ジェクト体制で他組織の新鮮な文化に触れ、経営層直轄プロジェクトにより自分が最も注目を浴び
ているプロジェクトに参画していると各自が自覚したことは、モチベーション維持に有効であった。
図.緊急プロジェクト体制
組織横断型プロジェクト体制
経営層直轄プロジェクト体制
開発部門
技術部門
経営層
各本部は割愛
運用部門
リスク管理部門
管理部門
迅 速 な 意 思 決 定( 人・物・金 )
作成:三菱総研 DCS
緊急
組織の壁を越えて情報共有
プロジェクト
⇒あらゆる角度で課題対策
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