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Untitled - 一般社団法人 中部経済連合会
目次 Page 中部経済連合会 生物多様性宣言 1 主催者あいさつ 3 社団法人中部経済連合会 会長 川口 文夫 来賓あいさつ 4 WBCSDマネージング・ダイレクター ジェームズ・グリフィス氏 来賓あいさつ 5 経済産業省 中部経済産業局長 加藤 洋一氏 来賓あいさつ 6 経団連自然保護協議会 会長 大久保 尚武氏 来賓あいさつ 7 愛知県知事 神田 真秋氏 「中部経済連合会生物多様性宣言」の発表 8 社団法人中部経済連合会副会長 三田 敏雄 宣言へのコメント 9 名古屋市立大学准教授 香坂 玲氏 特別講演 11 国際自然保護連合チーフエコノミスト ジョシュア・ビショップ博士 会員企業による事例発表–1 31 鹿島建設株式会社 会員企業による事例発表–2 39 中日本高速道路株式会社 会員企業による事例発表–3 45 清水建設株式会社 会員企業による事例発表–4 53 中部電力株式会社 パネルディスカッション 61 ポスターセッション 83 生物多様性フォーラム 会場アンケート結果まとめ 84 中部経済連合会 生物多様性宣言 2010年10月4日 前文 宣言文 わたしたち中部経済連合会が活動エリアとする、愛知・岐阜・三重・静岡・ 長野の中部5県は、 「森の国・水の国」 とも称される豊かな自然に恵まれ わたしたちは、中部地域が豊かな自然の恵みにより ている。 世界屈指のものづくり産業を育んできたことを認識し、 深く広大な森林地帯を有する中部山岳地帯に源を発し、豊富な水量を誇 「COP10 愛知・名古屋」を契機として、 る木曽三川・天竜川・大井川などの河川を経て、 ダイナミックな海岸線を 決意新たに、生物多様性条約の理念を尊重し、 築く伊勢湾・三河湾・駿河湾などの湾岸地域に至るまでの恵まれた自然 事業活動ならびに社会貢献活動において、 の中で、地域固有種・希少種を含む多様な生物種が共生している。 生物多様性に資する取組みを積極的に推進することを宣言する。 中部地域は、 このような豊かな自然環境の下、ものづくり産業・技術の一 大集積地として発展を遂げ、資源・製品の輸出入を通して、世界と密接に 結びついている。その源をたどれば、桑と蚕の恵みを受けた繊維、土の 中部経済連合会は、 「日本経団連生物多様性宣言」及び 恵みを受けた陶磁器、水の恵みを受けた電力など、自然の恵みを受けた 「環境省・生物多様性民間参画ガイドライン」に賛同し、宣言しています。 様々な産業が基盤となり、工作機械産業、 自動車産業、航空宇宙産業など に繋がって、今日の中部経済を形成していることを忘れてはならない。今 行動指針 こそわたしたちは、わたしたちの事業活動が、地域を越えて世界各地の 様々な生態系サービスの恵みによって成り立っており、同時に大きな影 中部地域の豊かな自然とものづくりとの調和 響を及ぼしていることを再認識しなければならない。 わたしたちは、生物多様性の視点を企業経営・経営方針に反映し、持続可能な事業活動の要となる資源循環型社会風土 当地域は、従来より干潟の維持・保全をはじめとした環境保全活動に地 の形成と社会貢献活動の推進などを通じて、中部地域の豊かな自然と高度な技術に支えられたものづくりとの調和を目指 します。 域を挙げて取組んでおり、さらに2005年には「自然の叡智」をテーマに 21世紀型環境万博とも言われた『愛・地球博』を開催するなど、常に、人と 生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用 自然の共存と持続可能な社会の創造の大切さを世界に発信してきた。そ わたしたちは、中部地域をはじめ国内外の事業活動地域において、 自らの事業活動における生物多様性への影響を把握・ して、わたしたちは、 このたび愛知・名古屋において開催される生物多様 分析・改善し、 『愛・地球博』のテーマ「自然の叡智」 を引継ぎ、生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用を目指します。 性条約第10回締約国会議(COP10)を歴史的契機と捉え、自然との共存 先進的技術の活用による生物多様性保全への貢献 による事業活動を継続し、子供たちのために、地球の豊かな未来に向け わたしたちは、 ものづくり産業のトップランナーとして、培った先進的な技術を環境保全のための技術開発や取組みに活用 て発展させていくことを強く決意するものである。 し、生物多様性を育む社会づくりに貢献します。 国内外の関係組織との連携と人材育成の推進 わたしたちは、地域社会、NGO・NPOなどとのさらなる情報共有、 グローバルな連携を通じて、生物多様性保全などの取組 みを実効あるものとするとともに、生物多様性に資する新たな仕組みづくり、人づくり、地域づくりを目指します。 -1- -2- 主催者あいさつ 来賓あいさつ 社団法人中部経済連合会 会長 WBCSDマネージング・ダイレクター 川口 文夫 ジェームズ・グリフィス氏 川口でございます。一言ごあいさつを申し上げます。 ざまな事業活動が、資源・製品の輸出入を通して世 皆様おはようございます。最初に、中部経済連合 の企業がエコシステムに影響を与え、同時にエコシ 本日は、中部経済連合会が主催いたします生物多 界各地のさまざまな生態系サービスの恵みを受け 会の方々に関しましては、 この本日のフォーラム開 ステムに依存しています。ですから、生態系が今だ 様性フォーラム並びにポスターセッションにご出席 ているということをより強く認識する必要がござい 催おめでとうございます。 んだん損失し、劣化しているということは、我々のビ いただきまして、 まことにありがとうございます。 ます。 私たちWBCSDは、スイスのジュネーブにあり、世 ジネスのリスクになります。 しかし同時に、 これはそ 今、まさしく世界から193の国と地域が集まりまし 中部経済連合会は、本フォーラムにおいて生物多 界のビジネスを担っている200社のグローバル企 こにビジネスのチャンスがあるということも意味し て、COP10愛知・名古屋において、生物多様性条約 様性に関するさまざまな情報を提供し、皆様の今後 業からなる組織でありまして、日本の大きな会社と ます。ですので、ぜひ皆さん方に対しては、そのよう のポスト2010年目標を策定する歴史的転換点を迎 の諸活動に役立たせていただければと考えておりま もつながりを持っております。例えばトヨタ自動車、 なことを理解していただきたいと思います。 えております。 す。 このCOP10愛知・名古屋を契機にいたしまして、 日立製作所、中部電力、そして東京電力の皆さんも きょうは、たくさん日本の企業の方たちがこちらに 地球のあらゆる地域において、生物多様性が想像 生物多様性条約の理念を尊重して、国内外の関係 WBCSDのメンバーであり、積極的にこの生態系の活 いらっしゃって、 どのように自分たちがこの生物多様 を超えるスピードで失われ、その回復には、地球規 組織とのグローバルな連携を通じて生物多様性に 動をしていただいております。 性への影響を与えているかということを一生懸命知 模での長期的な取り組みが不可欠であると言われ 資する取り組みを着実に進めていく所存でございま これらの会社を結びつけているのは、持続可能な ろうという熱意を感じることができます。そういった ております。今後、世界が一致して新たな戦略目標 す。 どうぞよろしくお願いを申し上げます。 開発ということにみんなが力を入れているというこ 方々には、自分たちの環境に対する影響を測定し、 を策定し、世界が一体となって実行することによりま とであります。すなわち、エコロジーとバランスがと 管理し、緩和していただきたいと思います。そして、 して、生物多様性の保全が維持されることを期待し れ、そしてまた社会的な進歩も実現できるような経 実際に自分たちのサプライチェーンをグリーン化 ております。 済成長をみんなが望んでいるということであります。 し、NGOとか学会、研究者、政府と協力をすることに さて、我々中部経済連合会が活動エリアとしてお 私は、特にエコシステムということに特化して仕 よって、 どうやって緩和し、低減できるかということを りますこの中部地域のものづくりについて少し触れ 事をしております。産業界がどのような影響をエコ 考えていただきたいと思っております。 ますが、深く広大な森林や、豊富で良質な水に代表 システムに与えるのか、測定や管理、あるいは影響 そしてまた同時に、 この地域における生物多様性 される豊かな自然の恵みが製造業の源となる伝統 を緩和するためにそのエコロジカル・フットプリント の劣化を避ける規制をつくるような力添えもしてい 的基盤産業を潤し、ご承知のとおり工作機械産業、 で企業は何ができるかということを中心にしており ただきたいと思います。 自動車産業、航空宇宙産業等につながって、現在に ます。 この生物多様性というのは、本当に重要な問題で 至っております。 本日私は、COP10といこうとでCBDに来ておりま ありますけれども、革新的な活動を通じてその一助 そこには、先人たちが、単なるものづくりにとどま す。 このCOP10は、産業界にとって本当に重要なミー になることができると思います。 らずに、自然の尊さ、大切さを知り、その維持・保全 ティングだと思っております。 といいますのは、後でビ 私は、残念ながら交渉の場のほうに行かなければ にも継続的に取り組んできた結果、豊かな自然と ショップさんのほうから細かい説明があると思いま いけないので、もうすぐ退席しなければいけません ものづくりが一体となり共存してきた歴史がござい すけれども、TEEBスタディーが発表されるからであ が、多くの財界の方がこのような重要なトピックにこ ます。 ります。 れほど集まってくださったこと、非常にうれしく思っ しかしながら現代においては、ものづくりの内容 我々は、産業界としてエコシステムの活動をする ております。本当にお会いできてよかったと思いま も非常に多様化しております。我々は、企業のさま ことが非常に重要であると思っております。すべて す。ありがとうございます。 -3- -4- 来賓あいさつ 来賓あいさつ 経済産業省 中部経済産業局長 経団連自然保護協議会 会長 加藤 洋一氏 大久保 尚武氏 中部経済産業局の加藤でございます。開催をいた 微生物を、我が国の企業、産業界が安心して利用い 経団連自然保護協議会の会長を務めております て開催されるもので、中部地方で活躍する企業の生 します日本国政府を代表いたしまして、一言ごあい ただけるようにするために、さまざまな国々と協力 大久保でございます。本日は、中部経済連合会様主 物多様性への積極的な取り組み事例の紹介など、充 さつを申し上げたいと思います。 関係を構築してまいりました。今回のCOP10を契機 催の生物多様性フォーラム、 このように盛大に開催 実したプログラムが予定されていると聞いておりま 生物多様性フォーラムがこのように多数の皆様の といたしまして、 これをさらに強化・拡充をいたしま されたことを心からお喜び申し上げたいと思いま す。 ご参加のもとに盛大に開催されますこと、心からお して、我が国と途上国の双方にとって有益となる関 す。 また、フォーラムでは、中部経済連合会さんが新 喜び申し上げたいと存じます。 係を築いていきたいと考えてございます。 生物多様性条約締約国会議も本日からいよいよ たに作成された「生物多様性宣言」の発表も予定さ ご案内のとおり、名古屋国際会議場におきまして 中部地域は、2005年に自然の叡智をテーマとして 後半に入り、最終日に向けて詰めの論議が行われ れております。日本経団連では、昨年3月に「日本経 生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催 「愛・地球博」を開催いたしまして、環境への取り組 る予定と聞いております。生物多様性の保全にビジ 団連生物多様性宣言」 を取りまとめ、世に問うたわけ されておりますけれども、 これに合せまして中部経 みを世界に発信をするなど、環境と産業活動の調和 ネスがどう取り組むかというテーマも、 この条約交 ですが、その後、個々の企業や経済団体が、生物多 済連合会主催のもと本フォーラムが開催されますこ を図る意識の高い地域であります。あわせて、風光 渉の一つの大きなテーマとなっております。COP8、 様性に関する理念や方針を取りまとめる例がふえて と、非常に意義深いものと考えております。 明媚な自然豊かな地域でもございます。 COP9と関連する決議が採択されてまいりました。今 きております。 川口会長をはじめ、COP10の地元支援組織の「生 このような中部地域におきまして、COP10に合わ 回のCOP10におきまして、先週の木曜日の議論にお 今回、中経連さんが中部地方の産業、経済の特色 物多様性条約第10回締約国会議支援実行委員会」 せて中部経済連合会におきまして「生物多様性宣 きましてビジネスの参画に関する決議案がほぼまと を踏まえたより具体的な宣言を作成していただいた の会長をされておられます神田知事、さらに先ほど 言」を発表されましたことは、産業界の取り組みとし まり、最終日に決議される見通しになっていると聞 ことで、 これが中部地方の企業経営者にとって身近 ごあいさつをいただきましたジェームズ・グリフィ て誇れるものであろうと思います。積極的な取り組 いております。 でわかりやすい指針となり、生物多様性の保全に向 ス様、並びに本日ご列席の皆様、多大なご尽力に対 みをお願いする次第でございます。 我々産業界がこの生物多様性という問題に積極 けた取り組みがより一層推進することを期待してお しまして厚く御礼と敬意を申し上げる次第でござい 本日は、国内外の先進的な取り組みが発表される 的にかかわっていくことが求められているということ ります。 ます。 と伺っております。 この場から、生物多様性の価値と であり、我々は、その意味をしっかりと受けとめて、受 最後になりましたが、本日のフォーラムの開催に 生物多様性は、自然・生命の豊かさを包括的にあ 調和した新たなビジネスに発展していくことを願っ け身ではなく、自主的かつ積極的に我が事としてこ 向けて準備された主催者の皆様のご尽力に敬意を らわす概念でございます。人類は多様な生態系から ているところでございます。 の問題に取り組み、そうすることで生物多様性を育 表し、私のごあいさつにかえさせていただきます。 ど 多大な恩恵を受けてきた。皆様ご高尚のとおりかと 最後になりましたけれども、生物多様性フォーラ む持続可能な社会を実現させていくこと、 これが必 うもありがとうございました。 存じます。さまざまな生物を活用して、農業、食品の ムのご成功、そして本日お集まりになられました皆 要だと考えております。そのために我々に何ができ みならず、医薬品、化学などさまざまな産業に幅広く 様のますますのご発展・ご活躍を祈念いたしまして、 るのか、 このCOP10がそれを考え、実行に移すため 活用されております。生物多様性は、今後の我が国 お祝いの言葉とさせていただきます。本日はどうも の契機になることを期待しております。 の経済発展にとっても非常に重要なファクターでご おめでとうございます。 そうした問題意識の中で、このCOP10の最後の ざいます。あわせて、生物多様性の保全のために産 1 週間に、中部経済連合会、名古屋商工会議所、そし 業界の果たす役割も非常に大きなものがあるので て私ども経団連自然保護協議会が共同いたしまし はないかと考えております。 て、ビジネスを対象とした一連の行事を行います。 経済産業省では、途上国に豊富に存在いたします 本日の生物多様性フォーラムは、その先陣を切っ -5- -6- 来賓あいさつ 「中部経済連合会生物多様性宣言」の発表 例えば、新薬の開発に欠かせない遺伝資源やすぐ れた工業製品開発の重要なヒントになるバイオミミ クリーなど、経済活動の多くは自然環境の恵み、すな 愛知県知事 わち生物多様性に支えられております。 神田 真秋氏 しかし、人間のさまざまな活動によりましてこの生 社団法人中部経済連合会副会長 三田 敏雄 物多様性が大きく損なわれ、 このまま特に対策をと 皆さんおはようございます。 ご紹介をいただきまし られなければ、その経済的な損失は、2050年までに 中部経済連合会副会長の三田でございます。皆 一堂に会し、地球の生物多様性保全への新たな目 た地元知事の神田でございます。 世界のGDPの7%に達すると、そのようにも言われて 様には、 ご多忙のところご列席賜りまして、まことに 標を定めるこの機会を、大きな契機として、生物多様 先週から始まりましたCOP10もいよいよ佳境とい おります。改めて生物多様性の大切さ、 そして今回の ありがとうございます。 性条約の理念を尊重し、次のとおり声高らかに宣言 う段階になってまいりました。 この時期に、開催地元 COP10の重要性を感じる次第でございます。 それでは、ただいまから 「中部経済連合会生物多 いたします。 の経済界の皆様方が生物多様性をテーマにこうした さて、安定した経済活動を将来にわたって持続さ 様性宣言」を発表いたします。 フォーラムを力強く開催していただくことは、私ども せるためには、 自然の恵みが引き続き得られるよう、 「森の国・水の国」 と称される私たちの中部地域 【宣言文】 にとりましても大変力強いことでございます。改めて 生物多様性を保全しながら持続可能な利用を図るこ は、豊かな自然とものづくりが一体となって発展し、 わたしたちは、中部地域が豊かな自然の恵みによ 感謝、敬意を表したいと存じます。 とがとても重要でございます。 世界屈指の産業・技術の一大集積地を築いてきまし り世界屈指のものづくり産業を育んできたことを認 本日のこのフォーラム主催の中経連を初め中部経 したがって、経済活動の中心を担っておられる企 た。 識し、 「COP10愛知・名古屋」を契機として、決意新た 済界の皆様方には、 ちょうど5年前、2005年の「愛・地 業の皆様方の生物多様性の保全に果たす役割は、大 すなわち、さまざまな自然の恵みを受けた伝統的 に、生物多様性条約の理念を尊重し、事業活動なら 球博」の開催に際し、パートナーとしてしっかり手を結 変大きいものと考えております。 基盤産業を源とする当地域のものづくりは、工作機 びに社会貢献活動において、生物多様性に資する取 び、いろいろとご協力をいただいたところでございま 現在、皆様方による具体的な取り組みも、例えば企 械産業を経て自動車産業、航空宇宙産業へと広がり り組みを積極的に推進することを宣言します。 す。おかげさまでこの博覧会は大成功という評価を 業による森づくりなどCSRとしての環境保全活動から、 ながら発展を遂げております。 以上でございます。ありがとうございました。 いただき、環境意識の向上など、 この地域にさまざま 生物多様性に配慮した調達や環境負荷に配慮した商 同時に当地域では、それと並行して自然の恵みを な成果を残していただいたところでございます。 品開発など、いわば企業活動の本体に直結した取り 絶やすことがないように、積極的に環境保全活動に 私どもは、そうした成果を決して一過性のものに 組みへと広がりを見せているところでございます。 も取り組んでいます。その精神は、2005年に開催し してはならないと、そのような思いで、地球の将来に こうした中、中経連におかれましては、個々の企業 た「愛・地球博」のテーマ「自然の叡智」に引き継が とって重要な国際会議であるこのCOP10を、川口会 の取り組みを超えて 「生物多様性宣言」を取りまとめ れ、今日まで自然との共存と持続可能な社会の創造 長とともに2008年のCOP9に臨み、おかげさまで誘致 られ、本日発表されると伺っております。私といたしま の大切さについて世界に発信し続けているところで することができたところでございます。 しては、経済活動における生物多様性の重要性に関 あります。 開催決定後、COP10支援実行委員会を結成し、 ここ する認識が深まり、 その取り組みの輪が広がっていく 私たち中部経済連合会は、今後も持続可能な事 へ川口会長にも副会長として入っていただき、 さまざ ことは、非常に意義のあるすばらしいことだと思って 業活動を継続し、資源循環型社会風土の形成と社会 まリーダーシップをとっていただき、中部経済界を率 おりまして、 この宣言に大いにご期待を申し上げると 貢献活動の推進を通じて、中部地域の豊かな自然と いてCOP10の準備と開催にご尽力をいただいたとこ ころでございます。 高度な技術に支えられたものづくりとの調和を目指 ろでございます。改めて皆様方にお礼申し上げたい 今回のフォーラムが、企業の皆様方の取り組みの してまいります。 と思います。 より一層の進展、そして企業、行政、NPOといった多 また、先進的技術の活用による生物多様性保全へ 私が改めて申し上げるまでもないことでございま 様な主体の連携の強化につながりますことを心から の貢献や生物多様性に資する新たな仕組みづくり・ すけれども、生物多様性は私たちの社会経済活動と お祈り申し上げ、私からのあいさつとさせていただき 人づくり・地域づくりを着実に進めてまいります。 大変強いかかわりがございます。 ます。 きょうのご盛会おめでとうございます。 私たちは、COP10愛知・名古屋において、世界が -7- -8- 宣言へのコメント 来賓あいさつ WBCSDマネージング・ダイレクター ジェームズ・グリフィス氏 名古屋市立大学准教授 香坂 玲氏 本日は、 こうして宣言が無事に発表されましたこ これを広げていくことも、 とても大事なことだと思い と、 まずお喜び申し上げます。 ます。実は、宣言文の議論の中でも、経団連の宣言 今回の宣言文は、2つほど当地らしさが出ている 文はやはり大変参考になる部分がございまして、そ のではないかなと思います。 ういったものについては参考にさせていただきまし まずは、 自然の地形、木曽川ですとか豊かな山、そ たし、経団連の宣言文がさまざまな企業の独自の宣 特別講演 して三重県の湾ですとか、 こういったものが十分に 言にも広がりを見せていったということは、今後この ジョシュア・ビショップ博士 反映されている。なおかつそれがものづくりの精神 地域でも、 この中部経済連合会の宣言というものが にも受け継がれているということがふんだんに盛り 広がりを見せていく、そのような予感をさせてくれる 込まれている宣言文になっているというふうに感じ 動きであったのではないかなと思います。 ております。 大久保会長には、経団連でのセミナー等々を通じ もう一つ私がいかにも愛知県、そして中部らしい て、ジェームズ・グリフィスさんも参加いただくよう と感じておりますことは、決まるまでは若干いろいろ なさまざまなワークショップを通じて、今回こういっ なプロセスがあるけれども、決まってからは、物すご た動きを広めていっていただきました。 く早いスピードで物事が決まっていって、物すごく頼 また、本日午後のセッションのパネリストとして りになるというポイントでございます。実はこれは 涌井先生がお見えでございますけれども、涌井先生 環境省のある職員の方にも、 「今回、COP10を開催し は、中部大学というこちらの地方の大学と、そして東 て、本当に愛知県、名古屋市、そして中部は頼りにな 京の東京都市大学という両方の地域で教壇に立っ る」 と言っていただけました。 「やや独立の機運が強 ていらして、両方の地域でこういった経済活動につ 過ぎる面もあるが」 とくぎは刺されましたが、 「一度 いての動きを広めていっていただける大変貴重な 決まると、それを着実に実行していただけて、そして 先生でいらっしゃるというふうに考えております。 実行力が物すごくある、地元を愛する心の強い地域 今後、中部経済圏という独立した機運のある大変 だ」 ということを言っていただけました。 重要な地域ですが、 これをさらに世界に広げていく そのように、一度決まったことを今後とも末永く実 ためにも、中部で、そして世界で力を合わせてこのよ 行していただける地域として、知事がまさにおっしゃ うな機運を盛り上げていきたいと存じます。 られたように、 この宣言文の精神が一過性のもので 本日は本当におめでとうございました。ありがとう はなく、今後とも継続して広がっていくことをご期待 ございます。 国際自然保護連合チーフエコノミスト 会員企業による事例発表 パネルディスカッション 申し上げたいと思います。 そして、中部という非常に豊かな地域ではござい ますけれども、 この地域からほかの地域と連携して -9- - 10 - 特別講演 ジョシュア・ビショップ博士 世界における生物多様保全への事業者の参画について おはようございます。 ご招聘くださいましてありがと そしてまたもう一つ重要なTEEBスタディーのバック うございました。IUCNを代表いたしましてお話をした グラウンドになっているのが、2005年に発表されまし ジョシュア・ビショップ博士 いと思います。 た生態系評価であります。 これは、生態系が損失して まず、宣言が発表されましたけれども、おめでとう いるということ、そしてまた生態系サービスが損失し プロフィール ございます。そしてまた、非常にすばらしいイベント ているということについて記載しています。経済的な IUCNチーフエコノミスト。経済効率が高く、より公正な自然保護アプ を開催していることに対してお祝い申し上げたいと思 側面については、 これは議論していません。 ローチ促進の方法に焦点を置いた研究に従事し、経済的側面からみた います。 ですから、TEEBというのはこの2つのギャップを埋 保全の事例を提供する。IUCNに加わる以前は、ロンドンの国際環境開 日本の企業の方々がCBDにかかわってくださるとい めるものであります。スターン・レビューからヒントを 発研究所に勤務したほか、西アフリカの複数の組織機関でコンサルタ うことで、大変うれしく思います。そして、政府やステー 得て、そしてまた生態系評価におけるギャップを埋め ントまたはスタッフとして活躍してきた。一貫する研究テーマは貧困削 クホルダーの方々もさらに参画してくださることを期 るためのものであります。 国際自然保護連合チーフエコノミスト 減対策としての経済ツールと市場ベース・メカニズムの活用による自 然保護の恩恵促進である。TEEBに関しては、企業向けD3レポートの責 任者を務める。イェール大学文学士号、ハーバード大学公共政策学修 待しております。 The Economics of Ecosystems & Biodiversity The Economics of Ecosystems & Biodiversity TEEB mandate: 士号、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ博士号取得。 The Economics of Ecosystems and Biodiversity: Potsdam Initiative – Biological Diversity 2010 “In a global study we will initiate the process of analysing Overview and implications for Business the global economic benefit of biological diversity, the costs of the loss of biodiversity and October 2010 世界における生物多様保全への事業者の参画について Business Engagement in Biodiversity Conservation around the World Po i n t the failure to take protective measures versus the costs of effective conservation.” Joshua Bishop, IUCN http://www.bmu.de/files/pdfs/allgemein/application/pdf/ potsdam_initiative_en.pdf (Coordinator, TEEB for Business) さて、 このようなことにヒントを得まして、2007年に さて、私はスライドを用意しております。1時間ぐら G8の環境閣僚会議がドイツのハイリゲンダムで行わ 本講演では、民間事業者向けTEEB (生物多様性と生態系サービスの経済学) レポートの成果 いのお話になるかと思いますけれども、TEEBの概要 れました。そしてまた、新興5カ国が参加をしました。 そ を中心として、世界における事業者による生物多様性への取り組みについて紹介する。例えば、 についてお話をしたいと思います。 してここで10項目の計画ができました。 事業者にとっての増大する生物多様性損失に関する懸念や、複数の先進的民間企業がどのよ 生 態 学と生 物 多 様 性 の 経 済 学 、T E E Bで ありま その1項目目が、 グローバル・スタディーを行うとい うに生物多様性保全や生態系回復活動に取り組んでいるかについての事例、各種の指標や生 す。そして私が最もかかわっていますのはTEEB for うものでありました。生物多様性の経済的な利益、そ 物多様性損失と生態系劣化の要因、 またこれらの要因がどのように事業者にとってのリスクや Businessでありますので、世界中で企業が生態系と生 して生物多様性の損失のコスト、そして保全のコスト、 機会として現れるのかについて紹介したい。同時に、消費者の自然に優しい製品に対する嗜好 物多様性でどのようなことに取り組んでいるかについ 効果についての比較であります。 この第1項目が最も の変化や、企業がそれに対してどのように対応しているかに関する事例、事業がどのように生物 てお話をしたいと思います。 注目されたものであり、最も支援されているものであ 多様性や生態系サービスに依存し、また影響を与えているかを計測、評価、報告するための最 TEEBに関してのまず起源でありますけれども、 これ 新の取り組みも紹介する。さらに、生物多様性リスクを管理するための実際的なツールや企業 は最初に2つの文書に起源を発します。まず、気候変 の国々がこのイニシアチブを支援しております。 が実際にどのようにこれらのツールを活用しているかについても紹介したい。民間事業者向け 動の経済学のスターン・レビューがありますけれども、 さて、 ここでの指令でありますけれども、 まず最初に TEEBレポートは、いかに事業者が、地域貢献活動や貧困削減活動などの社会貢献と生物多 これは2007年に発表されましたが、政策決定者のビ ドイツの政府、そしてEUのサポートを得て開始されま 様性や生態系サービスへの取り組みをすり合わせていくことができるかについて検証を行った ジネスの気候変動に対する考え方が変わってまいり した。国連環境計画・UNEPが主催をして、すべての活 ものである。 また、ビジネスと生物多様性に関する様々なイニシアチブや事業者や他のステー まして、気候変動に関しての経済的な影響について、 動をオーガナイズしています。 このスタディーであり クホルダーの今後の課題についても紹介したい。 そしてまた気候変動に取り組む経済学的な重要性に ますけれども、新しいデータを収集するということで ついて取り組んだものであります。 はありません。今までの最良なエビデンスをまとめて - 11 - - 12 - ります。さまざまな国の旗がありますけれども、 これら 特別講演 ジョシュア・ビショップ博士 世界における生物多様保全への事業者の参画について 統合して、現実的なソリューションを意思決定者に対 専門家が入っております。 ですから非常に科学的な分 ン、アダプテーションということに関するもの、そして ます。 このレポートにおいては、何十、何百もの文献を して提供するというものであり、1,000人以上の研究 析であります。そして一番下ですけれども、CBDの事 また珊瑚礁に関するもの、そして気候変動に対する適 参照しております。例えば生物理学、生態系サービス 者、機関が貢献をしました。 また、さまざまなビジネス 務総長のジョグラフ氏が入っております。 応策に関しての報告書であります。生態系の管理、そ のトレンドも見ています。そしてまた価値の考え方で してまた保全を向上させることによって、それが適応 ありますけれども、 どのようにすれば生態系や生物多 策のパッケージとなるという考え方であります。 様性を幅広く価値評価できるのか、経済的な価値をど そして2009年末でありますけれども、政策決定者向 のように計測をするのかということを見ているわけで けのTEEBをつくりました。 これは国際、そして国内的な あります。 コミュニティー、そして公的機関、科学的な機関からも レビューアーが参加をいたしました。 The Economics of Ecosystems & Biodiversity TEEB timing & outputs: The Economics of Ecosystems & Biodiversity TEEB structure: • • • 2008 TEEB Phase I May 08 Interim report (CBD COP9, Bonn) Multi-donor project, initiated by the EU and Germany on behalf of G8+5, hosted by UNEP 2009 2010 TEEB Phase II Sep 09 TEEB Climate Issues Update (Strömstad) Nov 09 TEEB D1 for policy makers (Brussels) メニューを提示しています。そしてまた、そのような政 Summer / Autumn 2010 D2, D3, D4 Study includes data synthesis, new analysis, methodological and policy advice over the period 2007-11 Final TEEB synthesis & D0 launch CBD COP10 (Oct 2010, Nagoya) 1000+ contributors / reviewers from public agencies, businesses, NGOs and individuals 策をどのように国中で実施をしているかということで あります。重要なことは、国際的なレベルでのアクショ The Economics of Ecosystems & Biodiversity TEEB Foundations report (D0) Coordinator: Pushpam Kumar, U. Liverpool Ch1 Integrating ecological and economic dimensions ンがあります。例えば、生態系サービスに対する支払 Ch2 Biodiversity, ecosystems and ecosystem services い、PSも入っております。 Ch3 Measuring biophysical quantities and the use of indicators Ch4 Socio-cultural context of ecosystem and biodiversity valuation そしてまた、 ことしになってTEEBレポートが次々と Ch5 The economics of valuing ecosystem services and biodiversity • Annex A. Sources of support on biodiversity valuation • Annex B. Database of valuation case studies (wetlands and forests) • Annex C. Estimates of monetary values of ecosystem services さて、 タイミングについてお話をしたいと思います。 発表されました。 この黄色の表紙でありますけれども、 ことし末でフェースⅡが終わります。フェースⅠで 「TEEB for Business」、 これは7月に発表されました。 いろんな機関のロゴがありますけれども、まず、財 ありますけれどもスクデフ氏が2008年に開始し、その そしてまた、 自治体に対するTEEBが赤の表紙でありま 政支援をしたのは日本の政府であります。そしてま 後すぐに中間報告書が発表されました。最初のアウト す。そしてことし、名古屋においてTEEBのファンデー た、上の列にありますロゴは、実際に主導的な役割を プットでありまして、 ドイツでのCOP9で発表されまし ション・レポートが発表されます。 これが科学的な根拠 そしてまたこのレポートの中には、非常に難しいト 果たして研究を行った機関であります。IUCNもこの中 た。 このレポートにおいては、生物多様性の損失の経 となるレポートであります。そしてまた、 グリーンのレ ピックについても扱っています。例えば、現在の価値と に入っております。 済的規模がこれによって明らかになりました。そして ポートでありますけれども、 これはTEEBの森林に対す 将来の価値をどのように比較をするのか。割引率とい また、解決策も提示され、ビジネスにおけるソリュー る、そして都市、工業セクターに関するさまざまなアプ う考え方を使っています。そしてまた科学では、 どのよ ションも提供されました。その後、さまざまなレポート ローチをまとめた統合レポートであります。 うにすれば適切な割引率を設定することができるの が出まして、 これを成果物と呼んでおります。2009年、 さて、フェーズⅡのアウトプットでありますけれど か、将来の損失について測ることができるのかという 2010年にも発表されました。 も、 この5つのレポートに分けることができます。上か ことについても検討しています。 らファンデーション・レポート、そして科学レポート、 このレポートの中では、生物多様性と生態系の特別 そしてまた国際的な政策決定者に関するレポート、そ な特徴がありますので、割引率に関しては低い値、あ して自治体に対するレポート、そして企業に対するレ るいはゼロ、あるいはマイナスの割引率を使うという www.teebweb.org ポート。それから一番下に市民に関するTEEBがありま ことも検討しております。 これによって経済的な分析 TEEB for Policy-Makers (D1) すけれども、 これは報告書ではありません。 これはコ が、人工のインフラと比較しても大幅に変わっていく ミュニケーション・キャンペーンです。フェイスブック と思います。 ですとかツイッターなどウェブベースのコミュニケー さて、 このTEEBの大部分でありますけれども、意思 ションツールを使って、できるだけ市民に対して広報 決定者に関してコミュニケーションをするものであり 活動を行うというものです。 ます。なぜ生物多様性が重要なのかということを伝え もうちょっと説明していきたいと思います。ファン ています。 The Economics of Ecosystems & Biodiversity TEEB governance: Study Leader: Pavan Sukhdev, Managing Director, Deutsche Bank Advisory Board: • • • • • • • • • • • • • • Achim Steiner, Executive Director, UNEP Yolanda Kakabadse, President, WWF Herman Mulder, Director, Global Reporting Initiative Jacqueline McGlade, Executive Director, European Environment Agency Julia Marton-Lefevre, Director-General, IUCN Ladislav Miko, Minister of Environment, Czech Republic Jochen Flasbarth, Director-General, EPA, Germany Prof. Lord Nicholas Stern, London School of Economics, UK Prof. Karl-Goran Maler, Beijer Institute, Sweden Prof. Peter May, President, International Society for Ecological Economics Prof. Edward Barbier, University of Wyoming, USA Prof. Joan Martinez Alier, University of Barcelona, Spain Dr. Giles Atkinson, London School of Economics, UK Ahmed Djoglaf, Executive Secretary, CBD The Economics of Ecosystems & Biodiversity TEEB final reports for different audiences TEEB Ecological and Economic Foundations (D0) Ch6 Discounting, ethics and options for maintaining biodiversity and ecosystem integrity Ch7 Lessons learned and linkages with national policies www.teebweb.org TEEB for Local Policy (D2) September 2010 さて、 プロジェクト全体でありますけれども、 ドイツ TEEB for Business (D3) 銀行の取締役の理事であるスクデフ氏が主導してお July 2010 TEEB for Citizens (D4) ります。インドでもオペレーションをしており、シンガ October 2010 ポールでもオペレーションをしていました。そして諮 問委員会が設立されまして、国際的な政治家もいます まず2009年でありますけれども、最初に、気候変動 デーション・レポートでありますけれども、 リバプー 生物多様性には3つの側面があります。生態系、そ し、そしてまた重要なことですけれども、科学の専門 のコペンハーゲンでの会合がございましたけれども、 ル大学の先生で、UNEPのアドバイザーも務めている して種・遺伝子であります。TEEBの中では、質と量の 家も参加をしています。経済学、そして生物多様性の それに関連した森林とか、あるいはそのミチゲーショ Pushpam Kumar 先生がコーディネーターを務めてい 両方を見ています。 これが2つの重要な側面でありま - 13 - - 14 - 特別講演 ジョシュア・ビショップ博士 世界における生物多様保全への事業者の参画について す。そしてその質と量の相互作用を見ているわけで て使われてきたものであります。さまざまな価値のカ ますけれども、ベネフィット・トランスファーということ ていると思います。 あります。それによって、生態系サービスの価値が決 テゴリーを示しています。 に関して言及をしたいと思います。 そしてまた、非利用価値であります。例えば2番目で これは、ローカルでの価値を外装してそれをスケー ありますけれども、 これはイギリスとイタリアの研究例 ルアップする、あるいはほかのロケーションにトラン でありますけれども、人々に対してどのぐらい保全の スファーするというものであります。 これを正確に行う 価値があるのかということを聞いています。 「アマゾン 科学というのが今、生まれつつあります。例えば、一つ の熱帯雨林の価値はどのぐらいですか」 ということを の場所にある湿地の価値を社会経済的な状況でその 聞いているわけです。 これは幾つかのテクニックを用 調整をして、ほかの湿地ではどのような価値になるか いて評価をすることができるわけですけれども、 この ということで、価値をトランスファーするものでありま ような研究から、非利用的な価値が非常に大きいとい す。 このような方法を用いて、一つの場所からほかの うことがわかるわけであります。ですから、もっと政策 場所に価値を移転するということが比較的正確にで 決定者が注目をすべきであると考えております。 まってきます。 The Economics of Ecosystems & Biodiversity Total economic value (TEV) The Economics of Ecosystems & Biodiversity Biodiversity and ecosystem services Biodiversity ‘Quality’ ‘Quantity’ Services (examples) Ecosystems Variety Extent • Recreation • Water regulation • Carbon storage Species Diversity Population • Food, fibre, fuel • Design inspiration • Pollination Genes Variability Number • Medicinal discovery • Disease resistance • Adaptive capacity きるものであります。例えば、私の国、アメリカであり ここで強調したいのは、利用価値と非利用価値、 こ ますけれども、 この価値、 これらのテクニックは、法律 例えば生態系のサービスでありますけれども、それ の2つの区別であります。利用価値というのは、目に見 においても認められておりまして、損害賠償などに使 ぞれのコンポーネントに関係するサービスを選んで える有形のものです。例えば製品ですとか、 レクリエー われているものであります。 います。これは人々が得る恩恵であります。そしてま ションの価値など、目に見えるもの。 これは計測しやす さて、現実的な例を挙げてみたいと思います。TEEB た、企業などが理解できる価値であります。 いものです。そしてまた、意思決定、市場において内部 においては、何百ものスタディーを集めました。 もちろ 化しやすいものです。そして非利用価値というのは、 ん何千も見ましたが、何百ものケーススタディーを集 無形のものであり、本来の自然の価値であります。 こ めて、テクニックを用いてさまざまな生態系サービス れは定量化するのは難しく、マーケット・メカニズムで の価値評価を行いました。その中で幾つかの例を見 取り扱うのは難しいものであります。 しかし、何らかの たいと思います。 The Economics of Ecosystems & Biodiversity 正確さを持って見ることができます。 非常に複雑なつながりがあります。生態系サービスと 人間の福祉の間のつながりを示しています。エコノミ はないと考えています。例えば、選択の自由ですとか、 Private profits Private profits (less subsidies) Public benefits $12,392ha $9,632ha $1,0821ha Storm protection Subsidies - $8,412ha 5000 $584ha $1220ha $987ha Fisheries $584ha $584ha Forest prod. 0 All values in NPV over 9 yrs (1996-2004) at 10% discount rate Net public costs of restoration after 5 years - $9,318ha Source: Barbier (2007) さて、もう一つのアプリケーションを見てみたいと The Economics of Ecosystems & Biodiversity 思います。 これは価値評価を実際に適用したタイの例 Author Country (sample) Benefit Value (Euros per annum) です。 Dubgaard (1998) Denmark (n=1420) Forest recreation (annual pass) € 18 (mean WTP) € 70 million (total population) マングローブの森の価値と、エビを養殖して輸出し Horton et al. (2002) UK and Italy (n=407) Creation of parks in the Amazon € 48 - € 63 per HH (5 to 20%) € 1 billion in the UK and “a similar amount” in Italy た場合の価値を評価したものであります。 この選択肢 Huhtala (2002) Finland (n=1871) Recreational use of national parks € 19 (mean WTP) € 75 million (total population) Reira Font (2000) Mallorca, Spain (n=1805) Tourist visits to protected areas (option value) € 181 million 養殖のほうがいいわけです。 しかし、本当に包括的に Scarpa et al. (2000) Ireland (n=8371) Create nature reserves in forests currently lacking € 725,000 for 26 sites もっと正確に分析をするためには、調整をしなければ は明らかです。例えば民間の価値を考えた場合には、 なりません。 まず、政府から受けている補助金、 これは Adapted from: EFTEC. 2002. Populating the Environmental Valuation Reference Inventory: 40 European valuation studies. Final report submitted to European Commission, DG Environment. ストといたしまして、 これらをすべて定量化する必要 Shrimp farms or Mangroves? US$/ha in 1996 10000 Valuing forests in Europe (examples) では、 ミレニアム生態系評価でありますけれども、 The Economics of Ecosystems & Biodiversity 納税者に対するコストとなるから経済的な価値では これは、 ヨーロッパにおける森林の価値評価であり ありません。それを除外いたしますと、若干ですが、養 社会的な関係ということについて定量化することはで さて、テクニックであります。 どのように見ているか ます。ベネフィットのコラムを見てください。幾つかの 殖のほうがよいように見えるかもしれません。 しかし、 きませんが、幅広い背景で見ています。経済分析をす というものでありますけれども、 これは何十年にもわ スタディーにおいては、 レクリエーション、それから観 ここで環境的なコストと恩恵を考えます。そうすると、 るときには、 この一部しか見ないにもかかわらず、幅 たって環境、経済学者によって開発されてきたもので 光に焦点を充てています。 これは価値化が比較的やさ 全く様相が変わってきます。マングローブを保全する 広く見ているわけであります。 あります。 これらは比較的ローカルスケールでは価値 しいものであります。 レクリエーション的な価値があ 場合のコストと恩恵をすべて考慮いたします。長期的 さて、 これが枠組みであります。何十年にもわたっ の評価に信頼性があると思います。 この一番下であり るということに関しては、比較的きちんと評価がされ には、養殖をすると公害が発生しますので、持続可能 - 15 - - 16 - 特別講演 ジョシュア・ビショップ博士 世界における生物多様保全への事業者の参画について ではありません。そしてまた、回復のコストもかかりま 生物多様性や生物多様性の持つ価値というのをこの す。そういったコストを考えます。そしてまた、マング 市場に中に取り込んでいく方法はたくさんあります。 ローブにはストームから守るというような恩恵があり 世界中にいろいろあります。日本にもありますけれ ますが、だれもそれに対して支払っていません。です ども、市場をつくっていく、それから重要なこととして、 から、マングローブのほうがもっといいということにな 助成金をどうするかということもあります。すなわち、 るわけであります。 結局、環境悪化につながっていくような補助金、例え そしてまた、ほかにも似たようなケーススタディー ば、 タイにおいては先ほどのエビの養殖の補助金があ がTEEBの中には入っています。 りますけれども、それをどうやってなくしていくか。そ The Economics of Ecosystems & Biodiversity TEEB for Policy-Makers (D1) Coordinator: Patrick ten Brink, IEEP Ch1 The global biodiversity crisis and related policy challenge Ch2 Framework and guiding principles for the policy response Ch3 Strengthening indicators and accounting systems for natural capital Ch4 Integrating ecosystem and biodiversity values into policy assessment Ch5 Rewarding benefits through payments and markets Ch6 Reforming subsidies Ch7 Addressing losses through regulation and pricing Ch8 Recognising the value of protected areas Ch9 Investing in ecological infrastructure Ch10 Responding to the value of nature のほかの規制、そして税制改革も必要です。また、保 が生物多様性や生態系のサービスに関心を持ってい Aims to raise public awareness of: • contribution of ecosystem services and biodiversity to human welfare • an individual’s impact on biodiversity and ecosystems • areas where individual action can make a positive difference • http://www.teeb4me.com • http://twitter.com/TEEB4ME • http://www.facebook.com/TEEB4me • http://www.vimeo.com/teeb4me 定者、政府であるとかあるいは財界の人たちに知って スさんもおっしゃいましたけれども、我々が与える影 響と生態系に対する依存、そしてそこから出てくるリス クと機会です。そして3番目は、我々のそのリスクや機 会、あるいは影響や依存をどのように測定し、報告す るか。そして4番目に、 リスクをどのように減らすか。5 す。政府がせっかくつくった保護区があるわけですけ 市民向けのTEEBでありますけれども、先ほど申し上 番目は、 どうやってそのようなビジネスの機会を拡大 れども、それがどのような価値を持っているかというこ げましたように、 こちらは基本的には啓蒙活動である するか。6番目は、産業界の生物多様性における活動 とを認識できるようなシステム、そしてまた復旧に投 ということです。一般市民の意識向上のためのもので と社会発展の活動をどのように結びつけるか。そして 資を促進するような方策も重要であります。気候変動 あります。個人の人々に対して、生物多様性の損失に 最後、7番目ですけれども、 どのような活動を今後して への対応ということもありますけれども、 コスト効果の 対して個人のレベルとして何ができるかわかってもら いけばいいかという処方箋であります。 いい形でほかの生態系サービスをいかにたくさんつ うというキャンペーンです。 TEEB for Local Authorities (D2) Coordinators: Heidi Wittmer, UFZ; Haripriya Gundimeda, IITB Ch1 Introduction to the challenges at local level Ch2 Approaches to consider the benefits of ecosystem services もらうかということでありますが、国あるいは国際政治 Ch3 Methods to consider ecosystem services (cost-benefit analysis) Ch4 Environmental Management in urban contexts 家のためのTEEBというのが出されています。実際に Ch5 Natural Resources Management (by sector) Ch6 Spatial planning instruments and Impact Assessment 幾つかの方法であるとか、あるいは手段がここで説明 Ch7 Protected Area Management and local governments Ch8 Marked-based instruments for conservation Ch9 Competitions, certification and labeling してあります。エコシステムの価値であるとか生物多 るのか。そして2つ目に、生態系のサービスとビジネス との関係をどのようにして理解するか。先ほどグリフィ 護地区の価値の認知ということも非常に重要でありま The Economics of Ecosystems & Biodiversity いのは、実際にどうすれば我々がこれらをその意思決 ぜ変わってきているのか、なぜ財界、あるいは産業界 TEEB for Citizens (D4) かっていけるようにするかということであります。 こういった価値を評価した後にしなければいけな ということからまず初めました。ビジネスの背景はな The Economics of Ecosystems & Biodiversity The Economics of Ecosystems & Biodiversity The Economics of Ecosystems & Biodiversity Business awareness of BES TEEB for Business (Deliverable 3) 1. 2. Business, biodiversity and ecosystem services Business impacts & dependence on biodiversity and ecosystem services 3. Measuring & reporting biodiversity and ecosystem impacts & dependence 4. Scaling down biodiversity & ecosystem risks to business 5. Increasing biodiversity business opportunities 6. Business, biodiversity and sustainable development 7. A recipe for biodiversity and business growth それでは、最初に背景の変化から見ていきたいと 様性を配慮するためのもので、例えば会計の制度など があります。現在、ほとんどの国の国家の会計システ 今までが概観で、TEEBというスタディーが全体とし 思います。 この表でありますけれども、 これはTEEBの ムにおいては、明確にこのエコシステムや生物多様性 先ほど言いましたように、地方政府、行政向きの て何を目指し、何を成果物として持っているかという ために行った調査でありますけれども、産業界の人の の価値を取り込んではいません。今、名古屋で開かれ TEEBもあります。こちらは非常に細かいレベルまで 話をしましたけれども、 ここからは、産業界にとっての 認識を調べています。財界のリーダーの人たちが、生 ているCOP10においては、 このような形で生物多様性 ケーススタディーを行いまして、実際に評価、あるいは メッセージということであります。 物多様性の損失に対して懸念をしているかどうかとい を国の収支に2020年までに導入できるかどうかとい 費用対効果分析をローカルのレベルでどうやってやる いろいろなエコシステム、あるいは生物多様性に関 うことで、昨年の末に行われ、 ことしの年初にTEEBの う議論をしております。我々IUCNとしては、ぜひそうし かということが書かれております。いろんな例がありま してどんなことが学べるかということでありますけれ パートナーの一つでありますプライスウォーターハウ ていただきたいと思っています。もちろん実際には難 す。地方自治体が実際にどのような形で、例えば生態 ども、後でお見せしますけれども、いろいろな人がつ スクーパースで発表しました。 しいと思いますし、そのために能力を調整しないとな 系のシステムを土地利用に導入するか、あるいは環境 くったレポートであります。 これを見てみますと、心配をしているという人たち かなかできないという能力構築の問題もありますけ アセスをやっているかというようなことを書いてありま ロゴを先にお見せしていきたいと思いますけれど はアジア、太平洋ではかなり高いということがわかり れども、ぜひ押したい方向です。会計の方針にさまざ す。そしてまた、マーケットベースの手段としてどのよう も、 ここは特に貢献度の高かった組織のものでありま ます。 ラテンアメリカ、 アフリカ、そして中東でもかなり まな手段があります。 これらを使うことによって、 この なものがあるかということもこの中で書かれています。 す。特にこの TEEB for Business に関しましては、背景 高くなっております。 これは、我々としてはちょっと驚き - 17 - - 18 - 特別講演 ジョシュア・ビショップ博士 世界における生物多様保全への事業者の参画について でありました。でもひょっとしたらこの意識の違いとい すのは、法規要件への対応ということです。法規自体 では次に、産業界がどのような形でビジネスと生物 けているかということです。 この何十年にわたる森林 うのは、産業界の違いなのか、それとも産業の構造が が今、急速に変わってきておりまして、多くの会社はや 多様性の関係を理解できるかということですけれど 伐採によって、 トータルで122億ドルなくなっていると 地域によって特異性があるからではないかというふう はりこれも重要であると、法規が変わる中で、生物多 も、非常に複雑なストーリーとなっております。 このイ いうことでありますけれども、一番下のところですね、 に思っています。単なる私の憶測ではありますけれど 様性であるとか生態系に対してもっと新しいイニシア メージをごらんいただきますと、いかに複雑かという 例えば土壌の栄養源が減るとか、あるいは流出水であ も、 ラテンアメリカやアフリカにおいては、大半の産業 ティブをしなければいけないとか、そういったことが ことがわかると思いますけれども、実際に自分の事業 るとか水門学的な影響、そしてまた降雨などが影響を 界が石油、 ガス、農林水産等、いわゆる一次産業という 認識されているという結果であります。 がどのように生物多様性と関係あるかということを考 受けているということを示しています。 このような損失 えたときには、サプライチェーンすべてを見なければ 額を実際に積み上げていきます。 この伐採産業におき いけません。原材料の調達から設計、そして製造、物 ましてはよく1立方米当たりということでコストを出し 流、販売、それから回収、 リサイクルといったところま ますので、 こういうふうに足していきます。そうすると、 で全部見なければいけないわけです。 北京の市場の1998年の実際の木材の価格と比べてみ 例えば、 これはデジタルの複合コピー機の場合であ てください。概算化されている外部コストというのが、 りますけれども、生物多様性というのはいろいろな環 実は実際の市場価格よりも高かったということがわか 境の属性、例えば汚染であるとかいろんな影響を受け ります。 ますが、 ここはバリューチェーンのいろんなステージ そうすると、 ここで考えなければいけないのは、 この で会社の操業と環境の間にどのような影響があるか ような環境コストをもし実際に加味して価格の上に乗 ということを示したものです。 ここでの主なポイント せると、建築産業における需要とか利益はどうなるか もちろん、産業界が非常に生物多様性や生態系 は、企業が自分たちがどのようなかかわりを持ってい ということであります。 サービスに関心を持っているのは、消費者の動向とい るかということを理解するためには、自分たちのオペ 1997年~1998年ころですが、中国の政府は実際、 こ もう一 つ T E E B の 一 環として行った 分 析 のスタ うことがあります。多くの世界中の国において、最近で レーションのフットプリントだけではなくて、上流と川 の伐採の検証をしております。 これはなぜかというと、 ディーでありますけれども、 これはマッケンジーがこと はますますグリーンプロダクト、 グリーンサービスへ 上も考えなければいけないということです。直接的、 森林伐採に伴って問題が起きたからです。 しかしそう しの初めのころに行ったものですけれども、生物多様 の需要が高まっているということが挙げられると思い 間接的に必ず何らかの影響を与えるわけであります。 は言いましても、中国の建築は進んでおりますので、 性がどのような理由で重要かということを1,500以上 ます。例えばマーケットを見てみますと、有機栽培の の世界中の財界のリーダーの人たちに聞いたもので 食品や飲料がふえている。あるいはエコ認定を受けた あります。 製品もふえております。実際に多くの会社がそれらに そのうちのトップ3の理由としてこのようなものが 呼応する形で生態系にやさしい、あるいは環境にやさ The Economics of Ecosystems & Biodiversity いかというふうに憶測をしております。 Growing consumer demand for ecocertified products and services The Economics of Ecosystems & Biodiversity • Global sales of organic food and drink = US$ 46 billion in 2007 (threefold increase since 1999) • Sales of certified ‘sustainable’ forest products quadrupled between 2005 and 2007 • From April 2008 to March 2009, the global market for eco-labeled fish products grew by over 50%, to a retail value of US$ 1.5 billion • Major consumer brand owners and retailers added ‘ecologicallyfriendly’ attributes to their products: – – – – Source: McKinsey & Company (July 2010) “Global Survey results: The next environmental issue for business” Based on 1,576 responses from executives representing the full range of regions, industries, tenures, and functional specialties. 上がっています。 ます第1に、会社としての名声が重要 である。生物多様性というのは企業の名声を確立し、 それをさらに向上していく上で重要であるというふう Mars (Rainforest Alliance cocoa) Cadbury (Fairtrade cocoa) Kraft (Rainforest Alliance Kenco coffee) Unilever (Rainforest Alliance PG Tips). しい商品をブランドの中に入れていこうということで、 そのような需要に対応しております。幾つかの例をこ こに挙げてあります。 に答えました。その次に多かったのが、非常におもし The Economics of Ecosystems & Biodiversity ろいんですけれども、生物多様性を守るということ、そ Mapping BES impacts and dependence: “biodiversity relevance” れと会社の目標、あるいはミッション、価値観が一致し 単に輸入材に切りかえたということです。 ですので、そ The Economics of Ecosystems & Biodiversity うするとこういった環境の外部コストというのは、実 Valuing business impacts on BES: Deforestation in China (Trucost plc) は中国の森からよその国の森に移されていってしまっ たということであります。 110 Ecosystem service losses (1950-88) US$12.2 Bn 100 Property loss from flooding 5.5% 80 Loss of river transport capacity 1.7% Sedimentation of water bodies 0.3% Desertification (crop yields) 7.7% 90 Cost (US$/m3 1998) ことで、直接生物多様性と結びついているからではな なければいけないということではありません。 しかし、 60 50 グリフィスさんが先ほど言いましたように、その事業 40 Reduced lumber output 7.9% Loss of plant nutrients 16.7% 20 Reduced water runoff 27.2% 10 Reduced precipitation 33.0% - Source: Hongchang, W. (1997) もちろん、産業界がインパクトをすべて責任をとら 70 30 というのは生物多様性、あるいはエコシステムサービ Market Price of Timber External Cost スに依存しております。 TEEBレポートにもたくさんこのようなものがありま ているということであります。もちろんこれは、産業界 例えばここでの例としまして、 これは中国で行った すけれども、 こちらに書いてありますのは、農業にお というのは往々にして自分たちのことを非常に重要な ケーススタディーです。 これはTEEBレポートの中でも ける受粉サービスです。シンジェンターという会社が 社会価値の貢献者であると、例えば環境の管理も含 ハイライトされていますけれども、 ここで見ているの ありますけれども、 これは種子、あるいは農薬などを めて社会的な価値に貢献を自分たちはしているとい は、 どのようなインパクトが森林伐採によって起こるか 売っているわけですけれども、彼らのビジネスモデル うふうに思っているわけですから、 これも不思議なこ ということであります。左側に書いてありますのが、実 というのは当然、農業が健全であることが前提となっ 際にどのくらいの金額が生態系サービスで損失を受 ております。そしてその農業セクターは、例えばブルー とではありません。そして3番目に上がってきておりま Source: JBIB for Ricoh Group Sustainability Report (Environment) 2009 - 19 - - 20 - 特別講演 ジョシュア・ビショップ博士 世界における生物多様保全への事業者の参画について ベリーのような場合ですと、 これは生産のために蜂に れています。 また、市場の当局者であるとか、あるいは で比較もできるというものです。 て実際にCBDなどでも使われているわけですけれど よる受粉が必要になってくるわけです。そういったも 会計士などの団体も、財務以外のデータもアニュアル 生物多様性や生態系サービスに関しても似たよう も、その細かいことは申し上げませんけれども、 これら のに依存しています。世界中での受粉サービスは、農 レポートに入れようという圧力が高まってきているわ なことができると思いますけれども、気候変動ですと の中には、すぐには産業界では使えないものも多い 業部門に関しては、年間大体1,500億ユーロであると けであります。 こういったものがよくレポートとして出されるわけで わけです。TEEBのビジネスレポートにおきましても、 す。 しかし、ほとんどの会社に関しましては、生物多様 ビジネスとしてどのようなものが必要かということを 性ではこのようなことはまだやっていません。 考えてみました。例えば事業所ごと、あるいは商品ご 言われています。ですから、非常に大きな金額だとい うことがわかると思います。 このケーススタディーの 場合では、シンジェンターがアメリカのほかのパート ナーなどと協力をして投資して、野生の蜂等の生息地 の再生をしているわけです。 というのは、巣箱の蜂と The Economics of Ecosystems & Biodiversity Drivers of improved BES reporting – Global Reporting Initiative – Carbon Disclosure Project – Forest Footprint Disclosure Project • Accountancy standards – UK Environment Agency & ICAEW “Environmental Issues and Annual Financial Reporting” (2009) いうのが最近ではご存じのようにさまざまな疾病に かかっております。そういったことで、養蜂家が飼って いる蜂がだめになってしまったときには、その防御策 と、あるいはグループレベルでどのようなものが必要 The Economics of Ecosystems & Biodiversity • Stakeholder expectations か。それは加工も、それからパフォーマンスも、それか More work needed on reporting Top 100 companies Annual reports 4% ら内部で使用する場合も、それから対外的に発表する Top 100 companies Sustainability reports 2% 9% 場合もいろいろなものが必要であるけれども、そうい 11% 12% • Regulatory requirements 15% うものがないということがわかりました。 – US Securities and Exchange Commission “Guidance Regarding Disclosure Related to Climate Change” (February 2010) • Potential extension to BES? として野生の蜂を使うという考え方です。 The Economics of Ecosystems & Biodiversity 42% 23% 82% Work needed on indicators for business Don't produce sustainability report The Economics of Ecosystems & Biodiversity Valuing business dependence on BES: Blueberries in Michigan (Syngenta) • Michigan blueberries: US$ 124 million/year, 90% reliant on pollination by bees at cost of US$ 1.5 million per year • Domesticated bees threatened by colony collapse disorder (CCD) • Operation Pollinator launched in 2009 in the USA and EU (13 countries) Climate change: CO2e No mention of biodiversity or ecosystems Passing mention of biodiversity or ecosystems ここでハイライトとしてありますのは、アメリカの SECの出した気候変動に係わる情報開示を求めるガ Biodiversity and ecosystems:1 Discuss approach to reduce impact on biodiversity Identify biodiversity as a key strategic issue Source: PwC input to TEEB Report for Business イドラインです。気候変動に対する資産の部と負債の 実際に調査を見てみましても、 こちらは毎年アニュ 部を出せということであります。 これがほかの国、ある アルレポート、 あるいはサスティナブルレポートがどの いはほかの生態系サービスの保護活動にも広がって ような形でできているかということを世界のトップ100 いくということを気にしているわけであります。 の売り上げの会社に対して調べたものであります。 • Restore native pollinators in agricultural landscapes by creating suitable habitat (field margins) The Economics of Ecosystems & Biodiversity • Wild bees are natural ‘back-stop’ for managed hives Water reporting by SAB Miller 次には、測定とレポートの話をしたいと思います。 • Target: increase water productivity by 25% by 2015 • Potential savings: 20 billion litres of water/year こちらを見てみますと、 ごくわずか、実際には6%ぐ らいですね、 これらのトップ100社のうちアニュアルレ ポートの中で生物多様性を非常に重要であると書い ているところ、 あるいはそれに対して活動しているとい 多くの企業がいろいろなステークホルダーからの圧 うところは6%に過ぎないということであります。そし 力を感じていると思います。特に投資家のコミュニ てサスティナブルレポートを見ても、やはり同じように ティーからは、もっともっと生物多様性、あるいは生態 トップ100社でありますけれども、4分の1以下しか生 系サービスに関する情報を出せと、カーボン・ディス 物多様性を重要なものとして位置づけておりません。 クロージャー・プロジェクトであるとか、 グローバル・レ その理由としまして、やはり先ほども言いましたよう ポーティング・イニシアティブなどにおきましては、例 に、 まず適切な指標がないということが問題だと思い • • • • • • • • • • • • • Living Planet Index (LPI) Wild Bird / Waterbird indices IUCN Red List Index (RLI) Marine Trophic Index Forest / Mangrove / Seagrass extent Coral reef condition (cover) Water Quality Index Ecological Footprint Nitrogen deposition rate Number of Alien Species (in Europe) Exploitation of fish stocks Climatic Impact Indicator (on birds) Protected Area extent • • • • • • • • Coverage by PAs of important habitats Area of forest under sustainable mgmt. International IAS policy adoption National IAS policy adoption ODA in support of CBD LPI for utilized vertebrates RLI for food & medicinal species RLI for traded bird species Business needs indicators for: • site, product, group level • processes & performance • internal & external reporting 1/ Adapted from: Butchart et al. (2010 ) “Global Biodiversity: Indicators of Recent Declines” Science Express (29 April) The Economics of Ecosystems & Biodiversity Examples of tools for BES risk assessment and mitigation in business • Integrated Biodiversity Assessment Tool – http://www.biodiversityinfo.org/ibat/ – GIS database for site-level risk assessment – Based on World Database of Protected Areas, World Biodiversity Database, IUCN Red List of Threatened Species • Business and Biodiversity Offsets Program – http://www.forest-trends.org/biodiversityoffsetprogram/ – Guidance on designing and implementing biodiversity offsets to ensure “no net loss” – Led by Forest Trends, Wildlife Conservation Society and Conservation International • Certification and labelling – http://www.isealalliance.org/ – Global hub for social and environmental standards – Members represent fair trade, forest stewardship, organic agriculture, fisheries, etc. えば環境レポートのガイドラインとなっています。そし このビジネスレポートとしてSABのものがあります。 ます。温室効果ガスであるとか気候変動に関しまして てカーボン・ディスクロージャー・プロジェクトの場合 これはビール等の飲料をつくっている会社であります は、非常に単純な等価CO2という指標があるわけです では、 リスクの緩和の話題に移りたいと思います。 ですと、 フォーチュン500の半分ぐらいのところがもう けれども、 これは非常におもしろいケーススタディー けれども、生物多様性に関しましては、そのようなシン ビジネスと生物多様性の関係、そして何が指標であ サインをしており、温室効果ガスの排出やその緩和策 です。 というのは、彼らは明確な形で数値目標を持っ プルな指標はありません。 り、何が目標であるかということを理解した上で、エ についてのレポートをしています。 このような成功例 ております。実際に毎年測定し、 レポートできるような こちらに並べてありますのは、最近のスタディーか コシステムや生物多様性のリスクをどうやって特定 に基づきまして、ほかの投資家などの利害関係者から ものを目標としているということです。ですので、いろ ら出されたいろいろなものですけれども、生物多様性 するかということで幾つかツールがあります。3つの もますます生物多様性に関する情報の開示が求めら いろな事業所、あるいは世界のいろいろな地域の中 の状況、あるいはトレンドを示す指標であります。そし 例をここに挙げてあります。そして TEEB for Business - 21 - - 22 - 特別講演 ジョシュア・ビショップ博士 世界における生物多様保全への事業者の参画について レポートにはもっと多くのツールの例が示されてお のハイアラーキー、ヒエラルキーの考え方です。左側 上の影響を与えないということです。 ウォルマート、 リ とで、TEEBのビジネス・スタディーはこのような金銭 ります。 の4つの棒グラフがそれに当たりますけれども、事業 オ・ティントも大きな目標を上げています。つまり、彼 的価値化にも言及しております。生物多様性のビジ 生物多様性の評価のツールとして ibat というのが のマイナスの影響というものを、3つ目では最小に らの店が環境に与えるフットプリント、そして製品が ネスというのができます。現在の製品やサービスに加 一番上にありますけれども、新しい施設や新しい事業 するというところまでいっております。そして4つ目の 与えるフットプリントに対してニュートラルにするとい えて価値を付加するということであります。その認定 を展開する拠点を選ぶときに、ibat はそれが持つ潜在 バーにいきますと、その影響を回復するための復元 うものです。 やラベリング、エコラベルのスキームというものは前 的な生物多様性のリスク、そして生物多様性に対する 努力、例えばリオ・ティントなどがこれを行っておりま ですから、企業の目標というのは、我々の測定や報 に触れましたけれども、世界中でさまざまな分野でグ 影響を場所によって判断するのを助けるツールです。 す。 しかしながら、それでも残存している不可避的な 告の技術を改善するのに、そしてまた生物多様性のイ リーンなマーケッティングのセグメントというのがで そしてサイトを選んだら、次に生物多様性に対する 影響についてどうすればいいかということです。 リオ・ ンパクトの評価を会社全体で、あるいはその分野全体 きています。主流のセグメントに加えてグリーンのセ 影響とその緩和を考えなければなりません。生物多様 ティントは、 この環境の影響緩和のヒエラルキーをこ で統一するために重要な推進要因になっていると思 グメントというものは、そのミニストリームに比べて 性オフセットプログラムというツールが次にあります の4番目のところからさらに超して、その保障やオフ います。 ずっと急速な成長を遂げております。 しかしながら、 さ が、 これは非常に詳細なツールで、会社の事業が生物 セット、その他の保全の活動によってネット・ポジティ 次に、それらの企業が行う経済的な意味でのプラス らにそれに加えて新しい市場が加わっております。つ 多様性に与える影響、 フットプリントの測定、そしてそ ブ・インパクト、プラスに転じるということを始めてお の影響というものを考えてみます。 まり、現存のサービスや商品にグリーンな付加価値を れに必要な保障の活動を考えるのに役立ちます。 ります。そしてそれが実現可能なのか、生物多様性に 一番下は、その会社が直接の事業の影響だけでな プラスの影響を本当に与えることができるのかどうか く、バリューチェーンを通じた影響を考える場合には、 ということは、 まだ研究課題としてスタディーが続いて そのようなサプライチェーンを通じて判断をするため おります。 のツール、その環境のインパクトを例えば原材料の支 給から、そしてその環境のパフォーマンスをお客様、 ステークホルダーにコミュニケートするために使う 与えるだけでなく、全く新しい市場機会があるというこ The Economics of Ecosystems & Biodiversity とです。 The economics of restoration (Aggregate Industries UK) The Economics of Ecosystems & Biodiversity • Proposed extension of existing quarry in North Yorkshire • Farming > sand and gravel extraction > wetland & lake Building “biodiversity business” The Economics of Ecosystems & Biodiversity From carbon neutral … … to biodiversity positive • Danone Group: “Attain carbon neutrality for the major Danone ツールにもなります。 brands, including Evian, by the end of 2011.” • Marks & Spencer: “Our goal is to become carbon neutral by 2012 in our UK and Republic of Ireland operations.” The Economics of Ecosystems & Biodiversity Source: Olsen & Shannon 2010 • Coca Cola: “Our goal is to safely return to communities and nature an amount of water equivalent to what we use in all of our beverages and their production.” The concept of “Net Positive Impact” • BC Hydro: “long-term goal of no net incremental environmental impact.” • Walmart: “Committed … to permanently conserve at least one acre of priority wildlife habitat for every developed acre.” これはイギリスの例ですけれども、この会社は砂 Adding BES to existing business • Agriculture • Biodiversity mgmt services • Cosmetics • Extractive industries • Finance • Fisheries • Forestry • Garments • Handicrafts • Pharmaceuticals • Retail • Tourism New markets for BES • Bio-carbon & REDD • Biodiversity banking • Enabling policy & tools 礫の採掘場の修復活動を計画しているんですけれど も、左側は、修復作業の経済的な価値を測ったもので まずカーボン・マーケットの連像で生まれたもので す。その真ん中の一番大きいところが生物多様性、 こ すけれども、 カーボンオフセットからヒントを得てバイ このようなスタディーというのは、それぞれの会社 れはその利用外の価値ということで、地域のコミュニ オカーボンのプログラムもあります。また、生物多様 が行った約束、 コミットメントに推進されるところが多 ティーがこの地域にあった鳥の生息地を修復すると 性を維持いたしまして、森林伐採から失われるCO2の くなっています。世界のさまざまな企業が行っている いうことに充てられています。右側がその修復の活動 シンクを取り戻すとか、あるいは保全の活動がありま コミットメントをこちらに示しております。 の利益で、その利益のほうがコストを上回ることがわ す。それに加えて、バイオダイバーシティ・バンキング このようなリスク緩和として新しく出てきているコ 例えば、カーボン・ニュートラリティ、炭素中立とい かります。 という概念が生まれております。 これは後でもう少し ンセプト、 これは世界で注目を集めつつありますけれ うのは、多くの企業が現在ではうたっております。そ ここでの課題は、 コストと利益をどういうふうに金銭 説明します。 ども、それはノーネットロス、あるいはネット・ポジティ れほどまだポピュラーになっていないのは、 コカコー 化するかということです。 コストというのは、生産者に これは、森林産物のセクターでありますけれども、林 ブ・インパクト、エコシステムの中立性(ニュートラリ ラのウォーター・ニュートラリティ、今使う水の量を中 とっては現実的に測れるものです。 しかしながら、そ 業産物をそのほかのマーケットとシェアした場合のも ティ) と言われます、 この3つはほぼ同じことを示して 立にするということ。カナダのBCハイドロは、さらに れによってもたらされる利益というものは、目に見え のが進展します。また、さまざまな適用されるスタン おります。 野心的な目標を立てております。つまり、環境に対し ないものが多いわけです。 ダードの調和というものがあります。現在、広く使われ このアプローチは、まず古典的な環境の影響緩和 長期的にネットで生物多様性、水、炭素ともにこれ以 それをどうやって金銭的な価値に変えるかというこ ているのは、2つの認定スキームしかありませんけれ • Rio Tinto: “Our goal is to have a ‘net positive impact’ on biodiversity.” Source: Rio Tinto - 23 - - 24 - 特別講演 ジョシュア・ビショップ博士 世界における生物多様保全への事業者の参画について ども、そのほかにも多くの認定スキームというものが 私的な民間の湿地銀行というものがこの市場に参加 多様性の保全というものが、投資やアセット・マネジメ 金の改革をして、悪影響のある助成金をやめて新しい あらわれ始めておりまして、 このような林産物に関し して、当局がディベロッパーに認めている湿地保全の ントの一つの基準になっているということです。 助成金にするなどが望まれるし、 また税の優遇措置に ましては、 スタンダードの調和によりまして、その簡素 クレジットというものを買うわけです。 これは、今20億 化が行われることが望まれております。 ドル市場と言われておりますけれども、透明性ができ 次に、市場の創出でありますけれども、オーストラリ ればもっと価値の高いものになると思います。 アやドイツ、オランダ、 フランス、カナダ、 ブラジル、南 The Economics of Ecosystems & Biodiversity アフリカ等でこのような事象が生まれております。 よってエコフレンドリーな活動を強化する、またその The Economics of Ecosystems & Biodiversity 保障責任を求めるものや、反対にウエットランド・バン Growing investor interest in BES キングのような促進システム、NGOなどはその認定や • Sumitomo Trust & Banking Co., Ltd. (STB) launched a new “Biodiversity Fund” in July 2010. • The fund will invest in listed companies that engage in biodiversity and sustainable development, focusing on: ラベリング・システムを推進することによって、 これら の活動を促進することができます。 また、政府がこのよ 1. Companies with technologies that reduce negative impacts on biodiversity The Economics of Ecosystems & Biodiversity うな資金をサポートすることに障壁を立てるなどの例 2. Companies with technologies that can secure biodiversity もあります。 3. Companies with medium or longer term plans to secure biodiversity Adding BES to existing business そして情報に対するパブリック・アクセスですけれ ども、 より多くの企業がインパクトや生物多様性やエ Source: The Sumitomo Trust & Banking Co., Ltd. (2010). コシステムサービスに対する依存と影響を測定し、そ Source: UNECE/FAO Forest Products Annual Market Review, 2008-2009 The Economics of Ecosystems & Biodiversity New markets for BES: Wetland mitigation banks in the USA • Authorized under federal Clean Water Act • Developers must compensate for loss of wetlands • Most compensation is ‘in-kind’ and within the same watershed as the damage • Developers can do it themselves or purchase wetland ‘credits’ from approved ‘banks’ • 450+ approved wetland banks, most privately financed on commercial basis • US market currently worth ~$2 billion/year Source: Ecosystem Marketplace 2009 また、世界のほかの場所でも同様な例があらわれ れを定量化して発表するという慣行が広まれば、アク ております。例えばケス・デ・デポ・エ・コンシニァシォ セスがふえると考えられます。 ンというフランスの公営の投資銀行ですけれども、 次に、生物多様性とビジネスの行動をいかに統合し そして、 これはこれらの市場の先行きの見通しであ 1,500万ユーロの資金で新しい銀行をつくりまして、 ていくかというやり方、 そしてそれがCSRや企業の社会 りますけれども、新しい市場をつくることができるとい CDCバイオダイバーシティという生物多様性のため 開発にどのようにつながっていくかという例です。 うふうに言われております。 の投資に特化した活動を行っております。 幾つか例を挙げましたけれども、 まず一番上の認定 農産物のプロダクツ。400億ドルの市場と言われます。 これは世界の食糧・飲料市場の2.5%と言われますが、 これはこれから数年先には1,000億ドルまでに成長す るだろうと言われます。 Enabling policy for markets for BES Subsidy reform (agriculture, fisheries, water, transport, etc) • • Net Positive Impact (NPI) policy: avoid, mitigate, restore & offset Support for conservation project (60,000 ha lowland forest) • Tax credits and other incentives for conservation • Potential benefits: • Certification and eco-labelling (voluntary / mandatory) • Benefit-sharing with local communities (PES using REDD revenues) • • Payment for Ecosystem Services (national, international) • ラム、 これも非常に急速に100億ドルの規模でふえて Environmental responsibility (EU Environmental Liability Directive, damage assessment and compensation) • Environmental trading schemes (REDD+, USA wetland and species mitigation, Australia biodiversity banking) • Public access to information (Global Reporting Initiative, Carbon / Forest / Water footprint disclosure projects) この生物多様性のオフセット、生物多様性のバンキ Aligning BES and development (Rio Tinto in Madagascar) The Economics of Ecosystems & Biodiversity またバイオカーボン・フォレストオフセットのプログ おり、多くの政府が関心を示しています。 The Economics of Ecosystems & Biodiversity Potential costs: Source: Olsen & Anstee (2010) これはマダガスカルの例で、 リオ・ティントという鉱 これはアメリカの例ですけれども、アメリカの例で ングというのも、各国の政府が今、関心を示しておりま はかなりよく整備されておりまして、 この場合は湿地と すので、成長するでしょう。そしてその国レベル、ある アメリカでは、法律が既にできていると申し上げま 山会社が行ったものですけれども、 これをネット・ポジ いう生息地の保全の市場であり、そのマーケットを支 いはサブナショナルなレベルでの発達が大きいと思 したけれども、一般的に言って、生物多様性とエコシ ティブ・インパクトに転じるというコミットメントを会 える法ができております。その開発によって失われた います。国際的というよりは国内的、そして地域的なも ステムのサービス、あるいは生物多様性にフレンド 社としていたしました。そして6万ヘクタールの熱帯雨 湿地を金銭化し、評価いたしまして、またその保障の のになるでしょう。 リーな製品とサービスというものは、政策やそれを支 林を保全するというプロジェクトを始めました。 この表 一部はディベロッパーに負担させますけれども、第三 次に、投資家が示している関心ですけれども、 これ える政治制度というものが必要です。例えば企業の方 は、その保全のプロジェクトの利益とコストをあらわし 者の保障というスキームが法によって用意されており はいろいろな国です。 針、それからマルチステークホルダーのチーム、例え ているものです。 ます。 これは、その市場を提供する、つまり湿地の保障 この例は日本ですけれども、 ことし聞いたものです ばエコラベルというのか認定のシステム、 これは任意 利益のほうは、CO2を出さないということ、そしてま なり湿地の被害軽減という市場をつくることによって、 けれども、住友信託銀行が生物多様性投資ファンドと のものが多いんですけれども、 これらが企業の活動を た焼き畑農業をやめるということ、 またその囲い込み そこに第三者が入ってくることができる。500ぐらいの いうものをつくったというふうに伺っております。生物 促進するドライバーになります。例えば、政府は助成 をやめるということによって得られます。 しかしなが - 25 - - 26 - 特別講演 ジョシュア・ビショップ博士 世界における生物多様保全への事業者の参画について ら、 これには大きなコストがかかります。森林を保全す 標を設定し、その業績、実績の測定の評価、そして定 ることによって、 これは表面的にはよいことに見えます 量化してその結果をステークホルダーに報告する、情 けれども、森林に対するアクセスをローカル・コミュニ 報を開示するということです。 ティーから奪ってしまうと、 その森林に頼って生計を立 The Economics of Ecosystems & Biodiversity てている貧しいローカル・コミュニティーは生きる術 What can business do TODAY? を失ってしまいます。けれども、 これらのカーボンによ 1. Identify impacts and dependence on biodiversity and ecosystem services (BES) る利益をお金にかえて、そのローカル・コミュニティー 2. Assess the business risks and opportunities associated with these impacts and dependencies の所得を助けると、地域の開発のニーズ、それから会 3. Develop BES information systems, set targets, measure and value performance, report results 社の約束の達成、そして地元のコミュニティー、三者と 4. Avoid, minimize and mitigate BES risks, using compensation (‘offsets’) where appropriate, based on concept of Net Positive Impact も満足することが理論的には可能だということです。 5. Grasp emerging BES business opportunities, e.g. cost-efficiencies, new products and new markets 6. Integrate BES actions with wider Corporate Social Responsibility The Economics of Ecosystems & Biodiversity 7. Engage with business peers and other stakeholders to improve BES guidance and policy Guidance on integrating BES in business (selected examples) • • • • • • • • • • • Millennium Ecosystem Assessment: Synthesis for Business IUCN & WBCSD Handbook for Corporate Action International Council on Mining and Metals International Petroleum Industry Environmental Conservation Assoc. Global Reporting Initiative World Economic Forum / Global Agenda Council on Valuing Nature In Good Company: German Business & Biodiversity Initiative Canadian Business and Biodiversity Initiative FRB/Orée Biodiversity Accountability Framework Declaration of Biodiversity (Japan, Nippon Keidanren) Guidelines for Private Sector Engagement in Biodiversity (Japan gov’t) 特別講演への質問 質問: 私は、日本で清水建設という会社に勤めています那須と申します。 今回は、大変貴重なお話、 どうもありがとうございました。 質問は、生物多様性の非利用価値についてです。 プレゼンテーションの中に、エコシステムサービスの評価というこ とで、 ヨーロッパの事例がありました。そこにアマゾンについてのイギ リスとイタリアの評価がありました。聞きたいのは、 どの対象に対して 評価したかによって価値が変わるのではないかということです。つま り、 ヨーロッパで評価した場合と、それからアマゾンの人たちが評価し た場合と、結果は多分変わってくると思います。それをどのように調整 していくかについて教えてください。 さらに一歩進めば、企業は影響をできるだけ最小 化する、あるいは軽減するという古典的なアプローチ ビショップ: 対象、それから評価の方法ということについてのご質問だったと思 をさらに乗り越えて、プラスの効果を生物多様性、エ います。 コシステムにつくり出して、最初に操業を開始したと まず、方法についてお話をしたいと思います。 きよりも生物多様性をより豊かな状態にして残してい その方法ですけれども、コンティンジェント評価法(CVM) という くという取り組みにも進むことができると思います。 のがあります。 これはアメリカにおいて30年前につくられたものです また、新しい製品や新しい市場を見出すこと、そこ が、その国立公園の料金がどのくらいか、そしてまたハンティング・ラ 次に、さまざまなイニシアティブとか、先ほど私ど にBESビジネスの機会をとらえる機会があります。ま イセンスやフィッシング・ライセンスの許可の料金を調べます。そして もの聞いた中部経済連合会の宣言だとか、ガイドラ たエコシステムや生物多様性をより大きなCSRや企 その方法を用いてその環境に関する被利用価値というのを測定する イン、ハンドブックなどさまざまなものがビジネスに 業全体の責任と統合していく。すり合わせ、そしてまた わけです。直接の経験はしなくても、そこにいなくてもどのような価値 よって出ます。TEEBは、いわゆる具体的な指南書や料 政策との対話を重ね、BESの指針や方針の改善のため があるかということです。 理レシピを出すものではありませんけれども、我々は に他の企業やそのほかのステークホルダーを巻き込 最も有名な例といたしましては、アラスカ沖でエクソンバルディー どのようなものが役に立つかという指標、あるいはビ んでいく。それが延いては自企業の成長にもつながる ズ号の原油流出があったときです。鳥や野生動物に対する損害があっ ジネスが行おうとしているタスク別にどのような指標 と考えます。 たということで、さまざまにアメリカで損害があるということが人々に があるか、 そしてどのような定性化、定量化ができるか TEEBのビジネスレポート、そのほかのレポートは、 もわかり、そのような損害を定量化したいという意向が高まったわけ ということを示唆しております。 teebweb.org でダウンロードすることができます。 こ であります。それは人々がそういったことを感じたわけであります。そ 次に、すぐにでもできるようなこと、政府のフレーム ちらには、そのレポートに協力していただいたさまざ のときに使われた仮想評価法でありますけれども、CVMというのを用 ワークとか立法化を待たずにきょうにでもできるとい まなステークホルダー、個人や組織の名前が出ており いました。人々はアラスカに行ったこともないし、 アラスカに行くつもり うことのアイデアを挙げてあります。 ます。 この人たちに感謝するとともに、IUCNに対して もないような人々ですけれども、その事故の結果、生態系が失われて まず初めにすべきことは、自分の事業のエコシステ も、 このような機会を与えてくださったことに感謝する いるということを心に感じた結果、評価をしたわけであります。 ムサービス並びに生物多様性への影響と依存をきち とともに、残りの時間で皆様からご質問を受けたいと それから、 ことしメキシコ湾岸での原油流出がありまして、ツーリズ んと特定するということです。そしてその影響や依存 思います。ありがとうございました。 ムですとか漁業に損失があったわけです。社会に対する損失がありま に関連するビジネスのリスクと機会を評価する。そし した。そしてここでそのCVMを使ったわけです。なぜそれを行うんで てまた、そのリスクに関する情報システムを開発し、目 しょうか。 - 27 - - 28 - 特別講演への質問 ジョシュア・ビショップ博士 世界における生物多様保全への事業者の参画について ヨーロッパの例を申し上げましたけれども、 ヨーロッパの人々、そし 質問: 中部経済連合会副会長の三田でございます。 て日本の人々もそうだと思いますが、明らかにアマゾンの熱帯雨林が 私ども名古屋はエビをたくさん消費する地域なので、非常に気に 重要であるということを認識しています。環境のNGOも重要であるこ なったので、その点についてお伺いしたいと思います。 とを主張していますし、そしてまた政府も、やはり世界中の生態系が エビとマングローブのことで、価値についてご説明いただきました 重要であるということを認識しているわけです。その製品を使わなく が、では逆にそのエビの代替はどうするのか。我々名古屋では非常に ても、 アマゾンに行かなくても、生態系が重要である、価値があるとい エビをたくさん食べるけれども、それがほかのもので代替するとなる うことを認識しています。 と、そこに対してまた生物多様性の価値観を検討していかなければい ですから、 どのぐらいの価値があるのかということを評価したいわ けないと思います。そういった地球全体、マクロのケースで最終的に けですね。その価値に基づいて政策のプライオリティーを決めていき やっていかなければいけないので、エビとマングローブのところだけ ます。そしてまた、 どのような手段を使うのか、価値をどのようにしたら の価値で判断するのは、地球全体の生物多様性の中ではどうなのか、 キャプチャーするのかということを決めるわけであります。 アマゾンに その点についてご意見を賜りたいと思います。 おいては、財政的なインセンティブを得るということになります。 この ように目に見えない価値、無形の価値をどのようにすれば価値化でき ビショップ: ありがとうございます。今の質問は、代替策をどうするかということ るかということであります。 ですね。例えばエビを育てるマングローブとしてその代替策をどうす まず最初に、 どのぐらい被利用の価値があるのかということを調べ るか。 ます。そしてその結果を用いて、財政的なメカニズム、そして政策に反 そうですね、おっしゃるとおりに全体を見る必要があると思います。 映されるわけであります。 これはでも難しいことです。 というのは、通常の場合、例えばエビの価 一つ例を挙げましょう。COPにおいて今、 これは生物多様性に対す 格を上げたらどうなるかということはわからないわけです。エビの価 るものですけれども、GEFに対する拠出について議論が行われていま 格を上げたら、消費者は別のものを食べるかもしれない。そしてその す。 このファンディングでありますけれども、環境がどのぐらい価値が ことが環境に影響を与えるかもしれないということです。ですので、 あるかということについてはあまり関係なく行われています。政府がど おっしゃるようにそこのところを考えなければいけないと思います。 のぐらい拠出できるか、そしてまたその途上国がどのぐらい欲しいの しかしそうは言っても、逆に私はこう聞きたいです。 どちらのほうを かということで、その額には経済的なファンデーションはないわけで 代替しやすいですか。エビを代替するのか、マングローブを代替する す。私たちは科学的なベースに基づいて、そして経済学的なベースに のか、 どっちのほうが簡単ですか。いろいろなエビデンスを見てみます 基づいて適切な額を提示したいと考えています。そうすることによっ と、恐らくその食品を、すなわちこの場合はエビですけれども、 こちら て、 このリソースのマネジャーにそういったメッセージが伝わればとい の代替策を見つけるほうが、マングローブの代替を見つけるより簡単 うふうに思っています。 です。機能的にもそうです。 経済学的に見ると、 しかし実際は問題なのは、 これは価値が本当に 意思決定に反映されているかどうかということです。 ですので、誤った 前提でその補助金のことを忘れてしまって、そしてマングローブの価 値を忘れてしまう。そしてマングローブの与えてくれる環境のメリット を忘れてしまうということが問題です。 ですので、TEEBがしようとしているのは、そういった環境的な価値を 真剣に考えてみようということです。そしてそれを定量化して、それが きちんと市場の中に組み込まれていくようにするということです。 です から、エビの価格はきちんとマングローブの失われた価値というもの を組み込んだものとして取引されなければいけないと思っています。 - 29 - - 30 - 会員企業による事例発表 -1 鹿島建設株式会社 持続可能な都市形成に向けた企業の生物多様性への取組み 鹿島建設株式会社 持続可能な都市形成に向けた 企業の生物多様性への取組み 皆さんこんにちは。鹿島建設の山田と申します。 どう 我々建設業が生物多様性に取り組む背景ということ ぞよろしくお願いいたします。 で、簡単に触れておきたいと思います。 私のほうからは、 「持続可能な都市形成に向けた企 環境本部地球環境室 次長 業の生物多様性への取り組み」 というテーマで発表を 山田 順之 進めさせていただきたいと思います。 Po i n t 自然環境に大きなインパクトを与えている建設業には、生物多様性に関してもビジネス上の 大きなリスクとチャンスが存在している。本発表では建設業の生物多様性への取組み背景 に加え、建設業と生物多様性の関係や行動指針策定の背景や経緯を説明し、ニホンミツバ チプロジェクト、ヤギプロジェクト、エコロジカルネットワーク評価技術など生物多様性に配 私どもは、大きな超高層のビル、もしくは道路、ダ 慮したまちづくりに関する具体的事例を紹介する。 ム、いろいろな巨大な工事をさせていただいていま す。もちろん自然環境にメスを入れるような工事を実 - 31 - 本日ご紹介するのは、 ごらんのとおりですけれども、 施することもあり、ポジティブな意味、ネガティブな意 エコロジカルネットワーク評価技術、ニホンミツバチ 味、両方含めて生物多様性とのつながりは非常に大 プロジェクト、ヤギプロジェクト等に関して発表させて きい業種ではないかなと思っております。 いただきます。 それだけに、生物多様性ということをきちんと視点 まず初めに、鹿島建設のプロフィールを簡単にご紹 に置いて建設事業を進めることによって、生物多様性 介します。 を保全できるチャンスというのも逆に言えば大きいの 主要事業としては、建設、建築土木の設計、不動産 ではないかというふうに認識しております。 開発、エンジニアリング等を実施しております。従業員 この建設業のビジネスを進める上で、ビジネスリス が8,500人程度、事業所数が1,750ということで、 まちで クとビジネスチャンス、 この大きな視点があると思っ よく見るような非常に小さい工事事務所が日本全国 ております。 この2つの側面でしっかりこの生物多様性 に散らばっていると、そのようなイメージを持ってい とのかかわり、関係性というものを認識した上で、いろ ただければいいかなと思います。 いろな取り組みを進めるべきだというふうに考えてお - 32 - 会員企業による事例発表 -1 ります。 鹿島建設株式会社 持続可能な都市形成に向けた企業の生物多様性への取組み します。同じ種であっても性質が異なっているというこ また、最近注目を浴びている森林セラピーの世界で うになっています。また、その都市でエネルギーの消 とがあります。 ところが、関東地方で多くホタル池をつ も、単一植生ではなくて多様な植生に富む森林のほう 費の8割がなされている。その中で、都市域での生物 くったがために、西日本の2秒のホタルをたくさん持っ がストレスの改善効果が大きいということが発表され 多様性の取り組みというのも非常に重要ではないか てきてしまった。そうなると生態系に混乱が生じる。 ま ています。 ということで、 このアーバンエリアでの取り組みに注力 た、次世代を残すことが難しくなるということで、環境 このようなデータを新しいまちづくりに生かしてい しております。 修復コストの発生というものがリスクとして上がるの くことによって、新たなる付加価値が創造できるので また、生物多様性といったときに、生物多様性の保 ではないか。 はないかというふうに考えております。 全ともう一つは持続可能な利用、さらにはABSと3つ こういうことをしっかり配慮して、今後ビジネスを進 視点がありますけれども、やはり建設業といいますと めていく必要があろうかと考えております。 コンサベーション、保全の話が注目されがちですが、 むしろサスティナブル・ユース、我々が自然の恵みをど う使っていくのかというところにも注力していく必要 リスクとしては、建設工事のおくれ、もしくは修復コ があるのではないかと考えています。 ストの発生、 このようなものがある。一方でビジネス また、 このような取り組みを進める上で、生物多様 チャンスとしては、午前中の話にもありましたけれど 性の価値というものを社会的な関心として高めていく も、生態系サービスというものを用いた新しい付加価 ということが重要ではないかと思っております。 値の創造、新事業への参入、 このようなことがあるの ではないかと考えています。 具体的なビジネスリスクとして、2つほど事例をご紹 弊社では、先ほどご紹介したリスクとチャンスを踏 介します。 まえて、2005年に生物多様性に関するガイドラインを 道路をつくるときに、法面等で土の裸地が出てくる 逆に、ビジネスチャンスの側面ですが、不動産価値 発表しており、 これに基づいて具体的なプロジェクト わけですが、かつては、早期に緑化しましょう、早く緑 の向上というのが最近注目されています。我々の調査 を実施しています。今回は、時間の関係で、内容に関し に戻しましょうということで、成長が早い外国産の牧 によりますと、生物多様性に富む緑地に近接するエリ ては割愛させていただきますけれども、ホームページ 草の種子を使っておりました。 ところが、成長が早い緑 アというものは、地価の下落局面でも地価の下落値が で内容はごらんいただけます。 ということは、それだけほかの植物にダメージを与え 少なかったということがデータとして明らかになって るリスクがあるということで、外国産の牧草が入るこ います。 とによって日本の在来の植生を消滅させてしまう。そ また、お隣韓国で有名な事例ですけれども、チョン そのような中で、具体的な事例を幾つかご紹介しま のような事例も報告されるようになってきています。 ゲジョン川の再生プロジェクトというものがございま すが、 これはエコロジカルネットワーク評価技術です。 東北地方のある事例では、外国産の牧草を使って実 す。既存の高速道路を撤去して、もともとあった河川 GIS・リモートセンシング等を利用して、緑のつながり、 施した緑化工事を一回ゼロからやり直すということも に戻した事例です。もちろん生物多様性的にも素晴 まちづくりの中でどのように自然環境をつくっていっ やっております。 こういうものが工期のおくれというリ らしいプロジェクトですが、その高速道路に隣接して たらいいのかというものを評価する技術でございま スクにつながるのではないかなというふうに恐れて 建っていたホテルが、 もともと高速道路の騒音や空気 す。我々は、種の数を競うのではなくて、その生態系に います。 の汚れ等でいいホテルではなかったわけですが、そ とって必要な種を指標種として取り上げて、その評価 また、一時期ビオトープが非常に社会的関心を呼 こが河川に戻ることによって、客室からの景観等が改 を実施しています。 んで、ホタル池というものも全国で数多くつくられま 善され、客室単価が上がった。つまり、 自然を再生する 建設業が生物多様性に取り組む際に、 もちろん奥山 写真に写っているのは、コゲラという鳥です。 この した。ホタル池に放つゲンジボタルですが、西日本で ことによってビジネス的にも成功した事例と言えるの エリア、里山エリアでの取り組みというものも重要で 鳥はキツツキの一種で、木に穴を掘って巣をつくりま は2秒間隔で発光します。東日本では4秒間隔で発光 ではないかと思います。 す。ただ、我々は地球の人口の約半数が都市に住むよ す。毎年新しい穴を掘りますが、そのコゲラがつくった - 33 - - 34 - 会員企業による事例発表 -1 鹿島建設株式会社 持続可能な都市形成に向けた企業の生物多様性への取組み 穴に今度はシジュウカラとかモモンガ、違う生物がす 左側の図が、 この評価技術を用いて評価した図で 月にサクランボを食べる。サクランボが終わると今度 なっています。蜂蜜を採る量はなくないですが、日本 むということで、 コゲラが森にすむことによってその森 す。皇居にはコゲラがいた。 また北側の上野の森にも はその周りにいる毛虫を食べてくれるということで、 の気候風土に適していて病害虫に強く、そのために農 が豊かになると言われております。例えばこのような コゲラがいるということが、先ほどの技術の適用から 生態系のバランスがこのミツバチプロジェクトを起点 薬を使う必要は一切ないということでございます。 ものを指標として取り上げ、 まちづくりに生かしている わかりました。 ところが、コゲラというのは一気に500 として改善されてくるのではないかというふうに考え ということでございます。 メーター程度しか飛ぶことができないということで、 ております。 皇居にいるコゲラと上野の森のコゲラが出会うことが できない。つまり、次世代を残すことが非常に難しい 状況であるということも同時に認識できました。そこ で、たまたま計画地がその中間点にあったということ で、 この計画地にコゲラがすめるような緑をつくろう ということで今計画が進められています。 この計画は、 もちろんコゲラのためにも役に立っているわけです が、生物多様性に配慮したプロジェクトということで、 このプロジェクトに関しては特別な容積率ボーナスも このようなミツバチの価値というものを社会で共有 もらっており、経済的な便益も同時に確保した事例と するために、毎月幼稚園で環境教育授業をやったり、 私どもは、実際に緑にミツバチが来るということを 近隣の方を招いたミツバチカフェというようなイベン 緑地も重要ですが、写真に見られるように、住宅地に 科学的に見るために、蜜源のモニタリング調査を実 トも実施しています。 ある小さな緑地等のつながりも非常に重要になりま 施しています。 ミツバチの飛行範囲は半径2キロで非 す。それを把握するために、我々は高解像度の衛星 常に広いために、歩いて回るのは大変だということ データで住宅の裏庭にある緑も把握しています。ま で、自転車にGPSをつけまして、1日40キロぐらい、も た、二次元的な緑だけではなくて、質的な緑を把握 うお尻の皮がむけてしまうぐらいモニタリングで回っ するために、航空機にレーザープロファイラーという て、大体去年1年で1,000ポイントほど、 どこのどういう レーザービームで計測する装置を乗せまして、そこが 植物で蜜を集めているのかというデータを集めてい 草地なのか高木なのか、もしくは低木なのかと、その ます。 都市域で緑地を見ていくときに、もちろん大規模な 言うことができると思います。 ような質的なものも把握しています。 このような技術を用いて、実際にプロジェクトとして 実施した事例をご紹介します。 もう一つの事例で、ニホンミツバチプロジェクトを ご紹介します。 次に、ヤギプロジェクトをご紹介します。 ミツバチは、 ご承知のとおり蜂蜜を集める昆虫です 最近、都市部でも緑化が進んでおりまして、緑地のメ けれども、蜜を集める際に同時に受粉を助ける。特に ンテナンスのために芝刈機や伐採機でメンテナンス 都市域においては、受粉を助ける昆虫が少ないため をするわけですが、機械による緑地メンテナンスは、 に、なかなか実をならすことができない。例えば家庭 騒音、二酸化炭素、あとはごみ、刈りかす等が発生しま 菜園でイチゴやカボチャをつくっても実がならないと す。ヤギはトリプルゼロ、 この3つが発生しないという いう状態があるかと思います。 ところが、 ミツバチが来 ことで、 このような事業を進めています。プラス、ヤギ ることによって、例えば桜の木もサクランボをつけるよ この我々が飼っているニホンミツバチは、 日本の在 乳、 ミルクが採れ、さまざまな生態系サービスが得ら うになる。そのサクランボに野鳥がやってきて5月~6 来種でして、一般の養蜂で用いる西洋ミツバチとは異 れるというふうに考えております。 - 35 - - 36 - 会員企業による事例発表 -1 鹿島建設株式会社 持続可能な都市形成に向けた企業の生物多様性への取組み この話をすると、 「ヤギも鳴くじゃないか、あれは騒 音だ」 と言う人もいますけれども、私どもは、そのヤギ の「メー」 という声は癒しの声だというふうに思ってい ます。 公園等で鳥が鳴いているなということで気づかれ 最後に、発表のまとめです。 る方は多いかと思いますけれども、その鳥の種類が 生物多様性に関しては、 ミツバチのモニタリングも 何なのかというのは、詳しい方と一緒にいないとなか そうですけれども、科学的なエビデンスベースのアプ なかわからないということで、 スマートフォンのアプリ ローチというのが重要であろうと考えております。 このヤギですが、現在、東京の社宅で飼っておりま ケーションに人間の音声認識技術を入れまして、鳥の また、 これが最も大事かもしれませんけれども、生 して、 この社宅は実はペットは禁止ですけれども、ヤ 鳴き声、例えば「ホーホケキョ」 という声を認識したら 物多様性への関心を高めるということをビジネス展開 ギだけは特別に認めていただいています。このよう それがウグイスであるという答えを出すような、 そうい と同時に図っていきたいと考えております。 に、社宅の方、 また近所の方からも非常にかわいがっ うシステムです。 また、企業単体で取り組むというのはなかなか難し ていただいてプロジェクトを進めていて、植生の変移 いということもあります。技術開発もコストと人がかか 等を今測っているところでございます。 りますので、パートナーシップがこれからは重要にな るのかなということで考えております。 最後に、短期的、中長期的な目標を社会全体で共有 して、我々建設事業としてのビジネスを進めていきた いと考えております。 以上で発表を終わります。 どうもありがとうございま した。 同時に、 スマートフォンのGPS機能を使って、 どこで どういう場所でその鳥が鳴いていたのかというデータ 最後に、野鳥の鳴き声、音声でその種類を認識する を集めて、それをサーバー経由で一括で収集して、生 「ききみずきん」 というツールの開発に関してご紹介 物多様性の保全活動に役立てようというのが、 このプ します。 ロジェクトのねらいでございます。 例えば通勤途中であったり、工事、あとは、 これは実 際に千葉県の小学校の環境教育に使っている事例で すけれども、 このような形での活用を考えています。 - 37 - - 38 - 会員企業による事例発表-2 中日本高速道路株式会社 NEXCO中日本の生物多様性への取り組み 早期開通に努めています。 次に、保全・サービス事業ということで、建設しまし 中日本高速道路株式会社 た高速道路を営業を開始しまして、沿道地域の皆様 の生活を支えるために、安全・安心・快適を第一に、高 速道路を24時間365日管理運営しています。 NEXCO中日本の生物多様性への取り組み ただいまご紹介いただきました中日本高速道路 (株) 企画本部環境・技術部企画チームの大岩と申します。 企画本部 環境・技術部 環境チームサブリーダー きょうは、我が社の生物多様性に対する取り組みの説 大岩 春仁 明をさせていただきます。 まず最初に、我が社の事業概要を簡単に説明させ 次に、関連事業としまして、営業中の高速道路でよ ていただきます。 り快適、 より便利、 より楽しいサービスエリア、休憩施 Po i n t 設になりますが、そちらの実現に向けて取り組んでい ます。 また、旅行業だとか海外事業の展開も進めてい 当社は環境方針を定め、その中で、生物多様性の保全に貢献する取組みが目標となってい ます。 ます。 具体的には、エコロード、のり面の樹林化、地域性苗木、地域活動、環境技術開発など、 さまざ まな取り組みを進めています。 生物多様性の問題は、保全や持続可能な利用など複雑な状況ですが、当社は、特に生態系 の保全、その地域の環境保全に配慮することが重要と考え、実行しています。 建設事業、保全サービス事業、関連事業、 この3つの 事業で当社が成り立っています。きょう説明します生 物多様性の取り組みにつきましては、主に建設事業で 高速道路をつくるときに取り組んでいる内容が主体 - 39 - まず建設事業ということで、地域の期待にこたえま になりますが、建設が終わりまして営業が開始されま して、事業への理解と協力を得ながら、安全と品質を すと、建設で取り組んだ生物多様性、環境保全のため 確保し、環境保全、 コスト削減を図りつつ、高速道路の の取り組みにつきましては、保全事業で引き続き継続 - 40 - 会員企業による事例発表-2 中日本高速道路株式会社 NEXCO中日本の生物多様性への取り組み して未来永劫取り組んでいくというような内容になり の希少植物の区域を残すということで、擁壁に道路構 て、ゲンジボタルの保護を実施した例です。 これは通 を利用してビオトープを整備した例です。その結果、 ます。また、関連事業のサービスエリアの休憩施設の 造を変えまして希少植物を残しています。 ちなみに、 こ 常でいきますとコンクリートの三面張りの水路になり 生息・生育環境が整備でき、その整備したビオトープ 園地におきましても、生物多様性について取り組んで の場所では希少植物がかなりの数確認されておりま ますが、草とか泥がたまるようにして自然に近い形に 内では、カエルとかチョウチョが確認されております。 おります。 して、 日本で最大級のところではないかというようなこ 残したものです。その結果、ホタルが戻ってきまして、 このような形で、高速道路の敷地内を使いまして新た その中で高速道路ネットワーク整備を通じまして、 とも言われております。 地元の小学生を招いてホタルの保護のための勉強会 に創出するというような取り組みもしております。 なども開催させてもらっております。 自然にやさしい道路づくりを推進することで、線的に 延びる高速道路による緑のネットワークが形成されま す。それで生物多様性につながるというようなことに なります。 その主たるものは、エコロード、自然にやさしい道 路づくりということになりまして、その考え方がここに 書いてあるとおりです。 まず、マイナスの軽減ということで、高速道路とい うのはどうしても自然を傷めるというイメージが強く あります。それらのマイナスをいかに軽減するかとい 生物多様性の取り組みの一つで、当社として一番大 うのが一つの課題になります。3つの対策としまして、 次が、移動路の分断を防ぐということで、高速道路 消失・縮減を小さくする。2つ目が、移動路の分断を防 の下に交差する道路とのカルバートボックス等をつ これは、同じく質的変化を少なくするということで、 きい例は、地域性苗木の利用ということです。地域性 ぐ。3つ目が、質的変化を少なくするということで、こ くりますが、 これは高速道路の下に設けました通路を 従来、道路をつくるときには山を削って、土を盛ってと 苗木というのは、自然豊かな地域を通過する区間で、 の3つにつきまして軽減ということで取り組んでおり 利用するアナグマの状況です。ただ、 この写真の通路 いうふうにしておりましたが、 自然豊かなところにつき 建設現場などに自生する樹木からあらかじめ種をとり ます。また、道路をつくることでプラスの付加というこ は、動物専用に設けたものではなくて、人間も管理用 ましては、 どうしても道路をつくるときに自然を削って まして、当社で育成して、またその苗木を現場に戻す とで、高速道路の空間を利用して生息・生育環境を新 として使うところですが、自然豊かなところにあるとい しまう場所が多くなります。それらの影響を極力少な ということの取り組みです。2009年度末までに、全国 たに創出するというようなことで、エコロードとして大 うことで、野生動物も利用している例です。また、高速 くするためということで、竹を割ったような形の構造 で約75万本のこの地域性苗木を使いまして、当社の きく4つの取り組みをこれからご紹介させていただき 道路内に新たにつくられた水飲みを利用しているイ 物掘削工法を用いまして、できるだけ周りの自然を残 管内では約54万本の地域性苗木を使用しております。 ます。 ノシシの親子の写真が右側になります。 すということで取り組んだ例です。自然も残したけれ ども、景観保全にも役立った例になっております。 この左の写真が、今、ビニールハウスの中で地域 性苗木を育成している状況で、真ん中がポット苗とユ 消失・縮小を少なくするということで、 この写真は、 次が、質的変化を少なくするということで、ゲンジボ 希少植物が建設現場で確認されたところです。従来で タルが生息する河川のところで工事を実施しました これは、道路空間を利用して生息・生育環境を新た ニット苗です。右の写真が、出荷する状況です。特にユ いきますと道路構造が盛り土で形成されるところ、 こ が、その河川の工事で、自然型構造護岸を採用しまし に創出するという例です。 これは、高速道路の敷地内 ニット苗につきましては、穴を掘らずに苗木が植えら - 41 - - 42 - 会員企業による事例発表-2 中日本高速道路株式会社 NEXCO中日本の生物多様性への取り組み れるということで、斜面をいじめず、 また施行も容易に とで、名古屋市内の公園で採取した種などからつくり 木、地域活動、環境技術開発など、 さまざまな取り組み できるということで、当社で開発した苗木です。 ました地域性苗木を名古屋市内の緑地に植える活動 が進められております。 を、協議会をつくって実施しております。昨日、第1号と 生物多様性の問題は、保全や持続可能な利用など 質問: しまして、名古屋市内の戸田川緑地で地域の幼稚園児 複雑な状況ですが、当社としましては、特に生態系の 貴重な発表、ありがとうございました。 の方40名を含め父兄の方170名ぐらい参加していただ 保全、その地域の環境保全に配慮することが重要と考 高速道路が出来ますと、必ずその費用対効果の話 きまして、 この地域性苗木の植栽を実施しました。 えて、実行していっております。 というのは後でレビューされると思います。いわゆる ちなみに、エコロードにつきましては、1970年代か BバイCというやつですけれども。そういった要素の ら当社として取り組んでおりまして、自然相手というこ 中で、 こういう取り組みによる効果はそういう過程で とで、やっと何十年かして、社会情勢の変化もあります レビューの対象になるのかどうかということと、そうい が、 このエコロードの重要性というのもみずからも確 う事例があれば教えていただければと思います。 質 疑 認できましたし、またそれを皆様に紹介することがで きたという状況になっております。 大岩: これが地域性苗木のシステムで、採った種から苗 質問ありがとうございます。 木をつくりまして、 また現場に戻す。その結果、現場で BバイCの効果ということで、環境につきまして申 復元した緑は周辺の緑と何ら境がないような状況に し上げさせていただきますと、一般的には環境という なってきているという写真です。 のはBバイCがとれないのではないかと言われてお これも、苗木を植えて育って、今、大きくなっている この協議会のメンバーは、当社のみならず、NPO・ ります。ただ、先ほど説明した中の一つで高速道路緑 状況で、 トンネルの入口を見ていただければ、緑が5 市民の方、名古屋市・行政のところが一緒になりまし 化ということで、生物多様性だけではなくて、緑化を通 年でかなり復元したという状況が確認できるかと思い て、その中間支援ということで環境省の中部環境パー してCO 2の吸収肯定固定もするということで、高速道 ます。 トナーシップオフィスに入っていただきまして、四つど 路の中はかなり緑化を進めております。従来は、日本 下が、先ほどのユニット苗の根の発根状態と、植え もえの形でこの協議会を運営しています。また、 この 古来の造園の手法を取り入れた形で、当初から大き つけている状況です。 11月にも名古屋市内で植栽をするということで今、い い木を買ってきて植えておりましたが、やはりそれで ろいろと調整しているところです。 この写真は、昨年まで私が勤務しておりました新東 すとかなり建設費もかさむということで、あるときか 名の建設現場です。今、 この新東名では、エコロード ら、苗木植栽ということで小さい苗木を植えて建設費 の取り組みを進めながら、早い時期での営業開始を を少なくして、そのかわり何年かしたら苗木が樹林を 目指して工事を進めております。 形成するということで、当初から大きい木ではなくて 以上、簡単ですが、当社の生物多様性への取り組み 小さい苗木を植えるというようなことで、 コスト削減に の説明を終わらせていただきます。 どうもありがとう も努めてきています。その結果、先ほどの地域性苗木 ございました。 の育成技術のほうにもつながってきています。環境な のでコスト無関係ということではなくて、できる限りの ところでコスト削減にも努めながら、また新たな技術 開発を進めまして、 よりコスト削減にもなるようにとい また、生物多様性とも関係ありますが、地域活動と うことで進めているのが当社の現状です。 いうことで、環境コミュニケーションということでいろ 最後になりますが、当社は環境方針を定めまして、 いろな地域の皆様と取り組んでおります。 その中で生物多様性の保全に貢献する取り組みとい 質問: 先ほど説明しました地域性苗木の育成技術を、高速 うのが目標の一つになっております。 ありがとうございました。 道路内のみでなくて、名古屋市内でも生かそうというこ 具体的には、エコロード、法面の樹林化、地域性苗 - 43 - - 44 - 会員企業による事例発表-3 清水建設株式会社 土岐川・庄内川流域圏の持続可能な開発のための 生物多様性評価システム 点がふえてきたり、市街地の縮退によって生物の利用 空間が拡大しております。 清水建設株式会社 このように、農村と都市では相反する問題が同時的 に進行しております。 したがって、これを解決するに は、流域全体の生物多様性指針、 しかも市民にもわか 土岐川・庄内川流域圏の持続可能な開発のための 生物多様性評価システム るような海図のようなものがあるといいというふうに 思われます。 〜大学と建設企業の連携による生物生息環境の ネットゲインに向けた取り組み〜 清水建設の那須でございます。 よろしくお願いいた します。 「土岐川・庄内川流域圏の持続可能な開発のため 清水建設株式会社技術研究所グループ長 の生物多様性評価システム」についてご報告させて 那須 守 いただきます。 中部大学応用生物学部環境生物科学科教授農学博士 南 基泰 Po i n t この仕事は、中部大学と私ども清水建設が共同で 行ったものです。最初に私、那須のほうから説明し、そ の後、中部大学の南先生から説明させていただきま 一方、 これからの建設の取り組みとして、生物多様 す。 性を社会ストックとして回復する、そういうような提案 まず最初に、流域における農村から都市において、 が求められると思います。自然や緑の生態系サービ どのような生態系の問題が生じているかということに ス、防災機能ですとか景観形成機能、コミュニティー ついて説明いたします。 形成機能、憩いや癒しの機能、 こういった機能を建設 種多様性だけではなく地域固有性、遺伝的多様性をも考慮に地域生態系を保全・管理する に組み込み、価値を上げるような提案です。 ための評価システムを報告します。特徴は①フィールドで集積してきた生物データに基づ 既にそういうような事例はもう出てきていると思い く、②希少種のみならず地域の代表種も対象とする、③他の流域圏でも適用できる汎用的 ます。例えば、右にあるようなビオトープ機能を有する 評価方法であることです。評価結果を基に広域な視点から生物多様性の指針を地図化(見 調整池、それから患者や職員の憩いや癒し、いわゆる える化)することによって、建設事業の戦略的な立地選定やミティゲーション計画に活用で 療法的価値を提供するような緑地を持った病院など きます。 が挙げられます。 個々の建設において、 どのような自然を復元するか といった問題は、我々にとっては非常に重要な問題で す。 したがって、そういうときに先ほども言いましたよ うな指針があると、地域とのかかわりを持った非常に - 45 - 最初に農村では、虫食い状の開発、それから放棄地 効果的な計画ができるというふうに思われます。 の増大によって、生物の生息地が消失したり劣化した このような背景と問題意識から、中部大学と清水建 りといったような問題があります。 設は生物多様性の共同研究を始めました。 一方、都市では、都市緑化によって人と自然との接 実施に当たっては、それぞれの得意分野を中心に - 46 - 会員企業による事例発表-3 清水建設株式会社 土岐川・庄内川流域圏の持続可能な開発のための 生物多様性評価システム まず1番として、景観スケールで流域全体の環境特 いたします。 性を把握しました。2番目は、景観-生息地のスケール 左の図が種多様性の評価です。鳥、チョウ、それから で、その流域が生物にとってどのようなところが重要 トンボについて、約130種類ぐらいの種を分類いたし なホットスポットであるかについて、種多様性とそれ まして、それぞれの生息環境をこの流域全体について から地域固有種という視点から評価しております。3番 予測しました。その結果をもとに生物多様性を予測い 目は、固有の生物の生息環境についてです。 ここでは、 たしました。 どのような生息環境にするとその生物の生息に適し ているかといったようなことを評価するモデル、評価 式をつくっております。 進めております。 ご存じのように生物多様性は、遺伝 子、種、それから生態系、景観といったような構図を 持っています。中部大学のほうは、遺伝子解析、生物 生息地の評価、それから清水建設のほうは、生態系評 価、景観評価といった実務的なサイドからアプローチ しております。 この左の図では、赤になるほど非常に多様性が高 いというところです。おわかりのように、支流の里山地 域で非常に高くなります。 まず最初に景観スケールです。 また右の図は、 この地域固有の生物であるヒメタイ 景観スケールでは、地質、地形、植生に関する15の コウチについて、その生息環境を予測したものです。 環境要素をもとに、 この地域の環境を小流域単位で 赤の部分は、生息確率が約85%以上ということで、非 分類いたしました。右が分類した結果です。 この図か 常に生息の可能性が高いところです。 らわかることは、分類の要因として地質年代が大きく この多様性と固有性、両方を重ね合わせますと、一 関係しているということです。それから2番目は流路次 部には少しギャップがありますけれども、全体的に見 数、河川がどれぐらい分岐しているか、それが重要だ ますと、重なるところはこの地域の特徴的な地層であ ということわかってきました。左は、それを地図化した る土岐砂礫層と一致するということがわかってきま 様性と里山指標種の潜在的生息地の評価について説 ものです。 まず地質で言いますと、緑が一番古くて、続 した。 明いたします。 いて赤、青、黄色というふうに新しくなってきます。そ 続きまして、生物の生息環境についての評価です。 目的は2つあります。1つは、生態系保全のためのグ れから流路次数で言いますと、緑の部分が源流域、赤 先ほども挙げましたヒメタイコウチを事例にして説明 ランドデザインの検討です。 これに当たっては、多様 の部分が支流域というふうになっております。 いたします。 性と固有性、両方の面を考慮いたしました。 この結果から推測されることは、地質年代とか流路 まず最初に、ヒメタイコウチの生息環境の全体像を 2番目は、固有の生物の生息地の保全・回復のための 次数が何らかの形でこの地域の生物の生息環境に影 分析いたしました。 これは、文献ですとか有識者ヒアリ 評価・管理ツールの構築です。 響を与えているのではないかということです。 ングによって行っています。 対象は、東海地域、土岐川・庄内川流域を対象とし 続きまして、景観-生息地スケールの評価です。 こ 続きまして、個々の要素についてフィールド調査を ております。皆さんもご存じのように、この地域は約 こでは、種多様性と地域固有性の評価について報告 行いまして、その中でどういう環境がこの動物にとっ 1,500平方キロメートルの広さですが、丘陵地とか沖 積平野、それから干潟といった多様な環境がありま す。 しかも、湿地と草原を中心とした東海丘陵地帯に は15種にも及ぶ生物が生育しております。 実施した方法は、大きく2つに分かれます。 1つは、目的の1に対応するグランドデザインを検討 まず最初に、景観から種へのスケールとして、種多 するための評価です。 これは1、2が該当します。 - 47 - - 48 - 会員企業による事例発表-3 清水建設株式会社 土岐川・庄内川流域圏の持続可能な開発のための 生物多様性評価システム て重要であるかということを分析しました。その結果、 例えば、 ここが一番この生物の固有性、多様性につ これまでに、各生物には地域によって遺伝子のレベ 赤で囲んだものが重要であるというふうにあげられて いて重要なホットスポットということが言えます。それ ルで異なるということはよく知られていたことです。 し おります。 から、 ここの部分がバッファゾーン、 ここの部分が都市 かしその遺伝的な地理的変移の広域評価方法がな との連結を考えたコネクティングゾーンというふうに かったがために、遺伝的な多様性のバックにある環境 言えます。 条件の相違というのは、 これまで明らかにすることが こういうものがあると、例えばホットスポットでは できてきませんでした。 開発はなるべく避けて保護に努めよう。それからバッ そこで我々は、清水建設が得意とするGISを用いた ファゾーンとかコネクティングゾーンでは、なるべく生 広域評価、 これは植生のデータであるとか土壌、加湿、 物の移動を分断しないようにしようとか、現在の環境 それから標高データというような地理的なデータ、そ で生物多様性についてあまりよくないところはそれを ういったものを積み重ねていって、ある特定の環境条 アップしようといったような戦略的な保護計画とか保 では、演者が交替いたします。共同研究者の中部大 件を抽出するということで、先ほど那須からの報告も 全計画、そういうものに結びつくと思われます。 学応用生物学環境生物科学科の南です。 ありましたように、 この地域は地質的なものと河川の 続きまして、遺伝的多様性の評価について、中部大 私は、後半の遺伝的多様性の評価について、各論的 次数によって環境条件が非常に特異的な場所である 学の南先生から報告いたします。 な部分に突っ込んだ話をさせていただきたいと思い といったことがわかったように、そういったようなこと ういう状態であるかをモデル化したのが右の図です。 ます。 を行います。我が中部大学では、遺伝的多様性の評 これは斜面スロープの角度の例ですが、縦軸がこの これまで生物多様性の評価は、生育地のある種の 価ということで、右側は遺伝子を解析しているときの 生物について適合性が高い場所、横軸がその環境要 生育の有無であったり、個体数の多い少ないを評価 生データですが、 こういったようなデータを出してくる 素です。 このような要因を組み合わせて最終的に全体 対象としてきました。 しかし生物多様性は、遺伝子、 ことができる。そこで、両者の得意とする分野をオー を評価する、そういう式をつくりました。 種、生態系、そして景観と階層構造をとっております。 バーレイすることによって、遺伝的多様性に寄与する こういうものは何に役立つかといいますと、例えば この中で最も多様性評価が難しいものは、遺伝的多 環境要因の評価を行っていこうとしました。 この流域の中でどこがこの生物にとって生育に適した 様性だと思っております。 しかも、その遺伝的多様性 場所であるとか、現在、そういう場所がわかっていると の背景にある環境要因を明らかにすることは非常に きに、 どういうふうにそれを維持したらいいかといっ 重要なことです。 さらに調査を進めまして、それぞれの生育環境がど たときの参考になります。 以上のような生息環境の分類をもとに、種多様性、 それから地域固有性の2つの面からこの流域を生態 学的にゾーニングしたのがこの図です。 これは周伊勢湾地域の地図ですけれども、周伊勢 湾地域には、ハルリンドウという春先に咲く小さな リンドウの仲間がいます。 このハルリンドウというの - 49 - そこで本日は、 この場をお借りして、遺伝的ノーネッ は、 この地域の里地・里山の指標種として非常にすぐ トロスという新たな概念についてご紹介させていた れていて、 このハルリンドウが咲いている場所は、従 だきたいと思います。 来、里地・里山と呼ばれていた場所が今も保存されて - 50 - 会員企業による事例発表-3 清水建設株式会社 土岐川・庄内川流域圏の持続可能な開発のための 生物多様性評価システム いるだろうという仮定のもとで我々は研究を行いま てきたわけです。 しかも、それぞれのハルリンドウが ことができないものです。それだけに、今後は遺伝的 した。 生育している表層地層の違いを見ますと、東濃の遺伝 多様性を評価する一つの方法というのが、生物多様 そこで我々が踏査して調べた結果、 この赤い部分が 的にも古いタイプと言われていたグループが、 これは 性保全のためには重要なツールになってくるかと思 ハルリンドウの生育の確認できた場所です。 これまで 前期更新世以前の古い地層にしか生育していない。 います。 は、単に地図上にこれを重ね合わせていただけなの オレンジ色の比較的新しい系統のものは、後期更新 で、我々も東濃地方のほうは開発が進んでいないから 世の地層に乗っているということがわかってきたわけ 多いのであろうというふうに考えていたわけです。そ です。 こで、清水建設の持っているGISの技術を使って、 ここ これはどういうことを意味しているかといいますと、 で我々が踏査した生息状況のデータと地質データを ハルリンドウは、中国大陸と日本が陸続きのときに中 オーバーレイした結果、後期更新世という地層、 これ 国大陸から入ってきた植物であるというふうに考えら は最終氷河期以前の地層ですが、その地層の上にし れています。ハルリンドウというのは非常に移動距離 かハルリンドウは生育していないということが明らか の少ない植物でして、 この植物がそれぞれの遺伝子グ になったわけです。 ここで1つ言えることは、我々が里 ループごとに異なる表層地層の上に乗っているという 地・里山と呼んでいる場所というのは、後期更新世以 ことは、異なる時代にこの地域にハルリンドウが少な 前の表層地層に非常に多く残されているというのが くとも2回中国大陸から日本に入ってきたと考えられ 最後に、ここまで報告した評価システムに基づい この地域の特徴であるということが1つわかってきま ます。 て、生物多様性保全措置を持続的に進めるためには、 した。 したがって、 このハルリンドウからわかることは、 こ 我々は経済的な仕組みが必須であるというふうに考 の地域の現在の自然、例えばハルリンドウにしてもほ えております。 これは、私たちが現在、検討中の愛知県 かの植物にしても、非常に地質的な要因が寄与してい の県民税という経済的仕組みを大学、企業、市民がか るということがわかってきました。 かわることによって生態系サービスに転換する仕組 このことは、最近注目されているエコネットワークと みです。 ここでは、県民税の中でも 「森と緑づくり税」 と いう概念がありますが、エコネットワークを結ぶとき、 いう納税者1人当たり500円ずつ毎年納めている目的 少なくとも東濃のものと周伊勢湾のものを結んでは 税についての一つのモデルケースをつくらせていた いけない。 これは新たな遺伝的な攪乱を招くだけであ だきました。 る。それから、ネットゲインという考え方で、東濃のハ 現在、中部大学では、愛知県の森と緑づくり税を活 ルリンドウを三河や尾張に持ってくることは、 これもや 用して、里山モデル林について愛知県、清水建設、中 はり遺伝的な攪乱を招くことになるということが一つ 部大学の産学官で実証実験を実施しています。今後、 それから、遺伝的多様性についてですが、周伊勢湾 わかってくるかと思います。 この実験については、大学の社会的責任の面からも 地域には2つの大きな遺伝子の異なる集団が生育し これは、今回ハルリンドウという植物でご紹介させ 取り組み、継続して成果を報告していく予定です。 ているということが明らかとなりました。 この遺伝子の ていただきましたが、実を言いますと、 これと同じよう 時間に限りがありますので、概要のみのご紹介となり 集団の異なるものをピンク色とオレンジ色で分けて なことが、先ほど紹介がありました水生昆虫、ヒメタイ ましたが、詳細はポスター会場で紹介させていただき みました。そうしますと、東濃地方のものはすべて赤 コウチにおいても、東濃地方のものと三河のものは遺 ます。 い色の遺伝子グループ、それから周伊勢湾地域のも 伝的なグループが異なるということがわかってきてい ご静聴ありがとうございました。 のはすべてオレンジ色のグループ。つまり三河、尾張、 ます。 三重県のハルリンドウと、岐阜県東濃のハルリンドウ 先ほどから遺伝的な多様性と言っておりますが、 こ は異なる遺伝子のグループであるということがわかっ れは、一たん失われるとネットゲイン、つまり回復する - 51 - - 52 - 会員企業による事例発表-4 中部電力株式会社 中部電力の生物多様性保全の取り組み 中部電力の設備概要でございますが、火力発電所 を中心とします会社でございます。沿岸部に火力発電 中部電力株式会社 所がございまして、原子力発電所が1カ所ございます が、 こちらもやはり沿岸部に立地しています。それから 水力発電所につきましては、180カ所ほど保有してお 中部電力の生物多様性保全の取り組み りますが、 これは主に山間部にあります。 設備がこういった形の構成でございますので、当然 のことながら、発電電力量も火力発電が中心の会社に なっております。 つくりました電気を送電線、配電線を通じて皆様に 中部電力環境部の内藤と申します。 お届けをしておりますが、配電線につきましてはその それでは、私のほうから当社の生物多様性保全の取り 延長が13万6,000キロということで、地球を3.4周する 組みにつきましてご紹介をさせていただきたいと思 ぐらいの距離の設備を保有しております。 います。 環境部環境経営グループ 課長 内藤 修久 Po i n t 中部電力では、生物多様性の保全を環境に関するアクションプランに定め、企業活動、社会 貢献活動の両面から取り組んでいる。 企業活動における取り組みについては、原子力発電をはじめとする温暖化対策の推進、発電 私どもは電気をお届けしておる会社でございます 所等の建設時の環境アセスメントの実施、緑化活動などを進めている。 また、社会貢献活動として、社有林の維持管理とこれを活用した森林ボランティア育成など まず、私どもの会社概要でございます。私どもは、中 が、電気は、現代の私どもの生活に欠かせないエネル の森林活動、海の生態系保全技術の研究などを推進している。 部5県を供給エリアとしております電気事業者でござ ギーになっております。お客様に良質で低廉な電気を います。発電から送電、配電、電気の販売まで一貫して 安定的にお送りするということが私どもの使命でござ 事業を行っております。 いますし、その中で環境保全に一生懸命取り組んでい くということも我々の重大な使命の一つというふうに 考えております。つまり、安定供給とそれから経済性と 環境保全、 この3つのEを同時に達成していくというこ とが我々の使命というふうに考えております。 そこできょうは、 この3つのEのうちの1つ、環境保全 の中の生物多様性につきましてご紹介をさせていた だきたいと思います。 - 53 - - 54 - 会員企業による事例発表-4 中部電力株式会社 中部電力の生物多様性保全の取り組み こちらは、私どもの環境方針であります「中部電力 保全対策の例としては、なるべく改変する土地を小 グループ環境宣言」をご紹介したものでございます さくするとか、あるいは開発が避けられない場合には が、 ここで具体的な行動目標をアクションプランとして 移植をするとか、そんな取り組みを実施しています。 取りまとめております。 このアクションプランの中に、 生物多様性の保全というものも取り上げていまして、 本日のプレゼンテーションでは、 この中で企業活動と しての生物多様性保全、例えば地球温暖化対策、ある いは発電所などをつくるときの環境アセスメントの実 施、それから緑化、そういったものの取り組みなどをご 紹介します。 それでは、 まず企業活動としての生物多様性保全に 中でも原子力発電と申しますのは、燃料に化石燃料 ついてご紹介をさせていただきます。 を使いません。 ウランの核分裂によってエネルギーを まず最初に、地球温暖化防止についてご紹介いた 得ることから、発電時にCO2を排出しないという電源 します。 でございますし、安定して電気をお届けできるという それから、そうしてつくった発電所でございますが、 皆様ご承知のとおり、地球温暖化といいますのは、 電源でございまして、当社では、 この原子力発電につ なるべく緑豊かな発電所にするということで、地域の 生物多様性の危機の一つだというふうに言われてい きまして安全性確保を前提に推進していくということ 生態系保全に配慮した緑化形成というものに心がけ ます。 日本では4つの危機ということを言われておりま で地球温暖化防止に取り組んでおります。 ております。 して、1つは開発による危機、それからもう1つが里山 この写真は、碧南火力発電所という愛知県碧南市 なんかが崩壊するということで人手が入らないことに にある発電所でございますが、 ここで2000年の初めご よる生物多様性の危機、それから外来種の移入の危 ろに発電所の増設工事をしました。左側はそのときに それからもう一つとしまして、社会貢献活動として 機、その3つに加えまして、地球温暖化が生物多様性 植えた苗木で2002年の状態ですが、右側は2009年の の生物多様性ということで、先ほど供給エリアという の危機の一つだというふうに言われまして、特に生物 状態でございまして、苗木を植えたものがこのような お話を申し上げましたが、我々は中部5県に密着して 多様性といいますのは、気候変動に非常に脆弱であ 形で林になっているという状況でございます。 事業をやらせていだたいている会社でございます。そ るということを言われております。 こういう緑化につきましては、なるべく郷土種、その ういう会社としまして、地域貢献ということも非常に重 そうした中で、電力会社であります当社も、地球温 地域で古くからある樹種を選んで植えたり、あるいは 要なものだと考えておりまして、所有しております森 暖化防止に一生懸命取り組んでおります。 常緑の広葉樹を主体に選定をしたり、あるいは実のな 林の保全とか、あるいは森林を活用した取り組みなど 温暖化防止の三本柱ということで、原子力発電、再 る木を選びまして、鳥などの餌になるようなものを選 をご紹介したいと思っております。 生可能エネルギー発電、それから省エネルギーという 次に、 こういった発電所をつくるに当たっての環境 んで、地域の生態系の保全に貢献できるように取り組 取り組みを主にしております。 配慮ということでご紹介をさせていただきます。 んでいます。 こちらにイメージ図がございますが、右側は、 「メガ 発電所など大規模施設をつくるときには、環境アセ ソーラーたけとよ」 と申しまして、愛知県の武豊に来年 スメントを実施しております。周辺環境の現況の調査 運転を開始します大規模太陽光発電所でございます。 とか、あるいは環境影響の予測評価、 こういったもの こういった再生可能エネルギーの取り組みをしたり、 を実施していくということで、動植物の種類だとか希 あるいは火力発電の発電効率を向上させるという取 少種の生息状況調査をやったり、それに基づいて専 り組みをやっております。 門家の方からご指導をいただきながら評価・保全対 策を実施していっております。 - 55 - - 56 - 会員企業による事例発表-4 中部電力株式会社 中部電力の生物多様性保全の取り組み 所があり、山のほうから海に至るまで、そういった設備 をつくって事業を進めているということでございます ので、 こういった社会貢献活動も実施をしております。 それから、同じくこれは碧南火力発電所の例でござ それから、発電所ばかりではなく、送電線の建設に いますが、地域に共生する施設も併設しています。 こ 当たっても環境配慮を実施しております。 ちらは、 「野鳥が集うエコパーク」 というタイトルがつ 特に猛禽類などの希少動物の配慮を行っておりま いてございますが、奥にありますのが碧南火力発電所 して、送電線の建設に当たりましては、 こういった動植 でございます。手前側に池のようなものができており 物の調査を実施したり、あるいはこういった希少の猛 ますが、 これがこの発電所にあわせて整備した野鳥池 禽類の生息が確認されれば、保全に関する検討組織 でございます。 この碧南火力発電所につきましては、 を立ち上げまして保全策をとっています。愛知県の尾 矢作川の河口域に立地している発電所でございます 張旭に日本ワシタカ研究センターというところがござ ので、渡り鳥がよく来るところでございます。そのた いまして、 ここの猛禽類の専門家の先生にご指導をい めに、そういった鳥が休めるような野鳥池を整備して ただきながら、影響予測、あるいは保全対策を進めて おったり、あるいは循環水路というものを設けまして、 います。 鳥ばかりではなく昆虫類とか水生生物が生息できる それから、社会貢献とは少し毛色が違いますが、今 申し上げた社有林の内ヶ谷山林というところを活用し まして、森林のCO2吸収量の測定技術の研究をしてお まず最初に、山林での活動ということでご紹介をし ります。 これは航空写真を使いまして、空から写真を ております。 写して、その樹種とか樹高を測定して森林のCO2吸収 ここに「自発的に環境保全を実践できる人材を育て 量を測定する技術ということで、実際に現地に行って る」 とございますが、その下に森林ボランティア「ちゅ 踏査して調べるよりもコストとか労力を削減しながら うでんフォレスター」 とございます。実は、岐阜県の郡 CO2吸収量を測定できるという技術でございまして、 上に私どもは社有林を保有しております。当社の前身 今こんな研究もしております。 であります名古屋電燈という会社がございまして、そ の会社が大正3年に山林を取得したということを聞い ておりますが、それを引き継ぎまして今、維持管理をし 環境を整えております。そういった形でシロチドリ等 ております。 この山林を活用いたしまして、森林ボラン のチドリ類とかシギ類、 こんなものも飛来していると ティアの育成に取り組んでおります。 いうことを聞いております。 参加者は、当社の従業員、あるいはOBの方を対象 にしておりまして、森の仕組みや間伐作業の技術を習 得するプログラムを立てまして、年間10回ぐらい研修 をやります。 この参加者の方々は、休日を利用してご 参加いただきまして、人工林の間伐などができる技術 続きまして、社会貢献活動としての生物多様性保全 についてご紹介をさせていただきます。 私どもは中部5県の中で水力発電所が山間部に あったり、あるいは送電線がやはり山間部を通って おったり、あるいは沿岸域には火力発電、原子力発電 - 57 - を身につけるという取り組みをやっています。 それから、同じく山林を使いまして、次世代の子ども これまでに80名の方を育成しておりまして、こう たちを対象に、 自然の大切さとかあるいは命を大切に いった方々は、自分の地域に戻られまして、地域の森 思う心を育てるということで、地元のNPOと協働で、子 でボランティアとして森林保全に取り組んでおり、愛 どもたちを対象にした自然観察とかサイクリング、 ク 知県、岐阜県、三重県の山林で間伐などの作業をやっ ラフトワーク、 こういった活動も実施しております。 こ ておられます。 れまでに500人あまりの子どもたちに参加していただ いております。 - 58 - 会員企業による事例発表-4 中部電力株式会社 中部電力の生物多様性保全の取り組み す。近年は、磯焼けというような現象が起こって、藻場 がだんだん少なくなっているということもございます ので、当社のほうでこういったアマモとかカジメの種 苗を育てて、それを現地に移植すると、そういう藻場 の造成技術の研究もやっております。 具体的には、アマモ藻場の造成ということで、環境 省の事業に三重県と一緒に入って実証実験をやった り、あるいはカジメ藻場の造成ということで、中部国際 空港、セントレアの護岸のところに移植をするという 取り組みもやっておりまして、申し上げましたように、 それから、まちのほうでは、緑豊かな地域づくりを こういうふうに山から里地、それから海辺での取り組 支援するということで、苗木を配布する活動も実施し みも進めておるということでございます。 ております。年間1万6,000本と書いてございますが、 私どもは従業員が1万6,000人ほどいますので、それに 合わせて大体1万6,000本というのを目標にしておりま すが、 これをお配りさせていただいております。1985 年からですのでもう25年ほど取り組みをしております が、 これまでに累計42万本ほど苗木を配布させてい ただいています。写真は、その25年前に植えた苗木が こんな大きさに育っているということのご紹介でござ います。 最後に、 こちらは宣伝になってしまいますが、今週 水曜日から土曜日まで、ポートメッセなごやで「メッセ ナゴヤ2010」 という展示会がございます。 この中で私 どももブース出展をさせていただきます。今申し上げ ましたような取り組みをもう少しビジュアルや体験で きる形でご紹介をしております。ぜひそちらにもお足 をお運びいただきまして、当社の取り組みにつきまし てご理解いただけますと幸いでございます。 以上で、私の発表を終わらせていただきます。 どう それから、最後に海の生態系保全技術ということで もありがとうございました。 ございまして、藻場を修復し、自然を再生するというこ とでご紹介します。 藻場といいますのは、魚介類の産卵や生育する場 所でございまして、海を浄化する機能も持っておりま - 59 - - 60 - パネルディスカッション 生物多様性の現状と今後の課題 生物多様性に向けた仕組みづくり・人づくり コーディネーター 関西大学教授 白石 真澄 テーマ 大阪府生まれ。昭和62年関西大学大学院修士課程工学研究科建築計画学専攻を修了後、株式会社西武百 貨店で店舗開発に従事し、平成2年株式会社ニッセイ基礎研究所都市開発部および社会研究部門において 生物多様性の現状と今後の課題 生物多様性に向けた仕組みづくり・人づくり 調査・研究に従事。平成14年4月より東洋大学助教授、教授を経て平成19年4月より現職。専門テーマは「バリ アフリー」 、 「少子・高齢化と地域システム」 。平成21年3月の千葉県知事選挙に出馬。 パネリスト 国際自然保護連合上席科学顧問 ジェフリー・マクニーリー IUCN上席科学顧問。1980年よりIUCNに勤務。IUCNで勤務する前の12年間、 タイ、インドネシア、ネパール において自然保全活動に関する研究や実践に従事。現在はIUCNの上席科学顧問として、自然保全に関す る1000以上の団体会員と11,000の科学者と専門家を擁する、世界最大の自然環境保全ネットワークである IUCNの活動全体について監督する立場にある。環境問題に関する幅広いテーマに関する40冊以上の著書・ 編書、および500以上の学術論文や雑誌記事を著すとともに、14の国際的学術誌の編集委員を務める。 カリ フォルニア大学ロサンジェルス校人類学学士。 国際自然保護連合親善大使 イルカ 白石: きょうのテーマは、90分の中でなかなか消化できる 皆様こんにちは。ただいまご紹介をちょうだいいた ものではございませんが、3つのパートに分けてお話 しました関西大学の白石真澄でございます。 を進めさせていただきたいと思います。まず、それぞ エッセイなどもあり、母親であるイルカはそれら作品を通じて、 「私達は、皆この地球という大きな生き物に ただいまより、 「生物多様性の現状と今後の課題」、 れのお立場から、生物多様性の中で最優先課題、今一 住む、細胞同志である」 というメッセージを世代を超えて、沢山の人々へ伝えている。平成16年7月28日、IUCN サブタイトルとして「生物多様性に向けた仕組みづく 番求められているものは何かということです。二巡目 り・人づくり」 と題したシンポジウムに移らせていただ は、それに向けてどういう主体がどのように行動して きます。 いくのか。最後に、それぞれのお立場の中から今後に この生物多様性は、私たちが住む地球の生命を維 向けての結論を導き出せればというふうに考えており 年日本国際博覧会の会場演出総合プロデューサーとなる。 また、平成19年には中部大学応用生物学部教授、 持する仕組みというふうに言われておりますが、残念 ます。 平成21年には(社)日本生態系協会顧問(平成22年には地球いきもの委員会(国連・国際生物多様性年国内実 ながら、過去から現在までを見てまいりまして、生態 では、最初にジェフリー・マクニーリーさん、お話を 系や遺伝子の破壊・損失は進んでいると言わざるを いただきたいと思いますけれども、私たちが住む地 得ません。1992年にリオデジャネイロで開かれた地 球で、経済のグローバル化が進展して、民間企業によ 球サミットでこのテーマが取り上げられましたが、残 る途上国への投資なども急増してまいりました。途上 念ながら、昨年の内閣府が行いました調査でも、我が 国の政府などでは、キャパシティー不足のためにこう 国の国民の中でこの言葉について意味を知っている した生物多様性への取り組みがまだまだおくれてい というのは1 割でございました。6割近くの人が聞いた るという指摘もございますが、国際的な活動をして ことがない。企業を中心にさまざまな生物多様性に いらっしゃる中から、今何が最重要課題だと思われま ついての取り組みは進んでまいりましたけれども、社 すか。 東京生まれ。女子美術大学に在学中からフォークグループを結成、シュリークスを経て昭和49年にソロデ ビュー。翌年の昭和50年『なごり雪』が大ヒットしシンガーとしての地位を確立する。現在もコンサート活動を 中心に毎年全国ツアーを続けている。 また、絵本でも 『ちいさな空』 (全4巻) と 『真冬の天使』 を出版のほか、 国際自然保護連合、初代親善大使に任命された。 東京都市大学教授 中部大学教授 涌井 史郎 神奈川県鎌倉市生まれ、東京農業大学出身。(社)国際観光施設協会副会長などを務め、平成15年には2005 行委員会)委員長代理に就任)。その他、 『NHK出版 こころを読む「景観から見た日本の心」』など多数の執 筆をこなし、 テレビなどでも幅広い活躍をみせている。 社団法人中部経済連合会副会長 三田 敏雄 愛知県生まれ。昭和44年成蹊大学工学部機械工学科卒業後、中部電力株式会社に入り、平成15年取締役東 京支社長、平成17年常務取締役執行役員販売本部長、平成18年代表取締役社長、平成22年6月代表取締役 会長に就任。平成19年5月より(社)中部経済連合会副会長。 会的な認知度をどう向上させていくのか、そして生物 - 61 - 多様性に取り組める人材をどう育てていくのか、きょ マクニーリー: うは、 この4人で地についた議論をしてまいりたいと 非常に重要な質問だと思います。92年当時は、初め 思います。 て皆さんたちが生物多様性について話し出した時期 - 62 - パネルディスカッション 生物多様性の現状と今後の課題 生物多様性に向けた仕組みづくり・人づくり でありますけれども、 しかしこの生物多様性というこ 夫もいました。 この人は高度1,000メートルぐらいのと 前にグローバル・バイオ・フォーラムというのをつくり です。なので、ほかの人ともうまくつき合えないという とに関しましては、我々人類が生まれる前からもうそ ころにどこに何を植えたらいいか、遺伝子的にその対 ました。それは何をするかというと、世界の各地域を ことがあると思います。そうすると学校でのつき合い、 ういった生態系というものはあったわけであります。 策があるということも知っていたわけです。それから 回って政府を集めて、COP1に行く国の人たちを集め あるいは社会でのおつき合いもうまくいかない。もし 我々は、いろいろな生態系の一部として存在してきた また、種の多様性ということもわかっていました。自分 てアジェンダーで話される項目について説明したわ 自然ともっと親しめば、人づき合いもよくなり、成績も わけです。 の周りにあるいろいろな薬草などもわかっていたわ けです。それがその人たちにどういう意味があるの よくなって、将来も明るくなります。 ですので、子どもた しかし、今日の能力づくりという点で考えた場合に けです。そしてまた、エコサービスということもよくわ か、交渉のときどのようなオプションがあるというこ ちに関しては、自然と親しませることが非常に重要だ は、いろいろな問題があります。生物多様性に関して かっていて、例えば水がどれぐらい恵みになっている とを教えました。 どのようなポジションを交渉の場で と思います。 は、例えば生物多様性をどのように使うかということ のかということもわかっていたわけです。 ですから、彼 とるかということではなくて、 どうやって交渉したらい でも大人はどうでしょうか。最後の点として私が考え に関しても、思いの違う団体、 グループがあります。そ は本当に完全に生物多様性のことを理解していたわ いか、 どういう問題なのかということを教えていきま たいことは、生物多様性を大切にする人たちというの ういった意味では、人づくりもいろんな才能、能力が けです。ただ、その言葉は知らなかった。そのことを彼 した。 は、やはり自然とつき合っている人だということです。 必要とされると思います。 は生物多様性という言葉では呼んでいなかったわけ そして現在、このCOP10になったわけですけれど 日本にもたくさん庭いじりをする人たちがいると思い 私も1968年からアジア、 タイにいて、そこで12年間 です。 も、それを見てみると、かなり大きな進展があったと ます。日本に来て本当に素晴らしいのは、やはり日本 いました。そして1980年から私はIUCNで仕事をする ですから、人づくりをするときには、 ここにヒントが いうことがわかります。国際的なレベルで見ると、 コー の庭園です。ですので、例えばガーデニングのグルー ようになりまして、世界中を回ってお あると思います。 ディネーションが非常にうまくいくようになったと思い プのような人たちがもっと生物多様性をやれるよう ります。そしてその活動によって、生物 一つの方法として考えていただき ます。 に、例えば自生種を大切にするようなことをやっても 多様性に関する人づくりを助けてまい たいのは、物事というのは世界の中 それをどういうふうにやるかということに関しまし らったらどうでしょうか。そしてその人たちが、早期か りました。インドネシアで働いていた でどんどん早く変わっていきます。 ては、実際には実践で学んでいくということです。実際 ら例えば外来種の危機に対する警鐘を鳴らすような こともあったわけですけれども、その 1992年、 リオの会議がありましたけれ に生物多様性にかかわって、問題にかかわって学んで ことをしてもらったらどうでしょうか。庭づくりをする人 ときに当時の環境大臣が、彼は今週 ども、その後、 この生物多様性の条約 いくという姿勢です。近隣諸国と協力をしたり、あるい たちは自生種とそうでないものがよくわかると思いま 表彰を受けると聞いており、皆さんた もあるわけです。そして今、いろんな は同じような理解を持っている国と協力をする。193 すので、早くそういった人たちに気がついていただけ ちもご存じかもしれませんけれども、 政府に対していろいろの呼びかけを もの締約国があるということは、当然、立場も理解も れば、特に移入種に関する問題は減らしていくことが エミール・サミルさんでした。彼は、 「この生物多様性 行っておりますけれども、私が昔ネパールで知ってい 大きく違います。 できるのではないかと思います。 というのはあまり難しいからだれにも結局わかっても た農夫の人たちは、そういったことは知らなくてもい もう一つ別のポイントとして本当に我々が考えなけ 最後のポイントですけれども、COP10は8,000人の らえないんだ。多くの人、特にインドネシアの人には いわけです。COP10に来る必要もないわけです。 この ればいけないのは、バランスが変わってきている。す 人が集まってきております。COP1では800人ぐらいで あまり意味のないこととして片づけられてしまうだろ COP10というのはもっと政府の人たちがやる話であっ なわち都市の人口がどんどんふえてきているというこ した。ですから、議題もどんどんふえております。そし う」 と、そういうふうなことをおっしゃっています。私も て、例えばABSなんていうのは政治家がやればいい問 とです。農村、例えば里山に住んでいるような農夫の て何十ものサイドイベントが行われております。宣言 そのことを考えてみました。 題だというふうに彼は思っていると思います。ですか 人たちは、本当に完全に生物多様性はわかっていると とか、それから代表の人々の情報量はますますふえて 実際にネパールのチベットとの国境の近くで何年 ら、いろいろな交渉が今行われているけれども、そう 思います。 しかし、東京で育った子どもたちは、ビデオ おります。今すべきことは、 この状況の変化に適応す か過ごしたこともありますけれども、そこで一緒に仕 いったところでは、やはりそういった交渉のための能 ゲームのことはよく知っているかもしれない。だけれ る能力を育てることだと思います。 このCOP10のミー 事をしていた人たちは、今まで学校教育を受けたこと 力をつける必要があると思います。 どもやはり生物多様性のことは知らないと思います。 ティングに来るたびに、新しい議題が生まれていま もないような人たちで、一番近い学校に行こうと思っ ですので、我々が名古屋で考えなければいけない ですので、その子たちの能力、キャパシティーという す。そして新しい技術が生まれ、そしてまたそれで新し たら1週間かからないと歩いて行けないようなところ 一つの問題としては、 これはCOP10である。COP10と ことを考えたら、 どうしたらいいか。例えば、今日の都 い問題への解決を図らなければなりません。そしてこ です。ですから、学校に行って帰ってくるだけで2週間 いうことは10回目です。私たちは今まですべて出てま 会育ちの子どもたちというのは、ネイチャー欠陥障害 れらの問題に対する外向的な交渉のチャレンジとい かかってしまうわけです。そうすると、あまり学校へ行 いりました。COP1からCOP10の間を見てみると、それ という病気にかかっているというふうに言う人がいま うのもふえております。ですから、今我々に必要とされ く人がいないのは当然ですね。 ぞれの各国の代表者の人たちの情報量が非常にふ す。すなわち、自然とのやり取りがないということで、 ている能力というのは、 この変化に適応する能力だと しかし、生物多様性について彼らは何を知っている えています。そして能力もつけています。問題につい 人生で欠けてしまっているものがあるわけです。 この 思います。 かということを見ると、30もの違う米を育てている農 ての認識、力が高まっています。IUCNが実はCOP1の 現実の世界の中に住んでいるという感覚がないわけ - 63 - - 64 - パネルディスカッション 生物多様性の現状と今後の課題 生物多様性に向けた仕組みづくり・人づくり 白石: い、やります」 と言って立候補したわけでも何でもない と聞かれたこともありますが、でもやはり私の中にお ていると 「ちゃんと拾って食べなさい」 と怒られました。 マクニーリーさんからは、非常に示唆に富む問題提 んですね。IUCNは環境省と外務省が会員になってお いては、私はたまたま人間として生まれてこの地球上 そういうふうに言ってもらったことが、何かとっても尊 起をいただいたのではないかと思います。 この生物 りまして、ある日突然、その外務省を通じまして、 「イル に暮らしているけれど、 どうも私の周りを囲んでいる いことだったなというふうに思いまして、そういうもの 多様性に絡む課題には、いろんな次元、そしてフィー カという人は歌をうたっている。それも何かいろいろ 大人たちの意見を聞いたり行動を見ていると、 「人間 を歌にしてずっとうたってきました。 ルド、そしていろんな世代にかかわるようなテーマが 地球とか未来とか、それからいろんな生き物について だけが偉い」 というふうに言い切る大人が何でそん そのことにやはり最初は共鳴していただけることが ある。インドネシアやタイの人たちは、言葉としては知 の歌をつくってうたっているということだけれど、IUCN なに多いんだろうというのが、 どうしても自分の中で 少なかったんですけれど、 うたっているうちに、最初は らなくても、生活実感や体験としてそれを持っている の活動とかそういうものに対して興味はおありです わからなかったんですね。 「こういう小さな鳥や虫や 中学生や高校生の十代の男の子や女の子たち、当時 のであれば、やはりその人たちの暮らし、生産技術を か」 というふうなお話がありました。 いろんな生き物が生きていて、私たちも生きているん 深夜放送をやっていましたので、深夜放送でそんな うまく維持していくという方法でこれに取り組んでい 私は、ずっとさかのぼって考えれば、小さい小さいこ だから、同じ命じゃないか」 って言うと、 「それはおかし 歌をきいてもらったりお話しすると、共鳴してくれる男 くようなこともできるわけですし、学校現場でどうする ろからあらゆる生き物がとっても大好きで、将来何に い、人間が一番偉いんだよ、人間がすべてのものを支 の子や女の子が「私も、僕もそんなことを昔から思っ のか、そしてこれからたくさん時間を持つような大人 なりたいかと聞かれたら、歌手になりたいと言ったこ 配してるんだ」 っていうような言い方をされてしまうこ て生きてきたんですよ」 っていう手紙をもらうように たちの世代が、趣味を通してこれにどう貢献するのか とは一度もなくて、歌は好きですけれども、本当に私 とがあって、私はどちらかというと素直で大人しい子 なりまして、そのことは大変私に大きな勇気を与えて というような問題提起をいただけたと思います。あり がなりたかったのは、 まず獣医さん。それからもっとで だったんですが、そういう言葉を聞いたときだけは何 くれました。偉い学者の先生方からではなく、そういう がとうございました。 きれば、ジャングルの奥地へ行っていろいろな生き物 かぐっと牙を剥きたくなるようなところ 少年少女たちから大きな勇気をも それでは、続きましてイルカさんにお願いをしたい の生態系を調べたり、 ですからいろんな生き物のふん がございまして、 「 何で、それはおかし らって、そうか、 じゃあ私がこういう と思います。 の中をかき回してみたり、苔を調べたりとか、野生の いでしょう。やっぱり私たちはみんなこ 思いを歌にしてうたっていってもい もう皆様の中ではご案内のとおりで、フォークシン 生物を保護するレンジャーというような、そういう仕 の地球の中で一緒に生まれてきて、命 いんだなっていうふうに思えるよう ガーとしてはあまりにも有名でございますけれども、 事をやりたい、もう絶対にやるんだと。当時、私の世代 の長い短いはあったり、体の大きい小 になったのが、1年、2年、3年、4年と 国際自然保護連合の親善大使という役割まで担って ですと、 「野生の王国」 というテレビ番組がありまして、 さいはあるけれど、この地球上でみん うたって、10年目ぐらいになったころ いらっしゃる。 まず皆様方の興味としては、なぜイルカ きょうも同じ世代の方もたくさんいらして、知ってい なで生きてるんだから、人間だけが偉 から、 「イルカがうたっている歌って さんがこれに取り組まれたのかということではないか らっしゃる方多いと思いますが、 もう毎週のようにアフ いってどうして言い切れるの」 って、大 いうのは、エコロジーと言われるよ と思いますが、そのあたりからひもといていただきな リカやアジアの湿原やジャングルの映像を見ては、私 人に逆に質問しました。そうすると大人の人たちは、 うなものかもしれないね」 って音楽評論家の人たちが がらお願いしたいと思います。 も大人になったらああいう仕事をしたい、絶対にする 何かみんな適当な言い方をしたのかわかりませんが 言うようになったんですね。エコロジー、ああそうなん んだと、人間が嫌いなわけではないけれども、なぜか 「いや、それは大人になったらわかるんだよ」 って言 だ、そういう言葉があるんだ、なんていう時代でした。 イルカ: そういういろいろな生き物に対しての気持ちが物すご われたんですね。だから私は、そうか、私が言ってる でも、 どんどん、 どんどん世の中に自分たちが住ん 皆様こんにちは。イルカと申します。 とても素晴らし く強い子どもでした。 ことは間違ってることなのかな、きっとそれは大人に でいる周りの環境にとても注目を置いている方たち い紹介をしていただきまして、大変うれしく思っており それで、そういう仕事をしたいと思っておりました なったら自分の中で自然とわかってくることなのかな がふえていくという中で、私もいろいろな形で、最初は ます。 けれども、気がついたら歌をうたっておりました。です と思って成長してきたんですが、大人になればなるほ 自然環境をやっているWWFのパンダマークの皆さん 私は、一般的に言うとうたう人間ということで、皆さ から私は、歌をつくるということも先生について勉強 どわからない。そして今でも人間だけが偉いとは決し と活動したりしておりましたけれども、そういう中で仲 んも胸の中で私の歌を何か思い出として持っていて したことはありません。歌をつくる、そしてうたう、 どれ て思えません。 間がたくさんふえていって、そして2004年に外務省を くださっている方もいらっしゃるかなと思います。私 も習ったことがないけれど、最初につくったのは、多 そう思いますと、やはり私は歌をつくってうたう人間 通じてIUCNから 「イルカという人間は長いこといろん は2004年からIUCN、日本語で言うと国際自然保護連 分、小学校に入る前ですが、遊びの一種でかわいがっ として、そのほかにも絵本を書いたり絵を書いたり、 な生き物の歌をつくってうたっているらしいが、親善 合の親善大使を任命されまして、自分の中ではもっと ていた犬のうたをつくっていた。そのずっと延長で、 いろんな形で表現させてもらっていますが、そういう 大使としていかがなものだろうか。何か働いてみませ もっと活動しなければと思っておりますけれども、歌 私はいろんな生き物たちの歌をつくってうたってきま 中で表現していることを思い返してみると、小さな虫 んか」 ということで任命を受けました。 を通じて活動させていただいております。 した。 たちとか名も知らない草たち、お花たち、そしてうちの ですから、私は学者でもありませんし、 もちろん政治 「なぜ親善大使になられたんですか」 ということをよ ですから、あまりヒット曲には結びつきません。 「何 おばあちゃんは、 「一粒のお米の中にすべてがあって、 家の先生方とも違います。でも、私は一人の人間とし くほかでも質問されますが、 これは私が自分から 「は でそんな生き物の歌ばかりつくってうたうんですか」 神様なんだ」 と言って、 ご飯粒をこぼしてそのままにし て、それこそ森羅万象から心を育てられた人間という - 65 - - 66 - パネルディスカッション 生物多様性の現状と今後の課題 生物多様性に向けた仕組みづくり・人づくり ふうに思っているので、その恩返しができたらいいな さて、続きまして涌井さんですけれども、研究者の 増しているわけです。 バメントの問題だけではない、 この地 と思っております。 お立場から、今、生物多様性に社会全体で取り組んで こういうことを続けていくかたわら 球に生きるすべての人の問題だ。だか そして一人の人間としては、私は主婦ですし、それ いくには、何が一番の課題になっているとお考えでご で、1万年前には100年に1種の生物し ら多様なステークホルダーを構成し から母親でもあり、今は孫もおりまして孫も育ててい ざいましょうか。 か絶滅していない。 ところが現在は、1 て生物多様性年国内実行委員会、す 日に100種、場合によればそれが300、 なわち地球生き物委員会をきちっと る。そういう中で、女性から見てこの地球というもの を、いわゆるお台所、キッチンの中でたくさんのこと 涌井: 500という可能性もある。 こういうこと つくっていこう。それによってこれから を学びました。農薬の問題、水の問題、いろんなこと 中部大学、そして東京都市大学の涌井でございま であるとすると、今わかっているだけ の我々の行動理念を定めていこう。愛 を本当に身近にある中で学んできたことを、 これから す。あわせて、きょうは国連生物多様性年国内実行委 で3,300万種、1億種の部品でつくられ 知・名古屋から学ばせていただいてこ もIUCN、それからいろんなこういうシンポジウムのた 員会委員長代理という立場と、生物多様性広報委員会 てきたこの地球の生命圏というのが、それだけのもの ういうパターンができた。 このこともぜひご理解いた びに先生方から教えていただくことを、もしかすると 座長という、 この4つの立場からお話をさせていただ が1日なくなっていくとしたら、いつまで我々は安全な だきたいと思います。 全く環境というものに興味のないと言われている本 きたいと思います。 自立循環的なシステムをこの地球に残せるのか、 こう 私は、生物多様性の問題はすぐれて国際的な問題 当に普通の皆さんに、歌を通じて少しでも振り向いて ちょっとスライドを見ていただきたいのですが、今、 いう課題に直面するわけです。 であると同時に、一方では非常にローカリティーあふ いただける、そういう架け橋になりたいなと思ってい 我々が一番考えなければならないのは、私は実は生 そこでもう一つの側面は、実は、愛知・名古屋でこの れる問題であるということも、 この場所でなければな ます。 物多様性広報参画推進検討会の座長として、何でこれ COP10が開かれる意味というのは非常に大きいと私 らないという問題もあることもついでに指摘をさせて きのうも実は名古屋の公会堂でコンサートをさせ ほどまでに生物多様性という言葉、あるいは概念が共 は思っています。私は実は、皆様ご存じのとおり 「愛・ いただきたいと思います。 ていただきました。夏には名古屋にやって参りました 有されないのかなと悩んでおりましたら、英国の新聞 地球博」の総合プロデューサーをやって、 この「愛・地 ありがとうございました。 ら、中経連の皆様に大協力をいただきまして、おかげ 記者が、 「いや、そんな心配する必要はありませんよ。 球博」 というのは、何が成功した原因であるかという さまでコンサートのチケットも、出したその日に即日 なぜなら、 もしロンドンでバイオダイバーシティと言っ と、多様な人たち、ステークホルダーが、みんなが一 白石: 完売ということになりまして、きのうもIUCNの本部か たら、新しい洗剤の名前かと聞かれるはずだ」 と、 こう 緒になってこの地球博をつくった、 これなんですね。な ありがとうございました。ローカリティー、やはり大 らの皆様、それから環境副大臣も会場にお見えになり いうことを言われまして、安心はしましたが。いずれに おかつ、高齢者の方も非常に多く参加されて、 この期 きな問題ですけれども、それぞれ地域に合った課題に まして、本当におそくまで盛り上がったコンサート、記 しても、我々がこの46億年の地球の歴史の中で、38億 間中、高齢者の医療費が半減したという話もあるぐら 地域ごとに取り組んでいくということは大切なのでは 者会見という形になりまして、大変感謝しております。 年かけて生き物たちがつくってきた、直径20センチに いであります。 ないかというご意見でございました。 この場をお借りしまして感謝を申し上げたいと思いま 地球をしてみるとわずかに鉛筆の線とほぼ同じ太さ そしてもう一つの側面は、実は、愛知の人たちは引 さて、お待たせをいしました。三田さんは、きょうは す。ありがとうございました。 のこの生命圏、 これを命が織りなしてきた、 この事実 き返す勇気を持っていた。それは、 この海上の森、 これ 企業のお立場から、また財界のお立場からという2つ をやっぱりみんなが共有すればいい。先ほどマクニー はご承知のとおり瀬戸物をつくるというようなことも の立場があるわけでございますけれども、今、企業活 白石: リーさんがおっしゃったように、概念は知らなくてもそ ありまして、東部丘陵地域が一時はげ山になりました。 動の中においても、 この生物多様性というのは「でき ありがとうございました。小さいころに気づかれた れを実感すればいい。そしてすべてのもの、命はつな これを100年かけて戻した。その戻った森で博覧会を ればやったほうがいい」 ということから、もう 「社会的 問題意識をずっと持ち続けて、今もその分野でお仕事 がっているということをみんなが共感し合えばいい。 やろう。だけどみんなが反対して、結果としては青少年 責任の中の一つとして」 ということにもなっております をされていらっしゃるというのは、 とても素晴らしいこ これがスタートだと思います。 公園というところを会場にした。 これは引き返す勇気 し、 リスクではなく、ビジネスチャンスにも変えられる とではないかと思います。歌や絵を通して表現すると ただ、地球というのは決して半径6,400キロの大き です。それから藤前干潟もそうです。名古屋の市民の 内容になってきているのではないかと思います。中部 いうのは、世界中には文字が読めない人、識字率の低 さではなくて、たかが30キロメートルの圏域を38億年 方々が自分のごみ問題として考えてあの干潟を残し の活動を通してのお話、 これから企業はどういう考え い国もありますし、 こうした課題をわかりやすく伝えて かけて命が織りなしてきた、 このことをみんなが共有 た。 こういう一つの勇気があった。つまり、環境リスク 方で取り組むべきかというようなことをお教えいただ いく手法ではないかと思いましたし、 また、お台所から できれば、いいんじゃないかと思います。 がどんなものかを実際に日常生活の中で体験して、そ ければと思います。 命を見ていくということは、地球上の半分が女性です 通常、すべての生物は、ある一定の量になると自分 れで引き返すという勇気を持っておられた。 ので、女性がやはり環境問題や生物多様性の問題に でその数が制限されていくということがあります。 しか そんなことが実は参考になって、今我々が何をやろ 三田: もかかわれる可能性が大きいという点を示していた し、残念なことに人間は、1870年代の石油の商品化以 うとしているのかというと、 これは国の問題だけでは ありがとうございます。三田でございます。 だいたのではないかと思います。 来、絶滅モデルとも言われるように、世界の人口は急 ない、あるいは企業の問題だけではない、ローカルガ まず初めに、企業というものが社会にとってどうい - 67 - - 68 - パネルディスカッション 生物多様性の現状と今後の課題 生物多様性に向けた仕組みづくり・人づくり くべきかということを示唆いただければと思います。 う存在であるかということを考えておく必要があると べきかということを考えてみたいと思うのですが、先 白石: 思います。 ほどからお話していますように、私たちの活動はどこ ありがとうございます。やはり企業活動すべてのプ 人間社会多様性とでも言いますか、企業もやはり かで必ず自然改変を行っているということですから、 ロセスにおいて最後まで責任を持つということや、企 マクニーリー: 社会の一員である以上、社会そのものが生き生きとし そこから得る自然そのものを大切に扱うという心、そ 業規模はさまざまあれど、生物多様性や環境につい 生物多様性条約、 これは非常におもしろい、そして て活動しなければ企業も生き残っていられない、そう してできるだけ少なく効率よく使っていくといったよう て責任を持つというメンタリティーが非常に大事だと 大切なものだと思います。 というのは、そのすべての いった関係にあるのではないかと思います。 なことを考えていかなければならないと思います。私 いうことだったと思います。 国がアクションプランをつくらなければいけないか 社会を人体に例えると、企業が自分の勝手でいろん どもは電気をつくる会社ですが、部品や物を生産する 今、一巡が終わりまして、皆様からいただいたご意 らです。日本は今、 この第3次のアクションプランをつ なことをやり出すと、それが増殖していきます。社会が 会社も同じだと思います。きょう午前中の講演にもあ 見の中で、幾つかこれからの二巡目のご発言にキー くっているわけですけれども、 これは本当に重要な枠 体とすれば、その自己増殖する企業はがんかもしれま りましたけれども、我々が資材を発注して、それを購入 になるようなことがあったかと思います。 組みになると思います。それぞれの国々がどのような せん。そうすると、社会そのものが破滅すると同時に、 して、その形を変えて、売って、そしてそれを使ってい イルカさんもマクニーリーさんもおっしゃいました 形でその人づくりをしていくかということを決めていく 企業も破滅していってしまう。そういった関係にある く最後の消費者まで、すべてそれが絡んでいるという けれども、やっぱり実践的にということ。研究や調査は 上での枠組みになると思います。 中で、企業がどういう経営をして、 どうやって活動して 認識が、私たち企業にとっても必要なことではないか 非常に大事だけれども、もう実践の段階に来ている。 やはりここで重要なものとして、外交というものも いくかということを考えていくことが非常に大切では と思います。 何ができるか、行動するということにどうつなげていく 入れていくべきだと思っています。例えば、 日本のよう ないかと思います。 そうした一つ一つのプロセスの中 かということが1点目ではないかと思います。 これはも な国がどうすればほかの国の人づくりを助けることが 企業は、今申し上げましたように、大 で、いかに効率よく物をつくっていく う皆さんおっしゃいましたけれども、やはり政府や企 できるかといったようなものであります。 きく言うと社会、そして地球の中で存在 かに心した経営が、 これからも求め 業、NPO、NGOを含め、多様な人たちが参加をする。そ そのような広い話のほかに、3つ話をしたいと思い しているということですが、やはり自然 られている。そういったことを考えな して近隣諸国と連携をしていく。参加と連携ということ ます。 の恵みがあって企業活動ができている がら経営していくことが大変大切な ではないかと思います。 第1の点として、本当に重要なのは、まず教育のサ ということも改めて見直す必要がある ことではないかと思います。 もう一つは、 これは涌井先生からあった問題提起だ ポートであるということです。 これは若い人向けての と思います。 一方では、 この環境問題がチャン と思いますけれども、 こうした幅広い問題について、 学校教育だけではなく、一般大衆の啓蒙も含めてであ 例えば、私どもの電力会社は、電気 スであるという言われ方をしており やはりマクロ的に物事を見ていきながらローカルに、 ります。 を起こすのに多くの化石燃料を使っておりますし、ま ます。 まさにそのとおりだと思います。今、 この社会は、 ローカリティーというキーワードが欠かせないのでは 私は、きのう名古屋のまちをちょっと歩いてみまし た原子力、そしてバイオであるとか太陽光というよう 生物多様性、地球環境に向けて大きく変化していま ないかと思います。 たが、 「オアシス21」 というところがありました。そこで な自然エネルギーを活用しながら電気を起こしてい す。企業もその変化に対して適応しなければ、我々の これは私なりに考えてみたわけでございますけれ は、COP10に関する情報フェアが開催されていまし ますから、自然の恩恵を受けて企業が成り立っていま 持っている製品そのものが売れなくなってしまうと思 ども、 こうしたご意見の中の共通項、キーワードを少 て、たくさんのブース、あるいは子どもがいろいろ自 す。 います。逆に、そういうものに合致した製品、 プロセス し念頭に置いていただきながら、今、皆様方からご提 然にかかわるアートワークをしたり、工作をしたり、小 こうした自然の恵みを享受する中で、考えてみます を提供できれば、我々にとっては非常に大きなチャン 起いただいた問題を解決するために、今後何をして さなスクリーンがあってそこでCOP10のオープニング と、我々は自然に対して、その自然を改変していくと スが生まれるということになると思います。 いくべきかという具体的な話に入ってまいりたいと思 セッションの様子が放映されていました。そして何百 か、何らかの影響を与えながら活動しているというこ そういったことを考えていますが、 この中部経済連 います。 人という人たちが外交官の人たちのスピーチが放映 とも、改めて考えていく必要があると思っています。 合会の中でも、1人~2人の企業から私どものように1 冒頭に申し忘れましたが、もしお時間がございまし される様子を見ていたわけです。何人の人が聞いて そうした中で、では企業はどのような企業活動を 万人を超える企業まで、種々雑多でいろんな企業があ たら、きょうは会場の方からもご意見をお伺いしたい いるのだろうということでびっくりして感激しましたけ 行っていくべきかということですが、先ほどの各企業 りますから、同じように経営をすることは難しいかもし と思いますので、後ほどどなたに何をお聞きになりた れども、 こういったような形の増幅効果ですね、たくさ のプレゼンテーションでありましたように、企業活動と れませんけれども、先ほど来お話しているような心、精 いかということを少し意識をしていただきながらご参 んの人にメッセージを伝えるということが重要だと思 いうのは事業活動そのものと、それから社会貢献的な 神を持って経営に当たっていくことが、 これから大変 加をいただければと思います。 います。 活動、 メセナ的と言っていいかもしれませんが、そうい 大切ではないかというふうに思っております。 マクニーリーさん、いかがでしょうか。今、一巡目の それともう1つ、大学も重要です。大学は、非常に包 う活動があります。 私からは以上でございます。 発言が終わりましたけれども、皆さんのご意見をお聞 括的なアプローチを生物多様性について持っていま きになられて、具体的にこれからどういうことをしてい す。後で白石先生からも意見を聞きたいと思いますけ 私からは、メセナ的ではなくて企業活動がどうある - 69 - - 70 - パネルディスカッション れども、生態的、あるいはバイオロジカルの問題とい 生物多様性の現状と今後の課題 生物多様性に向けた仕組みづくり・人づくり ます。 うのもあるわけですけれども、 これはそれだけではな がわからなかったけれども、大人になってから、あっそ をうたうというような気持ちを絶えず子どもたちに向 ういうことだったんだ、伝承されている昔話とかそう けて、社会というものが子どもたちにそういう目を向 くて、人間の問題でもあるわけです。人間がどのよう 白石: いうものというのは、大人になってからわかることもた けて大人たちは暮らしていきたいし、そういう社会で な行動をとるか、人間がどういうような形で天然資源 非常に大きなところからでは、外交、先進国が経済 くさんあると思います。そういう童歌だとか子守歌で あってほしいので、国の違いとか言葉の違いはあった と接するかという問題でもあるわけです。ですから、 大国となった我が国を含め、先進国がこれから成長し すね、やはり私は、子どもを囲む大人たちがみんな子 としても、そういう壁を乗り越えて子どもたちはみんな 学生に対してはそのようなことを教えなければいけな てくる分野の国に対して、人材育成でどういう寄与が どもに対してそういう目を向けるという気持ち、いつ の宝物だとすると、人間以外の生き物たちもすべてが い。要するに生物多様性を学生に対して教えるときに できるかということ、そして小さな子どもたちを含めて も子どもたちに対して子守歌をうたうような気持ち、 私たちの宝物だというふうに思って私は生きていき は、バイオロジーだけではなくて人間の側面、あるい きちんと情報提供をし、教育をしていくこと。そういう それを何か今、少しみんなが忘れかけているような気 たいなと思うので、子どもたちにもいつも私はそのよ は経済的な側面も教えてやらなければいけないとい 点では、私は涌井さんがかかわっている大学教育とい がしてなりません。 うな話をしていて、 これは私のおばあちゃんからも私 うことです。 うものも、もう一度この生物多様性についてどうアプ 子どもたちがいろんな問題行動を起こしたり、心が がそのようにして育てられたことを伝えていきたいな それから2つ目のポイント、 これは先ほどのセッショ ローチをしていくかということを考える局面に来てい 荒れたりとかそういうことがあると、学校の教育が悪 と思っております。 ンとつながりがあると思いますけれども、生物多様性 るのではないかと思います。 いと、親はただ学校だけを批判するというニュースを を企業の計画に民間の中でどのように取り込んでいく 三田さんが入っていらっしゃる経済団体、 さらにきょ 見るたびに、何かとても悲しい気持ちになります。 ど 白石: かという話が午前中ありました。 これは特にこの経済 う午前中のスピーチにありましたTEEBスタディのお ちらもあってその人間というものが形成されていくも ありがとうございます。自然体験が少なくなる中で 団体、中部経済連合会のようなところがやっていける 話などもしていただきました。 のだと思いますので、そういった意味では、家庭はも は、残念ながら自然に対する恐れやうやまいの気持 ことだと思います。経団連の方々もそうです。あるいは イルカさん、教育ということが今、マクニーリーさん ちろんそうですけれど、子どもたちを囲む地域という ち、畏敬というものもだんだん減っていっているよう WBCSDのようなところがやっていけることだと思いま からお話に出たわけですけれども、 この教育も、 どうい ことですね。そうやって広げていきますと、昔は町内 な気がしますが、やっぱりこのまま放置していてはい すけれども、大きな会社だけではなくて、 どのようにす う内容で、何を教えていくかというようなことは、受け 会のうるさいおじさんがいてくれて、叱ってくれたり怒 けないというふうに、すべての大人が思っているよう れば小さな企業、あるいは中小企業もこういったこと 手の知識や興味・関心によって、非常に簡単なようで 鳴ってくれたりすることがありました。 な気がいたします。 に関与できるかというサポートをしなければいけない 難しいものだと思いますが、 どういうふうにすればわ それをまたもうちょっと広げていくと、子どもたちを さて、涌井さん、マクニーリーさんから教育という と思います。 まだ生物多様性を大企業のようには扱う かりやすく、かつ効果的にこの物事について理解が進 囲んでいる大自然のものたちだと思います。四季折々 ことを言っていただいたわけですが、先ほど名古屋 ことはできる能力は持ってないかもしれないところが んでいくでしょうか。 の中で、寒さの中で厳しさを教わって、 そして春になる での「愛・地球博」での取り組みの中に、高齢者の方 とその寒さの中から木の芽が出てきて美しい花が咲 たちが非常に参加をされて、思わぬ効果があった。 たくさんあるからです。 そして最後の点として、やはり人づくりに関しては、 イルカ: く。そういう中で子どもたちの心はとても命というもの そういう方たちが参加をして、そしてそこで得た体験 TEEBスタディの結果をどのように実行できるかとい 私は、もちろん学校での教育というのはとても大切 に密接につながって育っていく。私はずっとこれから を、また地域の中で伝えていくとともに、その人たち うことだと思います。けさ、ビショップのほうからTEEB なものと思いますけれど、もう一つは、やはり家庭で もそうであってほしいと願っている人間です。 にとってもいいことがあるという、こうした循環が地 の話がありました。経済学的に生物多様性がどのよう の教育、まだ学校に行く前、そして赤ちゃんがお母さ ですから、やはり世界中の国の人たちに本当に大 域に生まれれば、さらに活動の輪が広がっていくよう な、あるいはエコシステムサービスがどのくらいの価 んのお腹の中にいるとき、そういうときからもう本当 切にしてほしいと思うのは、歌も含めてその地域に伝 な気がしますし、新しい教育の仕組みなんていうも 値をもつかというお話をしました。 しかし、ビショップ に言ってみれば教育というものがぴったりとその人間 わっている文化、それからお祭り、いろいろな神事、行 のも実験的にできるかもしれませんが、マクニーリー の話では、 ではTEEBの中に入っているものは素晴らし に寄り添っているものだと思います。 事といったようなもの、それから信仰心です。それぞ さんのお話をお聞 い知見であるけれども、実際にどうやって日々のいろ ですから、もちろん学校での教育ということもみん れ全く違う民俗的なものを皆さん持ってらっしゃると きになってどういう いろな生活の中で実践するかという話はあまり彼はし なで大切に考えていく必要があるけれども、一個人的 思いますが、それがお互いに、違うんだね、でもそれ ふうに 思 わ れまし てくれませんでした。 にも私は、お母さんが子どもを胸に抱いて子守歌を がそれぞれ素晴らしいんだねということを認め合える たでしょうか。 ですので、 この3つの点を考えていかなければいけ うたう、私はうたう人間なので、 どうしてもそういうイ 気持ちがあって、初めて私たちはみんなお互いを認 ないと思います。人づくりをする上には本当にこの3つ メージが浮かぶのですが、やはり皆さんも子どものこ め合いながらつながってこの地球が丸くなっていくん というのは重要だと思いますし、効果的な行動に結び ろにお母さんに抱っこされたときの感触とか、それか じゃないかなと思いますと、やはり大人たちは子ども ついていく上ではこの3つが重要になってくると思い らそのときにお話をしてくれたこと、そのときは意味 たちをいつも膝に抱いてお話を聞かせたり、子守歌 - 71 - - 72 - パネルディスカッション 生物多様性の現状と今後の課題 生物多様性に向けた仕組みづくり・人づくり 涌井: しかも、 これでCOP10が終わったわけではなくて、 日市に国際環境技術移転センターというのがござい それからもう一つ、社会の仕組みも大切だと思いま 私は今、世界史的な変化が起きていると思います。 今から始まるんです。それはなぜかというと、 「生物多 まして、そこにいろんな国の方が来て環境技術につい す。そうやって生物多様性、環境に対して非常に努力 それは、自然は有限ではなくて無限で、その無限の 様性の10年」 というのを日本政府が提案しているわけ て学ぶということを、 ここの財界の中でも支援しなが している企業経営に対しては、例えば税金を安くする 資源をいかに利活用するのかということが科学技術 ですから、 これからそれに対してどういう行動計画を らやっております。そういったものを世界に輪を広げ とか、何かのインセンティブを与えるような規制緩和、 だったという産業革命の時代から、今や自然はもうリ 立てて、企業は先んじてそれにハーモナイズする一つ ていくということが大変重要なことだという認識もあ 逆に必要であれば企業経営を阻害しない範囲での規 ミットに来ている。 しかも地球はフルハウスである。そ のビジネスモデルを描いて、 しかも世界をリードして りますし、もっともっと活性化していきたいと考えてい 制の強化、そういったものを含めて、日本政府として ういう認識の中で、未来に今の資源をどれだけ伝えて いって、環境ストレスというのは最も弱いところに出ま るところです。 社会全体の仕組みをこの日本の社会の中で形成しな いくのか、 この課題が非常に重要だと思います。 すから、それをどのようにサポートしていくのかという それから、小さな企業でという特定のお話でいいま がらいくというのが、非常に大切なことです。 それを考えてみたときに、実は一番大事なのは、体 ことを、日本全体で考えていく必要があるのではない すと、やはり小さなところは、自分でやろうと思っても ただ、一つ問題があるのは、規制の場合は、同じよ 感と知識ができるだけ近い距離にあるということがす かなと、 こんな気がします。 無理なところがあるんですね。私どもだと、環境部とい うに規制した場合には、必ず弱者のところに影響が う部門がございます。 これは、できるだけ環境に対し 大きく出るということを念頭に置いておかなければ ごく大事で、今、知識だけがどんどん大きくなって、実 は牛を知っているのかといったら、牛というものは写 白石: て影響の少ないような企業活動をするにはどうだとい いけないと思います。例えば2人~3人でやっていらっ 真で見たことがあるし知っているけれども、触ったこと ありがとうございました。行動計画を早急につくる うこと、それから先ほどのセッションでもありましたけ しゃる企業の中で大きな規制を受ければ、やはりそこ もないという子どもたちがふえている。 このギャップ べきという問題提起だったと思います。 れども、森林の育成をどうしていくかということを中心 が一番影響を受けて潰れてしまうこともあるわけで が非常にいろんなものを招いていくのではないか。 さて、三田さん、企業が生物多様性に取り組むとい になってやる部門がありますが、そういったものをそ す。その小さいけれども社会を支えている企業がなく そうすると、やっぱり我々が未来を考えていくとき うことを考えたときに、いろんなプロセスがあって、生 れぞれの企業に求めるのは無理があります。そういう なっていくということは、その次の段階の経営基盤も に、いい日本語があって 「振り返れば未来」 という言葉 物多様性をいかに保全していくか、守っていくかとい ところに私どものこの経済団体の役目があるのだろう 崩れてくる。結果的に、 日本全体が崩れていくというこ がありますけれども、伝統だとか生活文化、イルカさ うことと、それを企業活動の上で持続的に利用してい と思います。 とになりますから、そういった弱者である経営に対し んがおっしゃったように、その時代は自然と人間が対 く、永遠に使えるようにしていくということと、さらに、 少なくとも、 この中部経済連合会に入っていらっしゃ ても配慮しながら、規制とか規制緩和をしながら社会 等の関係でいろいろせめぎ合っていた。 とりわけ日本 生物多様性から受ける利益を公平に配分していくと る企業の皆さん方、特に経営者に対して、今、地球環 全体の仕組みを変えていくということが大変重要だと の文化というのはそういう文化だったわけですから、 いう、いろんな見方があるような気がします。 境上非常に企業にとっても大変なことであると、涌井 思います。 そういうものを大切にしながら、やはりそこを尊敬し きょう発表いただいているような企業は、もちろん さんがおっしゃったように非常に変化しているわけで ていく。つまり、体感の中から自然を見つめていくとい 企業規模は大きいですし、体力もおありになる。中部 すから、それに追いついていかなければ、今、自分の 白石: う姿勢が非常に重要だと思います。 地域でごらんになっても、先ほどおっしゃいましたよう 企業で影響がないといっても、5年後、10年後には消 ありがとうございます。 日本政府がこのたび「里山イニシアチブ」 というの にいろんな従業員規模のところがあって、 これを経済 えてしまうかもしれないというぐらい大きな変革があ マクニーリーさん、今、三田さんから、 日本語で飴と を世界に向けて提言をして、 どうやらこれを受け入れ 界全体としてボトムアップしていくことはとても必要だ るということを皆さんに知っていただいて、その自覚 むちといいますか、マーケットメカニズムに配慮した ていただけるということです。やはりそうした、今まで と思いますし、人材がたくさんある企業から、少しまだ から、 ご自分の企業の中でどうやっていくのかというこ 規制強化と、そして積極的な行動をしている企業には 鳥の目で見ていたものではなくて虫の目で見て、そう キャッチアップしてないような企業にお手伝いをさせ とかと思います。 税制上のインセンティブを与えるというお話が出まし いう中にある種の知恵を発見していこうと、 こういうこ ていただくということもできるかもしれません。 企業活動だと、生物多様性に反するものを何もかも たけれども、そういう誘導策と生物多様性の関係につ とが非常に重要ではないだろうかと思います。 今後、中部地域を含め、全国でどういうことをすれ やってはいけないということではなくて、やはり企業 いて、何か示唆がございましたらお願いいたします。 企業も、そういうパラダイムの変化に対して、環境 ば企業の生物多様性を考える人材が育っていくのか 経営と生物多様性、人間社会の多様性、 これがベスト 革命の時代の企業の行動のスペックをどのように描 ということをお聞かせいただければと思います。 マッチでいくことが求められるわけですから、それに マクニーリー: 向けてどうするか。そうすると、わずかなコストダウン、 本日まだお話していないことがあります。それは、生 いていくのか、あるいは教育現場も、 どのようにそれを 考えていくのか、 この辺が非常に今問われているとこ 三田: 効率経営、 これが最終的には生物多様性にいい結果 物多様性の民間セクターに対するベネフィットについ ろで、 もう一つ中部地区で言えば、中部ESDという持続 今のご質問の前に、先ほどマクニーリーさんがおっ を生み出す原動力にもなるわけです。そういったこと てであります。 可能な教育、 この拠点でもあるわけですから、 これを しゃった外交、国際的な支援、そういうものが必要だ も含めて、私ども経済団体として何らかの力を発揮し これはバイオミミクリーと呼ばれる分野です。日本 上手に生かしていく。 というお話がございましたけれども、 この地方では、四 ていくことが必要だと思います。 は、 この分野で実は世界のリーダーとなっています。 - 73 - - 74 - パネルディスカッション 生物多様性の現状と今後の課題 生物多様性に向けた仕組みづくり・人づくり このように自然からインスピレーションを得て新製品 す。 これは、かつての全総と言われている国土開発計 りにくい。やっぱり企業の周りの人たちを教育、普及・ を開発しています。21世紀においては、 これは生物学 画法と対をなす法律ですけれども、そこで何が書かれ 啓発しながらどう巻き込んでいくかというスタンスが の世紀になるでしょう。生物学というのは、再生可能で ているかというと、 これまでの130年間の日本は、産業 重要だと思いますが、 それについてはいかがお考えで す。そして変化に適応することができます。私たちが 革命というか、近代西洋技術をキャッチアップして、人 ございましょうか。 生物多様性から学ぶことができる教訓というのは非 口増に対応するための社会資本整備の時代だった。 常に価値があり、生物多様性を維持するために投資 しかし今後の未来は、社会資本のみならず、自然を資 三田: をすることが必要になっていくのです。きょうはそれに 本財として考えて、 これをどのように国土に生かして 一企業がやるということではないと思うんですね。 これは、自然にヒントを得て新製品をつくるというも ついてお話をしているわけです。そうすれば、将来に いくのかということを考えるべきだと、 こういう、今ま 先ほどお話しましたように、企業もいろんなステーク のです。例えば、衛星に使われているソーラーパネル よい影響があり、私たちすべての人にとっての生活を でどちらかというとトンカチ的に建設・開発の官庁で ホルダーがいて、人間社会多様性という観点から言え をつくっていますけれども、衛星には電力が必要です よりよくすることができるでしょう。 あった国土交通省までが、実はそういう認識になって ば、あらゆる人、あらゆる社会、隣の企業、上下関係、 が、ロケットの中に格納しなければいけないのでこの 課題としては、その利益を保全にどのように生かす きたということがあるわけです。 すべてがステークホルダーになりますから、そういう ミラーを小さなサイズにしなければいけません。 この かというメカニズムをつくるということです。それが課 つまり、今やもう、先ほど申し上げたように我々は有 ものが一緒になってモチベーションを上げていかな 解決方法を科学者は自然から学びました。ある種類 題になっていくと思います。民間がNGO、NPO、政府と 限の自然資源を未来にどう引き継いでいくのかとい いと、多分、それはだれかが1人抜け、2人抜けすれば の植物の芽が広がる方法からヒントを得て、その葉が 協力をするということによって、その解決策を見出し う課題があるわけですから、それに対しては、今、マク 大きな成果は上がらないと思います。 どのように小さな形になっているのかということを研 ていただきたいと思っています。 ニーリーさんがおっしゃったように、バイオミミクリー そういった 意 味で は、先 ほどイルカさん が おっ とかファイトレメディエーションとか、 この領域に関す しゃったような子どもの教育、学校の教育から始まっ 究しました。 これにより非常に進歩を遂げている分野 です。 白石: るフロンティアの研究者はたくさん今出てきまして、 て、会社の中の教育、意識改革、そういうものが必然 それから、高速鉄道というのが日本にありますね。 こ ありがとうございました。 私のところでも、例えば土壌汚染を植物を使って吸収 的に必要になってくると思います。 れはまた、 トンネルに入るときの気流の問題がありま 生物多様性を維持するための投資というキーワー するなんていうことでかなりの研究成果が出るように それはどういうことかというと、やはり経営者みずか す。デザイナー、エンジニアが一緒に設計しているわ ドをいただいたわけですが、これは先ほどマクニー なりました。 こっちはたかだか30万年とか、おまけして らの確たる信念だと思います。そういうものが会社の けですけれども、 これは自然から学んで気流が少ない リーさんの問題提起にもあったと思いますけれども、 も500万年ですけれども、ほかの生物は38億年の知 文化となって、それが会社の経営に黙っていても反映 ような設計にしています。ですから、非常に流線型を 単に生物多様性を論じるだけではなく、経済学的な分 恵があるわけですから、そこに謙虚に学んでいって科 されるような企業風土をつくっていくということが何よ しているということで、最新の高速鉄道はかわせみの 野や経営学的な分野、そして人間としてどうかかわっ 学するという姿勢が、 これからは非常に大事だと思い りも必要です。そこから発信する雰囲気、言葉、製品、 頭の形をしています。 ていくか、 まさに哲学というか、そういう分野からひも ます。 そしてその価格、そういうものがお客様、消費者、その それから、ローターサンというのがありますけれど といていってこそ、初めてきちんと理解が深まってい も、 これもまたハスの葉から学んでいます。電子顕微 くことではないかと思いますが、大学ではそのように 白石: かと思いますから、企業としては、そういう立場の中で 鏡で見ますと、ハスの葉の形はスムースではなく、ギ なっているのかどうかという問いがございましたが、 ありがとうございます。 自分たちはどうするかということを考え続ける。今は ザギザしています。 このハスの葉というのは、雨が降っ 涌井さん、いかがでございましょうか。 三田さんは、先ほど飴とむちで税制インセンティブ 100点ではなく、及第点を60点とすれば59点か60点 と規制強化というお話をいただきましたが、やっぱ かもしれませんけれども、それを1点でも上げるという てもそこから汚れが落ちてしまいます。 ですから、塗料 他の方に無言の影響を与えていくということになろう の会社がそのような効果を真似て、ローターサンとい 涌井: り頑張っている企業、取り組んでいる企業をきちんと 努力をこれから積み重ねながら、5年後、10年後、20年 うペイントをつくりました。そのペイントをすると、ビ 残念なことに、大学の今のカリキュラムは、産業革 応援するカルチャーをつくっていくには、いろんなス 後、何万年後の子孫に対する生物多様性への遺産と ルにごみがついても、雨が降ると自動的にごみが落ち 命時代のカリキュラムのトレースをしているわけで、 テークホルダーとの対話ってとても重要だと思うんで いうことになるのではないでしょうか。 るんです。 統合的なところまでまだいってない、 これが現実だと すね。例えば、もちろん従業員もそうだと思いますし、 このような例というのは何百もありまして、日本の 思います。 仕入先、そして顧客の方々、企業市民と言われる中で 白石: 企業、あるいはほかの国の企業が開発をしています。 ただし、マクニーリーさんがおっしゃったことは非常 の地域コミュニティー、そして株主を含め、 こういう人 ありがとうございます。 これは、 自然に対してのリペイメントです。 自然の知 に重要で、今から3年ぐらい前に国土形成計画法とい たちに理解が進まなければ、やはり企業としてはBバ それでは、このあたりで会場の皆様からご質問を 的所有権と言ってもいいかもしれません。民間企業は う法律が日本でできたのは皆さんご存じだと思いま イC、 コストだけがかかってしまってベネフィットがと ちょうだいしてまいりたいと思います。 - 75 - - 76 - パネルディスカッション 生物多様性の現状と今後の課題 生物多様性に向けた仕組みづくり・人づくり お差し支えなければ、名字だけでも結構でございま うことで、遺伝子を改変しているわけですけれども、バ よって、同じ種類のものであっても味が変わるのでは 動車へという流れは加速度的に進んでいくと思いま すのでお名前、所属をおっしゃっていただいた上で、 リ島に行きますと、非常に高収量のものを育ててはい ないかと思います。そういったことも皆さんがわかる すし、また家庭においても、やはり電気エネルギーの どの方に何をお伺いしたいというような形でご質問を ますけれども、それだけではなくて、古い昔の種類の ようになるといいと思います。 シェアは高くなっていると思います。 ちょうだいできればと思います。 ものも育てています。 というのは、神様にお供え物を その多様性を保つということは、私も本当に重要だ そのときに自然エネルギーを見た場合、例えば風 いらっしゃいますでしょうか。これだけ大勢いらっ するんですけれども、神様がお好みなのは古い種類 と思います。農業の日本の研究センターがあります 力発電、 これは非常にいいけれども、効率よく電気を しゃると、 トップバッターはやりにくいと思いますが。 のお米なんですね。新しいお米は神様はお好みでは けれども、そういったところでは、古い古米をちゃんと 起こそうと思うと、投資対効果という意味からいきます ご協力いただいてありがとうございます。 どうぞ。 ないということで、宗教的な理由があってそういうふう とっていると思っています。例えば病気であるとかあ と、やはり立地場所、風の状況、それを取り巻く周囲の せっかくでございますので、立っていただいて、マイク にしているわけです。その信念といいますか、多様性 るいは害虫が発生したとき、あるいは気候変動があっ インフラ、道路がある、送電線がある、風が一定効率よ をお願いいたします。 を残すことは非常に重要だというのが彼らの文化な たときに、そういったものが使えるようにちゃんととっ く吹いているとか、そういう状況の中で、 日本でいきま わけです。 てもらっているはずだというふうに理解しています。 すと立地場所というのが自然に限られています。 とこ ろがその立地場所に風力の施設をつくろうと思うと、 質問: 我々は、人々の行動を変えるということで、もっとそ マクニーリーさんにお尋ねをさせていただきます。 の多様性を魅力的に感じてもらわなければいけない 白石: そこの自然を破壊する。例えばそこが自然公園地域に 社団法人環境創造研究センターのコダマと申します。 と思います。それは、人に対して、国民に対しての広 ありがとうございます。マクニーリーさんは、 日本も 指定されているとか、山林の大事なところであるとか、 人づくりが大変大事だというお話がございました。 告・宣伝ということもあると思います。例えば、白米より アジアも含めて何度も訪れていらっしゃるそうでござ そういったときに、そこの自然を守る、動植物を守ると 日本は、ご案内のように大変お米の好きな国民です も玄米のほうが栄養価が高くて健康にはよいと、体に いますので、私たち日本人と同じようにこしひかりや いう環境破壊を起こさないということと、そういったこ けれど、残念ながら、品種的にはこしひかりというもの いいものということを考える。その投資に対して一番 ささにしきの微妙な味がご理解いただけているのか とについて運動されている方々、あるいは住民の方々 が非常にもてはやされまして、消費者としては大勢の 効果の高いものということで、そういったものを集中 もわかりません。 の意向、 しかし片方において自然エネルギーをどんど 方がこのこしひかりを求めます。私は、人づくりの観点 して植えがちですけれども、それではいけないという ほかにいらっしゃいますでしょうか。 ん導入しなきゃだめだという、 こういう2つの環境への からいって、いろんな品種を楽しむ消費者をつくり上 ことです。 では、お願いいたします。 取り組みがバッティングするといいますか、環境と環 げていくことが、実は大切な多様性につながるのでは それからもう一つ、米づくりに関しては、米の集約度 ないかと思います。できれば企業の食堂でもそうして を上げるということであります。すなわち、例えば水を 質問: こってくる問題です。 いただくといいかもしれませんが、そういう意味で、 こ 減らすけれども作柄を上げる、例えば2倍にするとい 三重県環境保全事業団のアブラヤと申します。 そんなときに、部分最適と全体最適、その地域の自 の人づくりとなるカギは一体何だろう、消費者教育な うことができる。 こういった革新的な技術を使うことに これはご質問といいますか、私も日ごろ自分で考え 然を守ろうという部分最適を考えれば、当然、そこは のか、あるいは生産者のほうでそういうことをやるの よって、一般の人たちに対して魅力を感じてもらうこと ていて悩んているのですが、今、我々先進国、あるいは 開発しないでおこうと、そういう問題と、それから片方 か、あるいはジーンバンクをつくるのか。大変大きな ができるのではないかと思います。 発展途上国でいろんな議論をされていますけれども、 においては、それは風力発電を進めるんだということ 質問ではございますけれど、その辺のところを教えて もし一つの種類のお米だけが日本で植えられたと 我々が今、享受しているような生活、文化といいます の、そういった問題をうまく整合していく、そういう仕 いただければありがたいと思います。 よろしくお願い しても、南北の間で味は多少違うんじゃないでしょう か、 こういった生活を発展途上国の方々も一斉にやっ 組みづくりというものを、涌井先生あたりにヒントをい いたします。 か。例えばシーズンの長さであるとか気候の違いに てくれば、 この地球上で今一番私がどうなるのかなと ただければと思います。 境がぶつかると、 これが現実、実際やっていくときに起 思っているのは、食糧問題とエネルギーです。先進国 マクニーリー: の人々が享受しているようなレベルのものを全員が 白石: 何を食べたいかということ、 これも非常に大きな問 享受すれば、おそらくどこかで大きな問題になるだろ ありがとうございました。代替エネルギーをつくると 題だと思います。それを変えるというのは非常に難し うと思います。 きに、そこの自然をどう守るかというこのジレンマをど いと思いますけれども、一つおもしろいこととして、世 とりあえずエネルギーの問題について1つご質問 う解決するかという話ですね。 界の米ということを考えてみますと、例えば中国など させていただきますけれども、化石燃料を中心とした 涌井先生、 よろしいでしょうか。 では、約5万もの米の種類があるということですけれど エネルギーから電気エネルギー、自然エネルギー、そ も、そのうちの幾つかしか現在は育ててないというこ ういったものにシフトしていくんだと思いますけれど 涌井: とです。 というのは、それはやはり収量を上げようとい も、車一つとってみても、やはりガソリン車から電気自 そうしたフリクションはどこにでも起きているわけ - 77 - - 78 - パネルディスカッション 生物多様性の現状と今後の課題 生物多様性に向けた仕組みづくり・人づくり です。ましてや世界中にそういう問題はあると思いま そして、そういう事例は今、世界にどんどん出始めて があるのではなくて、バリューを高めるといったところ す。 います。 ここがTEEBを学ぶ大きなポイントだと思いま にひょっとするとビジネスの根本があるのかな。研究 ただ、そういう中で一つの考え方としては、先ほどの す。 者、学者がこんなことを言って生意気ですが、そういう ふうに思います。 ノーネットロスであるとかそうした考え方のように、何 かを損失したときには何かを補う。補うだけではなく 白石: てさらにアゲインでそれを上回るようにするという、 こ ありがとうございました。お時間がなくて申しわけあ 白石: ういう価値観はもう今、我々は許容しなきゃいけない りません。 ありがとうございました。 だろうと思います。 それでは、 このシンポジウム、残すところ5分程度に 残り時間が少々となっておりますが、最後に、お1人 そのためのシステムとしては、 ミティゲーションとい なりました。お時間が短くて、 もう1人ぐらい。 一言ずつ、きょうこれだけは必ず言っておきたいと、生 う手法であるとか、あるいはミティゲーションバンキ では川口さん、お願いします。 物多様性に向けた人材づくりのためにこれが大事だ ングというような形で、Aというところで非常にフリク 白石: というようなキーワードがございましたら、キーワード ションが起きるのだったら、その価値を別なところで 質問: ありがとうございます。 とともに、それに対するコメントなども補足をしてい 代替する。あるいはそれを一つの債権にしてそれを別 貴重な時間をありがとうございます。パネラーの皆 では、お願いいたします。 ただければと思います。 なところで補う。そういう大胆な考え方を導入している さん方のプレゼンテーションに大変感動しています ところもたくさんあるわけです。 が、先ほど涌井先生がおっしゃった、生物多様性が急 涌井: そういう考え方かが可能であるかどうかということ 速に壊れているということは、本当に大変な警告を発 そのヒントは、実は、 「愛・地球博」のグローバルルー について、実は日本の法整備や体系が非常におくれ されたし、もう一つは、2005年当時、私も中経連の副 プにあると思います。 「愛・地球博」 というのはでこぼ イルカ: ています。あるいは環境評価についても、生態学的な 会長で、三田さんのような立場で万博に参画していま こだった。それでみんながともに歩けるようにしようと 私のイルカという名前は、海外に行ってドルフィン 評価についても、経済的な代替をどうするのかという したが、引き返す勇気と言っていただきまして、その いうのであのグローバルループというのをつくりまし という意味だと言うと、いきなり皆さんがとても親しげ 観点が世界的に進んでいるけれども、それが日本の 5年後に今、 こういうCOP10がここの地で行われてい た。あれを見ていただくとわかりますが、4%の勾配で なまなざしを私に向けてくれまして、 とてもありがたく 中にまだまだ根づいていない。そのあたりをどうする る。本当にうれしいことだなと思っております。 す。それは要するに、弱者の方々が車椅子で押してい 思っております。 かということが、 これからの大きな課題だと思います。 そこで1つだけですが、世界人口もこれだけ爆発的 けるようにという考えからです。 海のイルカは、世界と世界をつなぐ生き物だと昔か そしてそれは解決をやはりしていかなければなら にふえてきましたし、私も経済人の立場もありますし、 つまり、先進国の側は、できるだけ勾配を緩くする ら言われてきました。神話の世界でもそうでしたし、そ ない。サステナビリティと開発と今と未来、それから経 医療関係の立場でラオスとかベトナムにもときどきは ように少し自分たちのスピードを落とそう。発展途上 して実際のイルカを見ても、何かそういう力を持って 済と自然というもの、そういう矛盾を、矛盾しているか 行きますが、非常に発展のギャップがあるわけです。 国の方々は、それをもうちょっと上げよう。 ところが、先 いるのではないかなと思います。私は別にそういうふ らというのではなくて、それをどう解決していくのかと ベトナムもだんだん文明生活に近づいてはいますが、 進国が落とす分というのは物すごいボリュームになり うに思って自分の名前をイルカとつけたわけではな いうことを考えていかなければいけない。 ラオスの山奥に行くと、まだまだという感じがします。 ますから、発展途上国の底上げを物すごくするわけで いけれど、私も来年40周年を迎えますが、40年ちょっ そこで一つだけ、私はもう一回ギリシャ人に学ぶべ そういう中で、先ほど涌井先生がおっしゃった、先を す。そういう案分の仕方というものが、実は知恵として と前にふと何も考えずにつけてしまったということが、 きだと思います。エコというのは、 ご存じのとおり古代 走ってきた、歩いてきた国としての勇気ある考え方と 非常に重要ではないだろうか。 逆に何かとても不思議な縁というものを感じまして、 ギリシャ語の「オイコス」 (共同体、家)、 「ロゴス」 (真 いうのは、 どういうところに考えればいいか。情報化社 ただし、我々はまだ科学や技術や投資余力がありま 海のイルカのように私はいろいろな生き物やいろい 理)がエコロジーの語源でありますし、 ノモス(秩序) 会ですから、 これからどんどん、 どんどん世界は同じよ す。そうすると、今まで広げることを考えてきたけれど ろな世界、いろんな人たちの間で少しでも何か架け橋 が経済の語源で、ギリシャ人は左手に「オイコス」、 「ロ うなレベルを求めるに決まっているわけですが、そう も、深めることを忘れている。自分の足元をどうやって に慣れるような仕事ができたらいいなと、いつもその ゴス」、右手に「オイコス」、 「ノモス」、 この両方を一体 したらもう地球がもたないよという話ですが、そうす 深めていくのかというところにまだまだ私はビジネス ように思っております。 となって考えてきた。それが産業革命以降、股割きに ると、先を歩いてきた我々というのは、特に企業人と ソースのチャンスがあると思います。先ほどバイオミ ことしは国際生物多様性年ということで、私もIUCN なって全然別なものになっている。これをもう一回 していえばどういう勇気が要るのかなということを率 ミクリーのお話もされましたけれども、深めるというこ の親善大使を任命されて6年目で、そういうときに私 くっつける仕組みを早急に考えていかなきゃいけな 直に、 この機会にサゼスチョンいただければなと思っ とが研究開発とかそういうことにつながっていって、 が遭遇できたというのも、何かとても不思議なご縁を いのではないかと思います。 て、あえて発言させていただきました。 我々はボリュームを広げていくことにビジネスの根本 感じております。 あくまでも私はアーティストとして、い - 79 - ちょっと順番を変えて、イルカさん、いかがでしょう か。 - 80 - パネルディスカッション 生物多様性の現状と今後の課題 生物多様性に向けた仕組みづくり・人づくり ろいろな世界を私の作品を通じて皆さんにお届けで てみるときに、実は、今からが始まりだと先ほど申し上 白石: 本日のシンポジウムは、生物多様性の中でこれに対 きたらいいなと思っております。 げましたけれども、生物多様性の10年、あるいはポス ありがとうございます。中部経済連合会としての強 応できる人材をどう育てていくかということを副題に また、IUCNのほうでも、今世界的に不況ということ ト2010年目標を達成する上で、 日本がどのように貢献 い決意をお話しいただきました。 お届けしてまいりました。 で活動が非常に困難ということもございまして、 ことし していくのか。世界の物づくりセンターであるこの中 それではマクニーリーさん、お願いいたします。お 生物多様性は、皆様ご存じのとおり、人間の生活の の春にはスイス本部に参りましたけれど、 「日本の企 部地域が、それについてどのような生物多様性と物づ 待たせしました。 質を左右しますし、ビジネスを含めすべての人間活動 業の皆さんはそういうことに関する関心はどうなんだ くりのハーモニーを提言できるのかということは、非 ろうか」 ということを随分たくさんのスタッフに質問さ 常に重要なメッセージだと思います。今からそれを始 マクニーリー: 4名のパネリストの方からは、今、 この生物多様性の れました。そういうことに関して賛同してくれる企業は めていただくことが非常に重要なことだということを 私の夢ですけれども、私たちは経済の発展と社会 環境変化がどういうふうに起こっているのかというこ ありますでしょうか。また、その資金を出してくれそう 申し上げて、私の最後のコメントにさせていただきま 的、そして私的、文化的な発展を、バランスをとって包 とをわかりやすくお話をいただきました。後半では、 な企業はあるでしょうかということを随分質問を受け す。ありがとうございました。 括的に考えていければと思います。そのためには、や それに向けての解決策をより具体的に議論をしてい はり自然とのつながりをさらに深める必要があると思 ただけたのではないかなと思います。 ました。きっとこのことしの国際生物多様性年を過ぎ の持続性を決定する重要なファクターでございます。 た後に、 日本の皆様、そして特に企業の皆様の意識が 白石: います。 「里山イニシアチブ」、 これは自然とのつながり 今、刻々と変わる状況の中で、状況変化に対応する 随分変わっていくのではないかなというふうに私は答 ありがとうございました。 の非常にいい事例としてCOP10で採択されるでしょう。 能力が求められている。それを解決していくのは新し えてきましたので、ぜひ皆様には、重ねてそのあたり では三田さん、お願いいたします。 世界のいろいろな国々で自然とのかかわりを持ってい い技術や新しい発想だということも、皆さんの共通認 ます。 これは非常に前向きな進展であると思います。 識にございました。 三田: そして、新しいテクノロジーがあります。私は非常に さらに、外交の分野、そして私たち個人のレベルま 私は、先ほど来、お話しておりますけれども、やはり 感銘を受けましたのは、先ほどの鹿島建設のスマー で、それぞれの立場の中でできることがたくさんある 白石: 企業を経営する者の生物多様性に対する理念、そし トフォンです。 このようなツールがあると、人々が森に のではないか。 これも皆さんの共通見解でございまし ありがとうございました。 て意思だと思います。個人であっても企業であって 行ってバードウォッチングをしたくなります。例えば鳥 た。 では涌井さん、お願いいたします。 も、やはり社会にいる一員としての立場は変わりませ が飛んでいれば、それがわからないけれども、その鳴 教育が非常に大事だと、生物多様性を考えていく中 んので、そういった立場から、人間社会多様性の中に き声を聞くとスマートフォンを掲げてどういった鳥の では、大学教育や子どもの幼少期からの家庭での教 涌井: ある企業としての理念を持ち続けることではないかと 種類かわかるというのは、非常に素晴らしいと思いま 育、そして企業の中で企業を超えて企業間や経済界と 私は、やはり歴史に学ぶべきだと思います。それは 思います。 す。そして、 どのような餌を食べるのか、 どんな環境に してどういうふうに教育をしていくかというような、そ 何かというと、かつて300年前に金銀銅という鉱物に 一方では、社会が大きく変革して、多様性について すんでいるのかと、そういった情報もダウンロードで れぞれの主体ごとの役割も明示をしていただけたの 興味を持った国と、植物に興味を持った国、結果とし の認識が非常に高まっている中で、企業がその変化 きるということになったら素晴らしいですよね。 このよ ではないかなと思います。 ては植物に興味を持った国が非常に上手な植民地経 についていけるかどうか、 これはビジネスチャンスで うなテクノロジーの活用の方法があると思います。 十分にお時間がなくてうまくまとめられませんけれ 営をやって、なおかつそれが産業革命の永続的な投 あるとともに、我々のデメリット、悪いところにいくこと そして、子どもたちがコンピュータゲームにどのく ども、きょうのこの日を契機に、中部地域での生物多 資余力につながったという事実があります。 もあるという認識を持たなければいけないと思いま らい時間を費やしているか知っていますか。ですか 様性に向けた取り組みがますます盛んになり、活発に すなわち何が言いたいのかというのと、先ほど来、 す。 これからは大きなチャンスがあると思います。その ら、例えば生物多様性コンピュータゲームというのも なりますことをお祈りして、お開きとさせていただきた 交渉力とか外交という話があります。環境問題は、最 チャンスを生かす上でも、やはり企業理念を持ってこ いいかもしれませんね。そうすると子どもたちがコン いと思います。 も弱いところにしわ寄せがいくわけでありますから、 れから進んでいきたい。そしてまた、そういったことの ピュータゲームで生物多様性を学んだときには、外に 壇上の4名の方に盛大な拍手をお送りいただきまし 我々日本人が持っている生き物とのつながりの知恵、 考えられる人間を会社の中で大きく育てたほうが勝 出て自然の本当の生物多様性に触れたいと思うかも て、感謝の意を表したいと思います。ありがとうござい これを世界化することによって、大きな外交的なイン つのではないかと、そんなふうに思うこともあります。 しれませんね。そういったことも考えてみてはどうで ました。 センティブをとれるのではないか、 こんなような気が 大きなことを言いましたけれども、自分の会社が本 しょうか。 してならないわけです。 当にそうかどうかわかりませんが、 これからもそれに すなわち、我々日本人がかつて先祖の中で培った知 向けて努力してまいりたいというふうに思います。あ 白石: 恵をどのように生かしていくのか、そういうことを考え りがとうございました。 そろそろお時間が来てしまったようでございます。 もお願いしたいと、親善大使としましてはよろしくお願 いいたします。ありがとうございました。 - 81 - - 82 - ポスターセッション 出展企業 ・団体ならびに出展テーマ 出品者名 テーマ ポスターセッション 全日本空輸株式会社 ANAの環境社会貢献活動「私の青空」〜八百津の森づくり トヨタ自動車株式会社 トヨタの生物多様性への取り組み アサヒビール株式会社 アサヒビールグループ生物多様性宣言 大同特殊鋼株式会社 自然をまもり、未来をつくる 三菱電機株式会社 三菱電機の生物多様性保全への取り組み ユニー株式会社 テーブルの上の生物多様性 アイシンエコトピアの紹介 ◎アイシンエコセンター、 アイシンエコトープ、環境学習 アイシン精機株式会社 株式会社三井住友銀行 金融機関としての生物多様性保全に向けた取り組み 財団法人国際環境技術移転研究センター 生物多様性保全のための地球環境保全 株式会社NTTファシリティーズ 環境に配慮した太陽光発電システム、太陽光発電水浄化システム 新日本製鐵株式会社 名古屋製鐵所 環境に優しい鉄づくり 丸紅株式会社 環境負荷の少ない地産地消型水力発電事業の推進 中部電力株式会社 中部電力の地球温暖化防止、生物多様性保全への取り組み 鹿島建設株式会社 鹿島の生物多様性都市づくり サンゴ礁保全プロジェクト及び熱帯林再生実験プロジェクト等の社会貢献活 動の紹介 三菱商事株式会社 株式会社豊田自動織機 豊田自動織機の環境への取り組み 大成建設株式会社 大成建設の生物多様性に関する取り組み 1. 生物多様性の基本的な考え方(生物多様性理念)基本原則・ありたい姿、 主な取り組み、取り組み視点 2. 具体的取り組み事例 株式会社デンソー 土岐川・庄内川流域圏の持続可能な発展のための生物多様性保全・再生の 研究— 種多様性と里山指標種の潜在的生息地の評価 清水建設株式会社・学校法人中部大学 中日本高速道路株式会社 高速道路での生物多様性への取り組み 株式会社イルカオフィス 歌を通じ絵本作家として 「生物多様性」を一人でも多くの方に普及する事 - 83 - - 84 - 生物多様性フォーラム 会場アンケート結果まとめ フォーラムに対するご意見・ご感想についてアンケートを行い、105名の 5.パネルディスカッションへのご意見・ご感想 参加者から回答をいただきました。なお、 まとめにあたり代表的なご意見・ ●地球を大切にする心が重要であり、自分としての行動をしっかり見極め、 ご感想を記載しました。 やり続けることが大切である。ディスカッションを聞くことができ参考に なった。自分の思っていることを次世代にしっかり伝えていく大切さを知 1. フォーラム全体の満足度 ることができた。 満足41人、 どちらかといえば満足47人、 どちらかといえば不満足5人、不満足 ●生物多様性という漠然としたテーマに具体的な方法を見出せたような気 0人、回答なし12人であり、多くの参加者が満足された結果となりました。 がします。企業として取組めるテーマを検討したいと思います。 と評価・理解できたとの意見の一方、 2. フォーラム全体へのご意見・ご感想 ●生物多様性を尊重するうえで、仕組みつくりや人つくりが大事だと言う意 ●内容的に特別講演・企業の事例発表・パネルディスカッション・ポスター 識つけはうまく表現できていたが、具体的にどうしていくべきか目指すべ セッションなどバラエティーに富む企画で充実していたと思う。 き方向性が明確に示されず、若干残念。 ●いい企画でした。生物多様性の重要性を中経連から地域全般に拡げて 等、議論の時間の短さを惜しむ意見もありました。 いってほしいです。 とフォーラム全般の企画内容に満足され、中経連に今後期待する声が寄せ 6. その他(ポスターセッション)へのご意見・ご感想 られた。 また個別の内容については、 ●ポスターセッションは、身近に感じられるテーマも多く、分かり易くて非常 ●各種業態に合わせた生物多様性保全に対する取組の説明を聞くことが に良かった。 でき、たいへん有意義でした。 ●フォーラムの空き時間を利用してポスターセッションも各社順番に数分 ●各企業で取り組んでいる事業について、 どのようなスタンスで行っている ずつ説明されると良い。 か、 ナマの声が聞けたのでとても参考になりました。 等の意見をいただきました。 をはじめ、企業の事例発表について参考になったとの声が多かった。 アンケート結果から判断いたしますと 「生物多様性フォーラム&ポスター 3.特別講演へのご意見・ご感想 セッション」開催は、 「生物多様性に関するさまざまな情報を提供し、今後の ●TEEB概要と共に、ビジネス面での具体的な説明を伺う事が出来、有意義 諸活動に役立たせていただく」当初の目的がほぼ達成されたと考えており であった。 ます。 プログラムは、バランス良い内容であり、一部、難しいテーマもあった ●生態系の価値をどのようにして評価すべきかについて考えさせられた。 ものの参加者は概ね生物多様性について理解していただき、企業の現状 と評価する意見と、 の取組みの発信も十分できたものと判断いたします。 アンケートには、今後 ●興味深い内容であったが、1時間強の講演で高レベルの内容の為、同時 の中部経済連合会に期待する声もあったことから、 この成果・実績を活かし 通訳、英語の資料では理解に限界があると感じた。 て生物多様性に関する次の取組みを検討してまいります。 と難しい内容だったとの意見もありました。 4.企業の事例発表へのご意見・ご感想 ●各社とも様々な取組がされていることがわかりました。直接利益につな がることではないので、取組をアピールできる機会が増えることでより多 くの企業が取組めるようになるのではと思う。 ●各企業とも大変参考になりました。生物多様性に対する配慮を実際の現 場でのマネジメントでどう生かしていくかが今後の課題だと思います。 と参考になったとの意見・感想が多数でありました。 - 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