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新たな宇宙価値の創造 - JAXA|宇宙航空研究開発機構

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新たな宇宙価値の創造 - JAXA|宇宙航空研究開発機構
ISSN 1349-113X
JAXA-SP-06-001
宇宙航空研究開発機構特別資料
〈 ブレーンチーム提言 〉
新たな宇宙価値の創造
宇宙利用活性化に向けた官民関係の再構築とJAXAの役割
2006年6月
宇宙航空研究開発機構
JAXA 産学官連携部では、産学官連携施策立案の参考とするために、平成 16 年 7 月より
平成 18 年 3 月まで、「ブレーンチーム」という呼称で外部有識者にお集まりいただき、日
本の宇宙産業活性化のための方策について、研究をお願いしておりました。
本報告書は、この研究成果としてご提言いただいたものです。(本文 28 頁参照)
JAXA-SP- 0 6 - 0 0 1
宇宙航空研究開発機構特別資料
JAXA Special Publication
〈 提言 〉
新たな宇宙価値の創造
ー宇宙利用活性化に向けた官民関係の再構築とJAXAの役割ー
ブレーンチーム
2006年6月
June 2006
宇宙航空研究開発機構
Japan Aerospace Exploration Agency
<報告書概要>
現状認識
日本の宇宙の現状を産業面からとらえると「光はさし始めたが、依然としてきわめて厳し
い状況」におかれており、宇宙産業の発展をめざすためには抜本的な変革が必要である。
JAXA にはこの状況を打破し、新たな「宇宙価値」の創造に挑戦することが期待される。
基本問題
宇宙の産業化や宇宙利用の拡大の視点から見ると、従来の宇宙開発を支えてきた官・民・
JAXA の関係には、制度的な問題が生じている。また、「宇宙むら」と潜在的な宇宙の利用
者の間に立ちはだかる高い「壁」が、宇宙の実利用の障害となっている。このため、官民
関係を再構築し、その中での JAXA の新たな役割を考察しないと、宇宙の実利用に明るい
未来は開けない。
解決策(1)官民パートナーシップ
宇宙分野の大型プロジェクトを成功裏に推進するためには、官がリーダーシップをとると
ともに、民がインセンティブを持って参加できる、官民パートナーシップの新たな枠組み
作りに、JAXA が取り組むことが望まれる。特に、アジア防災システムの構築などの「安全・
安心」分野に官民パートナーシップを導入することが、経済面とともに日本の国際的なプ
レゼンスを向上させる意味でも重要である。
解決策(2)新たな民の宇宙事業への支援
宇宙事業全体を活性化させるためには、新たな民のプレーヤーを宇宙分野に引き入れる必
要がある。このためには、JAXA はそのブランド価値を高めつつ、民の活動を積極的に支援
し、日本の個性を発揮できる事業を通じて、新たな「宇宙価値」を創出することが期待さ
れる。
JAXA に求められる新たな役割と改革
これまでの JAXA は、その仕事の性格上、「民」というよりは「官」に近い体質であった。
しかし、新たな「宇宙価値」の創造のためには、①「官民パートナーシップの架け橋」、②
「宇宙事業のインキュベーター」、③「宇宙からのソリューション・プロバイダー」として
の「民」に近い役割を果たさねばならない。このためには、危機感を持ちつつ、組織、人
材、企業風土面からの改革が実行されることが望まれる。
<目
第1章
次>
日本における宇宙利用の課題............................................................................... p. 1
1.日本の宇宙産業を取り巻く環境と現状
2.新たな官と民の関係と JAXA の役割
第2章
官民パートナーシップ:官の事業へ民が協力する新たな仕組み ......................... p. 6
1.官民パートナーシップの背景とその必要性
2.これまでの官民協力プロジェクトの問題点
3.官民パートナーシップを成功させるための条件
4.宇宙開発のあり方の転換
5.JAXA の役割
<官民パートナーシップの応用例:アジア防災システム>..............................................p. 11
1.防災分野における官民パートナーシップの必要性
2.アプリケーション指向のシステム構築
3.アジアへの展開の政治的重要性
第3章
宇宙事業の裾野の拡大:新たな民の事業を JAXA はいかに支援すべきか?.... p. 17
1.民主導による新たな息吹き
2.なぜ JAXA は民の宇宙事業に関わるべきか?
3.JAXA による民間宇宙事業の強化策:提言
第4章
JAXA が果たすべき新たな役割 ..........................................................................p. 25
1.JAXA の三つの役割
2.組織、人材、企業風土の改革
<ブレーンチーム報告書について> .................................................................................p. 28
別添:
「新たな宇宙価値の創造」~資料集~................................................................p. 29
第1章
日本における宇宙利用の課題
1.日本の宇宙産業を取り巻く環境と現状
宇宙の実利用という視点からとらえると、日本の宇宙事業は大きな壁に突き当たってい
る。宇宙開発事業団(NASDA)設立以来 37 年間にわたり継続してきた宇宙の実用化の試
みは、それを支えてきた官民のシステム自体が制度疲労を起こしているのである。この閉
塞を打ち破るためには、新たな宇宙価値の創造に向けて、官(政府)と民(産業界)の関
係を再構築し、その中での宇宙航空研究開発機構(JAXA)の役割を見直さなくてはならな
い。これがわれわれブレーンチームの基本認識であり、本報告書ではこの関係と役割の再
構築に向けて、官民パートナーシップの新たなあり方と、民の宇宙事業への JAXA の支援、
という二つの視点から提言を行う。
まず、日本の宇宙産業を取り巻く環境を、経済面と政治面から簡単にレビューしてみよ
う。
1)経済面
ロケット、衛星、宇宙サービスなどを包括した、世界の宇宙市場の規模は 2003 年時点で
969 億ドル、日本円で 10 兆円強とされている(State of the Space Industry 2004)。これ
は、日本の携帯電話の市場規模(約 9 兆円)を若干上回る程度であり、世界規模でみても
大きな市場とはいいがたい。そして、この中で宇宙関連機器が占める割合は50%強の 511
億ドル(約 5 兆 8000 億円)となっている(資料集Ⅱ-1参照)。一方、日本の宇宙機器の
市場規模は 2407 億円であり(2003 年、日本航空宇宙工業会)、これに宇宙利用サービス産
業を加えると約 9000 億円の市場規模となっている(資料集Ⅱ-2参照)。したがって、宇
宙機器分野の市場規模は、日本の他のハイテク産業と比べると小さく、また、その需要先
の4分の3程度が JAXA を中心とする政府予算に依存する構造となっており(資料集Ⅱ-
3参照)、政府の財政難のもとでは今後も大きな伸びを期待できない市場といえる。
日本が他の宇宙事業を手がける国と比べて見劣りするのが、ロケットの打ち上げ回数の
少なさである。日本は NASDA が 1975 年に N1 ロケットを打ち上げて以来 N シリーズ、H
シリーズを通じて 40 回(内成功 36 回、2006 年 2 月末現在)の打ち上げを行ったが、米国
はデルタだけで 310 回を記録しているし、ロシアのプロトンも 300 回を超えている。また、
中国の長征の打ち上げ回数は 83 回となっており、海外主要ロケット単一機種だけで日本全
体を上回る打ち上げを行っている(資料集Ⅱ-4参照)。打ち上げ回数が少ないと、これは
コスト高として跳ね返ってくるし、また、当然信頼性も低くならざるを得ない。また、信
頼性の低さは宇宙保険料率の上昇につながるため、これがさらなるコスト高に反映される
という、悪循環におちいることになる。
この不利なコスト条件により、日本の宇宙産業が世界市場において、厳しい価格競争環
境におかれていることは容易に想像できる。また、宇宙産業は通信、放送などの分野では、
1
地上系のサービスとも競合している。宇宙系のサービスは地上系と比べて、コスト面や利
便性で劣る部分もあり、宇宙のメリットを活かすサービスで差別化を図らない限り、その
競争環境は厳しいといえる。
2)政治面
冷戦期の米ソ間の宇宙開発競争に典型的にみられるように、宇宙は経済面だけではなく、
政治面からの重要度は高い。このため、宇宙開発を手がける国は、それぞれの国益を反映
させた宇宙政策、あるいは宇宙戦略を策定して、これを推し進めてきたのである(資料集
Ⅲ-1,2参照)。例えば、米国は 2004 年 1 月に「新宇宙ビジョン」を発表したが、この
裏には米国が引き続き宇宙分野で世界のリーダーシップを守り続けようとする思惑が存在
することはいうまでもない。安全保障分野における宇宙の重要性を視野に入れると、米国
は宇宙分野で世界ナンバーワンの地位を明け渡すことはできないのである(資料集Ⅲ-4
参照)。
一方、欧州では米国への一方的な依存を避けて、宇宙での自立性を確保する思惑のもと
で政策を推し進めてきた。欧州がめざすのは、この目標の実現を射程に入れた宇宙の産業
化であり、このために欧州各国の産業ニーズを束ねる努力がなされている。このような方
策により打ち上げ機会を増やして、宇宙分野の国際競争力を確保することが、米国からの
自立性を確保することにもつながるのである(資料集Ⅲ-5参照)。
また、中国は有人宇宙飛行に挑戦し、これを二度にわたる成功に結びつけたが、この裏
にも中国の国益が存在することは言うまでもない。中国にとって有人宇宙飛行の成功は、
国威の発揚を通じて国民に一体感を与えることにもなるし、内外に対して中国の工業力や
技術力を誇示することにもなる。これに加えて、中国がアフリカやアジア太平洋諸国と宇
宙を通じて関係を深めることにより、宇宙を第三世界向けの外交ツールとして使うことも
視野に入れているのである(資料集Ⅲ-6参照)。
このように、政治面から宇宙をとらえると、それが宇宙開発を進める国の国益と明確に
リンクされていることがわかる。これは我が国も同じで、日本が宇宙の実利用を進めた背
景には、日本の国情を踏まえた国益が存在していた。日本が NASDA の設立とともにめざ
したのは、宇宙の実利用を平和目的に限る一方で、社会インフラとしての宇宙分野を確立、
定着させ、放送、通信、気象観測などの分野で宇宙利用を促進することであった。このた
めに研究開発を推し進め、日本独自の力で宇宙を展開できる能力を獲得しようとした。高
度経済成長期の日本にとって、宇宙開発の目標を社会インフラの構築と技術の国産化にお
いたことは、日本の国益からして妥当性を持ったものだったといえる(資料集Ⅲ-3参照)。
しかし、日本にとって誤算だったのは、日米衛星合意により政府による非研究開発衛星
は公開調達が義務付けられたことに大きな影響を受け、この宇宙産業育成戦略が破綻した
ことである。その後、日本の宇宙開発は最先端技術をめざした科学技術研究が中心となる
方向へと変化し、宇宙の実利用という本来の目的が失われていった。そして、宇宙産業自
2
体も、政府向けの研究開発主体の狭い市場へと追いやられていったのである(資料集Ⅳ参
照)。
3)JAXA 長期ビジョンと「安全・安心」
1990 年代初めから 2000 年代の初めの時期が、戦略の喪失という意味からは、日本の宇
宙産業の「過渡期の 10 年」であったといえる。この時期を経て 2000 年代の中頃になり、
宇宙関係者の危機感を反映して、新たな動きが見られるようになった。そのひとつが、JAXA
による「長期ビジョン」の作成である。2005 年 3 月に発表された報告書は、「総花的であ
る」、「予算の裏づけがなく、現実性にかける」といった批判はあるが、この報告書が今後
10 年間の事業の重点分野として、
「安全で豊かな社会の実現」をあげたことは注目に値する
(資料集Ⅵ-1参照)。
世界的なテロの広がり、日本における犯罪の急増と幼児などをターゲットにした犯罪の
凶悪化、SARS や鳥インフルエンザなどの感染症問題、津波、台風、地震などの自然災害の
被害の拡大など、安全で安心な社会や国民生活を脅かす事態が進行している。このような
「安全・安心」問題に対して宇宙からのソリューションを提供しようとするのが、JAXA が
打ち出した目標であり、これを国際的に展開することは、日本が国際社会で果たすべき大
きな貢献策といえよう。特に、本報告書でも焦点を当てた防災分野は、官が日本の国益を
踏まえた国際的な視点からリーダーシップをとるとともに、民が持つ技術力を有効に活用
できれば、宇宙分野の活性化と日本の国際社会におけるプレゼンスの向上に寄与する可能
性を持つ。また、第 3 期科学技術基本計画案(2006 年 4 月開始)では、科学技術政策のひ
とつの柱として「安全が誇りとなる国:世界一安全な国・日本を実現」という目標が掲げ
られたこともあり、「安全・安心」を絡めた分野が、宇宙の実利用の新たな突破口となる可
能性と現実性が出てきたといえる(資料集Ⅵ-2参照)。
一方、打ち上げの空白期間が生じた H2A ロケットは、信頼性の向上への努力の結果、
2005 年 2 月以降、連続3回の打ち上げに成功した。また、日米衛星合意以降、日本の上空
にある放送、通信衛星はすべて海外メーカー製という状況であったが、ようやく 2005 年 11
月に三菱電機が、民間通信会社である宇宙通信からスーパーバード 7 号機の受注を勝ち取
った。このように、経済面からもようやく日本の宇宙産業にも一筋の光が見えてきたとい
える。これに加えて、野口宇宙飛行士の活躍や「はやぶさ」による宇宙探査が広く国民の
注目を集め、宇宙に対する関心が高まりつつあることもプラス材料といえる。
2.新たな官と民の関係と JAXA の役割
日本の宇宙産業の現状を一言で表すと、「光はさし始めたが、依然としてきわめて厳しい
状況」にあるといえる。戦略面、経済面から若干の明るさは見えてきたものの、現状を継
続させるだけでは、産業としての宇宙が衰退に向かう可能性を否定することはできない。
特に懸念されるのは、ロケットの打ち上げの失敗、衛星の不具合などが引き金となって、
3
日本の宇宙産業が国際的な競争力を失うとともに、国民からの宇宙事業への支持が失われ、
この結果、宇宙予算が継続的に削減されるシナリオである。これは、日本の宇宙関係者に
とっての「最悪シナリオ」といえる。
このような形で宇宙産業が衰退することは、日本の国益という視点からみると、あまり
にも失うものが大きい。前節で述べてきたように、宇宙は経済面から重要なだけではなく、
外交ツールとしての国際政治上の役割や安全保障上の意味合いは大きいし、一国の技術力
の象徴的な意味も持つ。特に、科学技術創造立国を標榜する日本が、宇宙技術で二流、三
流に落ち、第三世界の国に追い抜かれることは、日本のハイテク国家のイメージを大きく
損なうことになるだろう。また、宇宙は何よりも若者に夢を与えることができる数少ない
産業分野である。宇宙の科学技術が持つ牽引力、宇宙の持つ国際的な広がり、宇宙旅行の
夢などは、いずれも若者の将来の生き方にまで影響を与える要素を内包しているといえる。
したがって、宇宙産業を活性化して国際的な競争力を高め、日本が宇宙分野でトップラン
ナーの一員としての国際的な地位を維持することには大きな意味があるといえる。
しかし、このミッションに向かって進んでゆく際の問題は、40 年近くにわたり日本の宇
宙産業を支えてきた開発、産業化の枠組みが制度疲労を起こしている点である。特に、「宇
宙むら」とも呼ばれてきた、官と JAXA と民の既存の関係を根本から見直さないことには、
宇宙産業の真の活性化は難しいといえる。
本報告書では、この問題に対して、二つの方向からアプローチする。第一は、官の仕事
を民がどのようにサポートし、その中で JAXA はどのような役割を果たすべきか、という
側面である。特に、本報告書が重視するのは、JAXA の「長期ビジョン」にもあげられた、
宇宙からの「安全・安心」分野への貢献である。先に触れたように、日本では多発化、凶悪
化する犯罪が社会の最重要の課題として浮上してきており、また地震、台風などの自然災
害も毎年のように大きな被害を与えている。さらに海外に目を転じると、アジア地域では、
スマトラ沖地震・津波やパキスタン地震のように大きな自然災害が頻繁に起こるとともに、
ここは安全保障の観点からも不安定な地域となっている(資料集Ⅷ-4参照)。このため、
国内の「安全・安心」を確保し、これをアジア地域まで拡大することは、日本のアジアへの
重要な貢献策となる。
宇宙分野からの「安全・安心」への取り組みは、日本の「宇宙の平和利用」の原則との関
係を考える意味でも重要である。国際社会では「平和利用」の解釈に関しては、これが「非
軍事的利用」を意味するのか、あるいは「非侵略的利用」と解釈すべきなのか、について
議論が行われた。日本では「平和利用」は「非侵略的利用」ではなく、「非軍事的利用」と
する立場をとるが、1985 年 2 月の政府統一見解(「その利用が一般化している衛星及びそ
れと同様の機能を有する衛星につきましては、自衛隊による利用が認められるものと考え
ております」
)により、「安全・安心」分野の宇宙利用についても、これが「一般化」利用の
範疇に入ると解釈できるようになった。したがって、宇宙技術を「安全・安心」分野で活用
することは、「人間の安全保障」などの日本にとって重要な考え方とも合致する、「宇宙の
4
平和利用」の原則にそった方向性といえる(資料集Ⅴ参照)。
先に述べたように、政府が国内外の社会や国民の「安全・安心」を確保することが重要課
題になってきているが、この目標は政府の力だけでは達成できない。政府が問題解決のた
めのリーダーシップをとるにしても、それを技術面、運用面から支えるのはあくまでも民
間であり、ここに「安全・安心」分野で、官と民が協力して問題解決に取り組む意味合いが
ある。本報告書では、第 2 章で、政府が主導するプログラムに民がどのように関わり、そ
の中で JAXA はどのような役割を果たすべきかを、アジア防災ネットワーク構築などの例
も用いて考察し、提言を行う。
本報告書の第二の課題は、民が進める宇宙事業に官がどのように関わるべきか、という
側面である。世界の宇宙事業の現状を眺めると、民の役割が着実に向上していることがわ
かる。もともと宇宙技術は冷戦期の米ソの競争により発展してきた国家主導の技術である
が、これが政府の手を離れて発展する兆しが見えてきているのである。この典型が民間企
業による小型衛星の開発に見られる。英国のサリー・サテライト・テクノロジー社は大学
発ベンチャーとしてスタートしたが、その発展途上国の衛星需要を巧みに取り入れたビジ
ネスモデルと、民生技術を活用した低コスト衛星の生産により、既存の大手衛星メーカー
との競争に打ち勝ち、実用衛星プロジェクトを受注するケースも出てきている。また、民
間による宇宙旅行ビジネスも現実に近いものとなり、米国や英国ではこのための会社が設
立され始めている。また、日本でも IT ビジネスで成功を収めた経営者などを中心にして、
宇宙への関心は高まりつつある。
もちろん、このような動きに対しては、これらは基本的に民のビジネスであり、官が関
与すべきでないし、逆に官が関与すると悪影響を与えるという議論もある。宇宙の裾野が
技術面、人材面の両方から広がりを持つ、米国や英国の場合は確かにこのような側面があ
るだろう。しかし、宇宙事業が政府と一握りの企業と研究者により進められてきた日本で
は、宇宙に欧米に見られる裾野の広がりがないのが現実である。したがって、ここに、民
間の宇宙事業に、宇宙の技術、施設やノウハウを持つ JAXA が関与、支援すべき理由があ
る。また、逆に JAXA による支援により、民間の宇宙事業が立ち上がれば、日本の宇宙事
業全体の活性化にもつながるといえる。
本報告書では、第 3 章で、民の宇宙ビジネスに、JAXA がどのように関与し、宇宙産業
の裾野の拡大を図るべきかを検討し、提言を行う。そして、最後の第 4 章では、第 3 章ま
でに考察した、官・民・JAXA 間の新たな関係のあり方を踏まえて、JAXA が宇宙事業化にお
いて果たすべき新たな役割を総括する。
5
第2章
官民パートナーシップ:官の事業へ民が協力する新たな仕組み
官民パートナーシップという考え方は、1990 年代に英国を初めとするヨーロッパ諸国に
普及し、多くの政府事業で適用されるようになった。これは、「官か民か」の二者択一では
なく、また、「官から民へ」の一方的な流れでもなく、「官と民が、緊張感を持ちつつ、そ
れぞれの強みに基づき、協働し役割分担する」(野田由美子『民営化の戦略と手法』)手法
である。ブレーンチームでは、この考え方が日本の宇宙事業にも必要と考え、これに基づ
いた官と民の協力のあり方と仕組みを考察することにした。
1.官民パートナーシップの背景とその必要性
従来の日本における宇宙開発は、欧米諸国の宇宙技術へのキャッチアップと技術力の向
上に焦点をおき、研究開発主導型の宇宙開発を進めてきた。特に 1990 年の日米衛星調達合
意以降、わが国の宇宙開発は国際競争力の育成を実現するための技術開発を中核的な政策
目標におき、科学技術庁・文部科学省を中心とした各府省の研究開発予算に依存した宇宙
産業の展開が図られてきた。
しかし、1990 年代後半の宇宙の商業利用の活発化、さらにはロシア、中国、インドなど
の企業による、低価格を武器にした宇宙商業市場への参入など、技術開発だけでは国際競
争に勝ち抜くことが難しい状況が生まれてきた。さらには、財政状況が悪化の一途をたど
る中で、宇宙開発の予算が減少し、この状況を受けて、政府方針として「民で出来ること
は民に」という流れが加速し、宇宙開発分野においても民間活力を活かした事業を進める
ことが望まれるようになってきた。
こうしたなかで、日本における宇宙政策のあり方は、第一に漸減していく予算の中で最
大限の成果を挙げること、第二に、激化する国際競争に打ち勝てるだけの産業競争力を強
化すること、第三に、公的予算に依存した産業構造を見直し、宇宙産業が自律的に活動で
きるような市場環境を生み出すこと、が基本的な政策原理とならざるを得ないと思われる。
つまり、宇宙開発が政治的、社会的、経済的、産業的な付加価値を生み出す事業となるよ
うに、政策原理を見直さなければならないのである。
そのためには、これまでの JAXA を中心とした技術開発主導型の宇宙政策からの転換が
求められる。すなわち、ユーザーが使いたくなるような、付加価値の高いアプリケーショ
ンに重点をおき、そのアプリケーションの開発から運用までを政府のみが行うのではなく、
民間の活力を活かした宇宙政策へと転換しなくてはならないのである。そのためには、政
府と民間がこれまでのように主従の関係にあるのではなく、政府と民間が対等なパートナ
ーシップを組み、民間の活動を政府が支援することも念頭におきながら、官民協力のパー
トナーシップ体制を構築することが不可欠となる。
効果的な官民パートナーシップを実現するためには、従来のプロジェクトと比べると、
以下のような変化が求められる。第一は、メーカーやユーザーが、これまでは政府・JAXA
6
が一手に引き受けてきた研究開発の段階から対等な立場で関与し、政府・JAXA とともに企
画立案から開発、打ち上げ、運用までを共同で行うべき点である。第二は、メーカーやユ
ーザーが関与する条件として、一定の資金、人材、アイデアを提供しなければならない点
である。これは、これまでは JAXA のプロジェクト・マネジメントのもとで、下請け的な
役割しか果たしてこなかった民間事業体が、より対等な立場で発言権を持ってプロジェク
トに参加することを意味する。第三は、単なる技術開発ではなく、技術を利活用し、収益
が得られるビジネスモデルを構築することにより、官民パートナーシップが事業化されな
ければならない点である。民間事業体が積極的にプロジェクトに参加し、一定の知的、人
的、財政的貢献をするためには、そのためのインセンティブが必要なのである。第四は、
民間が参加するとしても、官民パートナーシップのプロジェクトはあくまでも公的事業で
ある、という認識の必要性である。仮にプロジェクトが収益を上げるためだけの事業であ
れば、政府が関与する必要性は低く、国家財政を支出する正当性にも欠ける。すなわち、
官民パートナーシップは、政府・JAXA が行わなければならない公的な事業ではあるが、民
間と協力して開発コストを低減し、作業効率を上げ、効果的な運用を行うことを、めざさ
なければならないのである。
以下では、まず日本におけるこれまでの官民パートナーシップ事業のあり方を検討した
上で、よりよいパートナーシップに向けての具体的な提言を行うことにする。
2.これまでの官民協力プロジェクトの問題点
現在、日本では準天頂衛星プロジェクト、GX プロジェクトなど、官民パートナーシップ
をめざした複数のプロジェクトが進行している。これらは現在、様々な問題に直面してお
り、その前途には厳しい課題が横たわっている。これらのプロジェクトには、それぞれ個
別の問題が存在するが、共通した問題点を浮き彫りにすることもできる。
まず、省庁間の連携の悪さがあげられる。官民協力プロジェクトには、宇宙産業の育成
をめざす経済産業省、技術開発を担当する文部科学省と総務省、そしてユーザーとなる国
土交通省などの官庁が関与しているが、それらの省庁は個別にプロジェクトを推し進める
形をとっており、横の連携が充分ではない。例えば、欧州におけるガリレオ計画では、研
究開発を担当する ESA や欧州委員会の研究開発総局ではなく、そのユーザー官庁である欧
州委員会の運輸総局が取りまとめ役となり官民連携の窓口となっている。他方、わが国の
準天頂衛星プロジェクトでは、2005 年 7 月にようやく内閣官房、内閣府、文部科学省、経
済産業省、国土交通省、総務省による会議体が責任を負うことになったが、いまだに主導
的な役割を担う部署が明確には決まらず、政府としてのまとまりを欠いている状況である。
第二は、民間への「丸投げ」ともいえる状況がみられる点である。「民間主導」の名のも
とで、政府の役割が曖昧なまま事業が進行し、政府と民間の認識のズレを生み出す結果を
招いており、官民の適切な役割分担と責任・リスク分担が実現しづらい状態になっている。
準天頂衛星、GX プロジェクトにおいても、政府と民間の役割分担や誰が最終的な責任を負
7
うのか、という点が不明確なままスタートし、事業全体が困難に直面している。
第三は、上記二点とも関連するが、国家の戦略性欠如の問題である。政府が統一した窓
口を持っておらず、官民の役割分担、責任・リスク分担も明確でないのは、官民協力プロ
ジェクトが、国家戦略として位置づけられておらず、国家の政策の一部を民間に委託する
という発想が欠如しているからである。確かに宇宙の商業化が進んでいるが、測位や打ち
上げサービスに関しては、まだまだ民間が自立できるような市場が存在していない。また、
測位にしても、打ち上げサービスにしても、国際情勢に左右されやすい側面があり、加え
て安全保障との関わりも強い分野であるため、民間が独自で事業運営をすることができる
状況とは言いがたいのである。
3.官民パートナーシップを成功させるための条件
日本において、官民パートナーシップを成功させるためには、上記の問題点を克服し、
積極的な施策を実現できる体制を整える必要がある。具体的には、第一に官民パートナー
シップ事業を政府の事業の中に明確に位置づけ、プログラムを効率的に運用するために民
間の力を活用する、という考え方に基づいたプロジェクト設計が行われなければならない。
特に公的役割の大きい事業(測位、打ち上げ、気象、防災など)に関しては、本来政府が
やるべき事業を民間と協力して行う、という姿勢がぜひとも必要である。
プロジェクト設計において、官民がともに綿密な議論を行うことも重要である。欧州の
ガリレオ計画(資料集Ⅶ-2参照)では、政府(Joint Undertaking)が民間事業体(コン
セッション)を募り、提出された書類を政府が精査するだけでなく、一年近くにわたって
何度も協議を重ね、具体的な事業計画やリスク分担、財務措置などが議論されたといわれ
ている。このように、綿密な協議を重ねることで、後に起こり得る問題を事前に解決し、
官民それぞれの役割を明確にすることが可能になる。日本においても、こうした努力は不
可欠といえよう。
そのためには、まず政府の窓口が統一されている必要がある。再びガリレオの例を持ち
出せば、ESA と EU という全く異なる二つの機関が Joint Undertaking という共同組織を
立ち上げたため、これが窓口となり官民の対話を容易にすることができた。ところが日本
では単一の政府内部であるにもかかわらず、関係省庁の連携の悪さが官民パートナーシッ
プ事業の障害となっている。こうした政府のサイドでの意思統一と窓口の統一は、事業を
進める上で重要なポイントとなるであろう。
また、官民パートナーシップを進めるにおいて、政府と民間の間での役割分担、責任・リ
スク分担に関わる指針なり大綱なりを決めておく必要があるだろう。政府と民間が、どの
ような役割を担い、どのような責任を持つのかに関する原則を決めておく必要があるので
ある。こうした法制度上のインフラが整備されなければ、民間事業体側のリスクが高くな
るため、民間セクターが事業に参加すること自体が難しくなる可能性が出てくる。
8
4.宇宙開発のあり方の転換
ここまでで述べてきた新たな官民パートナーシップ手法は、今後の日本における宇宙開
発の突破口として有効な事業形態といえる。官民パートナーシップを戦略的に活用するこ
とで、日本の宇宙開発に障害となってきたいくつかの問題を解決に導くことも可能と思わ
れる。
第一に、これまでの日本の宇宙開発は 1990 年の日米衛星調達合意によって、非研究開発
衛星の政府調達は国際競争入札に付さなければならない義務が生じていた。これによって、
日本の実利用衛星はほとんどが米国製(現在 MTSAT-2 のみが国産衛星として運用中)とな
り、日本の宇宙産業の競争力を削ぐ結果となったことは確かであろう。しかし、官民パー
トナーシップ事業を工夫すれば、これが純粋な政府調達にはならず、1990 年の合意に制約
されない活動領域が広がる可能性がある。したがって、日本の宇宙産業が実利用衛星開発・
運用の経験をつみ、ノウハウを蓄積するには、格好の事業形態となるだろう。
第二は、これまでの日本のプロジェクトは、上述の理由からほとんどが研究開発向けの
ものとなり、技術開発に成功し、世界的に優れた技術水準に到達しても、それをユーザー
向けのアプリケーションとして展開することが困難であったという問題である。しかし、
官民パートナーシップに基づくプロジェクトの場合、民間事業体が出資し、プログラムを
運用することで収益を得ることが前提になっているため、必然的にユーザー向けのアプリ
ケーション指向のプロジェクトとなる。こうしたアプリケーション指向のプロジェクトは、
単にプロジェクト設計の思想の転換(リスクを負ってでもより高い技術を追求するという
思想から、リスクが少なくロバストなプログラムを追及するという思想)を促すだけでな
く、マーケティングや事業運営の効率化など、商業市場に打って出るために必要なノウハ
ウを蓄積する場を提供することになる。これにより、日本の宇宙産業が国際競争力を強化
することが期待できるであろう。
第三は、国際商業市場に打って出ることは、外交に関わる分野に進出することにもなる、
という点である。国際商業市場への進出は、外国政府や政府関連事業体(国営通信会社な
ど)に事業を売り込むことになり、また、アプリケーションを含めたパッケージ(例えば
測位衛星とカーナビなど)を外国に売り込む場合は、日本側がプロジェクトを運用し、他
国にサービスを提供するということになれば、一定の影響力を持つことになり、外交的な
梃子として機能させることが可能となる。特に、後で論じるアジア防災ネットワークは、
中国にシフトしつつあるアジアにおけるリーダーシップをわが国に取り戻し、アジア地域
における安定を通じて、わが国の経済的・政治的利益の確保に貢献するものといえる。こ
うした外交政策と宇宙開発の戦略的連動性は官民パートナーシップを通じて、より効率的
に行えるのである。
第四は、アプリケーション指向型のプロジェクトが進むことで、宇宙開発が国民に身近
な存在となり、宇宙開発の重要性が認識される効果が期待できる点である。これまでの日
本の宇宙開発は、日本人宇宙飛行士の活躍や「はやぶさ」などの宇宙科学を中心に国民に
9
認識されてきたが、実利用の側面については気象衛星「ひまわり」や通信(CS)
・放送衛星
(BS)を除き、ほとんど知られていなかったのが実情といえる。ところが、政府が自らの
事業として宇宙開発を進めることを正当化するためには、宇宙が防災や環境などの社会イ
ンフラの整備に不可欠な役割を果たしているということを、明確に国民に伝えなければな
らない。官民パートナーシップを推進することで、こうした政府の事業を国民にとって身
近なものにできるし、宇宙分野で官民が協力して国民のための事業を進めていることをア
ピールすることにもつなげられるのである。
5.JAXA の役割
では、具体的に官民パートナーシップを構築していく上で、JAXA に求められることは何
であろうか。現実的かつ具体的な原則・指針には何が含まれるべきなのであろうか。以下
ではいくつかのポイントを提案する。
まず、
「ソリューション・プロバイダー」としての JAXA の位置づけを明確にしなければ
ならない。これまで JAXA は日本の宇宙開発をリードする機関として、プロジェクトを立
案し、技術開発を進め、プロジェクト・マネジメントを担当してきた。しかし、官民パー
トナーシップの枠組みでは、JAXA の役割は変化する。JAXA は政府を中心とするユーザー
に目をむけ、対話を通じてユーザーが抱える問題を解決するための手段を提供しなければ
ならない。つまり、JAXA がやりたいことをやるのではなく、ユーザーがやりたいことをや
るのである。その上で、適切なソリューションにつながる技術を官民共同で開発し、パー
トナーシップを通じて、サービスを提供し、問題の解決に導くのである。前述したように、
官民パートナーシップでは、民間事業体が政府の事業に参加する魅力と価値を見出さなけ
れば成立しえない。そのためにも、JAXA は政府と共同して、政府の事業でありながらも、
民間が政府・民間ユーザーにソリューションとなるサービスを提供し、収益が上げられる
プロジェクトを創出する役割を担うのである。
そのためには、ユーザーのコミュニティを育成していくことが不可欠であろう。官民パ
ートナーシップの下では、JAXA と民間が協力してユーザーとなりえるコミュニティや、既
に存在するコミュニティに積極的に関与し、そこでユーザーの抱える問題を解決する手段
を提供する形で、各々のコミュニティと宇宙開発の距離を縮めていくことが重要である。
これは、JAXA が、政府各省庁がもつ政策的課題に対するソリューションを提供するための
マーケティングと営業を行うことを意味する。こうした「御用聞き」のような仕事を通じ
てのみ、ユーザーのニーズに応えることができるのである。
マーケティングと営業を通じて、民間企業の中にある壁や政府省庁間に存在する壁(い
わゆる縦割り)を乗り越えていくだけでなく、JAXA 内に存在する壁をも乗り越えていく必
要がある。例えば、後で論じられるアジア防災ネットワークでは、衛星だけでなく、無人
航空機なども用いた複合的なネットワークについて論じられるが、このような宇宙技術と
航空技術を融合したシステム構築をめざすためには、三機関が統合した JAXA のメリット
10
が十分生かされなければならないだろう。
最後に、官民パートナーシップを進めていく上で不可欠な要素は、JAXA のスピード感の
ある対応といえる。これまで JAXA のプロジェクトは様々な制約から比較的長いリードタ
イムを取り、いわばプロジェクトを運用する側の都合で計画を設定してきた。しかし、官
民パートナーシップの下では、そうした悠長な時間の使い方は官民の間に軋轢を生み出し
かねない。民間は極めて短いタイムフレームの中で事業を展開しており、時期が遅れれば
その分ビジネスチャンスが失われていく。官民パートナーシップを進めていくにあたって、
JAXA は民間と同様のスピード感を持って対応していく必要があるといえる。
<官民パートナーシップの応用例:アジア防災システム>
ここでは、官民パートナーシップの具体的な応用例として、宇宙を利用した防災システム
の構築を取り上げる。この分野は、国民の「安全・安心」の確保に役立つだけではなく、宇
宙技術力を使った、日本の国際的なプレゼンス向上策としても重要である。また、防災分
野への宇宙技術の応用は、JAXA の長期ビジョンにも掲げられた、JAXA にとっての重要な
課題でもある。ブレーンチームは、この分野で官民パートナーシップの手法を導入するこ
とにより、日本の宇宙利用にさまざまなメリットがもたらされると考える。
1.防災分野における官民パートナーシップの必要性
国民の生命と財産を災害から守り、国民の安全・安心にかかわる意思決定をすることは、
政府の重要な役割の一つである。正しい意思決定には、情報の取得・伝達をタイムリーか
つ正確に行う必要がある。政府は防災・災害対策における情報の取得・伝達の手段として、
これまでも民間企業の宇宙技術を利用してきた。状況把握の手段としては地球観測衛星が
取得する画像を、また、情報伝達の手段としては JSAT(N-STAR を含む)や宇宙通信株式
会社の衛星通信サービスを利用してきた。
災害対策の衛星利用は各国で行われているが、頻度は少ないが起きると被害が大きい災
害に対処するために、専用衛星を開発、運用することは必ずしも必要ではないとみられて
いる。すなわち、欧米では民事分野の衛星利用において、政府は開発者・運用者ではなく、
利用者という立場をとっている場合が多いのである。
いつ起きるかわからない災害に対応して、宇宙システムを最適化することは難しい。普
段使っていない、非常時にしか使わない、という防災特有の事情は、2004 年 10 月の新潟
中越地震での衛星通信利用に関する調査報告からも明らかである(『新潟県中越地震発生直
後の地域衛星通信調査報告書』平成 17 年 3 月、財団法人自治体衛星通信機構)
(資料集Ⅷ
-1参照)。政府だけでシステムを最適化し、維持することは困難であり、この問題を克服
するためには民間企業との連携が必要となる。
11
①衛星通信
費用対効果と、運用に必要なリソースの側面から考えても、防災専用の宇宙システムを
構築することは考え難い。通信衛星の寿命は 12~15 年といわれているが、防災目的で利用
する時間は衛星寿命のごくわずかな部分にすぎない。残りの膨大な空き時間を有効活用す
る手段として、官民パートナーシップの手法が効果的であると考えられる。
政府の運用では防災以外の利用は困難であるが、民間が運用すれば、防災以外の空き時
間で商用サービスを提供し、利益を上げることができる。民間運用の場合でも、防災時に
一定以上の帯域を確保する契約を結ぶことで、防災時の政府利用を確実に保証することも
可能である。この契約によって作り出される安定需要(アンカーテナンシー)は、民間企
業の資金調達が容易になるなど、事業リスクが軽減されるという利点を生み出し、サービ
ス提供の確実性がさらに向上することにつながる。宇宙システムの開発前にアンカーテナ
ンシーを保証すれば、運用だけでなく開発そのものを民間主導で実施する可能性も高まる。
そうなれば、政府は開発費を支出することなく、利用のコストだけで必要な能力を得るこ
とができる。このように民間が提供するサービスの利用を政府が保証することで、官民双
方にとってメリットのある仕組みを構築できる。
②地球観測
日本ではすでに情報収集衛星(IGS)を光学と SAR(合成開口レーダー)のコンステレーシ
ョンで運用する計画が決まっている。さらに、陸域観測衛星の ALOS(だいち)が 2006 年
1 月に打ち上げられた。ともに政府の地球観測衛星ではあるが、IGS と ALOS では用途は
まったく別であることを理解する必要がある。特にアジア諸国との国際協力をも視野に入
れた仕組みの構築を狙うとするのであれば、IGS の利用は期待すべきではない。
IGS は安全保障を主目的に開発されているシステムであり、その運用・利用は基本的に
他国と情報を共有することを前提としていない。防災・災害対策は国内だけでも多くの組
織が関与しており、アジア諸国との協力になる場合には、関係者数はさらに拡大する。防
災・災害対策では、関係する組織・機関が同じ情報をどれだけ共有できるかということが
非常に重要になってくるが、複数の組織・機関が共有できる情報は、民間の地球観測衛星
事業者が提供する商用衛星画像である。民事衛星である ALOS のデータを多数の商用地球
観測衛星のデータとともに利用することで、防災・災害対策に対する有効性が増すと思わ
れる。
地球観測画像利用においても、現在の日本には、政府が安定的需要を作り出すことで産
業の育成を図るというアンカーテナンシーの考え方と施策がなく、各省庁が必要に応じて
利用しているのが現状である。技術的に民間で実現できても、政府市場がなければ事業的
に成立が難しい、というのが地球観測事業の特徴である。軍民の地球観測衛星を数多く打
上げ、優れた技術が民間に蓄積されている米国でさえ、安定需要を提供する Clear View、
次 世 代 衛 星 の 開 発 を 支 援 す る Next View の 二 つ の プ ロ グ ラ ム を NGA(National
12
Geospatial-Intelligence Agency)が米地球観測事業者に提供し、宇宙産業の競争力とリーダ
ーシップの維持に努めている(資料集Ⅷ-2参照)。日本でも同様の政府による明確なコミ
ットメントと産業振興政策が求められる。
2.アプリケーション指向のシステム構築
1)防災に関する情報の特質
防災システムの構築にあたっては、常にユーザーの視点に立った、アプリケーション指
向の考え方を念頭におかねばならない。特に配慮しなくてはならないのは、防災・災害対
策における、政府担当部局による以下のような情報の取得、伝達の側面である。
発災直後の現場の正確な状況をタイムリーに把握する。
災害状況を被災者に速やかに伝達する。
災害状況を災害地の外にも速やかに伝達する。
これらに共通しているのは、「正確な情報をタイムリーに把握する」、
「必要としている人
に速やかに伝達する」という点である。衛星の機能を考えれば、「正確な情報のタイムリー
な把握」には地球観測データが、「必要としている人への速やかな伝達」には衛星通信が役
立つといえる。しかし、衛星がサポートできる部分は一部であり、災害対応という、即応
性、確実性、柔軟性が求められる、特殊なニーズをすべて満たせるわけではない。このた
め、宇宙システムを中心にすえた従来の考えとは一線を画した、実利用に供するアプリケ
ーション指向のシステム構築を導入する必要がある。
2)実証された技術の効果的な利用
実用的なシステムの構築には、新規技術、先端技術を常に追求してきた手法とは異なる
研究開発アプローチが必要である。現在、政府が防災・災害対応目的で利用している、商
用衛星通信サービス、および海外から購入している地球観測データは、技術実証がすでに
十分行われており、国際市場で取引されているレベルの信頼性を得ている。防災の特殊な
ニーズを満たすためにも先端技術の研究開発を着実に進めることは重要だが、人命にかか
わる活動のサポートでは技術がロバスト性をもつことが優先されるため、「枯れた技術」、
十分に実証された技術を組み合わせて全体のシステムを構築することが必要となる。
通常の地上波も衛星波も受信可能な携帯電話を使うシステムには、不確定要素が多い。
むしろ通常誰もが使用している携帯電話の地上局がダウンした場合に、同じ携帯電話を使
って衛星を介して外部との通信が可能になるような仕組みなどの、救助活動を行う人々と
被災者を含む住民に対する情報通信のラストマイルを確実に提供できる仕組みの検討を、
民間企業と協力して進めるべきである。
13
災害対応において既存の技術を利用した実例としては、フランスが Emergesat という興
味深いシステムを官民連携の下で開発している。2005 年 1 月、元フランス人道支援担当大
臣 Nicole Guedjmの呼びかけの下、CNES、Alcatel Alenia Space、REMIFOR(欧州のリ
スク管理組織)が共同で、災害時の人道的支援活動をサポートする Emergesat と名付けた
システムの開発を開始した。このシステムは航空機用標準コンテナに地上局としての機能
を持たせたものであり、発災現場にヘリコプターなどで投下して設置を行うが、現場で電
源を取れないことも考慮して、自己発電装置を持つ自立型のシステムとなっている。
Emergesat は、衛星通信はもとより、現地での GSM や WIFI などの無線ネットワークの
確立や、救助機関で共有できる商用地球観測画像の取得なども行うことができる。開発国
において、このような先端的システムをどれだけ使いこなせるかについては十分検証が必
要であるが、2004 年 12 月のスマトラ島沖地震の翌月にこのような活動を開始しているこ
とからも、フランスが、いかに戦略的に宇宙システムの利用を考えているかをうかがい知
ることができる。
日本の場合も、衛星通信、地球観測のインフラが、どの程度防災分野に応用が可能なの
かが、把握されなくてはならない。まず、衛星通信については、ETS-VIII の移動体通信、
WINDS の超高速インターネット通信がめざす実証技術は高いレベルにあるが、それが防災
にどれだけ役立つか、どの程度実利用に供するものであるか、が検証されなくてはならな
い。これらは、もともと防災を用途の中核にすえて計画されたわけではなく、用途として
防災にも使えるというものであることを考えると、拙速に技術を適用しようとするのでは
なく、両プロジェクトで十分に技術実証を行い、ロバスト性を高めることが重要である。
そして、最終的には民間企業が衛星を運用し、サービスを提供する形に持って行く方向性
が望ましい。
一方、地球観測インフラの防災分野の応用については、災害に対する初動では、災害発
生後約 1 時間の間に必要な情報を収集・伝達しなければならないことを考慮すると、これ
らが、どの程度高頻度観測要求、短時間観測要求、全天候観測要求などに応じられるかが、
検証されなくてはならない。これらの要求を宇宙システムで満たすためには、異なる機能
の観測衛星を複数機周回軌道に配備しなければならず、これにはかなり多くの予算と時間
を費やさなければならない(ただし、発災前と発災後の比較を行うため、平時に観測デー
タをアーカイブするのであれば複数機の衛星がなくても可能)。
衛星をすべて自前で持たなくても、海外を含む利用可能な衛星と組み合わせれば、頻度
は向上する。例えば、フランス、ドイツ、イタリアは、自国の安全保障関係の地球観測シ
ステムにタスキングをかける権利を融通し合う方策をとり、観測頻度の向上を図ろうとし
ている。
今後は ALOS の利用によって、防災に対する宇宙利用の現状をどこまで改善できるか実
証するとともに、商用衛星画像の利用との組合せの有効性についての検討も必要である。
また、以下に述べる宇宙技術と航空技術を組み合わせた手段も検討に値すると考えられる。
14
3)宇宙技術と航空技術の統合
衛星を使わなくても、地上の画像取得や通信は可能であり、宇宙システムは他のソリュ
ーション(地上・航空)と競合する立場にある。防災や災害対応のような、特殊かつ多様
なニーズに応えるためには、宇宙技術だけではなく、地上あるいは航空の技術の利点を組
み合わせ、補完・統合を図ることが望ましい。
特に地上の監視・観測における、即応性の要求に対応するためには、航空機との連携を
図ることが重要になる。この場合、航空機としては有人機、無人機、そして飛行船の利用
が考えられる。有人機および無人機を遠隔地で運用する場合、取得した画像や映像の地上
への送信に衛星回線は不可欠となる。定点滞空を技術的に実現できれば、飛行船は低い高
度からある地域の常時監視、観測が可能となり、周回型地球観測衛星と並行して運用する
ことで相互補完的にデータを入手することが可能となる。
無人機については、JAXA はすでにいくつかの研究を進めている。今後は 2001 年から行
っている多目的無人機の研究を強化するとともに、自動着陸などの宇宙往還機で培った技
術を無人機の開発に活かすことが重要である。また、同時に航空機と衛星を組み合せて一
つのシステムを作り上げるような研究も行うことも必要である。このような宇宙と航空の
両技術を活用したシステムの構築に向けた動きを、積極化させることが望まれる。
4)防災関連ユーザーに接近する必要性
2005 年 8 月末から 9 月初めにかけて米南部を襲った、超大型台風カタリーナの被害に対
する米衛星産業界の対応は驚くべきものであった。衛星のビームのコンフィギュレーショ
ンを変えて被災地域の通信量の増加に対応した上に、被災者への情報提供のために受信機
も提供した。また、災害地域外への情報提供のためには VSAT 局を展開して、衛星回線で
取引可能な ATM を設置し、連邦危機管理庁(FEMA: Federal Emergency Management
Agency)や赤十字にも回線を提供した。このように、固定衛星通信企業や移動体衛星通信企
業が、先を争うようにして衛星携帯電話の配布などの災害対応に必要な物資・サービスを
無償、あるいは原価で提供したことは大きなインパクトを与えた。紛争地域などの海外に
駐留する米軍に対し同様のシステムやサービスを提供してきた、という実績が背景にある
ことは確かだが、米衛星産業のこの一連の活動は、米国民、企業、地方自治体などに対す
る、費用対効果のきわめて高い宣伝となった(資料集Ⅷ-3参照)。
一方、日本では台風・地震等の災害でどれだけ衛星通信が役立ったかということが目に
見える形であまり伝えられてこなかった。このため、防災や災害対策における衛星利用と
いっても、多くの人には実情がわからないのが現状といえる。しかし、災害は、国民の目
に宇宙利用が見えるようになる数少ない機会である。したがって、積極的な防災支援を通
じて宇宙利用の拡大につなげることは、民間企業にとっても、また JAXA にとっても戦略
的な重要性を持つといえる。
宇宙利用ニーズに基づいた研究開発を重視するのならば、JAXA は防災分野の利用ユーザ
15
ーと潜在的なユーザーの両方と、積極的にコミュニケーションを図る必要がある。このた
めには国内の災害関係の省庁・公的機関に限らず、海外、特にアジアの人々とのコミュニ
ケーションを積極的にはかり、人脈の構築を早急に進めるべきであるといえる。
3.アジアへの展開の政治的重要性
最後に、官民パートナーシップを通じた防災システム構築の政治面、および政治が絡ん
だ経済面からの重要性を検討してみよう。防災・災害対応の宇宙技術利用をアジア地域へ
と拡大することには、以下のような意味合いがあると考えられる。
①アジアにおけるプレゼンスの向上
有人宇宙飛行の成功や APSCO(アジア太平洋宇宙協力機構)設立にみられるように、中国
は、アジアにおける宇宙のリーダーシップの獲得をめざした動きを活発化させている。日
本が防災システムをアジアに積極的に展開すれば、これが日本の宇宙分野における巻き返
しにつながり、アジアにおけるプレゼンスを高めることに寄与する可能性が大である。
②アジアの経済的安定と日本の国益
自然災害は発展途上国に大きな経済的損害を与える(資料集Ⅷ-4参照)。日本が主導して
防災システムを構築し、自然災害の影響を緩和することは、アジア諸国の経済的安定に寄
与する。アジアの経済安定は、通商国家日本とっては国益に直結する問題であり、この分
野で宇宙技術面から貢献する意義はきわめて大きい。
③ODA を活用した宇宙産業の活性化
宇宙インフラを日本の負担で構築し、その利用を無償で提供し、さらには必要な設備・機
器などを ODA で供給するような方策が実行に移されると、これは途上国援助とともに、日
本の宇宙産業の活性化にもつながる。宇宙インフラの構築は、衛星やロケットのメーカー
の需要を作り出すとともに、政府ミッション完了後に民間に運用を委託することで、新た
なサービス市場も創出できる。また、利用設備・機器を日本のメーカーが供給できれば、
市場のさらなる拡大にもつなげることもできる。
③国際化による宇宙利用の持続性、安定性の維持
宇宙からの防災システムの構築を、国際的なプロジェクトとしても推進するのであれば、
日本はこれに対する国際的責任を負うことになる。この国際的責任を果たすためには、ト
ップダウン的アプローチで予算化を含む意思決定が不可欠となるため、省庁間の連携の悪
さが多少なりとも改善され、宇宙利用の持続性や安定性に寄与する可能性がある。
16
第3章
宇宙事業の裾野の拡大:新たな民の事業を JAXA はいかに支援すべきか?
1.民主導による新たな息吹き
第1章でも述べたように、戦後の宇宙開発は冷戦を背景にして、宇宙を通じた国益を重
視する政府が主導する形で進められてきた。しかし、冷戦終結と重なるようにして、宇宙
でも政府と離れた形での事業が展開されるようになってきた。この典型が、英国のサリー・
サテライト・テクノロジー社(SSTL)である。この会社は、サリー大学の博士課程の学生
であったマーティン・スイーティングが、衛星の開発・製造を個人的に始め、これが起業に
つながった、いわゆる大学発のベンチャー企業である。SSTL は 1985 年にサリー大学が9
5%を出資して会社組織となり、衛星ではニッチ市場であった、小型衛星に焦点を当てて
事業を展開した。製造にあたっては、民生部品を使って徹底的なコストダウンをはかる一
方、顧客に第三世界の国を巻き込んで需要拡大にも成功し、小型衛星の事業化に成功した。
2000 年当時は 500 万ポンド余りであった売上高は、年30%以上のペースで拡大し、2004
年には 1,940 万ポンド(約 40 億円)に達している。
個人向け宇宙旅行の分野でも、民間企業による新たな取り組みが始まっている(資料集
Ⅸ-1参照)
。2001 年に米国の富豪であるデニス・チトーが、民間人として史上初の国際宇
宙ステーション(ISS)滞在を実現したが、これは米国の宇宙専門の旅行代理店スペース・
アドベンチャーズ社によって企画された商業的な事業であった。これは、ソユーズ・ロケ
ットを往復輸送に利用して ISS での滞在を実現するもので、官により構築された宇宙イン
フラを利用した、民間宇宙事業の新たな展開として興味深い試みとなった。
また、宇宙旅行を行うための宇宙飛行船の開発競争も民間で始まっている。これは懸賞
金を目当てにしたリンドバーグによる大西洋横断の成功が、航空機産業の隆盛とその後の
海外旅行の大衆化につながったことに触発された試みである。これは、民間主導による宇
宙旅行の実現をめざす、ピーター・ディアマンディスの呼びかけに投資家が賛同し、「アン
サリ X プライズ」が米国で設立されたことが契機となった。「アンサリ X プライズ」では、
3 人(または 3 人分の重量)を搭載した同一の機体で、2 週間以内に高度 100 キロ以上のフ
ライトを 2 回成功させた試みに懸賞金を与えるコンテストを実施し、米国のスケールド・
コンポージット社が開発したスペースシップ・ワンが、2004 年にこの条件をクリアして懸
賞金を獲得した。同社を含む複数の会社が、2008 年の定期運行開始をめざして弾道宇宙旅
行船開発にしのぎを削っている。また、英国のヴァージン・グループが設立したヴァージ
ン・ギャラクティック社は、スペースシップ・ワンの改良機体による弾道宇宙旅行ビジネ
スを本格的に展開するために、米国ニューメキシコ州に民間宇宙飛行船が発着できる基地
の建設を行うことを発表している。
このように IT などの分野で富を築き上げた富裕者が、ビジネス分野の経験とその蓄積し
た富を生かして宇宙事業に投資し、これを民間で推進しようする動きが世界的に活発化し
ている。民間の最先端技術を扱ってきた経営者にとっては、官主導で進められてきた宇宙
17
開発は、彼らの眼から見ると非効率で高価なものと映り、これが新たな宇宙ビジネスへの
原動力になっているのである。
このような政府から一線を画した、民間の力による宇宙開発や宇宙旅行の試みは、日本
でも始まっている。小型衛星やロケット開発分野では、東京大学が小型衛星の CubeSat を
完成して打ち上げに成功したし、北海道大学や地元の企業が中心となって設立された NPO
法人、北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)では、独自のハイブリッド・ロケット
の開発に乗り出している。また、宇宙旅行の分野でも、2005 年に JTB がスペース・アドベ
ンチャーズ社との間で販売提携を結ぶなどの動きが出てきている。日本でも、民間からの
宇宙開発や旅行への関心が高まっているが、このような動きも世界的な趨勢の中に位置づ
けられるのである。
2.なぜ JAXA は民の宇宙事業に関わるべきか?
成功する確率は定かではないものの、民間による宇宙事業化の試みがここ 5-10 年間で
加速化していることは確かであり、官、JAXA としても、このような新たな動きにどのよう
に対応するのかを考察しておく必要がある。
もちろん、このような事業は民間でやることであり、これに官や JAXA は関与すべきで
ない、と考えることはできる。官が民間の事業に関与することは好ましくなく、これが逆
に民の自由な事業展開を阻害する、ととらえるのはひとつの見識であり、事実、米国では
このような方向に宇宙政策がシフトしている(資料集Ⅸ-2,3参照)。
本報告書では、米国などとは事情が異なるため、日本では民が主導する宇宙事業を JAXA
は支援すべきである、という立場をとる。この理由は、一時は国家の研究開発費の 35%以
上もの資源が投入されて、大規模な宇宙開発が行われてきた米国と比べると、日本の宇宙
関連事業の裾野がきわめて狭いことによる。日本では事業化をめざした宇宙開発が NASDA
と宇宙関連メーカーがいわゆる「宇宙むら」を形成して進められてきたこともあり、宇宙
の技術的な資源やノウハウが「宇宙むら」に集中的に蓄積されてきた。そのため、ここか
らの技術のスピンオフや新規参入による技術のスピンオンも、最近まではごく限定的であ
った。
技術的な資源が「宇宙むら」に独占的に集積した一方、日本全体の宇宙に対する興味は
幅広いものがある。これは、スペースシャトルに日本人宇宙飛行士が搭乗するたびに宇宙
への夢が掻き立てられて大きな話題となるし、アニメなどの世界でも宇宙が題材となるこ
となども多い。しかし、問題は日本では、宇宙に興味を持つ潜在的な宇宙ユーザー層と、
技術を保持する層の間に高い壁が存在し、両者が乖離している状況にあることである。し
たがって、技術的な資源を持つ JAXA としては、技術移転などを通じて潜在的なユーザー
層を技術的にも宇宙分野に取り込み、ユーザー・コミュニティを拡大する必要がある。この
ような努力により、JAXA は宇宙利用を活性化できるし、これは結果的に日本の宇宙事業全
体の底上げにつながるといえる。
18
また、今まで「宇宙むら」で形成されていた宇宙の技術基盤を強化、拡充するためには、
これまで宇宙に関係していなかった一般民間企業をこの分野に引き入れる必要がある。民
間企業の中には宇宙に転用できる技術を持つ企業も多く、これらの企業に宇宙関連の技術
を説明し、宇宙分野での事業展開の可能性を伝えることも、宇宙技術で強みを持つ JAXA
の役割といえる。すなわち、ユーザー・コミュニティの拡大と宇宙技術基盤の強化、拡充は
JAXA が果たすべき仕事であるし、これが順調に進むならば、日本全体の宇宙事業の活性化
と底上げにつなげることができるのである。
一方、JAXA が民間の宇宙事業を支援することは、不確実性をもつ将来の宇宙技術に適応
する側面も存在する。民間企業が宇宙事業に新規参入する背景には、宇宙サービスがあま
りにも高価になりすぎ、これが一般のユーザーから遊離している現実に対する不満がある
といえる。このような現実に対して、これらの企業がめざしているのは、確立された技術、
民間の部品、民間の製造方法などを駆使してコスト低下をはかり、より広いユーザーを取
り込んでビジネス化に結び付けることである。これは、軍事的なアプリケーションを中心
にして官が開発してきたコンピュータが、民間に普及してコストダウンが起こり、これが
さらにパーソナル・コンピュータへと発展した過程を連想させるものがある。事実、宇宙
の新規事業を手がける民間企業の中には、衛星やロケットが小型化し、「宇宙分野のダウン
サイジング」が進行してゆくと、予測している経営者や研究者も多い。もちろん、宇宙の
場合はコンピュータの場合のように簡単に「ダウンサイジング」が進行することはないに
しても、個人ユーザーを取り込むような商業的な宇宙サービスや衛星のコンステレーショ
ンのような分野では、「ダウンサイジング」が進行する事態も想定できる。特に、小型化に
よるコスト・メリットは現に存在するため、宇宙の小型化による「ニッチ市場」が作られる
可能性はあるし、民生技術、極小化技術、モノ作り技術などで強みを持つ日本が、この分
野で世界的な競争力を獲得し、存在感を示せる可能性も十分あるといえる。
これまでの JAXA は、主として既存技術の延長線上にある技術開発を中心に手がけてき
た。しかし、技術の発展方向性は予想の範囲内におさまるとは限らず、これには常に不確
実性がつきまとう。すでに述べたように、現在の宇宙開発が一種の転換点にさしかかって
いる可能性は否定できないため、JAXA もこれに対する備えをしておく姿勢は必要である。
これを逆にとらえると、JAXA は、新たな技術トレンドを開発にうまく取り込めれば、宇宙
産業の活性化、ひいては日本の宇宙産業の国際競争力確保に結びつけられる可能性さえも
存在するといえる。
JAXA が民主導の宇宙事業を支援すべき第 3 の理由は、その広報面からの効果に求めら
れる。宇宙分野に新規参入が起こることには、大きなニュースバリューがある。これは IT
経営者の宇宙分野の参入や東大阪の衛星プロジェクトが大きな注目を集めたことで実証済
みであるといえる。宇宙はそれが持つ未知への可能性と夢の広がりなどにより、広報戦略
をうまく立てれば、多くの人の関心をひきつけられるのである。JAXA が積極的に「宇宙む
ら」に属さない民間企業の宇宙事業に関与することにより、国民の間に宇宙自体の興味を
19
広げることができるし、これはひるがえって宇宙事業自体の活性化や JAXA 自身の知名度
の向上にもつながるのである。
3.JAXA による民間宇宙事業の強化策:提言
近年、JAXA は産学官連携部を中心にして、民間企業への関わりを深めつつある。その目
的は、①産業競争力強化への貢献、②宇宙開発利用の拡大、③研究開発成果の活用促進、
にあり、これらの 3 本柱のもとで、さまざまなプログラムが実施に移されている。ブレー
ンチームでは、これらの方策やプログラムの方向性を維持しつつ、いかにすれば民間セク
ターとの関係をさらに強化し、宇宙産業の活性化と新たな価値の創出につなげられかを検
討した。
産学官連携部では、宇宙オープンラボ制度の下で、新規参入と新たな宇宙事業の促進を
狙って、民間企業から JAXA への技術のスピンオンと、宇宙インフラを活用した宇宙発ビ
ジネスのプログラムを展開している。これらのプログラムの実施にあたってまず留意しな
くてはならないのは、支援事業の性格により、短期的に成果を出すべきものと、中長期に
わたる支援が必要なものかを峻別することであろう。ここでは、短期的プログラム、中・
長期的プログラム、そしてそれらのプログラムを下支えする役割を持つマーケティング戦
略、について提言を行うことにする。
1)短期的プログラム
すでに存在する宇宙インフラを使った事業では、短期的な成果を出すことが比較的容易
であるし、また、結果を出しえるプロジェクトを優先的に推進することが必要である。JAXA
は、ロケット、衛星、国際宇宙ステーション(への参加)
、宇宙映像、衛星写真、などのさ
まざまな技術的な資産やコンテンツを有する。JAXA は、このような資産と宇宙以外の分野
の技術やコンテンツを融合させ、新たな宇宙事業とその付加価値を生み出す目的を持った
プログラムを強化しなければならない。JAXA 産学官連携部の宇宙オープンラボ制度の下で、
「ISS における映像撮影機材のレンタル事業の研究」や「プラネタリウムを活用した宇宙エ
ンターテインメントビジネス」のプロジェクトが進行中であるが、この種の事業の目的を
より明確化し、かつ戦略的に推進するという方向性である。
日本の宇宙開発が、キャッチアップの時期を脱して新たな展開を図るためには、日本の
個性を発揮できる分野が必要となる。そのひとつが、この宇宙インフラを利用した新ビジ
ネスの創出にあるといえる。宇宙ビジネスに独自性を持たせるには、宇宙と日本が持つ強
みを融合させることが必要になるが、これには、①ロボットや携帯電話などの日本が強み
を持つハイテク分野との融合、②アニメなどの日本が強みを持つあるいは海外にアピール
できるコンテンツとの融合、③友禅染や西陣織などの日本の伝統産業や文化との融合、④
子供への教育プログラムとの融合、などのさまざまな分野が考えられる。
これらは、一見して突飛なことのようにとらえられるかもしれないが、この「突飛なこ
20
と」にチャレンジすることを可能にするのが、宇宙インフラを使ったプログラムなのであ
る。これらのプログラムは、既存の宇宙インフラを使うため、多くの費用を必要としない
ことに加えて、短期的な成果を出すことが求められるため、スジの悪いことが判明したプ
ログラムは打ち切ることも簡単である。このため、魅力的なプログラムにはたとえそれが
突飛であっても勇気を持って選定し、リスクを覚悟で支援することが必要となる。という
のは、失敗する可能性も存在する一方で、これをビジネスモデル化して経済的な成功に結
びつけられれば、広報面も含めてそのインパクトはきわめて大きく、宇宙への敷居を低く
することに大きく貢献することが予想されるからである。
したがって、宇宙ビジネスへの敷居を低くするとともに、広報効果や子供に対する教育
効果なども念頭において、宇宙インフラを利用した短期的なプログラムをより積極的に推
進することが望ましい。そして、「人に近づく宇宙」、あるいは「人と宇宙を結ぶ」といっ
たコンセプトを掲げ、宇宙に興味を持つ人ならば誰でも、簡単に JAXA にアクセスできる
環境を作り出すことが重要であるといえる。
2)中・長期的プログラム
一方、技術的な問題に対する新たな提案や、衛星やロケットのような開発に関わるプロ
グラムに対しては、より長期的な取り組みが必要となる。JAXA の現存の支援プログラムは、
3 年間(単年更新)が限度であり、プログラムの終了時に一定の成果が出ても、それがその
先へと進みにくくなっている弱点がある。この問題を解消するためには、ステップ方式の
支援が必要になると考えられる。すなわち、ステップ1では、比較的間口を広くして採択
し、プログラム終了時の成果とその将来の可能性を精査して、可能性を持つプログラムに
対しては、ステップ2の支援に進めるようにする制度作りの方向性である。このような支
援のステップ化を進めることにより、採択プログラムの選択と集中を行え、より効果的な
支援策の運営が可能になると思われる。
ここで問題となるのが、予算的な制約の問題であろう。民間企業への支援策は JAXA に
とっては、どちらかというと副次的な仕事であり、この分野に多くの予算が投入されるこ
とは想定しにくい。したがって、JAXA としては、資金を効果的に使った支援策の検討が求
められるが、その際に考慮すべきことは、JAXA が民間に提供できる最大の資産は宇宙に関
する技術であり、資金ではない、という点である。したがって、特にステップ2での支援
を行う際には、米国で実施されている CRADAs[Cooperative Research and Development
Agreements:官(国立研究所も含む)と民が協力して行う研究プロジェクトで、人材、設
備、機械、その他を出し合って研究プロジェクトを推進するが、官側は資金を負担せず(あ
るいは少額しか負担せず)、民側が負担する方式の技術移転プログラム](資料集Ⅹ-1参照)
なども参考にしながら、資金をさほど負担することなく、効果的な技術移転を通じた支援
を実施できる制度を構築すべきと思われる。
2006 年 1 月より産学官連携部では、宇宙事業のビジネス化のために、ベンチャー・キャ
21
ピタルなどの民間資金供給者とのマッチング・コーディネーション業務を始めた。この方
向性はきわめて重要と考えられる。宇宙事業の支援プログラムの理想は、JAXA から支援を
受けた案件が、ベンチャー・キャピタルやその他の私的な資金供給と結びついてさらなる発
展を遂げ、最終的にビジネス化される、という形であろう。もちろん、宇宙は他の分野に
比べて事業のリスクが高い上に、収益化するのにも時間を要する。このため、私的な資金
供給源に結びつけることは容易な作業ではないが、プログラムを支援するにあたっては、
このような成功へのロードマップを描いて実施することが必要と考えられる。
既存プログラムの強化に加えて、民への支援をより効果的にし、より大きなインパクト
を持つ新規のプログラムの導入も検討しなければならないだろう。その第一の可能性は、
成果ベースの競争的資金助成制度(賞金制度)である。米国の X プライズ財団が、民間資
金で開発された有人宇宙船を高度 100km まで打ち上げ、これを二度にわたって成功させた
開発チームに賞金を提供するプログラムを実施した、ということは前章で述べた。この種
の賞金制度による研究開発の促進策は、民だけではなく、公的な機関もこの手法を導入し
始めている。NASA でも、Centennial Challenges と名付けたプログラムで、NASA が必
要とする技術分野の突破口をオープンな形で民から求めるために、この賞金制度を導入し
ている(資料集Ⅹ-2参照)。同様の賞金方式はヨーロッパでも行われており、また、米国
では国防総省の DARPA などでも導入されている。
もちろん、この賞金制度は、研究開発自体に対する支援ではなく、研究開発の成果への
支援であるため、従来のプログラムとはそのコンセプトが異なるため、日本で導入するに
は抵抗があることも考えられる。しかし、このプログラム自体は、①従来の政府支援では
カバーしきれなかったタイプの技術革新を促すことができる、②新たな研究グループを引
き入れることができる、③伝統的な手法では成功しえなかった技術革新を促進する可能性
がある、④支援機関は直接的には研究開発自体への資金を提供しないため、コスト効率が
良い可能性がある、⑤話題性があり、教育効果もある、などのメリットが考えられる。こ
のため、成果に対する支援とともに、得られた成果を継続的に発展できるようにする支援
策を組み合わせるなどの工夫を考案しながら、実施に向けた検討を行うことが望まれる。
一方、米国の SBIR(Small Business Innovation Research)方式のような技術の両用性
(宇宙と民生用の両方に活用できる性格の技術)を意識したプログラムを導入することも
検討すべきである。例えば、NASA では、SBIR を実施するにあたり、応募企業が NASA
の技術的な課題をいかに解決できるかを示すとともに、そこで研究開発した技術を企業に
持ち帰り、いかにその企業の本業に生かすかも同時に示さなくてはならない(資料集Ⅹ-
3参照)。
現行の JAXA のプログラムでは、この方式とは異なり、宇宙の技術基盤を強化するため
のスピンオンと、民間企業が技術移転によりメリットを得るスピンオフのプログラムは、
明確にはリンクされていない。もちろん、個別のスピンオンとオフのプログラムの有効性
はあるが、これに両用技術を意識したプログラムを加えることにより、参加企業がより緊
22
密に宇宙分野の技術開発に関わらせる体制を整えることができる。いずれにしても、この
種のプログラムのポイントは、JAXA と一緒に仕事をすることにより、企業にとってもメリ
ットがあるという認識を芽生えさせることであり、JAXA が持つ宇宙施設なども効果的に利
用して、企業との間で Win-Win の関係構築をめざさなければならない。
3)JAXA ブランドとマーケティング活動の強化
上記の短期的プログラムおよび中・長期的プログラムを推進するためには、それらを下支
えるマーケティング活動の強化が必要となる。ここでは特に、JAXA のブランド力とプログ
ラムの社会的な認知度を向上させる PR 活動の強化と、パートナーとなる企業や団体などの
ビジネス・ニーズを集約・蓄積するためのリサーチ機能の強化の側面から提言を行う。
まず、JAXA 自体についての PR 活動を積極化させることが重要である。JAXA が宇宙事
業の裾野拡大にとどまらず、より幅広い宇宙事業に対する社会的・国民的関心を高めるこ
とをめざすためには、JAXA 自体が社会や市場から認知、評価される存在にならなければな
らない。事業連携の基本は、相互のブランド力(あるいは認知力)を生かし事業の付加価
値を高めることにある。JAXA の社会的認知度(現状では概ね 20%〜30%程度)
(資料集Ⅺ
参照)を考慮すれば、今後は様々な形で JAXA の存在を社会の中で視覚化・意識化させて
いくことが必要である。そうした取り組みが強化されれば JAXA と一緒に仕事をする魅力
度が増し、将来的な宇宙事業の裾野のさらなる拡充にも大きく寄与すると思われる。
また、ALOS の打ち上げにともなう民間との協力事業において萌芽的にみられた「キャ
ンペーン型 PR 事業」の取組みを、強化すべきであろう。これは、JAXA と民間企業が、あ
る特定の事業を対象にして協力し、一つの事業を通じて相互の目的(JAXA はミッションの
周知および宇宙事業に対する社会的関心の底上げ、民間企業はビジョンの訴求や社会的評
価・企業価値の獲得など)を達成させる手法である。具体的には、JAXA の個々のプログラ
ムに対して民間企業の参画を募り、一つのキャンペーン事業として取り組むことで、宇宙
への国民の関心を促していくやり方である。
近年、民間企業は自らの社会的価値向上に向け、CSR(企業の社会的責任)に関連する
様々なプログラムを開発、実践している。そこでは地球環境問題や次世代人材育成支援、
地域防災や地域文化創造支援など、JAXA が掲げる理念やミッションと相関が高いテーマも
多い。宇宙事業に対する国民的関心をより高め、それにより多くの民間企業が宇宙事業に
関心を抱く社会的機運を醸成していくためにも、JAXA は民間企業が有する社会的影響力や
情報発信力を戦略的に活用して、新たな事業形態のあり方を改善し、強化していくことが
必要になる。
このような PR 活動に加えて、潜在的なパートナーに対するリサーチ機能の強化も重要で
ある。というのは、JAXA が推進するプログラムに新規企業を引き入れ、プログラムを円滑
に進めるためには、パートナーとなる相手を熟知しなくてはならないからである。このた
めには民間企業のニーズを的確に把握する積極的なリサーチ活動が必須となるし、市場関
23
係者が有する技術や各種ニーズを的確に把握し、連携を育むための戦略的なアプローチを
採用していく必要がある。また、シンクタンクや商社、あるいは広告代理店などを戦略的
に活用して、リサーチ業務やアプローチ活動を効果的に推進していくことも重要な視点と
なる。
このようなリサーチ機能の強化と PR 活動の推進、そして、それらを支える事業推進体制
が適切に組み合わされれば、JAXA が進める宇宙事業の裾野拡大のための活動が、より一層
強化されることが期待できる。
24
第4章
JAXA が果たすべき新たな役割
1.JAXA の 3 つの役割
ここまでの議論を総括すると、今後の JAXA が担うべき新たな役割は、以下の 3 点に集
約できる
①「官民パートナーシップの架け橋」としての JAXA
今後の宇宙分野の大型プロジェクトを官民パートナーシップの手法を使って成功に導く
ためには、JAXA は政府と産業界の間に入り、その架け橋としての役割を果たさなくてなら
ない。官民パートナーシップは、最終的には政府関係の部署がリーダーシップを発揮して
主導するものである。しかし、JAXA は実現に向けてのアイデアと具体的な枠組みや仕組み
を提示しなければならず、また、官民の役割分担や責任・リスク分担の協議をうながし、
官民間で Win-Win の関係を作り上げる手助けをしなくてはならない。この役割を果たせる
のは、独立行政法人として政府と産業界の間に位置する JAXA であり、この立場を有効利
用して、積極的な営業、マーケティングも仕掛けなければならない。
加えて、防災システム構築のケースで検討したように、JAXA の特色を生かして宇宙と航
空分野を結びつけて実利用への道筋をつけたり、さまざま形の技術移転を通じて、官民関
係を緊密にまとめ上げる役割も果たさなくてはならない。
②「宇宙事業のインキュベーター」としての JAXA
JAXA の第二の課題は、現在の産学官連携部の活動をより活性化し、「宇宙むら」と潜在
的な宇宙ユーザーの間に存在する壁を取り払い、宇宙の裾野を拡大する役割である。これ
を明確な目標のもとに戦略的に行い、新ビジネスの育成に取り組まなければならない。こ
の活動は、日本の宇宙利用に個性や独自性を付与できる貴重な活動であるという認識を持
ち、既存プログラムの強化と新プログラムの導入を検討しなければならない。この際に重
要なのは、「ただ資金を提供する」、
「ただ技術移転をする」ということではなく、支援した
プログラムが成果を出せるようなロードマップを常に念頭におき、最終的には民間だけで
事業が展開できるようにもってゆくことである。すなわち、JAXA はここでも「架け橋」的
な役割を果たさなければならないのである。
このためには、技術移転の役割とともに、宇宙に興味のある層に積極的なマーケティン
グを行うことが必要となる。これにより、宇宙の魅力と可能性を伝え、これを新たな事業
創出に結び付けられれば、宇宙ビジネスの裾野は飛躍的に広がることも期待できる。
③「宇宙からのソリューション・プロバイダー」としての JAXA
JAXA が「架け橋」と「インキュベーター」としての役割を果たすにおいて、ぜひとも
JAXA に必要となるのが、ソリューション・プロバイダーとして能力である。すなわち、ユ
25
ーザーに対して、具体的に宇宙からの問題解決方法を提示することにより、JAXA は宇宙の
新たな価値の創出に寄与できるのである。これは、宇宙分野における JAXA の技術的な蓄
積が生かせる分野であり、また、JAXA の存在感を示せる分野でもある。
しかし、JAXA がこの役割を果たすためには、従来の「プロダクト・アウト」の発想から、
「マーケット・イン」の発想、すなわち顧客の欲するものを進んで製品化する方向へと切
り替えが行われなければならない。そして、このようなソリューションを積極的に売り込
むことにより、宇宙のマーケットの拡大に結びつけることが望まれるのである。
2.組織、人材、企業風土の改革
JAXA が上記の新たな役割を果たし、「宇宙価値の創造」に寄与するためには、より根本
的な改革が必要となるだろう。
まず第一は、JAXA の組織面からの改革である。JAXA がかかわる様々なステークホルダ
ーへの対応は、従来、限定的かつ別個に行われてきた。①「官民パートナーシップの架け
橋」、②「宇宙事業のインキュベーター」、③「宇宙からのソリューション・プロバイダー」、
という3つの役割のうち、まず、①については、各ステークホルダーの状況を正確に把握
し、経営的観点から判断を加えた上でそれを実行へとつなげるような、総合司令塔的な役
割を果たせる組織が存在しない点に問題がある。産学官連携部が、産業界を中心に連携・
協力を推進し、産業競争力強化や産業化に向けた施策を行う一方で、長期ビジョンを取り
まとめ、JAXA 全体の経営企画・予算配分機能を担う経営企画部が別個に存在する。これら
を単一組織とすることは現実的でないとしても、両部に限らず各部・本部が有機的に横の
連携を深め、組織全体として官民パートナーシップの架け橋の役割を強く認識すべきであ
る。
次に、②については、産学官連携部がここ数年興味深い実験をしつつある。例えば、民
間の発想を取り入れるために産業界などからの外部人材を登用し、また、宇宙ビジネス創
出や知的財産の活用を促進するため、人的ネットワークと技術専門知識を有するマッチン
グコーディネーターを数人置いている。外部人材の活用という人事運用の実験の効果はま
だ実証されているわけではないが、社会の様々なステークホルダーとの関係構築という貴
重な資産と新たな組織文化をもたらしつつあるように思われる。今後は、このような試み
を他の部門にも拡大していくことが必要であろう。
③については、宇宙利用推進本部が、防災・危機管理ネットワークの構築など、新たな
官需の開拓を行っているのはこの一例といえる。個別技術の担い手である各本部がソリュ
ーション・プロバイダーとして役割を分権的に担うことは基本的には望ましいが、今後は
このような担い手の経営的能力の涵養にも努めるべきであろう。
以上のような現状と課題を踏まえると、次のような組織対応の方向性が考えられる。ま
ず、対外的に交渉のできるプロデューサー機能を各本部の責任者に持たせ、その代わりに
各本部のアカウンタビリティーを確保する評価メカニズムを構築する必要がある。このよ
26
うな分権化と集権化の方向性は、独立行政法人化にみられるニューパブリックマネジメン
トの方向性とも合致するものであり、現在の独立行政法人という新たな組織的枠組みの下
では、組織内における試みとしては十分可能なものであると考えられる。
経営企画部、産学官連携部、各本部の間の連携も重要となる。これは、個別のプロジェ
クトに関する連携というよりは、新たな経営能力を持った人材養成をめざした連携ととら
えられるべきであろう。例えば、経営企画部においても外部人材を活用することは有益で
あるし、人材のキャリアパターンとして、これらの三つの部門を経験する機会をつくるこ
とで、経営的センスの持つ人材を育成することにつながると考えられる。
第二は、このような組織面の改革とも密接に関係する、人材獲得の側面からの対応であ
る。従来の JAXA は技術系を中心にして人材の獲得と育成を行ってきたが、今後は、技術
系の優秀な人材の確保とともに、経営系の人材を獲得しなくてはならない。「架け橋」、「イ
ンキュベーター」、
「ソリューション・プロバイダー」としての JAXA に求められるのは、宇
宙技術を理解するとともに経営手法にも通じ、これらを融合させて「宇宙価値の創造」に
結び付けられる人材である。このためには、特に技術マネジメント関連分野の人材(例え
ば、官民間の技術マネジメント、プロジェクト・マネジメント、インキュベーション経営、
技術マーケティングなどの専門家)と宇宙技術とマーケットを結び付けられる一種の「目
利き」的な人材を獲得、育成し、強化することが急務と考えられる。
最後は、JAXA の企業風土に関わる課題である。おそらくこれが最も重要で、解決の難し
い問題と考えられる。JAXA は、NASDA の設立以来、政府から宇宙予算を受け取り、これ
をメーカーに支出することにより、実利用のための宇宙開発の仕事を請け負ってきた。こ
の仕事の性格上、JAXA(NASDA)の体質は、どちらかというと、
「民」というよりも「官」
に近いものとなった。
ところが、ここまでにみた JAXA の新たな役割は、いずれも「民」のニーズを汲み取り、
「民」にとっても魅力のある形での事業展開にある。このため、「民」が、JAXA と一緒に
仕事をすることに価値を見出すことができないと、事業の成功は難しいといえる。このた
めには、
「民」に匹敵するスピード感や柔軟性のある対応が求められるのである。すなわち、
JAXA は、「官」よりも「民」に近い体質に生まれ変わらなければならないといえる。
もちろん、これは容易なことではない。しかし、この種の改革に取り組まないと、宇宙
分野における JAXA の存在自体が危うい状況になるという、危機感を持つ必要がある。独
立行政法人としての JAXA は、政府と産業の間に位置づけられるが、この位置を有効利用
しないと、政府の宇宙ニーズとそれを実現する産業の間にはさまれて、その存在価値が問
われる可能性も出てくるのである。
われわれブレーンチームは、JAXA がこのような危機感を持ちつつ、前に向かって変革の
道を歩むことにより、新たな「宇宙価値」が生み出され、これが日本の宇宙産業全体の活
性化につながると考える。
27
<ブレーンチーム報告書について>
本報告書は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の産学官連携部から産学官連携戦略に関する
研究の依頼を受けた、下記のメンバーからなるブレーンチームと呼ばれた研究グループに
より作成されたものである。作成にあたっては、9 名のメンバーが中心となり、2004 年 7
月より 2006 年 2 月にかけて合計 16 回にわたり、JAXA 内部及び外部の宇宙関係者からの
意見聴取などを行いながら議論を重ね、報告書の形にまとめ上げた。なお、本報告書はブ
レーンチームの独立性を保って書かれたもので文責はブレーンチームにあり、内容や提言
は JAXA の見解とは一切関係がないことを付しておく。
(ブレーンチーム代表、同志社大学
ブレーンチーム
メンバー
村山裕三(代表)
同志社大学 ビジネス研究科
青木節子
慶応大学 総合政策学部
金山秀樹
シー・エス・ピー・ ジャパン株式会社
清宮浩一
清宮地域総合計画室
城山英明
東京大学 法学部
鈴木一人
筑波大学 人文社会科学研究科
中須賀真一
東京大学 工学系研究科
橋本靖明
防衛研究所
平井昭光
レックスウェル法律特許事務所
28
村山裕三)
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<第1章関連資料>
Ⅱ (宇宙産業の市場環境)
-1 世界の宇宙産業の市場規模
-2 日本の宇宙産業の市場規模
-3 日本の宇宙市場に占める官需
-4 各国ロケットの打上げ回数
Ⅲ (各国の宇宙政策)
-1 宇宙活動を巡る国際関係
-2 各国の政府宇宙予算比較
-3 日本の宇宙政策
-4 米国の宇宙政策
-5 欧州の宇宙政策
-6 中国の宇宙政策
-7 韓国の宇宙政策
Ⅳ 日米衛星調達合意の影響
Ⅴ 日本の「宇宙の平和利用」原則
Ⅵ (JAXA長期ビジョンと「安全・安心」)
-1 JAXA長期ビジョン
-2 科学技術基本政策策定の基本方針
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・・・・・ 32
<第3章関連資料>
Ⅸ (米国の宇宙ベンチャー)
-1 米国宇宙旅行ビジネスの動向
-2 米国宇宙ベンチャーと公的機関等の関係
-3 宇宙旅行ビジネスに対応した米国法制度
Ⅹ (民への支援スキームに関する参考事例)
-1 CRADAs
-2 NASA Centennial Challenges
-3 SBIR
Ⅺ JAXAの認知度
<アジア防災システム関連資料>
Ⅷ (衛星と災害)
-1 新潟県中越地震の教訓
-2 米国のリモセン産業支援プログラム
-3 ハリケーン「カタリーナ」の被害に対する
米国衛星産業界の対応
-4 自然災害による経済損失
<第2章関連資料>
Ⅶ (欧州における官民パートナーシップ事例)
-1 イギリスのスカイネット5計画
-2 EUのガリレオ計画
「新たな宇宙価値の創造」
~資料集~
Ⅰ (本報告書提言の構造)
-1 本報告書の全体像
-2 第1章 日本における宇宙利用の課題
-3 第2章 官民パートナーシップ
-4 <官民パートナーシップの応用例:
アジア防災システム>
-5 第3章 宇宙事業の裾野の拡大
-6 第4章 JAXAが果たすべき新たな役割
<目次>
<ブレーンチーム提言>
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・・・・・ 57
・・・・・ 58
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3.JAXAによる民間宇宙事業の強化策:提言
○短期・中長期プログラム⇒オープンラボ制度
の各種改善案、賞金制度の導入等の提言
○JAXAブランドとマーケティング活動の強化
<基本問題>
2.新たな官と民の関係とJAXAの役割
○現状の継続⇒宇宙産業の衰退の可能性
○国益のためにも、日本が宇宙分野のトップラ
ンナーの一員にとどまるべき
○開発・産業化の枠組みが「制度疲労」
○官・JAXA・民(「宇宙むら」)の関係の根本的
見直し必要
⇒ 二つの方向からアプローチ
①官に民が協力する仕組み⇒第2章
②民をJAXAが支援する仕組み⇒第3章
⇒ JAXAの新たな役割の再整理⇒第4章
<現状認識>
1.日本の宇宙産業を取り巻く環境と現状
<経済面>
○小さな市場規模と政府予算への依存体質
○少ない打上げ機会とコスト高
<政治面>
○米国、欧州、中国の宇宙政策
○日本の宇宙政策と日米衛星調達合意
<JAXA長期ビジョンと「安全・安心」>
○JAXA長期ビジョン(17.3)
○科学技術政策としての「安全・安心」
○宇宙に対する国民の関心の高まり
⇒「光はさし始めたが、依然としてきわめて
厳しい状況」
第1章 日本における宇宙利用の課題
第3章 宇宙事業の裾野の拡大:新たな
民の事業をJAXAはいかに支援すべきか
1.民主導による新たな息吹
○大学発ベンチャー、宇宙旅行ビジネスなど
2.なぜJAXAは民の事業に関わるべきか?
①これまで技術的資源が「宇宙むら」に集中
⇒ユーザー・コミュニティー拡大・技術基盤の強化を
②不確実な将来の宇宙技術に適応し、新たな
技術トレンド(ダウンサイジング等)を取り込める
③広報効果により国民の関心を高められる
2.組織、人材、企業風土の改革
⇒ 3つの役割に即した組織運営・人材
⇒ 「官」よりも「民」に近い体質に
⇒ JAXAの存在意義に対し危機感を
<改革>
<JAXAに求められる新たな役割>
1.JAXAの3つの役割
①官民パートナーシップの架け橋
⇒アイデア・具体的枠組みを提示
②宇宙事業のインキュベーター
⇒宇宙の裾野を拡大
③宇宙からのソリューション・プロバイダー
⇒プロダクト・アウトからマーケット・インの発想で
<解決策(2) 新たな民の宇宙事業への支援>
第4章 JAXAが果たすべき新た
な役割
1.官民パートナーシップの必要性
⇒政府は安定的な利用者の立場
2.アプリケーション指向のシステム構築
⇒実証された技術を効果的に
⇒宇宙技術と航空技術を統合
3.アジアへの展開の政治的重要性
⇒アジアの経済的安定と日本の
国益
<応用例:アジア防災システム>
新たな宇宙価値を創造し、
日本の宇宙産業全体を活性化
1.官民パートナーシップの背景と必要性
⇒付加価値の高いアプリケーションに対等な関係で民間の活力を
2.これまでの官民協力プロジェクトの問題点
⇒連携の悪さ、不明確な官民の役割分担、戦略性の欠如
3.官民パートナーシップを成功させるための条件
⇒政府窓口を統一し、官民責任分担・リスク分担の原則を
4.宇宙開発のあり方の転換
⇒官民パートナーシップを戦略的に活用し、各種課題の解決を
5.JAXAの役割
⇒「ソリューション・プロバイダー」として、マーケッティングと営業を
<解決策(1) 官民パートナーシップ(「安全・安心」分野を中心に)>
第2章 官民パートナーシップ:官の事業へ民が協力する新たな仕組み
Ⅰ-1 本報告書の全体像
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「光はさし始めたが、依然としてきわめて厳しい状況」
<JAXA長期ビジョンと「安全・安心」>
○JAXA長期ビジョン(17.3)で「安全で豊かな社会
の実現」を明記
○第3期科学技術基本計画案(2006.4~)の目標に
「安全が誇りとなる国・世界一安全な国・日本」
○宇宙に対する国民の関心の高まり
H2Aの連続成功、日本衛星メーカの受注、野口
宇宙飛行士の活躍、「はやぶさ」による宇宙探査
<政治面>
○米国、欧州、中国の国益とリンクした宇宙政策
○日本の宇宙政策と日米衛星調達合意の影響
⇒宇宙の実利用目的から政府向けの研究開発主
体の狭い市場へ
<経済面>
○小さな市場規模
○需要先は政府予算へ大きく依存
○少ない打上げ機会とコスト高の悪循環
1.日本の宇宙産業を取り巻く環境と現状
<現状認識>
2つの方向からアプローチ
①官に民が協力する仕組み
「安全・安心」分野を中心に ⇒第2章
②民をJAXAが支援する仕組み
民の新たな動きを念頭に
⇒第3章
以上を踏まえ
JAXAの新たな役割の再整理⇒第4章
○現状の継続⇒宇宙産業の衰退の可能性
(「最悪のシナリオ」=打上げ失敗or衛星
の不具合⇒国際的な競争力失う⇒国民
の支持失う⇒宇宙予算の継続的な削減)
○国益のためにも、日本が宇宙分野のトップ
ランナーの一員として国際的な地位を維持
すべき
○日本の宇宙産業を支えてきた開発・産業
化の枠組みが「制度疲労」
○官・JAXA・民(「宇宙むら」)の関係の根本
的見直し必要
2.新たな官と民の関係とJAXAの役割
<基本問題>
Ⅰ-2 第1章 日本における宇宙利用の課題
32
①日米衛星調達合意の制約を回避できる
可能性
②必然的にアプリケーション指向のプロジェクトになり、
商業市場に打って出るノウハウを蓄積できる
③外交政策と宇宙開発の戦略的連動性を効
率的に
④宇宙開発が国民に身近な存在になり、宇宙
開発の重要性が認識される効果が期待できる
4.宇宙開発のあり方の転換
技術開発主導型の宇宙政策からアプリケーション
重視、民間活力を活かした官と民の対等なパ
ートナーシップへ転換
<目指すべき基本政策原理>
①漸減する予算の中で最大限の成果
②国際競争に打ち勝てる産業競争力
③宇宙産業が自律的に活動できる市場環境
1.官民パートナーシップの背景と必要性
①自分がやりたいことではなく、政府を中心とする
ユーザーが抱える問題を解決するための手段を提供
②ユーザーコミュニティを育成し、マーケティングと営業を通して
ユーザーの抱える問題点を解決
③JAXA内の壁を克服
④民間と同様のスピード感を
5.JAXAの役割
①政府の事業として明確に位置づける
②官は窓口を統一。官民が事業計画、役割分担、
責任・リスク分担について綿密な議論を
③予め官民分担の原則となる指針・大綱が必要
3.官民パートナーシップを成功させるための条件
①官の連携の悪さ
②責任の所在と官民の役割分担の不明確さ
③国家戦略性の欠如
2.これまでの官民協力プロジェクトの問題点
<解決策(1) 官民パートナーシップ(「安全・安心」分野を中心に)>
Ⅰ-3 第2章 官民パートナーシップ:官の事業へ民が協力する新たな仕組み
33
②地球観測
事業的には政府市場必須。安定需要と
産業振興策を
①衛星通信
民間運用で空き時間の有効活用が可能。
政府のアンカーテナンシーで事業リスクが軽減
防災は政府の重要な責務。しかし非常時
のみの使用のため、政府のみで宇宙システ
ムの最適化と維持は困難
1.防災分野における官民パートナーシップ
の必要性
①アジアにおけるプレゼンスが向上
②アジアの経済的安定に寄与し、日本の国益に直結
③ODAを活用して、宇宙産業が活性化
④国際的プロジェクトとすることで、国際的責任を負った上
で、宇宙利用の持続性や安定性の維持に寄与
3.アジアへの展開の政治的重要性
①十分な技術立証を行い、ロバスト性を高めることが
必要
②観測頻度確保のため海外衛星・商用衛星との連携
も視野に
③宇宙技術と航空技術の統合
④防災ユーザーとの積極的連携
2.アプリケーション指向のシステム構築
Ⅰ-4 <官民パートナーシップの応用例:アジア防災システム>
34
①潜在的ユーザーを宇宙分野に取り込み、ユーザー・
コミュニティを拡大
⇒宇宙利用が活性化し、日本の宇宙事業全体の
底上げに
②これまで非宇宙であった一般民間企業をこの
分野に引き入れ
⇒宇宙の基盤技術を強化・拡充
③新たな技術トレンドを取り込める可能性がある
④広報面の効果が期待できる
①宇宙の技術的資源・ノウハウが「宇宙むら」に
集中・蓄積。そのため、日本の宇宙関連事業の
裾野は狭い
②日本全体の宇宙に対する興味は幅広いが宇宙
に興味を持つ潜在的な宇宙ユーザー層と技術を保
持する層の間に高い壁
2.なぜJAXAは民の事業に関わるべきか?
大学発ベンチャー、宇宙旅行ビジネス、日本の事例
1.民主導による新たな息吹
<JAXAブランドとマーケティング活動の強化>
①JAXA自体のPR活動の積極化で社会的認知
度を向上
⇒JAXAと一緒に仕事をする魅力度アップ
②キャンペーン型PR事業の取り組み強化
③パートナーとなる企業や団体などのビジネス・
ニーズを集約・蓄積するため、外部機関を活用しな
がらリサーチ機能を強化
<中・長期的プログラム>
以下の方策を検討し、支援制度の拡充を
①ステップ方式の制度作り
②技術移転を中心としたプログラム
③民間資金提供者とのマッチング
④賞金制度の導入
⑤宇宙と民生用の両方に活用できる技術の支援
<短期的プログラム>
宇宙インフラを利用した新ビジネスの創出を推進
3.JAXAによる民間宇宙事業の強化策:提言
<解決策(2) 新たな民の宇宙事業への支援>
Ⅰ-5 第3章 宇宙事業の裾野の拡大:新たな民の事業をJAXAはいかに支援すべきか?
35
⇒ユーザーに対して具体的に宇宙からの問
題解決方法を提示することで宇宙の新たな
価値の創造に寄与。プロダクト・アウトから
マーケット・インの発想で
③ 宇宙からのソリューション・プロバイダー
⇒「宇宙むら」と潜在的な宇宙ユーザーの間に
存在する壁を取り払い、宇宙の裾野を拡大す
る役割
② 宇宙事業のインキュベーター
⇒JAXAはアイデア・具体的枠組みを提示し、
官民の協議を促し、官民間でWin-Winの関
係を作り上げる手伝いを
① 官民パートナーシップの架け橋
1.JAXAの3つの役割
<JAXAに求められる新たな役割と改革>
⇒JAXAの存在意義に対し、危機感を持って取
り組むべき
民に匹敵するスピード感や柔軟性のある対応
を(「官」よりも「民」に近い体質に)
<企業風土面>
技術マネジメント関連分野の人材と宇宙技術
とマーケットを結び付けられる人材を獲得・育
成・強化
<人材面>
対外的に交渉できるプロデューサー的機能を
各本部に持たせ、一方で各本部のアカウンタビリティ
を確保する評価メカニズムを持つべき
<組織面>
2.組織、人材、企業風土の改革
Ⅰ-6 第4章 JAXAの果たすべき新たな役割
36
リモセンデータ販売、GPS機器
+
保険、コンサル
+
と定義
衛星サービス(衛星通信・放送)
約9兆円
(2003年)
$0
$20,000
$40,000
$60,000
$80,000
$100,000
$120,000
$140,000
millions
$160,000
2002年
2003年
2004年
2005年
Source: Sate of the Space Industry 2002, 2004
2001年
96,902.3($Million)
= 2,412.0
+ 6,968.0
+ 36,449.5
+ 51,072.8
2003年市場規模
2006年
2007年
2008年
2009年
Support Services
Use of Space Data & Assets
Satellite Service
Infrastructure
● 宇宙市場は2001~2009年にかけて年平均成長率6.6%で増大すると予測されている。
● 2003年の宇宙市場は969億ドル(約10兆6600億円)。同じ年の日本の携帯電話会社4社の売上高の合計が約9兆円である
ことを考えると、宇宙市場が他産業と比べて小さい市場であることが分かる。
宇宙市場各部門比較
+
宇宙市場= インフラ(衛星・ロケット・地上設備の製造、研究開発)
Ⅱ-1 世界の宇宙産業の市場規模
0
500
1,000
155
187
1,354
196
1,057
232
959
2,232
2,541
2,280
155
148
330
1,820
176
407
1,852
2,305
192
676
2,510
2,407
187
782
1,056
2,369
3,362
212
1,042
2,211 2,730
宇宙関連事業の売上高の推移
184
130
123
122
94
98
94
963
85
603
948
1,200 1,127 1,038 1,011
147
510
873
1,299
2,304
3,387
3,618
社団法人 日本航空宇宙工業会 (SJAC) 平成15年度宇宙産業データブックより
79
74
570
744
1,062
1986
833
1,325
1987
1,152
1,764 1,875
1988
1,500
1,251
1,562 1,569
1,757
1989
1,477
1,719
1,403
1990
2,000
2,218
1991
1,975
2,014
2,604 2,654
1992
2,500
1984
2,801
1993
3,000
1985
3,080 3,021 3,097
1994
3,465
1999
3,500
1995
3,699
2000
3,546
2001
3,785 3,789
1996
ソフトウェア Software
2002
4,000
1997
地上設備 Ground Equipment
2003
Million $ (1$=¥100)
(単位:億円)
1998
飛翔体 Space Vehicles
Ⅱ – 2 日本の宇宙産業の市場規模
2004
37
26,786
通信、放送、交通、
資源開発、環境観測
気象観測、農林業、
漁業、国土開発 等
ユーザー産業群
社団法人 日本航空宇宙工業会(SJAC)
会報「航空と宇宙」2005年9月号「宇宙産
業の将来見通し」より
7,046
カーナビ、BS/CS
チューナ
宇宙関連民
生機器産業
衛星通信、リモセンデータ提供、
測位サービス、宇宙環境利用
等
6,314
宇宙利用サービス産業
ロケット、衛星、宇
宙基地、地球局
等
2,407
宇宙機器産業
合計42,552億円
宇宙産業規模2003年度
38
7.6%
12.8%
12.8%
29,178
9.4%
9.4%
その他
54.0%
54.0%
123,345
Japan Aerospace Exploration Agency
宇宙航空研究開発機構
Othre Clients
内需の需要先別売上高 2003年度
7.6%
5.3%
3.6%
6.6%
17,405
6.6%
15,126
8,206
3.6%
12,032
5.3%
21,383
0.7%
1,599
内需シェア(%)
売上高(百万円)
需要先
社団法人 日本航空宇宙工業会 (SJAC) 平成15年度宇宙産業データブックより
Other Government Aquencies
その他の政府機関
Other Public Organization
宇宙関連の団体
Spacial Organization for Space Activities
宇宙専門特殊会社
Satellite Communications & Broadcasting
衛星通信放送関連会社
Mafor Rocket Manufacturers
大手ロケットメーカー
Major Satellite Manufacturers
大手衛星メーカー
Ⅱ - 3 日本の宇宙市場に占める官需
39
2006.2
末現在
36/40
(90%)
(JAXA長期ビジョン(17.3.31)参考資料集より抜粋)
Ⅱ-4 各国ロケットの打上げ回数
40
Ⅲ-1 宇宙活動を巡る国際関係
41
(JAXA長期ビジョン(17.3.31)参考資料集より抜粋)
Ⅲ-2 各国の政府宇宙予算比較
42
草創期
1969年NASDA設立
1970年初の自力衛星打上げ(世界
4番目)
気象、通信、放送等の利用機関の
要請に基づき、米国の技術導入によ
り、実用衛星の打上げを目指す
米露圧倒的有利
国威発揚の「宇宙開発競争」
アポロ計画
1965年仏初の自力衛星打上げ(世
界3番目)
1970年中国初の自力衛星打上げ
(世界5番目)
1979年ESAアリアン打上げ成功
海外の動向
米露あゆみより
商業打上げ市場の加熱・貿易摩擦
1990年日米衛星合意
1993年ISSにロシア招請
冷戦下の米ロ宇宙競争の延長
1980年アリアン社設立
1984年米が西側宇宙ステーション提唱
1986年ロシアがミールステーション打上げ
1986年チャレンジャー事故→シャト
ルは官ミッション、商業打上げは民間
ミッションに切り分け・関連施設は実
費貸出しへ。
1988年宇宙基地協力協定
1993年米露打上げ割当協定
1995年米ウクライナ打上割当協定
展開期
日本経済・宇宙産業の明るい見通しの
もと予算もピークへ
純国産=自立ロケットの実現・機種の多
様化
打上げビジネス参入(商業打上げに対応
したNASDA法改正は1998年)。
自立期
衛星・ロケットとも自主技術開発を目
指す。
衛星は大型化傾向。
複数の実利用衛星を通じた技術蓄積
と安全性・信頼性の向上。
実利用衛星の定着
各種応用分野の積極的開拓。
リモセン・有人で国際協力が進展・対等
な国際パートナーとしての認知
・HOPE開発着手
•H2A開発着手
•RSC設立
・技術試験衛星計画
・気象、通信、放送衛星シリーズ
・MOS-1により地球観測の基本技
術獲得。
・有人活動に着手(宇宙実験公募、装
置開発、宇宙飛行士選抜、ISS)
•射点の整備
•ETS-IIにより静止軌道への衛星投
入・運用技術獲得
•実用衛星は米国ロケット打上げ
•追跡管制網整備
•基本的技術管理手法習得
•J1開発に着手
•純国産H2運用
・H-Iロケットを開発・運用
・H-IIロケットの開発に着手
•N1、N2ロケットの開発
(全般)
日本
(技術開発)
1990年代前半
1980年代
~1970年代
Ⅲ-3 日本の宇宙政策① -経緯-
2004年:アンサリXプライズに
スペースシップ・ワンが成功
商業市場への幻滅
官需依存強化
中国の台頭
新有人探査計画
民間宇宙旅行ベンチャーの勃興
1996年ロラール不正輸出事件
2003年中国有人成功
2004年米ブッシュ新宇宙計画
停滞→再生期?
予算の伸び悩み
度重なる失敗+衛星マーケット縮
小により打上げビジネス苦戦
日米衛星の影響もあり官需細り
で衛星産業は大苦戦
機関統合による合理化と混乱
地球環境、安全・安心への関心
=新たな官需の可能性
NASAの影響などで有人議論
再燃
・IGS導入
・MHIとH2A民営化合意
1990年代後半~
43
宇宙を活用した
行政サービスの提供
[利用官庁]
内閣官房
内閣府
国土交通省
総務省
経産省
環境省
厚生労働省
外務省
防衛庁 など
利用予算要求
委託
JAXA主務省
委託・請負
委託
宇宙・航空機製造業界
(メーカ)
国民(エンドユーザ)
国立
研究所等
連携・協力
各大学
航空会社
科学・技術先進国として
の国民の期待への対応
内閣官房
委託
独立行政法人
宇宙航空研究開発機構 技術支援
(JAXA)
計画提案
目標指示
予算交付
宇宙航空研究開発関係省
経産省
宇宙利用
サービス業界
請負
総務省
文科省
政策提言
[科学技術施策策定]
[優先順位付け]
内閣府総合科学技術会議
【宇宙開発委員会】
【航空科学技術委員会】
研究開発
予算要求
予算編成等に係る調整
商用サービス
航空会社
監督
委任
政策提言
財務省
Ⅲ-3 日本の宇宙政策② -活動体制:関係機関の鳥瞰図-
44
○ 2004年1月にブッシュ大統領が発表した「宇宙探査計画(A Renewed Spirit of
Discovery)」は、シャトル事故等で硬直化している民事宇宙活動(=NASAの
活動)に明確な目標を与えることを意図していた。
⇒米国の国益にかなう宇宙活動を基本としており、言葉には表されていないが
宇宙分野におけるリーダーシップの維持を重視している。
(a) 有人及び無人探査を通じて、地球、太陽系、及び宇宙の知識を向上させる。
(b) 米国の安全保障を強化及び維持する。
(c) 米国の経済的競争力、科学力、技術力を高める。
(d) 州・地方政府及び民間企業の宇宙技術への投資及び宇宙技術の利用を促進させる。
(e) 米国の国内政策、安全保障、及び外交政策を円滑に推進するため、国際協力を促
進する。
○ 1996年9月に策定された「国家宇宙政策(NATIONAL SPACE POLICY)」では、
米国の宇宙活動の目的について以下のように記述してある。
Ⅲ-4 米国の宇宙政策① -概観-
45
一連の動きは米政府の宇宙活動における
役割を明確にすることにあったと思われる。
Contractorから
Service Providerへ
民間
地球軌道
NOAA
USGS
実用的地球観測
•GOES、POES気象衛星の運用。
•Landsatの運用。
•観測データ保管・配布。
地球
DoD
本土防衛
•防衛という要求を満たすためのシステム構築。
•技術:技術的優位性の維持を重視。
•経済:先端技術は民間に移転・蓄積され、競争力の基礎となる。
軍の活動を支援するための宇宙利用
月
宇宙探査
•科学・技術がドライバー (自らが技術を持つ方向に)
•30年ぶりに米宇宙活動のピークであるアポロを超える活動を行
えるチャンスが到来。
•教育を通じた国民へのアピール(科学及び先端技術開発は若手
の興味向上への貢献が大)。
•経済:他の分野で使用できる技術は少ないが、今後企業が提供
するサービスを積極的に購入するという方向へシフ トすること
で産業活性化に貢献。
★従来通り地球観測でも科学的要素が強いものはNASAが担当
するようだが、予算は削減傾向にある。
地上の技術・知識の粋を集めた宇宙開発
NASA
火星
http://www.nasa.gov/pdf/55583main_vision_space_exploration2.pdf
2004/1 ブッシュの宇宙探査ビジョン
2005/4 グリフィン新長官
Ⅲ-4 米国の宇宙政策② -活動体制と役割の明確化-
46
○ 2006年現在、EU、ESA、欧州諸国という3つのレベルにて宇宙活動が行われ
ている。
○ 2000年代初頭から、米国に対抗する経済圏の設立を主な目標とした欧州連
合(European Union)が実利用面での宇宙活動(ガリレオ、GMES)を主導する
ようになった。これにより、ESAはEU宇宙活動に必要な研究開発の実施機関
として位置付けられるようになった。
○ 宇宙科学、打上げロケット開発、地球観測衛星開発など、成果の共有など国
際協力が前提である分野の活動、及び一国では費用負担が難しい大型開発
プロジェクトはESAを通じて実施されてきた。
○ 欧州諸国の宇宙活動は欧州宇宙機関(European Space Agency)を通じて行
うものと、独自の自国の活動として行うものの二つから構成されてきた。
Ⅲ-5 欧州の宇宙政策①-概観-
47
EU WHITE PAPER (Nov. 2003)
貧困との戦い
援助
安全・安心
安全・安心
持続可能な
発展
調和のとれた
EUの拡大
産業
海岸・海洋監視
地殻変動予測
熱帯雨林の保護
作柄監視・生産量予測
天然資源管理
土壌管理
水資源管理
情報へのアクセス
技術力向上
政策決定に必要な情報収集
国境・海上監視
人権侵害の予防
食糧問題
農業管理
京都議定書遵守
海洋環境
気候変動
少子高齢化問題・弱者対策
プライバシー
域内格差の是正
産業波及
研究開発向上
技術イノベーション
欧州輸送ネットワーク(TEN-T)推進
雇用創出
デジタルディバイドを解消する
衛星による通信網
衛星を活用した大容量通信
環境及びセキュリティーを目的とした
欧州の自立的な地球観測システム
GMES
30機の衛星による欧州の自立的な
ナビゲーションシステム。国際協力も推進
GALILEO
アプリケーション
Space : a new European frpntier for an expanding Union An action plan for implementing the European Space Policy
援助
国際協力
安全保障強化
外交強化
環境保全
地球気候
変動予測
域内格差の是正
産業競争力強化
雇用創出
経済発展
生活の質(QOL)向上
宇宙が貢献可能な事項
宇宙はEUの重要政策目標の達成を支援できる。宇宙はEUがよき隣人や尊敬されるパートナーとなることを助け、欧州の国際的地位や
国際競争力、科学的権威を高め、拡大EU間の格差是正に資する。宇宙を欧州の政策的ツールとすれば多くの政策的課題を解決できる。
宇宙は拡大EUの新たなフロンティアである。
EUの重要課題
ビジョン
理念
Ⅲ-5 欧州の宇宙政策②-EUの宇宙政策に関するホワイトペーパーの概要-
48
社会ニーズに適う
行政サービスを、
宇宙をツールとして
活用し、提供
利用官庁
政策官庁
DG(官庁)
予算認可
エンタープライズDG
宇宙政策ユニット
欧州市民・エンドユーザー
商業ベースの宇宙サービスを提供・雇用創出
利用サービス産業
発注
雇用創出
宇宙業界(メーカ-)
発注
実用宇宙機の開発・提供
実証プロジェクトの実施
宇宙業界の保護育成
ESA
“宇宙技術で
欧州の社会的課題に
ソリューションを提案“
拠出金
各国がプロジェクトを選択して拠出。
見返りに自国企業が一定の受注。
密接に連携
常設の政策立案タスクフォース
共同実施体制を整備
(経費は折半を想定)
EU:利用・メンテナンス経費
ESA:宇宙機開発経費
加盟国
発注(アンカーテナント)、
公的宇宙インフラの開放
PPPなど官民連携
連携(常設タスクフォース)
行政
コミッション
立法
政府間調整
社会インフラの整備運営
合理化・標準化推進
カウンシル
基礎研究推進
欧州議会
拠出金
EU独自財源の他、
加盟国がGDPの一
定割合などを拠出。
-活動体制:関係機関の鳥瞰図-
EU
“欧州の発展のため
宇宙をツールとして活用”
Ⅲ-5 欧州の宇宙政策③
49
•ContractorからService
Providerへ
•PPP, PFIという新たな
スキームを導入
民間
地球軌道
EU
月
火星
•宇宙探査(ISSを有人宇宙探査へのステップと位置付けている)
•宇宙輸送
•宇宙科学
•地球科学
•生命・物理科学(ISS)
•将来のミッション及び産業界競争力維持に貢
献する技術開発
宇宙開発
•衛星インフラを利用する権利の分有(仏ヘリオス2、独サールーペ、伊コスモ・スカイメッド)
•非機密軍事+民事通信システム共同開発(仏、伊)
未だ軍事宇宙は国ベースで
航行、GMES、衛星通信、
及び気象への技術的支援
ESA
宇宙探査、ISS利用、
及び輸送系R&Dへの政治的支援
欧州の気象衛星運用
EUMETSAT
地球
短期:ガリレオ
中期:GMES (Global Earth Observation
System of Systemsへの欧州貢献)
長期:衛星通信技術(「i2020」 European
Information Society in 2010)
ユーザ要求に基づく宇宙利用
(user-driven applications programme)
Ⅲ-5 欧州の宇宙政策④ -活動体制:役割の分化-
50
- 宇宙開発の目的
• 宇宙空間を探査し、宇宙と地球について理解を深める。
• 宇宙空間を平和に利用し、人類の発展と社会の進歩を促進する。
• 経済、安全保障、科学技術の発展と増大する社会の進歩に対する要
求に応え、中国の国家的利益を守り、総合的な国力を作り上げていく。
– 宇宙開発の原則
• 宇宙活動の発展は、中国の包括的開発戦略において必須であり、政
府によって推奨され支援される。
(http://www.spaceref.co.jp/homepage/colum/whitepaper.htm より)
○ 2000年11月に中国国家航天局が「中国宇宙白書」(正式名:中
国的航天)を発表。
Ⅲ-6 中国の宇宙政策①-中国宇宙白書:目的と原則-
51
<長期開発目標(今後20年<)>
Ö宇宙技術と宇宙応用の産業化、市場化を達成
Ö多機能、多軌道宇宙インフラの確立
Ö有人宇宙飛行システムの確立と一定規模の有人宇宙飛行科学調査、技術実験の実施
Ö宇宙科学分野で世界におけるより重要な位置を得ること
嫦娥計画 (周回機、着陸機、サンプルリターンの3ミッション)を2007年開始予定。
Ö月の探査に中心を置いた宇宙空間探査の事前研究の実施
災害監視、環境監視
Ö国を完全にカバーする衛星リモートセンシング応用システムの確立
1992年には921工程としてプロジェクトを正式承認されていた(往還機の提案もあったが、成功実績を踏まえ回収型に決定)。
関連する実験を神舟1号(1999年)から開始し、神舟5号(2003年)で有人宇宙飛行に成功、ロシア、米国に続く世界三番目の有人宇宙
船打上げ国になった。
Ö有人宇宙飛行を実現し、有人宇宙プロジェクトの初期の完全な研究開発と試験システムを確立
長征は常温推進から低温推進、多段式からクラスター式、衛星打ち上げから有人打ち上げへの技術過程を経て、12種のファミリーを
形成し、低・中・高軌道のさまざまな衛星を打ち上げる能力を備えた。現在はモジュール化、無毒性燃料使用に重点を置いて新型機の
開発を進めている。
Ö打上げ機の全体的なレベルと能力の改善
既に航法衛星「北斗」を3機打ち上げており、測位技術の高度化を推進。またGalileoへ2億ユーロを投資。2005年7月にはGalileo Joint
UndertakingがChina Galileo Industriesに対し、漁業アプリケーション及びLBSの開発、電離層研究を発注した。
Ö独自の衛星航行・測位システムの構築
1980年代前半より東方紅シリーズを開始、現在は次世代通信衛星Chinasat-9を開発。2008年のオリンピックに向けて衛星通信・放送
体制を急速に増強中。
Ö衛星放送・通信システムの確立
1998年に気象試験衛星打上げ、1999年にブラジルと共同のCBERS-1を、2003年にCBERS-2を打上げ、2000年にZY-2と称する初の
国産衛星を打上げ、2002年にHY-1海洋観測衛星を打上げ、2004年に初の実用気象衛星を打上げ。小型衛星を利用した災害・環境
監視システムの構築を今後進める。
<短期目標(次の10年間)>
Ö地球観測衛星システムの確立
Ⅲ-6 中国の宇宙政策② -中国宇宙白書:短期・長期目標-
52
金斗煥氏ホームページ(http://old.edu.co.kr/doohwank)上の英訳をもとに要点を記載。
宇宙条約第6条に規定された「非政府団体の宇宙活動に対する許可及び継続的監督に対応した詳細な手続
きや、宇宙産業促進に関する関係省庁の役割分担を明文化している。
○刑罰規定
-第11条に反して無免許で打上げを行ったり、第19条の制限に従わなかった民間人・企業は罰金刑に処する
(第27条)。
○省庁間の連携
-科学技術大臣は、戦時中などの国家の緊急事態において防衛大臣からの要求を受けた場合、国民の宇宙活
動を制限する命令を出さなければならない(第19条)。
-科学技術大臣は宇宙開発の推進において中央官庁や地方自治体に協力を要請することができ、要請を受け
た者は正当な理由がない限り拒絶してはならない。(第20条)
○民間の宇宙活動促進における科学技術大臣のリーダーシップ
-科学技術大臣は、人工衛星データの実利用を促進するために専門機関の組織化を含む手段をとることがで
きる(第17条)。
-科学技術大臣は、非政府団体の宇宙活動やこの分野での研究や投資を促進するため、人材面、免税措置や
財政支援を含む政策を定める(第18条)。
○民間の宇宙活動に対する管理監督
-民間人・企業が国内外で衛星を打ち上げる場合は、180日前までに詳細情報を添えて科学技術大臣に事前
登録を行う(第8条)。
-民間人・企業が打上げを行う民間人は安全計画と保険等の損害賠償への対応策等の詳細情報を添えて科学
技術大臣に免許申請を行う(第11条)。
-上記に該当する民間人は、宇宙事故から生じる損害に責任を負う(責任の範囲と制限については別途定め
る)(第14条)。
-打上げ免許を取得するためには、宇宙事故に対応した保険購入が条件(保険金額は科学技術大臣が保険市
場を勘案して設定する)。(第15条)
¾
¾
Ⅲ-7 韓国の宇宙政策-宇宙開発促進法(2005年5月31日制定)-
53
通信・放送衛星ではないが、「外
交・防衛等の安全保障と大規模
災害等への対応等の危機管理
のために必要な情報の収集を主
な目的」に、我が国の実用衛星
として約10年ぶりに自主開発
⇒CS-4計画中断、BS-3で終了
米国のスーパー301条(現在失効)を
背景に日米で協議が行われ、
「我が国政府としては、非研究開発
衛星を・・・公開、透明、かつ、無差
別な手段に従って調達することを決
定」し、米国と書簡を交換
1990.6 日米衛星調達合意
増大・多様化する通信・放送需
要に対処し、技術開発を進める
ことを目的に、実利用と研究開
発をかねた次の2つの国家プロ
ジェクトを推進。
⇒ 通信衛星さくら(CS)シリーズ
⇒ 放送衛星ゆり(BS)シリーズ
目的
の 10
過渡期
放送衛星
年
H-Ⅰ-7
ゆり3号-a(BS-3a)
衛星間データ通信
H-ⅡA3
2003. 3 IGS 情報収集衛星
H-ⅡA5
11 IGS 情報収集衛星
H-ⅡA6
2004
2005. 8 きらり(OICETS)光衛星間通信実験衛星ドニエプル(ロ)
2002. 9 こだま(DRTS)
2001
H-Ⅱ-5
H-Ⅰ-8
H-Ⅰ-3
H-Ⅰ-4
さくら3号-a(CS-3a) 通信衛星
さくら3号-b(CS-3b) 通信衛星
ゆり3号-b(BS-3b)
N-Ⅱ-7
ゆり2号-b(BS-2b) 放送衛星
放送衛星
N-Ⅱ-3
N-Ⅱ-4
N-Ⅱ-5
デルタ137(米)
デルタ140(米)
N-Ⅰ-5
N-Ⅰ-6
打上げロケット
さくら2号-a(CS-2a) 通信衛星
さくら2号-b(CS-2b) 通信衛星
ゆり2号-a(BS-2a) 放送衛星
さくら(CS)
通信衛星
ゆり(BS)
放送衛星
あやめ(ECS)
通信衛星(失敗)
あやめ2号(ECS-b) 通信衛星(失敗)
1998. 2 かけはし(COMET) 通信放送技術衛星
1999
2000
1991. 8
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1977.12
1978. 4
1979. 2
1980. 2
1981
1982
1983. 2
8
1984. 1
1985
1986. 2
1987
1988. 2
9
1989
1990. 8
通信・放送衛星
打上げ機関
打上げロケット
JCSAT-1(ヒューズ)
JSAT
アリアン4(欧)
スーパーバードA(SS/L)
SCC
アリアン4(欧)
JCSAT-2 (ヒューズ)
JSAT
タイタン3(米)
スーパーバードB(SS/L)(失敗)SCC
アリアン4(欧)
スーパーバードB1(SS/L) SCC
アリアン4(欧)
スーパーバードA1(SS/L) SCC
アリアン4(欧)
BS-3N(RCAアストロ)
NHK/JSB
アリアン4(欧)
N-STARa(SS/L)
NTT
アリアン4(欧)
JCSAT-3 (ヒューズ)
JSAT
アトラス2AS(米)
N-STARb(SS/L) NTT/NTTDoCoMo アリアン4(欧)
JCSAT-4(R)(ヒューズ)
JSAT
アトラス2AS(米)
BSAT-1a(ヒューズ)
BSAT
アリアン4(欧)
スーパーバードC(ヒューズ)
SCC
アトラス2AS(米)
JCSAT-5(1B)(ヒューズ) JSAT
アリアン4(欧)
BSAT-1b(ヒューズ)
BSAT
アリアン4(欧)
JCSAT-6(4A)(ヒューズ) JSAT
アトラス2AS(米)
スーパーバードB2(ボーイング) SCC
アリアン4(欧)
N-SAT-110(LM)
JSAT/SCC アリアン4(欧)
BSAT-2a(OSC)
BSAT
アリアン5(欧)
BSAT-2b(OSC)(失敗) BSAT
アリアン5(欧)
JCSAT8(2A)(ボーイング) JSAT
アリアン4(欧)
N-STARc(LM)
NTTDoCoMo アリアン5(欧)
BSAT-2c(OSC)
BSAT
アリアン5(欧)
スーパバードA2(ボーイング) SCC
アトラス2AS(米)
商用通信・放送衛星
(衛星製作主契約者)
(2005.11 三菱電機がSCCから衛星(スーパーバード7号)受注)
1996. 2
1997. 2
4
7
12
1998. 4
1999. 2
2000. 2
2000.10
2001. 3
2001. 7
2002. 3
7
2003. 6
2004. 4
1989. 3
1989. 6
1990. 1
1990. 2
1992. 2
1992.12
1994. 7
1995. 8
時期
我が国の商用衛星として
これまで打ち上げられた
通信衛星・放送衛星は、
全て米国製である。
☆ 1985年の電気通信事業自由化により民間通
信衛星事業者が相次いで設立され、民間ベース
で衛星通信事業が進められた。
☆ 一方、日米合意により、これまで国家プロジェ
クトに参加していたNTTやNHKは、独自に衛星を
調達することとなるが、その結果・・・。
☆ 通信・放送衛星の開発を通じて、国内製造業
者の技術開発力向上・国産化を目指したが・・・。
時期
<我が国の商用通信・放送衛星>
<国家プロジェクトの主な通信・放送衛星>
Ⅳ 日米衛星調達合意の影響
54
天体上:軍事的利用の全面禁止(第4条第2項)
「・・・宇宙平和利用の決議に関しましては昭和60年に政府見解が出ておりまして、それによりますれば、
その利用が一般化している衛星及びそれと同様の機能を有する衛星につきましては、自衛隊の利用が
認められるものとされ、現在に至っております。情報収集衛星の導入につきましては、この政府見解に
のっとって進めておりまして、昭和44年の国会決議等に抵触するものではないと考えております。」
(小渕総理大臣)
「今回の情報収集衛星につきましては、民間における衛星利用の状況及び将来における計画を踏まえ
れば、本件衛星の機能が一般化している場合に限って防衛庁ないしは自衛隊が当該衛星を利用する
ことを前提としている限りにおいて、本件衛星の導入は政府見解の一般化の考え方に反するものでは
ないと考えておりまして、したがって、国会決議の「平和の目的に限り」の趣旨に反するものではないと
考えております。」(竹山科学技術庁長官)
情報収集衛星導入時の国会答弁(1998.12.8衆予算委)
参議院:「わが国における宇宙の開発及び利用に関わる諸活動は、平和の
目的に限り、・・・これを行う」(NASDA法付帯決議 1969.6.13 参科技特)
衆議院:「我が国における・・・宇宙に打ち上げられる物体及びその打ち上げ
用ロケットの開発及び利用は、平和の目的に限り・・・これを行う」(「我が国に
おける宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」 1969.5.9 衆本)
「国会決議の「平和の目的」に限りとは、自衛隊が衛星を直接、
殺傷力、破壊力として利用することを認めないことはいうまでも
ないといたしまして、その利用が一般化しない段階における自
衛隊による衛星の利用を制約する趣旨のものと考えます。
したがいまして、その利用が一般化している衛星及びそれと
同様の機能を有する衛星につきましては、自衛隊による利用
が認められるものと考えております。」
国会決議「平和の目的」と自衛隊による衛星利用についての
政府見解(抜粋) (1985.2.6衆予算委) ⇒ 「一般化論」
「平和の目的」の解釈
一方、我が国では、この決議審議
の際、「平和」の意味は「非侵略」で
はなく「非軍事」であるとされた
(1969.5.8衆科技特 木内科学
技術庁長官答弁)
(旧NASDA法制定時)
国会決議(1969)
(旧NASDA法踏襲)
欧米各国では平和利用とは
「非軍事」(non-military)ではなく
「非侵略」(non-aggressive)の意
味であると理解されている。
宇宙空間:大量破壊兵器の軌道投入・配備の禁止(第4条第1項)
宇宙全般:「国際の平和及び安全の維持・・・のため」(第3条)
国内法-JAXA法(2002)- 宇宙関連業務:「平和の目的に限り」(第4条)
国際法-宇宙条約(1967)
法的根拠
Ⅴ 日本の「宇宙の平和利用」原則
55
Ⅵ-1 JAXA長期ビジョン(2005.3.31)(概要より抜粋)
56
(第3期科学技術基本計画の理念と政策目標を提示しているもの:別紙1を抜粋)
-総合科学技術会議 基本政策専門調査会(平成17年6月15日)-
Ⅵ-2 科学技術基本政策策定の基本方針
57
衛星通信サービス契約
Paradigm Services
衛星建造契約
EADS
Paradigm Secure Communications
Special Purpose Company
Contract for Implementation & Service Delivery
国防省
貸し付け
株式投資
銀行
EADS
(シー・エス・ピー・ジャパン調べ)
— 国防省以外の顧客が増えれば、国防省が支払うトランスポンダーのリース
額は低くなる仕組み。
z 1960年代から独自の軍事通信衛星Skynetを運用し、現在はSkynet 4シリーズを使
用している。
z 次世代のSkynet 5シリーズはPFIという新たな形態を採用。
¾ 国防省は軍事衛星通信サービスを民間企業Paradigm Secure Communications
から購入。
¾ ParadigmはSkynet 5打上げ(2005年)に先立ち、Skynet 4衛星群および地上設
備を運用。
¾ 契約(2018年まで)は25億ポンド。
— 50%以上のSkynet 5キャパシティを国防省に提供することを保証。
Ⅶ-1 イギリスのスカイネット5計画
58
・Galileo Joint Undertaking
(事業運営会社選定、事業監視、
・衛星4機及び地上インフラの開発
・軌道上での実証実験(2005~2006年) 打上げ段階に向けた準備)
・ESA/ECによる資金供出
・実証衛星の打上げ(2005年末)
2008年以降
予算21.5億ユーロ
官
・ユーザニーズの把握
・サービス運用開始
運用段階
・地上インフラ施設の整備。
・衛星26機の開発・製造・打上げ。
2006~2007年 配備段階
予算12.5億ユーロ
2002~2005年 開発実証段階
事業内容
を設立。(民間資金2/3、官1/3)
・PPP事業(民間100%出資の事業運営会社
の開発
・ESAを中心とした衛星・地上インフラ
官民連携
役割分担
(シー・エス・ピー・ジャパン調べ)
投資回収、借金返済
・サービス・ライセンス収入による
事業運営。
・ガリレオ事業運営会社による
民
— ガリレオ事業運営会社は20年間商業利用する権利を得る。(ガリレオの使用権を無償で得る)
— 運用段階で十分な利益水準が達成できない場合は公共セクターが運営会社に赤字補填する予定。
¾ 2008年に一部サービス開始、2011年にフルサービス。
— 民間2/3負担の10%は企業の出資金、90%は商業銀行及び欧州投資銀行(EIB)からの借入金。
¾ 開発実証の12.5億ユーロはEUとESAが折半。
¾ 配置段階のコスト21.5億ユーロは政府が1/3、民間が2/3負担。
z 開発⇒運用に移行するに従い、官の支出が減り、民間の投資が増す仕組み。
¾ 開発・打上げ費(地上施設を含む)は34億ユーロ。
z 欧州民生用衛星ナビゲーションシステム
Ⅶ-2 EUのガリレオ計画
59
(2)電源の重要性
・ 被害が大きい地域からの災害情報が伝わらなかったことが指摘されている。災害発生の
事実をまず伝えることが、救援活動や二次災害の防止のために重要である。災害発生直
後、短時間でも衛星通信の電源が確保され情報を伝えることができれば、迅速的確な救
援が行えると考える。実際、震源地近くでも市町村役場の建物には倒壊などは無く、電源
装置や通信機器に重大な被害は発生していなかった。」
・ ほとんどの通信設備は庁舎等の施設内に設置されていることから地震の規模が大きくな
ればなる程、何らかの障害を被るか、庁舎内で操作できなくなる可能性は高い。したがっ
て庁舎内の衛星通信設備の他に通話機能のみの単機能であっても持ち運びができる衛
星通信機器を各自治体が保有し、被災地の内外からも使えるようにする必要がある。
「6 まとめ
(1)通信の確保
・・・・
・ 災害時には市町村と県庁の間の通信が急増すると予想される。地域衛星通信ネット
ワークでは、県庁局のモデムの数により同時に通信できる回線数が決る。そのため広域
災害が発生した場合には、地域衛星通信ネットワークを使っても県庁との通信に支障をき
たす場合が予想される。また県庁が被災した場合には、電話機や交換機の状況によって
は県庁局の性能が制限される事態になることも考えられる。この様な事態を想定した広域
災害時の通信計画を策定するべきである。
(「新潟県中越地震発生直後の地域衛星通信調査報告書」(平成17年3月 財団法人自治体衛星通信機構)より抜粋)
Ⅷ-1 新潟県中越地震の教訓
60
Orbview 3 (1m/4m)
Quickbird (0.61m/2.44m)
ORBIMAGE
DigitalGlobe
(パンクロ/マルチ)
Satellite
Ikonos (1m/4m)
Company
Space Imaging
$500M(2004/09~)
NextView
not selected
WorldView (0.50m/2m)/2006年
$500M(2004/09~)
Orbview 5 (0.41m/1.64m)/2007年
(シー・エス・ピー・ジャパン調べ)
Min. $72M (2003/01~)
Min. $27.6M (2004/03~)
ClearView
Min.$120M (2003/01~)
単なる民間からの画像購入という枠を超えたプログラム。NGAのassure accessや
priority taskingをより強く位置付けると共に、次期高性能リモセン衛星の開発に
NGAが関与するようになる。民間側は次期高性能リモセン衛星の開発資金として
本契約を利用することができ、競争力の向上を図ることが可能となる。契約は4年間
で$500M。
NextView
NGAの商用高分解能リモセン画像購入計画。政府窓口のNGA一本化。ある程度
のプライオリティ権をNGAが所有。期間は5年間(3年+オプション1年×2)。額は3年
間の最低購入保証額。最大$500M。安定的需要を提供することで官民のパート
ナーシップ関係を強化すると共に、米リモセン産業の国際市場における圧倒的競争
力を確立することを目的とする。
ClearView
-National Geospatial-Intelligence Agency (NGA)の支援策-
Ⅷ-2 米国のリモセン産業支援プログラム
61
¾ XM Satellite Radio及びDirecTVはFEMA及びRed Crossに対し、ハリケーン関係
の情報をfirst responder及び被災地の住人に24時間休み無く提供する専用チャ
ンネルを用意した。
z直接衛星放送及び衛星ラジオ
¾ PanamSat、New Skys Satellite、Intelsat、SES Americom等の大手固定衛星通信
サービス企業はいずれも、 National Guard、 American Red Cross、FEMA、銀行、
地元企業などに対し、通信回線を無償で提供した。
z固定通信
¾ 移動体通信は地上通信系に依存することなく、軌道上の衛星と直接通信が可能
である。衛星電話会社のIridium及びGlobalstarは、National Guard、 American
Red Cross、FEMA、携帯電話会社、ユーティリティ会社、報道会社などに端末を
無償或いは原価で提供した。。また、Inmarsatは端末及び通信回線を無償で政
府関係者に提供した。
z移動体通信
(出典:Satellites As Critical Infrastructure Presentation, Satellite Industries Association)
米衛星産業協会(SIA)は2005年末に議会に対し、
ハリケーン「カタリーナ」による災害の復興に対する衛星通信の貢献に
ついて次のように述べていた。
Ⅷ-3 ハリケーン「カタリーナ」の被害に対する米衛星産業界の対応
62
1988
1996
2000
2004
1992
1987
1990
アルメニア
モンゴル
モンゴル
モルディブ
ラオス
ネパール
グルジア
地震
森林火災
寒波
津波
台風
洪水
地震
種 別
205.00
17.13
8.75
4.70
3.02
7.28
17.00
被害額
(億$)
22.57
8.93
9.07
7.53
11.28
28.51
77.38
GDP
(億$)
908%
192%
96%
62%
27%
26%
22%
災害被害
/GDP比
(注)1.ルーベンカトリック大学(CRED)資料、世界銀行資料をもとにアジア防災センター作成
2.GDPは、災害発生前年のもの。ただし、アルメニアについては旧ソ連から独立後の1990年。
3.インド洋津波については、2番目がスリランカで、災害被害/GDP:7.5%(被害額:15億$、
GDP:200.55億$)
発生年
国 名
(1960~2004年。アジアの上位7位まで)
自然災害による経済損失(対GDP比)
- 自然災害は社会の安定、国家の安全保障への大きな障害となっている
- 一度の自然災害が一国のGDPを上回る経済被害をもたらすこともある
(宇宙利用シンポジウム2005「防災と宇宙」(17.11.7)資料より抜粋)
Ⅷ-4 自然災害による経済損失
63
(シー・エス・ピー・ジャパン調べ)
● 今後はレースとして「Xプライズカップ」が2007年から開始される予定であ
る。また、ホテル王として有名なロバート・ビゲロー氏は、膨張式宇宙ホテ
ル「ノーチラス」に建設することを計画している。更に、同氏は「ノーチラス」
への輸送機開発を促進する手段として、「アメリカズスペースプライズ」を
打ち立てた。これは5人乗りで高度400kmに到達し、60日以内に再使用で
きることなど、「アンサリXプライズ」よりも条件は厳しい。2010年1月10日
までに2回の飛行を実証することを要求されており、賞金は5000万ドルで
ある。
● 一方、Xプライズ財団が提供する「アンサリXプライズ」が民間宇宙旅行を
実現するための宇宙船の開発を促すきっかけとなった。これは、3人乗り
の有人宇宙船を高度100kmまで上げて安全に帰還させることを2週間以
内に二度行うという条件を2005年1月1日までに最初に満たしたチームに
1000万ドルが授与されるというものであった。2004年9月29日及び10月4
日に米スケールド・コンポジット社のスペースシップワンが飛行を成功裏に
実施し、見事賞金を手にした。
● その常識を最初に破ったのが、米スペース・アドベンチャー社の宇宙ス
テーションに5日間滞在するというサービスだった。同サービスを利用して
2001年4月に米国人のデニス・チトー氏が史上初の民間宇宙旅行を成し
遂げた。
● 航空機を利用して宇宙旅行最大の特徴である無重量状態を数十秒体験
できるサービスが一般消費者向けに提供されてきたが、宇宙に行けるの
は特殊な訓練を積んだ人だけであり、宇宙旅行は遠い将来の話とされて
いた。
Ⅸ-1 米国宇宙旅行ビジネスの動向
64
対価
仕様提示
対価
仕様提示
委託研究
資金
Space Act Agreement
研究リソース
ベンチャー等
大手宇宙企業
ベンチャー等
主として
大手宇宙企業
大学・研究機関等
企業等
管理・監督
連携
(運営委託等)
Xプライズ財団等
懸賞金運営者
協賛金
対価
免税等優遇措置
投資家・協賛企業
懸賞金
対価
ニーズ提示
対価
ニーズ提示
研究資金
免許発給
規制
企業誘致
宇宙港等施設誘致
宇宙旅行機開発企業等
Centennial Challenges SBIRなどの発注
産業育成(新)
COTS
サービス購入
顧客(新)
製造発注
研究
NASA
法制度・
基準整備
FAA宇宙輸送室(OST)
DOD
産業誘致・
雇用確保
州政府関係
空軍等の実利用
(サービス購入顧客)
DARPAなどの
研究
Ⅸ-2 米国宇宙ベンチャーと公的機関等との関係
65
¾ 2004年商業打上げ法律改正の注目すべき点
-立法に当たり、議会は新興ベンチャーを含む複数企業の公聴会を積極的に実施
-未実証技術に配慮した、段階的・柔軟な立法(免許申請前でもテスト飛行許可、改正法施行後8年間
は安全規制に関する新規立法を凍結、技術進歩を考慮し機体の定義を3年後に見直し等)
-産業界の予測可能性に配慮し、年限を明示した行政(法整備)ロードマップを提示
-インフォームド・コンセント方式の導入により、政府の責任を軽減するとともに、民間事業者・飛行参加
者に自己責任に基づく実施の道を開いた
1984年:商業打上げ法(Commercial Space Launch Act (CSLA) 制定
1988年:CSLA改正(商業打上げ事業者のリスク軽減措置及び政府との損害賠償請求権の相互放棄)
1998年:CSLA改正(適用対象を再使用型ロケットに拡大)
2000年:有人を含む民間の再使用型ロケット(RLV)打上げの許諾に関する法律制定
2004年4月1日:スケールド・コンポージット社に初のRLV打上げ免許を発給
2004年4月8日:同社のスペースシップ・ワンが民間初の有人宇宙弾道飛行に成功
2004年6月17日:カリフォルニア州モハベの離発着地に宇宙港免許を発給
2004年6月21日:4月のフライト成功によりマイク・メルビル氏を商業宇宙操縦士に認定
2004年10月4日:スペースシップ・ワンが「アンサリXプライズ」の条件を満たし$20Mの懸賞金を獲得。
操縦士のブライアン・バニー氏を商業宇宙操縦士として認定。
2004年12月23日:CSLA改正(商業弾道宇宙飛行ビジネスへの対応)
2005年2月17日:同改正に基づく宇宙飛行参加者に対するガイドライン策定
2005年12月29日:改正法の実施規則草案を発表、2006年夏までに策定する予定。
Ⅸ-3 宇宙旅行ビジネスに対応した米国法制度
66
(シー・エス・ピー・ジャパン調べ)
z NASAと相手先の間で資金の移動が無いSpace Act Agreement(nonreimbursable)がCRADAに非常に近い
形態である。同AgreementのReimbursableは相手先がNASAの施設利用料、職員の費用などをNASAに支払う
内容になっているものである。
z さらに連邦政府の研究支援プログラムは、各省庁によって運用が異なっている。例えばNASAやFAA(連邦
航空局)は、独自の調達法や民間企業との援助関係を持つことが法律で認められており、政府機関全体の基
準に従う必要がない。そのため、NASAではSpace Act Agreementが官民共同研究のツールとして主に利用さ
れている。
z 研究成果の帰属については、バイドール法が適用されないが、多くの場合CRADA取 り決めの中で参加企
業や大学に研究成果の特許権を認めている。CRADAの成果に対する特許、著作権は、それを実際に生み出
した参加企業、大学、政府研 究所に帰属し、政府機関が特許を持つ場合でも、非政府機関参加者は、その使
用権を持つことが可能となっている。
z 1986年連邦技術移転法(the Federal Technology Transfer Act of 1986)が制定され、国立研究所が、他の連
邦政府機関、州・地方自治体政府、財団、大学、民間企業などと協力し、研究活動を行うことができる仕組み
CRADAが作られた。基本的にCRADAは同じ目的を持つ機関が共同研究を行なえるメカニズムである。この
場合、政府機関が提供するのは、研究所、生産施設、人的・施設・機器などのリソースであり、資金は提供しな
い。一方、民間企業や大学側は、資金、人材、サービス、施設・機器、 知的財産、その他を提供する。CRADA
は政府が資金を給付しないため、パートナーは、政府調達ルールに従う必要がなく、柔軟な協力体制が築ける
と いう特徴がある。
Ⅹ-1 CRADAs (Cooperative Research and Development Agreements)
67
サブシステムと技術のデモンス
トレーション
年間技術開発競争
少年から年配の方をターゲット
にMSBの関心と興味を刺激し、
推進することを目的とする
Keystone Challenges
-To address technology priorities
Alliance Challenges
-To leverage partnerships
Quest Challenges
-To promote science, technology,
engineering and math outreach
ロゴデザイン、SF大賞
テーザー用材料の開発
無人飛行機
有人軌道飛行
例
N/A
2-4件
3-5件
1-2件
年間
最大1Mドル
100K-250Kドル
250K-3Mドル
10-40Mドル
1件あたりの賞
金額
•http://exploration.nasa.gov/centennialchallenge/cc_index.html
低価格のロボットや有人ミッショ
ン
目的
Flagship Challenges
-To encourage major private space
missions
カテゴリー
1.歴史的にみて賞金レースが技術開発に貢献していることや、おそらくX-Prizeなど民間での活動などを考慮し、
議会等でNASAにおける賞金レースの設立を待望する声が強まった。
2.これらを受けて、2005年に民間企業等の協力も得つつ、賞金制度として「Centennial Challenges」をNASA
が開設した(次頁参照) 。
3.本制度では、下表のとおり、4カテゴリー(Flagship Challenges、 Keystone Challenges 、 Alliance
Challenges 、Quest Challenges)が設定されている。
4.現在、「 Alliance Challenges 」のみが募集中(次々頁参照)。
<経緯>
Ⅹ-2 NASA Centennial Challenges①
68
•http://exploration.nasa.gov/centennialchallenge/cc_index.html
目的
• NASAビジョンに取り組む。
地球での生活を改善する。
地球外に生活圏を拡大する。
未知の生命を見つける。
• 探査を強調することでNASAの対象範囲を広げる。
• 諸経費を最小にし、産業投資を拡大する。
ゴール
• 通常の政府の調達方法ではできないイノベーションを刺激する。
• 新しいコミュニティーに広げることにより、NASAの研究を豊かなものにする。
• 伝統的な技術開発の障害への取り組みを促進する。
• プログラム予算に勝るリターンを達成する。
• 国民を教育し、鼓舞し、動かす。
コンテストの計画
• NASAは宇宙探検と進行中のNASAプロジェクトに資する技術的領域におけるイノベーションと競争
を刺激するために現金を用意。
• この計画は過去から現在に及ぶ賞金レースの経験を基に設定。
NASA web から抜粋
Ⅹ-2 NASA Centennial Challenges②
69
Spaceward Foundation
Florida Space Research Institute (FSRI)
California Space Education and Workforce Institute
Spaceward Foundation
Volanz Aerospace Inc./Spaceflight America
California Space Education & Workforce Institute (CSEWI)
2008 Telerobotic Construction
Challenge
Moon Regolith Oxygen
(MoonROx) Challenge
2007 Planetary Unmanned Aerial
Vehicle Challenge
2007 Telerobotic Construction
Challenge
2006 Astronaut Glove Challenge
2006 Regolith Excavation
Challenge
2006 Tether Challenge
2006 Beam Power Challenge
Personal Air Vehicle Challenge
2005 Tether Challenge
2005 Beam Power Challenge
Late 2008
1-Jun-08
Oct-07
Aug-07
Mar-07
Oct-06
Aug 4-6, 2006
Aug 4-6, 2006
Jun-06
22-Oct-05
Oct 21-23, 2005
complete
complete
open
open
open
open
open
open
open
open
open
Status
None/$50k purse
combined with 2006
None/$50k purse
combined with 2006
TBD/$250k
TBD/$200k
TBD/$200k
TBD/$250k
TBD/$250k
TBD/$250k
TBD/$250k
TBD/$250k
TBD/$250k
Winner/Purse
http://exploration.nasa.gov/centennialchallenge/cc_challenges.html
The Spaceward Foundation
The Spaceward Foundation
CAFE Foundation
The Spaceward Foundation
The Spaceward Foundation
Alliance Partner
Challenge Name
Challenge Date
・Alliance Challenges-To leverage partnerships で募集中の課題
Ⅹ-2 NASA Centennial Challenges③
70
(「新産業創出の起爆剤・日本版SBIR」野村総合研究所社会産業研究本部および米国中小企業庁SBIRのHP
http://www.sba.gov/sbir/ より改変)
4. NASA
NASAは年に1度のSBIRプログラムを募集する際、NASAの各センターから解決すべき技術課題を集め、航空・
宇宙探査・宇宙科学の3分野で20~30の技術テーマを提示している。
3.特徴
下記の3点セットを提供することが大きな特徴
•ニーズ
研究開発トピックスの提示
•資金
フェーズⅠで最大7万ドル、フェーズⅡで最大60万ドルの助成金(NASA)
•市場
開発完了した製品/システムは、競争入札無しにNASAプログラムへの採用を保証
2.目的
SBIRの目的として下記の4点が挙げられている。
•アメリカにおける技術革新を刺激すること
•中小企業の能力を活用して連邦政府のR&Dニーズを満たすこと
•技術革新分野におけるマイノリティーである個人の参加を促進すること
•連邦政府の研究開発成果の商業化を増加させること
米国中小企業庁の監督・管轄の下、NASAをはじめ農務省や国防省などに中小企業や少数民族などの保護育
成のため、SBIRプログラムの実施が義務付けられている(1982年に創設され、米国政府機関全体で2002年度約
15億ドル)。
1.背景
Ⅹ-3 SBIR(Small Business Innovation Reserch)①
71
フェイズ2ま
での成果の、
NASAプログ
ラムへの適
用開発
フェーズ3
(商業化)
最長24ヶ
月間
最長6ヶ月
間
契約期間
開発完了した製
品/システムは、
競争入札無しに
NASAプログラム
への採用を保証
最大60万ドル
最大7万ドル
契約額(投資額)
フェイズ2を
成功裏に終
了した企業
フェイズ1を
成功裏に終
了した企業
特になし
(材料メーカ
からソフトハ
ウスまで
様々な業種
の企業が応
募)
提案資格
(「新産業創出の起爆剤・日本版SBIR」野村総合研究所社会産業研究本部および
NASA SBIRのHP:http://sbir.gsfc.nasa.gov/SBIR/SBIR.html より改変)
実製品/実
システムの
研究開発
実現性およ
び技術メリッ
トの検討
フェーズ1
(芽出し研究)
フェーズ2
(実用化研究)
目的
フェーズ
○ NASAのSBIRの枠組み
前年度にフェイズ1を実施した
310件から297件の応募があ
り、135件を採択し、契約総額
は約8100万ドル(約89億円)
@66百万円/件
2149件の応募から290件を
採択し、契約総額は約2020
万ドル(約22億円)@8百万円/
件
NASA研究者/
技術者が統一基
準に基づき評価
した結果から、本
部担当部署で最
終選択
フェイズ1にほぼ
同じ
2004年採択実績
選定
Ⅹ-3 SBIR(Small Business Innovation Reserch)②
72
XI
(%)
0.0
10.0
20.0
30.0
40.0
50.0
23.3
女
女
女
女
8.5
20代
男
13.3
女
女
50代
男
女
10代
男
12.2
全国
調査地域
女
40代
男
19.1
22.2
15~59才の男女個人
訪問
30代
男
12.2
24.6
インターネット調査
調査対象
10代
男
16.7
32.8
東京駅を基準とした30km圏内
ネット
男
21.4
30.2
42.9
15~59才の男女個人
訪問
男
15.8
25.2
40.0
訪問面接調査
訪問 ネット
23.0
29.8
<はいと答えた人の割合>
女
21.4
女
15.8
ネット
30代
男
20.8
2005.2.10~2.13
2005.2. 3~2.13
調査期間
20代
男
22.8
女
20.0
女
30.8
50代
男
29.8
1000
630
サンプル数
40代
男
28.0
①はい ②いいえ
性別では女性より男性の認知度が高い
年代では男性では50代、10代での認知度が高く、女性では40代、50代の認知度が高い。
9
9
問. あなたは宇宙航空研究開発機構(JAXA) という名前を聞いたことがありますか?
JAXAの認知度は約23%
9
-宇宙事業の国民意識に関わる調査(2005.3.31 JAXA調べ)-
JAXAの認知度
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