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1-1 ワーク・ライフ・バランスとは
Work Life Balance 第1章 ワーク・ライフ・バランスの必要性 1-1 ワーク・ライフ・バランスとは ワーク・ライフ・バランスとは? WLBテキスト1_1 Point! 「バランスをとる」こと? •ワーク・ライフ・バランスとは仕事と私生活の好循環である •私生活の充実が、斬新なアイデアや幅広いネットワークとなり、付加価値 の高い商品・サービスを生む P7 家庭 1 「時間配分」を変えること? 仕事 家庭 私生活 仕事 仕事 ワーク・ライフ・バランスは仕事と私生活の好循環 ぬぉぉ 家庭 私生活 仕事 仕事 配分を変えて うまくやってるよ 私生活が充実することで仕事がはかどり、仕事の調子がいいとプライベートも楽しめる というように、仕事と私生活がお互いに刺激となり、よい影響を与え合うような「仕事と私 私生活を 充実させる! バランス とってます! なんとか! 生活の好循環」こそが「ワーク・ライフ・バランス」です。私生活を犠牲にして毎日残業、休 仕事は 適当にして… 日も出勤、家族や友人、恋人と一緒に過ごす十分な時間をとれない上に、自分の時間もほと んどない…。そんな生活が続くことが、本当に仕事で成功する近道なのか、考えてみましょ う。 2 どちらも少し、違います! 斬新なアイデアと幅広いネットワーク P8 P9 終わらないよぅ 私生活が充実しているときは、仕事をしている時間も楽しくありませんか? 例えば新し ノルウェー しい刺激を受けたことで今まで思いつかなかった視点やアイデアが生まれます。 パパといつ遊べるの? 先週から 会ってないよ… 仕事の 成果は 最低クラス あーもう 疲れた… 3 また、私生活の充実は幅広いネットワークをつくり出します。企業は、そのように視野が 他国A 他国B 付加価値の高い商品やサービスを提供するために アイデアがわき、 仕事が効率的に 終わり評価 UP ! 米国 した仕事と幸せな私生活を生み出すライフスタイルの提案となるだけではなく、キャリア 残業時間世界一! 広く、豊かなネットワークを持つ社員に期待しています。ワーク・ライフ・バランスは充実 3 2 1 い趣味ができたとき、楽しい予定があるときなど仕事へのモチベーションも上がり、生活に新 アップのきっかけでもあるのです。 れなのに そ ルクセンブルク うそ… ショック 家庭や 私生活 仕事 視野の広がりで 企画力 UP ! 家庭参画が増え、 夫婦関係満足度 UP。 心も身体も健康に。 外部との交流で 人脈も広がる! けんさん 自己研鑽の時間も。 今、日本は仕事の成果が時間に比例する「定型業務」から、情報やアイデアがカギを握る 「創造的業務」へシフトしています。つまり「早く・安く・大量に」という仕事のやり方は通 用しなくなっているのです。にも関わらず、 「ライフ」の時間をまったく確保できず、アイデ P15 P17 ワーク・ライフ「シナジー」 (相乗効果)を実現することが求められます! 願 退職 アの引き出しは空っぽという状態の人が大勢集まって「ワーク」をしているのが、今の日本 企業の現状です。この状況から抜け出すために、まずやるべきなのは「働き方の見直し」で 両立して WLB 仕事続行! 「シナジーを生み出そう」と思ってもなかなか生まれないもの。まずは日常 実現の 生活での気づきを簡単に書き留めることなどから始めてみましょう。 コツ す。一人ひとりが「ライフ」の時間を確保して有意義に使うことで「ワーク」におけるアイデ ア・創造性が生まれます。付加価値の高い商品やサービスで勝負する時代だからこそ「ワー ク・ライフ・バランス」が今、必要なのです。 6 両立は 無理そうだし よろしく… 仕事 7 P19 Work Life Balance 第1章 ワーク・ライフ・バランスの必要性 社会のワーク・ライフ・バランス 1-2 長時間働いても 生み出す付加価値は低い 日本は「仕事ばかり」の生活で ワーク・ライフ・バランスに満足していない ● 長時間労働の「成果」は? Point! 1 OECD 加盟諸国の労働生産性(2009 年/ 33 か国比較) •長時間労働を行っても生産性は上がらない (単位 : 購買力平価換算 USドル) •決められた時間でいかに成果を上げるかという発想の転換が必要 世界一残業が多く、世界一生産性が低い日本 WLBテキスト1_1 ルクセンブルク 1 ノルウェー 2 米国 3 アイルランド 4 ベルギー 5 フランス 6 イタリア 7 オーストラリア 8 スペイン 9 オーストリア 10 スウェーデン 11 英国 12 オランダ 13 ドイツ 14 スイス 15 カナダ 16 家庭 フィンランド 17 デンマーク 18 家庭 家庭 仕事 ギリシャ 19 仕事 アイスランド 20 仕事 イスラエル 21 配分を変えて 日本 22 うまくやってるよ 配分を変えて ニュージーランド 23 スロベニア うまく 24 やってるよ WLBテキスト1_1 ほかの国の人々が家族や恋人と過ごしたり、趣味を楽しんだりしてリフレッシュし明日 への活力を生み出している時間帯も、職場に居残っている日本のビジネスパーソンたち。 P7 P7 「残業もいとわずバリバリ働いている」という一見頼もしげな姿にも関わらず、 「実はそれほ 家庭 ど成果が上がっていない」という現実があります。 仕事 家庭 仕事 右ページにもあるように、世界でもトップクラスの長時間労働の国・日本は、 2009 年の ぬぉぉ 調査では従業員1人当たりの利益(付加価値額)を表す「労働生産性」が、調査した 33 か国 ぬぉぉ のうち、実に 22 位と最低クラスなのです。これが、これまで家庭を顧みず身を粉にして仕 事にまい進してきた日本のホワイトカラーの悲しい現実です。なんとか! バランス とってます! なんとか! 2 バランス とってます! 長時間労働に対する意識に変換を 0 では、今の仕事優先の働き方に日本人は満足しているのでしょうか? 答えは「NO」です。 と、 「ワーク・ライフ・バランスにまったく満足していない割合」 は 16%で、日本人が最下 P8 P8 終わらないよぅ 位でした。つまりワークにしか時間を使え れなのに ルクセンブルク ていないことへの閉塞感が広がっているの ノルウェー 仕事の ルクセンブルク 成果は ノルウェー 最低クラス P9 2 1 P15 りの生産量のことであり、単位労 働力当たりとは、就業者1人当た り、あるいは時間当たりなどのこ とである。 つまり日本は、 時間はかけているが 生み出す付加価値は低い国 80000 100000 120000 出所:公益財団法人日本生産性本部発行 「労働生産性の国際比較 2010 年版」より作成 ワーク・ライフ・バランスに まったく満足していない割合 1 日本(16%) 家庭や私生活 仕事の 成果は 最低クラス 2 オーストラリア(11%) 会ってないよ… あーもう 疲れた… P17 4 カナダ(9%) 勉強したいことが あるのに最近ちっとも 学べてないなぁ 5 スペイン(8%) 5 米国(8%) 8 ドイツ(7%) WLB 実現の コツ P17 P15 2 ロシア(11%) 5 ギリシャ(8%) あーもう 疲れた… 残業続きで疲れる… 両立は 無理そうだし 退職 願 退職 8 負のスパイラル (利益)のこと。単位労働力当た うそ… ショック 米国 るのです。 従業員1人当たりの付加価値額 先週からパパといつ遊べるの? 会ってないよ… 先週から 3 スで個人・企業の働き方を見直す必要があ 60000 22 位 労働生産性とは… パパといつ遊べるの? 残業時間はトップクラス 仕事の成果は最低クラス そのためにも、ワーク・ライフ・バラン 40000 仕事 れなのに そ 他国A く風土をつくることが求められます。 残業時間世界一! はなく、時間当たりの生産性で評価してい 他国B 他国B や時間で自分を磨き、企業は時間の長短で 他国A これからは、個人はオフィス以外の場所 うそ… ショック 米国 考えても大きなマイナスになります。 残業時間世界一! く社員を抱えることは、コストの面だけで P9 そ 3 で長時間労働をして残業代を積み重ねてい 2 1 です。企業にとっても、生産性の低い働き方 20000 日本の労働生産性は ● 仕事ばかりしている私たち 世界 24 か国、1万 4000 人を対象にした「仕事と家庭の調和に関する世界意識調査」による 終わらないよぅ 韓国 25 チェコ 26 ハンガリー 27 ポルトガル 28 スロバキア 29 トルコ 30 ポーランド 31 チリ 32 メキシコ 33 OECD 平均 118230 106217 98773 94767 88141 84978 83456 81733 79176 78690 78371 78275 78003 77190 77017 75698 74832 74141 73854 家庭 71498 仕事 67468 65896 57561 57048 56343 53655 52366 51686 51401 48892 45818 36889 35780 75015 子供と遊べない… パートナーとの時間もない… スポーツできない… 自己研鑽の時間もない… 9 中国(6%) 出所:インターナショナル・リサーチ・インスティ チューツ(iris)による世界 24 カ国 1 万 4000 人 を対象にした「仕事と家庭の調和(ワーク・ライフ・ バランス)に関する世界意識調査」 (2006 年) 仕事しかしていない人は仕事ができない人。仕事の生産性を上げて仕事ばか りの生活を脱出しましょう。 9 両立は 9 ポーランド(6%) Work Life Balance 第1章 ワーク・ライフ・バランスの必要性 社会のワーク・ライフ・バランス 1-3 今後ますます深刻になる 労働力減少問題 Point! •少子高齢化にともなう労働人口減少が深刻化する 多様な人材が能力を発揮できる 組織になるために働き方を見直す ● 働き方の見直しが必要な理由 現 在 •育児・介護問題などに対応する柔軟な働き方が求められている 24 時間態勢の人 1 10 年後 時間制約の ある人 労働人口の減少が深刻化 現在、日本は本格的な少子高齢化という大きな変化の時期を迎えています。 少子高齢化は現役世代の介護負担を増加させる可能性があります。若い世代は兄弟姉妹 も少なく、昔のように親の介護を分担していくことも難しいでしょう。そうなった場合、従 来の働き方のままでは、仕事と私生活の両立は難しく「親の介護」のために会社を辞めざる を得ない人が増えてくると考えられます。これではいくら企業が 10 年、20 年後の管理職候 補を雇用したつもりでも、元も子もありません。 このように、働き手の減少、さらには介護と仕事の両立の必要性の増加という現実を目の ・24時間態勢の仕事人間が8割 しかし時間当たりの生産性は低い。 ・何らかの制約を持った8割の人が モチベーションダウン。 ・時間制約のある人は モチベーションダウン。 ・難しい仕事は時間制約のない若手に 回され、 さらに長時間労働が進む。 そのため、2割は過労死寸前状態に。 前にして、優秀な人材の確保と流出を防がなければならないという企業の問題は深刻に なってきているのです。 ワーク・ライフ・バランスが進むと… 2 人員補充 柔軟な働き方の提案を こうした社会と企業の危機的な状況を回避するために、早急にワーク・ライフ・バラン スの考え方を浸透させる必要があります。これまでの個人の事情を加味しない働き方から、 社員一人ひとりの「人生の段階」に沿った働き方に見直すことが求められているのです。 企業は、男性、女性を問わず、育児、介護などの事情を抱える社員に、仕事の場で安定し て能力を発揮して活躍してもらえるように、社員が柔軟な働き方を選択できる風土とシス テムを取り入れることが重要です。それは、まさに社会全体からワーク・ライフ・バランス の必要性を求められているともいえるでしょう。 また、こうした取り組みにより、多様な経験をしている社員が企業の中で働き続けること ・仕事内容・評価方法の見直しを した上で無駄なコストを見直す。 ・多様な人材が 能力を発揮できる組織。 ・働き方の見直しで浮いたコストを 採用費用に回すことで人員補充もできる。 でさまざまな視点を持ったアイデアが生まれ、企業力が上がり、ひいては社会貢献にもつな がっていきます。 WLB 実現の コツ 10 限られた一部の社員のためではなく、男性を含めた全社員の働き方の見直し が必要です。 11