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28号 - 北摂里山博物館

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28号 - 北摂里山博物館
28
クヌギで吸蜜中のカブトムシ 撮影・笹井隆邦
も く じ
生物多様性って何? 環境体験学習
その保全対策は・・・・・足立 勲 1
̶小学校低学年 生活科の実践̶ ・・茶谷和子
ナマズ石に破壊された森林・・・・・小舘誓治 2
こんなものみーつけた・・・・・森本敏一・森田 至
宝塚の両生類・・・・・・大沼弘一・足立 勲 5
宝塚の山 (4)・・・・・・・・・・・森田 至 7
カワラサイコ調査・・・・・・・森本敏一・吉田幸子 15
教師のための環境体験学習 2013年度事業報告 ・・・・・・・・・・・・・・・・17
先生方の声・・・編集部 9
おもいで日記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
中所ゆう子・松田和美・菊田 穣
11
13
生物多様性って何? その保全対策は
足 立 勲
どんな新しい用語でも市民権を得る頃になると、勝
を策定、公表した。冒頭に「生物多様性とは、一つひ
手解釈がまかり通り、とんでもない意味に使用される
とつに個性がある命が、網の目のように様々な関係で
こともある。みなさんと一緒に一度整理しておきたい。
つながっていることをいいます。長い歴史の中で育ま
「生物多様性」という用語は 1985 年にアメリカで
れてきたこれらのつながりが、いま、緑地の減少や里
W.G. ローゼンによって造語されたという。1993 年に
山の荒廃などにより年々失われつつあります。このガ
は生物の多様性に関する条約が発効している。日本国
イドブックは、こうしたことを踏まえ、たからづか戦
内法として、生物多様性基本法が 2008 年に公布、施
略に基づき、市民・活動団体、事業者、市の各主体が
行された。最近ではしばしば生物多様性という用語を
連携・協力し、生物多様性の保全に向けて取り組むた
目にするが「いったい何のこと?」という声もまだ多
めに配慮すべき指針を示しています。」と述べている。
い。
内容は宝
生物多様性国家戦略の中で、『生物多様性条約では、
対象とする生態系及び群落、対象とする希少生物、対
生物多様性をすべての生物の間に違いがあることと定
象とする管理対象生物、市民・活動団体・事業者・市
義し、生態系の多様性、種間(種)の多様性、種内(遺
の配慮指針などからなっている。具体的には外来生物
伝子)の多様性という3つのレベルでの多様性がある
対策が多くを占めているが、目すべきは野生生物の保
としています。』と表現している。最近では、例えば
護管理にも言及するなかで、管理対象生物の管理(有
デジタル大辞泉によると「いろいろな生物が存在して
害鳥獣対策・外来生物の拡散防止)の項目では在来野
いるようす。生態系の多様性、種における多様性、遺
生生物であるニホンジカを想定した対策についても述
伝子の多様性など、各々の段階でさまざまな生命が豊
べている。
かに存在すること。」と、一般向けにわかりやすい解
我が自然保護協会も従来から生物多様性保全に主導
説も見られるようになった。
的に貢献してきているが、今後は一層深く関わること
宝塚市では戦略はできても絵に描いた餅にならぬよ
が多くなってくるであろ。
う 2014 年 3 月「宝
市における取組方針、課題、基本施策、
市生物多様性配慮ガイドブック」
ミヤマアカネ有数の生息地 逆瀬川
1
ナマズ石に破壊された森林のその後
∼森生いろいろ∼
小舘誓治 ( 兵庫県立大学 自然・環境科学研究所 / 兵庫県立人と自然の博物館)
ナマズ石とは?
六甲山地にある通称「ナマズ石」を皆さんご存じだ
ろうか? 1995 年 1 月 17 日に発生した兵庫県南部地
震によって動いた石である。石といっても約 8m×6
m×4m の巨大なもので、重さが 500 トン以上あると
推定されている。この石は六甲花崗岩に属する黒雲母
花崗岩でできていて全体が皮をむいたジャガイモのよ
うな形をしている(写真1)。
ナマズ石は、芦屋市奥山地域の県道 334 号線(奥
山精道線)沿いの弁天岩近くの斜面にある(写真 2)。
ちなみに、この石に接するようにハイキング道が通っ
写真2.県道から見たナマズ石と弁天岩の位置(2014 年
2 月撮影)
ている。
写真1.地震で動いた通称「ナマズ石」(2009 年 9 月撮影)
ナマズ石が元あったところと転がったルート
ナマズ石が元あった場所は、現在ナマズ石がある位
写真3.ナマズ石が転がった斜面(2009 年 3 月撮影)
置から約 300m 上方の山頂部であったと推定される。
したがって兵庫県南部地震があり、山の斜面上に幅約
ナマズ石が破壊した森林
10m で長さが約 300m の帯状の森林破壊地が 1 日で
ナマズ石に破壊される直前の森林はどのようなもの
できたのである。芦屋川を挟んで対岸からその斜面を
であっただろうか?周辺の樹林や破壊されたところに
見ると、ナマズ石が元あったと思われる崖地とナマズ
残された幹などから推定してみると、高さ 10 ∼ 15m
石のある位置、そしてそれらを結んだ(谷部を通って
程度のアカマツ林、コナラ林、オオバヤシャブシ林が
転がっていった)ルートが、何となくわかる(写真 3)。
発達していたものと思われる。
2
幹に穴があいている木
2000 年くらいからであったか、いろいろな幹で、
おが屑を丸く固めて押しつけたようなものが見られる
ようになった。いくつも見てみると、それが昆虫の幼
虫の仕業であることが分かった。博物館の昆虫担当者
に聞くと、「コウモリガ」という蛾だそうで、幼虫が
樹幹や枝の中を空洞にしてしまうとのこと(写真6)。
後日この部分から幹や枝が折れて倒れている木をいく
つも見ることになった。
写真4.アカメガシワ林内に残る、ナマズ石に根ごと
倒されたアカマツの幹(2014 年 2 月撮影)
回復した樹林は前とは違う?
森林破壊後 2 ∼ 3 年目に植生調査を行うと、アカメ
ガシワ、タラノキ、ヌルデ、クサギ、イヌザンショウ
などの陽樹と言われる樹種が優占する低木林(植生高
2 ∼ 3m)が発達していた。また、特徴的だったのは、
ニガイチゴ、ミヤコイバラなどのトゲのある植物や、
ミツバアケビ、アオツヅラフジ、ヤマノイモ、テイカ
写真6.アカメガシワの幹に見られる穴(2013 年 11 月撮影)
カズラなどのツル植物が繁茂していた。一方で、アカ
マツの実生が多く生えていた。
ツルに絡まれて倒れたり枯れて行く木
森林破壊後 14 ∼ 19 年経った植生
森林破壊後すぐにツル植物の繁茂が見られたが、そ
だんだん樹高が高くなり森林が発達してくると、陽
の後樹木の幹がツルに巻きつかれ締め付けられている
が当たりにくくなりアカマツの個体が少なくなって
個体が多く見られるようになった。その中には、幹の
いった。またタラノキ、クサギ、ヌルデ、イヌサンショ
締め付けで枯れるものも見られたり、ツルがいくつか
ウの個体数も少なくなって、アカメガシワ林が目立つ
の個体に絡んでつながっていることで、ある個体が強
ようになった。その植生高は、森林破壊後 19 年経過
風などで揺さぶられたり、倒れたりするとそれと同じ
して 10 ∼ 12m に達している(写真5)。
く倒れてしまう個体があった(写真7)。
写真7.ツルが絡んで倒れかけたタラノキ(2009 年 10 月撮影)
写真5.樹高が 10m 以上になったアカメガシワ(2009 年
10 月撮影)
3
ここの森林は、地震で動いた巨大な石によって木々
クスノキは、ミツバアケビのツルに幹を締め付けら
がなぎ倒された。その後、植生が回復しようとしてい
れている一方で、そのツルを幹の中に取り入れてし
るが、蛾の幼虫の影響を受けたり、ツル植物などの影
まっていたのである。クスノキも負けていない。
響によって再び木が倒されることになっているわけで
ある。
これからも森林の変化は続く
森林破壊後数年間は、トゲのある植物やツル植物が
ツルを飲み込んでしまう幹?
猛威をふるっていたが、20 年近く経つと、それらの
ナマズ石によって破壊された後、芽生えた樹木のう
植物もある程度少なくなり、アカメガシワなどの最上
ち、常緑樹ではクスノキ、落葉樹ではキリ、ヤマナラ
層を構成している樹木も樹高が高くなってきた(写真
シなど、個体数は少ないが大きく育ったものがある。
9)。しかし周辺の樹林の樹高に達するのにはもう少
大きなものでは、(2014 年 2 月現在で)高さ約 12m、
し時間がかかるようである。また森林破壊前のような
胸高直径が 15cm 以上になっているものがある。その
森林(アカマツ林やコナラ林、オオバヤシャブシ林な
クスノキは、常緑樹なので冬場に目立つ。冬場クスノ
ど)に戻るのかどうかも興味深い。これからも森林の
キの幹にミツバアケビのツルが絡んでいるものを見つ
変化は続き、いろいろな出来事が起こるのだろう。森
けた。よく観察してみると地面に近いところではツル
生いろいろである。
が幹に絡んでいる様子がはっきり分かるのだが、上の
方ではツルがクスノキの幹に飲み込まれてしまったよ
うに見える部分がある(写真8)。
写真9.アカメガシワ林の林内のようす(2013 年 11 月撮影)
写真8.ミツバアケビのツルに絡みつかれたクスノキの
幹(2013 年 11 月撮影)
4
宝塚の両生類
大沼弘一 ( 兵庫県自然保護協会 )
足立 勲 ( 宝塚市自然保護協会 )
はじめに
少数の生息が見られるが、宝塚市においての繁殖は確
2005 年発行の宝塚市大事典に「宝塚の両生類」( 大
認されておらず、宝塚市では絶滅の恐れが非常に大き
沼弘一 ) が発表してから概ね 10 年になる。その間に
い種である。また兵庫県では他にアベサンショウウオ・
宝塚市においては「生物多様性たからづか戦略」(2010
ハコネサンショウウオが生息している。
年 ) が策定され、このほど「宝塚市生物多様性配慮ガ
イドブック」(2014 年 ) が完成した。いよいよ戦略に
カエルの仲間
基づいた一層の保全対策が展開されることになる。そ
宝塚市において現在最も広く分布が見られる種はニ
のためには生物相の現状把握が重要であるとの観点か
ホンアマガエル・トノサマガエル・ヌマガエルで、北
ら、先ずは本誌 2013 年に「宝塚の貝類」( 東良雄、
部地域には他にニホンヒキガエル・タゴガエル・ヤマ
足立勲 ) を発表した。今年度は続いてここに両生類の
アカガエル・シュレーゲルアオガエル・モリアオガエ
現状を報告する。
ルの生息も見られる。また局所的に生息が見られる種
先述の「宝塚の両生類」( 大沼弘一、2005) を基に、
は、ニホンアカガエル・ツチガエル・カジカガエルで、
その後に明らかになった事実を加えながら、現状につ
外来生物であるウシガエルはため池や河川に広く生息
いて述べることとする。
している。兵庫県では他にアズマヒキガエル・ナガレ
現在兵庫県における両生類はサンショウウオ類 6
タゴガエル・ダルマガエルが生息している。
種、カエル類 15 種の計 21 種の生息が知られ、宝塚
市では北部地域を中心にサンショウウオ類 4 種、カエ
危険な両生類
ル類 12 種の計 16 種の生息が見られる。しかし各種
捕まえない限り特に危険な種はいないが、アカハラ
開発等による湿地の消失や用水路のコンクリート化等
イモリ・アマガエル・ニホンヒキガエルは毒を持って
に伴い両生類の生息環境は全国的にも年々悪化してい
いるので触った後はよく手を洗った方がよい。また通
るのが現状であり、宝塚市においても例外ではない。
常は触ることも禁止されている特別天然記念物のオオ
サンショウウオは小さな鋭い歯を持つため、咬まれる
サンショウウオの仲間
と大ケガをする場合がある。オオサンショウウオは強
宝塚市では現在、主に北部地域にカスミサンショウ
い夜行性を示し、昼間は石の下等に隠れているため、
ウオ・アカハライモリが生息し、ヒダサンショウウオ
生息河川では魚を手づかみする等、石の下等の隙間に
は局所的に生息が見られる。また国指定の特別天然記
手を入れないよう注意が必要である。
念物であるオオサンショウウオは波豆川及び羽束川で
▲タゴガエル 卵かい▼
▲カスミサンショウウオ
卵のう
▲モリアオガエル
の卵のう
モリアオガエル
(写真提供 小島マサ子)
5
宝 塚 市 の 両 生 類 目 録
両生綱 Amphibia
HRDB
有尾目 Caudata
サンショウウオ科 Hynobiidae
1 ヒダサンショウウオ Hynobius kimurae
山地林床に生息し、3月から4月頃、河川源流域の石の下等で産卵を行う。
丘陵地から山地の林床に生息し、2月から4月頃、森林に隣接する水田や湿地で産卵を
2 カスミサンショウウオ Hynobius nebulosus
行う。
B
B
オオサンショウウオ科 Cryptobranchidae
3 オオサンショウウオ Andrias japonicus
国指定の特別天然記念物。河川上流から中流域の水中に生息し、8月下旬から9月上
旬、主に河川上流の岸辺水中にできた横穴等で産卵を行う。
B
丘陵地から山地の主に河川や溜池の水中に生息し、産卵は4月から6月頃に行われる。
注
平地から山地の林床や草地等に生息し、3月頃にため池等に集まり産卵を行う。
C
イモリ科 Salamandridae
4 アカハライモリ Cynops pyrrhogaster
無尾目 Anura
ヒキガエル科 Bufonidae
5 ニホンヒキガエル Bufo japonicus japonicus
アマガエル科 Hylidae
6 ニホンアマガエル Hyla japonica
平地から山地の樹上や草上に生息し、5月から7月頃に水田等で産卵を行う。
アカガエル科 Ranidae
7 ウシガエル Rana catesbeiana
北米原産の帰化種 平地から山地の溜池や河川中流域に生息し、5月から8月頃に溜池
等で産卵を行う。
8 タゴガエル Rana tagoi tagoi
丘陵地から山地の谷筋の林床に多く生息し、3月から4月頃伏流水中で産卵を行う。
9 トノサマガエル Rana nigromaculata
平地から山地の林床や草地等に生息し、4月から6月頃に水田等で産卵を行う。
C
10 ニホンアカガエル Rana japonica
平地から山地の林床や草地等に生息し、2月から3月頃に水田等で産卵を行う。
C
11 ヤマアカガエル Rana ornativentris
丘陵地から山地の林床や草地等に生息し、2月から3月頃に水田等で産卵を行う。
C
12 ツチガエル Glandirana rugosa
平地から山地の河川等の水辺に生息し、6月から8月頃に水田の溝や河川で産卵を行う。
C
13 ヌマガエル Fejervarya kawamurai
平地から山地の草地や水田周辺に生息し、6月から7月頃に水田等で産卵を行う。
C
アオガエル科 Rhacophoridae
シュレーゲルアオガエル
14
Rhacophorus schlegelii
平地から山地の森林樹上や林縁の草上等に生息し、3月から4月頃に水田等で産卵を行
う。
C
15 モリアオガエル Rhacophorus arboreus
丘陵地から山地の森林樹上に生息し、5月から7月頃にため池等に張り出た樹上で産卵を
行う。
B
16 カジカガエル Buergeria buergeri
主に山地の河川に隣接する森林の樹上に生息し、4月から6月頃河川に集まり産卵を行
う。
C
和名学名について 日本産爬虫両生類標準和名は2002年10月6日日本爬虫両生類学会総会にて承認、2013年11月3日改訂された
ものである。学名については同学会のリストを使用した。。
凡例 HRDB:兵庫県レッドデータブックのランクを示す。
参考文献
・大沼弘一 (2005) 宝塚市の両生類 宝塚市大事典(宝塚市) 70 ∼ 74 頁 ・兵庫県 (2003) 改訂兵庫の貴重な自然 ( レッドデータブック ) 140 ∼ 141 頁
・松井孝爾 (1985) 日本の両生類・爬虫類 小学館
6
宝
大峰山(おおみねさん)
大峰山は標高 552.4mで山頂には三等三角点があり、
宝塚の山では二番目の高さになる。東は県道、西は武
庫川、北は新田川(長谷)、南はゴルフ場で囲まれた
宝塚の山では大きな山塊である。
塚
この山の特徴は西の麓に桜の園があることだ。
ガイドブックに載っているので訪れる人も多い。
の
Part 4
はじめに 中山最高峰展望台からの大峰山
ハイキングルートはJR武田尾駅を起点に桜の園経
森田 至
由で行くか、宝塚から阪急田園バスで十万辻までいき
思い起こせば今から 15 年前、宝塚市主導で市民参
そこを起点とする。ほとんどの人はこの間を縦走する。
画による「身近な自然と山歩き百人委員会」というの
物足りない人には桜の園から谷を遡るコースもあり、
があった。(その時の委員長が足立会長)内容は宝塚
三つの滝が見られる。
の山域を 8 ブロックに分け、それぞれの部会がハイキ
ングルートや自然・歴史を調査研究し、提言書にまと
めるというものであった。このときの提言書は多数の
方が利用されている。山の本を執筆している人も参考
にしてくださり、私たちがやったことが無駄ではな
かったように思う。 さて、ここで「身近な自然と山歩き百人委員会」を
思い出したのは、今回取り上げた、古宝山と検見山は
私が担当した山域だったからである。
宝塚の山々は標高 600m以下の低山ばかりで町から
も近く、いつでも行ける身近な山である。低山を歩く
楽しみ方はいろいろあると思うが、なんといっても一
大峰山山頂 三等三角点
番は自然観察をしながら歩くことだ。不思議なものや、
山頂の植生として、リョウブの木が多いのが印象的
知らない動植物に出会えば、デジカメに収めて家で調
だ。春にはヒゴスミレが咲く。以前にはたくさんみら
べてみる。正体が分かった時には脳科学者の茂木健一
れたが、春は特にグループ登山や団体登山者が多く、
郎氏が言うところの「アハ体験」ができ、脳が活性化
踏みつけにより生育数が激減してしまった。この山に
される。歩いて健康になれ、脳が活性化するのが自然
は他ではあまり見られない貴重な植物も多く、野鳥や
観察ハイキングの特徴だ。ただし、気をつけたいこと
哺乳類など動物種も多い。宝塚の山では特に生物多様
がある。「木を見て森を見ず」にならないように、生
性を感じることのできる大切な山である。
態系からの視点で自然を見るのも必要であろう。
7
検見山(けんみさん)
古宝山(ふるほうさん)
検見山は標高 475mで山頂に三角点はない。山頂は
古宝山は標高 459.4mで山頂には三等三角点があり、
大峰山の北東に位置し、山頂から北側に流れる尾根と
西谷地域では最高峰になる。切畑地区から玉瀬地区ま
西側に流れる尾根がある。西の尾根は大峰山と平行に
で東西に広がる山塊である。山頂より東はなだらかで、
並んでいて、大峰山とともに長尾山地の一つである。
西はアップダウンがあり、八王子山を従えている。地
アップダウンの無いなだらかな山で歩きやすいが、山
元の人は、古宝山を「ふるぼっさん」、八王子山を「はっ
頂は展望が効かない。
ちょさん」と呼ぶ。
境野方面からの古宝山 見る方角で山容がかなり変わる
十万辻方面からの検見山
北尾根コースは阪急田園バス切畑南口を起点とし山
ハイキングの東の起点は阪急田園バス停の切畑北
頂を踏んで十万辻までの縦走になる。余力のある人は
口、西は玉瀬辻になる。縦走は実歩行 2 時間程度なので、
旧十万辻から林道を武田尾まで行ける。西尾根コース
JR武田尾駅から歩いてもそんなに苦にならない。ま
は十万辻から山頂を踏み武田尾までのコースになる。
た、玉瀬から谷筋の道を行き、山頂から尾根筋へと周
その逆コースも可能である。
遊することもできる。
私設の名板がある検見山山頂 枯損木が多い
古宝山山頂 三等三角点と雨乞いの神様が祀られる
山頂にはアカマツやヤマザクラの枯損木が目立ち、
山頂にはかって宝山寺の七堂伽藍があったとされる
ネジキ、タムシバ、リョウブなどの落葉広葉樹のほか、
がその面影はない。小さな祠があり雨乞いの神様を
ヒサカキ、ヤブツバキ、ソヨゴなどの常緑樹が多い。
祀っていると地元の人に教えてもらった。
陽樹から陰樹への遷移が進みつつあるようだ。
春にはササユリ、ナルコユリ、ギンリョウソウ、シ
西尾根は踏み跡程度の道であるがコバノミツバツツ
ライトソウなどが咲き、秋にはツルリンドウやリンド
ジのトンネルとなる。北尾根ではウリカエデとウリハ
ウ、センブリなどが見られる。玉瀬側には三つの湿原
ダカエデが並んでいたのが印象的だった。
があり、ハッチョウトンボやモウセンゴケ、コケオト
ギリ、ヤマトキソウなどが見られた。
8
教師のための環境体験学習 先生方の声 宝塚市自然保護協会 環境学習支援グループ
はじめに
・野草の見分け方が少し分かってきた。
生涯にわたる人間形成の基礎が培われる小学校低学
・虫を網で捕まえた後のカゴへの入れ方やトラップ等、
年において、自然に対する畏敬の念をはじめ、命の大
実際にやってみたい。昆虫観察しながらの講師の話
切さ、命のつながり等を実感させるとともに、美しさ
が楽しかった。
に感動する豊かな心をはぐくむことを目的とした、自
・昆虫を捕まえて観察するという直接体験が、理科の
然にふれあう体験型環境学習「環境体験事業」が平成
関心を高めるということ。
21 年度から始まった当初から当協会に授業支援の要
・カブトムシを捕まえるための道具(トラップ)は学
請が増加している。併せて、学校の先生方自身の体験
校で是非やりたいと思った。
型環境学習の指導の在り方に関する研修についても、
・様々な動植物の名前を知ることができた。
当協会への支援要請があり、例年協力している。
指導方法について
平成 22 年度の「教師のための環境学習」は川辺郡
・植物を五感で感じること、植物の名前の由来、野草
猪名川町立社会福祉会館及び周辺のフィールドで実施
の見分け方が少し分かってきた。
され、約 70 名の先生方の参加を得て、3 グループに
・昆虫採取を通して、自然に触れる体験をさせると共
分かれて実施された。①「動植物・野鳥観察」の講師を
に、虫の死を通して「生」を感じさせることもでき
当協会が②「昆虫観察」は伊丹市立昆虫館が、③「ネイ
ることが分かったので伝えていきたい。
チャーゲームとクラフト」を宝塚シェアリングネイ
・環境教育で、昆虫を通してどのように学習していけ
チャーの会が、それぞれ担当した。
ば良いかがよく分かった。そこから学習を膨らませ
主催者である阪神北県民局が先生方にアンケートを
ていくことが大切だと感じた。
求め、集約した結果を頂いたので、その一端を紹介し、
・昆虫を捕まえて図鑑で調べるという活動はとても面
参考に供したい。
白く、子供達と一緒にやってみたいと感じた
・採る→見る→調べる→逃がす or 飼うの順序で、季 設問1 今回の学習を通じ、取り入れたいテーマ・
節の変化や環境についても子供達と味わいたい。
興味を持ったこと
ネイチャーゲーム
生物多様性に関すること
・ゲームを通して、生き物の自然の中で生きていく知
・生物多様性についてのかみ砕いた説明
恵を知ることができる。身近なものも工夫すれば楽
・生物はそれぞれのテリトリーを守って生きている。
しい体験ができる。
・櫻の木に蜜があり、それを蟻が食べ毛虫を追いやる。
・クラフト体験が楽しかった。どこにでもあるものか
・植物や動物がそこにいる(住んでいる)のには理由
ら、可愛い個性のあるものが出来ると感動した。
があるということ。
・遊びを通して生き物の体の仕組みを学んだり、森の
・自然の中には沢山の動植物がいることを伝えたい。
中のものを見つけて面白かった。
・少し歩く中でもたくさんの虫や植物がいることが分
・ネイチャーゲームを体験させて頂き、子供達が喜び
かり、その種類を知っておく必要性を感じたし、伝
そうなゲームなので、学校に戻り実践したいと思う。
えていきたいと思った。
自然に対する深い気づきができた。なるほどと思う
・暑さの中、なかなか昆虫はいなかったが環境バラン
ことが多く、早速2学期から生かしたいと思う。
スの話(サナギに付くハチ)は分かりやすかった。
・「コウモリとガ」のゲームは準備も要らずすぐ使えそ
新しく習得したこと
うで良かった。カモフラージュとビンゴも面白かっ
・山道を歩いて、普段なら何気なく見過ごしてしまう
た。クラフトも楽しかったので準備をする価値があ
ような木や草の名前、特徴などを教えてもらった。
ると思った。
子供達にも教えてあげたいことがたくさんあった。
9
設問2 児童に伝えたい内容は?
伝えたい内容
回答
ために背を高くしたり、ツルで巻き付いたり、他の植
伝えたい内容
物を枯らせたり、様々な方法で共生していること。
回答
生物多様性
30 野外活動の仕方
22
・共生の考え方は子供の心にも響くように生かしたい。
動植物の観察
42 命や心の学習
17
・例えばゴミ一つ捨てることで生き物の命を奪うこと
歴史・文化
1 五感の活かし方
27
・住み分け食い分け等を知らせたい。また、知識では
北摂の里山
8 里山資源と生活
3
なく五感を使って身近に自然を感じてもらいたい。
・子どもは自然に触れる機会が少なく、どこにどんな
・食物連鎖・住み分け・食い分け・共生。
生き物がいて自分たちとどう関わりがあるのかをよく
・生物は長い年月を通して多様性を育ててきたが、今、
知らないので、身近なものから関わらせたい。
人間がそれを崩し、バランスを失った生物、自然が崩
・視覚だけでなく聴覚・嗅覚など普段あまり意識して
れている。それをどう修正していくのか子供達と考え
いない所を使って自然を感じさせる等。
ていきたい。
・同じ場所に生えている植物でも、それぞれが生きる
2013年度 学校支援 指導員活動実績
NO
月 日 曜
対象学校等
対象
学年
者数
ク
ラ
ス
数
学習テーマ
学習フィールド
指
導
員
数
逆瀬川の自然(植物・動物)につい
宝塚市逆瀬川
て知る
宝塚市すみれガ丘中
3 身近な所にいる昆虫を知ろう
央公園
生き物や植物の生息状況から自然
2
宝塚市武庫川
のようすを知る
5
11
1 水生生物による水質調査
猪名川本流
1
1・2
19
2
校区内フィールド
2
水 宝塚市立西山小学校
3
138
宝塚市逆瀬川
5
11
金 宝塚市立西山小学校
3
138
宝塚市立宝塚自然の
家
5
10
15
火 川辺郡猪名川町立揚津小学校
5
9
1 昆虫標本づくり
教室
1
9
10
17
木 宝塚市立丸橋小学校
3
92
3
10
10
21
月 宝塚市立仁川小学校
3
121
4 小仁川の秋を観察しよう
宝塚市小仁川上流
8
11
10
29
火 宝塚市立西山小学校
4
40
1 昆虫標本づくり
教室
2
12
10
30
水 宝塚市立西山小学校
3
138
4
宝塚市逆瀬川
5
13
11
1
金 川辺郡猪名川町立揚津小学校
1・2
19
2
校区内フィールド
2
14
12
11
水
2
143
5
校区内フィールド
3
15
12
12
木 宝塚市立小浜小学校
3
55
2
宝塚市武庫川
4
16
2
17
月 宝塚市立西山小学校
3
138
4
宝塚市逆瀬川
6
17
2
7
木 川辺郡猪名川町立揚津小学校
1・2
19
2
校区内フィールド
2
18
8
9
金
川辺郡猪名川町 社会
福祉会館及び周辺
フィールド
10
1
5
30
木 宝塚市立西山小学校
3
138
2
6
14
金 宝塚市立すみれ小学校
3
87
3
6
25
火 宝塚市立小浜小学校
3
55
4
7
2
火 川辺郡猪名川町立揚津小学校
3
5
7
10
水 川辺郡猪名川町立揚津小学校
6
7
10
7
10
8
川辺郡猪名川町立つつじガ丘
小学校
兵庫県阪神北県民局主催 教員
研修会
4
ネイチャーゲームを通して自然を学
ぶ
逆瀬川の自然(植物・動物)につい
4
て知る
西谷の自然(植物・動物)について
4
知る
教員
85
対象者人数 1360人
10
6
5
西谷の自然(植物・動物)について 宝塚市立宝塚自然の
知る
家
逆瀬川の自然(植物・動物)につい
て知る
ネイチャーゲームを通して自然を学
ぶ
ネイチャーゲームを通して自然を学
ぶ
野鳥の生息状況から自然のようす
を知る
逆瀬川の自然(植物・動物)につい
て知る
ネイチャーゲームを通して自然を学
ぶ
教師のための自然体験学習
5
支援活動に従事した指導員数 77人
環境体験学習 ̶小学校低学年 生活科の実践̶
宝
茶谷 和子 ( 宝 シェアリングネイチャーの会 )
シェアリングネイチャーの会が依頼を受ける環
②探し終わったら、全員でコースに沿って、歩きなが
境学習の多くは、小学校低学年の生活科としてである
ら、答え合わせをする。最後に人工物を全部回収し、
ので、「自然を直接体験し、そこから得られた自然へ
集めたものを子どもたちの前に示す。
の気づきをわかちあう」という考えにもとづいたネイ
チャーゲームの活動を中心に環境学習を組み立てるこ
<ふりかえり>
とにしている。
③児童に聞きながら、見つけやすかったものと、見つ
ネイチャーゲームはアメリカのナチュラリスト、
けにくかったものに分類し、なぜそうだったかを話
ジョセフ コーネル氏により考案された人間の持つ
し合い、自然界でのカモフラージュの話につなげる。
様々な感覚を使って自然を直接体験し、自然と仲良く
④写真や、絵本を用いて、カモフラージュしている動
なるプログラムであり、長時間の集中や言葉での説明
物を見つける。
による理解の難しい低学年にとって、環境への関心を
⑤実際にカモフラージュしている生きものを探しに行
呼び起こすのに効果的なツールとなることが期待でき
く。
る。現在、コーネル氏が考案したものに日本で考え出
されたものを加えると 180 種類がある。
<大切にしていること>
ここでは、低学年に向けて何度か実践したことのあ
ネイチャーゲームの活動をしている時、大切なのは
る「カモフラージュ」というネイチャーゲームの例を
ふりかえりである。子どもたちが実際に体験して得た
あげ、ネイチャーゲームを用いた環境学習の実際を紹
感想を皆で分かち合いながら学習を深めるようにして
介することにしたい。「カモフラージュ」であるが、
いる。私たちは , 自然の中へ子どもたちを案内し、自
ちょっとしたしかけをして、動物界における擬態を体
然とふれあいながら、自然の不思議やおもしろさを発
験してもらうプログラムで、身近な動物擬態・保護色
見してもらうことをめざす、自然案内人としてこども
を楽しく学ぶのに適していると思う。
たちの前に立ちたいと願って実践している。
ネイチャーゲーム「カモフラージュ」の実践例
<ねらい> 〇観察力を養う
〇擬態や保護色について学ぶ
〇身近な生きものの暮らしの智恵や不思議を知り、興
味をもつ
<事前の準備>
事前に小径のわきに10m位のコースを決め ( ロープ
を置くとよい )、人工物を10数個セットする。草の
かげに置いたり、枝にぶら下げたり、地面にさしたり
と変化をもたせる。
ネイチャーゲーム「カモフラージュ」
自然の中にある人工物をさがす。
<展開>
①児童は一人ひとり、ロープに沿って歩きながら、姿
勢をかえて人工物を探す。コースのゴール地点で
待っている指導者に見つけた数をそっと告げる。
11
生き物の世界を学ぶいろいろな「ネイチャーゲーム」
ネイチャーゲーム「生きものビッグパズル」
ネイチャーゲーム「自然の宝さがし」
パーツを組み合わせ、動物を完成する。
カードに書かれたものを探してきて、みんなで紹介しあう。
ネイチャーゲーム「フィールドビンゴ」
ネイチャーゲーム「ミクロハイク」
カードに書かれた(動物のすみか)(つるつるするもの) など
葉っぱ・小さな花・虫などを虫眼鏡で見ると不思議な発見が。
を見つける。
ネイチャーゲーム「ノーズ」 いくつかのヒントを聞いて、何の動物かをあてる。わかったら鼻をさわる。
12
短報
宝塚の生き物
会員及び市民の皆様から寄せられた自然の中での発見記録を掲載しています。
凡例:兵庫県レッドデータブックを「兵庫RDB」と表現する。
中山寺奥之院でオハツキイチョウ発見
年月日 2012 年 10 月 17 日
発育の悪い小
場 所 宝塚市切畑字長尾山
さなギンナン
とは知ってい
( 北緯 34 度 50 分 東経 135 度 21 分 )
発見者
森 本 敏 一
たが、ほんと
森本 敏一
うにオハツキ
同行者 中所 ゆう子
【コメント】中山寺奥之院のイチョウがオハツキイチョ
イチョウだと
ウ Gnnkgo biloba var.epiphyllum であることを確認
判ったときに
した。発見のきっかけは「これがオハツキイチョウな
は心底驚いた。念のため翌年にも再確認し間違いな
ら面白いのにな」と半ば遊び心で探したことだった。
いと確信したため今回、本欄に発表することにした。
これまでに何十回も見てきたのに気付かなかった。
参考:原色樹木図鑑(北隆館)
天狗のような忍者のような クイナ
年月日 2013 年 2 月 26 日
しかし、
場 所 宝塚市・武庫川 台風の影
発見者・撮影者 森田 至
響による
森 田 至
【コメント】クイナRallus aquaticus indicus はクイナ
水害と、
科クイナ属。兵庫RDBではCランク。本種は警戒心
それ以前
が強くなかなか姿を見せてくれない。
の樹木の
場所は武庫川のいつもの散歩コースだが、絶好の自
伐採が被
然観察ポイントであった(過去形)。植物ではタコノ
害を増幅
アシ、ヤガミスゲ、ゴキヅルなど、鳥ではカワセミが
させ、生
見られ、ヒレンジャクが立ち寄る場所でもあった。
き物たちの生育環境を奪い去ってしまった。
ムラサキミミカキグサ玉瀬湿原に
中 所 ゆう子
年月日 2013 年 11 月 12 日
場 所 兵庫県宝塚市玉瀬 北緯 34 度 52 分 発見者 中所 ゆう子 東経 135 度 18 分
撮影者 松田 和美 同行者 森田 至 松田 和美
【コ メ ン ト】ム ラ サ キ ミ ミ カ キ グ サ Utricularia
uliginosa(タヌキモ科)は湿原に生え、泥中の捕虫嚢
ムラサキミミカキグサ ホザキノミミカキグサ
で動物プランクトンなどを捕える食虫植物である。
藍紫色でホザキノミミカキグサと識別できる。車道
兵庫 RDB C ランク。古宝山麓の玉瀬側に 3 つの湿原
より少し入った人が行かないところなので残ったの
を確認、一番下の湿原(仮称:玉瀬第一湿原)でホ
かもしれない。湿原の上の池にはマツなども生えて
ザキノミミカキグサに混じってムラサキミミカキグ
きており、乾燥による湿原の消失が心配される。少
サを見つけた。明らかな花柄を持ち水色を帯びた藍
なくなってきた西谷の湿原の保全を願う。
13
車道を歩いていたヒメタイコウチ
中 所 ゆう子
年月日 2014 年 4 月 2 日 13 時頃
場 所 宝塚市千種 4 丁目 15
発見者 / 撮影者 中所 ゆう子
【コメント】ヒメタイコウチ Nepa hoffmanni( タイコウチ科 )
は湿原や浅い水域に生息する水生昆虫で兵庫 RDB A ランク
に指定されている貴重種である。あろうことか、車道を歩
いているのに出くわした。車道横の側溝には絶えず水がな
がれており、すぐ上には逆瀬川からの取り込み口がある。
前日から大量に降った雨に流されて側溝に入り、草などに
つかまって這い上がったものだろうか。本協会の足立勲会
長にヒメタイコウチの成虫と同定していただいた。生息地
を見つけ、環境を見守っていきたいものである。
旅鳥シベリアムクドリ 宝塚に立ち寄る
松 田
和 美
年月日 2014 年 4 月 3 日 17:20 ごろ
場 所 宝塚市向月町 大堀川
(緯度 34.8、経度 135.3)
発見者・撮影者 松田 和美
【コメント】宝塚市街を流れる大堀川でムクドリの群
れに色の違う個体が 1 羽混じっていた。ムクドリは嘴
と脚がオレンジ色だが、本個体はそれらが黒く、体の
色も異なっていた。大阪市立自然史博物館の和田岳先
本海の小島に渡来することが多く、海岸の林などで
生にシベリアムクドリ Sturnus sturninus の雌と同定し
観察されている」と記載されている。兵庫県立人と
ていただき、「とても珍しいですね。大阪府では記録
自然の博物館、日本野鳥の会、宝塚野鳥の会に問い
がないので、飛んできて欲しいです」とのコメントも
合わせたが兵庫県での観察記録はなかった。珍しい
いただいた。
『山渓ハンディ図鑑 7 日本の野鳥』には「日
お客さんだったようだ。
兵庫RDBにも出てこない絶滅種
菊 田 穣
年月日 2013 年 11 月 12 日
場 所 三田市三田町
発見者・撮影者 菊田 穣
【コメント】数年前から、家のあちこちで見かける甲
虫がいた。菊田幸雄がヤマトオサムシダマシだと言っ
ていたのは知っていたが、それほど珍しい昆虫とはお
もわなかった。
ヤマトオサムシダマシ Blaps japonensis(ゴミムシ
ダマシ科)は、古い納屋の藁屑の下などに棲み本州・
四国・九州・中国(北部)・台湾に分布が知られる。
それが、私の家には普通にいて気にもしていなかっ
環境省 RD では準絶滅危惧(NT).しかし、ほとん
た。飛びもせず、カッコよくもなくゴソゴソと歩く黒
どの都道府県では近年確認されず、RDBに記載され
いゴミムシ。生息環境が失われ絶滅しかけると貴重に
ていない。
なる、何かおかしいと思うが。
14
2013 年 カワラサイコ調査報告
森本敏一 吉田幸子
当協会では 1998 年より定期的に武庫川河川敷のカ
しかしながら、河川敷の植物の様子は年々変化して
ワラサイコ生息状況を調査している。前回は 2008 年、
おり、草丈の低いノシバなどがカワラサイコの根元を
2009 年に実施した。今回は 2013 年 7 月 13 日に宝
びっしりとしめつけて、種子が発芽しても育たない環
塚市域にて調査、2014 年には西宮・尼崎市域にて調
境になりつつある箇所も見られた。
査の予定である。
今回、当協会が実施した「カワラサイコ観察会」で
過去の調査と比較し結果をまとめた(下の表)。生
株数調査に協力してくださった 28 名の皆様、その後
息環境は 2008-09 年と大きな変化は見られなかった。
の調査に協力してくださった皆様にお礼を申し上げ
この間、「ひょうごアドプト」による草刈りが夏に数
る。この調査が本種保全に寄与することを願っている。
回行われ、美座地先で小規模な河川工事があった。
株数が増えた理由は次の 3 点が考えられる。
参考文献
(1) 草を刈ることによって草丈が低くなり本種が日光
①1998・1999 年の調査結果は、新家勝(故人・会員)
をたくさん受けることができた。
宝塚の自然 15 号による。
(2) 多くの人々が運動や散歩で河川敷を利用すように
②育地、地名、場所、用語については、宝塚の自然 なり小規模な攪乱があった。
25 号による。
(3) 保全の光景を見て理解者が増えてきた。
株数
場 所
備 考
1998ああ 2008ああ
2013調査
1999調査 2009調査
武庫川左岸
1 宝塚市武庫川町
201
176
1,806 高水敷
169
438
3,127 堤防天端
宝塚大橋~荒神川合流点
武庫川左岸
2 宝塚市美座1,2丁目
高水敷
荒神川合流点~宝塚新大橋
堤防外法(丸石積、目地)
武庫川左岸
3 宝塚市小浜1丁目、弥生町
高水敷
131
56
508 水制工(コンクリ継ぎ目)
4 武庫川左岸 尼崎市西昆陽4丁目
11
4,408
導流堤上 天王寺川合流点
5 武庫川左岸 尼崎市西昆陽4丁目
123
131
堤防天端 阪神自動車学校
496
457
1,386 堤防外法(丸石積、目地)
7 武庫川右岸 西宮市田近野町
10
37
高水敷 堤防 外法
8 武庫川右岸 西宮市田近野町
2,243
857
高水敷 堤防 霊園周囲
136
218
高水敷 花壇跡と縁
10 武庫川右岸 西宮市甲子園北口町
8
0
高水敷 花壇縁
11 武庫川右岸 西宮市甲子園口1丁目
49
7
高水敷 花壇縁
宝塚新大橋~大堀川合流点
武庫川右岸
6 宝塚市美幸町
パチンコ店モナコ裏
9 武庫川右岸 西宮市上大市5丁目
15
カワラサイコの見守り人に
吉田 幸子
2013 年 7 月 13 日に、宝塚市自然保護協会主催の「希
少種植物カワラサイコ」観察会に、自治会の街角観察
会のメンバー ( 当日の参加者 13 名)と一緒に参加し
ました。
生物多様性と武庫川河川敷の植物についての研修会
(講師は足立、森本両先生)を3年前に開催したこと
もあり、メンバーは「カワラサイコ」については一通
り学習済みです。
その日は、区画割された場所で、「カワラサイコ」
群生▲ カワラサイコ ▼クローズアップ
の株数を調べました。小さな株まで数えて、およそ
1800 株。5年前と比べて 10 倍の株数になっていま
した。驚きとうれしさとでいっぱい。
アドプト活動の草刈りが5年前に始まったのです
が、丸刈りをすると「カワラサイコ」も同時に刈り取っ
てしまうことになるので、私は「カワラサイコ」のあ
るところはそのままにしておいてもらいました。 森本先生をはじめとして自然保護協会の方が、定期
的に、いかにも「カワラサイコ」をいとおしむかのよ
うに周りの草刈りをしておられると、その植物はなん
というのですかと興味を示す人も次第に増えてきて、
「カワラサイコ」の保存にもつながって株数が増えた
と思っています。2012 年9月の洪水では、河川敷の「カ
ワラサイコ」は水に浸かってしまいましたが、今年も、
「カワラサイコ」は小さな可憐な花を咲かせることと
思い、私たち、街角観察会は見守りながら今から楽し
みにしているところです。
(会員、花のみち自治会環境事業部)
自然解説▲ 調査 ▼株数調査
植生説明
16
2013(平成25)年度 事業報告書
事
業 名
主催
協力
月
日
4
14 ギフチョウ観察会
主催 食草・羽化・産卵など生態の観察
市立宝塚自然の家
31
5
18 里山講演会
主催 まち山と生物多様性
ぷらざこむ1
96
6
13 ホタル観賞の夕べ
14
主催 一般市民向けホタル解説と鑑賞
宝塚ゴルフ俱楽部
2300
6
15 ホタル観察の夕べ
主催 市民向けホタル生息環境と水問題学習会 市立宝塚自然の家
46
7
13 カワラサイコの観察会
主催 株数の調査と観察
武庫川河川敷
28
8
9
教師のための環境体験学習研
里山における環境学習の指導方法につい
協力
猪名川町紫合
修会
て講師
74
9
13 秋の鳴く虫観察会
10
伝説の山吾孫子の峰ハイキン
谷間・中腹・尾根筋など環境による植物
主催
吾孫子の峰
26 グ
の生態の観察
11
16 松尾湿原と里山保全
主催 里山について学習と保全活動体験
市立宝塚自然の家
12
7
協力 パネルディスカッションと講演
市立東公民館
1
18 バードウォッチング
主催 冬の水鳥など観察
武庫川
1
18 新年学習会
主催 会員相互の情報交換や取り組みについて発表
がんこ宝塚苑
2
16 宝塚市ミニ環境展
協力 環境展に展示
宝塚市民環境フォーラム
事 業 内 容
主催 秋の鳴く虫についての学びと観察
場 所
人数
45
ゆずり葉緑地公園
7
45
243
39
18
300
アピア1
3272
合計人数
調査活動 ●ケナシベニバナヤマシャクヤク保全活動:5/28、9/25
●カワラサイコ調査・保全:5/01、5/17、5/23、5/26、5/27、6/06、6/12、6/23、
7/10、7/11、7/12、7/13、8/07、8/15、8/20、 9/02、9/23、10/22、11/30
啓発活動 ●会報発行:28号
協働事業
●他団体との共催:北摂里山運営協議会「北摂里山こども探検隊」 ひょうご環境創造協会「武庫川流域
ネット」
●宝塚市との共催:宝塚市環境フォーラム、宝塚市ミニ環境展
●協働団体:宝塚エコネット、いのちをつなぐ食育の会、宝塚シェアリングネイチャーの会、環学会
講師派遣 ●兵庫県阪神北県民局主催教員研修会に講師派遣7名
●市内外の小学校などへの環境体験学習の支援活動 18回 述べ77名
●兵庫県教育委員会阪神教育事務所宝塚教育振興室に講師派遣7名
会合出席 ●環境都市宝塚推進市民会議、宝塚市花と緑の協会
17
2013
協会の行う様々な行事に参加した皆さんの思い出を掲載しています。今後も皆さんの声をお寄せください。
★沢山の自然保護協会の人たちの努力が感じられまし
た。子どもに初めての間伐や草刈りの体験ができた事
も貴重なものになりました。とても楽しかったです。
山内隆則
★自然の中に生えている木を切るのは初めての体験
だったので子供達にはとても良い経験だったと思いま
す。1 年生と3才でさわがしくしましたが、優しく教
えて頂きありがとうございました。 ( 無記名 )
★クラフトが楽しかった。もっと時間があったらよ
かったなあと思いました。
撮影 松田和美
小学生 山本彩水
★今日はいろいろなことをして楽しかったです。
小学生 山内一輝
★木を切るのが楽しかった。
小学生 佐藤将太郎
★普段から自然に興味をもってもらえるような活動を
している者です。様々な年齢の方々に話す内容や口調
など考えさせられる時があります。今回はそういった
ことに注目させてもらいました。ネイチャーゲームや
クラフトなど楽しいプログラムもありよかったと思っ
ております。
大学生 西尾 篤 ★〆切りを過ぎていたので、参加できないかなあ∼と
思っていたのに、快く参加を認めて頂いて、本当に嬉
しかったです。
男子 3 人、3さいを入れて 4 人!! バタバタと
おさわがせいたしましたが、とても楽しかったです。
池田光湖
18
2013.11.17 「紅葉の里山で湿原保全活動」
於・宝塚市指定の天然記念物「松尾湿原」
編集後記
★兵庫県立大学の小舘誓治先生の記事は驚きです。ナマズ石、みんなでゆっくり観察
したいものです。★大沼さんの両生類目録は宝塚の生物多様性の現状を把握する上で
重要です。紙面の都合で内容の圧縮をお願いしました。★森田至さんの「宝塚の山」
シリーズは一応終了です。ありがとうございました。★カワラサイコ調査は協会の調
査事業のなかでは最も長期にわたっていますが、まだまだ続きます。★宝塚シェアリ
ングネイチャーの会でリーダーとして頑張っていただいた山本叔子さんが他界されま
した。ご冥福をお祈りいたします。★次号にむけて原稿をお送りください。いつでも
受け付けいたします。 ( 編集部 )
28号
発行日 2014(平成26)年3月31日
発 行 宝塚市自然保護協会
本 部 〒665-0842 宝塚市川面3-7-19 Tel 0797-84-1208
事務局 〒665-0867 宝塚市売布東の町12-7 ぷらざこむ1内
TEL:0797-86-5001 FAX:0797-83-2425
http:www.naturezuka.com
e-mail : [email protected]
印 刷 株式会社WAVE印刷
製 作 宝塚市自然保護協会 会報編集部
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