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プロパティの値
ホームネットワークシステムの連続的なサービス提供方法 長江 洋子† 山田 松江† 井垣 宏† 青山 幹雄† 南山大学 数理情報学部 情報通信学科† ンの例を表 1 に示す. (1) 機器の機能単位(メソッド)を抽出する 従来のホームネットワークシステム(HNS)は,さ (2) メソッドが環境にどのような影響を与えるのか まざまなコンテキストが混在していることや,ユー を環境プロパティとして定義する ザの移動が頻繁に起こることに対応してない.本稿 (3) 環境プロパティの影響方向を定義する では,家庭内におけるコンテキストを環境プロパテ 表 1: 環境プロパティのモデル化 ィとサービスプロパティの 2 つに分けてモデル化し, 機器名 (1)メソッド (2)環境プロパティ (3)影響方向 ユーザの移動に対して,コンテキストに応じたサー エ ア コ 温度 ビスを連続的に提供する方法を提案する. Cooling() Down 1. はじめに 2. 既存の HNS の問題点 (1) 家庭内におけるコンテキストの複雑化 家庭内は多種多様な機器と共に,多数のコンテキ ストが存在する.部屋は温度や湿度などの環境やテ レビなどの機器が相互に関連する. (2) ユーザ移動に伴う機器操作の複雑さ HNS ではユーザの移動に応じてサービスを提供 する必要がある.移動毎にユーザが機器操作をする ことは煩雑で,特に高齢化が進む社会では望ましく ない. 3. ホームネットワークシステムのモデル化 3.1. プロパティのモデル化 家庭では,室温のように複数人が共有するサービ スや,テレビのチャンネルといった個人のサービス が存在する.アンビエントインテリジェンスはセン サ技術の普及により機器や環境に知能を持たせ,ユ ーザの負担を軽減する. 機器は異なる特性を持つ.したがって特性に応じ て分類する必要がある.本研究では 2 つのプロパテ ィに分け,機器がこれらを保持する. (1) サービスプロパティ テレビのチャンネルのような各ユーザの要求に応 じて提供されるサービスの特性や状態 (2) 環境プロパティ 室温のようなユーザを取り巻く環境の状態 3.2. サービスの連続性と引き継ぎ ユーザが移動した時に,ユーザが操作しなくても 要求に応じて高品質でサービスを提供する.これを サービスの連続性と定義する.また,連続性を保証 するためにユーザの移動にあわせてプロパティを対 応づけることを引き継ぎとする. 3.3. コンテキストに対応する環境プロパティ定義 以下の手順で環境プロパティを定義する.エアコ Continuous Service Provision on Home Network Systems † Yoko Nagae, Matsue Yamada, Hiroshi Igaki, Mikio Aoyama, Faculty of Mathematical Sciences and Information Engineering, Nanzan University ン Heating() 温度 Up Dehumidify() 湿度 Down メソッドと環境プロパティを関連付けることによ り,同じ環境プロパティに影響する機器の集合を分 類できる(図 1).一方,窓のような屋外の環境から 影響を受ける機器の場合,環境プロパティにどのよ うに影響を与えるかわからない.その場合は,外部 環境に影響方向を問い合わせる. 部屋 エアコン •Cooling(-) •Heating(+) 窓 •Open(?) ヒーター •On(+) 温度に影響を 与えるメソッド 問い合わせる 外 外 部 部 環 環 境 境 湿度に影響を 与えるメソッド •Dehumidify(-) エアコン •On(+) 加湿器 •Open(?) 窓 図 1: 環境プロパティによるメソッドの分類 3.4. ユーザ移動に対応する連続的サービス提供 ユーザが部屋を移動した時にプロパティを保持し 引き継ぐ方法を図 2 に示す. 次の 2 つのパターンをとる. (1) 環境プロパティの静的な引き継ぎ:各ユーザが 定常的な値(設定室温等)を持ち,頻繁に値の変 更がない環境プロパティの値を引き継ぐ (2) サービスプロパティの動的な引き継ぎ:ユーザ の操作により機器のサービス変更が頻繁に起こ るサービスプロパティの値を引き継ぐ 部屋A 16度 ユーザの固定的な 環境プロパティ値を 反映 HEATING 反映 温度:20度 テレビ:電源ON 3チャンネル 反映 ユーザのサービスプ ロパティ値を反映 18度 反映 環境プロパティ サービスプロパティ 部屋B ON ON 3ch テレビ:電源ON 5チャンネル 保持 反映 移動 移動 ON 3ch 操 作 ON 5ch 図 2:サービスプロパティと 環境プロパティの引き継ぎ ティの引き継ぎ:ユーザがテレビのチャンネル 要求を変更すると,移動先には変更されたチャ ンネルが引き継がれることが確認できた. 環境プロパティとサービスプロパティをユーザが 保持し,連続的に各部屋に適用して独立に制御する ことでサービスの連続性を実現する. 3.5. 連続的なサービス提供の制御モデル ユーザ移動による引き継ぎを実行する制御モデル を図 3 に示す. (1) マネージャ:部屋単位で管理を行い,部屋に存 在する機器と,その機器の働きを把握 (2) サービス:部屋に影響を与えるメソッドを用い て機器を制御 (3) ユーザ:サービスを受ける主体.ユーザは家の 中を移動し,各ユーザは環境プロパティ値とサ ービスプロパティ値を保持 (4) 環境センサ:部屋や屋外の環境プロパティ値を 測定 (5) 検知センサ:ユーザの移動を検知 ユーザの移動により,ユーザが持つサービスプロ パティ値と環境プロパティ値に近づけるようにマネ ージャがプロパティの引き継ぎを実行する. 引き継ぎは,次の 3 つのステップで実行する. (A) ユーザの移動を検知 (B) ユーザがプロパティ値を保持 (C) 保持したプロパティ値を機器に引き継ぎ 部屋 プロパティ --------------- 移動 (3)ユーザ (A)ユーザの 移動を検知 (5)検知センサ 存在する機器一覧 (B)プロパティ値を保持 サービスプロパティ値 機器の状態 環境プロパティ値 ユーザ固有の値 (C) プロパティ値を 機器に引き継ぎ (1)マネージャ (2)サービス 機器がどのように働くか 環境プロパティ値 現在の部屋の状態の値 (4)環境センサ サービスプロパティ値 現在の機器の状態の値 図 3:連続的なサービス提供の制御モデル 4. プロトタイプによる検証と評価 本稿で提案したモデルの評価を行うために,ドー ルハウス(図 4,5)を作成し,Phidgets[3]を用いて 実装した.プロトタイプは Java を用い,14 クラス, 総コード数は 1882 行であった. 以下の 4 つのシナリオを用いて効果を検証した. (1) 静的な環境プロパティの引き継ぎ:ユーザの移 動に対してユーザが操作をしなくても環境プロ パティを引き継ぐことが確認できた. (2) 副作用のある静的な環境プロパティの引き継 ぎ:複数の環境プロパティを持つ機器が,ユー ザの要求を満たさない環境プロパティを含む場 合,サービスを制限することが確認できた. (3) 動的なサービスプロパティの引き継ぎ:テレビ のチャンネルをユーザの移動に際して,品質を 維持しながらサービスを提供することが確認で きた. (4) ユーザと相互作用がある動的なサービスプロパ 図 4:ドールハウスの全体像 屋外 検知センサ6 環境センサF 窓 ドア 検知センサ2 廊下 照明1 バス&トイレ ドア 環境センサB 照明 検知センサ1 照明2 環境センサA ドア ドア 検知センサ3 照明 TV 加湿器 照明 キッチン 窓 環境センサE 検知センサ4 エアコン リビング TV TV 窓 照明 寝室 カーテン 環境センサC カーテン 環境センサD ヒータ 床暖房 エアコン 加湿器 検知センサ5 機器名 数 検知センサ 6 環境センサ 6 6 照明 2 加湿器 3 窓 2 カーテン 3 テレビ 1 ヒータ 2 エアコン 1 床暖房 図 5:プロトタイプの環境 ユーザの操作を必要としない環境プロパティと, ユーザの操作を受けて変化するサービスプロパティ に分離して制御することでユーザの移動に対するサ ービスの連続性を少ないユーザの操作で実現できた. 環境プロパティの副作用に対応した引き継ぎやユ ーザの操作に動的に対応するサービスプロパティの 引き継ぎの実現によりユーザに質の高いサービス提 供が可能となった. 5. 関連研究 機器のサービスに着目した HNS が提案されてい るが,本稿で提案した環境プロパティは考慮されて おらず複雑なコンテキストへの対応は難しい[2]. 6. まとめ 従来の HNS の問題である複雑なコンテキストと, ユーザの移動を考慮した上で連続的なサービス提供 を行うため,サービスプロパティと環境プロパティ のモデルを提案した.ドールハウスのプロトタイプ を作成し,その効果を評価した. 参考文献 [1] E. Aarts, et al., Algorithm in Ambient Intelligence, Ambient Intelligence, Soringer-Verlag, 2005, pp. 349-373. [2] M. Nakamura, et al., Feature Interactions in Integrated Services of Networked Home Appliances An Object-Oriented Approach-, Proc. ICFI'05, July 2005, pp. 236-251. [3] Phidgets, http://www.phidgets.com/.