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Institute of Environment Rehabilitation and Conservation

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Institute of Environment Rehabilitation and Conservation
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2012-1
2012. 7
Non-Profit Organization <ERECON>
JAPAN
Institute of Environment Rehabilitation and Conservation
2012 年度持続可能な開発のための教育に関するプログラム
現地農家を対象としたエリ蚕養蚕の普及(カンボジア国)
小学生を対象にポスターを用いた環境
保全ワークショップの実施(タイ国)
小学校での堆肥づくりにおける小学校
教員への個別指導(カンボジア国)
現地農家を対象とした生物起源防虫液
および液肥づくりの指導(カンボジア国)
ERECON では国連の「持続可能な開発のための教育(ESD)」に賛同し、プログラムを実施する全ての地域で ESD が実施されることを目指しています。
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1. 2012 年度プログラム活動報告
1. 実施事業の進捗状況
(1) 環境修復保全に関する事業
1) フィリピン国ボホールにおける持続的農業の普及推進(フェ
ーズ 3):フィリピン国ボホール県の現地農家は森林を伐採して開
墾した急傾斜の畑で、雨水に依存しつつ焼畑農業(移動農業)を
営んでいます。森林伐採により裸地化した傾斜畑では、スコール
に伴って有機物に富む表土が流出するなど、侵食による農地の
土壌劣化が著しく進行しています。そこで、現地農家とともに環
境保全型農業の普及・推進を図り、現地農家自らが主体となった
持続可能な農業生産環境の構築を目指しています。
2012 年度は、コレーラ地区とタグビララン地区、バレンシア地
区の 3 地区の現地農家を対象に、モデル圃場の見学会を実施
するとともに、炭焼き釜を 5 箇所設置して炭焼きと木炭酢採取に
ついて普及します。現在、9 月に実施予定のワークショップの開
催準備を進めています。
3) マングローブ・ラーニング・センター修復および周辺域の植林
事業:タイ国南部パンガ県トゥンラック村に位置するマングローブ・
ラーニング・センターは、地元の植林活動グループによるマングロ
ーブ林保全活動の拠点として機能してきました。しかし、2009 年
雨期のモンスーン豪雨によって施設は多大な被害を受け、マング
ローブ林保全活動の継続が危ぶまれていました。
そこで本プログラムでは、地元の植林活動グループによるマン
グローブ林保全活動の継続を図るべく、センターの修復とともに
地元の植林活動グループと協働して植林活動を実施しています。
2012 年 6 月には地域住民らとセンターの改修を記念して式典を
開催しました。
タイ国におけるセンター改修記念の式典
4) フィリピン国ボホールにおける持続可能な発展を目指した植
林活動の推進:フィリピン国ボホールでは、急速な人口増加に伴
い、森林伐採や焼畑農業を起因とする深刻な土壌侵食や生物多
様性の減少が生じています。この傾向はボホール県南西部で著
しく、持続可能な開発(Sustainable Development)における植林
活動への期待が高まっています。そこで本プログラムでは、アグロ
フォレストリーの普及を通して傾斜畑における土壌侵食を緩和さ
せるとともに、焼畑に依存する農業体系を改め、土壌修復や生物
多様性の保全を目指しています。
具体的には、現地住民や小学生と協働で荒廃地や傾斜畑等
で植林活動を実施します。また、環境保全ワークショップを開催し
て現地住民や小学生を対象に植林の重要性を啓蒙するとともに、
アグロフォーレストリの実践方法を指導していきます。
(2) 自然資源の持続的利用に関する事業
1) カンボジア国における農村域の里山再生による自然資源の
持続的活用(フェーズ 2):カンボジア国中央部(コンポンチャム
州)、東部(モンドルキリ州)および西部(バッタンバン州)の違法
伐採による開墾などで自然資源が著しく損なわれた農村域を対
象に、土壌および水環境の保全とともに自然資源の持続的活用
を目指して、植林活動を推進しています。本プログラムは国連大
学高等研究所(UNU-IAS)、カンボジア国環境省との連携のもと、
IPSI (SATOYAMA イニシアティブ国際パートナーシップ)に認定
された活動となっています。
2012 年度は、地域住民および小学生を対象とした自然資源活
用セミナーの開催や里山再生植林、学校林造成活動を実施しま
す。
フィリピン国での事業 3 年目活動における連携づくり
2) タイ国南部津波被災地におけるマングローブ林の保全を軸と
した住民グループとの協働による環境修復保全活動(フェーズ
2):2004 年 12 月 26 日に発生したスマトラ島沖地震に伴う津波に
より、タイ国南部パンガ県トゥンラック村では人的被害のみならず
自然環境も大きな被害を受けました。
2012 年度は、トゥンラック村植林活動グループとの協働で、ニ
ッパヤシ(Nypa fruticans)の植林活動を実施しました。また、マン
グローブ植林の啓蒙を目指して作成したガイドブックをワークショ
ップ参加者のみならず、地域の住民に配布しました。
タイ国における地域住民と協働での植林活動の実施
2
を実施しました。また本年度より資源循環型農業に取り組む現地
農家を対象として堆肥槽等の各種資材を配布するとともに、具体
的な技術指導のためのワークショップを実施しました。併せて事
業に参加する 450 戸の現地農家を訪問して、普及した技術の実
践状況の確認と個別指導を行いました。更に、8 月に実施予定の
小学校教員を対象とした食農環境教育指導者研修や、10 月に
実施予定の資源循環型農業技術研修(タイ国)に向けて準備を
進めています。
カンボジア国での学校林づくりに向けた小学校教員との打合せ
2) 農村域におけるエリ蚕養蚕の普及を通した環境保全型農業
の推進(フェーズ 2):カンボジア国首都近郊の農村域を対象とし
て、里山再生の一環として、エリ蚕養蚕の普及を通した環境保全
型農業を推進しています。エリ蚕は化学農薬に対して非常に敏
感であるため、その飼育によって地域で散布する化学農薬量も
減少できるとともに、繭の販売で現地農家の現金収入の向上と、
蛹は現地農家の重要なタンパク源・ビタミン源となるため、環境保
全型農業の定着および持続的実施に向けた動機づけとなると期
待されています。
2012 年度には、従来の 2 村においてエリ蚕糸の糸紡ぎワーク
ショップ等を行って現地農家の収入向上を図りつつ、新規 2 村の
現地農家を対象に、里山再生を目指した環境保全型農業に関
するワークショップ、指導者育成研修、エリ蚕養蚕小屋の設置等
を進めています。また、小学校・孤児院を対象に、環境保全型農
業の体験活動セミナー、エリ蚕養蚕小屋の設置、エリ蚕の飼育等
も実施しています。
カンボジア国における持続可能な農業生産環境の構築
4) 農業・農民組織活性化支援事業(アジア):国際農林業協働
協会に協力して、カンボジア国コンポンチャム州ロンコール村を
対象に、農業生産性および農家の所得向上を目指しています。
具体的には、堆肥・生物起源防虫液づくり、化学農薬の適正利
用、改良品種米の導入、組織強化と流通販売の促進等に取り組
んでいます。
(3) 環境教育啓蒙に関する事業
1) 緑の国際ボランティア研修:2013 年 1 月 14 日から 1 月 21 日
の 8 日間、将来国際緑化協力の場で活躍できる見識豊かな国際
協力ボランティアを養成することを目指して、緑の国際ボランティ
ア研修を実施します。具体的には、「持続可能な開発」を目指し
た里山再生事業や植林活動の現場を訪問するとともに、カンボジ
ア王立農業大学森林学部等の学生と共同で森林保全に関する
ワークショップを開催し、その成果を ICERD 国際会議にて「日柬
青年共同宣言」として発表していきます。
特定非営利活動法人環境修復保全機構の国際環境協力は、
NGO アリーナ寄付サイト、NGO サポート募金(JANIC)、イーココ
ロ・クリック募金、エコポイント、株式会社キューセン、株式会社河
辺商会等を通してご寄付頂いた方々をはじめ、多くの市民の
方々からのご支援に支えられています。
またこれまで公益財団法人日本国際協力財団、公益社団法人
国土緑化推進機構、三井物産環境基金、独立行政法人環境再
生保全機構、独立行政法人国際協力機構、公益社団法人国際
農林業協働協会等より、活動支援を頂いております。ここに記し
て深謝申し上げます。
(理事長/PD 三原真智人)
カンボジア国におけるエリ蚕養蚕小屋の設置
3) カンボジア国コンポンチャム州における持続可能な農業生産
環境の構築:カンボジア国では内戦が収まった 2000 年以降、化
学肥料や農薬に依存した単一作物栽培が急速に広まっており、
高騰する農業資材への支出が現地農家の経済的困窮に拍車を
かけています。そのため、コンポンチャム州サムロングコミューン
の 11 村および 10 小学校で構成される小学校クラスターを対象に、
環境に配慮した資源循環型農業を軸とした持続可能な農業生産
環境の構築を進めています。
2012 年度は、昨年度の事業評価に基づいて本年度の事業内
容を見直すとともに、日本国内の支援者らに向けた国内報告会
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2. 2012 年度通常総会の報告
1. 2012 年度通常総会議事録
以下の通りに 2012 年度通常総会を開催しました。
(1) 日時:2012 年 6 月 30 日 15:10~16:40
(2) 場所:東京都町田市小野路町 2987-1
特定非営利活動法人環境修復保全機構本部事務局 会議室
(3) 出席者数:72 名
1) 出席者:8 名
(三原真智人、山路永司、竹内康、福村一成、天野恵美子、藤
平純、河邊久美子、上野貴司)
2) 代理人議決者:63 名
3) 書面議決者:1 名
(4) 審議事項
1) 議長選任の件
2) 議事録署名人の選任の件
3) 第 1 議案 2011 年度事業報告および収支決算に関する承認
の件
4) 第 2 議案 2012 年度事業計画および収支予算に関する承認
の件
5) 第 3 議案 その他運営に関する事項の承認の件
(5) 議事の経過の概要及び議決の結果
1) 議長に三原真智人が満場一致で選出されました。
2) 議長より議事録署名人に天野恵美子、河邊久美子を選任し
たいとの提案があり、承認されました。
3) 事務局(上野貴司)より議案をもとに 2011 年度事業報告およ
び収支決算に関する報告がありました。事業報告に一部記載漏
れがあり、この修正とともに 2011 年度事業報告および収支決算
が全会一致で承認されました。また上野貴司より 2011 年度の会
議やイベント参加等について口頭で説明がありました。
4) 事務局(上野貴司)より議案をもとに 2012 年度事業計画およ
び収支予算に関する報告がありました。事業計画への加筆と収
支予算への訂正とともに 2012 年度事業計画および収支予算が
全会一致で承認されました。
5) 事務局(上野貴司)より議案をもとにその他運営に関する以下
Ⅰ~Ⅳの事項について報告があり、審議の結果すべての事項に
ついて全会一致で承認されました。
Ⅰ定款変更手続きの報告と特定非営利活動促進法の改正への
対応について
Ⅱ本年度事業(委託業務の実施と BOP 関連業務への展開)につ
いて
Ⅲ顧問の就任・退任と法律・会計専門家との業務委託について
Ⅳ事務局の運営(2012 年度の事務局体制)について
2. 2011 年度事業報告
2012 年度通常総会において承認された 2011 年度の事業報告
は以下の通りです。
(1) 事業の成果
2011 年度における事業期間は、2011 年 4 月 1 日から 2012 年
3 月 31 日に至る 366 日間でした。2011 年度の環境修復保全に
関する事業として、タイ国パンガ県・ナン県、カンボジア国タケオ
州、フィリピン国ボホール県の農村周辺域において植林・植栽等
を通した緑化推進にあたるとともに、タイ国コンケン県の塩類集積
地では持続的な農業生産環境の構築に取り組みました。また自
然資源の持続的利用に関する事業としては、カンボジア国コンポ
ンチャム州、タイ国ナン県、ラオス国ビエンチャン特別市の農村
域では自然資源の適正な利用による持続可能な農業生産環境
の構築に、またカンボジア国コンポンチャム州・モンドルキリ州・バ
ッタンバン州の農村域では里山における自然資源の保全実態調
査および里山再生に取り組みました。更に環境教育啓蒙に関す
る事業として、日本国およびカンボジア国において、国際環境協
力および持続的農業の推進に向けた人材育成に取り組みまし
た。
(2) 事業の実施に関する事項
1) 特定非営利活動に係る事業
表1に示す通りです。
表1 2011 年度事業報告 (特定非営利活動に係る事業)
事業名
事業内容
植林・植栽等を通した緑化
環 境 修 復 推進による環境修復保全
保全に関
する事業
塩害地における持続的な
農業生産環境の構築
自然資源の適正な利用に
自 然 資 源 よる持続可能な農業生産
の 持 続 的 環境の構築
利用に関
する事業 里山における自然資源の
保全実態調査および里山
再生
環 境 教 育 国際環境協力および持続
啓 蒙 に 関 的農業の推進に向けた人
する事業 材育成
その他目
的を達成
するため
に必要な
事業
-
実施日時
実施場所
従事者
の人数
受益対象者の
範囲及び人数
支出額
(千円)
2011 年 4 月~
2012 年 3 月
タイ国パンガ県・ナン県、
カンボジア国タケオ州、フィ
リピン国ボホール県農村
周辺域
9人
タイ国パンガ県・ナン県、カン
ボジア国タケオ州、フィリピン
国ボホール県農村周辺域
不特定多数
12,967
2011 年 4 月~
2012 年 3 月
タイ国コンケン県農村域
6人
タイ国コンケン県農村域不
特定多数
901
2011 年 4 月~
2012 年 3 月
2011 年 4 月~
2012 年 3 月
タイ国ナン県、カンボジア
国コンポンチャム州、ラオス
国ビエンチャン特別市農
村域
カンボジア国コンポンチャム
州・モンドルキリ州・バッタン
バン州農村域
9人
7人
タイ国ナン県、カンボジア国コ
ンポンチャム州、ラオス国ビエ
ンチャン特別市農村域不
特定多数
カンボジア国コンポンチャム
州・モンドルキリ州・バッタンバ
ン州農村域不特定多数
2011 年 4 月~
2012 年 3 月
日本国内およびカンボ
ジア国
12 人
日本国内研修参加者等
およびカンボジア国農村域
不特定多数
-
-
0人
-
4
39,927
10,499
3,516
0
2) 収益事業
なし
3. 2012 年度事業計画
(1) 事業の方針
2012 年度は、タイ国、カンボジア国、フィリピン国および日本国
内における事業を通して、農業的および都市的開発と自然環境
との調和を目指した環境修復保全に取り組み、環境教育啓蒙の
活動を通して、自然資源の持続的利用に寄与することを基本方
針とします。
(2) 事業の実施に関する事項
1) 特定非営利活動に係る事業
表2に示す通りです。
2) 収益事業
なし
表2 2012 年度事業計画 (特定非営利活動に係る事業)
事業名
環境修復
保全に関
する事業
自然資源
の持続的
利用に関
する事業
環境教育
啓蒙に関
する事業
従事者
の予定
人数
受益対象者の
範囲及び
予定人数
タイ国パンガ県、カン
ボジア国タケオ州、フ
ィリピン国ボホール県
農村周辺域
9人
タイ国パンガ県、カンボジ
ア国タケオ州、フィリピン国
ボホール県農村周辺域
不特定多数
9,877
2012 年 4 月~
2013 年 3 月
タイ国コンケン県農
村域
6人
タイ国コンケン県農村域
不特定多数
580
自然資源の適正な利用に
よる持続可能な農業生産環
境の構築
2012 年 4 月~
2013 年 3 月
カンボジア国コンポン
チャム州農村域
10 人
カンボジア国コンポンチャム
州 農村域不特定多
数
35,324
里 山 再 生 を目 指 した自 然
資源の 持続 可能 な利用 と
管理
2012 年 4 月~
2013 年 3 月
カンボジア国コンポン
チャム州・バッタンバン
州・モンドルキリ州
農村域
6人
カンボジア国コンポンチャム
州・バッタンバン州・モンド
ルキリ州農村域不特定
多数
5,695
自然資源の持続的利用と
現地農家の収入向上を目
指した農村開発
2012 年 4 月~
2013 年 3 月
カンボジア国プノンペ
ン広域圏農村域
6人
カンボジア国プノンペン広
域圏農村域不特定多
数
13,100
国際環境協力および持続的
農業の推進に向けた人材育
成
2012 年 4 月~
2013 年 3 月
日本国 内 、カン ボ
ジア国農村域
6人
日本国内研修参加者
等およびカンボジア国農
村域不特定多数
4,100
2012 年 4 月~
2013 年 3 月
東南アジア農村域
2人
東南アジア農村域不特
定多数
50
事業内容
実施予定日時
実施予定場所
植林を通した緑化推進によ
る環境修復保全
2012 年 4 月~
2013 年 3 月
塩害地における持続可能
な農業生産環境の構築
その他目的
を達成する 新規プログラム立案のための
ために必要 事前調査
な事業
支出
見込み額
(千円)
(理事(管理担当) 上野貴司)
3. 国際環境協力専門家登録の案内
現在、ERECON 正会員の皆様から広く国際環境協力専門家
ERECON の国際環境協力専門家には、アジアの国々で各種の
を募っています。一定の専門性を有し、かつ国際環境協力ワーク書評ERECON プログラムを実行して頂きます。
キャンプ等のコースを修了されている正会員の中から希望される
2. 資格
方を「国際環境協力専門家」として登録しています。専門家として
(1) 環境修復保全機構の正会員であること。
登録しますと現地派遣以外にも、これまでは事務局職員に限定
(2) 環境修復保全機構における国際環境協力ワークキャンプ等
されていた外務省や JICA 等の企画する様々な研修会に無料で
のコースを修了していること。
参加できる特典があります。現在、本部事務局スタッフの他、多く
(3) 大学卒業(学士)以上で現地活動に必要な専門知識を有す
の正会員および国際正会員の方々が、国際環境協力専門家とし
ること。院生も可。特定分野の実務経験を有する方は、学歴
て登録しています。募集要項は以下の通りとなっていますので、
は問わない。
是非ご応募下さい。
(4) 事前に日程を協議した上で、1 週間程度以上の海外渡航が
1. 目的
可能であること。
農業的および都市的開発と自然環境との調和を目指した環境
3. 募集時期
修復保全に取り組み、環境教育啓蒙の活動を通して、自然資源
随時
の持続的利用に寄与できる人材を特定非営利活動法人環境修
4. 登録方法
復保全機構の国際環境協力専門家として登録します。登録した
本部事務局から規定の登録票を入手して、記入の上一部郵送
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下さい。審査の上、専門家登録の採否を郵送にてお知らせしま
す。審査結果の通知には 1~2 ヶ月程度かかる場合がありますの
で、ご了承下さい。
(本部事務局 管理センター)
4. カンボジア国の自然と農業 ‐経済的土地コンセション1. はじめに
FAO によると、1990 年から 2010 年の間でカンボジア国にお
ける森林面積の 22%が失われました。近年のカンボジア国にお
ける著しい森林減少の原因の一つとして、企業による農地やプ
ランテーション等への土地転換を目指した投資が挙げられます。
現地 NGO(The Cambodian Human Rights and Development
Organization)は少なくともカンボジア国土の 10%は、伐採など
様々な開発を行う外国企業に供与され、耕作可能な土地の約
50%を外国企業が管理していると発表しています。
カンボジア国政府は 1990 年代初頭より経済的土地営業権
(経済的土地コンセション(Economic Land Concession))という
手続きを通して国内外の民間企業に土地の使用を認め、大規
模プランテーションや農園への民間投資を奨励してきました。
現在、カンボジアでは個人/法人にかかわらず外国人が土地を
所有することが禁じられていますが、外国の個人・法人が土地
を使用する方法は残されています。カンボジア国政府からの賃
借により、特定の土地において農業開発等を行う経済的土地
コンセションもその一つです。
外国の個人・法人による投資はカンボジア国の農業分野へ
の貢献や政府の歳入向上という利益もありますが、地域住民に
多大な影響を及ぼしているのも現状です。コンセションの対象
となった土地では住民たちが強制的に立ち退かされたり、農地
や放牧地への立ち入りを制限されたりと、様々な問題が発生し
ています。
2. 経済的土地営業権(経済的土地コンセション)について
土地コンセションは土地計画・建設省に登録され、許可を出
した関連当局の発行した許可内容に基づいた土地使用が許さ
れます。適切に利用されていない場合は登録を取り消されるこ
ともあります。本権利は、関連当局の裁量で発行される法的文
章により許可される権利であり、許可を受けた個人・法人は土
地面積 1 ヘクタール以下で最長期間 99 年間は土地を占有す
る権利を持ちます。カンボジア国では、社会的コンセション(許
可を受けたものは住宅建設や国有地の耕作が可能)、経済的
コンセション(工業や農業開発用に土地の使用が可能)、そし
て使用・開発・探査コンセションの 3 つに分類されます。
経済的土地コンセションに関する法令は、2005 年 12 月に制
定されました。主な目的は、「農産業活動の開発」、「適切で永
続的な土地開発」、「大小規模投資の奨励」、「サービス料を通
じて政府、州、村落の収入創出」があります。本コンセションは
契約当局、技術事務局、州・特別市国家土地管理委員会、地
区国家土地ワーキング・グループ、村落評議会等によって管理
されています。
3. 政府の対応について
2012 年 5 月、フンセン首相は森林の修繕が難しい程の害を
被る可能性があるとして、ベトナム企業への 4 つの賃借契約を
取り消しました。また、今後は同手続きによる新たな契約は行
わないと発言しています。さらに 9 月の新聞によれば、フンセン
首相は経済的土地コンセションで土地を使用している個人・法
人より税金を取る計画を発表しました。権利獲得後 6 年目以降、
1 ヘクタール毎に 5 ドルの税金を徴収するというものです。
今後もカンボジア国政府による管理体制や法整備を通し、
自然環境との調和を考慮した適切な農業的開発と都市的開
発が推進されることに期待が寄せられています。
プレアビヒア州における抗議活動(参照:Phnom Penh Post)
(東南アジア事務局カンボジア支局 PC 藤平 純)
5. 書評
本書は 1984 年に NHK 教育テレビで放映された市民講座の
内容をまとめ、一冊の本として再構成したものである。内容として
は日本国内の森林と、それに関わる人間の営みについて扱って
いる。
地球全体の森林の分布や成り立ちから、水保全、土壌保全と
の関わり、都市や公園の緑、果ては森林保全の担い手である林
業の現状に至るまでを網羅的に扱っている。著者が書いている
ように、20 年前から変わらない、という日本の「田舎」の問題点と
将来像は、他国の森林の現状と重なる点もある。
経済的な話も絡む後半は、人によっては反感を覚えるかもし
れないが、それも環境問題の側面と思って頂ければと思う。
内容レベルは大学専門教養(1,2年生)程度である。
(研究センター 客員研究員 伊川 綾)
新版 森と人間の文化史
只木良也著
出版:NHK ブックス
発行:2010 年
価格:1000 円+税
ISBN:978-4-14-091167-9
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6. 会員からの一言
【ERECON と農村とともに】
4 年半前、ERECON の活動への参加をきっかけにカンボジア
と出会い、現在は東京農業大学大学院でカンボジアの稲作農
村の研究に従事しています。農村社会という人々の温かい繋が
りの中に身を置き、人々の想いに触れ、その生き生きとした社会
の素晴らしさと彼らが抱える現実と向き合い続けていくことが私の
夢です。8 月末からカンボジア王立農業大学へ一年間留学をし、
現場で ERECON の活動に参加させていただきます。夢を叶える
第一歩。
(高橋優希 会員)
【横にも広く縦にも長い途上国支援】
現在タイにて修論としてマンゴー選果機開発の基礎研究をし
ています。輸出用に栽培される高品質マンゴーの品質を非破壊
的に測定し、タイ産マンゴーの競争力を高めマーケティング戦略
として活用することが期待されます。明日の食べ物にも困る人々
を支援するのも国際協力であれば、途上国の経済発展を支援
するのも国際協力の一つの形。国際協力といっても様々な関わ
り方のレベルがあります。自分が望む国際協力への関わり方と
は?と考えながら、今日もマンゴーと共に実験室で過ごしていま
す。
(田所朋子会員)
7. 会員の動向
2012 年 1 月以降、粟村友美さん、笹部秀美さん、筑井秀之さ
んが正会員として本団体の一員に加わりました。現在、正会員
119 名、国際正会員 22 名、国内準会員 17 名を含めた全会員数
は 158 名です。法人賛助会員も募集しておりますので、会員の
皆様の関係者の方でご興味がある方がいらっしゃいましたら、ご
紹介頂けますようよろしくお願いいたします。
(本部事務局 管理センター)
8. 事務局だより
1. 野点お茶会の開催
進めてきた文部科学省国際協力イニシアティブ事業「NGO と大
国際環境協力に取り組む顔
今年は例年より桜の開花が綺麗であったため、4
月 15 日に
学の連携による食農環境教育支援システムの構築」(2006 年度
ERECON 本部事務局において野点のお茶会を開催しました。
から 2009 年度)や、環境修復保全機構と東京農業大学が共同
この会は、茶道に精通されている三原理事長のお母様と河邉
で進めている独立行政法人国際協力機構(JICA)草の根技術協
専門家のお手並みを拝見するとともに、お茶を通して参加され
力事業「カンボジア国コンポンチャム州における持続可能な農業
た近所の方々とも交流を深める良い機会となりました。
生産環境の構築」(2011 年度から 2015 年度)等の一連の国際協
力事業を通して、カンボジア国の農業・農村における持続的発
展に貢献したことが高く評価されたためです。尚、カンボジア国
政府褒章の正式名称は Medal Sahak Metrey です。
三原理事長のお母様と河邉専門家による茶道
2. 環境修復保全機構の理事長がカンボジア国政府から褒章
を受賞
2012 年 3 月 2 日、カンボジア国プノンペン特別市に位置する
農林水産省の大会議室で開催されたカンボジア農家会議にお
いて、環境修復保全機構の三原真智人理事長および東京農業
大学の大澤貫寿理事長らがカンボジア国政府からの褒章を受け
ました。
授賞理由は、環境修復保全機構が東京農業大学に協力して
カンボジア国政府褒章 Medal Sahak Metrey 受賞直後
(三原理事長:左から 2 番目)
3. カンボジア市民フォーラムへの登録
2012 年 4 月、ERECON はネットワーク型団体であるカンボジア
市民フォーラムへ登録しました。カンボジア市民フォーラムはカ
ンボジアに関わる NGO、法律家、研究者、個人等が集まって
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1993 年に発足された団体です。
今後はカンボジア市民フォーラムのメンバー団体として政策
提言活動等にも参加し、カンボジア国の発展に寄与していこう
と考えています。
4. JICA 草の根技術協力事業 一般向け報告会(日本国内)
特定非営利活動法人環境修復保全機構と東京農業大学は
共同企業体を結成して、JICA 草の根技術協力事業「カンボジ
ア国コンポンチャム州における持続可能な農業生産環境の構
築」を実施しています。本事業はコンポンチャム州サムロングコ
ミューンを対象として、資源循環型農業を軸とした持続可能な
農業生産環境の構築を目指したものです。本事業の期間は、
2011 年 4 月から 2016 年 3 月までの 5 ヶ年となっています。初
年度にあたる 2011 年度には、ベースライン調査の実施と解析
に加えて、堆肥槽や液肥・生物起源防虫液用タンク等の資機
材の配付とともに、29 回の技術研修を通して資源循環型農業
技術の普及を進めました。
本事業の初年度(2011 年度)に実施した活動成果を報告す
るため、2012 年 6 月 14 日に東京農業大学世田谷キャンパスで
「国内報告会~聴いて!観て!考える!国際協力~」が開催
されました。会場には東京農業大学の学生・教員のみならず、
他大学の学生や一般企業からの参加者もあり、合計 57 名が参
加する報告会となりました。報告会の開会に当たり、大澤貫寿
学長より東京農業大学と東南アジア諸国との結びつきの経緯
や本事業の意義について辞を頂きました。
報告会では、藤平純現地調整員(環境修復保全機構)より初
年度の活動報告とともに、大野裕枝企画役(JICA 地球ひろば)
より JICA 草の根技術協力事業の説明を頂きました。併せて東
京農業大学からは、「日本およびアジアにおける有機農業の可
能性」(藤本彰三教授)、「アジア食料生産基地としてのカンボ
ジア国が果たす役割」(板垣啓四郎教授)、そして「ESD におけ
る食農環境教育の重要性」(三原真智人教授/ERECON 理事
長)の 3 課題の関連発表がありました。
その後、志和地弘信教授(国際協力センター所長)の司会の
もと座談会が開催されました。参加者からも「担い手の育成に
おいて小学生を対象とした理由」、「対象地の選定方法」、「低
化学肥料・低農薬農産物の優位性の確保」など、事業内容に
ついて多くの質問が寄せられ、報告会において参加者を交え
て活発な質疑応答を行うことができました。
また、報告会終了後に参加者から回収した質問票から、多く
の参加者が積極的に国際協力に関わっていきたいとの意向があ
ることが分かり、今後、本事業に関わって頂ける枠組みについて
検討していくこととしました。
参加者からの質問に基づいたディスカッションの実施
5. 本部事務局の動向
2012 年 1 月よりインターンとして ERECON を支援して下さって
いた笹部秀美さんが、3 月より非常勤職員となりました。現在は本
部事務局研究センター事務室・室長補佐としてご活躍していま
す。
6. 環境農学賞・環境農業賞
ERECON では、持続的農業や環境修復保全に大きく寄与す
る と 判 断で きる 研 究者 、農 業関 係者 を対 象に 、環 境 農学 賞
(Scientific Award of Environmental Agriculture)および環境農
業賞(Technical Award of Environmental Agriculture)を授与し
ています。奮って応募ください。
(1) 環境農学賞
自然環境の修復保全を目指した農学研究に精励しており、持
続的農業に大きく寄与する学術成果を上げた研究者を対象。
(2) 環境農業賞
自然環境に調和した持続的農業に精励しており、環境修復
保全に大きく寄与されている農業関係者を対象。
(本部事務局)
9. 国際協力に取り組む顔
度重なる光化学スモッグ警報をきっかけに環境問題に興味
置いた農業支援などにも携わっていきたいです。会員の皆様も
国際環境協力に取り組む顔
を持ち、1999 年進学先の大学で、1 年目から土壌・水質保全系
無理せず、でも気長に ERECON の草の根活動を応援して下さ
の学生ゼミに参加しました。その研究室にそのまま居座り、
い。
ERECON の助成を受けながら卒業論文、修士論文と有機肥料
伊川 綾 《略 歴》
と化学肥料が土壌中の生物に与える影響を研究していました。
1980年 東京生まれ 小学4年生まで各地で過ごす
当時の先輩方がタイを研究フィールドにしていたのをきっかけ
2003年 東京農業大学地域環境科学部生産環境工学科卒業
2005年 東京農業大学大学院農学研究科農業工学専攻博士
に、大学院生だった 2003、2004 年と ERECON のワークキャン
前期課程修了後、
プに参加し、以来ずっと会員を続けています。
東京農業大学地域環境科学部生産環境工学科 助手
大学に就職後、土壌構造や水分管理などの影響を踏まえ、
2008年 上記退職後、東京農業大学大学院農学研究科
環境共生学専攻研究生
退職、出産・子育ての傍ら丸 4 年かけて「中型土壌動物の多様
2012年 博士(環境共生学) 取得
度による畑地環境の評価手法に関する研究」という博士学位論
同 年 特定非営利活動法人環境修復保全機構研究センター
文を書き、博士号を取得しました。主体を限定せずに環境を捉
客員研究員
える方法はないか、と思い始めた研究でしたが、環境とは本来
主体あってこそのもの、ということを思い知った日々でした。
国際協力に関しては目下のところ後方支援(要するに寄付と
か)のみですが、今後研究歴を活かして生態系保全に重点を
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10. ERECON 出版物の紹介
特定非営利活動法人環境修復保全機構では、これまでの
普及および研究活動に基づいて、下記の書籍を出版していま
す。国際協力、農業開発のみならず環境保全、環境教育に関
心のある方におすすめの書籍です。
1. 身近な水の環境科学
酸性雨や都市化、森林伐採による地下水への窒素流出、
土壌侵食の話を扱うとともに、それらと水質との密接な関係が
まとめられています。また、市民活動や環境教育の話を通して、
研究の成果を市民に広めることの重要性が述べられています。
専門知識がなくても理解できるようにやさしく書かれているた
め、専門家はもちろん市民運動などの場で活躍する人にとっ
ても、水質、環境科学について学ぶ上で最適の書です。
す。英語・タイ語・クメール語・日本語の 4 ヶ国語で併記されて
います。
Sustainable Agriculture with
Organic Fertilizer
三原真智人、藤本彰三 編
2,000 円(税込)
(ISBN 4-916174-06-2)
身近な水の環境科学
4. Sustainable Farming Practices for Environmental
Conservation
本ガイドブックは、持続的農業を推進するのに必要な 10 項
目に及ぶ環境に配慮した持続的農法を取り上げています。具
体的には、「堆肥づくり」、「きゅう肥づくり」、「堆肥粒状化」、
「液肥づくり」、「生物起源防虫液づくり」、「炭・木炭酢づくり」、
「保全耕うん」、「緩衝帯設置」、「アグロフォレストリーづくり」、
「沈砂池設置」について、必要な資材や作成方法が詳述され
ています。図や写真を活用していますので、どなたでも容易に
理解できて実践できる内容となっています。
安富六郎、土器屋由紀子、
楊宗興、三原真智人 著
1,500 円(税込)
(ISBN 4-916174-02-X)
Sustainable Farming Practices
for Environmental Conservation
2. Participatory Strategy for Soil and Water Conservation
日本における土壌・水環境の保全技術を海外に移転する
事例が多くなってきていますが、受け入れ側(現地農家)の理
解度や営農における習慣等を無視して技術移転を図る事例
も見られ、全ての技術移転が成功しているとは言えない状況
にあります。そこで本書は、住民参加による土壌・水保全の技
術移転についてまとめられ、土壌・水保全の修復保全技術に
関する報告にとどまらず、住民参加手法等を用いた持続的に
利用される技術の移転方法に関して論議されています。土
壌・水保全技術、技術移転、住民参加手法、フォローアップ
の 4 課題に分類されており、土壌・水保全の技術側面の論議
だけでなく、適切な技術移転に関する 50 事例が紹介されてい
ます。
三原真智人、藤本彰三 編
1,000 円(税込)
(ISBN 4-916174-08-9)
5. 国際環境協力ガイドブック
–東南アジアにおける持続可能な農業開発に向けて東南アジアの発展途上国では、農業収入の向上のために
環境許容量を超えた大量の化学肥料や化学農薬が使用され
ており、様々な環境問題や健康被害が発生しています。本書
の第一章では国際環境協力の意義とその必要性について、
第二章では国際環境協力を行うための調査・実施・評価方法
について、イラストや写真を多用して記述されています。また、
第三章では現地活動における注意点について記述されてお
り、国際環境協力を実施するに当たって必要な情報が詰まっ
た実用書となっています。
Participatory Strategy for Soil
and Water Conservation
三原真智人、山路永司 編
3,000 円(税込)
(ISBN 4-916174-03-8)
国際環境協力ガイドブック
–東南アジアにおける持続可能
な農業開発に向けて-
3. Sustainable Agriculture with Organic Fertilizer
近年、農業生産性を短期的に高めるために、農地に大量
の化学肥料や農薬が散布されるようになっています。この傾
向は先進国のみならず東南アジアの諸国でも顕著な傾向とな
っており、さまざまな環境問題を引き起こしているのです。この
書籍は、農地における農薬や化学肥料の散布量を減少させ、
堆肥利用を進めることを目指した啓蒙書として作成されていま
す。土壌を守っていくことの大切さを考える上で有益な一冊で
三原真智人 編
1,500 円(税込)
(ISBN 978-4-916174-10-9)
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農業と環境
連載コラム 「環境保全と国際協力」 -第 3 回~「生物多様性条約第 10 回締約国会議について」(続き)~
前回に引き続き、生物多様性条約第 10 回締約国会議(CBD COP10)について紹介する。CBD COP10 では、ABS に関する名古
屋議定書、新戦略計画(愛知目標)を始めとして、合計 47 本の決議が採択された。
主なものとしては、「ビジネスの参画」に関する決議では、締約国によるビジネス(民間企業)と生物多様性の連携活動の推進、
COP9 で提唱され、国や地域レベルで取組が始まっている「ビジネスと生物多様性イニシアティブ」間の国際的な連携を図るための
グローバルプラットフォームの設置などが奨励された。また、「都市と地方自治体の行動計画」に関する決議では、2011~20 年の自
治体の生物多様性に関する行動計画を承認し、自治体の持つ役割を認識し、「生物多様性地域戦略」の策定などを求めている。こ
れらに見られるように、生物多様性の保全と持続可能な利用を進めるうえで、多様な主体の参加と協力が重要であるというのが世界
の共通認識となりつつある。
「生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(英語の頭文字をとって、IPBES)」については、2010 年
末の国連総会に対しその早期成立を検討するよう奨励することなどが決定された。気候変動分野では、「気候変動に関する政府間
パネル(IPCC)」が科学的知見、社会経済的分析、対策のオプションなどを提供しているのに対し、生物多様性分野では、科学と政
策のつながりを強化し、科学的研究を基に政策提言を行うということがなされていなかった。この決議を受け、同年末の国連総会は
UNEP に対し、早期に IPBES の体制等を決定するための総会開催を要請する決議を採択し、IPBES は具体的に動き出している。
「海洋と沿岸の生物多様性」では、生態学的及び生物学的に重要な海域(EBSA)に関する理解の向上、保護地域の設置やネット
ワーク化、海洋酸性化など海洋と沿岸の生物多様性に関することを生物多様性国家戦略に組み入れることが促された。
NGO からの働きかけもあり、日本が提案していた「国連生物多様性の 10 年」も同年末の国連総会で採択するよう勧告し、国連総
会で 2011~20 年の 10 年間を、国際社会のあらゆるセクターが連携して生物多様性の課題に取り組むことが採択された。
この他にも紹介したい決議があるが割愛する。日本の貢献としては、前回のコラムにも書いた議長国(ホスト国)としてのリーダーシ
ップの他、生物多様性に関する途上国支援として「いのちの共生イニシアティブ(20 億ドル)」、各国の国家戦略策定等支援に向け
た「生物多様性日本基金(10 億円を 5 年間)」の設置なども挙げられる。
次回の締約国会議(COP11)は、本年 10 月 8~19 日、インドのハイデラバードで開催することが決定している。COP11 までは、日
本は議長国としての責務があり、引き続き生物多様性条約の分野で世界をリードする立場にある。
(財団法人長尾自然環境財団 名執 芳博)
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理事長 三原真智人:東京農業大学地域環境科学部 教授
理 事 安富 六郎: 東京農工大学 名誉教授
山路 永司: 東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授
牧田 東一: 桜美林大学リベラルアーツ学群 教授
竹内 康: 東京農業大学地域環境科学部 教授
上野 貴司: Asian Network for Sustainable Development 事務局長
顧 問
Mario T. TABUCANON, Prof. Dr. : Asian Institute of Technology 名誉教授
Bunthan NGO, Prof. Dr. : Royal University of Agriculture 学長
ERECON NEWSLETTER 2012-1
2012 年 7 月 15 日
編集幹事 伊川 綾
発行 特定非営利活動法人 環境修復保全機構
[ERECON 本部事務局]
〒195-0064 東京都町田市小野路町 2987-1
Tel/ Fax 042-736-8972
E-mail: [email protected]
URL: www.erecon.jp
[ERECON 東南アジア事務局]
In Association of Environmental and Rural Development,
93/64 Moo.3 Sinsab village, Bungyeetho sub-district,
Thanyaburi district, Pathum Thani 12130, Thailand
Tel +66-2957-8064
E-mail: [email protected]
URL: www.erecon.jp
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