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特別な教育的支援を必要とする子どもたちへの支援の在り方に 関する研究

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特別な教育的支援を必要とする子どもたちへの支援の在り方に 関する研究
- 特別支援 -
特別な教育的支援を必要とする子どもたちへの支援の在り方に
関する研究
−通常の学級における「個別の指導計画」を活用した教科指導を通して−
一般留学生
新谷
雅美
研究の概要
本研究は ,「個別の指導計画」の活用に視点をおいた指導試案を作成し,その試案に基づく授業実
践を通して,通常の学級において教科指導上の困難を示す児童の指導の在り方を明らかにし,特別な
教育的支援を必要とする児童への指導の充実に役立てようとするものである。
指導試案をもとに国語の授業実践を行い,通常の学級における教科指導の支援の在り方の1つを明
らかにしようとした。
キーワード
通常の学級
Ⅰ
教科指導
個別の指導計画
授業
特別な教育的支援
主題設定の理由
1
子どもたちとのこれまでのかかわりより
私が前任校において情緒学級の担任をしていた時,自閉的傾向を持つ子どもや不登校傾向の子ども
たちとかかわった。専門的な知識がなく,同僚の教師や保護者の方々の協力を得ながら四苦八苦の毎
日であった。
その頃から,学習障害( Learning Disabilities)(以下,LDという 。)や注意欠陥 /多動性障害
(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)(以下,ADHDという。),高機能自閉症等,いわゆる軽度
発達障害という言葉を意識するようになった。(以下,LDやADHD,高機能自閉症などを軽度発
達障害という。)
一年生を受け持った時,話しかけてもなかなか目と目が合わず,授業中に何度か席を離れてしまう
児童が見られた。周囲の状況に気を奪われてなかなか注意を集中することが困難であった。ひらがな
やカタカナは正しく表記し,生活科の学習で校舎内を探検した際,教室の入り口に表示してある「校
長室」「保健室」などの漢字を大きな声で読んでいたことには周りの友達も驚かされた。行動面や食事
などのこだわりや言語によるコミュニケーションが成立しにくい原因がわからず,周りの友達の行動
に合わせようと一方的に注意をしてしまったこともあった。
しかしその後,軽度発達障害にかかわる講演会や学習会に参加したり,文献等に目を通したりする
うちに,子どもの実態に応じて支援を工夫していかなければならない必要性を感じるようになった。
一つ一つゆっくり指示をすること,視覚による指示を工夫することなどを意識しながらアプローチを
試みた。放課後の迎えの時間を利用したり連絡帳・電話などを通したりして保護者と連絡し合う中で
次の支援のヒントが見えてくることもあった。
特別な教育的支援を必要とする子どもたちが通常の学級に在籍する場合,適切な支援が望まれる。
個別の場で支援することも考えられるが,通常の学級の中での支援の積み重ねを大切にしたい。その
-1-
- 特別支援 ためには,集団指導の中でどんな指導や個別の配慮ができるか,その子が持っているよいところを集
団の中でどう活かすことができるかなどを計画し,実践し,検討することが必要となってくる。個別
の配慮や指導を的確に行うためには,児童の得意なこと,伸ばしたいこと,困難な状況などを把握し
ながら「個別の指導計画」を作成し,活用することが重要である。通常の学級における教科指導を通
して「個別の指導計画」を活用しながら,特別な教育的支援を必要とする子どもたちの支援の在り方
を明らかにしたいと考えた。
2
最近の動向より
平成 14 年2月∼3月にかけて文部科学省の調査研究会が実施した「通常学級に在籍する特別な教
育的支援を必要とする児童生徒に関する全国調査」の結果によると,担任教師から見て,知的発達に
遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示す児童生徒の割合は,6.3 %(補助資料6)であ
るとされている。
本県においても,平成 15 年 10 月∼ 11 月に行われた「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必
要とする児童生徒に関する実態調査」によると,知的発達に遅れはないものの,学習面や行動面で著
しい困難を持っていると担任教師が回答した児童生徒の割合は,5.9 %であるとの結果が出ている。
全国調査とほぼ同じ程度の割合であることが明らかになった。(これらの調査は,担任教師による回
答に基づくもので,LDの専門家チームによる判断や,医師による診断によるものではない。)
6.3 %という数字は,40 人の学級であれば2∼3名,30 人の学級であれば2名ほどの割合になる。
知的発達に遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示す子どもは,どの学級にも存在する可
能性があるという前提に立った学校経営や学級経営,あるいは学習指導が必要であることを意味して
いる。文部科学省としては,当該児童生徒に対する教育的支援を適切に行うことは緊急かつ重要な課
題としている。
「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告 )」(以下,「最終報告」という。)では,特別支
援教育を次のように定義している。
「特別支援教育とは,これまでの特殊教育の対象の障害だけでなく,LD,ADHD ,高機能自
閉症を含めて障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて,その一人一人の教育的ニーズを把
握して,その持てる力を高め,生活や学習上の困難を改善又は克服するために適切な教育を通じ
て必要な支援を行うものである。」
これまで,通常の学級の中で学習上・行動上の困難を抱えながらも教育的支援を受けられなかった
子どもたちに着目し,その子のニーズに応じた教育的支援を行うことができると理解される。「特殊
教育から特別支援教育へ」と転換期を迎えている。また,従来の特殊教育だけでなく通常の教育にも
かかわる教育改革である。
本県においては,平成 12 年度から 14 年度に「学習障害(LD)児対策事業」が,さらに平成 13・14
年度には,文部科学省の委嘱を受け,「学習障害(LD)に対する指導体制の充実事業」が実施され,
双葉東小学校において,教員に対する正しい知識と啓発,小・中学校における総合的な支援体制のた
めの校内委員会の整備,専門家チームの役割,巡回指導員の活用等について研究が行われてきた。ま
た,最終報告を受けて,平成 15 年度には塩山市が,また 16 年度には甲府市が「特別支援教育推進体
-2-
- 特別支援 制モデル事業総合推進地域」として山梨県教育委員会より指定された。研究協力である塩山市立塩山
南小学校・甲府市立大里小学校において特別な教育的支援を必要とする児童生徒に対する校内の整備
がなされた。
塩山市立塩山南小学校では,オープン教室という特別な場で支援をする場をつくり,通常学級に在
籍するLD等の診断をされた子だけでなく,全体的に学力のつまずきが見られる子,学級へうまくな
じめない子,発展的な学習を望む子等,様々なニーズに対応した児童を対象にオープン教室を設置し
ているところに特徴がある。また,甲府市大里小学校では,通常の学級の中で特別な支援を必要とす
る児童の実態把握を行い,通常の学級での「個別の指導計画」を作成して支援の在り方を検討し,校
内支援体制をシステム化していくところに特徴がある。
これらの先導的な研究をもとに,本研究では通常の学級における特別な教育的支援を必要とする児
童についての支援の在り方を研究していきたい。取り出しての個別の支援も必要であるが,児童を取
り巻く学習環境を考えると,在籍する学級での支援が多くの比重を占める。通常の学級における教育
を児童のニーズに応じた教育という視点で捉え直し,指導体制の充実を目指したい。通常の学級にお
いては,すでに教育の個性化や学力の向上のために工夫・改善が行われてきた。教育課程編成の弾力
化により発展的な学習や繰り返し学習の実施が可能となった。少人数指導やチームティーチングの担
当教員の加配措置が進められていることから,習熟度別少人数授業や複数教員によるTT授業が実施
されるようになってきている。特別な教育的支援を必要とする児童にとって,これらの施策の上に「個
別の指導計画」に基づく「支援の方法」を結びつけることによって,さらに学習や学校生活を円滑に
遂行することを可能とする方策の1つになるのではないかと思われる。一斉授業という場面において,
課題分析やスモールステップなどの特殊教育で培われた方法を国語や算数における教科指導や学級経
営の中に取り入れそれらが活かされるようにしたい。そのために,特別な教育的支援を必要とする子
どもたちの「個別の指導計画」を作成し,それを組み込んだ授業案に基づいた授業を通して,特別な
教育的支援を必要とする児童についての支援の在り方を明らかにしたいと考えた。
Ⅱ
研究の目標
通常の学級において,特別な教育的支援を必要とする子どもに「個別の指導計画」を作成し,それを
組み込んだ授業案に基づいた授業を通し,個に応じた支援の在り方を検証する。
Ⅲ
1
基本的な考え方
特別な教育的支援を必要とする子どもたちについて
学級には様々なタイプの気になる子どもたちがいる。いわゆる境界線児といわれる子どもや不登校
傾向の子ども,母子分離が困難な子ども等,情緒面に課題を抱えている子どももいる。またその原因
は様々であることも考えられる。家庭環境や親の養育態度の改善等,教育相談にかかわるような対応
を必要とするケースや医学的な治療を必要とするケースなどもあるであろう。自らの力だけでは解決
が難しい様々な悩みや課題を持った子どもたちについて,これまでにも多くの取組がなされてきてい
る。
本研究における特別な教育的支援を必要とする子どもたちとは,主に障害に起因する場合を対象と
-3-
- 特別支援 する。障害に起因する場合とは,認知の偏りのために学習の習得が難しいLDや,衝動性や多動性の
コントロールが難しく,あるいは適切に注意を向け続けることが難しいADHD,他人との社会的関
係を形成することが難しく,特定のものにこだわることを特徴とする高機能自閉症等の子どもたちで
ある。従来,特異的な行動を幼少期からの親のしつけ不足,親にかまってもらえなかったという愛情
不足から起こるのではないかなど,原因が家庭にあるかのように思われていた。しかし現在は,発症
原因は,脳内の中枢神経系の機能障害によるものであることから,適度な抑制がきかなかったり,我
慢したりすることができず,やりたいことはどうしてもやってしまうという情緒・行動の不適応が起
こっていると考えられている。
2 通常の学級における支援について
(1)学級経営上の配慮
(図1)学級経営上
特別な教育的支援を必要とする子どもたちの
可能なアプローチ
支援を学級集団の中で位置づけるために,複数
のアプローチが考えられる。(図1)
他の保護者
④
子ども自身へのアプローチでは,担任は本人
を温かい心で受け入れ心の支えとなる一番の存
保護者
在でありたい 。「しっかりやりなさい 。」「やる
②
気を出してがんばりなさい 。」といった叱咤激
①
担
任
励をしてしまうが,その子が持つ困難性やつま
ずきは,本人がすぐに直そうとしても改善でき
⑤
子ども
③
ないことが多い。叱咤激励の繰り返しだけでは
その子が抱えている問題の本質的な解決にはつ
教職員
ながらないであろう。
学級集団
保護者へのアプローチは,その子の指導にあ
たり欠かすことはできない。保護者は子どもの
様子を一番よく知っている人であり,親としての改善策を持っている場合も少なくない。ただ,保護
者が発達の偏りや学習のつまずき等を認識していない場合,保護者にどう伝えればよいか難しい。保
護者との相談を進める上で,子どもを伸ばしたいという教師の真意を伝えながら,保護者との信頼関
係に基づく協力関係を築くことを目指したい。専門機関での相談の必要性が生じた場合は,担任と保
護者との信頼関係のもと,慎重に情報提供を行わなければならないであろう。
学級の子どもたちにとって「当たり前のことがどうしてできないのかな 。」「あんなに難しいこと
を知っているのに,どうしてこんな簡単なことができないのかな。」と,能力の偏りは不思議に映っ
てしまうことがある。学級集団へのアプローチでは,個性や個人差ということを子どもの発達段階に
応じてわかる言葉で語っていくことが大切であろう。人の弱さや短所ばかりに目を向けてしまうので
はなく,一生懸命がんばっていることや持ち前のよさに気付いていける仲間集団でありたい。通常の
学級において担任はできることを見定めて指名したり,その子どもができそうなことを集団の中で支
援することが大切である。一人の子どもに特別な配慮を行うことは,その子どもと付き合っていく上
でのコツを他の子どもたちに示すことにもなると考える。担任の適切な配慮や接し方を周りの子ども
たちが理解し,真似るようになった時,相互の理解も進むであろう。また,学級の中で特別な教育的
-4-
- 特別支援 支援を必要とする子どもたちへの配慮は,楽しい学級づくり,学びやすい授業づくりにつながってい
くと思われる。行動面や対人関係の育ちにくい子どもへの支援に取り組むむほど,学級内の人間関係
が育っていく可能性も広がるであろう。
子どもの行動面の問題等から,子どもや保護者が孤立してしまう場合がある。学級の他の保護者に
対して一人の児童生徒が大切にされることは,学級の児童生徒が大切にされることにつながることを
保護者全体にも呼びかけていきたい。学級・学年懇談会や学級通信等の機会も利用し,学級から支援
の輪を広げたい。
また,かかわりの中心的な役割を担うのは担任であるが,個に応じた指導を一層充実させるために
は,学校全体で共通理解を図り教職員が互いに連携し合う必要がある。そのため担任以外の教職員へ
のアプローチ
も重要である。日ごろから職員間で子どものことを気軽に話し合える雰囲気をつくり,情報収集をし
たり,その子の行動の見方と対処の仕方などを発信したりすることも大切である。
「特別な教育的支援を必要としている子どもたちのための校内支援ハンドブック 2」(山梨県教育
委員会)」(以下,校内支援ハンドブック 2 という。)では,特別な教育的支援を必要としている子ど
もたちへの指導を行う際の配慮すべき点として「ほめることで自己肯定感を高める」「個々の児童生
徒を大切にした学級づくり 」「学習・行動特性に合わせた指導」「学習環境の整備(調整 )」の4点が
基本であると記述されている。
(2)学級担任の気付きと理解
学級集団の中に,学習上や行動上で著しい困難を示している児童がいる場合,その存在にいち早く
気付くのが学級担任である。しかし,軽度発達障害の子どもたちの学習上や行動上での著しい困難さ
を理解することは難しい場合もあり,ただの怠け等と誤解し見過ごしてしまうことも少なくない。一
斉授業・指導の中で,どうしても叱ったり大声で注意したりする場面が多くなると,次第に本人のや
る気を失わせてしまうこともある。その度に自己イメージ・自己肯定感を下げさせ,自分を大切にし
ようという気持ちを弱くさせてしまうことも考えられる。学習面や行動面のつまずきに対する適切な
配慮や対応がなされないと,学習全般の遅れや集団生活への適応などが難しくなり,二次的な問題を
生じさせてしまうこともある。
最近は,入学以前に保護者から ,「うちの子はLDと診断されました 。」などと話があることも珍
しくない。また,保護者も本人もそのような状態であるとは意識せず,ましてや相談機関や医療機関
に行くことなど思いもよらない子どもたちもいるであろう。医学的な情報や心理学的な情報は確かに
より深い理解と効果的な支援を可能にするが,学級の担任としてはそれらを手がかりに,認知面や行
動面,社会性などの領域で何らかの配慮や支援がないと育ちにくいという状態に気付くこと,そして
それに対し,丁寧な観察や配慮が必要であろう。
「ガイドライン」においても ,「児童生徒一人一人に適切な教育的支援をしていくスタートとなる
のは,児童生徒の出している様々なサインに対して『変だな? 』『どうしてかな?』という担任の気
付きです 。」と担任として,児童生徒の出すサインに気付く感性を持つことの大切さが記述されてい
る。困難の背景にある問題を捉えるのは容易なことではない。その児童の困難なところだけでなく,
よいところや優れたとろなど全体像を捉えて見ていくことが配慮を必要とする児童への気付きとなる
であろう。
特別な教育的支援を必要とする児童一人一人のニーズに応じるためには,子どもを理解することが
-5-
- 特別支援 前提になる。本研究における子どもの理解は,対象児(以下,A児という。)や保護者の願いを理解
し,さらに自立や社会参加の視点から子どもを取り巻く環境も理解したいと考える。
(図2)子どもの理解
担
任
例)・授業中,気が散りやすい。
家庭からの情報として
気付き
例)予定が変わると戸惑う。
・席を離れることが多い
例)・多くの刺激があると混乱
背景の理解
例)その場その場での変化を理解して
しやすい
それに応じた対応
例)・刺激の少ない教室環境
・指示は短く簡略に
例)日常と違いう活動がある場合は事
サポート
前に知らせる。状況を示し,安心
・集中できる量の課題
感・見通しを持たせる。
課題
課題に向けた目標
目標に至るルート
教師側・・・・多様な指導方法が求められる。
児童生徒側・・自分に合った学習方法を選ぶ。(学習スタイル)
自分に合った学習方法とは,あきらめる,簡単にする,やさしく対応すると言うことではない。
どうしたら,学習しづらさを軽減でき,力をつけられるか,どうしたら その子の特性に合った伸
びやすい方法で力を伸ばしていくけるか,という発想である。
(3)認知特性に応じた指導について
認知とは,情報の入力やその処理に関する特徴であり,見たり,聞いたり,触ったり,運動をした
りする時に感じる様々な刺激を,脳の中に取り込んだり表出したりする課程をいう。
認知面の得手・不得手をできるだけ正確に理解して指導にあたることは,軽度発達障害の児童生徒
への指導にかかわる基盤である。児童生徒に適した条件を備えた教材であるか,指導の意図が伝わり
やすい手段であるかといった主に指導方法の設定とのかかわりが重要であると考える。
知的発達に大きな遅れはないものの,学習面において見られる特異なつまずきや習得の困難さは,認
知発達の部分的な遅れや偏りがひとつの要因となる。視覚や聴覚などの,知覚的な鋭敏さや鈍感さ,
あるいはこだわりの強さなどは,子ども特有の認知発達的特長によりもたらされていると考えられる。
認知面の特徴や情報処理の特性の状態を把握し,適切な支援をするためにアセスメントが必要とな
る。本研究におけるアセスメントは,子どもの現状を理解し,教育支援の目標を設定し,その目標を
達成するための方法や場を決定する過程全体を意味するものである。このアセスメントの結果は
「Plan-Do-See」のプロセスからなる個別の指導計画の中に位置づけることができる。
特別な教育的支援を必要とする子どもたちの指導にあたり,それぞれの特性を十分理解した上で対
応することの大切さが「最終報告」に記述されている。その際の具体的な配慮事項として,次のよう
にあげられている。
<高機能自閉症等の指導 >
・図形や文字による視覚的情報の理解能力が優れていることを活用する。
・学習環境を本人にわかりやすく整理し提示する等の構造化する。
・問題行動への対応では,問題行動は表現方法の一つとして理解し,それを別の方法で表現する
-6-
- 特別支援 ことを教える。
・環境の構造化のアイディアを取り入れること(見通しが持てる工夫や,ケースによっては個別
的な指導ができる刺激の少ないコーナーや部屋の活用等)が効果的である。
・情報の受け入れ方や心情の理解などにおいて,障害のない者とは大きく異なることを踏まえた
対応をする。
( 「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」より)
(4) 「個別の指導計画」について
①
個別の指導計画とは
「個別の指導計画」は,平成 11 年3月告示の盲学校,聾学校及び養護学校指導要領において,重複
障害者の指導,自立活動の指導にあたり作成されることになっている。[ガイドライン」では ,「小
・中学校における LD,
ADHD,高機能自閉症の児童生徒についても,必要に応じて作成することが
望まれます。」と記述されている。
平成 15 年に文部科学省が公表した「最終報告」以降,適切な支援の実現のために強調されている
「計画」策定の一つは「個別の教育支援計画」である。トータルプランとしての「個別の教育支援計
画」の策定を踏まえて教育課程が編成され,教育課程を個々の児童生徒に合わせて具体化するために,
「個別の指導計画」が作成されることになる。いいかえれば,「個別の指導計画」は,児童生徒一人一
人の障害の状態等に応じたきめ細やかな指導が行えるよう,学校における教育課程や指導計画,当該
児童生徒の「個別の教育支援計画」等を踏まえて,より具体的に児童生徒一人一人の教育的ニーズに
対応して,指導目標や指導内容・方法などを盛り込んだものである。
通常の学級では,各学校の教育課程に沿って学年ごとに教科・領域が立てられるが,特別な教育的
支援を必要としている児童生徒に対しては教科・領域だけでなく,日常の生活全般も含め,個々の児
童生徒に応じた「個別の指導計画」が必要になる。
( 図3)個別の指導計画活用のサイクル
「個別の指導計画」は,単元や1学期間,あるいは,1年
気付き
実態把握と考察
Plan (計画)
個別の指導計画の作成
Do(実施)
支援の適切性
間,個々の児童生徒の実態に基づいて,短期的及び長期的
目標を示し,指導の手だてや指導の計画を明らかにするも
のである。指導の状況を定期的に評価していくようないわ
ゆる Plan(計画)− Do(実施)− See(評価)のサイクルの下
児童の変容
で指導を進める。したがって ,日々の授業案にも深くか
See(評価)
かわるものである。実態把握にあたっては家庭での様子な
どについて保護者から情報を集めること,作成に際しては,
(「山梨県教育委員会校内支援ハンドブックより)
学級担任や特別支援教育コーディネーターや校内の通級指
導教室,特殊学級などの担当者らと十分に連携しながら,校内委員会で検討するなどして共通理解を
図ることが大切である。
「個別の指導計画」の作成にあたり,書式のポイントとして次のように考える。
○個別指導のための計画ではなく,通常の学級(集団)の中で,対象とする子どもに対してどのよ
うな支援(配慮)ができるかといった視点に立って作成する。
○指導にかかわる職員が共通認識のもとにかかわるためには,作成や評価にあたっては複数で行う。
○様々な指導・支援の形態が考えられるので,各項目は概括的なものとし,児童の実態に合わせて
-7-
- 特別支援 小項目を設定する。
○「支援方法 」「
・ 支援の形態」は,直接的な指導にかかわる手だてや指導の前段階の配慮に重点を
置いた手だてを含む。
○「子どもの目標に対する評価」と ,(
「 指導者自身の)手だてへの評価」とを区分し,子ども自身
の達成度の評価と,その子どもに対してとった手だてが効果的であったかどうかの評価が明確に
なるようにする。
Ⅳ
研究の具体的目標
対象となるA児について「個別の指導計画 」[1]を作成し,それに基づいた「支援の方法」を小
学校4年生の国語の学習過程[2]に取り入れ ,[3]のような通常の学級における学習指導案を作
成する。その学習指導案に基づいた授業を行い,特別な教育的支援を必要とする子どもたちへの支援
の在り方を検証する。
([1]「個別の指導計画」)
(〔2〕 学習過程)
保護者の評価
指導目標・内容
展開
時
第
1
支援の方法
学習活動の重点
○単元全体の内容を確かめ,学習の構えを持つ。
○橋について知っていることを発表し合う。
一
学 国語
2
習
次
○『アーチ橋の仕組み』を読んで
文章の構成を概
観し,初めて知ったことなどを発表し合う。
面 算数
([3] 国語科学習指導案)
(展開例)
学習活動
学級への□支援と留意点◎評価
1新出漢字の練習をす
□(書き順を声に出しながら)指
□学習への集中を高めるために,空書
書,空書 ,なぞり書きで繰り返し
きのとき,全員そろって3回練習し
練習し,漢字の定着を図る。
た後に,A児を指名し,空書の確認
る。
2「何々でしょうか」
で終わり,問題を投
本児への□支援
◎評価
をする。
げ掛けている文章を問
◎新出漢字を空書することができたか。
題文という。
研究の方法と内容
1
研究方法
検証の目標に基づいて試案の作成を行い,教育工学的研究法により,思考,評価,改善を行って目
-8-
- 特別支援 標を達成する。
(1)試案の手順
①
過去の情報の整理と新しい情報の収集
○過去の情報の整理・・・引継資料,前担任や現担任・関係者からの情報
○保護者への説明と協力依頼→情報収集
(平成 17 年6月 23 日)教育センターにて実施
・「個別の指導計画」の説明・調査(聞き取り)
○観察による実態把握 ・・・授業実践前と授業実践を通して変容する児童の様子の比較・変容
○諸検査等の情報収集
・ WISC-Ⅲ(平成 15 年3月 23 日他の医療機関にて実施)
・ K-ABC
②
(平成 16 年6月 19 日他の医療機関にて実施)
収集した情報の分析
○教育的ニーズの把握 ・本人や保護者の願いと客観的情報の関係から(指導助言,文献の活用から)
○個別長期・目標の設定 ・特別な教育的支援の分析(背景,見通し等)・優先順位を決める
○「個別の指導計画」の作成・長期目標にかかわる課題の分析による短期目標の設定
○教育課程,各教科・領域等の指導計画との関連や子どもの興味・関心などを考慮した指導内容や手だての選定
○「個別の指導計画」を盛り込んだ授業案の作成・教科の学習の様子・本児への支援・学級への支援・留意点等
○指導資料・評価資料・教材の作成
③
指導や支援につながる評価
○授業の実践・記録・・・子どもの様子や教師の指導や支援の様子の記録
○授業実践後の評価・・・プリント・自己振り返りカード,担任との情報交換
○評価結果の活用・・・評価結果から得られた課題等を,指導や支援の改善に活用
(2)試案の評価方法
(第1次・第2次)
教育工学的研究法による評価段階において,表1の評価項目に基づき,3段階 A(現状のまま)
B(改善の余地あり),C(前面改善)で評価し,すべてが A になれるように開発する。
(表1)試案の 評価項目
評価項目
目
標
指導計画
評
価
の
観
点
ア 単元目標・各時間の目標が児童の発達段階を考慮し, 実態に即したものであるか。
イ
指導計画は,国語科の目標に照らし,個に応じた指導を進める内容となっているか。
ウ
指導計画は,時間的に無理のないものであるか。
エ
実態に合わせて,必要な支援が指業案の中に盛り込まれているか。
オ
児童が興味を持って取り組み,ねらいを達成できる学習活動であるか。
カ
個別の指導計画やレディネステストを活かし,児童の発達段階にあった学習内容
-9-
- 特別支援 学習活動
であるか。工夫されているか。
キ
発問の内容,提示の仕方は適切であるか。
ク
教師の支援の在り方,指導形態は適切であるか
ケ
評価の観点と方法は適切であるか。
(3) 第3次評価
ア
評価の方法: 第3次評価は,指導モデルを試行し,表1の評価項目とエの検証資料に基づいて実施する。
イ
試行対象学級:小学校
ウ
試行の期間: 平成 17 年 10 月下旬∼ 11 月下旬
試行時間
エ
4年
28 名
全 21 時間(授業 19 時間
事前・事後調査2時間)
検証資料
(ア)事前に収集する資料 :学級担任からの情報収集・レディネステスト・ 心理検査
(イ)授業で収集する資料 :ノート,プリント,テスト,作文 ,授業観察記録
(ウ)事後に収集する資料 :単元テスト・感想カード
2
(1)
研究の内容
「個別の指導計画」の作成
諸検査の結果から
<WISC −Ⅲ>・・・認知発達の個人内差,有意差を見取る。
・言語性 IQ と動作性 IQ の差は 37 であり,5%水準で有意な差があった。
・群指数において「知覚統合」は ,「言語理解 」「注意記憶 」「処理速度」に比べ5%水準で統計
的に有意に高い。見たり聞いたりした情報の相互作用を認識する能力および各要素を1つにま
とめていく能力が高いと考える。
・群指数において「言語理解」は ,「知覚統合 」「注意記憶 」「処理速度」に比べ5%水準で統計
的に有意に低い。言語での指示をイメージ化することの弱さを補うために,言語での指示に合
わせて,絵や図などを用いて理解を促すことが必要である。
・群指数の「注意記憶」が低いが,下位検査の「数唱」課題が高いことから,聴覚的短期記憶が
比較的高いことが推測される。パターン化された問題・数操作であれば得意と考える。
・下位検査を見ると,言語性,動作性共にアンバランスが見られる。特に動作性の下位検査では,
「絵画完成」「符号」「絵画配列」「記号」課題の評価点が平均以下の結果であるものの,「積木」
「組合」課題では平均以上の結果を示している。
・言語性の下位検査では,「類似」「算数」「単語」「理解」が低く,語彙が少なく適切な表現力や
言語による類推力が弱いことが推測される。聴覚的な処理,言葉の理解や操作は全般的に苦手
であるため,具体物を使用したり,覚えるべき内容は体験と結び付けて覚えやすくするなどの
工夫をする。
<K ー ABC>・・・ 認知処理機能の特徴を知る。
・継次処理と同時処理の両尺度間に意味のある差は認められないが,習得度は低い。
・検査時の観察結果によると,A 児は聴覚刺激に対して刺激の一部分に反応する様子が見られた。
このことから,一度に複数の処理をするのではなく,「1番目は○○,2番目は△△,3番目は
- 10 -
- 特別支援 □□。」と順を追って学習することが有効と推測される。
本研究では,山梨県教育委員会「特別支援教育推進体制モデル事業
体制整備と連携
小中学校における校内支援
に関する研究委員会(平成 17 年3月)」で検討された様式を参考に,表 2「個
別の指導計画」(プロフィール表・指導計画)を作成した。
ただし,作成した「個別の指導計画」は個人情報であるため,本文への記載は控えた。
( 表 2 )「 個 別 の 指 導 計 画 」
初回記入日
平成
年
月
日
児 童 名
(男・女)
(プロフィール表・指導計画)
記入者
生年月日
平成
年
月
日
指導計画 氏名(
保護者氏名
入学・転入
平成
年
月
日
連
絡
先
)
(平成 年
月 ∼ 年
自宅℡
記 入 日
平成
年
月
日
(評価: 月)
記入者
携帯℡
指導目標
学年・組
年,
担任名
平成
年度
平成
年度
年
担任名
平成
年度
年
担任名
手だて
指導の
評価
家族構成
保護者
の希望
障害の状況
諸検査の結果
保護者
の評価
指導目標・内容
相談機関等で
の診断・相談
記録
支援の方法
支援の形態
評
学
習
学習面
学
校
生
活
の
様
子
面
行動面
行
動
面
コミュニケーション
言葉遣い
対人関係
コミ
ュニ
ケー
その他
ショ
ン・
言葉
生育歴等
特記事項
対
人
関
保護者・
本人の願い
係
そ
の
他
学校・
担任の願い
- 11 -
。
価
月 )
- 特別支援 -
(表3)学習活動計画
時
1
2
(19時間扱い)
学級全体
○単元全体の学習を確認し、学習の計画を
立てる。
プリント等
ワークシー
ト1
◎研究授業
本児
○単元全体の流れを知り、学習の内容
の大体をつかむ。
○新出漢字・読みかえ漢字の学習をする。
漢字カード
○新出漢字・読みかえ漢字を学習する
○『アーチ橋の仕組み』全文を読み、初め
ワークシー
○『アーチ橋の仕組み』を声に出して
具体的な支援
・ 板 書 と 合 わ せ な が ら プ リ ン ト に 記 入 。・ 拡 大 文 章 を 用 意 ・ 事 前
に漢字に読み仮名をふっておく。ページごとに分け、指を置き
な が ら 見 て 、漢 字 を 声 に 出 し て 読 む 。・ 漢 字 カ ー ド で 確 認 す る 。
「声 に 出 し て カ ー ド 」 に シ ー ル を 貼 る 。
第
3
の 感 想 を 話 し 合 う 。文 章 の 構 成 を 考 え る 。 ト 2
4
形式段落に番号を付ける。意味調べをす
プリント
最後まで読み、友達の感想を知る。
○形式段落に番号を付ける。
る。
一
5
○大段落(一)を読んで、書き表し方の工
夫や段落どうしの関係を捉える。
6
○一番目の「疑問」を解くための実験を行
◎
7
8
9
○大段落(二)を読んで、書き表し方の工
夫や段落どうしの関係を捉える。
○大段落(三)を読み、アーチ橋の歴史と
ワークシー
ト3・ 4
プリント1
○ 「 ま ず 」「 次 に 」「 こ の よ う に 」 の 言
葉に慣れる。
○実験の手順にそって確かめる。
・三つの橋の似たところに気が付くように簡略化した橋の絵を用
意 す る 。・ 文 章 に あ っ た 場 面 の 絵 を 提 示 し て い く 。 言 葉 カ ー ド
を つ か う 。・ 板 書 と 合 わ せ な が ら プ リ ン ト に 記 入 。 大 段 落 ( 一 )
のプリントを用意。
ワークシー
ト 5・ 6
ワークシー
○ 「 ま ず 」「 次 に 」「 最 後 に 」 の 言 葉 に
慣れる。
・ 文 章 に あ っ た 場 面 の 絵 を 提 示 し て い く 。・ 言 葉 カ ー ド を つ か う 。
・ 板 書 と 合 わ せ て プ リ ン ト に 記 入 大 段 落 (二 )の プ リ ン ト を 用 意 。
○アーチ橋の歴史と現代のアーチ橋と
・ 大 段 落 ( 三 ) の プ リ ン ト を 用 意 。・ 文 章 に あ っ た 場 面 の 絵 を 提 示
ト 7
の違いや同じ点について考え、プリ
し て い く ・ 板 書 と 合 わ せ な が ら プ リ ン ト に 記 入 。 「声 に 出 し て
て発表し合う。
プリント3
ントに書く。
カード」にシールを貼る。
○ 「 ま ず 」「 次 に 」「 こ の よ う に 」「 こ う し
○三つの大段落に小見出しをつけ、全体の
文章構成を捉える。
11
に記入。
現代のアーチ橋との違いや同じ点につい
て」などのはたらきについて考える。
10
カ
ー ド に で き た ら シ ー ル を 貼 る 。・ 板 書 と 合 わ せ な が ら プ リ ン ト
・事前に番号をておく。
い叙述の内容を確かめる。
次
・ 拡 大 文 章 を 段 落 を 意 識 し な が ら 読 み 進 め る 。 「声 に 出 し て 」
○ 「『 ア ー チ 橋 の 仕 組 み 』 豆 辞 典 」 を 学 習
する。
○新出漢字・読みかえ漢字を学習する
ワークシー
ト8
ワークシー
ト9
ワークシー
ト
漢字カード
○ 「 ま ず 」「 次 に 」「 こ の よ う に 」「 こ
うして」
・板書と合わせながらプリントに記入。
等の言葉に慣れる。
○三つの大段落に小見出しを聞いて書
・それぞれの小見出しを、いくつかの例の中から選択させる。
く。
○ 「『 ア ー チ 橋 の 仕 組 み 』 豆 辞 典 」 を
学習する。
○新出漢字・読みかえ漢字を学習する
・板書と合わせながらプリントに記入。漢字に読み仮名をふって
おく。ページごとに分け、指を置きながら見て、漢字を声に出
し て 読 む 。・ 漢 字 カ ー ド で 確 認 す る 。 「 声 に 出 し て カ ー ド 」。 友
達と取り組んで書いたことを発表する。
第
12
○『実験したことをもとに』を読んで、簡
プリント
○『実験したことをもとに』を読む。
単な記録文の書き方を理解する。
・拡大文章を用意・事前に漢字に読み仮名をふっておく。指を置
き な が ら 見 て 、 漢 字 を 声 に 出 し て 読 む 。・ 漢 字 カ ー ド 「 声 に 出
してカード」を使う。
13
二
14
15
○簡単な実験計画を立て、実験したことを
メモに取る。
○メモをもとにして記録文を書く。
17
ワークシー
○ 『 点 ( 、) を 打 つ と こ ろ 』 を 読 み 、 読 点
のはたらきや、打った場所による意味の
ワークシー
ト 2枚
違いについて理解する。
18
◎
とをメモに取る。
○メモをもとにして記録文を書く。
○読点の打ち方や、組み立て方が明確かど
○作品を発表し、メッセージカードを通し
自身の記録文を振り返る。
○ 『 点 ( 、) を 打 つ と こ ろ 』 を 読 み 、
読点のはたらきに気付き、読点を文
○読点の打ち方や、組み立て方に注意
しながら読み返す。
メッセージ
カード
・いつもと授業形態が違いうので、活動の手順を確認する。グル
ープの中のメンバーを考慮する。
・事前に少し書いておく。書く場所を確かめて、時間を決めて取
り組ませる
中で使うことに慣れる。
うかに注意しながら読み返す。
19
○簡単な実験計画を立て、実験したこ
ト
16
次
ワークシー
ト
○作品を発表し、メッセージカード
を通して自身の記録文を振り返る。
・ 板 書 と 合 わ せ な が ら プ リ ン ト に 記 入 。 「声 に 出 し て カ ー ド 」 を
使う
。
・最後まで問題に取り組むよう励ましの言葉をいつもよりかける
・ 書 い た 文 章 を 声 に 出 し て 読 む 練 習 を す る 。友 達 の 前 で 読 み 合 い 、
メッセージカードに感想を書くことを知る。
・ 活 動 の 手 順 を 確 認 す る 。・ 初 め て 合 う 人 の 前 で 、 自 分 の 文 章
を読むことができるよう、様子を見て声をかけたり、二人組み
で取り組ませる。
(表 4 ) 授 業 場 面 に お い て , 本 児 は , 逸 脱 ・ 離 席 な ど の 行 動 を 起 こ し た り す る こ と に よ り , 授 業 を 成 立 さ せ る こ と が
困難になることがある。その要因に対し、次のように支援をする。
要
因
課題の内容・レベルや量が
合っていない。
支 援 の 方 法
・ 課 題 の 量 を 減 ら す 。・ 何 時 何 分 ま で に ど こ ま で や る こ と を 確 認 し て 取 り 組 ま せ る 。
・スモールステップで課題を提示する。
・部分的でも参加が可能な箇所は一緒に学習する。
課 題 に 対 す る 興 味 が 持 て な ・写真や絵などを使って文章の順序と照らし合わせたり並び替えたりする教材を用意して,
い。
学 習 へ の 参 加 を 促 す 。・ 漢 字 パ ズ ル な ど 一 人 で 行 え る よ う な 学 習 を 用 意 す る 。
・みんなと違いう課題を行うことを,本人も含め,周りが納得する状況をつくっていく。
指示の内容が理解できない。・板書をしたり,写真や絵,文字などを使って指示の仕方を変える。
・ 指 示 は , 短 く 簡 潔 に 伝 え る 。・ 復 唱 さ せ る 。
学級や学習グループの中の ・本児によくかかわってくれる友達に協力をお願いする。
他の児童との人間関係が成 ・事前にグループ分けを考えておく。
立しない
教室環境について何らかの ・暑さ・寒さ・臭い・音など何が原因しているのかを確かめ,気持ちを落ち着かせる。
嫌悪感がある。
他により興味のあることが ・個別に声をかける。その状況により,我慢することを話す。
ある。
急な予定の変更。
・なるべく事前に日程や学習内容を予告しておいて,自分のできる範囲で授業に参加するな
ど見通しを持たせる。
新しい課題の挿入。
・はじめに確認しておく。心配せず,できるところから取り組むように励ます。
生理的な要因。
・授業の前に,トイレや水のみなどの用事を済ます。
- 12 -
- 特別支援 -
(2)
具体的な支援を取り入れた指導案の作成
展開 (11月2日(水)5校時
第7時)
前 ○学習内容 「アーチが橋の組み立てに使われているのはなぜか。」の疑問について、板目紙の実
時
験を通して解決する内容を読み取る。大段落(一)をまとめる。
の
大段落(二)を読み、順序を表す言葉や、キーワードを知る。
学 ○言語活動 接続詞「まず」「次に」
「このように」や指示語「この」
「その」、文末表現「なぜでし
習
ょか。
」
「みましょう。
」
「します。
」に気を付けて読み、筆者の書き表し方の工夫を知る。
段
学習活動
教師の働きかけ
期待する児童の反応 本児への□支援
階
○発問
◎評価
1本時の学習内容 ・本時は、石のアーチ橋の ・大段落(二)
学習の順番をカードで示
・全体の流れを確
つくり方について読み取 ・形式段落⑦∼⑫
す。
(小黒板)
導 かめる。
る学習をしていくことを P 10 L 10 ∼ 12 L 2
読む
入
押さえる。
プリント1
プリント2
(2)
漢字練習
振り返りカード
石をアーチの形に組み合わせるには、どのようにすればよいのだろう。
2課題を解決する ・学習段落を読む際に、留 ・形式段落⑦から⑫の
ために読む。
意する点を確認する。
つながり方を考えな
展
○次の点に気を付けながら
がら学習課題に答え
開 ( 1)学習段落を音 読みましょう。
る段落はどこか、キ
読する。
ア 形式段落のつながり方と
ーワードになる言葉
順序を表す言葉
は何かを確かめなが
イ 大切な言葉
(キーワード) ら読む。
・ 学習課題に答える段落と ア 学習課題に答え
学習課題にかかわるキー る段落は、形式段落
ワードを確認し、形式段 ⑨、 ⑩、⑪
落のつながり方を予想さ ⑦⑧
⑨⑩⑪
( 2)課題の見通し せる。
イ キーワード
を持つ。
段落⑦∼⑫をよく読んで ・土台・ほね組み
問題を考えていきましょ 台形の石 ・かなめ石
プリント1
う。
・大段落(二)に書かれて
いる内容を考えさせる。
( 3)一人学び1を ・順序を表す言葉やキーワ
プリント1
(10)
する。
ードを、文章から読み取
プリント1
らせる。
(4)学び合い1を
( 期間巡視)
する
(5)
(10)
(3)
( 5)一人学び2を
する。
段落プリント
(6)学び合い2を
する。
台形の石を使っ
てアー チの形
ができることを
確かめる。
段落相互の関係
をまとめる
○順序を表す言葉を入れて
正しい順番に並べましょ
う。
・おおよその内容が読み取
れたところで、5枚に切
らせて並べなおしてさら
に段落のつながりを押さ
える。(期間巡視)
・絵図や模型を使って確か
める。
○6つの段落の関係をまと
めましょう。
・形式段落⑦∼⑫の関係を
つかむ。
・確認した後、ノートへは
る。
読むことができる。
・答えを選択させたり、
答えの文字数がヒント
になるプリントを用意
する。
・はさみの使い方に注意
する。
・前に提示した拡大文章
と照らし合わせる。
・絵図や模型で確かめさ
せる。
◎絵図や板書や個別の指示
により、問題を考えるこ
とができる。
・ノートに貼る場所を確
かめる。
プリント2
漢 3 漢字ポケット ○今日の漢字は何でしょう
字
か。
(10)
漢字の学習をす ○漢字の読み方をカードで
る。
確かめる。
プリント
○正しく漢字が書けている
か確かめる。
(期間巡視)
終 4本時の反省・ま ・授業を通して思ったこと
振り返りカード
末 とめ
や感じたことをカードに 班長が配り、まとめる。
記入する。
(5)
- 13 -
・大段落(二)の文章プ
リントを用意する。
・読みにくい漢字には、
読み仮名をふっておく。
◎友達と一緒に声に出して
○わからない漢字は、後
回しにして次の漢字に
移ることができるよう
に言葉をかける。
○得意な学習であるため、
できたことを特にほめ
て認める。
振り返りカード
- 特別支援 授業で使用した
プリント1・2
プリント1
Ⅵ
プリント2
研究の結果と考察
1
研究目標の達成状況
(1)A児の授業の取組について
A児への支援を,一斉指導の中に位置づけるために,国語の授業を通して検証した。授業実践前
に国語の授業を参観した時のA児の様子と比較すると,友達と一緒に課題に取り組む時間が長く,落
ち着いて次の行動に取り組む姿が見られるようになってきている。研究協力員の先生方との研究会や
本人の行動観察(ビデオ)からもそのことが伺える。
図5,図6は,A児の授業実践前後の授業への取組状況の変容を,実践前と研究授業を対象に,1
単位時間( 45 分)のA児の参加の状況を「プラス行動」と「マイナス行動」の時間的な割合を分類
したものである。その結果,プラス行動が実践前に比べ増加し,特に,
「E:指示に従っての活動」(31%
増),「D:教師の話を聞く 」( 15%増)が増加し,マイナス行動の「c:ボーっとするなどの不注意
になる」(1%減),「a:離席」(43%減),「b:手遊び」(1%減)が減少したことなどが明らかになっ
た。
プラスの変容は,一連の授業展開がほぼ同じスタイルで行われたため学習に見通しを持つことがで
きたことやA児の特性や学習状況にあったプリントが準備されることで,できる状態が続き学習への
意欲が高まったことなどが理由として考えられる。一方で ,「挙手 」「友達の発表を聞く」は,プラ
スの結果に高めることは本授業実践の中では認められず,これからの課題とし何らかの支援を考えて
いく必要があるであろう。(プラス行動A∼ E,マイナス行動a∼d)
(図5)実践前の授業への取組の状況
(図6)研究授業時の授業への取組の状況
d指示 A挙手 C発表
に従わ
0%
0% B発言
c不注
を聞く D教師
ない
意
0% の話を
2%
3%
聞く
b手遊
7%
び等
3%
E活動
33%
a離席
実践前
52%
c不注意
2%
b手遊び等
2%
a離席
9%
E活動
64%
B発言を聞A挙手
く
0% d指示に従
わない C発表
0%
0%
1%
D教師の
話を聞く
22%
実践後
特別な教育的支援を必要とする子どもが在籍する学級では,指導計画や授業の構成を改めて見直す
必要がある。そのためには,実態把握に基づく個別の指導計画を作成し,それを授業案の中に取り込
んだ授業を展開することで具体的な支援の方法が見えてきたことが多い。特別な教育的支援を必要と
する子どもの持つ課題やよさを把握しておくと,一緒にいる中でできることを増やすことができ,周
- 14 -
- 特別支援 囲のかかわり方も見えてくる。担任が対応できる教科指導の内容を,その学級が必要としている教科
指導の単元のねらいや授業を通して育てたい力と個別の支援のニーズから,明らかにしていくことが
求められる。
(2)学級全体の支援から
「振り返りカード」や授業後の児
童の感想(表5)を見ると ,「説明
が順序よくわかった 。」「作文が書き
やすかった 。」等,授業に進んで取
り組んだ様子が読み取れた。
これらは, A 児にとって用意した
(表5)「児童の感想」より 一部抜粋
○プリントで書く順序や,「また」「
・ そして」などの言葉がわかって,作文が書きやす
かった。発表する時どきどきして読んだけれど,しっかりと読めたからほっとした。
○説明文はつまらないと思ったけど、勉強しながらアーチの形の橋がなぜがんじょうか
説明が順序よくわかっておもしろかった
○アーチ橋の名前や,日本にあるアーチ橋のことまで調べてびっくりした。作文には
自分の思ったとおりのことを書くことができた。みんなに聞いてもらえた。
○アーチ橋の仕組みのプリントが簡単にわかった。がんばった。
○作文をよく考えて,2 枚も書けてうれしかった。
○アーチ橋のことをおもしろく楽しく教えてくれたことが,今でも心に残っている。
○文を読めば答える言葉が見つかってよくわかった。
プリント・カード等の教材,細かいステップで進めた授業の流れ等の工夫により,他の子どもたちに
とってもわかりやすい授業につながったと考えられる。
2
指導モデルの改善と評価
通常の学級において求められる教科指導の形態について,教材の工夫と授業の流れの視点から評価
し,改善点を考察する。
(1)教材の工夫
ア
視覚的な提示
特別な教育的支援を必要とする子どもの得意な情報処理能力等を活かす。A児は,視覚からの情報
が入りやすく処理もしやすい特性であるため,指示は「短く 」「具体的に 」「わかりやすく」伝え,
大切なことは,カードに書いたり,板書をしたりする。また,文章の内容を絵で示すと分かりやすい。
イ
板書
児童が取り組むプリントを拡大したものを黒板に貼ることで,何をどこに書けばよいかわかりやす
い。授業の第 10 時から拡大プリントを黒板に貼ることをなくし,児童の書き込むプリントと位置を
合わせるように文章や語句を板書した。視写が得意なので,書き込むところがわかりやすく,ひとり
でも取り組むことができた。特に大切な語句は,カードにして貼ったりチョークの色を変えて書くよ
うにしたりすると,順序を表す言葉やキーワードなどがより強く記憶に残る。
ウ
学習プリント
語句を見つけやすいように字数のヒントがあると答えを書き込みやすい。内容が難しい場合,語句
を考えさせるのではなく,選択肢として語句をいくつかあげておくとわかりやすい。また,何のヒン
トもなく語句を取り出すのは難しいため,空欄を埋める形式にすると,前後の言葉を手がかりに答え
を見つけやすくなる。キーワードを並べていくと,文章構成の指導にもつながる。学習プリントを工
夫することで,自ら進んで取り組み,できたという達成感を味わうことができる。
A児のプリントの実際
- 15 -
- 特別支援 エ
スモールステップと課題の小分け
授業中に思わぬ対応が生じたり ,
個別の対応の必要に迫られたりした場合やA児が何らかの原因
で授業に参加することが困難な状況の場合に,取り組むことが可能な他の教材を用意する。例えば,
無理なく取り組める問題数のプリント,1枚のプリントを小分けにしたプリント(スモールステップ),
本人が好んで取り組む漢字カードなどである。そのためには平素より手軽に使える教材集や本などを
そろえておくとよい。同学年ではお互いの教材やプリントなどを共有し合い,児童の実態に応じて他
学年にまたがって使用し合うことが考えられる。また,担任だけではなく特別支援教室の担任と協力
し合い,計画的・継続的に教材づくりを進められるとよいであろう。
A児のプリントの実際 (小分けにしたプリント)
A児の作文の構成メモ
一斉の授業の中でA児に個別にかかわっている間,ほとんどの児童は自分の力で問題の文章を読み
正しく語句を記入することができた。A児にとって工夫したプリントであったが,自分の力で何とか
解こうと意欲的に取り組む姿がみられた。集中力が長続きせず最後まで取り組むことが苦手な児童や
文章を読むことに苦手意識を持つ児童などにも有効であった。
(2)授業の流れ
ア
導入
この時間はどんな学習をするのか,見通しを持たせるために学習のめあてや
流れを示す。「音読」「意味調べ」「プリント」「
「 漢字練習」「国語ドリル」など
の言葉カードを,授業の流れにあわせて貼った小黒板を児童の見える位置に掲
示する。その授業に取り組む児童の姿勢を決めていく導入時に,授業への興味
・関心を持たせるとともに,前時の学習内容を思い起こさせながら大まかに授
業の流れを知ることで,安心して授業に臨むことができる。次に何をするのか
見通しを持つことで,何をやるべきか理解しやすくなり,学習に集中しやすくなる。
イ
個別のかかわりの時間をつくる
本研究授業では,
「ひとり学び」「
・ 学級学び」の時間を設定した。5分∼ 10 分ほどの「ひとり学び」
の時間を確保し,個別にかかわる時間をつくる。その後,児童のそれぞれの考えを出し合い,答え合
わせなど友達のいろいろな考え方を求め合い確認する「学級学び」の時間をつくる。期間巡視をしな
がら,個々につまずきやよさを見つけることもできることがある。個別に対応している間に,進度が
速い子どもたちや他の子どもたちが何をしているのかを明らかにしておき学習の保障をすることも大
切である。
ウ
児童の得意な学習を取り入れる
A児だけの力で取り組める学習内容や得意な学習(例
漢字の読み書き)を知り,授業の中に組み
込む。自信を持って学習・活動できる時間を設定することで,気持ちの切り換えができるとともに,
A児の得意な学習能力(漢字を正しく読み書きできる。また,すらすらと文章を読むことができる。
- 16 -
- 特別支援 等)が学級の中で認められることになる。
A児はおり紙が得意である。複雑な折り方でも本に書かれた細かい手順を追いながらきれいに折っ
ていくことができるため,学級の友達も一目をおいている。本研究授業の後半では,物事の仕組みに
ついて順序よく説明する作文に取り組んだ。A児は迷うことなく自ら,「おり紙の仕組み」について
書くことを決めた。頭の中で順序を立てて考えることが困難であるが,「どうしたら,上手になるの
かな。」の質問に対し,「おり紙の本を見る。」「紙の端と端をアイロンのようにピタリと合わせる。」
など,生き生きと言葉のやり取りをしながら,文章を膨らますことができた。
3 本試行モデルの活用の仕方と留意点
学級の中には,様々な支援を必要とする子どもがいることを前提に,実態に応じて柔軟に到達
目標や評価を設定する。子どもたちを支援するグループとして,大きく3つに分けられる。
①一斉の指導に自ら参加できる子ども
教師からの継続した特別な配慮がなくても,授業へ参加し活動できる子ども
②一斉指導の中で,やや配慮や支援が必要な子ども
教師からの継続した配慮や支援があって,授業へ参加し活動できる子ども
③一斉指導の中で,個別の指導計画に基づいたプログラムを盛り込んだ支援が必要な子ども
教師からの継続した特別な・個別的な配慮や支援を必要とする子ども
同じ学年でも,実態に応じ,それぞれの学級経営の在り方が異なってくる。学習指導も同様に,指
導方法や教材を工夫し,個々の到達目標を調整することが必要である。そのためには,A児の保護者,
他の児童とその保護者へ理解と協力を求め,校内の教職員間の共通理解を図ることが大切である。
学級の子どもたちは ,「なぜ,特定の友達だけが別の学習をしていることがあるのか。なぜ,他の友
達と同じように注意されないことがあるのか 。」と思うことが多いので,学級の子どもたちの理解と
納得を得ることは大切である。A児はつまずきの場面においても,自然に言葉をかけてくれる友達,
行動をともにしてくれる友達に支えられている。担任からの一斉の指示をそっと繰り返したり,次に
することを教えていたりと,担任とともにA児に気を配りかかわりあえる学級経営が基盤にある。
Ⅶ
1
研究のまとめと課題
まとめ
本研究では,特別な教育的支援を必要とする児童に焦点を当てて,どのようにしたら一斉の授業に
参加できるのかを国語の授業を通して検証した。
国語の学習において「読む」「書く」「話す」「聞く」の中で,例えば「書く」力を考えた時,視写
ができるようになってもその段階から日記へ,さらに作文へとつなげていくには多くの時間を要する
であろう。ただ,本研究を通して,特別な教育的支援を必要とする児童の持つ認知の弱さをカバーし,
持っている力をうまく使って課題達成に役立てることを日々の授業の中で積み重ねていくことの大切
さを痛感することができた。また児童の行動を見る時,行動そのものの型だけを見るのではなく,そ
の行動の背景にある原因を知り具体的な手立てを考えていくことが大切である。落ち着きがなく授業
の途中であっても席を離れてしまう行動等は「困った行動」ではなく「困っている行動」としてしっ
かり受け止めることである。特別な教育的支援を必要とする児童が持つつまずきや困り感に寄り添い
ながら支援を考えていくことで ,「困っている行動」を少しずつ減らしたり,望ましい学習習慣を持
- 17 -
- 特別支援 てるよう適切なかかわり方ができるようになったりする。教師が意図する学習の成果を前もって明確
にすることは,どういうねらいや手順で指導を行っていくか,その指針が明らかになる。
また,A児のために考えたことが,周りの子どもたちへの分かりやすい授業,的確なかかわりへと
につながったことが,授業の様子やプリント・「振り返りカード」などからもみることができた。「必
要があれば,自分も先生から個別の支援が受けられるんだ 。」という雰囲気が生まれると,子どもた
ちは安心し,特別な教育的支援を必要とする子どもたちに対する特別視が少なくなるのではないだろ
うか。子どもたちは,「認められたい」,「わかりたい」という欲求を持っている。「個別の指導計画」
を活用した教科指導は,特別な教育的支援を必要とする子どもたちに対する支援の在り方の1つとし
て有効であり,きめ細やかな工夫が学級の他の児童にとってもわかりやすい授業につながったと思わ
れる。
2
課題
本研究では,A 児の授業実践前後の授業への取組状況にはプラスの変容がみられた。ただし,授業
時のそれぞれの学習内容に対する A 児の興味・関心,教材・単元等の影響があり一概に比較するこ
とはできないであろう。今後の研究の課題は「指導試案の改善」と「指導事例の蓄積」である。様々
な障害のタイプ別の指導や学年別の指導,様々な教科や特別活動などの指導を蓄積することで,指導
試案の改善が行われ,障害別や発達段階別の指導の手立てを明らかにすることが可能となると考える。
参考文献
・特別な教育的支援を必要としている子どもた
研究協力校
ちのための校内支援ハンドブック Ver.1・2
山梨市立後屋敷小学校
校長
清水
秀幸
山梨県教育委員会(2004)(2005)
・通常の学級における LD・ADHD・高機能自閉症の
研究協力員
指導つまずきのある子の学習支援と学級経営
吉田昌義
他編著
東洋館出版社 (2005)
・軽度発達障害の心理アセスメント wisc-Ⅲの上
手な利用と事例
上野一彦
他編著
日本文化科学社(2005)
朝比奈恵美
大月市立大月東小学校教諭
樋口
明美
山梨市立後屋敷小学校教諭
降矢はる美
笛吹市立石和西小学校教諭
保坂
穂波
甲府市立伊勢小学校教諭
渡邊
恒子
山梨県立かえで養護学校教諭
・学習者の多様なニーズと教育政策
柘植雅義著
勁草書房(2004)
研究指導者 (支援グループ主事)
・LD・ADHDなどの子どもへの場面別サポ
ートガイド 高橋あつ子
ほんの森出版(2004)
岡
輝彦
特別支援教育部研修主事(主担当)
飯田
秀輝
特別支援教育部研修主事
・自閉症や知的障害を持つ人とのコミュニケーシ
ョンのための 10 のアイデア
平成 17 年度
山梨県総合教育センター
エンパワメント研究所(2004)
・教室で気になる子 LD,ADHD,高機能自閉症児
への手だてとヒント
一般留学生研究報告書
小学館(2005)
・高機能自閉症・アスペルガー症候群入門
執筆者
内山登紀夫 水野薫 吉田友子 中央法規(2005)
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一般留学生
新谷
雅美
- 特別支援 -
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