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段差梁を含んだRC造部分架構の有限要素法解析

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段差梁を含んだRC造部分架構の有限要素法解析
安藤建設技術研究所報 Vol.10 2004
段差梁を含んだRC造部分架構の有限要素法解析
鈴木 英之* 藤田 将輝**
F.E.M. Analysis for Reinforced Concrete Partial Frame with Difference Level Beams
by Hideyuki SUZUKI and Masateru FUJITA
Abstract
Reversed beams are sometimes used for apartment houses on the balcony side to ensure good habitability.
However, the structure performance of the beam-column joint where regular beams and reversed beams are
mounted are not apparent. Thus a two-dimensional nonlinearity finite element method (F.E.M.) analysis and
three dimensional linear F.E.M. analysis were performed for this type of partial reinforced concrete frame.
Based on the results of the F.E.M. analysis, the different levels of the beams had little effect on stiffness after
cracks occurred at the beam-column joint, and there was no effect on initial stiffness at oblique loading.
要 旨
住宅系建物では,居住性の向上を目的としてバルコニー側に逆梁を用いることがある。しか
し,逆梁と正梁が取り付く柱梁接合部に関する研究は少ない。本報では,このような段差梁が
取り付く鉄筋コンクリート造の部分架構を対象とし,主に剛性を評価するための二次元非線
形,および三次元線形有限要素法解析を行った。非線形解析の結果より,梁に段差があること
によって,柱梁接合部におけるひび割れ発生後の剛性に若干の差が見られるが,架構全体とし
てはその影響は極めて小さいことが明らかとなった。また三次元解析の結果より,45°入力時
の初期剛性に及ぼす影響は,ほとんど無いことが明らかとなった。
キーワード:逆梁/鉄筋コンクリート/柱梁接合部/有限要素法解析/剛性
1.はじめに
が行われてきた。しかし,構造実験は多大な費用や
近年,住宅系建物では快適空間や更なる居住空間
労力を要し,結果を得るまでに相当の時間を要す。
の確保の点から,バルコニー側に逆梁を用いた,ア
一方,近年では比較的小型の計算機でも処理能力が
ウトフレーム型プランの需要が増えてきている。図
向上し,有限要素法(F.E.M.)解析による机上の検討
1に逆梁によるアウトフレーム形式とした住戸の例
が容易となった。
を示す。この形式は,意匠的には非常に大きなメリ
そこで,逆梁と正梁が取り付く鉄筋コンクリート
ットを生むが,逆梁と正梁が取り付く柱梁接合部で
造の柱梁接合部に着目し,地震応力時の剛性と応力
の構造性能は未解明な点が有る。また,構造計算を
状態を把握することを目的としたF.E.M.解析を実施
行う際には逆梁を正梁に置換し,剛域領域を設定す
した。本報ではF.E.M.による解析手法と解析結果に
ることにより対応しているのが現状である。
ついて報告する。
従来,このような部材の構造性能を検証する際は,
縮小あるいは実大に近い模型試験体による加力実験
*
技術研究所構造グループ
** 建築本部構造設計部門
39
安藤建設技術研究所報 Vol.10 2004
2.解析の種類
段差梁が取り 付く 柱梁接合部
本検討では解析の目的により二種類のF.E.M.解析
外壁位置
な変形を把握するために,コンクリートと鉄筋の材
正梁
採光 バルコ ニー
通風
次元の非線形解析とした。もう一つは45°入力時の
者はRC部材のF.E.M.解析に特化したATENA-2Dとし,
X4
共用
廊下
二重床
正梁
柱
した三次元の線形解析とした。使用プログラムは前
X3
プ ライバ シー
通風
住戸
逆梁
剛性を調べる目的でXY両方向の梁と柱をモデル化
X2
正梁
逆梁
料非線形性を考慮し,実際の配筋をモデル化した二
柱 正梁
外壁位置
逆梁
を行った。一つは,ひび割れ後の剛性低下や局部的
ア ウト フ レ ーム
図1 逆梁をアウトフレームに採用した例
X5
X6
X7
X8
72 75
Y7
逆梁
7 70 0
Y6
G7
G8
解析対象
Y5
G2
72 75
C3
C2
Y4
G4
6 60 0
66 0 0
66 00
6 60 0
66 00
逆梁
77 00
図2 建物の平面図と解析対象とする部分架構
表1 二次元解析ケース一覧
解析ケース
C2-X-00+
C2-X-48+
C2-Y-00+
C2-Y-48+
C2-X-00-
C2-X-48-
C2-Y-00-
C2-Y-48-
C3-Y-00
C3-Y-48
形状
ト形
柱
C2
C3
bxD(mm)
1000x1000
1000x1000
Fc(N/mm2)
十字形
54
54
*
17000 (0.315)
17000 (0.315)
*
-4000 (0.298)
-
24-D38 (一辺7-D38),SD490
24-D38 (一辺7-D38),SD490
7-S13@100 KSS785
pw=0.89%
7-S13@100 KSS785
pw=0.89%
圧縮軸力(kN),(軸力比 )
引張軸力(kN),(軸力比 )
主筋
帯筋
梁
G4
bxD(mm)
650x850
550x850
550x850
Fc(N/mm2)
33
33
33
上端
5-D41 SD490
4-D41,1-D38 SD490
4-D41,1-D38 SD490
下端
5-D41 SD490
4-D41 SD490
4-D41 SD490
4-S13@100 KSS785
pw=0.78%
3-D13@200 SD295A
pw=0.35%
3-D13@200 SD295A
pw=0.35%
主筋
肋筋
直交梁
bxD(mm)
Fc(N/mm2)
G8
G8(逆梁)
G7,G8
G7,G8(逆梁)
G4
G2
550x850
650x850
650x850
33
33
33
G8
G8(逆梁)
*軸力比は圧縮側はコンクリートのFcに対する比, 引張側は主筋の降伏強度に対する比
40
段差梁を含んだ RC 造部分架構の有限要素法解析
3.2 二次元解析モデル
後者は汎用F.E.M.解析ソフトであるADINAとした。
a)解析モデルの形状と要因
3.解析
表1に二次元解析のケース一覧,図3に二次元解析
3.1 解析対象とする部分架構
で対象とする部分架構の形状図を示す。C2柱はト
図2に解析対象とした建物の平面図と部分架構の
字形,C3柱は十字形の部分架構とし,それに直交
位置を示す。本建物は当社の設計施工物件である29
梁が付く形状とした。
階建ての鉄筋コンクリート造純ラーメン架構であり,
C2,C3柱ともに,比較のために梁の段差が無いケー
図中に示したX2通りとX8通りの梁が逆梁となって
スを用意した。表1において,解析ケース名の「00」は
いる。
梁 の 段 差 が な い 場 合 , 「 48 」 は 逆 梁 と 正 梁 の 間 に
解析対象とした部分架構は逆梁を含んだ12階の
480mmの段差がある場合である。また,C2柱に関し
X2Y4通りのC2柱,およびX2Y5通りのC3柱とし,
てはX,Y両方向を対象とし,それぞれ地震時の変動
それぞれ,梁スパンの中央,および柱高さの中央に
軸力を想定して,圧縮軸力時と引張軸力時の解析を
反曲点があるとし,そこで切断したモデルとした。
行った。C3柱はY方向だけの十字形架構とした。本
C2
1000
1000
7200
e.C3-Y-00
115 95
145
850
145
7-S13
1000
100
図3 二次元解析モデルの形状図
650 175
G2
C3
3110
850
3110
100
1130
200
C2,C3 断面図
1130
C3
175
650 850
200
200
100
4100
d.C2-Y-48-,C2-Y-48+
C3
G7
1130
G2
100
7-D38
1000
650
200
C2
109 161115 115 161 109
850
G4
G8
1130
200
850
C3
650 175
650
G2, G4 断面図
1130
-
175 650 175
4100
c.C2-Y-00-,C2-Y-00+
4-S13@100
3110
3110
100
175
G8
+
1130 370 480
200
1130
G8
G4は5-S13@100
C2-Y-48C2-Y-48+
C2
1130
850
200
1000
5-D41
95
200
200
+ C2
175 650 175
550
G7,G8 断面図
1000
3800
b.C2-X-48-,C2-X-48+
C2-Y-00C2-Y-00+
C2
4-D41
850
100
1000
3800
a.C2-X-00-,C2-X-00+
G4
225 550 225
4-D41+1-D38
3-D13@200
200
C2
G8
480 370 1130
3110
200
G4
+
370 480
100
-
1130
3110
G8
G4
1130
850
225 550 225
C2-X-48C2-X-48+
850
+
850
-
1130
200
C2-X-00C2-X-00+
G7
100
1000
7200
f.C3-Y-48
41
安藤建設技術研究所報 Vol.10 2004
表2 使用材料
解析は二次元解析であるため,直交梁はその取り付
く位置のコンクリート厚さを増すことで表現した。
直交梁の長さは柱せいの2倍とした。
b)材料モデル
表 2 に解析に用いた材料を示す。鉄筋,コンクリ
ート共に使用材料に基づく非線形材料とした。コン
種類
材質
使用個所
D38
D41
D13
S13
SD490
SD490
SD295A
KSS785
コンクリート
Fc54
Fc33
梁、柱主筋
梁主筋
あばら筋
帯筋、あばら筋
使用箇所
柱,柱梁接合部
梁
クリートの応力-ひずみ関係を図 4 に示す。圧縮側
の応力-ひずみ関係は式(1)に示す CEB-FIP コ-ド
降伏強度
(N/mm2)
490
490
295
785
Fc(N/mm2)
54
33
σcef
Rcef
1990 による。
σ c ef = Rc ef ⋅
kx − x 2
1 + (k − 2) x
(1)
x=
ε
εc
(2)
k=
E0
Ec
(3)
0
ε
εt
ε0
除荷
ここで,σcef:コンクリートの圧縮応力,Rcef :2
Rcef
軸応力状態におけるコンクリートの圧縮強度,x:
標準化されたひずみ, ε :ひずみ, ε c :応力ピー
eq
Ec
εc
εd
図 4 コンクリートの応力-ひずみ関係
ク点Rcef でのひずみ,k:形状パラメータである。
また,引張側は引張強度までは弾性とし,ひび割
圧 縮-引張
Rc
則によった。
0
  w
= 1 +  c1
Rt   wc

w
3
1 + c1
−
wc
σ
(
wc = 5.14
引張-引張
Rt
れ発生後は式(4)に示す指数関数型のひび割れ開口
Gf




3


w

 ⋅ exp − c2
wc 


)⋅ exp(−c )
2
Rt
(4)
1+3.65α
・Rc
(1+α)2
σc1
α=
σc2
R cef =
(5)
Rc
(6)
ここで, w:ひび割れ幅,wc :応力が完全に解
放されたときのひび割れ幅,Gf:応力の無いひび割
れの単位面積を作り出すのに必要な破壊エネルギー,
Rt
圧 縮-圧縮
引 張-圧 縮
図 5 二軸応力下のコンクリート破壊基準
Rt:破壊関数から導き出される有効引張強度,c1 ,
c)解析手順
c2は定数で,c1 =3,c2 =6.93である。
解析ステップは,第一段階で柱脚のみを固定とし,柱に
コンクリートのひび割れは分散ひび割れモデルと
一定軸力を導入する。その後,下柱の反曲点位置をピン
し,ひび割れの方向はひび割れ発生時の主応力方向
支持,梁の反曲点位置をローラー支持とし,上柱の反曲
から定まる固定ひび割れモデルとした。
点に水平変位を与えた。制御は変位増分とし,一方向漸
2軸応力状態でのコンクリートの破壊基準を図5に
増とした。また,ピン支持,およびローラー支持の位置は
示す。圧縮-圧縮場は図中に示したKupferの破壊基
応力集中が予想されるため剛性の高いプレートを設けた。
準により,引張-引張場では引張強度を一定値とし,
圧縮-引張場は直線とした。
3.3 三次元解析モデル
鉄筋の弾性係数は2.05x105N/mm2 とし,規格強度を降
a)解析モデルの形状と要因
伏点とするバイリニア型とした。なお,コンクリート-鉄筋間
表3に三次元解析のケース一覧,図6に三次元解析
は完全付着とした。
で対象とする部分架構の形状図を示す。C2柱は平
面的にL形梁配置,C3柱は同じくト形梁配置とし,
42
段差梁を含んだ RC 造部分架構の有限要素法解析
表 3 三次元解析ケース一覧
解析ケース
C2-45-00
C2-225-00
C2-45-48
C2-225-48
C3-45-00
C3-45-48
C2-135-00
C2-315-00
C2-135-48
C2-315-48
C3-225-00
C3-225-48
形状
L形梁配置
ト形梁配置
柱
C2
C3
1000x1000
1000x1000
bxD(mm)
*
5500 (0.10)
圧縮軸力(kN),(軸力比 )
梁
G4
G2
bxD(mm)
650x850
650x850
直交梁
G8(正梁)
G8(逆梁)
bxD(mm)
G7,G8(正梁)
550x850
G7,G8(逆梁)
550x850
*軸力比はコンクリートに対する比(Fc54と設定)
200
930
850
3,110
1, 000
225
550
225
G4
B
930
100
200
3,100
A
225
A'
G8
100
200
3, 000
100
B-B'断面図
650
650
1,130
175
3,110
C2
1,130
225
850 480
850 480
G8
G4
175
1, 000
3, 000
100
B-B'断面図
c.C2-48タイプ
200
930
930
G8
2, 700
550
225
175
3, 000
650
175
1, 000
3, 000
100
e.C3-00タイプ
650
850 480
480 370
930
G8
850
3,110
G4
A-A'断面図
200
225
100
2, 700
550
1, 000
G8
G8
G4
C2
1,130
C2
930
d.C3平面図
B-B'断面図
100
1, 000
200
100
B'
2, 800
G8
C2
200
200
225
100
175
3,100
G8
G4
G8
930
C2
930
175 650
1,000
G4
850
3,110
850
3,110
G4
A-A'断面図
100
1, 000
550
1, 000
200
100
3,110
A'
G8
C2
175
225
B
A
650
b.C2-00タイプ
480 370
200
225
2, 700
A-A'断面図
550
175
1, 000
C2
100
225
225
G4
930
a.C2平面図
1, 000
550
G8
850
3,110
2, 800
C2
930
1,000
650 175
B'
1, 000
C2
G8
650
175
1,000
G4
G4
1, 000
A-A'断面図
100
C2
2, 700
G8
B-B'断面図
225
175
100
3, 000
650
1, 000
175
3, 000
100
f.C3-48タイプ
図 6 三次元解析モデルの形状図
43
安藤建設技術研究所報 Vol.10 2004
135 度方向
45 度方向
45 度方向
様に剛性の高いプレートを設けた。
柱軸力は長期軸力相当とし,一定軸力として与え
た。柱頭部に与える水平変位は RC 部材の弾性範囲
を想定して,層間変形角が 1/1000rad. 程度となるま
で与えた。なお,本解析は線形解析であるが,解析
C2 柱
225 度方向
途中の応力状態を確認する為,ステップを刻んで解
C3 柱
析を行った。
315 度方向 225 度方向
480
a.柱の種類と加力方向①②
正梁-正梁モデル
① ② ③
C2-X-00段差無し,引張軸力
C2-X-48+
段差有り,圧縮軸力
C2-X-48段差有り,引張軸力
正梁-逆梁モデル
(梁段差量:0mm)
(梁段差量:480mm)
b.梁段差量③
例.) C2-45-48
C2-X-00+
段差無し,圧縮軸力
①:柱種類名(C2,C3)
②:加力方向(45,135,225,315)
③:梁段差量(00,48)
図 7 解析ケース名の説明
それぞれにおいて正梁-正梁モデルと正梁-逆梁モ
C2-Y-00+
段差無し,圧縮軸力
C2-Y-00段差無し,引張軸力
C2-Y-48+
段差有り,圧縮軸力
C2-Y-48段差有り,引張軸力
デルを設定した。
変動要因は柱種類,加力方向,および逆梁と正梁
の段差量とした。図7に解析ケース名の説明を示す。
表3において,解析ケース名の「 00 」は梁の段差がな
い場合,「 48 」は逆梁と正梁の間に 480mm の段差が
ある場合である。
b)材料モデル
表 4 に三次元解析に用いた材料定数を示す。材料
モデルは全て線形材料とし,要素は 3D-Solid ( 27
節点アイソパラメトリック 6 面体要素)とした。各
種定数は使用材料に基づき,NewRC 式を参考に設
C3-Y-00
段差無し,圧縮軸力
定した。
表 4 三次元解析に用いた材料定数
使用個所
柱部材
梁部材
部材端部鉄板
弾性係数
(N/mm2)
3.72×104
3.09×104
2.06×106
ポアソン比
0.2
0.2
0.3
C3-Y-48
段差有り,圧縮軸力
c)解析手順
支点および加力点の境界条件の設定法は二次元解
析と同じである。ピン支持,およびローラー支持の
位置は応力集中が予想されるため,二次元解析と同
44
図 8 主応力図,変形図,ひび割れ図
段差梁を含んだ RC 造部分架構の有限要素法解析
4.解析結果
にはほとんどひび割れが生じていない。引張軸力が
4.1 二次元非線形解析結果
作用する場合は,柱全域に柱せい方向のひび割れが
a)主応力図,変形図,ひび割れ図
生じ,柱梁接合部のひび割れも多くなった。
図8に主応力図,変形図,ひび割れ図を重ねた絵
直交梁に段差がある場合は,柱梁接合部のひび割
を示す。同図は梁の引張主筋が降伏した時であり,
れが若干多くなる傾向があった。
変形は10倍して表している。また,主応力は圧縮側
b)変形性状
図 9 に柱のせん断力と柱梁接合部パネルのせん断
の主応力を表示しており,暖色系 ( 白黒階調では白
色 ) になるほど圧縮応力度が大きいことを表してい
変形の関係を示す。これによると,梁と直交梁の段
る。この時の層間変形角は圧縮軸力時で約 6.5x103
差がある場合と,引張軸力が作用する場合は接合部
rad.,引張軸力時で約9x10-3rad.である。
パネルの剛性が低下することがわかる。しかし,梁
同図より梁の変形が支配的であることがわかる。
の段差による影響は軸力変動による影響と比較して
特に,圧縮軸力が作用している時,柱と柱梁接合部
1000
1000
Qc(kN)
900
C2柱 X方向
800
1600
Qc(kN)
900
圧縮軸力
圧縮軸力
700
600
600
1000
500
500
800
400
400
段差無し 引張軸力
段差有り 引張軸力
段差無し 圧縮軸力
段差有り 圧縮軸力
200
100
引張軸力
200
100
0.5
1
1.5
段差無し 圧縮軸力
400
段差有り 圧縮軸力
200
-3
-3
0
600
段差無し 引張軸力
段差有り 引張軸力
段差無し 圧縮軸力
段差有り 圧縮軸力
300
γ(x10 rad.)
0
γ(x10 rad.)
0
2
C3柱 Y方向
1200
700
300
圧縮軸力
1400
800
引張軸力
Qc(kN)
C2柱 Y方向
0
0.5
1
1.5
-3
γ(x10 rad.)
0
2
0
0.5
1
1.5
2
図 9 柱梁接合部パネルのせん断変形
1000
1000
せん断力
Qc(kN)
900
C2柱 X方向
圧縮軸力
1600
せん断力
Qc(kN)
900
C2柱 Y方向
圧縮軸力
800
800
700
700
600
600
1000
500
500
800
400
400
C2-X-00+
C2-X-48+
300
200
-3
層間変形角R(x10 rad.)
0
C2-Y-00+
C2-Y-48+
300
100
-3
0
5
10
せん断力
Qc(kN)
0
5
せん断力
Qc(kN)
900
C2柱 X方向
引張軸力
800
400
200
-3
層間変形角R(x10 rad.)
10
0
5
10
C2柱 Y方向
引張軸力
800
700
700
600
600
500
500
400
C3-Y-00
C3-Y-48
0
1000
900
600
層間変形角R(x10 rad.)
0
1000
C3柱 Y方向
圧縮軸力
1200
200
100
せん断力
Qc(kN)
1400
400
C2-X-00C2-X-48-
300
200
100
-3
層間変形角R(x10 rad.)
0
0
5
10
C2-Y-00C2-Y-48-
300
200
100
-3
層間変形角R(x10 rad.)
0
0
5
10
図 10 柱せん断力と層間変形角の関係
45
安藤建設技術研究所報 Vol.10 2004
極めて小さかった。
図 11 に変形図と主応力図を重ねた絵の一例を示
図 10 に部分架構における柱のせん断力と層間変
す。同図は層間変形角が 1/1000rad.時であり,変形
形角の関係を示す。これによると,梁の段差による
は約 200 倍して表現されている。また,主応力は引
影響はほとんど見られないことがわかる。
張側を正とした最大主応力を表示しており,暖色系
(白黒階調では黒色 )になるほど引張応力が大きいこ
4.2 三次元線形解析結果
とを表している。
a)主応力図,変形図
同図より柱部材の変形に比べ,梁部材の変形が支
a-1 全体 a-2 Y 方向切断面 a-3 X 方向切断面
a.C2-135-00 135°加力(紙面左から右) 段差無し
b-1 全体 b-2 Y 方向切断面 b-3 X 方向切断面
b.C2-135-48 135°加力(紙面左から右) 段差有り
c-1 全体 c-2 Y 方向切断面 c-3 X 方向切断面
c.C3-225-00 225°加力(紙面手前から奥) 段差無し
d-1 全体 d-2 Y 方向切断面 d-3 X 方向切断面
d.C3-225-48 225°加力(紙面手前から奥) 段差有り
図 11 主応力図,変形図
46
段差梁を含んだ RC 造部分架構の有限要素法解析
300
500
Qc(kN)
400
300
Qc(kN)
Qc(kN)
200
Y方向
X方向
200
Y方向
300
Y方向
100
-3
-0.5
R(×10 rad.)
0.0
0.5
1.0 -1.0
-0.5
0.0
1.0 -1.0
0.5
-0.5
-100
-100
C2-135-00-X
C2-135-00-Y
C2-135-48-X
C2-135-48-Y
X方向
-200
-400
-300
200
300
X方向
100
-3
-1.0
-0.5
R(×10 rad.)
0.0
-100
Y方向
-200
X方向
200
100
0
0.5
C2-225-00-X
C2-225-00-Y
C2-225-48-X
C2-225-48-Y
500
Qc(kN)
400
Qc(kN)
100
1.0 -1.0
-3
R(×10 rad.)
-3
R(×10 rad.)
0
-0.5
0.0
-100
0.5
1.0 -1.0
C2-315-00-X
0
-0.5
X方向
C2-315-00-Y
Y方向
-200
-300
1.0
-500
b-1.45°加力
300
200
0.5
C3-45-00-X
C3-45-00-Y
C3-45-48-X
C3-45-48-Y
-300
a-1.135°加力 a-2.45°加力
300
Qc(kN)
0.0
-200
C2-45-00-X
C2-45-00-Y
C2-45-48-X
C2-45-48-Y
-200
-300
-3
R(×10 rad.)
0
0
-100
X方向
100
-3
R(×10 rad.)
0
-1.0
200
100
C2-315-48-X
C2-315-48-Y
-100
0.0
-200
-300
Y方向
-400
0.5
1.0
C3-225-00-X
C3-225-00-Y
C3-225-48-X
C3-225-48-Y
-500
-300
b-1.45°加力
a-3.225°加力 a-4.315°加力
b.C3 柱
a.C2 柱
図 12 三次元解析による柱せん断力-層間変形角関係(初期剛性)
配的であることがわかる。また X 方向および Y 方
2)梁の段差の有無によらず,柱に引張軸力が作用した
向の切断面より,部材内部の主応力をみると,梁の
際には,パネル部分のせん断剛性が低下した。こ
段差の有無によって,若干の差異が見られるものの,
の時,柱の曲げ剛性も低下しているため,架構と
RC 部材が弾性範囲と想定される荷重領域では架構
しての剛性も低下した。
全体に影響を及ぼすものではないと考えられる。
3)柱と梁を含む部分架構として考えた場合は,梁の変
形が支配的であり,直交する梁の段差が架構の剛
b)変形性状
性に及ぼす影響は極めて小さかった。
図 12 に X,Y 方向成分ごとの部分架構における柱
4)45 °加力時にも梁の取り付き方による初期剛性の
のせん断力と層間変形角の関係を示す。同図より,
差は見られず,互いに直交関係にある梁の剛性に
互いに直交関係にある梁の剛性の差が,そのまま部
よる影響の方が大きかった。
分架構の剛性の差に表れており,梁の段差による影
響はほとんど見られなかった。
5) コンクリート系部材の構造性能を照査する際に,
線形,および非線形有限要素法解析は有用な手法
であることが確認された。
5.まとめ
なお本解析は,柱梁接合部における梁の段差が
段差梁を含む鉄筋コンクリート造の部分架構に対
架構の剛性に与える影響に主眼をおいた。段差梁
して解析モデルを作成し,2種類のF.E.M.解析により,
が接合する柱梁接合部内の応力伝達機構や主筋の
以下に示す知見が得られた。
定着性能等の解明は今後の課題である。
1)柱梁接合部に取り付く梁に段差がある場合,柱梁接
合部のひび割れが増え,パネル部分のせん断剛性
が低下する傾向があった。
47
安藤建設技術研究所報 Vol.10 2004
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