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慢性化膿性顎骨骨髄炎の7症例について

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慢性化膿性顎骨骨髄炎の7症例について
45
慢性化膿性顎骨骨髄炎の 7症 例 に つい て
屋
形
秀
樹
横
林
敏
夫
梶
川
幸
良
加
藤
久
夫
中
島
民
雄
常
葉
信
雄
新潟大学歯学部 口腔外科学第一教室 (
主任 :常葉信雄教授)
(
昭和 5
1年 6月 15日受付)
Seven Cas
esofChroni
cPyogeni
cOs
t
eomyel
i
t
i
soft
heJaws
Hi
dekiYAKATA,Toshi
oYOKOBAYASHⅠ
,Yoshi
naoKAJ
I
KAWA,
oNAKAJI
MA & NobuoTOKI
WA
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aoKATO,Tami
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v
e
r
s
i
t
y
(
Di
re
c
t
o
rI Pr
o
f.NobuoToki
wa)
お よび,処置 と経過 の概要 を報告 し,且つ, その
緒
昌
うち 1例 について,やや詳述 し, 参考 に供 した。
ペ ニシ リンに始 まる各種抗生物質の出現, 普及
各症例 について
によ り, 口腔外科領域 に於 いても,各種の重症 な
7症例 については, 別表 1
,2
, 3に一括 した
化膿性疾患が,激減 し,その治療面で も, 長足の
が,以下 のよ うにそれぞれ の概要 を説明す る。
進歩 を とげた。 しか し, 慢性 化膿性 顎骨骨髄炎
は,今 なお,他科領域 の同様 な疾患 と同 じ く, 難
症例 1・72歳,男性。
治 な疾患 として残 され1
) 5), 抗生物質 を 主体 とす
初
4年 5月 1
4日。
診 :昭和 4
る薬物療法 も効果が少 な く, 外科的療法に よらな
主
訴 :右下顎部の腫脹。
ければ,完治は,期待 し難 いものである。
.
5カ月
現病歴 :3年以前 よ り糖尿病に 雁患。 1
今 回, 我 々は, 昭和 43年 よ り, 昭和 5
0年 ま
以前 に,l
了こす 部,辺縁性歯周炎の急性転化 よ り,
で, 8年間に当教室で経験 した 慢性化膿性顎骨骨
急性骨髄炎に拡大 し,慢性骨髄炎に移行す る。
髄炎の うち, 典型的であ った 7症例 をあげ,症状
写
現
真
1
- 45 -
症
4
6
新潟歯学会誌 6巻 1号 1
976年
写
真
2
顎間固定 し,その整復 固定 をはか り, 術後
全身所見 : 3年以前 よ り糖尿病 に雁患。
CER
1日 2g筋注 1
2日間, エ リスロマイシン (
EM)
1日 1
.
2g内服 1
0日間の抗生剤療法 を行 な う。術
局所所見 :左横部か ら顎下部にかけて, びまん
性腫脹 と患側下 口唇院部に知覚鈍麻 を認め, 口腔
内 1
丁
こす部 も, 同様 に腫脹 を認め,Iすす 抜歯寓
後 6年半経過 した現在 も知覚鈍麻は 残留す るが,
よ り排膿 あ り, ゾンデにて骨粗面に触れ ,「
i豆
了
術後 よ り症状の再燃 な く, 写真 2のよ うに骨 の新
に打診痛 を訴えた (
「
豆こす 欠損)
0
生 を 認め, 骨折部 も 癒着 し, 現在予後良好 であ
る。
Ⅹ繰所見 :写真 1の ように, I
すこす 部 に下顎下
・4
7歳,男性。
症例 2
縁部骨皮質 に至 る蜂筒状の透過像 を認めた。
処置お よび経過
セフ 7ロ リジン
(
CER) 1日 2514日間 筋注
初
診 :昭和 4
7年 9月 7日。
主
訴 :右下顎部の腫脹 と疹痛。
2m
m と, 急性炎症 の消退後,
し, 血沈 1時闇値 1
現病歴 :昭和 4
4年,両l部歯槽骨炎を初発, 4
6
aucer
i
z
at
i
on を行 っ
腐骨除去,感染 肉芽掻他 ,s
年1
2月に,その急性転化 と拡大 をみ る。 4
7年 5
た ところ,r
盲甘 部下顎下縁で,病的骨折 を生 じ,
月に,慢性骨髄炎の診断 され, その後 当科依頼 さ
4
71
0
抗 生 剤
外 科的
処
置
M
CE
NC
X
↑
A
M
C
B
E
N
P
C
X
C
5
0
1
F
C
CE
P
SX
D S
C
B
E
_
;C
, 霊
石下
†
汀 抜歯
掻雁
3l舶
席妄除去 .
那
-
▲ ▲
症
臨
の変化
状
床 急
亜急性
悼 性
透過
X 像
線
4
9
1
1
4
85
--i -一ユ-
こ-ー …
増
減
臨床 検 査
WBC1
1
3
0
0
†
細菌検査
†
G
T
cRP(
1
+)
誓
---二二
\
WBC7
6
0
0
†
f
cRP(
-)
WBC1
0
2
0
0
†
↑(-,
?.
?,h,rococcus
図 1
- 46 -
屋 形 秀 樹,そ の 他
写
真 3
れた。
症
1
現
全身所見 :特記事項 なし。
度 の腫脹 と鈍痛 と, 患側下 口唇院部に知覚鈍麻 を
1 1
局所所見 :右横部か ら下顎下線部 にかけて,軽
認め, 311
12 に打診痛 を 訴えた。 (6- 42
I
欠
損)
。
処置お よび経過
図 1は, 症例 2に 使用 した 抗生剤, 外科的処
置, 臨床症状 ならびに Ⅹ 繰所見, 検査所見の変
化 を,簡単に表わ した ものである。
昭和 4
7年 1
0月,図の① の時点で, 写真 3のよ
うに 中心部発赤 を 伴 う腫脹を 認める。 白血球数
1
1
3
0
0
,CRP陽性, 顎角部穿刺 よ り得た膿汁 よ り
の細菌培養の結果, グラム陽性球菌が検出され,
その際 の Ⅹ 繰写真では, 右院孔直下 か ら, 右大
臼歯部にかけて, びまん性 の大小不 同の透過像 を
認める。感受性検査 よ り,CER (
帖)
, TC (
Ⅲ)
,
CEX)
, ミノサ イ
であった為, セ フ ァ レキ シ ン (
ク リン
(
MI
NO)の経 口投与が行 なわれ, 口腔外
- 4
7-
4
7
48
新潟歯学会誌 6巻 1号 1
976年
写 真
6
写 真 7
写
真 8
よ り院孔直下 の下顎下線部 よ り, 感染肉芽の掻撒
増大 してい る。 さらに半年後,⑧ の時点で, 急性
と,71の抜歯 を 行 ない, 1カ月後 に, 急性症状
化す るが,写真 6のよ うに, 半年以前 にみ られた
5カ月後 の② の時点で,
が, 消退 してい るが, 1・
骨破壊像 は, 改善 され てい る。 この 急性期は,
写真 5のように, 蜂窟状の骨吸収像が,顎角部に
CEX,MI
NO, AB-PC にて, 抗生剤療法行 なわ
- 48
-
屋 形 秀 樹,そ の 他
写 真
49
9
写 真 1
0
れ, 3週間後,症状は軽快をみている。
は, さらに院部か ら顎角部にかけて拡大 をみ,改
4
9年 1
1月, ④ の時点で, 写真 7のよ うに,骨
善す る傾 向は,全 くみ られず, 外科的処置 にふみ
吸収像 は,大部分消退 し, ほぼ治癒 したかに見 え
0の ように, 口腔外 よ り骨休部の頬
きる。 写真 1
F.
S.
た。 この直後 よ り急性化 し, フシジン レオ (
側 を露出させた。 骨皮質の一部は,消失 し,肉芽
D.
) C.
P.
,ABPC, CEX 投与 で, 1
.
5カ月後
組織が露出 し, 一部に骨膜 との癒着を認めた。残
に,症状 の緩解 をみているが, その直後 の⑤の時
ってい る骨質を削除す ると,骨髄は, 肉芽組織 に
点では,写真 8のよ うに,院部前方 に 骨吸収像拡
置換 され, 虫食い状に顎角部か ら,院部の正 中を
初
大 し, 増悪の傾向にある。 1カ月後⑥ の時点 (
少 し越え,残存骨皮質は, 硬化性変化 を生 じてお
発 よ り6年)で,再 び急性化 し, 患側浅側陳動脈
り,下歯槽動脈,神経 は,残存 させた。 腐骨お よ
よ り, 逆行性 に, 舌動脈分岐部 まで, テ フロン
auc
e
r
i
z
at
i
on を行 い,骨
び,感染肉芽の除去 ,s
管 にて, カニ ュ レーシ ョン し, スルベニシ リン
面に p
ani
myc
i
n(
r
)
bkS)5
0
0mg を軟膏 に 混 じ
(
SB-PC) 1日 3g,朝 夕,1
2日間, セフ ァロチ
て塗布 した。その後,症状の再燃 な く, 経過良好
CET)
, 1日 25,1
0日間, 動注療法行 った
ン (
で,写真 1
1は, 術後 1年 2カ月 であるが, 予後
が,症状の改善をみず, 写真⑨のよ うに骨吸収像
は,極めて良好である。
-
49 -
5
0
新潟歯学会誌 6巻 1号 1
976年
写 真 1
1
写 真 1
2
写 真 1
3
忠, 1カ月後,その急性転化 によ り, 炎症 の拡大
症例 3
.2
3歳,女性。
初
診 :昭和 47年 9月 7日。
主
訴 :右横部 の腫脹 と疹痛。
をみ,その後,慢性骨髄炎に移行 した。
現
現病歴 : 1年 3カ月以前 に,p
tl智歯周囲炎 に雁
- 5
0-
症
全身所見 :軽度の発熱あ り。
51
屋 形 秀 樹,そ の 他
写 真 1
5
局所所見 :右頼部か ら顎角部 にかけての 腫脹,
初
診 :昭和 48年 1
0月 2日。
自発痛,開 口障害, 患側下 口唇院部 の知覚異常 あ
主
訴 :右下 口唇院部 の知覚麻痔。
現病歴 : 1年前 に す千丁 辺縁性歯周炎に 雁患
り, 口軽内 面1
部 に発赤, 腫脹,可 に打診痛 を認
し,それが慢性化す。 半年後,小 臼歯抜歯後,感
めた (
可 欠損)0
Ⅹ綿所見 :写真 1
2のよ うに, 右顎 角部 か ら 上
染 の拡大 をみ る。
現
行枝部にかけて, 蜂窟状の透過像 を認めた。
症
処置 お よび経過
全身所見 :2カ月以前 よ り胃潰癌に雁患。
48年 8月 よ り, 49年 1
1月まで,約 2カ月に 1
局所所見 :患側下 口唇隣部に知覚鈍麻, 患側顎
度程 の, 疹痛 を主体 とした急性化 を繰返 しその都
下 リンパ節 に圧痛 あ り, 口腔内 l
甘こす 部に,歯槽
磨,抗生剤療法が行 なわれた。49年 8月,写真 1
3
頂 よ り,舌側にかけて発赤,腫脹あ り,官有 部 の
の ように,一時改善傾 向を認めた。50年 3月,写
2カ所 の療孔か ら排膿 を認め,L
亨 に打診痛 を訴え
真1
4のよ うに, 右上行枝部に, ある 程度限局 し
た (211
124- 7欠損)
た透過像 を認め, 再度病状の悪化 を認め る。外科
的療法 による時期 と考 えたが, この時点で, 患者
Ⅹ繰所見 :写真 15のように
,
r
TF部に 比較的
境界明瞭な透過像 を認めた。
処置お よび経過
は転居 した。
腐骨除去,感染肉芽掻腰,s
aucer
i
z
at
i
on を行
症例 4・7
2歳, 男性。
- 51 -
5
2
新潟歯学会誌 6巻 1号 1
976年
8
写 真 1
ない,術 後 ABPC,筋注 と内服 で,1
5日間抗生
初
診 :昭和 4
8年 1
1月 1
2日。
1
6の よ うに, 術 後 2年経過
主
訴 :左 横部 の腫 脹 と疹痛。
剤療法行 ない, 写真
5甘 部歯槽骨炎 に雁患 し,そ
現病歴 :4年前 に 「
した現在 に於 い て も,症 状 の再燃 な く, 知覚鈍麻
ち, ほぼ改善 し, 予後 良好 で ある。
の急性転化 に よ り炎症 の拡大 をみ る。
症例 5
.1
5歳,女 性。
現
- 5
2-
症
屋
形 秀
樹,そ の 他
53
写 真 1
9
写 真 2
0
全身所見 :軽度 の発熱 と倦怠感 あ り。
透過像は消退 し,病巣部は, 顎角部に限局 した。
局所所見 :左横部か ら顎下部 にかけての腫脹,
しか し, 4カ月後 に 写真 2
0のよ うに, 上行枝部
圧痛,開 口障害,患側 リンパ節 の腫脹, 圧痛,忠
に,蜂窟状の透過像 を認め, 拡大傾向を認めた。
側下 口唇院部に知覚異常 を認め,口腔内 「
F テ部
症例 6
・7
2歳,男性。
に発赤, 腫脹 と, 丁=
F亨 に打診痛著明 であ った
初
0年 7月 2日。
診 :昭和 5
主
訴 :左下顎部の痩痛 と 同側下 口唇既部の知
(
「
百甘 欠損)。
Ⅹ線所見 :写真 1
7のよ うに 顎角部 を 中心 とし
覚異常。
て,比較的境界明瞭な透過像 を認めた。
0日以前 の l
テ 慢性根尖性歯周炎が,
現病歴 :2
初発であ り, その抜歯による炎症 の急性転化 と炎
処置お よび経過
初診時 よ り, 持続 して
ABPC 1日 29, 20
症 の拡大 によ り, 急性骨髄炎に継発す る。 .
日間,CER 1日 291
6日間,筋注 と内服で, 抗
現
症
生剤療法 を 行 い, 急性症状は 消退 したが, 写真
全身所見 :軽度の発熱 と倦怠感 あ り。
1
8のように蜂窟状 の透過像が増大 し,病状拡大 の
局所所見 :左横部か ら,顎下部にかけて,発赤,
傾向を示す。 49年は 8回, 50年は 8月ま でに 3
腫脹, 自発痛,開 口障害, 患側下 口唇院部,歯肉
回の急性化 を繰返 し,その都度, 抗生剤療法が,
Tこす
に知覚異常認め, 口腔内 何て 部に腫脹, l
0年 8月, 写真 1
9のように峰窟状の
行 なわれ, 5
に打診痛が著明であ り,l
了 抜歯膚 よ り排膿 を認め
- 53 -
5
4
新 潟 歯学会誌 6巻
1号 1
976年
写 真 21
三
三
写 真 2
2
真 23
生剤療法行い, 4
0日後,写真 22に示す様 に,1
7
た。
Ⅹ線所見 :写真 21で, 急性骨髄炎時である為,
月経過 した現在 も,知覚異常は, 残留す るが,症
処置 お よび経過
初診時 よ り,AB
PC
抜歯窟根尖部か ら遠心部にかけて 腐骨の分離 をみ
る。 腐骨 と感染肉芽 の除去が行 なわれ,術後 7カ
変化 を認めず。
1日 2g筋注にて,1
0日
状の再燃 な く,予後良好 である。
間, CEX 1日 1
・
5g内服 にて 3
0日間持続 して抗
-
症例 7・24歳,女性。
54 -
屋
初
診 :昭和 5
0年 5月 29日。
主
訴 :左 横部 の腫 脹。
形
秀
55
樹,そ の 他
指 (7症例 の ま とめ)
小
些 部慢性根尖性歯 周炎が,
現病歴 : 3年以前 の l
7症例 の概要 を表 1
,2
,3に一括 したが, 表 の
1
5歳 か ら 7
2歳 にわた り, 男性
初発 で あ り, そ の急性転化 と拡大 に よ り急性骨髄
よ うに, 年齢 は,
炎 を継発 した。
4名,女性 3名 で あ った。 部位 に関 しては,成書
現
症
)
7
)
,一般 に定型的顎骨骨髄 炎 は,下顎 に
に よれ ば6
全 身所見 :軽度 の発熱 と倦 怠感 を認 め る。
多い と云われ るよ うに, 我 々の場合 も下顎骨が 6
局所所 見 :左眼窟下部 か ら 頼部 に か けての 腫
例 で あ り, 上顎骨 が 1例 で あ った。 症 状初発 よ
脹, 疹痛, 開 口障害, 患側顎下 リンパ節 の腫 脹 と
り, 当科来 院 まで の期間は, 短 い もので 20日間,
圧痛,患側眼窟下部 か ら頬部, 上 口唇部 にか けて
長 い もので は約 4年 に渡 り, そ の間急性再燃 を く
止二ヱ
りか え していた。感染経 路 は, いずれ も歯性感染
知覚異常 を認 め,口腔 内 1
些 部 に発赤,腫 脹
,
で あ った。
に打 診痛, l
ヱ 髄 頬移行部 に療孔 あ り, 排膿 を認
磯貝8)に よれ ば, 1
47例 の急性化膿性 顎骨骨髄
め, ゾンデにて骨粗面 に触れ た。
炎 の大部分 は, 根 尖病巣 と辺縁病 巣 の急性転化 に
Ⅹ線所見 :写真 23で, 骨 吸収像 な どの 明瞭 な
所見 は認 め られ ない。
よる とい うが, 症例 4を除 いた他 の 6例 が, 同様
処置 お よび経過
に, 根尖病 巣 あ るいは, 辺縁病巣 の 急性転化 よ
1カ月 に 1度程 の急性化 を 繰返 した。 細 菌感
受性検査 に基づ き, DbkS.
, カルベ ニシ リン (
C
BPC)
,F
・
S・
D等 の抗生剤療法行
り, 急性骨髄 炎 に継発 し, 慢性化膿性骨髄 炎 に移
行 した もので あ った。
ない。 原 因歯
また 当科受診 まで に, 既 で に何 らか の抗 生剤 は
と思われ る断歯 を抜去, 腐骨 と感染 肉芽除去 を行
授与 され,症例 7を除 いた 6例 は, 原 因 歯 と思わ
い,術 後 7カ月経過 した現在, 症状 の再燃 な く,
れ る歯牙 の抜去 が行 なわれ ていたが, 症例 6は,
知覚異常 も消過 し, 予後 良好 で あ る。
抜歯 が, 慢性 炎症 の 急性転化 と 拡大 の誘因 とな
1
(
性 t垂矧
1.S.T.17
2
部 位 摩匪
陀
44.5.
1
41
左下顎√
削歯性
初り受で
状よ科ま
症発当診
表
外科的処悦
舶蝕(-)
l
4
4
年 4月 急性辺縁性歯周炎1
主力車
生物質l
筆 .
三芸歯
原因歯
の状魔
2.班.S.147
81
4
7・9・7L
右下車
中
司
3.K.K.123 ? l
佑下顎骨卜
歯性
4
8.8.
28
4.I.T.172
5.Y.
M.115
l
48.
l
l.
1
2F
左下顎骨卜
歯矧
., 9
4
21
5
2男 憲琵善意笑
L
g
舶蝕(-)
l
4
7
年 5月 急性智歯周囲炎
4
8.
1
0.21
左下顎骨l
歯性
?
-
初 発 時 診 断名
舶
惇甘
蝕 ?ほ諾 3男 雛
l
舶蝕 (+)
I
4
4年
認 雑 駁
急性歯槽骨炎
主力矧 抗生物BE
I
4
8
7竃 2
#
抗生物質l
讐 7
3鮎
4
5
3
祭抜歯
抗生物質1
幽蝕 (+)
I
5
0
年 7月 慢性根尖性歯周炎120日 抗生物質I
7
9
7
等&
7
i
6.班.
M.172 8 1
5
0.7.21
左下顎骨l
歯性
7.S.H.124
9t
5
0・5・
29
t
k上顎骨軒
4
6
年 7月
-11
月
抗生物質
7=甘 抜歯
ii
桓
-
+)1
言
語 5月 署 鰹
55 -
蓋誉賢周炎
5年 桓生物蛸
宗,
5鮎 [
新潟 歯学会誌 6巻 1号 1
97
6年
表
2
症
例
1
1
I
2
1
3
[
4
1
5
1
6
1
7
所
所
見
有
り, 症例 4は,抜歯後感染 で あ った。初診時の全
もので あ った。
身所見 は, いずれ も,体格,栄養状態は, 中等度
また症例 1は,骨吸収が下顎下縁 に及 び, 病的
で あ ったが, 4例 に軽度 の発熱 を認 め, うち 3例
骨折 を認め るもので あ った。 表 3は,各症例 の処
には,倦 怠感 も伴 っていた。 また症例 1は,糖尿
置 お よび経過 を極 く簡単にま とめた もので, 特 に
病 に雁患 していた。 局所所見では,腫脹 をすべ て
症例 2, 3, 5, 7は表 に記 してある以上 に, 多
の症例 に 認め, うち 5例 に 啄痛 を 伴 い, 開 口障
くの急性化 を繰返 し, また使用 された抗昼剤 は,
害,排膿 を 4例 に認 めた。 また顎骨骨髄 炎の特徴
nc
e
nt氏症候 9)と呼ばれ る
的 な臨床症状である Vi
CP, TC, MI
NO, EM, FSD, CER, 妄
CEX,
CET, AB一
一
PC, SB-PC,CB-PC, DbkS等 であ
知覚異常,顎骨骨髄炎 の急性期 に特徴的 な, 弓倉
り,抗 炎症剤 は, 消炎酵素剤 あるいは,非 ステ ロ
症候 10)と呼ばれ る多数歯 に渡 る打 診痛が あるが,
イ ド系抗炎症剤 が,併用 された。
Vi
nc
e
nt症候 お よび弓倉症候 は,すべ ての症例 に
P.
0・), 筋注 (
Ⅰ
・
M.
), 静
投与方法 は,経 口 (
,7を除いた 5例
認 めた。 Ⅹ 線所見 では, 症例 6
Ⅰ
.
Ⅴ.
)
, であるが, 症例 2に於 いては, 局所
注 (
に,腐骨 の存在 を明瞭 に認め, 症例 6も後 に認 め
に高 い抗生剤 の濃度 を得 る為, 口腔外科領域 の悪
た。症例 4と 6は,比較的それが, 限局 した もの
Ⅰ
.
A.
)
性腫癌 の治療 目的 に 行 なわれ る 動注療法 (
であ り,他 は,蜂窟状 の透過像 を, 広汎 に認 めた
も応用 した。 また抜歯 は, 原因歯 とな ってい る可
- 5
6-
屋 形 秀
表
腫脹,捧痛(-)
知覚鈍 麻
(+)
5
7
樹,そ の 他
3
骨
AB-PC
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・
腫脹,痔痛(+) AB-PC
1.
59
・
知覚鈍麻 (+) CEX
腫脹,痔痛(-)
知覚鈍麻 (-)
腫脹,痔痛(
+)
知覚鈍麻
(+)
能性の有 るものに対 し行 なわれた。 症例 1, 2,
のである。症例 4と 6は, 病巣部の比較的限局 し
4, 6, 7は,外科的療法すなわち, 腐骨除去,
たものであ り,治療期間 も他 に比べ, 短かいもの
感染肉芽掻他, sauceri
zati
on, を行 ったもので
であったが, 症例 2に於いては, 2
.
5年の抗生剤
あ り,症例 3と 5は, 外科的療法の介在の無いも
療法の後にも, 効果を認めず,外科的療法を行 っ
- 5
7-
5
8
新潟歯学会誌 6巻 1号 1
976年
た もので ある。 外科的療法を行 った 5例 は, いず
ベ てい る。 これ らの研究 は,今後 の臨床 に益す る
れ も治癒 し,予後良好である。
ところが多い と考 え られ る。 また,我 々の症例 2
nc
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nt症候 を認めた
この 5例 は, いずれ も Vi
に於 いて, 抗生物質 の局所濃度 を高め る目的で,
nc
e
nt
もの である が, うち, 症例 4と 7は, Vi
動注療法 が行 なわれた。動注療法 は, 一般 に 口腔
症候 も消退 した。症例 3と 5は, 年齢 も若 い為,
外 科領域 の悪性腺癌治療 の為 に行 なわれ, 河合 ら
抗生剤療法 で,病巣部 の限局 す るを待 って, 外科
2
2)の報告では,
的療法 の時期をみた症例 である。
れたが, 慢性化膿性顎骨骨髄炎は,顎骨 内の深部
考
妊婦の顎 口腔感染症 に対 し応用 さ
に病巣が存在 し, 腐骨や炎症性肉芽組織 な どが,
察
排 出 されず, 病巣部 には,細菌 の感染が存続す る
特 に治療面に関 して考察 を加えた。 慢性化膿性
が, 硬化 した周囲骨壁お よび病巣部 は,血行不十
顎骨骨髄炎 の処置法は,保存的療法 と, 外科的療
分であ り, 抗生物質 の浸透 を妨 げ る為 に,病巣部
\
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法 に大別 出来 るが, 保存的療法 とは,抗生物質 を
の無菌化 が行 なわれ に くく, この為 に も,局所 に
主体 とす る薬物療法であ り, 外科的療法 には,腐
最 も高濃度 を得 られ る動注療法 の応用 は, 有効 な
骨摘 出,感染肉芽掻他, 出血性 の健全 な骨皮質が
場合 が あると思われ る。 また抗生物質 に伴 う今 1
露 出す るまで病巣の廓清 を行 な う s
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n
つの大 きな問題 点は,耐性菌 の出現 で あ り, 口腔
がある。 また,下顎骨切除術 が行 なわれた報告 も
領域 に於 いては, 耐性 ブ ドウ球菌が, その代表例
なされ てい る11) 14)。 また, 整形外科領域 では,
とい える。 また症例 7に於 いては,緑膿菌 も検出
慢性骨髄炎 に 対 して, 局所持続洗浄法 が 行 なわ
され, 緑膿菌性菌交代症が明 らかにされ てい る。
れ,好成績 を得 ている報告が 数多 くなされ てい る
本学 中検 の報告 に於 いても23)緑膿菌は, 近年化膿
1
5)
-1
9)
。
この 方法 は, 病巣部の感染肉芽 の掻他,
性疾患 の検体か らの検出率が, 著 し く増加 し,高
腐骨摘 出を行 った後,病巣内に, 注入用 と排湛用
い耐性 を示 していた。 この よ うな耐性獲得 お よび
の 2本 のチ ューブを留置 し, 抗生剤 と洗浄液 に よ
菌交代症 を防 ぐ為 に, 感受性 テ ス トに基づ く抗生
り, 持続的 に 洗浄 し, 排液 中の細菌培養 の陰性
物質 の投与,大量投与, 多剤併用 な どは,肝要 な
が, 確実 に 証明 され るまで 行 い, 再発率 の減少
ことと考 え られ る。 こうい った抗生剤療法 につい
と,治療期間の短縮 を 目標 とした, 外科的療法 と
,血沈値 に重 き
ては, 本学整形外 科に於 いては24)
併用 され てい る方法である。
0mm以下 にな った 時期で,
をお き, 1時間値 が 2
一方, 顎骨感染症 の抗生剤療法 については,研
抗生剤 の大量投与 を中止 し, その後 は,少量継続
究が, 多 くなされ, 河合等20)は, マウスを用い,
投与 を行 ってい る。 この少量継続投与 は,大量投
EM,CP, リンコマイシン (
LCM)等 は,血 中濃
与 あるいは,通常量投与 に比 し, 白血球 の喰菌作
度 よ り顎骨 内濃度の方が 高 くなる 傾 向 が あ り,
用が,増加す る と云われ, 副作用が少 な く試み ら
PC,SM,TC,KM 等 は, その道であ り, 顎骨
内移行率 は, CP, LCM, SM, EM, KM, TC,
PC の順 とな り, これ らの事 を考慮 に入れ た投与
れ て よい方法 と思われ る。
)は, 家兎 を 用い,
が必要 である とし, 吉 田等21
為,泊癒 させ る為 には, 外 科的療法 と抗生剤療法
SM, EM,TC の骨髄 内濃度 と 血 中濃度 を 比較
し, 血 中お よび骨髄 内 とも濃度は, 1時間値が最
をあわせ行 なわなければな らない。 この際,外科
的療法 を行 な う時期が, 問題 となるが, 口腔外 科
高 を示 し, 以後経時的に急速 に減衰 し,骨髄 内濃
領域 で も,明瞭 にされ てお らず, 王 ら25)は,術前
才
度 は SM, EM で血 中濃度の約 %, TC で約 9
0mH
t以下 に 固定 したな らば,
の血沈 1時間値が 2
に相 当す る結果 を得た とし, さらに骨髄炎 の抗生
根治手術 を行 な うべ きで ある とし, 一般 に,慢性
剤療法 の実際 に於 いて, 腐骨等 の血行不十分 な,
化 してか ら, 或 いは慢性 にな る頃 をね らって施行
局所病巣へ の薬剤 の浸透 は, よ り僅少 となる と述
す るのが通例 であ り, 全身な らびに局所症状, Ⅹ
- 5
8
しか し,前述 の よ うに, 周囲骨壁 お よび病巣部
は,血行不十分で あ り, 抗生物質 の浸透 を妨 げ る
-
屋
形
秀
線 所 見 な どか らみ て, 症 例 に よ って, そ の時 期 を
5
9
樹,そ の 他
6
) Thoma,Kur
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,p・
779-83
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by,Sa
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,1
969.
決定す る。
今 回 の 7症 例 の場 合 , 症 例 4, 6の様 に, 比 較
-654,
7) 中村平蔵 : 最新 口腔外科学. 2版, 643
97
4.
医歯薬出版,東京, 1
的 腐 骨 の境 界 が 明 瞭 で限局 して い る もの につ い て
は, 容 易 で あ るが , 問題 とな るの は, 他 の症 例
1, 2, 3, 5, 7の よ うに, Ⅹ 線 写 真 に て, 境
界不 明 瞭 な非 限 局 性 の も ので あ った 。 症 例 1, 2
は, 比 較 的 高 年 齢 で あ り, 症 例 3, 5, 7は, 年
齢 が 若 い もので あ った が , 後 者 の よ うな場 合 , 抗
生 剤 療 法 を行 い, 経 過 を診 て, Ⅹ 線 写 真 に て病 巣
部 が 限局 した時 点 で, 外 科 的療 法 を行 うのが有 効
8) 磯貝 豊 : 急性化膿性顎骨骨髄炎の臨床的研
8921
0, 1
960.
究. 口外誌 ,9:1
9) 大井 清 : 口腔外科学 , 1
6:1
0
8-1
21
, 永末
973.
書店,京都, 1
1
0) 大曲靖夫,池尻 茂 : 口腔疾患の検査 と診断・
2版 , 1
00-11
7,医歯薬出版,東京, 1
973.
ll
) 浜田 暁ほか : 長期間の経過をた どった下顎
骨骨髄炎の 1イ
軌 口外誌 ,18:1
57
-1
61
,1
971
.
1
2) 馬場孝雄ほか : 緑膿菌性菌交代症を合併 し 2
と考 え, 前 者 の よ うな場 合 は, 病 巣 周 囲 の組 織 の
修 復 力 は, 余 り期 待 出来 ず , 特 に, 症 例 2の よ う
カ年余の経過 をた どった 慢性下顎骨骨髄炎の
l例.口科誌 ,1
7:67
8684, 1
96
8.
に, 経 過 も 長 く, 抗 生 剤 療 法 の 効 果 も 認 め られ
1
3) 正木光児ほか : 原因不明の慢性下顎骨骨髄炎
による下顎骨全摘 の 1例. 東女医大誌, 33:
1
95
-201
,1
9
63.
ず , 病 巣 部 の拡 大 が み られ る よ うで あれ ば, そ の
時 点で , 外 科 的 療 法 にふ み き らざ るを得 な い と考
え た。
結
語
昭和 4
3年 よ り, 昭和 50年 まで , 8年 間 に, 当
教 室 で経 験 した慢 性 化 膿 性 顎 骨 骨 髄 炎 の うち, 典
型 的 で あ った
7症 例 につ い て, 症 状 お よび処 置 と
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g.28:209-21
4,1
9
70.
1
5) Co
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n.Ac
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.32:324333,1
962.
Or
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pSc
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nt
1
6) 嶋
良宗 : 慢性骨髄炎の治療 について.臨整
外,2:75-82, 1
967.
経 過 の概 要 を報 告 した 。
抗 生 剤 療 法 と外 科 的療 法 を併 せ 行 い, 良好 な結
果 を得 た が, 同時 に本 疾 患 の治 療 の 困難 性 を提 示
i
ni
cト
1
7) 川島正人 : 骨髄炎の局所持続洗浄法 Cl
a
n.227:1
0
-1
6,1
974.
1
8) 川島正人ほか : 化膿性骨髄炎,関節炎に対す
した 。
る開鎖式局所持続洗浄法について.臨盤外 ,8:
60-65, 1
973.
本論文の要旨 は, 昭和 5
0年度新潟歯学会第 2回
1
9) 三好壮- : 慢性化膿性骨髄炎に関する研究.
例会にて発表 した。
文
日整会誌 ,43:285-298, 1
969・
20) 河合 幹 : 妊婦にみ られた高度耐性菌感染症
に対す る抗生物質の動脈内注入療法 による 1
献
治験例, 口外誌 ,19:444-446, 1
973・
1
) 平川正輝 : 顎炎の処理 について・ 口外誌 ,6:
220226, 1
960.
2) 中西
貫 ほか : 慢性下顎骨骨髄炎の 2症例 と
) 河合 幹 : 化学療法剤の口腔応用・口科誌,
21
1
6:1
24-1
36, 1
967.
22) 吉田恒九 ・教室 における化膿性骨髄炎の観察・
その考察. 口科誌 ,20:60
2-609, 1
971
,
3) 三浦幸雄 ほか : 当教室ならびに関連病院にお
いて経験 した慢性化膿性骨髄炎の臨床的検討・
整形外科 ,19:33
-37, 1
968・
23) 屋形稔ほか : 新大 における最近分離 の一般病
原性細菌 に対する 薬剤感受性試験成績の傾向・
-65, 1
964・
臨床検査 ,8:63
整形外科 ,24:41
7
-426, 1
973・
4) 河野左宙 : 骨髄炎の治療・整形外科 ,1
2:88-
1
0
4, 1
961
.
5) 河野左宙 : 化膿性骨髄炎をめ ぐる諸問題・ 日
-893, 1
968・
本医師会雑誌 ,60:890
24) 河路
渡 : 急性骨髄炎の病態 と治療. 日整会
2-68, 1
968・
誌 ,42:6
25) 王 鐘硫 : 慢性骨髄炎.整形外科 ,1
5:9
42949, 1
964.
- 59 -
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