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福井市協働のまちづくり研究会報告書
― 市 民・NPO と 行 政 の 協 働 の ル ー ル づ く り に 向 け て −
平成 15 年 4 月
福井市協働のまちづくり研究会
は じめ に
平成14年度にスタートした第五次福井市総合計画は、「市民と行政が連携・協働し、責
任を共にする市民参画のまちづくり」を基本理念としている。この理念を具体化する目的で、
昨年9月「福井市協働のまちづくり研究会」が発足した。当研究会の目的は、NPOと行政と
の協働を推進する上で必要なルールづくりに関して基本的な方向性を検討することである。
研究会は、学識経験者やNPO関係者などの市民と、市職員、市社会福祉協議会職員等、
まさに協働にふさわしい多彩なメンバーで構成され、発足以来、十数回にわたって活発に
議論を行い、検討を重ねてきた。検討内容は、協働の定義と必要性、協働を進める上での
役割分担、その課題と対策、NPO活動促進の方策などであった。
この研究会には、いくつかの画期的な試みがある。その一つは、研究会の論議が福井市
NPO支援室のホームページで概要版と論議の詳細までが公開されたことである。マスコミ
の参加も含めて会議の経過をすべてオープンにした情報開示は、福井市の審議会等では
初めてのことではないだろうか。
二つ目は、協働のパートナーについてである。本研究会が議論した結果出した協働の
パートナーは、多くの先進的な自治体で取り組まれている狭義のNPO(法人・任意団体)
だけではなく、地域のあらゆる活動団体や行政関連団体を含む“すべての市民”であるとい
うことだ。これは、市民自らが公共を担う主体であり、まさに地方分権に沿った市民自治の
考え方である。これまで福井市が推進してきた「21世紀わがまち夢プラン」等に見られるよ
うな地域活動等も含めて、まちづくりの主体を市民全体と捉えたことは、まさに「福井型」協
働のまちづくりといえよう。
阪神・淡路大震災や日本海重油流出事故などをきっかけにボランティア・NPO活動へ
の機運が向上し、特定非営利活動促進法(NPO法)の施行でNPOの社会における重要
性の認識が高まっている。法施行から4年余りでNPO法人数は全国で10,000 を超えた。
そして、NPOが地域社会のなかで果たす役割がますます大きくなる今日、自治体にとって
NPOと行政との協働や、NPO活動の促進策などが大変重要な課題となってきている。全
国的にも数多くの自治体がこうした施策を推進しており、協働のルールを条例化した自治
体も増えてきている。
本報告書は、各検討事項について市民と行政の熱い思いをとりまとめたものである。こ
れが、今後の協働のルールづくりに生かされ、条例化に向けた起爆剤となることを心から願
っている。福井市のような小さな地方都市が、大きな目標を掲げた条例を作り出すことがで
きれば、分権・自治の実践事例として全国に大きな反響を呼ぶことだろう。
平成15年4月
福井市協働のまちづくり研究会
会長 小 林 明 子
目
次
はじめに
1 協働の理念
(1) 協働とは何か
1
(2) 何を協働するのか
1
(3) なぜ協働が必要なのか
2
① 新たな公共の担い手としてのNPO
2
② 市民参画・市民自治
3
(4) 協働のパートナー
3
① NPO(狭義のNPO)
4
② 地域での活動を行う団体
5
③ 行政が組織した各種団体
6
④ 公益法人(広義のNPO)
6
⑤ 共益的団体(最広義のNPO)
6
(5) 協働の原則
6
① 情報公開
6
② 対等なパートナーシップ
6
③ 明確な役割分担
7
④ 評価システムの必要性
7
⑤ その他
7
(6) 協働事業
7
2 協働を進める上でのそれぞれの役割
(1) 行政の役割
8
(2) NPOの役割
9
(3) 市民の役割
9
(4) 企業の役割
9
(5) メディアの役割
9
(6) 学校・大学の役割
9
3 協働を進める上での課題と対策
(1) 客観性・透明性の確保
10
(2) 協働の推進体制づくり
10
(3) 行政・NPOの意識改革
10
(4) 評価システムのあり方
10
4 協働パートナーとしてのNPOの活動促進方策
(1) 資金の流れを伴う方策
11
① 補助金の支出
11
② 事業の委託
11
③ 基金(ファンド)の設置
11
④ 税の優遇措置
12
(2) 資金の流れを伴わない方策
12
① 公共サービスへの参入機会の提供
12
② 公共施設の開放
12
③ 中間支援組織の育成
13
④ 人材の養成
13
⑤ 市民意識の醸成
13
5 協働の推進に関するその他の環境整備
(1) 協働のルールとしての条例づくり
13
(2) 市民参画による協働の推進と、NPO活動の促進を図る仕組みづくり
14
注 釈
14
参 考 資 料
・参考文献
15
・福井市協働のまちづくり研究会検討経過
16
・福井市協働のまちづくり研究会委員名簿
17
あとがきにかえて
1 協働の理念
(1) 協働とは何か
協働の意味をひとことで言うと、「本来の目的や立場の異なる組織や団体が相互に理解し、違
いを認め合った上で、共通の目標を設け、自立した対等の立場で目標の達成に向かって努力し
あう関係」(注1)と言えるだろう。協働には、新たなものを作り出すという創造性がある。
NPO(注2)と行政の協働においては、公益の実現という共通目標を設定し、双方が本来担うべ
き領域を理解し、知恵を出し合ってよりよいサービスを提供していくために努力することが重要で
ある。
協働は、行政コストを安くするための手段ではなく、NPOの持つ知恵や発想を生かした質の
高い市民サービスの創造につなげることを目指すべきである。
(2) 何を協働するのか
公益の実現のために、NPOと行政が協働するにあたっては、まず、「公益とは何か」ということ
を考えなくてはならない。
公益とは、広く社会全般の利益や不特定多数の者の利益をさす。(図1)のように、これまでは、
何が公益か、どんな公共サービスを行うかを、行政が一元的に判断してきたが、何を協働するの
かというときに、「これは公益で、これは非公益」、「これは行政が担う領域で、これはNPOが担う
領域」ということを行政だけで決められるものではない。
また、社会的な合意ができている多数者の利益だけを公益とみなして行政が協働の範囲とし、
少数者の人権などを排除すべきではない。
(図1) 新しい公益のイメージ
20 世紀型
21 世紀型
これまでの公益
新しい公益
(一元的判断)
(多元性・多様性)
行
政
公益
NPO
公益
市
民
企業・市民・行政
1
本来、公共の概念(公益性があるかないか)というのは、その時代、その地域における社会的
なニーズによって決められるものである。
市民と行政の双方が公共を担えるということを共に認識したうえで、(図2)のように、行政が担
うべき領域、NPOが担うべき領域、協働の領域を、協議して決めていくことが必要である。
(図2) NPOと行政の領域
(NPO の領域)
( 協働の領域)
( 行政の領域)
市民の責任と主体 市民の主体性のも 市民と行政がそれ 市民の協力や参 行政の責任と主体
性によって独自に とに行政の協力に ぞれの主体性のも 加を得ながら行政 性によって独自に
行う領域
よって行う領域
とに協力して行う の主体性のもとに 行う領域
領域
行う領域
(3) なぜ協働が必要なのか
① 新たな公共の担い手としてのNPO
これまでは、行政があらゆる公共を担い、市民はサービスの受け手というシステムだった。しか
し、多様化・複雑化した市民のニーズに対して、もはや行政だけでは対応できない時代になって
きた。また、行政の事務事業が膨れ上がる一方で税収は落ち込んできているが、それにより、市
民が必要とする公共サービスが実現されないことがあってはならない。
一律・公平性を原則とする行政サービスに対して、先駆性、専門性、柔軟性などの特性を持
つNPOは、きめ細やかで多様なサービスを提供できるということで、新たな公共の担い手として
注目されている(図3)。NPOは行政と異なる発想や能力を持っており、協働することによって、
結果的に同じ経費でサービスが充実することも考えられる。
(図3) 社会の3つの担い手とその特性
市民・NPO
多様性・創造性・柔軟性
先駆性・専門性・協力原理
社会の課題
一律・公平・平等・
経済優先・競争
中立・安定
・市場原理
行 政
企 業
2
② 市民参画・市民自治
市民のまちづくりへの参画意識が高まってきているが、市民が社会の一員だという意識をさら
に高めていくためにも協働は不可欠である。これまでは、市民の持っている潜在能力・知恵が公
共サービスやまちづくりに反映されにくい、もったいない社会システムであった。地方分権が進
むことにより自治体の権限が拡大され、地域の個性を生かしたまちづくりをしていかなくてはなら
ないこれからの時代においては、市民の力が生かせるシステムに変えていくことが必要である。
次の(図4)は、1969 年にアメリカの社会学者が提唱した、
「市民参加のはしご」と呼ばれ
る有名な考え方である。形式的な参加から、市民が自治権をもって運営する段階まで8つ
の形態に分けている。分権の時代の今日、住民自治の重要性がますます高まっていること
は言うまでもない。
(図4) 市民参加のはしご
(シェリー・アーンスタイン)
⑧ 市民による自治
(Citizen Control)
⑦ 権限の委譲
(Delegate Power)
⑥ パートナーシップ
(Partnership)
⑤ 懐柔策 (形式的な参加機会)
(Placation)
④ (審議会など表面的な)意見聴取・協議
(Consultation)
③ お知らせ
(Information)
② 不満回避策
(Therapy)
① 世論操作
(Manipulation)
市民の力が生かされる市民参加
(Degrees of Citizen Power)
形式的な市民参加
(Degrees of Tokenism)
市民参加とは言えない
(Nonparticipation)
(4) 協働のパートナー
市民と行政との協働におけるパートナーの範囲はできるだけ広く捉え、市民の多様な公益活
動との協働を積極的に進める必要がある。その場合、活動内容の公益性から判断されるべきで
あって組織の公益性から判断されるべきではない。したがって、協働のパートナーの範囲を行
政がはじめから限定するのでなく、市民の多様で自発的な公益活動を促進するという観点から、
市民の意見を反映して決定し、連携・協働を進めるべきである。
また、NPOとの協働にとどまらず、企業や大学・学校などの社会貢献活動とも有機的に連携し
て、ともにまちづくりを進めていく姿勢が求められる。
3
(図5) 非営利活動の概念図
最広義のNPO
⑤ 共益的団体
生活協同組合、労働組合、同窓会、
農業協同組合、
広義のNPO
④ 公益法人
趣味の会など
財団法人、社団法人、社会福祉法人、
医療法人、学校法人など
狭義のNPO
① NPO
③
市民活動団体、
行政が組織
した各種団体
最狭義のNPO
ボランティア団体
②
地域での活動を行う
団体(自治会含む)
特定非営利活動法人
(NPO法人)
ところで、わが国におけるNPOという言葉の捉え方もさまざまであり、その概念は十分に確立
し定着しているとは言いがたい。
福井市におけるNPOと行政との協働のルールづくりにおいては、市民による自由な社会貢
献活動を行うNPO(図5の①)だけに目を向けるのでなく、それ以外の団体も含めて検討すべき
である。地域での活動を行う団体(図5の②)や行政施策の実現を目的に組織された各種団体
(図5の③)も、非営利の市民公益活動を行う場面では、NPOと同様に行政との協働のパートナ
ーとなり得る。
また、広義・最広義のNPOと定義できる公益法人(図5の④)や共益的な団体(図5の⑤)も含
めて、それぞれの組織特性と社会的役割を踏まえて、まちづくりの担い手となり協働のパートナ
ーとなることが期待される。
以下、(図5)で示した非営利活動団体を協働のパートナーの観点から検討してみた。
① NPO(狭義のNPO)
ここでNPOとは、非営利の社会貢献活動を継続して行う、特定非営利活動法人(NPO法人
=最狭義のNPO)を含む市民活動団体・ボランティア団体をいう。福井市内では平成15年3月
現在で28のNPO法人が市内に事務所を構えており、法人格のない任意団体も含めると約150
を超える団体が活動していると思われる。
NPOが行政のパートナーと言えるのは、市民による公益活動が、行政と同じく営利を目的と
4
せず、もうひとつの公共部門を担っているからである。なお、事業型のNPOだけでなく、政策提
案型のNPOも協働のパートナーとして考えるべきである。
② 地域での活動を行う団体
特定のテーマを掲げて活動するNPOが増えてきているとはいえ、本市の現状をみると、自治
会など、地域でのさまざまな活動を行う団体は、住民自治、相互扶助などまちづくりに果たして
いる役割が大きいことから、協働のパートナーとして考えるべきである。
ちなみに、福井市には1,441の自治会があり、自治会加入世帯の割合は8割を超え、それを
基盤とした婦人会、壮年会、子ども会、老人クラブなどの活動があり、さらに、地区(小学校区)単
位の公民館活動、21世紀わがまち夢プラン活動、地区社会福祉協議会活動などが活発に行わ
れている。(図6参照)
これまで、地域では、住民がお互いに助け合い、地域の問題は地域で解決してきたが、近ご
ろでは地域の問題解決に果たす地域活動団体の役割が弱まっているという指摘もある。
地域活動団体も時代に合わせて変わっていかなければならない。地域活動に住民の意見が
生かされる民主的な運営や透明性が求められる。
また、地域での共益的活動だけでなく、NPOとも連携・協働して地域課題解決の取組みを進
めたり、NPO活動を通してさまざまな経験、専門性やアイディアをもった人達が、地域活動の新
たな担い手となったりすることで、時代のニーズに合わせた姿に変容し活性化していくことが求
められるであろう。
(図6) 地域活動組織の特性
公益性/弱(共益性)
(自治会など)
地区単位の組織
(自治会連合会など)
地域性・近隣性
(婦人会・老人クラブ・商店街組合・
体育振興会・PTA など)
市民・NPO活動組織
(ボランティアグループ
(21 世紀わがまち夢プラン地区委員会
・地区社会福祉協議会など)
・NPO 法人など)
公益性/強
5
地域性 近・隣性/強
地域性 近・隣性/弱
活動志向
地縁型住民自治組織
③ 行政が組織した各種団体
行政が施策の実現のために組織した各種団体も、市民が公益活動を担っている組織であるこ
とから、協働のパートナーとして考えたい。
こうした各種団体の中には、市が事務局を担っている団体が数多くある。団体の運営面で、人
的にも財政的にも行政に依存し過ぎていないか、市民の豊かな発想や自発性が事業の推進に
十分生かされているか、形骸化していないか、活動の意義や成果が得られているかなどについ
て見直すことも必要である。
また、事業の効果をさらに高めるため、NPOなどと連携・協働していくというような取組みが求
められる。
④ 公益法人(広義のNPO)
民法や特別法によって設立された公益法人は、行政関連団体として設立された法人も多く、
国では、抜本的な制度改革が議論されている。行政との役割分担を明確にし、自立した事業活
動が求められる。また、行政から委託を受け市民に公共サービスを提供するかたちで、行政との
連携・協働を行われることも多いため、広い意味で協働のパートナーとなり得るものである。
⑤ 共益的な団体(最広義のNPO)
本来は構成員の利益を図ることを目的として組織された共益的な団体であっても、ボランティ
ア活動やまちづくり活動など、公益的活動を行うことがある。たとえば、趣味の会が、習得した知
識や技能を生かして公益的活動を取り組むこともある。こうした活動の内容次第では、行政やN
POとの連携・協働が生まれる可能性も十分にある。
(5) 協働の原則
協働する際に重要なのは、徹底した情報公開と、対等なパートナーシップにより目的を共有し、
役割分担も明確にして実施することである。そして実施後に、サービスの提供者と受益者、双方
の評価を行うことが肝要である。そのしくみを作っていくことが市民自治につながる。
① 情報公開
情報公開はしっかりと進めるべきである。行政がどのような事業を行おうとしており、どれだけ
の予算があるのか、どうすれば協働できるのか、ということが、NPOにはなかなかわからない。行
政にとっても、協働の相手としてどのようなNPOがあり、どんな活動をしているかわからない。お
互いが情報を発信しあい共有することが基本原則であり、協働のはじまりである。
② 対等なパートナーシップ
NPOと行政が協働する場合、お互いが自立した組織としてしっかりしたミッション(注3)を持って
6
いることが大事である。そして対等・平等の関係で協働しようとするときには、お互いが相手を見
極めて、こういう取組みをするのだという理念をしっかりと共有することが必要である。
③ 明確な役割分担
NPOと行政には、それぞれが本来すべきことと、すべきでないことがある。あるいは、できるこ
とと、できないことがある。協働する場合には、お互いの役割と組織の特性をふまえ、目的を共
有し、その実現に向かってはっきりと役割を分担することである。
④ 評価システムの必要性
NPOと行政が協働するのは、協働すること自体が目的ではなく、よりよい市民サービスを実現
するためである。したがって、協働する事業については的確な評価が必要となる。
評価方法においては、協働がなぜ必要なのかという事前評価と、協働したことで目的が達成
され成果が生まれているかどうかという事後評価を、NPOと行政の双方で行うこと。また、市民参
加による第三者評価も行うことが大切である。
⑤ その他
「自主性の確保」、「自立性の推進」、「自己責任」というのも重要な原則である。また、実際に
協働することで効果や問題点が明らかになってくる。
(6) 協働事業
行政の事業の中でNPOとの協働にふさわしいものを見つけ出し、実験的なケースとして試み
ることが大切である。NPOの専門性・柔軟性などの特性を生かして協働することで、市民サービ
スが向上したり、市民参画が促進したりするなど、成果のあがる事業は、積極的に委託などを進
めていくことが求められる。具体的な協働遂行にあたっては、(図7)のフローチャートによるテスト
をしてみることも参考になるであろう。
なお、NPOからの協働事業の提案については、組織の公益性ではなく事業の公益性をもと
に判断し、協働すべきであることは言うまでもない。
7
(図7) 協働事業遂行のフローチャート
公共性のテスト
その仕事は、公益の増進に資するものであるか
NO
廃 止
YES
担い手のテスト
その仕事に行政関与の合理性と必要性はあるか
・次の計画へ反映
・協働事業の改廃
事後評価
NO
市民・NPO
YES
協働のテスト
市民・NPOと行政との連携・協働の必要性はあるか
(公共サービスの向上、市民参画などの視点)
NO
行 政
YES
協働方式の選択
(委託、共催、実行委員会、補助、後援など)
YES
協働事業の実施
2 協働を進める上でのそれぞれの役割
協働を進めるということは、行政にとってはこれまでの行政の仕組みを見直し、変えていくこと
での痛みを伴うし、市民にとっても、これまで行政サービスの受け手としての「お客さん市民」か
ら脱却していくための痛みを伴うことになる。こうした自覚をもとに、市民と行政は、お互いの役割
を明らかにする必要がある。
(1) 行政の役割
国は、法律や税制面でNPO活動促進の環境づくりを図ることが役割であるが、市民に最も身
近な自治体である市の役割は、公平性・中立性を原則としつつ、協働をどう進めるかを考えて実
施していくことである。
市は、何のために協働するのかという明確な理念を持ち、地域性や時代背景をふまえた舵と
りをすべきであり、まちづくりのコーディネーターとしての役割を担うことである。
8
また、NPO・行政・企業間の情報交換や交流の場を提供することで、ネットワークを進め、NP
O活動を促進するための環境を整えることも行政の役割である。
(2)NPOの役割
新たな公共の担い手としてのNPOの役割は、行政にはできない多様な公益サービスを担うこ
とであり、協働を進める際には、NPOも、自らの活動に対する情報発信と社会的信頼の醸成に
努め、公益事業の提供主体として、市民に対する責任とリスクを負うことを認識すべきである。
また、自らの責任を自覚しながら、提言したり活動したりする組織として行政と対等なパートナ
ーシップを持つためには、財政的・人材的に自立していることが求められる。
(3) 市民の役割
市民は、まちづくりの主人公としての自覚のもとに、自己の特技や能力を発揮して社会のため
にできることを考え、行動するよう努めるとともに、地域活動やNPO活動への理解を深め、すす
んで参加・協力していく姿勢が求められる。
(4) 企業の役割
企業も地域において社会的な責任を担っている。社会貢献を企業理念として高らかに謳いあ
げ、地域において実践することを期待したい。NPOと連携し、事業を支援することは、その企業
の社会貢献活動をアピールすることになり、企業自体のイメージアップにもつながっていくので
はないか。
(5)メディアの役割
NPOに関する情報が新聞、テレビ、ラジオ、インターネットなどさまざまな媒体で発信されるこ
とは、NPO活動を支える大きな力となることから、メディアも積極的に役割を担ってほしい。その
ことが、メディア自体のメリットにもつながるものと思われる。
(6) 学校・大学の役割
学校や大学が、それぞれの教育課程をとおして、明日の社会を担う「人」を育てるという大きな
社会的使命をもっているが、専門的な知識や技術、研究成果などを社会に還元したり、市民・N
POと連携したまちづくりへの参画を期待したい。
また、学校の余裕教室、体育館などの施設を地域・NPO活動に提供していくという役割も考え
られる。
9
3 協働を進める上での課題と対策
(1) 客観性・透明性の確保
行政が政策を立案する際、市民に対する説明は不可欠であり、透明性が確保されていなけれ
ばならない。そのためには、徹底した情報公開が肝要である。情報公開は、より質の高い市民サ
ービスを作り上げるために行うものであり、そのためには、結果だけでなく、そこに至るまでのプ
ロセスを含めて公開しなければならないし、情報を市民が使いやすいように発信したり、市民の
意見を収集し公開したりするシステムも重要である。
これと同様にNPOも、公共の担い手として市民に対する説明責任が求められる。
(2) 協働の推進体制づくり
協働の推進とNPO活動の促進に向けて、市をあげて取り組む全庁的推進体制づくりが必要
である。
また、市の窓口については、総合的な窓口と、事業ごとの窓口の両方が必要である。NPOは、
いくつかの分野にまたがって活動している場合が多いので、事業を具体化するためには担当課
間の連携が必要になる。さらに、県など他の行政機関との連携が必要となる場合も考えられるの
で、コーディネートに努めてほしい。
一方、NPO側も、活動内容を広く市民や行政に知ってもらい、信頼性を高めていかなくては
ならない。市民に広く認められることで、市民の潜在的な意欲を引き出すことになり、活動促進に
つながる。そのためには、ぞれぞれのNPOの努力とともに、NPO間のネットワーク体制を作るこ
とも必要である。
(3) 行政・NPOの意識改革
NPOと行政が対等の立場で協働していくためには、双方の意識を変えていかなければなら
ない。
まず行政側は、「NPOやボランティアを使うと安上がりだ」という考え方を改め、「協働すること
により、これまでより質の高い公共サービスを市民に提供する」ことを目指すべきである。そのた
めには、市の職員が市民感覚を持ち、常にNPOとの協働に目を向けていることが必要である。
一方、NPO側も、行政と対等な立場であるためには、財源的・人材的に自立していることが求
められ、協働にあたっては、新たな公共を担う事業主体として、責任とリスクを伴うことの自覚が
必要である。
(4) 評価システムのあり方
協働の評価においては、なぜ協働するのかを明確にし、協働の目的を達成できたか、進行具
合はどうか、という視点にたって評価をすべきである。協働することによって、具体的に何が変わ
10
ったかという成果を、数値等の指標で誰にもわかりやすく表わせる評価を取り入れる必要がある。
また、第三者による外部評価や、市民参加型の評価システムづくりが欠かせない。
4 協働パートナーとしてのNPOの活動促進方策
多様な市民ニーズに、行政だけでは対応できなくなってきたことから、NPOとの協働が注目さ
れており、数多くのNPOが生まれ育ち、市民が参加しやすい環境づくりのための方策が望まれ
ている。
具体的な方策としては、補助金の支出、事業の委託、基金(ファンド)の設置、税の優遇措置
など資金の流れを伴うものと、公共サービスへの参入機会の提供、公共施設の開放、中間支援
組織の育成、人材の養成、市民意識の醸成など資金の流れを伴わないものとに分けることがで
きる。
(1) 資金の流れを伴う方策
① 補助金の支出
本来、補助金・助成金は、公益の実現を目的として、一定の制度の元で期限を切って支出され
ることが原則であり、これに合わないものがあれば見直すべきである。
また、どのような活動や事業に補助するのか、その基準を明確にして公開すべきである。内容
を決定する際には、行政だけでなく市民も参画して審査できるような仕組みが必要であり、意欲
のある団体に補助金を出す「アダプト制度」(注4)や、市民の寄付に行政が同額の補助金を出す
「マッチングギフト方式」(注5)などを参考にすることも必要である。
② 事業の委託
本来、行政が行うべき事業のうち、NPOの専門性を生かして実施した方が成果が上がると考
えられるものについては、NPOへの事業委託を積極的に進めることが必要である。
なお、NPOへの委託は、行政コストを安く上げることを目的とするのではなく、市民サービス
の向上のために行うべきであり、自立した対等なパートナーシップ、公開性、透明性、時限性な
どの原則のうえで行われるべきである。
③ 基金(ファンド)の設置
NPOの立ち上げや新規事業の展開など、本来の目的にあった事業資金を提供するための
方策として基金(ファンド)の設置を検討することが望まれる。基金の設置については、各種補助
金の中で、NPO的な性格を持つものを見直して集約し、同時に市民の側からも寄付を募り、基
金を立ち上げる方法が考えられる。
11
④ 税の優遇措置
NPO法上の本来事業(特定非営利活動)が、税法上は収益事業とみなされ、法人住民税の均
等割の免除が適用されないケースがある。しかし、税法上の収益事業とみなされても、本来事業
(特定非営利活動)であれば、一定の要件を満たした場合に法人住民税の均等割を減免したり、
福祉車両等の自動車税を減免するなど、独自に税の優遇措置を適用している自治体もある。な
ぜNPOを支援するのか、という明確な考えのもとに、地方税を軽減することも活動促進のための
ひとつの方策である。
また、個人や企業がNPOに寄付した際の寄付金控除制度に対する福井市独自の考え方を
検討してはどうか。
(2) 資金の流れを伴わない方策
① 公共サービスへの参入機会の提供
NPOの登録制を設け、広くNPOに公共サービスへの参入機会を提供することがNPO活動
の促進につながる。そのことが、NPO自体の信頼性の向上にもつながるものと考えられる。
公共サービスへの参入機会は、自由な競争の場であることも重要である。特定の団体が既得
権のように公共サービスを独占せず、提案に対する説明の場を設けたり事業評価を取り入れた
りすることで、より高い専門性と能力をもっているNPOの公共サービスへの参入機会が保障され
るべきである。
② 公共施設の開放
NPO活動の活性化を図るためには、公共施設の開放が欠かせない。特に、公民館での生涯
学習とまちづくり(地域づくり)は切り離せないものであり、地区のコミュニティセンターとしての機
能をあわせ持つべきである。公民館は、市内に43箇所もあり、市民に最も身近な公共施設であ
る。利用時間や使用料など管理運営面に柔軟性を持たせたものにして、NPOにも開放されるこ
とが望まれる。また、学校の余裕教室やその他の公共施設の有効利用も検討すべきである。
ただし、これらの公共施設は、市民活動をしたい時にいつでも利用できる状態ではないため、
NPO活動を促進する環境づくりのひとつとして、拠点施設の必要性も高まっている。
NPOの多様な活動領域や活動時間帯に対応できる拠点施設という意味では、都心型と郊外
型の2つの形態が考えられる。都心型は、公共交通機関を使って来られるような場所で、今ある
施設をうまく活用したい。例えば、「生活創庫」など民間の空きビルを市が借り受けて使えるように
することも考えられる。郊外型は、駐車場があり気軽に立ち寄りやすい場所であることが大切で
ある。
いずれにしても、運営面において市民の側にたった柔軟性を充分に備え、総合的な情報発
信のできるNPO活動の拠点であることが必要である。
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③ 中間支援組織の育成
市民が協働に参画できるための条件整備として、NPO活動の情報をきめ細かく発信したり、
NPO同士や、NPOと行政、NPOと企業をつなぎ協働をコーディネートしたり、NPOの運営に
関するマネジメントについての助言や人材の育成を行う「NPOを支援するNPO」、いわゆる中
間支援組織が求められる。
この組織は、行政・企業からも独立し、市民活動全般をサポートし、底上げしていく役割を果た
すものであり、具体的には、NPO活動の拠点施設の運営、各種セミナーや相談事業の企画・実
施、市民ファンド(基金)の運営、まちづくりへの政策提言などを行う、新しい協働事業展開の場
としての役割が求められる。
④ 人材の養成
人材の養成は、すぐに結果が出るものではない。NPO活動促進のための土壌作りには、NP
Oと行政の双方が、協働に対する共通理解を広げていくための研修会やセミナーなどを積極的
に実施していくことが大切である。
NPOにとっては、専門性を高めたり、マネジメント能力を向上させることが求められるだろう。
さらに、市民の理解と参加を広げるために、生涯学習や子どものうちからの教育などにおける、
参加・体験型の手法を取り入れたプログラムなども有効といえるだろう。
⑤ 市民意識の醸成
まちづくりは、行政や特定の市民がするものでない。自分たち一人ひとりがまちづくりについ
て考え、自分たちのことは自分たちで担っていくべきだという意識を醸成していくことが重要であ
る。そうした市民意識を醸成するための方策としては、NPO基礎講座や実践講座などの開催、
さらには、市政広報や市のホームページはもとより、テレビ、ラジオ、新聞などの媒体を活用して
情報を発信していくことが重要である。
本市の「21世紀わがまち夢プラン事業」は、地区住民の自治意識を高めるという成果を上げ
ている。各地区の夢プラン委員会の各部会同士が地区を越えて連携したり、NPOと協働したり
することで、新たな活動の展開が期待され、さらに市民意識が醸成されるものと考えられる。
5 協働の推進に関するその他の環境整備
(1) 協働のルールとしての条例づくり
ここまで、協働の理念、協働のあり方、具体的な促進策など基本的な方向性について検討し、
提言してきたが、協働のルールづくりにあたっては、市民の代表である議会の審議と議決を経て
条例化することを、本研究会として強く要望する。
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条例は、市民と行政が対等な立場で協働を進めていくための根拠法・仕組みである。同時に、
協働の意義を条例というかたちで市民と行政が共有することで、まちづくりに対する参画意識の
高い市民が育っていくことにもなる。
(2) 市民参画による協働の推進と、NPO活動の促進を図る仕組みづくり
条例には、協働を進める上での基本理念をきちんと謳い込むとともに、NPO活動の促進と、
行政と協働を進める方策を定めるが、具体的に協働を進めることによって条例の内容を豊かにし
ていく柔軟性を持つことも必要である。
また、条例を浸透させていくための機関を設け、NPO活動の促進と協働の推進に関するさま
ざまな問題を、市民と行政がともに調査・検討する体制が望まれる。
協働のルールを市民参画により策定し、条例化することは、それ自体が目的ではなく、協働の
まちづくりのための手段であり、出発点である。地方分権時代の自治体における市民自治の本
格的な幕開けとなるような条例づくりをめざして、特段の努力をお願いしたい。
注 釈
P1(注1) 世古一穂 『協働のデザイン』 (学芸出版社) から引用 (一部修正)。
P1(注2)NPOとは、non profit organizationの略で、民間非営利組織のことである。福祉、環境、文化、
まちづくり、教育などの分野における、営利を目的としない、住民の自発的な意志による活動団体
である。ここでいう営利を目的としないというのは、儲けを出さないという意味ではなく、利益を配
分しないということである。また、ボランティアとNPOとは異なり、ボランティアは個人の概念、NP
Oは組織の概念である。NPOとは、「個人の思いを社会化する仕組み」(世古一穂『協働のデザ
イン』)なのである。
P6(注3) ミッションとは「使命」と訳されるが、組織の果たすべき役割・設立目的を表すもので、組織の存
在理由ともいえる。NPOは、一人のこころざし・理念が仲間と共有されて創られる。NPOが社会
的な課題に対しどうしていきたいのか、どのような社会にしたいのかを表明するものである。
P11(注4) アダプト制度とは、市民団体や市民、地元企業などが「里親」となり、公園や道路、河川などの
公共空間を「養子」とみなし、市民が自発的に定期的に清掃や美化活動を行なう仕組みである。
清掃等はボランティアが行ない、集まったごみの処理や里親のサポートを行政が行う。アドプト・
プログラムともいう。
P11(注5) マッチングギフトとは、個人が出す寄付金と同額または一定比率を行政が出し、寄付金を倍ま
たは上乗せにする寄付金補助制度。欧米ではこの制度が普及しており、更に日本で導入してい
る自治体もある。
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参 考 資 料
参考文献
・ NPO基礎講座(山岡義典、ぎょうせい)
・ 市民参加のデザイン(世古一穂、ぎょうせい)
・ 協働のデザイン(世古一穂、学芸出版社)
・ 役所は変わる、もしあなたが望むなら(村尾信尚、淡交社)
・ NPOはやわかりQ&A(岩波ブックレット)
・ 自治体NPO政策(松下啓一、ぎょうせい)
・ 公務員のためのNPO読本(仙台NPO研究会、ぎょうせい)
・ 都市問題第91号(NPOと自治体の連携) (東京市政調査会)
・ みのお市民社会ビジョン21
・ 横須賀市市民協働推進条例逐条解説
・ NPOと行政とのパートナーシップ促進ガイドブック((財)地域活性化センター)
・ 産業構造審議会NPO部会中間とりまとめ
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福井市協働のまちづくり研究会の検討経過
月
日
平成 14 年
会
議
名
第 1 回協働のまちづくり研究会
9 月 25 日
審議事項等
委員の委嘱・任命
(市民部会、職員部会合同) 研究会の運営、審議日程
講演会(田中尚輝氏)
11 月 1 日 第 2 回研究会
先進地視察
(市民部会、職員部会合同) (大阪府箕面市)
12 月 9 日 第 3 回研究会
・協働の定義及び必要性に
(市民部会)
12 月 12 日
ついて検討
〃
(職員部会・協働推進班)
12 月 13 日
〃
(職員部会・市民活動促進班)
平成 15 年
1月 9日
第 3´回研究会
(職員部会・市民活動促進班)
1 月 17 日 第 4 回研究会
・協働を進める上でのNPO
(市民部会)
1 月 21 日
と行政の役割について検討
〃
(職員部会・協働推進班)
1 月 27 日
〃
・協働を進める上での課題と
対策について検討
(職員部会・市民活動促進班)
2 月 21 日 第 5 回研究会
・NPO活動の促進方策に
(市民部会、職員部会合同)
3 月 14 日 第 6 回研究会
・その他、協働の推進に必要
(市民部会、職員部会合同)
3 月 28 日 第 1 回
ついて検討
報告書起草部会
4月 4日 第2回
な事項について検討
・報告書素案の検討・作成
〃
4 月 11 日 第 7 回研究会
・報告書案の検討
(市民部会、職員部会合同) ・協働のまちづくりフォー
ラムについて検討
4 月 21 日 第 8 回研究会
報告書を市長に提出
(市民部会、職員部会合同)
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福井市協働のまちづくり研究会委員名簿
平成15年4月1日現在
市民部会
(五十音順)
地域・まちづくりコーディネーター
仁愛女子短期大学 非常勤講師
福井市ボランティアセンター 運営委員長
足羽公民館 館長
起草部会
岸 田 美枝子
(特)福井県子どもNPOセンター 理事長
副会長・起草部会
北 川 はる子
(元)福井市東安居公民館 主事
小 林 明 子
福井県立大学 看護福祉学部 助教授
高 畑 英 樹
自立生活センター Com-Support Project 代表
西 尾 研 二
福井青年会議所 前理事長
西 出 優 子
地域構想センター 代表
大阪大学OSIPP NPO研究情報センター 研究員
矢 納 正 人
バンビの会(摂食障害を考える会) 会長
山 下 善 久
インターナショナルクラブ 代表
内 山 秀 樹
小 川 清
職員部会
(班別・行政機構順)
市民活動促進班長
起草部会
政策調整室 主幹
倉 美 幸
職員課 副主幹 (契約課)
桑 原 浩 明
行政管理課 主査
間 所 泰 次
財政課 主査
浅 野 信 也
商工政策課 地域産業創造推進室 副主幹
黒 田 慶 廣
生涯学習課 主査
渡 邊 智 洋
みどり図書館 主査 (教育総務課)
梅 木 照 美
市町村合併推進室 主査 (農政企画課)
山 田 幾 雄
政策審議室 副主幹 (都市計画課)
山 本 桂一郎
男女共同参画室 主査
氣 谷 和 彦
環境政策課 資源循環型社会推進室 主任
三 上 佐智代
長寿福祉課 主事
上 田 安 乃
介護保険課 主事
早 田 忠 和
公園課 主幹
起草部会
オブザーバー
社会福祉協議会 主査
長谷川 佳 子
社会福祉協議会 主事
起草部会
*( )内は異動前の所属
岩 井 朱 美
小 柏 博 英
会長
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起草部会
協働推進班長
起草部会
あとがきにかえて ∼今、まちづくりはネットワーク型からプラットフォーム型へ∼
この研究会での約半年間は、まさに市民と行政の協働の実体験の場であった。そこで
の特筆すべきことを記してみたい。
研究会は、市民部会と職員部会に分かれてスタートした。各部会の会議を2回ずつ終
えたところで合同部会を持つことになる。これは、市民と行政のそれぞれの問題点が明ら
かになるとともに協働に対する認識のズレや温度差が表面化し、同じテーブルでの論議
の必要性を双方が感じたことによる。分かれて議論したことで初めて気づいた「協働」の
必要性であった。
次に、研究会に参加した行政職員はもとより、市民サイドでも活発な論議の中で確実に
「市民と行政の連携・協働」に向けた意識改革が起きた。「事務局案」の文言修正に終始
する効率化のみを優先した研究会ではなく、「事務局案」そのものが存在しない白紙の
状態でスタートした研究会の醍醐味は、自由闊達な意見が続出。結果的にそれが市民
と職員の双方からなる起草部会を立ち上げ、報告書をも委員でまとめることにつながった。
研究会のあり方そのものが協働のプロセスを具現化したものであったと言えよう。
さて、NPO法が施行されて4年、多分野の市民活動は、組織も含めて私的な側面をも
った情報の交流であるネットワーク型から、開かれた公共圏を形成する場、プラットフォー
ムへと向かい始めている。市民の公益的な活動と行政が協働する場には、誰もが自由に
アクセスでき、市民が能力を活かす主体的な場であることが必要だろう。それが協働の場、
プラットフォームの概念であり、市民自治のまちづくりと市民の公共への参加を促進する。
NPOには、社会関係資本(ソーシャルキャピタル)の提供者としての機能があり、行政と
の連携・協働により、迅速・柔軟に多様な市民ニーズに対応することが可能である。すな
わち、地域社会における人と人との関係性に存在する、目に見えない信頼や社会的規
範、相互扶助の社会的ネットワークを豊かにするソーシャルキャピタルの醸成によって、
犯罪の低下、教育や生活の質的改善、行政コストの削減等が期待できることも協働の意
義なのだろう。
市民参画促進のためには、「福井型」協働のまちづくりの理念や方向性を明確にした
条例の策定が不可欠であり、それは市民主体の公益活動を活性化する後ろ盾にもなる
だろう。策定においては、この研究会メンバーはもとより、さらなる市民公募委員を増やし
幅広い論議を進めたい。そのためにもオープンに市民の意見収集を図りながら、市民と
行政の協働による条例策定がおこなわれることを期待したい。
平成15年4月
福井市協働のまちづくり研究会
副会長
岸 田 美枝子
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