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® 2016 年 2月号 医療の最新情報をピンポイントで伝える マイナンバー制度施行 医療機関の対応と 将来展望 社会保障・税番号 (マイナンバー) 制度が、この1月か らスタートしました。すでに国民にはマイナンバーが通 知されており、医療機関も制度に対応していかなければ ならないことは言うまでもありません。ビッグデータの 活用など医療にも影響が及ぶこの仕組み。差し当たり何 そのポイントを 読み解く をしなければならないか、そして近い将来どうなるのか。 マイナンバー制度の基礎知識を紹介します。 いよいよ始まったマイナンバー制度 ま は「社会保障」 「税」 「災害対策」の 3 分 野に限定しています (表 1) 。 法の施行は16年1月。すでにスター ず、マイナンバー制度の概要 行うための基盤であり、社会保障・ トしています。上記 3 分野の届け出 を確認しましょう。 税制度の効率性・透明性を高め、国 等に際しては、事業者が従業員など 民にとって利便性の高い公平・公正 の個人番号の提供を受け、提出書類 会で成立した「行政手続における特 な社会を実現するための社会基盤」 などに番号を記載することになりま 定の個人を識別するための番号の利 であるとしています。国民一人ひと す。これに伴い、個人番号の保管な 用等に関する法律」 ( 通称マイナン りに12 桁の固有の個人番号を付与 どについてルール化されています。 バー法)です。ここでは制度を「複数 し、複数の機関が持つ情報をこれに 医療機関であっても、民間企業と同 の機関に存在する個人の情報を同一 よって紐づけます。ただし、この法 様の対応が求められます。 人の情報であるということの確認を 律では、マイナンバーを利用するの 根拠となるのは、2013 年 5 月に国 表 1 マイナンバーの利用範囲 年金分野 労働分野 福祉・医療・その他分野 社会保障分野 税分野 災害対策 分野 年金の資格取得 ・ 確認、給付を受ける際に利用。 ○国民年金法、厚生年金保険法による年金である給付の支給に関する事務 ○国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法による年金である給付の支給に関する事務 ○確定給付企業年金法、確定拠出年金法による給付の支給に関する事務 ○独立行政法人農業者年金基金法による農業者年金事業の給付の支給に関する事務 等 雇用保険等の資格取得・確認、給付を受ける際に利用。ハローワーク等の事務等に利用。 ○雇用保険法による失業等給付の支給、雇用安定事業、能力開発事業の実施に関する事務 ○労働者災害補償保険法による保険給付の支給、社会復帰促進等事業の実施に関する事務 等 医療保険等の保険料徴収等の医療保険者における手続、福祉分野の給付、生活保護の実施等低所得者対策の事務等に利用。 ○児童扶養手当法による児童扶養手当の支給に関する事務 ○母子及び寡婦福祉法による資金の貸付け、母子家庭自立支援給付金の支給に関する事務 ○障害者総合支援法による自立支援給付の支給に関する事務 ○特別児童扶養手当法による特別児童扶養手当等の支給に関する事務 ○生活保護法による保護の決定、実施に関する事務 ○介護保険法による保険給付の支給、保険料の徴収に関する事務 ○健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律による保険給付の支給、保険料の徴収に関する事務 ○独立行政法人日本学生支援機構法による学資の貸与に関する事務 ○公営住宅法による公営住宅、改良住宅の管理に関する事務 等 国民が税務当局に提出する確定申告書、届出書、調書等に記載。当局の内部事務等に利用。 被災者生活再建支援金の支給に関する事務等に利用。 被災者台帳の作成に関する事務に利用。 上記の他、社会保障、地方税、防災に関する事務その他これらに類する事務であって地方公共団体が条例で定める事務に利用。 出典: 「マイナンバー 社会保障・税番号制度 概要資料」 (内閣官房社会保障改革担当室、内閣府大臣官房番号制度担当室) 1 ® 2016年 2月号 表 2 マイナンバー導入後のロードマップ 2015年 2016年 (H27年) (10月)(H28年) 番号の通知 マイナンバー 交付申請受付開始 個人番号 カード ★:マイナンバー法の改正が必要なもの 2017年 (H29年) 2019年 (H31年) 2020年 (H32年) ▼ 【2017 年1月から】 国の機関間での情報連携 【2016 年1月から順次】 マイナンバーの利用開始 ▼ 【2017 年7月から】 地方公共団体等も含めた情報連携 ・社会保障分野 (年金に関する相談・照会) ▼ 【★2018年から】 預貯金口座への付番 ・税分野 (申告書、 法定調書等への記載) ・災害対策分野 (被災者台帳の作成) 【★法施行後3年を目途に検討】 社会保障・税・災害対策以外の分野へ 【★2019 年通常国会 (目途) に向けて検討】 の利用範囲拡大や、 民間利用 戸籍事務、 旅券事務、 在外邦人の情報管理業務、 証券分野等において公共性の高い業務 への拡大について検討し法制上の措置 (▼ 【★2018 年から段階的運用開始】 医療等分野における番号) 【2016 年1月から】 個人番号カードの交付 国家公務員身分証一元化。 地方公共団体・独法・国立大学法人・民間企業の社員証としての利用の検討も促す ▼ 【2016 年1月から】 ▼ 【2016 年1月以降順次】 各種免許等における公的資格確認機能を持たせることを検討 ▼ 【2017 年以降】 キャッシュカード・クレジットカードとしての利用の実現に向けて検討 【2016 年から順次】 公的個人認証・IC チップの民間開放、 地方公共団体による独自利用 【2017 年7月目途】 医療保険のオンライン資格確認システム整備 マイナ ポータル 2018年 (H30年) マイナポータルの構築 【2017 年7月から】 健康保険証としての利用 【2017 年1月から順次】 特定健診データを個人が電子的に把握・利用可能に ▼ 【2018 年を目途】 マイナポータルの運用開始 ・国民年金保険料のワンクリック免除申請 ・医療費通知を活用した医療費控除申告手続きの簡素化 ・税・社会保険料のクレジットカード納付 ・e-Tax やねんきんネット、 民間サービスとの連携 ・電子私書箱機能を活用したワンストップサービス (引越・死亡等のライフイベントなど) の提供 ・テレビ・スマートフォン等利用チャネル拡大 ▼ 【2017 年7月以降】 子育てワンストップサービスの検討 【2017 年1月から順次】 情報提供等記録開示システムの運用開始 (情報提供等記録の確認・自己情報表示・プッシュ型お知らせサービス) 出典: 「マイナンバー 社会保障・税番号制度 概要資料」 (内閣官房社会保障改革担当室、内閣府大臣官房番号制度担当室) 医療機関に求められる対応とは を経過した場合には、できるだけ速 やかに廃棄または削除しなければな りません。事業者は、マイナンバー では具体的に、医療機関にはどの カード)と身元(実在)の確認(運転免 の適切な管理のために、必要かつ適 ような対応が求められているので 許証やパスポート) の両方を行う必要 切な安全管理措置や、従業者に対す しょうか。 があります。市区町村が交付する個 る必要かつ適切な監督が求められま 人番号カードがあれば、1 枚で両方 す。組織的対応が必要です。 医療法人等はすべて、民間事業者 に含まれます。したがって、民間事 業者としての体制整備がまず必要に の確認ができます。 また、マイナンバーの利用、提供、 また、マイナンバー制度スタート に合わせて個人情報保護法が改正さ なります。税や社会保障に関する手 収集には制限が設けられました。利 れ、▽個人情報の定義の明確化、▽ 続きで、マイナンバーを取り扱うこ 用については「法律に規定された社 適切な規律の下で個人情報等の有用 とになり、その際、個人番号などの 会保障、税および災害対策に関する 性を確保、▽個人情報の保護を強化 取り扱いについて一定のルールが定 事務」 に限定されます。また、マイナ (名簿屋対策) 、▽個人情報保護委員 められています。 ンバーの提供を求めるのは「社会保 会の新設およびその権限、▽個人情 原稿料、講演料など「金銭等の支 障および税に関する手続書類の作成 報の取り扱いのグローバル化、▽そ 払いを受けるもの」 や、給与を受ける 事務を行う必要がある場合」に限定 の他――について規定が設けられま 従業員に対しては、支払調書などに されます。特定個人情報を他者に提 し た。 「 人 種、 信 条、 社 会 的 身 分、 個人番号を記載しなければなりませ 供することは禁止されています。さ 病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を ん。そのためには、当事者から個人 らに、法律で限定的に明記された場 被った事実その他」が要配慮個人情 番号を取得する必要があります。そ 合を除き、特定個人情報を収集また 報とされました。ここに、病歴が含 の際事業者は、利用目的の明示と厳 は保管することはできないため、社 まれることに注意が必要です。学会 格な本人確認をすることが求められ 会保障および税に関する手続書類の 発表などで患者データを用いる場 ます。 「なりすまし」を防ぐためです。 作成事務を処理する必要がなくなっ 合、その都度本人の了承を得なけれ 本人確認は、個人番号の確認(通知 た場合で法令に定められた保存期間 ばならなくなります。 2 ® 表 3 マイナポータル ①自己情報表示 マイナポータル 自治体などが保有する自らの特定 個人情報の閲覧 2月号 平成29年1月以降順次サービス開始予定 ②情報提供等記録表示 国や自治体などの間の特定個人 情報のやり取りの記録の閲覧 ④ワンストップサービス ③お知らせ情報表示 自治体などからの予防接種や年金、 介護などの各種のお知らせの受け取り は、2018 年度から段階的に導入し、 20 年までに本格運用をめざすとして います。 さらに、マイナンバー法では附則 で「政府は、法律施行後 1 年を目途と して、情報提供等記録開示システム 引っ越しなどライフイベントに関する 手続きの官民横断的なワンストップ化 を設置する」としています。17 年 1月 ⑥電子決済サービス る情報提供等記録開示システム、通 ⑤電子私書箱 行政機関や民間事業者などから支払 証明書などの各種電子データを受領し 活用する仕組み ねんきんネット 2016年 納税や社会保障などの決済をキャッシュ レスで電子的に行うサービス 連携先は今後 eLTAX 等 に順次拡大する予定 e-Tax 他のサイトとのID連携、データ連携 出典: 「マイナンバー 社会保障・税番号制度 概要資料」 (内閣官房社会保障改革担当室、内閣府大臣官房番号制度担当室) 医療現場における今後の展望 に運用開始を目標に構築を進めてい 称 「マイナポータル」 がそれです。 同システムは、▽自分の特定個人 情報をいつ、誰が、なぜ情報提供し たのかを確認する機能(情報提供等 記録表示業務) 、▽行政機関などが 持っている自分の特定個人情報につ いて確認する機能(自己情報表示業 務) 、▽一人ひとりに合った行政機関 などからのお知らせを表示する機能 (お知らせ情報表示業務)――の 3 つ の機能を持つものとなります (表 3) 。 医療は社会保障の一分野です。マ 機能の一元化、▽自己診療情報の活 イナンバー制度の利用対象ですが、 用、▽給付可能サービスの行政から この機能を活用し、 「医療費通知 今回の仕組みでは、医療機関として の通知――などを挙げています。実 を活用した医療費控除申告手続きの の特別な対応は求められてはいませ 際に、今後のマイナンバー制度のあ 簡素化」や「税・社会保険料のクレ ん。ただし、 今後はさまざまな局面で、 り方について、ロードマップが示さ ジットカード納付」などが順次可能と マイナンバーの利用が進んでいきま れており(表 2) 、医療分野において なります。さらに、特定健診データ す。 も順次活用が図られていくことに を個人が電子的に把握・利用可能に なっています。 なれば、予防医療などの場面で利用 実は、マイナンバー制度導入にあ たっての議論では、診療情報をどの その第一段階として、公的医療保 ように扱うかが焦点の一つとなって 険のデータについて新たな番号を付 いました。2011 年 1月に決定された 与し、これをマイナンバーと紐づけ これらが実現すれば当然、医療機 政府・与党社会保障改革本部の「社 ることで、個人番号カードを保険証 関でも、それぞれの機能についての 会保障・税に関わる番号制度につい として利用する仕組みを構築してい 対応が求められるはずです。医療・ ての基本方針」では、 「社会保障分野 ます。昨年 12 月に出された厚生労働 介護の連携に伴う情報共有にも活用 でできること」として、▽高額医療・ 省の「医療等分野における番号制度 の可能性があります。 高額介護合算制度の改善、▽保険証 の活用等に関する研究会」報告書で まとめ 価値が高まるものと期待されていま す。 社会保障分野にあっても、それは 当然です。制度整備の状況を見なが 1月に始まったマイナンバー制度 グデータの活用がこれからますます ら、対応すべきところには迅速に対 は、まず始める「スモールスタート」 重要とされるなかで、その基盤とも 応し、併せて積極的な活用のチャン 的な位置づけです。マイナンバー法 なるマイナンバー制度は、活用範囲 スを探ることも、医療機関経営にとっ では、施行後 3 年を目途に改正が検 が順次拡大されていくことに間違い て必要になってくると思われます。 討されることになっています。ビッ はありません。 3 はテルモ株式会社の商標です。TERUNET、テルネットはテルモ株式会社の登録商標です。Ⓒテルモ株式会社 2016 年 2 月 15MI 042 はテルモ株式会社の商標です。Terumo Medical Pranex、 テルモメディカルプラネックスはテルモ株式会社の登録商標です。 © テルモ株式会社 2015 年 1 月 4