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新店舗立ち上げ時のQC活動における サービス提供行動可視化の役割
新店舗立ち上げ時のQC活動における サービス提供行動可視化の役割 ○大隈隆史* 福原知宏* 一刈良介* 新村猛*+ 蔵田武志* *産業技術総合研究所 張慶椿* +がんこフードサービス株式会社 結果・行動・環境刺激の測る化・見える化による サービスプロセスリエンジニアリング(SPR)支援 いわゆる「ビッグデータ」 購買、稼働率、消費電力 ステークホルダ(自他)の 状態(満足度等) 結果 可視化・情報提示技術 POS 知覚 スキル 影響 影響 「行動データ」 意思決定プロセスモデル (限定合理性、満足化原理) 行動 影響 長期トレンドは 環境刺激へ 知覚 スキル 影響 レイアウト、看板、雰囲気、 ブランド、景気 環境刺激 「環境データ」 2 活用例)現場改善での活用 CSQCC (Computer Supported QCC) 行動計測・提示システム(従業員支援パッケージ)を導入したサービ ス業(労働集約型現場)に適したQCサークルやワークアウト、およ びその実現方法。 CSQCCの実現を促進する 従業員支援パッケージと可視化ツール • • • • • 行動 指標 正規化された 多様な指標 α 行動指標(労働量、動線、サービス業務種別等)+α(会計指標、ナースコール履歴、プラント稼働状況 等)の組み合わせにも届く指標の可視化 正規化された多様な指標の提供による無形性、状況依存性に起因する問題の低減 根拠に基づくQCCやワークアウトの促進 テーマや改善案の自由度向上 テーマの主要指標だけではなく、関連指標も同時に確認(サイドエフェクトの考察) 従業員行動計測・情報提示技術パッケージ 出退勤時にセ ンサ着脱を支 援するタッチパ ネル画面 充電とデータ回収を自動化 →ネットワーク経由でサーバへ蓄積 環境中に配置される Active RFID サービス提供活動を最小限の負担で認識・記 録しサービス品質管理活動を支援する技術 パッケージを整備 注文履歴などの 業務データ Sensor Data Fusionによる 移動履歴情報 RFID受信情報 加速度・角速度・地磁気データ PDRによる移動 ベクトル検出 行動履歴可視化用ソフトウェア 客数を示すアイコン 業務を妨げないセンサ データ収集の負担を減らす 現場支援技術 客室で 追加注文を受けている従業員 4 その追加注文の POS履歴 行動計測技術による品質管理サークル活動支援 • 自分や仲間の行動を振り返って改善の気付きを得る 新人は担当エリア のみで業務 サービス提供業務中に センサをつけて計測 サービス提供中の行動にまつ わる指標に基づく活動テーマ決 め ベテランは担当エリアの領域を超えて 業務している (負担が多くかえって全体の効率が低下しているか もしれない) 計測により効果を検証 ・エリア(絶対位置)が計測できているの で、歩数だけでなく本当に持ち場を離 れることが少なかったか(滞在時間な どの統計量)も検証可能 気付きを改善につなげる活動を開始 [実際に行われた活動例 : 無駄な歩数を減らそう作戦] 自分の持ち場のエリアをしっかり担当しながら,エリア外の食事をリレー方式で運ぶ • 歩数(移動量)を減らす=持ち場を離れることが少ない • 各自の役割に応じたオペレーションが実現できる 現場の取り組み結果の例 • 2011年度QC活動 – テーマ:接客時間の向上 – 効果 • 夜の客室エリア滞在時間が向上 • 追加注文個数が増加 • 移動距離は不変 – データ:2011年1月〜2月 • 2012年度QC活動 • 行動計測データを積極的に使ったQC活動 支援(2012年1月2月QC) • より踏み込んだCSQCCの効果検証 – データ:2012年1月〜2月 1.4 顧客1人当たりの追加注文個数(個/人) – テーマ:持ち場を守る 1.2 * 1. ティータイムの追加注文個数は 維持. ・滞在時間は減少したが,追加注文個 数への影響は見られなかった. 1.0 0.8 0.6 0.4 2. コアディナータイムに 有意差あり. 0.2 ・区間全体で1.4個の増加が 見られた. 0.0 11 12 13 14 15 プロセス改善前 (1月12日~18日) 16 17 18 プロセス改善後 (2月3日~9日) 19 20 21 22 時 * p=1.2×10-2 < .05 (Mann-Whitney’s U test) “業員の行動計測と店舗会計データの可視化によるサービスプ ロセス改善:日本食レストランでの改善活動を例として”(2013 年度サービス学会国内大会) 6 サービスと屋内測位・提示技術 テレビ東京 ガイアの夜明け(2014年12月23日放送) 「今こそ、店舗大改革!」 →ムービー http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber3/preview_20141223.html 7 2014年:新店舗立ち上げの改善支援 •がんこ新宿山野愛子邸 – 2014年10月10日開店 – 2014年10月15日~11月20日計 測・QC期間 取り組みの手順: 1. 課題抽出の為の「計測・可視化」 2. 可視化結果を見ることによる現場 担当者の気づき抽出 3. 改善策の検討・実践 4. 改善後の「計測・可視化」 5. 改善前との比較による効果検証 8 がんこ新宿・山野愛子邸 1階部分 客室(大ホール・ テーブル80席) 客室 (個室) 従業員階段 N サービス ステーション 20.3m 厨房 日本庭園 階段 玄関 レジ Active RFID 17.9m 9 客室 (個室・座敷) がんこ新宿・山野愛子邸 2階部分 客室 (洋個室) サービス ステーション 従業員階段 N 客室 (個室・座敷) 20.3m パントリー 客室 (個室・座敷) 客室 (洋室) 客室 (洋個室) 階段 Active RFID 12.8m 10 滞在履歴の可視化(ヒートマップ) 初日:昼の時間帯(11:00~16:00) 可視化の工夫:滞在時間のヒートマップ表現 → 時間軸を潰して全体の傾向を理解しやすく 1階 1階 1階 Dさん Fさん Iさん レジ・案内担当 レジ・案内担当 パントリー立ち上げ 30エリア担当 11 滞在履歴の可視化(ヒートマップ) 初日:夜の時間帯(16:30~23:00) 可視化の工夫:滞在時間のヒートマップ表現 → 時間軸を潰して全体の傾向を理解しやすく 1階 2階 Gさん Hさん 30エリア担当 12 70・80エリア担当 改善のBefore-Afterの計測結果について •改善内容 – 装置や道具類の配置変更 – 接客トレーニング(配置の記憶、ハンディ端末利用、料理、 施設、お勧めメニューの知識、お代わり等のタイミングの心 配り、歩き方等) – 役割分担徹底(コントローラーと接客) 受動的な接客から能動的な接客へ 滞在履歴のヒートマップによる比較 (before vs. after : 同じ曜日(土曜日)の比較) 10月18日(土曜日) 1F 14 11月8日(土曜日) 受動的な接客から能動的な接客へ 滞在履歴のヒートマップによる比較 (before vs. after : 同じ曜日(土曜日)の比較) 10月18日(土曜日) 2F 15 11月8日(土曜日) 正味接客時間 顧客が滞在する客室に接客係が訪問した時間の総和 Before After 13%程度(時間にして約90秒・平均接客時間の3回分)増加 16 正味接客時間 顧客が滞在する客室に接客係が訪問した時間の総和 Before After 1日における時間帯ごとのばらつきは減少 17 正味接客時間 顧客が滞在する客室に接客係が訪問した時間の総和 Before After 各時間帯における個人ごとのばらつきは増加 18 正味接客時間についての議論 •1時間につき90秒(13%)程度増加 (U検定,p=0.01716 < 0.05 ) – 典型的な接客3回分程度の増加を意味する – 装置や道具類の配置変更や接客トレーニングにより、接客時間が増加した 可能性あり • 1日における時間帯ごとのばらつきが平準化 – 常に接客を心掛けるようにした • 各時間帯における個人ごとのばらつきは逆に大きくなった – 役割分担の徹底がなされた。めりはりがつくようになった 19 従業員1人・1時間あたりの移動距離(単位:m) Before After 13%程度(正味接客時間の増加分とほぼ同程度)増加 ※レジ係を除く 20 移動距離についての議論 •終日とディナータイムで増加(U検定,p=0.00767<0.01) – 1時間あたり30m(13%、正味接客時間の増加割合)程度増加 – 接客トレーニングにより、(呼び鈴等の)受動的な接客から、能動的に客 席に気配りするようになったため – 非本来業務時間が減り、接客に集中できたから •時間帯ごとの分散増加は、役割分担の徹底? •身体的な負担の増加というほどではなかった – (改善により移動距離が減った)銀座四丁目店では10km程度歩いてい る。ここは3km程度。施設の構造が違う. 21 注文件数・追加注文件数(顧客1人当たり) After 注文件数 Before 追加注文件数 注文のピークが18時台から17時台へ 22 注文件数・追加注文件数(顧客1人当たり) After 注文件数 Before 追加注文件数 20時台の注文が増加 23 注文・追加注文件数(顧客1人当たり) についての議論 • いずれの時間帯でも(統計的に有意な)差はなかった • ピークが18時から17時にシフト – オペレーションが円滑になり、早め早めに受注 – 17時からのリピーターが定着したことと、お勧めメニュー の紹介、お代わりの機会損失の削減の成果 • 20時台も増えている – 繁忙時間帯のディナータイムにおいて、各種改善により接客 時間以外(非本来業務)の時間が削減し、接客に集中できた 結果では?(正味接客時間も増えている) 24 その他の議論 • 当初:連携が足りず、重複作業があったり、ルーチン化していないもの(探し物) などがあった、非本来業務が多かった • データを見ながら、優先順位を付けつつ改善の方向性の意識合わせができるように なった • 改善が進むにつれ、トレーニングに時間を使う余裕が生まれた。開店前にもやって はいたが足りなかった。 – その余裕が生まれたのはシステムの力(組織の力)。改善が可視化により加速したのでは? – 具体的な方法論はまだまだこれから。体系化もこれから。 • 自分の持ち場での業務量が多くなるとポイントが得られるといったゲーム要素が あってもよい(技術的には可能) • 役割分担の徹底:分ける(コントローラー、社員)、スキル向上により自然と分か れる(接客、パートナー)、の両方の効果が生じている 25 店舗の立ち上がりの速さ 屋敷型労働生産性推移の比較(5店舗の平均を1とした時の割合) 1.6 同じタイプの店舗と比較して店の 立ち上がりが早かった 1.4 人時売上高(5店舗の平均で正規化) 1.2 1 屋敷A 屋敷B 0.8 屋敷C 屋敷D 山野愛子邸 0.6 0.4 0.2 0 開店翌月(2ヶ月目) 3ヶ月目 4ヶ月目 可視化の効果に対する考察 • 計測には慣れる – ずっと「計測されているから..」と頑張るわけではない – 通常QCよりも効果が大きければ「計測結果の可視化の効果」 • 可視化結果を見ることによってテーマ設定が変わる • 可視化結果を見ることによってモチベーションが変わる • 「青から赤に変わるのを見たい」 • 現状課題の認識をヒートマップ可視化が助けていた • バックヤード滞在時間に対する正味接客時間の短さを直感的に把握 • 個々の軌跡は細かいエピソードの想起に有効 • 個人攻撃にならず,客観的に取り組み内容を説明できた • 課題解決の優先順位をつけることができた 現状,定量評価はできていないが「可視化」の定性的な効果は確認できた まとめ •新店舗の立ち上げ時のQC活動にCSQCCを適用 – 行動可視化結果を見ながらのQC活動は担当者間の意識合わ せと優先順位付けに効果があったことが示唆された. – 通常店舗より早いペースで経営が安定する傾向が観測されて おり,課題の優先順位付けがうまく機能している可能性につ いても示唆された.