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オランダおよびスイスとの新租税条約による持株会社への影響

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オランダおよびスイスとの新租税条約による持株会社への影響
www.pwc.com/jp/tax
Transaction M&A News
オランダおよびスイスとの新租税条
約による持株会社への影響
Issue 38, December 2011
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
オランダおよびスイスとの新条約がい
よいよ 2012 年 1 月 1 日から発効す
ることになりました。
オランダおよびスイスはグループ持株
会社の設立場所として比較的よく利
用されますが、今回のニュースレター
では、新条約によりどのような影響が
考えられるのか、どういう点を考慮し
てグループのストラクチャーを決定す
るべきなのか、といった点を中心に説
明していきます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.
オランダ お よ びスイスと の 新条約が それぞれ
2012 年 1 月 1 日から発効
2011 年 11 月 30 日および 12 月 1 日付の財務省のホー
ムページで、オランダおよびスイスとの新条約が 2012 年 1
月 1 日から発効することが発表されました。
オランダやスイスは、国際的な持株会社やファイナンス会
社を設置する場所として活用されることが多く、またそれら
の誘致にも熱心な国々のひとつとして考えられてきました。
今回の条約改正は、現行の条約と比較して、さまざまな点
でより有利な税務上の恩典を付与するものですが、一定の
場面では従来に比べ条約による税務上の恩典の利用が
制限されることもあるので、その適用関係についてはより注
意が必要となります。
Transaction M&A News
2.
持株会社設置場所として有利な要素
(1) 配当源泉税率が 0%となる場合がある
今回の改正の目玉のひとつは、いずれか一方の国の居住者である法人から他方の締約国の居住者である一定の
者へ配当を支払う場合は配当源泉税率が 0%となることです。一定の者とは、次に掲げるいずれかの者になります。
①
オランダ
i.
当該配当の支払いを受ける者が特定される日をその末日とする 6 カ月の期間を通じ、当該配当を支払う
法人の議決権の 50%以上に相当する株式を直接または間接に所有する法人
年金基金
ii.
②
スイス
i.
当該配当の支払いを受ける者が特定される日をその末日とする 6 カ月の期間を通じ、次の(a)または(b)に
掲げる株式を直接または間接に所有する法人
(a) 配当支払法人が日本居住者である場合:議決権の 50%以上に相当する株式
(b) 配当支払法人がスイス居住者である場合:発行済株式または議決権の 50%以上に相当する株式
年金基金または年金計画
ii.
(2) 株式譲渡所得が免税(ただし不動産関連法人株式を除く)
外国法人である持株会社が日本子会社の株式を譲渡する場合、その譲渡所得は、日本の国内法上は通常、日本での
法人税課税の対象となります。しかし、オランダまたはスイス居住者である親会社が日本子会社の株式を譲渡しても、そ
の譲渡所得は租税条約により従来から日本での法人税課税が免除されてきました。新条約においても原則的にはその
取り扱いは変わりませんが、日本子会社の資産の価値の 50%以上が日本に所在する不動産から直接または間接に構成
される場合には、日本子会社の株式を譲渡したことにより生じる所得は日本での法人税課税の対象となることとなりました。
(3) 使用料、利子に対する源泉税率が 0%となる場合がある
持株会社を設立する場合、単にグループ子会社の株式を保有するだけでなく、管理本部や知的財産権などの統括機能
や、グループ会社のトレジャリー機能としての実体を付与することも一般的に行われるものと考えられます。こうした機能を
果たす対価として、マネジメントフィーやライセンス料などの使用料、利子などが支払われますが、オランダおよびスイスと
の新条約においては、これらに対する日本での源泉税課税が免除される場合があります。
①
②
使用料
日本での源泉税率は原則として 0%となります(現行の条約では 10%)。ただし、使用料の金額が通常の第三者
価額を超過している場合や、使用料を受け取るオランダ法人またはスイス法人が単に中間で受け取っているだ
けで最終的な受益者でない場合には、租税条約による軽減税率の適用を受けることができない場合がありま
す。
利子
日本での源泉税率は原則として 10%となります(現行の条約と同じ)が、政府や中央銀行の他、金融機関等一
定の場合には源泉税率が 0%となる場合があります。具体的には次のような者に対して支払われる場合が該当
します。
i.
ii.
iii.
iv.
PwC
銀行
保険会社
証券会社
上記以外の企業で、当該利子の支払いが行われる課税年度の直前の三課税年度において、その
負債の 50%を超える部分が金融市場において発行された債券または有利子預金から成り、かつ、そ
の資産の 50%を超える部分が非関連者に対する信用に係る債権から成るもの
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ただし、この場合にも、利子を受け取るオランダ法人またはスイス法人が単に中間法人として介在しているだけ
で、同等の資金供与を他国の居住者から受けている場合には、租税条約による軽減税率の適用を受けること
ができない場合があります。
3.
特典条項について
今回の新条約の特徴のひとつとして、特典を制限するための条項が追加されました。上述のような免税特典は一定の実
体が認められる者に対して与えられるため、租税条約の減免を受けるために必要な税務署への届出書を提出する際に、
本国での居住者証明を含め、適格居住者であることを表明するための「特典条項に関する付表(様式 17)」を併せて提
出する必要があります。
特に、オランダまたはスイスにおいて持株会社以外の事業がない場合には適格居住者としての実体を付与することが難
しいため、グループ全体の事業体制を考慮した上で、それに整合するような合理的判断に基づき、持株会社の設置場所
として選択することが望ましいと考えられます。
より詳しい情報、または個別案件への取り組みにつきましては、当法人の貴社担当者もしくは下記までお問い合わせく
ださい。
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース
トランザクション/ M&A 部
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山岸哲也
03-5251-2791
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