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参考事例6(PDF:269KB)
事例6 〈支援体制の整備-多文化共生センタ-〉 「子ども多文化共生センター」における取組 -子ども多文化共生教育推進の中核施設として- -兵庫県教育委員会1 はじめに 兵庫県では、近年の国際化の進展に伴い、外国人県民は増加傾向にあり、140 カ国余、 101,000 人余り(平成 19 年末)が登録されている。外国人県民の多くは、神戸市、尼崎 市、西宮市などの阪神地域や姫路市を中心とする中播磨地域に住んでいるが、県全域に 分散している状況である。 県内公立学校に在籍する外国人児童生徒は、約 4,100 人余り(H19.5.1)で、そのうち 日本語指導が必要な外国人児童生徒は 634 人(H19.9.1)となっている。 2 事業について (1) 事業を立ち上げた経緯 兵庫県教育委員会では「外国人児童生徒にかかわる教育指針」(H12 年 8 月策定) に基づき、外国人児童生徒の自己実現を支援するとともに、すべての児童生徒が多様 な文化的背景を持つ人々と豊かに共生する心を培うことをめざした、子ども多文化共 生教育を計画的・総合的に推進している。その中核施設として、平成 15 年 10 月に、 「子ども多文化共生センター」を開設し、担当指導主事と子ども多文化共生コーディ ネーターを配置している。 (2) 外国人児童生徒の課題 外国人児童生徒の中には、本名を名乗りにくい状況、民族的自覚や誇りを持ちにく い状況、また、日本語の理解が十分でないことや文化・生活習慣の違い、相互の理解 不足などにより、就学、学校生活への適応、学習状況や進学などに大きな課題がある。 (3) 事業内容 ア 情報収集及び発信 ・ 子ども多文化共生センターのホームページで県下各市町の国際交流協会、 NGO/NPO 等関係機関・団体のイベントや日本語教室、研修講座などの紹介 ・ 子ども多文化共生教育にかかわる報告書・資料の紹介 ・ 教育委員会、センター、関係機関・団体が主催するイベント・研修会の情報 ・ 「センター通信」の発行 イ 外国人児童生徒等にかかわる教育相談 相談内容は、学校での学習や生活、日本語指導、進路に関することなど ・ 対応言語は日本語(予約があれば通訳を準備) ・ 県内各地域で出張相談を実施 ウ ・ 教材・教具等の展示及び貸出 49 ・ 日本語指導教材、国際理解教育関係・多文化共生教育に関する図書、外国の教 科書(6 カ国)、民族衣装・楽器・玩具等の貸出(年間約 300 点) エ 子ども多文化共生サポーターの派遣 ・ 日本語指導が必要な外国人児童生徒が在籍する公立学校全てに、母語が話せる 子ども多文化共生サポーターの派遣(H20.10.1 現在 オ 230 校、22 言語、109 名) 子ども多文化共生ボランティアの育成、登録及び派遣(H20.3 現在 ・ カ 121 名) 日本語指導、通訳・翻訳、異文化体験活動等への派遣(年間約 70 回) NGO/NPO 等関係機関・団体と連携した子ども多文化共生をめざす交流活動の実施 ・ ひょうご・ヒューマンフェスティバルなどの企画及び運営 キ 多文化共生の取組に関する調査や指導者研修等の実施 (4) 予算(H20 年度) ・ センター維持費等 2,524 千円 ・ サポーターの派遣 99,703 千円 ・ サポーター等研修 717 千円 ・ 教育相談 221 千円 (5) 事業効果と課題 ア 事業効果 ・ 子ども多文化共生サポーターの派遣により、教員と当該児童生徒とのコミュニ ケーションの円滑化、生活適応や学習支援、心の安定などが図られ、早期の学校 生活への適応が進むとともに、学力の向上につながっている。 ・ 学校や各市町の要請に応じて、書籍や教材、民族衣装・玩具等の貸出とともに 日本語指導、通訳・翻訳、異文化理解のゲストティーチャーとして子ども多文化 共生ボランティアを派遣することにより、異文化理解が深まり、「豊かに共生す る心」の育成に寄与している。 ・ NGO/NPO 等関係団体と連携した進路ガイダンスや教育相談の実施により、児童 生徒の自己実現に向けた取組が進むとともに、保護者への情報提供が充実した。 イ 課題 ・ 外国人児童生徒の支援についての県と市町の役割 分担の見直し ・ 多様な外国人児童生徒に対する個に応じたきめ細 かな支援の在り方 ・ 日本語指導や母語・母文化の支援方法の工夫や教 材開発 ・ 県内にある外国人学校や NGO/NPO 等関係機関・団 体との連携の充実(「点」→「線」→「面」へ) サポーターの支援による学習 50 事例7 〈連携の模索と推進―企業との連携―〉 学校と企業との連携づくりをすすめる -岐阜県美濃加茂市1 現状 ・ 1995 年以後、美濃加茂市には就労を目的とする外国人居住者が急増し、2008 年 5 月現在で市民の 11%弱にまで達するようになった。市内の公立小中学校の外国籍児童 生徒も増え、5 月 1 日現在で小学校 166 名、中学校 76 名合計 242 名が在籍している。 国別では、ブラジル 196 名、フィリピン 34 名、ペルー6 名、中国 3 名、その他 3 名で ある。市内 11 校の小中学校のうち 8 校に外国籍児童生徒が在籍している。 市教育委員会では、外国籍児童生徒が多く在籍する学校に日本語教室を設置し、県 教育委員会から配置されている加配教員に加え、日本語指導支援員を配置し、指導や 援助にあたっている。また、日本に来て間がない場合や日本の学校での生活経験がな い児童のための初期適応指導教室を設置し、初期適応指導や生活言語・学習言語の指 導を行うようにしている。 2 事業について (1) 事業を立ち上げた経緯 ・ 外国籍児童生徒の教育にあたっては、受入態勢の整備と合わせて、保護者が日本の 学校制度や、各学校の指導方針などを理解することが必要である。合わせて、その保 護者を雇用している企業との連携を欠かすことができない。本来、企業が労働力を確 保するということは、同時にその家族の生活や子どもの教育についても責任の一端を 担うということであり、地域や学校の活動に対して理解や協力をしていくことは、企 業としての大切な役割である。これは、外国人労働者を雇用する場合においては、直 接、間接を問わず同じだと考えている。行政や学校の努力だけでは外国籍児童生徒の 受入や教育は難しさがあり、企業の果たすべき役割は大きい。 (2)事業内容 ①「学校ホットライン」の開設 市内で外国人労働者を最も多く雇用(間接雇用を含む)している企業と学校との間 で「学校ホットライン」を開設している。これは、警報や災害時等の連絡や伝染病等 による臨時休業、さらには児童生徒の疾病や怪我などに関わる緊急連絡を行う場合、 ホットラインを活用し、派遣会社への連絡がスムースになされる仕組みである。連絡 を受けた派遣会社は、雇用する外国人保護者への連絡や、勤務の配慮を行うなどの対 応をとることになっている。 ②「学校評議員会」に企業からも参加 51 企業の協力を得るには、学校の取組を公開し、実際の児童生徒の様子や教職員の動 きを理解してもらうことが必要である。膝を交えて話し合い、考えの交流を進めるこ とが大切である。市内で最も外国籍児童数が多い小学校(以下センター校)では、学 校評議員のメンバーに企業の代表者が入っている。学校評議員会では、毎回必ず外国 籍児童生徒に対する教育やPTAの取組を話題にし、意見交換を行っている。 ③企業が行う夏祭りに児童が参加 センター校では、毎年、企業が行う夏祭りで合奏の発表を行っている。ブラジル人 労働者が最も多いことから、サンバのリズムを取り入れた曲を披露するようにしてい る。センター校は国際理解教育の一環としてブラジル音楽に親しむ活動を行っており、 教職員も参加し、発表に向けて練習を重ねていく。発表当日は、子どもの保護者をは じめ、多くの見学者があり、センター校としても企業の活動と連携をとっている。 ④「国際交流協会」を通じた協力体制の構築 国際交流協会では、その活動の趣旨として、「在住外国人と共に未来を創るまちづ くり」を掲げていることから、教育に対する理解もあり、学校と企業との橋渡し役を 担っている。今年度から「中学校外国籍生徒学習支援事業」に取り組んでいる。その 内容は、来日して間もない生徒への日本語指導や進路実現のための学習指導、教育相 談などを、企業からの資金援助を基にして進めていこうとするものである。国際交流 協会では学校の考えや要望をつかみ、事業を 具体的に進める方策を考え、そのための資金 協力を働きかけている。行政や学校からは働 きかけにくい内容も、国際交流協会の立場で 企業への訪問などを積極的に行っている。 (3)予算 <企業の夏祭りでの合奏の発表> 協力体制の構築や維持のための市の予算は特にない。 (4)事業効果と課題 企業の理解と協力が少しずつではあるが得られるようになり、学校の参観日に外国 籍保護者が来ることが多くなった。また、以前に比べれば連絡もスムースになってい る。しかし、比較的規模の大きな企業は協力的であっても、中小の派遣会社とは連携 が取れていないのが実情である。また、企業との関係は社会や景気の動向にも左右さ れ、継続的な取組として進めるには難しさがある。本市では、連絡協議会の開催が不 定期であり、今後、定期的な取組として行う必要がある。さらに、連携にはキーパー ソンの動きが重要である。日ごろから円滑な関係作りを心掛け、学校と企業の連携を 進めていく人材の育成を図っていくことも大切である。 52