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諸外国における位置、規模等の検討段階における環境影響評価

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諸外国における位置、規模等の検討段階における環境影響評価
資料2-4
諸外国における位置、規模等の検討段階における環境影響評価について
1.調査、予測及び評価の手法に関する事例
環境省において、諸外国における事業の位置・規模又は施設の配置・構造の検討段
階における環境影響評価の事例を収集したところ、5事例1が確認された。
これらの事例の内容を以下にまとめた。各事例の詳細については、別紙を参照。
表1
事例
No.
1
2
3
4
5
環境省において収集した諸外国における事業の位置・規模又は
施設の配置・構造の検討段階における環境影響評価の事例
アセス
案件名
事業種
国名
実施者
ミュンヘン空港拡張事業
飛行場
Darlington における新規原子力発電所増設
発電所
事業
(原子力)
発電所
ケープ風力エネルギー事業
(風 力)
発電所
Jacobswoude における風力発電事業
(風 力)
フランス・スペイン間送電線強化事業
送電線
国営企業
ドイツ
民間
カナダ
国
米国
民間
オランダ
民間
フランス
(複数案の設定)
y 複数案としては、事業の位置に関するもの(増設滑走路の位置、事例3:発電
所の位置、事例5:送電線ルートの位置)と、事業の規模及び施設の配置等に
関するもの(事例4:発電設備の基数及び配置)
、施設の配置・構造等に関する
もの(事例2:原子炉等の位置、冷却システムの種類)があった。
(評価項目)
y 評価項目は、大気環境、水環境、土壌・地質、動植物、景観、レクリエーショ
ン等、環境要素を網羅的に評価の対象としている事例が比較的多かった。
1
・ミュンヘン空港拡張事業(http://www.boemre.gov/offshore/RenewableEnergy/CapeWindFEIS.htm)
(http://www.nae.usace.army.mil/projects/ma/ccwf/deis.htm)
・ Darlington における新規原子力発電所増設事業(http://www.opg.com/power/nuclear/darlington/
EA_Process/?path=Environmental%20Impact%20Statement)
・ケープ風力エネルギー事業(http://www.boemre.gov/offshore/RenewableEnergy/CapeWindFEIS.htm)
(http://www.nae.usace.army.mil/projects/ma/ccwf/deis.htm)
・Jacobswoude における風力発電事業(http://docs1.eia.nl/mer/p12/p1244/1244-88mer_aanv.pdf)
(http://www.windmolensjacobswoude.nl/samenvatpage.html#3- De m.e.r.-7procedure)
(第5回 中央環境審議会 総合政策部会 環境影響評価制度専門委員会 資料5)
・フランス・スペイン間送電線強化事業(http://www.rte-france.com/fr/nos-activites/etudes-d-impact-etprojets-b-e-i/etudes-d-impact/renforcement-de-l-interconnexion-electrique
-france-espagne-2/l-etude-d-impact)
これらの事業のうち、送電線は我が国の環境影響評価法の対象事業ではない。また、風力発電事業は、今後、対
象事業に追加する予定。
1
(調査・予測手法)
y 5件のうち4件においては、現地調査が実施されていた。
(事例1、2、3、5)
y 例えば、事例1では、自然環境への影響を評価するため、既存資料により保護
区や動植物の生息・生育地等を確認した上で現地調査を行い、これらの詳細な
位置の確認や植生の状況等について把握していた。
(評価手法)
y すべての事例において、各案について評価項目ごとの影響の程度を評価し、比
較表に整理していた。
y 具体的な比較評価の方法としては、影響の程度を点数化している事例(事例1)
や段階評価を行っている事例(事例5)、定量的な指標を用いている事例(事例
2、4)、複数案のうちの1案を基準として各案の影響の程度を相対的に評価し
ている事例(事例3)等があった。
2.ティアリングの事例
y SEA の結果をその後の環境影響評価手続に活用する仕組み(ティアリング)
については、アメリカ、カナダ、イギリス、オランダ、ドイツで、基本的な考
え方が法令やガイドライン等で示されている。
表2
米
国
ド
イ
ツ
カ
ナ
ダ
英
国
オ
ラ
ン
ダ
諸外国におけるティアリングの法的根拠
国家環境政策法(NEPA) :連邦法 1969 年
プログラム的環境評価(米国の SEA)から優先度の低い課題を省略し、分析の重複を回避すること
で、合意形成、十分な情報に基づいた意思決定及び効率的な環境影響評価プロセスを促進する。
国家環境政策法(NEPA)の実施に関する細則:連邦ガイドライン 1970 年
ティアリングに関係する所轄官庁・部局は、上位の評価で得られた環境影響が下位の評価で参照さ
れ、同じ内容に関する議論の重複を避け、そのレベルに適切な議論・評価がなされるよう努めること
とする。下位の評価(例えば環境影響評価)では、上位における議論の内容に関する文書の所在を記
し、それを要約するのみとし、下位で実施すべき詳細な議論・評価に的を絞ることが望まれる。
環境影響評価法(UVPG)
:連邦法 2007 年改正
マルチレベルの許認可プロセスの上位レベルですでに実施された評価項目を重複して実施しない
ように、下位の評価においてはスコーピング段階で、評価すべき項目について決定しなければならな
い。
提案された政策、計画及びプログラムの環境評価に関する内閣指令:内閣指令 2004 年改正
検討することとなる全ての選択肢の分析において、環境的配慮を十分に実施し、政策、計画及びプ
ログラムの最終決定は SEA の結果を盛り込むものでなければならない。
カナダ環境アセスメント法:法律 1992 年
上位における政府決定を考慮して、プロジェクトレベルにおける環境評価(Environmental
Assessment)を実施するための法的枠組みを提供している(注:ただし、SEA に関しては、具体的に
言及していない)。
SEA 指令ガイド:ガイドライン 2006 年
プロジェクトに関して、環境影響評価の実施が必要になった場合、関連する SEA の調査結果を参照
するのが望ましい。
環境管理法:法律か規則(確認中) 2006 年改正
附則リスト C 及び D に定められる対象事業に関連することが想定される上位の計画などに対して
は、SEA が実施される必要がある。より上位のイニシアティブ(計画及びプログラムなど)は、下位
のレベルにおいて考慮されなければならない。
2
環境省において、諸外国におけるティアリングの事例を収集したところ、米国の2
事例2について詳細な内容が確認された。各事例の詳細については、別紙を参照。
表3
事例
No.
6
7
環境省において収集した諸外国におけるティアリングの事例
アセス
案件名
事業種
国名
実施者
下水処理
フロリダキーズ水質改善プログラム
国
米国
施設等
州間高速道路(I-70)
道路
州政府
米国
これらの事業においては、上位段階の環境影響評価の結果を、次段階において次の
ように活用していた。
y
y
y
2
次段階の評価書では、上位段階の評価書の記述を引用した上で、より詳細な検
討結果を追記。
上位段階の評価において影響を受ける可能性があると指摘された希少種につい
て、次段階で詳細な調査・予測を実施。
上位段階において対策を講じない場合の騒音の変化を概観し、次段階では上位
段階の結果を踏まえて、対策の検討に重点化。
・フロリダキーズ水質改善プログラム(http://www.evergladesplan.org/pm/projects/non_cerp_sf_projects_
fkwqip.aspx),( http://www.evergladesplan.org/pm/projects/project_docs/other_projects_fkwqip/fkwq_eis_
main_body_cover_figures.pdf)
・州間高速道路(I-70)(http://www.improvei70.org/)
これらの事業のうち、下水処理施設は、我が国の環境影響評価法の対象事業ではない。
3
4
別 紙
■事例1 ミュンヘン空港拡張事業(ドイツ)
1.事業の概要
●対象計画
:ミュンヘン空港拡張事業
●種類
:飛行場(滑走路の増設)
●アセス実施者:ミュンヘン空港有限会社(Flughafen München GmbH)
【国と地方自治体が 100%所有する国営企業】
●規模等
:増設滑走路長 4,000m
2.検討経緯
本事業は、バイエルン州ミュンへン市郊外に位置している既存の飛行場に新たな滑
走路を追加するものである。
環境影響評価手続は、2005 年 6 月から開始し、2006 年 7 月に環境影響評価書が所
轄官庁へ提出された。その後、2007 年に、環境影響評価において示された複数案の中
から最終的な案を選択した意思決定が行われた。
※環境影響評価の実施根拠
・環境影響評価法(UVPG)
3.複数案の設定
環境影響評価においては、増設する滑走路の位置に関して、4つの案(下図 4b, 5a,
5b 及び 7)が比較評価された。
2km
※図中に示された 4b, 5a, 5b 及び 7 以外の諸案は、発着便数の要求事項を満たさ
ないなどの経済的な理由で、環境影響評価の対象とならなかった。
5
4.評価項目・内容
評価項目は以下のとおりであり、環境面のほか、空港の機能性、地域交通への影響
等、社会経済面の項目も含まれていた。
〔評価項目〕
・人への影響(住環境、騒音)
・環境への影響(水質、動物、植物、土壌、景観)
・コミュニティーへの影響(騒音)
・保護区への影響(自然保護区、景観保護区、準景観保護区、法令により保護の対
象となっているビオトープ、国・地域指定営巣地、NATURA 2000 地域)
・空港の機能性
・空港開発に関する合意形成
・地域交通への影響
調査は、公表されている既存資料で不足する部分について現地調査が行われた。例
えば、自然環境への影響に関しては、既存資料により自然保護区やビオトープ等を確
認した上で、これらの詳細な位置の確認や植生の状況等について現地調査を行い把握
していた。
5.評価結果
4つの案それぞれについて、評価項目の大項目毎に影響の程度を点数化し、評価し
た。評価は、大項目を2~8つの小項目に分け、専門家が小項目ごとに評価・採点し
た。
例えば、
「環境への影響」の小項目としては水質、動物、植物、景観等が、
「保護区
への影響」の小項目としては、自然保護区、景観保護区、法令により保護の対象とな
っているビオトープ等が挙げられた。採点においては、影響が小さい、もしくは機能
性・合意形成に関する問題が少ないと予測された場合に小さい数値が与えられた。
総合的に 5b 案が最も適した案であると評価された。
評価項目(大項目)
4b 案
5a 案
5b 案
7案
人への影響
5.03
2.98
2.52
3.47
環境への影響
3.01
3.55
3.03
3.54
コミュニティーへの影響
6.88
2.57
1.80
2.75
保護地区への影響
2.24
2.46
2.64
3.53
空港の機能性
4.4
1.8
1.00
1.20
空港開発に関する合意形成
7.42
6.36
0.00
0.21
地域交通への影響
1.00
2.00
2.00
4.00
4
3
1
2
総合評価
出典:https://www.muc-ausbau.de/downloads/gutachten_ROV/UVSBlasy/umweltstudie_blasy.pdf
https://www.muc-ausbau.de/downloads/gutachten_PFV/02_1KBL_Konfigurationsanalyse.pdf
6
■事例2
ナダ)
Darlington における新規原子力発電所増設事業(カ
1.事業の概要
●対象計画
:Darlington における新規原子炉の建設準備、建設及び運転事業
●種類
:原子炉の新設
●アセス実施者:Ontario Power Generation 社(電力事業者)【民間】
●規模等
:発電能力 最大 4,800MW(敷地面積約 485ha)
2.検討経緯
2006 年、Ontario Power Generation 社は、Darlington における新規原子炉の建設
準備、建設及び運転事業(Ontario 州 Clarington 市)に関する事業許可をカナダ原子
力安全委員会に申請した。同社は、当該地の土地所有者であり、既存の Darlington
原子力発電所を運営していた。同社は、同事業に関する環境影響評価を 2006 年から
実施し、2009 年に環境影響評価書を提出した。
※実施根拠
・カナダ環境アセスメント法
3.複数案の設定
採用する原子炉の種類や関連施設等の計画に関して、複数のメーカーがそれぞれ異
なる計画を提示しており、未定であるため、複数の案を包括する内容として環境影響
評価を実施している。具体的には、原子炉及び冷却システムの種類や配置、低・中レ
ベル放射性廃棄物の処理、使用済み燃料の保管、建設発生土等の処理について複数案
を想定し、それらの特徴を全て包括する条件での評価を行った。
<複数案の例>
案1
案2
案3
中央送電施設から南東 0.7km
に 2 基、1.2km に 2 基
中央送電施設から南東 1.2km
に2基
中央送電施設から南東 0.7km
に 1 基、1.2km に 1 基
自然通風冷却塔
(natural draft cooling
tower)
機械通風冷却塔
(mechanical draft cooling
tower)
中央送電施設
敷地内の
原子炉の
配置、
総数等
敷地
埋立地
埋立地
500m
原子炉
冷却
システム
ワンスルー湖水冷却システム
(once-through lake-water
cooling system)
7
4.評価項目・内容
評価項目は以下のとおり。
〔評価項目〕
大気環境、地表水環境、水域生態系、陸域生態系、地質・水文、放射線・放射能、土
地利用、交通、文化財、社会経済的環境、先住民、健康(人間・動植物)
また、これらの他、「持続可能性」、「環境が事業に与える影響」、「気候変動」、「故
障」、「事故、「悪意をもった行為」(テロなど)についても検討している。
計画地及びその周辺では 1972 年から様々な環境調査が実施されているため、これ
らの資料を活用することとしているが、ギャップ分析3の結果から必要と判断された箇
所については、補足的に現地調査及び資料収集を行っている。
5.評価結果
上記の 13 項目のうち、影響が生じると考えられた水域生態系、陸域生態系、土地
利用及び社会経済的環境について、複数案を包括した条件において環境影響を検討し
ている。
複数案の評価例としては、上記の3案ごとに建設発生土等の処理について下記のと
おり処理量を予測している。
<複数案の評価例>
案
1
2
3
総掘削量
(Mm3)
9.4
9.8
12.4
北西処分場に 北東処分場に
廃棄(Mm3)
廃棄(Mm3)
1.2
4.5
1.2
4.5
1.2
4.5
湖面埋立とし
て廃棄(Mm3)
3
3
3
沖合投棄場所
に廃棄(Mm3)
0.7
1.1
3.7
なお、総合的な評価としては、いずれの案を採用しても著しい環境影響は生じない
と結論付けているが、最後に事業者として最適と考える原子炉の種類及び台数、冷却
システム、放射性廃棄物の保管方法、発生土等の処理について述べている。
出典:
http://www.opg.com/power/nuclear/darlington/EA_Process/?path=Environmental%20Impact
%20Statement
3
ギャップ分析:重要な生態系などの保護対象が、実際に保護地域に指定されているか、両者を比較してそのギャ
ップ(差)を調べること。
8
■事例3 ケープ風力エネルギー事業(米国)
1.事業の概要
●対象計画
:ケープ風力エネルギー事業
●種類
:風力発電施設の新設4
●アセス実施者:米国陸軍工兵隊(事業者は、ケープ風力アソシエイト LLC 社【民間】
)
●規模等
:風力発電設備 130 基(定格出力 3,600kW)
2.検討経緯
本事業は、定格出力 3,600kW の風力発電設備 130 基をマサチューセッツ沖のナンタ
ケット海峡の浅瀬に設置し、発電した電力をマサチューセッツ州 New England 地区に
送電するものである。環境影響評価は、2001 年 11 月から 2010 年4月までに行われた。
その後、2010 年4月に意思決定及びその記録が発行され、2年間にわたり建設工事が
実施される予定である。
※環境影響評価の実施根拠
・国家環境政策法(NEPA)
・マサチューセッツ州環境政策法 等
3.複数案の設定
環境影響評価においては、原案に対する代替案として5案(下図参照)が比較され
た。
20km
原案:Horshoe Shoal,(緑:65km2)
代替案1:South of Tuckernuck Island(黄:93km2)
代替案2:Monomoy Handerkerchief Shoal(青:67km2)
代替案3:Horshoe Shoal における規模縮小案(赤 :35km2)
代替案4:Horshoe Shoal における配列凝縮案(緑:65km2)
代替案5:Horshoe Shoal における2段階利用案(紫:2区画に分け、先行地区と後
発地区の間でモニタリングを実施(65km2))
4
風力発電事業は、今後、我が国の環境影響評価法の対象事業に追加する予定。
9
4.評価項目・内容
評価項目は以下のとおり。
〔評価項目〕
・物理的環境項目(地質、騒音、海洋物理、気候・気象、大気質、水質、電磁場)
・生物的環境項目(陸域植生、海岸・干潟植生、鳥類以外の陸域・海岸動物相、鳥類、
潮汐海底生物資源、海洋哺乳類、魚類及び漁業、魚類の生息環境、絶滅の恐
れがある、もしくは絶滅危惧種)
・社会的環境項目(社会経済分析地域、都市・準都市インフラ、人口・経済的背景、
景観、文化資源、レクリエーション・観光、対象事業地周辺の土地利用)
水鳥や海底堆積物中の底生動物については現地調査が行われた一方で、潮汐作用等
の海洋物理に関しては既存データ等を用いた検討が行われていた。
5.評価結果
原案(前頁「ケープ風力エネルギー事業対象地案」における Horshoe Shoal(65km2:
緑))と各複数案との比較評価が行われた。
原案よりも影響が大きいと予測された場合は「-」、原案よりも影響が小さいと予
測された場合は「+」、同等な影響の程度であると予測される場合は「0」で整理され
ている。
<複数案の評価例>
評価項目
South of
Tuckernuck
Island
小面積案
Monomoy
Shoals
配列
凝縮案
2段階
利用案
(黄)
(赤)
(青)
(緑)
(紫)
1
地質
0
0
0
0
0
2
騒音
0
+
0
+(工事)
0
3
海洋物理
0
0
0
0
0
4
気候・気象
0
0
0
0
0
5
大気質
0
+
0
0
-(工事・閉鎖)
6
水質
0
+
0
+(工事)
-(工事・閉鎖)
7
電磁場
0
0
0
0
0
8
陸域植生
0
0
0
0
0
9
海岸・干潟植生
0
0
0
0
0
(略)
出典:最終環境影響評価書(FEIS)
http://www.boemre.gov/offshore/RenewableEnergy/CapeWindFEIS.htm
環境影響評価書案(DEIS)
http://www.nae.usace.army.mil/projects/ma/ccwf/deis.htm
10
■事例4 Jacobswoude における風力発電事業(オランダ)
1.事業の概要
●対象計画
:Jacobswoude における風力発電事業
●種類
:風力発電施設の新設5
●アセス実施者:風力発電所建設を目的とした事業協同組合【38 名の土地所有者が構成】
●規模等
:3000 万 kWh
2.検討経緯
本事業は、風力発電所建設を目的とした事業協同組合(38 名の土地所有者が構成)
が、Jacobswoude 市及び Alphen aande Rijn 市にまたがる Vierambacht 干拓地域
において、風力発電事業を計画し、市議会に提案したものである。1995 年に策定さ
れた地域計画においては、道路(N207)に沿って設置する計画が示されたが、その
後、高速道路を挟んで設置する案やより広域に設置する案が出されるなど検討が続け
られ、結果、Vierambacht 干拓地域が発電所設置に適した地域であることが認められ
た。
環境影響評価手続は 2002 年 4 月に開始し、2003 年 12 月に環境影響評価書を公表
した後、オランダの環境影響評価委員会による指摘を受け、2004 年 6 月に同指摘へ
の対応をとりまとめた補足文書を公表した。
※実施根拠
・環境管理法
・環境影響評価令
3.複数案の設定
風力発電機の配置、規模及び総数について、下記の5つの案を設定し、検討を行っ
ている。
案
5
位
規 模
風車の総数
(風車一基あたり)
置
A
N207 号道路の両側に 1 列ずつ
750kW
20 基
B
N207 号線の東側に 1 列
2,000kW
9基
C
N207 号線の東側に 2 列
1,500kW
12 基
D
開拓地域内全域に群立
950kW
21 基
E
開拓地域北西部に群立
2,000kW
15 基
風力発電事業は、今後、我が国の環境影響評価法の対象事業に追加する予定。
11
4.評価項目・内容
下記の評価項目について、風力発電所を設置しない場合の 2020 年度時点との違い
について予測した。
〔評価項目〕
発電量及び CO2 排出量、必要とする空間面積、景観、自然環境(鳥類の衝突リスク等)、
騒音、遮へい(日影)
5.評価結果
各案について、評価項目ごとの影響の程度を比較していた。これらの比較に当たっ
ては、単位当たりのエネルギー生産量を考慮していた。
<複数案の評価例>
評価項目
A
B
C
D
E
152.4
(5)
44.02
(2)
60.54
(3)
126.00
(4)
43.83
(1)
+/(5)
+
(1)
0
(2)
(4)
0
(2)
-
-
-
-
-
0.17
(2)
0.96
(4)
0.13
(1)
0.75
(3)
2.88
(5)
0.053
(1)
0.091
(2)
空間
・必要とする空間面積(m2)
景観
・景観に関する総合評価
自然環境
・鳥類への障害
騒音
・騒音レベルが変化する住宅の数
日影
0.10
0.15
0.11
(3)
(5)
(4)
※表中の数値は予測値を各案のエネルギー生産量で除した値である。
※括弧内の数字は、複数案中の順位を示す。
・影響が生じる住宅の数
この結果を踏まえ、既存の複数案をもとに「最も環境に優しい案」を検討し、N207
の東側に 1500kW のタービンを 6 基、1 列で配置する計画が最適としている。これによ
り、6,460 世帯分の年間電力消費量に当たる 21 百万 kWh の電力が生産されるとしてい
る。
出典:http://docs1.eia.nl/mer/p12/p1244/1244-88mer_aanv.pdf
http://www.windmolensjacobswoude.nl/samenvatpage.html#3- De m.e.r.-7procedure
第5回 中央環境審議会 総合政策部会 環境影響評価制度専門委員会 資料5
12
■事例5 フランス・スペイン間送電線強化事業(フランス)
1.事業の概要
●対象計画
:フランス・スペイン間送電線強化事業
●種類
:送電線の建設6
●アセス実施者:RéSEAu de transport d’électricité(RTE)社【民間】
●規模等
:65km
2.検討経緯
本送電線事業は、南北 65km にわたる地下埋設の直流送電線を Baixas(フランス南
部の都市)と Perthus(ピレネー山脈のフランスとスペインの国境にあるフランスの
都市)との間で設置するものであり、2008 年に RTE 社が事業計画を発表した。
環境影響評価手続は 2009 年 9 月から 2010 年 9 月まで行われ、複数案として3つの
送電線ルートが比較された。2011 年に事業許可の取得が見込まれており、同年中ごろ
から、2013 年までの送電線施工工事が計画されている。
※環境影響評価の実施根拠
・環境法典 L-122
・環境法典 R-122
3.複数案の設定
送電線ルートに関する複数案として、右図の黄
色(A案:18km)、薄紫色(B案:21km)及び水
色(C案:22km)の3通りの送電線ルートが比較
検討された。
2km
6
送電線は、我が国の環境影響評価法の対象事業ではない。
13
4.評価項目・内容
評価項目は、以下のとおり。
調査は、送電線施工予定全域(全長 65km)において、一年間の動植物に関する現地
調査が行われた。
〔評価項目〕
・物理的環境影響(大気、気候、地質、地表水、水資源、自然災害)
・自然環境への影響(植物及び植生、動物、自然保護地区)
・人間環境への影響(居住環境・生活様式、都市計画、農業及び林業、インフラ、
経済的な影響、電磁気・健康)
・文化遺産及び景観への影響(考古学的遺産、建築遺産、景観)
5.評価結果
A案は近年整備された高速鉄道沿いのルート、B案は園芸地帯を横断するルート、
C案は湿地帯を通過するルートであった。各案に関して、影響の予測は三段階評価で
行われ、その結果は下表のように整理された。
総合的に判断して、A案が最も環境への影響が低い案であると評価された。
A案
B案
C案
物理的環境影響
自然環境への影響
人間環境への影響(居住環境・生活
様式、都市計画)
人間環境への影響(農業及び林業)
人間環境への影響(インフラ、経済
的な影響、電磁気・健康)
文化遺産及び景観への影響
※凡例:環境影響の高い順に黒、灰色、白
出典:
http://www.rte-france.com/fr/nos-activites/etudes-d-impact-et-projets-b-e-i/etudes-d-impact/re
nforcement-de-l-interconnexion-electrique-france-espagne-2/l-etude-d-impact
14
■事例6 フロリダキーズ水質改善プログラム
1.事業の概要
●対象計画
:フロリダキーズ連邦海洋保護区に流入する排水及び雨水を適切に処
理するため、下水道や下水処理施設等を建設する計画
●種類
:下水処理施設等7
●アセス実施者:アメリカ陸軍工兵隊
2.実施状況
2004 年に計画全体についての環境アセスメント(PEIS)が実施された後、対象
地域内の6地点において簡易アセス(EA)が行われている。
PEISにおいては、3つの複数案(ノーアクション、連邦政府の資金援助を利用、
他の資金源を利用)について、水質や保護対象種等への影響が予測されるとともに、
公衆関与が行われた。
PEISでは計画全体の一般的な環境影響を取り上げたのに対して、次段階のEA
では、各地点の個々のプロジェクトによる環境影響について深く掘り下げ、詳細な分
析を行っている。
3.ティアリングの内容
・次段階の簡易アセスの冒頭において、ティアリングを行った旨の記載がある。
・次段階の評価書の構成は、PEISの構成をそのまま利用している。
・次段階の評価書の各項目における記載内容は、上位段階の評価書の記述をそのまま
引用した上で、当該地点における特有の情報や詳細な検討結果を追記している。
出典:
http://www.evergladesplan.org/pm/projects/non_cerp_sf_projects_fkwqip.aspx
http://www.evergladesplan.org/pm/projects/project_docs/other_projects_fkwqip/fkwq_eis_
main_body_cover_figures.pdf
7
下水処理施設は、我が国の環境影響評価法の対象事業ではない。
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■事例7 州間高速道路(I-70)
1.事業の概要
●対象計画
:ミズーリ州の主要都市であるセントルイス及びカンザスシティを結
ぶ I-70 高速道路について、渋滞を緩和するため、道路の付け替え
を行う計画・事業
●種類
:道路
●アセス実施者:ミズーリ交通局
2.実施状況
第1段階として、2000 年から道路計画全体の環境アセスメントが実施され、事業の
周辺地域の環境影響等に関する調査が行われた。また、環境影響の受けやすさの観点
から全体を7つの区間に分け、区間ごとに以下のいずれに該当するかを判断した。
・事業アセス(EIS)実施 :2区間
・簡易アセス(EA)実施 :4区間
・アセス不要
:1区間
次段階の事業アセス及び簡易アセスにおいては、上位段階で検討した事項を参照し
つつ、各区間について詳細な環境影響が調査された。道路幅、詳細ルートの検討、イ
ンターチェンジ、レストエリアの場所、管理体制等について複数案の検討を行うとと
もに、環境保全のための対策についても検討されている。
3.ティアリングの内容
・次段階において、ティアリングの解説や上位段階の検討結果について、詳細に記載。
(第7区間 事業アセス)
・上位段階の評価において影響を受ける可能性があると指摘された希少種について、
次段階で詳細な調査・予測を実施。(第3区間 簡易アセス)
・上位段階において対策を講じない場合の騒音の変化を概観し、次段階では上位段階
の結果を踏まえて、対策の検討に重点化。(第4区間 事業アセス)
出典:
http://www.improvei70.org/
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