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【請求項1】 ポリテトラフルオロエチレンに、結晶融 点以上の
1 2 (57)【特許請求の範囲】 【0002】 【請求項1】 ポリテトラフルオロエチレンに、結晶融 【従来の技術】PTFEは耐薬品性と耐熱性に優れたプ 点以上の温度で酸素不存在下において0.5kGy/s ラスチックであり、従来、産業用、民生用樹脂として広 ∼100kGy/sの線量率で電離性放射線を照射する く利用されている。また、PTFEは結晶性高分子であ ことから成る、ポリテトラフルオロエチレン発泡体の製 り、その結晶融解温度が327℃と極めて高く、更に、 造方法。 結晶融解温度以上での流動性も著しく高い。これは分子 【請求項2】 ポリテトラフルオロエチレンに結晶融点 間の凝集力が高いためである。そのため、通常の方法で 以上の温度で酸素不存在下において0.5kGy/s∼ 発泡体を製造することは困難である。 100kGy/sの線量率で電離性放射線を照射して得 【0003】一方、ポリエチレン等の汎用ポリマーで られるポリテトラフルオロエチレン発泡体。 10 は、ポリマーに予め発泡剤を混合させておき、室温程度 【発明の詳細な説明】 の比較的低い温度で放射線を照射してポリマーを架橋さ 【0001】 せ、その後、加熱して発泡剤を分解させて発泡体を製造 【産業上の利用分野】本発明は、発泡ポリテトラフルオ する技術が開発されている。しかし、PTFEには適当 ロエチレン(以下、PTFEという)及びその製造方法 な発泡剤がなく、放射線架橋する技術も知られていなか に関する。 った。 −1− (2) 特許第3305068号 3 4 【0004】本発明者らは、ポリテトラフルオロエチレ い。 ンの結晶融点以上の温度で酸素不存在下において1kG 【0011】発泡の条件は、真空中での照射と不活性ガ y以上の電離性放射線を照射することによって架橋反応 ス中での照射とでは異なるが、一般的には、放射線を照 を起こさせ、耐放射線性に優れたPTFEが得られるこ 射するPTFEの厚みが厚いほど、照射温度が高いほ とを見いだした。さらに、得られたPTFEが低結晶性 ど、また、線量率が高いほど発泡し易くなる。線量率は でゴム弾性を有することも見いだした。従って、耐放射 0.5kGy/s∼100kGy/sの範囲が好まし 線性のみならずゴム弾性を有するPTFEが得られた。 く、特に0.5kGy/s∼50kGy/sの範囲が好 【0005】しかしながら、この方法ではPTFEの放 ましい。発生する気泡の大きさは積算線量に依存してお 射線架橋に際して、PTFEをその結晶融点以上の温度 り、線量の増大につれて小さくなる傾向にある。不活性 にしなければならないので、従来の発泡剤を使用してP 10 ガス中で放射線を照射する場合には、線量率の影響や照 TFE発泡体を製造することはできなかった。 射温度の影響は小さくなる。 【0006】 【0012】また、線量率と温度との関係も発泡に影響 【発明が解決しようとする課題】上記問題点に鑑み、本 を及ぼす。特に発泡の量と気泡の大きさに影響を及ぼ 発明は、発泡PTFE及びその製造方法を提供すること す。本発明においては、真空中で放射線を照射するとき を目的とする。 には、放射線を照射しつつPTFEを発泡させ、一方、 【0007】 不活性ガス中で放射線を照射するときには、放射線の照 【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべく、 射後に不活性ガスを脱気してPTFEを発泡させるが、 本発明によれば、ポリテトラフルオロエチレンに結晶融 何れの場合であっても、ある程度放射線照射してPTF 点以上の温度で酸素不存在下において0.5kGy/s ∼100kGy/sの線量率で電離性放射線を照射する Eを架橋してから発泡させると好ましい結果が得られ 20 る。 ことから成るポリテトラフルオロエチレン発泡体の製造 【0013】真空中で放射線を照射するときには、放射 法が提供される。 線を照射するPTFEの厚みが1mm程度のものである 【0008】また、本発明によれば、ポリテトラフルオ 場合、PTFEをその結晶融解温度以上に加熱して、放 ロエチレンに結晶融点以上の温度で酸素不存在下におい 射線をその線量率が5kGy/s∼50kGy/sとな て0.5kGy/s∼100kGy/sの線量率で電離 るように照射することが望ましい。一方、不活性ガス中 性放射線を照射して得られるポリテトラフルオロエチレ で放射線を照射するときには、大気圧又は加圧状態でP ン発泡体が提供される。 TFEをその結晶融解温度以上に加熱して放射線を照射 【0009】上述の通り、本発明者らは、PTFEにそ し、照射後PTFEの温度を下げる前に脱気する。一般 の結晶融点以上の温度で真空或いは不活性ガス中にて放 に、急速に脱気すると発生する個々の気泡が大きくなる 射線を照射すると、PTFEが架橋することを見い出し 30 傾向になる。なお、発生する気泡の大きさは、上述の通 た。このとき、高温での熱分解及び放射線分解によって り積算線量にも依存する他、脱気時のPTFEの温度に PTFEのモノマーやオリゴマー等の分解生成物が生成 も影響される。 する。真空中で放射線を照射したときを例にとると、放 【0014】積算線量は、放射線の真空中での照射及び 射線の線量率が低い場合には分解生成物はそのままPT 不活性ガス中での照射ともに100kGyから2MGy FE外に放出されるが、線量率が高くなると分解生成物 の範囲が特に好ましいが、この範囲外であってもPTF は気泡となってPTFE内に残り、これを冷却するとP Eの発泡は可能である。 TFE発泡体が得られる。また、不活性ガス中で放射線 【0015】放射線が照射されるPTFEの形状には特 を照射した場合には、放射線照射後高温の状態で脱気し に制限はなく、如何なる形状のPTFEであっても改質 てから冷却するとPTFE発泡体が得られる。 【0010】放射線照射の方法は、照射時の酸化を防止 することができる。しかしながら、放射線を全体にわた 40 って均一に照射できるという観点からは、シート状や板 するため酸素不存在下、すなわち真空中、又は不活性ガ 状の形状であることが好ましい。 ス、例えば窒素、アルゴン又はヘリウム雰囲気におい 【0016】本発明の方法により得られたPTFEは、 て、結晶融点(327℃)以上の温度で電離性放射線 発泡体であると同時に、耐放射線性であり、しかも架橋 (γ線、電子線、X線、中性子線、高エネルギーイオ 構造をも有するのでこれまで使用が不可能であった放射 ン、以下放射線という)を照射する。特に電子線を照射 線環境下での工業材料として、また放射線滅菌可能な医 すると好ましい結果が得られる。照射温度については、 療用具素材としての利用が可能となる。今迄は、PTF PTFEの結晶融点である327℃以上であることが必 Eから成る医療用具は放射線滅菌ができなかったことか 要であるが、340℃∼350℃前後の温度が望まし ら、蒸気、あるいはガス滅菌に因っているが、滅菌の確 い。なお、本発明においては、結晶融点が327℃以外 実性の点から放射線滅菌の利用が可能となる。また、得 であるPTFEを用いることができるのはいうまでもな 50 −2− られたPTFE発泡体はゴム特性も備えることから、特 (3) 特許第3305068号 5 6 に、耐熱、耐薬品性を要請される機器類の熱絶縁材料や 起こすが、シートの厚さに比べて気泡のサイズが大きい シール材料やパッキング材料としての特性の著しい向上 ためと考えられる。 が期待できる。 【0021】 【0017】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説 【実施例3】厚さ1.0mmの市販のPTFEシート 明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。 を、1気圧(大気圧)のアルゴンガスを封入した照射容 【0018】 器に入れ、PTFEを340℃に加熱して、2MeVの 【実施例1】厚さ1.0mmの市販のPTFEシートを 電子線を0.5kGy/sの線量率で1000秒間(積 真空中(0.01トル以下)において、340℃に加熱 算線量500kGy)照射した。照射終了後に、照射容 して、2MeVの電子線を1.0kGy/sの線量率で 器内のアルゴンガスを徐々に脱気しつつ、PTFEを室 照射した。照射200秒後(積算線量200kGy) 10 温まで冷却したところ、厚さ約4mmのPTFE発泡体 に、照射を終了し、PTFEを室温まで冷却した。その が得られた。このPTFE発泡体中の気泡の大きさは極 結果、厚さが約3ミリのPTFE発泡体が得られた。 めて小さく、発泡体全体が白濁していた。このPTFE 【0019】得られたPTFE発泡体の重量は3%減少 発泡体の重量減少は、それぞれ4%であった。 していたが、PTFEの架橋による結晶融点の低下は3 【0022】 40℃の一点設定温度で電子線を照射したときの変化と 【実施例4】厚さ1.0mmの市販のPTFEシート ほぼ同一であった。 を、2気圧(大気圧の2倍)のヘリウムガスを封入した 【0020】 照射容器に入れ、実施例3と同様の条件にてPTFE発 【実施例2】厚さ0.5mmの市販のPTFEシート 泡体を得た。得られたPTFE発泡体は厚さ約4.5m を、実施例1と同じ条件で発泡させたところ、PTFE 発泡体は得られたが、多くの気泡は破壊されていた。こ mであり、発泡体中の気泡は、実施例3で得られた発泡 20 体中の気泡よりも大きくなり、柔軟性に富んでいた。 れは、照射で発生した分解ガスがPTFEの発泡を引き ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 乙幡 和重 (56)参考文献 東京都新宿区高田馬場4丁目40番13号 (72)発明者 (72)発明者 特開 平7−118423(JP,A) 株式会社レイテック内 特開 昭61−146522(JP,A) 田畑 米穂 特開 昭61−266439(JP,A) 東京都中野区本町4−48−17、701号 特開 平6−116423(JP,A) 大島 明博 (58)調査した分野(Int.Cl.7 ,DB名) 栃木県塩谷郡塩谷町道下822 −3− C08J 7/00 - 7/18 C08J 9/02