パラレルリンク型高速角度制御装置

NTN TECHNICAL REVIEW No. 84（2016）
受賞案件の紹介
2015年度　精密工学会　春季大会学術講演会　ベストプレゼンテーション賞
2015年度　精密工学会　技術奨励賞
パラレルリンク型高速角度制御装置
Parallel Link High Speed Angle Control Equipment
小長井 直 哉
Naoya KONAGAI
1. 概　要
パラレルリンク型
高速角度制御装置
先端側
溶接トーチ
XY ステージ
回転2自由度の特殊なパラレルリンク機構を応用したパラ
レルリンク型高速角度制御装置（以下，本装置）を開発し，
本装置をグリース塗布，自動溶接，外観検査などの用途に適
基端側
トーチ先端
ワイヤ
供給装置
用している．本装置により，作動角90˚，旋回角360˚の広
い可動範囲において高速・高精度な位置決め，細やかな動作
を可能にしたことが評価され，2015年度 精密工学会 春季
大会学術講演会 ベストプレゼンテーション賞，ならびに技
図2 自動溶接機の構成
System configuration of automatic welding machine
術奨励賞を受賞した．
レルリンク機構の先端側が上側を向くように本装置をXYス
2. パラレルリンク型高速角度制御装置について
テージに固定するとともに，溶接トーチをリンク機構の内部
4節3リンクを配置したパラレルリンク機構の3つのリン
空間を貫通するように配置することで，高速で細やかな動作
ク全てをモータで制御し，モータ3台の駆動力の釣り合いに
を実現している．本構成のように溶接トーチの姿勢を制御す
よってバックラッシュを打消し，さらに加減速を制御して整
ることで，支柱等の外周全面に対して溶接トーチを傾けた状
定時間を短くする等の工夫により，回転2自由度のスムーズ
態で溶接できる．
な動きと高速・高精度な動作を実現した1〜4)．図1に，本装
参考文献
置の標準品の外観を示す．エンドエフェクタをリンクの内部
1）磯部浩, 西尾幸宏,パラレルリンク型高速角度制御装置,
NTN TECHNICAL REVIEW, No.80, (2012) 42-47.
2）磯部浩,パラレルリンク型高速角度制御装置‐基本構成とグ
リース塗布への応用‐, 機械と工具, 2月号, (2013) 83-87.
3）磯部浩, 西尾幸宏, 曽根啓助, 山田裕之, 藤川芳夫, パラレル
リンク型高速角度制御装置, 2013年度精密工学会春季大会
学術講演会講演論文集, (2013) 809-810.
4）磯部浩, 西尾幸宏, 坂田清悟, 小長井直哉, 山田裕之, 藤川芳
夫, パラレルリンク型高速角度制御装置-グリース塗布への応
用-, 2014年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集,
(2014) 1087-1088.
5) 小長井直哉, 磯部浩, 坂田清悟, 野瀬賢蔵, 山田裕之, 藤川芳夫,
パラレルリンク型高速角度制御装置, 2015年度精密工学会
春季大会学術講演会講演論文集, (2015) 605.
6）曽根啓介, 磯部浩, 山田耕嗣, 折れ角90°が可能な2自由度
アクチュエータユニット‐高角アクティブリンク装置‐,
Vol.47, No.11, 機械設計, (2003) 60.
空間に収納できるようにし，慣性モーメントを低減させるこ
とで，速度および繰り返し位置決め精度を向上させた．この
高速性と優れた操作性が評価され，自動車部品の製造ライン
など，タクトタイム短縮と高い信頼性が求められるグリース
塗布用途に採用されている．さらに，細やかな軌道が描ける
という特長を活かし，自動溶接機 5) へも展開した．
3. 自動溶接機への展開
図2に，本装置に溶接トーチを取り付けた自動溶接機の構
成を示す．自動溶接機用パラレルリンク機構は鏡像対称タイ
プ
6)
とし，標準品に対して各部材を再設計することで，溶
接トーチを設置するスペースを確保している．また，グリー
ス塗布装置に搭載するディスペンサに比べ，重くて長い溶接
トーチを搭載するため，慣性モーメントの低減を目的にパラ
執筆者近影
エンドエフェクタ
パラレル
リンク機構
駆動機構
図1 パラレルリンク型高速角度制御装置
Parallel link high speed angle control equipment
小長井　直哉
商品開発研究所
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