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高大産連携による科学技術人材の育成 ~兵庫
日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 29 No. 3(2014) 高大産連携による科学技術人材の育成 ~兵庫「咲いテク(Sci-Tech) 」事業~ Fostering scientists and engineers by cooperation with High Schools, Universities, Industry 長坂賢司 繁戸克彦 中澤克行 杉木勝彦 NAGASAKA,Kenji SHIGETO,Katsuhiko NAKAZAWA,Katsuyuki SUGIKI,Katsuhiko 兵庫県立神戸高等学校 Hyogo Prefectural KOBE High School [要約] 「地域の高校生の科学技術分野における探究活動」をキーワードとして,主に高校生の探究活動 の普及や充実及び高校と大学,企業,研究機関など異業種間との交流を通して相互理解を深めることを目 的とした兵庫「咲いテク(Science&Technology,Sci-Tech) 」事業を実施した.本事業で,探究活動に関す るプログラムを実施し,また,高校及び大学,企業,研究機関などが科学技術分野の合同研究発表する「サ イエンスフェア in 兵庫」を開催した.ここでのアンケート調査により,参加者同士の交流が非常に活発に おこなわれ,高校生の科学技術分野への期待と憧れを十分に強めたことがわかった.高校の探究型科学教 育を通した新たな科学教育推進のモデルとして報告する. [キーワード]探究活動,課題研究,科学教育,SSH,高大産連携 とする.これらの活動は主に部活動,SSH,理数科や専 Ⅰ.はじめに 日米欧や世界各国で理数教育の充実が図られている. 門学科及び自然科学系コース等を有する高校で実施さ 中でも,探究型科学教育(inquiry-based science れ,普通科でも, 「総合的な学習の時間」等で実施され education,IBSE)の重要性が示され,この効果も報告 始めている.また,近年では,高校生の科学技術コン されている(科学技術振興機構,2008) .ここでは, 「探 テストも整備され,高校生の探究活動に対する理解が 究とは,問題を診断し,実験を批評し,別の選択肢を 広がっている.しかし,普通科の高校では,探究活動 区別し,調査を計画し,推論を研究し,情報を探索し, を対外的に発表する機会が毎年ある割合や自らの指導 モデルを構築し,仲間と議論し,論理的一貫性のある 技術について肯定的な回答をした教員の割合が低いな 論旨を形成する意図的な過程」と定義されている. どが報告(科学技術振興機構,2010)されている. 一方,我が国では,科学技術基本計画が策定され, また,このような探究活動を外部がサポートする仕 学校教育による理数教育・技術教育の充実が掲げられ 組みはまだ十分ではなく, 地域として,高校生の探究 ている(文部科学省,2011) .その1つがスーパーサイ 活動をサポートするには,高校並びに大学,企業,研 エンスハイスクール(以下,SSH と略記)である.平 究機関(以降,各団体と表記)などが連携して体制を 成26年度は204校が文部科学省から指定を受けており つくることが重要である.兵庫県には多くの大学や研 (文部科学省,2014a) ,兵庫県立神戸高等学校(以下, 究機関があり,さらに,神戸市は医療関連産業の集積 本校と略記)は平成 25 年度に3度目の指定を受け,理 及び産学官の連携を推進するクラスター地域であるが, 数教育の研究・開発に取り組んでいる(兵庫県立神戸 地域の各団体の関係者と教育関係者(特に教員)が直 高等学校,2008~2013) .これら SSH 指定校では,高校 接情報交換する場が今まで少なく,現場レベルでの相 生の科学技術分野の探究活動である「課題研究」に取 互理解が進まなかったと思われる.これらを踏まえ, り組んでおり,本校もこの探究活動によってさまざま 本研究では, 「地域の高校生の科学技術分野における探 な力が育成できると認識し,その充実を図ってきた. 究活動」をキーワードとし,高校生の探究活動の発展・ なお,本文でいう探究活動とは,「情報を収集し,仮説 充実及び企業や大学,研究機関など異業種間との交流 (テーマ)を設定し,観察や実験を計画し,観察や実験 を通して相互理解を深めることを目的とした兵庫「咲 で検証し,データを分析することを一定期間継続的に いテク(Science&Technology,Sci-Tech) 」事業を実 実施し,仮説 (テーマ) は科学技術分野に関連したもの」 施した.以下でその実施状況及び「サイエンスフェア ― 27 ― 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 29 No. 3(2014) in 兵庫」でのアンケート調査の結果を報告する.なお, 的とし,以下の4つの取組を実施している. 高校と各団体とが相互理解をし,地域社会が探究型科 (1)兵庫「咲いテク」事業推進委員会の組織・運営 学教育をサポートすることで,地域或いは国全体の活 (2)兵庫「咲いテク」プログラムの実施 性化が図れるのではないかと期待している(図1) . (3)「サイエンスフェア in 兵庫」の開催 (4)兵庫「咲いテク」ネットワークの構築への取組 地域力向上→魅力ある兵庫、神戸 兵庫「咲いテク(Sci-Tech)」事業 科学・技術イノベーション人材 科学・技術活用人材 科学・技術のよき理解者 企業・研究機関 サイエンスフェアin兵庫 参加・出展 高等学校と大学、企業、研究機関等との科学技術分野 における合同成果発表会・交流会 地域・社会 大学 課題探求能力の修得 企画・運営 成果の普及 成果の普及 参加・ 探究型科学教育 新たな 科学技術人材育成 プログラム開発 課題研究的な活動を中心とした人材育成プログラム ・PDCAのプロセス ・コミュニケーション 小・中・高校 「生きる力」の育成 ・確かな学力 ・健やかな体 ・豊かな心 共同開発 兵庫「咲いテク」プログラム 合同実験実習会 ・情報活用能力 等 意欲 態度 思考力 判断力 表現力 情報交換会 ・共同研究等 ・交流会 交流合宿 指導書の活用 知識 技能 開発 企画・運営・ 評価 企画・ 参加・ 兵庫「咲いテク」事業推進委員会 家庭 参加・ 発表 図1 探究型科学教育による地域力の向上 連携校 参加 連携・意見交換 出展・ ●県内SSH指定校 評価 (神戸高・三田祥雲館高・尼崎小田高・明石北高・加古川東高・豊岡高・ 龍野高・神戸市立六甲アイランド高・武庫川女子大附属中高) ●県教育委員会 ●大学・企業関係者等 参加・連携依頼 参加・ 協力依頼 Ⅱ.本校の取組と兵庫「咲いテク」事業 体制の構築 助言 参加 1.概略 大学・企業・研究機関・ 平成 26 年現在,兵庫県内では本校含めた9校が SSH 関係機関等 の指定を受けている.本校では,8つの力(問題を発 見する力,未知の問題に挑戦する力,知識を統合して 図2 兵庫「咲いテク」事業概念図 活用する力,問題を解決する力,交流する力,発表す る力,質問する力,議論する力)を科学技術分野で国 なお,本事業は現在,平成 25 年度に本校が採択され 際的に活躍できる力と定義し, 「サイエンス入門」 「課 た SSH「科学技術人材育成重点枠」 (3年間)の取組と 題研究」 「科学英語」 「数理情報」 「理数理科」などの科 して実施している(文部科学省,2014b) . 目,施設見学や特別講義などで,力の伸長に取り組ん 2.兵庫「咲いテク」事業推進委員会の組織・運営 できた.そして,特に「課題研究」はこの8つの力を 兵庫県教育委員会事務局高校教育課長を委員長,本 大きく伸長させることがわかった.なお,本校の「課 校校長を運営委員長,本校を事務局,県内 SSH 指定校 題研究」は,総合理学科第2学年で実施し(週1回, 担当者を委員,企業・大学関係者を顧問とした兵庫「咲 1年間) ,生徒は,研究テーマの設定,実験・観察の計 いテク」事業推進委員会で本事業全体を運営する. 画及び実施,データの分析,論文・ポスター作成,発 3.兵庫「咲いテク」プログラムの実施 表会の実施など研究に関わる一連の流れを経験する. 県内 SSH 指定校が幹事校となり,地域の高校等との これらの活動を地域に普及し,地域の理数教育の充 共同実験実習会やフィールドワーク,情報交換会など 実を図るために新たな合同発表会を企画・実施するこ を実施する.実施に際して,大学や企業,研究機関等 とにし,平成 21 年2月に「第1回サイエンスフェア の協力を得るなどし,相互理解を図る. in 兵庫」を開催した.翌年には, 「第2回サイエンス 4. 「サイエンスフェア in 兵庫」の開催 フェア in 兵庫」を高校だけでなく,大学や企業,研究 高校生の科学技術分野の探究活動の発表の場,及び 機関等の出展も得て,神戸国際展示場第2号館(神戸 異業種間の交流の場として,以下のように実施する. 市中央区)で実施した.そして,平成 22 年度に,本校 a.目的 がコア SSH(地域の中核的拠点形成)に採択され(3 ① 高校生・高専生の科学技術分野における研究や実 年間) ,県内 SSH 指定校と県教育委員会とで兵庫「咲い テク」事業推進委員会を組織し, 「兵庫「咲いテク」事 践の拡大,充実,活性化を図る. ② 科学技術分野の研究・開発に取り組む団体間の交 業を現在まで展開してきた.本事業は,主に高校生の 探究活動の発展・充実及び企業や大学,研究機関など 流を促進し,ネットワークの形成を図る. ③ 将来の日本を担う若者の科学技術分野への期待と 異業種間との交流を通して相互理解を深めることを目 ― 28 ― 憧れの増大を図る. 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 29 No. 3(2014) b.主なプログラム 3. 「サイエンスフェア in 兵庫」の開催 ① 高校生・高等専門学校生によるポスターセッショ a.全体の日程 ン発表(以降,高校生ポスター発表と略記) 本企画は1月中旬~2月上旬の日曜日に実施してい ポスターを貼ったパネル(W90cm×H210cm)の前で, る.第1回は本校で,第2回以降は神戸国際展示場第 各班は3回程度の発表(発表 10 分,質疑応答3分, 2号館で以下のように実施し, 効果の向上を図った (図 移動2分)をする. 3) . その中でスペシャルメッセージも実施した (表2) . 10:00 ② 企業・大学・研究機関・高専によるポスターセッ ション発表(以降,各団体ポスター発表と略記) 高校生に対して,科学技術分野に関する話題や経験 14:00 15:00 16:00 開 会 行 事 高校生 発表1 (3回) 昼食 高校生 自由 発表2 鑑賞 (3回) 各団体 発表 閉会 行事 第5回 開 高校生 会 スペシャル 自由 発表1 行 メッセージ 鑑賞 (3回) 事 昼食 高校生 自由 発表2 鑑賞 (3回) 2 各団体 発表 閉会 行事 スペシャル レクチャー スペシャル レクチャー 高校生 発表1 (3回) 開 会 スペシャル 行 メッセージ 事 第6回 談を伝えるスペシャルメッセージを実施する. 5.兵庫「咲いテク」ネットワークの構築への取組 13:00 第4回 鑑賞とし,来場者は自由にブースを見学する. ③ スペシャルメッセージ 12:00 第3回 ポスターを貼ったパネル(W90cm×H210cm,2枚) 及び展示物の前で,出展者が来場者に説明する.自由 11:00 開 会 行 事 高校生 発表2 (3回) 昼食 昼食 閉 会 行 事 各団体 発表 高校生 発表 (5回) 各団体 発表 フリーセッ 閉会 ション (自由 行事 鑑賞) 図3 「サイエンスフェア in 兵庫」の日程 高校だけでなく,大学や企業,研究機関等の参加者 が一堂に会して,相互理解を図る場を創出する. 表3 スペシャルメッセージ(レクチャー) 第3回 題目 スペシャルレクチャー(40 分) 「日本独自の複合化技術を神戸から世界へ」 第4回 スペシャルレクチャー(50 分) Ⅲ.事業の実施 渡辺 充 氏(シスメックス株式会社 取締役 執行役員) 1.兵庫「咲いテク」事業推進委員会の開催 題目 年間7・8回実施し, 企画・運営,評価,広報等に 江口 至洋 氏 (理化学研究所 HPCI 計算生命科学推進プログラム) 第5回 関して検討した. 第6回 表1及び表2のように,多くの企画を実施し,多く 実施により,幹事校の参加者数が多い. b.参加状況 表1 兵庫「咲いテク」プログラムの実施状況 参加校 参加生徒(人) スペシャルメッセージ(合計 30 分) 太畑 貴綺 氏(大阪大学大学院理学研究科) 樋口 真之輔 氏(岡山大学教育学部) の学校から参加を得た.なお,平成 23 年度は講演会を 企画数 スペシャルメッセージ(合計 30 分) 谷 沙織 氏(神戸大学大学院理学研究科) 大和 一恵 氏(パナソニック株式会社) 2.兵庫「咲いテク」プログラムの実施 H22 年度 H23 年度 H24 年度 H25 年度 H26 年度 「スーパーコンピューター「京」~生命に吹き込む新しい風~」 表4より高校ポスター数が増加している.これは, 参加教員(人) 92 174 6 51 11 62 2159 425 10 61 261 187 11 45 563 223 10 現在実施中 ※参加者は延べ人数で幹事校及び県内 SSH 指定校の参加も含む 本企画が目標の1つとなってきたことと,県内で探究 活動に取り組む高校が増えたことが考えられる.各団 体の出展も,第3回以降は常に 40 を超えている. 表2 平成 25 年度 兵庫「咲いテク」プログラム一覧 プログラム名 幹事校 実施日 主な実施場所 数学探究~美しき数学の世界 県立明石北高等学校 7月 14 日(日) 第 6 回 科学交流合宿研修会-2013 サ イエンスコラボレーション in 武庫川 - 武庫川女子大学附属中学校 ・高等学校 7月 22 日(月)~ 7月 23 日(火) (1泊2日) 県立明石北高等学校 武庫川女子大学附属中学 校・高等学校および同大 学、丹嶺学苑研修センタ ー、兵庫医科大学、関西 大学、神戸大学、大阪大 学等 竜山石の粉末を利用した陶芸科学 共同研究会 県立加古川東高等学校 兵庫県に生息するカタツムリの遺伝 子解析実験実習会 プラネタリウム解説体験~星空の感 動を伝えよう~ 兵庫県下の付着海岸生物調査と遺伝 子解析実験・実習会 “Science and Art of Perfume”実験 実習会 課題研究中間発表会兼課題研究 研修会 第 4 回兵庫県内の高校・高等専門学校 における理数教育と専門教育に関す る情報交換会 日本海形成に伴う多様な地形、地質を 探るフィールドワーク 小高連携のための教材開発「光ファイ バーツリーの製作 ~小学生に感動 を伝えよう~」 県立神戸高等学校 7月 28 日(日)、 8月 17 日(土)、 11 月 24 日(日) 8月2日(金)、 8月 23 日(金) 表4 「サイエンスフェア in 兵庫」の発表参加状況 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 県立加古川東高等学校 兵庫県立神戸高等学校 県立三田祥雲館高等学校 8月 26 日(月) 明石市立明石天文科学館 県立尼崎小田高等学校 9月 14 日(土) 県立尼崎小田高等学校 神戸市立六甲アイランド 高等学校 9月 21 日(土) 神戸市立六甲アイランド 高等学校 県立加古川東高等学校 9月 25 日(水) 県立加古川東高等学校 県立神戸高等学校 10 月 20 日(日) 県立神戸高等学校 県立豊岡高等学校 11 月 24 日(日) 但馬北部各地 県立龍野高等学校 12 月 14 日(土) 県立龍野高等学校 発表 高校数 高校 ポスター数 10 29 25 34 37 37 19 51 58 82 89 103 発表 団体数 ※なし 団体 ポスター数 ※なし 28 41 40 47 49 48 61 70 54 50 総参加者数(人) 約 200 515 815 1422 1224 1389 ※第3回以降が兵庫「咲いテク」事業として実施 高校のポスター数,発表生徒数が増え,高校ポスタ ー数は第6回で 103 ブースに達し,各団体の発表も, 企業や研究機関から1ブースずつ,大学から複数のブ ース出展を得て 50 ブースを超え, 第4回以降の総参加 者数は 1200 名を超えている(表5,表6) . ― 29 ― 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 29 No. 3(2014) 表5 「サイエンスフェア in 兵庫」の参加者内訳 第3回 第4回 第5回 第6回 462 879 868 935 222 358 356 405 240 521 512 530 104 150 99 815 145 185 213 1422 84 128 144 1224 141 147 166 1389 発 発表高校数 表 高校ポスター数 25 58 34 82 37 89 37 103 発表団体数 41 40 34 33 6 18 15 2 6 16 16 2 5 9 18 2 4 8 19 2 61 70 54 50 参 高校生 加 発表生徒 者 見学生徒 高校教員 各団体関係者 来賓,一般(当日) 総参加者数(人) 大学 企業 研究機関等 高等専門学校 団体ポスター数 互理解を進めることができた. 表7「第5回情報交換会」の概要 「第5回兵庫県内の高校・高等専門学校における理数教育と専門教育に 関する情報交換会~科学技術分野における人材育成~」 日程及び内容:平成 26 年 10 月 19 日(日) 本校にて実施 全体会① 12:30~14:00 ・基調講演(神戸大学大学院システム情報学研究科 田中成典教授) ・地元企業・高校・大学によるパネルディスカッション 分科会 14:25~16:05 取組報告及び高大産の連携についての協議 全体会② 16:25~17:10 分科会での協議の報告 b. 「科学技術系人材に関するアンケート」の実施 平成 25 年度に, 各団体に科学技術系人材育成に関す るアンケートを送付し,50 団体の回答を得た.アンケ ※同一大学の発表であれば,発表団体を1つとした ートは 20 項目で,主に「高校年代の研究活動の普及・ 表6「第6回サイエンスフェア in 兵庫」発表団体 音羽電機工業 株式会社 広報室 川崎重工業 株式会社 CSR 推進本部 ハリマ化成 株式会社 加古川 研究開発セ ンター シスメックス 株式会社 関西海事教育アライアンス,テクノオーシ ャン・ネットワーク,日本船舶海洋工学会 海洋教育推進委員会 共和産業 株式会社 技術研究室 株式会社 新井組 株式会社 神鋼環境ソリューション 総務部 特許機器 株式会社 技術本部 関西ネットワークシステム(KNS) 第 30 回 ISTS 兵庫・神戸大会地元事業実行 委員会 事務局 神戸大学大学院理学研究科化学専攻固体化 学研究室 神戸大学 大学院工学研究科技術室 神戸大学 大学院理学研究科・化学専攻 神戸大学 発達科学部人間環境学科 神戸大学 発達科学部人間環境学科 自然 環境論コース 神戸大学サイエンスショップ 発達科学部 神戸大学大学院海事科学研究科 海事環境 管理研究室 神戸大学大学院海事科学研究科環境応用計 測科学研究室 神戸大学大学院海事科学研究科 電子物性 工学研究室 神戸大学大学院海事科学研究科 エネルギ ー流体科学(宋)研究室 交換会の概要である.これにより,高校と各団体が相 発展に必要な取組」 「科学技術系人材として活躍するた 兵庫県立大学 天文科学センター西はりま 天文台 兵庫県立大学大学院 工学研究科 物質制 御計測化学研究グループ めに,高校年代で身につけておきたい力,その力を伸 長するために今後必要な環境・体制・企画・組織,力 関西学院大学 理工学部 (5ブース) を評価する方法」 に関する質問である.このアンケート 武庫川女子大学 薬学部 (3ブース) により,各団体の考えへの理解が高校関係者で進み, 公益財団法人 ひょうご環境創造協会兵庫 県環境研究センター 水環境科 また,平成 25 年度の情報交換会にて報告することで, 独立行政法人情報通信研究機構 未来 ICT 研究所 独立行政法人理化学研究所 計算科学研究 機構 独立行政法人理化学研究所 放射光科学総 合研究センター 独立行政法人理化学研究所 HPCI 計算生 命科学推進プログラム(HPCI 戦略プログ ラム 戦略分野1) 独立行政法人理化学研究所生命システム 研究センター 独立行政法人理化学研究所 ライフサイエ ンス技術基盤研究センター 生命機能動的 イメージング部門 独立行政法人理化学研究所 発生・再生科 学総合研究センター 国際広報室 一般財団法人 近畿高エネルギー加工技術 研究所(AMPI) 公益財団法人 兵庫県健康財団 山陰海岸ジオパーク推進協議会 兵庫県立健康生活科学研究所健康科学研 究センター 健康科学部 兵庫県立工業技術センター 技術企画部 高大産の連携の足掛かりにできた. Ⅳ.参加者の確認及びアンケート調査の実施 1.参加団体及び参加者の確認方法 本事業では,事前の申し込みで,氏名,学校や団体 を登録し,当日にも参加者の確認をしている.なお, 「サイエンスフェア in 兵庫」では,発表生徒,見学生 徒,参加教員,各団体の参加者を区別した確認もおこ なっている。さらに, 「サイエンスフェア in 兵庫」の 一般の来場者には受付で記名させて, 確認をしている. 2.アンケート調査の方法 兵庫県立人と自然の博物館 生涯学習課 兵庫「咲いテク」プログラム及び「サイエンスフェ 神戸市 企画調整局医療産業都市推進本部 ア in 兵庫」では,平成 22 年度からそれぞれ同じ質問 神戸市立青少年科学館 用紙を使用して,参加者にアンケートを取った. 明石工業高等専門学校 都市システム工学 科 神戸市立工業高等専門学校 専攻科電気電 子工学専攻 a.兵庫「咲いテク」プログラム 開催日当日に参加者全員(生徒,教員等)に配布し, プログラム終了後回収した(記名式) . 4.兵庫「咲いテク」ネットワークの構築への取組 「サイエンスフェア in 兵庫」以外に,特に以下の取 b. 「サイエンスフェア in 兵庫」 当日に参加者全員に質問用紙とマークカードを配布 組によって,高校生の探究活動のサポート体制及びネ し,閉会行事後にマークカードを回収する.無記名方 ットワークの構築についての検討を行った. a.兵庫「咲いテク」プログラム:情報交換会の開催 高校及び地元の企業、大学、研究機関、高専等の関 式の選択回答(単一回答及び複数回答)で,マークカ ードの裏面に自由記述欄を設けている. 係者が科学技術分野の人材育成に関する情報交換,交 流の機会の場として, 情報交換会を平成 22 年度から実 Ⅴ. 「サイエンスフェア in 兵庫」アンケート結果 施してきた.なお,以下の表7は,平成 26 年度の情報 ― 30 ― 以下では, 「サイエンスフェア in 兵庫」の当日のア 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 29 No. 3(2014) ンケート調査より, 「参加者同士の交流」及び「高校生 表9 参加者から発表生徒への質問回数 の科学技術分野に対する意識の変化」 について述べる. 質問 6 1.参加者同士の交流について ①1~3回(%) 38.6 30.2 41.8 46.6 ②4~6回(%) 33.7 29.1 32.8 30.1 ③7~9回(%) 10.8 10.5 9.0 6.8 ④10 回以上(%) 1.2 8.1 1.5 6.8 15.7 22.1 14.9 9.6 ①~④小計(%) 84.3 77.9 85.1 90.4 合計(%) 100.0 100.0 100.0 100.0 有効回答数(人) 83 86 67 73 第3回 高校生ポスター発表と各団体ポスター発表で,参加 者間でどのような交流 (質問) が行われたのかを示す. ⑤0回(なし)(%) a.高校生ポスター発表での交流 高校生ポスター発表に関するアンケート項目を以下 に示す.表8は生徒用アンケート,表9は参加者用ア 発表者(生徒)に対して合計で何回質問をしましたか 第4回 第5回 第6回 b.各団体ポスター発表での交流 各団体ポスター発表に関して,表 10,表 13 は生徒 ンケートの結果である.これらから,以下がわかる. 用アンケート項目,表 11,表 12,表 13 は参加者用ア ① 生徒同士の交流 生徒の約5割が発表生徒に質問をし(表8質問 15① ~④小計) , 発表生徒の約9割が見学生徒から質問を受 ンケート項目である.これらから,以下がわかる. ① 生徒と各団体発表者の交流 生徒の約8割が各団体発表者と話す機会を持ち(表 けた(表8質問 16①~④小計) . 10 質問 19①~④小計) ,内容は主に団体の研究である (表9質問 20~22) .各団体発表者のほぼ全てが生徒 表8 高校生ポスター発表での質問状況 から質問を受け(表 11 質問 10①~④小計) ,それは主 質問 15 発表者に対して合計で何回質問しましたか。 第3回 第4回 第5回 第6回 ①1~3回(%) 29.0 31.5 35.5 38.8 ②4~6回(%) 9.8 8.6 9.6 9.4 ③7~9回(%) 3.4 2.9 2.7 2.2 ④10 回以上(%) 1.3 1.9 2.9 1.6 ⑤0回(なし)(%) 56.5 55.1 49.3 48.1 ①~④小計(%) 43.5 44.9 50.7 51.9 合計(%) 100.0 100.0 100.0 100.0 有効回答数(人) 379 695 592 769 発表・見学生徒数(人) 462 879 868 935 回答率(%) 82.0 79.1 68.2 82.2 に団体の研究に関する質問である (表 11 質問 11~13) . 表 10 生徒と各団体発表者との交流 質問 19 合計で何人の発表者(ブースでの説明者)と話す機会がありましたか 第3回 第5回 第6回 33.8 40.5 49.5 49.3 ②4~6人(%) 35.4 27.3 22.7 27.0 ③7~9人(%) 7.6 8.1 5.5 6.5 ④10 人以上(%) 3.8 4.2 4.3 1.6 15.6 ⑤0人(なし)(%) 質問 16 生徒から合計で何回質問されましたか (発表者として参加した生徒のみ回答) 第4回 ①1~3人(%) 19.5 19.9 17.9 ①~④小計(%) 80.6 80.1 82.0 84.4 合計(%) 100.0 100.0 100.0 100.0 814 有効回答数(人) 370 692 598 ①1~3回(%) 37.8 38.2 33.1 39.8 発表・見学生徒数(人) 462 879 868 935 ②4~6回(%) 25.0 30.9 38.7 30.0 回答率(%) 80.1 78.7 68.9 87.1 ③7~9回(%) 16.9 11.1 9.5 13.0 ④10 回以上(%) 5.2 8.0 8.1 6.6 15.1 11.8 10.6 10.7 ①その研究に関する内容(%) 52.8 56.7 36.6 60.4 ①~④小計(%) 84.9 88.2 89.4 89.3 ②その団体に関する内容(%) 25.8 22.2 16.4 19.7 合計(%) 100.0 100.0 100.0 100.0 ③その人に関する内容(%) ④あなたの学校での生活や 研究に関する内容(%) ⑤その他(%) 10.0 9.5 22.5 9.3 10.4 9.1 22.5 9.6 0.9 2.6 2.1 0.9 99.9 100.1 100.0 100.0 530 969 432 1177 第3回 ⑤0回(なし)(%) 第4回 第5回 第6回 有効回答数(人) 172 262 284 347 発表・見学生徒数(人) 222 358 356 405 回答率(%) 77.5 73.2 79.8 85.7 質問 20~22 その人とは主にどのような内容を話しましたか(3つまで回答可) 第3回 合計(%) 質問 17 専門家(教員や関係者など)から合計で何回質問されましたか (発表者として参加した生徒のみ回答) 第3回 第4回 第5回 有効回答数 第4回 第5回 第6回 ※有効回答数からそれぞれの割合を算出した 第6回 表 11 各団体発表者が生徒から受けた質問 ①1~3回(%) 52.7 41.9 46.4 44.0 ②4~6回(%) 27.8 33.2 24.6 29.9 ③7~9回(%) 8.3 9.4 7.6 10.5 ④10 回以上(%) 3.0 8.7 5.4 5.7 ①1~3人(%) 15.6 16.7 13.0 18.8 ⑤0回(なし)(%) 8.3 6.8 15.9 9.9 ②4~6人(%) 50.0 26.7 39.1 34.4 ①~④小計(%) 91.8 93.2 84.1 90.1 ③7~9人(%) 12.5 20.0 13.0 25.0 合計(%) 100.1 100.0 100.0 100.0 ④10 人以上(%) 21.9 30.0 30.4 21.9 有効回答数(人) 169 265 276 334 0.0 6.7 4.3 0.0 発表・見学生徒数(人) 222 358 356 405 ①~④小計(%) 100.0 93.4 95.7 100.0 回答率(%) 76.1 74.0 77.5 82.5 合計(%) 100.0 100.0 100.0 100.0 有効回答数(人) 32 30 23 32 質問 10 何人の生徒から質問を受けましたか 第3回 ⑤0人(なし)(%) 第4回 第5回 第6回 質問 11~13 その生徒から主にどのような質問を受けましたか(3つまで回答可) ② 発表生徒と参加者の交流 第3回 発表生徒の約9割が参加者(各団体関係者や教員, 一般参加者など) から質問を受けたと回答している (表 8質問 17①~④小計) .また,参加者の約9割が発表 生徒に対して質問をしたと回答した (表9①~④小計) . 第4回 第5回 第6回 ①団体の研究に関する 内容(%) 47.4 50.0 74.4 48.4 ②団体に関する内容(%) 22.8 25.0 15.4 24.2 ③説明者(あなた)に 関する内容(%) 21.1 25.0 10.3 25.8 8.8 0.0 0.0 1.6 100.1 100.0 100.0 100.0 57 52 39 62 ④その他(%) 合計(%) 有効回答数 ※有効回答数からそれぞれの割合を算出した ― 31 ― 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 29 No. 3(2014) 機関からも非常に多くの発表をする状況となり,その ② 参加者同士の交流 表 12(参加者用アンケート)により,参加者の約9 中で,参加者同士の交流が非常に活発におこなわれ, 割が各団体発表者と話をしていることがわかる(表 12 高校生の科学技術分野への期待と憧れを十分に強める ①~④小計) . ことができた. さらに,情報交換会や各団体へのアンケ ートの実施により,高校及び各団体と情報交換や相互 表 12 参加者と各団体発表者の交流 理解を図ることができた.しかし,連携の具体的な取 質問 8 合計で何人の発表者(ブースでの説明者)と話す機会がありましたか 第3回 第4回 第5回 第6回 ①1~3人(%) 41.7 30.8 26.6 44.7 ②4~6人(%) 35.7 35.9 39.1 30.3 ③7~9人(%) 14.3 11.5 12.5 5.3 ④10 人以上(%) 4.8 10.3 15.6 9.2 ⑤0人(なし)(%) 3.6 11.5 6.3 10.5 ①~④小計(%) 96.4 88.5 93.7 89.5 合計(%) 100.0 100.0 100.0 100.0 有効回答数(人) 84 78 62 76 組みを始めるところまでは至れていない.今後もこの 事業を充実させながら, これらのことにも取組みたい. 引用文献 以上により,高校生ポスター発表及び各団体ポスタ 兵庫県立神戸高等学校:兵庫県立神戸高等学校スーパ ーサイエンスハイスクール研究開発実施報告書, ー発表で,生徒同士,生徒と参加者,参加者同士の活 2008~2013. 発な交流がおこなわれたと言える. 科学技術振興機構理科教育支援センター:科学技術イ ノベーションを支える卓越した才能を見出し,開花 2.高校生の科学技術に対する意識の変化について させるために,2010. 表 13(生徒用アンケート)のように, 「科学技術分 野に対する期待や憧れ」は生徒の約8.5割が強まっ たと回答し(表 13①~③小計) ,生徒以外の回答者の 科学技術振興機構理数教育支援センター邦訳: 「今日の 科学教育:欧州の将来に向けた新しい教授法」 ,2008. http://www.jst.go.jp/cpse/risushien/news/20081 約9割も強まったと回答している(表 14①~③小計) . 017.pdf 表 13 生徒の「科学技術への期待や憧れ」の変化 (原文 European Commission : Science Education 質問 29 あなたの「科学技術分野に対する期待や憧れ」はどのように変化しまし たか 第3回 第4回 第5回 第6回 ①大いに強まった(%) 20.4 19.8 20.5 20.6 ②強まった(%) 36.1 37.6 31.7 37.3 ③少し強まった(%) 31.8 28.2 34.0 31.5 ④特に変化はなかった(%) 11.7 14.4 13.8 10.6 ①~③小計(%) 88.3 85.6 86.2 89.4 合計(%) 100.0 100.0 100.0 100.0 有効回答数(人) 377 696 580 797 発表・見学生徒数(人) 462 879 868 935 回答率(%) 81.6 79.2 66.8 85.2 Now: A renewed pedagogy for the future of Europe, 2007. http://ec.europa.eu/research/science-society/d ocument_library/pdf_06/report-rocard-on-scienc e-education_en.pdf) 国立青少年教育振興機構:高校生の科学等に関する意 識調査報告書,34,2014. 表 14 参加者から見た生徒の変化 文部科学省:第4期科学技術基本計画,2011. 質問 20 生徒の「科学技術分野に対する期待や憧れ」はどのように変化したと思 いますか 第3回 第4回 第5回 第6回 ①大いに強まった(%) 18.1 25.6 16.7 25.3 ②強まった(%) 44.6 48.8 47.0 43.0 ③少し強まった(%) 30.1 19.5 27.3 21.5 ④特に変化はなかった(%) 1.2 0.0 6.1 5.1 ⑤分からない(%) 6.0 6.1 3.0 5.1 ①~③小計(%) 92.8 93.9 91.0 89.8 合計(%) 100.0 100.0 100.0 100.0 有効回答数(人) 83 82 66 79 文部科学省:平成 26 年度スーパーサイエンスハイスク ール(SSH)指定校の内定等,2014a. http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/03/1345 968.htm 文部科学省:科学技術人材育成重点枠研究開発課題, 2014b. http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/25/03/1331 Ⅳ.成果と課題 269.htm 兵庫「咲いテク」事業の実施により, 「地域の高校生 の科学技術分野における探究活動」を共通のキーワー ドにして,高校と大学,企業,研究機関など関係者が 参加する多くの場を設定することができた.また, 「サ イエンスフェア in 兵庫」は,現在は 1300 名を超える 参加者で開催し,高校だけでなく,大学・企業・研究 ― 32 ―