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2003 2004 - AIST: 産業技術総合研究所
2003s2004 編 集・発 行 問い合わせ先 独立行政法人産業技術総合研究所 広報部出版室 〒305-8568 茨城県つくば市梅園1-1-1 中央第2 Tel: 029-862-6217 Fax: 029-862-6212 E-mail: [email protected] URL: http://www.aist.go.jp/ ●本誌掲載記事の無断転載を禁じます。©2005 AIST 2003s2004 Contents Contents 理事長メッセージ 3 ミッション 4 研究ハイライト 6 [分野別研究紹介] 2 ライフサイエンス 14 情報通信 18 ナノテク・材料・製造 22 環境・エネルギー 26 社会基盤(地質)・海洋 30 社会基盤(標準) 34 [ユニット紹介] ライフサイエンス 38 情報通信 51 ナノテク・材料・製造 60 環境・エネルギー 70 社会基盤(地質)・海洋 82 社会基盤(標準) 86 連携・知的財産 89 組織図 90 研究拠点所在地 91 アドバイザリーボード 92 データ 93 Message 本格研究の体制確立から、 さらなるネットワークの拡大へ。 産業技術総合研究所の目的は、わが国における産業技術水準を向上すること にあります。それは産業の国際競争力を強化することと同時に、持続可能な開 発という人類共通の課題の解決に貢献し、安定した世界の秩序の実現の道を前 進するための必要条件のひとつでもあります。 今、産総研は第一期中期計画を終え、第二期に入ろうとしております。創立 からの4年間、産業技術研究の一つの有効な方法として、具体的な研究課題に、 分野の異なる研究者が幅広く参画できる総合的な体制を確立することに力を を軸に、 「第1種基礎研究」から「開発」にいたる研究を、連続的に展開して まいりました。今後、この本格研究は、さらに発展し、産総研内にとどまらず、 日本の基礎研究から産業までの大きなネットワークの、一つのモデルになるの Message 注いできました。いわゆる「本格研究」という考えのもとで、 「第2種基礎研究」 ではないかと考えています。 産総研はこの4月に非公務員型独立行政法人へと移行いたします。非公務員 化は、非常に大きなチャンスで、大学や産業など外に向かっての交流がしやす くなります。一人一人の研究者が自分の研究能力を最大限に発揮するための、 多様な雇用形態・作業形態を選択できることで、研究の推進力を高めることが 可能になります。産総研は、いわば大学と産業の中間に位置する存在と考えら れます。産総研にはこの両者を結びつける役割があり、本格研究は大学の研究 と産業の製品化を結びつける役割を持つことになるでしょう。これらの役割を 通じてこそ、産総研は一般社会への貢献ができるものと確信しております。 工 通商 業 産業 技省 術 院 北海道工業技術研究所 東北工業技術研究所 産業技術融合領域研究所 計量研究所 機械技術研究所 物質工学工業技術研究所 生命工学工業技術研究所 電子技術総合研究所 地質調査書 資源環境技術総合研究所 名古屋工業技術研究所 大阪工業技術研究所 中国工業技術研究所 四国工業技術研究所 九州工業技術研究所 計量教習所(MITI) 2001年4月 独立行政法人化 産 独立 業 行政 技 法人 術 総 合 研 究 所 3 人類と環境のバランス、 社会の持続的な発展をめざして 産業技術総合研究所は、持続的発展可能な社会を構築するという基本理念のもと ¡産業競争力強化や地域経済活性化などに関する産業技術政策と連携した研究開発を推進すること ¡持続的発展可能な社会の経済基盤となる新産業群の創出を目的とした中長期的研究開発を推進 すること ¡安全で安心な社会基盤を保持・発展させるための地質情報技術および評価・計量標準技術の研究 と普及・供給を推進すること を推進します。 さらに、こうした研究開発を推進する公的研究機関として、 ¡実効ある研究成果の活用や産業技術政策遂行への貢献を通して、我が国の技術革新プロセスの エンジン機能を果たすこと を推進します。 人類を含む全ての生命系は、地球が持つエコ・サービス機能の恩恵を享受して発展してきました。 Mission しかしながら、人間活動が、その機能の長期循環的バランスを超えて拡大しつつある現在、地球規 模での持続的発展の可能性に対する懸念が高まっています。 産総研は、この地球規模の問題解決が不可欠であることを強く認識し、科学技術が生み出す新た な知識価値をもって産業技術の革新を先導することにより全力で取り組み、地球の持つエコ・サー ビス機能を永続的に享受し得る、経済、社会、環境のバランスのとれた活力ある地球社会の実現と その構成員たる我が国の発展をめざします。 4 人類的課題への貢献 開発・実用化 知識の 発見・解明 知識の 融合・適用 第1種基礎研究 第2種基礎研究 科学基盤研究 ライフ サイエンス 情報通信 長期的政策 推進のための 研究 ナノテク・ 材料・製造 地質・海洋 標 準 環境・ エネルギー 先端的研究 MISSION Mission シナリオに基づく “連続的な研究” 5 H ighlight ハイライト アボガドロ定数によるキログラムの再定義 Highlight ̶基礎物理定数と標準研究の最先端̶ 質量は国際キログラム原器の質量を単位とし います。 て表される物理量です。周波数、長さ、電圧、抵 2002年、モル質量の測定を担当するEUの標 抗といった物理量の単位の多くが恒久不変と考 準物質計測研究所(IRMM)の協力を得て、産 えられる物理法則あるいは量子効果を使って定 総研ではX線結晶密度法としては最も小さい不 義できるようになったのに対し、質量だけは白 確かさでアボガドロ定数を測定することに成功 金イリジウム合金製の分銅という人工物に頼る しました。このデータは基礎物理定数の推奨値 唯一のSI基本単位として残りました。このSI基 を決める国際委員会である科学技術データ委員 本単位を、原子の数や基礎物理定数などによる 会(CODATA)で採用され、2003年12月に公 新しい定義へと移行させるための研究が各国の 表された基礎物理定数の全面改訂に貢献ししま 計量標準機関で続けられています。アボガドロ た。アボガドロ定数からは、基礎物理定数間の 定数は1 molの物質に含まれる原子や分子の数 厳密な関係式を用いてプランク定数を導くこと を表す基礎物理定数です。この定数を正確に決 ができます。図は、異なる測定原理から求めら めることができれば、現行の定義を例えば「キ れたプランク定数の比較です。 ログラムは基底状態にある静止した5.018× 現在到達できるアボガドロ定数の測定精度は 25 12 10 個の自由な炭素原子 Cの質量に等しい」 約10-7 ですが、あと一桁向上すれば、キログラム と書き改めることが可能です。このため、計測 の再定義が可能です。新しい定義が実現すれば、 -8 6 標準研究部門(NMIJ)ではその精度を10 のオー 歴史上初めて質量の定義が人工物から切り離さ ダーまで高めるための研究を行ってきました。 れ、普遍的な定数と結びつくことになります。 アボガドロ定数NAはシリコン結晶の密度 精度の限界となっているモル質量の不確かさを ρ、 格 子 定 数a 、 モ ル 質 量M の 測 定 か らN A = 減らすために、同位体濃縮された 28Siの単結晶 8M /(ρa )として求められます。近年、シリコン を用いる国際プロジェクトが2004年4月から始 単結晶を非常に真球に近い1 kgの球体に加工 まりました。このプロジェクトには産総研の他 する技術が開発され、球体の直径のナノメート にIRMM、国際度量衡局(BIPM) 、独、伊、豪、英、 3 -8 ル計測と質量測定からその密度を7×10 の不 米の計量標準研究機関などが参加しています。 確かさで決めることができるようになりました 近い将来、メトロロジスト(metrologist)の永 (写真) 。X線干渉計による格子定数の測定につ 年の夢であるキログラムの再定義が実現される いても8桁のオーダーでの測定結果が得られて シリコン球の直径を測るレーザ干渉計 ものと予想されます。 異なる原理で測定されたプランク定数の比較 計測標準研究部門 藤井 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 賢一 アクティブ・ターゲティング用新規DDSナノ粒子の開発 目的 ナノ粒子の各種組織へのアクティブ・ターゲ DDSは Drug Delivery Systemの略称で薬物 ティング機能を実際に制御できること、そして、 送達システムと訳されています。その中でも標 これらをアクティブ・ターゲティングDDSナノ 的指向性(ターゲティング)DDSとは、癌など 粒子として利用することにより各種の薬剤や遺 各種疾患部位の標的細胞・組織を認識し局所的 伝子などを標的組織や細胞に効率的に輸送でき に薬剤や遺伝子を送り込むためのシステムで る可能性を世界に先駆けて見いだし本技術を確 す。この分野での現在の開発動向は、パッシブ・ 立するに至ったものです(図参照) 。 ノ材料が販売あるいは開発されつつある状況で 展望 す。一方、高機能のターゲティングを可能にす 「アクティブ・ターゲティングDDSナノ粒子製 るためのアクティブ・ターゲティング(能動的・ 剤」用の本技術は、癌や炎症性疾患、並びに、続 標的指向性)DDSは、21世紀の夢のターゲティ 発的に炎症を引き起こす疾患の治療に応用でき ングDDSとして大いに期待されています。 ることが動物実験で実証されました。たとえば、 肝炎に罹っている人は現在約200万人、糖尿病 内容 に罹っている人は現在700万人といわれるが、 本技術の対象は、生体内の各種組織の細胞表 これらの疾患が引き起こす続発的な炎症を抑え 面上に存在する多様な糖鎖認識蛋白質である標 ることで、病気の進行を遅らせることができる 的分子レクチンに対して特異的な結合活性を有 かもしれません。とりわけ、私たちは、高齢化社 する糖鎖を導入したリポソーム性DDSナノ粒子 会で増え続けている癌、リウマチ、生活習慣病 です。本技術では、リポソーム表面の性質ある などの治療への応用を目指しています。さらに、 いは該表面に結合させる糖鎖およびリンカー蛋 遺伝子治療、再生医療などの各分野での新しい 白質について種々の実験、検討を加え、リポソー 治療を実現させるために必要なデリバリーシス ムや糖鎖の構造を分子設計することにより、該 テムの開発へも展開したいと考えています。 アクティブ・ターゲティング機能の模式図 ナノテクノロジー研究部門 山嵜 登 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 Highlight ターゲティング(受動的・標的指向性)DDSナ 7 H ighlight ハイライト 未知なる細菌の探索 Highlight ̶国内初の「新門」提案に至った新規細菌ジェマティモナス・オーランティアカの発見̶ 極めて小さく単純な生物である細菌は地球上 本細菌は、従来の方法に比べ長い培養時間の後 の至る所に分布しています。例えば土の中や海 に現れてくる増殖速度の遅いものを選択すると 中、空気中、あるいはヒトの口や大腸の中など、 いう手法を用いて、廃水処理システム中の活性 文字通りいかなる場所においても、それらを簡 汚泥より単離されたものです。16S rRNA遺伝 単に発見することが出来ます。現在までに6000 子配列に基づく系統解析から、本細菌はいかな 種以上の細菌が環境中から分離培養され、その る既存菌株とも配列相同性が低く系統的に大き 形や性質が明らかにされています。しかし、そ く隔たっていることが明らかとなりました。こ れら分離された細菌は環境中の全細菌の1%に のような系統分類学的特殊性を受けて、本菌株 満たないと多くの研究者が考えています。この を完全に新たな分類門(ジェマティモナデテス ような細菌生態系を「未開拓の生物資源」と捉 門)を代表する新属新種として提案し、受理され え、その中に潜んでいる未知細菌を探索する試 さました。なお、 「門」と言う分類基準は細菌の みが重要な課題となって来ています。私たちの 中では最上級の階級であり、このような新門提 研究グループでは、網羅的な新規細菌の環境か 案に結びつくような新規菌株の発見は、世界的 らの分離を精力的に行っています。従来の分離 に見ても極めて希なことです。 法に変更を加えることにより、今まで見つけら れてきたものとは系統的に大きく異なる新規細 菌を環境中から効率的に分離することが可能と 8 なり、原始的光合成を行う好熱性繊維状細菌ロ ゼイフレクサス・キャステンホルツィーや大深 度地下(地下550m)の熱水に見つかった好熱 性細菌サーモアネロモナス・トヨヘンシスを初 めとして、多数の新規未知細菌の発見に成功し ています。国内初の「新門」の提案の標準細菌 となったジェマティモナス・オーランティアカ もこのような研究の中で発見されたものです。 Gemmatimonas aurantiacaの超薄切片電顕写真 (Bar = 0.5 μm) 生物機能工学研究部門 花田 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 智 高性能トンネル磁気抵抗(TMR)素子の開発 厚さ1∼2ナノメートル(nm)の非常に薄い絶 予測されていました。高品質のMgOトンネル障 縁体(トンネル障壁という)を2枚の強磁性金 壁を持つ新型TMR素子を開発し、室温で230% 属の電極で挟んだ素子をトンネル磁気抵抗素 という巨大な磁気抵抗比を実現しました。これ 子(TMR素子)といいます。2つの強磁性電 は従来型TMR素子の3倍を超える世界最高性 極の磁石の向きが反平行なときの素子の電気抵 能です(図参照) 。さらに(株)アネルバと共同 抗(RA)は平行なときの電気抵抗(RP)より で、この新型TMR素子を量産するための製造プ 高い値を示し、この現象はトンネル磁気抵抗効 ロセスの開発にも成功しました。MgOトンネル 果(TMR効果)と呼ばれます。この素子抵抗が 障壁を用いた高性能TMR素子は、次世代の大容 変化する割合を百分率で表したものを磁気抵抗 量MRAMのみならず超高密度ハードディスク磁 比(= (RA −RP)÷RP)といいます。TMR素子 気ヘッドを実現するための切り札になると期待 は情報を不揮発(電源を切っても記憶が消えな されます。 い性質)に記憶できるため、これを用いた新し Highlight い不揮発性メモリ(MRAM)の研究開発が世界 規模で精力的に行われています。MRAMは将来 的には不揮発・高速・大容量といった理想的な性 質を兼ね備えた究極のメモリになると期待され ていますが、大容量化が最大の課題です。アモ ルファス酸化アルミ(Al-O)をトンネル障壁に用 いた従来型のTMR素子では磁気抵抗比が70% 9 程度(室温)しかないことが、MRAM大容量化 の障害となっていました。私たちは、Al-Oに代 わる画期的なトンネル障壁材料として酸化マグ ネシウム(MgO)に着目しました。Al-Oと異 なりMgOは結晶性物質(原子が規則的に配列し た物質)であり、電流を運ぶ電子が散乱されに くいため巨大な磁気抵抗が得られると理論的に TMR素子の性能(磁気抵抗比)改善の歴史 エレクトロニクス研究部門 湯浅 新治 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 H ighlight ハイライト Highlight 高精細有機TFT駆動カラー液晶ディスプレイの開発 10 有機トランジスタは、印刷法によりフレキシ の溶剤により半導体の性能が劣化してしまいま ブルなプラスチック基板上に低コストで大量生 すが、今回私たちは材料とデバイス構造と作製 産することができることから、次世代のモバイ 法とを工夫することで、この問題を防ぐことに ル情報端末機器開発のキーテクノロジーのひと 成功しました。さらに、有機半導体と金属電極 つとして現在世界中で大きな注目を集め、激し との接触界面に起因する抵抗を低減させる電極 い技術開発競争が展開されています。特に、紙 作製技術を開発しました。これらの技術により、 のように薄くしなやかなディスプレイである電 小さなサイズの有機TFTでも十分な性能を発揮 子ペーパーを実現させるために不可欠な技術と させることができるようになり、精細度の向上 見込まれ、ディスプレイの駆動スイッチ用の薄 をもたらすことが可能となりました。今回開発 膜トランジスタ(TFT)としての開発がひと際 した技術を適応して、有機TFT駆動ディスプレ 活発に行われています。これまでは、有機TFT イの製作を試みたところ、以下の仕様を有する をディスプレイに適用しようとすると、素子作 高精細カラー液晶ディスプレイの試作に成功し 製工程において生じる様々なプロセス負荷が、 ました。 【画面サイズ:対角1.4インチ、画素サ TFTの性能劣化を引き起こしてしまい、高性能 イズ:318μm×318μm(RGB)、画素数:80× TFTを形成させることが困難でした。このため、 80(RGB)、精細度:80ppi】これは、現在までに 性能低下を見込んで大きく設計した有機TFT 試作された有機 TFT 駆動液晶ディスプレイと のサイズが画素サイズを決めてしまい、高精細 しては、世界最高の精細度です。この精細度は、 ディスプレイを形成することはできませんでし 市販の非晶質シリコンTFTを用いた液晶ディス た。今回私たちは、㈱日立製作所と共同で、有機 プレイに近いものであることから、有機TFTが TFTの性能劣化を抑えることのできる保護膜を 液晶ディスプレイ駆動には十分な性能を発揮す 溶液プロセスで作製する技術を開発しました。 ることを示すものです。 一般に、溶液プロセスで保護膜を作製すると、そ 光技術研究部門 鎌田 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 俊英 地層に残された巨大な津波と海岸隆起の証拠 地震に引き続いて地震発生帯よりも深部で発生 学的な手法で調査し、地球物理学的なモデルと した変動(余効変動)によるものと結論されま 組み合わせ、将来の地震発生予測や被害の軽減 した(図2) 。2003年十勝沖地震(M8.0)の後 に貢献しようとしています。 にも数cm程度の小規模な余効変動は観測され 北海道東部の千島海溝沿いでは M8クラスの ていますが、17世紀には海岸が数十年かけて 巨大地震が繰り返し発生します。これまでの調 1m以上隆起しました。このような大規模な変動 査から、17世紀に根室沖と十勝沖のプレート間 は、世界中でもM9クラスの地震の後にしか確認 地震が連動して巨大な津波が発生したこと、こ されていません。 のような連動型地震が500年に一度程度の間隔 東北や北海道の太平洋岸は、過去100年間に で繰り返すことを明らかにしてきました。 は沈降しているのに対し、過去10万年間には逆 今年度の調査からは、17世紀の連動型地震の に隆起しています。今回発見された17世紀の海 後に北海道の太平洋岸がゆっくりと隆起したこ 岸の隆起は、この海岸変動のなぞを解くための とが明らかになりました。海岸付近の地層(図 鍵となります。 Highlight 産総研では、過去の地震や津波の痕跡を地質 1左)には、津波によって運ばれた砂、水中で堆 積した泥、陸上で堆積した泥炭、17世紀末の火 山灰が含まれます。これらの地層中の珪藻化石 (図1中央) の分析から、 海岸線高度の時間変化 (図 1右)を推定しました。 モデル計算の結果、この海岸隆起は、連動型 図1 海岸付近の地層(左)、珪藻化石の分析結果(中央)、 推定された海岸の標高の時間変化(右)。 11 図2 地殻変動のモデル計算。海岸の隆起は、プレー ト間地震に伴う地殻変動(緑)でなく、震源域より 深部の余効変動(赤)によって説明できる。 活断層研究センター 佐竹 健治 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 H ighlight ハイライト Highlight 光のホール効果を解明 12 強相関電子技術研究センター(センター長: 重要な課題であると言えます。そこで、量子力 十倉好紀)では東京大学(村上修一助手、永長 学の草創期にその指導原理となった「幾何光学 直人教授)と共同で光波束の伝播における偏 と波動光学」および「古典力学と量子力学」の 光(スピンと呼ばれる内部角運動量の顕れ)の 対応関係を再考することにより、スピンやより 効果を解明し、さらにフォトニック結晶中の光 一般的な内部角運動量を考慮した幾何光学の方 波束における一般的な内部角運動量の効果につ 程式を導出しました。この方程式によれば、 「不 いても明らかにしました。光の挙動は電磁気学 均一な屈折率をもつ媒質中」や「屈折率の緩や のマックスウェル方程式を解くことで原理的に かな変調を上乗せしたフォトニック結晶中」を は予測できますが、その解析は通常たいへん複 光が伝播するとき、屈折率の変化の方向だけで 雑な問題となります。その近似理論である幾何 なく、垂直方向にも光線がずれる、あるいは曲 光学は、その簡便さにより多くの光学機器の開 がるという効果が予想されます。またこの効果 発を可能にしましたが、光のもつ特徴の一つで は、電子系における量子ホール効果、(intrinsic ある偏光の自由度が考慮されていません。一方、 な)異常ホール効果やスピンホール効果などと 偏光は偏光サングラス、液晶ディスプレイなど、 の類似性より、 「光のホール効果」として統一 すでに身の回りにある道具に利用されているだ 的に理解できることがわかりました。周期構造 けでなく、次世代の光通信や量子コンピュータ が無い場合、この効果によるずれの大きさは波 への応用の観点からもその重要性が高まってい 長の数分の1であり、可視光に対してはきわめ ます。また、新たな光機能材料として注目を集 て小さなものですが、フォトニック結晶を用い めているフォトニック結晶は、誘電率が波長程 ることによりこの効果を大幅に増大できること 度の周期をもった人工結晶ですが、その場合に が理論的に示され、将来的な光デバイス開発を も適用できる「拡張された幾何光学」の構築は 進める上で有用となると期待されます。 図1 反射・屈折における光のホール効果 図2 光のホール効果が予想されるフォトニック結晶 の例 強相関電子技術研究センター 小野田 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 勝 産業技術総合研究所は、民間のREO研究所と マイクロバブルが圧壊した後の水にナノバブル 共同で、ナノレベルの微細な気泡を長期に安定 が安定して存在することを発見しました。この 化させる技術を確立しました。ナノバブルと名 気泡のサイズは100∼200nm ( 1ナノメートル: 付けたこの気泡は、オゾンを長期に保有したり、 10億分の1メートル)に粒径分布のピークを持 生物に対して強い活性効果を示したりすること つことが多く、マイクロバブルが短時間で縮小 が明らかになってきました。 することに対して、この気泡は極めて長期間安 産総研とREO研は、水環境の改善を目的とし 定して存在します。そのメカニズムは、圧壊時 てマイクロバブルの工学的な応用技術の確立を に濃縮したイオン類がナノバブルを包み込んで 進めてきました。その中でもマイクロバブルの 気泡内の気体の散逸を防止し安定化させている 圧壊は、両者が世界で初めて発見および実用化 と考えられます。 を成し遂げた技術であり、僅かなエネルギーで 現在、オゾンと酸素の2種類のナノバブル生 大量のフリーラジカルを生成するため、例えば 成に成功しました。通常のオゾンは水中にわず 食品加工場などから排出される有機系排水の排 かな時間(数十分程度)しか存在できませんが、 水処理に応用した場合、ほぼ全ての有機系成分 ナノバブルとして供給することにより数ヶ月に を水や二酸化炭素にまで効率的に分解すること わたって維持できます。また、酸素ナノバブル ができます。 にはきわめて優れた生理活性効果があり、例え マイクロバブルの圧壊とは、 物理的な刺激(水 ば淡水魚と海水魚を同時に飼育することが可能 の流動過程で生じる圧縮や膨張、渦流等)を加 です(図参照) 。これらを利用することにより、 えることでマイクロバブルが急激に断熱圧縮す 医療や食品加工、養殖・畜産業などへの応用が期 る現象であり、超高圧・超高温の極限反応場を形 待できます。医療分野では、感染症予防や疾患 成します。この極限反応場により周囲の水分子 の治療効果などが考えられます。また、防腐剤 が分解されて・OHなどのフリーラジカルを形成 を必要としない食品保存や、抗生剤などの薬剤 します。フリーラジカルは極めて強い酸化能力 に頼らない養殖・畜産業が可能になるものと期 を持つため、難分解性の有害化学物質などの分 待されます。 解が可能です。一方、この研究の過程において、 酸素ナノバブルを含む水の中で泳ぐ淡水魚と海水魚 環境管理技術研究部門 高橋 正好 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 Highlight ナノバブルの製造・安定化技術開発とその応用 13 ライフサイエンス分野 画像情報処理技術を駆使して電子顕微鏡画像から単粒子解析法によって決定したIP3受容体チャネルの詳細な3次元構造。 Field (J. Mol. Biol. (2004) 336, 155-164) 活力ある長寿社会と 持続可能な循環型産業社会を 目指して 研究コーディネータ:栗山 博 14 急速な少子高齢化社会の到来は、健康長寿社会の実現という新しい課題を提示してお り、また、資源エネルギーの制約や、地球温暖化に代表される環境問題の顕在化は、持続 可能な循環型社会への産業構造の変革を迫っています。ライフサイエンス/バイオテク ノロジーはこうした諸課題に対する貢献が期待されています。そこで産総研のライフサ イエンス分野では、大きく以下の3つの目標を設定し、研究開発を進めています。 ①ポストゲノム研究を基盤とした医薬、診断薬の 新規シーズ開発、技術開発 ②高齢社会における健康維持・増進につながる人 ③新たな生物機能・生体物質の開発と効率的生体 物質生産のための技術開発 以下、平成16年度に得られた成果をご紹介します。 間科学研究、脳神経科学研究、医工学技術の開発 ポストゲノム研究を基盤とした医薬、診断薬の新規シーズ開発、技術開発 1)ナノテクでがん治療を目指す 紫外線を照射するだけで、がん細胞が死んでしま 量子ドットを簡便に合成する手法と量子ドット うことを発見し、量子ドットが分子イメージング とがん細胞を識別できる抗体やレクチンを融合さ だけでなく、がんの治療にも応用可能であること せた材料を合成する手法を新たに開発し、簡便に を世界で初めて明らかにしました。この成果は、 正常細胞とがん細胞を識別できる技術を開発しま Nature Biotechnologyの2004年11月号に掲載さ した。さらに、量子ドットが結合したがん細胞に れました。 (図1) (単一生体ナノ計測研究ラボ) 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 図1 ナノ材料ががん細胞に アポトーシス(細胞死)を 起こすメカニズム 量子ドットとレクチンの融合材料ががん細 胞表面に結合し、紫外線を照射すると活性 酸素が発生し、細胞死を誘発する 2)スモールモジュラトリRNA(smRNA) の発見 ニューロン新生(ニューロジェネシス)の運命 RNAは細胞の核内に存在しタンパク質の設計図が 決定を制御する新規のRNAを世界で初めて発見 小さい分子ながらも、神経幹細胞のニューロンへ し、スモールモジュラトリー RNA(smRNA)と 命名しました (Cell, 116, 779-793, 2004)。この 載っていない小さなRNA(non-coding RNA)で した。約20塩基の二本鎖という形状を持つ非常に の分化の際に重大な役割を果たしています。 (ジーンファンクション研究センター ) 3)タンパク質分解酵素ヘプシンの機能 ネットワーク解明 II型膜タンパク分解酵素ヘプシンが前立腺がん の診断マーカーとして良く知られるPSA生成に必 Field 須な役割を担っている事を見出し、これまで長い 間、前立腺がん病理学上ブラックボックスであっ たカリクレイン活性化機構ネットワークの解明に 成功しました。ヘプシンは前立腺がんの初期にそ の発現が亢進する事から、今回の発見はその早期 診断、より安全で効果的な予防・治療、新規創薬開 15 発などにとって重要な知見を与えるものと考えら れます。 (図2) (年齢軸生命工学研究センター) 図2 高齢社会における健康維持・増進につながる医工学技術の開発 1)人工骨材料の開発 材料自身がシグナルとして機能するバイオマテ リアル創製の一環として、亜鉛徐放性リン酸カル シウム人工骨材料を開発しました。さらに、動物実 験によりこの粉末材料を筋肉内注射することによ り局所的な骨粗鬆症治療が可能であることを明ら かにしました。現在、米国国立衛生研究所グラント を獲得し、骨粗鬆症治療応用に展開しています。こ の人工骨材料は、セルエンジニアリング研究部門 との共同研究の成果です。 (図3) (人間福祉医工学研究部門) 図3 亜鉛含有リン酸三カルシウム(ZnTCP)粉末の 筋肉内注射による亜鉛欠乏性骨粗鬆症改善効果。 2)酸化ストレスマーカーの同定と検証 白質DJ-1の酸化物を見いだし、ヒトの血漿、赤血 酸化ストレスに起因する身体の不調、疾患を検 球からの測定法を開発しました。現在、これらマー 出するためのバイオマーカーとして、脂質由来の カーの診断などへの有効性を検証しています。 もの2種(ヒドロキシリノール酸、ヒドロキシコ (ヒューマンストレスシグナル研究センター) レステロール) 、およびプロテオーム解析により蛋 Life Science & Technology ライフサイエンス分野 ポストゲノム研究のためのデータベース、ツール開発 1)タンパク質立体構造予測システム FORTE-SUITEの開発 タンパク質の配列情報から立体構造を予測す るシステムFORTE-SUITEを開発しました。構造 予測をしたいタンパク質の類縁配列プロファイル と、構造既知タンパク質の類縁配列プロファイル とを、相関係数を類似性尺度としてアラインメン トする独自のFORTE法により高感度に候補構造 を得られます。2004年の立体構造予測コンテスト CASP6で、FORTE-SUITEを用いた産総研チーム はフォールド認識部門で約200チーム中の第3位、 ドメイン予測部門で第4位に入賞しました。 (図4) (生命情報科学研究センター) 図4 Sor45タンパク質の予測構造(折線)と 実際構造(曲線) Field 既知情報が使いにくい難問も産総研チームは構造予測に成功 16 2)ヒト遺伝子の統合データベース 開発と公開 られる予測された遺伝子配列に加えて、遺伝子発 ヒト完全長cDNAアノテーションに関する国際 た完全長ヒトcDNA配列の情報に基づいて作成さ 共同プロジェクトであるH-Invitational に中心的 れたデータベースであるため、信頼性の高い多様 に参画して取りまとめ、その成果をデータベース な情報が含まれています。このデータベースは、生 および論文として国際的に公表しました。このデー 命の仕組みを理解するのに役立つことはもちろん、 タベースは、 「精査されたヒト遺伝子の世界最大の その波及効果として、病因解明とその対策、創薬と データベース」であり、国際標準化を実質的に果 いった我々の健康増進や産業化に役立つことも期 たした「ヒト遺伝子の機能情報カタログ」とも言 待されます。 (生物情報解析研究センター) 現が実験的に確認されているmRNAから作成され うべきものです。従来のゲノムプロジェクトにみ 3)トランスフェクションアレイの開発 析が必要です。そこで、新規な細胞チップ、トラン 細胞・組織デバイスの生産・利用技術の開発のた スフェクションアレイを開発し、上記遺伝子群の めには、細胞の分化を担っている遺伝子を解析・制 ハイスループットスクリーニング技術の開発を進 御することは重要な課題です。しかし、ヒトゲノム めるとともに、遺伝子の発現ネットワーク解析を には分化に関与する多数の遺伝子が存在するため、 始めています。 (セルエンジニアリング研究部門) その相互関係を明らかにするためには、網羅的解 4)フロンタル・アフィニティ・クロマ トグラフィー自動化装置の開発 質を固定化させた並列式微小カラムに蛍光標識し フロンタル・アフィニティ・クロマトグラフィー 定量的に判定できる装置です。レクチンと糖鎖間 (FAC)の自動化装置試作1号機(FAC-1)を開 をはじめ様々な生体分子間のハイスループット解 発しました。これは定量アフィニティ・クロマトグ 析に威力を発揮します。 (糖鎖工学研究センター) ラフィーの1種であり、レクチンなどのタンパク 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 た糖鎖や糖ペプチドを流すことで、結合の強弱を 新規遺伝子資源、生物機能の開発 1)不凍タンパク質の量産化技術を開発 開発に応え得る量の確保は不可能でした。ゲノム 氷核の成長を抑制する機能を持つ不凍タンパク ファクトリー研究部門では、不凍タンパク質が北 質は、食品の冷凍保存等への応用が期待されてい 海道近海の魚肉中に大量に含まれていることを見 ますが、これまで不凍タンパク質は極地で生息す いだし、生成、量産の基本技術を確立しました。 る魚類の血液から抽出されており、こうした応用 (ゲノムファクトリー研究部門) 2)共生細菌の新規生物機能の発見 大きく左右されることを世界で初めて突き止めま 人間を含め多くの生物は体内細菌と共生してい した。この成果は、昆虫自身の属性として食性が ますが、昆虫類においてはとりわけその重要性が 決まっているという従来の常識を覆す発見であり、 大きいと考えられています。エンドウヒゲナガア また分離培養が困難である多くの微生物に重要か ブラムシという昆虫について、その食性と共生細 つ興味深い生物機能が存在することを示していま 菌の種類との関係に着目して研究をおこない、ア す。 (生物機能工学研究部門) ブラムシが利用できる植物の種類が体内の細菌に (CREST-T法)を開発しました。これにより重複 遺伝子の機能解析も可能となり、これまで未解明 であった多くの機能に関与する遺伝子が見出され つつあります。 (ジーンファンクション研究センター ) Field 3)植物の遺伝子機能を解明する 新技術の開発 植物の転写因子を抑制因子に転換させる方法 計測標準等、技術基盤の整備に向けて 1)バイオ計測標準化 を目的としています。産総研も当WGに参加し、 国際度量衡委員会物質量諮問委員会(CCQM) DNA定量法の標準化に取り組んでいます。 (生物 のもとに設置されたバイオ計測標準WGは、バイ 機能工学研究部門) オ産業基盤として不可欠なバイオ計測標準の確立 2)高齢者対応標準化: 高齢者障害者配慮設計指針に関する 工業標準原案の作成と制定 「高齢者障害者配慮設計」に関する産総研発の日 において高齢者・障害者対応を審議する委員会が 設置され、産総研からコンビナーを派遣するなど 国際標準制定に向けて積極的に取り組んでいます。 (人間福祉医工学研究部門) 本工業規格(JIS)が、これまでにJIS3件、JISTR(標 さらに、国際標準化活動の一環としては、産総研 準情報)3件が制定されました。現在、 「色の組み合 が中心となってISO/IWA「映像の生体安全性評価 わせ方法」に関するJIS原案を新たに提案し審議中 法」に関する国際ワークショップを開催し、国際 です。また、国際標準機構ISO/TC159(人間工学) 的なガイドライン制定に向けた活動をしています。 3)迅速な医療機器審査に向けた 工業標準化 体制構築に貢献しています。さらに、産総研での研 独立行政法人医薬品医療機器総合機構と連携を 法などのJIS6件が新たに制定にされています。 究成果に基づき、外科用インプラント材料の評価 深め、我が国の医療機器開発において迅速な審査 4)ダウンストリームプロセスの 基盤整備 会を立ち上げ、安心できる製造プロセス確立に必 バイオロジカルズ(タンパク医薬)製造技術研究 品質管理技術基盤整備の検討を進めています。 要な分離精製プロセス技術革新とタンパク医薬の Life Science & Technology 17 Field 情報通信分野 生活浸透型 ネットワーク社会に 向けた技術開発 研究コーディネータ:大蒔 和仁 研究コーディネータ:廣瀬 通孝 18 高度な情報通信分野では、情報通信環境を活用して、時間や場所の制約を受けずに、 必要とする情報・知識を誰もが自在に創造、流通、共有できる、安全で安心な情報化社 会の実現を目指しています。 情報通信分野の概要 情報通信分野では、 「ときめきと安心のIT社会」 や家庭がブロードバンド接続されるに従い、高速・ を統一的なコンセプトとして、下記の4つの重点 大容量の情基インフラの整備と安全・高信頼シス テーマを推進しています。IT産業の国際競争力の テム構築の必要性が増しています。産総研の総合 維持・増強の観点からは、情報家電のような身近な 性を生かし、ITを核として日本の産業の充実を図 機器をインテリジェント化し、省電力化すること ります。 で付加価値を高めていくことが重要です。事業所 1)高速・大容量情報ライフライン 蓄積する技術、処理においては、必要な情報と情報 社会を支えるITインフラとして、大容量の情報 処理能力に即座にアクセスできる次世代インター を蓄積し、高速に処理・通信する技術を研究します。 ネット環境としてのグリッド技術、通信において 蓄積においては、高密度光ディスクによる大容量 は、全光通信等を研究します。 記憶やネットワーク上に分散して安全にデータを 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 2)セキュリティ・ディペンダビリティ インターネット上での不正アクセスを防ぎ、安 通りに作られていることを保証する検証技術を研 究します。 全な通信や認証を行う技術、ソフトウェアが仕様 3)知能ブースター 省電力の論理・記憶デバイスとそれらを統合し 動を支援する自然なヒューマンインタフェースと 知的支援技術、ユビキタスなモバイル情報機器の た携帯用デバイス技術、個人の知的活動や生産活 開発を行います。 4)高度情報処理応用 パーコンピューティングを高度に活用した応用研 高度計算基盤としてのAISTスーパークラスタを 究やシステム開発を行います。 Field はじめとするグリッドコンピューティングやスー 19 情報通信分野の研究ハイライト 1)高速大容量情報ライフライン ¡超高密度光記録技術(スーパーレンズ)の研究 開発 近接場光、局在プラズモン光を応用し、60nm マ ー ク 径 でCNR>30dB、50nmマ ー ク 径 で CNR>40dBという高解像度での記録・読み出しを 達成しました。次世代の超高密度光ディスクの実 用化に大きく前進しました。(近接場光応用工学研 究センター ) Information Technology 情報通信分野 ¡グリッドミドルウェアの開発 ¡サブバンド間遷移を利用した超高速光スイッチ 遠隔手続き呼び出しとメッセージ交換の2つの 技術を開発 分散並列実行モデルに基づくグリッド上のミドル 半導体量子井戸中に形成されたサブバンド間の ウ ェ アNinf-G2とGridMPIを 開 発 し ま し た。(グ 光遷移を通信波長帯にまで短波長化することに成 リッド研究センター ) 功し、世界最速の150フェムト秒台で動作する超 高速光スイッチの基本技術を開発しました。(光技 術研究部門) Field リッジ型光導波路デバイス 20 2)セキュリティー・ディペンダビリ ティー ました。(システム検証研究センター ) ¡モデル検査技法の組込みソフトウェア検証への ¡世界最速の光ファイバー量子暗号通信に成功 実用化 新しい光子検出法を考案し、1550nmの波長で 企業における組込みソフトウェアの設計書を対 の世界最速の光子検出装置を開発しました。これ 象に、モデル検査による検証作業を行い、実機テス により、光ファイバー長10.5kmでの量子暗号通信 トなどの従来法で見つける前に、バグを早期検出 による鍵配布実験で世界最高となる鍵生成率45k することにより、モデル検査法の有効性を実証し ビット/秒を達成しました。(光技術研究部門) 3)知能ブースター ゲート絶縁膜を用いたトランジスタの信頼性が大 ¡ポーラスシリカ低誘電率(Low-k)絶縁膜を開発 幅に向上することを実証しました。(次世代半導体 半導体内部の配線の信号伝達速度の向上や消費 研究センター ) 電力低減を実現するために、新しい材料設計の考 え方に基づき、ポーラス(多孔質)シリカ配線用 ¡日常活動計測用超音波3Dタグの小型化技術を 絶縁膜を開発しました。(次世代半導体研究セン 開発 ター ) 日常生活に使用する物に取り付けて物体の移動 経路を正確に計測するために、超音波3Dタグの安 価、小型(1コインサイズ)化を行い、持ち運びを可 能にしました。また、ソフトウェアの改良により、 反射・隠れに対する計測精度を向上しました。(デ ジタルヒューマン研究センター ) ¡高誘電率(high-k)ゲート絶縁膜の成膜技術を開発 新開発のLayer-by-Layer Deposition & Annealing (LL-D&A)成膜法により作製した高誘電率(high-k) 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 ¡世界初の4端子駆動型XMOS-FETを開発 用いて、海外も含めた介護老人保健施設での長期 高速性と消費電力の低減を両立できる集積回路 間共生実験を開始し、その効果を国際的に実証す の実現のために、8nm厚フィン構造による分離 るとともに、製品化を実現しました。(知能システ ゲートXMOSの4端子動作に世界で初めて成功 ム研究部門) し、しきい値電圧を柔軟に変えることでトランジ スタ毎の消費電力制御の可能性を実証しました。 ¡脚・腕を使ったヒューマノイドの動作計画とそ (エレクトロニクス研究部門) の生成法を開発 ヒューマノイドロボットを用いて、複雑な環境 ¡MRAM消費電力の低減に有効なスピン注入磁化 下で、視覚等の情報に基づき腕および脚を併用し 反転で世界最高を達成 て移動・作業を行うための、動作計画の生成法を開 新開発のCoFeB電極を用いたデバイスにより、 発し、這って狭い場所を通り抜けたり、机に腕をつ 注入される電子のスピンによって電極磁場を直接 いて遠くの物を取ったりするような動作を実現し 反転させることに成功し、MRAM書き込み電力を ました。(知能システム研究部門) 従来値の1/24以下に低減しました。(エレクトロ ニクス研究部門) ¡メンタルコミットロボット:PAROのセラピー への適用技術を開発し、効果を実証 Field 開発したメンタルコミットロボット:PAROを 21 4)高度情報処理応用 ¡協奏計算アーキテクチャ CONSORTSを開発 ユビキタス情報環境において,様々なサービス を統合して提供するサービス合成技術と混雑を回 避しつつ多数のユーザをナビゲートする群ユーザ 支援技術から構成される協奏計算アーキテクチャ CONSORTS を開発しました。(情報技術研究部門) ¡グリッド技術を用いた応用システムを開発 脳磁気計測装置から出力されるデータ処理を遠 隔地から行うために、リアルタイム脳機能解析シ ステムを開発し、グリッド環境への移植を行いま した。(グリッド研究センター ) Information Technology Field ナノテク・材料・製造分野 新産業の創出と 社会生活の 変革に向けて 研究コーディネータ:五十嵐 一男 研究コーディネータ:中浜 精一 研究コーディネータ:寺倉 清之 22 材料や製造技術を飛躍的に革新させることにより、21 世紀の高度情報化社会、高齢化 社会での安全・安心な生活、および環境と調和した持続可能な社会の実現を支える技術 基盤の確立を図ります。 ナノテク・材料・製造分野の目標 ナノテク・材料・製造分野では、材料および製造 品をつくり」 「廃棄の際にも最小限の環境負荷でと 技術の飛躍的な革新により、福祉高齢化社会にお どめることができる」技術体系に対して私どもが ける安心・安全な生活、高度情報社会および環境と 名付けたものです。すでに、次期中期計画に向けた 調和した持続可能な社会の実現を支える技術基盤 取り組みの一環として2004年4月に研究ユニッ の確立を図ります。中でも、ナノメートルレベルの トの再編を行いました。材料技術と製造技術を1 微細な領域における材料の製造や加工を行うナノ つの研究ユニットに取り込んだ「先進製造プロセ テクノロジーにおいては、個々の要素技術の開発・ ス研究部門」と温暖化対策に資する「サステナブ 高度化を図りつつ、それらを集積化し、産業界に導 ルマテリアル研究部門」を新たに発足さるととも 入できる技術として成熟させることにより産業基 に、 「ナノテクノロジー研究部門」を強化しました。 盤の確立を目指しています。 計算科学は当分野における共通基盤技術として、 当分野では、現在、 「ミニマル・マニュファクチャ その重要性がますます高まっています。計算機シ リング」という新たな概念を基本概念に据え、第 ミュレーションは実験や実際の製造過程では見え 2期の研究戦略、研究計画を策定しているところ ない現象を見ることによって、現象の本質を明ら です。この概念は、生産プロセスにおいて、 「最小 かにするとともに、予測や最適化を通してミニマ の資源投入で」 「最小のエネルギー(生産コスト・ ル・マニュファクチャリングに貢献することが期 環境負荷)を用いて」 「最大限の機能を発揮する製 待されています。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 ナノテク・材料・製造分野の研究ハイライト 各トピックスのより詳しい説明は次のurlからリンクが張られています。 http://www.aist.go.jp/aist_j/field/nanotech/nanotech.html ¡ミサイルドラッグ用DDSナノ粒子の作製 ¡単層カーボンナノチューブの革新的合成技術 薬物を目的部位へ選択的に運ぶミサイルドラッ 単層カーボンナノチューブを、従来のCVD法に グ用ドラッグデリバリーシステム(DDS)ナノ粒 比べ500倍の超高効率、2000倍の超高純度で合成 子を世界で初めて作製しました。DDSナノ粒子が する革新的な技術を開発しました。極めて高い配 炎症疾患組織に選択的に運搬されることを、眼炎 向性を活用し、マクロ構造体の作製にも成功しま 症モデルマウスを用い実証しました。炎症性疾患 した。様々な分野で画期的な性能を持つ新製品の 全般などの治療に向けたDDS製剤開発を加速する 開発が期待できます。 (ナノカーボン研究センター) 成果です。 (ナノテクノロジー研究部門) Field 1)ナノ材料技術 ¡マイクロリアクターによる分析手法の開発 ¡マイクロプラズマを用いたオンデマンドプロセ 数百μm程度の太さの極細の流路内を流れる溶 シング 液が層流となること、および流れ場の中で分子構 寸法がmmからμmのマイクロプラズマを利用 造が変化する等の特徴を利用した、新しいマイク し、常温・大気圧下で動作するデポジション装置を ロフロー分析法を開発しました。この方法により 開発しました。酸化物ナノ微粒子やカーボンナノ DNAなどを極めて簡便な操作で分析することがで チューブなどをポリマー基板上の特定の領域に析 きます。臨床現場でのオンサイト・オンデマンド 出させることが可能です。材料を必要な場所へ必 ニーズに最適な分析法です。 (マイクロ空間化学研 要な量だけ配置するオンデマンドプロセシングに 究ラボ) 向けた成果です。 (界面ナノアーキテクトニクス研 究センター) Nanotechnology, Materials & Manufacturing 23 ナノテク・材料・製造分野 2)ナノ計測技術 全体において強力な研究ツールとなります。 (ナノ ¡世界最高分解能の磁気力プローブ顕微鏡を開発 テクノロジー研究部門) 10 ナノメートル程度の磁気記録媒体を評価でき る世界最高分解能の磁気力プローブ顕微鏡の開発 ¡世界最高感度の元素分析装置を開発 に成功しました。新たに開発したプロセス技術に 単原子レベルの元素分析が可能な世界最高感度 よりカーボンナノチューブに強磁性体薄膜を均一 を持つ元素分析装置を開発しました。走査型透過 にコーティングし、探針に使用しています。磁気 電子顕微鏡と電子線エネルギー損失分光器を組み 記録の分野以外に、スピンエレクトロニクス分野 合わせ、サブナノメートル領域の高感度元素分析 を可能にし、原子ひとつひとつの分析に成功しま した。ナノデバイス材料の開発や、生体分子の分 子ラベリングの解析に新しい道を拓くと期待され Field ます。 (ナノカーボン研究センター) 24 3)ナノ基盤技術 ¡光のホール効果を解明 ¡大型ダイヤモンド単結晶合成技術を開発 光の伝播に偏光の効果を取り入れた新たな幾何 気相合成法(マイクロ波プラズマ CVD 法)に 光学の基礎方程式を導くことに成功しました。そ より大型ダイヤモンド単結晶を合成する技術を開 の結果、屈折率の変化と垂直方向に光線がずれる 発しました。合成速度が従来の 5 倍以上と高速で という物理学上きわめて影響が大きい新現象を理 す。ダイヤモンドを 論的に発見しました。この現象をフォトニック結 用いたデバイス実現 晶で増強する事により、光通信、量子コンピュー に向けて大きな一歩 タにおいて新たな技術を切り開く可能性がありま を踏み出す成果です。 す。 (強相関電子技術研究センター) (ダイヤモンド研究セ ンター) ¡強相関酸化物の界面磁性制御 金属強磁性体と絶縁体(トンネル障壁)の接合 界面の磁性(界面磁性)を光で直接検出する評価 法を世界で初めて開発しました。さらに、強相関 酸化物金属強磁性体を用いた接合で界面磁性を飛 躍的に増強する方法を考案、その有効性を実証し ¡計算科学で超臨界水の化学反応解明 ました。磁気メモリなどに使われるスピントンネ 超臨界水中でナイロンの原料であるε-カプロラ ル接合の高性能化に新しい道を拓く成果です。 (強 クタムを合成する過程(ベックマン転位反応)が 相関電子技術研究センター) 濃硫酸なしで進む過程を解明しました。量子力学 を取り入れた第一原 理分子動力学を、超 臨界常態でのシミュ レーションに活用し て、実操業に必要な 反応条件の予測が期 待できます。 (計算 科学研究部門) 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 ε-カプロラクタムへの中間体 4)高品質・省エネ・高速プロセス技術 ¡セラミックス材料常温コーティング技術の展開 産総研で開発したエアロゾルデポジション法は、 常温でセラミックス材料の高品質厚膜を作製する 画期的な技術です。この技術を用い、高硬度・高耐 圧アルミナ膜、大きな電気光学定数を持つ電気光 学膜、マイクロ光スキャナー上の圧電厚膜などの 作製に成功しました。本技術により、セラッミック スプロセスにおける高効率化、高機能化が期待で きます。 (先進製造プロセス研究部門) せた高品質の厚膜・積層セラミックスを作ること ができます。 (先進製造プロセス研究部門) ¡MEMSビジネス棟が完成 MEMSビ ジ ネ ス 棟 を つ く ば セ ン タ ー に 竣 工 致 し ま し た。産 総 研 のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems; 微小電気機械素子)に関わ る研究ポテンシャルと技術シーズを産業界の技術 ¡遠心力を利用したセラミックス焼結技術 の頭脳の結集や連携強化、創造的な人材の育成を 高速回転によりセラミックス粉末粒子に遠心力 期すための施設です。 (先進製造プロセス研究部門) Field やニーズに連携させ、MEMS分野における産学官 を加えながら焼結する新しいセラッミックス成膜・ 積層技術の開発に成功しました。遠心力により粉 末粒子の収縮方向を制御し、亀裂の発生を低減さ 25 5)省エネルギー材料・製造技術 ¡マグネシウム合金の大型部材化技術の開発 マグネシウム合金の押出し材を大型部材化する 技術を開発しました。産総研が開発した難燃性マ グネシウム合金を用い、摩擦撹拌接合やレーザ溶 接を利用して車用ルーフボックスの試作に成功し、 強化プラスチック製従来品に比べ約25%軽量化が 図られました。 (サステナブルマテリアル研究部門) 6)ものづくりIT化技術 ¡設計製造アプリケーション開発システムを公開 専門家でなくとも設計製造アプリケーション を短期間、低コストで開発できるシステムMZ Platformを開発し、正式版を無償公開しました。利 用者自身がJavaコンポーネントを組み合わせるこ とによりアプリケーションを開発できる点が特長 です。このシステムを用い、企業における技術情報 活用システムを開発しました。 (ものづくり先端技 術研究センター) Nanotechnology, Materials & Manufacturing Field 環境・エネルギー分野 持続可能な 循環型社会の 実現に向けて 研究コーディネータ:神本 正行 研究コーディネータ:山辺 正顕 26 持続可能な循環型社会の構築を目指して、環境汚染問題や地球温暖化問題の解決と資 源循環促進やエネルギーの安定確保に資する研究開発を行っています。 環境・エネルギー分野における研究開発の概要 環境・エネルギー問題は複雑さを増し、システム (3) システム評価技術:資源・エネルギー利用率や 評価の研究、ならびに評価に基づく技術開発の実 有害物質リスク算定手法の構築、地球温暖化対 施が求められています。 策評価や社会受容性評価手法等の開発 産総研では評価研究と技術開発の連携を図りな 4月からの第2期中期計画期間には、下記のよう がら、(1) 有害物質対策および3R促進、(2) 地球 な方向で研究を実施する予定です: 温暖化防止、(3) エネルギーの安定供給、を目的と (1) システムの視点を強化:化学物質リスクの総合 した研究開発を行っています。 的な予測・予防・対策技術、省エネルギー・環境 具体的な課題は下記の通りです。 調和型化学プロセス、長期エネルギーシナリオ (1) 環境技術:新しい有害物質の分解・無害化反応 等のシステム評価等 プロセスの開発、分離・濃縮等のインプラント プロセスや環境配慮型代替物質の開発 (2) エネルギー技術:再生可能エネルギー等の分散 (2) ユーザーの立場を重視:運輸・民生部門に対す る取り組み、分散エネルギーへの重点化、リス クコミュニケーション等 型エネルギーとエネルギーネットワークの開 (3) 産 業 を 通 し て 社 会 へ 貢 献:COP3へ の 貢 献 発、クリーンコールテクノロジー、バイオマス (2010年)と2010年以降への取り組み、規格 燃料等とその利用技術の開発 化・標準化への取り組み、CSRへの支援等 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 環境・エネルギー分野の研究ハイライト 1)レーザー・プラズマ加速で単色電子 ビーム発生に成功 強力なレーザー光がプラズマ中に作り出す電場 による粒子加速(レーザー・プラズマ加速)を用 いた小型加速器の研究に取り組んでいます。これ までレーザー・プラズマ加速では、様々なエネル ギーの電子を含むビームしか得られていませんで した。従来よりも高い電子密度(1020 個/cm3)の プラズマから、加速距離0.5 mmでエネルギー 7 MeVの単色電子ビーム発生に世界に先駆けて成功 しました。 (エネルギー技術研究部門) レーザー・プラズマ加速で得られた電子ビームのエネル ギースペクトル 2)木材から水素の連続生産に成功 カルシウムを用いたバイオマスのCO2 吸収ガス 化の実証に取り組み、10Kg /日規模の連続装置 Field で木材からCO2 を含まないクリーンガスの連続生 産 (水素濃度83%、 メタン15%、 生成量0.5Nm3/時) に成功しました。CO2 を含まないクリーンガスの 連続生産は世界初めてで、また水素濃度80%以上 も世界トップです。これまでラボ規模のバッチ試 験では成功していたものの、連続化が課題であり、 27 今回の成功で連続処理に目処をつけることができ、 本技術の実用化に道を拓くものです。今後、安定運 転、長時間運転、最適化などに取り組み、実用化の 目処を得る予定です。 (循環バイオマスラボ) ベンチ試験装置写真 3)国内初のメガワット級分散型太陽光 発電システムの実証・評価 わが国の2010年における太陽光発電の導入目 標は、 現在の64万KW(IEA(国際エネルギー機関) の最新統計による)の約7倍である482万kW(総 合資源エネルギー調査会「長期エネルギー需給見 通し」による)です。目標達成までの過程で、太陽 光発電システムが地域コミュニティに集中的に導 入されていくことが予想されており、このメガワッ ト級発電出力の「つくばセンター太陽光発電設備」 はその先駆的なモデルケースとなります。産総研 では、今後も引き続き、先進的なエネルギー供給シ ステムを導入して最高レベルの対環境性と省エネ ルギー性を実証・評価すると共に、環境調和型のエ ネルギー技術の研究開発を推進して行きます。(太 陽光発電研究センター ) Environment & Energy 環境・エネルギー分野 4)柔軟で耐熱性に優れた無機ガスバリ ア膜の開発に成功 従来の耐熱性ガスバリア膜の常用温度は 350℃ 程度が限界でした。 これまでエンジニアリングプラスチックのガス バリア性を高めるために少量添加されてきた粘土 結晶を主原料として用い、柔軟で半透明なガスバ リア膜を作製しました。このガスバリア膜の室温 におけるヘリウム、水素、酸素、窒素などの無機 ガスの透過度は測定限界値以下であり、従来材料 のエンジニアリングプラスチックをはるかに超え、 アルミホイル並みの性能を示しています。またア ルミホイルの融点 660℃を超える 1000℃までの 高温条件において性能低下がみられませんでした。 ( メンブレン化学研究ラボ ) 5)非パラジウム系金属膜で水素の精製 に初めて成功 Field 混合ガスから高純度水素を分離可能なニッケ ルージルコニウム合金膜を開発しました。右の写 真は燃料電池、半導体プロセスなどへの応用を目 指して実証機用に製作した幅広膜です。 (環境化学 技術研究部門) 28 6)超臨界二酸化炭素溶媒による有機系 水素貯蔵材料合成 技術を開発しました。この技術は、触媒の長期使 超臨界二酸化炭素を溶媒として利用することで 収再利用が容易など、環境負荷低減型の新しい水 燃料電池用水素貯蔵材料として有望とされている 素貯蔵材料合成システムとして実用化が期待され デカリンを従来技術より低温で且つ高効率で得る ます。 (超臨界流体研究センター) 7)東京湾における化学物質の環境濃度 推定計算が即座に可能 海域における化学物質の濃度推定や 生物に対するリスク評価が可能なモデ ルとして、東京湾簡易リスク評価モデ ルを開発し、ソフトウェアの無償配布 を開始しました。 (化学物質リスク管理研究センター) 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 用が可能、デカリン回収が容易、二酸化炭素の回 8)高容量鉄系酸化物正極材料の開発に 成功 ¡リチウムイオン二次電池の低コスト化に道 共沈法と水熱法を組み合わせたナノ粒子製造法 (湿式合成法)を用い、リチウムイオン二次電池に おいて3V以上の放電電圧を有するリチウム−鉄マンガン系新規正極材料を開発しました。 (ユビキタスエネルギー研究部門) 9)シリコンの限界を超える半導体開発 に大きな一歩 ¡炭化ケイ素半導体の性能向上に成功し、実用化 の道を拓く 炭化ケイ素半導体を基板としたトランジスタを 開発し、性能指標である電子の動き易さについて、 実用化に必要な壁を破る、230 cm2/Vsという世界 最高性能を達成しました。 炭化ケイ素(SiC)半導体によって、従来のシリ Field コン(Si)半導体を凌駕する小型で電力損失が少 ない半導体素子を実現することが可能であり、電 力、鉄道、家電などの様々な分野で電力制御用素子 としての応用や、宇宙・原子力施設で使用する放射 線に強い半導体素子への応用が期待されています。 (パワーエレクトロニクス研究センター) 29 10)LCAにおける日本版被害算定型影 響評価手法(LIME)の開発 ¡日本版・被害算定型影響評価手法の開発 日本の環境条件を基礎とした第一版被害算定 型環境影響評価手法(LIME: Life -cycle Impact assessment Method based on Endpoint modeling)を開発しました。 本手法は地球温暖化など11種の影響 領域を通じて発生する被害量を人間健 康などのエンドポイントごとに求め、 これらを基礎として環境影響の統合化 まで行う被害算定型のアプローチを採 用しています。 LIMEの開発には、疫学、気象学、保 全生物学、保険統計学などの自然科学 的知見と環境経済学、社会学、心理学 などの社会科学に基づく分析結果に基 づいており、本研究は環境分野の総合 研究として位置づけられます。 (LCA 研究センター) Environment & Energy Field 社会基盤 (地質) ・海洋分野 地球システムの理解を基礎にした 地質情報の整備により 安心・安全な社会構築へ貢献 研究コーディネータ:佃 栄吉 30 社会の持続的発展に不可欠な安心・安全な社会を構築のための基盤情報である地質情 報の整備を行います。それを基礎にして、自然災害の軽減、地球環境の保全、資源・エ ネルギーの開発に関する技術開発を行い、これらに関わる諸問題の総合的解決に貢献す る研究を推進します。 産総研の科学基盤研究の一角を占める社会基盤 として、資源・エネルギー開発や環境問題などの解 (地質) ・海洋分野は、2研究センター(深部地質 決、地下空間の利用に資する研究開発も行ってい 環境研究センター、活断層研究センター)と2研 ます。上記の研究ユニット群と支援部門は研究コー 究部門(地質情報研究部門、地圏資源環境研究部 ディネータを代表とする「地質調査総合センター 門)が研究を担い、地質調査情報センターと広報 (Geological Survey of Japan) 」のもとに連携し、 部地質標本館が研究を支援しています。本研究分 国内・国外に対して、 「地質の調査」に関する国家 野は国の業務として経済産業省が担当する「地質 代表の役割を果たしています。 の調査」を実施することを最も重要なミッション と位置づけています。また、 「地質の調査」を基礎 社会基盤(地質) ・海洋分野の特徴 本分野の研究は以下の特徴を持っています。 ¡研究対象は複雑系である地球システム(地圏・ 水圏)という「場」です。 ¡地球の過去及び現在の地球システムを理解して 情報化し、その将来変動を科学的に予測し、問題 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 解決に必要な基礎的資料を提供します(図1) 。 工学(地盤工学、 ¡地球科学を共通的研究基盤とし、 地震工学、資源工学、地殻工学、海洋学)的手法 を取り入れた本格研究を展開します。 複雑な地球システムが抱える諸問題を解決する ます(図2) 。地質情報の高度利用、大都市地域平 ためには、従来の学問領域で対応するには限界が 野部地下地質、土壌汚染、海洋生体機能利活用など あります。分野内及び分野間の融合的研究を積極 の研究について研究ユニット間の融合的共同研究 的に進めていくことが今後重要であると考えてい として実施しています。 Field 図1 安心安全で持続可能な社会の実現に向けて 環境・エネルギー 土壌・地下水汚染 地中熱利用 ガスハイドレート メタンサイクル 地球温暖化 高 高精度地下探査 探査技術 探査 沿岸・海洋環境保全 ナノテク・ 材料・製造 自然災害・地球環境 境 モニタリング技術 術 極限材料開発 発 31 ライフサイエンス 海洋生物資源 地質・海洋 極限環境微生物 物探索 ���利用技術 地球標準物資 地球シミュレーション ン 地球物質測定・計測 計測技術 情報通信 計測・標準 白字:取組中の課題 青字:重点化課題 図2 社会基盤(地質) ・海洋分野の研究領域 公的役割をしっかりと認識し、社会的要請への積極的対応 産総研の公的役割は今後ともいささかも変わる 役割は一層多くなってきていると認識しています。 のではなく、国民・社会の期待に積極的に応えてい 得られた科学的知識を適切にそれを必要とすると くことが必要と考えます。資源の開発や地球環境 ころへ伝え、それが様々な判断に役立てられるこ 問題はもとより、大規模な自然災害など、全地球的 とによって初めて、私たちが社会に貢献したこと に取り組まねばならない課題に対する公的機関の になると考えています。 Geology & Marine Science 社会基盤 (地質) ・海洋分野 顧客を意識した研究の展開と地質災害発生時の迅速な対応 本分野では、安心・安全で、持続可能な社会構築 層処分の安全規制への貢献 に貢献することを目標に、常に顧客を意識した研 ¡事業者への技術及び技術情報の提供 究展開と、地震・火山・土砂災害等の大規模地質災 資源の調査・評価・開発技術、地圏開発・地圏環境、 害発生時における迅速な対応をすることが重要と 沿岸環境保全技術 考えています。 1)顧客に提供する研究成果の特徴 2)大規模地質災害発生時における緊急 調査の実施と迅速な情報提供 私たちが顧客に提供する研究成果には以下の2 地震・火山噴火・土砂災害等の大規模な地質災害 種類があります。 発生時には、地質調査総合センターの緊急調査体 ¡行政・国民・社会への提言・提案 制のもとで迅速に現地調査を実施し、効果的に災 地質情報の整備・提供、地震・火山噴火予測と防 害対策に役立てられるよう、現象の科学的情報を、 災対策への貢献、環境変動の評価・予測による地球 国、地方自治体、関連機関等に速やかに提供します。 規模環境問題への貢献、高レベル放射性廃棄物地 Field 国際的研究展開 32 産総研は地球規模や国際的な問題解決のため、 際陸上科学掘削計画)等の大規模国際共同研究へ 「地質の調査」の国家代表として、地質調査総合セ の貢献を重視しています。また、地理的・経済的に ンターを通じて、欧米先進諸国の地質調査機関と 関係が深い東・東南アジア地域との研究交流は、研 の二国間研究協力や国際機関との連携を、CGMW 究コーディネータが常駐副代表をつとめる政府間 (世界地質図委員会) 、ICOGS(世界地質調査所会 組織CCOP(東・東南アジア地球科学計画調整委 議) 、UNESCO等を通じて積極的に行います。最 員会)を通じた活動を一層強化します。 近ではIODP(統合国際深海掘削計画) 、ICDP(国 地質情報の統合化・共有化とフロンティア研究の推進 持続発展可能な社会実現のためには、地球が資 います。しかし、既存の技術で得られる情報の統合 源やその空間的広がりの上でも有限であることを 化だけで期待に答えることが出来るとは限りませ 正しく受け止め、社会の様々の行動判断の基礎に ん。的確に将来を予測し、必要なところに科学的判 おくべきと考えます。そのためには我が国の国土 断を伝え、適切な提言を行うためには、未だ地球シ の地質情報はもとより、グローバルな地球観測・調 ステムの理解は不十分であると思います。情報の 査情報と有機的に連携した情報管理システムが構 統合化という基盤的整備と並行して、大規模な地 築が必要です。情報の統合化・共有化を進めること 球のフロンティア研究への貢献も必要と考えてい により、情報品質の向上につなげていきたいと思 ます。 最近の研究の中から 1)活断層の研究 達成されました。調査結果は地質調査総合センター 活断層に関する研究は活断層研究センターにお から「活断層・古地震研究報告」として毎年着実 いて、重点的かつ組織的に実施しています。国の地 に報告されています。国際共同研究なども積極的 震調査研究推進本部が決定した全国主要活断層98 に展開し、海外での調査研究成果をもとにした活 については、中核機関として自治体と分担して計 断層評価技術の高度化を目指す研究が展開されて 画的に調査を実施しており、初期の目標は順調に います(図3) 。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 2)火山の研究 プロジェクトの最大の事業である「火道掘削」を 火山に関する研究は、国の火山噴火予知計画に 成功させました。 基づき、地質情報研究部門を中心として、活動的火 山の形成史、噴火履歴などの地質学的・年代学的研 3)土壌汚染調査・評価・管理手法の開発 究及び噴火機構、マグマ供給系のモデル化研究な 工場跡地等の土壌・地質汚染が近年社会問題化 どを分担しています。2000年6月から始まった三 しており、汚染地域の迅速な把握と修復に対する 宅島火山活動の研究では、気象庁等のと共同で火 技術開発が要請されています。このため、産総研の 山ガス観測及びヘリコプターからの活動観測を継 地質、環境分野の関係ユニットが横断的に連記し 続し、マグマ上昇ガスモデルを構築して世界的に て、土壌・地質汚染地域の総合的な調査・分析、低 も高い評価を得るとともに、成果が具体的に三宅 環境負荷型浄化、モニタリング、リスク管理、等の 島全島避難や帰島の判断のための基礎的資料とし 総合的な研究開発を進めています。また、各要素技 て行政に活用されています。雲仙火山については、 術について得られた成果は、実用化を視野に共同 平成11 年度に開始された文部科学省科学技術振 研究や新規課題の立ち上げに努めています(図4) 。 Field 興調整費の科学掘削プロジェクトを主導し、この 33 図3 活断層の調査研究 浄化対策技術 ●重金属洗浄抽出除去技術 ●重金属耐性・蓄積植物の探索 浄化目標の 設定及び評価 含有量、 化学形態、 土壌データ リスク管理 対象範囲・ 物質等 モニタリング・ モデリング技術 ●重金属拡散モニタリング ●リスク軽減効果の評価 調査・分析指針の 提供 帯水層や土壌物性の データ 対象物質と 対策効果 調査分析技術 ●汚染現場の地質調査・現場分析 ●有害元素の自然レベル調査 図4 土壌汚染調査・評価。 ・管理手法の開発 Geology & Marine Science 社会基盤 (標準)分野 Field 世界共通の「ものさし」 研究コーディネータ:小野 晃 34 産業技術の発展や国際市場での円滑な経済活動を支え、社会の安全を守るために、計 量標準の研究・開発・供給、計量器の検定、計量にかかわる国際対応や研修などを行っ ています。 計量標準と計測技術及びその標準化はあらゆる ① 試験計測データが国際的に認知されて、技術的 科学技術活動、生産、サービス、社会生活において 障壁のない自由な国際通商が促進され、また我 最も基本となる技術基盤であり、国が一元的、組織 が国の基準認証制度が円滑に運用されること。 的、効果的に提供することが要請されています。産 ② 我が国オリジナルでレベルの高い製品や技術が 業界、規制当局、消費者等が客観的・科学的な根拠 適正に評価されて、国内外の市場に円滑に受け に基づいて適正な試験計測データを取得できるよ うに、計量標準、標準物質、計測技術の基盤を整備 入れられること。 ③ 汚染物質の濃度が正しく認識されて環境が適切 することを目的としています。 に保全され、また医療検査の妥当性や食品等の その効果としては主として次の3点が期待され 安全性が適確に認識されて国民の安心・安全を ています。 高めること。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 社会基盤(標準)分野の概要 件、基準器検査は約2393件、型式承認は約66件行 物理標準、標準物質について標準供給委員会を開 いました。同時に国家計量標準の相互承認のため 催運営し、供給体制の整備推進を行いました。また に国際比較を進め、また国際基準に準拠して標準 当初第1期中期目標期間に新たに158種類の計量 供給のための品質システムの整備を進めました。 標準・標準物質の供給を開始する目標を掲げてい 国際関係ではメートル条約と国際法定計量条約に たところ、産業界からの早期供給開始の強い要請、 おける活動で我が国の責務を果たすと同時に、我 知的基盤整備特別委員会からの前倒しの供給開始 が国やアジア各国の計量技術者に対し教習の機会 の要請があり、これを受けて産総研として研究資 を提供しました。なお、世界的な産業構造の変化に 源の重点配分・早期供給努力を行ったことにより、 伴い、バイオ・環境・医療・食品等の分野における 第一期の数値目標を上方修正して新たに200種類 計量標準および標準物質の早急な整備が社会的に の供給を行う目標を掲げました。平成15年度末で、 強く求められつつあります。それに伴って、オール そのうち192種類の供給が可能になり、第1期終 ジャパン体制での標準に関する意見交換・調整を 了時点では目標を上回る成果が期待されます。 行う場である国際計量研究連絡委員会の強化が急 平成15年度の実績としては、物理標準約27件及 務ですが、平成15年度は懸案であった厚生労働省 び標準物質約34件の供給を開始しました。また特 からの正式委員招致も実現し、省庁を超えた体制 定二次標準器の校正は約69件、依頼試験は約137 整備を着実に進捗させることができました。 Field 計量標準に関しては新たに標準供給を開始する 35 標準物質 Standards & Measurement Technology 社会基盤 (標準)分野 社会基盤(標準)分野の成果 研究開発面での成果例としては、 しました。これは、基礎物理定数の決定につなが ①シリコン結晶の密度の絶対測定により、図に示 り、国際レベルの波及効果も極めて大きいもの です。 Field すようにアボガドロ定数を世界最高精度で決定 36 X線結晶密度法によるアボガドロ定数の測定結果の推移 レーザー干渉計 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 ②耳式体温計の正確な校正のために、国際温度目 ③アセチレン分子の光吸収飽和現象を利用した光 盛に準拠した高精度の黒体放射の実現により、 周波数標準器を開発し、従来の波長計に比べて 世界最高水準の不確かさ(30mK程度)で輝度 1000倍以上高精度にレーザの波長を決めるこ 温度目盛を実現しました。写真に示す耳式体温 計校正用黒体炉を海外の標準機関に緊急貸与し、 アジアでのSARS感染の拡大防止に貢献しまし とが可能になりました。 ④高濃度オゾン連続供給装置を開発し、大面積極 薄シリコン酸化膜(数nm)作成に成功しました。 Field た。 37 耳式体温計校正用黒体炉 他分野との間の融合研究として、 ①ポストゲノム研究等で必要不可欠な分析機器で ①10K冷凍機で動作可能な32768個のNbN/TiN/ あり、従来定性分析のみ可能であった質量分光 NbNジョセフソン素子の作成に成功し、世界を 法を定量分析に変革するための標準機器を構築 リードしました。今後、電圧標準として成果を世 界にアピールすることが期待されます。 する研究、 ②生体を構成する重要な“要素”である生体物質・ ②今後有望な半導体材料である炭化ケイ素の酸化 生理活性物質、タンパク質、DNA、細胞の各レ に高濃度オゾンを用いて酸化し、デバイス品質 ベルにおいて産業に必要な標準化や標準物質の の酸化膜の作成に成功しました。 研究開発を開始しました。 また、 Standards & Measurement Technology ライフサイエンス分野 生命情報科学研究センター Computational Biology Research Center 研究ユニット長'秋山 泰 URL: http://www.cbrc.jp/ E-mail: [email protected] Unit 研究の概要 当研究センターでは、生命情報科学(バイオイ 身とする研究者と、生物学・生物物理学の出身者、 ンフォマティクス)の方法論を通じて、ゲノム配 さらに企業研究者も加えた学際的なチーム作りを 列情報から、タンパク質分子の立体構造・機能、細 進めています。新しい方法論を切り開くために、最 胞・組織間の相互ネットワークにいたるまでの幅広 新の情報数理技術の新しい適用法を常に模索する い生命現象の解明と産業的利用を目指しています。 とともに、世界最大級の計算環境(BlueGene/L 我が国における生命情報科学研究の中核拠点とな 8192プロセッサ等)を活用した大規模で網羅的な ることを目指し、計算機科学・数学・計測などを出 研究開発に力点を置いています。 代表的な最近の研究成果 38 タンパク質の配列情報から立体構造を予測する 認識(GR/H)」部門で、世界200チーム以上の参 システムFORTE-SUITEを開発しました。 加者の中で第3位の予測成績を達成しました。ゲ この技術の中核は、構造予測をしたいタンパク ノム解析がますます加速する中で、自動的なタン 質の類縁配列プロファイルと、構造既知タンパク パク質の構造及び機能予測手法として、広範囲の応 質の類縁配列プロファイルとを、相関係数を類似 用が期待されています。 性尺度として精密にアラインメントするFORTE 法と呼ぶ独自アルゴリズムを開発した点にありま す。これにより遠い類縁関係しかないタンパク質 の情報も活用して、高感度に候補構造を得られる ようになりました。類似性尺度の設計にも工夫を 凝らしましたが、構造既知タンパク質やその部分 構造に関する配列プロファイルを大量に作成し、 並列計算技術により頻繁に更新している点も大き な強みです。 FORTE-SUITEシステムは、FORTE法で得ら れた複数の候補構造を出発点として、側鎖構造の モデリングを行い、適切な構造モデルが得られる までの試行錯誤を支援します。 2年に一度、国際的な立体構造予測コンテス トCASPが開催されます。2004年に開催された CASP6では、当センターのチーム( “CBRC-3D” ) がFORTE-SUITEを用いて参加し、 「フォールド 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 Sor45タンパク質の予測構造(折線)と実際構造(曲線) ライフサイエンス分野 生物情報解析研究センター Biological Information Research Center 研究ユニット長'渡辺 公綱 URL: http://unit.aist.go.jp/birc/index.html E-mail: [email protected] TEL: 03-3599-8102 研究の概要 生物情報解析研究センターは、大量のゲノム情 パク質の立体構造解析やヒト完全長cDNAの機能 報に含まれる生物情報の取得、取得に関する新技 解析、ヒトゲノム統合データベースの構築)を中 術の開発、取得した情報の整理及び統合を生物科 心としたタンパク質機能解析を実施し、知的財産 学の立場より推進する事を目的としております。 権の取得やデータの公開等を通じて、成果の速や 特に、ポスト・ゲノムシーケンス研究に重点を置き、 かな産業化を目指しています。 Unit 我が国が世界に対して優位性を持つ分野(膜タン 代表的な最近の研究成果 当センターがリーダーシップをとり、2002年8 していきます。 月25日∼9月3日に、世界約40機関より約120名 また、生体分子の動的な立体構造のシュミレー の研究者が当センターに集まり、世界の7つのセン ションと自由エネルギー計算を目的とした、従 ターで得られたヒト完全長cDNAのアノテーショ 来よりも効率的で汎用性が高いソフトウエア ン(情報付加)を行うH-invitational を開催し、そ prestoXを開発し、2004年12月6日に公開しまし れに基づいたデータベース(H-inv. DB)を世界 た。このソフトウエアは、蛋白質のモデリング、蛋 的に公開しました。その継続として2004年9月に 白質̶薬物低分子のモデリング、薬物ドッキング・ 疾患関連遺伝子の網羅的なアノテーションを行う in silicoスクリーニング、膜蛋白質の計算などに広 H-invitational Disease Editionを同様に主催しま く応用できます した。それらを統合したデータベースを逐次公開 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 39 ライフサイエンス分野 ヒューマンストレスシグナル研究センター Human Stress Signal Research Center 研究ユニット長'二木 鋭雄 URL: http://unit.aist.go.jp/hss-center/index.html Unit 研究の概要 現代はストレスの時代といわれ、実際、我々は常 ころの健康まで脅かされています。当研究センター に多種多様なストレスにさらされています。不安、 では、ストレスを広く生体への刺激、シグナルとと 怒り、過労、騒音など、社会・人間生活に伴うスト らえ、ストレス科学の進展、技術開発について国際 レスをはじめ、ダイオキシン、ホルムアルデヒド、 的に先導的役割を果たすとともに、ストレスが関 環境ホルモンなどの有害化学物質、ウィルス、細菌、 わる総合健康産業の創生、発展に寄与することに 紫外線などのストレスに我々の身体のみならずこ 全力を注いでいます。 代表的な最近の研究成果 40 細胞、動物、ヒトを用いたストレス負荷実験を行 定に留まるだけではなく、それをより迅速、定量的 い、ストレスに対する応答をゲノミクス、プロテオ に測定するデバイスの開発も並行して進めていま ミクス、メタボロミクスなどの諸技術も応用して す。現在までの成果として、ストレスマーカー測定 解析し、ストレスマーカーの同定に取り組んでい 用のLab-on-a-chipなどがあります。最終目標はス ます。既に何種類かのストレスマーカーの同定に トレス疾患の新規診断、予防、治療法の開発、ひい 成功し、現在、詳細にその有効性の検証を進めてい ては生活の質(QOL)を高める総合健康産業の創生、 ます。当研究センターの特徴として、マーカーの同 発展につなげることです。 試作した石英チップの写真とヒト唾液試料のNO迅速 アッセイ例 多動性モデルマウスの作成 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 ライフサイエンス分野 糖鎖工学研究センター Research Center for Glycoscience 研究ユニット長'地神 芳文 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/rcg/index.html [email protected] 029-861-9484 029-861-9487 研究の概要 糖鎖工学はポストゲノム時代に我が国が優位に た。この資産を有効に活用した糖鎖工学研究開発 立っている研究領域です。当研究センターでは、 を行っています。当研究センターでは世界的レベ いち早くヒトの糖鎖合成関連遺伝子の網羅的解析 ルにある我が国の糖鎖工学研究の中核的研究機関 (NEDOプロジェクト)に取り組み、200以上の を目指すとともに、糖鎖工学に立脚したバイオテ クノロジーの実用化を推進していきます。 Unit ヒト糖転移酵素遺伝子ライブラリーを作成しまし 代表的な最近の研究成果 ¡ヒト糖鎖遺伝子(GG)プロジェクトで新規遺伝 識別に有用なことを示しました。 子(15種類)の糖鎖合成への関与を確認したほ ¡細胞壁を特異的な作用標的部位とする新規な坑 か、基質特異性を解析した5遺伝子についてノッ 真菌剤の開発に有用な知見を得るため、酵母細 クアウトマウス個体を樹立しました。また、この 胞壁に局在するGPI型糖タンパク質の生合成に プロジェクトの成果をデータベース(GGDB) 関与するGPI7遺伝子の機能を解析し、この遺伝 として一般に公開しました。 子が出芽酵母の細胞分離に必須な機能を持つこ ¡MSn法を用いる質量分析により、糖鎖の位置と とを明らかにしました。 アノマーの識別、分岐構造や立体異性の判別な ¡磁性ビーズを用いる新規な固定化糖転移酵素の ど糖鎖構造解析の諸問題を解決できることを明 調整法など糖鎖自動合成装置の実用化に有用な らかにし、酵素による糖鎖および糖ペプチド標 技術を開発しました。また、新規な糖ペプチド合 準品を調整して、そのMSn解析データの収集を 成法や切断型リンカーを持つプライマーの開発 加速・充実させました。 などを融合して複雑な糖ペプチドが約1週間で ¡レクチンと糖鎖との相互作用を迅速に定量解析 合成可能なことを示しました。 する試作機を用いて、目標(100糖鎖と100レ ¡細胞間相互作用や分化・発生に特徴的な糖鎖合 クチンの相互作用)の約半分の解析を終了しま 成に関与するβ6GlcNAc転移酵素が果たす役割 した。また、エバネッセント励起蛍光検出法を導 とその遺伝子発現制御機構を解析し癌細胞の組 入したレクチンアレイを開発し、糖鎖の迅速な 織浸潤との関連を明らかにしました。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 41 ライフサイエンス分野 年齢軸生命工学研究センター Age Dimension Reseach Center 研究ユニット長'倉地 幸徳 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/adrc/ [email protected] 029-861-2702 029-861-2702 Unit 研究の概要 42 当研究センターは、生理反応の年齢軸恒常性と 業応用へ貢献します。これらの研究活動を通して、 その調節分子機構の独創的基礎研究分野の開拓を 少子高齢化が急速に進む我が国産業社会の活性を 主に、得られる知識から有用産業技術開発の基盤 高め維持していく為の基盤強化に資するものであ となる「年齢軸工学」新ジャンル開発を進め、産 ります。 代表的な最近の研究成果 この一年間における重要なセンター成果を要約 に報告しましたが、本年度更にヘプシンが前立 します。 腺がんマーカー PSAに至るネットワーク機能 (1)年齢軸恒常性調節機構確立に関するセンター の極めて重要な位置を占める事を解明、画期的 ミッション研究では、最初の年齢軸遺伝子調節 ブレークスルーとなりました。前立腺がんはが 分子機構であるASE/AIE型年齢軸遺伝子調節 んと年齢軸の関係解析モデルとして優れていま 分子機構の精査を行い、ASE及びAIEの機能発 す。 現に最も重要な働きをする核内結合蛋白質の同 (4)プロトロンビン遺伝子発現の詳細な解析を行 定に関して極めて重要な成果をあげ、年齢軸工 い、RNAスプライシングとそのエンハンサー 学開発にも大きなインパクトを与えました。 及びポリ(A) 付加反応がリンクして初めて正常 (2)年齢軸恒常性調節機構の俯瞰的理解に向けた大 型研究課題の第一段階としてマウス肝臓遺伝 子及び蛋白質発現のエージ軸変動の網羅的解析 に起きる新規分子機構を解明し、血栓危険因子 となる多形の作用機序を解明しました。 (5)さらに、神経細胞グルタミン酸取り込み因子 を展開、生理反応恒常性を支える極めてダイナ Arl6ip-1の同定、てんかんモデル動物作成、 ミックな分子機構解析に成功、新しい仮定創出 NOD2依存クローン病発症機構解明、3次元軟 の基盤を築きました。 骨組織構築技術開発、新規DNA・蛋白質結合様 (3)II型膜プロテアーゼ・ヘプシンは高い年齢依存 式解明、FGF-13の機能、FGF-16分泌機序及 性を持つ前立腺がんの初期に高発現する事を先 びFGFと糖鎖に関する成果等が得られました。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 ライフサイエンス分野 バイオニクス研究センター Research Center of Advanced Bionics 研究ユニット長'軽部 征夫 URL: http://unit.aist.go.jp/rcab / E-mail: [email protected] TEL: 029-861-2987 研究の概要 ためのプロテインシステムチップの開発、糖鎖系 測できる革新的なデバイスを世界に先駆けて開発 情報分子を活用した有害蛋白質検知チップの開発、 することを目標に、デバイスの開発と実用化に向 細胞のセンシングとマニピュレーション技術の開 けて研究を行っています。現在、タンパク質分離の 発を行っています。 Unit 当研究センターでは、化学物質を超高感度に計 代表的な最近の研究成果 現在のタンパク質解析では、二次元ゲル電気泳 電気泳動を同一基板上で行うことから、短時間連 動によりタンパク質を分離した後、これを取り出 続的に分離を行うことができます。本プロジェク して質量分析を行うという方法が一般的です。し トは、平成14年度から17年度の予定でNEDO健康 かし、この分離同定に長時間を要するために、研究 維持・増進のためのバイオテクノロジー基盤研究 効率が低く、かつ自動化が困難であるという問題 プログラムに係る「バイオ・IT融合機器開発プ 点があります。当研究センターでは、流路内表面を ロジェクト/ DNAタンパク質等解析システム及び 高分子膜でコーティングすることにより、パフォー デバイス開発」 として行われています。この研究は、 マンスの高い電気泳動デバイスの開発に成功して 産総研、東京工科大学、シャープ、凸版印刷、藤沢 います。これは内表面を修飾することにより、電気 薬品の5者により、東京工科大学片柳研究所内の 浸透流と生体試料等のサンプルの吸着を抑えるこ 産総研分室で集中的に行われています。 とができるからです。また、異なる分離モードでの 図1 プロテインシステムチップの概念図 図2 試作システム 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 43 ライフサイエンス分野 ジーンファンクション研究センター Gene Function Research Center 研究ユニット長'多比良 和誠 URL: TEL: http://unit.aist.go.jp/gfrc/index.html 029-861-3015 Unit 研究の概要 最近ヒトの遺伝子数が2∼2.5万であるとの報告 研究センターでは、こうした問題を解決するため がされましたが、ここから発現されるタンパク質 の独創性の高い基礎・応用研究を目指します。外国 の数は10∼20万種類以上になると推定されます。 の技術に頼りがちなバイオの分野でポストゲノム 個々の遺伝子の機能を調べるための当該遺伝子の 時代に通用するMade-in-Japanの独創性の高い基 ノックアウト、ポジショナルクローニングなどの 礎・応用技術を確立し、その有用性を実証します。 従来の方法は大変な労力と時間とを要します。当 代表的な最近の研究成果 44 基礎研究としては(Ⅰ)核内で遺伝子発現を制 なる二本鎖RNAによって引き起こされる細胞のイ 御する“小さなRNA”の発見、 (Ⅱ)キネシン分 ンターフェロン応答を避ける技術の開発、 (Ⅲ)独 子モーターの二足歩行モデルの証明、 (Ⅲ)動物細 自に開発したキメラリプッレッサーによる“花粉 胞の寿命や不死化に関与するタンパク質の発見と の飛ばない植物” “有用物質を産生する植物”の開 その機能解明、 (Ⅳ)リボザイムを用いた独自のジー 発、 (Ⅳ)免疫学的に感知されない“ステルス細胞” ンディスカバリー技術による筋細胞分化、アルツ の開発、 (Ⅴ)染色体には取り込まれずに細胞内 ハイマー病発症、癌転移などの機構解明などの成 果をCellやNature等の一流の科学雑誌に多数発表 で安定に存続するRNAウイルスベクターの開発、 (Ⅵ)抗癌作用を示す抗体の開発、 (Ⅶ)細胞表面 しました。 の受容体タンパク質に特異的で安定に結合する人 応用技術開発としては(Ⅰ)siRNAの標的配列 工ペプチドリガンドの創製技術の開発等で成果を を予測するプログラムの開発、 (Ⅱ)長い配列から 収めています。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 ライフサイエンス分野 人間福祉医工学研究部門 Institute for Human Science and Biomedical Engineering 研究ユニット長'斎田 真也 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/ humanbiomed/index.html [email protected] 029-861-9488 029-861-6636 高齢社会においても安心で安全な生活を実現す ¡高齢者の感覚知覚特性データの収集と環境評価 るためにはさまざまな問題を克服する必要があり 法の開発に関する研究 ¡人間生活における認知 ます。当研究部門では、 人間生活の質的向上(QOL) 行動モデル化の研究 ¡生活・作業・生理情報の長 を共通目標に、使いやすさを追求する人間生活工 期蓄積・理解による生活支援技術の研究 ¡福祉 学分野、生活の自立を支援する福祉工学分野、健康 機器開発技術に関する研究 ¡生体機能代替シス を求める医工学分野の3分野を対象に、次の6課題 テムに関する研究 ¡医用計測・治療支援機器技 を中心に研究開発を推進しています。 術に関する研究 Unit 研究の概要 代表的な最近の研究成果 現在の我国は、若い人からお年寄りまで様々な これまで、超音波診断装置は、医療従事者が診断 健康上の問題を抱えています。高齢者の寝たきり、 を行なう際に使用するというのが常識であり、医 中高年齢者の生活習慣病、小児の肥満など問題を 療メーカーが医療従事者に提供する装置という認 挙げるときりがありません。これまでは体重を量 識の下で開発されてきました。本装置は医療以外 ることにより健康管理に努めてきました。また、最 のフィールドへの展開と位置付け、医療機器開発 近では、体脂肪率を計る機能を有する体重計が開 のパラダイムシフトに繋がることを期待していま 発され、体組成バランスという観点からの健康管 す。 理が定着してきました。しかし、数値のみで評価さ れる脂肪率では、情報としてまだ不十分ではない かと考えています。 当研究部門では、体組成評価を目的とした簡易 型超音波画像計測装置を開発しました。この装置 は、医療用の超音波診断装置の原理を応用してお り、脂肪、筋、骨といった体の一部をビジュアルで 観察することができます。画像は、高い精度や説得 力、数値では得られなかった内部組織の質的情報 を被計測者に提供することができます。我々は、こ の画像に基づく新しい健康支援: 「ビジュアルヘル スプロモーション」を新しく提案します。 簡易型超音波画像計測装置 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 45 ライフサイエンス分野 脳神経情報研究部門 Neuroscience Research Institute 研究ユニット長'岡本 治正 URL: E-mail: TEL: FAX: http:// unit.aist.go.jp/neurosci/japanese/japanese.htm ns-offi[email protected] 029-861-6481 029-861-6482 研究の概要 まで様々なレベルでの研究を進め、それらから得 もに、それに基づいて、安心・安全で質の高い生活 られた研究成果をもとに、脳内分子、細胞活動のイ を実現するための技術基盤の確立を目指し産業の メージング・計測技術の開発、リハビリ促進等のた 振興に資する研究を展開しています。具体的には、 めの脳組織、機能の修復技術の開発や人工小脳と 生体分子レベルから脳の高次情報処理機能に至る いった脳機能の工学的実現を目指しています。 Unit 当研究部門では脳の構造と機能を理解するとと 代表的な最近の研究成果 46 当研究部門の構造生理研究グループでは、生体 つ短時間に行えることを見出しました。この様に 分子を材料として構築された高度な情報処理機 現代情報科学をバイオに大幅に導入することが鍵 械である脳を、バイオと情報学の融合技術によっ となり、遺伝子を改変することでマウスの学習能 て研究しています。具体的には、脳のシグナル伝 力が向上することで有名なIP3受容体の構造が解 達を担うたんぱく質複合体の構造を、電子顕微鏡 けました。本研究成果は、今後脳内での情報処理機 と画像処理によって決定する単粒子解析法を開発 構の解明や、タンパク質の構造からそこに結合す し、世界に先駆けて脳での学習に重要なIP3受容 る臨床薬の開発に役立つことが期待されます。 体チャンネルの詳細構造を決定しました(J. Mol. Biol.336, 155-164,2004) 。本研究は京都大学藤 吉研究室と東京大学御子柴研究室との研究協力で 行われ、透過型電子顕微鏡では極めて微かな低コ ントラスト・高ノイズの画像としか観察できない 未変性のタンパク質について、画像情報処理技術 を駆使し、高精度の3次元構造の決定を可能にし ました。即ち電子顕微鏡画像より切り出した、さま ざまな角度を向いている数千から数万のタンパク 質の単粒子画像を、位置や角度毎に分類し、それぞ れの分類毎に加算平均処理をすることで、バック ノイズを減少させタンパク質の3次元構造を決定 します。そのため画像分類の精度が何より重要と なります。我々は人間の脳の機能を模したニュー ラ ル ネ ッ ト 型 情 報 処 理 で あ るGrowing Neural Gas Network(GNG)を画像用に大幅改良すること で、膨大な単粒子画像の分類を極めて高精度にか 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 電子線による全体構造にIP3結合部位のみの部分構造 (Nature, 420, 696-700,2002)をあてはめた ライフサイエンス分野 生物機能工学研究部門 Institute for Biological Resources and Functions 研究ユニット長'巌倉 正寛 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/brf/ [email protected] 029-861-6022 029-856-4055 この地球上には何千万種とも何億種ともいわれ 何にして人類のために役立てるかが当研究部門に る多種多様な生物がいますが、それらの多くは21 課せられた大きな課題です。当研究部門では、大き 世紀の人類にとって有用なものや、地球保全に役 な可能性をもつ生物資源・生物機能を利用するこ 立つものであるために、未知の可能性を秘めた生 とで“持続可能な循環型社会の実現”に貢献する 物資源とみなすことができます。発酵産物、酵素、 ことを最終目標とし、その具体的なアプローチと 抗生物質、生理活性物質、そして種々の医薬品など してバイオ(プロセス)産業の発展に役立てるよう も微生物をはじめとする各種の生物の働きによっ な技術体系の整備を目指します。 Unit 研究の概要 て作られます。そのような生物資源・生物機能を如 代表的な最近の研究成果 47 生物資源の発掘と言う観点では、昆虫の植物適 個のアミノ酸からなるペプチド「シニョリン」を 応が共生微生物に依存して変化することを突き止 設計し、これが、水溶液中で安定な立体構造を形成 め、これまでは昆虫の食性が遺伝子の働きで定まっ し、温度の変化に応じて立体構造の崩壊や再形成 ているものと考えられていたことを覆す重要な発 を起こすこと、すなわち、蛋白質としての性質を示 見を行いました。また、兵隊アブラムシが外敵を攻 すことを明らかにした。これは、知られている中で 撃するために、自身が作る消化酵素を毒に流用し 最小サイズの蛋白質といえる。 て、敵に注入していることを明らかにしました。 生物は体内時計の機構が有りますが、そのよう 生物機能の有効利用にはその分子メカニズムの詳 な体内時計を規定する遺伝子の一つper2の働きが 細な解明が重要ですが、蛋白質合成に重要な働き 食事行動により変化することから、食事の刺激が をするRNA合成酵素におけるCCA付加反応の詳細 体内の時計のリズムに影響を与えることを明らか なメカニズムを、同酵素とtRNAプライマーとATP にしました。これは、時差ぼけなどの生活リズム変 との三つの複合体のX線結晶解析及び変異解析に 調改善に対し、分子論的な観点から新たな指針を より明らかにしました。 与えるものです。 新たな生物機能を創出すると言う観点から、10 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 ライフサイエンス分野 セルエンジニアリング研究部門 Research Institute for Cell Engineering 研究ユニット長'湯元 昇 URL: http://unit.aist.go.jp/rice/index.html E-mail: [email protected] 研究の概要 融合することにより、セルエンジニアリングに関 術とナノテクノロジー、材料、情報技術を融合させ する技術革新を実現しようとして関西センターに た新しい技術体系です。当研究部門は、産総研設立 2004年4月に設立されました。当研究部門では、 時に設置された「ティッシュエンジニアリング研 細胞機能計測・操作技術、細胞・組織利用技術に重 究センター」と「人間系特別研究体」が発展的に 点化して研究を行おうとしています。 Unit セルエンジニアリングとは、従来の細胞工学技 代表的な最近の研究成果 48 細胞・組織デバイスの生産・利用技術の開発のた 進めています。 めには、細胞の分化を担っている遺伝子を解析・制 また、セルダイナミクス研究グループでは、生物 御することは重要な課題です。しかし、ヒトゲノ 発光のシステムの多様性に着目した「発光タンパ ムには分化に関与する多数の遺伝子が存在するた ク分子プローブ」 (図2)などを開発しています。 め、その相互関係を明らかにするためには、網羅的 これにより、細胞レベルの光⇔物質、光⇔情報、光 解析が必要です。そこで、細胞ナノ操作工学研究グ ⇔光変換・制御系を可能とする新システムを創製 ループでは新規な細胞チップ、トランスフェクショ し、細胞等で進行する機能変化を可視化し、それら ンアレイ(図1)を開発し、上記遺伝子群のハイ の情報を基にした細胞操作を可能とする技術開発 スループットスクリーニング技術の開発を行うと を進めています。 ともに、遺伝子のネットワーク解析等についても 図1 新規な細胞チップ 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 図2 発光プローブの発光スペクトル ライフサイエンス分野 ゲノムファクトリー研究部門 Research Institute of Genome-based Biofactory 研究ユニット長'水谷 文雄 URL: http://unit.aist.go.jp/righ/japanese及び http://unit.aist.go.jp/righ/english/index.htm E-mail: [email protected] TEL: 011-857-8537 FAX: 011-857-8915 研究の概要 当研究部門では、生物機能を利用した有用物質 生産技術を確立し、持続可能な社会の実現するこ とを目標として研究を進めています。すなわち、ゲ ノム情報を利用した物質生産技術の確立、未開拓 の開発 (2)タンパク質、核酸の構造・機能解析・制御およ び利用 の二点を重点課題として研究を進めています。 Unit の生物遺伝子資源の活用等を目指し、 (1)遺伝子組換え植物、微生物による物質生産技術 代表的な最近の研究成果 遺伝子組換え植物により、本来、植物が生産す ていませんでした。当研究部門の機能性タンパク ることが出来ない物質を作らせることができます。 質研究グループでは北海道近海の魚の筋肉中に不 この技術を利用すると、低エネルギー、低コストで 凍タンパク質が多量に含まれていることを見出し、 の、物質の量産が可能となります。例えば、動物細 大量精製技術を確立しました。現在、食品企業との 胞を使った物質生産系に比べて1/3000のコスト 共同研究により実用化を図っています。 で済むとの試算もされています。当研究部門の植 物分子工学研究グループでは、C型肝炎ウイルス やピロリ菌の感染予防、大腸ガンの抑制、抗菌活性 を持つウシラクトフェリンをイチゴに生産させる ことに成功しています(図) 。機能食品、健康食品 としての利用が期待されています。 また、食品等を凍結する際に発生する凍結濃縮 現象を抑制し、凍結前の内部構造を保持するよう に働く機能物質として、不凍タンパク質が注目さ れています。これまで不凍タンパク質は南極、北極 に生息する魚の血液から抽出されていたため、食 品への添加等の用途に応じるだけの量が確保でき 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 49 ライフサイエンス分野 単一分子生体ナノ計測研究ラボ Single-Molecule Bioanalysis Laboratory 研究ユニット長'馬場 嘉信 URL: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/sinmolbio/ 087-869-4104 087-869-4113 Unit 研究の概要 当研究ラボでは、ナノ計測技術、一分子計測およ 診断技術、1分子DNA解析技術の研究を進めてお びナノ微細加工技術を活かしてバイオナノデバイ り、ラボのアウトカムとして、がん細胞診断技術、 ス技術を開発し、バイオテクノロジーとナノテク 肥満予知診断技術、医薬品副作用診断デバイス、心 ノロジーの融合領域における新規産業創出に寄与 筋梗塞診断デバイス、生活習慣病予知診断技術、 することを目的としています。この目的を達成す 個人ゲノム解析技術など社会ニーズの高い製品化 るために、単一細胞診断技術、バイオナノデバイス ターゲットを明確に設定し、本格研究を推進します。 代表的な最近の研究成果 50 がん細胞を特異的に識別できるレクチンと量子ドットと呼ばれ おいては、量子ドットにタンパク質を融合させる新規技術を開発 るナノ材料とを融合させた新規材料を開発し、がん治療に応用で し、がん細胞の表面にある糖鎖を特異的に認識するレクチンと量 きる可能性を世界に先駆けて明らかにしました。この成果は、ア 子ドットを融合した材料を開発することに成功しました。この材 メリカの科学誌Nature Biotechnologyの11月号に掲載されまし 料を用いると、がん細胞と正常細胞を簡便・正確に識別すること た。 ができます(図1) 。 量子ドットは、半導体の無機材料でできた数nmの粒子状の物 さらに、これらの細胞に紫外線を照射し続けると、照射後60分 質で、紫外線をあてると強い蛍光を出すところから、細胞内の遺 で、がん細胞全体の15%が死んでしまうことが明らかとなりまし 伝子・タンパク質や生体内のがん細胞をイメージングできる材料 た。正常細胞では全く死にませんでした。量子ドットとレクチン として世界的に注目を集め、熾烈な研究開発競争が展開されてい が融合した材料では、レクチンが細胞表面に結合することで、が ます。当研究ラボにおいては、この量子ドットを簡便に合成する ん細胞表面にのみ量子ドットが存在し、そこに、紫外線が照射さ 手法と量子ドットとがん細胞を識別できる抗体やレクチンを融合 れると量子ドットは紫外線のエネルギーを吸収して蛍光を発し させた材料を合成する手法を新たに開発し、簡便に正常細胞とが ます。しかし、吸収されたエネルギーの一部は、量子ドット付近 ん細胞を識別できる技術を開発しました。さらに、量子ドットが に存在する酸素と反応して、活性酸素や1重項酸素などの生体に 選択的に結合したがん細胞に紫外線を照射するだけで、がん細胞 とって有毒な酸素種を発生させ、これらが、がん細胞にアポトー が死んでしまうことを発見し、量子ドットが分子イメージングだ シスを誘導し、殺してしまうと考えられます(図2) 。これらの実 けでなく、がんの治療にも応用可能であることを世界で初めて明 験結果は、細胞レベルの実験であり、今後、動物実験や臨床試験 らかにしました。 を積み重ねていくことが重要で、実際の臨床応用には、まだ課題 合成した量子ドットは、紫外線を照射すると緑色の蛍光を発す が多いが、量子ドットのようなナノ材料が、がん治療にも応用可 る直径3 nmのセレン化カドミウムの結晶です(図1) 。本研究に 能であることを、世界で初めて示した意義は大きいです。 3 nm 図1 開発した量子ドット(左)とがん細胞と正常細 胞の識別 がん細胞のみ選択的に蛍光を発している。 図2 ナノ材料ががん細胞にアポトーシス(細胞死) を起こすメカニズム 量子ドットとレクチンの融合材料ががん細胞表面に結合し、紫 外線を照射すると活性酸素が発生し、細胞死を誘発する。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 情報通信分野 次世代半導体研究センター Advanced Semiconductor Research Center 研究ユニット長'廣瀬 全孝 URL: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/asrc/ 029-849-1530 029-849-1533 研究の概要 当研究センターの研究者は、産業界25社および nm技術世代の半導体に必要とされる新技術開発を 17の大学研究室からの研究者と一体となって、半 成功させ、産業界と協力して実用化に結びつける 導体MIRAI プロジェクト(NEDO技術開発機構 ことを目指します。また、最先端の半導体技術研究 次世代半導体材料・プロセス基盤プロジェクト) 開発拠点として、45−32 nm以降の技術世代に拡 を推進しています。産学官の研究者・技術者の幅 張できる技術体系の構築を目的としています。 Unit 広い連携により、2010年に量産開始見込みの45 代表的な最近の研究成果 半導体MIRAIプロジェクトでは、次の5つのグ ループが研究開発を展開しています。 (1)高誘電率材料ゲートスタック技術グループ:極 (3)新構造トランジスタ及び計測解析技術グルー プ:薄膜ひずみSOI (Si-on-insulator) 基板の作 製技術を開発し、それを用いて微細トランジス 微細トランジスタ用高誘電率(High-k)ゲート絶 タの駆動電流向上を実現しました(図2) 。 縁膜の新堆積技術を開発し、窒素を添加した後 (4)リソグラフィ関連計測技術グループ:波長13.5 に酸素アニールを加えたHfAlON膜を用いたト nmの 極 端 紫 外 線(EUV光)を 用 い たEUV露 光 ランジスタで、低い漏れ電流と世界最高水準の 用マスクブランクの検査技術を開発し、高さ2 キャリア移動度を達成しました。 nmの位相欠陥検出に成功しました。 (2)低誘電率材料配線モジュール技術グループ:多 (5)回路システム技術グループ:遺伝的アルゴリズ 孔質シリカ材料の機械強度強化技術の新規開発 ムを用いて、集積回路(LSI)内部やLSI相互間の により、超低誘電率(Low-k)多孔質シリカを配 信号遅延や信号波形を自動調整する技術を開発 線層間絶縁膜に用いた銅配線構造の作製に成功 し、LSIの製造後調整により、大幅な動作速度 しました(図1) 。 向上や低消費電力化を実現しました。 図2 ひずみSOIウェーハ(左)とそれを用いて作製し たゲート長36 nmの微細トランジスタの透過電 子顕微鏡写真(右) 図1 作製した多孔質シリカ/銅配線構造の透過電子 顕微鏡写真 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 51 情報通信分野 グリッド研究センター Grid Technology Research Center 研究ユニット長'関口 智嗣 URL: http://www.gtrc.aist.go.jp/jp/ E-mail: [email protected] TEL: 029-862-6600 Unit 研究の概要 52 グリッドは情報資源やデータに対して高性能・ ける計算資源を提供するクラスタ計算機や超高速 高信頼・柔軟なアクセス手段により豊富な情報サー ネットワークの研究開発、また、グリッドを活用し ビスの選択肢を提供する基盤技術です。電気・水 たアプリケーションの実証的研究、さらに、グリッ 道・ガスなどと同様に、情報コンセントに接続する ドを実現するために重要なセキュリティと脆弱性 だけで必要な情報資源を利用できる新たな社会基 の研究など、グリッドのあらゆる面に対して研究 盤として期待されています。これを実現するため 開発に取り組んでいます。 にはネットワーク上に分散した異なる管理組織の 当研究センターにおいては、1)アジア太平洋 異なる情報資源群を動的に連携させてユーザに情 地域各国の研究機関と協調した国際的標準化活動 報通信サービスを提供する技術の開発が必要です。 の一端を担うこと、2)研究成果を利用可能なも これにより情報資源を統合し、より大規模で複雑 のとして実証的に利用者に提供していくこと、3) なシステム構成を利用した科学技術応用グリッド 産学官連携によるグリッド技術のビジネス展開を と、情報資源の共用による効率化でTCOの削減に 加速すること、以上を主な指針としています。平成 寄与するビジネス応用グリッドがあります。 16年1月時点では、職員、ポスドク、外部研究員、 当研究センターでは最新のグリッド用プログラ 派遣開発スタッフ合わせて総勢65名の研究者を擁 ミングツール、国際的な実証実験、グリッドにお するに至っています。 代表的な最近の研究成果 現在、グリッド技術の動向は、 「特定のグループ 理ソフトウェア「P3」といったグリッド基本ソフ における先端技術のクローズドな利用」から「オー トウェアを無償公開しています。 プンな実用化技術による社会基盤の形成」へ遷移 グリッド技術の標準化は、国際的標準化団体 しつつあります。当研究センターでは、先進技術の Global Grid Forum (GGF)にて世界規模で進めら 研究開発を進めると共に、グリッド技術の実用化 れています。当研究センターはGGFのスポンサー に向けて標準化、普及・啓蒙、実証実験などの活動 として活動を支援するとともに、様々な組織委員、 に取り組んでいます。主な成果として、グリッド WG/RGの共同議長として標準化提案を行いつつ データファームシステムソフトウェア「Gfarm」 、 国際的な活動に貢献しています。センターが開発 GridRPCシステムソフトウェア「Ninf-G」 、MPI してきたソフトウェアNinf-GはGGFの標準仕様の ライブラリソフトウェア「GridMPI」 、P2P分散処 推奨ソフトウェアとして取り上げられています。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 情報通信分野 デジタルヒューマン研究センター Digital Human Research Center 研究ユニット長'金出 武雄 URL: TEL: FAX: [email protected] 03-3599-8201 03-5530-2066 人間はほとんどの産業システムや製品にとって 再現し、その結果を提示する研究を一貫して行い 最も重要でありながら、最も理解されていない要 ます。人間機能モデルをベースに、人間機能に合わ 素です。人間はシステムの中でも“最も弱いリン せて製品を設計する研究、人間行動を観察し理解 ク”になっているのです。当研究センターでは、こ する研究、ロボット技術で人を支える研究、それら のリンクを埋めるために、人間の機能(生理解剖、 の基盤となる人間モデルのソフトウェアプラット 運動機械、認知心理)を観察し、それを計算機上に フォームを構成する研究を進めています。 Unit 研究の概要 代表的な最近の研究成果 携帯電話やマウスなど、手で直接扱う製品の人 53 間適合設計を支援する精緻な手のモデル−デジタ ルハンドの研究を行っています。右図上左は、いろ いろな人の手各部の寸法を計測・分析し、合成した 日本人を代表する手のサイズバリエーションモデ ルです。このようなさまざまなサイズの手による 物体操作をモデル化するために、モーションキャ プチャデータから正確なリンク構造・位置を推定 する技術を開発しています(右図上右) 。正確なリ ンク構造と、詳細な表面形状を組み合わせること で、しわまでリアルに再現するCGアニメーション を可能としました(右図下) 。現在、包装品メーカ やスポーツ用具メーカと具体的な共同研究を進め ています。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 情報通信分野 近接場光応用工学研究センター Center for Applied Near-Field Optics Research 研究ユニット長'富永 淳二 URL: http://unit.aist.go.jp/can-for.html Unit 研究の概要 54 次世代の超高密度光記録のための技術的課題を では、 「スーパーレンズ」と呼ばれる産総研独自技 克服することを手段として、近接場光を応用した 術を用いて100GBから1TBへ向けた超高密度光記 光記録方式が検討されています。当研究センター 録の可能性を中心に研究開発を行っています。 代表的な最近の研究成果 2004年度では、スーパーレンズの機能をさらに 出しレーザー波長405nmに強いプラズモン吸収を 改善したスーパーレンズ光ディスクの開発に成功 もつことから、効率的にプラズモン光による一層 しました。2003年度では実用化信号レベルである の信号増強が可能です。図1は60nm径のピット列 CNR>40dBを達成した最小ピット径が80nmでし を一秒間で3千万個記録したディスクの断面TEM たが、この一年で信号強度を維持したまま一挙に 写真です。酸化白金のレーザーパルス分解による その半分以下の37nmまで解像度の改善が図られ ピット(2nm程度の白金ナノ粒子を含む)列とディ ました。また、この高性能型のスーパーレンズディ スク上部に形成された約30nm径をもつ銀ナノ粒 スク上に、開発途上で新規形成法が開発された銀 子構造膜が確認できます。当研究センターでは、 ナノ粒子構造膜を形成し、プラズモン光増幅によ このように電子ビームを用いず、サブミクロン径 るさらなる信号増強効果を確認しました。この銀 のレーザースポットを用いて簡便なナノテクノロ ナノ粒子構造膜は高性能型スーパーレンズの読み ジー応用分野の開拓を行っています。 図1 60nmピット列を記録したスーパーレンズ光ディスク断面TEM写真 上部に直径30nm の銀ナノ粒子構造膜も確認できます。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 情報通信分野 システム検証研究センター Research Center for Verification and Semantics 研究ユニット長'木下 佳樹 URL: http://unit.aist.go.jp/cvs/ E-mail: [email protected] 研究の概要 とを目標として設立されました。数理的技法は、バ グ(情報処理システムの不具合)除去の際の手戻 テム開発における生産性および信頼性の向上に有 りを減らす上、実行テストでは検出困難なバグも 効であることを産業界に十分に説明し、我が国の 見つけやすいので、従来法を補う有力な手法とし 業界における標準的な検証法として採用させるこ て注目されています。 Unit 当研究センターは、システム検証の数理的技法 (形式的技法、formal methods)が情報処理シス 代表的な最近の研究成果 当研究センターでは学術的な価値観に基づく ンによって受理される言語間の集合演算の計算可 科学研究と、システム開発現場の価値観に基づく 能性についての結果を様々な等式のクラスに対し フィールドワークの二種類の研究テーマを設定し、 て与えています。一方、Chalmers工科大学と、構 両者の相互作用によって新しい科学技術活動を生 成的型理論に基づく定理証明支援系Agdaの開発に み出すことを目指しています。 関する共同研究を開始しました。Agdaへの他のソ フィールドワークでは、企業との共同研究を三 フトウェアのプラグイン方式の設計・開発をした 件遂行していますが、とくにこのうちの一件で、相 ほか、様相μ計算の証明支援系をAgda上で実装し 手先企業のソフトウェア開発に数理的手法を導入 ました。 する企業内の動きが出始めたのが注目すべき成果 また、 「システム検証の科学技術」シンポジウム、 です。 「CVS/AISTワークショップ」シリーズ、 「システ 科学研究では、2-CTLの充足可能性算法を考案 ム設計検証技術研究会」シリーズなどの催し物を し、これを用いてポインタシステムの述語抽象化 運営し、この分野の最新情報の集積に努めていま 方式を与えました。また、等式付木構造オートマト す。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 55 情報通信分野 知能システム研究部門 Intelligent Systems Institute 研究ユニット長'平井 成興 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/is/index.html is-weboffi[email protected] 029-861-5201 029-861-5989 Unit 研究の概要 人間の行う様々な知的な活動や物理的操作を支 ト、マニピュレーション、3次元視覚などロボット 援あるいは代行する、知能情報処理やロボティク の代表的課題に加え、ITと融合した新しいロボッ ス・メカトロニクスシステムに関わる技術を知能 トシステム、人間共存ロボットとその安全性に関 システム技術と位置づけ、その基礎原理、要素技術、 わる技術、屋外で働くロボット応用システムの研 システム化技術の研究開発に取り組んでいます。 究などを進めています。 具体的なトピックとして、ヒューマノイドロボッ 代表的な最近の研究成果 56 ヒューマノイドロボットが視覚機能を利用して 本モデルを開発しています。また、この基本モデル 階段の手すりをつかみながら大きな段差を上る機 の枠組みを分散オブジェクトの標準化団体である 能、狭い空間を潜り抜ける機能などの開発に成功 OMG に提案するための活動も開始しました。 しました。また、ヒューマノイドロボットの体内 ロボットの新しい応用分野として、ロボットを LANを想定した実時間イーサネット通信ライブ 用いたセラピーの研究開発を進めています。その ラリおよびその上で動作するCORBAのトランス 中でアザラシ型のロボット「パロ」を用い、国内 ポートプロトコルを開発しました。この成果を実 外の医療・介護機関等と連携した研究を行ってい 装した小型コントローラを産総研ベンチャーから ます。これらの成果に基づき、同ロボットを医療・ 販売する予定です。 介護機関等を対象として販売するベンチャーが平 ロボットを構成する様々な機能要素を一定の形 成16年9月20日、設立されました。 式でモジュール化し、このモジュールを用いるこ とで様々なシステムを容易に組み立てられるよう にするロボット要素基盤ソフトウェアに関する基 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 注)CORBA=Common Object Request Broker, OMG=Object Management Group 情報通信分野 エレクトロニクス研究部門 Nanoelectronics Research Institute 研究ユニット長'和田 敏美 URL: http://unit.aist.go.jp/nano-ele/index.html E-mail: [email protected] 研究の概要 急速かつグローバルに進展するIT社会の基盤 として行っています。これにより、 半導体デバイス、 となる情報処理デバイス(信号の演算、記憶、増幅、 スピンデバイス、超伝導デバイスにおいて技術ト 伝達、変換・検出、表示)技術について、革新的技 レンドを先取りした成果をあげるとともに、原理・ 術の創出を目指した新電子現象・材料の探索・解明・ 現象的に革新的な新機能デバイスや新機能材料の 制御に関する研究と、それらの成果を具体的にデ 創出を目指しています。 Unit バイスに応用することで産業に応える研究を両輪 代表的な最近の研究成果 当研究部門のスピントロニクスグループでは、 また、機能性酸化物グループでは、建物の窓や扉 電子の持つ磁性(スピン)を利用する次世代のメ のガラス、乗り物のフロントガラスなどに、表示、 モリ、不揮発性の磁気メモリ(MRAM)の実現を 情報入力、あるいは光発電の機能を付加し、能動的 目指し、その心臓部となるTMR(トンネル磁気抵 に活用することによって、利便性高く地球に優し 抗)素子の開発を行っています。従来のトンネル障 い生活環境実現に役立てようと、シースルーエレ 壁材料であるアモルファス酸化アルミ(Al-O)に代 クトロニクス技術の基盤確立に取り組んでいます。 えて、結晶性の酸化マグネシウム(MgO)を用いた ガラス基板上にZnO/CuAlO2/ITO接合を作成した TMR素子を開発し、室温で磁気抵抗230%、出力 透明半導体(図2)において、可視光をほとんど 電圧550mVという世界最高性能を達成しました そのまま透過し、紫外線で発電することに成功し (図1) 。本技術は、近い将来、Gbitを越える超高密 ました。 度メモリにおいて主流となることが予想されます。 図1 TMR素子の磁気抵抗(室温)の歴史 図2 透明な太陽電池の試作品 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 57 情報通信分野 光技術研究部門 Photonics Research Institute 研究ユニット長'渡辺 正信 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/photonics/index.html [email protected] 029-861-2266 029-861-5627 研究の概要 21世紀を安全・安心で快適な社会とするに必要 ア技術」の3分野につき、重点的に研究開発を進 な、高度情報化の推進と新産業創出に寄与するた めています。 め、光の特性を最大限に生かすことによる情報・通 信システムの高度化、および情報・通信システムと Unit 実世界との情報の授受の高度化に資する技術の研 究開発を推進しています。具体的には、超高速光通 信デバイス・信号処理技術を中心とし、超小型光回 路、通信セキュリティー技術等を開発する「光IT 技術」 、情報家電用のフレキシブルディスプレイや 入出力素子、光回路等の研究開発を行う「光イン 58 ターフェース技術」 、および強いシーズ技術をベー スに、先端的光技術の開拓、次世代光技術の育成、 分野融合による新技術開拓等を行う「光フロンティ 光技術研究部門の3重点研究課題 代表的な最近の研究成果 印刷法によりフレキシブルなプラスチック基板 れは、現在までに試作された有機TFT駆動LCDと 上に低コストで大量生産することができる有機薄 しては、世界最高の精細度であり、市販の非晶質シ 膜トランジスタ(TFT)は、紙のように薄くしな リコンTFTを用いたLCDに近いものであることか やかなディスプレイである電子ペーパーを実現さ ら、有機TFTが液晶ディスプレイ駆動には十分な せるために不可欠な技術と見込まれ、現在、世界 性能を示すことを証明するものです。 的に厳しい技術開発競争が始まっています。当研 究部門は、ディスプレイ用の駆動スイッチ用の有 機TFTに加えて、保護膜、絶縁膜および封止膜、 並びに発光素子の研究開発を行っています。この 度、 (株)日立製作所、 (財)光産業技術振興協会 と共同で、有機TFT駆動による高精細カラー液晶 ディスプレイ(LCD) (対角画面サイズ1.4インチ、 画 素 サ イ ズ318μm×106μm、 画 素 数80×80 (RGB) 、精細度80ppi)の開発に成功しました。こ 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 有機TFT駆動フルカラー LCD 情報通信分野 情報技術研究部門 Information Technology Research Institute 研究ユニット長'坂上 勝彦 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/itri/ itri-offi[email protected] 029-861-5413 029-861-3331 研究の概要 当研究部門は平成16年7月15日に発足しまし それを実問題に適用することで新たな意味や価値 た。生活世界の具体的な意味内容(コンテンツ)に即 を創造し、人間の安心・安全・快適な生活に寄与す して情報通信基盤技術と知能情報処理技術とを融 る知的な情報技術を構築することを目標としてい 合した研究開発を行い、生活世界の意味をデジタ ます。 Unit ル情報化・資源化(すなわち情報コンテンツ化)し、 代表的な最近の研究成果 「愛知万博における統合情報支援プロジェクト」 スを提供し、またアクティブRFIDと立体視カメラ 基盤ソフトウェアとして「CONSORTS」を用 「USV」を用いてプライバシーを守りながら来場者 い、展示会場において多種多様なセンサ・デバイス の動線を取得し、流動解析による会場運営サービ を連携させた統合情報支援サービスを実現します。 スを提供します。 光音声端末「Aimulet」と PDA に情報配信サービ 来場者支援 将来の展開 ・展示物説明と会場案内サービス ・来場者の興味に応じた情報提供や ・ユーザーが説明方法を選択可能 ナビゲーション ・展示物の配置計画・マーケティングを支援 ・混雑の緩和 ・プライバシ保護 ・「自動車環境」「オフィス環境」 ・盗難防止(セキュリティ) などと連携が可能 ・少ない会場要員 ・チケットの確認不要 ・安価なユーザ端末 CONSORTS (基盤ソフトウェア) によるサービス連携 アクティブR FID、立体視カメラUSV による人流情報の取得 これは1万年 前の○○の 化石です。 日本語を希望 Hello 英語を希望 Aimulet(音声案内) PDA(画像・音声案内) エレベーターは 左です こんにちは 日本語を希望 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 59 ナノテク・材料・製造分野 強相関電子技術研究センター Correlated Electron Research Center 研究ユニット長'十倉 好紀 URL: http://unit.aist.go.jp/cerc/index.html E-mail: [email protected] TEL: 029-861-2500 Unit 研究の概要 60 当研究センター(CERC)は、近年急速に進展 うに、量子固体−液体−液晶の間を、磁気的、電気 しつつある強相関電子物理の概念に基づいて、既 的、光学的な性質を大きく変えながら、相転移をお 存のエレクトロニクスの延長では到達できないよ こします。また、 これら電子集団の相は、 ピコ秒(10 うな、革新的な量子効果デバイス・量子材料の創製 の12乗分の1)以内の超高速の切り替えが可能と を目的としています。強相関電子とは、多数の電子 なります。外部から小さな刺激を入力して、劇的な がお互いに強い影響を及ぼしながら、存在する状 電子相変化を巨大出力とする現象を電子技術とし 況をさしています。このとき、電子の集団は、ちょ て発展させようとするのが、強相関電子技術の基 うど分子集団が固体や液体や液晶の形態をとるよ 本的な理念です。 代表的な最近の研究成果 強誘電体は、その強誘電特性を生かした不揮発 性メモリや圧電素子、アクチュエーター、電界効 果トランジスタの絶縁膜などのエレクトロニクス 応用のほか、非線形光学素子への応用など多様な 可能性を持つ有用な材料です。このような優れた 機能を軽量、フレキシブルに実現できる有機強誘 電体の開発が期待されています。最近、当研究セ ンターでは2種類のπ電子系分子を強い水素結合 で結合させた分子化合物(共晶)という、全く新 たなアプローチにより新しい有機強誘電体の開発 に成功しました。今回見いだした強誘電体は、ポリ マーの約1/100程度の低電場で反転可能な自発分 極をもち、かつ相転移温度では約2000-3000以上 にも達する巨大誘電率を持つ優れた特性を有して います。無機物やポリマーに比べ物質開発はほぼ 未開拓に近いと言われる有機低分子における今回 の物質設計・合成は、有機エレクトロニクスにおい て、より優れた特性を有する強誘電体材料開発を 推進してゆく上で画期的です。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 � ナノテク・材料・製造分野 ものづくり先端技術研究センター Digital Manufacturing Research Center 研究ユニット長'森 和男 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/ digital-mfg /index.html [email protected] 029-861-7090 029-861-7129 研究の概要 加工、溶接など15の加工法を対象に、加工技術、加 指すとともに企業内ITシステムの作成支援を目指 工データなどの加工情報を集積した加工技術デー した技術開発により、特に機械部品加工に携わる タベース、並びに、設計製造向けアプリケーション 中小企業の競争力強化を目的にした研究開発プロ ソフトウエアを容易かつ短時間に開発することの ジェクト「ものづくり・IT融合化推進技術の研究 できるプラットフォームの研究開発を実施してい 開発」を進めています。具体的には、切削、レーザ ます。 Unit 当研究センターでは、技能の継承と共有化を目 代表的な最近の研究成果 15の加工分野(鍛造、鋳造、金属プレス、射出成 ついては、センターのホームページをご覧くださ 形、切削、研削、研磨、放電加工、レーザ切断、レー い。 ザ溶接、アーク溶接、めっき、溶射、物理・化学蒸着、 熱処理)を対象に加工情報を集積した加工技術デー タベースを、平成15年6月30日にインターネット 上に無償公開しました。情報の内容は加工基礎(基 本的な知識・用語・計算方法など基礎となる事項) 、 加工準備(加工条件設定の際に必要となる加工条 件データや技術情報) 、加工事例(実際の加工例や 加工トラブルの解決法などの事例情報、Q&A形式 による熟練技術の紹介) 、新技術研究(産業技術総 合研究所で取り組んでいる新加工法や関連技術情 報)が含まれています。また、鳥瞰的に全データを みた上で必要なものを選ぶことのできる絞り込み 検索機能、切削・鍛造の作業設計を対象とした技術 計算支援ツール、トラブルシューティング機能な ども提供しています。 加工技術データベースの利用は無償ですが会員 制をとっており、平成16年11月現在約1500名の 会員登録があります。より詳細な内容、会員登録に 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 61 ナノテク・材料・製造分野 界面ナノアーキテクトニクス研究センター Nanoarchitectonics Research Center 研究ユニット長'清水 敏美 URL: http://unit.aist.go.jp/narc/index.html E-mail: narc-offi[email protected] Unit 研究の概要 62 ナノメートル(百万分の1ミリメートル)とい ノロジーの研究開発を推進しています。常温、大気 う長さ単位で表される極微の世界で物質を制御し、 圧に近い温和な条件下で、必要な微細資源を必要 材料、システム、デバイスを創造することにより、 な時に、必要な量だけ配置させる創製システムに 将来、人工生命体、マイクロロボット医療、完全循 より、エネルギー環境問題や医療福祉問題を解決 環型社会などの実現が期待されています。当研究 するナノ構造材料、ナノ機能素子づくりを検討し センターでは、東京大学大学院新領域創成科学研 ています。さらには、単一分子などを対象とした超 究科と強く連携しながら、原子・分子という極微な 高感度、超高解像度の計測・分析手法の開発も行っ 単位を「部品」に用いたボトムアップ型ナノテク ています。 代表的な最近の研究成果 原子の中のイオンや電子がバラバラになったプ やカーボンナノチューブなど従来1000℃前後の高 ラズマ状態を、mmからμmくらいの小さな空間 温を必要とする物質を手軽にポリマー基板上の特 で発生させる技術を開発しました。このようなマ 定の領域に析出させることが可能です。無機と有 イクロプラズマは、常温・大気圧下の雰囲気中でか 機をつなぐ新しい材料調製技術として、また材料 つ少ないエネルギー投入で発生させることが可能 を必要な場所へ必要な量だけ省エネルギー的に配 です。これを利用して、デスクトップサイズのナノ 置するオンデマンドプロセシング技術として、非 材料合成装置を開発しました。酸化物ナノ微粒子 常に有効な手法と期待されています。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 ナノテク・材料・製造分野 ダイヤモンド研究センター Diamond Research Center 研究ユニット長'藤森 直治 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/dia-rc/index.html [email protected] 029-861-2770 029-861-2771 研究の概要 進するための基盤的な技術開発も行っています。 これらを利用し各種の応用へ適合する技術を作り また、 昨年度より始まったNEDOプロジェクト「ダ 上げることで、新たな産業創製に資することを目 イヤモンド極限機能」やその他のプロジェクトの 標としています。応用製品の開拓と共に、半導体特 中核となり、日本ならびに世界のダイヤモンド研 性の向上や表面状態の制御などの、広い利用を推 究の中心的な研究機関としての役割を果たします。 Unit ダイヤモンドは様々な優れた特性を有しており、 代表的な最近の研究成果 平成15年4月の設立以来、研究環境やスタッフ 放出材料として有望視されています。電子放出 の整備を行いました。その結果デバイス製作プロ 機構を解明するために全光電子放出率分光法を セスや単結晶合成などの新たに導入した設備が稼 確立し、これによって水素により覆われたダイ 働し、研究環境が整いました。 ヤモンド表面は、負性電子親和力を有すること (1)気相法により大型単結晶ダイヤモンドの高速合 成に成功 を確認しました。 (3)水素関連欠陥の解明 プラズマCVDのプラズマ状態の制御と窒素 ダイヤモンド中の水素が作る点欠陥の構造と 添加により、従来の数倍から10倍の成長速度 その状態をESR(電子スピン共鳴)で確定し を達成し、大型ダイヤモンド単結晶の作製を進 ました。図2に示すようなモデルで示される欠 めています。3月には55時間で1カラットの単 陥を定量的に評価できました。ダイヤモンドの 結晶合成(図1)を発表し、さらに130時間で 気相合成に水素はほぼ必須の元素であり、これ 4カラットの合成にも成功しました。 が半導体ダイヤモンドに影響を与えるため、そ (2)ダイヤモンドからの電子放出機構の解明進む の制御技術の確立を目指します。 ダイヤモンドは負性電子親和力を有し、電子 図1 気相合成による1カラット単結晶ダイヤモンド 図2 水素関連欠陥のモデル 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 63 ナノテク・材料・製造分野 ナノカーボン研究センター Research Center for Advanced Carbon Materials 研究ユニット長'飯島 澄男 URL: TEL: http://unit.aist.go.jp/nano-carbon/index.html 029-861-4551 Unit 研究の概要 ナノチューブやナノホーンなどに代表される炭 を生かした環境・エネルギー材料及び情報通信材 素系物質・材料は、そのナノスペースにおいて他の 料の開発を目指します。このため、ナノスペースを 物質・材料に見られないユニークな構造や機能を 利用した新炭素系材料の開発と産業化の可能性を 持っています。当研究センターでは、炭素の究極の 明らかにするとともに、ナノチューブなどの炭素 物性を明らかにすると共に、炭素系物質・材料が作 系材料により、我が国の21世紀の基幹材料として り出すナノスペースの科学の構築を行い、これら の位置づけを確立し、さらに実用化に向けて企業 をベースに環境に適合しやすい炭素系材料の特徴 との連携により、産業育成の実現を計ります。 代表的な最近の研究成果 64 単層カーボンナノチューブの合成法の一つであ し、高さ2.5mm(2500μm)にも達する単層ナノ るCVD法(化学気相成長)において、水分が触 チューブの合成を可能にしました。 (図1) 媒活性の発現、持続を促進することを発見しまし さ ら に、 得 ら れ た 単 層 ナ ノ チ ュ ー ブ の 純 度 は た。この発見により、CVD法における触媒の活性 99.98%以上(不純物濃度0.013%)であり、従来 時間及び活性度が大幅に改善され、ナノテクノロ 法(不純物濃度35%)の2000倍以上の高純度を ジーの中核素材として期待される単層ナノチュー 達成しました。また、配向性も極めて高く、本スー ブの合成において、従来の500倍の長さに達する パーグロース技術によりマクロ構造体の作製にも 超高効率成長、従来の2000倍の超高純度の合成技 成功しました。 (図2) 術(スーパーグロース技術と命名)の開発に成功 図1 世界記録高密度高純度配列制御成長 図2 マクロ構造体の作製 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 ナノテク・材料・製造分野 ナノテクノロジー研究部門 Nanotechnology Research Institute 研究ユニット長'横山 浩 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/ nanotech /index.html [email protected] 029-861-5277 029-861-5548 ナノメートル(10億分の1メートル)の極微世 めています。当研究部門は、産業技術総合研究所に 界で、原子・分子精度の物質の構造制御による、超 おけるナノテクノロジーの中心として、ナノメー 微細、高機能、そして超低消費エネルギーな新しい トルスケールにおける物質研究の新たな手法やコ 材料、デバイス、システムの創造、それがナノテク ンセプトの開拓から、生体を含むナノ構造物質の ノロジーです。ナノテクノロジーは、物質が関わる 持つ諸現象の解明と応用、そしてそれらの産業技 全ての科学技術の基礎であり、無限の可能性を秘 術への展開までを幅広く先導していきます。 Unit 研究の概要 代表的な最近の研究成果 アクティブ・ターゲティング用新規DDSナノ 粒子の開発 本技術は、リポソーム表面の性質あるいは該表面 DDSは Drug Delivery Systemの略称で薬物送 種々の実験、検討を加え、リポソームや糖鎖の構造 達システムと訳されています。その中でも標的指 を分子設計することにより、該ナノ粒子の各種組 向性(ターゲティング)DDSとは、癌など各種疾 織へのアクティブ・ターゲティング(能動的・標的 患部位の標的細胞・組織を認識し局所的に薬剤や 指向性)機能を実際に制御できること、そして、こ 遺伝子を送り込むためのシステムです。 れらをアクティブ・ターゲティングDDSナノ粒子 本技術の対象は、生体内の各種組織の細胞表面 として利用することにより、各種の薬剤や遺伝子 上に存在する多様な糖鎖認識蛋白質である標的分 などを標的組織や細胞に効率的に輸送できる可能 子レクチンに対して、特異的な結合活性を有する 性を見いだしたものです。 (図1と図2参照) に結合させる糖鎖およびリンカー蛋白質について 糖鎖を導入したリポソーム性DDSナノ粒子です。 図1 アクティブ・ターゲティング機能の模式図 図2 アクティブ・ターゲティングDDSナノ粒子の SEM像並びに模式図 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 65 ナノテク・材料・製造分野 計算科学研究部門 Research Institute for Computational Sciences 研究ユニット長'池庄司 民夫 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/rics/index.html [email protected] 029-861-3170 029-861-3171 研究の概要 産業技術の基盤を支える計算科学をより高度化 います。これらの課題では、機能性膜、たんぱく質 するために、新しい計算手法とソフトウェアの開 の構造・機能、エレクトニクス材料、電子輸送、電 発を行い、さらに現実的な問題を解決すべく、ナノ 子相関、環境・エネルギーなどの問題に取り組んで テクノロジー、生体系、化学反応、基礎理論、ソフ います。 Unit トウエア統合化の重点課題を掲げて研究を進めて 代表的な最近の研究成果 66 タンパク質は数千∼数万原子からなる巨大分子 使い10,000原子のタンパク質複合体の電子状態 で、生体内において分子認識、触媒反応、分子輸送、 計算、また、3,000原子程度の分子であれば構造 電子伝達など高度な機能を担っています。その電 最適化も可能です。 子状態を知ることは、機能を解析・予測する上で必 タンパク質では、残基間のファンデルワールス 須です。当研究部門ではそのためにオーダー N法 力など弱い相互作用が重要です。その評価のため とフラグメント分子軌道(FMO)法を開発してい に、FMO法に基づいたMP2法などの電子相関を ます。 考慮できる計算法も開発しました。さらに、光反応 FMO法は、タンパク質をアミノ酸残基ごとに分 などにも対応できるように励起状態の計算法を開 割しそれぞれを独立に計算すると同時にそれらの 発中です。開発した方法は、分子軌道計算のフリー ペアも独立に計算します。そのため、安価なコン ソフトとして世界的に普及しているGAMESSに組 ピュータを多数ネットワークでつなげたクラスタ み込み、本年6月に公開しました。また、そのユー 計算機で、非常に効率的に並列計算ができます。本 ティリティプログラムを当研究部門のサイトから 手法では、標準的な分子軌道法と同程度のクオリ 公開しています。 ティで巨大分子の電子状態を計算することが可能 です。さらに、すべてのアミノ酸残基間の相互作用 のエネルギーが自動的に計算できるという特徴が あり、巨大・複雑な分子の構造と機能を理解するた めにも有用です。現在、AISTスーパークラスタを 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 FMO/GAMESSの公開サイト: http://www.msg.ameslab.gov/GAMESS/GAMESS.html FMOユーティリティの公開サイト: http://staff.aist.go.jp/d.g.fedorov/ ナノテク・材料・製造分野 先進製造プロセス研究部門 Advanced Manufacturing Research Institute 研究ユニット長'神崎 修三 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/amri/ [email protected] 052-736-7378 052-736-7405 研究の概要 安全・信頼性の4つの視点から技術を俯瞰する必 能を付与することにより製品化する一連の操作と 要があります。先進製造プロセス研究部門では、こ 捉えることができます。従来ややもすると、形状の のような産業ニーズに応え、且つ環境に配慮した 付与と機能の付与は独立して行われてきたと言え 製造に関する革新的な技術の開発を行い、製造業 ます。しかし、環境に配慮した高度な製造技術を構 の国際競争力の強化ならびに安全な産業インフラ 築するには、形状付与と機能付与を一体化して捉 の構築に貢献します。 Unit 製造技術とは、原材料に目的に応じた形状や機 えるとともに、高効率、高付加価値、フレキシブル、 代表的な最近の研究成果 67 廃熱発電を利用してNOx浄化するセラミック スリアクター ホットエンボス成形技術 低エネルギーかつゼロエミッションでの作動が FIB(Focused Ion Beam)によるナノオーダーの 可能な、革新的なNOx等の排ガス浄化用セラミッ 精度で型を加工し、ガラス材のホットエンボス成 クスリアクターの実用化に向け、廃熱による熱電 形を試みました。耐熱材料である非晶質カーボン 発電により自己完結的に電気化学リアクターを作 を型材料に選ぶことで、FIBによる3次元微細型加 動できる機能を融合した新しいセラミックスリア 工では、表面粗さRa20nm程度の綺麗な面を得る クターの製造技術を開発しました。この技術によっ ことができ、その型で高精度なガラス成形が可能 て、外部電源等の付加機を必要としない、電気化学 となりました。 ガラス微細成形の量産化、低コスト化を目指し、 反応を制御可能なセラミックスリアクターの開発 や、センサー等の開発スピードを大幅に速めるこ とができると期待されます。 クリーンな排ガス ����� 電気化学 セラミックス リアクター��� �� 熱電変換 セラミックスモジュール � ��� 高温/有害物質を含む排ガス ライン&スペース(上より1ミクロン、0.5ミクロン、0.3ミクロン) 廃熱を電力エネルギーへ 変換(ゼーベック効果) ガラスのホットエンボス成形 廃熱発電を利用してNOx浄化するセラミックスリアクター 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 ナノテク・材料・製造分野 サステナブルマテリアル研究部門 Materials Research Institute for Sustainable Development 研究ユニット長'鳥山 素弘 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/mrisus/index.html [email protected] 052-736-7086 052-736-7406 Unit 研究の概要 68 最新の材料技術を用いて、省エネルギー・環境保 します。 全に大きな効果が期待できる先進的な材料/素材 ¡輸送機器の軽量化 /部材に関わる総合的な技術開発を行うことを目指 乗用車の軽量化を図るため、軽量金属のマグネ しています。当面重点的に取り組むべき緊急課題 シウムを車の主要部分に用いることができるよ として、民生部門におけるCO2 排出削減に大きな うにするための研究を行います。 効果を持つ輸送機器の軽量化及び省エネルギー型 ¡省エネルギー型建築部材 建築部材の開発を行います。また、将来的に必要 建物の空調にかかるエネルギーを大幅に削減す になってくるニーズにも対応するため、材料/素材 ることのできる、調光ガラス、木質サッシ、調湿 /部材に関わる基礎・基盤的な研究もあわせて推進 壁等の開発を行います。 代表的な最近の研究成果 結晶粒形態制御による耐熱マグネシウム合金 の開発 キャリアーを模した大型構造体の試作に成功しま マグネシウム合金は、高温で強度が低下すると 省エネルギー効果に優れた調光ガラスの開発 いう欠点があり、これが輸送機器への適用を妨げ 環境温度によって赤外線の反射率を自動的に制 る大きな要因となっています。この強度低下の原 御する酸化バナジウムをコーティングした調光ガ 因である粒界すべりを抑制する手段として、結晶 ラスを開発しました。本ガラスを用いると夏期に 粒の形態を制御する手法に着目し、粒界すべりを は太陽からの赤外線を反射し冷房効率を高め、冬 抑制しうる結晶状態を導出するとともに、結晶形 季には赤外線を取り入れて暖房に要するエネル 態を制御するためのプロセス技術を開発しました。 ギーを節減することが出来ます。 (図1) した。 木質材料の研究 金属組織制御技術を用いた軽量金属加工法の開発 木材は、適切に伐採→植林→育林を繰返すこと 実用金属として最も軽量であるにもかかわらず により、半永久的に手に入れることができる資源・ 酸化されやすいことから溶接が困難なマグネシウ エネルギー源です。木質資源のリサイクル技術の ム合金から、摩擦撹拌接合法により接合しルーフ 一環として、木材微粉の温度と含水率を制御する ことによって複雑な形状を有する部材を射出成形 法により作製する方法を開発しました。 (図2) 図1 マグネシウム合金の組織制御 (a)結晶粒を長柱状にすることにより耐熱性を高めた組織 (b)通常の鋳造組織 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 図2 木粉のみで射出成形された成型品 ナノテク・材料・製造分野 マイクロ空間化学研究ラボ Micro-Space Chemistry Laboratory 研究ユニット長'前田 英明 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/kyushu/mischel/jp/index.htm [email protected] 0942-81-3676 0942-81-3657 研究の概要 グ技術、3)生物有機化学システム技術の3課題 る数∼数百ミクロンの髪の毛ほどの微細な流路を においております。これまでに、マイクロ空間なら 有する微小反応器を用いて、種々の有用な分析や ではの新規で特異的な反応・製造・分析技術を見い 化学反応を行う「マイクロ空間化学」技術を他所 だしており、医療、製薬をはじめ、バイオ関連、食品、 に先駆けて研究しています。当研究ラボでは重点 化成品工業への革新的な応用を展開してきていま 研究課題を1)微小流体分析チップ技術、2)ナ す。 Unit 本研究ラボでは、マイクロリアクターと呼ばれ ノ材料を中心とするナノマテリアルプロセッシン 代表的な最近の研究成果 これまでに当研究ラボで開発を行っていた、粒 を図っています。分析精度をより向上させるため 径の揃ったCdSe蛍光ナノ粒子の合成技術を発展 に、マイクロ流路作製技術を高め、かつ流路設計 させ、低毒性・無毒性のZnS-CuInS2 蛍光複合ナノ の検討を行うことにより、変動係数にして3 % と 粒子の合成に成功しました(図) 。これまで蛍光を いう高精度な分析を実現しました。さらに、マイク 発するCuInS2 ナノ結晶の合成例が皆無であったこ ロ空間化学技術の産業への応用展開を図るために、 とを考えると、マイクロ空間ならではの精密な反 ベンチャー事業設立を計画しており、精力的に研 応制御により品質の良いZnS-CuInS2 コアシェル 究開発を進めています。 構造が形成され、高品位な結晶析出が起こったこ とが考えられます。可視近赤外の蛍光波長を持ち、 低毒性・無毒性であるため、民生用の無機蛍光ラベ ルとしての応用がこれまで以上に期待されます。 また、ごく微少のサンプルで遺伝子診断を可 能にするデバイスとして、簡便・安価・迅速・高精 度な特徴を備えたマイクロフロー型遺伝子診断シ ステムを考案し、医療機関と連携を取りながら遺 伝性疾患、あるいは感染症疾患診断への応用展開 ZnS-CuInS2 蛍光ナノ粒子 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 69 環境・エネルギー分野 化学物質リスク管理研究センター Research Center for Chemical Risk Management 研究ユニット長'中西 準子 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/crm/index.html [email protected] 029-861-8257 029-861-8934 研究の概要 当研究センターは、化学物質のリスク評価及び 用いた科学的判断に基づく環境問題の解決を推進 リスク管理に関連する分野における先進的な研究 し、持続可能な産業の発展に貢献しています。 Unit と研究成果の実際的な適用を通じ、リスク評価を 70 代表的な最近の研究成果 平成16年9月に、当研究センターで開発した つのかを推定することもできるようになりました。 AIST-SHANEL(正式名称:産総研−水系暴露解析 AIST-SHANELは、化学物質の排出事業者や河川 モデル National institute of Advanced Industrial 流域を管理する地方自治体のみならず、一般のユー Science and Technology - Standardized ザーが河川流域の化学物質のリスクについて検討 Hydrology-based AssessmeNt tool for chemical するときに、実際にどのような対策を取るべきか Exposure Load)を公開しました。このモデルは、 という課題に対して、解決への道を拓いたものと PRTRの排出量データと、流域情報および化学物 いえます。 質の基本的物性の簡単なデータ入力を行うことに よって、化学物質の水系暴露濃度を1日ごとに1km メッシュ単位で推定するものです。図のようなモ デルの計算結果から、流域内のどのあたりで排出 量が高いのか、暴露濃度は排出量の高い地域と対 応しているのか、あるいは河川の流量が多くなる とどの程度濃度が低下するのかなどの情報を容易 に把握することができるようになりました。さら に、水生生物に影響が出る濃度を超える確率を求 めることによって、生態リスク評価(生態系に与 える影響を評価すること)を行うことや、工場か らの化学物質排出量削減や下水処理場での除去率 向上が化学物質濃度の低減にどのような効果を持 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 AIST-SHANELで推定した多摩川流域におけるノニル フェノール濃度の面的分布 環境・エネルギー分野 ライフサイクルアセスメント研究センター Research Center for Life Cycle Assessment 研究ユニット長'稲葉 敦 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/lca-center/index.htm [email protected] 029-861-8868 029-861-8195 研究の概要 施を支援するための手法検討を開始しました。現 け、CO2 削減をはじめとする環境問題解決のため 在、岩手県における廃棄物処理、千葉県における未 の具体的行動が、地方自治体、企業などの現場レベ 利用バイオマス資源の有効活用、三重県における ルに求められるようになってきました。このよう 産業誘致によるまちづくり社会基盤整備という3 な背景から、当研究センターでは地方自治体を対 つの地域施策をケーススタディーとして取り上げ、 象に、ライフサイクル的思考を地域施策に適用す 検討を行っています。 Unit 京都議定書の発行確定などの国内外の情勢をう ることで、より環境への影響の小さい地域施策実 代表的な最近の研究成果 ISO準拠のLCA手法や地理情報システムを利用 明らかとなりました。更に、対象地域内での排出と したエネルギー需要データベース、エネルギー供 対象地域外での排出を分離したところ、三重県で 給システム最適化モデル等の成果を活用し、各県 はCO2 の約60%以上が、千葉県では約65%以上が の施策実施前の状態や計画段階についてのCO2、 施策対象地域外で排出されると推定され、環境負 NOx、SOx、固形廃棄物などを対象物質としたイ 荷低減のためには地域施策対象地域外部への影響 ンベントリ分析を行いました。岩手県を例にあげ 考慮が重要であることが明確になりました。地域 ると、家畜排泄物、廃プラスチック、廃木材、一般 施策の代替案や選択肢検討のために必要な地域内 廃棄物処理に伴い、現状、主な排出物としてCO2: 外の物流・需給についてのデータベース作成や、収 147万トン、固形廃棄物:10万トンが年間に排出 集配送、輸送手法検討のソフトウェア開発も行っ されていると試算されました。内訳は、家畜排泄 ています。これらの成果は、具体的手順とともに 物と一般廃棄物処理に伴う排出量が50%以上を占 2005年度に実務書にまとめ、幅広く公表する予定 め、両廃棄物処理方法の改善が重要であることが です。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 71 環境・エネルギー分野 パワーエレクトロニクス研究センター Power Electronics Research Center 研究ユニット長'荒井 和雄 URL: http:// unit.aist.go.jp/perc/ E-mail: [email protected] TEL: 029-861-4466 研究の概要 では、 この限界突破を、 シリコンカーバイド(SiC) 、 るインバータで代表されるパワーエレクトロニク 窒化ガリウムなどのワイドバンドギャップ半導体 スは、電気エネルギーを制御するキー技術であり、 パワー素子の開発とその素子性能を充分に生かせ 現在はシリコンパワー素子で成り立っていますが、 る実装、システム化技術によって実現しようとし 性能に限界が見え始めています。当研究センター ています。 Unit 家電、自動車、電車、各種産業機器に使われてい 代表的な最近の研究成果 72 SiC単結晶成長技術では、マイクロパイプという 法で微傾斜基板を使うことにより原子層ステップ 特有の結晶欠陥をほとんど抑制できる技術を開発 を持つ超平坦なGaN, AlGaN表面(図参照)が得 し、他の結晶欠陥(転位)も市販ウエハより2桁減 られることがわかり、デバイスへの適用を進めて 少させることに成功しました。この結晶基板と独 い ま す。HEMTデ バ イ ス(AlGaN/GaN) で は、 自に開発したエピタキシャル成長技術を活用した SiO2 絶縁膜を用いたMIS構造デバイスを作製し、 デバイスの開発が始まっています。GaN-HEMTデ ノーマリーオンタイプながら、耐圧630Vでオン バイスでは、パワーデバイスへの展開を視野に入 抵抗2.5mΩ・cm2 という良好な結果を得て、GaN- れ、MBE法とMOCVD法のハイブリッド成長法を HEMTデバイスの横型パワースイッチング素子の 開発して、世界最高水準の250Ω/□という極めて 可能性を実証しました。これらのデバイスの実装、 低い2次元電子ガスシート抵抗を得ました。MBE システム化の研究開発も本格化しています。 図1 ジャストサファイア(0001)基板上に成長された AINの表面。スパイル成長が主導である。 図2 微傾斜サファイア(0001)基板上に成長された AINの原子層ステップ表面 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 環境・エネルギー分野 超臨界流体研究センター Supercritical Fluid Research Center 研究ユニット長'新井 邦夫 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/scfcenter/index.html [email protected] 022-237-5208 022-232-7002 研究の概要 す。さらに、超臨界流体の科学と技術の融合による 化成品の合成・製造法を創出するためにこれまで 産業技術の展開を目指しており、基礎から応用ま 使用されてきた有害な有機溶媒を代替すべく、超 での広範囲な研究開発を推進し、有機合成技術と 臨界状態の水と二酸化炭素を反応場として活用す 無機微粒子製造技術と共に、その場測定技術や高 る新しい環境調和型化学プロセスを開発していま 温高圧制御技術の研究開発も推進させています。 Unit 当研究センターは環境に優しく、かつ効率的な 代表的な最近の研究成果 超臨界二酸化炭素は臨界温度31.1℃、臨界圧力 媒上で水素化反応が進行しシクロヘキサノンとシ 7.38MPaであり比較的温和な条件で超臨界状態に クロヘキサノールが生成されます。反応後は冷却 することができます。さらに二酸化炭素は無毒、不 し水素と二酸化炭素を気体として回収再利用でき 燃性であることから有機溶媒に比較して非常に安 ます。固体触媒から物理的に分離するだけでKAオ 全性が高い溶媒となります。当研究センターでは イルを得ることができ、触媒の繰り返し使用が可 超臨界二酸化炭素溶媒と固体触媒とを組み合わせ 能となります。特に、二酸化炭素の圧力によりKA た環境調和型・省エネルギー型の多相系反応シス オイルの選択性を制御できることを明らかにしま テムを開発し、ナイロンの中間原料であるKAオイ した。本多相系システムは他の有機反応へ広く応 ル(シクロヘキサノンとシクロヘキサノールの混 用可能です。また、イオン性液体と超臨界二酸化炭 合物)合成への応用に成功しました。担持金属触 素との組み合わせによる多相系システムでは二酸 媒とフェノール、さらに水素、二酸化炭素を反応 化炭素の固定化反応にも非常に有効であることも 器に加え昇温、昇圧します。超臨界状態では水素と 示しています。 フェノールが二酸化炭素溶媒に溶け、担持金属触 回収再利用 反応(超臨界) CO2,H2 昇 温 sc CO2, H2 + 冷 却 CO2,H2 生成物 反応物 フェノール 金属触媒 + 昇 圧 金属触媒 減 圧 生成物 金属触媒 KAオイル 分離回収再利用 超臨海二酸化炭素と固体触媒を利用する多相系水素化 触媒反応システム 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 73 環境・エネルギー分野 爆発安全研究センター Research Center for Explosion Safety 研究ユニット長'藤原 修三 URL: http://unit.aist.go.jp/rces/index.html E-mail: [email protected] TEL: 029-861-4480 Unit 研究の概要 当研究センターでは、公共の安全確保や産業保 ミュレーション等の基礎・基盤的研究、化学物質の 安技術の向上に貢献することを主要ミッションと 安全性評価(フィジカルハザード)と安全な利用 し、化学物質の燃焼・爆発およびそれに関連する現 技術等の開発研究、公共の安全確保や産業保安技 象全般(自然発火、反応暴走、圧力解放、高速燃焼、 術向上のための具体的な社会・行政ニーズ対応研 衝撃破壊、爆発による環境影響など)について、安 究、国際通商等における燃焼・爆発等の安全確保に 全に係わる基礎から応用に至るまでの総合的な研 係わる国連試験法等の国際化対応研究を実施して 究を実施しております。具体的には、高温・高圧下 います。 の物性測定ならびに化学反応機構解明、計算機シ 74 代表的な最近の研究成果 燃料電池積載自動車用の次世代燃料として期待 得しました。 (写真参照) これらのデータは水素 されている水素について、静電気着火性、空気中に 取り扱いにおける保安技術基準に反映される予定 漏洩した場合の拡散・燃焼特性、空気混合気体との です。また、火薬庫の性能や煙火の安全性等につい 燃焼・爆発特性等を各種の方法で追求しました。特 ても実験室規模から野外での大規模実験を実施し に燃焼・爆発特性については、実験室規模から最大 各種の貴重な保安データを取得しました。これら 200立方メートルまでの大規模な野外実験を実施 のデータも関連法規(火薬類取締法)の技術基準 し、爆風の挙動等の多くの貴重な保安データを取 に反映されます。 水素/空気混合ガスの爆発実験 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 環境・エネルギー分野 太陽光発電研究センター Research center for photovoltaics 研究ユニット長'近藤 道雄 URL: http://unit.aist.go.jp/rcpv/ E-mail: [email protected] 研究の概要 開発、中立的立場での標準、評価技術の開発、そし てシステム評価、運用技術の開発です。これらを通 ことです。そのためには3つの柱となる技術開発課 じて政府目標である2010年には、太陽光発電総導 題を設定しています。太陽電池を超低コスト化す 入量482万kW、発電コスト23円/kWhを達成する るための高効率、高スループット、低コスト技術の ための技術開発を先導します。 Unit 当研究センターのミッションは安価で高性能な 次世代太陽光発電システムの大量普及を加速する 代表的な最近の研究成果 現在の市場の90%を占めている結晶シリコン あり、技術的に困難でした。この問題を製膜方法や 系太陽電池のコスト削減のための極薄化(50ミ 処理技術を開発することで解決し、当研究センター クロン程度)のための評価技術を開発するととも では16.9%の世界最高レベルの変換効率を達成し に、ヘテロ接合型BSF技術を開発し、裏面での再結 ました。 合速度を100cm/sまで低減することに成功しまし 今後の太陽電池の大量普及を支える基盤技術は た。アモルファスシリコンをトップセルに、微結晶 評価技術の開発です。晴天日が少ないアジアの気 シリコンをボトムセルに用いた薄膜タンデムシリ 候条件下で高精度に太陽電池をセル、あるいはモ コン太陽電池において、トップセルの光劣化を、膜 ジュールレベルで測定するための高近似ソーラー 中のSiH2結合を低減することによって低減し、世 シミュレータを開発し、多接合太陽電池や色素増 界最高の劣化後9.2%の効率を達成するとともに、 感などの新型太陽電池の評価技術を開発しました。 ボトムセルにおいて従来の10倍以上の高速製膜時 また世界で4箇所しかないQualified Labo.として に効率の低下率が皆無という新技術を開発しまし 一次基準セルを供給しています。また、今年度完成 た(当該製膜速度における世界最高効率を達成) 。 したアジア最大の太陽光発電施設メガソーラタウ 太陽光に最もマッチングのいいバンドギャップで ンを用いた屋外実証試験を開始しました。 ある1.4eV程度のバンドギャップを持つ材料は、 当研究センターは、材料開発からシステム実証 Cu(InGa)Se2のような多元系では組成によって 研究まで幅広い研究に包括的に取り組む世界でも 創製可能ですが、従来よりGa濃度を高める必要が 数少ない研究機関といえます。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 75 環境・エネルギー分野 ユビキタスエネルギー研究部門 Research Institute for Ubiquitous Energy Devices 研究ユニット長'小林 哲彦 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/ubiqen/index.html [email protected] 072-751-9550 072-751-9629 Unit 研究の概要 情報通信技術が急速に発展し、ユビキタス情報 安全性、環境適合性も高い次元で達成されなけれ 社会への期待が高まっています。これに伴い、ユビ ばなりません。 キタス情報技術を支える小型・移動型の新しい電 当研究部門では、燃料電池や二次電池(バッテ 源やエネルギー源の開発が不可欠となっています。 リー)を始めとする新しい小型・移動型のエネル これら「いつでも、どこでも、だれでも(=ユビキ ギー供給/電源技術の研究開発を、材料基礎研究 タス) 」使える新しいエネルギー技術は、ますます からシステム化研究まで有機的に取り組み、先導 多様化する個人生活においても、セキュリティー 的未来型の技術シーズの発信とあわせて、工業標 や医療・福祉、生活支援ロボット技術等での応用が 準や寿命に関わる基礎研究などの産業基盤的研究 期待されます。ユビキタスエネルギー技術は、高効 成果の発信も行っていきたいと考えています。 率、高密度であると同時に、生活密着型の観点から 76 代表的な最近の研究成果 ¡新型二次電池用電解質(イオン性液体)および 正極材料(鉄系酸化物)の開発 ¡新プロトン電解質の開発とダイレクトメタノー ル燃料電池への応用 ¡材料コンビケムの熱電材料および燃料電池触媒 開発への応用 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 ¡高温型酸化物熱電変換材料の開発 ¡触媒等、界面機能材料のナノ構造と機能に関す る基礎的研究 ¡固体高分子形燃料電池の劣化メカニズムの提案 ¡携帯機器用マイクロ燃料電池の安全性評価技術 の提案 環境・エネルギー分野 環境管理技術研究部門 Research Institute for Environmental Management Technology 研究ユニット長'山崎 正和 URL: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/emtech-ri/index.html 029-861-8300 029-861-8866 活力ある経済産業と安全・安心な環境の両立を ネルギー・省資源な対策技術の開発 ¡環境低負 目指し、化学物質など有害物質による都市環境の 荷型のリサイクル技術・システムの開発 ¡地域 悪化、健康への影響および地球温暖化などの環境 から地球規模までの環境影響評価技術と手法、エ 問題への科学技術による対応として、以下の研究 ネルギー・環境技術の評価手法等の開発 ¡環境 開発を重点的に行っています。¡有害物質の不拡 管理に必要な計測技術の開発、環境標準等の基盤 散・排出低減、汚染環境の浄化・修復に有効な省エ 整備などに資する技術・手法の開発と普及 Unit 研究の概要 代表的な最近の研究成果 有機フッ素化合物は耐熱性や耐薬品性に優れた することが多いのですが、従来の処理法(微生物、 界面活性剤として多くの産業で用いられてきまし 酸化チタン光触媒等)では分解困難でした。我々 た。ところが近年、その一部が環境水や生物中に存 はこのような化合物の分解を、ヘテリポリ酸光触 在していることが明らかになり、環境影響が懸念 媒により実現しました。反応器(図1)にPFOAとヘ されています。その典型がパーフルオロオクタン テロポリ酸触媒の水溶液を導入し、紫外・可視光を 酸(PFOA)に代表されるパーフルオロカルボン酸 照射したところ、PFOAは二酸化炭素とフッ化物 類です。これらの機能性は炭素・フッ素結合自体に イオンに分解しました(図2)。この方法により炭素 由来するため他の物質での代替が困難です。従っ 数2-7の他のパーフルオロカルボン酸類も分解で てその環境リスクを低減させるために、発生源か きました。フッ化物イオンは、既存のカルシウム処 らの発散を防止しその廃棄物を無害化することが 理法により環境無害なフッ化カルシウムに変換で 求められています。これらの廃棄物は水中に存在 きます。 図1 有機フッ素光分解用の反応器 図2 PFOA分解反応の光照射時間依存性(PFOA濃度 は1.35 mM; 550 ppm) 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 77 環境・エネルギー分野 環境化学技術研究部門 Research Institute for Innovation in Sustainable Chemistry 研究ユニット長'島田 広道 URL: http://unit.aist.go.jp/isc/index.html http://unit.aist.go.jp/isc/english_ver/index_e.html E-mail: [email protected] TEL: 029-861-4456 FAX: 029-861-4457 Unit 研究の概要 持続発展社会を実現するために下記三つの技術 具体的には、反応・触媒・プロセス技術として、 目標を掲げ、合成、分離など、化学および化学工学 a) 高選択合成のための化学反応・触媒技術の研 の展開が大きな役割を果たす産業技術の研究開発 究開発、b) 有害化学物質除去技術の研究開発, を進めます。 c) プロセス(合成、分離など)省エネルギー化 ¡環境負荷物質(主として有害物質)排出の最小 技術の研究開発を、材料技術として、a) 生分解 化 ¡エネルギー効率の向上・温室効果ガスの排出量 削減 ¡有限資源から循環型資源への原材料転換 78 性プラスチックの研究開発、b) 先進型バイオマ テリアル(界面活性剤など)の研究開発、c) 低 環境負荷高機能材料(フッ素材料、ガラスなど) の研究開発を行っています。 代表的な最近の研究成果 近年、電子材料、医薬品などの機能性化学品には 棄物の減量化が可能です。もう一つは、過酸化水素 ますます高い性能が求められるようになっていま を用いた選択酸化法による香料、電子材料の合成 す。この結果、従来技術に頼っての合成法では有害 です。新たな合成法では、従来合成法では避けられ 物質を含む多量の廃棄物が排出されてしまいます。 なかった重金属廃棄物の副生なしで、しかも高い 私たちは工程の簡略化、廃棄物の極小化を可能と 選択率で香料を合成することができます。また、電 する新たな合成法を開発しています。その成果の 子材料の性能劣化原因となる不純物を含まない電 一部を下記に紹介します。一つは、燐光材料を用い 子材料の新合成法開発にも見通しがつきました。 た有機EL素子の合成です。民間企業と共同でフル その他にも、各種新規触媒やさまざまな反応場 カラーに必要な3原色発光材料のうち、緑色材料 の導入などにより、原料、エネルギーの無駄な排出 の新規製造プロセスの開発に成功しました。新製 を極小化する反応プロセスの開発に向けて全力で 造法では製品の歩留まり率が大きく改善され、廃 取り組んでいます。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 環境・エネルギー分野 エネルギー技術研究部門 Energy Technology Research Institute 研究ユニット長'大和田野 芳郎 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/energy/ [email protected] 029-861-5280 029-861-5149 持続可能社会を実現するには、限りある化石資 の中核部門として旧電力エネルギー、旧エネルギー 源を有効利用し、地球温暖化を防止する技術が不 利用の両研究部門を母体にエネルギー技術研究部 可欠です。また、産業の発展と住み良い社会の実現 門が平成16年7月1日に発足しました。 のためにエネルギー安定供給の確保が求められて 当研究部門では、次に示すような分散型エネル います。 ギーネットワークの構築、これを支える材料・デバ これらの要請に応えていくために、産総研では イス技術、及び、太陽光・水素・クリーン燃料等の エネルギー研究分野の長期目標とシナリオを明確 クリーンエネルギー技術の研究開発を行い、総合 化し、これに取り組む研究戦略と体制を検討し、そ エネルギー産業の創出を目指します。 分散型エネルギーネットワーク技術 ンエネルギー技術を開発します。 79 高いエネルギー利用効率を目標とする分散型エ ネルギーネットワークの、電力・熱・ガスの統合制 ガスハイドレート技術 御・運用技術及びその構成要素技術を開発します。 ハイドレート資源からのメタン生産手法、及び ガスハイドレートの特徴を利用した省エネルギー エネルギー材料・デバイス技術 輸送・貯蔵技術を開発します。 高度なエネルギー材料技術に立脚し、高性能固 体酸化物形燃料電池、熱電変換素子、電力貯蔵キャ クリーンディーゼル技術 パシタ等を開発します。 新合成燃料等を利用した高効率次世代クリーン 自動車エンジンシステムを開発します。 クリーンエネルギー技術 太陽光の二次エネルギーへの変換、水素の高密 革新的エネルギー技術 度輸送貯蔵、炭化水素資源の脱炭素化等のクリー 以上に含まれない革新的、萌芽的エネルギー技 術の研究にも、積極的に取り組みます。 図1 産総研のエネルギー研究 Unit 研究の概要 図2 エネルギー関連研究ユニットと主要研究課題 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 環境・エネルギー分野 メンブレン化学研究ラボ Laboratory for Membrane Chemistry 研究ユニット長'水上 富士夫 URL: http://unit.aist.go.jp/lmc/index.html E-mail: [email protected] TEL: 022-237-5208 Unit 研究の概要 当研究ラボでは、無機系膜の反応・分離・隔離機 ネと環境負荷低減効果の実現をねらっています。 能と、有機膜にはない耐熱、耐薬品性に着目し、こ また、民間企業や、東北地域の大学、研究機関の実 れを利用した低環境負荷型の反応・分離プロセス 質的な連携の仕組みとして、メンブレンインキュ の開発を目標としています。膜プロセスにより、多 ベーションコンソーシアムを組織し、シーズとニー 段反応の簡略化、装置の集積化、コンパクト化をは ズのマッチングによる、実用化に向けた研究を加 じめ、穏和な条件での物質の高効率分離など、省エ 速させています。 代表的な最近の研究成果 80 当研究ラボでは、素材開発から膜の作製、さらに て1,000倍以上(300℃)の選択率で水素を透過し、 反応膜や分離膜として応用する一貫した研究を進 しかも純パラジウム膜よりも優れた耐久性を示し、 めています。例えば、層状ケイ酸塩を原料とし、多 水素の膜分離や反応膜として有望です。さらにマ 孔質アルミナチューブの表面における層間の脱水 イクロ加工技術により超小型パラジウム反応器を 重縮合により新規なゼオライト膜を作製し、水と 作製し、良好な水素透過能を確認しました。粘土鉱 エタノールの高効率分離材として有効であること 物の層間に有機分子を少量包接した柔軟性に富む を見出しました。また、2元素同時の無電解メッキ 耐熱性ガスバリア膜やシール材を開発し、民間へ により、パラジウムと銀の合金薄膜(5mm)を被 の技術移転を計画しています。 覆する手法に成功しました。この膜は、窒素に対し 粘土鉱物を原料とした柔軟性に富む耐熱ガスバリア膜 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 環境・エネルギー分野 循環バイオマス研究ラボ Biomass Technology Research Laboratory 研究ユニット長'佐々木 義之 URL: http://unit.aist.go.jp/biomatech/index.html E-mail: [email protected] TEL: 0823-72-1111 当研究ラボでは、森林による二酸化炭素固定(い の導入)の拡大に向けて、国内外における地域の わゆるソイルシーケストレーション)の促進に資 自然条件や社会的な状況に適した利用シナリオを するため、木質系バイオマスの高度利用技術の開 構築するため、バイオマスの生産や回収、輸送、変 発を行うとともに、食品廃棄物や養殖等に伴う海 換、あるいは製品の供給システムについて検討し 洋汚染物質を蓄積したマリンバイオマスからの有 ています。特に、木質系バイオマスからの効率的な 価物やエネルギーの回収技術、汚泥、家畜糞尿等の エネルギー/ケミカルズ製造技術を開発すること 有機性廃棄物の省エネ型処理技術を開発していま により、国内における森林管理や海外における産 す。また、バイオマスの地産地消(ローカルエネル 業植林(CDM)の推進に貢献することを目指して ギー源としての利用)や産業利用(製品の市場へ います。 81 代表的な最近の研究成果 (1)ガス化による木質系バイオマスのエネルギー変 効率的な成分分離技術を開発することを目的と 換技術の開発 して、水熱処理と粉砕処理の複合効果について 木質系バイオマスから水素を主成分とする 検討しました。その結果、可溶化した木質系バ クリーンガスを一段で製造するCO2吸収ガス イオマス中のセルロースの70%をグルコース 化技術の開発を目的として、ベンチ試験装置 に変換できることが分かりました。 (10kg/日)を製作し、3時間の連続運転を行い (3)バイオマス利用のためのシナリオ策定 ました。その結果、比較的高濃度の水素(85%) 化石資源に比べて割高な「生産系バイオマ とメタン(15%、二酸化炭素および一酸化炭素 ス」 、収集と処理が困難な「廃棄物系バイオマ は検出限界以下)からなるクリーンガスが生成 ス」 、低密度分散型の「マリンバイオマス」等 しました。 の導入促進のためのシナリオを策定する目的 (2)成分分離による木質系バイオマスの高度利用技 Unit 研究の概要 で、バイオマスの収集や変換のためのプロセス 術の開発 設計等を行うとともに、有価物の回収技術等、 木質系バイオマスの硫酸を用いない前処理技 必要な要素技術の開発を行いました。 術とセルラーゼによる糖化技術を組み合わせた 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 社会基盤(地質) ・海洋分野 深部地質環境研究センター Research Center for Deep Geological Environments 研究ユニット長'笹田 政克 URL: http://unit.aist.go.jp/deepgeo/index.html E-mail: [email protected] TEL: 029-861-3755 研究の概要 す。当研究センターでは、国による安全規制への技 地を選定して、300m以深に設けられる地下施設 術的支援を目的にして、選定される処分地が長期 による隔離機能(人工バリア)と、それを取り囲 的に見て十分に安定な場所であり、かつ地下環境 む地層による隔離機能(天然バリア)により、長 が十分な隔離機能を有しているかを評価するため 期間にわたって安全性を確保しようとするもので の研究を実施しています。 Unit 高レベル放射性廃棄物の地層処分は適切な処分 代表的な最近の研究成果 82 処分地の長期安定性評価のために、当研究セン 場合について、地下水に溶存しているヘリウムの ターでは地質及び地下水の長期変動に関する研究 同位体比・濃度の分析から、滞留時間が初めて求め を行っています。これらのうち深層地下水に係わ られました。地下600∼1,500mの深さに広がる砂 る研究の一つとして、日本列島のような複雑な地 礫層中の地下水を分析した結果、滞留時間は2万年 質構造にも適用できる地下水滞留時間の測定手法 から20万年であることがわかりました。このよう の開発を進めています。この研究によって、滞留時 な深層地下水の滞留時間の測定は、深部地質環境 間が非常に長く、起源の異なる地下水が混合した の長期安定性の評価のために役立つものです。 深層地下水流モデル(左)および、地下水滞留時間とヘリウム濃度・同位体比の関係(右) 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 社会基盤(地質) ・海洋分野 活断層研究センター Active Fault Research Center 研究ユニット長'杉山 雄一 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/actfault/activef.html [email protected] 029-861-3691 029-852-3803 研究の概要 とそれに伴う津波の予測に役立てる研究を行って を調べ、地震が起きる可能性と地震の規模を予測 います。さらに活断層の調査結果に基づいて地震 する研究を行っています。また、周辺の海域で発生 の“シナリオ”を作成し、地震波が伝わる様子や した巨大地震の履歴を地層に残された地震の記録 断層のずれによって地表が変形する様子を再現し、 から明らかにし、東海地震など来るべき巨大地震 地震被害の軽減に役立てる研究を行っています。 Unit 当研究センターでは全国に分布する主な活断層 代表的な最近の研究成果 津波堆積物の研究から、北海道の太平洋沿岸は することが分かりました。この研究結果は道東地 5百年に1度の頻度で最大波高が10mに達する巨 域の防災計画の見直しに活用されています。 大津波に繰り返し襲われており、最近では17世紀 にこのような津波が発生したことが分かりました。 津波シミュレーションを行って、実際の津波堆積 物の分布と比較した結果、このような津波は十勝 沖と根室沖のプレート間地震の連動によって発生 図1 千島海溝沿いの19世紀以降のプレート間地震と それらの連動による震源域 図2 霧多布湿原の津波堆積物の分布とシミュレー ションによる浸水域 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 83 社会基盤(地質) ・海洋分野 地圏資源環境研究部門 Institute for Geo-Resources and Environment 研究ユニット長'松永 烈 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/georesenv/index.html [email protected] 029-861-3630 029-861-3717 Unit 研究の概要 84 当研究部門では、地熱・燃料・鉱物資源等の天然 纂などの地圏資源環境に関する知的基盤情報の整 資源の安定供給のための調査・研究・技術開発と、 備・提供を行っています。このほか、世界各国の政 地圏の利用や環境保全のための調査・観測及び利 府機関や国際機関と、地圏資源環境にかかわる共 用技術の開発・研究、および、資源地質・環境図編 同研究、研究協力・技術協力を実施しています。 代表的な最近の研究成果 資源の開発・利用及び放射性廃棄物等の地層処 鉱物資源図、燃料資源図、水文環境図、地質汚染 分などを安全かつ低環境負荷で実施するのに必要 評価図等の作成に関しては、逐次調査・編纂・出版 な地下計測・監視技術を確立するために、長期地下 作業を行ってきましたが、特に、1/50万鉱物資源 モニタリング技術の開発、安全基準、検定、爆薬及 図については、昨年度「中国・四国」および「南西 び液化石油ガスの安全利用等に係わる基準の策定 諸島」を出版し、 全国カバーを達成しました(図2)。 に関する研究を実施してきましたが、たとえば、電 磁探査で地下水の塩水と淡水の境界付近の状態を 詳細に把握する手法を最近開発しました(図1)。 図1 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 図2 社会基盤(地質) ・海洋分野 地質情報研究部門 Institute of Geology and Geoinformation 研究ユニット長'富樫 茂子 URL: http://unit.aist.go.jp/igg/index.html E-mail: [email protected] TEL: 029-861-3502 四方を海に囲まれる日本は、大地震や火山噴火 実施し、地質調査総合センターの核として信頼性 が頻発する数少ない先進国です。私たちが安全に の高い地質情報の知的基盤を構築します。同時に、 生活し、高度な産業活動を持続していくために、地 人類と地球が共生できる国や国際社会の実現に向 球の深い理解に基づき、将来の確かな予測をして、 けて、1)都市・沿岸域の生態系も含む地質環境の 地球の環境を守りながら利用し、地震・火山活動な 総合的研究、2)地震・火山噴火等の地質災害の軽 どによる地質災害を少なくすることが重要です。 減に資する研究、3)島弧地質海洋研究を基礎に 当研究部門は、地質に関する総合的研究部門と 地質情報の統合に戦略的に取り組みます。 Unit 研究の概要 して長期的視点に立ち、陸と海の研究を一元的に 代表的な最近の研究成果 図1 三宅島火山地質図 噴火の推移予測や、長期火山活動評価に必要な火山 の活動履歴の情報を火山地質図として提供。第1期末 までに13の活動的な火山について完成・出版までに 累計13の活動的な火山について完成・出版。 85 図2 ベトナムソンホン(紅河)平野の過去1万年間の 環境変遷 9千年前はハノイの近くまで海が湾入し、約4千年前まで平野全体にマング ローブの低地が広がっていた。その後の海面低下によって急速に海岸線が前 進し、現在に近い環境に変化したことを、初めて明らかにした。 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 社会基盤(標準)分野 計測標準研究部門 Metrology Institute of Japan 研究ユニット長'田中 充 URL: E-mail: TEL: FAX: http://www.nmij.jp/ [email protected] 029-861-4117 029-861-4190 Unit 研究の概要 当研究部門においては、国家標準の高精度化を ビリティが保証する測定の信頼性を誰もがそのコ 始めとする技術開発やそれを使った校正・試験の ストと時間に応じて選べ利用できる国内体制の実 事業、さらには多分野にまたがる共通基盤技術で 現と運営を技術の立場から主導しつつ、我が国の ある計測分析技術について、先導的、先進的に研究 経済活動の国際市場での円滑な発展を支援してい 開発を進め世界をリードする研究成果を挙げるこ ます。 とを目指しています。この活動を通してトレーサ 代表的な最近の研究成果 86 当研究部門では半導体を始めとする様々な材料 パッタリング法を用いてSiO2 とSiを交互に各20 の精密な微細加工に必要なナノスケールのものさ nmずつ5層積層させた積層膜物質を作製しまし しの研究を行っており、これまでに走査型電子顕 た。この材料の膜厚さの評価は国際単位系へのト 微鏡の校正に用いる240 nmピッチの面内方向ス レーサビリティを確保するために反射角度を校正 ケールなどを開発しました。本年度は薄膜・多層 したX線反射率測定装置を用いて行われ、0.5 nm 膜構造の評価に必要な深さ方向のスケールとして ∼0.8 nmの不確かさ(95%信頼区間、第2層∼第 SiO2/Si(シリコン酸化膜/シリコン)多層膜標準 5層)でそれぞれの膜厚さが決定されました。本標 物質の開発に成功しました。 準物質はISO GUIDE 34(JIS Q 0034)に適合する 薄膜や多層膜構造の評価には電子やX線をプ 品質システムに基づき生産されたもので、産総研 ローブとした表面分析法が有力であることが知ら 認証標準物質として頒布を開始しました。 れていますが、材料の膜厚さ評価には予め膜厚さ 本標準物質の使用により、様々な材料による薄 が既知のスケールが必要となります。そこで、膜を 膜・多層膜の作製装置や評価装置における膜厚さ 構成する物質として半導体材料の主流を占めてい のトレーサビリティーが確保され、微細加工の信 るSiを選び、その基板上に高周波マグネトロンス 頼性が飛躍的に向上するものと期待されます。 SiO2/Si多層膜標準物質とその認証値 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 社会基盤(標準)分野 計測フロンティア研究部門 Research Institute of Instrumentation Frontier 研究ユニット長'一村 信吾 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/riif/index.htm [email protected] 029-861-5300 029-861-5881 研究の概要 当研究部門は、特に”遷移・変移現象”を、そし ています。この開発に2つのアプローチ法をとっ てそれが産業技術に大きく係わる“信頼性”をキー ています。一つは、新しい計測・評価装置の開発 ワードとして取り上げ、それに係わる計測・評価技 (ツールの開発) 、他の一つは計測・評価装置を駆使 して得られる知識の開拓です。 Unit 術と、そこから派生する制御技術の開発を目指し 代表的な最近の研究成果 ツール開発では、 「実用化・製品化」レベルまで 完成させることが大きな目標です。本年度は当研 究部門の所有する基本特許をもとに、産業界と共 87 同研究を推進して「超高濃度オゾン連続発生装置」 の製品化を実現しました(写真) 。同装置を用いて 作製した極薄シリコン酸化膜は、シリコン基板と の間に極めて急峻な界面構造を有するため、ナノ レベルの標準スケールとしての利用が期待されて います。この観点から、現在、極表面層の不純物分 布(濃度変移)測定用の標準物質の開発を進めて います。 知識開拓では、知識の体系化、データベース構築 に加えて、規格化・標準化への貢献を主目標にして います。本年度は、燃料電池を主とした水素利用社 会の基盤構築に向けて、高圧水素容器の候補材料 であるステンレス鋼において、水素の移動・拡散に 伴う水素脆化を調べました。この結果は安全のた めの工業規格の策定や、高圧ガス保安法の例示基 準に提供される事になっています。 企業と共同開発した超高濃度オゾン連続発生装置の外観 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 社会基盤(標準)分野 実環境計測・診断研究ラボ On-site Sensing and Diagnosis Laboratory 研究ユニット長'坂本 満 URL: E-mail: TEL: FAX: http://unit.aist.go.jp/on-site/ [email protected] 0942-81-3675 0942-81-3802 Unit 研究の概要 新規な実環境計測・診断技術に供するデバイス による高温圧力計測と広帯域周波数の振動計測技 及び計測技術の開発を目的として、高温圧力・振動 術の開発、高機能のフレキシブル圧力センサによ 計測技術、高順応複合型圧力計測技術および自立 る生体計測への応用、および外部の機械的刺激に 応答型応力計測技術の開発を行います。これらは 応じて、繰返し発光を示す無機系新材料のデバイ すべて当研究ラボのオリジナル技術に基づいてい ス化による自立応答型圧光計測・診断技術の確立 ます。具体的には、高耐熱・高感度薄膜素子の開発 を目指します。 代表的な最近の研究成果 88 高温圧力・振動計測技術は、社会的ニーズが大き また、当研究ラボでは外部からの機械的応力に いにもかかわらず、センサ素子の耐熱性の問題か 反応して発光する無機系新材料(応力発光体と命 ら最高使用温度は400℃程度に留まっており、実 名)を世界で初めて開発しています。発光強度は 機搭載に向けた取り組みは世界的にも進んでいま 外力の大きさに比例するため、応力発光体はセン せん。当研究ラボでは、低コストの半導体プロセス シング材料としての大きなポテンシャルを有して を用いた独自の薄膜法により、600℃程度までの います。現在、応力発光体をナノ微粒子化すること 高耐熱性圧力・振動センサデバイスを開発し、これ により、自立応答型の新しい光応用計測デバイス を用いたブロードバンド型実環境計測・診断技術 として創りあげていく技術について研究を進めて の確立に取り組んでいます。これは、自動車エンジ います。この技術は、従来の計測技術では対応困難 ンの燃費削減や、発電用ガスタービンや化学プラ なマイクロ・ナノサイズの対象物から、産業施設等 ント等の各種産業施設の高効率稼動による排気ガ の大規模構造体まで、計測対象のサイズを選ばな ス削減、省エネルギー、安全性向上に寄与します。 いスケーラブル・センシングが特長です。 図1 高温振動センサと高温動作試験 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 図2 応力発光体を用いた応力分布の可視化 C ollaboration コラボレーション 産総研では、企業、大学、地域との連携を強化 携に係る多種多様な業務を行っています。 することにより、お互いの研究ポテンシャルを 産総研の研究成果が社会に使われることによ 融合、発展させ、新しい産業を生み出すことを り、経済及び産業の発展に貢献することは、産 目的とした活動を行っています。 総研の大きな使命である。知的財産部門におい また、研究の結果得られた成果を知的財産化し ては、知的財産権の戦略的な創出及び効果的な し、その知的財産を用いて社会に技術移転する 維持、管理を行い、産総研の研究成果の最大限 ことをミッションの一つとしております。 の知財権化を図ると共に、実施許諾・権利譲渡 産学官連携の実現に向けてサービスの提供及 を行うため、産総研イノベーションズ(TLO) び、その効果をあげる産学官連携のためのコー と連携して研究成果の実用化を図っています。 ディネート、マーケティング・セールス活動の 新たな技術移転の試みとして、大学・公的研 実施と体制整備を行います。 究機関の技術シーズを基に創業し、新市場・新 そのため、企業、大学や公設研究所などと産 産業を切り拓くような急成長型のベンチャー企 総研が、①共通のテーマについて対等の立場で 業(ハイテク・スタートアップス)を創出する 協力しあいながら研究する共同研究、②企業、 システムの確立に取り組んでおります。そのた 法人などが産総研に研究を委託する受託研究、 めに、ハイテク・スタートアップス創出の実践 ③企業、大学、法人などに研究を委託する委託 に取り組むとともに、実践の過程を調査するこ 研究、④つくば及び全国地域センターの技術カ とにより課題を抽出し、創出手法の研究を行い ウンセラーによる技術相談、技術研修の受入等 ます。そして、その成果を産総研の組織・制度 の業務を行っています。 改革にフィードバックし、産総研がハイテク・ その他、連携大学院関連、客員研究員受入、研 スタートアップス創出のプラットフォームとな 究助成金・寄付金、研究員の派遣など産学官連 ることを目指します。 産業界 大学 地域経済社会 企業ニーズ等 連携ニーズ等 社会ニーズ等 産学官連携部門 ─外部との連携窓口─ 産学官連携コーディネータ 研究ユニット (R&D) 知的財産部門 産総研 イノベーションズ (技術移転) ベンチャー開発戦略研究センター ●お問い合わせは 産学官連携部門 TEL 029-862-6142 URL: http://unit.aist.go.jp/collab/ci/wholesgk/index.html 知的財産部門 TEL 029-862-6153 URL: http://unit.aist.go.jp/intelprop/ci/index.htm ベンチャー開発戦略研究センター TEL 03-5288-6868 URL: http://unit.aist.go.jp/vrc/ 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 Collaboration 連携・知的財産 89 産総研組織図 理事長 監 事 副理事長 理 事 研究センター(25) 深部地質環境研究センター アドバイザリーボード 活断層研究センター 化学物質リスク管理研究センター ライフサイクルアセスメント研究センター 研究拠点 研究コーディネータ 北海道センター 生物情報解析研究センター 東北センター ヒューマンストレスシグナル研究センター つくばセンター 強相関電子技術研究センター 臨海副都心センター 次世代半導体研究センター 中部センター ものづくり先端技術研究センター 関西センター 超臨界流体研究センター 中国センター 界面ナノアーキテクトニクス研究センター 四国センター グリッド研究センター 九州センター 爆発安全研究センター 顧 問 参 与 企画本部 業務推進本部 評価部 Organization パワーエレクトロニクス研究センター フェロー 生命情報科学研究センター 糖鎖工学研究センター 年齢軸生命工学研究センター 環境安全管理部 デジタルヒューマン研究センター 広報部 ダイヤモンド研究センター 監査室 近接場光応用工学研究センター バイオニクス研究センター ジーンファンクション研究センター 太陽光発電研究センター 研究センター システム検証研究センター ナノカーボン研究センター 研究部門 研究ラボ 90 先端情報計算センター 特許生物寄託センター 研究部門(21) 計測標準研究部門 地圏資源環境研究部門 知能システム研究部門 エレクトロニクス研究部門 ベンチャー開発戦略研究センター 光技術研究部門 地質調査情報センター 脳神経情報研究部門 計量標準管理センター 人間福祉医工学研究部門 ナノテクノロジー研究部門 計算科学研究部門 生物機能工学研究部門 技術情報部門 計測フロンティア研究部門 ユビキタスエネルギー研究部門 産学官連携部門 セルエンジニアリング研究部門 知的財産部門 先進製造プロセス研究部門 産総研イノベーションズ(TLO) 国際部門 業務推進部門 ゲノムファクトリー研究部門 サステナブルマテリアル研究部門 地質情報研究部門 環境管理技術研究部門 環境化学技術研究部門 エネルギー技術研究部門 情報技術研究部門 能力開発部門 財務会計部門 研究環境整備部門 ●研究ユニットの特徴 研究センター 重要課題解決に向けた短期集中的研究展開(最長7年) 研究資源(予算、人、スペース)の優先投入 トップダウン型マネージメント 研究部門 一定の継続性をもった研究展開とシーズ発掘 ボトムアップ型テーマ提言と長のリーダーシップによるマネージメント 研究ラボ 異分野融合の促進、行政ニーズへの機動的対応 新しい研究センター、研究部門の立ち上げに向けた研究推進 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 研究ラボ(5) メンブレン化学研究ラボ マイクロ空間化学研究ラボ 単一分子生体ナノ計測研究ラボ 循環バイオマス研究ラボ 実環境計測・診断研究ラボ 2004年10月1日現在 研究拠点所在地 〒100-8921 千代田区霞が関1丁目3-1 Tel 03-5501-0900 ¡丸の内サイト 〒100-0005 千代田区丸の内2丁目2-2 丸の内三井ビルディング2階 Tel 03-5288-6868 ¡相模原サイト 〒229-1134 相模原市下九沢1120 NEC相模原事業場UC棟内 Tel 042-771-2614 ¡つくば苅間サイト 〒305-0822 つくば市苅間2530 (財)日本自動車研究所内 Tel 029-852-8742 ¡小金井サイト 〒184-8588 小金井市中町2-24-16 東京農工大学 小金井キャンパス内 Tel 042-386-8441 ¡仙台泉サイト 〒981-3131 仙台市泉区七北田字大沢大ヶ沢132-8 Tel 022-771-9778 ●関西センター ¡つくば中央第三 〒305-8563 つくば市梅園1丁目1-1 中央第3 〒563-8577 池田市緑丘1丁目8-31 Tel 072-751-9601 ¡つくば中央第四 〒305-8562 つくば市東1丁目1-1 中央第4 ¡尼崎事業所 〒661-0974 尼崎市若王寺3丁目11-46 Tel 06-6494-7854 ¡つくば中央第五 〒305-8565 つくば市東1丁目1-1 中央第5 ¡大阪扇町サイト 〒530-0025 大阪市北区扇町2丁目6-20 Tel 06-6312-0521 ¡つくば中央第六 〒305-8566 つくば市東1丁目1-1 中央第6 ¡つくば中央第七 ¡大阪大手前サイト 〒305-8567 つくば市東1丁目1-1 中央第7 〒540-0008 大阪市中央区大手前4丁目1-67 大阪合同庁舎第二号館別館 Tel 06-6941-5377 ¡つくば東 〒305-8564 つくば市並木1丁目2-1 ●中国センター ¡つくば西 〒305-8569 つくば市小野川16-1 〒737-0197 呉市広末広2丁目2-2 Tel 0823-72-1111 ¡つくば北 〒300-4201 つくば市大字寺具字柏山1497-1 ●四国センター 〒761-0395 高松市林町2217-14 ●臨海副都心センター 〒135-0064 江東区青海2丁目41-6 Tel 087-869-3511 Tel 03-3599-8001 ●北海道センター 〒062-8517 札幌市豊平区月寒東2条17丁目2-1 Tel 011-857-8400 ¡札幌大通りサイト 〒060-0042 札幌市中央区大通西5丁目8番地 昭和ビル1階 Tel 011-219-3359 ●九州センター Research Bases ●東京本部 〒841-0052 鳥栖市宿町807-1 ●中部センター 〒463-8560 名古屋市守山区大字下志段味字穴ケ洞 2266-98 Tel 052-736-7000 ¡瀬戸サイト 〒489-0884 瀬戸市西茨町110 Tel 0942-81-3600 ¡福岡サイト 〒810-0022 福岡市中央区薬院4-4-20 Tel 092-524-9047 ¡直方サイト Tel 0561-82-2141 〒822-0002 直方市頓野1541 ●東北センター Tel 0949-26-5511 〒983-8551 仙台市宮城野区苦竹4丁目2-1 Tel 022-237-5211 ●つくば本部・つくばセンター 〒305-8568 つくば市梅園1丁目1-1 中央第2 つくば本部・情報技術共同研究棟 (総合案内)Tel 029-861-2000 �������� ¡つくば中央第一 〒305-8561 つくば市東1丁目1-1 中央第1 ¡つくば中央第二 〒305-8568 つくば市梅園1丁目1-1 中央第2 ������ ������� ������� ������� ���������������� ������ ����� ������ ������� 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 91 A dvisory Board アドバイザリーボード アドバイザリーボード(産総研運営諮問会議) 産総研運営諮問会議は国内外各界の指導的 交換が行われました。分科会では、幹部が気 有識者をメンバーとし、研究所の運営及び研 付かないミッション達成への問題点や障害の 究活動について外部の視点から総合的に検討 抽出を行う事を目的として、研究現場見学、 を行い、助言を得ることを目的としています。 研究グループ長・ユニット長との討議などが 会議は毎年一回開催され、前年度の活動実績 行われました。 の報告にもとづき、研究活動全般、資源配分・ 評価システム等の産総研の運営及び将来の向 かうべき方向などについて議論されます。今 年は2004年10月18日∼19日の二日間、つく ばセンターで開催されました。 Organization 運営諮問会議の開催方法については、昨年 までの経験を踏まえ、少人数の会議にすると ともに、分科会形式による研究現場との意見 メンバー な が お 独立行政法人情報通信研究機構理事長 相澤 益男 東京工業大学学長 内永ゆか子 日本アイ・ビー・エム株式会社取締役専務執行役員 大矢 暁 応用地質株式会社相談役 柊元 宏 凸版印刷株式会社相談役 久城 育夫 東京大学名誉教授 小林 久志 プリンストン大学教授 小宮山 宏 東京大学副学長 榊 裕之 東京大学生産技術研究所教授 中島 尚正 放送大学副学長 野中ともよ ジャーナリスト 平田 正 協和発酵工業株式会社代表取締役会長 宮田 清藏 東京農工大学学長 森尾 稔 ソニー株式会社顧問 米倉誠一郎 一橋大学イノベーション研究センター教授 Geneviève Berger National Committee for Scientific Research(CNRS)前総局長、仏 Swan-Foo Boon Agency for Science, Technology & Research(A*STAR)常務理事、シンガポール Lord Alec Broers ケンブリッジ大学前副学長 英工学アカデミー会長、英 Karen Brown National Institute of Standard & Technology(NIST)前次長、米 Chang-Sun Hong Korea Advanced Institute of Science and Technology(KAIST)前学長、韓国 Sherwood Rowland カリフォルニア大学アーバイン校教授、米 Hans J. Warnecke Fraunhofer Gesellschaft 前会長、独 あいざわ 92 まこと 長尾 真(議長) うちなが ま す お こ お お や さとる くきもと ひろし く し ろ い く お こばやし ひ さ し こ み や ま ひろし さかき ひろゆき なかじま なおまさ の な か ひ ら た ただし み や た せいぞう も り お みのる よねくら せいいちろう 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 D ata データ 役 員 (2004年4月現在) 役 職 氏 名 役 職 氏 名 理 事 長 吉川 弘之 理 事 曽良 達生 副理事長 小玉喜三郎 理 事 曽我 直弘 理 事 吉海 正憲 理 事 筒井 康賢 理 事 小林 憲明 理 事 請川 孝治 理 事 小林 直人 理 事 池上 徹彦 理 事 田中 一宜 監 事 百瀬 英夫 理 事 田辺 義一 監 事 松本 正義 人 員 (2004年4月現在) ●研究職員数(うち外国) 2,395名(55名) [うちパーマネント] [ 2,015名 ] [うち任期付] [ 380名 ] ●事務系職員数 719名 平成16年4月1日現在員 3,114名(55名) 産学官連携制度等による研究員等受入実績数 ●ポスドク 約 800名 ●企業から 約 800名 ●大学から 約1,700名 ●海外から 約 900名 計測標準 14.0% ライフサイエンス 17.2% 地質・海洋 11.2% 情報通信 16.1% 環境・エネルギー 24.0% ナノテク・材料・製造 17.5% 93 研究分野別の研究職員構成 (平成15年度受入延べ数) 予 算 (2004年度) (単位:百万円) その他収入 施設整備資金 貸付金償還時 補助金 26,410 施設整備資金 貸付金償還時 補助金 26,410 外部受入資金 19,095 直接研究費 42,163 支 出 収 入 120,975百万円 120,975百万円 運営費交付金 68,218 施設概要 人件費 34,945 間接部門経費 14,117 (2004年4月現在) 総敷地面積 約2,550,000m2 総延床面積 約 726,000m2 Research Bases 常勤職員 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 産学官連携 (2003年度) 制度名 国大 公大 私大 独立 特殊 共同研究 264 24 108 76 57 委託研究 42 5 16 2 5 5 受託研究 6 0 4 140 125 88 請負研究 1 0 0 0 0 14 6 技術研修 636 31 482 9 3 14 客員研究員 181 27 119 14 35 25 連携大学院 − − − − − 技術相談 − − − − − 知的財産 Organization 国内特許 94 国外特許 実施 (国内+国外) 公益 企業 103 1,107 国 公設試 その他 計(件) 22 30 38 1,829 35 0 20 5 135 145 56 0 8 572 2 0 1 24 166 1 27 78 1,447 106 19 27 121 674 − − − − − 280 − − − − − 4,841 (2003年度) 出願件数 1,526件 登録件数 378件 出願件数 325件 登録件数 121件 実施契約件数 394件 実施料 401百万円 産総研の知財創出と活用の体制・制度 体制・制度 工業技術院時代 体制整備 ●特許管理課 知財意識の高揚・共有 − ●パテントポリシー・技術移転ポリシーの制定 知的財産の運用 ●国有財産に基づく運用 ●法人の意志に基づく運用 ●論文中心に評価 ●知財と論文を同等に評価(業績集計表では知財を ●実施料の5∼30%, 先に記載) 上限 600万円/年 ●実施料の25%,総額上限無し (50万円まで30%, (100万円までは50%) 以後金額に応じ20, ●実施料に応じたインセンティブ(研究ユニットへ 10,5%に逓減) 追加研究費配分) − ●プログラムなど著作権の実施補償 研究者へのインセンティブ 技術移転の促進 共同研究成果の活用拡大 受託研究の拡大 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 − 産総研 ●産学官連携部門,知的財産部門,知財担当副ユニット 長などの設置 ●TLO(産総研イノベーションズ)の活用 ●特許実用化共同研究に対する研究費の配分 ●共同研究企業などのみに ●共同研究企業の選択により第3者への実施機会 よる実施 の提供 ●受託研究が実質困難 ●受託研究への柔軟かつ積極的対応 プレス発表 (2003年度) TV /ラジオ 合計 見学視察対応数 (2003年度) 時間・周波数 98 マスコミ等報道数 新聞 計量標準の分野 1,496 121 1,617 3 長さ・幾何学量 23 力学量 17 音響・超音波・振動・強度 11 温度・湿度 27 流量 12 物性量・微粒子 4,305 8 電磁気量 33 測光放射測定 研究発表 (2003年度) 誌上発表 4,427件 口頭発表 11,019件 著書・刊行物・調査報告 地球科学情報 計量技術情報・工業標準化 刊行物名 放射線 174 計 332 91件 242件 工業標準化 4 標準情報(TR)提案 4 標準仕様書(TS)提案 3 (2003年度) 件数 海外出張者 20万分の1地質編集図 2 ・ 0 海外出張件数 5万分の1地質図幅 5 ・ 5 重力図 2 ・ 0 空中磁気図 1 ・ 0 水文環境図(CD-ROM版) CD-ROM 1 数値地質図(CD-ROM版) CD-ROM 9 刊行物名 (2003年度) 件数 地質調査研究報告 5 活断層・古地震研究報告 1 地質調査総合センター速報 2 地質ニュース (2003年度) 日本工業規格(JIS)提案 図類・冊子 ②地球科学研究報告 15 標準物質 782件 地質調査 ①地球科学図 9 Research Bases 成果普及 12 (2003年度) 3,089件 外国人研究者受入実績(制度別) (2003年度) 受入制度 外国人客員研究員 (内 JSPS/STAフェロ− 36人) ウィンターインスティテュート 受入人数 263 13 JSPSサマープログラム 3 科学技術特別研究員 3 重点研究支援協力員 30 NEDO養成技術者 14 JICA研修 43 技術研修 91 共同研究派遣 非常勤職員 その他 計 62 323 16 861 (新規受入分、滞在6日以上) 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 95 外国人研究者受入実績(国籍別) (2003年度) 国 籍 受入人数 国 籍 受入人数 国 籍 受入人数 中 国 300 ロシア 17 オランダ 8 韓 国 125 台湾 16 エジプト 7 インド 61 バングラデシュ 12 ウクライナ 7 米 国 35 トルコ 12 オーストラリア 5 フランス 29 カナダ 12 ヴェトナム タイ 26 フィリピン 11 その他47カ国 英国 20 イタリア 11 インドネシア 20 ポーランド 8 ドイツ 19 ブルガリア 8 5 87 合 計 861 Organization (新規受入分、滞在6日以上) 96 外国機関との研究協力覚書締結 (2003年度) 締結日 相手先機関 相手先機関所属国 2003. 4. 1 Instiute of Radio Engineering and Electronics(IREE) ロシア 2003. 4.10 ITRI(Industrial Technology Research Institute) 台湾 2003. 5.21 メキシコ合衆国CENAM研究所 メキシコ 2003. 6. 2 地質核科学研究所/GNS ニュージーランド 2003. 6.30 インド科学・産業技術機構(Council of Scientific and Industrial Research, India, (CSIR)) インド 2003. 7. 7 インドネシア火山地質災害防災局(DVGHM) インドネシア 2003. 7.29 オーストラリア国立大学応用数学科(ANU) オーストラリア 2003.10. 3 フランス国立科学研究センター(CNRS) フランス 2003.10.27 中国重慶市地震局 中国 2003.11. 5 ニュージーランド国立科学技術研究機関(IRL) ニュージーランド 2003.12. 1 全南大学 韓国 2003.12.31 サムソン(Samsung) 韓国 2004. 1.15 Geological Survey of Canada, Earth Sciences Sector, Department of Natural Resource (GSC) カナダ 2004. 2.17 マニラ アテネオ大学 フィリピン 2004. 3.22 Center for Computational Biology & Bioinformatics (CCBB), Korea Institute of Science and Technology Information (KISTI) 韓国 2004. 3.24 GKSS-Forschungszentrum Geesthacht GmbH ドイツ 2004. 3.24 国際度量衡局(CCM) フランス・イタリア・ オーストラリア・英国・ ドイツ 2004. 3.26 国立高性能計算センター(NGO) シンガポール 独立行政法人 産業技術総合研究所 2003 ー 2004 2003s2004 編 集・発 行 問い合わせ先 独立行政法人産業技術総合研究所 広報部出版室 〒305-8568 茨城県つくば市梅園1-1-1 中央第2 Tel: 029-862-6217 Fax: 029-862-6212 E-mail: [email protected] URL: http://www.aist.go.jp/ ●本誌掲載記事の無断転載を禁じます。©2005 AIST 2003s2004