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ベトナム・ロンドウック工業団地 (Long Duc

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ベトナム・ロンドウック工業団地 (Long Duc
Special
大和ハウス工業
ベトナム・ロンドウック工業団地
(Long Duc Industrial Park)
「建築の工業化技術」をモッ
トーに、
日系企業の海外進出に貢献
大和ハウス工業株式会社は、 双日株式会社、 株式会社神鋼環境ソリューションと共同でベトナム
南部ドンナイ省においてロンドウック工業団地の開発に着手しました。
経済のグローバル化が発展する中で、建設業界を取り巻く競争環境や企業行動に大きな変化が生
じつつあります。国内の需要が減少し、多くの日系企業が海外展開を図る状況の下、当工業団地の
造成工事は 2012 年 3 月に着工しました。2013 年 8 月にインフラが完成する予定です。『ベトナ
ムでもダイワハウス』の CM でも放映されている本事業をご紹介します。
設立会社の概要
上記日系 3 社は工業団地の事業会社であるロンド
間地点にあるため 、製造拠点や物流拠点としても
最適な立地です。また、2014 年に開通予定の南北
ウック・インベストメント・ジョイントストックカンパニー
高速道路開通後はホーチミン市街から車で40 分、
( Long Duc Investment Joint Stock Company、以
2020 年に開港予定のロンタン新国際空港からは約
下 LDIC )の株式 88% を、現地パートナーであるド
8km と、今後国内や海外とのアクセスをする上で、
ナフード社( Dong Nai Import Export Processing
利便性が非常に高いところにあります。
Agricultural Products and Foods Company)
他よ
あわせて、光ファイバーを敷設し 、進出企業向け
り取得しています。取得後の 4 社の出資比率は、双
に通信回線経由で安価にソフトウェアを使えるクラ
日44.1% 、大和ハウス工業35.1% 、神鋼環境ソリュー
ウドコンピューティングサービスを提供する予定で
ション8.8% 、ドナフード12% です。
す。さらに、電話・インターネット等の敷設申請の代
ロンドウック工業団地の概要
当事業会社が開発するロンドウック工業団地は
ホーチミン市より東に約 40km のドンナイ省ロンタ
28
で約 34km と近く、ホーチミン市街と港湾までの中
行、電話・PC 等のハード提供 、オフィス業務用ソフ
トの提供等をサポートします。
なぜ、ベトナムでの開発なのか?
ン地区にあり、総面積は270ha(東京ディズニーラン
財務省の2012 年度の貿易統計( 速報、通関ベー
ド 5.3 個分)です。大型船の接岸が可能なベトナム
ス)によると、現行統計が始まった1978 年度以降
の主要港の一つであるカイメップ・チーバイ新港ま
で輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支の赤字
ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.13
大和ハウス工業
ベトナム・ロンドウック工業団地(Long Duc Industrial Park)
ロンドウック工業団地概要
ロンドウック工業団地概要
名 称
:ロンドウック工業団地
社 名
:ロンドウック・インベストメント・ジョイントストックカンパニー
場 所
:ベトナム・ドンナイ省ロンタン地区(ホーチミン市東方約 40km)
総開発面積
:270ha(販売面積:200ha)
インフラ完成 :2013 年 8 月を予定
総事業費
:約 1 億米ドル
額 が 最 悪 だ っ た11年 度 の 4 兆 4,220 億 円 より
展開を検討しました。その中でも特にベトナムホー
84.8%増え、12 年度は 8 兆 1,699 億円の赤字と、2
チミンにおいては、地勢学的にアジアスケールでの
年連続で過去最大を更新しました。円安が続く中
SCM
( サプライチェーンマネジメント)において東南
でも各企業は海外への進出を加速させており、特
アジアの中心的位置を占める可能性が高いと考え
に東南アジアへの注目が集まっています。
たからです。バンコク・ジャカルタ・ヤンゴン・クアラ
ベトナムという国を選定した主な要因としては、
ンプールなどの主要都市にも飛行機を使えば約 2
まずは立地です。経済成長の著しい東南アジアの
時間で足を運べる範囲であり、今後東西経済回路
中でも必ずといっていいほど話題に挙がるタイ・イン
が発達していく中での物流網の中心的拠点として
ドネシア・ベトナム、この3カ国から当社海外事業の
欠かせない都市となってくると想定されます。
May-June 2013
29
Special
ベトナムの基礎的経済指標(抜粋)
項目
2009 年
2010 年
2011 年
GDP
実質 GDP 成長率(%)
名目 GDP 総額-ドル(単位:100 万)
一人あたりの GDP(名目)-ドル
5.3
6.8
5.9
97,180
106,427
123,600
1,068
1,174
1,374
6.9
9.2
18.6
消費者物価指数
消費者物価上昇率(%)
出典:JETROhttp://www.jetro.go.jp/world/asia/vn/stat_01/ 次に親日国ということです。日本人に対して非常
2 点目は、港までの距離です。急増するホーチミ
に敬意や憧れを抱いており、仕事をする上でもコ
ン周辺の貨物量に対応するため 、ホーチミン港の
ミュニケーションが取りやすいというメリットがあり
代替港として大型船が寄港可能な深水バースのカ
ます。実際、当社ではベトナム人スタッフが 25 名程
イメップ・チーバイ新港の建設が進んでいます。船
度在籍していますが 、離職率が激しいベトナムで、1
便は今まで、ほとんどが市内にあるホーチミン港を
人として辞めたスタッフがいません。
使用していました。こちらの港は、大型船が寄港
最後に労働力が未だ比較的安価で豊富だという
できずほとんどが小型船で小ロットの荷物しか出
ことです。ベトナムでは、約 9,000万人いる人口のう
荷できませんでしたが 、カイメップ・チーバイ新港が
ち約 75% が 40 歳以下であり平均年齢は 28 歳とい
完成すれば大型船も寄港が可能となり国際物流も
う豊富な労働力のある国です。賃金も、近隣諸国と
活性化すると想定されます。
比較をすると中国の約1/3 、タイの約半分です。近
3点目はロンタン国際空港までの距離です。2020
年では物価上昇率が激しく最低賃金も上がってきて
年開港予定のロンタン国際空港にも近く、陸・海・空
はいますが、相対的に安価な国といえます。
運全てにおいて優位性のある立地といえるでしょう。
ロンドウック工業団地のセールスポイント
1.
30
製造拠点、物流拠点として最適な立地
2. 日系企業が8割強をシェアする工業団地
ベトナム国内で 8 割強の割合を日系企業がシェア
進出企業が工業団地を決定する際に欠かせない
している工業団地はロンドウック工業団地のみであ
ポイントとして立地が挙げられるかと思いますが 、
り、日系企業をターゲットとしている工業団地です。
ロンドウック工業団地は 3点の立地優位性がありま
ベトナムの脆弱なインフラに懸念を抱く日系企業が
す。
多いため、日系企業が満足できるようなインフラ設
1点目は、ホーチミンからバイクや車で1時間で通
備を完 備しています。入 居企業は現在のところ
勤可能という点です。
( 2014 年南北高速道路開通
100% 日系企業となっており、外国企業への誘致は
後 )立地により、雇用も左右されます。優秀なベト
していません。造成工事は西松建設、設計管理は
ナム人管理職はほとんどがホーチミン市内に住んで
日本工営、排水処理施設はパートナーである神鋼
おり、自宅からバイクで1時間前後で通える範囲の
環境ソリューションが担当します。電力供給ではベ
職場を選定する傾向があります。また、ドンナイ省
トナム人スタッフを24 時間常駐させ、万が一の緊急
はホーチミン市に次いで人口の多い地域であり、
対応にも備えています。入居までのサポートはもち
ワーカーが集まり易い地域と言われています。工業
ろんのこと、工業団地入居後も日本人スタッフが工
団地の数も多く、比較的作業慣れしているワーカー
業団地に常駐するため、日本人による入居企業様
も多いです。
への対応が可能です。ワーカーへのストライキ対策
ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.13
大和ハウス工業
ベトナム・ロンドウック工業団地(Long Duc Industrial Park)
LIXILGLOBALVIETNAMFACTORY 施工写真(面積:71,955㎡、2013 年 9 月竣工予定)
や、スタッフの給与など最新の情報交換を入居企業
ハウ工業団地で1件 、計 5 件の工事を施工中です。
と行えるようサポートします。入居企業が安心・安
日系ゼネコンがベトナムに進出し工事請負の受注を
全・安定した環境のもと、事業活動が行えるフィール
するまでに、平均で 2~ 3 年間掛かると言われてい
ドをご提供します。当工業団地で日本の製造産業
ましたが、皆様のご支援によりダイワハウスベトナム
を支えていきたいとの想いもあり、中小企業にも数
は進出から1年で 6 物件 、面積合計約130,000㎡、
多く声を掛けています。例えば 2 次、
3 次下請けメー
総受注金額約 60 億円の受注が決定し現在 5 物件
カーなどサプライチェーンを丸ごと誘致することも検
が着手済です。新築の工場建設を請け負うことだ
討範囲となっています。中小企業が、初期投資を抑
けではなく、施工物件のプロパティーマネジメント
え、進出までの期間が短時間で済むようレンタル工
やファシリティーマネジメントも継続的に行っていき
場も運営予定です。日本の製造産業の成功がベト
ます。設計・施工・アフターメンテナンスまで一貫し
ナムの成長へと導かれることを祈っています。
た体制で対応し 、ベトナムにおいても建築の工業化
技術をモットーにして事業拡大に努めたいと考えて
3. 天災地変が少ない
昨今のタイの洪水被害などから天災地変を気に
する企業様も多くなってきています。ホーチミンに
います。
今後の展開について
おいては、過去歴史的な大洪水の記録がなく、過
大和ハウス工業建築事業のグローバル戦略とし
去 50 年間の台風情報を調査したところ、262 回の
て、世界有数の市場である東南アジアへ日本を起
台風発生に対してわずか 6.87%しか南部には上陸
点とし 、我々の強みである工業団地の開発・販売・
していないというデータがあります。また地震もほ
ファシリティーマネジメントと建物の設計施工を中
とんどなく、事業活動が天災地変に左右されにくい
心として事業展開をしていきます。インドネシアで
という特性があります。
も昨年現地企業の株式を取得し 、工業団地開発を
建設請負事業について
行うことが決定しました。現在はタイ・ミャンマーで
も事業調査中です。工業団地の開発により日系企
大和ハウス工業 100% 子会社であるダイワハウス
業の誘致をすることは進出先のインフラ整備や雇
ベトナムは 2012 年に現地法人を立ち上げ、建設工
用の創出へつながり、経済発展に少しでも貢献が
事請負業を行っています。ロンドウック工業団地に
行える事業だと考えます。ベトナムでのロンドウック
進出を決定された企業様だけではなく、その他工
工業団地開発を皮切りに日本から世界各国へ 、国
業団地に進出した企業様の工場建設も請け負って
と国を繋ぐ橋渡しができるような役割を担っていき
おり、現在はロンドウック工業団地内で4件 、ロン
たいと考えています。
May-June 2013
31
Special
Interview
丁野 慎一氏
大和ハウス工業株式会社
東京本店 建築事業部 第四営業部 営業第一課課長
インドネシア・ベトナム担当
海外事業、東南アジア進出の
背景
国内住宅市場は長期的には縮小傾向にある。国
入居する企業にとっては、進出検討から建設ま
で当社が一気通貫で支援するので、コスト削減に
も寄与するし、当社で全てが網羅されることがもた
内市場の構造変化を受けて次のマーケットに着手
らす安心感を得ていただけると思う。
しなければ右肩上がりの成長は描けない。海外事
ロンドウック工業団地の優位性
業を増やしていくことは当社の成長戦略に欠かせ
ないと考えている。これまでも中国沿岸部では不
ロンドウック工業団地はベトナム南部ドンナイ省
動産開発や賃貸住宅運営を行ってきたが、更なる
に造成中で今 年 8 月に完成予定。ドンナイ省は
海外事業の強化を検討した際に、国内で培ったノ
ホーチミンに次いで人口が多い街で労働者の確保
ウハウを生かせ、早期に事業化でき、営業活動に
がしやすい。ホーチミン市街地からも近く、団地ま
寄与できる事業となる工業団地開発が最も有望な
では 1 ~ 1.5 時間で通勤が可能で、建設中の南北
事業の一つと考えた。当社の強みは工業団地の開
高速道路が完成すると 40 分程度まで短縮される。
発と建設請負。海外事業の際にも国内同様、単な
ロンタン国際空港の完成は少し先となるが、
カイメッ
る建設請負だけでなく不動産を活用しながら建設
プチーバイ港が近くホーチミン市内からも近いとい
に結び付けていく点を重要視している。
うバランスのとれた立地を魅力として PR している。
当社の顧客は日本企業だ。日本企業が進出して
区画は期分け開発ではなく全部仕上げて販売し
いく国がすなわち当社のターゲットともなる。長ら
ていく。株式の 88%を日本企業三社でシェアして
く続いた円高の影響により、製造業はコスト低減
おり、南部の工業団地の中で日本企業が事実上メ
を重視しており、労働者コストが安く、かつ経済発
ジャーをとっているのはここだけだ。日本企業だけ
展が見込め国内需要旺盛な ASEAN に目が向い
で工業団地の開発と入居企業向けサービスやアフ
ている。今回は、パートナーである双日へ当社の
ターメンテナンス等の管理を行えるので、日系色を
海外工業団地開発の事業戦略を伝え、考えが合
存分に示し、日本企業への募集活動を続ける方針
致した為ベトナムに初めて本格展開することとなっ
だ。
た。当社としては初めての海外での工業団地開発
労働者の確保
となるが、ベトナムが親日国である点、また外資
32
きることが肝要だと考えている。
100%で建設が可能なことなどが進出を後押しし
ベトナム経済が大きく成長している過程におい
た。ある程度ハンドリング可能で迅速に事業化で
て、工業団地における現下の課題は労務問題と優
ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.13
大和ハウス工業
ベトナム・ロンドウック工業団地(Long Duc Industrial Park)
秀な人材の確保だ。ベトナムの人口は現在約 9,000
できるが第 3 次以降の企業が進出する際にも、レ
万人、2020 年には 1 億人を超えると言われており
ンタル工場を活用することで、リスクを極力減らし
労働人口は多い。一方、ベトナム全体では月間の
投資コストを抑えて早期に事業化し安心して進出し
離職率が 20% 程度とかなり高いが、福利厚生や
てもらえる環境を提供したいと考えている。ベトナ
待遇面で労働条件の水準が高い日本企業への就
ムではレンタル工場の引き合いが多い。当社が新た
職を希望するベトナム人は多い。優秀な管理職や
にインドネシアで展開する「ダイワ・マヌンガル工業
労働者を育成し確保していくことが重要なポイント
団地」でもレンタル工場の事業化を前向きに検討し
となる。ホーチミンには優秀な人材が多く住んでお
ているところだ。
り、通勤場所や距離も重視して職を選んでいる。
他のASEAN諸国について
その点、ロンドウック工業団地はホーチミン市内か
らのアクセスの良い工業団地だ。
営業と受注実績
次はインドネシアだ。自動車メーカー中心に工業
団地に対する高いニーズがある。工業団地用の用
地が不足している程だ。そして約 2 億 4,000 万の
製造業を中心に日本国内とベトナムの両方で企
人口を擁する巨大な市場を持つインドネシアは、経
業を誘致している。現地には日本人スタッフが 12
済発展に伴い国内市場が伸びれば安定した需要が
人、ベトナム人スタッフが 25 人勤務してベトナム進
見込まれ、日本企業の進出が一層活発化する。こ
出を展開する日系企業をサポートしている。また今
の 2 つの理由から、インドネシアを次の進出先に
年 4 月には近畿経済産業局がベトナム・ドンナイ省
位置付けている。
との間で経済発展に関する協力文書を締結してお
現在インドネシアで共に事業を行っている現地企
り、今後は地方政府主導による関西の中小企業向
業から 10% の株式を取得した。パートナー企業に
けの支援も期待されている。
は大和ハウス工業から社員(取締役含め)が 2 名
現在は 4 現場 5 棟の受注を受けている。今年
出向している。出資割合も大切だが、パートナーと
の 5 月末に 1 棟竣工し、8 月、10 月と随時竣工す
事業を継続して行っていける体制づくりが重要であ
る予定だ。今期も既に内定を頂いている企業もあ
り、その点においては良好な関係のもとに事業を
り、建設請負いの引き合いも多く頂いている。工
進められている。パートナー企業は当社に対して当
業団地の開発及び建設請負事業としては順調にス
社グループの取引先企業のニーズを把握して工業
タートしたと思う。
団地に反映させるという点と日本企業の誘致に関し
海外進出の足掛かりとなる
レンタル工場
て高い期待を寄せている。
工業団地の証券化
経済情勢が厳しい中、中小企業もコスト低減の
証券化事業は安定した収入がないと成り立たな
ためには海外進出を迫られる状況にある。ところ
い。工業団地は売却するアセットであり、販売開始
が、企業にとっては初めての海外進出は資金面の
から完了までは 10 年ほどかかる。工業団地ビジネ
負担も大きくリスクも伴う。大手企業は自力で展開
スが証券化に適しているのかは定かではない。
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