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NEWS LETTER - 野生動物救護獣医師協会
WILDLIFE NEWS LETTER RESCUE VETERINARIAN ASSOCIATION 特定非営利活動法人 野生動物救護獣医師協会 No.56 2006.3.24 発行 野生動物救護獣医師協会は、保護された傷病野生鳥獣の救護活動を通じて市民の野生鳥獣保護思想の高 揚をはかるとともに、地球環境保護思想の定着化を目指しています。そのために、常に世界の情勢を学 び、会員相互の連絡、交流を行い、治療、研究および知識の普及をはかり、社会に貢献していくことを 目的としています。 No.56 目次 ハヤブサとタヌキの保護事例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 WRV 共催東京都支部学術講習会開催報告・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 獣医科大学における野生動物学 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4−9 平成 18 年度総会報告・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 事務局より・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 事務局日誌・振込口座案内・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 ハヤブサとタヌキの保護事例 バードクリニック 金坂動物病院 院長 金坂 裕 1 月 23 日にハヤブサが搬入されました。路上で動けなくなっていたところを保護されました。みたと ころ特に翼や脚に異常も見られず、外傷もありません。胸筋を触ってみると痩せ気味です。まだ若い個 体のようなので、餌が取れなくて動けなくなったようです。 ハヤブサはオオタカと同じく絶滅危惧種に指定されていて、 当院でもオオタカは年に3∼5件くらい搬入されますが、ハ ヤブサは数年に1度の割合です。日本全国の生息数は不明で すが一説によると2∼300羽程度らしいです。 入院室に入れて落ち着かせます。ためしにドッグフードを 入れてみたところ見向きもしません(今までのハヤブサは殆 どすぐに食べてくれました) 。翌日、地鶏のささ身とレバーを 買ってきて入れたところ、ささ身は投げ捨ててレバーだけ食 べていました。さらに安いレバーでは見向きもしません。か なりグルメ嗜好です。それでも食欲もでて落ち着いてきまし た。翼の動きも問題ないようです。しばらく食べさせて体力をつけさせましょう。 ハヤブサに目処がついたところで1月 27 日の朝、茂原市で道路上に動けなくなったタヌキが保護さ れてきました。保護した方が「先生、鼻血を出して動かない!」とダンボールに入れて心配そうです。 みてみると鼻出血もありますが、上顎切歯が 1 本すでに 破壊されてブラブラしています。意識は朦朧としていて も立とうとしますが、腰がふらついていました。まず全 身に軽い麻酔をかけて、ブラブラしている切歯を抜きま した。次いでレントゲンを撮ってみると、右股関節が上 方に脱臼していました。普通の野生のタヌキでは全身に ダニが濃厚感染していることが多いので、まずダニ駆除 をして翌日に手術をすることにしました。 28 日の午後から全身麻酔をかけて手術です。手術方法 は確実な骨頭切除をおこないました。これでしたら、体 内に異物を入れるわけでもなく(体内に金属その他の器 材を入れると、結局自然の中にごみを捨てることになります)安定した手術結果が得られます。手術時 間も 10 分程ですし、数日のうちに脚を着けるでしょう。麻酔から覚めたらその日のうちにドッグフー ドを食べだして一安心です。 30 日にはもう脚を着いて歩き出しましたのが、タヌキですので、夜中に暴れだします。入院ゲージの 扉にしがみつき齧り始めました。以前に保護したタヌキは扉をかじりすぎて自分の唇を壊死させてしま ったことがあるので、抜糸をした 2 月 4 日に市原市の山林にてハヤブサと一緒に放鳥獣してきました。 入院中の彼らの餌ですが、タヌキなら何でも食べると思い、鵜にあげる刺身用の鯵の残りを試しにあ げてみたところ見向きもしませんでした。ハヤブサにあげてみたら食べました。まさかハヤブサが魚を 食べるとは思ってみませんでした。どこの参考書にもハヤブサが魚を食べるとは書いていなかったので 驚きました。 タヌキとハヤブサを放して、メジロとヒヨドリだけになって一段落と思ったら今度はオオタカが搬入 されました。しかも翼が垂れていて放鳥できそうになさそう・・・・・。 − 続く − -2- WRV共催東京都支部学術講習会開催報告 WRV東京都支部長 新妻 勲夫 平成 18 年 1 月 29 日(日)、午後 1 時よりホテルローズガーデン新宿 別館 1Fローズルームにおい て、WRV共催東京都支部平成 17 年度学術講習会を開催しましたので、ご報告申し上げます。 第一部 講習会 演題:1.保全医学について 2.鳥類の血液、血球内寄生虫について 講師:日本大学生物資源科学部教授、日本野生動物医学会副会長、WRV 正会員、村田浩一氏 北アルプス各山域におけるライチョウの生息数の調査、そしてライチョウの個体数の減少の原因は何 か?生息環境の変化(周囲の開発・観光、温暖化の影響)、それにもましてシカ、ニホンザルの分布 の拡大、捕食動物、特にキツネ、オコジョ、猛禽類、ハシブトガラスからの攻撃、外来種(ハクビシ ン)の侵入が考えられる。また、L.caulleryi 感染により重度の貧血に陥り死に至るとも言われてい る。これらのライチョウの感染症にも注意を要する。 第二部 報告会 1. WRV 理事、大窪武彦氏による 2004 年度の WRV で集計された傷病鳥獣の救護活動の実態と事故原因。 救護頭数で多かったのは鳥類で、少なかったのは爬虫類であった。(詳しくは NL55 をご参照下さい。) 2. WRV 事務局、斎田栄里奈氏による猛禽類の事故原因。 カラスの攻撃、衰弱、栄養不良、鏡面仕上げのビル等の人工構造物等への衝突、寄生虫感染、神経症 状、巣立ちの失敗であり、中でも人工構造物への衝突による事故が高い割合を占めた。 3. NPO 法人自然環境アカデミー事務局長、野村亮氏によるフライングケージの運用実績と活用について。 皆様のご協力で完成した東京にある2箇所のフライングケージを如何に工夫して活用しているか等、 各種鳥類における使用法の実態の話や、中型の鳥よりも小型の鳥でのリハビリについての難しさにつ いてのお話も聞くことができた。 4. 東京港野鳥公園グリーンボランティア代表、八木雄二氏による野鳥公園での油汚染講習会について。 昨年 9 月 23 日に東京港野鳥公園で開催した WRV 油汚染講習会での講演会・実習での協力体制、そし て東京港野鳥公園での管理所長、管理係長への働きかけ、東京都鳥獣保護員の体験実習の重要性につ いての話があった。 5. 東京都環境局自然環境部計画課鳥獣保護担当、奈良雅代氏による東京都野生動物行政の現状について。 WRV の鳥獣保護における協力および東京都鳥獣保護員と WRV との協力体制の実態と活動状態について の報告。また、鳥獣を通して東京都民の環境衛生に寄与していることへのお礼を頂戴した。 引き続き、同会場において懇親会を開催、講習会参加者の大部分の方々がご参加下さいました。衆議 院議員元文部大臣小杉隆様、都議会議員財政委員会委員長山加朱美様より WRV の今後の活躍と発展に ついて激励の祝電を頂きました。八木グリーンボランティア代表そして鳥獣保護員より今後の WRV の 活動および都指定病院との連携を密に行動していきたいとのご挨拶を頂き、また、野村自然環境アカ デミー事務局長からは今後とも引き続きフライングケージの活用法、そして協力体制について積極的 なご挨拶を頂きました。また、都庁の中村様より、WRV および鳥獣保護員への活動についてますます ご協力を頂けるという心強いご挨拶がありました。 今回の講習会、報告会、懇親会とあいにく曇り空で大寒の所を総計 50 名以上のご参加を得て、お陰 さまで盛会裏に終了することができました。ご協力賜りました皆様に御礼申し上げます。 -3- 獣医科大学における野生動物学 全国 15 の獣医科大学における野生動物学研究室の有無および、野生動物に関する授業や実 習の有無について、実態調査を行いました。なお、調査にあたっては獣医科大学在学中の学 生に多大なご協力をいただきました。 × 鹿児島大学 × 宮崎大学 × 鳥取大学 ○ 大阪府立大学 × 岐阜大学 ○ 麻布大学 ○ 日本獣医畜産大学 ○ 日本大学 × 東京農工大学 × 東京大学 × 北里大学 ○ 岩手大学 × 酪農大学 ○ 帯広畜産大学 北海道大学 野生動物学 × 研究室の有無 以下、野生動物学研究室『有り』と回答のあった大学について、それぞれの研究室の研究内容をご紹介 いたします。 ★北海道大学:環境獣医科学講座生態学教室 北方四島での生態系の成り立ちを解明するためのフィールド調査、北海道の海棲哺乳類管理につながる調 査(海棲哺乳類の生態調査、生息地の環境調査、人との軋轢の調査など)・長期モニタリング、・北海道沿岸 のアザラシ類における行動学的・疫学的・遺伝学的研究、ニホンジカの生活史(成長、繁殖、死亡パターン) と個体群動態・分布・行動様式などの生態学的研究、ニホンジカの成長や繁殖、感染症に関する研究・遺伝 学的研究・生体捕獲法・生息数調査法・栄養学的評価法など調査技術の開発・改善、遺跡出土の動物骨およ び周辺古環境に基づく先史時代における生業活動の復元、アオウミガメの成長に伴う生殖腺の組織学的・免 疫組織学的研究、北海道の家畜における E 型肝炎ウィルス感染状況調査(野生シカとの関連に注目)、中国 産オオカミの遺伝的多様性 etc. ★酪農大学:寄生虫学教室(野生動物学) 酪農学園大学ハイテクリサーチセンター第 3 研究班(野生動物における環境汚染物質感染病原体分析シス テムの開発)班長である浅川満彦助教授の研究室。道内外から寄せられる野生種及び、非典型的飼育種(特 用家畜、エキゾチックペット、動物園・水族館の展示動物、特殊な実験動物)を扱った寄生虫学的な研究。 2005 年度の卒論のテーマは、「北海道石狩低地帯及びその周辺部で採集されたヒナイダニ類 (Harpirhynchus(Harpirhynchoides) psittaci)の形態および病理所見」「北海道の野生動物における疥癬 の疫学調査について」「五島列島福江島に生息する外来種および在来げっ歯類の寄生虫学的調査」など計 8 つがある。詳しくは以下の HP を参照。 ハイテクリサーチセンターHP http://www.rakuno.ac.jp/dep19/wildanimal/wildanimal.htm 寄生虫学研究室 HP http://www.geocities.jp/wildlifeparasite/wlp1.html -4- ★東京農工大学:東京農工大学農学部付属広域都市圏フィールドサイエンス教育研究センター フィールドサイエンス教育研究センター(FSセンター)には野生動物保護管理分野があり、野生動物の保 護の実務と研究、学生の教育をおこなっている。専任の獣医師が居り、その活動の一環で東京都の野生動物 保護協力大学として、傷ついた野生動物を保護治療し自然に帰す活動をしている。また、主として獣医学科 と地域生態システム学科の学生に研究の指導をしていて、野生動物医学を学ぶことができる。詳しくは以下 のHPを参照。 FSセンター http://www.tuat.ac.jp/~fscenter/ Dr Suzuki's Homepage http://www.tuat.ac.jp/~fswild/index.html ★日本大学:野生動物学研究室(動物資源学科だが獣医学科の学生も入室可) アニマルサイエンスを基礎とした、野生動物及び動物園動物の細胞から個体群に至るまでの様々な研究を 展開している。例えば、イルカの消化機能、クマ類被毛の微細構造、鳥類の性判別、野鳥の生態と血液原虫 保有などが現在の研究テーマ。教授:村田浩一先生。 ★日本獣医畜産大学:野生動物学教室 中垣和英助教授、羽山伸一助教授。野生動物との共存がテーマで、研究内容は大きく分けて二つあり、一 つは各地の野生動物問題(野生動物の保護、外来生物問題など)に関連した研究、もう一つは野生動物の感染 症の研究である。 ★岐阜大学:野生動物医学研究室 ・クマ類の繁殖生理の解明および人工繁殖技術の確立 ・哺乳類および鳥類における内分泌かく乱物質による影響解明 ・野生動物(哺乳類と鳥類)の生理・生態に関する研究 ・野生動物の保護管理および保全生物学的手法の確立 ・野生動物の救護原因の分析 ************************************* 次に、野生動物に関する『講義』と『実習』の有無とその内容の現状についてご紹介いたします。 ★北海道大学 【講義】 環境動物・生態学(2 年次必修) :脊椎動物学、生態学、保全生物学、獣医野生動物学、傷病鳥獣 救護、動物園学の基礎について学ぶ。 【実習】 ①環境動物・生態学実習(2 年次希望者のみ。10 名程度):知床財団と共同で実施。知床国立公 園、鳥獣保護区での生態系保全、野生動物保護管理について、講義と実習(エゾシカのセンサス、クマ巡視、 サンプル処理などの体験)で学ぶ。②ザンビア研修:本来は大学院生向けのプロジェクトだが、学部生も参 加可能。熱帯性伝染病に関する講義と実習、野生動物保護管理について講義と国立公園での実習を行う(学 年指定は無いが、去年は学部生 4,5 年生が 7 名、院生が 4 名が参加した)。 -5- ★帯広畜産大学 【講義】 獣医学科の授業には無く、畜産学科の授業には野生動物学という授業がある。生態・行動・調査 方法・保護管理・北海道の現状、についての講義を行う。また、保全生態学・環境法にも野生動物に関する 内容が含まれている(上記3講義について、獣医学科学生は受講・単位認定可能)。 【実習】 獣医学科には無い。畜産学科の生態系環境科学ユニットには野外実習としてフィールド調査の実 習があるが、獣医学科学生は受講不可。 ★酪農大学 【講義】 獣医 1 年次に選択科目(通年)として「野生動物学」を浅川満彦先生が座学講義を行う。内容は、 日本野生動物医学会策定「獣医生態学」シラバスに準じ(坪田ら、2000)、野生動物(エキゾチックペット や動物園・水族館動物含む)、特に鳥類と哺乳類全般の形態、分類、生態、生理、行動、進化、生物地理、 保護・管理、調査研究法などの基礎知識を学ぶ。 【実習】 博物館実習(学内)にて、浅川満彦先生による「哺乳類調査及び標本作成実習」を行う。 ★岩手大学 【講義】 ①野生動物学(1年次) :動物園を中心とした繁殖や生態、疾病の話と、野生動物の保護管理の必 要性や、救護などに関する話など。動物公園の獣医師で、野生動物に関する活動にも力を入れていらっしゃ る方が講師をつとめる。②動物園動物学(5・6年次合同):17年度からの新科目で、動物園のこれまでの 役割と今後のあり方について、野生保全の現状など。前半は、実際に動物園に勤務している獣医師の資料と 岩手大学の先生のアフリカでの話を基に行われる。後半は『野生動物学』の講師により、具体的な事例を基 に飼育や救護の実態について講義がおこなわれる。また今年度は、ディスカッション形式の講義と、動物公 園での講義と見学も行われた。 ~~獣医学科以外の講義で受講し、単位認定されるもの~~ * 野生動物管理学(農林環境科学科):日本の野生動物に関して、種類や分布といった基本的な事から、調査 方法・農林業への被害、野生動物との共生へと考えを広げられる講義である。また、毎回野生動物の標本な どに直接触れることもできる。 【実習】 動物飼育実習(1年次) :動物園動物の飼養管理を行う日があり、飼育員の指導の下で掃除や給餌 などの実習を行う。 ~~獣医学科以外の講義で受講し、単位認定されるもの~~ * 野生動物管理学実習(農林環境科学科):生息数の推定、野生動物の捕獲と計測・標本作成など。機材数が 限られる事と獣医学科の講義と重なるため、受講は難しい。 ★北里大学 【講義】 『野生動物学概論』(1年生前期12コマ):動物の系統と分類、野生動物の調査法・個体群と 生息場所・野生動物の行動と社会、野生動物の繁殖、野生動物の獣医学、野生動物の保護管理、動物園見学 教科書にそって進行するだけではなく、個々の野生動物を取り上げ、亜種に注目して多面的にその違いや 共通点、その理由を比較しながら、種の保存にはまず『動物を知る』ことが必要、かつ大切であると述べら れた。具体例として、堀先生が携われた危惧されてきた動物(ニワトリ・トラ・ゾウなど)から、一般的ま たは特徴的な性質を持つ動物など、範囲を決めることなく本当に様々な動物があげられた。また、絶滅種が -6- どのようにして絶滅してしまったのか(歴史的・政治的・経済的背景) 、どれくらいまで数が減ってしまうと 人工飼育・繁殖を行ったとしても絶滅の道をたどることになるのか、絶滅すると言われてきた動物が国際的 な協力を経て少しずつ回復してきた経緯など多様で興味深い話をされた。 獣医師は対象となる『動物を知る』ことが必要不可欠であることを何度も強調されて、その知識が野生 動物の獣医学につながる。そして、野生傷病鳥獣の捕獲法のひとつである、吹き矢の作り方・その原理・吹 き方など教壇で実際に作って飛ばし、的を射るというところまで実践され、何人かの生徒が体験をした。 保護管理に関しては、ワシントン条約やラムサール条約や人獣共通感染症などを取り上げて、最近の興 味・好みだけで野生動物を飼うことから人や動物への影響を話された。結局は人の身勝手な行為でその動物 が捨てられ、外国産野生動物の問題がとても深刻になっていること、そのための法律が作られてもいること を話された。 動物園に関してはその歴史や目的から話が始まった。世間では『動物園=レクリエーション』のイメー ジがまだまだ強いが、社会教育や調査・研究、種の保存の役割を担っていることを強調されていた。実際に よこはま市立動物園 ズーラシア に行って、動物病院や繁殖センターを現場の獣医師さんの説明を聞きな がら見学をした。その後、自由に園内を見学し、それぞれが動物のことを学んだ。 【実習】 野生動物学概論にて、ズーラシアへ見学に行く。 ★東京大学 【講義】 無し 【実習】 無し ★東京農工大学 【講義】 野生動物医学(必修)、動物行動学Ⅰ・Ⅱ(必修)、生態学、野生動物保護学、動物個体群生態学、 環境倫理学がある。この他にも環境保護関係の講義は多数ある。野生動物医学の講義の主な内容は、エキゾ チックアニマル・傷病野生動物の保護飼育について。それ以外の講義は他学科の教官により行われるので、 内容は獣医学と直接関わりのない内容である。 【実習】 大学施設の FS センターが主催する、FS 実験実習は夏休みに6日間開講され、全学科の学生が受 講できる。基本テーマは生物多様性の維持・持続的利用・環境教育とし、それらのテーマに応じた幅広い実 習を行う。野生動物関連としては、フィールドサインの探索、傷病野生動物の救護などがある。 ★日本大学 【講義】 『動物生態学』:日本獣医畜産大学の羽山伸一助教授が講師。野生動物保護における獣医師の役 割を考えていく授業で、動物生態学を中心に、保全生物学、自然保護学、野生動物と人間の関係学を学ぶ。 動物資源学科では、野生動物学入門や野生動物保護管理論などの授業があり、受講可能。 【実習】 獣医学科には無い。動物資源学科では、野生動物学演習があるが、受講可能かどうかは不明。 -7- ★日本獣医畜産大学 【講義】 2004 年度にカリキュラムの変更があり、若干授業内容に変更あり。①野生動物学Ⅰ(1 年次必修 科目。※新カリキュラムでは動物学概論) :生態学や野生動物問題についての講義などの野生動物学への導入 の要素が強い。②野生動物学Ⅱ(5 年次必修科目) :野生動物の臨床、野生動物問題の各論、野生動物の感染 症といった講義が中心。 【実習】 野生動物学実習(5 年次選択必修科目) :水鳥救護研修センターでの油汚染鳥の救護実習を野生動 物学特別実習(定員制)として、また、個人単位での動物園実習や野生動物関連施設への実習も認定している。 この他、様々な形で野生動物に関連した施設で活動(実習)することで、単位認定される。ただし、野生動物 学実習は必修科目では無いので履修者が少ない。 ★麻布大学 【講義】 ①保全生態学(1年次、福岡秀雄先生):生物多様性について、多様性保全のための野生生物保護、 進化生態学、淡水生物の保全生態学、環境問題。②野生動物学(2年次、堀浩先生):動物の系統分類、野生 動物の保定、制御、両生・爬虫類・鳥類の取り扱いと疾病、野生傷病鳥獣の救護。③(5年次)小動物獣医総 合臨床のうち一時間:学外講師による野生小動物の臨床について。 【実習】 無い ★岐阜大学 【講義】 『野生動物医学』(5年前期15回、必修2単位):生態系の基本概念、野生動物問題と倫理、捕獲、 生態・生理、動物園獣医学(動物園見学)、救護、保全生物学概論、保護管理と法制度、学生自主討論会、な ど。 【実習】 『野生動物医学』講義の一部として、付属演習林で2泊3日の体験学習:自動撮影装置を用いた生 態調査、ラジオテレメトリー、植生調査、などの体験。 このほか、講義や実習ではありませんが,岐阜大学にはCOE野生動物救護センターがあり、全学の希望者を 対象に、定期的に『学生リハビリテーター講習会』が開催されている。修了者は、学生リハビリテーター(ボ ランティア)として実際に救護活動に参加できる。 ★大阪府立大学 【講義】 ①『野生動物医学』(隔年開講、3・4回生対象、選択科目):一昨年度から開講され、今年度2 回目が行われた。2回とも、天王寺動物園の宮下園長を講師に迎え、集中講義(3日間。実習はなし)として 行われ、大半の学生が受講。講義内容:野生動物の特に哺乳類、鳥類、爬虫類を中心に、生態、形態、分類 などの基礎的な動物学の知識とともに、野生動物の保護管理や動物園での臨床など野生動物医学の大要を理 解・習得する。②『動物生態学』(1回生、必修科目、理学部 生物科学科 谷田教授):動物生態学について の基本的な概念の理解をはかる。すなわち、生態系の基本構造(環境や生息場所と生物の関係、食物連鎖や 競争などの種間関係)、個体群の諸過程(個体数の変動,生命表解析)などについて理解を深める。また、 今日的な課題となっている生態系や野生鳥獣の保全について必要な基礎知識を習得することを目標とし、個 体群と生態系の管理についての保全生態学を中心に学ぶ。具体的な保護対象となる日本の野生鳥獣個体群の 実態と、保護の手法についても学習する。 農学部内では、「自然保護論」「動物生態・行動学」等、の講義もあるが、獣医学科本来の必修科目だけ -8- でほとんどのコマが埋まってしまうので、空きコマにそれらがうまく当たることは、まずないのが現状。 【実習】 動物園などでの実習が「学外特別実習」として1単位認められる(対象:3~6回生)。天王寺動物 園などで実習する学生が多い。「学外特別実習」内容:インターンシップ制度を適用して、学外の獣医学に 関連する施設(動物園,水族館・園、農業共済組合、国公立研究所、一般開業獣医院・動物病院、製薬企業、 就職希望先など)で、学内では学べないさまざまな内容の実務を体験実習し、問題意識の向上や学習目標の 明確化、実社会への対応能力を養う。 ★鳥取大学 【講義】 『野生動物医学概論』(5 年次、集中講義):講師は広島市安佐動物園園長、福本幸夫先生。内容 はエキゾチックアニマル、動物園動物などの形態、生理の講義や症例検討などがある。また、吹き矢作りや 採血などの実習も含まれる。 【実習】 カリキュラムとして組み込まれてはいないが、学生が自主的に現地実習をした場合、申請があれ ば単位が認定される。 ★宮崎大学 【講義】 無し 【実習】 無し ★鹿児島大学 【講義】 『野生動物獣医学』(11期=6年生前期、選択科目):非常勤講師を招いての3日間の集中講義。 講師は鮫島正道先生(少なくともここ数年は鮫島先生)。講義内容は、1・2日、3日目午前中は座学。 野生動物と獣医学(野生動物とは、野生動物と家畜の違い、野生動物医学、野生動物医学の役割、野生動物 医学の概要)、野生動物の系統と分類(系統・分類の知識はなぜ必要か?、生物の分類と特性、動物の系統 分類、脊椎動物の系統分類)、野生動物医学の特性(野生動物医学の特性、捕獲・保定・不動化、予防医学、 衛生と消毒、ストレス)、生態系の保護(自然生態系について考える、保全生態学、環境関連法)、野生動 物の疾病と治療(スライドによる説明:両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類の疾病と治療)。 3日目午後は飼育個体(アヒル、ウズラ、シマヘビ、アオダイショウ、イシガメ、クサガメ、イエウサギetc.) を用いての麻酔、保定等の実習。 「野生動物獣医学」を受講しての感想:飄々としたユーモアを交えた講義で、長崎鼻パーキングガーデン での長い飼育・臨床経験、野生動物(飼育下)の麻酔研究、フィールド調査経験などに基いた網羅的な内容 である。真面目に受講すれば一通りの知識は身に付くと思われる。ただ、講師の鮫島先生とは受講以前から お付き合いさせていただいていますが、調査・イベント等でご一緒した際に、「今年の学生は酷かった」と こぼされていた年がありました。受講する学生の側のモチベーションが著しく低い場合(学年)があるそう です。その理由として、全員の進路がほぼ固まっている6年生の前期に開講、選択科目である(1学年30名中、 受講者は約20名程度)、等があるのではないかと思う。また、野生動物獣医学に興味を示す学生が殆どいな い学年もあります。 【実習】 上記『野生動物獣医学』に付随するもの以外は無い。 記事ご協力者(敬称略) 北海道大学:小川 恵子、帯広畜産大学:齋藤 幸子、酪農大学:相澤 空見子、岩手大学:前田 佳名子、 北里大学:山崎 翔気、東京大学:机 直美、東京農工大学:石山 大・李 謙一、日本大学:瀬戸口 香奈・ 伊藤 圭子、日本獣医畜産大学:加藤 卓也・奥名 美智子、麻布大学:田川 小百合、岐阜大学:山中 淳史、 大阪府立大学:舛田 崇、鳥取大学:畑 元二、宮崎大学:松本 祐介、鹿児島大学:高垣 勝仁 -9- 平成 18 年度総会報告 平成 18 年 3 月 11 日(土)平成 18 年度総会が立川市民会館にて開催され、全ての審議案件について承認 されました。以下に新役員の紹介および平成 17 年度収支報告・平成 18 年度収支予算をご報告いたします。 ・新役員(任期一年)の選出-中途欠員による役員増員について次のとおり昨年度選出された役員に加え、新役員の増員が承認されました。 皆川 康雄氏が退任し、新しく安田 剛士氏、石橋 徹氏が理事に就任しました。 理 事 M-0163 安田 剛士 (新任) 群馬県沼田市 アミ動物病院院長 理 事 M-0191 石橋 徹(新任) 東京都三鷹市 いのがしら公園動物病院院長 ・会計報告 平 成 17 年 度 収 支 報 告 書 平 成 18 年 度 収 支 予 算 書 平成17年1月1日から平成17年12月31日まで 平成18年1月1日から平成18年12月31日まで (単位:円) 収 入 の 部 年会費収入 事業収入 委託事業収入 補助金収入 寄付金収入 販売売上収入 受取利息 雑収入 当期合計金額 前期繰越収支差額 金 額 3,275,000 100,000 14,657,458 0 1,484,922 328,500 877 0 19,846,757 23,287,258 支 出 の 部 事業費 委託事業費 補助金事業 管理費 金 額 1,576,760 12,190,054 0 1,912,312 当期合計金額 15,679,126 当期収支差額 4,167,631 法人税等充当金 553,254 次期繰越収支差額 26,901,635 (単位:円) 収 入 の 部 年会費収入 事業収入 委託事業収入 補助金収入 寄付金収入 販売売上収入 受取利息 雑収入 当期合計金額 前期繰越収支差額 金 額 1,500,000 100,000 14,060,000 0 1,500,000 500,000 0 0 17,660,000 26,901,000 支 出 の 部 事業費 委託事業費 補助金事業 管理費 金 額 3,550,000 13,850,000 0 2,000,000 当期合計金額 19,400,000 当期収支差額 -1,740,000 次期繰越収支差額 25,161,000 ※前期繰越収支差額は、千円未満切捨等の為17年度収支報告書と誤差が生じる ※非営利活動事業(一般会計、財団設立基金会計)および収益事業の合算予算書 - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - *- * - * - * - * - * ニュースレターが、HP でも見られるようになりました!! ニュースレター55 号でもお知らせ致しましたが、ニュースレターが、WRV の HP でもご覧頂けるようにな りました。現在、51 号から 55 号まで掲載されています。HP からのニュースレター閲覧が可能で、ニュース レターの郵送がご不要な会員の方は、事務局まで、メール、FAX、あるいはお電話にてご連絡下さい。資源 節約、経費節減のため、ご協力をお願い致します。 - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - -10- ・・ 事務局より ・・ 3 月末日にて事務局員の辞職がありましたのでお知らせいたします。 “WRV会員の皆様、はじめまして、こんにちは。”とNL46でご挨拶をしてからはや2年半、あっと いう間でした。勤務当初はパソコンの使い勝手もよくわからないままにNL校正・編集、神奈川支部の ロゴ作り、報告書作成、研修会案内書送付等、ほとんどがパソコン仕事。他には“保護した鳥をどうす ればよいでしょう?”の電話質問に、「野鳥をたすけるはじ めの一歩」を片手に、何度もひやひやという思いをしました。 この職を通して、野生動物に関わる様々な分野の方と知り 合うことができました。直接お会いできた方、お電話でお 話できた方、NLを楽しみに読んで下さったWRV会員の 皆様、ご指導・ご鞭撻、本当にありがとうございました。 私はまだまだ獣医師としてひよっこです。この 3 月でWR Vを一旦卒業し、もっとでっかく貢献できることを目指し ます。では、またお会いできる時を楽しみにしております。 身内 裕子 寄付ご協力者(敬称略)2005.11.23∼2006.3.1 <一般> 12.26 31 1.25 29 2. 5 磯日出男 8,000 山田暁子 7,000 33,000 ヤマネマサノブ 日野研修会会場にて 2,650 東京支部講習会会場にて 1,000 竹野研修会会場にて 2,550 15 森田まさはる 35 周年リサイタル会場にて 26 臨時理事会にて 14,473 7,000 3. 1 漆原邦夫 50,000 7 秋山愼作 10,000 清水ちか子 13,000 おおくぼ動物病院(募金箱) 20,057 ∼ご協力 ありがとうございます。∼ <人災> 12.22 キシノ動物病院(募金箱) 48,282 26 山田暁子 7,000 1. 6 鳥たちの病院(募金箱) 49,424 20 西日本バンダー交流会事務局 20,000 (中津賞先生講師お礼) 2.24 桜井動物病院(募金箱) 37,252 【人災による傷病野生鳥獣の救護活動募金】のお願い WRV では、傷病鳥獣救護活動を迅速に実行するため、人員の派遣費および資材の調達の募金 活動を行っています。ご協力をお願い致します。 (救護活動用基金) 郵便振替口座番号 口 座 名 00190−5−722368 WRV 人災募金 - 11 - 事務局日誌 2005.12.26~2006.3.24 - - - 12 月- - 26:NL55 発行 - - - 1 月- - 11:監査会打ち合わせ 出席:須田、新妻、野村、小森監事 12∼14:ヤンバルクイナの国際ワークショップ(沖縄) 参加:羽山、齋田 17:理事会 18:特定外来生物へのマイクロチップ技術講習会検討会 出席:須田 24,25:第三回油汚染事故対策水鳥救護研修 出席:須田、馬場、植松、身内、齋田 29:東京都支部講習会 出席:須田、森田、野村、小松、新妻、大窪、佐藤、箕輪、齋田 - - - 2 月- - 1:ヒナを拾わないでキャンペーン打ち合わせ(日本野鳥の会、日本鳥類保護連盟) 出席:野村、箕輪 3:監査会 出席:須田、森田、新妻、野村、倉林監事、小森監事 5:油汚染事故対策水鳥救護研修(現地研修:兵庫県竹野) 参加:須田、中津、箕輪、齋田 5:特定外来生物へのマイクロチップ技術講習会(大阪) WRV より申込者 6 名 10:日野市立三沢中学校一年生環境省水鳥救護研修センターへの職場訪問 対応:齋田 15:理事会 16:野口先生遺品送料見積り 対応:須田 17:衝突疑いのフクロウ解剖 担当:齋田 19:ヒナを拾わないでキャンペーン協賛お願い(日本獣医臨床病理学会) 担当:野村、須田 22:ヒナを拾わないでキャンペーン打ち合わせ(日本野鳥の会、日本鳥類保護連盟) 出席:須田 23∼3/4:対馬油汚染鳥救護 派遣:馬場、皆川、戸田 26:特定外来生物へのマイクロチップ技術講習会(東京)講師:石橋 WRV より申込者 26 名 --- 3 月- - - 1:野口先生遺品搬出 出席:須田、馬場、新妻、佐藤(伸) 5:油汚染講習会(大阪) 講師:中津 5:特定外来生物へのマイクロチップ技術講習会(仙台) 5:三重県獣医師会講習会 講師:野村、戸田 講師:須田 WRV より申込者 1 名 11:WRV 総会 12:特定外来生物へのマイクロチップ技術講習会(名古屋)講師:石橋 22:理事会 23:特定外来生物へのマイクロチップ技術講習会(岡山) 講師:須田、石橋 野生動物救護獣医師協会 (ホームページ) http//www/wrvj.org (E-mail) [email protected] NEWS LETTER No. 56 発 2006. 3 .24 発行 行:特定非営利活動法人 事務局: 〒190-0013 野生動物救護獣医師協会 東京都立川市富士見町 1-23-16 富士パークビル 302 TEL: 042-529-1279 発行人:須田 FAX: 042-526-2556 沖夫 編集文責:森田 - 12 - 斌