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Ⅱ.研 究成果報告 - Kyushu University Library

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Ⅱ.研 究成果報告 - Kyushu University Library
Ⅱ
.研 究 成 果 報 告
一
研究報告 一
酸 性 雨 の影 響 評 価 と大 気 汚 染 物 質 の 挙動 に 関す る研 究
九州大学理学部化学科
百島則幸
九州電力総合研究所エネルギー研究室*小
池正実*
Effect
of acid
deposition
Noriyuki
Department
and
atmospheric
Momoshima
pollutant
and Masami
in the
environment
Koike*
of Chemistry, Faculty of Science, Kyushu University
*Laboratory
, Kyushu Electric Power Co., Inc.
The objectives of this study were to investigate the distribution and chemical characteristics of cations
in annual rings of Japanese cedar (Cryptomeria japonica D. Don) grown in a healthy stand of an
unindustrialized region in Japan and discuss the possibility of using cations in tree-rings as a chronological
index of acidic deposition. Cations and phosphorus in trees showed a specific distribution in its radial
pattern but similar distribution trends were observed at all vertical positions. The patterns were classified
into three groups: (I) constant radial concentrations (Ca2+,Sr2+, Na+, and probably Ba2+),(II) high
concentrations in the heartwood and low in the sapwood (Me, K+, Rb+, Cs+), and (III) increasing
concentrations in the sapwood (phosphorus, Mrf+,Cu2+).
酸 性雨 によ り引き起 こされた土壌溶液の化学変化 は経根吸収を通 して樹 木(樹 液)に 入 って くる。
年 輪 中の元素分布 が樹 液 に起 こった化学変 化を残 してい るとすれば、年輪分析 は土壌環境 の変遷を
た どる有効 な手段 とな る。年輪分析 を行 う場合、な るべ く過去の年 輪まで さかのぼ って解析 を行い
たい。一本の木 であれ ば根 本 に近い部分を試料 とすれば、上方 を試料 とす る場 合 よ りもよ り多 くの
年 輪を解 析 できる。 しか し、元素分布 に樹高 による違いがあれば、デ ータの整 合性 を図 るためには
ある特 定の高 さを分析 基準 に定めな ければな らない ことになる。
本研 究で はスギ年輪 中の元素分布(主 に金属元素)に 樹 高に よる違いが あるか ど うか を明 らかに
す る と共 に、主要成分 金属 であるカ リウムの樹木 中での存在形態 につい て考察 を行 った ので報告す
る。
【
分析試料 及び分析方法】
九 州大学農学部 粕屋 演習林 で伐採 したS1(樹 齢77年 、高 さ24m)とS2(樹
齢77年 、高 さ21m)
を用 いた。様々 な樹 高位置 で樹 皮側か ら年輪5年 ごとの元素濃度を定量 した。 スギ材か らイオ ン交
換 水で抽 出 した抽 出液 を真空凍結乾燥 で濃縮 したのち、SephadexG-25に
フィー分離 を行 い、262nmの 吸光度 とカ リウム濃度 を測定 した。
よ りゲル ク ロマ トグ ラ
【
樹高 別年輪 中の元 素分 布】
一つ の元 素を見 る限 りは樹高 による元素分布 に差 は見 られず 、幹 の根本か ら梢 に近い ところまで
ほぼ同 じ分布 パ ター ンを示 した。この ことは、基本的 には幹の どの部分を分析 して も年輪解析 に関
しては 同 じ情 報が得 られ るこ とを意味 してい る。代表 として13mに お ける元 素分布 を図1-3に 示す。
図1に 示 したアル カ リ土類 の中ではMgが 少 し異なった分布パ ター ンを示 している。す なわち心
材部 に少 し濃縮が見 られ る。この分布パ ターンは図2に 示 したアルカ リ金属のKの 分布 パター ン と
類似 している。Mgの 一部 は少な くとも心材化に伴 って移動 している ことを示 しい る。特徴 的なのは
図3に
示 すPとMnで
あ る 。分 布 パ タ ー ン は ア ル カ リ
や ア ル カ リ 土 類 金 属 と大 き く異 な り、 辺 材 部 で 高 く
心 材 部 で 低 濃 度 で あ る。 これ らの元 素 が樹 木 の生 理
活 動 と深 く関連 して い る こ とを示 してい る。
別 の 場 所 で 育 った 比 較 的 若 い 杉 の木 の分 布 パ ター
ン は 、図1-3に 示 さ れ た も の と 同 じ で あ っ た 。こ の こ
とは 、 樹 木 年 輪 中の 元 素 分 布 は樹 木 の 生 育場 所 や 環
境 に 支 配 され る 部 分 よ り、 樹 木 の 生 理 活 動 に よ る 部
分 が 大 きい こ と を意 味 してい る。 元 素 ご とに基 本 的
な 分 布 パ タ ー ン が あ る と言 う こ と は 、 樹 木 間 の デ ー
タ は 基 本 分 布 パ タ ー ン を 基 に し て 相 互 に 比 較 し うる
図1ア
ル カ リ土 類 元 素 の 分 布 パ ター ン
こ と を示 してい る。
辺 材 は生 き て い る細 胞 が 存 在 して い る水 分 の通 り
道 で あ るが 、 心 材 は す で に代 謝 を 営 ん で い ない 死 ん
だ 細 胞 の 集 ま りで あ る 。 心 材 化 に 伴 い 元 素 分 布 パ
タ ー ン が 変 化 す る 元 素 、 こ こ で は 、K、Mg、P、Mn、
Cuな
ど は 過 去 の 情 報 を 探 る 元 素 と して は 有 用 性 が 低
い と結 論 さ れ る 。Ca、Srな
ど分布 パ ター ンが 心 材 と
辺 材 で 変 化 が 見 られ な い 元 素 は過 去 を 辿 る 情 報 を
持 って い る と言 え る。 核 実 験 に よる放 射 性 フ ォー ル
ア ウ ト核 種 の 年 輪 中 の 分 布 パ タ ー ン と放 射 性 フ ォ ー
ル ア ウ トの 地 表 面 へ の 蓄 積 パ タ ー ン の 比 較 か ら 、Sr
は 年 輪 間 を 移 動 し な い こ とが 明 ら か に な っ て い る 。
こ れ ら の 事 実 は 、 年 輪 解 析 に よ り過 去 の 環 境 を 探 る
に はCaやSrが
図2ア
ル カ リ元 素 の 分 布 パ タ ー ン
図3マ
ン ガ ン と リ ンの 分 布 パ タ ー ン
適 当 で あ る こ と を 示 唆 して お り、今 回
の結 果 とも一 致 して い る。
【
カ リ ウム の 存 在 形 態 】
図4に
に ゲ ル ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー の 結 果 を 示 す 。
ゲ ル ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー は 分 子 の 大 き さ に よ り分 離
を 行 う手 法 で あ り、 よ り大 き な 分 子 ほ ど速 く溶 出 し
て く る 。 図 で はKの
る(フ
ピ ー ク 位 置 が2カ 所 存 在 して い
ラ ク シ ョ ン 番 号10と32付
近)。 硝 酸 カ リ ウ ム
や 塩 化 カ リウ ム な ど の無 機 塩 は 、そ れ ぞ れ で フ ラ ク
シ ョ ン 番 号10と15の
位 置 に 溶 離 され る 。 こ の こ とか
ら フ ラ ク シ ョン 番 号10の ピ ー ク は 無 機 の カ リ ウ ム 塩
で あ る と結 論 され る 。 カ ラ ム 体 積 は フ ラ ク シ ョ ン 番
号20に 相 当 し て い る こ とか ら 、フ ラ ク シ ョン番 号32
の 位 置 に 表 れ たKは
、 ゲル と相 互 作用 を して移 動 が
遅 れ た 分 子 と結 論 さ れ る 。262nmの
シ ョ ン 番 号30付
吸 光度 もフ ラ ク
近 に極 大 を示 して い る。 この領 域 の
波 長 は 不 飽 和 結 合 を 持 つ 分 子 種 に 特 徴 的 な も の で る。
こ の こ とか ら も 、32番 付 近 の カ リ ウ ム は あ る 高 分 子
の 有 機 物 に 付 随 したKと
Kは
考 え られ る。
心 材 化 に伴 い 心 材 に濃 縮 され る元 素 で あ る。
有 機 物 に 付 随 し たKが 心 材 化 に 関 係 した も の
で あ る か は は っ き り しな い が 、セ フ ァ デ ッ ク
ス ゲ ル は デ キ ス トラ ン 構 造 で あ り、樹 木 の セ
ル ロ ー ス 構 造 と 類 似 し て い る 。 こ の こ とは 、
これ ら の 有 機 物 が 樹 木 中 で も細 胞 壁 と相 互 作
用 して 保 持 さ れ る 可 能 性 を示 唆 して い る 。
従 っ て 、心 材 化 に 伴 っ て 起 こ るKの 濃 縮 に 関
わ っ て い る 可 能 性 は 高 い と推 察 され る 。
図4杉
抽 出成 分 中の カ リウ ム の ゲ ル ク ロマ トグ ラム
【ま と め 】
樹 高 に よ る 元 素 分 布 パ タ ー ン に 違 い は 見 られ な か っ た 。 こ の こ とは 、 ど の 樹 高 部 分 も 分 析 試 料 と
な り得 る こ とを 意 味 し て い る 。 年 輪 中 の 元 素 の 基 本 的 な 分 布 パ タ ー ン は 、 生 育 場 所 、 生 育 環 境 な ど
よ り も 、植 物 生 理 に 支 配 され て い る と考 え られ る 。 こ の こ とは 、 異 な っ た 地 域 や 場 所 で 育 っ た 木 々
を 基 本 的 な 元 素 分 布 パ タ ー ン を 基 に し て 比 較 で き る こ と を 意 味 し て い る 。過 去 の 環 境 情 報 を 抽 出 す
る 元 素 と して はCaとSrが
最 適 と結 論 さ れ る 。 年 輪 間 を 越 え た 移 動 が 起 こ ら ず 、 心 材 化 な ど の 植 物
生 理 に 基 づ く分 布 パ タ ー ン の変 動 が な い た めで あ る。植 物 生理 と連 動 して 分 布 パ タ ー ン が 変 わ るKやMgな
ど の元 素 は 過 去 の 環 境 を探 る情 報源 と して の 利用 価 値 は 低 い。
参 考文献
1) N. Momoshima, I. Eto, H. Kofuji, Y. Takashima, M. Koike, Y. Imaizumi, T. Harada, Distribution and
Chemical Characteristics of Cations in Annual Rings of Japanese Cedar,Journal of Environmental Quality,
24, 1141-1149 (1995).
一
研究報告
一
高 温 超 電 導 体 の モ ー タへ の 応 用 に 関 す る研 究
九 州 大 学 工 学 部 電 気 工 学 科*吉
田
欣 二郎*・ 高 見
九 州 電力(株)総
馬
繁 治**
合 研 究 所**有
A New Motor using HTSC
弘*・ 園 田
章 浩*
Bulk
Kinjiro Yoshida*, Hiroshi Takami* and Akihiro Sonoda*
Shigeharu Arima**
*Departme
nt of Electrical Engineering, Faculty of Engineering, Kyushu University
**Kyushu Electric Power Co
., Inc. Research Laboratory
Maglev systemsand magneticbearingsusing the pinningforce in High 7TSuperconductor(HTSC)have been
being highlighted. From the viewpoint that the pinning force can be considered as a synchronizing force, we have
started to study on a new motor using HTSC bulk.
A basic experiment of propulsion and guidance operations has
been carried out on the armature guideway in the water tank, by the help of a model ship consisting of a new HTSC
linear synchronous motor. It is successfully confirmed that the pinning force is utilized as a synchronizing force.
Favorable propulsion and guidance have been achieved without guidance control only by trajectory control of
propulsion motion.
高 温 超 電 導 体(HTSC)を
線 材 と して で は な くバ ル クの ま まで応 用 す る磁 気 浮 上 や磁 気 ベ ア リ ングが
脚 光 を浴 び て い る。磁 束 ピ ン止 め効 果 に よ る位 置 固 定 力 を利 用 して 、進 行 方 向 に沿 っ て 一様 な磁 束 密 度
を持 つ 永 久磁 石 軌 道 上 で 、横 ず れ を抑 えて 安 定 浮 上 させ る実験 が 報 告 され て い る。 しか し、位 置 固 定 力
は動 くもの で あ るモ ー タへ の 応 用 とは相 反 す る もの で あ るか ら、現 在 の と ころ全 く研 究 され て い な い。
研 究 代 表 者 ら は、 こ の位 置 固 定 力 を 同
期 化 力 と 見 な す こ とが で き る こ と に 着
目 し、 全 く新 し い 原 理 の モ ー タ の 開 発
研 究 を 行 っ て い る1)、3)。 本 研 究 で は 、
HTSCモ
ー タの 推 進 と案 内 動 作 を基 礎
的 実験 に よ っ て確 認 した。
【HTSCモ
ー タ の 実験 シス テ ム 】
電 機 子 コイ ル に は 、 当研 究 室 に現 有
す る 約6m軌
ル 車(MEO2)の
道 の 水 中 リニ ア 実 験 モ デ
リ ニ ア 軌 道 を用 い た 。
電 機 子 コ イル 上 の 磁 界 は弱 い ので 、
図lHTSCバ
ル ク とモ デ ル 船
HTSCバ
ル クに 弱 い磁 界 しか励 磁 で きな い 。
そ こ で 、HTSCバ
ル ク を搭 載 した車 両 の 重 量
を 排 除 す る た め に 、HTSCモ
デ ル 船 を 工 夫 し、
水 上 実 験 を 行 っ た 。 図1に
、HTSCバ
ルクを
用 い た実 験 シ ス テ ム を示 す 。
【HTSCモ
デル船の走行実験】
図2に
(a)位
置
(b)速
度
、走 行 に 対 す る フ ィ ー ドバ ッ ク 制 御
を 施 し た 場 合 の 実 験 結 果 を 示 す 。 図2(a)、
(b)、(c)に
モ デ ル船 の位 置 、速 度 、加 速 度 を
示 す 。実 線 は 計 測 波 形 を 、点 線 は 指 令 値 を 示
す 。実 測 値 は 、指 令 値 に 非 常 に 良 く一 致 し て
お り、 良 好 な 軌 道 追 従 制 御 が 達 成 され て い
る 。 図2(d)、(e)は
、 船 体 の横 方 向 変 位 と
ヨ ー イ ン グ 角 を 示 す 。走 行 開 始 前 の 初 期 変 位
と ヨ ー イ ン グ 角 は 、時 間 の 経 過 と と も に 減 衰
して お り 、リ ニ ア 軌 道 に 沿 っ て 走 行 す る 案 内
(c)加 速 度
力 が 得 ら れ て い る こ と が 分 か る 。図2(f)は
、
機 械 的 負 荷 角 の 実 測 値 で あ る 。 ま た 、HTSC
バ ル ク の ピ ン止 め 状 態 を 破 壊 し た 後 、再 度 冷
却 し て 再 励 磁 す れ ば 、実 験 を 再 現 で き る こ と
も確 認 し た 。
(d)横 方 向位 置
【む す び 】
水 上 を 走 行 で き るHTSCモ
し、HTSCLSMの
デ ル 船 を工 夫
基 礎 実 験 に よ っ て 、磁 束 ピ
ン止 め 力 を 同 期 化 力 と して 利 用 す る新 しい 同
期 モ ー タ の 原 理 の 確 認 に 成 功 し 、特 別 に 案 内
(e)ヨ
制 御 を 施 す こ と な く推 進 制 御 の み で 良 好 な 推
ー イ ン グ角
進 ・案 内 が 可 能 で あ る こ と を確 認 し た 。
今 回 の 基 礎 実 験 で は 、HTSCバ
ル クの励 磁
が 弱 く 、水 の 浮 力 を利 用 して 浮 上 さ せ て 実 験
を 行 っ た が 、今 後 は 強 力 な 励 磁 の 方 法 を研 究
(f)機 械 的負 荷 角
し 、 無 制 御 で 浮 上 も で き る 実 用 的 なHTSC
LSMシ
図2走
ス テ ム を 開 発 して い く予 定 で あ る 。
行 制 御 実 験(案 内 制御 な し)
参考文 献
1)兼 弘
亮:卒 業 論 文
2)平 井
隆一:修 士 論 文
九 州大 学 工 学 部 電 気 工 学 科
九 州大 学 大 学 院工 学 研 究 科
3)吉 田 ・高 見 ・平 井 ・兼 弘:「 高 温 超 電 導LSMの
平 成8年2月23日
電気工学専攻
提出
平 成8年2月23日
提出
基礎 実 験 」,平 成8年 電 気 学 会全 国 大 会,No.1072
研究報告
一
多 種 の セ ン サ を持 つ 複 数 の ア ー ム に よ る 物 体 の 押 し上 げ 操 作
長田 正,査 紅彬,木 室義彦,岡 田伸廣
Pushing
Operation
by Multiple
Robot
Arms
with
Multi
Types
Sensors
Tadashi NAGATA, Hongbin ZHA, Yoshihiko Kimuro, Nobuhiro OKADA
Dept. of Comp. Sei. and Comm. Eng., Faculty of Eng., Kyushu Univ.
Recently,as manufacturing systems develop, it is necessaryto use multiple cooperative manipulations. Related
with such manipulations, this paper presents a method for pushing an object by multiple robot arms using
contact and visual information. Each robot arm obtains new information about the object postures using their
own tactile and visual sensors, and carries out the pushing operations individually.
生 産 シ ス テ ム の 高 度 自 動 化 ・複 雑 化 に 伴 い 、 一 台 の ロ ボ ッ トア ー ム で は行 う こ との で き な い 複 雑 ま た は 過 負 荷
な 作 業 に 対 応 す る た め に 、 複 数 台 の ロ ボ ッ トア ー ム の 協 調 作 業 に 関 す る 研 究 が 行 わ れ て い る 。 こ の 協 調 作 業 の 例
と して 、対 象 物 の 転 が しや 押 し とい っ た 物 体 操 作 作 業 を挙 げ る こ とが で き る。 柔 軟 な シ ス テ ム を構 成 す る 上 で は 、
複 数 の ロ ボ ッ トア ー ム そ れ ぞ れ が 、対 象 物 の 状 態 に 関 す る情 報 を リ ア ル タ イ ム に獲 得 し 、作 業 に携 わ っ て い る ロ
ボ ッ トア ー ム の 台 数 の 増 減 な ど の 環 境 の 変 化 に 適 応 可 能 な こ と が 重 要 で あ る 。 本 稿 で は 、複 数 台 ロ ボ ッ トア ー ム
シ ス テ ム が 以 上 の 要 件 を満 た す た め の ア ル ゴ リズ ム 、 シ ス テ ム 構 成 の検 討 、 お よ び実 機 に よ る検 証 を行 う。
斜 面 上 の 物 体 の 押 し上 げ 操 作(Fig.1)は
、対 象 物 に 作 用 す る 力 と して 、常 に重 力 を考 え な け れ ば な ら な い 点 、
ま た 、 ロ ボ ッ トア ー ム の 台 数 変 化 に よ り静 的 つ りあ い が 簡 単 に壊 れ る 点 で 、 平 面 上 の 押 し操 作 と は 異 な る 。 本 研
究 で は 、 ロ ボ ッ トア ー ム の 協 調 に よ り滑 り落 ち よ う とす る対 象 物 の 押 し上 げ 操 作 を行 うシ ス テ ム を構 築 す る 。
こ の 押 し上 げ 操 作 の 実 現 に あ た り、種 類 、量 共 に制 限 の あ る ロ ボ ッ トの 利 用 可 能 な セ ン サ 情 報 の 有 効 利 用 、動 的
な 環 境 に お け る実 時 間 操 作 の 実 現 、複 数 台 自律 ロ ボ ッ トの 協 調 、 の 三 つ の 解 決 す べ き問 題 が あ る 。
一 般 に物 体 操 作 は
、対 象 物 と ロ ボ ッ トア ー ム と の 間 の 摩 擦 力 に 基 づ い て 行 な わ れ る た め 、接 触 情 報 が 非 常 に 重
要 な もの と な る 。 そ の 一 方 で 、 こ の 接 触 情 報 は ロ ボ ッ トア ー ム の 振 動 や 接 触 面 の 状 態 等 の 外 乱 の 影 響 を受 け や す
く、 こ の 情 報 の み で は 、 対 象 物 の 姿 勢 を正 確 に か つ 実 時 間 で 検 出 す る こ と は 困 難 で あ る 圖 。
こ れ に 対 し、視 覚 情 報 は 、対 象 物 体 を計 測 す る際 に 、非 接 触 で あ り、対 象 物 に 状 態 変 化 を与 え な い た め 、 隠 れ と
い っ た 問 題 を 除 い て対 象 物 自体 は 視 覚 情 報 に 影 響 を 与 え な い 。 しか し 、逆 に 、 単 に対 象 物 の 移 動 距 離 を測 定 し て
も 、 実 際 に 、対 象 物 の 移 動 が そ の 作 業 に依 る もの か は 、接 触 点 の 近 傍 が 計 測 で き な け れ ば不 明 で あ り、 近 接 セ ンサ
に よ る 視 覚 情 報 が 、接 触 情 報 に と っ て 代 わ る の は 困 難 で あ る 。
そ こ で 、本 手 法 で は 、各 ロ ボ ッ トア ー ム が 対 象 物 の 姿 勢 検 出 に用 い る情 報 と して力/ト
報 とCCDカ
ル クセ ンサ に よ る 接 触 情
メ ラ に よ る 視 覚 情 報 を考 え る こ と に した 。 本 研 究 で 用 い る視 覚 情 報 は 、対 象 物 上 の 指 標 に 関 して の み
の 局 所 的 な もの で あ り、 こ の 局 所 的 視 覚 情 報 の み で は 、対 象 物 の 位 置 ・姿 勢 は検 出 で きて も、 ロ ボ ッ トア ー ム と対
象 物 との 接 触 面 の 情 報 等 は検 出 不 可 能 で あ る。 こ の 対 象 物 の 接 触 面 の情 報 が 力/ト
本 研 究 で 用 い る各 ロ ボ ッ トア ー ム の 手 首 部 分 に は 、 力/ト
ル ク セ ンサ に よ り検 知 さ れ る 。
ル ク セ ン サ が 設 置 さ れ て い る 。 各 ロ ボ ッ トア ー ム は こ
の 接 触 情 報 を基 に 、 エ ン ドエ フ ェ ク タ と対 象 物 の 接 触 点 に お け る対 象 物 表 面 の 単 位 法 線 ベ ク トル 等 を検 出 国 図 す
る 。各 ロ ボ ッ トア ー ム は 、対 象 物 に 関 す る局 所 的 視 覚 情 報 を得 る た め の 視 覚 セ ン サ を も個 々 に備 え る 。 今 回 は 、各
ロ ボ ッ トア ー ム 毎 にCCDカ
メ ラ を設 置 す る代 わ り に 、Fig .1の よ う に 配 置 さ れ た1台
の カ メ ラ か らの 画 像 を ワ ー
ク ス テ ー シ ョ ン 上 の 画 像 処 理 装 置 で 処 理 し、 こ の 画 像 情 報 を各 ロ ボ ッ トア ー ム が 別 々 に利 用 す る こ と と した 。
本 手 法 で は 、指 標 と して対 象 物 上 に二 つ の発 光 ダ イ オ ー ド を設 置 して い る。 各 ロ ボ ッ トア ー ム は 、 画 像 処 理(ト
ラ ッ キ ン グ ビ ジ ョ ン)に
よ り得 ら れ る 発 光 ダ イ オ ー ド の位 置 情 報 を用 い て 対 象 物 の位 置 ・姿 勢 を検 出 す る 。
本 シ ス テ ム で は 、協 調 動 作 を記 述 す る た め に 、 各 ロ ボ ッ トア ー ム を独 立 した エ ー ジ ェ ン ト 団(動
て 扱 い 、 押 し上 げ 操 作 を 自律 分 散 的 に行 う。各エージェント
作 主 体)と
し
は 、周 囲 の 状 況 お よ び 自分 の 内 部 状 態 に 応 じ て 、 そ れ
ぞ れ の 動 作 ア ル ゴ リ ズ ム に 基 づ い て 行 動 す る 。 本 研 究 で は 、各エージェント
間 で 明 示 的 な 通 信 は行 わ な い と した
こ と か ら 、 各 工ー ジ ェ ン トが 持 つ 動 作 アル ゴ リズ ム は 単 に 、与 え られ た タ ス ク を達 成 す る た め だ け の もの とな る 。
この 単 純 な 動 作 ア ル ゴ リズ ム が シ ス テ ム 全 体 と して 協 調 を 実 現 す るた め に は 、他 の エ ー ジ ェ ン トの 動 作 を 、 間 接
的 に 対 象 物 の 状 態 変 化 か ら 考 慮 し 、 自己 の 動 作 を 決 定 し な け れ ば な らな い 。 こ の 他 の エ ー ジ ェ ン トの 動 作 に 伴 う
対 象 物 の 状 態 変 化 を 知 る 唯 一 の 通 信 が 、 「同期 」 で あ る 。 人 間 は 、常 に 自 らの 操 作 が 対 象 物 に 及 ぼ す 影 響 を確 認 し
な が ら、 物 体 操 作 作 業 を 行 な う。 こ れ に倣 い 、 本 手 法 で は 、押 し上 げ 操 作 全 体 を 「実 行 」、 「確 認 」、 「決 定 」 の3
フ ェ ー ズ か らな る ス テ ップ の 繰 り返 し に よ っ て 実 行 す る 。 最 終 的 に 全 て の ロボ ッ ト ア ー ム が 操 作 完 了 を 判 断 した
時 点 で 、 押 し上 げ 操 作 を 終 了 す る 。
以 上 の よ うに 、各 ロ ボ ッ トア ー ム は 、 対 象 物 の 現 状 態 と 目標 状 態 の み に 基 づ い た 簡 単 な ル ー ル に した が っ て 自
らの 押 し行 動 を 決 定 す る 。 た だ し 、 こ の 押 し上 げ 操 作 は 、摩 擦 力 に 基 づ い て 行 わ れ る た め 、 押 し位 置 に よ り対 象
物 に 対 して 適 切 な 押 し上 げ 力 を加 え る こ とが で き な い 場 合 が あ る 。 こ の た め 、以 下 の 状 況 に 応 じて 、 自 らの 押 し
位 置 を 変 更 す る 。 す な わ ち 、接 触 情 報 に よ り、摩 擦 コー ン 内 の 押 しが 不 可 能 で あ る と判 断 した 場 合 、お よ び 視 覚 情
報 に よ り、 対 象 物 の 動 き が 目的 の 動 作 と異 な る と判 断 した 場 合 で あ る 。
本 手 法 の 有 効 性 を 確 認 す るた め に 、Fig.2の よ うな 環 境 で 二 台 の ロ ボ ッ トア ー ム を 用 い て 実 験 を 行 っ た 。
図2:実
図1=PushingOperation・
三 台 の ロ ボ ッ ト ア ー ム に よ る 押 し上 げ 操 作 の 途 中 で1台
ム にFig.3(a)に
験 環境
が 作 業 続 行 が 不 可 能 と な っ た 場 合 を 想 定 して 、 シ ス テ
示 す タ ス ク を与 え る 。 初 期 状 態 に お い て 、対 象 物 は 三 点 で 支 持 さ れ て い る 。 そ の 内 の 二 点 は 実 験
1の 場 合 と同 様 に 二 台 の ア ー ム に よ り支 持 され て お り 、 も う一 点 は 、斜 面 上 に 固 定 さ れ て お り、 これ を 作 業 を続 行
す る こ と が で き な くな っ た ア ー ム とみ な す 。 この 初 期 状 態 か ら二 台 の ロ ボ ッ トア ー ム に よ り、対 象 物 を与 え られ た
目標 状 態 へ 押 し上 げ る 。Table.3は
、 タ ス ク の 操 作 量 とそ の 実 行 結 果 を ま とめ た も の で あ る 。 ま た 、 シ ス テ ム に 与
え ら れ た タス ク お よび 対 象 物 の 実 際 の 軌 跡 をFig.3(b)に
と 、 対 象 物 は右 回 転 を 始 め る が 、RobotArm2が
示 した 。 この 結 果 に よ り、 初 期 状 態 か ら操 作 を 開 始 す る
右 方 向 へ 移 動 し 、押 し位 置 を 変 え る こ とに よ り、 タス ク を達 成 で
きて い る こ とが分 か る 。
本 稿 で は 、接 触 情 報 と視 覚 情 報 の 二 種 類 の セ ン サ 情 報 を 利 用 し 、複 数 台 の ロ ボ ッ トア ー ム が 明 示 的 な 通 信 な し
に 、 同 期 の み を取 りな が ら 、斜 面 上 物 体 の 押 し上 げ 操 作 を 協 調 的 に 行 うた め の 手 法 を 提 案 した 。 さ ら に ・提 案 さ
れ た 手 法 の 有 効 性 を示 す た め に 、実 機 に よ る 実 験 を 行 い 、 これ を確 認 で き た 。
今 後 の 課 題 と して 、 多 数 台 、複 雑 な 対 象 物 で の 押 し上 げ 操 作 の 実 行 、 押 し ア ル ゴ リ ズ ム を よ り一 般 化 す る た め
の 適 応 性 の あ る 行 動 決 定 機 構 の 作 成 、 が 挙 げ られ る 。
表1:Experiment(TaskandResult)
タス ク
移 動 距 離117.5【mm】
回 転角度
一1.0[deg]
傾 斜 角 度30[deg]
実 行結 果
ス テ ッ プ 数19
目標 と の 誤 差(位
置)2.4[mm】
(姿 勢)0.7[deg]
(a) Task(Initial State and Goal State).
(b) Trajectory of the Object.
図3:実
験2
参考文献
[1] T.Nagata et al., "Cooperative Manipulations Based on Genetic Algorithms Using Contact Imformation" ,
in Proc. IEEE Int. Conf. Intelligent Robots and System, Vol.2, pp.400-405,1995.
[2] A.Bicchi et al., "Contact Sensingfrom Force Measurements" Int. J. of Robotics Research, Vol.12-3,pp.249263,
1993.
[31長 田,鈴 木,査"複
数 の ロ ボ ッ トア ー ム に よ る 物 体 の 押 し操 作',第34回
計 測 自動 制 御 学 会,pp509-510,1995.
[4] T.Nagata, J.Hirai, "Agent-Oriented and Distributed AssemblyTask Planning for Multiple Manipulators" ,
in Proc.
Intelligent
Robots
and
Systems,
Vol.1,
pp.113-118,
1994.
一
研究報告
一
温 度
・濃 度 勾 配 下 で の 多 相 系 流 体 挙 動
(微小重力場の核沸騰熱伝達における基本測定技術の開発(続 報))
九 州 大 学 工 学 部 機 械 エ ネ ル ギ ー工 学 科
Behavior
of Multiphase
Fluid
under
大 田治 彦 ・吉 田
Temperature
駿 ・井 上 浩 一
and Concentration
Gradients
(MeasurementTeclmiquesApplied to Nucleate Boiling Heat Transfer under Microgravity (2nd. Report))
Haruhiko Ohta, Suguru Yoshida and Koichi Inoue
Department of Energy and Mechanical Engineering, Faculty of Engineering, Kyushu University
Heat transfer characteristicsin nucleate boiling have been investigated under microgravity aboard MU300 aircraft. A transparent circular glass plate, which has sensors measuring local surface temperature and
liquid film thickness underneatha growing bubble, was introducedas a heating surface in the pool boiling
experiment. A new method was developed for the instantaneous measurement of l ,uin-order microlayer
thickness without preceding calibration. The followings are clarified: i)In the isolated bubble region at low
or moderateheat flux, there exists two opposite trends of heat transfer enhancementand deteriorationunder
microgravity dependingon whether dry patches emerge or not in the microlayer ii)The local heat transfer
coefficient underneath an isolated bubble is significantly influenced by the gravity level, while the
coefficientaveragedover the entire heating surface is quite insensitive. iii)In the coalescedbubble region at
high heat flux, local heat transfer coefficients remain almost constant correspondingto little change with
gravity in the bubble behavior just adjacent to the heating surface.
1.目 的 微 小 重 力 場 を利 用 した材 料 開 発 に付 随す る加 熱 冷 却 プ ロ セ ス,各 種 宇 宙 機 器 か らの 廃 熱 処 理 シ ス
テ ム,宇 宙 用 電 子 機 器 の 冷 却,将
来 的 エ ネル ギ ー源 と して の原 子 炉 の炉 心 冷 却 な ど,宇 宙 で の 高効 率 熱 交
換 を 目的 とす る と き,相 変 化 に よ る潜 熱輸 送 を伴 う沸 騰 現 象 の 適用 は きわ め て 有効 で あ る。 本 研 究 で は,
伝 熱 面 温 度 分 布 お よび気 泡 底 部 液 膜厚 さの 測 定 を可 能 とす る 薄膜 セ ンサ ー を透 明伝 熱 面 上 に 直 接 形 成 して,
微 小 重 力(μ の 下 で の 核 沸 騰 熱 伝 達 の 実験 を行 う。 こ れ に よ り伝 熱 面 寸 法 と比較 して 気 泡 寸 法 が 大 き く,
伝 熱 面 上 で定 常 か つ均 一 な現 象 と見 な す こ とが で きな い μ9下 の核 沸 騰 熱 伝 達 を的確 に捉 え る こ と が 可 能
とな り,従 来 の平 均 熱 伝 達 の み の 議 論 で は不 明確 で あ った 熱伝 達機 構 の 詳細 に関 して 新 た な 知 見 を得 る こ
とが 可 能 で あ る 。前 報 に お い て 高 熱 流 束 にお け る熱伝 達 と合 体 泡底 部 マ ク ロ液 膜挙 動 との 関 係 を 明 らか に
した の に 引 き続 き,本 報 で は低 お よ び中 熱 流 束 の孤 立 泡域 にお け る 熱伝 達 と気 泡底 部 に形 成 され る ミ クロ
液 膜 の挙 動 に着 目 して実 験 を行 った 。
2.実 験 装 置 の検 討 伝 熱 面 は底 面 か らの 観 察 を可 能 と した サ フ ァ イア ガ ラ ス製 の 水 平 上 向 き円板 で,加 熱
は 裏 面 に コ ーテ ィ ン グ したITO膜
透 明 ヒ ー タ ー に よ り行 わ れ る。 表 面 に は図1に 示 さ れ る よ うに,厚 さ
約0。1μmの 白金 製 の 温 度 セ ンサ ーお よび膜 厚 セ ンサ ー が配 列 され て い る。 温 度 セ ンサ ー は抵 抗 温度 計 と し
て作 用 し,測 定 誤 差 は最 大 ±0.2Kで あ る。 液 膜厚 さの 測 定原 理 は 電極 を覆 う液 膜 の 電 気 抵 抗 値 を測 定 し,
液 体 の導 電 率 を も とに そ の厚 さ を算 出 す る もの で あ り,本 研 究 で は セ ンサ ー を約4mm×4mm1(測
4mm×0.8mm)ま
定 部 は約
で小 型 化 す る こ とが 実現 した 。 この セ ンサ ー の 電極 配列 や 測 定 方 法 の 検 討 を行 う こ とに
よ り,既 存 の液 膜 厚 さ測 定法 で は不 可 欠 で あ っ た セ ンサ ー の検 定 を廃 止 し得 た の で,従 来 検 定 が 困難 で あ
っ た100μm以
下 の 薄 液 膜 に対 して も測 定値 の 信頼1生は 高 い 。沸 騰 容 器 は金 属 ベ ロー ズ を備 え た垂 直 円筒
で伝 熱 面 を端 面 に配 置 した構 造 とな っ て い る 。 金属 ベ ロー ズ は 内部 の窒 素 ガス に よ り系 圧 力 の 調 整 を行 う
一方 で
,沸 騰 開始 前 に容 器 内 を 液体 の み で 充満 し,μg下 で の沸 騰 開始 に伴 う気 液体 積 増 加 分 を置 換 す る
機 能 を持 つ 。
3.航 空機 実 験 の結 果
図2に 航 空 機 の パ ラボ リ ッ ク フ ライ トの 軌 跡 と対 応 す る9レ ベ ルの 概 略 値 を示 す が,
これ に よ り約20秒 間,通 常 重力 下 の約100分 の1の μg環境 が 実現 され る 。 図3,図4に
そ れぞ れ低 お よび
中熱 流 束 域 にお け る伝 熱 面 局 所 表 面温 度twi,伝 熱 面局 所 熱 伝 達 係 数 αW、,伝熱 面 中 央 部 に お け る気 泡 底 部
液 膜 厚 さ δ1,のgレ ベ ル に よる 変化 を示 す 。低 熱流 束 域 で は各gレ ベ ル に お い て伝 熱 面 中心 で のみ 発 泡 を
生 じるが,気 泡 径 は2g下 で小 さ く μg下 で 大 き くな る 。伝 熱面 底 面 か らの観 察 に よ り気 泡 底 部 に は ミ クロ
液 膜 の 形 成 が確 認 さ れ,μg下
で ミ ク ロ 液 膜 の広 が る 伝 熱 面 中心 部 の熱 伝 達 係 数 は 増 大 して い る。 液 膜 厚
さの 測 定 値 は,セ ンサ ーが 気 泡 に 覆 わ れ て い な い場 合 に は電 極 寸 法 に よ り定 ま る 一 定 の 値 に 飽 和 す るが,
μg下 で はセ ンサ ー全 体 が 気 泡 で 覆 わ れ る よ うに な り10μm以 下 の値 も測 定 され て い る 。 この 場 合,液 膜
厚 さの 著 しい 減 少 も し くは乾 き部 の 出現 に よ り測 定 不 能 とな る こ とが あ り,図 中 に ×印 で 示 してい る 。図
5は 低 熱 流 束域 にお い て 中心 か ら6番 目の温 度 セ ンサ ー位 置 ま での 平 均 熱 伝 達 係 数 α を平均 熱 流 束qに 対
して示 す が,lg下
にお い てす で に確 認 され て い るq㏄ △T3∼5の 関係 が 成 立 し て お り,gレ ベ ルの 影 響 は 明
確 に は現 れ て い ない 。 す な わ ち平 均 熱 伝 達 係 数 の みの 議 論 で は熱 伝 達 に及 ぼ すgレ ベ ル の 影響 を的確 に把
握 す る こ と は不 可 能 であ る。 一 方,中 熱 流 束 域 で は,伝 熱 面 全 体 に均 一 に発 泡 点 が 存 在 して い るが,μg
へ の 移行 と と も に伝 熱 面 全体 を 覆 う大 気 泡 が 出現 す る よう に な る。 大 気 泡 底 部 に はや は りミ ク ロ液 膜 が 形
成 され て い るが,乾 き部 が ミ ク ロ液 膜 中 に広 が る結 果(図6に
一 例 を示 す),伝
熱 面 中心 部 の 温度 上 昇 に
対 応 して 熱 流 束 が 減 少 し,熱 伝 達 係 数 は低 下 す る 。
4.ま とめ
平 成6年
度 お よ び7年 度 の2回 に わた りμ9下 の核 沸 騰 熱伝 達 につ い て 伝 熱 面 局 所 熱伝 達 と気
泡底 部 液 膜挙 動 に着 目 した 実 験 を行 い,以 下 の こ と を明 らか に した 。1)μg下の 孤 立 泡 域 に お い て は,気 泡
径 の増 大 に伴 っ て気 泡 底 部 ミ ク ロ液 膜 が 拡 大 す る こ と に よ る伝 熱促 進 と,ミ ク ロ液 膜 内 で の 乾 き部 発 生 に
よ る伝 熱 劣 化 の2つ の 要 素 が あ り,ど ち らが 支 配 的 と な るか は実験 条件,微 小 重 力 レベ ル(残 留g)に
て 決 まる もの と考 え られ る。ii)低熱 流 束 の 孤 立 泡 域 に お い て,μg下
よっ
で 気 泡 径 が 大 き くな る の に伴 い,ミ
ク ロ液 膜 が 拡 大 して 伝 熱 面 中央 部 の 局 所 熱 伝 達 係 数 が 大 き く変 化 す る 場 合 で も,平 均 熱 伝 達係 数 はgレ ベ
ルの 変 化 に対 して き わめ て 鈍 感 で あ る。iii)高熱 流 束 の 合 体 泡 域 にお い て は,合 体 泡 底 部 に 形成 され るマ
ク ロ液 膜 内 で 激 しい 核 沸 騰 が 生 じるが,伝 熱 面 近 傍 にお け る気 液挙 動 はgレ ベ ル に よ りほ とん ど変 化 せ ず,
こ れ に対 応 して熱 伝 達 係 数 もgレ ベ ル の 影 響 を ほ とん ど受 け ない 。 以 上 の 結 果 よ り,伝 熱 面 平 均 熱伝 達 係
数 の み を問 題 と した 従 来 の 実 験 に おい て は,μg下
で熱 伝 達 係 数 が!g下 の そ れ と 比 較 して大 き くな る 場合
と小 さ くな る場 合 が あ り,両 者 の 差 異 は概 して小 さ い とい う結 論 が 得 られ てい た こ とが 容 易 に 理解 で きる 、
今 後,異 な る条 件 下 で 得 られた デ ー タ を詳 細 に解 析 して微 小 重 力 場 の核 沸 騰 に対 す る熱 伝 達 モ デ ル の検 討
を行 う。
図2航
図1透
図3低
明 伝 熱 面 の 構 造 と セ ンサ ー パ タ ー ン
熱 流束 域 にお け る熱 伝達 デ ー タ と
液 膜 厚 さの測定 結 果
図5平
空機 によ る パ ラボ リック フ ライ ト
均 熱 流 束 と平 均過 熱 度 で プ ロ ッ トした沸騰 曲線
図4中
熱流 束域 に お け る熱 伝達 デー タ と
液 膜 厚 さの測 定 結 果
図6ミ
ク ロ液 膜 中 に 広 が る乾 き部
一 研究報告
一
レー ザ ー 誘 雷 の 実 用 化 に 関 す る研 究
九州大学総合理工学研究科
内 海 通 弘 ・江 間 克 司 ・槙 野 武 男 ・田 中 祀 捷 ・村 岡 克 紀
九州 電力総合研究所
木 下 文 宏 ・片 平
治
三木
淳 ・新 藤 孝 敏
(財)電 力 中央研 究所
恵 ・和 田
宮崎大学工学部
本 田親 久
宮崎公立大学人文 学部
ロシア総合物理学研 究所
辻
福 岡工業大 学
赤 崎正 則
Research
利則
1.Kononov・K.Firsov
on Development
of Practical
for the Laser-induced
Kyushu
Techniques
Lightning
M. Uchiumi, K. Ema, T. Makino
University
T. Tanaka, K. Muraoka
Kyushu
Electric
Central
Research
Power
Institute
Miyazaki
University
Miyazaki
Municipal
Russian
Fukuoka
General
Institute
A long-gap
impulse
plasma
induction.
voltage.
channel
F. kinoshita, 0. katahira
Company
of Electric
Power
M. Miki, J. Wada, T. Shindo
Industry
C. Honda
T. Tsuji
University
Physics
I. Kononov,
Institute
M. Akazaki
of Technology
sparkover
In order
and
induction
to achieve
we examined
The longest
laser-induced
K. Firsov
experiment
longer-gap
the effective
sparkover
has
been
sparkover
length
length
made with
induction,
of the plasma
of 16m was
a high energy
CO2 Laser
we tried to produce
channel
achieved
and
longer
for discharge
for an impulse
voltage
of -3MV.
レー ザ ー を 大 気 中 に集 光 す る こ とに よ り電離 領 域(プ ラ ズマ チ ャネ ル)を 形 成 し、 雷 放 電 を 安 全 な 場 所 へ
誘導 す る、 レーザ ー 誘雷 の研 究が 行 われ て い る。 雷 を誘 導 す るた め に は 、 冬 季 雷 の 場 合 に お い て も レー ザ ー
に よ り生 成 され た プ ラ ズ マ チ ャネ ルが 、100m程 度 必 要 で あ る と言 わ れ て い る。 その ため 、 プ ラ ズ マや 放 電
の メ カニ ズ ムの 解 明 、 並 び に プ ラ ズ マ チ ャネル の 高密 度 化 、 長 距 離 化 が 必 要 で あ る。
筆者 らは大 出力CO2レ ー ザ ー を 用 い た 放 電 誘導 実 験 を 行 って い る。 今 回 は 、 実 験 系 の 制 限 で あ った 印 加 電
圧(最 大 一1.2MV)を12MV雷
イ ンパ ル ス 電圧 発 生 装 置(-3MV程
度 で使 用)に よ って増 大 し、 最 大 で16mの 放
電 誘導 に成 功 したの で 報 告 す る。
放 電 誘導 距 離 を 長 距 離 化 す る ため には 、 長 焦 点 凹 面 鏡 を 用 い た プ ラ ズ マ チ ャネ ルの 特 性 を 知 る こ とが 必 要
凹面鏡か らの距 離[m】
図1プ
ラズマ球線密度
図216m放
で あ る 。 そ こ で 、 今 回 購 入 し た 焦 点 距 離40m、601nの
凹 面 鏡 を 用 い て プ ラ ズ マ チ ャネル 生 成 実験 を 行 った
実 験 に 用 い た レー ザ ー は 不 安 定 共 振 器 使 用 のCO2レ
値 幅50nsの
電誘 導積分写真
ー ザ ーTG300で
、 平 均 出 力460」 、 ピ ー ク パ ワー2GW、'r
もの で あ る 。 実 験 は レ ー ザ ー を 凹 面 鏡 に よ り集 光 し、 生 成 さ れ た プ ラ ズ マ チ ャ ネ ル を 写 真 に 撮 り 、
11n間 隔 に 含 ま れ る プ ラ ズ マ の 個 数 を 虫 眼 鏡 を 用 い て 測 定 した 。 生 成 さ れ た プ ラ ズ マ 球 は 、 三次 元 的 に ば ら
つ い て お り 、 後 ろ に 少 し で も 見 え て い る もの は 測 定 した が 、 粒 径 が 小 さ す ぎ て 写 真 に 写 っ て い な い もの や 、
後 ろ に 完 全 に 隠 れ て し ま っ て い る も の に つ い て は 測 定 しな か っ た 。 結 果 を 図1に
示 す.こ
の 結 果 、 プ ラ ズマ
球 の 分 布 は 図 の よ う な 山 型 の 分 布 と な り、 各 分 布 の ピー ク は い ず れ も 凹 面 鏡 の 焦 点 位 置 よ り 手 前 と な っ た 。
ま た 、 焦 点 距 離20m、30mで
離40m、601nに
は 長 さ は比 較 的 短 い もの の 、 か な り高密 度 の チ ャネ ル と な っ た 。 一
一
・
一
方、焦点距
な る と 、 焦 点 距 離40mで
約25m、
焦 点 距 離60mで
約351nと 、 プ ラ ズ マ 球 は 広 範 囲 に わ た って 分
布 して い る が 、 線 密 度 は 非 常 に 低 い もの と な っ た 。
以 上 の 結 果 を も と に 、 印 加 電 圧3MV程
度 に お い て の レー ザ ー に よ る 長 ギ ャ ップ 放 電 誘 導 実 験 を 行 っ た 、
実 験 配 置 は 棒 対 棒 電 極 を 用 い 、 レー ザ ー 入 射 後 の 約100μs後
に 、上 部 棒 電 極 に 負 の 標 準 雷 イ ンパ ル ス電 圧 を
印 加 した 。
そ の 結 果 、 分 割 ビ ー ム 方 式 に お い て 、 焦 点 距 離20mの
図2に
凹 面 鏡 を 用 い 、 最 大 で16mの
そ の 積 分 写 真 を 示 す 。 こ の 時 の 印 加 電 圧 は 一3.06MV、
放 電 誘 導 に 成 功 した.
レー ザ ー エ ネ ル ギ ー は500Jで
あ っ た.,
今 回 、 放 電 誘 導 距 離 の 更 な る 長 距 離 化 を は か る た め に 、 長 焦 点 ミラ ー に よ り生 成 さ れ た プ ラ ズ マ チ ャ ネ ル
の プ ラ ズ マ 球 線 密 度 を 測 定 し、 印 加 電 圧 の 増 加 に よ る 効 果 を 観 測 した 。 そ の 結 果 、 分 割 ビ ー ム 方 式 に よ り 、
最 大161nの 放 電 誘 導 に 成 功 した 。 こ れ は 、 レー ザ ー 誘 雷 に お け る 基 礎 研 究 で は 世 界 最 長 の 記 録 で あ る 。
な お こ の 研 究 は 、 九 州 電 力(株)と
用 は 、 九 州 電 力(株)の
の 共 同研 究 に よ って 行 われ た 。 また 、 電 力 中 央 研 究 所 塩 原 実 験場 の 利
依 頼 実 験 と して 行 わ れ た 。
参 考 文献
1)本
田 親 久 他:電
気 学 会 論 文 誌B,VoL113-B,No・9,pp994-1002(1993-9)
2)入
野
気 学 会 放 電 ・高 電 圧 合 同 研 究 会 資 料,ED-94-i46(1994-10)
3)槙
野 武 男 他:電
仁 他:電
気 学 会 放 電 ・高 電 圧 合 同 研 究 会 資 料,ED-95-80(1995-6)
一 研究報告
半 導 体 の 結 晶 成 長 に 関 す る シ ミュ レ ー シ ョ ンの 研 究
財 団法人宇宙環境利 用推進 セ ンター
九州大学工学部材料工 学科
Computer Simulations
本岡
輝昭 ㌔ 石丸
鈴木
紀男
学 ㌔ 隈元
崇 ㌔ 吉田
興
on Crystal Growth from Melted Semiconductors
Norio Suzuki, Teruaki Motooka*, Manabu Ishimaru*,Takashi Kumamoto*, and Kou Yoshida*
Japan Space Utilization Promotion Center
`D
ept. of Materials Science and Engineering, Kyushu University
We have investigated crystal growth processes from liquid Si based on molecular-dynamics
simulations using the Tersoff potential. Liquid Si was obtained by heating up crystal Si with various
temperaturesand the structural properties were analyzed by calculatingthe radial distribution functions,
bond angle distributions, and electron densities of states. Solid-liquid Si interface structures as well
as crystallization processes under various temperature gradients and quenching rates were also
analyzed. Based on the calculated results, we have given a microscopic picture for the structural
anormaly in liquid Si experimentally observed near melting temperature and shown that there exists
a remarkable difference between the (001) and (111) solid-liquid Si interface structures resulting
in the different crystal growth mechanisms in the [001] and [111] directions.
【は じめ に】
シ リコ ン(Si)集 積 回 路 素 子 の 微 細 化 に と もな い単 結 晶si(c-Si)中 の 格 子 欠 陥密 度 の 低 減 化 に 対 す る要 求
もます ます 厳 しい もの に な って きつ つ あ る。さ らに 、チ ップ1個 当 りの コ ス トを 下 げ る た め に よ り大 直 径 の
siウ エ ハ が 望 まれ て お り、現 在6お よび8イ ンチ ウエ ハ が 主 流 で あ るが 、12さ らに16イ
ンチ を 目指 して
研 究 開発 が 行 わ れ て い る。集 積 回路 用 単 結 晶Si基 板 は 通 常 、融 液 か らの結 晶 引 き上 げ(チ ョク ラル ス キ ー 法)
に よ り作 成 され て お り、格 子 欠 陥 密 度 は 引 き上 げ 時 の 種 々の 条 件(引 き上 げ 速 度 、ヒー ター 温 度 分布 、堆堝
の 回 転 速 度 等)に 強 く依 存 す る こ とが 実 験 的 に知 られ て い るが 、格 子 欠 陥 発 生 の メ カ ニ ズ ム に つ いて は殆 ど
理 解 され て い な い 。大 直 径 化 に伴 い結 晶 引 き上 げ 設 備 や コ ス トは 膨 大 な もの とな るの で 、この メ カ ニ ズ ム 解
明 は極 め て 重 要 な 課 題 と な る。シ リコ ン融 液 の 実 験 的研 究 に お け る最 大 の 難 点 は 、siの融 点 が1687Kと 高 く、
融 液 か らの 結 晶成 長 過 程 を直 接 観 察 す る こ とが 極 め て 困難 な こ と に あ る。
本 研 究 で は 、分 子 動 力 学 法 を 用 い て 、シ リコ ン融 液 か らの 結 晶成 長 を 計 算 機 の 中 で 模 擬 的 に 行 い、格 子 欠
陥の 発 生 メカ ニ ズ ム を ミク ロな 立 場 か ら検 討 す る。まず 、バ ル クc-Siを 昇 温 ・融 解 して シ リコ ン融 液 を 作 成
し、融 液 の ミク ロな 構 造 を 調べ る。つ ぎ に、直 方 体 状 のc-Siに 対 して 、長 軸 方 向 に 温 度 勾 配 を 与 え る こ とに
よ り固 液 界 面 を 作 成 し、定 常 状 態 に お け る界 面 構造 を調 べ る。さ ら に、温度 勾 配 を 時 間 的 に 変 化 させ る こ と
に よ り、 融 液 か らの 結 晶成 長 を 誘 起 し、結 晶 引 き 上 げ 方 向 ・速 度 と成 長 過 程 の 相 関 を 調 べ る。
【計 算 方 法 】
バ ル ク 融 液 は512個
のSi原
子 を21x21x21A3の
そ の 密 度 が 融 液Siの 実 験 値 、2579/cm3に
立 方 体 セ ル に 閉 じ込 め 、
一 致 す る よ う に し た 。境 界 条 件 信
周 期 条 件 を 用 い て い る 。原 子 間 力 はTersoffポ テ ン シ ャル に よ り算 出 し、時
間 ス テ ッ プ ムt=2x1σ3}psで 運 動 方 程 式 を 積 分 し た 。温 度 の 設 定 は 、 バ ル ク
融 液 に つ い て は 速 度 ス ケ ー リ ン グ に よ り 、 融 液/固
Langevin方
非加熱部
相 界 面 に対 して は
程 式 を 用 い て 行 っ た 。後 者 の 計 算 は 、約1500個
のSi原 子 と 図1
、
に 示 す 基 本 セ ル を 用 い て 行 っ た 。セ ル の サ イ ズ は バ ル ク と 同 様 融 液Siの 密
度 と な る よ う に 設 定 し た 。 境 界 条 件 は 、X、y方
向 は 周 期 条 件 、Z方 向 は 固
相 側 を 固 定 、 融 液 側 は 自 由 表 面 と し た 。た だ し、 原 子 の 表 面 か らの 脱 出 を
さ け る た め に 、 表 面 か ら2Aの
【融 液/固
図2は
相界面構造】
、3種
類 の 温 度 勾 配 に 対 して 、 融 液/固
常 状 態 に お い て10ps間
界 面 は ∼2300Kの
融 液/固
(111)界
位 置 に 完 全 弾 性 壁 を 設 定 した 。
の 原 子 位 置 を(-110)面
温 度 領 域 に あ り、(111)フ
相(111)界
相(001)界
面 を作 り、定
本 セ ル の形 状
に 投 影 し た もの で あ る 。 い ず れ の 温 度 勾 配 に 対 して も 、 固 液
ァ セ ッ トを 含 む 複 雑 な 形 状 を 示 す 。 図3は
面 の 構 造 を 示 す 。 固 液 界 面 は 、(001)界
面 形 状 は(001)の
図1基
面 の 場 合 と 同 様 ∼2300Kの
、 同一 条 件 に お け る
温 度 領 域 に あ るが 、
そ れ と異 な り 、 原 子 的 に 平 坦 で あ る 。 ま た 、 両 界 面 と も に 、 温 度 勾 配 に よ る 質 的
な 差 異 は み られ な い 。
以 上 の 計 算 結 果 か ら 、Siの 固 液 界 面 の ミク ロ な 構 造 に 対 して 、以 下 の よ う な 描 像 が 得 られ る 。固 相 側 界 面
原 子 は バ ル ク 側 で3個
の 原 子 と 結 合 し 、1本 の ダ ン グ リ ン グ ボ ン ドを 持 つ(111)表
方 、 融 液 側 は 、 こ の(111)表
図2融
加熱部
温度勾配部
液/固 相(001)界
面 と の 界 面 エ ネ ル ギ ー を 下 げ る よ う にSH的
面 構 造:温 度 勾 配
図3融
面 を 作 る 傾 向 が あ る 。一
構 造 を とろ う とす る傾 向が あ る。
液/固 相(111)界
面 構 造 二温 度 勾 配
【結 晶 成 長 】
図4は 、 温 度 勾 配 を12.5K/Aに
固 定 して 、 種 々 の 速 度 で 融 液 を[001]方
程 を 示 す 。図 中 に は 、初 期 温 度 分 布 を 点 線 で 、80A引
時 間 は(a)800ps、(b)533ps、(c)320psと
面 に 投 影 し て い る 。 図5は
き 上 げ 直 後 の 温 度 分 布 を 実 線 で 示 して お り 、引 き 上 げ
な る 。 ま た 、成 長 過 程 の 最 後 の10ps間
、 同 一 条 件 に お い て 融 液 を[111]方
引 き 上 げ 速 度 が 大 き す ぎ る(25m/s)場
向 に 引 き 上 げ た とき の 結 晶成 長 過
合 、[001】、[111]両
に わ た る 原 子 位 置 を(-110)
向 に 引 き上 げ た と きの 結 晶 成 長 過 程 を 示 す 。
方 向 と も 結 晶 化 は 殆 ど進 行 せ ず 、ガ ラ ス 状 態 に 固
化 す る 。 一 方 、 引 き 上 げ 速 度 を 小 さ く し て ゆ く と結 晶 化 が 見 られ 、[001]方 向 の ほ う が 、[111]方
向 に く らべ
て 結 晶 化 速 度 は 大 き い 。 こ の 理 由 は 、 前 節 で 述 べ た 固 液 界 面 の 特 徴 に 求 め ら れ る 。 す な わ ち 、 融 液/固
(001)界 面 は(111)フ
的 な 結 晶 成 長 が 進 行 す る も の と 考 え られ る 。こ れ に 対 し て 、 融 液/固
に は2次
相
ァ セ ッ トを 含 み 、融 液 側 の 原 子 が キ ン ク位 置 に 取 り込 ま れ る こ と に よ り ス テ ッ プ フ ロ ー
相(111)界
面 は 平 坦 で あ り、結 晶 成 長
元 核 形 成 が 前 駆 過 程 と し て 必 要 と な る の で 、[111]方 向 引 き 上 げ に よ る結 晶 化 の 進 行 は 、[001]方 向
に く らべ て 遅 くな る 。 ま た 、[111]方
向 へ の 引 き 上 げ で は 積 層 欠 陥 の 発 生 も 見 られ る(図5(a),(b))こ
とを
指 摘 して お き た い 。
今 後 、実 用 的 に 極 め て 重 要 な シ リ コ ン 中 の 不 純 物 、特 に 炭 素 と酸 素 の 融 液 シ リ コ ン 中 で の 振 る舞 い や 、冷
却 過 程 に お け る 欠 陥 生 成 へ の 影 響 等 に つ い て 解 析 を 行 う 予 定 で あ る 。特 に 、実 験 デ ー タ と の 対 比 を 念 頭 に 置
い て 研 究 を 進 め て ゆ きた い。
図4[OOlI方
図5P!l!方
向 へ の 引 き 上 げ に よ る 結 晶 成 長 過 程:引
向 へ の 引 き 上 げ に よ る 結 晶 成 長 過 程:引
き 上 げ 速 度(a)10.Om/s,(b)15.Om/s,(c)25.Om/s。(温
き 上 げ 速 度(a)10.Om/s,(b)15.Om/s,(c)25・Om/s・(温
度 勾 配12.5K/A)
度 勾 配12・5KIA)
一
研究報告
ジ ル カ ロ イ合 金 の 高 温 高圧 水 に よる酸 化 機構 と水 素 吸 収 機 構 の解 明
原子燃料工業(株)熊
九州大学工学部*杉
Mechanism
取開発部
of Oxidation
鳥羽正男 林正之 北野剛司
崎昌和*波 多野雄治*
and Hydrogen
in High Temperature,
Uptake
High Pressure
of Zircaloy
Water
Masao Toba, Masayuki Hayashi, Koji Kitano
Masayasu Sugisaki * and Yuj i Hatano *
Technical Development Department,
* Faculty of Engineering
Nuclear Fuel Industries, Ltd.
, Kyushu University
The effect of tin content on the oxidation and hydrogen uptake behavior of Zircaloy during the oxidation in
steam were studied. The two types of Zircaloy-4specimenscontaining1.3 or 1.5wt%tin were prepared and oxidized
in 10.3MPa steam at 673K for 720-7200h. The oxygen weight gain of the specimencontaining 1.3wt%tin was
lower than that of the specimencontaining1.5wt%tin, but the hydrogen uptake fraction of the specimencontaining
1.3wt%tin was higher than that of the specimencontaining 1.5wt%tin. The diffusionbehavior of hydrogen in the
oxide film was examinedby means of secondary ion mass spectroscopy. The diffusivityof hydrogen in the oxide
film was higher for the specimen containing 1.3wt%tin than for that containing 1.5wt% tin. The high hydrogen
uptake fraction of the specimencontaining1.3wt%tin was attributed to the high diffusivityof hydrogenin the oxide
film.
近 年 、 軽 水 炉 か らの使 用 済 み燃 料 排 出量 を低 減 化 しか つ炉 の経 済 性 を向上 させ る た め 、燃 料 の 高燃 焼 度化
が 進 め られ て い る 。 高燃 焼 度化 に伴 い 燃 料 要 素 の 炉 内 装荷 期 間 が増 大 す るた め 、 燃 料 被 覆 管 材 料 で あ る ジ ル
カ ロ イ合 金 の 冷 却水 に よ る酸 化腐 食 を抑 制 す る と共 に酸 化 反 応 に よ って 発 生 す る水 素 の 吸 収 量 を低 減 化 す る
こ とが 要 望 され て い る。現 在 使 用 され て い る ジル カ ロ イ合 金 に はZrにSn、Fe、Cr、Niを
ー2とZrにSn
添 加 した ジ ル カ ロ イ
、Fe、Crを 添 加 した ジ ル カ ロ イ ー4が あ り、 どち らの場 合 もその 耐 酸 化 腐 食 性 お よび水 素 吸収
特 性 が合 金 元 素 添 加 量 お よ び被 覆 管 製 造 時 の 熱 処 理 条 件 に よ り著 し く変 化 す る こ とが 知 られ て い る 。 しか し、
合 金 元 素 添 加 量 お よ び熱 処 理 条 件 に よっ て耐 酸 化 腐 食 性 お よ び水 素 吸 収 特 性 が 変 化 す る機 構 は明 らか に な っ
て お らず 、 こ れ らのパ ラ メ ー タ を最 適 化 す る た め の指 針 が 得 られ て い な い のが 現 状 で あ る 。合 金元 素 の う ち
Snに つ い て は 、 そ の濃 度 を低 下 させ る とジ ル カ ロ イ の耐 酸 化 腐 食 性 が 向上 す る こ とが 知 られ て い る が 、水 素
吸 収 特 性 に与 え る影 響 につ い て は明 らか とな っ て い な い。 そ こで 本研 究 で は、'Sn濃度 が1.3wt%お よ び
1.5wt%の ジ ル カ ロイ ー4試 料 を水 蒸 気 中 で 酸化 させ 水 素 吸 収特 性 を調 べ る と共 に 、 酸化 膜 中 の水 素 の 拡 散 挙
動 を2次 イ オ ン質 量 分析 計 を用 い て調 べ た。
【
水 素 吸収 特性 に及 ぼ すSnの 影 響 】
同 一熱 処 理 条 件 で作 成 したSn濃 度1.3wt%お よび 1.5wt%の2種 類 の ジ ル カ ロ イ ー4板 材 を、10.3MPaの
気 中 で673Kに
お い て720∼7200時
水蒸
間酸 化 させ 、 酸 化 量 お よび水 素 吸 収 量 を測 定 した 。酸 化 量 の 時 間 変 化 を
図1に 示 す 。 従 来 の 報 告 通 り、1.3wt%Sn材 の方 が 酸 化 量 が 小 さい こ とが わか る。 酸 化 量 の差 は酸 化 初 期 に は
小 さ く、酸 化 時 間 と共 に増大 して い る。水 素 吸 収 量 の 時 間 変 化 を図2に 示 す 。 酸 化 初 期 は1.3wt%Sn材 の 方 が
大 きな水 素 吸 収 量 を示 して い るが 、6000時 間 以 降 で は逆 転 し1.3wt%Sn材 の方 が わず か な が ら小 さ な水 素 吸
収 量 を示 して い る 。 この こ とか ら、 長期 間 使 用 す る場 合 には水 素 吸 収量 の 面 か ら見 て もSn濃 度 が低 い ジル カ
ロ イ合 金 の 方 が好 ま しい と結 論 で きる。 しか し、6000時 間 以 降 で は酸 化 量 に大 きな差 が 生 じて い るの に伴
い水 素 発 生 量 に も大 きな 差 が生 じて お り、 酸 化 膜 の水 素 透 過 性 にSn濃 度 が どの よ うな影 響 を与 え て い るか に
つ い て は 図2か らは判 断 で きな い 。 そ こで 、水 素 吸 収 量 を酸 化 反応 に よ り発 生 した 全水 素 量 に対 して プ ロ ッ
トした もの を 図3に 示 す 。 図 中 、矢 印 で示 した 点 は6000時 間 以 降 の 測 定 結 果 で あ る。 水 素 発 生 量 に対 して
整 理 した場 合 、6000時 間 以 降 にお い て も1.3wt%Sn材 の 方 が よ り多 くの 水 素 を吸 収 してい る。 この こ とか ら、
図1酸
化 量 の 時 間変 化
図3酸
図2水
素吸収量の時間変化
化 反応 に よっ て 生成 され た全 水 素量 と水 素 吸収 量 の 関係
6000時 間 以 降1.3wt%Sn材 が 小 さ な水 素 吸 収 量 を示 した の は単 に水 素 発 生 量 が 小 さい た め で あ り、 酸化 膜 の
水 素 透 過 性 は6000時 間 以 降 も1.3wt%Sn材 の方 が高 く、Sn濃 度 の低 下 は水 素 吸収 特 性 に対 し本 質 的 には 好 ま
し くな い 影 響 を与 えて い る と結 論 で きる 。従 っ て 、 よ り水 素 吸収 量 が低 い ジ ル カ ロ イ合 金 を開 発 す る た め に
は 、Sn濃 度 の 低 下 に伴 い 酸 化 膜 の水 素透 過性 が増 大 す る機 構 を明 らか にす る必 要 が あ る。
【
酸 化 膜 中の 水 素 の拡 散 挙 動 に 及 ぼ すSnの 影 響 】
1.3wt%Sn材 お よび1.5wt%Sn材 を10.3MPaの 水 蒸気 中で673Kに
お い て720時 間酸 化 させ 厚 さ約2.8μmの 酸
化 膜 を形 成 させ た 後 、酸 化膜 中 に溶 解 して い る軽 水 素 と識 別 で きる よ う重 水 水 蒸 気(0.1MPa)中 で673Kに
お
い て80時 間酸 化 させ る こ と に よ り酸 化 膜 中 に重 水 素 を拡 散 させ 、 そ の深 さ方 向分 布 を2次 イ オ ン質 量 分 析 計
で測 定 した 。 そ の 結 果 を図4に 示 す 。1.3wt%Sn材 の方 が 酸 化 膜 の よ り内部 まで重 水 素 が 浸 入 して お り、 酸 化
膜 中 の水 素 の拡 散 速 度 が 大 きい こ とが わ か る。 こ の こ とが 、1.3wt%Sn材 の 方 が 酸化 膜 の水 素 透 過 性 が 高 い原
因 の1つ とな って い る と考 え られ る 。現 在 、酸 化 膜 の微 細 組 織 観 察 を行 い1.3wt%Sn材 の 方 が 酸 化 膜 中 の水 素
の拡 散 速 度 が 大 きい原 因 を調 べ て い る 。
図4酸
化膜中の重水素の濃度分布
一
研究報告
一
ト リ ウム 燃 料 炉 の 炉 心 特 性 に 関す る研 究
九州電力株式会社
清水博 夫
九州 大学工学部応用原 子核工学科*工 藤和彦
Study on Burn Properties
of Thorium-fueled
ほか7名
reactors
Hiroo Shimizu
Kazuhiko Kudo*, et al.
*D
Kyushu Electric Power Co. Ltd.
epartment of Nuclear Engineering, Kyushu University
Amount of energy possible from nuclear fission is drastically increased if naturally occurring thorium(Th)
can be
used as a fertile material.
Burn properties of Th-233U fuel loaded in three types of reactor core, i.e. ATR, HTGR and PWR, have been
studied using the SRAC code system. The results show that from the view point of efficient burning, Th-233U fuel
has an attractive feature which is a match for that of 238U-235Ufuel. An evaluation was also made on the stability of
reactor core materials under various neutron irradiation conditions. Finally, technological problems to be conquered
were discussed.
天 然 に 豊 富 に存 在 す る トリ ウム を核 燃 料(親 物 質)と して利 用 す れ ば 、核 分 裂 に よ っ て 将 来 取 り出す こ
との で き るエ ネ ル ギ ー 量 は 大幅 に 増 大 す る。 本 研 究 で は 、 ウ ラ ンに 代 わ る核 燃 料 体 系 の 可 能 性 を調 べ る こ
とを 目的 と して 、異 な る形 式 の炉(ATR、HTGR、PWR)にTh-233U燃
料 を 装 荷 した とき の燃 焼 特 性 、
238U・235U燃料 とTh・233U燃 料 の燃 焼 特 性の 比 較 、 お よび超 ウ ラ ン元 素(TRU)変
換 処 理 の 予 備 的 検 討 を行
っ た。 ま た 、種 々 の エ ネ ル ギ ー ス ペ ク トル の 中性 子 照射 下 で の 炉 内材 料 の 安 定 性 を 明 らか に す る た め の 基
礎 研 究 を行 っ た。 以 下 で は燃 焼 特性 に 関 す る検 討 に つ い て 述べ る。
【
解 析 モ デ ル と計 算 方 法 】
ATR、HTGR、PWRの
モ デ ル と して 、 それ ぞれ 動 力 炉 ・核 燃 料 開発 事 業 団 の 「
ふ げ ん 」 、原 子 力 研 究
所 の 「高 温 工 学 試 験 研 究 炉 」 、 九 州 電 力株 式 会 社 の 「
玄海 原子 力発 電所3号 炉 」 を 採 用 した。
セ ル 燃 焼 計 算 か ら各 炉 型 式 の性 能 を評 価 す るた め に、 「
平衡 炉 心 モ デル 」1)を想 定 した 。 この モ デ ル で
は 、 炉 心 はn 領 域 か らな り、 中性 子 吸 収 率 の 空 間 依 存性 は 考 え ず 、 一 つ の 領 域 は 炉 心 出力 の1/η を発 生 す
る も の とす る。 あ る一 つ の領 域 の燃 料 を交 換 して か ら、 次 に他 の 領 域 の 燃 料 を交 換 す る まで を1サ イ クル
とす る。 した が っ て 、 各 領 域 の燃 料 はn サ イ クル にわ た っ て 炉 内 に
滞 在 した 後 、 新燃 料 に 取 り替 え られ る。
以 上 の 仮 定 よ り、各 サ イ ク ル 末 期 で の炉 心 の燃 料 全 体 の 中性 増 倍
率kfは各 領 域 の 中性 子 増 倍 率 左、を用 い て次 の よ うに表 す こ とが で き
る。
炉 心 が 臨 界 で あ る た め に は 、 そ の 実 効 増 倍 率 鯵 が サ イ クル 末 期 に
1で あ る 必 要 が あ る 。 連 続 燃 料 交 換(n→∞)を
仮 定 す る と 、keffは 中
性 子 が 炉 外 に も れ な い 確 率P,XCL.を用 い て 次 式 で 表 せ る 。
•
図1あ
る領 域 の 中性 子 増 倍 率k,
の時 間変 化 と達 成 可能 燃 焼 度
この と き 図1に 示 す よ うに、keff=1の 線 の 上 部 と下 部 の 面積(斜 線 部)が 等 し くな る よ うに 取 り出 し燃 焼
度 ガ を 決 定 す る こ とが で き る。 こ の取 出 し燃 焼 度 を 「
達 成 可 能 燃 焼 度 」 と定 義 す る。
炉 心 の 転 換 比 は 、 炉 内 の燃 料 の 転換 比 を 平 均 した値 で あ る。 これ は 各燃 料 の 転 換 比 の燃 焼 度 に対 す る変
化 を燃 焼 期 間 に わ た って 平 均 した値 に 等 しい。 この 炉 心 の 転 換 比 を 平 均 転 換 比(ACR)と
呼 ぶ こ とに す る。
ま た 、 炉 心 か ら取 出 され た燃 料 中 に残 存 す る核 分 裂性 物 質 量 を評価 す るた め に、 次 式 で 表 す 核 分 裂 性 物
質 残 存 比(FCR)を
定 義 す る。
燃 料 取 り出 し時の核 裂性 物 質総 量
燃 料 装荷 時の 核裂 性物 質総 量
核分裂性物質残存比
な お 、 核 分 裂 性 物 質 に転 換 す る際 の 中 間生 成 物 で あ る233Paや239Npも 核 分 裂 性 物 質 に加 え る も の とす る。
各 炉 心 の構 造 を代 表 させ た 等 価 セ ル につ い て 、233Uの 富化 度 と減 速 材 対 燃 料 比 をパ ラ メー タ と し、熱 中
性 子 炉 体 系 標 準 核 設 計 コー ドSRAC2)の 衝 突 確 率 ル ー チ ン を用 い て セ ル燃 焼 計 算 を行 っ た。
【炉 型 別 の燃 焼 特 性 の 比 較 】
達 成 可 能 燃 焼 度50GWdytを
得 る た め に必 要 な233U富 化 度
表1達
た 。ATRは
得 るた め に
必 要 な富 化 度 とそ の 時 のACRとFCR
と、 そ の 時 の 平 均 転 換 比 と達 成 可 能 燃 焼 度 を表1に 示 す 。
こ こで 、減 速 材 対 燃 料 比 はACR、FCRを
成 可 能 燃 焼 度50GWd/tを
最 大 にす る値 と し
、平 均 転 換 比 、核 分 裂 性 物 質 残 存 比 と も に他 の 炉
型 よ り大 き な 値 を示 す。 富 化 度 が 高 い こ とか ら、 トリウム サ
イ クル の確 立 後 に は 、ATRは
トリウ ム燃 料 の 燃 焼 に最 も適 し
た 炉 型 式 と考 え られ る。HTGRは
、 他 の炉 型 に比 べ る と平 均
転 換 比 、 核 分 裂 性 物 質 残 存 比 と も に 小 さ く 、 富 化 度 も 高 い 。HTGRの
と 、 他 の 燃 料 よ り も 高 い 燃 焼 度 が 得 られ る こ とか ら 、HTGRで
が そ の 特 徴 を 生 か した 利 用 法 と な ろ う。PWRで
で き る。233Uの
被 覆燃 料 粒 子 は 再 処 理 が 難 しい こ と
は燃 料 を ワ ン ス ス ル ー で 高 燃 焼 させ る こ と
は 、他 の 炉型 よ りも小 さい 富化 度 で 燃 焼 度 を得 る こ とが
大 量 供 給 が 見 込 め ない トリ ウム燃 料 利 用 の初 期 段 階 で は有 利 に な る。
【ウ ラ ン 燃 料 と ト リ ウ ム 燃 料 の 燃 焼 特 性 の 比 較 】
ATRで
は 、 核 分 裂 性 物 質 重 量 割 合 が 同 じ場 合 、 達 成 可 能 燃 焼 度 は ト リ ウ ム 燃 料 よ り ウ ラ ン 燃 料 の 方 が
大 き い 値 を 示 した 。 し か し、ACRとFCRは
ト リ ウ ム 燃 料 の 方 が 大 き く 、FCRの
最 大 値 は ほ ぼ1で
あ る。
し た が っ て 、 ト リ ウ ム 燃 料 の 方 が 再 処 理 を 行 う こ と に よ っ て 燃 料 を よ り有 効 的 に 利 用 で き る と 言 え る 。
HTGRで
は 、 ト リ ウ ム 燃 料 は 、 達 成 可 能 燃 焼 度 で6割
以 上 、ACRで3割
以 上 ウ ラ ン燃 料 よ りも大 き な 値
を 示 し 、FCRは
逆 に ウ ラ ン 燃 料 よ り小 さ い 値 を 示 し た 。 こ の ト リ ウ ム 燃 料 の 特 性 は 、 燃 料 を ワ ン ス ス ル
ー で 高 燃 焼 さ せ る 際 に 有 利 で あ る。PWRで
は 、核 分 裂 性 物 質 重 量 割 合 が等 しい と き、 トリ ウム燃 料 は ウ
ラ ン 燃 料 に 比 べ 、 達 成 可 能 燃 焼 度 、ACR、FCRで
高 い 値 を 示 した 。 よ っ て 、 ト リ ウ ム 燃 料 は 、 よ り小 さ
い 核 分 裂 性 物 質 重 量 割 合 で ウ ラ ン燃 料 と 同 等 の燃 焼 度 を 得 る こ と が で き る。
【ま と め 】
本 解 析 に よ り 、Th-233U燃
料 は 燃 焼 特 性 の 面 で は 十 分 の 性 能 を 有 す る こ と が わ か っ た 。 し か し、 ト リ ウ
ム 燃 料 の 実 用 化 に は 次 の 二 つ の 問 題 が あ る 。 一 つ は 、 使 用 済 み 燃 料 か ら放 出 され る 高 エ ネ ル ギ ー γ 線 の 対
策 で 、 も う 一 つ は 、 再 処 理 上 の 問 題 で 、ThO2が
硝 酸 に溶 解 し難 い た め 、 フ ッ 素 イ オ ン の 添 加 が 不 可 欠 な
こ と で あ る 。 こ れ ら の 問 題 が 克 服 され れ ば 、 ト リ ウ ム 燃 料 炉 は 極 め て 魅 力 的 な も の に な る 。
【参 考 文 献 】
1)H.W.グ
レイ ブ ス 著(三
上 尚 、 関 根 博 訳),核
燃 料 管 理 の 方 法 と解 析,現 代 工 学 社(1983).
2)K.Tsuchihashi,etal.,RevisedSRACCodeSystem,JAERI-1302,JAERI(1986)。
一
研究報告
一
高 温 岩 体 貯 留 層 評 価 技 術 に 関 す る研 究
(財)電 力 中央 研 究所
Studies
山本 武 志
(株)電 力 計 算 セ ンター*大
西 浩 史*
九 州 大 学 工 学 部**江
原 幸雄**・藤 光康 宏**
for Evaluation
Technique
of Hot Dry Rock Artificial
Geothermal
Reservoir
Takeshi Yamamoto
Hiroshi Ohnishi*
Sachio Ehara** and Yasuhiro Fujimitsu**
Central Research Institute of Electric Power Industry
Denryoku Computing Center, Ltd.*
Faculty of Engineering, Kyushu University**
A mathematicalmodelcomposedof two equationsformassandenergybalancebasedon Darcy'slawis suitablefor
numericalsimulationof thermalhydraulicbehaviorin conventional
andHotDryRock(HDR)geothermalreservoirs.A
computercodefora geothermalreservoirsimulator,named"GEOTH3D"
, wasdevelopedin thesestudies.This codeis
consistedof numericalmethodsbasedon three-dimensional
finitedifference
approximations
with fullyimplicitNewtonRaphsontreatmentofnonlinearterms.A suitablemodelwasobtainedbyusingthreedimensional
physicalpropertiesof
the reservoirat the OgachiHDRexperimentsite.Thoseweredeterminedfromtwokindsof data. Onewas magnitude
valuesand locationsof hypocenterof acousticemissions,thoseweredetectedduringthe four-yearexperiments('91-'94).
The otherwasthe resultsof the hydrauliccommunication
testsbetweenthe injectionandthe productionwells.
A newtechniquefor estimationof steamdischargerate,that wasoriginallydevelopedforvolcanicsteam, wasapplied
to thisexperimentsite.Comparison
betweenthe estimatedvaluebythismethodandthe measuredvalueshowsa good
result.Thisresultmeansthatthistechniqueis effectivenot onlya largescaletargetlikea volcanobut a smallscaleone.
(財)電 力 中 央 研 究 所(電
中 研)で
は 、 次 世 代 の 地 熱 発 電 と して 期 待 され る 高 温 岩 体(HDR)発
電 の実 用 化 のた
め に 必 要 な 要 素 技 術 の 開 発 研 究 を行 っ て い る。 秋 田 県 雄 勝 郡 の 電 中研 雄 勝 実 験 場 で は これ ま で に 人 工 貯 留 層 の
造 成 、 蒸 気 回 収 実 験 が 終 了 し 、 平 成7年 度 の 長 期 循 環 実 験 で は 、1本 ず つ の 注 入 井 と生 産 井 で 目標 と な る 回 収 率
25%を 達 成 す る こ と が で き た。 こ こ で は 雄 勝 実 験 場 人 工 貯 留 層 内 の 熱 水 挙 動 を 把 握 す る た め の 数 値 モ デ ル の 作
成 と 、 火 山 か ら 大 気 中 に 放 出 され る 蒸 気 量 を 画 像 か ら見 積 も る手 法 を 雄 勝 実 験 場 に 適 用 した 結 果 を 報 告 す る 。
【数 値 モ デ ル の 作 成 】
電 中研 は 、 九 州 大 学 との 共 同 研 究 で 、 地 熱 貯 留 層 評 価 を 行 うた め の コ ン ピ ュ ー タ コ ー ドを 開 発 し て い る 。 こ
の よ う な コ ン ピ ュ ー タ コー ドは 地 熱 貯 留 層 シ ミ ュ レー タ と呼 ば れ 、 地 熱 発 電 に 於 い て は 、 開 発 前 の 発 電 規 模 や
期 間 の 予 測 や 運 転 開 始 後 の 地 熱 貯 留 層 管 理 の た め に 用 い られ る。GEOTH3Dと
命 名 され た 開 発 中 の シ ミ ュ レー
タ は 、Darcy則 を 地 層 中 の 流 体 の 運 動 方 程 式 と し 、 質 量 保 存 則 とエ ネ ル ギ ー 保 存 則 を 連 立 して 積 分 差 分 法 で 解
き 、 圧 力 とエ ン タ ル ピ の3次 元 分 布 を 求 め る も の で あ る 。GEOTH3Dを
ProgramDで
検 定 す る た め に 、StanfordGeothermal
提 唱 され た 問 題 を 演 算 し、 雄 勝 実 験 場 で 行 わ れ た 循 環 実 験 の 条 件 の 範 囲 で 正 常 に 動 作 す る こ と を確
認 し た 。 た だ し実 際 の 地 熱 発 電 で 用 い られ る 生 産 井 と 比 較 し て 極 め て 大 き い 生 産 量 を 与 え る 等 の 極 端 な 計 算 条
件 の 場 合 に は 収 束 が 悪 く な り、 気 液2相 の 地 熱 貯 留 層 用 の 汎 用 シ ミ ュ レー タ と し て は 更 な る 改 良 が 必 要 で あ る
こ と も判 っ た 。
GEOTH3Dを
用 い 、 雄 勝 実 験 場 の 地 下600-1300mに
造成
され た 人 工 貯 留 層 の 数 値 モ デ ル の 作 成 を 試 み た2。 こ こ
で地 層 中 の絶 対透 水係 数 及 び初 期空 隙 率 の分布 は、 注入
井 一 生 産 井 間 導 通 試 験 結 果 と坑 井 周 辺 の 透 水 試 験 結 果 、
及 び 水 圧 破 砕 と循 環 実 験 中 に 観 測 され たacousticemission
(AE)の 震 源 とマ グ ニ チ ュ ー ドの 積 算 値 分 布 よ り決 定 し た。
導 通 試 験 に よ る 対 象 地 域 の 絶 対 透 水 係 数 は1×10-14∼1×
10-16m2で あ り、 ま たAEの
マ グ ニ チ ュ ー ド積 算 値 は一
〇.1∼
-4 .0で あ っ た 。 こ こ で はAEの マ グ ニ チ ュ ー ド積 算 値 が 大
き い ほ ど破 砕 頻 度 が 高 い と 考 え 、 マ グ ニ チ ュ ー ド積 算 値
と、絶 対透 水係 数及 び初 期 空隙 率 とは比例 関係 にあ る と
仮 定 し 、 図1の 例 の よ うに よ うに 絶 対 透 水 係 数 分 布 を 決
定 した。
得 られ た 数 値 モ デ ル に よ る 、1994年 の 長 期 循 環 実 験 期
間 中 の 生 産 井 の 坑 底(深
度1060m)で
の 温度 の 実測値 と
計 算 値 の 比 較 を 図2に 示 す 。 循 環 実 験 の 直 前 に 行 わ れ た
生 産 井 の 迎 え破 砕 で 注 入 し た 地 表 温 度 の 水 が 循 環 実 験 開
始 と共 に 生 産 井 に 戻 っ て き た た め 、 開 始 後22日 で127℃
ま で 低 下 し た 後 、 人 工 貯 留 層 で 充 分 加 熱 され た 水 が 回 収
され 始 め る に つ れ 温 度 が 本 来 の 地 層 温 度 付 近 ま で 回 復 し
図1深
度1000mに
お け る絶対 透 水係 数 の 水平 分布
て い く様 子 が よ く再 現 され て い る。
【生 産 井 サ イ レ ン サ か ら の 蒸 気 放 出 量 測 定 】
火 山 に於 け る噴気 放 出量 を見積 も るた めに九州 大 学 で
開 発 した 、 画 像 か ら読 み 取 っ た 最 大 噴 気 直 径 と噴 気 上 昇
速 度 及 び 気 象 条 件 をパ ラ メ ー タ とす る 手 法3が 、 実 験 プ ラ
ン ト規 模 の 対 象 物 に も適 用 で き る か ど うか を確 認 す る た
め 、 雄 勝 実 験 場 の 生 産 井 の サ イ レ ンサ か ら放 出 され る 水
蒸 気 量 を 当 手 法 で 算 出 し 、 計 測 ラ イ ン の 実 測 値 と比 較 し
た 。 現 地 で 撮 影 され た ビデ オ 画 像 を コ ン ピ ュ ー タ に 取 り
込 み(図3)、
同時 に映 って い るサイ レンサ の寸 法 を基 に
ラ ン ダ ム に 選 ん だ 任 意 の 画 面 か ら最 大 噴 気 直 径 と噴 気 上
昇 速 度 を 計 測 す る こ と を 繰 り返 して 平 均 値 を求 め 、 気 象
条 件(気
温 ・相 対 湿 度)か
ら 放 出 量 を 求 め た。 表1に 示 す
通 り、 計 測 ライ ン の 実 測 値 か ら 当 手 法 は 妥 当 な 値 を 与 え
て い る と言 え る 。 これ よ り 、 当 手 法 は 火 山噴 気 だ け で な
く 、 雄 勝 実 験 場 の プ ラ ン トの よ うな 小 規 模 な 対 象 物 に も
図21994年
有 効 であ る こ とが明 らか にな った。
る温度 変 化(実 測 値 と計 算値 の対 比)
長期 循環 実 験期 間 中の 生 産井 坑 底 にお け
図3コ
ン ピ ュ ー タ に 取 り込 ん だ ビ デ オ 画 像
表1サ
手法
イ レンサ か らの 放出 水蒸 気 量
備考
計 測 値(kg/s)
0.264
1995年ll月4日14:10
計測 ライ ン
0.275
ビデ オ画 像平 均値
(最小値 一最 大 値)
O.295
(O.240一 α350)
同 日20:30
1995年11月4日16:45-17:00
気 温15D℃
相 対 湿 度30%
※ ビデ オ 画 像 を用 い た 計 測 値 は 、最 大 噴 気 直 径10画 面 、 噴 気 上 昇 速 度5画 面 の 最 大 値 、 最 小 値 、 平 均 値 で あ る 。
参 考文 献
1)Kruger, P. (1980) Proceedingsof Special Panel on GeothermalModel IntercomparisonStudy, Sixth Annual Workshop
on GeothermalReservoirEngineering,StanfordUniversity,DOE/SF/11459-1.
2)Yamamoto,T., Fujimitsu,Y. and Ohnishi,H. (1995) Hot Dry Rock Reservoir3D Simulationof the Ogachi Site,
GeothermalResources Council Transactions,19, 287-294.
3)神 宮 司 元 治 ・江 原 幸 雄(1996)最 大 噴 気 直 径 を 利 用 した 火 山 噴 気 放 出 量 及 び 放 熱 量 測 定 法 、 火 山 、41、23-29.
一 研究報 告
一
コ ン ク リー ト中 の セ シ ウ ム の 拡 散 に対 す る セ シ ウ ム 濃 度 の 影 響
佐藤工業株 式会社原子力環境技術部
九州大学工学部応用原子核工学科
Effects
of Cesium
Concentration
Hirotaka Furuya*,
*Department
杉本純一郎
古屋廣高、 出光一哉、稲垣八穂広 、有馬立 身
on Diffusion
of Cesium
in a Concrete.
Jun-ichiro Sugimoto
Kazuya Idemitsu*, Yaohiro Inagaki* and Tatsumi Arima*
Nuclear Engineering Department, Sato Kogyo Co., Ltd.
of Nuclear Engineering , Faculty of Engineering, Kyushu University
Diffusivities of cesium were measured in a water-saturated concrete in an attempt to investigate the penetration
of radionuclidesinto the matrix of the concrete as a function of cesium concentration. The higher the concentration of
cesium is, the deeper the penetration depth of cesium into a concrete is or the greater the diffusion coefficient of cesium
in the concrete is. Sorption of cesium in the concrete was well explained by Langmuir isotherm. The measured
penetration profiles of cesium were composed of two parts. There were a steep slope near the surface and a gradual
slope in the deeper part. This profile was successfully explained by considering two diffusion paths in the concrete.
One diffusion path was fissure with a width of a few microns and the other was network of submicron pores. The
orders of magnitude of apparent diffusivities for cesium were 10-10to 10' m2 s' through the fissure and 10-'2to 10' m2
s' through the network of pores. Apparent diffusion coefficients were inversely proportional to the sorption coefficient
in the concrete.
【は じめ に 】
低 レベ ル 廃 棄 物 処 分 時 の コ ン ク リ ー ト固 化 体 の 浸 出 挙 動 、 工 学 バ リ ア 中 の 移 行 挙 動 、 ま た 、 原 子 力 施 設 解
体 時 の コ ン ク リ ー トへ の 汚 染 浸 透 挙 動 を 評 価 す る 上 で 、 コ ン ク リー ト、 モ ル タ ル 中 の 核 種 の 吸 着 お よ び 拡 散
挙 動 を 知 る こ とが 重 要 で あ る 。 濃 度 分 布 の 広 が る 速 度 を 表 す 「み か け の 拡 散 係 数 」 は 浸 入 実 験 に よ る 濃 度 分
布 か ら求 め ら れ る 。 多 くの コ ン ク リ ー トへ の 浸 入 実 験 に お い て 、2段
れ ら は 独 立 に 評 価 さ れ て き た 。 本 研 究 で は 、 こ の よ う な2段
の 濃 度 分 布 が 観 測 さ れ て お り、 従 来 こ
の 濃 度 分 布 を1つ
の 方程 式 で 表 す 方 法 につ い て
述 べ 、 浸 入 挙 動 のCs濃 度 依 存 性 に つ い て 検 討 し た 。
【実 験 】
試 料 に は 普 通 ボ ル トラ ン ドセ メ ン ト を使 用 し た 。 水/セ
と し、 混 和 剤 と して ポ ゾ リ スNo.70を
%で
メ ン ト比 は52.3%、
セ メ ン ト重 量 の1%加
あ っ た 。 コ ン ク リ ー ト試 料 は 直 径44mm、
セ メ ン ト/細 骨 材 比 は1/2
え た 。 試 料 の 平 均 密 度 は2.29/ccで 、 空 隙 率 は12
高 さ45mmの
円 筒 形 に 成 形 し ト レ ー サ ー 溶 液 と接 触 さ せ る 一
面 を 除 き エ ポ キ シ樹 脂 で 被 覆 した 。
Cs溶 液 に は 放 射 性 セ シ ウ ム'YCsと 非 放 射 性 セ シ ウ ム を含 む 溶 液 を 用 い 、 放 射 能 濃 度 を 約200Bqtml、
性 セ シ ウ ム 溶 液 の 濃 度 を0.IM、0.OlM、1mM、0.1mM、0.01mMの5段
非放射
階 に 設 定 した 。 こ のCs溶 液 を ト レ ー
サ ー 溶 液 と して 用 い た 。 実 験 で は こ の ト レー サ 溶 液 と 円 筒 形 試 料 を ア ク リ ル 容 器 中 で30日 間 接 触 させ 、 接 触
面 か ら 順 次 研 磨 を行 い 、 研 磨 粉 末 中 のCs濃 度 を測 定 し、 試 料 中 の 深 さ方 向 の 濃 度 分 布 を得 た 。
【結 果 お よ び 考 察 】
実 験 の 結 果 を 図1に 示 す 。 濃 度 分 布 は い ず れ も2段
従 来 、 図1に
示 す よ う な2段
に な っ て い る こ とが 分 か る 。
の 濃 度 分 布 は そ れ ぞ れ の 部 分 を 誤 差 関 数 で 解 析 さ れ て い た 。 しか し、 得 られ
た 拡 散 係 数 に 対 す る 物 理 的 イ メ ー ジ が 明 確 で な か っ た 。 本 研 究 で は 図2に
し た 。 試 料 に は 図2に
示 す よ うな 物 理 モ デ ル を た て解 析
示 す よ う に 表 面 か ら垂 直 に 亀 裂 が は い っ て お り、 核 種 は セ メ ン ト中 の 微 細 な 空 隙 部 分
と こ の 亀 裂 部 分 を拡 散 す る こ と が で き る 。 そ れ ぞ れ の 部 分 の み か け の 拡 散 係 数 をDma、Dfaと
を2a、
亀 裂 の 間 隔 を2bと
す る と、濃 度 分 布 は下 式 に よっ て表 され る。
し、 亀 裂 の 幅
.一
図2コ
図1コ
聞響 ●刷隔ワ
「
ン ク リー ト中 の 拡 散経 路 の模 式 図
ン ク リ ー ト中 のCs濃 度 分 布
凡 例 はCsの 溶 液 中 の 濃 度
ロ
(1)式 の 右 辺 第1項
は 試 料 表 面 か ら セ メ ン ト部 分 へ1
の 直 接 の 拡 散 、 第2項
は 一 旦亀 裂 を介 して 拡 散 し
…
た 後 セ メ ン ト部 分 へ 浸 透 し た もの の 寄 与 を 表 す 。
図1中
の 実 線 は 上 式 に よ っ て フ ィ ッ テ ィ ン グ した
結 果 で あ る 。 ま た 図1のy切
面(深
さbmm)で
片 か ら コ ン ク リー ト表
のCsの 吸 着 量 を 求 め 、 こ の 吸 着
量 か ら コ ン ク リ ー ト 中 のCsの 拡 散 に お け る 濃 度 依
存 性 を 検 討 した 。 図3に
線 を示 す 。 図3で
実験 で得 られ た 吸 着 等 温
はCs濃 度 が1mM以
図3コ
ン ク リ ー トへ のCsの 吸 着 等 温 線
上 か ら、吸 着
量 が飽 和 傾 向 に あ るの が 分 か る 。 これ は吸 着 サ イ
トがCsに
よ り飽 和 して い る た め と考 え ら れ 、 コ ン
ク リ ー トに お け るCsの 濃 度 依 存 性 を ラ ン グ ミ ュ アc
吸 着 等 温 線 で 表 現 した 。 ま た 図3の
曲 線 か ら得 ら
れ る 吸 着 係 数 と 、(1)式
か ら算 出 さ れ るDmaと
Dfaの 関 係 に つ い て 図4に
示 す 。 み か け の拡 散係 数
Dmaは
吸 着 係 数 と逆 比 例 の 関 係 に あ り 、 多 孔 質 媒:
体 中 の の モ デ ル で 表 現 さ れ る 。1
【結 論 】
・亀 裂 と 毛 細 管 空 隙 と い う2つ の 拡 散 経 路 を 考 え 、
コ ン ク リー ト中 のCsの 移 行 挙 動 を 説 明 で き た 。
・コ ン ク リー トの マ ト リ ッ ク ス 中 の み か け の 拡 散 係
数 は 、10'14∼10"2(m2/s)、
亀 裂 中の み か けの拡 散
係 数 は10"e∼1σ8(m2/s)で
あ った 。
図4吸
着係数 と拡散係数の関係
・コ ン ク リー ト中へ のCsの 吸 着 量 の 濃度 依 存 性 は ラ ン グ ミ ュア型 吸 着 等 温 式 で表 され る
。
・毛 細 管 空 隙 中 の み か け の拡 散 係 数 は、 多 孔 質 媒体 モ デ ル で表 現 され 、吸 着 係 数 と逆 比 例 の 関係 にあ る。
一 研 究報告
一
流 況 予 測 プ ロ グ ラム の開 発
一超 大型浮体構造物周辺 の流況及 び生態系予測手法の 開発 一
メガ フロー ト技術研究組合
九州大学総 合理工学研究科
and
Developement
of
Ecosystem
around
Numerical
肥海
昭男
経塚
雄策*・ 磯辺
Simulation
a Mega-Float,
Akio
Yusaku
Kyozuka*,
Technological
* Graduate
School
** Faculty
Program
a Large
of
長 洪**
Scale
Flow,
Diffusion
Floating
Structure
Hikai,
Atsuhiko
Isobe*
and Changhong
Research
Association
of Engineering
Sciences
of
篤彦*・ 胡
Engineering
, Kyushu
Hu**
of MEGA-FLOAT
, Kyushu
University
University
A feasibility
research project
on large-scale
floating
structures
for ocean space
utilization,
so called
"Mega-Float Project"
is now being conducted in Japan. Floating
structures
are superior to a reclaimed island in some points such as having less impact on the
ocean environment.
Because the scale is huge compared with those now exist,
however,
environmental assessment of such a structure in a bay is necessary before construction.
In this cooperative study, a multi-level
model which is extended to tidal calculation
of a
bay with a Mega-Float has been developed to predict changes of tidal currents and diffusion
caused by a Mega-float. Those simulation results are compared with ocean measurements obtained
in the demonstration experiments in Tokyo bay.
国 土 が狭 くか つ 山 岳 地 帯 の多 い我 が 国 に あ って は、 海 洋 空 間 の有 効 な 利用 は21世
紀 に向 け て の 大 い な
る挑 戦 の一 つ で あ る。 メ ガ フ ロ ー ト技 術 研 究 組 合 は この 課 題 に 取 り組 む こ とを 目的 と して 、 平 成7年5月
に発 足 した もの で あ るが 、 超 大 型 浮 体 構 造 物(メ ガ フ ロ ー ト)を 内 湾 に 設置 して海 上 都 市 、 海 上 空 港 な ど
と して利 用 しよ う とす る とき に 予想 され る技 術 的 な 問 題 を 洗 い 出 し、 克 服 す る た め の 方 策 につ い て研 究 を
お こ な って い る。 そ の ひ とつ は 、超 大 型浮 体 の設 置 に よ る周 囲 の海 洋 環 境 変 化 で あ り、 さ らに は生 態系 へ
の 影 響 で あ る。 こ れ らを事 前 に 予 測 す る た め に は、 超 大 型 浮体 の存 在 に よ る 内 湾 の 流 況 変 化 、拡 散 変化 を
精 度 良 く推 定 す る こ とが不 可欠 で 、 そ の上 で物 質 循 環 、 化 学過 程 、食 物 連 鎖 な どを考 慮 して は じめ て 生 態
系 へ の影 響 が 考 察 で き る こ とに な る 。 本 共 同研 究 は この 目的 の た め に 実 施 す る もの で 、 上 記 の複 雑 な 問 題
を九 州 大 学 で これ ま で に蓄 積 して き た 数値 計 算 の ノ ウハ ウ とメ ガ フ ロ ー ト技 術 研究 組 合 で 実 施 す る水 理 模
型実 験 及 び 実 海 域 実 験 を 組み 合 わ せ て 、 よ り高精 度 の流 況 予 測 プ ログ ラム を 開 発 しよ う とす る もの で あ る。
基 礎 方 程 式 お よ び数 値 計算 法 の概 略
沿 岸 域 の 規 模 の現 象で は 、水 平 方 向 の ス ケール が 高 々数 十kmで あ るの でf-plane近 似 を用 い る。 また 、 水
平 ス ケ ール に 比 べ て鉛 直 ス ケール が ノ1、
さ な こ と か ら静 水 圧 近似 、 浮 力 以外 の全 て の 項 で密 度 を
ブ ジネ ス ク近 似 を用 い る。 この 近 似 で 得 られ る方 程 式 を差 分 法(Multi… Level ModeDに
子 よ り小 さ な ス ケール の 流 動 過 程 な とは 渦 動 糊 生 ・渦 拡 散 に よ って 表 現す る。
定 とす る
よ って解 く。 差 分 格
現 在 、 メ ガ フ ロ ー ト技 術 研 究 組 合 で 考 え られ 、東 京 湾 で 実 証 実 験 が 行 わ れ て い る 超 大 型 浮 体は ポ ン ツ
ー ン型 で あ るの で こ こで は 図1の よ うな人 工的 な矩 形 湾 にお け る計 算 に つ い て 述 べ る。 超 大 型 浮 体 下 部 の
流 動 につ い て は、 そ こで は 水 面 変 位 が な い の で別 の 取 り扱 いが 必 要 と な る。 本 研 究 で は 浮 体 下 部 で は鉛 直
方 向 に積 分 され た 平 均 流 にPt・ て2次 元 ボ ア ソ ン方 程 式 を解 いた 。
各種境界条件
海 水 の流 動 に関 す る境 界 条 件 と して は 海岸 線 、海 底 、 浮 体 表 面 で は 滑 り無 し(no-slip)、 防 波 堤 表 面 で は
滑 り(slip)条 件 、 海 面 で は風 の 応 力条 件 を与 え た。 ま た、水 温 の 境 界 条 件 は 海 岸 線 や 海 底 で は 断 熱 と し 、
熱 の 出入 りは 海 面 と 開境 界 を通 じて 行 わ れ る と仮 定 した。 海 面 にお け る熱 の フ ラ ック ス は太 陽 の 日射 熱 、
長 波 放 射 、 蒸 発 に よ る潜 熱 輸送 、 大 気 に よ る乱 流 熱 伝 達 の4項 によ る と した 。 また 、 海 面 で の 塩 分 濃 度 は
水 蒸 発 量 と降 水 量 に よ って 決 定 され る もの と した。
開境 界 で は 周 期12時 間 の 潮 汐 を 与 え 、 熱 と塩 分 の条 件 は流 出時 には 自 由流 出 、 流 入 時 に は 外 洋 側 の観 測
値 を 仮 定 して 与 え た。
矩 形 湾 に お け る数 値 計 算 結 果
図1の よ うな 矩 形 湾(2Okmx15kmx20m)に
lkmxZm)が
お い て岸 か ら5km沖 合 い に超 大 型 浮 体(LxBxd=3kmx
あ る場合 の 流 れ と密 度 場 を計 算 した 。 浮体 か ら5②
②m離れ て 平 板 型 の 防波 堤(d炉5m)も 考 慮 した 。
河 川 は 岸 中 央 にあ り、流 量(50Om3/sec)を 仮 定 した 。
差分 メ ッシ ュ は水平 方 向に は(△x=△y=500m)、 鉛 直 方 向に は5層(△z==2∼5m)と し、(Cαse-1)矩 形 湾 単 独 時 、
(Case-Z)防 波 堤 設 置 時 、(Case-3)浮 体 設 置 時 、(Cose-4)防 波 堤+浮 体 設 置 時 、 の4状 態 に つ い て 計 算 結 果
を比 較 した 。
数 値 計 算 結 果 お よ び考 察
図Z(の,(b)はZ4② 時 間 後 の 表 層 の 塩 分 分 布 を(Case-1)と(Cαse-4)で 比 較 した もの で あ る。(Cαse-4)で は 河
川 流 が 浮体 お よ び 防 波堤 に よ って ブ ロ ック され て塩 分 分 布 が 若 干 変 化 して い る様 子 が 判 る 。 図3(の,(b)は
240時 間後 の 矩 形 湾 中央 断 面 に お け る(Cαse-4)の水 温 分 布 と定 常 循 環 流 ベ ク トル を 示 す 。 これ を(Case-1)の
結 果 と比較 す る と 、浮 体 が 存 在 す る 場 合 に は 浮体 下 部 で水 温 が 若 干 下 が って い る こ と が 認 め られ た が 、 そ
の差 は 微少 で あ っ た。 これ は 潮 汐 流 や 河 川 流 に よ る 拡 散 作 用 が 大 きい ため と も解 釈 され る が 、 今 回 の計 算
で は メ ッシ ュ サ イ ズ が大 きい の で こ の 後 も う少 し小 さ な メ ッシ ュを 用 い た 計 算 が 必 要 で あ る と思 わ れ る 。
ま た 、 これ らの数 値 計 算 結 果 を 検 証 す るた め に 実 海 域 実 験 にお いて 水 温 の 鉛 直 分 布 を い くつ か の 点 で計 測
す る 予 定 で あ る。 さ らに は 、 これ に 生 態 系 モ デ ル を 組 み込 ん で 総 合 的 な 環 境 アセ ス メ ン トの 手 法 を確 立 し
て い く計画 で あ る 。
RECTANGULAR
FLOATING
BAY WITH
STRUCTURE AND
BREAKWATER
図1 矩 形 湾 の 中の 超 大型 浮 体 と防波 堤 配 置
図Z(の
図3(a)矩
矩 形 湾 表 層 の 塩 分 分 布(Case。i)
形 湾 中 央 断 面 に お け る 水 温 分 布(Case-4)
図2(b)矩
図3(b)矩
形 湾 表 層 の 塩 分 分 布(Case-4)
形 湾 中 央 断 面 に お け る 定 常 循 環 流 ベ ク トル(Case-4)
一
研究報告
一
流 電 電 位 法 に よ る 高 温 岩 体 破 砕 面 の 評 価 技 術 に 関 す る研 究
九州大学工学部
牛 島恵輔 ・水永秀樹
財団法人 ・電力 中央研究所*海
Studies
on Fracture
Evaluation
by Mise-a-la-masse
Keisuke
Ushijima,
Hideki
Mizunaga,
Hideshi
江 田秀志*・ 堀
in Hot
Dry
義 直*
Rock
Method
Kaieda*
and Yoshinao
Hori*
Faculty of Engineering,
Kyushu University
*Central Research Institute of Electric Po
wer Industry
Abstract
An advanced geophysical technique for reservoir monitoring has been developed by the joint
research of Kyushu University and CRIEPI work in related to fracture evaluation at the Hot Dry
Rock Geothermal Power Project in the Ogachi area. The Fluid Flow Tomography survey method
utilizes a casing pipe itself as a charged current electrode similar to the mise-a-la-masse method .
The method has been applied to monitor fluid-flow behaviors during massive hydraulic fracturing
operations and fluid-circulation experiments from injection to production boreholes . In the
automatic recording system controlled by a personal computer, charged potentials (mV/A) and
spontaneous potentials (mV) can be simultaneously measured as a function of time at multiple
stations (120ch) surrounding an operating borehole. Fluid-flow behavior in the subsurface could
be visualized as a function of time by using contour maps of residual potentials from SP data and
relative changes of apparent resistivity distributions together with the observed AE hypocenters.
1.は
じめ に
高 温岩 体 発 電 とは 、 地 下 の 高 温 乾 燥 した岩 盤 中 に 水圧 破 砕 に よ り人 工亀 裂 を 人 為 的 に造 成 し、地 表
か ら水 を注 入 して 岩 盤 の亀 裂 中で 熱 交 換 し水 蒸 気 と して 抽 出 し、発 電 に利 用 す る発 電 方 式 で あ る。 高
温岩 体 発 電 の た め の重 要 な 先 端 技 術 に、 水 圧 破 砕 に よ る地 下 亀 裂 面 の造 成 技 術 お よび破 砕 面 の探 査 技
術 が あ る。 この 水圧 破 砕 に よ り生 じる地 下岩 盤 中の 破 砕 面 の 評 価 を行 う目的 で 、 九州 大 学 と(財)電力
中 央 研 究 所 との共 同研 究 に よ り、 流 電 電 位 法 に よ り地 下 浸 透 流 を直 接 可視 化 す る手 法 の開 発 が行 われ
て きた 。 本 報 で は 、 高 温岩 体破 砕 面 の 評 価 技 術 と して 開 発 した 流 体 流 動 電位 法 の 測 定 シス テ ム を説 明
し、 秋 田県 雄 勝 地 区 の 高 温 岩 体 発 電 実 験 場 で行 わ れ た 水 圧破 砕 実 験 時 にお け る調 査 結 果 を示 す 。
2.流
体 流 動 電位 法
地 下 亀 裂 面 の造 成 の た め に水 圧 破 砕 を行 うと、 新 た に生 じた 地 下亀 裂 面 へ の 水 の 浸 入 に よ る岩 盤 の
比 抵 抗 の変 化 が 生 じる。 また 、岩 盤 亀 裂 中 の 固 液 の 境 界 で 、流 体 が流 れ る こ とに よ り流 動 電 位 が発 生
す る。 これ らの こ とか ら、 高 温 岩 体 の破 砕 面 の進 展 状 況 の 評 価 の た め に 、 比抵 抗 変 化 を反 映 した 人 工
電 位 お よ び 流動 電位 を反 映 した 自然 電 位(SP)に
着 目 した 方 法 の 開発 を行 っ た 。
流 体 流 動 電位 法 は 、 電 気 探 査 法 の 一 手 法 で あ る流 電 電 位 法 を 改 良 した 方 法 で 、 坑 井 の ケー シ ン グ パ
イ プ(鉄管)を 利 用 して 地 下 深 部 に 直 接 電 流 を流 し、水 圧 破 砕 時 の地 下浸 透 流 に よ っ て 生 じ る人 工電 位
お よ びSPの 変化 を、 地 表 面 で連 続 的 に 多 点 同 時 観 測(最 大120点)し て 地 下 浸 透 流 をモ ニ タ リ ングす
る 方法 で あ る。 流 体 流 動 電 位 法 で は 、測 定 は コ ン ピ ュー タ制 御 で行 い 、 デ ー タの 測 定 お よび 記 録 が 自
動 的 に行 わ れ る。 図1に 、流 体 流 動 電位 法 の 測 定 シス テ ム を示 す 。
図1流
体 流 動 電位 法 の 測 定 シス テ ム
図2SP変
化 量 の 分 布 とAEの
震源分布
(1992,711,22:05-22:52>
3.秋
田 県雄 勝 実験 場 で の 野 外 実 験
秋 田県 雄 勝 地 区 で は 、電 力 中央 研 究 所 に よ り掘 削 深 度1,000mの
坑 井(坑底 温 度224℃)を 用 い て 、水
圧 破 砕 に よ る地 下 亀裂 面 の 造 成 技 術 の 開発 が行 わ れ 、 広 範 囲 に亀 裂 面 を造 成 す る 目的 で 、破 砕 面 を複
数 造 る多 段 破 砕 の研 究 が行 わ れ て きた 。 す な わ ち 雄 勝 地 区 で は 、坑 井 の 坑 底 部 お よび700m深
度 の2
ヵ所 で 水 圧 破 砕 が行 わ れ た 。 また 亀 裂 面 の造 成 技 術 と並 行 して 、AE震 源 分 布 や 流 体 流 動 電位 法 を 用
い た 亀 裂 面 の評 価 に 関 す る研 究 も行 われ て きた。
流 体 流 動 電位 法 は 、一 段 目(1,000m)お よび 二 段 目(700m)破 砕 時 に行 わ れ た。本 報 で は2段 目破 砕 実
験 時 の調 査 結 果 の 一 例 を示 す 。調 査 範 囲 は 東 西800m× 南 北800mの
範 囲 で 、坑 井 を 中心 と して100m
間 隔(中心 部 は50m間
隔)で測 点 を配 置 し、 測 定 を実 施 した。 図2は 、そ の 時 に生 じたSPの 変化 量 の
分 布 を 示 した もの で あ る。SP変
化 は 中 央 の 坑 井(星 印)を 中心 と して 広 範 囲 に広 が っ て い る が 、 坑 井
の 南東 部 に120mV以
上 の大 き な 正 の ア ノマ リー が 現 れ て い る。 図 中の ● 印 は 、 この 時 間 内 に 生 じた
AEの 震 源 分布 で あ るが 、SPの ア ノマ リー の 箇 所 とほ ぼ 一致 して い る。 こ の こ とか ら、 水圧 破 砕 に
よ っ て新 た に生 じた 亀 裂 面 でAEが 発 生 し、 そ の亀 裂 に圧 入 水 が進 行 す る とい う亀 裂 発 生 お よび 亀 裂
進 展 の メカ ニ ズ ムが 推 定 で き る。
4.お
わ りに
流 体 流 動 電 位 法 を用 い る こ とで 、SPの 変 化 や 見掛 比 抵 抗 の 変 化 か ら地 下浸 透 流 の 流 れ を可 視 化 す
る こ とが で き 、水 圧 破 砕 実験 に よ り新 た に造 成 され る岩 盤 中 の 亀 裂 面 の進 展 方 向 や 分 布 の 経 時 変 化 を
把 握 す る こ とが 可能 とな っ た 。
参考 文献
Ushijima, K. (1989): Exploration of geothermal reservoir by the mise-a-la-masse measurement,
Geothermal Resources Council Bulletin, Vol.18, No.2, 17-25.
Kaieda, H. (1992): Ogachi project for HDR geothermal power in Japan—First hydraulic fracturing
results—, Geothermal Resources Council Trans., Vol.46, 493-496.
Mizunaga, H. et al.(1995): Fluid flow Monitoring System of a Geothermal Reservoir by Electrical
Prospecting, Memoirs of the Faculty of Engineering, Kyushu University, Vol.55, No.4, 505-512.
一
研究報告 一
樹 木 のCO2固
九電(株)総
定 機 能 の 向 上 に 関 す る研 究
合研究所電気利用研究室
岩城
九州大学農学部林学科
Improving
the
登
齋藤 明 ・玉 泉幸 一 郎
CO.-Fixation
Ability
of
Trees
Noboru Iwaki
Akira
Kyushu Electric
*Department
of Forestry
Saito*,
Koichiro
Gyokusen*
Power Co., Inc.,Research
, Faculty
of Agriculture,
Laboratory
Kyushu University
The growth rate of two year old SENDAN(Meliaazedarach) seedlings ccollected from five regions were
compared between and within the mother tree's growing regions. There was a significant difference between
and within regions, but the growth orders were different from one year old seedlings. The growth rate of
seedling under shade conditions decreased drastically, and increased under nutrient conditions. From these
result, it is concluded that SENDANis a pioneer tree species and need nutrient to keep high growth rate.
大 気 中 のCO2濃
度 の 上 昇 に よ っ て 地 球 の 温 暖 化 が 進 ん で い る 今 日、 大 気 中 のCO2を
下 げ る た め の 対 応 が 要 請 され て い る 。 そ の 対 応 策 の ひ とつ と して 、 樹 木 に よ るCO2固
よ るCO2固
定 量 を 増 大 させ る に は 、 緑 地(森
究 で は 樹 木 のCO2固
林)の 拡 大 や 樹 木 個 体 のCO2固
固 定 し、 濃 度 を
定が あ る。樹木 に
定 能 の向 上 があ る。 本研
定 機 能 を 向 上 させ る こ と を 目的 と して 研 究 を 行 って き て い る。
これ ま で の 研 究 に お い てCO2固
セ ン ダ ン(Meliaazedarach)が
定 機 能 に 優 れ た 有 用 樹 種 で 、 か つ 九 州 地 域 で 生 育 が 可 能 な 樹 種 と して
選 抜 され 、 前 年 度 は 、 セ ンダ ンの 遺 伝 変 異 を 明 らか にす る た め に 九 州 各
地 か ら種 子 を 採 取 し、 遺 伝 的 変 異 を 明 らか に す る た め に 当 年 生 実 生 の 生 育 の 違 い を 明 らか した 。 今 年 度
は 引 き 続 き一 年 生 の 成 長 量 を 測 定 す る と と も に 、 セ ンダ ンの 種 特 性 と して養 分 環 境 や 光 環 境 に 対 す る 反
応 を 明 らか に した 。 さ ら に 、 組 織 培 養 に よ る 大 量 増 殖 技 術 を 確 立 す る た め に 根 系 を 材 料 と した 培 養 系 を
試 み る と と も に 、 変 異 体 を 作 出 す る た め の カ ル ス培 養 系 につ い て も検 討 した 。
〈成 長 に 関 す る遺 伝 変 異 〉
当 年 生 で は 多 々 良 川 の 系 統 に 優 れ た 成 長 を 示 す もの が 多 か った が 、 一 年 生 で は 緑 川 や 筑 後 川 の 系 統 に
優 れ た 成 長 を 示 す 個 体 が 増 加 し多 々 良 川 の 成 長 は 低 下 した(図1)。
ま た 、 同地 域 内 に お い て も 当 年 生
の 成 長 が そ の ま ま 継 続 され た 系 統 は 少 な く、 系 統 間 で の入 れ 替 え が 認 め られ た 。 これ らは 、 当 年 生 の 成
長 が 種 子 の 発 芽 時 期 や 種 子 の 大 き さ な どの 種 子 特 性 に 多 くを 依 存 して い る た め で 、 一 年 生 に な っ て 本 来
の 成 長 特 性 が 発 現 さ れ た と 考 え られ る 。 そ こ で 、 本 年 度 は 図 に 示 し た5系 統 ず つ を 各 河 川 か ら選 抜 し、
今 後 の 育 種 材 料 と して 組 織 培 養 に よ る増 殖 を 試 み て い る。 ま た 、 セ ン ダ ンの 遺 伝 変 異 に つ い て は 河 川 毎
にRAPD法 を 用 い て解 析 中 で あ る 。
〈成 長 特 性 〉
セ ン ダ ンの 自 生 地 は ほ と ん どの 場 合 、 河 川 敷 な どの 陽 地 で 、
しか も、 養 分 に 富 ん だ 地 位 の 高 い と こ ろ で あ る。 そ こで 、 光 環
境 と養 分(窒
素)環
境 に 対 す る反 応 を 圃 場 に お い て 実 施 した 。
そ の 結 果 、 被 陰 処 理 を 行 う と光 の 減 衰 に 比 例 して 成 長 量 が 低 下
した(図2)。
通 常 の 樹 木 で は相 対 照 度 の40%か
ら50%で
最 大 の 生 長 量 を 示 す こ とか ら、 セ ンダ ン は 非 常 に 陽 性 の 強 い 樹
種 で あ る こ とが 明 らか に さ れ た 。 ま た 、 肥 料 処 理 の 結 果 、 施 肥
に 対 す る 反 応 が 優 れ て お り(図3)、
光 合 成 速 度 も葉 内窒 素 含
量 に 対 して 高 い 窒 素 効 率 で 上 昇 して い る こ とが 明 らか に な っ た
(図4)。
よ って 、 今 後 の 育 種 の 選 抜 基 準 と して 、 耐 陰 性 や 耐
や せ 地 性 を 付 加 す る 必 要 性 が 指 摘 さ れ る。
〈 組 織 培 養 に よ る 増 殖 と変 異 体 作 出 〉
図2重
量 成長 と相対照度 との関係
図3施
肥の処理水準 別の樹高成長量
大 量 増 殖 の た め の 外 植 体 と して セ ンダ ンの 根 系 を 用 い た 増 殖
系 を 確 立 した 。 根 系 の 増 殖 率 は 非 常 に高 い の で こ れ を外 植 体 と
して 用 い る こ と で 、 大 量 の 個 体 を 得 る こ とが 可 能 とな った 。 問
題 と して は 、 根 系 か ら の 分 化 が カ ル ス を経 由 して い る可 能 性 が
あ る た め 、 遺 伝 的 な 安 定 性 を 確 認 す る必 要 が あ る 。 さ ら に、 変
異 体 を 作 出す る た め に 、 カ ル ス培 養 系 につ い て検 討 して い る が 、
カ ル ス か らの 再 分 化 は 認 め られ る もの の 、 分 化 率 が 低 い の で 、
今 後 さ ら に培 地 の 検 索 が 必 要 で あ る。
図4セ
図1セ
ンダ ンの産 地 別 成長 量 の 比較
ンダ ンの光 合 成 速 度 と葉 内窒 素 濃 度 と の関 係
一
研究 報 告
一
シ リコ ン 中 の 重 金 属 の 挙 動 に 関 す る研 究
九州 大学 先 端科 学技 術共 同研 究 セ ンター*
新 日本 製鐵(株)先
Behaviors
端技 術研 究所 半 導体基 盤研 究 部
of Heavy
Metal
Hiroshi
Kazunori
*Advanced
Advanced
Semiconductor
寛*
石坂
和 紀 ・川 上
Impurities
in
和人
Silicon
Nakashima*
Ishisaka,
Science and Technology
中島
Kazuto
Kawakami
Center f
or Cooperative Research, Kyushu University
Materials and Devices Laboratory, Advanced Technology Research
Laboratories, Nippon Steel Corporation
Abstract
We have investigated extrinsic gettering behaviors of iron in silicon by using DLTS . Czochralski (Cz)
grown p-type samples, doped with iron at 1000°C for 2 hours, were annealed at 800°C for various periods
under the surface conditions with and without iron. It is confirmed that the samples with iron on the
surface show rapid decrease of the iron concentration but the samples without iron show slow decrease . This
implies that the surfaces covered with iron act as effective gettering sites but the bare surfaces are ineffective .
However, it is not practical that iron is used as materials for iron gettering. Aluminum gettering have been
also investigated. The efficiency is rather large, although it is low relative to iron, suggesting that aluminum
has a potentiality for iron gettering.
1.は
じめ に
LSIの 微 細 化 、 高 密 度 化 へ の 開 発 は ます ます 急 激 に な っ て き て お り、 デ バ イ ス 構 造 も複 雑 化 して き て い る 。
そ れ に伴 う結 晶 欠 陥 が 基 板 ウ エ ハ に 導 入 さ れ る機 会 も増 大 して お り、 従 来 問 題 とな らな か っ た 微 量 な 結 晶 欠 陥
も 素 子 特 性 や 信 頼 性 に 致 命 的 な 影 響 を 与 え る 。 これ ら の 欠 陥 の 一 つ と して 、 重 金 属 不 純 物 が 上 げ られ る 。
周 期 律 表 のIII族 元 素 の ボ ロ ン とV族
い 特 徴 を 持 つ 。 こ の た め に 、Siデ
元 素 の リ ン は 、 浅 い 不 純 物 準 位 を作 り、 固 溶 度 が 高 く拡 散 係 数 が 低
バ イ ス プ ロ セ ス に お け る 電 子 ・正 孔 濃 度 を 制 御 す る 手 段 と して 、 そ の 拡 散
技 術 は 不 可 欠 な プ ロセ ス 技 術 と して 確 立 して い る 。
一 方 、 ク ロム 、鉄 、 ニ ッ ケ ル 、銅 等 の 重 金 属 は 、 深 い 不 純 物 準 位 を作 り、 固 溶 度 は 浅 い 不 純 物 に 較 べ て 低 い
が 、 拡 散 係 数 は 非 常 に大 き い 。 鉄 の 場 合 、1000。Cで3×10-6cm2s-1の
はt=10分
で約0.4mmで
あ る 。 こ れ は 通 常 の ウ エ ハ で は 約10分
値 を 持 ち 、拡 散 距 離 の 目安 で あ るx/i[Z5ii
間 の 熱 処 理 で 鉄 が ウエ ハ を ほ ぼ 完 全 に 貫 通 す
る こ と を 意 味 す る。 ニ ッケ ル 、 銅 の拡 散 は 更 に速 い 。 これ ら重 金 属 に汚 染 さ れ る と、 ウ エ ハ の ライ フ タ イ ム の
低 下 やpn接
合 の リー ク 電 流 の 増 大 等 が 生 じ、 デ バ イ ス 特 性 や 信 頼 性 が 著 し く低 下 す る 。 重 金 属 汚 染 の な い 完
全 ク リ ー ン化 プ ロ セ ス 技 術 が 望 ま れ る が 、 実 プ ロ セ ス に お い て は これ らの 重 金 属 汚 染 が し ば し ば 生 ず る 。 従 っ
て 、 重 金 属 を デ バ イ ス の 活 性 領 域 か ら取 り除 き 、 デ バ イ ス 特 性 に影 響 の な い 場 所 に集 め るゲ ッ タ リ ング 技 術 が
重 要 と な る 。 ゲ ッ タ リ ン グ技 術 は 、 ウエ ハ 中 に含 ま れ て い る酸 素 を 析 出 さ せ 、 この 析 出 物 に 重 金 属 を 捕 獲 さ せ
る イ ン ト リ ン シ ッ ク(lntrinsic)ゲ
ッタ リ ン グ(以 後IGと
に 重 金 属 を集 め る エ キ ス ト リ ン シ ック(Extrinsic)ゲ
呼 ぶ)と ウ エ ハ 裏 面 側 に 捕 獲 の 場 所 を 作 り、 こ の 領 域
ッ タ リ ン グ(以 後EG)に
大別 され る。
本 研 究 で は 、 鉄 を 汚 染 種 と して 取 り上 げ、EGに
よ る ゲ ッ タ リ ン グ技 術 の 開 発 を 目 的 と して 、 鉄 の 挙 動 お
よ び ゲ ッ タ リ ン グ機 構 の 解 明 を 行 っ て い る 。
2.実
験 手順
実 験 に用 い た ウ エ ハ は 厚 さ620μm,抵
のp形Czウ
抗 率10Ωcm,ボ
ロ ン濃 度1。3×1015cm-3,酸
エ ハ で あ る 。 試 料 作 製 の 手 順 を 図 一1に 示 す 。 ウ エ ハ か ら12×15mm2の
素 濃 度7.5×1017cm-3
チ ッ プ を 切 り出 し た 後 、
両 面 を化 学 エ ッチ ン グ して 鉄 を 真 空 蒸 着 した 。 蒸 着 は 、 高 純 度 鉄 線 に直 接 電 流 を流 す 直 接 通 電 加 熱 方 式 で 行 っ
た 。 こ の 試 料 を 、10000Cで2時
間 、 真 空 中 で 熱 処 理 した 。 熱 処 理 の 終 了 は 、 試 料 を 液 体 窒 素 温 度 ま で 急 冷 す
る こ と に よ り行 っ た 。 こ の 鉄 を拡 散 し た 試 料 を4×12mm2の
A.表 面 に残 る 拡 散 源 を そ の ま ま残 し、800。Cで
試 料 に 分 け 、 次 に 示 す 熱 処 理 を行 っ た 。
所定 の時 間 の熱処 理
B.表 面 に 残 る鉄 拡 散 源 を エ ッ チ ン グ除 去 後 、800。Cで
所 定 の時 間の 熱処 理
C,表 面 に 残 る鉄 拡 散 源 を除 去 して ア ル ミ ニ ウ ム を 約1000A蒸
着 後 、800。Cで
所定 の時 間 の熱 処理
こ の よ うな 処 理 後 、試 料 片 面 か ら 中 央 部 ま で 研 磨 除 去 し 、 アル ミ ニ ウ ム 電 極 のSchottkyダ
し 、 鉄 濃 度 をDLTSに
3.結
イ オ ー ドを 作 製
よ り求 め た 。
果
1000。Cで2時
間 鉄 を 導 入 し た 試 料 のDLTS信
こ の 信 号 は 、Ev+0.1eVに
通 常p形
シ リ コ ン 中 に鉄 が 導
が 室 温 付 近 の 温 度 で も移 動 して 、 負 に イ オ ン 化 した 置 換 位 置 の
捕 獲 さ れ てFe才 一B『 ペ ア が 形 成 さ れ る 。 こ の ペ ア の 濃 度 は 、 格 子 間 鉄 の 濃 度 と一 致 す る の で 、
シ リ コ ンで はFeオ ーByペ ア を 観 測 す る こ と に よ り鉄 濃 度 が 評 価 で き る 。 信 号 の ピー ク高 さお よ び 定 常
容 量 か ら鉄 濃 度 は 、1.1×1014cm-3と
A,B及
近 に一 つ の信 号が 観 測 され る。
位 置 す る鉄 一ボ ロ ン ペ ア の ドナ ー 準 位 に よ る も の で あ る 。p形
入 され る と、 正 にイ オ ン化 した 格 子 間 鉄(Feか
ボ ロ ン(By)に
号 を 図 一2に示 す 。 約60K付
びCの
得 られ 、1000。Cで
の 鉄 の 固 溶 度 と 良 く一 致 す る。
方 法 で 処 理 した 場 合 の 鉄 濃 度 の 時 間 依 存 性 を 図 一3に示 す 。 そ の 時 間 変 化 は熱 処 理 時 の 表 面 状
態 に よ り大 き く異 な る こ とが 分 か る 。 図 一3中 の 波 線 は 、800。Cで
の 鉄 の 拡 散 係 数 を8×10-7cm2s 1と し 、 表
面 の み が 鉄 原 子 の シ ン ク で あ る と し て 計 算 した 結 果 で あ る 。 表 面 に 鉄 の 拡 散 源 が あ る 場 合 、減 少 の 様 子 は 波 線
で 示 した 計 算 結 果 よ り速 く減 少 す る 。 こ れ は 、 表 面 へ の 拡 散 と同 時 に 、 バ ル ク 内 部 で 鉄 の 析 出 が 起 こ っ て い る
こ と を 示 唆 して い る 。
一 方 、 表 面 に 鉄 の拡 散 源 が
な い場 合 、そ の濃 度 は 短時 間
で 、拡 散源 が あ る場 合 と同 程
度 に 、急 速 に減 少 す る。 この
減 少 は 、上 に述 べ た 様 に 、鉄 の
析 出 に よ る も の と考 え られ る 。
しか し、そ の 後 の濃 度 変化 は 緩
や か で 、800。Cで の 固 溶 度2.0
×1012cm-3に
な る まで長 時
間 必 要 と し、6時 間 の熱 処 理 で
も固 溶 度 に達 して い な か っ た 。
また 、 これ らの試 料 の 表面 層
を化 学 エ ッチ ング に よ り除去
して 再 度1000。Cで2時
間の
熱 処 理 を す る と 、3∼5×1013
cm『3の 濃 度 に な っ た 。
図 一1試
料 作製 お よび測 定 の手 順
こ れ は 、表 面 に鉄 の 拡 散 源 が な い 場 合 、 バ ル ク内 部 で の 鉄 の 析 出 が 支 配 的 と な り、 表 面 が 有 効 な ゲ ッ タ リ ン ク
サ イ トに な っ て い な い こ と を示 し て い る 。
し か しな が ら、 鉄 の ゲ ッ タ リ ン グ材 と して 鉄 を使 用 す る こ と は 非 現 実 的 で あ る 。 そ れ に 代 わ る 材 料 と して 、
ア ル ミ ニ ウ ム が 考 え ら れ る 。 ア ル ミ ニ ウ ム は 、III族
た 、LSIプ
元 素 で 、 浅 い不 純 物 準 位 を 作 り、 拡 散 係 数 も 小 さ い 。 ま
ロセ ス に は 電 極 配 線 材 料 と し て 使 用 さ れ て い る 。 更 に 、 ア ル ミ ニ ウ ム ー シ リ コ ン界 面 は 、6000Cり
上 の 温 度 で 共 晶 反 応 の 結 果 と し て 液 相 状 態 に な り、 強 力 な ゲ ッ タ リ ン グ 材 とな る こ と が 期 待 され る 。 そ の 結 果
を 図一3に 示 し て い る 。 表 面 に 鉄 が あ る 場 合 に 較 べ て 減 少 速 度 は遅 い が 、2時 間 の 熱 処 理 後 、 固 溶 度 ま で 回 復 し
て い る 。 ま た 、 表 面 に ポ リ シ リ コ ンが あ る 場 合 よ りか な り速 い 。 従 っ て 、 ア ル ミ ニ ウ ム に よ る 鉄 の ゲ ッタ リ ン
グ は 、従 来 か ら あ るEGよ
り も強 力 な ゲ ッ タ リ ン グ 材 とな り得 る と考 え られ る 。 今 後 の 課 題 と して 、 表 面 の ア
ル ミニ ウ ム ー シ リ コ ン層 に どの 程 度 の 鉄 が 捕 獲 され て い る か を 定 量 的 に 調 べ る 必 要 が あ る 。
4.ま
とめ
EGに
よ る ゲ ッ タ リ ン グ技 術 の 開 発 を 目 的 と して 、 表 面 に鉄 の 拡 散 源 が あ る 場 合 と な い 場 合 、 ア ル ミ ニ ウ ム
が あ る 場 合 に つ い て 、 鉄 の ゲ ッ タ リ ン グ挙 動 をDLTSに
よ り調 べ た 。 これ ら の 比 較 よ り、 熱 処 理 時 の 表 面 状 態
に よ り、 そ の 挙 動 が 大 き く変 わ る こ と が 分 か っ た 。 そ の 効 率 は 、 表 面 に鉄 が あ る 場 合 が 一 番 強 く、 な い 場 合 は
非 常 に低 い。 アル ミ ニ ウ ム の ゲ ッ タ リ ン グ効 率 は か な り高 く、 従 来 か ら使 わ れ て い る ポ リ シ リ コ ン よ り は る か
に 高 い 。 今 後 は 、各 方 法 で 、 ゲ ッタ リ ン グ材 に どの 程 度 鉄 が 捕 獲 さ れ て い る か を定 量 的 に把 握 す る必 要 が あ る 。
[謝辞]
本研 究 は、本 学工 学部 電気 工学 科修 士課 程
泰 造 助 教 授 、鶴 島
日高
稔 夫 教 授 お よ び 電 気 工 学 科4年
憲 一 氏(現
久保 山
在NEC)並
び にそ の指導 教官 で ある佐道
貴 博氏 並 び にその指 導 教官 で あ る森
紘 助 教授 と
の 学 内 共 同 研 究 で も あ る こ と を 付 記 し、 深 く感 謝 申 し上 げ ま す 。
図 一2鉄
を1000。Cで2時
DLTSシ
グナル
間 拡 散 したCz,p形Siの
図 一3800。Cで
熱 処 理 後 の 鉄 濃 度 変 化.
●:表 面 に 鉄 の 拡 散 層 が あ る 試 料.
○:表 面 を エ ッチ し た 試 料.
■:表 面 に ア ル ミ ニ ウ ム 接 触 が あ る 試 料.
一
研究報告
一
地 下 ダ ム建 設 に伴 う地 下 水 の挙 動 を管 理 ・利 用 す る た め の
数 値 計 算 モ デ ル の 開 発 ∼ 第2報
西松建設㈱技術研 究所
九州 大学大学院 工学研究科*
Development
∼
田尻 要
神 野 健 二*・ 茹 瑛*・ 中 川 啓*
of numerical model for managing and utilizing groundwater
resources with the construction of subsurface dam.
Kaname Tajiri
Kenji Jinno*,Ying Ru*,Kei Nakagawa*
Technical Research Institute, Nishimatsu Construction Co., Ltd.
Graduate School of Engineering, Kyushu University*
Groundwater
development
insmallislandsoftenrequires
management
topreventseawaterintrusionintocoastalaquifers.
In thispaper,therefore,a two-dimensional
freshandsaltwaterflowmodelis studiedto increaseirrigationwatersupplyto a
sugarcanefield.Boththegroundwater
flowrateacrosstheareaofa plannedsubsurface
damandthemovement
ofimmiscible
fresh-salt
waterinterface
arepredicted
bythepresentmodel.Apreliminary
evaluation
fora feasiblegroundwater
development
is attempted.
Thegoundwaterflowrateacrossthedamsiteto thesea is predictedas about329X103 m3/year
for the
precipitation
1267mmin 1991,whichis 73% oftheaverageannualprecipitation
of 1734mm.
著 者 ら は、 前 報1)で、数 値 計 算 モ デ ル に よ り塩 水 く さび の 降 雨 に よ る平 面 的 な 変 動 に つ い て検 討 した。 今 回
は 、 地 下 ダ ム建 設 に伴 う地 下 水 の挙 動 を 管 理 ・利 用 す る た め の 数 値 計 算 モ デ ル の 開 発 の 一 環 と して 、塩 水侵
入 阻 止型 地 下 ダ ム を建 設 す る こ とに よ る水 資 源 開発 可 能 量 の評 価 に つ い て 、数 値 計 算 モ デ ル を用 い て検 討 し
た結 果 を報 告す る。
【
解 析 想 定 地 の概 要 】
図一1に解析 想 定地 の平 面 概 略 を示 す。 基 盤 標 高Omを 結 ん だ この領
域 で 数 値 計 算 をお こな い 地 下 ダ ム に よ る水 資源 開発 可 能 量 の評 価 を
行 い 、検 討 す る。
【
数 値 計 算 モ デ ル の基 礎 式 】
数 値 計 算 モ デ ル は、 淡 塩 水 が混 合 しない と仮 定 した平 面2次 元 の
モ デ ル を用 い る。 モ デ ル と した 帯 水 層 は 、深 度12mに あ る粘 土 ・シ
ル ト層 を 下 部 の不 透 水 層 と した 不圧 帯水 層 で 、 一様 な透 水 係 数 を も
つ もの とす る。 地 下水 流 に つ い て 垂 直流 速 を無 視 した 準 一様 流 を仮
定す れ ば基 礎 式 は 、 そ れ ぞ れ塩 水 お よび 淡 水 に つ い て(1式 お よび
(2)式 が成 り立 っ。
図 一1解
析想定地の平面概略図
こ こ で 、ne:有 効 空 隙 率 、k:透 水 係 数(=5.8×10'2cm/s)、h∫:淡
P。:塩水 密 度 ・Pf:淡 水 密 度 ・Ap==P,-Pr、4誕
水 上 面 ま で の 高 さ 、h。:淡 塩 境 界 面 ま で の 高 さ 、
ゆ 降 雨 に よ る 涵 養 量 。 数 値 計 算 に つ い て は ・(2)・(3)式
を差 分 化
し、 繰 り返 し計 算 を 行 い 、 躬お よ び 尾 を 求 め る。 塩 水 く さ び の 先 端 位 置 の 算 定 は 近 似 的 に 求 め る 方 法 を 用 い る。
詳 細 は 参 考 文 献2),3)を
参 照 さ れ た い 。 酒 養 の 処 理 に っ い て は 、 前 報1)の1段
タ ンク の 地 下 水 涵養 モ デル を リ
ン ク し て 用 い て い る 。 ま た 、 蒸 発 散 量 に つ い て は 、 修 正 ペ ン マ ン 式 に よ り求 め ら れ た 蒸 発 散 位 に サ トウ キ ビ
の 作 物 係 数 を 乗 じて 推 定 され た も の を 用 い る。
【地 下 ダ ム に よ る 開 発 可 能 水 量 の 評 価 方 法 】
開 発 可 能 水 量 に つ い て は 、 地 下 ダ ム 建 設 想 定 軸 を 横 切 る 流 量 を 式(3)で 計 算 す る。
こ こ で 、 △1:ダ ム 軸 上 の 微 小 水 平 方 向 長 さ ・hfi:i点 に お け る淡 水 上 面 ま で の 高 さ ・Vi(D:ダ ル シ ー 則 か ら計 算 さ
れ る ダ ム 軸 の 法 線 方 向 の 淡 水 の 流 速 、T:流 量 評 価 を 行 う期 間 、N:ダ
ム 軸 上 に あ る格 子 間 隔 数 、i:格 子 間 隔 の
番 号 で あ る。
【数 値 計 算 の 結 果 と 考 察 】
図一2断 面 で の 地 下水 位 変 動 と塩 水 く さび の変 動
図 一3観 測 孔Aに お け る地 下水 位 変 動 の 実測 値 と計
算値
図 一2は1991年1月
か ら3月 の 図 一1中a-a'縦
断 面 で の 淡 水 と塩 水 く さび の 挙 動 を 示 し て い る 。 本 解 析 に お い て は 、
井 戸 を 実 際 に 配 置 し た 直 接 の 揚 水 を 考 慮 して い な い の で 、 く さ び の 侵 入 は 顕 著 で な い 。 こ の 期 間 中 の 降 雨 、
特 に2月9日
か ら15日 の 降 雨(計128mm)に
よ り く さ び が 海 側 へ25m程
度 押 し戻 さ れ て い る 様 子 が 示 さ れ て い る。
降 雨 が な く 揚 水 量 が 多 く な る と 、 塩 水 く さ び が 内 陸 部 へ 侵 入 して く る と予 想 さ れ る 。 こ の 点 に つ い て は 今 後 、
揚 水 井 の 配 置 を 考 慮 し て 解 析 を 行 い 、 く さ び の 侵 入 状 況 を 考 え な が ら止 水 壁 効 果 を 検 討 した い 。 図 一3に は 、
観 測 孔Aに お け る 淡 水 の 地 下 水 位 の 実 測 値 と 計 算 値 を 比 較 して い る。 計 算 値 は 、 概 ね 実 測 値 を 表 現 で き て い る。
図 一4は ダ ム 軸 を 通 過 す る 日流 量 、 簡 易 水 道 用 と し て 揚 水 さ れ た 水 量 、 お よ び 期 間 中 の 降 雨 量 の 時 系 列 を 日 単
図一4想 定 ダ ム軸 の 日通 過 流 量,簡 易 水 道 揚 水 量, 図一51年
お よび 降 雨量 の 時 系 列
間の 累 積 通過 流 量,累 積 簡 易 水 道 揚 水 量,
お よび 累積 降 雨補 給 量
位 で 示 し て い る 。 今 回 の 計 算 例 で は 、 一 日平 均 ほ ぼ900m3/dayの
淡 水 が 流 出 して お り、 揚 水 期 間 中 の 簡 易 水 道
の 平 均 揚 水 量 を 差 し引 い た と して も 、 地 下 ダ ム を 建 設 す る こ とに よ っ て730m3/day程
で あ る と推 算 され る。 ま た 図 一5に は 、1991年1年
度 の 水 資源 の 開発 が可 能
間 の 開 発 が 期 待 さ れ る 水 量 の 累 積 時 系 列 を 記 号Aで 示 して い
る 。 記 号Bで 簡 易 水 道 に よ る 揚 水 の 累 積 時 系 列 も 示 し て い る が 、 これ を 差 し引 い た 部 分 が 海 へ 流 出 す る 水 量 に
相 当 す る と い え よ う。 こ の 場 合 、1年 間 で 計329,000m3/yearの
で は 年 間 の 簡 易 水 道 揚 水 量50,000m3/yearを
淡 水 が 海 へ 流 出 して い る こ と か ら 、 モ デ ル 計 算
差 し 引 い た お よ そ 、280,000m3/yearの
は 可 能 で あ る と推 算 さ れ る 。 図 中 に は 、 降 雨 量 に 貯 留 域0.8km2の
水 量 の 開 発 がモ デ ル 地 区 で
面積 をか け た 降 雨補 給 量 の 累積 時系 列 を記
号Cで 示 し て お り、 開 発 可 能 な 水 量 は 総 降 雨 補 給 量 の28%と な っ て い る。
なお 、今 後 本 モ デ ル を実 際 に 適 用 す る に あ た っ て は 、 サ トウキ ビの作 付 け 状 況 に応 じた 作物 係 数 の分 布 や 、
灌 概 用 水 の揚 水 を酒養 量 の評 価 に組 み 込 む こ と、 井 戸 地 点 を考 慮 した計 算 を行 うこ とに よ り、塩 水 の挙 動 を
把 握 し な が ら揚 水 井 戸 の 適 切 な 配 置 、 ま た 地 下 ダ ム を 考 慮 す る こ と に よ る 地 下 水 位 の 上 昇 な ど の 数 値 計 算 を
お こ な っ て 、 開 発 可 能 水 量 推 定 の 精 度 を あ げ る こ とが 必 要 で あ る 。
謝辞
本 研 究 を 行 うに あ た り 貴 重 な 資 料 お よ び 助 言 を 頂 い た 関 係 諸 機 関 に 御 礼 申 し上 げ ま す 。
参考文献
1)神 野 健 二 ・茹 瑛 ・中 川 啓:地
下 ダ ム 建 設 に 伴 う地 下 水 の 挙 動 を 管 理 ・利 用 す る た め の 数 値 計 算 モ デ ル の 開
発 、 九 州 大 学 先 端 科 学 技 術 セ ン タ ー 年 報,第1号,pp.88-90,1995
2)上 田 年 比 古 ・藤 野 和 徳 ・平 野 文 昭 ・神 野 健 二:地
下 塩 水 梗 の 侵 入 に 関 す る 数 値 解,水 道 協 会 雑 誌,第561
号,pp.21-28,1981
3) Sugio, S. , K. Nakada and J. W.Urish: Subsurface
HY. 113-6, pp. 767-779, 1987
seawater
intrusion
barrier
analysis,
ASCE,
一
研究報告
一
中性 子 計 測 デ ー タ の 計 算 機 直 接 入 力 に 関 す る研 究
九州大学工学部応用原子核工学科
北村 康則,榮 武二,納 冨 昭弘,的 場
動力炉 ・核燃料開発事業団実験炉部臨界工学試験室*大
谷 暢夫*
Study
on Pulse-Sequence
Yasunori KITAMURA,
Data
Acquisition
for Neutron
Takeji SAKAE, Akihiro NOHTOMI,
Nobuo OHTANI*
優
Pulses
Masaru MATOBA
Department of Applied Nuclear Engineering, Kyushu University
*Power Reactor and Nuclear Fuel Development Corpo
ration
Abstract
A pulse-sequence data acquisition system for neutron pulses has been developed to realize a
real-time subcriticality monitoring system, which contributes to the critical safety in the nuclear
fuel handling plants. In this system, in order to achieve the pulse-sequence data acquisition, the
arrival time of each pulse is recorded to a memory of a personal computer. The reactor noise
analytical measurement using this system was applied to the Deuterium Critical Assembly (DCA)
of Power Reactor and Nuclear Fuel Development Corporation. The 1.2 % uranium clusters were
loaded to DCA, and the effective multiplication factor of this assembly was varied from 0 .998 to
0.70. The results of Feynman-a analysis indicates the applicability of this system to the subcriticality
monitoring system.
1.は
じめ に
近 年 、 原 子 炉 雑 音 解 析 の 技 術 を 核 燃 料 の 製 造 ・貯 蔵 ・輸 送 ・再 処 理 を行 う施 設 に お け る リ ア ル タ イ ム 未 臨 界 度
モ ニ タ ー に 応 用 し よ う とす る試 み が 多 く な さ れ て い る 。 原 子 炉 雑 音 解 析 は 、 体 系 内 の 中性 子 数 の 時 間 的 変 動 に 注
目す る解 析 法 で 、 未 臨 界 度 や 中 性 子 寿 命 等 の 重 要 な 動 特 性 情 報 が 得 ら れ る技 術 で あ る 。 しか し、 従 来 か ら用 い ら
れ て い る 幾 多 の 中性 子 雑 音 測 定 法 は 、 必 ず し も リ ア ル タ イ ム処 理 を行 な う こ と を想 定 して 開 発 さ れ た もの で は な
か っ た 。 そ こ で 、我 々 は 近 年 の 測 定 ・計 算 機 ・ソ フ トウ ェ ア 技 術 の 急 速 な 進 歩 を 踏 ま え た 上 で 、 中 性 子 検 出 器 信 号
を 計 算 機 に 直 接 入 力 し、 中 性 子 信 号 の 時系 列 デ ー タ を収 集 す る シ ス テ ム を 開 発 し た[1,2】 。 同 シ ス テ ム で は 、 計 算
機 の 割 り込 み 処 理 を 利 用 して 各 入 力 信 号 の 発 生 時 刻 を記 録 す る こ と で 、 入 力 信 号 列 の デ ィ ジ タ ル 時 系 列 デ ー タ を
得 る こ とが で き 、 新 しい 概 念 に よ る リ ア ル タ イ ム 未 臨 界 度 モ ニ タ ー シ ス テ ム の 構 築 が 期 待 で き る。 今 回 は 、 動 力
炉 ・核 燃 料 開 発 事 業 団 の 重 水 臨 界 実 験 装 置 を 用 い て 、 広 範 囲 な 実 効 増 倍 率 で の 測 定 を行 い 、 同 シ ス テ ム の 有 用 性
を検 証 した の で 、 こ れ を 報 告 す る 。
2.重
水 臨界 実 験装 置 実験
実 験 は 、 お も に 九 州 大 学 に お い て 開 発 した 原 子 炉 雑 音 の 時 系 列 デ ー タ測 定 シ ス テ ム を 、 動 力 炉 ・核 燃 料 開 発 事
業 団 の 重 水 臨 界 実 験 装 置(DCA)に
搬 入 して 行 な わ れ た 。DCAの
ク ラス タ ー を 装 荷 し、 検 出 器 に は3He比
に よ り、 実 効 増 倍 率 を0.998か
減 速 材 で あ る 重 水 の 領 域 に 、1.2%ウ
ラン燃料
例 計 数 管 を 使 用 して 測 定 を行 な っ た 。 ま た 、 重 水 の 水 位 を 調 節 す る こ と
ら お よ そ0.70程
度 ま で 変 化 さ せ て 、 そ れ ぞ れ の 実 効 増 倍 率 に お い て 約20分
間 測定
を行 な っ た 。
デ ー タ は 、 測 定 終 了 後 直 ち に 原 子 炉 雑 音 解 析 の 手 法 の1つ
実 効 増 倍 率 が0.988の
で あ る フ ァ イ ンマ ンα法 で 処 理 さ れ た[1,2}。 図1に
場 合 の フ ァ イ ン マ ンα法 に よ る 解 析 結 果 の 例 を示 す 。 こ こ で 図 中 のY値
け る 中性 子 の 計 数 値cの
平 均 値<c>と
二 乗 平 均 値<c2>を
用 い て 、{(<c2>一<c>2)/<c>}-1と
は 、 各 ゲ ー ト幅 に お
定 義 され
る量 で あ る 。解析 で は、各 ゲー ト幅 に おけ るY値 を求 め 、Y値 のゲ ー ト幅 に対 す る依 存性 を フ ァイ ンマ ンα法 の理
論 式 を用 い て最小 二乗 法 で フ ィッテ ィ ング を行 な い、各 実 効増 倍率 にお け る即 発 減 衰定 数 α を評価 した 。
図2に 各 実 効 増 倍 率 に お け る即発 減 衰 定 数 α の測 定 結果 を示 す。 この 図 よ り、α は実 効増 倍 率 の 上昇 に対 し
て 、単 調 な減少 傾 向 を示 す こ とが 判 明 し、 本研 究 で用 い た測 定 シス テ ムが 、広 域 な実 効増 倍 率 の測 定 に対 して有
用 で あ る こ とが 示 され た。
図1フ
ァ イ ン マ ン α法 に よ る 解 析 結 果 の 例
図2α
の実 効 増倍 率 依 存 性
(実 効 増 倍 率0.988)
3.最
後 に
本 報 告 で は、 時系 列 デ ー タ測定 シス テ ムの概要 と、同 シス テ ム を用 い て行 な った重 水 臨界 実験 装 置実 験 につ い
て述 べ、広 域 な実 効 増倍 率 の測定 に対 す る有 用性 を議 論 した。今 後 は、 まず オ ンライ ン未 臨界度 モ ニ ター の開発 を
行 なっ てい く予 定 で あ るが、 同 シス テムで は 、前 述 の よ うに未 処理 の 時系 列 デ ー タの取 得が 可 能 であ る ため 、 フ ァ
イ ンマ ンα法 以外 の解 析 法 につ い ての応 用 の可 能性 が残 っ てい る。 また 、現 在 は1系 統 の み検 出器 信 号 の測 定 を行
な って い るが 、複 数 系統 の測 定 は炉 物理 的 な観 点 か ら も非 常 に興 味深 い対 象 で あ る[3】
。 以 上 の こ とか ら も、 同 シ
ス テ ム は幅 広 い 可能 性 を有 して い る と考 えて い る。
参考 文 献
【1]北村
康 則:卒 業論 文,九 州大 学 工学 部応 用 原子 核工 学科,1995年3月2日
【2]北村
康 則,他:第
提出
六 回放 射線 計 測研 究 会論 文集,pp.167-174
[3] Yasunori KITAMURA, et al. : Proceedings of the 10th Workshopon Radiation Detectors and Their Uses,
(Now Printing)
一 研究報告 一
偏 載 荷 重 を受 け るRC張
出 式T形
橋 脚 の節 点 部斜 引 張破 壊 耐力
株 式会社構 造 技術 セ ンター
佐 竹 正行
九 州大 学 工学 部建設 都 市工学 科
彦坂
Diagonal
Reinforced
Tension
Concrete
Capacity
Bridge
of Joint
Piers
under
煕 ・劉
玉撃
in T—Shaped
Eccentric
Loadings
Masayuki Satake
Hiroshi Hikosaka* and Yuqing Liu*
Structure Engineering Center, Japan, Inc.
*Department of Civil Engineering
, Kyushu University
The purpose of this research is to experimentallyand theoretically clarify the diagonal
tension capacity of joint in T-shapedreinforced concrete bridge piers subjected to eccentric
loadings.A series of modeltests has been performedto investigate the eccentric load resisting
behavior of the piers. Theultimate equilibriummethodis applied to predict the failure mode
and diagonal tension capacity of the joint.The analytical results obtained from the proposed
formulacomparewell with test results.
市街 地 の 平 面 道 路 と高 架 式 道 路 か らな る複 断 面 道 路 構 造 で は,平 面 道 路 の 中央 分 離 帯 に 高 架 橋 の 橋 脚
を設 置 す る た め 柱 幅 が 制 限 され,長
大 な 張 出 しは りを 有 す る鉄 筋 コ ン ク リー ト(RC)張
出式 橋 脚(以 下,
T形 橋 脚 と よぶ)が 多 く用 い られ て い る。 こ の と き,完 成4車 線 の 高 架 橋 上 部 構 造 の うち片 側2車 線 の み
を暫 定 施 工 して 供 用 す る こ とが あ る が,こ れ は 橋 脚 片 側 の 張 出 し は りへ の 偏載 荷 重 とな り,T形
橋脚 の
柱 ・は り接 合 部(以 下,節 点 部 と よぶ)に は 常 時 大 き な モ ー メ ン トが 作 用 す る。 この モ ー メ ン トに よ り,
節 点 部 の コ ン ク リー トに は 斜 引 張 応 力 が 生 じる こ とが 予 想 され る。 節 点 部 の破 壊 は構 造 系全 体 の破 壊 に
つ な が るの で,は
りま た は柱 の 曲 げ 破 壊 に先 行 して 節 点 部 が 破 壊 しな い よ うに設 計 す る こ とが 極 め て 重
要 で あ る。 本 研 究 で は,ま ず 模 型 実 験 に よ り偏 載 荷 重 を 受 け るRC張
出 式T形 橋 脚 の破 壊 挙 動 を 観 察 ・
測 定 した 。 次 い で塑 性 理 論 の 上 界 定 理 に 基 づ く終 局 つ り合 い 法 を用 い てT形 橋 脚 節 点 部 の斜 引 張破 壊 耐
力 の 算 定 式 を 提 示 し,最 後 に既 設 のT形 実 橋 脚 の 破 壊 形 式 と破 壊 耐 力 に っ い て 考 察 した 。
模 型 実 験 で は 実 橋 脚 寸 法 を約1/10に 縮 尺 したRC張
を 模 擬 す る た め,0.2Pお
よび0.8Pの2点
の 配 筋 法 の 違 い に よ り タイ プA,B,Cに
出 式T形 橋 脚 供 試 体 を製 作 し,上 部 工 の 鉛 直 反 力
鉛 直 載 荷 を行 っ た。 供 試 体 は 図 一1の
分 け られ る。 タイ プAは,は
よ うに節 点 部 補 強 鉄 筋
り部 の 主 鉄 筋 と圧 縮 鉄 筋 が 節 点 部
を 貫 通 し,柱 部 の 主 鉄 筋 と圧 縮 鉄 筋 を節 点 部 に ま で 延 ば した もの で あ る 。 タイ プBお
そ れ ぞ れ タ イ プAの 配 筋 に加 え,ス
よび タイ プCで は
ター ラ ップ と帯 鉄 筋 お よび 斜 補 強 鉄 筋 を節 点 部 に 配 置 した 。
図 一1供
実 験 結 果 よ り,偏 載 荷 重 を受 け るRC張
試 体 の構 造 図
出 式T形 橋 脚 の 節 点 部 で は,対 角 線 の 方 向 に 主 ひ び わ れ が 生
じて,節 点 部 内 の は り主 鉄 筋 と補 強 鉄 筋 が 降 伏 し,最 後 に 節 点 部 の 隅 角 部 圧 縮 域 の コ ン ク リー トに 圧 縮
破 壊 が発 生 す る破 壊 メ カ ニ ズ ム が 推 定 で き る。
こ の よ うな破 壊 メ カ ニ ズ ム に 基 づ い て,仮 定 した破 壊 面 にお け る 中 立 軸 に 対 す る外 力 モ ー メ ン トと内
部 抵 抗 モ ー メ ン トの つ り合 い 式 を導 き,斜 引 張破 壊 耐 力 が 最 小 に な る よ うに破 壊 面 の 角 度 を 定 め る こ と
に よ り,終 局 状 態 で の節 点 部 斜 引 張破 壊 耐 力 を 求 め る。 図 一2に 示 す よ うに 角 度 を α とす る斜 めひ び わ
れ 面 を破 壊 面 と仮 定 し,こ の 破 壊 面(I-I断
る 三 角 形 ブ ロ ック を解 析 モ デ ル(図 一3)と
面),は
り断 面(Ⅱ-Ⅱ 断 面)お よび は り部 の 上 部 表 面 か ら な
す る。
節 点 部 パ ネ ル に 作 用 す る 曲 げ モ ー メ ン トM。 と荷 重P。 の 関 係 は 次 式 で 表 され る 。
Mu==Pu(θ
一hc//2,
こ こ に,e:P。
の 偏 心 距 離,h。:柱
幅 。 外 力 に よ る破 壊 面 中
立 軸 に 対 す る モ ー メ ン トM。 、tは 次 式 で 与 え られ る 。
Mext=Mu≠P.k2XCOSα
式 中 のx,k・
一方
筋,帯
,外
は 破 壊 面 中 立 軸 の 位 置 お よ びxの
等 価 係 数 で あ る。
力 に 抵 抗 す る 内 部 抵 抗 モv・
一
・
一メ ン トMintを,は
鉄 筋,ス
タ ー ラ ッ プ お よ び 圧 縮 域 の コ ン ク リ ー トに よ る
抵 抗 モ ー メ ン トM。1,M。w,M。
M」
り主 鉄
、お よ びM。 。の 和 で 表 す 。
。ε=M。1≠M。r≠M。5≠M趾
。
上 式 の 右 辺 の 各 項 は 以 下 の よ う に求 め られ る。
Mul=A、fly(dFドk2xsノ
図 一2解
η α)
析 対 象 の構 造 形 式
Muw=Awfwy(d,-k2xsinα)2/(25v)
Mus=Asfsy(d。
一 」k2xcosα)2/(25。)
Muc=」k1fcb(」k2x)2/2
こ こ に,Sw,Ss、:帯
鉄 筋,ス タ ー ラ ッ プ の 配 置 間 隔,b:節
部 の 厚 さ,k1,fc:圧
点
縮 域 の コ ン ク リ ー トの 平 均 応 力 係 数,
圧 縮 強 度 。 破 壊 面 の 中 立 軸 に 関 す る モ ー メ ン トお よ び 水 平 方 向
の カ の っ り 合 い 条 件 は,
図 一3解
析 モデ ル
Mex8-M」
醒=O
A,f,.+A。fw。(d、
一 左 、xsinα)/s。
一 幻f。bk・xs加
α=0
と な る。
以 上 よ り,節 点 部 の 斜 引 張破 壊 耐 力P。 が 次 の よ うに 導 かれ る 。
P。=[Alflr(db-d「bp)+A。f。,(dドd、
十 ノLf。y(d。-dbpco孟
。)2/(25の
α)2/(25。)十1【1f。lbdbp2/(25加2α)]/(θ
式 中 α はdPu/dα=0よ
り 定 め る 。db,は
一11。/2十dbpcotα)
次 式 の よ うに求 め られ る 。
表 一1解
析 結 果 と実 験 結 果 の 比 較
終 局 耐 力,破 壊 形 式 に 関す る解 析 お よび 実 験 結
果 を 表 一1に 示 す 。 終 局 耐 力 の 解 析 値 と実 験 値 の
平均 相 対 誤 差 は5%で
あ る が,最 終 破 壊 荷 重 の推
定 に 関す る 限 り,こ こに 提 示 した マ ク ロ な モ デ ル
に 基 づ く評 価 法 と して は 良 い 精 度 と思 わ れ る。 破
壊 形 式 につ い て も,解 析 と実 験 の 結 果 は 良 く一 致
して い る。 供 試 体B-2の
解 析 で は 柱,は
りお よ
び 節 点 部 そ れ ぞ れ の破 壊 荷 重 の 差 が 極 め て 小 さ く,
三 者 が ほ ぼ 同 時 に破 壊 す る と推 定 され る が,供 試
体B-1で
表 一2実
橋 脚 の 終 局 耐 力(tf)
は 柱 とは りが ほ ぼ 同 時 に破 壊 す る。 以
上 の 解 析 お よび 実 験 結 果 の 比 較 ・考 察 に よ り,提
案 した 終 局 耐 力 計 算 式 は 限 界 状 態 設 計 法 に お け る
節 点 部 斜 引 張 破 壊 耐 力 の 評 価 式 と な り う る こ とが
確認 で きた。
既 設 のRC張
出 式T形
橋 脚 は,節 点 部 補 強 鉄 筋 の 配 筋 法 の 違 い に よ り模 型 実 験 供 試 体 の タイ プBと
タ
イ プCと に 分 け られ る。 許 容 応 力 度 法 に 基 づ い て 設 計 した 実 橋 脚 の 耐 力 を提 案 式 に よ り計 算 した結 果 を
表 一2に 示 す 。 は り と柱 の 終 局 耐 力 は道 路 橋 示 方 書 に 基 づ き 計 算 した もの で あ る 。 タ イ プBお
プCの 既 設T形 橋 脚 は と もに 設 計 荷 重(875tf)の 約3倍
の 耐 力 を保 有 して お り,節
よび タ イ
点 部 の破 壊 が 柱 お よ
び は り部 の破 壊 に 先 行 す る恐 れ は な い こ とが 分 か る 。
謝 辞:
本 研 究 は,西 九 州 自動 車 道 ・今 宿 道 路 飯 氏 高 架 橋 の 設 計 の 一 環 と して 建 設 省 九 州 地 方 建 設 局 福 岡 国道
工 事 事 務 所 か ら受 託 した も の で あ る こ と を特 に 付 記 して,謝 意 を表 す る 。
一
研究報告
一
蛍 光 体 発 光 に対 す る プ ラズ マ 特 性 の解 明
大電(株)研
究開発 部
藤 井英貴 ・村 地紳 一郎 ・張
九州大学総合 理工学研 究科*梶
Elucidation
書秀 ・木村勝 昭
原寿了*・ 田原宣仁*・ 片 岡直紀*・ 村 岡克紀*
of the Role of Plasma
Parameters
on Luminosity
of the Phosphor
Hideki Fujii, Shinichiro Murachi, Shuxiu Zhang, Katsuaki Kimura
Toshinori Kajiwara*, Yosihito Tahara*, Naoki Kataoka*, Katsunori Muraoka*
Research and Development Division, Daiden Co ., Ltd.
*Graduate School of Engineering Sciences
, Kyushu University
This study aims at contributing to increase the luminosity in Plasma Display Panel (PDP) through
elucidating the roles of plasma parameters on it. Electron temperature and densities of an electric
discharge plasma between a pair of cylindrical electrodes were measured by a laser Thomson scattering method. The diameter of the electrodes was 4 mm and the separation was 5 mm . The discharging
gas was helium and xenon mixture whose total pressure was 20 Torr and xenon concentration was 1%
or 4%. The results were as follows. Electron density was about 1019m-3and temperature was about 2
eV. They varied with a time constant about 1 ms after the initiation of the discharge . They were not
sensitive against the mixing ratio. Thus the applicability of the method was shown .
本 研 究 は,屋
お い て,プ
外 使 用 を前 提 と し た 高 輝 度 ・フ ル カ ラ ー 大 ド ッ トプ ラ ズ マ デ ィ ス プ レ イ パ ネ ル(PDP)に
ラ ズ マ パ ラ メ ー タ ー と蛍 光 体 輝 度 と の 関 係 を 明 ら か に し,そ の 輝 度 向 上 に 寄 与 す る こ と を 目 的 と
してい る。
PDPは
主 に ハ イ ビ ジ ョ ン 用 と し て 開 発 さ れ て お り,セ ル ピ ッ チ は0.3mm程
ル 寸 法 を3mm四
方 と し,放 電 制 御 の 自 由 度 を 高 め て 輝 度 を 向 上 す る こ と を 目 指 して い る 。セ ル は3相
駆 動 型 で あ り,キ セ ノ ン ガ ス を1%混
交流
合 し た ヘ リ ウ ム ガ ス を 動 作 ガ ス と して 用 い る 。蛍 光 体 を 前 面 パ ネ ル 内
側 に 塗 布 し,放 電 に よ り生 じ る波 長147nmの
性,蛍
度 で あ る 。本 研 究 で は ,セ
真 空 紫 外 光 で 励 起 す る 。 現 在 ま で に 電 極 を 試 作 し,放 電 特
光 体 輝 度 特 性 を 測 定 して い る が,プ
ラ ズ マ パ ラ メ ー タ ー に つ い て は 未 知 で あ っ た 。 そ の た め,PDP
プ ラ ズ マ の 電 子 密 度 ・電 子 温 度 を レー ザ ー トム ソ ン 散 乱 法 に よ り測 定 し,プ ラ ズ マ パ ラ メ ー タ ー と 蛍 光 体 輝
度 と の 関 係 を 明 ら か に す る べ く,そ の 第 一 段 階 と して,タ ン グ ス テ ン棒 対 棒 電 極(直 径4mm,電
を用 い,蛍 光 体 励 起 に 用 い ら れ る キ セ ノ ン1%お
さ せ,そ
極 間 隔5mm)
混 合 した ヘ リ ウ ム ガ ス の イ ン パ ル ス 放 電 を発 生
の 電 子 密 度 ・電 子 温 度 を 測 定 した 。
実 験 装 置 の 構 成 を 図1に
光 は,容
よ び4%を
示 す 。直 径300mm程
度 の 真 空 容 器 中 央 に 上 下 方 向 に 電 極 を設 置 し た 。レー ザ ー
器 側 面 に 設 け た ブ リ ュ ス タ ー 窓 を 通 して 入 射 した 。 用 い た レ ー ザ ー は,YAGレ
調 波 で あ り,波 長532nm,エ
ネ ル ギ ー0.5J,パ
ル ス 時 間20nsで
ー ザ ー光 の 第 二 高
あ る 。 トム ソ ン 散 乱 光 は ,レ
ー
ザ ー 進 行 方 向 お よ び レー ザ ー 光 の 偏 光 方 向 に対 して 直 角 方 向 か ら レ ンズ で 集 光 し,ダ ブ ル モ ノ ク ロ メ ー タ ー
で 分 光 して 観 測 した 。光 学 系 の 較 正 は,ア
ル ゴ ン ガ ス か ら の レー リ ー 散 乱 光 を用 い て 行 っ た 。本 実 験 で 対 象
と す る プ ラ ズ マ は 電 離 度 が 低 く,ト ム ソ ン散 乱 光 と 同 時 に放 電 ガ ス に よ る 強 い レ ー リ ー 散 乱 光 が 分 光 器 内 に
入 射 す る の で,後
る 。 ま た,ト
者 に よ り分 光 器 内 で 生 じ る 迷 光 を 抑 え る た め,ダ
ム ソ ン散 乱 光 は,分
ブル モ ノ ク ロ メー ター の使 用 が必 要 で あ
光 器 の 透 過 波 長 を 掃 引 し な が ら各 波 長 で256回
の信 号積 算 をデ ジ タル オ
シ ロス コー プ上 で 行 っ て測 定 した。
図2に,放
電 の 電 流 波 形 を,図3に,放
子 密 度 の 測 定 結 果 を示 す 。 実 際 のPDPプ
電 で は,放
電 開 始 時 刻 が1μs程
電 開 始 か ら の 時 間 に 対 す る 電 子 温 度 の 測 定 結 果 を,図4に,同
ラ ズ マ で は,放
度 ば らつ き,放
電 子 密 度 ・電 子 温 度 と も に 放 電 開 始 後1μs程
電 時 間 は1μs程
電 開 始 後2μs以
度 で あ る が,本
電
研 究で用いた放
降 で しか 測 定 が 行 え な か っ た 。
度 の 時 間 ス ケ ー ル で 変 化 して い る 。 そ の た め,AC型PD
Pで は,放 電 は 過 渡 状 態 に あ り,電 子 密 度 ・電 子 温 度 と も に 大 き く変 化 して い る こ と が 考 え ら れ る 。従 っ て,
計 測 の 時 間 分 解 能 は0.1μs程
DPプ
度 と す る 必 要 が あ る 。 ま た,他
ラ ズ マ の 電 子 密 度 は1017m'3程
よ う な 条 件 下 で レー ザ ー1パ
計 数 法 を適 用 す れ ば,計
質 を 向 上 し,レ
度 と 評 価 さ れ て い る 。こ れ は本 研 究 の 計 測 結 果 よ り2桁 低 い 。そ の
ル ス 当 た りに 観 測 さ れ る 光 子 数 を評 価 す る と1個
測 可 能 で あ る 。 ま た,PDP放
電 は,電
程 度 と な る 。す な わ ち,光 子
極 基 板 表 面 で 起 こ る の で,レ
ーザービーム
ー ザ ー 光 を小 さ く集 光 す る事 も 必 要 で あ る 。
以 上 述 べ た よ う に,PDPプ
で あ り,そ
の 研 究 者 に よ る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で は,P
ラ ズ マ の 電 子 温 度 ・電 子 密 度 計 測 へ の レ ー ザ ー トム ソ ン散 乱 法 の 適 用 は 可 能
の 際 の 留 意 事 項 が 明 らか と な っ た 。
図1実
験装置の構成
図3電
子温度測定結果
図2放
図4電
電電流波形
子密度測定結果
一
研究報 告
一
照 明 用 放 電 プ ラズ マ の レー ザ ー 分 光 法 に よ る研 究
松 下電工(株)中
央研 究所
住友
卓 ・和 田成伍
九州大学総合 理工学研 究科 斗
村 岡克 紀*
大分大学工学部**
田邉 秀 朗**・ 濱 本
Laser Spectroscopic
Studies
誠**
for HID Lamp Plasma
Taku Sumitomo, Shigeaki Wada,
Katsunori Muraoka*,
Hideaki Tanabe and Makoto Hamamoto**
Central Research Laboratory, Matsushita Electric Works, Ltd.
*Graduate School of Engineering Sciences , Kyushu University
**Faculty of Engineering , Oita University
The data of temperature and density distributions of each species in high intensity discharge
are of fundamental
(HID)
lamp plasma
importance in the development of HID lamps.
In the present study, LW measurements were applied for scandium ion (Sc+) in a metal halide lamp with additives
[Nal, ScI3, Hg : 50mg] , which was operated vertically with powers of 60 Hz AC 250W.
Followings are observed and
supposed from the obtained results ; (1) scandium ion exists in a cone-shape region with its tip down,
(2) radial profiles
of scandium ion density in the vicinity of the top electrode have minima at the center for most of phase angles,
(3) radial
profiles and their amplitude of scandium ion density show no symmetry regarding the polarities of both electrodes,
(4)
density distributions of scandium ion in the metal halide lamp, therefore, are strongly coupled with a series of processes
from evaporation to condensation of ScI3 molecule and the gravity
(convection and accompanying temperature gradient
of the lamp wall) .
高 輝 度 放 電 ラ ン プ は 、高 効 率 で 明 る く、 し か も 長 寿 命 の 照 明 用 光 源 と し て 種 々 の 用 途 に 用 い ら れ て い る 。 こ
の 高 輝 度 放 電 ラ ン プ(特 に メ タ ル ハ ラ イ ドラ ン プ)内 の ア ー ク 放 電 中 に お け る各 種 粒 子 密 度 及 び 温 度 の 分 布 を
計 測 す る こ と を 目 的 と し た研 究 の 一 環 と し て 、Scイ オ ン に対 す るLIF計 測 を 行 っ た の で 、そ の 結 果 に つ い て 報
告 す る。
計 測 対 象 ラ ン プ は 、一 般 型 高 効 率 安 定 器 を 用 い た60Hz AC点
金 属 ハ ロ ゲ ン 化 物[Nal, Scl3]:電 極 間 隔30mm:発
任 意 の 位 相 と の 同 期 が 可 能 なYAGレ
に 対 し て 、 放 電 軸(z軸)に
垂 直 な5つ
灯 の メ タ ル ハ ラ イ ドラ ン プ(下 向 点 灯 形250W:
光 管 内径17mm)で
あ る。
ー ザ ー 励 起 色 素 レ ー ザ ー を励 起 光 と し て 、
Scイ オ ン の 基 底 準 位(a3D2)
の 断 面 に つ い て 、 検 出 受 光 系 方 向(x軸)と
レ ー ザ ー 進 行 方 向(y軸)の
2つ の 軸 に 沿 っ て ラ ン プ を 移 動 さ せ て 、LIF計 測 を行 っ た 。 測 定 結 果 の 例 と し て 、 下 部 電 極 寄 りのz=-10mmと
上 部 電 極 寄 りのz=+10mmの2つ
(r=8.5mm)を1と
の 断 面 に お け る 、x方 向 及 びy方
向 のLIF信
号 強 度 を 、 図1及
び 図2に
管壁
して 示 す 。
こ れ ら の 測 定 結 果 か ら以 下 の 点 が 明 ら か に な っ た 。(1)Scイ
(2)ま た ・上 部 電 極 近 傍 で のScイ
オ ン の 分 布 領 域 は 、倒 置 円 錐 形 状 で あ る こ と 。
オ ン の 径 方 向 分 布 は 、一 部 の 位 相 を 除 い て 中 央 の 窪 ん だ 分 布 と な る こ と 。(3)
Scイ オ ン の 分 布 及 び 密 度 の 位 相 変 化 は 、電 極 の 極 性 に 対 し て 対 称 性 が な い こ と。(4)以 上 の 結 果 か ら 、 ラ ン プ
内 のScイ
オ ン の 分 布 に は 、ScI、の 蒸 発 凝 縮 過 程 と重 力(対 流 及 び そ れ に伴 う 管 壁 温 度 勾 配)が 強 く関 係 して い
る と考 え ら れ る こ と。
今 後 、(1)上 部 電 極 近 傍 でScイ
合 、 等)、(2)メ
オ ン とNa原
オ ン の 径 方 向 分 布 が 、 中 央 の 窪 ん だ 分 布 と な る 機 構二(両極 性 拡 散 、体 積 再 結
タ ル ハ ラ イ ドラ ン プ 内 の 熱 平 衡 粒 子 組 成(特
子 及 び イ オ ン)(3)メ
に イ オ ン 供 給 源 と し て の 金 属 粒 子Sc原
子及 びイ
タ ル ハ ラ イ ド放 電 の モ デ ル 化 、 に つ い て検 討 を 行 う 予 定 で あ る 。 ま た 、 高
周 波 に よ る 無 電 極 メ タ ル ハ ラ イ ドラ ン プ に 対 し て も、 レ ー ザ ー 分 光 計 測 を行 う 予 定 で あ る 。
図1下
部 電 極 寄 りのz=-10mmの
断面 にお け る、
図2上
部 電 極 寄 りのz=+10mmの
断面 に お け る 、
x方 向(検 出 受 光 系 方 向)及 びy方 向(レ ー ザ ー
x方 向(検 出 受 光 系 方 向)及 びy方 向(レ ー ザ ー
進 行 方 向)のLIF信
進 行 方 向)のLIF信
下 部 電 極:陰
号強度。
極(0∼180度)。
上 部 電 極:陽
号 強度 。
極(0∼180度)。
一
研究報告 一
混合 気体 中 の各 気 体 分 圧 の レーザ ー 計 測 に 関す る研 究
九 大 総 理 工 、 北 九 州 高 専*
日本 真空 技 術(株)**
宋 一兵 、 内 野 喜 一 郎 、 村 岡 克紀
迫 田 忠 則*、 柳 下 浩 二**、 中 村 静 雄**
Measurements
of Molecular
Densities
in Discharge
by Using Raman
Scattering
of Laser Light
Plasmas
Y.B.Song, K.Uchino, K.Muraoka, T.Sakoda, *K.Yanagishita, ** S.Nakamura**
Kyushu Univ., Kitakyushu College of Technology, * ULVAC Japan, Ltd.**
The possibilityof usingRamanscatteringas a methodof moleculardensitymeasurementsin low pressuredischarge
plasmashas beeninvestigated. Firstly,the detectionlimitof Ramansignal was examinedin low pressureair. It was
shownthat the Ramanscatteringfromnitrogenmoleculeswas detectabledown to 0.06 Pa (particledensityof 1.4x10`9
m-3)whena photoncountingdetectionsystem was used. The methodwas thenapplied to detect methaneand its
reaction productsin an electroncyclotronresonanceplasmaoperatedat a pressureof 50 Pa. Densitiesof CH4,C 2H2,
C2H6and H2were absolutelydeterminedusingthe calibrateddata of the opticalsystem. Also, it was clearly
demonstratedthat the gas compositionin the dischargewas dependenton gas flow rate. These experimentalresults
showed the usefulnessof the methodfor quantitativemeasurementsof moleculardensitiesin processingplasmas.
プ ロセ ス プ ラズ マ 中 に は、 解 離 や 合 成 な どの 反 応 生 成 物 を含 めて 多数 の ガ ス 種 が 同 時 に存 在 して い る。
反 応 過 程 を理 解 す るた め に、 ラジ カ ル や イ オ ンの 密 度 を測 定 す るだ け で は な く、 安 定 分 子種 につ い て も定
量 的 な 密 度 測 定 が 重 要 で あ る。 これ ま で に、 筆 者 ら は 中真 空 領 域 混 合 気体 の 分 圧 測 定 に ラマ ン散 乱 法 が 有
効 で あ る こ とを示 して きた 。n本 研 究 で は 、 ラマ ン散 乱 に よ る低 気 圧 放 電 プ ラズ マ 内 の分 子 密 度 の測 定 可
能 性 につ い て 検 討 した 。
放 電 プ ラズ マ 内 の分 子密 度
の 測 定 につ い て は、 これ まで
にCARS法
な ど の レ ーザ ー計
測 法 を用 い た 研 究 が 数 多 く報
告 され て い る。 ラマ ン散 乱 に
つ い て は 、 信 号 が 微 弱 のた め 、
放 電 プ ラズ マ 内 の分 子 密 度 測
定 は 困 難 と思 わ れ 、 ほ とん ど
な され て い な い。 しか し、 ラ
マ ン散 乱 信 号が 検 出で き るな
らば 、い ろ い ろ な分 子種 に対
して 、 励 起 光 源が1つ で済 む
こ と、 全 て の ラマ ン 活性 分 子
を 同時 に 観 測 す る こ とが 可能
図1実
験 配置図
で あ る こ と、 散 乱 信 号 と分 子
密度 が 比 例 し、 局 所 的 な 分 子 密 度 の絶 対 値 が 得 られ る こ とな ど の利 点 が あ る。 信 号 強 度 に関 して も 、
CARS信
号 強 度 が 分 子 密 度 の2乗 に 比 例 す る こ とか らす る と、 低 気 圧 に な る と ラマ ン散 乱 法 がCARS法
有 利 と考 え られ る。 実 際 、1Pa程 度 の ガ ス領 域 で は、 ラマ ン 散乱 法 とCARS法
より
とは 同 程 度 のSN比 に な る と見
積 も られ る 。
プ ラ ズ マ 中 で の 分 子 密 度 測 定 に ラ マ ン 散 乱 法 を 適 用 す る 際 の 問 題 点 と して は 、(1)プ
影 響 、(2>多
ラズ マ 放射 光 の
数 の 分 子 種 の ラ マ ン ラ イ ン の 重 な りな ど の 問 題 が 上 げ られ る 。 こ れ ら の 問 題 が 、 分 子 密 度 測
定 に ど の くらい の影 響 を与 え るか につ い て は 、 調べ る必 要 が あ る。
図1に
実 験 装 置 の 配 置 を 示 す 。 光 源 と し てYAGレ
幅10ns、 繰 り返 し 周 波 数10Hz)を
ー ザ ー の 第 二 高 調 波(出
用 い 、 光 電 子 増 倍 管(PMT)を
力0.5J、 波 長532nm、
パル ス
検 出 器 と した 。 ま ず 、 低 気 圧 空 気 中 の 窒 素
ガ ス を対 象 と して 、 ラマ ン 散 乱 信 号 と隔 膜 真 空 計 に よ る圧 力値 との 関 係 を 調 べ た。 信 号検 出 法 と して は 、
散 乱 信 号 波 形 の ピ ー ク 値 を 観 測 す る 方 法(ア
960Paの
窒 素 分 圧 の 範 囲 で10%以
ナ ロ グ 法)を
用 い た 。 そ の 結 果 、 ラ マ ン 散 乱 信 号 は2Pa∼
内 の 誤 差 で 圧 力 と 比 例 関 係 に あ る こ と を 確 認 した 。 更 に 検 出 下 限 を 下 げ る
た め に 、 光 子 計 数 法 に よ る 実 験 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 窒 素 分 子 は0.06Paま
果 か ら、 ラ マ ン 散 乱 法 に よ り定 量 的 な 分 圧(密
度)測
で 測 定 可 能 で あ った 。 以 上 の結
定 が で き る こ と を示 した。
次 に 、 メ タ ン プ ラ ズ マ を 対 象 と して 、 プ ロセ ス プ ラ ズ マ へ の ラ マ ン 散 乱 法 の 適 用 可 能 性 を 検 討 した 。 分
圧 測 定 に用 い る ラマ ン ライ ン を 選 び 出 す た め に、 メ タ ン プ ラズ マ 内 に 生 成 され る 可能 性 の あ る炭 化 水 素 ガ
ス に つ い て 、6種 類 の 炭 化 水 素 ガ ス の ラ マ ン ス ペ ク トル の 測 定 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 ア セ チ レ ン の1974
cm-1、 エ チ レ ン の1342cm'1、
エ タ ン の995cm"、
お よ び メ タ ン の2917cm'iラ
イ ン を 分 圧 測 定 に 用 い る こ とが
で き る 可 能 性 の あ る こ とが わ か っ た 。2)
プ ラ ズ マ 放 射 光 の 影 響 を 評 価 す る た め 、 ガ ス 圧1.3Paの
メ タ ン プ ラ ズ マ(10mTorr)を
光 ス ペ ク トル を 調 べ た 。 そ の 結 果 、 水 素 原 子Hα 線(Z=656.3nm)を
ラ マ ン 散 乱 ラ イ ン の あ る540nm∼640nmの
対 象 と し(、
放射
除 け ば 、 目立 った 放 射 ライ ンが な く、
範 囲 の 放 射 光 は ラ マ ン 散 乱 測 定 に 支 障 の な い レベ ル に あ る こ とが
わ か っ た 。 ま た 、 ガ ス 圧 力 が 高 く な る に つ れ 、 プ ラ ズ マ 放 射 光 の 強 度 が 低 下 す る 傾 向 が 見 られ た 。
メ タ ン(CH4)を
動 作 ガ ス と す るECRプ
ン プ ラ ズ マ の 初期 ガ ス 圧53Pa(400mTorr、
100Wの
ラズ マ 中 の 分 子 の解 離 状 況や 反 応 生 成 物 の検 出 を 試み た。 メ タ
分 子密 度1.2×IOzm'3)、
ガ ス 流 量25socm
、 マ イ ク ロ波 入 射 パ ワ ー
条 件 下 で 、反 応 生成 物 の検 出 を 行 った。 プ ラ ズ マ を発 生 させ た とき と発 生 させ な い とき の 、 メタ ン
ガ ス か ら の ラ マ ン 散 乱 信 号 の 例 を 図2(a)に 示 す 。 同 図 に よ る と 、 プ ラ ズ マ を 発 生 さ せ た と き に 、 メ タ ン ガ
ス は 約2/3程 度 解 離 した こ とが わ か る 。 同 じ 実 験 条 件 に お い て 、 プ ラ ズ マ 中 の 反 応 生 成 物 の 検 出 を 試 み た 。
図2(a)メ
タ ンガ ス の ラマ ン散 乱 信 号例
図2(b)反
応 生成 物 か らの ラマ ン散 乱 信号
そ の 結 果 、 水 素 、 ア セ チ レ ン 、 エ タ ン な ど の 反 応 生 成 物 が 明 確 に 検 出 さ れ た(図2(b))。
分 子 温 度 を室 温
と 仮 定 し、 そ れ ら反 応 生 成 物 の 分 圧 を ラ マ ン 散 乱 信 号 強 度 か ら 求 め る と 、 そ れ ぞ れ 約19Pa、2.7Pa、6.7Pa
と な る 。 ま た 、 メ タ ン ガ ス の 分 圧 は 約15Paで
の 測 定 値 は56Paで
あ っ た 。 プ ラズ マ を 発 生 させ た とき の 隔膜 真 空 計 に よ る圧 力
あ っ た 。 検 出 した4種 類 の 反 応 生 成 物 の 圧 力 の 和 は43Paで
あ り 、 これ は 全 圧 の 約80%を
占
め て い る。 つ ま り、 こ れ ら の 反 応 生 成 物 は プ ラ ズ マ 中 の 主 要 成 分 で あ る こ とが わ か る 。
プ ラズ マ 中 の ガ ス 組 成 と 流 量 と の関 係
を調 べ た 。 メタ ン プ ラズ マ の 初 期 ガ ス 圧
を53Paに
100Wと
保 ち 、 マ イ ク ロ 波 パ ワー を
し、 ガ ス流 量 を10∼75sccmの 範 囲
で 変 化 させ て 実 験 を 行 っ た。 そ の 結 果 、
流 量 が 増 え る につ れ 、CH4の 解 離 割 合 が
減 り 、H2の
密 度 も減 少 した 。 他 方 、
C2H2、C2H6の
密 度 は流 量 に ほ とん ど依 存
しな い こ とが わ か っ た(図3)。
以 上 の結
果 か ら、 ガ ス流 量 は プ ラ ズ マ の 解 離 や 合
成 な ど の 反 応 過 程 に大 き な影 響 を 与 え る
こ とが わ か った 。
以 上 の よ うに 、 メ タ ンプ ラズ マ を対 象
と した 計 測 を 通 じて 、 ラ マ ン散 乱 法 が プ
ラズ マ 中 の 分 子 密 度 測 定 に有 効 で あ る こ
とを 示 し た。 本 研 究 は、 あ る特 定 のプ ラ
ズ マ で 限 られ た 放 電 条 件 下 に お い て 行 っ
た もの で あ る が 、 今 後 様 々 な プ ロセ ス プ
ラズ マ へ 適 用 す る こ とが 期 待 され る。 ま
図3ガ
ス組 成 の流 量 依存 性
た 、 測 定 対 象 も 安 定 分 子 種 のみ な らず 、
ラマ ン活 性 な ラ ジ カ ル 種 へ と広 げ る こ と
も可 能 と考 え られ る。
参 考 文献
1)宋
、 平 川 、 内 野 、 村 岡 、 迫 田 、 柳 下 、 中 村:九
州 大 学 総 合 理 工 学 研 究 科 報 告,17(1995)第2号p237-244.
2) Y.B.Song, Y.Hirakawa, K.Uchino, K.Muraoka, T.Sakoda, K.Yanagishita, S.Nakamura: proceedings of the
7th international symposium on Laser-Aided Plasma Diagnostics, 1995, p351-356.
一 研究報告
一
土壌 水 分 含 量 測 定法 の研 究
アタ ゴ(株)商
品開発課
井 上正 清
九州 大学農学部
Development
Masakiyo
of On-Site
和 田信 一 郎 ・角 藤 や す 子
Method
Inoue, Shin-Ichiro
for Soil Water
Wada* and Yasuko
Content
Kakuto*
Development
Division, Atago Co., Ltd.
*Faculty of Agriculture
, Kyushu University
We improved and evaluated the glycerol-extraction refractometry (GER) for on-site determination of
gravimetric water content of soil samples. In GER, a soil sample and glycerol are weighed and mixed
thoroughly, a part of the mixture is spread on a coated membrane filter placed on the prism of a
refractometer and the refractive index of soil water-glycerol mixture is determined.
The gravimetric
water content is calculated from the weight of soil sample and the amount of water extracted in the
added glycerol which is estimated from the change in the refractive index.
In the improved procedure,
the measured refractive index is automatically corrected for temperature to use a single universal
calibration curve.
The improved procedure gave better results for four soils differed in clay mineralogy.
The results from on-site determination at 5 to 25 °C slightly less correlated with those from standard
drying, indicating the further need for improving the refractometer, mixing and weighing methods.
土 壌 の 水 分 含 量(含
水 比)測
定 の 公 定 法 は 、 試 料 を105∼110℃
の 方 法 は 、 乾 燥 に 数 時 間 以 上 を 要 し、 乾 燥 器 の 使 用 に は 数 百W/h程
現 場 分 析(On-site Analysis)の
で 乾 燥 し、減 量 を 測 定 す る 方 法 で あ る 。 こ
度 以 上 の 電力 が 必 要 で あ る な ど、一 般 に
た め の 方 法 と して は 適 し て い な い 。
Wada and Kakuto(1995)は
速 に 土 壌 の 含 水 比 を 測 定 す る た め の グ ル セ ロ ー ル 抽 出 一 屈 折 率 測 定 法(GER法)を
、現場で迅
考 案 し た 。 これ は 、 一
定 量 の 土 壌 試 料 と グ リセ ロ ー ル を 混 合 し 、土 壌 水 に よ る 添 加 グ リセ ロ ー ル の 希 釈 に よ る 屈 折 率 低 下 か ら含 水
比 を 計 算 す る も の で あ る 。 こ の 研 究 で は 、 こ の 原 理 に 基 づ く 土 壌 水 分 計 を 開 発 す る た め の 基 礎 と してGER
法 の改 良 とそ の 評 価 を行 った 。
【自動 温 度 補 正 】
GER法
で は 、 ま ず 容 器 に 土 壌 試 料 を 秤 取 し 、 そ れ に グ リセ ロ ー ル を 添 加 して 再 び 秤 量 し 両 者 を よ く 混 合
し 、 混 合 物 の 一 部 を 屈 折 計 の 主 プ リズ ム 面 に 広 げ た コー テ ィ ン グ ろ 紙 の 上 に の せ る 。 ろ 紙 か ら 染 み だ し た グ
リセ ロ ー ル ー 土 壌 水 混 合 物 の 屈 折 率 を測 定 し、 次 式 に よ っ て 含 水 比 を 計 算 す る 。
こ こ で 晩 は 土 壌 試 料 の 質 量,鴨
は 混 合 し た グ リセ ロ ー ル の 質 量 、 ∬は 水 一 グ リセ ロ ー ル 標 準 混 合 物 の 水:
グ リセ ロ ー ル 質 量 比 を 屈 折 率 に 対 して プ ロ ッ ト し た 検 量 線 か ら 読 み と っ た 土 壌 水 一 グ リセ ロ ー ル 混 合 物 の
水:グ
リセ ロ ー ル 質 量 比 で あ る。 屈 折 率 は温 度 に依
存 す るの で 、WadaandKakuto(1995)は5℃
毎 の検
量 線 を 作成 して 用 い た が 、 こ こで はROMに
記憶 さ
せ た 検 量 線 デ ー タ と温 度 セ ンサ ー に よ っ て 測 定 した
温 度 か ら自動 的 に25℃ にお け る屈 折 率 にi換算 す る方
法 に 改 めた 。
図1は 、上 記 改 良 法 を 主 要粘 土 鉱 物 組 成 の 異 な る4
種 の 土 壌 試 料 に適 用 して 室 内 で 測 定 した 含 水 比 を乾
燥 法 に よ る含 水 比 に対 して プ ロ ッ トした もの で あ る。
各 試 料 とも風 乾 に よ り6段 階 の含 水 比 に調 整 した も
の に つ い て 測 定 した。r値(式(1))は
折 率 の2次
検量線 を屈
式 で 近 似 した式 か ら計 算 した 。 こ の 図 か
ら明 らか な よ うに 、 改 良法 に よ る結 果 は 乾 燥 法 に よ
図1改
る 結 果 と よ く 一 致 し て い る 。 ま た こ の 結 果 はWadaand
Kakuto(1995)の
良GER法
と標 準 乾 燥 法 に よ る
含 水 比 測 定 結 果 の比 較
報 告 した も の よ り優 れ て い る が 、温 度 補 正 の
効 果 に よ る と考 え ら れ る 。
【野 外 で の 適 用 】
上 記 方 法 を 野 外 で 利 用 す る場 合 の 問題 点 を検 討 す るた め 、 温度 補 正 可 能 な 屈 折 計 と感 量0.1gの
電子天秤
(両方 と も乾 電 池 式 の もの)を 組 み 合 わせ 、野 外 で の含 水 比測 定 を行 った 。測 定 は2連 で行 っ た。 対 象 と し
て 、 で き る だ け有 機 物含 量 や 土 性 の異 な る土壌 を 選 択 した 。 測 定 時 の気 温 は5℃ ∼20℃ で あ った 。 測 定 試 料
の 一 部 を 乾燥 しな い よ うに持 ち帰 り、105℃ の 乾燥 器 で 乾燥 して 含 水 比 を測 定 した。
測 定 結 果(2連
の 平均)は 乾 燥 法 に よる含 水 比 と
対 比 させ て 図2に 示 した。 こ の よ うにGER法
によ
る結 果 は 乾燥 法 に よ る結 果 と近 似 した が 、試 料 に よ
って は 乾燥 法 に よ る結 果 に 比較 して約10%程
度の
相 対 誤 差 を 生 じた 。誤 差 要 因 は現 在 解 析 中 で あ るが 、
風 に よ る天秤 の ゆ らぎ 、土 壌 試 料 とグル セ ロー ル の
混 合 の 不 完 全 さ、そ して 屈 折 計 プ リズ ム 面 へ の 土 壌
の微 細 粒 子 の 回 りこみ な どが 考 え られ た 。した が っ
て 、こ の測 定 法 を確 立 す る に は 、専 用 の 屈 折 計 の 開
発 だ け で な く、土 壌 とグ リセ ロー ル の 混 合 容 器 や 、
天 秤 な ど周 辺 器 具 を 改 良 して 組 み 合 わせ る必 要 が
あ る と考 え られ た。
図2改 良GER法
に よ る野 外 で の 含 水 比
測 定 結 果 と標 準 法 に よ る結 果 の 比 較
参考文献
Wada,
S. -I. and
refractometry
Plant
Kakuto,
Y.
for determination
Anal. 26. 1315 - 1322.
1995:
Glycerol-extraction
of gravimetric
water
content
of soil samples.
Commun.
Soil Sci,
共 同 研 究 の 概 要
研究題 目
電 力 用超 伝 導機 器 の電 気 絶 縁 技 術 に 関 す る基礎 研 究
大 学(代 表 者)
工学部教授
原
雅
民 間 機 関 等
九州電力㈱
総合研究所
則
研究体制
研 究成 果
の 概 要
① 超 伝 導 機 器 の ク エ ンチ が 電 気 絶 縁 環 境 と 耐 電 圧 特 性 に 及 ぼ す 影 響 の 検 討
Dク
エ ン チ 時 に 液 体 冷 媒 中 で 発 生 す る熱 気 泡 の 不 平 等 電 界 下 で の 挙 動 を 調 べ 、 電 極 の 配 置
や 表 面 形 状 が 気 泡 挙 動 に 及 ぼ す 影 響 を 明 らか に した 。
2)誘 電 泳 動 力 に よ る 熱 気 泡 運 動 解 析 の 計 算 機 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン コ ー ドを 開 発 し 、 気 泡 の 大
きさや 交 流 電 界 の周 波 数 等 が気 泡 挙 動 に及 ぼす 影 響 を 定 量 的 に検 討 した。
3)熱 気 泡 存 在 時 の 液 体 ヘ リ ウ ム の 絶 縁 破 壊 特 性 を 調 べ た 結 果 、 破 壊 電 圧 は 核 沸 騰 領 域 で は
殆 ど一 定 で あ る の に 対 し 、 膜 沸 騰 へ の 転 移 に 伴 い 急 激 に 低 下 す る こ と を 明 らか に した 。
② 電 力用 超 伝 導 機 器 の 高 電 圧試 験 法 の検 討
1)ク エ ン チ 時 の 液 体 ヘ リ ウ ム気 化 を 想 定 し、 常 温 ヘ リ ウ ム ガ ス の 短 ギ ャ ッ プ 破 壊 特 性 を 調
べ 、 電 極 ギ ャ ッ プ 長 の 不 均 一 性 に よ っ て 、 見 か け 上 バ ッ シ ェ ン則 が 成 立 し な い 領 域 が 存
在 す る こ とを 明 らか に した。
2)1μm以
下 の 極 短 ギ ャ ップ で は 、電 極 先 端 に 形 成 さ れ る 高 電 界 に お け る 電 界 放 出 に よ り破
壊 が 誘 起 さ れ 、 こ の 場 合 最 低 破 壊 電 圧 は バ ッ シ ェ ン ミ ニ マ ム よ り も低 下 し得 る こ と を 示
した 。
研究題 目
望 ま しい 地 下環境 の 創 出 を 目的 と した 地 下 空 間 の 設計 施 工 に 関す る研 究
大 学(代 表 者)工
学部教授
江
崎
哲
郎
研究体制
民 間 機 関 等
住友建設㈱
技術研究所
研究成果
九 州 大学 地 盤 環 境 研 究 室 で は、 岩 盤 の 挙 動 を定 量 的 に再 現 す る底 面 摩 擦 模型 実験 装 置 を 開
の 概 要
発 す る と と もに 、解 析 的 方 法 に よる地 下 空 間 の補 強効 果 、 ゆ るみ 領 域 の 評価 な どの定 量 的解
析 方 法 を確 立 して い る。 ま た、 住 友 建設 ㈱ は 、 トンネ ル をは じめ とす る地 下 空 間 の設 計 ・施
工 に 関 して 、非 常 に高 い技 術 を 有 して お り、地 下空 間 の安 定 性 に 関 す る応 用 的研 究 を行 って
きて お り、研 究成 果 を現 場 に役 立 て て きた実 績 が あ る。 本 研 究 室 の 基礎 的成 果 と、現 場 で培
わ れ て きた技 術 の情 報 交 換 、 お よび 、基 礎 研 究成 果 を発 展 させ る応 用 的 な 共 同研 究 に よ って、
地 下 空 間 お よび 周辺 へ の影 響 度 を 予 測 ・評価 し、 良好 な地 下 環 境 の 設 計 の課 題 を解 決 す るた
め の 具体 的 な 設 計 ・施 工 法 の提 案 を 行 った。 特 に本 年 度 は 近 接 す る トンネ ル の相 互へ の影 響
に つ い て基 礎 的実 験 お よび 大 変 形 解析 を行 うと と もに、 大 断 面空 間 の 安 定 評価 方法 お よび補
強 方法 に つ い て実 験 的 、 解 析 的 研 究 を行 った。
研 究題 目
地 盤 材 料 のShear-FlowCoupling実
研究
大 学(代
表 者)工
学部教授
験 装 置 の 開発 お よび地 下 施 設 の 隔 離性 の 評価 に関 す る
江
崎
哲
郎
研 究 体制
民 間 機 関 等
清水建設㈱
研究成果
地 盤 材 料 の せ ん 断 一透 水 同時 試 験 装 置 を 設 計 製 作 した 。次 に 、試 験 装 置 の性 能 確 認試 験 を
の 概 要
行 った 。 供 試 体 と して一 般 の地 盤 材 料 を模 擬 した カ オ リン混 合土 を用 いた 。 カ オ リン混 合 土
の透 水 係 数 は 、 せ ん 断 ひず み が増 加 す る とと もに 線 形 的 に増 加す る結 果 が 得 られ て お り、 本
試 験 装 置 に よ って せ ん 断 ひ ず み と透 水 係数 の関 係 を 定 量 的 に 正 し く評 価 で きる ことが わ か っ
た。 次 に 、 低 レベ ル 放 射性 廃 棄物 の地 層 処 分 で隔 離 材 料 と して 用 い られ る難 透 水 性 のベ ン ト
ナ イ ト混 合 土 に つ い て せ ん 断 一透 水 同 時試 験 を行 った 。 せ ん 断 ひ ず み が10%迄 発 生 す る条 件
下 で行 った透 水 試 験 で は 、 透 水 係数 に顕 著 な変 化 は現 れ な い とい う結 果 が得 られ た。 この こ
とか ら、 ベ ン トナ イ ト混 合 土 は 隔 離材 料 と して効 果 的 に機 能 す る こ とが 明 らか に な った。
研究題 目
不 連 続 性 岩 盤 の 評価 に 関す る研 究
大 学(代 表 者)工
学 部教 授
江
崎
哲
郎
研究体制
民 間 機 関 等
九 州電 力㈱
総 合研 究 所
研究成果
本 年 度 は 主 と し て 不 連 続 面 の 発 達 し た 斜 面 を と りあ げ 、 ① 不 連 続 面 の 工 学 特 性 の 試 験 、 ②
の 概 要
不 連 続 面 に 着 目 した 個 別 要 素 法 解 析 、 ③ 開 発 が 予 定 さ れ て い る 現 場 で の 調 査 項 目 、 管 理 項 目
方 法 の 検 討 、 ④ 対 象 フ ィ ー ル ドの 評 価 の た め の モ デ ル 化 お よ び 解 析 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 、 の 研
究 を行 った。 従 来 は調 査 、 解 析 は 別 々に 行 わ れ る こ とが多 か った が 、 本 研 究 で は実 際 の 評価
を 行 うた め に 調 査 、 試 験 、 解 析 を 一 連 の フ ロ ー と し て と ら え 、 そ の 場 合 の 問 題 点 の 抽 出 、 解
決 を は か っ た 。 そ の 結 果 、 以 下 の 成 果 が 得 ら れ た 。(1)不 連 続 性 岩 盤 斜 面 の 安 定 性 を 左 右 す る
不 連 続 面 の 力 学 的 特 性 お よ び 幾 何 学 的 特 性 の 調 査 法 と決 定 法 を 示 す こ とが で き た.(2)現
核 調 査 法 に 基 づ くQシ
場の
ス テ ム を 適 用 し、 不 連 続 性 岩 盤 全 体 の 評 価 お よ び 合 理 的 な 解 析 手 法 の
決 定 ア プ ロ ー チ を 示 す こ と が で き た 。(3)調 査 お よび 総 合 的 評 価 に 基 づ い た 解 析 モ デ ル に よ り、
斜 面 安 定 性 に 影 響 す る 要 因 と影 響 効 果 を 評 価 す る こ と が で き た 。
研究題 目
固体 電 解 質 型 燃 料 電 池(SOFC)の
大 学(代 表 者)総
製作及び運転の研究
合 理 工学 研 究科 教 授
荒
井
弘
通
研究体制
民 間 機 関 等
九 州電 力㈱
総合研究所
研究成果
固 体 電 解 質燃 料電 池 は燃 料 の持 つ化 学 エ ネ ル ギ ーか ら電 気 エ ネ ル ギ ーへ 直接 変 換 が可 能 な
の 概 要
将 来 の 発電 シス テ ム と して注 目 され て い る。 九 州 電 力 で は 電 気 事業 に携 わ る立 場 か ら この 開
発 を 推進 して お り九 州 大学 の有 す る セ ラ ミッ クス化 学 、 電 気 化 学 の 基礎 知 識 と合わ せ て共同
研 究 を進 め て きた。
7年 度 は 前年 度 まで の成 果 に基 づ い て更 に 単 セル 、 及 び 群電 池 の 高性 能 化 を試 み た。 湿 式
法 に よ り作 製 した セ ル は他 に報 告 され て い る セル よ りも格 段 に安 価 で あ る こ とは 間違 い な く、
また 本 共 同研 究 に よ り高 出力 化 が 着 実 に 進 行 しつ つ あ る。一 方 そ の反 面、 セ ラ ミック ス の基
礎 的 知識 が 更 な る 高 出 力化 の鍵 を握 っ て い る こ と も認 識 で きた。 九 州 大 学 で は材 料 面 で の解
析 の他 、燃 料 に よる濃 度 過 電 圧 の効 果 の 解 析 を 行 った 。
研 究題 目
気 中複 雑 電 極 系 の フ ラ ッシ オ ーバ 機 構 と特 性
大 学(代 表 者)工
学部教授
原
雅
則
研究体制
民 間 機 関 等
研究成果
の 概 要
九州電力㈱
総 合研 究所
① ポ ア ソ ン場 中 に 浮 遊 物 体 が あ る と きの電 界解 析
針 対 平 板 電 極 を 用 い て イ オ ン流 場 の解 析 を行 い 、 この電 界 中 で物 体 が 飽 和 帯電 量 まで 帯電
され 、 物 体 と帯 電 電 荷 に よ って イ オ ン流 場 中 の外 部 電 界 が 変 歪 され る と して電 界計 算 を行
った 。 この 結 果 、 浮 遊 球 が存 在 す る場 合 に は 、飽 和 帯 電 に よ り針 電 極 側浮 遊 球 表 面 の電 界
が ゼ ロ、 平 板 側 浮遊 球表 面 の電 界 が外 部 電 界 の約6倍 に な る こ とを 明 らか に した。
② ラ プ ラス 場 中 に 浮遊 物 体 が あ る と きの電 界 解 析
イ オ ン流 場 が 形成 され な い球 対 球 ギ ャ ップ 中 に浮 遊 針 が あ る場 合 の 電 界計 算 を行 い 、 ギ ャ
ップ中 の 最 大電 界 が 浮遊 針 の位 置 に依 存 せ ず 、 浮 遊 針 先 端 で 最 大 とな る こ とを示 した。 ま
た 、 浮 遊 球 が あ る場 合 の 最 大電 界 が 、浮 遊 球 の位 置 に 依 存 す る こ とを示 した。
③ 浮 遊 物 体 が 関 与 す る と きの フ ラ ッシオ ーバ 機 構 と特 性 の 解 明
上 記 の 電 界 計 算結 果 か ら、 ポ ア ソ ン場 お よび ラ プ ラ ス場 中 に 浮遊 物 体 が あ る と きの放 電 開
始 電 圧 、放 電 開 始 点 、放 電 進 展 過 程 な らびに 物 体 両 端 の コ ロナ 放電 の 干渉 機 構 を検 討 し、
そ れ らを 基 に浮 遊 物 体 が あ る場 合 の フ ラ ッシ オ ーバ 特 性 の 推定 法 を提 案 して、 そ の有 効 性
を 実験 で確 認 した。
研究題 目
新規 高 分 子 材 料 の 探 索
大 学(代 表 者)工
学部教授
國
武
豊
喜
研究体制
民 間 機 関 等
三井造船㈱
研究成果
複 合 材 料 の フ ィ ラ ー と して 用 い ら れ る シ リ カ に つ い て 、 表 面 の 物 理 的 、 化 学 的 構 造 の 改 変
の 概 要
に よ り得 ら れ る 新 規 高 分 子 材 料 を 探 索 す る た め に 、 シ リ カ粒 子 の 表 面 化 学 修 飾 を 引 き 続 き検
討 し た 。 ラ ジ カ ル 重 合 で 新 規 ポ リ マ ー を 合 成 し て そ の 反 応 性 を 明 らか に した 。
研究題 目 高 エ ネ ル ギ ー荷電 粒 子輸 送 コー ドの研 究
大 学(代 表 者)工
学 部 教授
石
橋
健
二
研究体制
民 間 機 関 等
研究成果
の 概 要
㈱三菱総合研究所
本 研 究 で は 高 エ ネ ル ギ ー 輸 送 コ ー ドと し て 、 核 反 応 に 核 内 カ ス ケ ー ド ・励 起 子 ・蒸 発 モ デ
ル を 導 入 し た コ ー ド(HETG3STEP)を
提 案 して い る 。当 該 年 度 は 励 起 子 反 応 部 分 の パ ラ
メ ー タ の 最 適 化 を 行 い 、 入 射 粒 子 エ ネ ル ギ ー20MeV∼800MeVの
を よ く再 現 す る よ うに な っ た 。
領 域 で 計 算 結 果 が 実験 値
研究題 目
無 接 点 型 直 流 大 電 流 スイ ッチ の 基礎 研 究
大 学(代 表 者)工
学部教授
竹
尾
正
勝
研究体制
民 間 機 関 等
研究成果
の 概 要
九州電力㈱
総 合研 究所
本 研 究 で は 無 接 点 型 直 流 大 電 流 ス イ ッチ の 開 発 研 究 と して 、1000A級
接 点 直 流 電 流 ス イ ッ チ に お い て 、 そ のON-OFF動
の 電 流 トラ ン ス 式 無
作 の 確 認 を 目的 と した 電 流 ス イ ッ チ の 試
作 を 行 い 、 超 伝 導 磁 気 エ ネ ル ギ ー貯 蔵 装 置 と の 連 結 試 験 を 行 っ た 結 果 数10msecで
OFF動
作 が 実 現 で き た 。 更 にOFF抵
し た1000A級
のON-
抗 値 の 増 大 の た め 、 ス イ ッチ 部 に 無 誘 導 コ イ ル を 設 置
の ス イ ッチ の 概 念 設 計 を 行 な っ た 。
研 究題 目 浅 所 陥没 発 生 機 構 の解 明 お よび 復 旧対策 工法 等 の確 立 に関 す る共 同 研 究
大 学(代 表 者)工
学部教授
江
崎
哲
郎
研 究体 制
民 間 機 関 等
石炭鉱害事業団
研 究成 果
本 年 度 は ガ イ ドブ ッ クの 内容 の追 加 と、 目次 、 内容 の再 検 討 お よび 浅 所 陥没 の発 生 に対 す
の 概 要
る地 震 動 の影 響 の検 討 を 行 った 。 前 者 に つ い て は 、復 旧対 策 工 法 を 執 筆 す る と と もに 、諸 外
国 の例 に つ い て も加 え る宅 とに した 。後 者 に つ い て は 、大 変 形 差 分 解 析 法 を 用 い て地 下 浅 所
に残 存 す る空 洞 が直 下 型 地 震 を 受 け た 際 に 陥没 を 生 じる条 件 、 垂 直 震 度 と陥没 深 さの 関 係 な
どに つ い て数 多 くの解 析 を行 い、 通 常 時 の 陥没 発 生 と比 較 した。 そ の 結 果 、 地 表 下5∼10m
に残 存す る空 洞 が最 も生 じや す い 傾 向 が み られ る こ とや 発 生 限 界 の 岩 盤 強 度 に つ い て の知 見
を得 た。
研 究題 目
緩 衝 材 と コ ン ク リー トの 相 互 作用 に 関 す る研 究
大 学(代 表 者)工
学部教授
古
屋
廣
高
研 究体 制
民 間 機 関 等
研 究成 果
の 概 要
日揮㈱
高 レベル 放 射 性 物 質 の 深地 層 処 分 の安 全 評 価 上、 緩 衝 材 の 長 期安 定 性 の確 認 が 必 要 で あ る。
緩 衝 材 の 経 年 変 化 に 関 して 、 地 下 空 洞 の 補 強 に 用 い ら れ る コ ン ク リ ー トと の 化 学 的 相 互 作 用
が 懸 念 され て い る 。本 共 同 研 究 で は 、 緩 衝 材 と して のNaベ
ン トナ イ トを 想 定 し、 コ ン ク リー
トが 存 在 す る と き の 強 ア ル カ リ環 境 が ベ ン トナ イ トの 組 成 に ど の よ うに 影 響 す る か に つ い て
の 知 見 を 得 る こ とを 目的 と した 。
本 年 度 は 、Naベ
ン トナ イ ト中 のNaの
拡 散 係 数 と 、コ ン ク リー トに 対 す るNa、K、Cs、Ca
の イ オ ン交 換 平 衡 定 数 を 測 定 した 。
研 究題 目
混 合 媒 体 の熱 力 学 的 性 質 に 関 す る研 究
大 学(代 表 者)工
学 部 教授
伊
藤
猛
宏
研 究体 制1
民 間 機 関 等
研 究成 果
の 概 要
R22-Rl23混
九 州 電 力㈱
総 合研 究 所
合物 を用 い る地 熱 バ イナ リー発電 設備 の設 計 を支 援、 動 作 性 能 を確 認 す る ソ
フ ト ウ ェ ア を 開 発 した 。
研究題 目
ロ ー プ レス リ ニ ア エ レ ベ ー タ の 基 礎 研 究
大 学(代
表 者)工
学部教授
吉
田
欣 二郎
研究体制
機
関 等LG産
電 ㈱ 研 究 所(LGIndustrialSystemsCo.,Ltd)
民間
研 究成 果
本 研 究 は 、 垂 直 に 昇 る リ ニ ア モ ー タ ー カ ー の 概 念 に 基 づ い た 、 高 層 ビ ル 用 ロ ー プ レス エ レ
の 概 要
ベ ー タ に 関 す る 基 礎 研 究 で あ る 。 エ レベ ー タ の 自重 を 支 え て 垂 直 走 行 す る た め に は 、 大 き な
推 進 力 が 必 要 で 、PM形
い 、 制 御PM形
リ ニ ア モ ー タ が 最 適 で あ る 。 今 年 度 は 、 実 験 装 置 の 解 析 と設 計 を 行
移 動 子(ケ
ー ジ)及
び 各 種 セ ン サ シ ス テ ム を 製 作 した 。 これ ら の 性 能 は 、 所
望 の 仕 様 を 満 足 し て お り、 来 年 度 に 予 定 し て い る リニ ア エ レベ ー タ 動 作 の 基 礎 実 験 に 十 分 対
応 で き る こ と を 確 認 した 。
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