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魔界転生(2003年

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魔界転生(2003年
★★★★
監督:平山秀幸
出演:窪塚洋介/佐藤浩市/麻生久
美子
魔界転生
配給/
配給/東映
2003(
2003(平成15
平成15)
29日鑑賞
15)年4月29日鑑賞
高校生時代に
高校生時代に秘かに回
かに回し読んだ「
んだ「くノ一忍法
くノ一忍法」
一忍法」作家、
作家、山田風太郎の
山田風太郎の代表作の
代表作の
再登場。
。原作(
再登場
原作(1964~
1964~1966年
1966年)は40年近
40年近く
年近く前のものだが、
のものだが、その発想
その発想
の新鮮さは
新鮮さは何
さは何ら衰えていない。
えていない。天草四郎の
天草四郎の妖しい魅力
しい魅力、
魅力、そして「魔界」
魔界」から「転
生」してきた剣豪
してきた剣豪たちと
剣豪たちと柳生十兵衛
たちと柳生十兵衛との
柳生十兵衛との対決
との対決は
対決は十分楽しめる
十分楽しめる。
しめる。
─── * ─── * ─── * ─── * ─── * ─── * ─── * ─── * ─── * ─── * ───
<懐かしい山田風太郎小説
かしい山田風太郎小説>
山田風太郎小説>
山田風太郎。懐かしい作家だ。私の高校生時代には、奇想天外でかなりエロチックな『く
ノ一忍法』の本が学校で秘かに回し読まれていた。私は小遣いが少ししかなかったため、
自分で買ったことはないが、その文章や表現には大いに「興奮」したものだ。
山田風太郎(1922年生まれ、2001年死去)は東京医科大学在学中から数々の小
説を発表していたが、1958年の『甲賀忍法帖』以後、数々の『忍法帖』小説を発表し
た。そして「忍法」の世界に、柳生十兵衛や荒木又右衛門、宮本武蔵など数々の剣豪を登
場させて、その「対決」を描き、独自の世界を展開させた。
「忍者」モノと言えば、村山知義原作の『忍びの者』も有名だし面白かった。ここでは
伊賀忍者「百地三太夫(ももちさんだゆう)
」や「服部半蔵」が登場する。そして、忍者「石
川五右衛門」は伊賀の里を焼き払った(これを第二次天正伊賀の乱(1581年)という)
織田信長を狙い、信長の死後はその後継者となった豊臣秀吉の命を狙う。これを映画化し
た市川雷蔵主演の『忍びの者』
(1962年)
、
『続・忍びの者』
(1963年)
、
『新・忍び
の者』
(1963年)3部作も素晴らしかった。
そしてまた最近では、司馬遼太郎原作の小説を篠田正浩監督が中井貴一主演で撮った『梟
の城』
(1999年)も素晴らしかった。
山田風太郎原作の「忍法」の世界は、とにかく理屈抜きで楽しむことができて面白い。
その山田風太郎の代表作がこの『魔界転生』だ。
<昔は沢田研二、
沢田研二、今は窪塚洋介>
窪塚洋介>
『魔界転生』の主役は、悲劇の美少年天草四郎時貞。かつて1981年、深作欣ニ監督
が映画化した時の天草四郎は沢田研二。これはかなり「色気」のある四郎だったが、今回
は窪塚洋介の四郎。はてこの色気は・・・?
もっとも今回は、四郎にいつも影のように従っているクララお品(麻生久美子)との「ペ
ア」が多い。そして2人でバランスよく、島原の乱の恨み、徳川に対する憎しみ、そして
「魔界転生」の執念を表現している。
そういえば、天草四郎をテーマとして大ヒットした曲に、橋幸夫の「南海の美少年」と
いう歌があり、NHKのど自慢大会ではよく「天草四郎~美少年~」と歌われていたもの
だ・・・。今時こんな歌、誰も知らないか・・・?
<柳生十兵衛は
柳生十兵衛は佐藤浩市>
佐藤浩市>
山田風太郎は柳生十兵衛という人物(キャラクター)を最も気に入っていたようで、山
田風太郎最後の作品は『柳生十兵衛死す』だ。もっとも柳生十兵衛は、山田風太郎作品だ
けではなく、深作欣ニ監督の『柳生一族の陰謀』などにも登場する、日本人にはお馴染み
の人物だ。そして柳生十兵衛役は何といっても千葉真一のオハコだった。
『魔界転生』でその柳生十兵衛を演ずるのは、最近の『壬生義士伝』
(2003年)で、
中井貴一演ずる新撰組隊士吉村貫一郎とわたり合ったサウスポーの剣士斎藤一を演じ、時
代劇でのっている佐藤浩市。
十兵衛は魔界から転生してきた
①荒木又右衛門(加藤雅也)
②宝蔵院胤舜(古田新太)
③宮本武蔵(長塚京三)
、そして
実の父親である④柳生但馬守(中村嘉葎雄)
と死闘を演じ、これを次々と倒していく。そして、最後のクライマックスは天草四郎との
「対決」だ。
ストーリーは奇想天外だが、佐藤浩市の演技は実にシリアスで、
「殺陣」も十分見応えが
ある。
<ストーリーは島原
ストーリーは島原の
島原の乱から>
から>
1638年、3万7千の農民達を率いて徳川幕府に抵抗した島原の乱は鎮圧され、一揆
勢は一人残らず殺された。その「戦場」はまさにこの世の地獄絵であり、そこには神など
存在しなかった・・・。そしてこれを率いた総大将天草四郎の首も飛んだ。
しかし、その10年後現世に蘇った四郎は、
「南海の竜」と呼ばれながら不遇を囲ってい
た紀州藩主徳川頼宣(杉本哲太)の下に「君臨」した。そして、頼宣の「野望」実現のた
め、魔界から魔界衆を呼び寄せ、頼宣の力になると約束した。
四郎に付き添うクララお品が述べる「無念、無念の思いがこの世に転生するよすがなの
です」というセリフは実に説得力がある。そして魔界から転生してくる荒木又右衛門、宝
蔵院胤舜、宮本武蔵、柳生但馬守らがこの世に持っていた「無念」の気持ちが十分理解で
きるだけに、あながち、この魔界から転生してくるストーリーも荒唐無稽なものとは思え
ない。
もっとも魔界衆であることの証拠を示すものとして、
<その1>眼の変化
<その2>死亡の際の崩壊による消滅
という2つのテクニックは、
「ご愛敬」というものか・・・?
<意外!
意外!若者に
若者に結構人気!>
結構人気!>
「最近の日本映画はダメだ。元気がない!」と言われ続けて久しい。しかし私は「そん
なことはない!」と頑固に思っている。最近の日本映画にも、
『KT』
、
『宣戦布告』
、
『T.
R.Y』などいい映画はたくさんあるが、なかなか話題にのぼらないだけだ。
しかし、この『魔界転生』には、昔の沢田研二主演の『魔界転生』を知らない世代の観
客が結構入っていた。多分若い観客の多くは窪塚洋介がお目当てだろうが・・・。
しかしこの映画を見れば、少なくとも「島原の乱」
、
「天草四郎」
、
「柳生十兵衛」
、
「宮本
武蔵」などのキーワードは覚えるはずだから、そこからさらに次の興味を持ってもらいた
いと思う。
なお、スケベな(?)私としては、山田風太郎作品を日本映画に蘇らせるのであれば、
是非『くノ一忍法』モノを実現してほしいと思う。もっともその場合、ポルノ映画との線
引きが難しいだろうが・・・。しかし何とかして、
「色気」タップリだがシリアスな、
『く
ノ一忍法』モノを是非映画化してほしいものだ。
2003(平成15)年4月30日記
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